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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】移載装置および移載方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20241031BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J15/06 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021050449
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148679
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000103426
【氏名又は名称】オークラ輸送機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】前田 馨
(72)【発明者】
【氏名】草部 一仁
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0047331(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2602358(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 59/04
B66F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移載元から移載先へ物品を移載する移載装置であって、
前記物品の被吸着面を把持する吸着面を有するハンド装置と、
前記ハンド装置の位置を移動させる移動機構と、
前記ハンド装置および前記移動機構の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記吸着面に対して予め設定された複数の基準点の位置を記憶する記憶部と、
前記物品の移載先での位置姿勢と前記被吸着面の形状とから、前記物品に対する前記吸着面の前記基準点および把持姿勢を決定する把持姿勢決定部とを含み、
前記把持姿勢決定部によって決定された前記基準点が前記物品の把持目標位置に対して所定の位置関係となる前記把持姿勢で前記ハンド装置が前記物品を把持し、移載先で所望の前記位置姿勢に配置するように、前記ハンド装置および前記移動機構を動作させる
ことを特徴とする移載装置。
【請求項2】
前記把持姿勢決定部は、前記把持姿勢での前記被吸着面の寸法が前記吸着面に対応する寸法内にあるか否かに応じて前記基準点を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の移載装置。
【請求項3】
前記把持姿勢決定部は、
前記把持姿勢での前記被吸着面の寸法が前記吸着面に対応する寸法内にある場合、前記吸着面の複数の前記基準点のうち端部に位置する前記基準点に決定し、
前記把持姿勢での前記被吸着面の寸法が前記吸着面に対応する寸法を超える場合、前記吸着面の複数の前記基準点のうち中間に位置する前記基準点に決定する
ことを特徴とする請求項2記載の移載装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記吸着面の第1方向とこの第1方向に交差する第2方向との各方向において予め設定された寸法に関する複数の範囲を記憶し、
前記把持姿勢決定部は、前記第1方向と前記第2方向との各方向に対応する前記把持姿勢での前記被吸着面の寸法がどの前記範囲に属するかによって前記基準点を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の移載装置。
【請求項5】
前記物品の移載先での前記位置姿勢が前記第1方向の一方側かつ前記第2方向の一方側である場合、
前記把持姿勢決定部は、
前記把持姿勢での前記被吸着面の前記第1方向の寸法が、前記第1方向の前記範囲のうちの第1方向第1範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第1方向の一方側端部を基準列とし、かつ、前記第1方向第1範囲よりも長い前記範囲を含む第1方向第2範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第1方向の中間位置を基準列とし、
前記把持姿勢での前記被吸着面の前記第2方向の寸法が、前記第2方向の前記範囲のうちの第2方向第1範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第2方向の一方側端部を基準行とし、かつ、前記第2方向第1範囲よりも長い前記範囲を含む第2方向第2範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第2方向の中間位置を基準行とし、
前記第1方向の前記基準列と前記第2方向の前記基準行とが交差する位置を前記基準点に決定する
ことを特徴とする請求項4記載の移載装置。
【請求項6】
前記把持姿勢決定部は、前記把持姿勢での前記被吸着面の前記第2方向の寸法が、前記第2方向第1範囲よりも長く、前記第2方向第2範囲よりも短い第2方向第3範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第2方向の他方側端部を前記基準行とする
ことを特徴とする請求項5記載の移載装置。
【請求項7】
前記吸着面は、前記第1方向に複数並設され、
前記把持姿勢決定部は、前記第1方向における前記把持姿勢での前記被吸着面の寸法が前記吸着面の前記第1方向のどの前記範囲に属するかによって使用する前記吸着面を決定する
ことを特徴とする請求項4記載の移載装置。
【請求項8】
前記物品の移載先での前記位置姿勢が前記第1方向の一方側である場合、
前記把持姿勢決定部は、
前記把持姿勢での前記被吸着面の前記第1方向の寸法が、
前記第1方向の前記範囲のうちの第1方向第1範囲に属する場合は、前記吸着面の前記第1方向の一方側端部を基準列とするとともに一方側の前記吸着面のみの使用を決定し、
前記第1方向第1範囲よりも長い前記範囲を含む第1方向第2範囲に属する場合は、前記第1方向の一方側の前記吸着面の前記第1方向の中間位置を基準列とするとともに一方側の前記吸着面のみの使用を決定し、
前記第1方向第2範囲よりも長い前記範囲を含む第1方向第3範囲に属する場合、前記第1方向の前記吸着面の一方側端部を基準列とするとともに一方側の前記吸着面および隣接する前記吸着面の両方の使用を決定し、
前記第1方向第3範囲よりも長い前記範囲を含む第1方向第4範囲に属する場合、前記第1方向の一方側の前記吸着面および隣接する前記吸着面を合わせた中間位置を基準列とするとともに一方側の前記吸着面および隣接する前記吸着面の両方の使用を決定し、
前記基準列内で前記基準点を決定する
ことを特徴とする請求項7記載の移載装置。
【請求項9】
前記ハンド装置は、前記物品の前記被吸着面に対して交差する前記第2方向の第2被吸着面を吸着する第2吸着面を有し、
前記把持姿勢決定部は、
前記第2方向における前記吸着面の端部に位置する前記基準点に決定した場合、前記第2吸着面の使用を決定し、
前記第2方向における前記吸着面の中間に位置する前記基準点に決定した場合、前記第2吸着面の不使用を決定する
ことを特徴とする請求項4ないし8いずれか一記載の移載装置。
【請求項10】
物品の被吸着面を把持する吸着面を有するハンド装置と、前記ハンド装置の位置を移動させる移動機構とを用い、移載元から移載先へ前記物品を移載する移載方法であって、
前記吸着面に対して予め設定された複数の基準点の位置を取得するステップと、
前記物品の移載先での位置姿勢と前記被吸着面の形状とから、前記物品に対する前記吸着面の前記基準点および把持姿勢を決定するステップと、
決定された前記基準点が前記物品の把持目標位置に対して所定の位置関係となる前記把持姿勢で前記ハンド装置が前記物品を把持し、移載先で所望の前記位置姿勢に配置するように、前記ハンド装置および前記移動機構を動作させるステップと
を備えることを特徴とする移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載元から移載先へ物品を移載する移載装置および移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品をハンドで把持して移載先へ移載するために、例えば下記の特許文献1に記載された移載装置が知られている。
【0003】
この移載装置では、サイズ違いの多品種の物品を1台のハンドで把持して移載するために、物品の形状および移載先に対応した把持状態になるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-254078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の移載装置では、多品種の物品を1台のハンドで把持することになるため、物品の形状および移載先に対応した把持状態になるように制御する必要があるが、制御が複雑化する可能性がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、多品種の物品を把持する場合でも、制御が複雑化するのを防止できる移載装置および移載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移載装置は、移載元から移載先へ物品を移載する移載装置であって、前記物品の被吸着面を把持する吸着面を有するハンド装置と、前記ハンド装置の位置を移動させる移動機構と、前記ハンド装置および前記移動機構の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記吸着面に対して予め設定された複数の基準点の位置を記憶する記憶部と、前記物品の移載先での位置姿勢と前記被吸着面の形状とから、前記物品に対する前記吸着面の前記基準点および把持姿勢を決定する把持姿勢決定部とを含み、前記把持姿勢決定部によって決定された前記基準点が前記物品の把持目標位置に対して所定の位置関係となる前記把持姿勢で前記ハンド装置が前記物品を把持し、移載先で所望の前記位置姿勢に配置するように、前記ハンド装置および前記移動機構を動作させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多品種の物品を把持する場合でも、制御が複雑化するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態を示す移載装置の側面図である。
図2】同上移載装置による物品の移送先であるかご車の平面図である。
図3】同上移載装置のハンド装置の吸着部と基準点との関係を示す平面図である。
図4】同上ハンド装置の吸着部および第2吸着部の動きを(a)~(d)に示す側面図である。
図5】同上移載装置の制御部のブロック図である。
図6】同上移載装置の移載処理を説明するフローチャートである。
図7】同上移載装置で作成される把持計画の例を(a)~(f)に説明する平面図である。
図8】同上移載装置で作成される把持計画の例を(a)~(e)に説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に移載装置10を示す。移載装置10は、移載元から物品11を取り出し、取り出した物品11を移載先へ移載する。
【0012】
物品11は、例えば、収容物を収容する段ボール箱などの直方体やラップラウンド式のケースである。移載対象の物品11の形状および寸法は、単一種類の場合や、複数種類の場合がある。物品11は平坦状の外面を含み、物品11の上面は移載装置10によって吸着把持される被吸着面(第1被吸着面)11aであり、この被吸着面11aに交差する一側面は移載装置10によって吸着把持可能な場合に吸着把持される第2被吸着面11bである。
【0013】
移載元は、単一種類の物品11または複数種類の物品11が所定の積付パターンで積み付けられているパレット12である。例えばフォークリフトやコンベヤなどの搬送装置により、物品11の積み付けられているパレット12が移載装置10の動作範囲に対応した所定の移載元位置に搬入され、物品11が必要数取り出された後、または取り出されて空となったパレット12が移載元位置から搬出される。なお、移載元は、移載する物品11を順次搬入するコンベヤであってもよい。
【0014】
移載先は、図1および図2に示すように、例えば、ロールボックスパレットと呼ばれるかご車(かご台車)13である。かご車13は、複数のキャスター14を有する台車部15と、この台車部15上で周囲の側面のうち背面、左側面および右側面の3面に立設された格子状のパネル16とを備えている。台車部15上にパネル16が立設されない前面に物品11を出し入れ可能とする開口部17が設けられ、さらに、かご車13の上面が開口されている。空のかご車13が移載装置10の動作範囲に対応した所定の移載先位置に搬入され、物品11が移載されたかご車13が移載先位置から搬出される。なお、移載先は、長尺な台車部の長手方向の両端にパネルを有するカートラックなどでもよい。
【0015】
図2には、複数種類の物品11がかご車13に移載される例を示し、物品11の被吸着面11aの長辺がかご車13の開口部17に平行な左右方向である第1方向Xに沿う位置姿勢と、物品11の被吸着面11aの長辺がかご車13の開口部17に交差する前後方向である第2方向Yに沿う位置姿勢とが混在される場合もある。さらに、物品11は、かご車13に対して、開口部17に平行な幅方向に複数並ぶとともに開口部17に対して奥側と手前側を含む奥行方向に複数並んで配列される場合もある。
【0016】
また、移載装置10は、物品11を把持するハンド装置20と、このハンド装置20の位置を移動させる移動機構21とを備えている。
【0017】
ハンド装置20は、移動機構21に取り付けられるベース23と、物品11の上面の被吸着面11aを吸着把持する上面吸着部である吸着部(第1吸着部)24と、物品11の側面の第2被吸着面11bを吸着把持する側面吸着部である第2吸着部25と、この第2吸着部25との間で物品11を挟持するパーム26とを備えている。
【0018】
吸着部24は、エアシリンダなどによりベース23に対して昇降移動される。吸着部24の下面には、吸着パッドが設けられ、物品11の被吸着面11aを吸着把持する吸着面24aが形成されている。
【0019】
吸着部24は、図3の平面図に示すように、左右方向である第1方向Xに複数並設されている。本実施の形態では、吸着部24は、一方側である左側の吸着部24Lと他方側である右側の吸着部24Rとを備えている。各吸着部24L,24Rは、左右方向である第1方向Xの幅が、第1方向Xに交差する前後方向である第2方向Yの幅よりも小さい寸法関係にある。吸着部24L,24Rは、各々が独立して吸着/解除を切り換え可能とする。なお、吸着部24は、第2方向Yにも複数並設されていてもよく、あるいは第1方向Xおよび第2方向Yとも1つのみでもよい。
【0020】
吸着部24の第1方向Xの幅は、ハンド装置20の他の部分の幅よりも広いか略同じ幅にあり、また、吸着部24の第2方向Yにおける第2吸着部25側とは反対側の端部は、ハンド装置20の他の部分(パーム26を除く)よりも突出されているか略同じ位置にある。
【0021】
そして、吸着部24は、図4(a)に示すように、吸着把持する物品11の寸法に応じて、第2吸着部25を使用しない場合には下降移動され、また、図4(b)~(d)に示すように、物品11の寸法に応じて、第2吸着部25を使用する場合には上昇移動される。
【0022】
第2吸着部25は、エアシリンダなどによりベース23に対して昇降移動されるとともに、エアシリンダなどによりベース23に沿って水平方向である第2方向Yに移動される。第2吸着部25の側面には、吸着パッドが設けられ、物品11の第2被吸着面11bを吸着把持する第2吸着面25aが形成されている。第2吸着部25は、図3の平面図に示すように、吸着部24に対応して、第1方向Xに複数並設されている。本実施形態では、第2吸着部25は、左側の第2吸着部25Lと右側の第2吸着部25Rとを備えている。第2吸着部25L,25Rは、各々が独立して吸着/解除を切り換え可能とする。
【0023】
そして、第2吸着部25は、図4(a)に示すように、物品11の寸法に応じて使用不可の場合には、吸着部24の吸着面24aよりも上昇移動され、また、図4(b)~(d)に示すように、物品11の寸法に応じて使用可能な場合には、吸着部24の吸着面24aよりも下降移動されるとともに、図4(c)に示すように、物品11の第2方向Yの寸法が小さい場合には、吸着部24の吸着面24aの下方の空間を横切るように第2方向Yに所望量だけ水平移動される。
【0024】
パーム26は、エアシリンダなどによりベース23に対して昇降移動されるとともに、エアシリンダなどによりベース23に沿って水平方向である第2方向Yに移動される。そして、パーム26は、図4(a)(d)に示すように、物品11の寸法に応じて使用不可の場合には、吸着部24から離反するように第2方向Yに移動されるとともに吸着部24の吸着面24aよりも上昇移動され、また、図4(b)(c)に示すように、物品11の寸法に応じて使用可能な場合には、吸着部24の吸着面24aよりも下降移動されるとともに吸着部24に吸着把持された物品11に向けて移動される。
【0025】
また、図1に示すように、移動機構21は、多関節型ロボットであり、基台28と、この基台28上に旋回可能に設けられたロボットアーム29とを備えている。ロボットアーム29は、複数の回動可能な軸を有し、先端部を任意の位置に移動可能とする。ロボットアーム29の先端部には常に鉛直状態に保たれる回動軸30を有し、この回動軸30の下端にハンド装置20のベース23が取り付けられている。なお、移動機構21は、多関節型ロボットに限らず、例えば3軸の直交するスライド軸により構成される直交型移動機構などでもよい。
【0026】
次に、図5に移載装置10を制御する制御部40を示す。
【0027】
制御部40には、管理端末41と、カメラ42とが接続されている。
【0028】
管理端末41は、物品11の情報、および作業情報などを管理している。物品11の情報には、移載対象の物品11の形状および寸法などが含まれる。作業情報には、パレット12上の物品11の積付パターン、位置および向きなどの姿勢を含む位置姿勢、および取出順序や、かご車13の形状および寸法、かご車13への物品11の積付パターン、かご車13での物品11の位置および向きなどの姿勢を含む位置姿勢、および積付順序などが含まれる。
【0029】
カメラ42は、移載元位置に配置されたパレット12上の物品11の荷姿を上方から撮影する。パレット12には物品11が所定の積付パターンで積み付けられていることから、物品11の位置姿勢は把握できるが、物品11の位置ずれ、配置換え、または取り出しによって荷姿に欠けがあるなどの場合もあるので、実際の物品11の位置姿勢の情報を取得するためにカメラ42が用いられている。
【0030】
また、制御部40は、記憶部44と、把持姿勢決定部45と、動作計画生成部46と、ロボットコントローラ47とを備えている。
【0031】
記憶部44は、ハンド情報、作業情報、および商品情報などを記憶している。ハンド情報には、吸着部24の吸着面24aに対して予め設定された複数の基準点の位置(座標)、第1方向Xおよび第2方向Yの各方向において予め設定された寸法に関する複数の範囲などが含まれる。また、作業情報には、かご車13への物品11の積付パターン、積付順序、位置姿勢を含む積付情報、かご車13の寸法形状などの積付先情報が含まれる。また、物品情報には、移載対象の物品11の形状および寸法が含まれる。
【0032】
把持姿勢決定部45は、基準点決定部49および吸着部決定部50を備え、物品11の把持計画を作成する。
【0033】
基準点決定部49は、物品11の寸法情報と積付情報とから、物品11に対する吸着面24aの基準点を決定し、この決定された基準点に基づいた物品11に対する吸着面24aの把持姿勢を決定し、さらに、決定された吸着面24aの基準点および把持姿勢に対応して、物品11の被吸着面11aにおける把持目標位置を決定する。この物品11の把持目標位置は、例えば、決定された吸着面24aの基準点と重なる位置であり、三次元情報で定義されることが可能である。なお、物品11の寸法および把持姿勢に応じて、吸着面24aの基準点および把持姿勢、ならびに物品11の把持目標位置は変化する。
【0034】
吸着部決定部50は、左右の吸着部24の使用数、第2吸着部25の使用有無、第2吸着部25の使用時の使用数および第2方向Yへの移動量を決定する。
【0035】
したがって、把持姿勢決定部45は、吸着面24aの基準点および把持姿勢の決定、物品11の被吸着面11aの把持目標位置の決定、各吸着部24,25の使用状況の決定を含む把持計画を作成する。
【0036】
動作計画生成部46は、パレット12上からの物品11の取出順序、ハンド装置20およびロボットアーム29を動作させる動作計画を作成する。動作計画では、把持計画で作成された吸着面24aの基準点がパレット12上の物品11の把持目標位置と所定の位置関係となる把持姿勢でハンド装置20が物品11を把持するように、ハンド装置20およびロボットアーム29を動作させるための原点位置からの動作量を生成する。所定の位置関係とは、例えば、吸着面24aの基準点とパレット12上の物品11の把持目標位置とが重なり、吸着面24aの第1方向Xおよび第2方向Yと物品11の被吸着面11aの第1方向Xおよび第2方向Yとが一致する把持姿勢となる位置関係である。また、動作計画では、吸着面24aの基準点がかご車13に物品11を移載する移載目標位置に移動するように、ハンド装置20およびロボットアーム29を動作させる動作量を生成する。
【0037】
ロボットコントローラ47は、動作計画生成部46で生成された動作計画に従って、ハンド装置20およびロボットアーム29の動作を制御する。
【0038】
そして、移載装置10では、パレット12上から予め設定されている順序で物品11を取り出し、かご車13に予め設定されている積付パターンで積み付ける。その際、かご車13の側面にパネル16が立設されているため、かご車13の側面のパネル16がない開口部17にロボットアーム29が位置する必要があり、このロボットアーム29の位置を考慮したうえで、ハンド装置20の吸着面24aの所定位置に物品11を吸着把持し、かご車13に移載しなければならない。
【0039】
図2に示すように、かご車13での物品11の位置姿勢が第1方向Xの一方側である左側に移載される物品11は左側に寄せるために左基準で吸着面24aの基準点および寸法に関する範囲が決定され、かご車13での物品11の位置姿勢が第1方向Xの他方側である右側に移載される物品11は右側に寄せるために右基準で吸着面24aの基準点および寸法に関する範囲が決定される。さらに、かご車13に移載される物品11の位置および向きなどの位置姿勢に対応して、パレット12上から物品11を取り出す際のハンド装置20の把持姿勢が決定される。
【0040】
図3に示すように、吸着面24aには、第1方向Xの一方側である左側から1~5の基準列が所定の間隔で設定され、第2方向Yの一方側からA、B、Cの基準行が所定の間隔で設定され、これら基準列と基準行とが交差する位置に、A1~A5、B1~B5、C1~C5の基準点が予め設定されている。1、3、5の基準列は各吸着面24aの第1方向Xの端部に位置され、2、4の基準列は各吸着面24aの第1方向Xの中間(中央)に位置され、A、Cの基準行は吸着面24aの第2方向Yの端部に位置され、Bの基準行は吸着面24aの第2方向Yの中間(中央)に位置されている。これら基準点は、吸着面24aが物品11を吸着把持する際やかご車13に物品11を移載する際に、ハンド装置20およびロボットアーム29の動作制御の基準となる。
【0041】
さらに、吸着面24aの基準点と、左右の吸着部24の使用数と、第2吸着部25およびパーム26の使用有無とは、把持姿勢での物品11の第1方向Xおよび第2方向Yの各方向の寸法が予め設定されている寸法に関する複数の範囲(基準範囲)のうちのどの範囲に属するかによって決定される。
【0042】
この寸法に関する複数の範囲は、例えば基準点が利用される。左基準の場合には、第1方向Xの1~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲X1、1~4の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲X2、1~5の基準列範囲に対応する第1方向第3範囲X3、1~5の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲X4が設定されている。さらに、第2方向YのA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲Y1、A~Cの基準行範囲よりも長い範囲に対応する第2方向第2範囲Y2、第2方向第1範囲Y1よりも長く第2方向第2範囲Y2よりも短い範囲に対応する第2方向第3範囲Y3に設定されている。
【0043】
また、右基準の場合には、第1方向Xの5~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲、5~2の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲、5~1の基準列範囲に対応する第1方向第3範囲、5~1の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲が設定されている。さらに、第2方向YのA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲、A~Cの基準行範囲よりも長い範囲に対応する第2方向第2範囲、第2方向第1範囲よりも長く第2方向第2範囲よりも短い範囲に対応する第2方向第3範囲に設定されている。
【0044】
なお、基準範囲は、任意に設定でき、例えば基準点間の実寸法とは別の長さ範囲が設定されてもよい。
【0045】
次に、移載装置10の移載動作を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
制御部40は、管理端末41から物品11の情報、および作業情報を取得する(ステップS1)。物品11の情報には、物品11の形状および寸法などが含まれる。作業情報には、パレット12上の物品11の積付パターン、位置および向きなどの姿勢を含む位置姿勢、および取出順序や、かご車13への物品11の積付パターン、かご車13での物品11の位置および向きなどの姿勢を含む位置姿勢、および積付順序などが含まれる。
【0047】
かご車13が移載先位置に到着され(ステップS2のYES)、物品11の積み付けられているパレット12が移載元位置に到着されると(ステップS3のYES)、ロボットアーム29が原点位置に復帰される(ステップS4)。
【0048】
制御部40の把持姿勢決定部45により把持計画が作成される(ステップS5)。把持計画には、吸着面24aの基準点および把持姿勢の決定、物品11の把持目標位置の決定、吸着部24,25およびパーム26の使用状況の決定が含まれる。
【0049】
把持計画では、かご車13への移載対象の物品11の位置および向きなどの位置姿勢から、左基準か右基準かが判断されるとともに、物品11の長辺および短辺と吸着部24の第1方向Xおよび第2方向Yとの対応関係が判断される。判断された左基準または右基準の対応する範囲と物品11の第1方向Xおよび第2方向Yの寸法とにより、吸着面24aの基準点および把持姿勢、吸着部24,25やパーム26の使用状況などが決定される。
【0050】
例えば左基準の場合、第1方向Xにおいては、把持姿勢での物品11の寸法が1~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲X1にある場合には第1方向Xの一方側端部の「1」の基準列および左側の吸着部24L,25Lの使用に決定され、物品11の寸法が1~3よりも長い範囲を含む1~4の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲X2にある場合には左側の吸着部24Lの吸着面24aにおける第1方向Xの中間位置の「2」の基準列および左側の吸着部24L,25Lの使用に決定され、物品11の寸法が1~4よりも長い範囲を含む1~5の基準列範囲に対応する第1方向第3範囲X3にある場合には第1方向Xの一方側端部の「1」の基準列および左右両方の吸着部24L,24R,25L,25Rの使用に決定され、物品11の寸法が1~5の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲X4にある場合には左右の吸着部24L,24Rの中間位置の「3」の基準列および左右両方の吸着部24L,24R,25L,25Rの使用に決定される。なお、右基準の場合には右側からの範囲に基づいて決定される。
【0051】
第2方向Yにおいては、物品11の寸法がA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲Y1にある場合には第2方向Yの一方側端部の「A」の基準行および第2吸着部25とパーム26の使用が決定され、物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長いが超過量が所定の閾値よりも小さい範囲に対応する第2方向第3範囲Y3にある場合には第2方向Yの他方側端部の「C」の基準行および第2吸着部25の使用とパーム26の不使用が決定され、物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長く超過量が所定の閾値よりも大きい範囲に対応する第2方向第2範囲Y2にある場合には第2方向Yの中間位置の「B」の基準行および第2吸着部25とパーム26の不使用が決定される。閾値は第2吸着部25の使用と不使用を決定するもので、閾値よりも小さい場合には、第2吸着部25を使用するために吸着面24aに対して物品11が第2方向Yに多少片寄っても安定して把持することが可能であり、閾値よりも大きい場合には、第2吸着部25を使用すると、吸着面24aに対して物品11が第2方向Yに大きく片寄って安定して把持することが難しくなる。なお、右基準の場合もA~Cの基準行範囲に基づいて決定される。
【0052】
これら第1方向Xと第2方向Yとで決定された基準列と基準行とが交差する位置が、吸着面24aの基準点として決定される。
【0053】
さらに、決定された基準点に応じた物品11の被吸着面11aの位置が把持目標位置に決定される。第1方向xにおいては、「1」の基準列が決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける左位置が把持目標に決定され、「2」、「3」または「4」の基準列が決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの中間位置(中央位置)が把持目標に決定され、「5」の基準列が決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける右位置が把持目標に決定される。
【0054】
また、第2方向Yにおいては、「A」の基準行が決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける第2方向Yの一方側である奥側位置が把持目標に決定され、「B」の基準行に決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける第2方向Yの中間位置(中央位置)が把持目標に決定され、「C」の基準行に決定された場合には物品11の被吸着面11aにおける第2方向Yの他方側である手前側位置が把持目標に決定される。これら第1方向Xの把持目標と第2方向Yの把持目標とが交差する位置により、物品11の被吸着面11aの把持目標位置が決定される。
【0055】
さらに、決定された基準点に応じて吸着部24,25およびパーム26の使用状況が決定される。第1方向Xにおいて、「1」の基準列に決定された場合には左側の吸着部24Lのみ、または左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定され、「2」の基準列に決定された場合には左側の吸着部24Lの使用が決定され、「3」の基準列に決定された場合には左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定される。
【0056】
また、第2方向Yにおいて、「A」の基準行が決定された場合には第2吸着部25(使用が決定された吸着部24L,24Rに対応する第2吸着部25L,25R)およびパーム26の使用が決定され、「B」の基準行に決定された場合には第2吸着部25およびパーム26の不使用が決定され、「C」の基準行に決定された場合には第2吸着部25(使用が決定された吸着部24L,24Rに対応する第2吸着部25L,25R)の使用およびパーム26の不使用が決定される。
【0057】
図7および図8に、物品11の移載先での位置姿勢が第1方向Xの一方側である左側かつ第2方向Yの一方側である奥側になる場合の左基準での把持計画の具体例を示す。
【0058】
図7(a)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲X1にあり、「1」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準列範囲に対応する第2方向第1範囲Y1にあり、「A」の基準行に決定されるとともに、左側の第2吸着部25Lおよびパーム26の使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「A1」に決定され、この決定された「A1」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの左側でかつ第2方向Yの奥側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「A1」の基準点に決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が吸着把持できるとともに、左側の第2吸着部25Lおよびパーム26が併用されて物品11の把持が安定する。
【0059】
図7(b)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3よりも長い範囲を含む1~4の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲X2にあり、「2」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲Y1にあり、「A」の基準行に決定されるとともに、左側の第2吸着部25Lおよびパーム26の使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「A2」に決定され、この決定された「A2」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの中間でかつ第2方向Yの奥側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「A2」の基準点に決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が第1方向Xに片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定するとともに、左側の第2吸着部25Lおよびパーム26が併用されて物品11の把持がより安定する。
【0060】
図7(c)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲X1にあり、「1」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長いが超過量が所定の閾値よりも小さい範囲に対応する第2方向第3範囲Y3にある場合には、「C」の基準行に決定されるとともに、左側の第2吸着部25Lの使用およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「C1」に決定され、この決定された「C1」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの左側でかつ第2方向Yの手前側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「C1」の基準点に決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が吸着把持できるとともに、左側の第2吸着部25Lが併用されて物品11の把持が安定する。
【0061】
図7(d)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3よりも長いA1~A4の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲X2にあり、「2」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長いが超過量が所定の閾値よりも小さい範囲に対応する第2方向第3範囲Y3にあることにより、「C」の基準行に決定されるとともに、左側の第2吸着部25Lの使用およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「C2」に決定され、この決定された「C2」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの中間でかつ第2方向Yの手前側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「C2」の基準点に決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が第1方向Xに片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定するとともに、左側の第2吸着部25Lが併用されて物品11の把持がより安定する。
【0062】
図7(e)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3の基準列範囲に対応する第1方向第1範囲X1にあり、「1」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長く超過量が所定の閾値よりも大きい範囲に対応する第2方向第2範囲Y2にあることにより、「B」の基準行に決定されるとともに、第2吸着部25およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「B1」に決定され、この決定された「B1」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける左側でかつ第2方向Yの中間位置が把持目標位置に決定される。そして、「B1」の基準点が決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が第2方向Yに片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定する。
【0063】
図7(f)に示す物品11では、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~3よりも長いA1~A4の基準列範囲に対応する第1方向第2範囲X2にあり、「2」の基準列に決定されるとともに、左側の吸着部24Lの使用に決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長く超過量が所定の閾値よりも大きい範囲に対応する第2方向第2範囲Y2にあることにより、「B」の基準行に決定されるとともに、第2吸着部25およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「B2」に決定され、この決定された「B2」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xおよび第2方向Yの各方向の中間位置つまり中心位置が把持目標位置に決定される。そして、「B2」の基準点が決定されることにより、左側の吸着部24Lで物品11が第1方向Xおよび第2方向Yの各方向とも片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定する。
【0064】
図8(a)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~5の基準列範囲に対応する第1方向第3範囲X3にあり、「1」の基準列に決定されるとともに、左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲Y1にあるため、「A」の基準行が決定されるとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rおよびパーム26の使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「A1」に決定され、この決定された「A1」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの左側でかつ第2方向Yの奥側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「A1」の基準点に決定されることにより、左右両方の吸着部24L,24Rで物品11が吸着され、物品11の把持が安定するとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rおよびパーム26が併用されて物品11の把持がより安定する。
【0065】
図8(b)(c)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~5の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲X4にあり、第1方向Xの中間の「3」の基準列に決定されるとともに、左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲に対応する第2方向第1範囲Y1にあるため、「A」の基準行が決定されるとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rおよびパーム26の使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「A3」に決定され、この決定された「A3」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの中間位置でかつ第2方向Yの奥側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「A3」の基準点に決定されることにより、左右両方の吸着部24L,24Rで物品11が第1方向Xに片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定するとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rおよびパーム26が併用されて物品11の把持がより安定する。
【0066】
図8(d)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~5の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲X4にあり、第1方向Xの中間の「3」の基準列に決定されるとともに、左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長いが超過量が所定の閾値よりも小さい範囲に対応する第2方向第3範囲Y3にあることにより、「C」の基準行が決定されるとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rの使用およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「C3」に決定され、この決定された「C3」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xの中間位置でかつ第2方向Yの手前側の位置が把持目標位置に決定される。そして、「C3」の基準点に決定されることにより、左右両方の吸着部24L,24Rで物品11が第1方向Xに片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定するとともに、左右両方の第2吸着部25L,25Rが併用されて物品11の把持がより安定する。
【0067】
図8(e)に示す物品11の場合、第1方向Xにおける物品11の寸法が1~5の基準列範囲よりも長い範囲に対応する第1方向第4範囲X4にあり、第1方向Xの中間の「3」の基準列に決定されるとともに、左右両方の吸着部24L,24Rの使用が決定される。第2方向Yにおける物品11の寸法がA~Cの基準行範囲よりも長い範囲にあるとともに、超過量が所定の閾値よりも大きい範囲に対応する第2方向第2範囲Y2にあることにより、第2方向Yの中央側の「B」の基準行が決定されるとともに、第2吸着部25およびパーム26の不使用が決定される。よって、物品11に対する吸着面24aの基準点が「B3」に決定され、この決定された「B3」の基準点に応じた物品11の被吸着面11aにおける第1方向Xおよび第2方向Yの各方向の中間位置つまり中心位置が把持目標位置に決定される。そして、「B3」の基準点が決定されることにより、左右両方の吸着部24L,24Rで物品11が第1方向Xおよび第2方向Yの各方向とも片寄りなく吸着され、物品11の把持が安定する。
【0068】
なお、基準点決定部49は、パレット12から最初に取り出す物品11の把持計画を決定したら、物品11の移載動作中などに、パレット12上の残りの物品11の把持計画を順次決定する。
【0069】
また、把持計画の作成後、パレット12上の物品11の荷姿がカメラ42で撮影される(ステップS6)。撮影された画像は制御部40で画像処理され、実際の物品11の位置姿勢が確認される。
【0070】
続いて、制御部40の動作計画生成部46により動作計画が作成される(ステップS7)。動作計画では、パレット12からの物品11の取出順序、ハンド装置20およびロボットアーム29を動作させる動作計画が作成される。
【0071】
動作計画では、カメラ42で撮影された画像情報から取り出す物品11が特定されるとともに、取り出す物品11の位置姿勢およびその位置姿勢から把持目標位置が特定され、把持計画で作成された吸着面24aの基準点が取出対象の物品11の把持目標位置と所定の位置関係となる把持姿勢でハンド装置20が物品11を把持するように、ハンド装置20およびロボットアーム29が原点位置から動作する動作量が生成される。さらに、ハンド装置20で把持した物品11がかご車13の所定の移載位置に所定の位置姿勢で移載されるように、ハンド装置20およびロボットアーム29が動作する移動量が生成される。
【0072】
続いて、動作計画が実行される(ステップS8)。制御部40のロボットコントローラ47により動作計画に基づいてハンド装置20およびロボットアーム29が動作され、吸着面24aの基準点が取出対象の物品11の把持目標位置と所定の位置関係となる把持姿勢でハンド装置20により物品11が把持される。このとき、把持計画で決定された吸着部24の使用数、第2吸着部25およびパーム26の使用有無に基づき、ハンド装置20により物品11が把持される。
【0073】
ハンド装置20により物品11が把持された後、ハンド装置20およびロボットアーム29が動作され、吸着面24aの基準点がかご車13の移載目標位置に向うようにハンド装置20が移動される。ハンド装置20の移動が完了すると、ハンド装置20から物品11が解放され、物品11がかご車13の所定の移載位置に移載される。
【0074】
続いて、パレット12上に続けて取り出す物品11が残っていれば(ステップS9のYES)、ステップS6に戻り、次の物品11の移載処理が継続される。
【0075】
パレット12上に取り出す物品11が無くなれば(ステップS9のNO)、パレット12が移載元位置から搬出される(ステップS10)。パレット12上に取り出す物品11が無くなる状態は、パレット12上の物品11が空になる状態と、パレット12上から取り出し対象の物品11が取り出されたが取り出し対象外の物品11が残っている状態とが含まれる。そのため、移載元位置からは、空のパレット12が搬出される場合と、取り出し対象外の物品11が残存しているパレット12が搬出される場合とがある。この物品11が残存しているパレット12は、残存している物品11が取り出し対象となる移載処理時に移載元位置に搬入され、ステップS6の工程で、一部が取り出されている物品11の荷姿が確認される。
【0076】
移載元位置からパレット12が搬出された後、取り出し対象の物品11の積み付けられている次のパレット12がある場合には(ステップS11のYES)、ステップS3に戻って移載処理が継続され、また、次のパレット12がない場合には(ステップS11のNO)、移載処理が終了される。
【0077】
以上のように、本実施の形態の移載装置10によれば、物品11の移載先での位置姿勢と物品11の被吸着面11aの形状とに基づき、吸着面24aに対して予め設定されている基準点から物品11に対する吸着面24aの基準点および把持姿勢が決定されることにより、決定された基準点が物品11の把持目標位置に対して所定の位置関係となる把持姿勢でハンド装置20が物品11を把持し、移載先で所望の位置姿勢に配置するように、ハンド装置20および移動機構21が動作されるため、多品種の物品11を把持する場合でも、制御が複雑化するのを防止できる。
【0078】
なお、多品種の物品Wには、例えば被吸着面11aが長方形の場合は、長手および/または短手の寸法が異なる場合に加えて、被吸着面11aの寸法が同じであっても把持姿勢によって長手と短手の位置が入れ替わる場合も含めてよい。
【0079】
また、把持姿勢での物品11の被吸着面11aの寸法が吸着面24aに対応する寸法内にあるか否かに応じて基準点が決定されることにより、基準点の決定を容易にできる。
【0080】
把持姿勢での物品11の被吸着面11aの寸法が吸着面24aに対応する寸法内にある場合、吸着面24aの複数の基準点のうち端部に位置する基準点に決定されることにより、基準点および把持目標位置の決定を容易にでき、また、物品11の被吸着面11aの寸法が吸着面24aに対応する寸法よりも長い場合、吸着面24aの複数の基準点のうち中間に位置する基準点に決定されることにより、吸着面24aで物品11を片寄りなく吸着でき、物品11の把持を安定できる。
【0081】
また、第1方向Xとこの第1方向Xに交差する第2方向Yとの各方向に対応する把持姿勢の被吸着面11aの寸法が予め設定されている寸法に関する複数の範囲のうちのどの範囲に属するかによって基準点が決定されることにより、基準点の決定を容易にできる。
【0082】
すなわち、物品11の移載先での位置姿勢が第1方向Xの一方側かつ第2方向Yの一方側である場合、被吸着面11aの第1方向Xの寸法が、第1方向第1範囲X1に属する場合は、吸着面24aの第1方向Xの一方側端部を基準列とし、かつ、第1方向第2範囲X2に属する場合は、吸着面24aの第1方向Xの中間位置を基準列とし、また、被吸着面11aの第2方向Yの寸法が、第2方向第1範囲に属する場合は、吸着面24aの第2方向Yの一方側端部を基準行とし、かつ、第2方向第2範囲Y2に属する場合は、吸着面24aの第2方向Yの中間位置を基準行とし、これら第1方向Xの基準列と第2方向Yの基準行とが交差する位置を基準点に決定することにより、基準点および把持目標位置の決定を容易にでき、しかも、吸着面24aの第1方向Xの中間位置を基準列とし、第2方向Yの中間位置を基準行とすることにより、吸着面24aで物品11を片寄りなく吸着でき、物品11の把持を安定できる。
【0083】
また、被吸着面11aの第2方向Yの寸法が、第2方向第1範囲Y1よりも長く、第2方向第2範囲Y2よりも短い第2方向第3範囲Y3に属する場合は、吸着面24aの第2方向Yの他方側端部を基準行とすることにより、第2吸着部25を併用可能とし、物品11の把持を安定できる。
【0084】
また、吸着面24aが第1方向Xに複数並設されている場合でも、第1方向Xにおける把持姿勢の被吸着面11aの寸法が吸着面24aの第1方向Xのどの範囲に属するかによって使用する吸着面24aの決定を容易にできる。
【0085】
さらに、物品11の移載先での位置姿勢が第1方向Xの一方側である場合、被吸着面11aの第1方向Xの寸法が、第1方向第1範囲X1に属する場合は、吸着面24aの第1方向Xの一方側端部を基準列とするとともに一方側の吸着部24Lの吸着面24aのみの使用を決定し、また、第1方向第2範囲X2に属する場合は、第1方向Xの一方側の吸着部24Lにおける吸着面24aの第1方向Xの中間位置を基準列とするとともに一方側の吸着部24Lの吸着面24aのみの使用を決定し、また、第1方向第3範囲X3に属する場合、第1方向Xの吸着面24aの一方側端部を基準列とするとともに一方側の吸着部24Lの吸着面24aおよび隣接する吸着部24Rの吸着面24aの両方の使用を決定し、また、第1方向第4範囲X4に属する場合、第1方向Xの一方側の吸着部24Lの吸着面24aおよび隣接する吸着部24Rの吸着面24aを合わせた中間位置を基準列とするとともに一方側の吸着部24Lの吸着面24aおよび隣接する吸着部24Rの吸着面24aの両方の使用を決定し、基準列内で基準点を決定することにより、物品11の寸法に応じて、複数の吸着部24の使用状況および基準点の決定を容易にできる。
【0086】
また、第2方向Yにおける吸着面24aの一方側端部または他方側端部に位置する基準点に決定した場合、第2吸着面25aの使用が決定され、第2吸着面25aを併用して物品11の把持がより安定でき、また、第2方向Yにおける吸着面24aの中間に位置する基準点に決定した場合、第2吸着面25aの不使用が決定され、第2吸着面25aが物品11と干渉するのを防止できる。
【0087】
なお、移載装置10は、物品11の移載元、移載先はいずれでもよく、いずれの場合にも制御が複雑化するのを防止できる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 移載装置
11 物品
11a 被吸着面
11b 第2被吸着面
20 ハンド装置
21 移動機構
24a 吸着面
25a 第2吸着面
40 制御部
44 記憶部
45 把持姿勢決定部
A1~A5、B1~B5、C1~C5 基準点
X 第1方向
X1 第1方向第1範囲
X2 第1方向第2範囲
X3 第1方向第3範囲
X4 第1方向第4範囲
Y 第2方向
Y1 第2方向第1範囲
Y2 第2方向第2範囲
Y3 第2方向第3範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8