(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表面検査方法及び表面検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20241031BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2021037624
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】坂本 三四郎
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174340(JP,A)
【文献】国際公開第2019/151076(WO,A1)
【文献】特開2000-214102(JP,A)
【文献】特開2008-107217(JP,A)
【文献】特開2014-106113(JP,A)
【文献】特開平04-118503(JP,A)
【文献】特開2012-032317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0307236(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01N 23/00-23/2276
G01B 15/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に搬送される面状の被検査体の表面凹凸部又は内部空隙に由来する不良の有無を、検査光の強度変化によって検出する表面検査方法であって、
前記検査光は、前記被検査体の側面視において前記被検査体の表面と平行で、かつ、前記被検査体の平面視において前記搬送方向と交わる方向であって、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する少なくとも2本の検査光を備え、
前記2本の検査光は、前記平面視で互いに非平行であ
り、
前記検査光がX線光であり、表面凹部又は内部空隙以外では前記被検査体の表面層の内部を通過させ、前記表面凹部又は内部空隙においては前記強度が変化することで、前記表面凹部又は内部空隙に由来する不良を検出する、表面検査方法。
【請求項2】
前記被検査体の表面における前記不良の平面内の存在位置を、
前記搬送方向の座標を、前記検査光の前記強度が変化するタイミングにより特定し、
前記搬送方向と直交する方向の座標を、前記2本の検査光における前記強度が変化するタイミングの差分により特定する、請求項1に記載の表面検査方法。
【請求項3】
さらに、前記検査光
としてレーザ光
を用い、
前記レーザ光を表面凸部以外では前記被検査体の表面から所定の距離を離間した状態で通過させ、前記表面凸部においては前記強度が変化することで、前記表面凸部に由来する不良を検出する、請求項1又は2に記載の表面検査方法。
【請求項4】
前記被検査体はシート状物の巻取体であって、
前記巻取体は、前記シート状物が所定の張力で引き出され、2本のガイドロールを経て巻取られ、
前記検査光は、前記ガイドロール間で、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する、請求項1から
3のいずれかに記載の表面検査方法。
【請求項5】
前記2本の検査光は、平面視において、幅方向に沿った仮想の直線に対して線対称に位置するように配置される、請求項1から
4のいずれかに記載の表面検査方法。
【請求項6】
所定の方向に搬送される面状の被検査体の表面凹凸部又は内部空隙に由来する不良の有無を、検査光の強度の変化によって検出する表面検査装置であって、
前記面状の被検査体を所定の方向に搬送可能な搬送部と、
前記被検査体の側面視において前記被検査体の表面と平行で、かつ、前記被検査体の平面視において前記搬送方向と交わる方向であって、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する少なくとも2本の前記検査光を、前記平面視において互いに非平行に照射可能な第1照射部及び第2照射部と、
前記それぞれ検査光の強度の変化を検出する受光部と、を備え
、
前記検査光がX線光である表面検査装置。
【請求項7】
前記被検査体の表面における前記不良の平面内の存在位置を、
前記搬送方向の座標を、前記検査光の前記強度が変化するタイミングにより特定し、
前記搬送方向と直交する方向の座標を、前記2本の検査光における前記強度が変化するタイミングの差分により特定する座標特定手段を備える、請求項
6に記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記被検査体はシート状物の巻取体であって、
前記搬送部は、前記巻取体から前記シート状物を引き出す繰出部と、引き出された前記シート状物を巻取る巻取部と、引き出された前記シート状物の張力を調整可能な張力調整部と、前記繰出部と前記巻取部との間に配置される2本のガイドロールとを備え、
前記検査光が、前記ガイドロール間で、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過するように、前記第1照射部及び前記第2照射部が配置されている、請求項
6又は7に記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記2本の検査光は、平面視において、幅方向に沿った仮想の直線に対して線対称に位置するように配置される、請求項
8に記載の表面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に搬送される面状の被検査体の表面凹凸部に由来する不良の有無を、検査光の強度の変化によって検出する表面検査方法及び表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面状の被検査体、例えば、フィルムや金属箔上に所定の組成物を塗布して塗布層を形成した積層体などにおいては、塗布後の塗布面に、異物、しわ、塗工スジなどの不良を検査することが求められている。一例を挙げると、電池の電極においても、集電体に電極活物質を含有する電極合材を面状に塗布したり、発泡金属などの金属多孔体に電極合材を充填したりすることで、電極集電体を構成する場合がある。このような場合にも、面状の電極集電体について、不良の検査を行う必要がある。
【0003】
面状の被検査体を流れ方向に移動させながら検査する方法としては、カメラを用いた画像処理が一般的であるが、カメラの視野幅以上の製品幅がある場合には、複数のカメラが必要であり、また、高分解のカメラを複数台並べる必要がある。
【0004】
これに関して、下記の特許文献1には、遮蔽体と投光装置と撮像装置とからなり、遮蔽体が被検査品の表面上を覆い、被検査品との間に微小間隙を形成し、投光装置は微小間隙より遮蔽体の内側へ板状光を照射し、撮像装置は被検査品3の上方に配置する検査装置が開示されている。これにより、移動する紙や布などのシート状物の表面のしわや凹凸などの不良を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においても撮像装置を用いており、また、遮蔽体を必要とすることから、より簡単な構成で不良を検出する方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、面状の被検査体の表面凹凸部に由来する不良の有無及び存在位置を簡易な方法で検出できる検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、2本以上のレーザなどの検査光を、所定の位置関係になるように配置することで、簡易に表面凹凸の不良を検出すると共に、被検査体の検査平面における位置も特定できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 所定の方向に搬送される面状の被検査体の表面凹凸部又は内部空隙に由来する不良の有無を、検査光の強度の変化によって検出する表面検査方法であって、
前記検査光は、前記被検査体の側面視において前記被検査体の表面と平行で、かつ、前記被検査体の平面視において前記搬送方向と交わる方向であって、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する少なくとも2本の検査光を備え、
前記2本の検査光は、前記平面視で互いに非平行である、表面検査方法。
【0010】
(1)の発明によれば、互いに非平行な検査光を用いることで、搬送方向(流れ方向)の位置座標のみならず、搬送方向と直角方向(幅方向)の位置座標も測定できる。また、カメラを並べて配置する画像処理も不要であり、装置的にも非常に簡易であるので低コストな検査方法となる。
【0011】
(2) 前記被検査体の表面における前記不良の平面内の存在位置を、
前記搬送方向の座標を、前記検査光の前記強度が変化するタイミングにより特定し、
前記搬送方向と直交する方向の座標を、前記2本の検査光における前記強度が変化するタイミングの差分により特定する、(1)に記載の表面検査方法。
【0012】
(2)の発明によれば、2つの検査光における強度が変化するタイミングPと、その差分の時間tのみから、被検査物の平面上の位置座標を容易に特定することができる。この情報量はカメラの画像処理に比して極めて小さいことから、データ処理時間も短縮され、より高速で被検査体を搬送して短時間で検査を行うことができる。
【0013】
(3) 前記検査光がレーザ光であり、表面凸部以外では前記被検査体の表面から所定の距離を離間した状態で通過させ、前記表面凸部においては前記強度が変化することで、前記表面凸部に由来する不良を検出する、(1)又は(2)に記載の表面検査方法。
【0014】
(3)の発明によれば、可視・紫外・赤外などの集束光であるレーザ光を用いることで、表面凸部に起因する強度の変化を検出することができる。
【0015】
(4) 前記検査光がX線光であり、表面凹部又は内部空隙以外では前記被検査体の表面層の内部を通過させ、前記表面凹部又は内部空隙においては前記強度が変化することで、前記表面凹部又は内部空隙に由来する不良を検出する、(1)又は(2)に記載の表面検査方法。
【0016】
(4)の発明によれば、透過性の高いX線を用いることで、表面凹部又は内部空隙(ボイド)に起因する強度の変化を検出することができる。
【0017】
(5) 前記被検査体はシート状物の巻取体であって、
前記巻取体は、前記シート状物が所定の張力で引き出され、2本のガイドロールを経て巻取られ、
前記検査光は、前記ガイドロール間で、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する、(1)から(4)のいずれかに記載の表面検査方法。
【0018】
(5)の発明によれば、被検査体がガイドロール間で平面を維持できるので、シート状物の被検査体がバタつくことを防止でき検査精度が向上する。
【0019】
(6) 前記被検査体の搬送速度が、前記ガイドロール間で低下する、(5)に記載の表面検査方法。
【0020】
(6)の発明によれば、被検査体の移動速度を検査時に減速することで、被検査体がバタつくことを防止でき検査精度が向上する。
【0021】
(7) 前記2本の検査光は、平面視において、幅方向に沿った仮想の直線に対して線対称に位置するように配置される、(1)から(6)のいずれかに記載の表面検査方法。
【0022】
(8) 所定の方向に搬送される面状の被検査体の表面凹凸部又は内部空隙に由来する不良の有無を、検査光の強度の変化によって検出する表面検査装置であって、
前記面状の被検査体を所定の方向に搬送可能な搬送部と、
前記被検査体の側面視において前記被検査体の表面と平行で、かつ、前記被検査体の平面視において前記搬送方向と交わる方向であって、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過する少なくとも2本の検査光を、前記平面視で互いに非平行に照射可能な第1照射部及び第2照射部と、
前記それぞれ検査光の強度の変化を検出する受光部と、を備える表面検査装置。
【0023】
(8)の発明によれば、(1)と同様の効果が得られ、カメラを並べて配置する画像処理を行う必要がなく、簡易で低コストの検査装置を提供できる。
【0024】
(9) 前記被検査体の表面における前記不良の平面内の存在位置を、
前記搬送方向の座標を、前記検査光の前記強度が変化するタイミングにより特定し、
前記搬送方向と直交する方向の座標を、前記2本の検査光における前記強度が変化するタイミングの差分により特定する、座標特定手段を備える、(8)に記載の表面検査装置。
【0025】
(9)の発明によれば、(2)と同様の効果が得られ、座標特定に必要な情報量はカメラの画像処理に比して極めて小さいことから、データ処理時間も短縮され、より高速で被検査体を搬送して短時間で検査を行うことができる。
【0026】
(10) 前記被検査体はシート状物の巻取体であって、
前記搬送部は、前記巻取体から前記シート状物を引き出す繰出部と、引き出された前記シート状物を巻取る巻取部と、引き出された前記シート状物の張力を調整可能な張力調整部と、前記繰出部と前記巻取部との間に配置される2本のガイドロールとを備え、
前記検査光が、前記ガイドロール間で、前記被検査体表面上又は前記被検査体内を通過するように、前記第1照射部及び前記第2照射部が配置されている、(8)又は(9)に記載の表面検査装置。
【0027】
(10)の発明によれば、(5)と同様の効果が得られ、被検査体がガイドロール間で平面を維持できるので、シート状物の被検査体がバタつくことを防止でき検査精度が向上する。
【0028】
(11) 前記2本の検査光は、平面視において、幅方向に沿った仮想の直線に対して線対称に位置するように配置される、請求項10に記載の表面検査装置。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の表面検査方法及び表面検査装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】(a)
図1の平面図であり、(b)
図2のX-X断面を示す側面図である。
【
図4】
図3の受光部における受光強度レベルの変化を示す、時間-強度の測定結果を示す概念図である。
【
図6】本発明の表面検査方法及び表面検査装置の他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の内容は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0031】
<表面検査装置>
図1に示すように、本実施形態に係る表面検査装置は、平面状の被検査体40と、被検査体40を搬送する搬送部50と、第1検査光L
1を照射可能な第1照射部10と、第2検査光L
2を照射可能な第2照射部20と、受光部30と、図示しない座標特定手段と、を備えている。以下、各構成について説明するが、座標特定手段については後述する表面検査方法において説明する。
【0032】
(被検査体)
被検査体40は全体として平面状をなしており、その検査表面上には、検出されるべき表面凹凸部が存在している。より具体的には、
図2(b)に示す不良41(表面凸部)や、
図5に示す不良42(表面凹部)である。
【0033】
被検査体40は
図1に示すような板状部材であってもよく、ロールトゥロールで形成される巻取体から繰り出されたシート状物であってもよい。
【0034】
被検査体40の一例としては、金属箔などの集電体に電極活物質を含有する電極合材を面状に塗布した電極集電体や、発泡金属などの金属多孔体に電極合材を充填した電極集電体などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0035】
(搬送部)
搬送部50は、被検査体40を搬送可能なベルトコンベアなど、所定の搬送速度で搬送可能な公知の搬送装置を用いることができ特に限定されない。被検査体40が上記の巻取体の場合には、一方の巻取体からシートを繰り出して検査後に他方で巻取る、従来公知の巻き返し装置を搬送部として用いることができる。
【0036】
(第1照射部及び第2照射部)
第1照射部10及び第2照射部20は、この実施形態においてはレーザ光を検査光として出射可能な照射装置である。検査光はレーザ光のような集束光を用いることが好ましい。可視・紫外・赤外などの集束光であるレーザ光を用いることで、表面凸部に起因する強度の変化を検出することができる。
【0037】
図1に加えて
図2(a)(b)を参照しながら説明すると、この実施形態においては、第1照射部10及び第2照射部20は、それぞれが受光部30と一対になって配置されている。つまり、第1照射部10から第1検査光L
1が照射されて、受光部30にて第1検査光L
1の強度変化が経時的に計測される。同様に、第2照射部20から第2検査光L
2が照射されて、同じ受光部30にて第2検査光L
2の強度変化が経時的に計測される。
【0038】
(受光部)
受光部30は、レーザ光の強度を経時的に検出できるものであればよく、特に限定されない。従来公知のレーザセンサなどを適宜用いることができる。
【0039】
この実施形態においては同一の受光部30で第1照射部10及び第2照射部20からの検査光を受光しているが、これに限らず、それぞれを別の受光部にて受光してもよい。また、この実施形態では第1照射部10と第2照射部20は同一波長の同一レーザを用いているが、これに限らず、異なる波長の異なるレーザを用いてもよい。
【0040】
(第1照射部及び第2照射部の配置)
第1照射部10及び第2照射部20の配置は、
図2に示すように、被検査体40の側面視において被検査体40の表面と平行になるように配置される。この結果、
図2(b)に示すように、検査光と被検査体40は所定の距離が離間された状態で配置される。この離間距離は、表面凸部となる不良41を検出する観点から、不良41の大きさ(高さ)により異なり適宜設定できる。
【0041】
また、第1照射部10及び第2照射部20の配置は、
図2(a)に示すように、被検査体40の平面視においては、第1検査光L
1と第2検査光L
2とが、図中矢印で示す搬送方向と交わるように配置される。これによって、検査光は被検査体40の幅方向の全体を跨ぐように配置されるので、不良箇所が被検査体40の幅方向のいずれの位置に存在したとしても、不良箇所が検査光を必ず通過するように構成されている。
【0042】
ここで、本発明においては、第1検査光L
1と第2検査光L
2とが非平行になるように配置されることを特徴としている。この実施形態においては、
図3に示すように、第1検査光L
1は、搬送方向に対して角度θ
1をなしており、第2検査光L
2は、搬送方向に対して角度θ
2をなしている。非平行とは角度θ
1と(180-θ
2)とが異なっていることを意味する。本発明においては、角度θ
1、θ
2はL
1とL
2とが互いに非平行であればよく、一方の角度が90度であってもよいが、平面視において、L
1とL
2とが幅方向の仮想の直線に対して線対称に位置する配置、すなわち角度θ
1=角度θ
2であることが好ましい。
【0043】
<表面検査方法>
次に、上記表面検査装置を用いた本発明の表面検査方法について、
図3、
図4を用いて説明する。
図3は
図2の検査領域の拡大平面図であり、
図4は、
図3の受光部における受光強度レベルの変化を示す、時間-強度(受光強度レベル)の測定結果を示す概念図である。
【0044】
図3において、α、β、γは不良箇所であり、
図2(b)に示す表面凸部の不良41が存在する(図中×印で示す)。この状態で、被検査体40が搬送速度Vで図中矢印方向に移動する。このとき、α、β、γは、第1検査光L
1の走査線上と、第2検査光L
2の走査線上の2箇所を通過する際に、レーザ光が遮断されるので、受光部30の検出強度が低下する。
【0045】
図4はこのときの、不良α、β、γに由来する、受光部30における強度変化をそれぞれ示している。
図4の横軸は時間であり、縦軸は受光強度である。図中、ONは不良箇所がない場合の受光強度レベルであり、P
α1、P
α2、P
β1、P
β2、P
γ1、P
γ2は、不良41によりレーザ光が遮断されて受光強度レベルが低下している。なお、この実施形態においては、受光部30は一つであるため、第1検査光L
1の強度と第2検査光L
2の強度とが重なって加算されたピークが受光部30で検出されているが、受光部が検査光毎にそれぞれ別個存在する場合には、第1の受光部ではP
α1、P
β1、P
γ1のみが検出され、第2の受光部ではP
α2、P
β2、P
γ2のみが検出される。
【0046】
図3と
図4を合わせて参照し、被検査体40の表面における不良α、β、γの面内位置座標を求める方法について説明する。そして、この方法を実行するプログラムが、本発明の表面検査装置における座標特定手段に相当する。
【0047】
まず搬送方向(流れ方向)の不良α、β、γの位置座標については、
図4のそれぞれの強度変化位置であるP
α1、P
α2、P
β1、P
β2、P
γ1、P
γ2の時間より直接的に求めることができる。この場合、P1とP2はいずれか一つを検出すれば足りるが、両方を検出してもよい。
【0048】
なお、本発明においては、それぞれのPの幅Wは不良41の幅方向の大きさに相当することになるので、この情報から欠陥箇所の大きさも推定できる。例えば塗工に伴う筋状の大きな塗工ムラやシワなどの大きな欠陥などが存在する場合、この幅Wは大きくなるので、不良の種類を推定することにも利用できる。
【0049】
次に、不良箇所の、搬送方向に直交する方向(幅方向)については、例えば不良α、β、γが存在する場合、不良αは
図3のα
1の位置で
図4のP
α1を検出し、α
2の位置でP
α2を検出し、結果としての差分t
1を検出する。同様に、不良βはβ
1の位置でP
β1を検出し、β
2の位置でP
β2を検出し、差分t
2を検出する。同様に、不良γはγ
1の位置でP
γ1を検出し、γ
2の位置でP
γ2を検出し、差分t
3を検出する。
【0050】
この差分t
1、t
2、t
3は、t
Nが小さければ、不良箇所は
図3の上方(受光部30側)に位置し、t
Nが大きければ、不良箇所は
図3の下方(第1照射部10及び第2照射部2側)に位置することになり、t
Nと幅方向の位置座標とは直線関係の相関性がある。このため、あらかじめ、所定の搬送速度におけるt
Nと幅方向の位置座標との直線関係式を求めておくことで、幅方向の位置座標を特定できる。
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、2つの検査光における強度が変化するタイミングPと、その差分の時間tNのみから、被検査物の平面上の位置座標を容易に特定することができ、不良箇所の把握が簡便な方法で可能となる。
【0052】
(変形例)
図5は、上記の検査光としてレーザ光を用いた第1照射部10、第2照射部20、受光部30に代えて、検査光としてX線を用いた第1照射部10a、第2照射部20a(図示せず)、受光部30aを用いて、第1検査光L
3と第2検査光L
4(図示せず)を照射する点が上記の実施形態と異なっている。
【0053】
X線は、物質の透過性が高いが、被検査体40内を通過する場合と、凹部やボイドのような空隙に起因する空間を通過する場合で、その受光強度レベルが異なる。このため、
図5に示すように、X線を被検査体40内の表層部分を通過するように照射することにより、表面凹部である不良42や空隙(図示せず)に起因するX線強度の変化を受光部30aで検出することができる。
【0054】
なお、本発明においては、レーザ光による検査とX線による検査とを併用してもよい。この場合、例えば、レーザ光を用いた第1照射部10、第2照射部20、受光部30の組合せと、X線を用いた第1照射部10a、第2照射部20a(図示せず)、受光部30aの組合せを、平面視において検査光が重なるように(検査面の鉛直方向上下に並ぶように)配置してもよい。これにより、検査位置を平面視で一カ所にできるので検査スペースを小さくできる。また、後述するロールトゥロール方式の場合には、バタつきを抑えるために一定張力を掛ける必要がある領域を狭くすることができる。
【0055】
図6は、本発明の表面検査方法及び表面検査装置の他の実施形態を示す概略図であり、上記のロールトゥロールの場合を示している。
図6(a)は側面図、
図6(b)は検査部付近の拡大平面図である。この実施形態においては、被検査体はシート状物46の巻取体45である。搬送部55は、巻取体45からシート状物46を引き出す繰出部56と、引き出されたシート状物46を巻取る巻取部57と、引き出されたシート状物46の張力を調整可能な張力調整部(図示せず)とを備える。そして、繰出部56と巻取部57との間には、2本の平行なガイドロール58、59が配置されている。ガイドロール58、59は、繰出部56と巻取部57より相対的に高い位置に配置される結果、シート状物46は、ガイドロール58、59に抱かれて位置Pで当接した状態となる。
【0056】
検査光L1、L2は、平面視でガイドロール58、59の間で、シート状物46の表面上、又は、シート状物46内を通過するように、第1照射部10及び第1受光部31、第2照射部20及び第2受光部32が配置されている。シート状物46は2本のガイドロール58、59間で所定の張力を有するように調整される結果、平面性を維持して被検査体が平面に対して鉛直方向にバタつくことを防止できる。その結果、シート状物46と平行に照射でき、検査光と被検査体との所定の離間距離が一定に保たれるので検査精度が向上する。この際、ガイドロール間の距離を短くすることで、バタつきをより抑えることができる。
【0057】
なお、本発明においては、上記の態様において、2本の平行なガイドロールに代えて、互いに非平行な2本のガイドロールを備え、検査光が、ガイドロールの軸方向と平行で、かつ、被検査体がガイドロールの表面に当接する位置において、被検査体表面上又は被検査体内を通過するように、第1照射部及び第2照射部が配置されていてもよい。この態様によれば、シート状物はガイドロールに抱かれて当接しているので、高い精度でバタつきが抑制される。その結果、シート状物と平行に照射でき、検査光と被検査体との所定の離間距離が一定に保たれるので検査精度が向上する。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 第1照射部(レーザ光)
10a 第1照射部(X線)
20 第2照射部(レーザ光)
20a 第2照射部(X線)
30 受光部(レーザ光)
30a 受光部(X線)
40 被検査体
41 不良(表面凸部)
42 不良(表面凹部)
50 搬送部
L1 第1検査光(レーザ光)
L2 第2検査光(レーザ光)
L3 第1検査光(X線)
t1、t2、t3 タイミングの差分
α、β、γ 不良
α1、β1、γ1 距離
θ1、θ2 角度
Pα1、Pα2、Pβ1、Pβ2、Pγ1、Pγ2 強度変化位置