(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】保護素子及びバッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20241031BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241031BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20241031BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01H37/76 F
H01H37/76 P
H01M10/44 P
H01M50/20
H02H7/18
(21)【出願番号】P 2021028002
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-334394(JP,A)
【文献】特開2009-105263(JP,A)
【文献】特開2013-229295(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
H01M 10/42 - 10/48
H01M 50/20 - 50/298
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に支持された可溶導体と、
上記可溶導体に接続された複数の通電部と、
上記絶縁基板に設けられ、通電されることにより発熱する発熱体と、
上記発熱体と接続され、上記発熱体への給電端子となる発熱体電極と、
上記発熱体を被覆するガラス層を備え、
上記ガラス層は、上記発熱体の融点よりも低い融点を有
し、
上記ガラス層は、上記発熱体が発熱すると軟化して上記ガラス層内の温度差によって生じる応力を発散させる保護素子。
【請求項2】
上記ガラス層は、上記発熱体の発熱温度よりも低い融点を有する請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
上記ガラス層の融点は600℃以下である請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
上記ガラス層の融点は上記保護素子のリフロー実装時の温度よりも高い請求項1~3のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項5】
上記ガラス層の融点は300℃以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項6】
上記発熱体は、上記絶縁基板の上記可溶導体が設けられた面に設けられ、
上記ガラス層の上に設けられ、上記発熱体と上記可溶導体との間に電気的に接続される発熱体引出通電部を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項7】
上記発熱体及び上記ガラス層は、上記絶縁基板の上記可溶導体が設けられた面と反対側の面に設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載の保護素子。
【請求項8】
1つ以上のバッテリセルと、
上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、
上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子を備え、
上記保護素子は、
絶縁基板と、
上記絶縁基板上に支持された可溶導体と、
上記可溶導体に接続された複数の通電部と、
上記絶縁基板に設けられ、通電されることにより発熱する発熱体と、
上記発熱体と接続され、上記発熱体への給電端子となる発熱体電極と、
上記発熱体を被覆するガラス層を備え、
上記ガラス層は、上記発熱体の融点よりも低い融点を有
し、
上記ガラス層は、上記発熱体が発熱すると軟化して上記ガラス層内の温度差によって生じる応力を発散させる、
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電流経路を溶断することにより、電流経路上に接続された回路を保護する保護素子、及びこれを用いたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し利用することのできる二次電池の多くは、バッテリパックに加工されてユーザに提供される。特に重量エネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池においては、ユーザ及び電子機器の安全を確保するために、一般的に、過充電保護、過放電保護等のいくつもの保護回路をバッテリパックに内蔵し、所定の場合にバッテリパックの出力を遮断する機能を有している。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池等向けの保護回路の保護素子として、保護素子内部に発熱体を有し、この発熱体の発熱によって電流経路上の可溶導体を溶断する構造が用いられている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の用途は、近年拡大しており、より大電流の用途、例えば電動ドライバ等の電動工具や、ハイブリッドカー、電気自動車、電動アシスト自転車等の輸送機器への採用が開始されている。これらの用途において、特に起動時等には、数10A~100Aを超えるような大電流が流れる場合がある。このような大電流容量に対応した保護素子の実現が望まれている。
【0005】
このような大電流に対応する保護素子を実現するために、断面積を増大させた可溶導体を用い、発熱体を形成した絶縁基板の表面にこの可溶導体を接続した保護素子が提案されている。
【0006】
図8は、従来の保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
図8に示す保護素子100は、絶縁基板101と、絶縁基板101の表面上に形成されるとともに絶縁基板101の裏面に形成された第1、第2の外部接続電極102a,103aを介して外部回路の電流経路上に接続される第1、第2の電極102、103と、絶縁基板101の表面に形成され通電すると発熱する発熱体104と、発熱体104を被覆する絶縁層105と、絶縁層105上に積層されるとともに発熱体104と接続された発熱体引出電極106と、第1の電極102、発熱体引出電極106、及び第2の電極103にわたって接続用ハンダを介して搭載されるヒューズエレメント107とを備える。
【0007】
発熱体104は、絶縁基板101の表面上に形成された発熱体給電電極108と接続されている。発熱体給電電極108は、絶縁基板101の裏面に形成された第3の外部接続電極108aとキャスタレーションを介して接続されている。発熱体104は、第3の外部接続電極108aを介して外部回路に設けられた外部電源と接続されている。そして、発熱体104は、図示しないスイッチ素子等により常時、電流及び発熱が制御されている。
【0008】
発熱体104は、ガラス層等からなる絶縁層105によって被覆されるとともに、絶縁層105上に形成された発熱体引出電極106と、絶縁層105を介して重畳されている。絶縁層105は、例えばガラスペーストを印刷、焼成することにより形成されている。また、発熱体引出電極106上には第1、第2の電極102,103間にわたって接続されたヒューズエレメント107が接続されている。
【0009】
ヒューズエレメント107は、絶縁層105を介して発熱体104に重畳されることにより発熱体104と熱的に接続され、発熱体104が通電によって発熱すると溶断される。
【0010】
ヒューズエレメント107は、Pbフリーハンダなどの低融点金属やAg、Cu又はこれらを主成分とする合金などの高融点金属により形成され、あるいは低融点金属と高融点金属の積層構造を有する。そして、ヒューズエレメント107は、第1の電極102から発熱体引出電極106を経て第2の電極103にかけて接続されることにより、保護素子100が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント107は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱体104の発熱により溶断し、第1、第2の電極102,103間を遮断する。
【0011】
そして、保護素子100は、外部回路の電流経路を遮断する必要が生じると、スイッチ素子により発熱体104へ通電される。これにより、発熱体104は高温に発熱し、外部回路の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント107を溶融させる。ヒューズエレメント107の溶融導体は、濡れ性の高い発熱体引出電極106及び第1、第2の電極102,103に引き寄せられる。これによりヒューズエレメント107は、第1の電極102~発熱体引出電極106~第2の電極103の間を溶断させ、外部回路の電流経路が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、保護素子が用いられる機器の高電圧化が進み、発熱体に印加される電圧も安全且つ低電圧である42Vを超える使用が標準的に行われる様になってきている。ここで、保護素子の絶縁層105(ガラス層)は、発熱体104の熱を効率よく発熱体引出電極106やヒューズエレメント107へ伝えるために、厚みが非常に薄く形成されている(例えば10~40μm)。そのため、ガラスペーストの印刷時にガラス内に発生するピンホール等の絶縁性能が低下している箇所が存在していると、発熱体104に電圧が印加された時に、絶縁破壊が発生し、十分に発熱する前に発熱体104が破壊されたり、発熱体引出電極106が損傷したりするおそれがある。
【0014】
また、絶縁層105は、発熱体104との接触面とそれ以外の面での温度差による線膨張差によって生ずる応力により、絶縁層105の材料そのものが破壊され、同時に接触している発熱体104や発熱体引出電極106も損傷するおそれもある。この傾向は、絶縁基板の裏面に発熱体104及び絶縁層105を形成し、絶縁層105にヒューズエレメント107が重畳されない裏面ヒーター構造において、大きくなる。
【0015】
このような絶縁破壊に伴う発熱体104や発熱体引出電極106の損傷によってヒューズエレメントが融け残り、電流遮断が阻害されるリスクは、高電圧、大電流化に伴ってヒューズエレメントが大型化するにつれて、また、定格電圧が向上し電界強度が高くなるにつれて大きくなる。
【0016】
この対策として、ガラスペーストを印刷する回数を増やす事が挙げられるが、厚膜印刷により積層していくことになる為、製造工程における位置合わせ等の条件出しに投入ロット毎に調整時間を必要となり、生産性が著しく低下してしまう。
【0017】
したがって、発熱体を内蔵した保護素子において、高電圧、大電流化に対応するとともに、素子内部で絶縁層や発熱体の破損を起こすことなく、より安全に且つ速やかに作動する対策が求められている。
【0018】
そこで、本技術は、絶縁層や発熱体の破損を起こすことなく、安全かつ速やかに電流経路を遮断できる保護素子及びこれを用いたバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するために、本技術に係る保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に支持された可溶導体と、上記可溶導体に接続された複数の通電部と、上記絶縁基板に設けられ、通電されることにより発熱する発熱体と、上記発熱体と接続され、上記発熱体への給電端子となる発熱体電極と、上記発熱体を被覆するガラス層を備え、上記ガラス層は、上記発熱体の融点よりも低い融点を有し、上記ガラス層は、上記発熱体が発熱すると軟化して上記ガラス層内の温度差によって生じる応力を発散させるものである。
【0020】
また、本技術に係るバッテリパックは、1つ以上のバッテリセルと、上記バッテリセルの充放電経路上に接続され、該充放電経路を遮断する保護素子と、上記バッテリセルの電圧値を検出して上記保護素子への通電を制御する電流制御素子を備え、上記保護素子は、絶縁基板と、上記絶縁基板上に支持された可溶導体と、上記可溶導体に接続された複数の通電部と、上記絶縁基板に設けられ、通電されることにより発熱する発熱体と、上記発熱体と接続され、上記発熱体への給電端子となる発熱体電極と、上記発熱体を被覆するガラス層を備え、上記ガラス層は、上記発熱体の融点よりも低い融点を有し、上記ガラス層は、上記発熱体が発熱すると軟化して上記ガラス層内の温度差によって生じる応力を発散させるものである。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、ガラス層は、発熱体の融点よりも低い融点を有するため、発熱体が発熱すると軟化する。そのため、ガラス層内の温度差によって生じる応力を発散させることができ、ガラス層の破損及びこれに起因する絶縁破壊及び発熱体の破損を防止し、可溶導体を溶断させるために必要十分な発熱体の発熱時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、絶縁基板表面に発熱体を設けた保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す保護素子において、可溶導体が溶断した状態を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図である。
【
図4】
図4は、バッテリパックの構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、絶縁基板裏面に発熱体を設けた保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す保護素子において、可溶導体が溶断した状態を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図である。
【
図8】
図8は、保護素子の一構成例を示す図であり、(A)はカバー部材を省略して示す平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術が適用された保護素子及びバッテリパックについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
[第1の実施の形態]
本技術が適用された保護素子の第1の実施の形態について説明する。本技術が適用され
た保護素子1は、
図1(A)~(C)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2上に支持された可溶導体3と、可溶導体3に接続された複数の通電部4a~4cと、絶縁基板2に設けられ、通電されることにより発熱する発熱体5と、発熱体5と接続され、発熱体5への給電端子となる発熱体電極6と、発熱体5を被覆するガラス層7を備え、ガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有する。
【0025】
絶縁基板2の可溶導体3が支持された表面2aには、発熱体5及び発熱体5を被覆するガラス層7が形成されている。また、絶縁基板2の表面2aには、通電部として、可溶導体3の一端部と接続された第1の通電部4a及び可溶導体3の他端部と接続された第2の通電部4bが形成されている。さらに、絶縁基板2の表面2a側には、通電部4として、発熱体5と電気的に接続されるとともに、ガラス層7上に重畳され可溶導体3とも接続された発熱体引出通電部4cが形成されている。
【0026】
ここで、ガラス層7は、発熱体5と接する部位と接しない部位、発熱体引出通電部4cと接する部位と接しない部位など放熱特性が部分的に異なる。そのため、ガラス層7は、発熱体5の発熱時によって内部応力が生じ、これが破損の原因となり得る。しかし、保護素子1のガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有するため、発熱体5が発熱すると軟化する。そのため、ガラス層7内の温度差によって生じる応力を発散させることができ、ガラス層7の破損及びこれに起因する絶縁破壊及び発熱体5の破損を防止し、可溶導体3を溶断させるために必要十分な発熱体5の発熱時間を確保することができる。
【0027】
このような保護素子1は、外部回路に組み込まれることにより、可溶導体3が当該外部回路の電流経路の一部を構成し、発熱体5の発熱、あるいは定格を超える過電流によって溶断することにより電流経路を遮断する。以下、保護素子1の各構成について詳細に説明する。
【0028】
[絶縁基板]
絶縁基板2は、たとえば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材によって形成される。その他、絶縁基板2は、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0029】
[第1、第2の通電部]
絶縁基板2の相対向する両端部には、第1、第2の通電部4a,4bが形成されている。第1、第2の通電部4a,4bは、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の通電部4a,4bの表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。これにより、保護素子1は、第1、第2の通電部4a,4bの酸化を防止し、導通抵抗の上昇に伴う定格の変動を防止することができる。また、保護素子1をリフロー実装する場合に、可溶導体3を接続する接続用ハンダが溶融することにより第1、第2の通電部4a,4bを溶食(ハンダ食われ)するのを防ぐことができる。
【0030】
第1の通電部4aは、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第1の外部接続電極11と連続されている。また、第2の通電部4bは、絶縁基板2の表面2aより、キャスタレーションを介して裏面2bに形成された第2の外部接続電極12と連続されている。保護素子1が外部回路基板に実装されると、第1、第2の外部接続電極11,12が、当該外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、可溶導体3が当該外部回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0031】
第1、第2の通電部4a,4bは、接続ハンダ等の導電接続材料を介して可溶導体3が搭載されることにより、可溶導体3を介して電気的に接続されている。また、
図2(A)(B)に示すように、第1、第2の通電部4a,4bは、保護素子1に定格を超える大電流が流れ可溶導体3が自己発熱(ジュール熱)によって溶断し、あるいは発熱体5が通電に伴って発熱し可溶導体3が溶断することにより、接続遮断される。
【0032】
[発熱体]
発熱体5は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱体5は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板2上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。一例として、発熱体5は、酸化ルテニウム系ペーストと銀とガラスペーストの混合ペーストを所定の電圧に応じて調整し、絶縁基板2の表面2aの所定の位置に所定の面積で製膜し、その後、適正条件にて焼成処理を行うことにより形成することができる。また、発熱体5の形状は適宜設計できるが、
図1に示すように、絶縁基板2の形状に応じて略矩形状とすることが発熱面積を最大化するうえで好ましい。
【0033】
また、発熱体5は、一端部5aが第1の引出電極15と接続され、他端部5bが第2の引出電極16と接続されている。第1の引出電極15は発熱体電極6から引き出され、発熱体5の通電時には発熱体電極6と同電位となる。第2の引出電極16は絶縁基板2の表面2aに設けられた中間電極8から引き出され、発熱体5の通電時には中間電極8及びこれと接続された発熱体引出通電部4cと同電位となる。第1の引出電極15は、発熱体電極6から発熱体5の一端部5aに沿って引き出され、
図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体5の一側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体5の一側縁が重畳されている。同様に、第2の引出電極16は、中間電極8から発熱体5の他端部5bに沿って引き出され、
図1に示す保護素子1では、略矩形状に形成された発熱体5の他側縁に沿って延在されるとともに、当該発熱体5の他側縁が重畳されている。
【0034】
発熱体電極6及び中間電極8は、絶縁基板2の第1、第2の通電部4a,4bが設けられた側縁と異なる相対向する側縁に形成されている。発熱体電極6は、発熱体5への給電端子となる電極であり、第1の引出電極15を介して発熱体5の一端部5aと接続されるとともに、キャスタレーションを介して絶縁基板2の裏面2bに形成された第3の外部接続電極13と連続されている。
【0035】
発熱体電極6、第1、第2の引出電極15,16、及び中間電極8は、第1、第2の通電部4a,4bと同様に、AgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成することができる。また、絶縁基板2の表面2a上に形成されるこれら各電極及び通電部を同一の材料により構成することで、一度の印刷及び焼成工程で形成することができる。
【0036】
なお、発熱体電極6は、第3の外部接続電極13と接続される外部回路基板の電極に設けられた接続用ハンダがリフロー実装等において溶融し、キャスタレーションを介して発熱体電極6上に這い上がり、発熱体電極6上に濡れ拡がることを防止する規制壁を設けてもよい。第1、第2の通電部4a,4bも同様に、規制壁を設けてもよい。規制壁は、例えばガラスやソルダーレジスト、絶縁性接着剤等ハンダに対する濡れ性を有しない絶縁材料を用いて形成することができ、発熱体電極6上に印刷等により形成することができる。規制壁を設けることにより、溶融した接続用ハンダが発熱体電極6や第1、第2の通電部4a,4bまで濡れ広がることを防止し、保護素子1と外部回路基板との接続性を維持することができる。
【0037】
中間電極8は、発熱体5とガラス層7上に積層される発熱体引出通電部4cとの間に設けられる電極であり、発熱体5の他端部5bと接続されるとともに、発熱体引出通電部4cと接続されている。発熱体引出通電部4cは、ガラス層7を介して発熱体5と重畳するとともに可溶導体3と接続される。
【0038】
[ガラス層]
また、発熱体5、第1の引出電極15及び第2の引出電極16は、ガラス層7に被覆されている。また、ガラス層7上には発熱体引出通電部4cが形成されている。
【0039】
ガラス層7は、発熱体5の保護及び絶縁を図るものである。ガラス層7は発熱体5の熱を効率よく発熱体引出通電部4cや可溶導体3へ伝えるために、厚みが例えば10~40μmと薄く形成されている。ガラス層7は、例えばガラス系のペーストを塗布、焼成することにより形成することができる。
【0040】
また、ガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有する。ガラス層7は、発熱体5や第1、第2の引出電極15,16と接する部位と接しない部位、発熱体引出通電部4cと接する部位と接しない部位など放熱特性が部分的に異なる。
【0041】
ここで、ガラス層の融点を発熱体5の融点と同等とすると、発熱体5の発熱時によって内部応力が生じ、これが破損の原因となり得る。しかし、保護素子1のガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有するため、発熱体5が発熱すると軟化する。そのため、ガラス層7内の温度差によって生じる応力を発散させることができ、ガラス層7の破損及びこれに起因する絶縁破壊及び発熱体5の破損を防止し、可溶導体3を溶断させるために必要十分な発熱体5の発熱時間を確保することができる。同様に、発熱体引出通電部4cの破損を防止し、可溶導体3の溶融導体が第1、第2の通電部4a,4bとの間に溶け残る事態を防止することができる。
【0042】
また、ガラス層7は、発熱体5の発熱温度よりも低い融点を有するものとしてもよい。これによっても、ガラス層7は、発熱体5が発熱すると軟化し、内部応力による破損を防止することができる。例えば、ガラス層7の融点は、600℃以下とすることができる。
【0043】
一方、ガラス層7の融点は保護素子1のリフロー実装時の温度よりも高いことが好ましい。これにより、保護素子1がリフローハンダ付けにより外部回路基板に実装される際に、ガラス層7が軟化して、発熱体引出通電部4cや可溶導体3の位置ズレが生じることを防止することができる。例えば、ガラス層7の融点は、300℃以上とすることができる。
【0044】
ガラス層7の融点や焼成温度は、ガラスペーストに配合するガラス粉末や樹脂、溶媒等の組成及び配合量を調整することにより設定可能である。
【0045】
保護素子1は、外部回路基板に実装されることにより、第3の外部接続電極13を介して発熱体5と外部回路に形成された電流制御素子等とが接続される。発熱体5は、平常時においては通電及び発熱が規制されているが、外部回路の通電経路を遮断する所定のタイミングで第3の外部接続電極13を介して通電され、発熱する。
【0046】
このとき、ガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有するため、発熱体5の発熱によって軟化する。そのため、ガラス層7内において、発熱体5や第1、第2の引出電極15,16と接する部位及び接しない部位との間における線膨張差に起因する内部応力の発生を抑え、ガラス層7の破損及びこれに伴う発熱体5の破損を防止することができる。また、ガラス層7の破損に伴う絶縁破壊(スパーク)、及び発熱体5の破損を防止することができる。そして、保護素子1は、可溶導体3を溶断させるために必要十分な発熱体5の発熱時間を確保することができる。
【0047】
保護素子1は、発熱体5の熱がガラス層7及び発熱体引出通電部4cを介して可溶導体3に伝達することにより、第1、第2の通電部4a,4bを接続している可溶導体3を溶融させることができる。可溶導体3の溶融導体3aは発熱体引出通電部4c上及び第1、第2の通電部4a,4bに凝集し、これにより第1、第2の通電部4a,4b間の電流経路が遮断される。なお、後述するように、発熱体5は、可溶導体3が溶断することにより、自身の通電経路も遮断されることから発熱が停止する。
【0048】
[発熱体引出通電部]
ガラス層7上に形成される発熱体引出通電部4cは、一端を中間電極8と接続されるとともに、ガラス層7を介して発熱体5と一部重畳されている。また、発熱体引出通電部4cは、接続ハンダ等の接合材料を介して、第1、第2の通電部4a,4b間において、可溶導体3が接続されている。
【0049】
また、発熱体引出通電部4cは、第1、第2の通電部4a,4bと同様に、AgやCu等の導電ペーストを印刷、焼成することによって形成することができる。また、発熱体引出通電部4cの表面上には、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の被膜が、メッキ処理等の公知の手法によりコーティングされていることが好ましい。
【0050】
[可溶導体]
次いで、可溶導体3について説明する。可溶導体3は、第1及び第2の通電部4a,4b間にわたって実装され、発熱体5の通電による発熱、又は定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、第1の通電部4aと第2の通電部4bとの間の電流経路を遮断するものである。
【0051】
可溶導体3は、発熱体5の通電による発熱、又は過電流状態によって溶融する導電性の材料であればよく、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダや、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0052】
また、可溶導体3は、高融点金属と、低融点金属とを含有する構造体であってもよい。例えば、
図3に示すように、可溶導体3は、内層と外層とからなる積層構造体であり、内層として低融点金属層18、低融点金属層18に積層された外層として高融点金属層19を有する。可溶導体3は、第1、第2の通電部4a,4b及び発熱体引出通電部4c上に接続ハンダ等の接合材料を介して接続される。
【0053】
低融点金属層18は、好ましくは、ハンダ又はSnを主成分とする金属であり、「Pbフリーハンダ」と一般的に呼ばれる材料である。低融点金属層18の融点は、必ずしもリフロー炉の温度よりも高い必要はなく、200℃程度で溶融してもよい。高融点金属層19は、低融点金属層18の表面に積層された金属層であり、例えば、Ag若しくはCu又はこれらのうちのいずれかを主成分とする金属であり、第1、第2の通電部4a,4b及び発熱体引出通電部4cと可溶導体3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装をリフローによって行う場合においても溶融しない高い融点を有する。
【0054】
このような可溶導体3は、低融点金属箔に、高融点金属層をメッキ技術を用いて成膜することによって形成することができ、あるいは、他の周知の積層技術、膜形成技術を用いて形成することもできる。このとき、可溶導体3は、低融点金属層18の全面が高融点金属層19によって被覆された構造としてもよく、相対向する一対の側面を除き被覆された構造であってもよい。なお、可溶導体3は、高融点金属層19を内層とし、低融点金属層18を外層として構成してもよく、また低融点金属層18と高融点金属層19とが交互に積層された3層以上の多層構造とする、外層の一部に開口部を設けて内層の一部を露出させるなど、様々な構成によって形成することができる。
【0055】
可溶導体3は、内層となる低融点金属層18に、外層として高融点金属層19を積層することによって、リフロー温度が低融点金属層18の溶融温度を超えた場合であっても、可溶導体3として形状を維持することができ、溶断するに至らない。したがって、第1、第2の通電部4a,4b及び発熱体引出通電部4cと可溶導体3との接続や保護素子1の外部回路基板上への実装を、リフローによって効率よく行うことができ、また、リフローによっても可溶導体3の変形に伴って局所的に抵抗値が高く又は低くなる等により所定の温度で溶断しない、あるいは所定の温度未満で溶断する等の溶断特性の変動を防止することができる。
【0056】
また、可溶導体3は、所定の定格電流が流れている間は、自己発熱によっても溶断することがない。そして、定格よりも高い値の電流が流れると、自己発熱によって溶融し、第1、第2の通電部4a,4b間の電流経路を遮断する。また、発熱体5が通電され発熱することにより溶融し、第1、第2の通電部4a,4b間の電流経路を遮断する。
【0057】
このとき、可溶導体3は、溶融した低融点金属層18が高融点金属層19を溶食(ハンダ食われ)することにより、高融点金属層19が溶融温度よりも低い温度で溶解する。したがって、可溶導体3は、低融点金属層18による高融点金属層19の浸食作用を利用して短時間で溶断することができる。また、可溶導体3の溶融導体3aは、発熱体引出通電部4c及び第1、第2の通電部4a,4bの物理的な引き込み作用により分断されることから、速やかに、かつ確実に、第1、第2の通電部4a,4b間の電流経路を遮断することができる(
図2)。
【0058】
また、可溶導体3は、低融点金属層18の体積を、高融点金属層19の体積よりも多く形成することが好ましい。可溶導体3は、過電流による自己発熱又は発熱体5の発熱によって加熱され、低融点金属が溶融することにより高融点金属を溶食し、これにより速やかに溶融、溶断することができる。したがって、可溶導体3は、低融点金属層18の体積を高融点金属層19の体積よりも多く形成することにより、この溶食作用を促進し、速やかに第1、第2の通電部4a,4b間を遮断することができる。
【0059】
また、可溶導体3は、内層となる低融点金属層18に高融点金属層19が積層されて構成されているため、溶断温度を従来の高融点金属からなるチップヒューズ等よりも大幅に低減することができる。したがって、可溶導体3は、同一サイズのチップヒューズ等に比して、断面積を大きくでき電流定格を大幅に向上させることができる。また、同じ電流定格をもつ従来のチップヒューズよりも小型化、薄型化を図ることができ、速溶断性に優れる。
【0060】
また、可溶導体3は、保護素子1が組み込まれた電気系統に異常に高い電圧が瞬間的に印加されるサージへの耐性(耐パルス性)を向上することができる。すなわち、可溶導体3は、例えば100Aの電流が数msec流れたような場合にまで溶断してはならない。この点、極短時間に流れる大電流は導体の表層を流れることから(表皮効果)、可溶導体3は、外層として抵抗値の低いAgメッキ等の高融点金属層19が設けられているため、サージによって印加された電流を流しやすく、自己発熱による溶断を防止することができる。したがって、可溶導体3は、従来のハンダ合金からなるヒューズに比して、大幅にサージに対する耐性を向上させることができる。
【0061】
なお、可溶導体3は、酸化防止、及び溶断時の濡れ性の向上等のため、フラックス(図示せず)を塗布してもよい。また、保護素子1は、絶縁基板2がケース17に覆われることによりその内部が保護されている。ケース17は、例えば、各種エンジニアリングプラスチック、熱可塑性プラスチック、セラミックス、ガラスエポキシ基板等の絶縁性を有する部材を用いて形成することができる。また、ケース17は、絶縁基板2の表面2a上に、可溶導体3が溶融時に球状に膨張し、溶融導体3aが発熱体引出通電部4cや第1、第2の通電部4a,4b上に凝集するのに十分な内部空間を有する。
【0062】
[回路構成例]
このような保護素子1は、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック20内の回路に組み込まれて用いられる。
図4に示すように、バッテリパック20は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル21a~21dからなるバッテリスタック25を有する。
【0063】
バッテリパック20は、バッテリスタック25と、バッテリスタック25の充放電を制御する充放電制御回路26と、バッテリスタック25の異常時に充放電経路を遮断する本発明が適用された保護素子1と、各バッテリセル21a~21dの電圧を検出する検出回路27と、検出回路27の検出結果に応じて保護素子1の動作を制御するスイッチ素子となる電流制御素子28とを備える。
【0064】
バッテリスタック25は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル21a~21dが直列接続されたものであり、バッテリパック20の正極端子20a、負極端子20bを介して、着脱可能に充電装置22に接続され、充電装置22からの充電電圧が印加される。充電装置22により充電されたバッテリパック20は、正極端子20a、負極端子20bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0065】
充放電制御回路26は、バッテリスタック25と充電装置22との間の電流経路に直列接続された2つの電流制御素子23a、23bと、これらの電流制御素子23a、23bの動作を制御する制御部24とを備える。電流制御素子23a、23bは、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETという。)により構成され、制御部24によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック25の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部24は、充電装置22から電力供給を受けて動作し、検出回路27による検出結果に応じて、バッテリスタック25が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子23a、23bの動作を制御する。
【0066】
保護素子1は、例えば、バッテリスタック25と充放電制御回路26との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子28によって制御される。
【0067】
検出回路27は、各バッテリセル21a~21dと接続され、各バッテリセル21a~21dの電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路26の制御部24に供給する。また、検出回路27は、バッテリセル21a~21dのいずれか1つが過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子28を制御する制御信号を出力する。
【0068】
電流制御素子28は、たとえばFETにより構成され、検出回路27から出力される検出信号によって、バッテリセル21a~21dの電圧値が所定の過放電又は過充電状態を超える電圧になったとき、保護素子1を動作させて、バッテリスタック25の充放電電流経路を電流制御素子23a、23bのスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0069】
以上のような構成からなるバッテリパック20に用いられる、本発明が適用された保護素子1は、
図5に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子1は、第1の外部接続電極11がバッテリスタック25側と接続され、第2の外部接続電極12が正極端子20a側と接続され、これにより可溶導体3がバッテリスタック25の充放電経路上に直列に接続される。また、保護素子1は、発熱体5が発熱体電極6及び第3の外部接続電極13を介して電流制御素子28と接続されるとともに、発熱体5がバッテリスタック25の開放端と接続される。このように、発熱体5は、一端を発熱体引出通電部4cを介して可溶導体3及びバッテリスタック25の一方の開放端と接続され、他端を第3の外部接続電極13を介して電流制御素子28及びバッテリスタック25の他方の開放端と接続される。これにより電流制御素子28によって通電が制御可能な発熱体5への給電経路が形成される。
【0070】
[保護素子の動作]
検出回路27がバッテリセル21a~21dのいずれかの異常電圧を検出すると、電流制御素子28へ遮断信号を出力する。すると、電流制御素子28は、発熱体5に通電するよう電流を制御する。保護素子1は、バッテリスタック25から、発熱体5に電流が流れ、これにより発熱体5が発熱を開始する。保護素子1は、発熱体5の発熱により可溶導体3が溶断し、バッテリスタック25の充放電経路を遮断する。また、保護素子1は、可溶導体3を高融点金属と低融点金属とを含有させて形成することにより、高融点金属の溶断前に低融点金属が溶融し、溶融した低融点金属による高融点金属の溶食作用を利用して短時間で可溶導体3を溶解させることができる。
【0071】
このとき、保護素子1は、ガラス層7の融点が発熱体5の融点よりも低い。これにより、ガラス層7は、発熱体5が発熱すると軟化するため、ガラス層7内の温度差によって生じる応力を発散させることができる。したがって、保護素子1は、ガラス層7の破損及びこれに起因する発熱体電極6、第1の引出電極15又は発熱体5といった高電位部と、発熱体引出通電部4cといった低電位部との間の絶縁破壊(スパーク)、及び発熱体5や発熱体引出通電部4cの破損を防止することができる。そして、保護素子1は、可溶導体3を溶断させるために必要十分な発熱体5の発熱時間を確保することができ、安全かつ速やかに電流経路を遮断できる。
【0072】
保護素子1は、可溶導体3が溶断することにより、発熱体5への給電経路も遮断されるため、発熱体5の発熱が停止される。
【0073】
なお、保護素子1は、バッテリパック20に定格を超える過電流が通電された場合にも、可溶導体3が自己発熱により溶融し、バッテリパック20の充放電経路を遮断することができる。
【0074】
このように、保護素子1は、発熱体5の通電による発熱、あるいは過電流による可溶導体3の自己発熱によって可溶導体3が溶断する。このとき、保護素子1は、回路基板へのリフロー実装時や、保護素子1が実装された回路基板が更にリフロー加熱等の高温環境下に曝された場合にも、低融点金属が高融点金属によって被覆された構造を有することにより、可溶導体3の変形を抑制することができる。したがって、可溶導体3の変形による抵抗値の変動等に起因する溶断特性の変動が防止され、所定の過電流や発熱体5の発熱によって速やかに溶断することができる。
【0075】
本発明に係る保護素子1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。
【0076】
[第2の実施の形態]
次いで、本技術が適用された保護素子の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した保護素子1と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略することがある。
図6(A)~(C)に示すように、第2の実施の形態に係る保護素子30は、絶縁基板2の表面2aと反対側の裏面2bに、発熱体5、第1,第2の引出電極15,16及びこれらを被覆するガラス層7が形成されている。また、絶縁基板2の裏面2bには、発熱体電極6、裏面側中間電極8b、第1、第2の外部接続電極11,12が形成されている。
【0077】
また、絶縁基板2の表面2aには、第1、第2の電極4a,4bと、可溶導体3と、発熱体引出通電部4cと、表面側中間電極8aが形成されている。
【0078】
裏面側中間電極8bは、上述した中間電極8と同様に、第2の引出電極16が引き出されている。また、表面側中間電極8aと裏面側中間電極8bは、絶縁基板2の側面に形成されたキャスタレーションや絶縁基板2を貫通する導電スルーホール等により電気的に接続されている。表面側中間電極8aは、発熱体引出通電部4cが接続されている。表面側中間電極8aと裏面側中間電極8bは、上述した中間電極8と同様の材料、同様の工程によって形成することができる。
【0079】
発熱体引出通電部4cは、表面側中間電極8a及び裏面側中間電極8bを介して発熱体5と電気的及び熱的に接続される。すなわち、保護素子30は、発熱体5が絶縁基板2を介して発熱体引出通電部4cを加熱するとともに、熱伝導性に優れる表面側中間電極8a及び裏面側中間電極8bを介して発熱体4の熱が発熱体引出通電部4cに伝わり、可溶導体3を加熱、溶断することができる(
図7(A)(B))。
【0080】
なお、保護素子30では、発熱体電極6が外部回路基板の電極と接続される外部接続電極ともなるため、保護素子1に設けた第3の外部接続電極13は設けられていない。
【0081】
保護素子30においても、ガラス層7は、発熱体5や第1、第2の引出電極15,16と接する部位と接しない部位など放熱特性が部分的に異なる。しかし、ガラス層7は、発熱体5の融点よりも低い融点を有するため、発熱体5が発熱すると軟化する。そのため、保護素子30は、ガラス層7内の温度差によって生じる応力を発散させることができ、ガラス層7の破損及びこれに起因する絶縁破壊及び発熱体5の破損を防止し、可溶導体3を溶断させるために必要十分な発熱体5の発熱時間を確保することができる。
【0082】
なお、保護素子30においても、ガラス層7は、発熱体5の発熱温度よりも低い融点を有するものとしてもよく、例えばガラス層7の融点を600℃以下としてもよい。また、保護素子30においても、ガラス層7の融点は保護素子1のリフロー実装時の温度よりも高いことが好ましく、例えばガラス層7の融点を300℃以上としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 保護素子、2 絶縁基板、3 可溶導体、4 通電部、4a 第1の通電部、4b 第2の通電部、4c 発熱体引出通電部、5 発熱体、6 発熱体電極、7 ガラス層、8 中間電極、11 第1の外部接続電極、12 第2の外部接続電極、13 第3の外部接続電極、14 接続ハンダ、15 第1の引出電極、16 第2の引出電極、18 低融点金属層、19 高融点金属層、20 バッテリパック、21 バッテリセル、22 充電装置、23 電流制御素子、24 制御部、25 バッテリスタック、26 充放電制御回路、27 検出回路、28 電流制御素子、30 保護素子