(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】選別支援装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241031BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20241031BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/04
C12N1/20 A
(21)【出願番号】P 2021017538
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】武田 志津
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潔人
(72)【発明者】
【氏名】西田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】西原 宏幸
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-520077(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106769978(CN,A)
【文献】特開2016-208866(JP,A)
【文献】特表2006-507823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267964(US,A1)
【文献】Biochemical Engineering Journal,2020, Vol.153, No.107418, pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のガスへの反応性の高い検体を選別する作業を支援する選別支援装置であって、
検査対象となる培養中の前記検体を収容する検体収容部と、
前記検体収容部を収容し、前記ガスを導入する密閉容器と、
気体中の前記ガスの濃度を検知するガス濃度検知部と、
前記密閉容器と独立して設けられ、前記ガス濃度検知部を収容し前記密閉容器内の密閉空間と連通する密閉空間を確保したガスセンサケースと、
気体を吸引するポンプと、
前記ガスセンサケース内の密閉空間および前記ポンプを接続する配管と、を備え、
前記ポンプは、前記密閉容器内の前記検体の上の前記気体を、前記ガスセンサケース内の密閉空間、及び前記配管を介して吸引し、
前記ガス濃度検知部は、前記ガスセンサケース内の
密閉空間を通過する前記気体中の前記ガスの濃度を検知する、
選別支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選別支援装置に関し、より具体的には、所定のガスへの反応性(吸収特性など)の高い検体を選別するスクリーニングに関する作業を支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中に排出されるCO2による環境への影響が懸念されている。
【0003】
これに対して、特定の菌(例えば大腸菌など)の遺伝子を改変して培養することで、かかる菌(以下、検体とも称する)にCO2を吸収する特性を与える技術が報告されている。
【0004】
このような菌を効率的に培養しながらCO2吸収特性の高い検体を選別(すなわちスクリーニング)するために、専用の設備を構築することが求められている。
【0005】
検体を培養するための従来構成としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0006】
また、非特許文献1には、検体菌の13C代謝フラックス解析により、CO2吸収固定を行う代謝回路が形成されたか否かの判定により、CO2吸収特性の高い検体を選別する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】PMID:31778652 (2019.11)、ワイツマン科学研究所(イスラエル)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31778652/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、人の関与を最小限にして検体を長期培養するための構成が記載されているが、上述のような気体吸収特性の高い検体をスクリーニング(選別)する方法については記載されていない。
【0010】
また、非特許文献1に記載されている技術は、13Cを含む炭素源で菌を培養し、その菌体を回収して、細胞内の代謝物質のそれぞれに13Cがどのように濃縮されているかを、質量分析機やNMRを用いて解析するものである。しかしながら、かかる方法では、培養中の検体(例えば菌を含む培養液)に直接適用することができないという問題がある。
【0011】
上記以外にも、遺伝子分析を行う方法や、代謝化合物量を測定する方法などが実施されているが、これら従来方法のいずれもが、培養中の検体に直接適用することができない難点があった。
【0012】
本発明の目的は、培養中の複数種類の検体のうち、ガスへの反応性の高い検体を選別する作業の効率性を高め、選別の精度を高めることが可能な選別支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、所定のガスへの反応性の高い検体を選別する作業を支援する選別支援装置であって、
検査対象となる培養中の前記検体を収容し、ガスが導入される検体収容部と、
対応する数の検体収容部の検体の上にある空気中の前記ガスの濃度を検知するガス濃度検知部と、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガス濃度検知部が、対応する数の検体収容部の培養状態で収容された検体の上にある空気中のガスの濃度を検知する。したがって、培養中の複数種類の検体のうち、ガスへの反応性の高い検体を選別するまでの作業の効率性を高め、選別の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態におけるスクリーニング装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】複数のウェル(検体収容部)を備えたプレートが収容される密閉容器の構成を示す図である。
【
図3】ガスの消費量の多い検体を選別するスクリーニングに関する工程の流れを説明するフローチャートである。
【
図4A】密閉容器内のガスの測定精度を高めるための条件を説明する図であり、検体(液体)の容積と密閉容器の隙間の容積との関係を示す図である。
【
図4B】測定精度が要求の30分の1であったと想定して密閉容器の隙間の容積V1を30分の1に縮小する場合の具体例を説明する表である。
【
図5】第2の実施の形態を説明する図であり、気体採取方式に適した密閉容器の構成を示す図である。
【
図6】液体面のすぐ上の気体を採取して濃度測定を行う気体採取方式の概要を説明する図である。
【
図7】気体採取方式の有効性を確認するために実施した簡易な実験装置の構成を示す図である。
【
図8】
図7の簡易な実験装置における実験データのグラフである。
【
図9】気体採取方式をプレートに適用したときの縮尺寸法の一例を示す表である。
【
図10】格子状に配列されたウェル(検体収容部)に対して気体採取方式を適用する場合の構成例を示す図である。
【
図11】一つのウェル(検体収容部)に対して電磁バルブ装置を配置して気体採取方式を適用する場合の構成例を示す図である。
【
図12】
図11に示す構成をプレートに適用する場合の構成例を示す図である。
【
図13】ウェル上空のガス濃度を、ウェル上空を通過する光の減衰量に置き換えて測定する方式の構成を示す図である。
【
図14A】一つのウェル内の菌によるガス吸収量と菌のガス依存割合との関係を示すグラフである。
【
図14B】測定精度に対する要求と菌のガス依存割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。ここでは、所定のガスへの反応性の高い検体を選別する作業を支援する選別支援装置としてのスクリーニング装置の構成を開示する。
【0017】
まず、スクリーニング装置の第1の実施の形態を、各実施の形態で共通する事項を含めて説明する。
図1は、本実施の形態におけるスクリーニング装置の構成を示す図である。なお、理解容易化および電気信号との区別のため、気体の流れ(流れる方向)を
図1中に白抜き矢印で示しており、この点、後述する
図2、
図5等も同様である。
【0018】
本実施の形態のスクリーニング装置100は、実験ないし検査対象となる培養中の検体を収容し、収容された検体に所定の気体(ガス)を供給し、当該ガスを検体が吸引するか否か等について判別ないし検査することを主目的とした装置である。
【0019】
スクリーニング装置100は、
図1に示すように、内部を任意のガス雰囲気下に充満可能なインキュベータ101と、インキュベータ101内に格納され検体を保持するプレート105を格納する複数の密閉容器103と、を備える。
このうち、インキュベータ101は本発明の「保温室」に対応し、各々の密閉容器103は、本発明の「密閉収容容器」に対応する。また、プレート105は、本発明の「検体収容部」としてのウェル205を備えるものであり、プレート105の一具体例は
図2等で後述する。
【0020】
(インキュベータ101の機能と概略構成)
本実施の形態において、インキュベータ101は、検体の培養およびガス吸収能力の検査を行うために、恒温室(保温室)および密閉容器としての機能を担う。このため、インキュベータ101は、ヒーターおよび温度センサ、スイッチ等の温度設定部およびプロセッサ等の温度制御部を備えており、また、断熱材入りの筐体、シーリング部材を介して開閉される開閉扉などを備えているが、これらは公知の構成であり、図示を省略している。
【0021】
上記のうち、温度設定部は、インキュベータ101の稼働中の設定温度を選択ないし設定する機能を有し、当該設定温度の値を温度制御部に入力する。そして、温度制御部は、温度センサの検知結果に応じてヒーターの出力を制御することにより、インキュベータ101の内部が設定温度に保たれるようにする。
【0022】
ここで、インキュベータ101内の設定温度は、特に限定されるものではなく、検体の種類や使用するガスの種類等に応じた任意の温度に設定することができる。なお、後述する例では、インキュベータ101内の空気を37℃前後の温度に保つように設定することを想定する。
【0023】
なお、インキュベータ101のサイズ、言い換えるとインキュベータ101内に収容される密閉容器103の数も、特に限定されるものではない。一般には、インキュベータ101のサイズが大きいほど密閉容器103の収容数が増えるので、一度に実験できる検体の数が多くなり効率がよいメリットがある。逆に、温度制御やガス濃度調整のしやすさという点では、インキュベータ101のサイズが小さい方が好都合な場合もあり得ることから、上記のような事項を考慮して適宜なサイズを選択すればよい。
【0024】
さらに、
図1に示すように、インキュベータ101は、インキュベータ101の内部に供給されたガスの濃度を測定するためのガスセンサ102が備えられる。以下、インキュベータ101内のガスセンサ102につき、後述するガスセンサ104(ガス濃度検知部)との区別を明確にするため「第1のガスセンサ102」と称する。
【0025】
第1のガスセンサ102は、この例では、インキュベータ101の天井部に配置されているが、使用するガスの種類(比重等)に応じた他の好適な位置に設けてもよい。
【0026】
また、第1のガスセンサ102の種類やセンシング方式は、特に限定されるものではないが、供給されるガスの濃度を出来るだけ正確に検出できる構成であることが望ましい。この点、後述するガスセンサ104も同様であり、ひいてはより高性能であることが望まれることから、この詳細については後述する。
【0027】
(密閉容器103の機能と概略構成)
一方、密閉容器103は、ガス吸収の検査対象となる検体を収容する容器であり、かつ、インキュベータ101内に格納される容器である。このため、密閉容器103は、縦横奥行の全ての寸法においてインキュベータ101よりも小さいサイズを有する。
【0028】
(検体の種類)
本実施の形態において、検査対象となる検体は、所定のガスに反応する(例えば、消費する、吸収する等)可能性のある物であれば特に限定されるものではないが、例えば、所定のガスを栄養源とし得る生体、化学物質(有機または無機化合物など)が挙げられる。
【0029】
(プレート105とウェルの概略構成)
以下に説明する各実施の形態では、液体(培養液)中で生存および活動する菌を検体に用い、かかる菌が含まれる培養液を「ウェル」と呼ばれる井戸状の容器(プレート105が備える穴部)に入れた状態で、ガス吸収の実験を行う。加えて、幾つかの実施の形態では、複数のウェルが形成されているプレート105を、上述した密閉容器103内に収容し、かつ、複数の密閉容器103をインキュベータ101に格納して上記の実験を行うことを前提とする。
【0030】
なお、一つのプレート105が備えるウェルの数は特に限定されない。また、インキュベータ101内に格納される各々の密閉容器103のサイズが異なる、言い換えると密閉容器103内に収容されるウェルの最大数が異なるものであっても構わない。
但し、説明の複雑化を避けるため、以下は特記しない限り、各々の密閉容器103のサイズは同一である。
【0031】
(気体を移動させる構成)
図1に示すスクリーニング装置100では、インキュベータ101内に供給されたガスを速やかに密閉容器103に導入して、密閉容器103内のガス濃度を所望の濃度にさせるため、密閉容器103内の空気を移動させる(強制的に換気する)構成を備える。かかる構成は、本発明の「気体移動部」に対応し、主としてポンプ112および種々の配管により実現される。
具体的には、各々の密閉容器103の上蓋201には、
図1および
図2に示すように、吸気ダクト106および換気ダクト107が設けられており、このうちの換気ダクト107は、吸引管112aを通じてポンプ112に連結される。かくして、ポンプ112の稼働時に換気ダクト107を介して密閉容器103の空気が吸引されることにより(
図1および
図2中の白矢印を参照)、インキュベータ101内に充満されているガスは、各々の密閉容器103の吸気ダクト106を通じて強制的に密閉容器103内に導入される。
【0032】
なお、
図1に示すポンプ112は、負圧を形成して密閉容器103内の空気を吸引する吸引用に設定されているが、変形例としてこの逆、すなわち空気を加圧して密閉容器103内の空気を押し出す設定(すなわち吸引管112aを排出管として使う設定)としてもよい。
【0033】
また、ポンプ112の動作出力についても任意であるが、気体の移動によりプレート105から検体が溢れ出ないように設定することが望ましい。
【0034】
(ガス濃度検知部)
さらに、スクリーニング装置100は、各々の密閉容器103(
図1に示す例では各々の密閉容器103の天井側)に設けられ、それぞれの密閉容器103内のガス濃度を測定するガスセンサ104を備える。このガスセンサ104は、本発明の「ガス濃度検知部」に対応するものであり、以下は「第2のガスセンサ104」と称する。
【0035】
(ガスの種類)
また、「所定のガス」すなわちインキュベータ101内に供給され検体に消費させるガスは、特に限定されるものではない。一方、本実施の形態では、主として、環境問題、災害、公害や健康被害を防止する等の観点から、減少させることが望まれているガスを想定している。
このようなガスは、例えば、地球温暖化の要因と考えられている二酸化炭素(CO2)、自動車の排気ガス中に含まれ得る成分(一酸化炭素、炭化水素、窒素化合物、など)、工場や発電所等の排煙に含まれ得る成分(硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物、など)が挙げられる。また、食品加工場等から排出され得る臭気を帯びたガス、火事や爆発事故などの原因となる可燃性ガスなど、多種多様のものが挙げられる。
【0036】
他の側面からは、「所定のガス」すなわちインキュベータ101内に充満されるガスは、インキュベータ101内に備えられるガスセンサ(102,104)によって濃度等を測定ないし検出できるガスであればよい。
なお、第1のガスセンサ102で検知(濃度測定)するガスと、第2のガスセンサ104(ガス濃度検知部)で検知(濃度測定)するガスとは必ずしも同一種類のガスである必要はない。これは、インキュベータ101ひいては密閉容器103内に供給されたガスが検体によって分解され、密閉容器103内で別の種類(分子構造等)のガスに変えられる場合も考えられるからである。この場合、当該別の種類のガスの濃度を第2のガスセンサ104で測定する構成としてもよい。ただし、どのような気体に変えられるかが予め分からないような場合、最初に供給した(各容器に充満させた)ガスの濃度を第1および第2のガスセンサ102,104で計測する方が簡易かつ容易と考えられる。
【0037】
以下は、インキュベータ101内に充満させるガスが二酸化炭素(CO2)であり、ガスセンサ(102,104)によってCO2の濃度を測定する構成であることを前提として説明する。
【0038】
(スクリーニング装置100の詳細説明)
図1を参照すると、スクリーニング装置100は、インキュベータ101内に供給し充満させるガス(検体に消費させるためのCO
2、以下同じ)が貯蔵されるガスボンベ110と、ガスの流量調整のためのレギュレータ111と、を備える。レギュレータ111は、ガスボンベ110からインキュベータ101に連通する流路(配管)中に配置され、インキュベータ101内の圧力を調整(調圧)する役割を担う。
【0039】
また、スクリーニング装置100に格納される複数の密閉容器103は、各々、密閉容器103とインキュベータ101との間で気体を循環させる配管を接続するための配管接続部(ダクト106,107)が備えられる。このうち、ダクト106は、インキュベータ101内の気体を密閉容器103内に吸気(供給ないし導入)するための吸気ダクト106である。一方、ダクト107は、密閉容器103内の気体をインキュベータ101内に戻して(排気して)換気するための換気ダクト107である。密閉容器103内の気体をインキュベータ101内に戻さず別に用意した気体採取袋に採取してもよい。(実際の実験ではもどしていない)。この場合には、別途インキュベータ101の開閉扉を開けて、気体採取袋をダクト106に接続し、採取したガスを密閉容器に注入する。このようにガスを一旦気体採取袋に採取することにより、密閉容器に格納する検体プレートを交換して繰り返し実験を行う場合に、ガス濃度等の実験条件を等しくすることができる。
【0040】
図1に示す例では、インキュベータ101の天板および側板に導入口および排出口を設け、ガスボンベ110から供給されるガスをインキュベータ101の導入口(例えば天井側)から導入し、当該ガスをインキュベータ101の排出口(例えば側壁の下方側)から排出する。また、密閉容器103の吸気ダクト106および換気ダクト107は、いずれも密閉容器103の天板に接続されている(
図2も参照)。
【0041】
インキュベータ101における導入口および排出口の配置は上記の例に制限されるものではなく、他の位置に配置されてもよい。一方で、導入するガスが大気より重い場合は、上述のようにインキュベータ101の導入口を上側に設けることが望ましいと考えられる。このような構成とすることにより、ガスボンベ110から供給されるガスをインキュベータ101の上方から導入して降下させることにより、ガスの拡散の挙動がより円滑になり、早期にガス濃度を均一化させることができる。なお、導入するガスが大気より軽い場合は、上記と逆の結果となる。かかるガスの挙動(拡散の仕方)に鑑みると、使用するガスの種類(比重)等に応じてより好ましい高さ位置から導入(排出)できるようにするために、インキュベータ101の導入口(排出口)を、高さ位置に沿って複数設けておき、使用する導入口(排出口)以外は閉状態としておくとよい。
【0042】
図1および
図2に参照されるように、密閉容器103毎に設けられる換気ダクト107は、インキュベータ101の排出口から外方に引き出され外部の吸引ポンプ112に接続された吸引管112aと着脱可能な管状をなす。
【0043】
ポンプ112は、インキュベータ101の外部に設置されており、各々の密閉容器103の換気を行う。このとき例えば、吸引管112aを通じて吸引した気体をインキュベータ101内に戻す場合には、空気との比重が異なるガスを使用する場合でも、インキュベータ101および密閉容器103内のガス(この例では比重約1.5のCO2)の濃度を均一化することができる。
【0044】
さらに、
図1を参照すると、スクリーニング装置100は、第1のガスセンサ102と第2のガスセンサ104の稼働を制御し、両センサ102,104が検出したガス濃度データを収集・分析する制御部108と、収集・分析されたデータを表示するモニタ109と、を備える。制御部108は、例えばCPUなどのプロセッサを含む。モニタ109は、LCDなどのディスプレイである。他にも、ユーザが設定や指示等を行うためのキーボード等の操作入力部等が含まれ、これらは一般的なコンピュータ(PC)で代用され得る。
【0045】
上述のように、スクリーニング装置100は、インキュベータ101全体の温度を調整(保温等)するためのヒーター、温度センサ等(図示せず)を備えており、検体を温度管理しながら培養できるようになっている。また、スクリーニング装置100は、密閉容器103を出し入れできるように、図示しない公知の開閉扉が設けられており、開閉扉を閉めることによって、インキュベータ101の内部の気密性が確保されるようになっている。
【0046】
(密閉容器103の構成)
図2は密閉容器103の一例を示す縦断面図である。以下、
図2を参照して、密閉容器103(密閉収容容器)のより具体的な構成を説明する。
【0047】
密閉容器103は、プレート105を収容する槽ないしシャーレ状の容器202と、かかる容器202に対して着脱自在な上蓋201と、を備える。密閉容器103の下部を構成する容器202は、プレート105を収容できるだけの容積および内面形状を有する。
【0048】
密閉容器103は、容器202の上から上蓋201が被せられることで、密閉容器103内の空間(後述する「隙間」に対応する)が略密閉される。なお、厳密な意味で密閉容器103内の空間を完全に密閉するためには、外気に対する吸気ダクト106および換気ダクト107の流路を閉じる必要があるが、本実施の形態では、上述のように空気を移動させる動作を行うため、かかる設定は基本的には使用しない。ただし、複数の密閉容器をポンプ112に接続して、吸引管112aを通じて吸引することにより、ガスを密閉容器に注入する場合には、同時注入は行わず、密閉容器1つづつ順番に注入する必要がある。それは複数の密閉容器にガスを同時に注入しようとすると、ガス配管の流路抵抗に微妙な違いがあるため、密閉容器ごとにガスの注入量のばらつきが発生して測定精度の低下につながる。そこで密閉容器1つづつ順番に注入する場合には、注入している密閉容器以外の密閉容器の配管接続部(ダクト106,107)には弁等を挿入して閉じる必要がある。
【0049】
この実施の形態では、密閉容器103の上蓋201の内部の略中央には、上述した第2のガスセンサ104が配置されている。また、第2のガスセンサ104の入出力の端子(信号線)をなす信号線ソケット204が、上蓋201を貫通するように配置されている。さらに、上蓋201の略端側には、上述した吸気ダクト106、換気ダクト107が設けられている。
【0050】
より詳細には、
図2に示すように、上蓋201は、中央の領域が上方に盛り上がった形状を有し、かかる形状により規定された内側の空間に第2のガスセンサ104を配置(収容)している。また、第2のガスセンサ104の信号線ソケット204は、上蓋201の中央領域に設けられた開口から外方に突出するように設けられている。さらに、吸気ダクト106と換気ダクト107とは、供給した新鮮なガスを出来るだけ長く密閉容器103内に留めるようにするために、上蓋201に収容されたガスセンサ104を挟むように、互いに反対の端部側に設けられている。
【0051】
プレート105は、
図2に示すように、検体を培養する容器ないし空間をなす複数(図示の例では6列)のウェル205(検体収容部)を備える。一具体例では、ウェル205は、例えば平面円形の凹陥した形状を有する容器である(適宜、
図5を参照)。なお、ウェル205の形状はこれに制限されず、例えば平面矩形状あるいは多角形状であってもよい。
【0052】
以下は、プレート105内の各々のウェル205に、互いに異なる種類の検体(検体を含む液体)が収容されることを前提として説明する。
【0053】
なお、プレート105に設けられるウェル205の数や配列は、特に制限されない。一具体例では、
図2に示す例では、6×6個(合計36個)のウェル205が格子状に配列されたプレート105を使用する。一方、
図9で後述する他の例では、横12×縦8個(合計96個)のウェル205が格子状に配列されたプレート105を使用している。
【0054】
さらに、密閉容器103内に収容されるプレート105の数も、特に限定されるものではない。例えば、
図2に参照される他の例として、密閉容器103内に、6×1個(合計6個)のウェル205が一列に並んだプレート105を6個収容してもよい。
【0055】
なお、各ウェル205に入れられた検体の特性(例えばガスの吸収特性)をできるだけ等しく発揮させる観点からは、プレート105に設けられる複数のウェル205は、各々、内面形状、収容容積、材質、透明度等が同一であることが望ましい。
【0056】
かくして、上述したプレート105は、各々のウェル205内に検体を含む培養液が注入され(適宜、
図3のS304を参照)、密閉容器103(すなわち容器202)に収容され、密閉容器103の上蓋201が被せられた状態で、
図3のS300で後述するスクリーニング(選別)のための検査が行われる。
【0057】
(スクリーニング装置100の動作概要)
以下、主として
図1を参照して、スクリーニング装置100の全体的な動作について説明する。
【0058】
まず、インキュベータ101の開閉扉が開かれ、予め各ウェル205内に異なる検体(菌を含む培養液)が入れられたプレート105を収容した密閉容器103が、インキュベータ101内に複数個(例えば収容可能な最大数)投入される。このとき、各々の換気ダクト107(
図2参照)に吸引管112aが取り付けられ、また、各々の第2のガスセンサ104の信号線ソケット204に信号線(
図1参照)が接続される。
【0059】
続いて、インキュベータ101の開閉扉が閉められて内部の気密性を確保した後、レギュレータ111を開状態として、ガスボンベ110からインキュベータ101の内部空間にガスを導入する。
【0060】
このとき、第1のガスセンサ102によるガス濃度が所望の値(例えば2000ppm)を示すように、レギュレータ111の開度およびポンプ112の出力を調整する。また、上述したヒーターおよび温度センサを用いて、インキュベータ101内を一定の温度(検体の培養に好適な温度、例えば37℃)に確保する。
【0061】
インキュベータ101内のガス濃度および空気の温度が所望の値になった場合、ポンプ112を作動させ、換気ダクト107を介して密閉容器103内の空気が強制的に吸引されることにより、インキュベータ101内のガスが各々の密閉容器103の吸気ダクト106を通じて密閉容器103内に導入される。
密閉容器103内の気体をインキュベータ101内に戻さず別に用意した気体採取袋に採取してもよい。この場合には、別途インキュベータ101の開閉扉を開けて、気体採取袋をダクト106に接続し、採取したガスを密閉容器に注入する。このようにガスを一旦気体採取袋に採取することにより、密閉容器に格納する検体プレートを交換して繰り返し実験を行う場合に、ガス濃度等の実験条件を等しくすることができる。
【0062】
この例では、ポンプ112の作動により、インキュベータ101内(この例では密閉容器103内)の空気を吸引し、吸引した空気をインキュベータ101に戻すようにして、換気を行う。この換気の動作により、密閉容器103内およびインキュベータ101内の空気が移動する(流動状態となる)ことから、新鮮な空気が密閉容器103に供給されるとともに、ガス(この例では空気より比重が高いCO2)の偏在が防止ないし抑制される。
【0063】
かくして、インキュベータ101内のガス濃度および温度が一定に保たれた状態において、第2のガスセンサ104のセンシング結果が制御部108に入力される。
【0064】
モニタ109は、制御部108で取得された各々の第2のガスセンサ104の値を表示する。ユーザは、モニタ109に表示された結果(この例では各々の第2のガスセンサ104が示すCO2濃度の値)を通じて、ガスの吸収量の多い、あるいは吸収効率の良い検体(ウェル205)が含まれる密閉容器103を判別する。
【0065】
なお、制御部108によってガスの吸収効率の良い密閉容器103の検体を自動で判別する構成としてもよい。この場合、制御部108は、各々の密閉容器103の第2のガスセンサ104から入力されるガス濃度の測定値を逐次記録するとともに、例えばモニタ109に表示される画面につき、最もガス濃度の低い密閉容器103の値を強調する(濃い色で表示する)ようにモニタ109を制御するなどの処理を行えばよい。
【0066】
但し、制御部108によって一の密閉容器103が自動で判別(選別)された場合でも、一の密閉容器103内に複数種類の検体(すなわち複数のウェル205)が収容されている段階では、未だ、最もガスの吸収量の多い(吸収効率の良い)検体が入れられた一のウェル205は判明していない。
【0067】
(一のウェル205を選定するまでの基本的な手順)
図3は、スクリーニング方法、すなわち最もガスの吸収量の多い(吸収効率の良い)検体が入れられた一のウェル205を選定するまでの基本的な手順を説明する流れ図である。
スクリーニング装置100を稼働させる前提として、該装置のユーザ等が、スクリーニングの準備段階として、ステップS200の作業を行うことにより、上述したプレート105のウェル205に入れるための検体を多数作ること、例えば数百種類もの菌を作ることが必要になる。なお、ステップS200の作業内容については後述する。
【0068】
ここで「多数」とは、特に制限されるものではないが、少なくとも2つ以上、この例ではプレート105に設けられたウェル205の数以上、ひいてはプレート105に設けられたウェル205の数の倍数分であり、概して多ければ多いほどよい。
【0069】
上記の前提のもと、スクリーニング装置100は、作成された多数の菌の中から、目的となるガス(CO2)を吸収する菌をスクリーニングするステップS300(S301~S305)の作業の際に稼働される。
【0070】
以下、
図3のフローの作業内容について、順に説明する。
【0071】
ステップS200は、多数の検体を準備する段階である。上述のような多数の種類の検体(この例では菌)を準備する方法として、(1)実験で検体を作成すること、(2)自然環境から採取すること、(3)検体を扱っている業者や専門店等から購入すること等、様々な方法があり得る。以下は、上記(1)についての非制限的な一具体例を説明する。
【0072】
実験により検体となる菌を作成する一例では、ステップS200に示す「ライブラリ形成」、「形質転換」および「プレート播種」の作業を行う。より具体的には、例えば研究対象のDNA断片をベクターに組み込んだプラスミドを多数種類作ることで、プラスミドライブラリを作成する。次に、作成された各種類のプラスミドを、形質転換を用いて菌に導入した上で、上述したプレート105内の各々のウェル205(例えば、互いに種類の異なる培養液が入っている)に播種し、所定時間(例えば12時間程度)だけ培養する。この後、目的とするプラスミド(CO2の吸収特性)をもつ菌を選別すべく、後述するステップS301以下の作業を行う。
【0073】
上記の作業自体は公知のものであり、さらなる詳細な内容は、例えば「細胞工学別冊、超実践バイオ実験イラストレイテッド、レッスン1、キットも活用遺伝子実験、秀潤社(2005)」に記載されている。
【0074】
さらにステップS200では、以下に示すような方法を追加して、できるだけ多くの種類の菌を作り、その中から目的となるガスを吸収する菌のスクリーニングに成功する確率を高めるようにする。
ここで、できるだけ多くの菌を作る方法としては、例えば上述したプラスミドライブラリの数を増やす作業を行うこと、或いはプレート105(ウェル205)に播種した菌に対してUVを照射する等により検体の遺伝子に対して変異誘発をかけること、などが挙げられる。さらには、プレート105(ウェル205)に播種した菌の培養環境を整えて、目的となるガスを吸収できるような進化を人工的に促すこと(指向性進化圧を加えること)によって菌の種類を増やすこともできる。
【0075】
続くステップS300(ステップS301~S304)では、上述したスクリーニング装置100を使用して、ステップS200で作られた多数の種類の菌の中から、二酸化炭素ガスを吸収する菌(ここでは一つの密閉容器103)をスクリーニングする。なお、ガスを「吸収する」とは、例えばガスを消費ないし分解する、あるいはガスを化学的に変質させるなど、種々の態様があり得る。
【0076】
まず、ステップS301では、菌を一種類ずつプレート105の個別のウェル205に分注して、当該プレート105を密閉容器103に格納し、かかる密閉容器103をインキュベータ101内に収容し、必要な接続を行った後にガスボンベ110のガスをインキュベータ101に供給する。
【0077】
なお、これとは逆に、インキュベータ101内のガス濃度を所定値にした後に密閉容器103をインキュベータ101内に収容してもよいが、その場合はインキュベータ101の開閉扉を開ける際に内部のガスが漏れることから、防護マスク等を装着して作業する。 または、別に用意した気体採取袋に採取してもよい。この場合には、別途インキュベータ101の開閉扉を開けて、気体採取袋をダクト106に接続し、採取したガスを密閉容器に注入する。このようにガスを一旦気体採取袋に採取することにより、密閉容器に格納する検体プレートを交換して繰り返し実験を行う場合に、ガス濃度等の実験条件を等しくすることができる。
【0078】
続くステップS302では、所望の濃度(ガス雰囲気)に確保されたインキュベータ101内のガス(CO2)を、密閉容器103の吸気ダクト106を通じて密閉容器103内に供給し、第2のガスセンサ104を通じて密閉容器103内のガス(CO2)濃度の連続的(経時的)な測定を行う。上述のように、この処理は、インキュベータ101内に収容された密閉容器103内の第2のガスセンサ104(ガス濃度検知部)のセンシング値を制御部108が取得および記録することにより、自動で行うことができる。なお、必要に応じて、密閉容器103内の各ウェル205中の溶液の濁度測定を併用してもよい。この濁度測定は、目視で行ってもよく、或いはインキュベータ101内に図示しない濁度計を設けて行ってもよい。
【0079】
続くステップS303では、各々の第2のガスセンサ104を通じてのガス濃度の測定結果から、ガス(CO2)を吸収できる菌を含む密閉容器103の有無を判定する。この判定では、菌がガスを吸収することにより密閉容器103内のガス濃度が変化したことを検知できるような測定精度を確保することが求められる。かかる測定精度に対する要求の決め方(水準等)については後述する。
【0080】
ステップS304は、ステップS303でNOの場合、すなわちガス(CO2)を吸収できる菌がスクリーニングできなかった場合(該当する密閉容器103がなかった場合)に実施する工程である。
【0081】
すなわち、ステップS304では、上記のステップS200で作られた多数の菌から、未だステップS300(S301~S303)のスクリーニングを行っていない任意の菌を選び、かかる菌に上述したステップS301の作業を実施する。
【0082】
ステップS301~S304の一連の作業は、少なくとも、ステップS303でYESすなわちガス濃度が減少した密閉容器103が出現するまでは、言い換えると、供給したガス(CO2)を吸収する菌が見つかるまでは、繰り返し実施される。そして、ガス濃度が減少した密閉容器103があった場合(ステップS303、YES)、ステップS305の作業を行う。
【0083】
ステップS305は、ガス濃度が減少した密閉容器103に収容されたプレート105に形成された複数のウェル205のうち、供給したガスを吸収できる菌が存在するウェル205を特定するステップである。この段階では、直前のステップS303の判定結果(YES)によって、特定された一の密閉容器103に収容されたプレート105のいずれかのウェル205(
図2を参照)に、CO
2を吸収できる菌が存在することまでは分かっている。
【0084】
そこで、ステップS305の作業として、例えばプレート105の半数のウェル205を密閉容器103に残し、残り半数のウェル205は、検体を(またはウェル205ごと)密閉容器103から取り出して一旦保管し、第2のガスセンサ104を通じて半数のウェル205のガス濃度を測定する。この測定の結果、ガス(CO2)濃度が低下した場合、当該半数のウェル205内にガス吸収性を有する菌が存在するため、さらにその半数を残して測定する(残り半数を一旦保管する)という作業を繰り返す。なお、ガス(CO2)濃度が低下しない場合、一旦保管した残り半数のウェル205の検体にガス吸収性を有する菌が存在するため、当該保管した残り半数のウェル205を濃度測定の対象として使用し、上述と同様に検査する。このような作業を繰り返すことにより、ガス(CO2)を吸収する菌があるウェル205を特定(選定)することができる。
【0085】
しかしながら、このようなステップS305の特定方法では、プレート105にウェル205が多数(例えば96個)あるような場合に、ガス吸収性を有する菌があるウェル205を特定するまでに、幾度もの試行を行う必要があり、作業者の負担が過大になるとの問題がある。したがって、かかる負担を出来るだけ軽減することが求められている。
【0086】
(ガス濃度の測定精度の要求)
次に、上述したステップS303の判定の実効性を確保するために要求される、ガス濃度の測定精度に対する要求(水準)の設定内容および方法等を、具体例を用いて説明する。
【0087】
本実施形態において、ガス濃度の測定精度に対する要求ないし水準は、上記ガスを吸収する検体(菌)がプレート105の1つのウェル205(だけ)に存在する場合に、その菌によるガス吸収量を測定できること、である。そして、このような測定精度を達成するためには、上述したような構成では実現することが容易でないこと、より具体的には、第2のガスセンサ104(ガス濃度検知部)の周囲を通過する空気の流速をより早くすることが必要であることを見出した。
【0088】
詳細には、まず、1つのウェル205に注入した培養液の量uを300[mL]と仮定し、培養液中の菌が吸収できるガスの容量を見積もってみる。
【0089】
一般的に、乾燥菌体重量と濁度tの比例定数cは0.5程度である。したがって、菌体の炭素割合rを50%とすると、OD(Optical Density:光学濃度)600=0.5の場合の菌体乾燥質量(w)は次式で求めることができる。
w =c*t*u*r =3.13e-6[g]
【0090】
この関係については、例えば、「小西、堀内、細胞の増殖を捉える ―計測法から比速度算出まで― 、生物工学会誌 93(3)(2015)」にも記載されている。
【0091】
次に、炭素の質量数(n=12)として、菌体乾燥質量(w)をモル(m)に換算する。
ただし、OD600=0.5のときには、菌体量と濁度は比例する。
【0092】
さらに、菌のガス依存割合dを10[%]とすると、次式でモル換算値を求めることができる。
m1=w*d/n=3.13e-7[mol]
【0093】
このようにして、1つのウェル205内の培養液中の菌が吸収できるガスの容量mを計算することができる。そして、本発明者らは、この数値を、実際に開発した密閉容器103を使用して測定した値と比較することにより、スクリーニング装置100の通常の稼働状態でガス濃度検知を行った場合の第2のガスセンサ104の精度に対して具体的にどれだけの精度向上が必要になるかを算出した。
【0094】
例えば、密閉容器103の内部の余剰空間(以下、「隙間容積」という)gが255[mL]であり、密閉容器103内で吸収されたガスの容量aが0.076[%]であると測定され、さらに1[mol]を22400[mL]とすると、モル換算値は次式で求められる。
m2=g×a÷22400
=255×0.076÷22400
=8.65e-06[mol]
このとき、測定精度に対する要求は、次式で求められる。
m2÷m1=27.7[倍]
【0095】
上記のような検討の末、第2のガスセンサ104によるガス濃度の測定精度に対する要求は、検体(菌)のガス依存割合に応じて決まることを見出した。すなわち、菌のガス依存割合が高くなるほど測定精度に対する要求は低くなり、この逆の場合、測定精度に対する要求が高くなる。言い換えると、ガスを沢山消費する検体であれば第2のガスセンサ104の測定精度をさほど高める必要がないが、逆すなわち、ガスの消費量が比較的少ない検体を扱う場合、第2のガスセンサ104に要求される測定精度が高くなる。
【0096】
一具体例として、CO
2資化大腸菌のCO
2依存割合と測定精度に対する要求の関係を
図14Aおよび
図14Bに示す。ここで、「依存割合」は、インキュベータ101から導入され密閉容器103内で計測されるガス濃度に対応するものであり、本実施の形態では基準値を10%に設定している。
【0097】
上述したような測定精度に対する要求の27.7[倍]は、
図14B中に示すプロット(A)に対応している。これは、検体(菌)のガス依存割合dを10[%]とした場合の要求であり、
図14A中に示すプロット(a)に対応している。
【0098】
同様に、もし、菌のガス依存割合dが40[%](
図14A中に示すプロット(b)を参照)まで高まれば、第2のガスセンサ104の測定精度に対する要求は、6[倍]程度(
図14B中に示すプロット(B)を参照)とすればよい。
【0099】
総じて、第1の実施の形態のスクリーニング装置100では、検査対象となる検体(菌)のガス依存割合に応じて、プレート105および密閉容器103の隙間容積gを選択(設定)することにより、第2のガスセンサ104の測定精度を適切化することができる。
【0100】
一方で、上述のような構成とした場合、第2のガスセンサ104の測定精度の要求が高くなるほど密閉容器103の隙間容積を小さくする必要があり、隙間容積を小さくするほど菌に十分なガスが供給されにくくなる問題点がある。
【0101】
以下、
図4(
図4Aおよび
図4B)を参照して、第1の実施形態に内在する問題点(新たな解決課題)を説明する。なお、後述する第2以下の実施の形態は、この課題を解決するための構成を提供するものである。
【0102】
図4Aおよび
図4Bは、密閉容器103内のガスの測定精度が実際の要求の30分の1程度の場合に、測定精度を要求される水準まで高めるべく、密閉容器103内の隙間401の容積V1を30分の1に縮小する例を説明する図および表である。
図4A中、灰色で塗られた部分は、密閉容器103の隙間401すなわち、各ウェル205に培養液(菌入りの液体402)が入れられたプレート105を収容した状態での余剰空間を示している。
【0103】
図4Aを参照すると、仮に、密閉容器103が完全に密閉された状態(吸気ダクト106および換気ダクト107が閉じた状態)とし、隙間401の容積をV1、培養液の液体402の容積をV2とする。ここで、隙間401(容積V1)における空気中のガス濃度は、ウェル205内の液体402との間で当該ガスの溶解もしくは拡散が生じることによって変化する。
【0104】
ここで、液体402へのガスの溶解もしくは拡散の量を、隙間401の空気中のガス濃度に置き換えると、液体402へのガスの溶解もしくは拡散の量は、スクリーニング装置100の稼働中(ポンプ112での吸引中)には、隙間401の容積(V1)が小さいほど、相対的に大きくなる。すなわち、隙間401の容積(V1)が小さいほど、当該空間を移動する空気の流速が速くなるので、単位時間あたりに第2のガスセンサ104で検知されるガス量が増え、結果として第2のガスセンサ104の検出精度が向上する。
【0105】
結論的に、第2のガスセンサ104の測定精度は、V1(密閉容器103内の隙間401の容積)とV2(密閉容器103内の液体402の容積)との比で決まることになる。また、第2のガスセンサ104の測定精度を十分に向上させるためには、隙間401の容積V1を十分に小さくする、あるいは、液体402の容積V2を大きくする必要が生じる。
【0106】
ただし、スクリーニングの検体数(すなわちウェル205の数)を増減させず、各ウェル205に入れられる液体402の容積V2が一定(固定量)である場合、隙間401の容積V1を縮小するしか方法がないと考えられる。
【0107】
図4Bに示す表は、
図2および
図4Aで上述したような密閉容器103を使用してスクリーニング装置100を稼働させた場合に第2のガスセンサ104の測定精度が要求水準の30分の1であり、隙間401の容積V1を30分の1に縮小した場合の数値例を示す。表から分かるように、一つのウェル205に注入される液体402の容積V2を300μリットル(固定量)とし、このときの隙間401が255mlである場合に、測定精度を30倍向上させるには、当該ウェル205の隙間401を255÷30=8.5mlまで減らす必要が生じる。
【0108】
しかしながら、実際には、菌に対して適量のガスを供給する必要もあるため、隙間401の容積V1を縮小させることには限界がある。すなわち、隙間401の容積V1を過度に縮小した構成を採用すると、適量のガス(すなわち菌が本来吸収(消費)する量のガス)が供給できなくなるおそれがある。なお、ポンプ112の出力を上げて空気の移動速度を早くする方法も検討したが、この場合、ウェル205内の液体402(ひいては検体)が溢れてウェル205の外部に流出してしまい、正常な測定ができないことが判明した。
【0109】
このように、上述した第1の形態では、隙間容積の縮小と菌へのガス供給という2つの要求が背反するため、ガス検知の測定精度の向上を図ることが難しい問題がある。
【0110】
(第2の実施の形態)
図5は、ウェル205内の液体面の直ぐ上(以下、適宜「上空」という)の気体を採取して測定する方式(後述する気体採取方式)を採用した第2の実施の形態におけるスクリーニング装置100Aで使用される密閉容器103Aの構成を示す。なお、スクリーニング装置100Aは、
図5および後述する
図6で説明する部分以外は第1の実施の形態と同じであるため、他の部分の図示および説明を省略する。また、
図5および
図6中、上述した第1の実施の形態と同等の箇所には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。この点、後述する他の実施の形態についても同様である。
【0111】
図5に示す第2の実施の形態における密閉容器103Aは、
図2および
図4Aで説明した密閉容器103と比較して、第2のガスセンサ104が収容される密閉空間が設けられている点で異なっている。
【0112】
具体的には、
図5に示す第2の実施の形態における密閉収容容器としての密閉容器103Aは、基本的には第1の実施の形態の密閉容器103の構成をベースとしている。
【0113】
一方、当該容器内のウェル205の上方の第2のガスセンサ104を収容する空間という側面からは、第1の実施の形態の密閉容器103では上蓋201内の空間がいわば開放された共通空間であり、比較的広い容積であった。
【0114】
これに対して、第2の実施の形態の密閉容器103Aは、上蓋201の天板の中央が平板状であり、かかる板状の平面部分によって、第2のガスセンサ104を収容する上側の密閉空間(
図5中の隙間Sを参照)と、ウェル205に連通する下側の密閉空間とに区分けないし分離されている。
【0115】
より具体的には、この密閉容器103Aは、上蓋201の上側に第2のガスセンサ104を収容するための専用の空間を確保したガスセンサケース908を備えた構成であり、かかるガスセンサケース908内の空間は、上蓋201内の空間とは独立した空間となっている。
【0116】
また、第2の実施の形態の密閉容器103Aでは、上蓋201内の密閉空間と上側のガスセンサケース908内の密閉空間とを連通させるためのセンサ吸気ダクト1002が、蓋201の対応する領域(中央部)に設けられている。さらに、この密閉容器103Aでは、上述したポンプ112に連通された吸引管112aに接続されるダクト(配管接続部)として、換気ダクト107(
図1および
図2を参照)の代わりに、センサ換気ダクト1001がガスセンサケース908に備えられている。
【0117】
すなわち、第1の実施の形態の密閉容器103では、内部の空気を、上蓋201の換気ダクト107から吸引していた。これに対し、第2の実施の形態の密閉容器103Aでは、ガスセンサケース908(この例ではケースの天板)に設けられたセンサ換気ダクト1001からガスセンサケース908内の空気を吸引し、このときにセンサ吸気ダクト1002を介して上蓋201内の空気も吸引されるようになっている。また、このとき、吸気ダクト106を通じて密閉容器103Aの外部(インキュベータ101内)の空気が吸引される。
【0118】
図6は、密閉容器103Aを用いた第2の実施形態のスクリーニング装置100Aの要部を模式的に示した図であり、
図5に示す構成からガスセンサケース908を抽出し、簡明のため、ガスセンサケース908の下方には密閉容器103A内の一つのウェル205だけ示している。
【0119】
図6からも分かるように、ウェル205(すなわち検体)が収容される空間と独立して、第2のガスセンサ104(ガス濃度検知部)が収容される専用のガスセンサケース908が設けられることにより、第2のガスセンサ104の周囲の隙間S(余剰空間)の容積を大幅に縮小することができる。
【0120】
この場合、ポンプ112の稼働時におけるインキュベータ101内の空気の移動ないし循環の際に、ガスセンサケース908内の縮小された隙間部分を通過する空気の流速が早くなり、当該空気に含まれるCO2が第2のガスセンサ104でより多くセンシングできる。また、このように流速が早くなることにより、第2のガスセンサ104で測定されるガス濃度の濃度ムラが抑制される効果も期待できる。
【0121】
かくして、密閉容器103Aを用いたスクリーニング装置100Aによれば、第2のガスセンサ104(ガス濃度検知部)によるガス濃度の検知精度が大幅に向上する。
【0122】
図5および
図6に示す配置態様における第2のガスセンサ104でのセンシングは、ウェル205が収容された密閉容器103A内の気体をガスセンサケース908内に強制的に取り込んで(いわば採取して)行うものである。以下は説明の便宜のため、かかるセンシングの方法を「気体採取方式」と称する。
【0123】
図7は、気体採取方式の有効性を確認するために本発明者らが制作および実験した簡素な実験装置600の構成を示す。
【0124】
この実験装置600では、
図5および
図6で説明したガスセンサケース908を瓶601で代用し、かかる瓶601内にガスセンサ104を格納した。ガスセンサ104が格納された瓶601は、シリコン栓603で密閉され、内部空間の容量を適宜調整することにより、ガスセンサケース908と等価な構成(すなわち隙間を小さくする構成)とした。
【0125】
また、実験装置600では、上述したウェル205をバケツ607で代用しており、このバケツ607には、
図6に示す培養液206の代わりに、二酸化炭素を出すガス発泡剤(クエン酸および重曹)を混ぜた水608を入れた。なお、瓶601およびバケツ607の容量は、各々70ccおよび2リットルであり、バケツ607に入れたガス発泡剤入りの水608は、約400ccである。
【0126】
実験装置600において、瓶601は、シリコン栓603の孔に挿入されたチューブ604によって、ポンプ112に接続される。また、瓶601は、シリコン栓603の他の孔に挿入されたチューブ604によって、バケツ607にも接続されている。
【0127】
そして、実験装置600では、チューブ604(内径3mm×5mmの矩形穴)を通じてバケツ607の上空の気体を採取し、採取された気体を瓶601に導入し、瓶601内の第2のガスセンサ104によって二酸化炭素濃度を測定した。
【0128】
また、実験装置600では、第2のガスセンサ104の精度確認のため、バケツ607のすぐ上にガスセンサ609を配置して、バケツ607のすぐ上のガス濃度をこれら2つのガスセンサ104,609で測定する実験を行った。なお、この実験装置600では、ガスセンサ609の周囲の空気が外気に接触し得る(密閉が不十分である)点で、ガスセンサ609は、
図1で上述したスクリーニング装置100の第2のガスセンサ104と等価とは言い切れないが、広い隙間内に配置するという観点からは、
図1の第2のガスセンサ104(あるいは第1のガスセンサ102)と対応関係にあるといえる。
【0129】
さらに、実験装置600では、瓶601(狭い隙間)に格納された第2のガスセンサ104と、バケツ607のすぐ上(広い隙間)に配置されたガスセンサ609の両方を制御し、各々の検知結果を取得する制御部108Aを用いた。制御部108Aは、各々のガスセンサ104,609に接続された信号線610を通じて制御信号を出力し、これらガスセンサ104および609を同時に稼働させ、各々の検知結果を同時に取得する。なお、図示しないが、
図1に示す構成と同様に、制御部108Aにはモニタ109を接続し、制御部108Aで取得したガスセンサ104、609の検知結果をモニタ109に出力する構成とした。
【0130】
また、実験装置600では、バケツ607から瓶601に供給される気体の流路中に、分岐バルブ606を設けた。この分岐バルブ606は、ポンプ112の吸引力により瓶601に吸引される気体(図中のOUT参照)を、バケツ607のすぐ上から採取された二酸化炭素を含む空気(同IN1参照)とするか、或いは、外気(同IN2参照)とするか、を切り替えるものである。
【0131】
図8は、
図7に示す気体採取方式の実験装置600で行った実験結果、すなわちバケツ607の直上に発生した二酸化炭素の濃度測定に関する実験データのグラフである。このグラフは、横軸に時間(min)を、縦軸に測定された濃度(ppm)を示している。グラフ内の2つの曲線は、瓶601に格納された第2のガスセンサ104と、バケツ607のすぐ上に設けられたガスセンサ609と、により各々測定されたCO
2のガス濃度の推移を示すものである。
【0132】
この実験では、グラフ中に点線で示す切り替えタイミング701(グラフ横軸の約4.5秒)の時点で、分岐バルブ606による選択状態をIN2からIN1へと切り替えた。
【0133】
詳細には、測定開始から切り替えタイミング701までの区間は、分岐バルブ606は外気(
図8中の「IN2」を参照)に設定されており、このため、瓶601に格納されたガスセンサ602は、切り替えタイミング701までの区間では外気中の二酸化炭素濃度を測定している。一方、ガスセンサ609は、常にバケツ607のすぐ上の空気の二酸化炭素濃度を測定している。このため、切り替えタイミング701より前の区間は、瓶601に格納されたガスセンサ602と、バケツ607のすぐ上に取り付けられたガスセンサ609とでは、異なる気体を測定していることになる。
【0134】
次に、切り替えタイミング701から後の区間では、分岐バルブ606をバケツ607の直上から採取された気体(IN1)に切り替えた。この結果、切り替えタイミング701から後の区間は、瓶601に格納された第2のガスセンサ104と、バケツ607のすぐ上に取り付けられたガスセンサ609は、ともにバケツ607の直上から採取された空気中のガス濃度を測定している。
【0135】
以上を踏まえて、瓶601に格納された第2のガスセンサ104の測定値を、バケツ607の直上に配置されたガスセン609の測定値と比較すべく
図8のグラフを参照すると、以下のことが分かる。すなわち、切り替えタイミング701より前の区間では、測定対象となる気体が異なるため、両センサ(104,609)の測定値は大きく異なっている。
【0136】
これに対して、切り替えタイミング701から後の区間では、下流の瓶601内の第2のガスセンサ104の測定値は、上流のバケツ607の上のガスセンサ609に対して一定量低い値を保ちながら追従している。総じて、切り替えタイミング701から後の区間では、両センサ(104,609)の検知結果の変化傾向は、ほぼ一致していることが分かる。別の観点からは、気体採取方式を用いた構成によれば、ガスセンサ609の意義が相対的に下がり、ひいてはインキュベータ101内のガスセンサ102を使用しない構成とし得る。
【0137】
図9は、上述のような実験装置600における隙間容量V1と液体容量V2の比率を、
図1および
図5で説明したスクリーニング装置100Aに適用(実装)する場合の、プレート105およびウェル205の縮尺寸法(実装寸法)の一例を示す表である。一般に、プレート105は、ウェル205を格子状に多数個(例えば8段×12列)備えたものが多いが、ここでは簡明のため、上述した気体採取方式を8個(1段×8列)のウェル205に適用した場合を想定する。
【0138】
図8で上述した実験装置600における瓶601(実容量70mL)の隙間容積(V1)は66[mL]であり、バケツ607に入れたガス発泡剤を混ぜた水608の容積(V2)は400[mL]である。
【0139】
ここで、8個のウェル205に注入される培養液の総容量(V2)は、8×0.3=2.4[mL]である。したがって、ガスセンサケース908の隙間容積(V1)は、実験装置600におけるV1:V2の比率(約1:6)を適用した場合、2.4×1÷6=0.4[mL]となる(
図9中の「実装」欄を参照)。
【0140】
かくして、この実装寸法に従って密閉容器103A(
図5を参照)の設計を行い、密閉容器103A内に流れる気体の流量を正しく調節すれば、気体採取方式を複数(この例では8個)のウェル205に適用することができる。
【0141】
図10は、上述した気体採取方式を、多数のウェル205が格子状ないしマトリクス状に配列されてなるプレート105に適用したスクリーニング装置の一具体例を示す。
【0142】
図10に示すスクリーニング装置100Bは、
図3で上述したステップS303(判定)およびステップS304(ウェル特定)の工程の迅速化を図ることを目指したものである。
【0143】
図10に示すように、このスクリーニング装置100Bは、点線で模式的に示す密閉容器900(
図1のインキュベータ101または密閉容器103に対応する)の内部にプレート105が配置され、かつ、プレート105の上に多数のチューブ904が交差するように網状に張り廻られた構成(吸気ダクト格子網902)を備える。この例では、プレート105は、96個のウェル205が格子状(縦方向に8行×横方向に12列)に配置されてなる。
【0144】
次に、
図10に示すスクリーニング装置100Bの構成を、上述した他の実施の形態のスクリーニング装置100、100Aの構成と適宜比較しながら説明する。
図10に示すスクリーニング装置100Bは、
図6のスクリーニング装置100Aと同様に、第2のガスセンサ104がガスセンサケース908内に格納されている。また、
図10に示すように、ガスセンサケース908は、上述した96個(8×12個)のウェル205が配列されたプレート105が収容された密閉容器900と、チューブ904により接続(すなわち流体的に連通)されている。
【0145】
そして、
図10に示す構成では、チューブ904(例えば内径2mm×4mmの矩形チューブ)を用いて採取した空気をガスセンサケース908に導入し、かかるケース908内を通過する空気中のガスを第2のガスセンサ104でセンシングすることによって、対応するウェル205の直上の空気のガス濃度を測定する。
【0146】
別の側面からは、
図1(
図5)で説明したスクリーニング装置100(100A)では、第2のガスセンサ104は、密閉容器103(103A)内の複数のウェル205内の空気を取り込んで同時にセンシングし、かつ、インキュベータ101内に収容する密閉容器103(103A)毎にガス濃度を検知する。
一方、
図10に示すスクリーニング装置100Bでは、(インキュベータ101または密閉容器103に相当する)密閉容器900に収容される全て(この例では96個)のウェル205に対して、(一つの)第2のガスセンサ104を使用する。また、スクリーニング装置100Bは、縦または横に並ぶ一列または一行のウェル205の上空の気体を、後述する吸気ダクト格子網902の要素であるチューブ904を選択して一度にセンシングするようになっており、その詳細は後述する。
【0147】
なお、
図10では、第2のガスセンサ104が収容されたガスセンサケース908を密閉容器900内に配置する構成としたが、かかるガスセンサケース908は密閉容器900の外部に配置しても構わない。この点、後述する電磁バルブ906やデマルチプレクサ907の配置についても同様である。
【0148】
また、
図10に示すスクリーニング装置100Bは、
図1等で説明した構成と同様に、密閉容器900内のウェル205の直上の気体を強制的に吸引するポンプ112が使用される。そして、ガスセンサケース908とポンプ112は、吸引管112aによって連結され、ポンプ112と密閉容器900は、供給管112bによって連結される。さらに、
図10に示すように、密閉容器900は、配管を通じて、吸気ダクト格子網902と連通される。
【0149】
かくして、スクリーニング装置100Bでは、ポンプ112の作動により、吸気ダクト格子網902のチューブ904を通じて、ウェル205のすぐ上の気体を採取し、採取された気体をガスセンサケース908に導入してガスセンサ104でセンシングすることができる。
【0150】
図5および
図6等で上述した構成と同様に、スクリーニング装置100Bでは、第2のガスセンサ104が収容されたガスセンサケース908内の隙間容積を、密閉容器900の隙間容積とは独立かつ任意の容積に設定することができる。言い換えると、密閉容器900の隙間容積は、検体となる菌(98個のウェル205に各々入れられる)に対して、適量のガスを供給できるだけの広さを確保することができる。
【0151】
図10中に明示しないが、かかる実施の形態でも、
図1で上述した構成と同様に、ガスボンベ110の二酸化炭素ガスを密閉容器900の上方側から供給する構成とすることができる。一具体例では、ウェル205の上に配置される吸気ダクト格子網902の上方に覆い902a(
図10中に点線で示す四角の枠を参照)を設けること等により、ウェル205の直上の気体への影響(二酸化炭素濃度のばらつき等)を考慮しつつガスを供給することができる。
【0152】
次に、スクリーニング装置100Bにおいて、ガス濃度の測定結果から目的となるガス(CO2)を吸収できる菌が存在するウェル205を特定するための構成を説明する。
スクリーニング装置100Bは、プレート105に備えられた全て(ここでは96個)のウェル205のすぐ上の気体を採取するために、吸気ダクト格子網902(以下、チューブ網902と称する)を新たに備えたものとなっている。
【0153】
このチューブ網902は、
図10に参照されるように、複数の吸気穴905(例えば内径1mm)を備えるチューブ904を複数本(この例では12+8=20本)用い、各々のチューブ904が縦方向と横方向とに、網の目となるように編み込まれた構造となっている。
【0154】
なお、吸引時の条件を揃えるべく、吸気穴905を対応するウェル205の上空側(または対向面側)に統一して設ける観点からは、
図10中の左側に拡大して示すように、1個のウェル205に対して3本(またはそれ以上)のチューブ904を配置する構成としてもよい。但し、この場合は説明が複雑となるため、以下は上述のように、チューブ網902を構成するチューブ904の本数を20本(12+8本)とした場合を前提として説明する。
【0155】
チューブ網902は、プレート105が密閉容器900内の所定位置に載置されたとき、チューブ904の網の目(すなわち2本のチューブ904が交差する位置)がプレート105に備えられた全てのウェル205のすぐ上に来る大きさ(網の目のピッチ)で作られている。そして、2本のチューブ904,904が交わる網の目に対応する位置には、吸気穴905が開けられている。
【0156】
また、チューブ網902を構成する各々のチューブ904には、電磁バルブ906が備えられており、かかる電磁バルブ906の開閉制御を行うことによって、ポンプ112の吸引力が働くチューブ904を選択できる構成となっている。これら電磁バルブ906の開閉制御を行うために、デマルチプレクサ907(電源Vにより所定電圧が印加されている)と制御部108Bが信号線911で電気的に接続されている。なお、電磁バルブ906は、超音波ポンプ、チェックバルブ等で代用してもよい。
【0157】
さらに、
図10に示す例では、ポンプ112で吸引された気体が再び密閉容器900に吸入される(再利用のため戻される)ように供給管112bを配管している。
なお、他の例として、ポンプ112で吸引された気体を密閉容器900の外に放出する(再利用しない)ように配管を構成しても構わない。この場合、ポンプ112での気体吸引に伴って密閉容器900内に発生する負圧は、密閉容器900に備えられた吸気ダクト(
図2の吸気ダクト106を参照)を通じて外気を導入することによって解消(消滅)する。
【0158】
上述した
図10の構成に基づき、ガス(CO
2)を吸収できる菌が存在するウェル205を一度に特定する方法(動作の一例)を説明する。
【0159】
上述のように、チューブ網902は、縦と横にそれぞれ12本と8本のチューブ904で構成されている。ただし、ポンプ112は一つであることから、気体の採取は、制御部108Bの制御により、吸引対象となるチューブ904を1本ずつ選択する(使用する)ように、対応する電磁バルブ906を開く動作を行う。非制限的な一具体例では、
図10中に示す上段(横一段目)の12個のウェル205の上のチューブ904から気体を吸引するように対応する電磁バルブ906を開き、その後、最終段(横八段目)の12個のウェル205の上のチューブ904から気体を吸引するように同様の動作を繰り返す。この間、ガスセンサケース908によって、12個分のウェル205の上の空気のガス濃度が各々測定されることになる。したがって、8段分の全てのウェル205の上空の気体のガス濃度が測定された場合、測定値が最も低い「段」(この例では、CO
2を最も多く吸収できる菌が存在する12個分のウェル205)を特定することができる。
【0160】
続いて、制御部108Bは、
図10中の左側(縦一列目)の8個のウェル205の上のチューブ904から気体を吸引するように対応する電磁バルブ906を開き、その後、最終列(縦12列目)の8個のウェル205の上のチューブ904から気体を吸引するように同様の処理および動作を繰り返す。この間、ガスセンサケース908によって、8個分のウェル205の上の空気のガス濃度が各々測定されることになる。したがって、12列分の全てのウェル205に関するガス濃度が測定された場合、測定値が最も低い「列」(CO
2を最も多く吸収できる菌が存在する8個分のウェル205)を特定することができる。
【0161】
かくして、ガス(CO2)を最も多く吸収できる菌が存在する一つのウェル205は、測定されたガス濃度の最も低いチューブ904を、横(段)と縦(列)で各々1本ずつ選択(特定)した場合の、その交点に属するウェル205が該当する。
【0162】
以下、上述したウェル205を特定するための動作(制御部108Bによる制御内容)をより詳しく説明する。なお、以下の制御例は、ガスボンベ110(
図1を参照)からのガス(CO
2)が全てのウェル205に行き渡った状態かつポンプ112の稼働開始後であることを前提とする。
【0163】
制御部108Bは、チューブ網902を構成するいずれか1本のチューブ904に連通する電磁バルブ906(上記例では
図9中の右上側に位置する電磁バルブ906)を開くようにデマルチプレクサ907をスイッチングし、ガスセンサ502の検知結果(
図7参照)を予め定められた所定時間分だけ記録する。
【0164】
なお、電磁バルブ906を開く順序、すなわち吸気穴905を通じて気体を吸引するチューブ904を選択する順序は、特に制限されない。一方、ここでは上述したように、
図10中に示す上下8段、左右12列の20本のチューブ904のうち、上から順に8本のチューブ904を選択した後、左から順に12本のチューブ904を選択するものとする。
【0165】
次に、制御部108Bは、次の1本のチューブ904に連通する電磁バルブ906(この例では
図9中の右側の上から2番目に位置する電磁バルブ906)を開くようにデマルチプレクサ907をスイッチングし、同様に、ガスセンサ502の検知結果(
図7参照)を予め定められた所定時間分だけ記録する。
【0166】
そして、制御部108Bは、予め定められた順序に従って、20本目のチューブ904に対するガスセンサ502の検知結果を記録し終わるまで、上述と同様の処理を繰り返す。この後、制御部108Bは、縦8段(8本)分のチューブ904に対するガスセンサ502の検知結果(例えば検知濃度のピーク値)を比較して、検知されたガス濃度(二酸化炭素濃度(ppm)のピーク値)が最も低いチューブ904を特定する。
【0167】
この特定により、1本のチューブ904に割り当てられた複数個(この例では12個分)のウェル205から吸気された気体におけるCO2濃度の平均値が最も低いものを特定する(縦8段のうちの1本を絞り込む)ことができる。
【0168】
続いて、制御部108Bは、横12列(12本)分のチューブ904に対するガスセンサ502の検知結果を比較して、検知されたガス濃度(二酸化炭素濃度(ppm)のピーク値)が最も低いチューブ904を特定する。
【0169】
この特定により、1本のチューブ904に割り当てられた複数個(この例では8個分)のウェル205から吸気された気体におけるCO2濃度の平均値が最も低いものを特定する(横12列のうちの1本を絞り込む)ことができる。
【0170】
そして、制御部108Bは、特定された2本のチューブ904が交差する位置に対応するウェル205を特定する。この特定により、検知されたガス濃度(二酸化炭素濃度(ppm)のピーク値)が最も低いウェル205、言い換えると、二酸化炭素ガスを最も多く吸収した検体(菌)を検出することができる。
【0171】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施形態の構成図であり、上述した気体採取方式を適用した他の構成例を示す。なお、上述した他の実施の形態の構成と同等の部分には同一又は類似の符号を付して、適宜その説明を省略する。
【0172】
図11に示す第3の実施形態は、検体を含む培養液206が入れられる個々のウェル205に電磁バルブ装置1100を装着し、ウェル205のすぐ上の気体を直接採取して、当該気体を第2のガスセンサ104が格納されたガスセンサケース908に導入してガス濃度を測定する構成となっている。
【0173】
図11に示すように、第2のガスセンサ104は、ガスセンサケース908内に格納されており、配管(チューブ1108)により電磁バルブ装置1100の吸気ダクト1109に接続(流体連通)され、ひいてはウェル205に連通する。また、ガスセンサケース908内の第2のガスセンサ104は、配管(吸引管112a)によりポンプ112に連通する。
【0174】
ポンプ112は、稼働時にウェル205のすぐ上の気体を採取してガスセンサケース908に導入するように気体を吸引する。なお、前述と同様に、ウェル205はプレート105の構成要素であり、かかるウェル205には菌を入れた培養液206が入っている(
図12も参照)。
【0175】
さらに、第3の実施形態では、第2のガスセンサ104および電磁バルブ装置1100を制御する制御部108Cが備えられる。制御部108Cは、信号線1117を通じて第2のガスセンサ104と接続されている。制御部108Cは、第2のガスセンサ104によって検出されたガス濃度データを収集し分析する機能を有する。また、制御部108Cは、信号線1116を通じて電磁バルブ装置1100のコイル1103とも接続されている。制御部108Cは、コイル1103を駆動することにより、電磁バルブ装置1100におけるバルブの開閉および開度を制御する。以下に、電磁バルブ装置1100の構成を説明する。
【0176】
図11に示すように、電磁バルブ装置1100は、筐体としての電磁バルブハウジング1101内に、容器状の凹部1101a、ノズル1106、弁体1105、コア1107、バネ1104、コイル1103、換気ダクト1102等が配置され、これら各部により電磁バルブが形成される。
【0177】
上記のうち、凹部1101aは、電磁バルブハウジング1101の内部に形成された穴状の部位であり、
図11中の下部側がウェル205の平面形状に対応した開口形状を有し、上部側が漏斗状に絞り込まれた形状を有する。また、凹部1101aの側部には、電磁バルブハウジング1101の上面に連なる換気ダクト1102が連通している。
【0178】
ノズル1106は、略管状の部位であり、ノズル1106の一端側(
図11中の下側)は凹部1101aの上部と連通した管状をなし、ノズル1106の他端側は、電磁バルブハウジング1101の上面に連なる排気ダクト1109となっている。排気ダクト1109には、チューブ1108を通じて、第2のガスセンサ104が収容されたガスセンサケース908が連通している。
【0179】
弁体1105は、例えば上半分が中空パイプ状、下半分がテーパー状をなし、ノズル1106の下方側の位置で移動可能に配置されている。コア1107は、弁体1105の上側と接続され、弁体1105とともに、
図11中に示す距離(ストローク)STだけ上下移動できるように配置される。コア1107は、鉄などの磁性体を含む。また、コア1107は、付勢部としてのバネ1104によって下方向に押し付けられている。
【0180】
コイル1103は、電磁バルブハウジング1101内におけるコア1107の位置よりも幾分高い位置に、固定して設けられている。コイル1103は、コア1107の外径よりも幾分大きな内径を有する平面リング状のコアに巻き付けられてなる。コイル1103を構成する巻き線の端部は、コントローラ1115に接続されている。
【0181】
制御部108Cは、信号線1116および信号線1117を介してコイル1103および第2のガスセンサ104と各々接続されている。制御部108Cは、例えばユーザの入力指示に従って、コイル1103の通電状態(オン、オフ)を切り替える。また、制御部108Cは、例えばユーザの入力指示に従って、第2のガスセンサ104の稼働を制御し、第2のガスセンサ104が出力するガス濃度検知結果を取得する。
【0182】
上記のような構成の電磁バルブ装置1100の動作について説明する。
【0183】
まず、コイル1103が通電していない状態では、バネ1104の伸長力により、弁体1105のテーパー状の先端部がノズル1106に圧着することにより、弁体1105ひいては電磁バルブが閉状態になる。
【0184】
一方、コイル1103が通電状態になると、コイル1103に電磁力が発生することにより、下方に位置するコア1107および弁体1105を、バネ1104の伸長力に逆らってストロークSTの距離分だけ引き上げる。かかる動作により、ノズル1106が開かれて、電磁バルブが開状態になる。
【0185】
この構成例では、ウェル205内の気体は、吸気ダクト1109に取り付けられたチューブ1108を通じてガスセンサケース908およびポンプ112に連通している。したがって、ポンプ112の稼働状態においてノズル1106が開くことにより、ポンプ112の吸引力によりウェル205のすぐ上の気体が採取、吸引されて、ポンプ112までの流路経路に設けられた第2のガスセンサ104によってウェル205内のガス濃度を測定することができる。
【0186】
また、吸気ダクト1109からの吸引力により電磁バルブハウジング1101(凹部1101a)内に負圧が生じると、換気ダクト1102を通じて外部の空気が電磁バルブハウジング1101内に流入される(
図11中の白抜き矢印を参照)。
【0187】
図12は、
図11で説明した気体採取方式の電磁バルブ装置1100を複数配列して、プレート105の対応するウェル205に各々適用して構成したスクリーニング装置の構成例を示す。以下、主として
図11で説明した構成と異なる部分について説明する。
【0188】
図12に示すスクリーニング装置100Cは、複数の電磁バルブ装置1100により採取された気体のガス濃度を測定するために、各々中空の換気層1203および吸気層1204を設けた。また、これら複数の電磁バルブ装置1100を上述した制御部108Cで制御するために、制御部108Cに接続される信号線1116を接続する回路層1205を設けた。
【0189】
吸気層1204は、配管(チューブ1108)により、第2のガスセンサ104が収容されたガスセンサケース908と接続(流体連通)されている。また、吸気層1204は、各々の電磁バルブ装置1100の吸気ダクト1109と接続(流体連通)されている。一方、換気層1203は、電磁バルブ装置1100の各々の換気ダクト1102と接続(流体連通)されている。また、換気層1203は、外気を導入するための吸気ダクト1203aを備える。
【0190】
スクリーニング装置100Cの制御部108Cは、予め定められた順序に従って(例えば図中の左側の電磁バルブ装置1100から順に)、弁体1105ひいては電磁バルブの開閉を制御する。一具体例では、制御部108Cは、第2のガスセンサ104(濃度検知部)により取得される空気を、ウェル205(検体収容部)毎に取得するように、各々の電磁バルブ装置1100における電磁弁の開閉を制御する。
【0191】
上述した構成を備えたスクリーニング装置100Cによれば、任意の電磁バルブと接続されたウェル205の上空の気体を採取してガス濃度を測定することができる。
【0192】
(第4の実施の形態)
図13は、ウェル205の上空のガス濃度を、当該上空を通過する光の減衰量に置き換えて測定する方式を用いたスクリーニング装置の構成を説明するための要部概要図である。
【0193】
この構成は、上述した第2および第3の実施形態と同じ機能を、NDIR(Non Dispersive Infrared)方式を直接適用した構成で実現するために考案されたものである。
【0194】
上述した第1~第3の実施の形態で用いたガスセンサ(102,104)は、一般的な公知の構成のものを用いることができる。
【0195】
図示しないが、かかるガスセンサ(102,104)の構成の一具体例としては、ガス測定室として機能するケーシングの内部に、赤外線を出射するレーザーダイオードなどの赤外光源と、測定対象となるガス(この例ではCO2)に対する固有の光波長吸収帯を有する帯域通過フィルタと、赤外光源から出射された赤外線を受光する赤外光センサと、が設けられる。このうち、赤外光源から出射される赤外光の波長は、測定対象のガス(CO2)固有の吸収波長とされる。
【0196】
上述した第1の実施形態では、密閉容器103の中に、上記のガス測定室を有する第2のガスセンサ104を組み込んだ構成とした。これに対して、
図13に示す第4の実施形態のスクリーニング装置100Dは、第1の実施の形態とは逆の構成、言い換えると、ガス測定室の中に密閉容器103を配置した(組み込んだ)構成となっている。
【0197】
より詳しくは、第4の実施形態の一具体例は、
図13中に示すように、赤外線を出射するレーザーダイオードなどの赤外光源1301と、赤外光源1301から出射された赤外線を受光する受光素子を備えた赤外光センサ1302と、がプレート105を左右方向から挟むようにして配置される。
【0198】
あるいは、第4の実施形態の他の具体例は、上述した赤外光源1301と、ガス固有光波長吸収帯の帯域通過フィルタ1303および赤外光センサ1302と、がプレート105を上下方向から挟むようにして配置される。他の例として、この逆すなわち、赤外光源1201をプレート105の下方に配置し、帯域通過フィルタ1303および赤外光センサ1302をプレート105の上方に配置してもよい。
【0199】
総じて、赤外光源1201とガス固有光波長吸収帯の帯域通過フィルタ1303と赤外光センサ1302の配置は、測定目的に応じて自由に変えることができる。
【0200】
さらに、赤外光源1201と赤外光センサ1302を制御するために、制御部108Dを設けて、信号線1305により接続される。
【0201】
なお、プレート105およびプレート105に形成されるウェル205の構成は、
図2等で上述した通りである。
【0202】
かかる第4の実施の形態のスクリーニング装置100Dでは、上述した各実施の形態のように、プレート105の要素であるウェル205のすぐ上の気体を採取する必要がない。したがって、スクリーニング装置100Dでは、ポンプ112およびその配管等が不要となる。
【0203】
すなわち、第4の実施の形態の一具体例では、
図13に示すように、赤外光源1301からウェル205のすぐ上の気体を通る(通過する)ように赤外光を照射し、通過した赤外線を、帯域通過フィルタ1303を透過させた後に赤外光センサ1302で受光して減衰量を測定する。
【0204】
ここで、赤外光源1301と帯域通過フィルタ1303および赤外光センサ1302との間での赤外光の減衰量は、測定対象となるウェル205の上空のガス濃度に対応して変化する。したがって、かかる赤外光の減衰量を測定することにより、測定対象となるウェル205の直上のガス濃度を測定することができる。
【0205】
また、プレート105に形成されたウェル205が格子状(マトリクス状)に配列されている場合、
図13中に示す赤外光源1301と帯域通過フィルタ1303および赤外光センサ1302の組を、フレーム、レールおよびモータ等の駆動源に接続して移動可能な構成とし、かかる駆動源を制御部108Dで制御してもよい。この場合、プレート105に形成される各々のウェル205の上空のガス濃度を順次測定することができる。
【0206】
上述した各実施の形態の構成は、適宜組み合わせることができる。
【0207】
以上、詳述したように、各実施の形態のスクリーニング装置(100、100A、100B、100C、100D)は、検査対象となる検体(菌入りの培養液)を収容し、該検体に消費させるガスを導入するウェル205(検体収容部)と、対応する数のウェル205(検体収容部)の検体の上にある空気中のガス(CO2)の濃度を検知するガス濃度検知部(第2のガスセンサ104)を備える。
【0208】
かかる構成によれば、ガス濃度検知部は、対応する数のウェル205内の検体の上にある空気中のガスの濃度を検知する。したがって、ガスへの反応性の高い検体を選別するまでの作業の効率性を高め、選別の精度を高めることができる。また、ガス濃度検知部と検体収容部との対応数を変えることにより、ガス濃度検知部の使用数を減らすことができる。さらには、一つのガス濃度検知部で任意の数(例えば、一つ(
図7参照)、一まとまり分(
図2、
図5等参照)、或いは装置内に入れられた全ての数(
図10、
図12等を参照))のウェル205のガス濃度を検知する、といったこともできる。
【0209】
また、スクリーニング装置100、100A、100B、100Cでは、ウェル205内の気体を移動させる気体移動部(ポンプ112および種々の配管)を備え、ガス濃度検知部(第2のガスセンサ104)は、移動する気体を取得して、ガスの濃度を検知する構成を備える。
【0210】
かかる構成によれば、対応するウェル205内の気体におけるガス濃度の検知性能を向上させることができ、さらにはウェル205と第2のガスセンサ104との実質的な距離を離すこともできるので(
図11を参照)、設計の自由度が増す。
【0211】
また、
図1で上述したスクリーニング装置100は、気体を移動させるための配管を、複数のウェル205を略密閉状態にして収容する密閉容器103(密閉収容容器)と、複数の密閉容器103を保温して収容する保温室(インキュベータ101)と、を連通するように構成し、ガス濃度検知部(第2のガスセンサ104)を密閉容器103(密閉収容容器)内に配置する構成を備える。
【0212】
かかる構成によれば、多数の検体を培養しながら装置を稼働させてスクリーニングの各工程(
図3参照)を行うことができる。
【0213】
また、
図6~
図12で上述したスクリーニング装置100A、100B、および100Cは、ガス濃度検知部を収容するガスセンサケース908を備え、第2のガスセンサ104が収容されたガスセンサケース908を、ポンプ112と検体収容部(ウェル205)との流路中に設ける構成とした。
【0214】
かかる構成によれば、ガスセンサケース908内の隙間空間を最適化することによって、第2のガスセンサ104のガス検知の精度を一層高めることができる。具体的には、第2のガスセンサ104が収納されたガスセンサケース908の隙間の容積は、第2のガスセンサ104が一つのウェル205内の検体の上にある空気中のガスの濃度を検知できる容積に設定されるとよい。
【0215】
また、
図10で上述したスクリーニング装置100Bは、検体収容部(ウェル205)が格子状に配置されたプレート105を使用する場合に、配管は、各々のウェル205の上を通過し、かつ配管同士が交差するように網状に配置されたチューブ網902の構成を有し、各々の配管(チューブ904)は、ウェル205の位置に吸気穴905が設けられ、第2のガスセンサ104は、チューブ網902のいずれかのチューブ904に設けられた吸気穴905から吸引される気体を取得して、ガスの濃度を検知する構成を備える。
【0216】
かかる構成によれば、多数のウェル205の中から最もガスに対する反応特性の良い検体がある一つのウェル205を迅速に選定(スクリーニング)することができる。
【0217】
かかる選定を自動で行うために、制御部108Bに選定部としての機能を担わせることができ、具体的な選定方法の一例は上述の通りである。すなわち、選定部は、網状に配置されたチューブ904のうち、検知されたガス濃度が最も低い段のチューブ904と、検知されたガス濃度が最も低い列のチューブ904と、が交差する位置に対応するウェル205を、ガスの消費量が最も多い検体が収容されたウェル205として選定する。
【0218】
また、
図11および
図12で上述したスクリーニング装置100Cは、濃度検知部(第2のガスセンサ104)と検体収容部(ウェル205)との流路中に配置された電磁弁(電磁弁装置1100)と、濃度検知部(第2のガスセンサ104)により取得される空気を、検体収容部(ウェル205)毎に取得するように電磁弁の開閉を制御する開閉制御部(108C)とを備える構成とした。
【0219】
かかる構成によれば、予め定められた順序で各々のウェル205のガス濃度を検知することができる。
【0220】
さらに、
図13で上述したスクリーニング装置100Dでは、濃度検知部は、光を出射する発光部1301と、発光部1301から出射された光を受光する受光部1302と、を備え、検体収容部(ウェル205)は、発光部1031および受光部1302の間に配置される構成とした。
【0221】
かかる構成とすることにより、プレート105の要素であるウェル205のすぐ上の気体を「採取」する必要がなくなり、ポンプ112およびその配管等が不要となる。
【0222】
上述した各実施の形態によれば、ガスの吸収能力が高い検体が入ったウェル205を特定する際に(
図3のS305を参照)、スクリーニング装置100(インキュベータ101)から半数のウェル205を回収して再度濃度測定を行う煩わしさを解消することができる。
【0223】
また、上述した実施の形態によれば、使用するガスセンサの数を出来るだけ減らしつつ、上記の効果を得ることができる。
【0224】
上述した構成は適宜組み合わせることができる。
【0225】
その他、上述した実施の形態または具体例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0226】
100、100A、100B、100C、100D スクリーニング装置(選別支援装置)
101 インキュベータ(保温室)
102 第1のガスセンサ
103、103A 密閉容器(第2の密閉容器)
104 第2のガスセンサ(ガス濃度検知部)
105 プレート
108、108A、108B、108C、108D、108E 制御部(選定部、開閉制御部)
109 モニタ
110 ガスボンベ
111 レギュレータ
106 吸気ダクト
107 換気ダクト
112 ポンプ(気体移動部)
112a 吸引管(配管)
112b 供給管(配管)
201 上蓋
202 容器
204 信号線ソケット
205 ウェル(検体収容部)
902 チューブ網
904 チューブ
905 吸気穴
906 電磁バルブ
907 デマルチプレクサ
908 ガスセンサケース
1100 電磁バルブ装置
1205 回路層
1301 赤外光源(発光部)
1302 赤外光センサ(受光部)
1303 帯域通過フィルタ