(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】体組成を変更するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241031BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P3/04
(21)【出願番号】P 2020545510
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 US2019020330
(87)【国際公開番号】W WO2019169283
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ドナヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・シー・ポーディー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ハーマン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534239(JP,A)
【文献】特表2016-528232(JP,A)
【文献】Nat. Commun., (2017), 8, Article.15153<DOI:10.1038/ncomms15153>
【文献】Nat. Commun., (2017), 8, Article.15153<DOI:10.1038/ncomms15153>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/395
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を有する対象の体組成を変更するための方法で使用するための、有効量のGDF8阻害剤を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物は有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物と組み合わせて対象に投与され、
前記体組成の変更は対象における脂肪量の低下の誘導を含み、
前記GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号360を含むHCVR、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号368を含むLCVR、配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含み、
前記GDF8阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約10mg/kgの体重量であり、
前記アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記アクチビンAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号553を含むHCVR、配列番号555、配列番号557および配列番号559を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号537を含むLCVR、配列番号539、配列番号541および配列番号543を含む3個のLCDRを含み、
前記アクチビンA阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約12mg/kgの体重量である、
前記医薬組成物。
【請求項2】
体組成の変更は、対象における筋量の増加の誘導を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を有する対象の体組成を変更するための方法で使用するための、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻
害剤を含む医薬組成物であって、
前記方法は、該組成物を対象に投与する工程を含み、
前記体組成の変更は、対象における脂肪量の低下の誘導を含み、
前記GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号360を含むHCVR、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号368を含むLCVR、配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含み、
前記抗GDF8阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約10mg/kgの体重量であり、
前記アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片で、
前記アクチビンAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号553を含むHCVR、配列番号555、配列番号557および配列番号559を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号537を含むLCVR、配列番号539、配列番号541および配列番号543を含む3個のLCDRを含み、
前記アクチビンA阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約12mg/kgの体重量である、
前記医薬組成物。
【請求項4】
体組成の変更は、対象における筋量の増加の誘導を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有効量のGDF8阻害剤は、約6mg/kg対象の体重量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
有効量のアクチビンA阻害剤は、約3mg/kgまたは約10mg/kg対象の体重量である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記第2の組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物および前記第2の組成物は、投与前に組み合わされて第3の組成物にされる、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第3の組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
投与前に対象における総脂肪量および/またはアンドロイド脂肪量を測定する、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
投与後に対象における総脂肪量および/またはアンドロイド脂肪量が測定され、対象が、少なくとも約2%~8%、少なくとも約2.5%~6%、少なくとも約3%~4%または少なくとも約3.5%の総脂肪量および/またはアンドロイド脂肪量の低下を得るまで、前記組成物が投与される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アクチビンA阻害剤は、GDF8阻害剤の量の100%~200%の間、GDF8阻害剤の量の100%~250%の間、GDF8阻害剤の量の100%~300%の間、およびGDF8阻害剤の量の重量で100%~400%の間からなる群から選択される量である、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
アクチビンA阻害剤の量は、GDF8阻害剤の量よりも重量で約1.5~2.0倍多い、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定される総脂肪量の低下である、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定されるアンドロイド脂肪量の低下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
対象は、投与後に筋肉体積の増加を起こす、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
対象は、筋消耗状態または疾患がない、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法で使用するための、GDF8阻害剤を含む医薬組成物であって、
該医薬組成物は増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を有する対象にアクチビンA阻害剤とともに投与され、
前記GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号360を含むHCVR、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号368を含むLCVR、配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含み、
前記GDF8阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約10mg/kgの体重量であり、
前記アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片で、
前記アクチビンAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号553を含むHCVR、配列番号555、配列番号557および配列番号559を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号537を含むLCVR、配列番号539、配列番号541および配列番号543を含む3個のLCDRを含み、
前記アクチビンA阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約12mg/kgの体重量である、
前記医薬組成物。
【請求項20】
増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法で使用するための、アクチビンA阻害剤を含む医薬組成物であって、
該医薬組成物は増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を有する対象にGDF8阻害剤とともに投与され、
前記アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記アクチビンAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号553を含むHCVR、配列番号555、配列番号557および配列番号559を含む3個のH
CDR、ならびに
配列番号537を含むLCVR、配列番号539、配列番号541および配列番号543を含む3個のLCDRを含み、
前記アクチビンA阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約12mg/kgの体重量であり、
前記GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片であり、
前記GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号360を含むHCVR、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに
配列番号368を含むLCVR、配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含み、
前記GDF8阻害剤の有効量は、約2mg/kg~約10mg/kgの体重量である、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、PCT国際特許出願として2019年3月1日に出願されており、これによりその開示全体を参照によって組み入れる2018年3月1日に出願された米国特許仮出願第62/637,017号に対する優先権の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本願は、2019年3月1日に作成された、288キロバイト(KB)(295,202バイト)のサイズを有する、「Sequence-Listing-40848-091WOU1」という表題の電子書式の配列表を含む。txtファイル「Sequence-Listing-40848-091USU1」の内容は、参照によって本明細書に組み入れる。
【0003】
発明の分野
本発明は、対象における体組成を変更するための組成物および方法に関する。本組成物および方法は、また、対象における脂肪量を低下させる。本組成物および方法は、また、対象における筋肉体積および/または除脂肪体重を増加させる。より具体的には、本発明は、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を含む組成物、ならびに増加した脂肪量、および/または減少した筋肉体積もしくは減少した除脂肪体重によって特徴付けられる疾患および障害を処置するための斯かる組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
増殖分化因子-8(GDF8、ミオスタチンの別名でも知られる)は、増殖因子のトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーに属する分泌リガンドである。GDF8は、骨格筋の発達および維持において中心的役割を果たし、筋形成および骨格筋量の負の調節因子として作用する。ミオスタチン突然変異(ノックアウトを含む)は、主に筋量増加であるが、筋肉化(muscling)(より多くの筋線維)、筋線維組成(筋線維のより大きい断面積)の変種、タンパク質/DNA比増加等で構成される場合もある、表現型に繋がる。
【0005】
GDF8に対する抗体および治療方法は、例えば、特許文献1に開示されている。抗GDF8抗体は、例えば、特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;特許文献12;特許文献13;および特許文献14;特許文献15;特許文献16においても言及されている。
【0006】
アクチビンは、トランスフォーミング増殖因子-ベータ(TGF-β)スーパーファミリーに属し、細胞増殖、分化、代謝、恒常性およびアポトーシス、ならびに免疫応答および組織修復において広範囲の生物学的効果を発揮する。アクチビンAは、I型(Act RI-AおよびAct RI-B)およびII型(Act RII-AおよびAct RII-B)セリン-スレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体に結合してこれを活性化する、ジスルフィド連結したホモ二量体(2個のベータ-A鎖)である。
【0007】
アクチビンAに対する抗体およびその使用は、例えば、特許文献17;特許文献18;および特許文献19に開示されている。
【0008】
抗GDF8抗体および抗アクチビンA抗体を含む組成物、ならびに治療方法は、例えば、特許文献20に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US8,840,894
【文献】米国特許第6,096,506号
【文献】米国特許第7,320,789号
【文献】米国特許第7,261,893号
【文献】米国特許第7,807,159号
【文献】米国特許第7,888,486号
【文献】米国特許第7,635,760号
【文献】米国特許第7,632,499号
【文献】米国特許出願公開第2006/0263354号
【文献】米国特許出願公開第2007/0178095号
【文献】米国特許出願公開第2008/0299126号
【文献】米国特許出願公開第2010/0166764号
【文献】米国特許出願公開第2009/0148436号
【文献】国際特許出願公開番号WO2004/037861
【文献】国際特許出願公開番号WO2007/047112
【文献】国際特許出願公開番号WO2010/070094
【文献】US8,309,082
【文献】US9,718,881
【文献】国際特許出願公開番号WO2008/031061
【文献】US8,871,209
【非特許文献】
【0010】
【文献】Britton JACC 2013 62;921頁
【文献】Imai Atherosclerosis 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
肥満は、世界人口の3分の1超にとっての世界的な問題である。アメリカ合衆国では、平均肥満率は、20%超である。肥満関連疾病の費用は、膨大であり、合計$1902億に達し、米国の年間医療費のおよそ21%である。肥満は、機能障害性(上昇した)脂肪量に関連する慢性軽度炎症によって特徴付けられる蔓延した疾患である。フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)参加者において、腹部脂肪症は、臨床リスク因子および全体的脂肪症のための調整後に、偶発的心血管疾患(CVD)に関連した。非特許文献1。腹部内臓脂肪蓄積は、冠血管非石灰化プラークの進行に正に関連した。非特許文献2。高脂肪量は、うっ血性心不全、高血圧/高血圧症、肺塞栓症、変形性関節症、リンパ浮腫、胃食道逆流疾患、慢性腎不全、がん、脂肪肝疾患およびさらにはうつのような重篤状態に関連するため、依然として、対象における総脂肪および/またはアンドロイド脂肪量を低下させる治療法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、本発明は、対象における体組成を変更するため、すなわち、筋量を増加(increase)させ、脂肪量を減少させるための方法であって、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を対象に投与する工程を含む方法を対象にする。別の態様では、本発明は、対象における脂肪量の低下を誘導するための方法であって、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む方法を対象にする。
【0013】
別の態様では、本発明は、増加した脂肪量によって特徴付けられるまたはこれに関連する疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を投与する工程を含む方法を対象にする。別の態様では、本発明は、増加した脂肪量によって特徴付けられるまたはこれに関連する疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を含む有効量の組成物を投与する工程を含む方法を対象にする。一態様では、本発明は、対象における体組成を変更するため、すなわち、筋量を増加(increase)させ、脂肪量を減少させるための方法であって、有効量のGDF8阻害剤、および有効量のアクチビンA阻害剤を対象に投与する工程を含み、総体重に有意でない変化がある、方法を対象にする。よって、本発明の一態様では、有効量のGDF8阻害剤、および有効量のアクチビンA阻害剤を投与された対象は、脂肪量の減少と共に、筋量の増加を起こし、総体重に最小のおよび/または有意でない変化をもたらすであろう。
【0014】
一態様では、本発明は、対象における脂肪量の低下を達成するための医薬の調製における、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の使用を対象にする。別の態様では、本発明は、対象における増加した脂肪量に関連する疾患または障害を処置するための医薬の調製における、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の使用を対象にする。
【0015】
一部の実施形態では、増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法における使用のためのGDF8阻害剤であって、方法が、対象にGDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む、GDF8阻害剤が提供される。
【0016】
一部の実施形態では、増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法における使用のためのアクチビンA阻害剤であって、方法が、対象にアクチビンA阻害剤およびGDF8阻害剤を投与する工程を含む、アクチビンA阻害剤が提供される。
【0017】
一部の実施形態では、対象における脂肪量を減少させるための非治療方法であって、対象に、アクチビンA阻害剤およびGDF8阻害剤を投与する工程を含む方法が提供される。
【0018】
本発明に係る方法の一実施形態では、有効量のGDF8阻害剤は、少なくとも0.1mg/kg~約10gm/kg、1mg/kg~約1gm/kgおよび10mg/kg~100mg/kgからなる群から選択される投薬レジメンを含む。本発明に係る方法のさらなる実施形態では、有効量のGDF8阻害剤は、約0.01~約20mg/kg体重量(body weight)、約0.1~約10mg/kg体重量および約0.1~約5mg/kg体重量の単一用量からなる群から選択される投薬レジメンを含む。
【0019】
本発明に係る方法の別の実施形態では、有効量のアクチビンA阻害剤は、少なくとも0.1mg/kg~約10gm/kg、1mg/kg~約1gm/kgおよび10mg/kg~100mg/kgからなる群から選択される投薬レジメンを含む。本発明に係る方法のさらなる実施形態では、有効量のアクチビンA阻害剤は、約0.01~約20mg/kg体重量、約0.1~約10mg/kg体重量および約0.1~約5mg/kg体重量の単一用量からなる群から選択される投薬レジメンを含む。
【0020】
本発明に係る方法の一実施形態では、有効量のGDF8阻害剤は、6mg/kg体重量であり、有効量のアクチビンA阻害剤は、3mg/kg体重量である。本発明に係る方法の一実施形態では、有効量のGDF8阻害剤は、6mg/kg体重量であり、有効量のアクチビンA阻害剤は、10mg/kg体重量である。
【0021】
本発明に係る方法の一実施形態では、第1の組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている。本発明に係る方法の別の実施形態では、第2の組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている。本発明に係る方法のある特定の実施形態では、第1および第2の組成物は、対象に同時にまたは逐次に投与される。
【0022】
本発明に係る方法の一実施形態では、第1および第2の組成物は、投与前に組み合わされて第3の組成物にされる。さらなる実施形態では、第3の組成物は、静脈内、皮下または経口投与のために製剤化されている。
【0023】
一実施形態では、本発明に係る方法は、投与前に対象における総脂肪量を測定する工程をさらに含む。別の実施形態では、本発明に係る方法は、投与後に対象における総脂肪量を測定する工程と、対象が、少なくとも2%~8%、2.5%~6%、3%~4%または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%または少なくとも3.5%以上の総脂肪量の低下を得るまで、第1および第2の組成物を投与する工程とをさらに含む。
【0024】
一実施形態では、本発明に係る方法は、投与前に対象におけるアンドロイド脂肪量を測定する工程をさらに含む。別の実施形態では、本発明に係る方法は、投与後に対象におけるアンドロイド脂肪量を測定する工程と、対象が、少なくとも2%~8%、2.5%~6%、3%~4%または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%または少なくとも3.5%以上のアンドロイド脂肪量の低下を得るまで、第1および第2の組成物を投与する工程とをさらに含む。
【0025】
一実施形態では、本発明に係る方法は、投与前に対象における皮下脂肪組織体積を測定する工程をさらに含む。別の実施形態では、本発明に係る方法は、投与後に対象における皮下脂肪組織体積を測定する工程と、対象が、少なくとも2%~8%、2.5%~6%、3%~4%または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%または少なくとも3.5%以上のアンドロイド脂肪量の低下を得るまで、第1および第2の組成物を投与する工程とをさらに含む。
【0026】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む方法であって、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤が、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、3時間以下または1時間以下の内に同時投与される、方法が提供される。
【0027】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む方法であって、対象が、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪組織体積の減少を示す、方法が提供される。
【0028】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む方法であって、対象が、投与から4週間以上または8週間以上後に、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪組織体積の減少を示す、方法が提供される。
【0029】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む方法であって、対象が、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪組織体積の減少を示し、対象が、低下した大腿筋肉内脂肪組織体積を示さない、方法が提供される。
【0030】
一部の実施形態では、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤および有効量のアクチビンA阻害剤を投与する工程を含む方法であって、対象が、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪組織体積の減少を示し、対象が、投与から4週間以上または8週間以上後に、低下した大腿筋肉内脂肪組織体積を示さない、方法が提供される。
【0031】
一部の実施形態では、有効量のGDF8阻害剤を含有する第1の容器と、有効量の特異的アクチビンA阻害剤を含有する第2の容器とを含む、キットが提供される。
【0032】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片である。
【0033】
本発明に係る方法の一実施形態では、GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、GDF8に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、配列番号360を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号368を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。また別の実施形態では、GDF8に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含む。
【0034】
一部の実施形態では、アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合断片である。
【0035】
本発明に係る方法の一実施形態では、アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、アクチビンAに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、配列番号553を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)、および配列番号537を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。また別の実施形態では、アクチビンAに特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、配列番号555、配列番号557および配列番号559を含む3個のHCDR、ならびに配列番号539、配列番号541および配列番号543を含む3個のLCDRを含む。
【0036】
本発明に係る方法の一実施形態では、アクチビンA阻害剤の有効用量は、GDF8阻害剤の有効用量の100%~200%の間、GDF8阻害剤の有効用量の100%~250%の間、GDF8阻害剤の有効用量の100%~300%の間、およびGDF8阻害剤の有効用量の重量で100%~400%の間を含む群から選択される。
【0037】
本発明に係る方法の別の実施形態では、アクチビンA阻害剤の有効用量の、GDF8阻害剤の有効用量に対する重量比は、10:1~1:10、8:1~1:8、6:1~1:6、3:1~1:3または約2:1~1:2である。本発明に係る方法の別の実施形態では、アクチビンA阻害剤の有効用量の重量比は、GDF8阻害剤の量よりも重量で約1.5~2.0倍大きい。
【0038】
本発明に係る方法の一実施形態では、GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合し、アクチビンAにも特異的に結合する、二特異性抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、アクチビンA阻害剤は、アクチビンAに特異的に結合し、GDF8にも特異的に結合する、二特異性抗体またはその抗原結合断片である。
【0039】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定される総脂肪量の低下である。本発明に係る方法の別の実施形態では、対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定されるアンドロイド脂肪量の低下である。
【0040】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象における脂肪量の低下は、MRI(磁気共鳴画像法)によって測定される皮下脂肪組織体積の低下である。
【0041】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、筋肉体積の増加を起こす。筋肉体積は、例えば、MRIによって測定される、大腿筋肉組織体積であってもよい。一部の実施形態では、筋肉体積は、例えば、MRIによって測定される、大腿筋肉組織体積であってもよい。一部の実施形態では、大腿筋肉体積は、例えば、MRIによって測定される、筋肉内脂肪組織および大血管を含む大腿筋肉組織体積、または筋肉内脂肪組織および大血管を除外した大腿筋肉組織体積であってもよい。
【0042】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、総除脂肪量の増加を起こす。総除脂肪量は、DXA(二重x線吸収測定法)によって測定することができる。
【0043】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、体肢除脂肪体重の増加を起こす。体肢除脂肪体重は、DXAによって測定し、例えば、aLBM方程式によって計算することができる。
【0044】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、総脂肪量の減少を起こす。
【0045】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、アンドロイド脂肪量の減少を起こす。
【0046】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、皮下脂肪組織体積の減少を起こす。
【0047】
本発明に係る方法の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、腕および脚の脂肪量の和の減少を起こす。
【0048】
本発明の一実施形態では、対象は、例えば、MRIによって測定される、大腿筋肉内脂肪組織体積の減少を示さない。
【0049】
本発明の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、総骨塩密度(BMD)質量の減少を示さない。
【0050】
本発明の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、総骨塩量(BMC)質量の減少を示さない。
【0051】
本発明の一実施形態では、対象は、例えば、DXAによって測定される、総骨塩量(BMC)質量の増加を示す。
【0052】
本発明に係る方法の別の実施形態では、対象は、筋消耗状態または疾患がない。
【0053】
一部の実施形態では、体組成の変更、脂肪量の減少、除脂肪量の増加、または増加した脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害の処置における使用のためのキットであって、有効量のGDF8阻害剤を含む組成物を含む第1の容器と、有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を含む第2の容器とを含むキットが提供される。
【0054】
一部の実施形態では、体組成を変更する、脂肪量を減少させる、除脂肪量を増加させる、または増加した脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害を処置するためのキットであって、アクチビンA阻害剤を含む第2の組成物をさらに含むキットにおける医薬としての使用のための第1の組成物の製造における使用のために、GDF8阻害剤が提供される。
【0055】
一部の実施形態では、体組成を変更する、脂肪量を減少させる、除脂肪量を増加させる、または増加した脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害を処置するためのキットであって、GDF8阻害剤を含む第2の組成物をさらに含むキットにおける医薬としての使用のための第1の組成物の製造における使用のために、アクチビンA阻害剤が提供される。
【0056】
一部の実施形態では、対象における体組成を変更する、脂肪量を減少させる、または除脂肪量を増加させるためのキットであって、アクチビンA阻害剤を含む第2の組成物をさらに含むキットにおける使用のための第1の組成物の製造における使用のために、GDF8阻害剤が提供される。
【0057】
一部の実施形態では、対象における体組成を変更する、脂肪量を減少させる、または除脂肪量を増加させるためのキットであって、GDF8阻害剤を含む第2の組成物をさらに含むキットにおける使用のための第1の組成物の製造における使用のために、アクチビンA阻害剤が提供される。
【0058】
一部の実施形態では、アクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を受けた対象における体組成の変更、脂肪量の減少、除脂肪量の増加、または増加した脂肪量もしくは減少した除脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害の処置における使用のために、GDF8阻害剤を含む第1の組成物が提供される。
【0059】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤を含む第2の組成物を受けた対象における体組成の変更、脂肪量の減少、除脂肪量の増加、または増加した脂肪量もしくは減少した除脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害の処置における使用のために、アクチビンA阻害剤を含む第1の組成物が提供される。
【0060】
一部の実施形態では、体組成を変更する、脂肪量を減少させる、除脂肪量を増加させる、または増加した脂肪量もしくは減少した除脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害を処置するための方法であって、アクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を投与する工程をさらに含む方法における使用のために、GDF8阻害剤を含む第1の組成物が提供される。
【0061】
一部の実施形態では、体組成を変更する、脂肪量を減少させる、除脂肪量を増加させる、または増加した脂肪量もしくは減少した除脂肪量によって特徴付けられるもしくはこれに関連する疾患もしくは障害を処置するための方法であって、GDF8阻害剤を含む第2の組成物を投与する工程をさらに含む方法における使用のために、アクチビンA阻害剤を含む第1の組成物が提供される。
【0062】
一部の実施形態では、体組成の変更、脂肪量の減少、除脂肪量の増加、増加した脂肪量または減少した除脂肪量によって特徴付けられるまたはこれに関連する疾患または障害の処置もしくは予防における使用のために、アクチビンA阻害剤およびGDF8阻害剤を含む組成物が提供される。
【0063】
本発明の他の実施形態は、後に続く詳細な説明の概説から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、プラセボと比較したLS平均およびSEにおける総除脂肪量のベースラインからのパーセント変化としての、12週間後の抗GDF8抗体REGN1033単独を受けている70歳以上のサルコペニア患者における臨床研究の結果を描写する棒グラフを示す。REGN1033を受けている患者は、プラセボ(n=65)と比較して、3種の投薬レジメンのそれぞれにおいて、12週間目に有意に増加した総除脂肪体重を示した。100mg抗GDF8抗体REGN1033 Q4W S.C.を受けている患者は、1.66%総除脂肪量の差、vs.プラセボを示した(n=62、P=0.0077)。300mg抗GDF8 Q4W SCを受けている患者は、1.78%総除脂肪量の差、vs.プラセボを示した(n=64、P=0.0043)。300mg Q2W SCを受けている患者は、2.29%総除脂肪量の差、vs.プラセボを示した(n=59、P=0.0004)。
【
図2A】
図2Aは、実施例2に従った48名の健康な閉経後女性の研究に使用されている昇順用量パネルによる表1を示す。抗GDF8抗体REGN1033および/または抗アクチビンA抗体REGN2477の単一静脈内用量を利用した。一次解析において、パネルにわたってプラセボおよび高用量組合せ群をプールし、表中の枠で囲まれた領域に示す通り、プラセボにおける12名の対象および高用量組合せにおける12名を得た。
【
図2B】
図2Bは、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後8週目の大腿筋肉体積(MRIにより測定)%変化を描写する棒グラフを示す。抗GDF8(6mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群により、プラセボからの大腿筋肉体積%変化の有意な増加が示された(
*名目上p<0.5、vs.プラセボ、
****名目上p<0.0001、vs.プラセボ)。
【
図2C】
図2Cは、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後8週目の総脂肪量(DXAにより測定)%変化を描写する棒グラフを示す。数値は、プラセボからの変化を示す。抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群により、総脂肪量%変化の有意な減少が示された(
*名目上p<0.05、vs.プラセボ)。
【
図3】
図3は、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のMRIによる大腿筋肉体積におけるベースラインからのLS平均(SE)パーセント変化を描写する折れ線グラフを示す。単一I.V.用量後4週間目に、抗GDF8(6mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+低用量抗アクチビンA(1mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群のそれぞれにより、プラセボからの大腿筋肉体積(筋肉内脂肪組織を除外し、MRIによって測定される)%変化の有意な増加が示された。単一I.V.用量後8週間目に、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群において、プラセボからの大腿筋肉体積%変化の有意な増加が示された(
*名目上p<0.05、
**名目上p<0.001)。群毎のN値は、
図2Aに示されている。
【
図4】
図4は、複数の個体に関するプラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量抗アクチビンA(10mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+低用量抗アクチビンA(1mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群における、ベースラインからの%変化としての健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のMRIによる大腿筋肉体積のパーセント変化(ベースラインからの)の個々のデータを描写する折れ線グラフを示す。大腿筋肉体積の増加は、REGN2477+REGN1033の組合せによる処置後に個々の対象において一貫して観察された。各処置群内で、異なる線は、異なる個体を示す。
【
図5】
図5は、6種の群におけるベースラインからの%パーセント変化LS(最小二乗)平均(SE)としての、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目の体肢除脂肪(体重)量(すなわち、腕および脚における除脂肪組織の和)を描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。4週間および8週間後に、抗GDF8(6mg/kg)+低用量抗アクチビンA(1mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群を含む3種の組合せ用量群のそれぞれが、プラセボと比較して、体肢除脂肪量の有意に増加した%変化LS平均差を示した(
*名目上p<0.05、
**名目上p<0.001)。群毎のN値は、
図2Aに示されている。
【
図6】
図6は、プラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量抗アクチビンA(10mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+低用量抗アクチビンA(1mg/kg)、抗GDF8(6mg/kg)+中用量抗アクチビンA(3mg/kg)、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目の平均(SE=標準誤差)総脂肪量パーセント(DXAによって測定される)変化を描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。高用量群、(抗GDF8(6mg/kg)+高用量抗アクチビンA(10mg/kg)は、4週目および8週目にプラセボと比較して、パーセント変化LS平均差としての総脂肪量の有意な低下を示した(
*名目上p<0.05)。アクチビンAおよびGDF8の両方の遮断は、DXAによって評価される総脂肪量の低下をもたらした。
【
図7】
図7は、プラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のアンドロイド脂肪量の平均(SE)パーセント変化を描写する折れ線グラフを示す。高用量REGN1033+REGN2477群は、4週目および8週目に、プラセボと比較して、DXAによるアンドロイド脂肪量の有意に低下したパーセント変化LS平均差を示した(
*名目上p<0.05)。群毎のN値は、
図2Aに示されている。アクチビンAおよびGDF8の両方の遮断は、DXAにより評価されるアンドロイド脂肪量の減少にも関連した。
【
図8】
図8は、プラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目の大腿筋肉体積(筋肉内脂肪組織および大血管を除外)のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。プラセボと比較すると、REGN2477+REGN1033中間および高用量群は、4週間および8週間目に大腿筋肉体積の有意に増加した平均%変化を示した(
*名目上p<0.05、
**名目上p<0.001)。
【
図9】
図9は、プラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群に関する、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目の総除脂肪量のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。 プラセボと比較すると、REGN2477+REGN1033中間および高用量群は、4週間および8週間目にプラセボと比較して、総除脂肪量の有意に増加した%変化を示した(
*名目上p<0.05)。
【
図10】
図10は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のkg単位の体肢除脂肪体重(aLBM方程式により計算)のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。REGN2477+REGN1033処置は、プラセボと比較して、4週間および8週間目の低、中間および高用量群のそれぞれにおいて、aLBM方程式)によって計算される体肢除脂肪体重(kg)の有意に増加した%変化をもたらした(
*p<0.05、
**p<0.001)。
【
図11】
図11は、プラセボ、抗GDF8(6mg/kg)、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8(6mg/kg)+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8(6mg/kg)+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のkg単位の総脂肪量のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。高用量組合せREGN2477+REGN1033処置群は、8週間目にプラセボ-0.65%と比較して、有意に減少した%総脂肪量を示した:-3.92%(高用量群)(
*名目上p<0.05)。
【
図12】
図12は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のcm
3単位の大腿筋肉体積(筋肉内脂肪組織および大血管を含む)のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。高および中間用量REGN2477+REGN1033処置群は、プラセボと比較して、4週間および8週間目に中間および高用量処置群において、筋肉内脂肪組織および大血管を含む大腿筋肉体積の有意に増加した%変化を示した(
*名目上p<0.05、
**名目上p<0.001)。
【
図13】
図13は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のkg単位の体肢除脂肪量(腕および脚の除脂肪量の和)のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。体肢除脂肪量は、4および8週間目に、REGN2477+REGN1033低、中間および高用量処置群のそれぞれにおいて、プラセボからの平均パーセント変化として有意に増加した(
*名目上p<0.05、
**名目上p<0.001)。
【
図14】
図14は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のkg単位のアンドロイド脂肪量のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。高用量REGN1033+REGN2477群は、4週目および8週目に、プラセボと比較して、DXAによるアンドロイド脂肪量の有意に低下した%変化を示した(
*名目上p<0.05)。
【
図15】
図15は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のcm
3単位の大腿筋肉内脂肪組織体積のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。高用量REGN1033+REGN2477群は、8週間目にプラセボと比較して、平均%変化としての増加した大腿筋肉内脂肪組織体積を示した(
*名目上p<0.05)。
【
図16】
図16は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目の筋肉内および筋肉周囲の脂肪組織(IMAT)の和のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。組合せREGN1033+REGN2477処置群は、4および8週目に、筋肉内および筋肉周囲の脂肪組織(IMAT)の和のLS平均パーセント変化とSEがプラセボと有意に異ならなかった。
【
図17】
図17は、プラセボ、抗GDF8、高用量(10mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+低用量(1mg/kg)抗アクチビンA、抗GDF8+中用量(3mg/kg)抗アクチビンA、および抗GDF8+高用量(10mg/kg)抗アクチビンA群を含む6種の群における、健康な閉経後女性における、抗アクチビンA抗体REGN2477および/または抗GDF8抗体REGN1033の単一I.V.用量後0、4および8週目のcm
3単位の皮下脂肪組織体積のLS平均パーセント変化とSEを描写する折れ線グラフを示す。群毎のN値は、
図2Aに示されている。REGN1033+REGN2477低および中間用量処置群は、8週間目にプラセボと比較して、皮下脂肪組織体積の有意に減少した%変化を示した(
*名目上p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明について記載する前に、記載されている特定の組成物、方法および実験条件は変動し得るため、本発明が、斯かる組成物、方法および条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書に使用されている用語法が、単に特定の実施形態について記載することを目的とし、限定を意図するものではないことも理解されたい。他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。
【0066】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、複数の参照を含む。よって、例えば、「1つの方法(a method)」の参照は、1つもしくはそれ以上の方法、ならびに/または本明細書に記載されているおよび/もしくは本開示を読めば当業者には明らかになるであろう種類の工程を含む。
【0067】
本明細書において、「約」という用語は、特定の列挙されている数値を参照して使用される場合、値が、列挙されている値から1%以下変動し得ることを意味する。例えば、本明細書において、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間のあらゆる値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0068】
本発明の実施において、本明細書に記載されている方法および材料と同様のまたは均等ないかなる方法および材料を使用することもできるが、好まれる方法および材料についてここに記載する。本明細書に言及されているあらゆる刊行物は、それらの全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0069】
抗体および抗体の抗原結合断片
「抗体」という用語は、本明細書において、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖である4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において、HCVRまたはVHと省略)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書において、LCVRまたはVLと省略)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1個のドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と命名されたより保存された領域が散りばめられた、相補性決定領域(CDR)と命名された高頻度可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序で配置された3個のCDRおよび4個のFRで構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施形態では、抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよく、または天然にもしくは人為的に改変することができる。アミノ酸コンセンサス配列は、2個以上のCDRのサイド・バイ・サイド解析に基づき定義することができる。
【0070】
抗体は、本明細書において、次の命名法に従って参照することができる:Fc接頭辞(例えば、「H1M」、「H2aM」、「H4H」)と、それに続く数的識別子(例えば、「10446」)と、それに続く「P」、「P2」または「N」接尾辞。よって、この命名法に従って、抗体は、本明細書において、例えば、「H4H10446P2」と称することができる。本明細書に使用されている抗体命名におけるH1M、H2MおよびH4H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H2aM」抗体は、マウスIgG2a Fcを有する一方、「H4H」抗体は、ヒトIgG4 Fcを有する。当業者であれば認めるであろうが、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG2a Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体等に変換することができる)が、いずれの場合であっても、可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであり、結合特性は、Fcドメインの性質に関係なく同一または実質的に同様であると予想される。
【0071】
「抗体」という用語は、本明細書において、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」等の用語は、本明細書において、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、いずれかの天然に存在する、酵素を用いて得ることができる、合成のまたは遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質分解による消化、または抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現が関与する組換え遺伝子操作技法等のいずれか適した標準技法を使用して、完全抗体分子から得ることができる。斯かるDNAは、知られている、および/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能である、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的に、または分子生物学技法を使用することにより操作して、例えば、1個もしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインを適した構成へと配置する、またはコドンを導入する、システイン残基を作製する、アミノ酸を改変、付加もしくは欠失させる等を為すことができる。
【0072】
抗原結合断片の非限定的な例として、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の高頻度可変領域(例えば、CDR3ペプチド等の単離された相補性決定領域(CDR))または制約FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ等)、小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP)およびサメ可変IgNARドメイン等、他の操作された分子も、本明細書において、表現「抗原結合断片」の内に包含される。
【0073】
抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも1個の可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、いずれのサイズまたはアミノ酸組成のものであってもよく、一般に、1個またはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するまたはそれとインフレームにある、少なくとも1個のCDRを含むであろう。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片において、VHおよびVLドメインは、いずれか適した配置で、互いに関連して位置することができる。例えば、可変領域は、二量体となり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有することができる。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VHまたはVLドメインを含有することができる。
【0074】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1個の定常ドメインに共有結合により連結された少なくとも1個の可変ドメインを含有することができる。本発明において使用されている抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非限定的な例示的な構成は、(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。上に収載されている例示的な構成のいずれかを含む可変および定常ドメインのいずれかの構成において、可変および定常ドメインは、互いに直接的に連結することができる、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域によって連結することができる。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子において隣接する可変および/または定常ドメインの間に可動性または半可動性連結をもたらす少なくとも2個の(例えば、5、10、15、20、40、60個以上の)アミノ酸からなることができる。さらに、本発明において使用されている抗体の抗原結合断片は、互いと、および/または1個もしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合(複数可)によって)非共有結合的に会合した、上に収載されている可変および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことができる。
【0075】
完全抗体分子および抗原結合断片は、単一特異性または多特異性(例えば、二特異性)であってもよい。多特異性抗体または抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも2個の異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別々の抗原にまたは同じ抗原における異なるエピトープに特異的に結合することができる。いずれかの多特異性抗体フォーマットを、当技術分野で利用できるルーチン技法を使用して、本明細書に記載されている抗体または抗原結合断片の文脈における使用に適応させることができる。
【0076】
本発明の組成物および方法において使用されている抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能することができる。「補体依存性細胞傷害」(CDC)は、補体の存在下における、本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞表面の結合された抗体を認識し、これにより、標的細胞の溶解をもたらす、細胞媒介性反応を指す。CDCおよびADCCは、当技術分野でよく知られており利用できるアッセイを使用して測定することができる(例えば、米国特許第5,500,362号および同第5,821,337号ならびにClynesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652~656頁(1998)を参照)。
【0077】
本明細書に記載されている抗体は、ヒト抗体および/もしくは組換えヒト抗体、またはこれらの断片を含むまたはこれからなることができる。「ヒト抗体」という用語は、本明細書において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含む。そうであるにもかかわらず、ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、ランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってin vitroで、または体細胞突然変異によってin vivoで導入された突然変異)を、例えば、CDR、特に、CDR3に含むことができる。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において、マウス等の別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含むことを意図しない。
【0078】
本明細書に記載されている抗体分子は、組換えヒト抗体またはその抗原結合断片を含むまたはこれからなることができる。「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書において、宿主細胞にトランスフェクトされる組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁を参照)、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングが関与する他のいずれかの手段によって調製、発現、作製もしくは単離される抗体等、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるあらゆるヒト抗体を含むことを意図する。斯かる組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態では、斯かる組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニックである動物が使用される場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)に付され、これにより、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来しこれに関係するが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然で存在しなくてもよい配列である。組換え抗体は、本発明の組成物および方法の追加的な実施形態において使用することができる。
【0079】
「単離された抗体」は、本明細書において、その天然環境の少なくとも1種の構成成分から同定および分離および/または回収された抗体を意味する。例えば、抗体が天然で存在するまたは天然で産生される生物、組織または細胞の少なくとも1種の構成成分から分離または除去された抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内のin situにおける抗体と共に、少なくとも1回の精製または単離工程に付された抗体も含む。ある特定の実施形態において、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてよい。単離された抗体は、本発明の組成物および方法の追加的な実施形態において使用することができる。
【0080】
サンプルの少なくとも約60~75%が、単一種のポリペプチドを示す場合、タンパク質またはポリペプチドは、「実質的に純粋である」、「実質的に均一である」または「実質的に精製される」。ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体または多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、典型的に、タンパク質サンプルの約50%、60、70%、80%または90%w/wを構成し、通常約95%、好ましくは99%を超えて純粋であろう。タンパク質純度または均一性は、タンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動と、それに続く、当技術分野でよく知られている染色によるゲルの染色による単一ポリペプチドバンドの可視化等、当技術分野でよく知られているいくつかの手段によって示すことができる。ある特定の目的のため、精製のための当技術分野でよく知られているHPLCまたは他の手段を使用することにより、より高い分解能をもたらすことができる。
【0081】
「ポリペプチドアナログまたはバリアント」という用語は、本明細書において、アミノ酸配列の部分に対し実質的な同一性を有する少なくとも25アミノ酸のセグメントで構成されており、次の特性のうち少なくとも1種を有するポリペプチドを指す:(1)適した結合条件下におけるGDF8への特異的結合、または(2)GDF8の生物学的活性を遮断する能力。典型的に、ポリペプチドアナログまたはバリアントは、天然に存在する配列に関して保存的アミノ酸置換(または挿入または欠失)を含む。アナログは、典型的に、少なくとも20アミノ酸長、少なくとも50、60、70、80、90、100、150または200アミノ酸長以上であり、多くの場合、全長の天然に存在するポリペプチドと同じ長さであってもよい。
【0082】
好まれるアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更し、(4)結合親和性を変更し、(4)斯かるアナログの他の物理化学的または機能的特性を付与または改変する、アミノ酸置換である。アナログは、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な突然変異を含むことができる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を、天然に存在する配列(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン(複数可)の外側のポリペプチドの部分)に生じることができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、アミノ酸置換えは、親配列に発生するヘリックスを壊す、または親配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊する傾向があるべきではない)。技術分野で認識されるポリペプチド二次および三次構造の例は、それぞれ参照によって本明細書に組み入れる、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton 1984 W.H.Freeman and Company、New York;Introduction to Protein Structure(Branden&Tooze編、1991、Garland Publishing、NY);およびThorntonら(et at.)、1991 Nature 354:105頁に記載されている。
【0083】
非ペプチドアナログは、製薬業界において、鋳型ペプチドの特性に類似した特性を有する薬物として一般的に使用されている。このような種類の非ペプチド化合物は、「ペプチドミメティック」または「ペプチド模倣薬」と命名される(例えば、参照によって本明細書に組み入れる、Fauchere(1986)J. Adv. Drug Res.15:29頁;およびEvansら(1987)J.Med.Chem.30:1229頁を参照)。コンセンサス配列の1個またはそれ以上のアミノ酸の、同じ種類のD-アミノ酸による系統的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を使用して、より安定したペプチドを生成することもできる。加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変種を含む制約ペプチドは、当技術分野で知られている方法(参照によって本明細書に組み入れる、Rizoら(1992)Ann.Rev.Biochem.61:387頁)によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することにより、生成することができる。
【0084】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的同一性」または「実質的に同一」という用語は、2種のペプチド配列が、デフォルトギャップ重量を使用してプログラムGAPまたはBESTFIT等により最適に整列されると、少なくとも約80%配列同一性、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または少なくとも約99%配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたアミノ酸置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないであろう。2種以上のアミノ酸配列が、保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性または類似性の程度を上向きに調整して、置換の保存的性質に関して補正することができる。この調整を行うための手段は、当業者によく知られている。例えば、本明細書に参照によって組み入れる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331頁を参照されたい。同様の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例として、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニンおよびヒスチジン;ならびに6)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好まれる保存的アミノ酸置換群を次に示す:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミン。あるいは、保存的置換えは、本明細書に参照によって組み入れるGonnetら(1992)Science 256:1443~45頁に開示されている、PAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有するいずれかの変化である。「中程度に保存的な」置換えは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて非負値を有するいずれかの変化である。
【0085】
配列同一性とも称される、ポリペプチドに関する配列類似性は、典型的に、配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失および他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、同様の配列をマッチさせる。例えば、GCGは、デフォルトパラメータで使用して、異なる生物種由来の相同ポリペプチド等の近縁のポリペプチドの間、または野生型タンパク質およびそのムテインの間の配列相同性または配列同一性を決定することができる、「Gap」および「Bestfit」等のプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1中のプログラムである、デフォルトまたは推奨パラメータを使用したFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせおよび検索配列の間で最良の重複の領域の整列およびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)、上記参照)。別の好まれるアルゴリズムは、本発明の配列を、異なる生物由来の非常に多くの配列を含有するデータベースと比較する場合、デフォルトパラメータを使用した、コンピュータプログラムBLAST、特に、blastpまたはtblastnである。例えば、それぞれを本明細書に参照によって組み入れる、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403~410頁およびAltschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389 402頁を参照されたい。
【0086】
相同性のために比較されるポリペプチド配列の長さは、一般に、少なくとも約16アミノ酸残基、少なくとも約20残基、少なくとも約24残基、少なくとも約28残基または少なくとも約35残基となるであろう。非常に多くの異なる生物由来の配列を含有するデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが好ましい。
【0087】
一部の実施形態では、本発明は、対象の体組成を変更するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0088】
一部の実施形態では、本発明は、対象における脂肪量の低下を誘導するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0089】
一部の実施形態では、本発明は、対象における筋量の増加を誘導するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0090】
一部の実施形態では、本発明は、対象の体組成を変更するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む組成物を、対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0091】
一部の実施形態では、本発明は、対象における脂肪量の低下を誘導するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む組成物を、対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0092】
一部の実施形態では、本発明は、対象における筋量の増加を誘導するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量のGDF8阻害剤、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0093】
一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。ヒト対象は、成人ヒト対象であってもよい。対象は、男性または女性対象であってもよい。対象は、健康な対象であってもよい。対象は、望ましくない脂肪量を患う対象であってもよい。対象は、増加した脂肪量、および/または減少した筋肉体積もしくは減少した除脂肪体重によって特徴付けられる疾患および障害を患う、または患うリスクがある対象であってもよい。対象は、閉経後女性対象であってもよい。対象は、40歳以上、50歳以上、60歳以上または70歳以上の男性対象または女性対象であってもよい。
【0094】
一部の実施形態では、本発明は、増加した脂肪量、および/または減少した筋肉体積もしくは減少した除脂肪体重によって特徴付けられる疾患および障害を処置または予防するために、GDF8阻害剤を含む組成物、およびアクチビンA阻害剤を含む組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0095】
本発明に係る一部の実施形態では、対象は、増加した脂肪量に関連し得る、少なくとも1種の疾患または障害を有する。一部の実施形態では、疾患または障害は、肥満、メタボリックシンドローム、栄養障害、高コレステロール、脂質異常症、心血管疾患、蜂巣炎、がん(結腸、食道、腎臓、膵臓、胆嚢、乳房または子宮内膜を含む)、多嚢胞性卵巣症候群、痛風、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、呼吸器障害、喘息、変形性関節症、白内障、うっ血性心不全、肥大心、高血圧/高血圧症、肺塞栓症、リンパ浮腫、胃食道逆流疾患、ヘルニア、慢性腎不全、尿失禁、結合組織疾患および脂肪肝疾患からなる群から選択することができる。別の実施形態では、疾患または障害は、サルコペニアであってもよい。
【0096】
GDF8阻害剤
本発明は、対象における体組成を変更し、脂肪量の低下を誘導し、除脂肪量を増加させるための方法、および対象における増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を含む。
【0097】
「GDF8」(「増殖分化因子-8」および「ミオスタチン」とも称される)という用語は、配列番号340のアミノ酸配列を有するタンパク質(成熟タンパク質)を意味する。本発明において、GDF8特異的結合タンパク質は、GDF8に特異的に結合するが、GDF3、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、BMP10、GDF11、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、Nodal等の他のActRIIBリガンドには結合しない。
【0098】
本明細書において、「GDF8阻害剤」は、in vitroまたはin vivoでヒトGDF8に結合しまたはこれと相互作用し、GDF8の正常な生物学的機能に干渉するまたはこれを阻害する、いずれかの薬剤である。GDF8阻害剤のカテゴリーの非限定的な例として、小分子GDF8アンタゴニスト、GDF8発現または活性の核酸に基づく阻害剤(例えば、siRNAまたはアンチセンス)、GDF8と特異的に相互作用するペプチドに基づく分子(例えば、ペプチボディ)、GDF8と特異的に相互作用する受容体分子、GDF8結合足場分子、GDF8に特異的に結合する受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質、および抗GDF8アプタマーまたはその部分が挙げられる。好まれる実施形態では、本発明の文脈において使用することができるGDF8阻害剤は、ヒトGDF8に特異的に結合する、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片である。抗GDF8抗体は、中和および/または遮断抗体を含む。抗GDF8中和および/または遮断抗体によって引き起こされる阻害は、適切なアッセイを使用して検出可能である限りにおいて、完全である必要はない。
【0099】
本明細書において、表現「抗GDF8抗体」は、多特異性抗原結合分子(例えば、二特異性抗体)も含み、多特異性抗原結合分子の少なくとも1個の結合ドメイン(例えば、「結合アーム(arm)」)は、GDF8に特異的に結合する。
【0100】
本発明の組成物および方法において使用することができる例示的な抗GDF8抗体は、例えば、REGN1033の別名でも知られる、完全ヒト抗GDF8抗体H4H1657N2を含む(例えば、米国特許第8,840,894号に表記されている通り、それぞれアミノ酸配列、配列番号360および配列番号368を有する重および軽鎖可変領域を含む抗GDF8抗体)。本発明の組成物および方法において使用することができる他のGDF8アンタゴニストは、US2006/0263354および米国特許第7,807,159号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、ATCC寄託命名PTA-6574を有する、例えば、2_112_1、または例えば、HCVR/LCVRアミノ酸配列、配列番号620および621を有する、例えば、2_112_Kと命名された抗体);米国特許第8,999,343号および米国特許出願公開第2013/0209489号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号622および623のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、12A5-5);米国特許出願公開第2013/0142788号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号624および625のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、10B3H8L5、ならびに10B3H8L5-Fc-disabled);米国特許第8,940,874号および同第7,261,893号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号626および627のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、スタムルマブ/MYO-29);米国特許第8,415,459号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号628および629のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、RK22/PF-0625616);米国特許第7,731,961号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号630のHCVRアミノ酸配列のCDRを有する、例えば、JA-16);米国特許第8,496,934号または同第7,888,486号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号631および632のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、RK35)、米国特許第8,992,913号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号633および634のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、OGD1.0.0);欧州特許第1773041(B1)号に表記されている通り、抗GDF8 Fab分子、ならびに例えば、米国特許第7,635,760号および同第8,063,188号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号635および636のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、C12、配列番号637および638のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、C12-N93Hおよび/または510C2)、米国特許第7,632,499号に表記されている通り、抗GDF8抗体(例えば、配列番号639および640のHCVR/LCVRアミノ酸配列を有する、例えば、41C1E4/ランドグロズマブ/LY2495655)を含む。一部の実施形態では、抗GDF8抗体は、ランドグロズマブの全長重鎖および全長軽鎖アミノ酸配列、例えば、それぞれ配列番号641および642を有することができる。一部の実施形態では、抗GDF8抗体は、例えば、Chothia定義により、それぞれ配列番号643/644/645/646/647/648に従って、ランドグロズマブの3個の重鎖CDR(HCDR)および3個の軽鎖CDR(LCDR)を含むことができる。
【0101】
一実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、360および376からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0102】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、322、368および384からなる群から選択される軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
【0103】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列を含み、HCVR/LCVR配列ペアは、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、114/322、360/368および376/384からなる群から選択される。
【0104】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列を含み、HCVR/LCVR配列ペアは、(HCVR/LCVR):21-E5(配列番号34/42);21-B9(配列番号18/26);21-E9(配列番号98/106);21-A2(配列番号2/10);22-D3(配列番号50/58);22-E6(配列番号66/74);22-G10(配列番号82/90);1A2(配列番号226/234);20B12(配列番号274/282);58C8(配列番号242/250);19F2(配列番号258/266);8D12-1(配列番号114/122);4E3-7(配列番号194/202);9B11-12(配列番号162/170);4B9(配列番号226/234);1H4-5(配列番号210/218);9B4-3(配列番号178/186);3E2-1(配列番号290/298);4G3-25(配列番号306/314);4B6-6(配列番号130/138);H4H1657N2(配列番号360/368);H4H1669P(配列番号376/384)からなる群から選択される。
【0105】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、重鎖相補性決定領域3(HCDR3)ドメインおよび軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含み、HCDR3ドメインは、配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、366および382からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有し、LCDR3ドメインは、配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、328、374および390からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する。別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8/16、24/32、40/48、56/64、72/80、88/96、104/112、120/128、136/144、152/160、168/176、184/192、200/208、216/224、232/240、248/256、264/272、280/288、296/304、312/320、120/328、366/374および382/390からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む。
【0106】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、重鎖CDR1(HCDR1)およびCDR2(HCDR2)ドメインならびに軽鎖CDR1(LCDR1)およびCDR2(LCDR2)ドメインを含み、HCDR1ドメインは、配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、362および378からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有し;HCDR2ドメインは、配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、364および380からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有し;LCDR1ドメインは、配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、324、370および386からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有し、LCDR2ドメインは、配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、326、372および388からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する。別の実施形態では、HCDR1、HCDR2およびHCDR3ドメインは、配列番号36/38/40、116/118/120、228/230/232、362/364/366および378/380/382からなる群から選択されるそれぞれのアミノ酸配列組合せを有し;LCDR1、LCDR2およびLCDR3ドメインは、配列番号44/46/48、124/126/128、236/238/240、370/372/374および386/388/390からなる群から選択されるそれぞれのアミノ酸配列組合せを有する。
【0107】
さらに別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片の重および軽鎖CDRドメイン(HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3)は、配列番号36/38/40/44/46/48(例えば、21-E5)、116/118/120/124/126/128(例えば、8D12)、228/230/232/236/238/240(例えば、1A2)、362/364/366/370/372/374(例えば、H4H1657N2)および378/380/382/386/388/390(例えば、H4H1669P)からなる群から選択されるアミノ酸配列組合せを有する。
【0108】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、114/322、360/368および376/384からなる群から選択される重および軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)アミノ酸配列ペア内に含有される重および軽鎖CDRドメインを含む。
【0109】
HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は、当技術分野でよく知られており、本明細書に開示されている指定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRの同定に使用することができる。CDRの境界の同定に使用することができる例示的な慣例は、例えば、Kabat定義、Chothia定義およびAbM定義を含む。一般用語において、Kabat定義は、配列可変性に基づき、Chothia定義は、構造的ループ領域の場所に基づき、AbM定義は、KabatおよびChothiaアプローチの間の折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268~9272頁(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するために、公開データベースも利用できる。
【0110】
一実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1、17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、289、305、359および375からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0111】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、281、297、313、321、367および383からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0112】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1/9、17/25、33/41、49/57、65/73、81/89、97/105、113/121、129/137、145/153、161/169、177/185、193/201、209/217、225/233、241/249、257/265、273/281、289/297、305/313、113/321、359/367および375/383からなる群から選択される核酸分子ペアによってコードされるアミノ酸配列を有するHCVR/LCVRペアを含む。
【0113】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、311、365および381からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、319、327、373および389からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む。一実施形態では、HCDR3/LCDR3ドメインペアは、配列番号7/15、23/31、39/47、55/63、71/79、87/95、103/111、119/127、135/143、151/159、167/175、183/191、199/207、215/223、231/239、247/255、263/271、279/287、295/303、311/319、119/327、365/373および381/389からなる群から選択される核酸配列ペアによってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0114】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、HCDR1およびHCDR2ドメインならびにLCDR1およびLCDR2ドメインを含み、HCDR1ドメインは、配列番号3、19、35、51、67、83、99、115、131、147、163、179、195、211、227、243、259、275、291、307、361および377からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、HCDR2ドメインは、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、363および379からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、LCDR1ドメインは、配列番号11、27、43、59、75、91、107、123、139、155、171、187、203、219、235、251、267、283、299、315、323、369および385からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、LCDR2ドメインは、配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、325、371および387からなる群から選択される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0115】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号35/37/39/43/45/47、115/117/119/123/125/127、227/229/231/235/237/239、361/363/365/369/371/373または377/379/381/385/387/389の核酸配列セットによってコードされるアミノ酸配列組合せを有する重および軽鎖CDRドメイン(HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3)を含む。
【0116】
好まれる実施形態では、GDF8に特異的に結合する抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号360を含む重鎖可変領域(HCVR)のHCDR、および配列番号368を含む軽鎖可変領域(LCVR)のLCDRを含む。別の実施形態では、GDF8に特異的に結合する抗GDF8抗体または抗原結合断片は、配列番号362、配列番号364および配列番号366を含む3個のHCDR、ならびに配列番号370、配列番号372および配列番号374を含む3個のLCDRを含む。
【0117】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIACORE(商標))によって測定される場合に約1nM以下の親和性(解離定数「KD」として表現)でGDF8に結合する、完全にヒトまたはヒト化抗体または抗体断片である。ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、約700pM以下;約500pM以下;約320pM以下;約160pM以下;約100pM以下;約50pM以下;約10pM以下;または約5pM以下のKDを示す。
【0118】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、ヒトGDF8に特異的に結合してこれを阻害し、GDF8誘導性ルシフェラーゼアッセイによって測定される場合に約10nM以下;約5nM以下;約3nM以下;約2nM以下;約1nM以下;約500pM以下;または約200pM以下のIC50を示す、完全にヒトまたはヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。
【0119】
一実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、改変されたグリコシル化パターンを有する。一部の適用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変が、有用となり得る、または例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるために、抗体は、オリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠く(Shieldら(2002)JBC 277:26733頁)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を為すことができる。
【0120】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、GDF8への特異的結合に関して、配列番号36/38/40/44/46/48、116/118/120/124/126/128、228/230/232/236/238/240、362/364/366/370/372/374または378/380/382/386/388/390からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3ドメイン組合せを含む別の抗体と競合する。別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、GDF8への特異的結合に関して、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、114/322、360/368または376/384のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む別の抗体と競合する。
【0121】
別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号36/38/40/44/46/48、116/118/120/124/126/128、228/230/232/236/238/240、362/364/366/370/372/374または378/380/382/386/388/390からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3ドメイン組合せを含む別の抗体によって認識されるGDF8におけるエピトープを認識する。別の実施形態では、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、114/322、360/368または376/384のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む別の抗体によって認識されるGDF8におけるエピトープを認識する。
【0122】
アクチビンA阻害剤
本発明は、対象における体組成を変更する、脂肪量の低下を誘導する、および/または除脂肪量を増加させるための方法、ならびに対象における増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、有効量のアクチビンA阻害剤を含む組成物を対象に投与する工程を含む方法を含む。
【0123】
本明細書において、「アクチビンA阻害剤」は、in vitroまたはin vivoでヒトアクチビンAに結合しまたはこれと相互作用し、アクチビンAの正常な生物学的機能に干渉するまたはこれを阻害する、いずれかの薬剤である。アクチビンA阻害剤のカテゴリーの非限定的な例として、小分子アクチビンAアンタゴニスト、アクチビンA発現または活性の核酸に基づく阻害剤(例えば、siRNAまたはアンチセンス)、アクチビンAと特異的に相互作用するペプチドに基づく分子(例えば、ペプチボディ)、アクチビンAと特異的に相互作用する受容体分子、アクチビンA結合足場分子、アクチビンAに特異的に結合する受容体のリガンド結合部分を含むタンパク質、および抗アクチビンAアプタマーまたはその部分が挙げられる。好まれる実施形態では、本発明の文脈において使用することができるアクチビンA阻害剤は、ヒトアクチビンAに特異的に結合する、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片である。抗アクチビンA抗体は、中和および/または遮断抗体を含む。抗アクチビンA中和および/または遮断抗体によって引き起こされる阻害は、適切なアッセイを使用して検出可能である限りにおいて、完全である必要はない。
【0124】
アクチビンは、βAおよび/またはβBサブユニットを含むホモおよびヘテロ二量体分子である。βAサブユニットは、配列番号617のアミノ酸配列を有し、βBサブユニットは、配列番号619のアミノ酸配列を有する。アクチビンAは、2個のβAサブユニットのホモ二量体であり;アクチビンBは、2個のβBサブユニットのホモ二量体であり;アクチビンABは、1個のβAサブユニットおよび1個のβBサブユニットのヘテロ二量体である。抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、βAサブユニットに特異的に結合する。βAサブユニットは、アクチビンAおよびアクチビンAB分子の両方に見出されるため、「抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片」は、アクチビンAと共にアクチビンAB(それとβAサブユニットとの相互作用のため)に特異的に結合することができる。したがって、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、アクチビンA、またはアクチビンAおよびアクチビンABに特異的に結合するが、アクチビンB、GDF3、GDF8、BMP2、BMP4、BMP7、BMP9、BMP10、GDF11、Nodal等、他のActRIIBリガンドには結合しない。
【0125】
一部の実施形態では、米国特許第9,718,881号に表記されている通り、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片が用いられる。本発明の組成物および方法において使用することができる例示的な抗アクチビンA抗体は、例えば、REGN2477の別名でも知られる、完全ヒト抗アクチビン抗体H4H10446P2(例えば、米国特許第9,718,881号に表記されている通り、それぞれアミノ酸配列、配列番号162および配列番号146を有する重および軽鎖可変領域を含む抗アクチビンA抗体)を含む。
【0126】
表2は、本発明の組成物および方法において使用することができる、選択された抗アクチビンA抗体の重および軽鎖可変領域アミノ酸配列ペア、ならびにそれらの対応する抗体識別子について表記する。対応する核酸配列識別子は、表3に表記されている。
【0127】
【0128】
【0129】
一実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号393、409、425、441、457、473、489、497、505、513、521、529、545、553、561、569、577、585および593からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0130】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号401、417、433、449、465、481、537および601からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0131】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号393/401、409/417、425/433、441/449、457/465、473/481、489/481、497/481、505/481、513/481、521/481、529/537、545/537、553/537、561/537、569/537、577/537、585/537および593/601からなる群から選択されるHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸(amino)配列ペアを含む。
【0132】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号399、415、431、447、463、479、495、503、511、519、527、535、551、559、567、575、583、591および599からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン;ならびに配列番号407、423、439、455、471、487、543および607からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む。
【0133】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号399/407、415/423、431/439、447/455、463/471、479/487、495/487、503/487、511/487、519/487、527/487、535/543、551/543、559/543、567/543、575/543、583/543、591/543および599/607からなる群から選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む。
【0134】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号395、411、427、443、459、475、491、499、507、515、523、531、547、555、563、571、579、587および595からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン;配列番号397、413、429、445、461、477、493、501、509、517、525、533、549、557、565、573、581、589および597からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン;配列番号403、419、435、451、467、483、539および603からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン;ならびに配列番号405、421、437、453、469、485、541および605からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメインを含む。
【0135】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号395-397-8-403-405-407;411-413-415-419-421-423;36-429-431-435-437-439;443-445-447-451-453-455;459-461-463-467-469-471;475-477-479-483-485-487;491-493-495-483-485-487;499-501-503-483-485-487;507-509-511-483-485-487;515-517-519-483-485-487;523-525-527-483-485-487;531-533-535-539-541-543;547-549-551-539-541-543;555-557-559-539-541-543(H4H10446P2);563-565-567-539-541-543;571-573-575-539-541-543;579-581-583-539-541-543;587-589-591-539-541-543;および595-597-599-603-605-607からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0136】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号393/401、409/417、425/433、441/449、457/465、473/481、489/481、497/481、505/481、513/481、521/481、529/537、545/537、553/537、561/537、569/537、577/537、585/537および593/601からなる群から選択される重および軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列ペア内に含有される重および軽鎖CDRドメインを含む。
【0137】
一実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号392、408、424、440、456、472、488、496、504、512、520、528、544、552、560、568、576、584および592からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0138】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号400、416、432、448、464、480、536および600からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0139】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、HCVRおよびLCVRを含み、HCVR/LCVRペアは、配列番号392/400、408/416、424/432、440/448、456/464、472/480、488/480、496/480、504/480、512/480、520/480、528/536、544/536、552/536、560/536、568/536、576/536、584/536および592/600からなる群から選択される核酸配列ペアによってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0140】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号398、414、430、446、462、478、498、502、510、518、526、534、550、558、566、574、582、590および598からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、ならびに配列番号406、422、435、454、470、486、542および606からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメインを含む。一実施形態では、HCDR3/LCDR3ドメインセットは、配列番号398/406、414/422、430/438、446/454、462/470、478/486、494/486、502/486、510/486、518/486、526/486、534/542、550/542、558/542、566/542、574/542、582/542、590/542および598/606からなる群から選択される核酸配列ペアによってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0141】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、HCDR1およびHCDR2ドメインならびにLCDR1およびLCDR2ドメインを含み、HCDR1ドメインは、配列番号394、410、426、442、458、474、490、498、506、514、522、530、546、554、562、570、578、586および594からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、HCDR2ドメインは、配列番号396、412、428、444、460、476、492、500、508、516、524、532、548、556、564、572、580、588および596からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、LCDR1ドメインは、配列番号402、418、434、450、466、482、538および602からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有し、LCDR2ドメインは、配列番号404、420、436、452、468、484、540および604からなる群から選択される核酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に同様の配列によってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0142】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号394/396/398/402/404/406、410/412/414/418/420/422、426/428/430/434/436/438、442/444/446/450/452/454、458/460/462/466/468/470、474/476/478/482/484/486、490/492/494/482/484/486、498/500/502/482/484/486、506/508/510/482/484/486、514/516/518/482/484/486、522/524/526/482/484/486、530/532/534/538/540/542、546/548/550/538/540/542、554/556/558/538/540/542、562/564/566/538/540/542、570/572/574/538/540/542、578/580/582/538/540/542、586/588/590/538/540/542および594/596/598/602/604/606からなる群から選択される核酸配列セットによってコードされるアミノ酸配列を有する重および軽鎖CDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)ドメインを含む。
【0143】
一実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号553/537のHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸(amino)配列ペアを含み、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号360/368のHCVRおよびLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸(amino)配列ペアを含む。
【0144】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、配列番号555-557-559-539-541-543(H4H10446P2)のアミノ酸配列をそれぞれ有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含み、抗GDF8抗体またはその抗原結合断片は、配列番号362/364/366/370/372/374(例えば、H4H1657N2)のアミノ酸配列をそれぞれ有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。
【0145】
別の実施形態では、抗アクチビンA抗体またはその抗原結合断片は、改変されたグリコシル化パターンを有する。一部の適用では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変が、有用となり得る、または例えば、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)機能を増加させるために、抗体は、オリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠く(Shieldら(2002)JBC 277:26733頁)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を為すことができる。
【0146】
本明細書に記載されている完全ヒト抗アクチビンAおよび/または抗GDF8抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1個またはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含むことができる。斯かる突然変異は、本明細書に開示されているアミノ酸配列を、例えば、公開抗体配列データベースから入手できる生殖系列配列と比較することにより、容易に確かめることができる。本発明の組成物および方法は、追加的な実施形態では、本明細書に開示されているアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を使用し、1個またはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1個またはそれ以上のアミノ酸は、対応する生殖系列残基(複数可)へと、または対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(天然または非天然)へと逆突然変異されている(斯かる配列変化は、「生殖系列逆突然変異」と本明細書で称される)。当業者であれば、本明細書に記載されている重および軽鎖可変領域配列から開始して、1個もしくはそれ以上の個々の生殖系列逆突然変異またはそれらの組合せを含む多数の抗体および抗原結合断片を容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、生殖系列配列に戻るように突然変異される。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見出される突然変異した残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に見出される突然変異した残基のみが、生殖系列配列に戻るように突然変異される。さらに、本発明の組成物および方法において使用される抗体および抗原結合断片は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2個以上の生殖系列逆突然変異のいずれかの組合せを含有することができる、すなわち、ある特定の個々の残基が、生殖系列配列に戻るように突然変異される一方で、生殖系列配列とは異なるある特定の他の残基は維持される。ひとたび得られると、1個またはそれ以上の生殖系列逆突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、改善された結合特異性、増加された結合親和性、改善または増強されたアンタゴニスト性またはアゴニスト性生物学的特性(場合によっては)、低下された免疫原性等、1種またはそれ以上の所望の特性に関して容易に検査することができる。この一般様式で得られる抗体および抗原結合断片は、本発明の内に包含される。
【0147】
本発明の組成物および方法は、追加的な実施形態では、1個またはそれ以上の保存的置換を有する本明細書に記載されているHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む、抗GDF8抗体および/または抗アクチビンA抗体(またはそれらの抗原結合断片)を使用する。例えば、本発明の組成物および方法において使用される抗GDF8抗体および/または抗アクチビンA抗体は、一部の実施形態では、本明細書に記載されているHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下等の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVRおよび/またはCDRアミノ酸配列を有する。
【0148】
二特異性抗体
二特異性抗体(bsAb)は、2種の抗体の特異性を組み合わせ、異なる抗原またはエピトープに共に結合する。2種以上の抗原認識エレメントが、単一抗体となるように操作される。本発明の方法の一実施形態では、組成物は、GDF8特異的結合ドメインおよびアクチビンA特異的結合ドメインを含む抗体を含む。(抗原)「特異的結合ドメイン」という用語は、本明細書において、(i)抗体分子の抗原結合断片、(ii)特定の抗原と特異的に相互作用するペプチド(例えば、ペプチボディ)、および/または(iii)特定の抗原に特異的に結合する受容体のリガンド結合部分を含むまたはこれからなるポリペプチドを含む。例えば、GDF8に特異的に結合する第1の重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)ペアを含む一方のアームと、アクチビンAに特異的に結合する第2のHCVR/LCVRペアを含む別のアームとを有する二特異性抗体が含まれる。
【0149】
二特異性抗体は、化学的架橋、ハイブリッドハイブリドーマ/クアドローマ、ノブイントゥホール(knobs into holes)、CrossMab、デュアル可変ドメイン免疫グロブリン、組換え操作(タンデム単鎖可変断片/ダイアボディ)およびドックアンドロック(dock and lock)を含む、知られている方法に従って調製することができる。本発明の文脈において使用することができる他の例示的な二特異性フォーマットは、例えば、IgG-scFv融合体、デュアル可変ドメイン(DVD)-Ig、共通軽鎖、CrossFab、(SEED)body、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、デュアル作用Fab(DAF)-IgG、およびMab2二特異性フォーマットを限定することなく含む(例えば、前述のフォーマットの概説のため、Kleinら、mAbs 4:6、1~11頁(2012)およびその中に引用されている参考文献を参照)。二特異性抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、例えば、直交性の化学的反応性を有する非天然アミノ酸が使用されて、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いでこれが自己集合して、定義された組成、結合価および幾何学を有する多量体の複合体となる(例えば、Kazaneら、J Am Chem Soc.135(1):340~346頁(2013)を参照)。
【0150】
特異的結合
「特異的に結合する」等の用語は、本明細書において、抗原特異的結合タンパク質または抗原特異的結合ドメインが、500pM以下の解離定数(KD)によって特徴付けされる、特定の抗原と複合体を形成し、通常の試験条件下で他の無関係抗原とは結合しないことを意味する。「無関係抗原」は、互いに95%未満のアミノ酸同一性を有するタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドである。2種の分子が、互いに特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴等を含む。例えば、本発明の文脈において使用されている場合、抗原特異的結合タンパク質または抗原特異的結合ドメインは、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて測定される場合に、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約4pM未満、約2pM未満、約1pM未満、約0.5pM未満、約0.2pM未満、約0.1pM未満または約0.05pM未満のKDで、特定の抗原(例えば、GDF8、アクチビンA)またはその部分に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0151】
(抗原の)抗体結合は、親和性の尺度である、KDを単位として定量化することができる。KD値が低いほど、抗体の結合親和性は高くなる。「KD」という用語は、本明細書において、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことを意図する。表面プラズモン共鳴を使用して、リガンド結合、例えば、抗体-抗原相互作用を測定することができる。
【0152】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書において、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用した、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変更の検出により、リアルタイム生体分子特異的相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。
【0153】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる、いずれかの決定基、好ましくは、ポリペプチド決定基を含む。ある特定の実施形態では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基等、分子の化学的に活性がある表面グループ分けを含み、ある特定の実施形態では、特異的な三次元構造的特徴および/または特異的な電荷特徴を有することができる。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。ある特定の実施形態では、抗体は、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物中のその標的抗原を優先的に認識する場合、抗原に特異的に結合すると言われる。例えば、KDが、10-8M以下、10-9M以下または10-10M以下である場合、抗体は、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0154】
ヒト抗体の調製
完全にヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成するための方法は、当技術分野で知られている。いずれの斯かる知られている方法を本発明の文脈において使用して、GDF8および/またはアクチビンAに特異的に結合するヒト抗体を作製することもできる。
【0155】
VELOCIMMUNE(商標)技術またはモノクローナル抗体を生成するための他のいずれかの知られている方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、GDF8および/またはアクチビンAに対する高親和性キメラ抗体が最初に単離される。後述する実験セクションの通り、抗体は、親和性、選択性、エピトープ等を含む望ましい特徴に関して特徴付けされ、選択される。マウス定常領域は、所望のヒト定常領域に置き換えられて、本発明の完全にヒト抗体、例えば野生型のまたは改変されたIgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は、特異的な用途に応じて変動し得るが、高親和性抗原結合および標的特異性特徴は、可変領域に存する。
【0156】
一般に、本発明の方法において使用される抗体は、非常に高い親和性を保有し、典型的には、固相に固定化されたまたは溶液相中の抗原への結合によって測定された場合に、約10-12~約10-9MのKDを保有する。
【0157】
医薬組成物および投与方法
本発明は、対象の体組成を変更するための方法を含む。本明細書において、語句「体組成を変更する」は、対象における除脂肪量、脂肪量および/または骨量のうち1種またはそれ以上の変化を指す。一部の実施形態では、対象における体組成は、有効量のGDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を対象に投与することにより変更することができる。除脂肪量は、例えば、大腿筋肉体積、体肢除脂肪体重または総除脂肪量等であってもよい。一部の態様では、大腿筋肉体積は、筋肉内脂肪組織および大血管を除外した大腿筋肉組織体積を指すことができる。一部の態様では、大腿筋肉体積は、筋肉内脂肪組織および大血管を含む大腿筋肉組織体積を指すことができる。一部の態様では、体肢除脂肪体重は、例えば、aLBM方程式によって計算することができる。一部の態様では、体肢除脂肪量は、腕および脚の除脂肪量の和によって計算することができる。脂肪量は、例えば、総脂肪量、アンドロイド脂肪量、筋肉内および筋肉周囲の脂肪組織(IMAT)の和、皮下脂肪組織体積、腕および脚の脂肪量の和、大腿筋肉内脂肪組織等であってもよい。骨量は、例えば、総骨塩密度(BMD)質量、総骨塩量(BMC)質量等であってもよい。一部の実施形態では、体組成の変更は、筋量の増加および/または脂肪量の低下を含む。一部の実施形態では、体組成の変更は、筋量の増加および脂肪量の低下を共に含む。一部の実施形態では、体組成の変更は、骨量が低下せず、筋量の増加および脂肪量の低下を共に含む。一部の実施形態では、体組成の変更は、骨塩含量の増加を含む。一部の実施形態では、体組成の変更は、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪量の減少を含む。一部の実施形態では、体組成の変更は、大腿筋肉内脂肪組織体積が低下せず、総脂肪量、アンドロイド脂肪量および/または皮下脂肪量の減少を含む。
【0158】
本発明は、対象における体組成を変更する、例えば、脂肪量の低下を誘導するための方法、および増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、有効量のGDF8阻害剤を含む第1の組成物、および有効量のアクチビンA阻害剤を含む第2の組成物を対象に投与する工程を含む方法を含む。第1および第2の組成物は、対象に同時にまたは逐次に投与することができる。第1および第2の組成物は、投与前に組み合わされて第3の組成物にすることもできる。よって、ある特定の実施形態では、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤の両方を含む組成物を、対象に投与することができる。斯かる組成物中のGDF8阻害剤は、例えば、抗GDF8抗体であってもよい。斯かる組成物中のアクチビンA阻害剤は、例えば、抗アクチビンA抗体であってもよい。
【0159】
本発明の医薬組成物は、適した担体、賦形剤、および適した移入、送達、耐性等をもたらす他の薬剤と共に製剤化される。数多くの適切な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方集に見出すことができる:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PA。このような製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)等)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(carbowax)(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。製剤中の活性成分が、製剤によって不活性化されず、製剤が、投与経路と生理学的に適合性であり許容できることを条件として、前述の混合物のいずれも、本発明に従った処置および治療において適切となり得る。Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照されたい。
【0160】
様々な送達系が知られており、本発明の医薬組成物の投与に使用することができ、例えば、リポソーム、微小粒子、マイクロカプセル中の被包、突然変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照)。投与方法として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。組成物は、いずれか簡便な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜裏層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜等)を介した吸収によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与することができる。
【0161】
本発明の医薬組成物は、標準の針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、容易に、本発明の医薬組成物の送達における用途を有する。斯かるペン型送達デバイスは、再利用可能または使い捨てであってもよい。再利用可能なペン型送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が全て投与されて、カートリッジが空になったら、空カートリッジは、容易に廃棄し、医薬組成物を含有する新たなカートリッジに置き換えることができる。次いで、ペン型送達デバイスを再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバーに保持された医薬組成物が予め充填された状態である。医薬組成物が使われてリザーバーが空になったら、デバイス全体が廃棄される。
【0162】
多数の再利用可能なペンおよびオートインジェクター型送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達における用途を有する。例として、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、ならびにOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達における用途を有する使い捨てペン型送達デバイスの例として、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)オートインジェクター(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey、L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0163】
ある特定の状況において、本発明の医薬組成物は、放出制御系において送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、上記参照;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201頁を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton, Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、放出制御系は、組成物の標的の近くに設置することができるため、全身性用量のごく一部を要求する(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release内、上記参照、2巻、115~138頁を参照)。他の放出制御系は、Langer、1990、Science 249:1527~1533頁による概説に記述されている。
【0164】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入等のための剤形を含むことができる。このような注射用調製物は、知られている方法によって調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、上に記載されている抗体またはその塩を、注射のために従来使用されている無菌水性培地または油性培地に溶解、懸濁または乳化することにより調製することができる。注射のための水性培地として、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性物質[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]等の適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる、グルコースおよび他の補助的薬剤を含有する生理食塩水、等張性溶液等が存在する。油性培地として、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて使用することができる、ゴマ油、ダイズ油等が用いられる。このように調製された注射剤は、好ましくは、適切なアンプル内に充填される。
【0165】
有利には、上に記載されている経口または非経口的使用のための医薬組成物は、活性成分の用量適合に適している単位用量の剤形へと調製される。単位用量の斯かる剤形は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射(アンプル)、坐剤等を含む。
【0166】
投薬量
対象に投与することができる活性成分(例えば、抗GDF8抗体および/または抗アクチビンA抗体)の量は、一般に、治療有効量である。「有効量」という用語は、特定の記述されている目的の達成をもたらす、活性成分、例えば、抗体または抗体の抗原結合断片の濃度または量である。「有効量」という用語は、「治療有効量」という用語と互換的に使用されており、記述されている治療効果の達成に有効な、活性成分、例えば、抗体またはその抗原結合断片の濃度または量を表す。(治療)有効量は、経験的に決定することができる。
【0167】
本明細書において、「治療有効量」または「有効量」という語句は、脂肪量の検出可能な減少をもたらす、抗原特異的結合タンパク質および/または抗原結合分子(例えば、抗体)の用量を意味する。有効量は、ある特定の実施形態では、次のパラメータのうち1種またはそれ以上の増加をもたらすこともできる:体重量、筋量(例えば、前脛骨[TA]筋量、腓腹[GA]筋量、腓腹四頭[Quad]筋量、体肢除脂肪体重等)、筋肉体積(例えば、大腿筋肉体積)、筋肉強度/力および/または筋肉機能、ならびにグルコース耐性。
【0168】
GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約2%~8%、少なくとも2.5%~6%、少なくとも3%~4%、または少なくとも約2.0%、少なくとも約2.5%、少なくとも約3.0%もしくは少なくとも約3.5%以上の総脂肪量の減少を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。例えば、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約3.5%以上の総脂肪量の減少を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。
【0169】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約2%~8%、少なくとも2.5%~6%、少なくとも3%~4%、または少なくとも約2.0%、少なくとも約2.5%、少なくとも約3.0%もしくは少なくとも約3.5%以上のアンドロイド脂肪量の減少を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。例えば、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約3.5%のアンドロイド脂肪量の減少を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、この量は、対照処置対象と比較して、少なくとも2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%以上のTAまたはGA筋量の増加ももたらす。
【0171】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約2%~8%、2.5%~6%、3%~4%、または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%もしくは少なくとも3.5%以上の大腿筋肉体積の増加を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。
【0172】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約2%~8%、2.5%~6%、3%~4%、または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%もしくは少なくとも3.5%以上の総除脂肪体重の増加を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。
【0173】
一部の実施形態では、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の「治療有効量」または「有効量」は、例えば、対象に投与されると、少なくとも約2%~8%、2.5%~6%、3%~4%、または少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%もしくは少なくとも3.5%以上の体肢除脂肪体重の増加を引き起こす、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤の量を含む。
【0174】
ある特定の実施形態では、この量は、対照処置対象と比較して、少なくとも2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%以上のTAまたはGA筋量の増加ももたらす。
【0175】
ある特定の実施形態では、抗GDF8抗体、抗アクチビンA抗体、またはGDF8およびアクチビンAに特異的に結合する二特異性抗体の(治療)有効量は、約0.05mg~約600mg;例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgのそれぞれの抗体であってもよい。用量は、投与されるべき対象の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路等に応じて変わり得る。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。
【0176】
個々の用量内に含有される抗体(例えば、抗GDF8抗体、抗アクチビンA抗体、またはGDF8およびアクチビンAに特異的に結合する二特異性抗体)の量は、患者体重量1キログラム当たりの抗体のミリグラム数(すなわち、mg/kg)を単位として表現することができる。例えば、本発明の方法に従って投与される第1、第2または第3の組成物中の抗GDF8抗体、抗アクチビンA抗体、および/または抗GDF8/抗アクチビンA二特異性抗体は、約0.0001~約50mg/kg患者体重量(例えば、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kg、10.0mg/kg、10.5mg/kg、11.0mg/kg、11.5mg/kg等)の用量で患者に投与することができる。
【0177】
GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)の有効量は、ある特定の実施形態では、少なくとも0.1mg/kg~約10gm/kg、1mg/kg~約1gm/kgおよび10mg/kg~100mg/kgからなる群から選択される投薬レジメンを含むことができる。アクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の有効量は、ある特定の実施形態では、少なくとも0.1mg/kg~約10gm/kg、1mg/kg~約1gm/kgおよび10mg/kg~100mg/kgからなる群から選択される投薬レジメンを含むことができる。
【0178】
GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)の有効量は、追加的な実施形態では、約0.01~約20mg/kg体重量、約0.1~約10mg/kg体重量および約0.1~約5mg/kg体重量の単一用量からなる群から選択される投薬レジメンを含むことができる。アクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の有効量は、追加的な実施形態では、約0.01~約20mg/kg体重量、約0.1~約10mg/kg体重量および約0.1~約5mg/kg体重量の単一用量からなる群から選択される投薬レジメンを含むことができる。特異的な一態様では、抗GDF8抗体の有効量は、約2mg/kg~10mg/kg、4mg/kg~8mg/kgまたは約6mg/kg対象の体重量であり、抗アクチビンA抗体の有効量は、0.5mg/kg~15mg/kg、2mg/kg~12mg/kg、約3mg/kgまたは約10mg/kg対象の体重量である。
【0179】
本発明の方法に従って投与される第1、第2および第3の組成物は、ある特定の実施形態では、等しい量のGDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)および/またはアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)を含むことができる。あるいは、組成物中のGDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)の量は、アクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の量に満たないまたはこれを超えることができる。GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)の有効量は、アクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)と組み合わせた場合、別々の組成物中よりも低くなることができる。アクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)の有効量は、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)と組み合わせた場合、別々の組成物中よりも低くなることができる。当業者であれば、ルーチンの実験法を使用して、所望の治療効果の産生に必要な、組成物中の個々の構成成分の適切な量を決定することができるであろう。
【0180】
本開示の態様
本開示は、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を使用して、対象における脂肪量を低下させる(脂肪量の低下を誘導する)ための、組成物、キットおよび方法を提供する。本開示は、また、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を使用して、対象における増加した脂肪量に関連するまたはこれによって特徴付けられる疾患、障害および/または状態を処置するための、組成物、キットおよび方法を提供する。好まれる実施形態では、GDF8阻害剤は、GDF8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0181】
治療方法
本発明は、GDF8および/またはアクチビンAに特異的に結合することにより、体組成を変更するための方法、例えば、対象における脂肪量の低下を誘導するための方法、対象における筋量を増加させるための方法、および増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法を含む。例えば、本発明は、対象に、i)抗GDF8抗体を含む組成物および抗アクチビンA抗体を含む組成物、またはii)抗GDF8抗体および抗アクチビンA抗体の両方を含む組成物、またはiii)GDF8に特異的に結合するHCVR/LCVRペアを含む第1の可変ドメイン、およびアクチビンAに特異的に結合するHCVR/LCVRペアを含む第2の可変ドメインを含む二特異性抗体を含む組成物を投与することにより、対象における脂肪量の低下を誘導するため、対象における筋量の増加を誘導するための方法、および対象における増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法を含む。本発明のこれらの態様の文脈において、本明細書に開示または参照されているGDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤のいずれかを使用することができる。
【0182】
GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を対象に投与する工程を含む方法において、GDF8阻害剤(例えば、抗GDF8抗体)およびアクチビンA阻害剤(例えば、抗アクチビンA抗体)は、同じまたは実質的に同じ時点に、例えば、単一の治療投薬量(第3の組成物)として、または互いに同時にもしくは約5分間未満の内に投与される2種の別々の投薬量(第1および第2の組成物)として対象に投与することができる。あるいは、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤(第1および第2の組成物)は、逐次に、例えば、互いに約5分間を超える時間を空けて別々の治療投薬量として対象に投与することができる。
【0183】
本発明に係る方法の対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定される総脂肪量の低下であってもよい。
【0184】
別の実施形態では、本発明に係る方法の対象における脂肪量の低下は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)によって測定されるアンドロイド脂肪量(すなわち、身体上部/中心部に関連する内臓脂肪)の低下である。アンドロイド肥満において、対象は、対象の腹部領域周囲に脂肪を貯蔵する。アンドロイド肥満は、胸部上部(前面または背面)、頸部のうなじ区域、さらには肩部のような、体幹上部の他の区域において顕在化する場合もある。アンドロイド肥満である対象は、心疾患およびメタボリックシンドロームのような肥満関連疾患/障害のリスクがより大きい。痛風、動脈関連疾患(高血圧による)および多くの種類のがんを発症する見込みも、アンドロイド肥満を示す対象における中心部型の脂肪分布に関連付けられる。
【0185】
体脂肪評価は、正確さおよび精度が変動する。一般的な人体計測的尺度は、体重量、腹囲、および皮脂厚計を使用した皮下脂肪測定を含む。より複雑な方法は、生体電気インピーダンス解析(BIA)、BOD PODおよび二重エネルギーX線吸収測定法(DEXAまたはDXA)を含む。DXAは、体脂肪および筋肉を推定する際に骨塩量を考慮するため、特に正確かつ有効である。DEXA走査は、異なる区域の脂肪分布を評価して、ボディ・マス・インデックスとは別個のものであるアンドロイド/ガイノイド脂肪比を決定することができる。DXAは、総脂肪量、全身筋量、内臓脂肪(臓器周囲の脂肪)レベル、筋肉内脂肪(筋肉の間の脂肪)、総骨塩密度を測定することができ、さらには領域性の分析を提供することができる。最後に、DXAは、インスリン抵抗性増加に関連する体脂肪の分布を正確に評価することができる。
【0186】
副作用の回避
本発明は、対象における体組成を変更する、例えば、脂肪量の低下を誘導するための方法、および増加した脂肪量によって特徴付けられる疾患または障害を処置するための方法であって、例えば、米国特許第8,871,209号に表記されている通り、複数(例えば、3種以上)のActRIIBリガンドに結合する分子の投与に関連する有害副作用を引き起こすことなく、GDF8阻害剤およびアクチビンA阻害剤を対象に投与する工程を含む方法を含む。例えば、ACE-031(Acceleron Pharma、Inc.、Cambridge、MA)と称される臨床用分子は、IgG Fcドメインに融合されたActRIIBの細胞外部分(この分子は、「ActRIIB-Fc」とも本明細書で称される)からなる多量体である。ActRIIB-Fcは、GDF8と共に、例えば、アクチビンA、アクチビンB、GDF11、BMP9、BMP10およびTGFβ等の他のActRIIBリガンドに結合し、ヒト患者に投与された場合に、様々な有害副作用を引き起こすことが知られている。例えば、第Ib相昇順用量研究における閉経後女性へのACE-031の投与は、望ましくないヘモグロビン増加およびFSHレベル減少を引き起こすことが示された。加えて、筋ジストロフィー小児患者におけるACE-031の第II相研究は、鼻および歯肉出血を含む有害効果により中断された。拡張された血管も、ActRIIB-Fcで処置された患者において観察される。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を患う男児におけるACE-031の効果は、除脂肪体重増加および脂肪量低下の傾向を実証したが、非筋肉関連の有害事象が、研究中断の決断に寄与した(Campbellら、2017 Muscle Nerve 55:458~464頁)。GDF8およびアクチビンAを特異的に阻害する(例えば、抗GDF8抗体および抗アクチビンA抗体を投与することにより)が、アクチビンB、GDF11、BMP9、BMP10およびTGFβ等の他のActRIIBリガンドは阻害しないことにより、ActRIIB-Fc等の非特異的アクチビン結合剤に関連する有害副作用を引き起こすことなく、脂肪量の低下の増加がもたらされる。
【0187】
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態において、本発明の組成物(例えば、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤、例えば、抗GDF8抗体および/もしくは抗アクチビンA抗体、またはGDF8およびアクチビンAに対する二特異性抗体を含む組成物)の複数用量を、定義された時間経過にわたって対象に投与することができる。本発明の本態様に係る方法は、本発明の組成物(複数可)の複数用量を対象に逐次に投与する工程を含む。本明細書において、「逐次に投与する」は、本発明の組成物の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日間、数週間または数カ月間)だけ離れた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、第1および/もしくは第2の組成物;または第3の組成物の初回用量;続いて、第1および/もしくは第2の組成物;または第3の組成物の1つまたはそれ以上の二次用量;ならびに場合により、続いて、第1および/もしくは第2の組成物;または第3の組成物の1つまたはそれ以上の三次用量を患者に逐次に投与する工程を含む方法を含む。
【0188】
「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」という用語は、本発明の組成物の投与の時系列を指す。よって、「初回用量」は、処置レジメンの初めに投与される用量であり(「ベースライン用量」とも称される);「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次および三次用量は全て、同じ量の活性成分(複数可)、例えば、抗GDF8抗体および/または抗アクチビンA抗体を含有することができるが、一般に、投与頻度の観点から互いに異なるであろう。しかし、ある特定の実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含有される活性成分(複数可)の量は、処置経過において互いに変動するであろう(例えば、適宜、多くまたは少なく調整される)。
【0189】
本発明の例示的な一実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量から1~30日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30日以上)後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書において、一連の複数の投与において、介在する用量なしで、この一連のすぐ次の用量の投与の前に、対象に投与される本発明の組成物の用量(複数可)を意味する。
【0190】
本発明の本態様に係る方法は、本発明の組成物のいずれかの数の二次および/または三次用量を患者に投与する工程を含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8以上)の二次用量が、患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが、患者に投与される。他の実施形態では、2以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8以上)の三次用量が、患者に投与される。
【0191】
複数の二次用量が関与する実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各二次用量は、直前の用量から1~29日後に患者に投与することができる。同様に、複数の三次用量が関与する実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与することができる。例えば、各三次用量は、直前の用量から1~60日後に患者に投与することができる。あるいは、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの経過にわたって変動し得る。投与頻度は、臨床試験に従って個々の患者の必要に応じて、医師により処置経過において調整することもできる。
【0192】
一実施形態では、対象は、予備的DXAに付され、次いで、抗GDF8抗体および抗アクチビンA抗体(または抗GDF8抗体を含む組成物および抗アクチビンA抗体を含む組成物)を含む組成物を受け、次いで、追跡DXAに付される。脂肪量が、追跡DXAにおいて測定可能に低下されない場合(予備的DXAと比較して)、対象は、再度、組成物(複数可)を受けることができる。その後の投薬の量および投与頻度は、追加的な実施形態では、追跡DXAの結果に基づき変動する場合がある。
【0193】
併用療法
本発明の方法は、ある特定の実施形態において、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤を含む組成物と有利に組み合わせることができる、1種またはそれ以上の追加的な治療剤を対象に投与する工程を含む。本明細書において、表現「と組み合わせる」は、追加的な治療剤(複数可)が、GDF8阻害剤および/またはアクチビンA阻害剤を含む医薬組成物の前に、その後にまたはそれと同時に投与されることを意味する。「と組み合わせる」という用語は、GDF8阻害剤、アクチビンA阻害剤またはその両方と、第2の治療剤との逐次または付随的投与も含む。「治療剤」という用語は、特異的な治療法を含むことも意味する。
【0194】
追加的な治療剤は、例えば、別のGDF8アンタゴニスト/阻害剤、別のアクチビンAアンタゴニスト/阻害剤、増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤および細胞傷害性/細胞分裂阻害性薬剤、IL-1アンタゴニスト(例えば、US6,927,044に表記されている通りのIL-1アンタゴニストを含む)、IL-6アンタゴニスト、IL-6Rアンタゴニスト(例えば、US7,582,298に表記されている通りの抗IL-6R抗体を含む)、IL-13アンタゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-9アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、CD48アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト(例えば、US7,531,637に表記されている通りのものを含む)、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)アンタゴニスト(例えば、US2011/027468に表記されている通りのものを含む)、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)抗生物質、外用コルチコステロイド、タクロリムス、ピメクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、クロモグリク酸ナトリウム、プロテイナーゼ阻害剤、全身性コルチコステロイド、全身性免疫療法、抗ヒスタミン剤、化学療法、光療法、またはこれらの組合せであってもよい。
【0195】
さらなる実施形態では、本発明は、組成物を特色とし、追加的な治療剤は、(1)セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン等、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤;(2)コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤;(3)リポタンパク質異化反応を増加させる、ナイアシン;(4)低密度リポタンパク質(LDL)レベルを低下させ、高密度リポタンパク質(HDL)およびTGレベルを改善し、非致死性心発作の数を低下させる、フィブレートまたは両親媒性カルボン酸;ならびに(5)22-ヒドロキシコレステロール等、コレステロール排除における役割を果たす、LXR転写因子の活性化因子、またはエゼチミブプラスシンバスタチン等の固定された組合せ;スタチンと胆汁樹脂(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、ナイアシン、プラス、スタチンの固定された組合せ(例えば、ナイアシンとロバスタチン);またはオメガ-3-脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)等の他の脂質低減剤との組合せからなる群から選択される。
【0196】
またさらなる実施形態では、第2の治療剤は、グルカゴンの1種もしくはそれ以上の他の阻害剤/アンタゴニスト、またはグルカゴン受容体の阻害剤/アンタゴニストと共に、ANGPTL8の阻害剤(例えば、抗ANGPTL8抗体)等、他の分子の阻害剤と共に、ANGPTL3(例えば、抗ANGPTL3抗体)、ANGPTL4、ANGPTL5、ANGPTL6、アポリポタンパク質C-III(APOC3とも称される;例えば、US8530439、US7750141、US7598227に記載されているAPOC3の阻害剤、およびISIS-APOCIIIRxとも称されるボラネソルセンを参照)、ならびに脂質代謝、特に、コレステロールおよび/またはトリグリセリド恒常性に関与する、プロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)等、他の分子の阻害剤から選択される。これらの分子の阻害剤は、これらの分子に特異的に結合し、それらの活性を遮断する、小分子、アンチセンス分子および抗体を含む。
【0197】
追加的な治療剤は、さらなる実施形態では、必要であれば、根底にある状態に伴う症状を寛解および/または低下させるために、鎮痛剤、Cox-2阻害剤等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む抗炎症剤、その他からなる群から選択することができる。
【0198】
追加的な治療剤(複数可)は、本明細書に記載されている第1および/もしくは第2の;または第3の組成物(複数可)の投与の前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。本開示の目的のため、斯かる投与レジメンは、第2の治療活性がある構成成分「と組み合わせた」抗GDF8抗体および/または抗アクチビンA抗体の投与と考慮することができる。
【実施例】
【0199】
次の実施例は、当業者に、本発明の方法および組成物を作製および使用する仕方についての完全な開示および記載を提供するために提示されており、本発明者らが自身の発明と考慮するものの範囲の限定を意図するものではない。使用されている数(例えば、量、温度等)に関する精度を確実にするための試みが為されたが、いくつかの実験誤差および偏差が説明されるべきである。他に断りがなければ、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはその前後である。
【実施例1】
【0200】
抗GDF8単独は、臨床研究において総除脂肪量を最大3%増加させた:サルコペニア第2相データ
サルコペニアを有する男性および閉経後女性を含む70歳以上の患者において、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照インターベンショナル研究第2相臨床治験を行った。患者を、100mg抗GDF8抗体、Q4W s.c.(n=62);300mg抗GDF8抗体Q4W s.c.(n=64)または300mg抗GDF8抗体Q2W s.c.(n=59)のいずれかの皮下抗GDF8抗体REGN1033(H4H1657N2)単独で、またはプラセボ(n=65)で12週間処置した。
図1に示す通り、また、
図1および表4に示す通り、3用量のそれぞれにおいてREGN1033単独を使用した場合、12週間後の患者において、プラセボと比較した総除脂肪体重の有意な増加が示された。
【0201】
【0202】
強度および機能における効果は変動した。抗GDF8は一般に、安全であり、十分な耐容性を示した(反応は、あるとしても、軽度であった)。表4は、100mgまたは300mg用量のいずれかのREGN1033を受けている患者が、プラセボから12週目データへの%変化として、有意に増加した総除脂肪量を示したことを示す。抗GDF8抗体REGN1033単独は、本研究において総除脂肪体重を最大3%増加させた。300mgレジメンは、総およびアンドロイド脂肪量の減少ももたらした。
【実施例2】
【0203】
抗GDF8および抗アクチビンAの組合せのファースト・イン・ヒューマン単一昇順用量研究
ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、昇順用量研究を開始して、静脈内抗GDF8抗体および抗アクチビンA抗体の組合せvs.個々の構成成分の耐容性および体組成における効果を評価した。
【0204】
本研究の第一目的は、45~70歳の健康な閉経後女性における、単独での、および抗GDF8抗体(例えば、H4H1657N2=REGN1033)と組み合わせた、抗アクチビンA抗体(例えば、H4H10446P2=REGN2477)の安全性および耐容性を評価することであった。
【0205】
本研究の第二目的は、次のものを含んだ:磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される大腿筋肉体積における、REGN2477単独、REGN1033単独、およびREGN2477+REGN1033の組合せの効果の評価、ならびに二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)によって測定される総および領域性体組成における、REGN2477単独、REGN1033単独、およびREGN2477+REGN1033の組合せの効果の評価。
【0206】
研究設計
本研究は、健康な閉経後女性における単独での、およびREGN1033(抗GDF8)と組み合わせた、静脈内REGN2477(抗アクチビンA)の安全性、耐容性および薬力学を評価するための、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、昇順用量研究であった。
【0207】
総計48名の対象を、次の4種の逐次昇順REGN2477 IV用量パネルのうち1種へとランダム化し、8名の対象を、6:2比で、最初の3種のパネル(パネルA、BおよびC)のそれぞれへとランダム化し、24名の対象を、1:1:1:1比(それぞれ6名の対象)で、パネルDへとランダム化した。
・ パネルA:4名の対象 REGN1033(6mg/kg IV)+REGN2477低用量(1mg/kg IV)または2名の対象 プラセボ
・ パネルB:4名の対象 REGN1033(6mg/kg IV)+REGN2477中間用量(3mg/kg IV)または2名の対象 プラセボ
・ パネルC:4名の対象 REGN1033(6mg/kg IV)+REGN2477高用量(10mg/kg IV)または2名の対象 プラセボ
・ パネルD:REGN1033(6mg/kg IV+REGN2477高用量(10mg/kg IV)プラセボ、REGN2477(10mg/kg IV)またはREGN1033(6mg/kg IV)
【0208】
対象は、抗GDF8抗体REGN1033および/または抗アクチビンA抗体REGN2477の一方または両方の単一静脈内用量を受けた。一次解析において、プラセボおよび高用量組合せ群をパネルにわたってプールし、
図2Aに示す通り、プラセボに12名の対象を、高用量組合せに12名の対象を得た。
図2Aに示す投薬スケジュールを、その後の
図2B~
図17のそれぞれに示す研究において使用した。
【0209】
対象は、最大28日間のスクリーニング期間に参加し、続いて、1日目にベースラインおよび処置来診、ならびに113日間の追跡期間に参加した。
【0210】
効能および安全性解析
フル・アナリシス・セット(FAS)は、全ランダム化対象を含む;これは、割り当てられた処置に基づく(ランダム化された通り)。FASを使用して、効能エンドポイントを解析した。セーフティー・アナリシス・セット(SAF)は、いずれかの治験薬を受けた全ランダム化対象を含む;これは、受けた処置に基づく(処置された通り)。処置コンプライアンス/投与および全臨床安全性変数は、SAFを使用して解析した。
【0211】
効能変数は、次のものを含んだ:磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される、筋肉内脂肪組織および大血管を除外したおよび含む大腿筋肉組織体積;二重X線吸収測定法(DXA)によって測定される総除脂肪量;DXAによって測定される体肢除脂肪体重(aLBM方程式によって計算);ならびにDXAによって測定される総脂肪量。
【0212】
下の表5の通り、対象の人口統計学およびベースライン特徴は、処置群にわたってバランスをとった:
【0213】
【0214】
統計学的方法
固定された効果としての処置群および連続共変数としてのベースライン値による共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、フル・アナリシス・セット(FAS)におけるベースラインから4または8週目のいずれかへの効能変数のパーセント変化および変化を解析した。処置群毎の4週目および8週目の最小二乗平均と、対応する標準誤差、信頼区間、および処置比較のためのp値を、このモデルから得た。パネルにわたってプラセボ対象をプールした。欠測効能データは補完しなかった。本研究において多重検定のための調整は適用されない。
【0215】
結果
総計48名の対象をランダム化し、治験薬を投与し、本研究を完了した。REGN2477+REGN1033高用量群における1名の対象は、「注入部位腫脹」の有害事象により治験薬の注入を中断した。
【0216】
効能
アクチビンAおよびGDF8の両方の組合せの遮断は、
図2Bおよび
図2Cに示す通り、8週目に大腿筋肉体積を増加させ、脂肪量を減少させた。最大の効果は、最高用量組合せにおいて観察された。
【0217】
図2Bは、閉経後女性における単一用量後8週間目の、MRIによる大腿筋肉体積の%変化を示す棒グラフを示す。数は、プラセボからの変化を示す。
*は、名目上p<0.05 vs.プラセボを示す;
****は、名目上p<0.0001 vs.プラセボを示す。抗アクチビンA抗体および/または抗GDF8抗体のいずれかのmg/kgとしての単一用量の量は、棒グラフの下に示す。中間および高用量組合せにおけるREGN2477+REGN1033による処置は、プラセボと比較して、用量関連様式で、有意に増加した大腿筋肉体積(それぞれp<0.05;p<0.0001)をもたらした。高用量パネルにおける対象は、8週目に、プラセボによる0.88%に対し、ベースラインからの%変化として最大7.73%を示した。
【0218】
図2Cは、閉経後女性における単一用量後8週間目の、DXAによる総脂肪量の%変化を示す棒グラフを示す。数は、プラセボからの変化を示す。
*は、名目上p<0.05 vs.プラセボを示す;
****は、名目上p<0.0001 vs.プラセボを示す。抗アクチビンA抗体および/または抗GDF8抗体のいずれかのmg/kgとしての単一用量の量は、棒グラフの下に示す。高用量REGN2477+REGN1033組合せによる処置は、プラセボと比較して、有意に減少した総脂肪量(p<0.05)をもたらした。
【0219】
図3に示す通り、抗GDF8抗体REGN1033と組み合わせた抗アクチビンA抗体REGN2477は、大腿筋肉体積の用量依存性増加をもたらした。筋肉間脂肪組織および大血管を除外する、MRIにより測定された大腿筋肉体積結果は、下の表6に同様に要約されている。中および高用量REGN2477+REGN1033組合せによる処置は、表6に示す通り、プラセボと比較して、有意に増加した大腿筋肉体積(p<0.05)をもたらした。
【0220】
【0221】
表4に示す通り、中間および高用量組合せにおけるREGN2477+REGN1033による処置は、プラセボと比較して、用量関連様式で、有意に増加した大腿筋肉体積をもたらした。
【0222】
図4は、大腿筋肉体積の増加が、抗アクチビンA+抗GDF8の組合せによる処置後に、個々の対象において一貫して観察されたことを示す。各処置群内で、異なる線は、異なる個体を示す。
【0223】
抗アクチビンA抗体REGN2477+抗GDF8抗体REGN1033の組合せによる、体肢除脂肪量(腕および脚の除脂肪量の和)における効果のパターンは、
図5に示す通り、大腿筋肉体積に観察されるパターンと同様であった。DXAにより測定された体肢除脂肪量結果は、表7に同様に要約されている。中および高投薬組合せは、表7に示す通り、プラセボと比較して、体肢除脂肪量を有意に増加させた。
【0224】
【0225】
図6に示す通り、アクチビンAおよびGDF8の両方の遮断は、DXAによって評価される通り、総脂肪量の低下をもたらした。抗GDF8抗体REGN1033および抗アクチビンA抗体REGN2477の高用量組合せは、8週目にプラセボと比較して、DXAによる総脂肪量を有意に低下させた(
*p<0.05)。DXAにより測定された総脂肪量結果は、下の表8に同様に要約されている。
【0226】
【0227】
アクチビンAおよびGDF8の遮断は、
図7に示す通り、DXAによって評価される通り、アンドロイド脂肪量の減少に関連することも見出された。抗GDF8抗体REGN1033および抗アクチビンA抗体REGN2477の高用量組合せは、8週目にプラセボと比較して、DXAによるアンドロイド脂肪量を有意に低下させた(
*p<0.05)。
【0228】
さらなる効能結果は、
図8~
図17に示し、下表に要約する。REGN2477+REGN1033高、中間および低用量は、
図2Aに示す。
【0229】
プラセボと比較して、REGN2477+REGN1033中間(p<0.05)および高用量群(p<0.001)は、筋肉内脂肪組織および大血管を除外して、有意に増加した大腿筋肉体積を示した(
図8)。大腿筋肉体積は、8週間目にプラセボ群における0.88%と比較して、REGN2477+REGN1033高用量群において7.73%増加した(名目上p<0.001)。プラセボと比較して、中間用量のREGN2477+REGN1033およびREGN1033単独も、大腿筋肉体積を有意に増加させた。大腿筋肉体積の増加は、用量応答性様式で、組合せで処置された個々の対象において一貫して観察された(データ図示せず)。
【0230】
プラセボと比較して、REGN2477+REGN1033高用量群は、DXAによる有意に増加した総除脂肪量を示した(p<0.05)(
図9)。
【0231】
体肢除脂肪体重(aLBM方程式により計算)は、プラセボと比較して、組合せREGN2477+REGN1033処置群のそれぞれにおいて有意に増加された(低用量p<0.05、中間および高用量群p<0.001)(
図10)。体肢除脂肪体重は、8週間目にプラセボ群における0.76%と比較して、REGN2477+REGN1033中間用量群においてベースラインから7.15%増加した。同様に、体肢除脂肪体重は、プラセボ群における0.76%と比較して、REGN2477+REGN1033高用量群においてベースラインから5.7%増加した。
【0232】
総脂肪量は、高用量REGN2477+REGN1033処置群において有意に減少された;総脂肪量は減少された:0.5%におけるプラセボと比較して、3.92%(高用量群)(名目上p<0.05)(
図11)。
【0233】
プラセボと比較して、筋肉内脂肪組織および大血管を含む大腿筋肉体積は、4週間目および8週間目に、中間および高用量REGN2477+REGN1033群ならびにREGN1033群のそれぞれにおいて有意に増加された(
図12)。低用量REGN2477+REGN1033も、4週間目にプラセボと比較して、筋肉内脂肪組織および大血管を含む大腿筋肉体積の有意な増加を示した。
【0234】
体肢除脂肪量(腕および脚の和)は、プラセボと比較して、4および8週間目に、組合せREGN2477+REGN1033処置群のそれぞれにおいて有意に増加された(p<0.05)(
図13)。
【0235】
高用量REGN2477+REGN1033処置群におけるアンドロイド脂肪量も、有意に低下された(
図14)。アンドロイド脂肪量は、プラセボにおける低下なしと比較して、高用量REGN2477+REGN1033群において6.6%低下された。
【0236】
大腿筋肉内脂肪組織体積(cm3)は、8週間目にプラセボと比較して、高用量REGN2477+REGN1033群(p<0.05)において有意に増加された(
図15)。
【0237】
高用量群における脂肪組織の低下は、筋肉内および筋肉周囲の脂肪組織(IMAT)の和において観察され(
図16)、低および中間用量群においては、皮下脂肪組織において観察された(
図17)。対照的に、大腿筋肉内脂肪組織は、4%の低下によるプラセボと比較して、高用量群において8%へと増加された(
図17)。
【0238】
REGN2477+REGN1033は、高用量群において、4週目および8週目の両方にプラセボと比較して、筋肉体積および除脂肪量の主な尺度の全てを有意に増加させた;4週目の効果は一般に、8週目よりも明確でなかった(表9)。8週目の重要な体組成尺度のパーセント変化の概要(フル・アナリシス・セット、LS平均およびSEを提示)を下の表9に示す。
【0239】
【0240】
上の表9において、ベースラインからの変化およびプラセボとの差は、共変数としてのベースラインおよび固定された因数としての処置によるANCOVAモデルに基づく最小二乗(LS)平均である。ANCOVAから標準誤差(SE)およびp-値も得た。名目上p-値を報告する。
【0241】
骨塩密度(BMD)質量および骨塩量(BMC)質量は、表10に示す通り、DXAによって測定した。高用量において、R2477+R1033は、DXAによって測定される骨塩量を増加させたが、総骨塩密度は変化しなかった(表10)。
【0242】
表10に示す通り、腕および脚の脂肪量の和を測定した。高用量において、R2477+R1033は、腕および脚の脂肪量の和を減少させた(p<0.05)。
【0243】
主要エンドポイント解析のデータを下の表10に示す。
【0244】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0245】
プラセボと比較して、R2477+R1033組合せは、中間および高用量群において大腿筋肉体積および総除脂肪量を有意に増加させ(
図8および
図9)、全用量群において体肢除脂肪体重を有意に増加させ(
図10)、高用量群において総脂肪量と共にアンドロイド脂肪量を有意に減少させた(表10)。R2477+R1033は、高用量群において、4週目および8週目の両方にプラセボと比較して、筋肉体積および除脂肪量の主な尺度の全てを有意に増加させた;4週目の効果は一般に、8週目よりも明確でなかった(表10)。8週目に、高用量抗アクチビンA R2477+抗GDF8 R1033群は、DXAによって測定されるプラセボからの総骨塩量の増加した%変化を示したが、総骨塩密度は変化しなかった(表10)。
【0246】
安全性
処置により出現した有害事象(TEAE)は全て、プラセボ対象により報告された「橈骨骨折」の1例の重症TEAEを除いて、軽度から中程度の重症度であった。重篤有害事象はなく、死亡はなく、TEAEによる中断もなかった。頭痛は、処置群のそれぞれにおける最も高頻度のTEAEであり、全研究対象の58.3%およびプラセボ対象の50%において発生した。筋痙攣、悪心および口腔内潰瘍形成は、REGN2477+REGN1033群における他の高頻度TEAEであり、これは、組合せR2477+R1033群における対象の25%以上において発生した;これらのTEAEは、プラセボ群においてより低頻度で発生したが、いかなる明らかな用量-応答関係性があるとも思われない。アクチビン受容体の遮断に関連付けられた有害事象である、出血または下痢の明らかなシグナルは存在しなかった。鼻血(鼻出血の好まれる用語)の1例のTEAEが、R2477+R1033用量群において発生した - これは、9分後に消散した。
【0247】
潜在的に臨床的に有意な値(PCSV)の概説は、検査値(Lab)、バイタルサインおよびECGにおいてREGN2477+REGN1033およびプラセボの間に有意差がないことを明らかにし、この結果は、REGN2477+REGN1033のマイナスの効果を示すであろう。検査値(laboratory)、バイタルサインおよびECGカテゴリー内で、組み合わせたREGN2477+REGN1033用量群(24のN)においてPCSVを有する0~2名の対象が存在した;しかし、PCSVを有する対象のパーセンテージは、プラセボ群において見出されるパーセンテージ以下であった。肝臓機能検査に関係する処置により出現したPCSVは存在しなかった。
【0248】
結論
健康な閉経後女性において、単一静脈内用量のREGN2477+REGN1033は、大腿筋肉体積、総除脂肪量および体肢除脂肪体重を増加させた。驚くべき知見の1つは、大腿筋肉変化の均一性であった:組合せに曝露された全個体は、
図4に示す通り、大腿筋肉体積の増加を示した。加えて、単一静脈内用量のREGN2477+REGN1033は、総脂肪、特に、アンドロイド脂肪量を減少させた。REGN1033単独による処置は、大腿筋肉体積を増加させた。
【0249】
一般に、本臨床研究におけるREGN2477、REGN1033およびREGN2477+REGN1033は、容認できる安全性プロファイルを有すると考慮され、十分な耐容性を示した。重篤有害事象は存在しなかった。
【0250】
本発明は、本明細書に記載されている特異的な実施形態によって範囲において限定されるべきではない。実際に、本発明の様々な改変が、本明細書に記載されているものに加えて、当業者に対して、前述の記載および添付の図面から明らかになるであろう。斯かる改変は、添付の特許請求の範囲内に収まることを意図する。
【配列表】