(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20241031BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241031BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2021059040
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢司
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158361(JP,A)
【文献】特開平02-136721(JP,A)
【文献】特開2017-162961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から出射されたレーザビームを被加工物に入射し加工するレーザ加工装置であって、
レーザ発振器から出射されたレーザビームのパワーを測定する熱電型パワーセンサと、
前記熱電型パワーセンサのレーザ受光部を加熱する加熱部と、を備え、
前記加熱部が、前記熱電型パワーセンサが前記レーザビームのパワーを測定していないときに、
レーザパワーの目標値に対応する温度で前記熱電型パワーセンサのレーザ受光部を加熱する、
ことを特徴とするレーザ加工装置。。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板にレーザを使用して穴あけを行うためのレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置では、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3などに記載されているように、レーザ発振器から射出されるレーザビームのパワーが目標値にあるか否かを確認し、これを調整する等の目的で、パワーを測定する必要がある。ここでパワーとは、レーザビームの単位時間あたりの平均エネルギーを意味する。パワーの測定は、パワーセンサにレーザ光を照射することで行う。測定に使用するパワーセンサとしては、熱電型のパワーセンサ(サーマルセンサ)が用いられることが多い。
【0003】
熱電型のパワーセンサは、センサの受光部にレーザを照射し、受光部の温度変化に基づいてパワーを測定する。より詳しくは、レーザ光を受光部において熱に変換し、その温度上昇を電圧に変換してパワーを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-006438号公報
【文献】特開2003-124552号公報
【文献】特開2019-038000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱電型のパワーセンサは、測定対象のレーザを照射しても、センサの出力が安定するまでに時間がかかることが知られている。これは、パワーセンサの受光部が熱的に平衡状態になるまで時間を要するためである。そのため、正確な測定値を得るためには、出力が安定するまで数十秒程度の待ち時間を要していた。
【0006】
近年プリント基板の高機能化により加工精度のさらなる高度化、安定化の要求が高まっており、パワーを頻繁に測定する必要がある。一回あたりの測定待ち時間はさほど多くはないが、測定回数が増加すると加工工程全体としての待ち時間が多くなり、生産効率の観点から問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、レーザパワーの測定時間を短縮することにより、生産効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工装置は以下の通りである。レーザ発振器から出射されたレーザビームを被加工物に入射し加工するレーザ加工装置であって、レーザ発振器から出射されたレーザビームのパワーを測定する熱電型パワーセンサと、前記熱電型パワーセンサの受光部を加熱する加熱部とを備え、前記加熱部が、前記熱電型パワーセンサが前記レーザビームのパワーを測定していないときに、レーザパワーの目標値に対応する温度で前記熱電型パワーセンサの受光部を加熱する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一回あたりのレーザ測定時間を短縮することができ、レーザ加工工程全体としての生産効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。
【
図2】本発明の実施例となるレーザ加工装置の加熱ユニットを説明する図であり、ヒータがレーザパワー非測定時の位置にある図である。
【
図3】本発明の実施例となるレーザ加工装置の加熱ユニットを説明する図であり、ヒータがレーザパワー測定時の位置にある図である。
【
図4】本発明の実施例における加熱タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の代表的な実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。
【0012】
図1において、1は被加工物であるプリント基板、2はレーザパワーを測定するサーマルセンサである。サーマルセンサ2の上部には、入射する測定対象のレーザを受光して熱に変換する受光部として機能する吸光部材21が配置されている。サーマルセンサ2は、吸光部材21でレーザパワーを熱に変換し、その温度上昇を電圧に変換することでパワーを測定し、測定値に応じた信号を出力する。
【0013】
31はサーマルセンサを加熱するためのヒータ、32はその下面にヒータ31を保持するヒータ保持体、33はヒータ31及びヒータ保持体32を駆動支持するヒータ駆動装置である。3はヒータ31、ヒータ保持体32、ヒータ駆動装置33を含む加熱ユニット、4はプリント基板1、サーマルセンサ2及び加熱ユニット3を載置するテーブルである。
【0014】
5はレーザパルスL1を発振するレーザ発振器、6はレーザパルスL1を加工方向と非加工方向の二通りに分岐させるとともに、レーザパルスL1を加工に必要なビームパワーとなるように変調するするAOMである。7はAOM6において非加工方向へ分岐されたレーザパルスL3を吸収するダンパ、8はAOM6において加工方向へ分岐されたレーザパルスL2を走査させ順次プリント基板1の穴明け位置に照射するガルバノスキャナである。このガルバノスキャナ8は回転することによりレーザパルスL2を走査させるようになっている。9はガルバノスキャナ8からのレーザパルスL4をプリント基板1の穴あけ位置に照射する集光レンズである。10はAOM6、ダンパ7、ガルバノスキャナ8及び集光レンズ9が実装されたレーザ照射ユニットである。
【0015】
11は装置全体の動作を制御する全体制御部で、例えばプログラム制御の処理装置によって実現されるものである。全体制御部11は、レーザ発振器5でのレーザパルスL1の発振を指示するレーザ発振指令信号Sを出力するレーザ発振制御部12、AOM6の分岐動作及び変調動作を制御するAOM駆動信号Dを出力するAOM制御部13、ガルバノスキャナ8の動作を指示するガルバノ動作制御信号Gを出力するガルバノ制御部14、加熱ユニット3の動作を指示する加熱ユニット制御信号Hを出力する制御部15を含む。なお、全体制御部11に含まれるこれらの機能要素のうちの一部は全体制御部11とは別個に設けても良い。レーザ穴明け装置としては、ここで説明するもの以外に種々の要素と接続線を有するが、ここでは省略してある。なお、全体制御部11には、サーマルセンサ2からの測定値が入力され、レーザパワーの目標値に対して差があれば、目標値に合うようにAOM6にてパワーを調整する。
【0016】
ガルバノ動作制御信号Gは、オフの時間帯でガルバノスキャナ8を静止させ、オンの時間帯でガルバノスキャナ8を回転させる。ガルバノスキャナ8が静止した状態で一つの穴が明けられ、ガルバノスキャナ8が回転することによってレーザパルスL2を次の穴位置に照射させるようになる。レーザ発振指令信号Sは、オンになることによりレーザ発振器5に発振を起こさせ、オフになることによりその発振を停止させる。レーザ発振指令信号Sはガルバノ動作制御信号Gのオフに同期してオンとなり、またガルバノ動作制御信号Gはレーザ発振指令信号Sのオンとは一定の遅れをもってオンとなり、次の穴位置までガルバノスキャナを回転させる。AOM駆動信号Dは、それがオンの時間帯でのみAOM6に入力されたレーザパルスL1を加工方向に分岐させてレーザパルスL2とし、それ以外のオフの時間帯では非加工方向のレーザパルスL3としてダンパ7の方向に分岐させる。
【0017】
図示を省略するテーブル駆動部によりテーブル4を図の紙面に対して左右方向(以下、X方向とする)と垂直方向(以下、Y方向とする)に移動させることによりプリント基板1とレーザ照射ユニット10との相対移動を行い、さらにガルバノスキャナ8においてX方向とY方向にレーザパルスを偏向させることにより、プリント基板1の必要な穴あけ位置に照射できるようになっている。また、同様に相対移動を行い、レーザパルスをサーマルセンサ2へ照射できるようになっている。テーブル駆動部及びガルバノスキャナ8の各々には、X方向への移動(偏向)を行う系とY方向への移動(偏向)を行う系の両方が設けられている。
【0018】
次に、加熱ユニット3についてより詳しく説明する。
図2は、加熱ユニット3を説明する図である。
図2に示すように、ヒータ駆動装置33は、内部にシリンダ34を備えている。シリンダ34は、図面左右方向へ伸縮するロッド35を備え、ロッド35の先端にヒータ保持体32及びヒータ31が取り付けられている。ヒータ保持体32及びヒータ31は、シリンダ34の伸縮動作に応じて図面左右方向へ移動する。ヒータ31は、加熱ユニット制御部15により制御され、任意の温度で発熱する。
【0019】
レーザパワー非測定時には、
図2に示すように、ロッド35が伸長し、ヒータ31が吸光部材21の全面を覆うようにして吸光部材21を加熱する。本実施例においては、目標値のパワーのレーザを照射したときの吸光部材21の温度(以下、対応温度という)でヒータ31を発熱させて、吸光部材21が対応温度の近傍になるように加熱する。なお、レーザパワーと対応温度の関係については、加工条件ごとに予め測定したものをテーブル化し、加熱ユニット制御部15内のメモリに記憶させてあり、加工条件に応じた温度で加熱することができる。ここで、「加工条件ごと」とは、主にレーザ加工条件のことを指し、レーザの周波数、パルス幅などを意味する。レーザパワー測定時には、
図3に示すようにロッド35を収縮し、ヒータ31及びヒータ保持体32が吸光部材21の上方を覆わない状態にし、吸光部材21にレーザを照射する。
【0020】
このようにすることで、吸光部材21は、レーザパワー測定時には対応温度の近傍の温度となり、レーザ入射後に吸光部材21が平衡状態になるまでの時間が短縮される。つまり、正確な測定値を得るまでの時間を短縮することができる。なお、レーザパワーの測定は、加工開始前や加工を開始してから一定の時間が経過した後、または、被加工物を一定数加工した後、などの任意のタイミングで行う。
【0021】
本実施例においては、レーザパワー非測定時に、吸光部材21を加熱するものとしたが、レーザパワーを測定するタイミングで吸光部材21が対応温度近傍に加熱されていればよく、非測定時に常に加熱している必要はない。したがって、例えば
図4に示すように、所定のタイミングt1、t2、t3にレーザパワーを測定する場合であって、加熱を開始してから対応温度に到達するまでにtpかかる場合には、t1-tpからt1まで、t2-tpからt2まで、t3-tpからt3までの間だけ加熱し、それ以外の時間は加熱しないようにしてもよい。このようにすれば、必要以上の加熱を省略することができる。
【0022】
なお、本実施例においては、パワー測定時に受光部上方を遮らないようにするために、ヒータを伸縮移動させたが、ヒータを固定しサーマルセンサを移動させる構成としてもよい。
【0023】
また、本実施例においては、加工点近傍の一か所でレーザパワーを測定する場合を例に説明した。しかしこれに限らず、レーザ発振器のレーザ出射口から被加工物へ照射されるまでの間の任意の複数箇所で測定するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:プリント基板
2:サーマルセンサ 21:吸引部材
3:加熱ユニット 31:ヒータ 32:ヒータ保持体 33:ヒータ駆動装置 34:シリンダ 35:ロッド
4:テーブル
5:レーザ発振器
6:AOM
7:ダンパ
8:ガルバノスキャナ
9:集光レンズ
10:レーザ照射ユニット
11:全体制御部
12:レーザ発振制御部
13:AOM制御部
14:ガルバノ制御部
15:加熱ユニット制御部