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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】高周波解凍装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/50 20060101AFI20241031BHJP
   H05B 6/66 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 3/365 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
H05B6/50
H05B6/66 B
A23L3/365 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021065651
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022161100
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敬介
(72)【発明者】
【氏名】須賀 卓
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017003(JP,A)
【文献】特開2020-145114(JP,A)
【文献】特開2018-521494(JP,A)
【文献】特開2004-362916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46 - 6/68
A23L 3/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MHz帯域の高周波電力を出力する高周波電源と、
該高周波電源の出力電力を用いて、MHz帯域の高周波電界を冷凍食品に印加する電極対と、
前記高周波電源と前記電極対の間に接続され、前記高周波電源の出力インピーダンスを、前記冷凍食品を含む負荷側インピーダンスに整合させる整合部と、
前記高周波電源に戻る反射電力を検知する電力検知部と、を備え、
前記整合部は、前記出力インピーダンスを前記負荷側インピーダンスと略同一に自動整合させる第1工程と、該第1工程で自動整合させた前記出力インピーダンスを、前記冷凍食品の解凍が進行し、前記反射電力が所定の閾値に達するまで固定する第2工程を、加熱終了時間まで繰り返し、
前記高周波電源は、前記第2工程に続く第1工程以降は、以前の出力電力から前記閾値を減じた出力電力を出力することを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波解凍装置において、
前記閾値は、前記冷凍食品の種別毎に予め登録された値であることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高周波解凍装置において、
前記閾値は、前記出力電力に対する所定の比率から決定されることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項4】
請求項3に記載の高周波解凍装置において、
加熱開始時の出力電力に対する前記反射電力の閾値の比率が、所定の閾値以下となれば、加熱を終了させることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の高周波解凍装置において、
前記第1工程の継続時間は、前記冷凍食品の種別毎に予め登録された値であることを特徴とする高周波解凍装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の高周波解凍装置において、
前記加熱終了時間は、前記冷凍食品の種別毎に予め登録された値であることを特徴とする高周波解凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘電加熱装置に係り、特にMHz帯域の高周波電界を冷凍食品に印加して、誘電加熱により冷凍食品を急速解凍する高周波解凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場等では、冷凍状態の食材を解凍して食品を加工する場合がある。食品加工工場等で使用する解凍機の一種として、対向する電極間に配置した冷凍食品に、MHz帯域の高周波電界を印加し、誘電加熱により冷凍食品を解凍する高周波解凍装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の要約書には、「高周波解凍装置は、加熱室1と、加熱室1内に平行に配置され、間に被解凍物3が挿入される上部電極2aおよび下部電極2bと、上部電極2aと下部電極2bとの間に高周波電圧を印加する高周波電源4および整合回路6と、印加された高周波電圧の反射電力を検知する電力検知回路5と、電力検知回路5の検知信号の解凍開始時からの変化に基づいて被解凍物の進捗状態を推定して解凍の完了を判定し、判定に基づいて高周波電源4を制御する制御装置7と、を備える。」の記載があり、また、同文献の段落0002には、「MHz以上の高周波を印加して、誘電加熱にて冷凍された食品等の被解凍物を解凍する高周波解凍装置が知られている(例えば、特許文献1,2)。高周波解凍装置は、加熱室内に上部電極と下部電極とを備え、高周波電源から両電極間に高周波電界を与え、被解凍物の誘電損失により解凍を行う。誘電加熱方式は、平行電界が冷凍食品の内部に均等に到達するため、電子レンジによるマイクロ波を用いた解凍に比べて、大型の被解凍物の解凍に適している。」の記載がある。すなわち、特許文献1の高周波解凍装置では、MHz帯域の高周波電界を使用することにより、マイクロ波(GHz帯域の高周波電界)を使用する電子レンジでの解凍に比べ、被解凍物の内部をほぼ均等に解凍することができる。
【0004】
ここで、誘電加熱による解凍中は、解凍の進行に伴う冷凍食品の誘電損失の変化により、冷凍食品を含む負荷側のインピーダンスが大きく変化する。そのため、特許文献1の高周波解凍装置では、同文献の段落0016で「整合回路6は、図2に示すように、可変コンデンサ6aおよび6b、並びに可変コイル6c等を備えており、上部電極2aおよび下部電極2bで構成されるコンデンサのリアクタンスを相殺する。また、整合回路6は、可変コンデンサ6a,6bおよび可変コイル6cの値を調整することにより、整合回路6への入力インピーダンスと増幅器への出力インピーダンスとを一致させることができる。これにより、被解凍物3に効率良く高周波電界を印加することができる。整合回路6の出力は、加熱室1内の上部電極2aおよび下部電極2bに供給され、上部電極2aおよび下部電極2b間に挿入された被解凍物3を高周波誘電加熱する。」と説明されるように、高周波電源の出力インピーダンスと、被解凍物を含む負荷側のインピーダンスを略同一にすることで、高周波電源に戻る反射電力(反射波)を無くして食品の加熱効率を向上させるため、高周波電源と電極の間にコンデンサやコイルから構成される整合回路を備えており(同文献の図2参照)、出力側と負荷側のインピーダンスの整合を常に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020―145114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、冷凍食品の解凍中に常にインピーダンスの整合を維持し、反射電力を無くして高周波電源からの出力電力のほぼ全てを食品に投入させ続けると、冷凍食品の内部に均等に到達しやすい性質のMHz帯域の高周波電界であっても、次第に食品の解凍が先行する部位(端部、角部、突起部など)に電界が集中してしまい、食品の一部が過加熱されてしまう。過加熱に伴う温度ムラは、食品の解凍品質の低下に直接繋がることから、過加熱の抑制が課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、MHz帯域の高周波電界を印加して冷凍食品を急速解凍する高周波解凍装置において、冷凍食品の端部や角部、突起部などの過加熱を低減し、食品の解凍品質の向上を目的とする。特に、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店のバックヤード等に高周波解凍装置を設置し、貯蔵した冷凍状態の弁当や総菜等の冷凍食品を急速解凍して客に提供する場合等を想定したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、例えば以下の通りである。
【0009】
MHz帯域の高周波電力を出力する高周波電源と、該高周波電源の出力電力を用いて、MHz帯域の高周波電界を冷凍食品に印加する電極対と、前記高周波電源と前記電極対の間に接続され、前記高周波電源の出力インピーダンスを、前記冷凍食品を含む負荷側インピーダンスに整合させる整合部と、前記高周波電源に戻る反射電力を検知する電力検知部と、を備え、前記整合部は、前記出力インピーダンスを前記負荷側インピーダンスと略同一に自動整合させる第1工程と、該第1工程で自動整合させた前記出力インピーダンスを、前記冷凍食品の解凍が進行し、前記反射電力が所定の閾値に達するまで固定する第2工程を、加熱終了時間まで繰り返し、前記高周波電源は、前記第2工程に続く第1工程以降は、以前の出力電力から前記閾値を減じた出力電力を出力する高周波解凍装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高周波解凍装置により、冷凍食品の端部や角部、突起部などの過加熱を低減し、食品の解凍品質の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の高周波解凍装置の概略構成図
図2】実施例1における、解凍時の出力電力と反射電力の時間推移のグラフ
図3】実施例1における、操作と解凍動作のフローチャート
図4】実施例2における、解凍時の出力電力と反射電力の時間推移のグラフ
図5】実施例2における、操作と解凍動作のフローチャート
図6】実施例3における、解凍完了自動判定時の操作と解凍動作のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明の高周波解凍装置100の実施例について説明する。なお、以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものでは無く、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。
【実施例1】
【0013】
まず、図1から図3を用いて、本発明の実施例1に係る高周波解凍装置100を説明する。
【0014】
図1は、本実施例の高周波解凍装置100の概略構成図である。ここ示すように、高周波解凍装置100は、主に、加熱室1と、高周波電源2と、電力検知部3と、整合部4を備えている。以下、各部を順次説明する。
【0015】
<加熱室1>
加熱室1は、高周波解凍装置100で冷凍食品12を急速解凍する際に、冷凍食品12を収納するための空間であり、食品を出し入れする開口を開閉するドア(図示せず)を備えている。上部電極11aと下部電極11bは、加熱室1内の上下に対向配置した非磁性の金属材料であり、例えば板状のアルミニウム合金やステンレス鋼等である。冷凍食品12は、下部電極11bに載置した被解凍物であり、例えば、客の求めに応じて小売店の店員が解凍する冷凍状態の弁当や総菜等である。なお、高周波解凍装置100は本来、任意の被解凍物を急速解凍することができる装置であるが、以下では、予め登録された種別の冷凍食品12のみを解凍対象とするものとする。
【0016】
本実施例では、上部電極11aと下部電極11bの少なくとも一方が、図示しない昇降機構によって上下方向に移動可能な構成となっている。従って、冷凍食品12の厚さや形状等に応じて、電極対の間隔を適切に調整し、上部電極11aを冷凍食品12に近接させることができる。これにより、電極対から冷凍食品12に投入される加熱エネルギー(高周波電界)が増大して加熱効率が向上するので、冷凍食品12の解凍に要する時間が短縮化される。なお、図1では、下部電極11bに冷凍食品12を直接載置する構成を例示しているが、例えば、セラミックスや耐熱樹脂などの非金属製の容器、皿、板などを下部電極11b上に載置し、この上に冷凍食品12を載せる構成であってもよい。
【0017】
<高周波電源2>
高周波電源2は、電子レンジで使用するマイクロ波(GHz帯域の高周波電界)より低い周波数の、MHz帯域の高周波電圧を発振し、電力検知部3と整合部4を介して、上部電極11aに供給する電源である。なお、上記したように、MHz帯域の高周波電界は、マイクロ波(GHz帯域の高周波電界)に比べ、冷凍食品12の内部に到達しやすいという特性があるため、本実施例の高周波電源2を利用することで、冷凍食品12の解凍を促進することができる。
【0018】
<電力検知部3>
電力検知部3は、高周波電源2から整合部4に出力する出力電力P(入射波)と、整合部4から高周波電源2に戻る反射電力R(反射波)の双方を検知する検知部である。なお、電力検知部3は、具体的には、電圧センサと電流センサを組み合わせたものである。
【0019】
<整合部4>
整合部4は、高周波電源2の出力インピーダンスを、冷凍食品12を含む負荷側インピーダンスに整合させるための回路であり、例えば、図1に示すように、上部電極11aと電力検知部3の一方の端子の間に、可変コイル41と可変コンデンサ42の直列回路を配置し、電力検知部3の双方の端子の間に、可変コンデンサ43を配置した回路である。なお、図1では省略しているが、整合部4は、可変コイル41のリアクタンスや、可変コンデンサ42、43の静電容量を、電力検知部3が検知した反射電力Rに応じて調節するための制御回路も備えている。
【0020】
冷凍食品12の解凍進行に伴い液状の水が増加すると、冷凍食品12の誘電損失が大きく変化し、冷凍食品12を含む負荷側のインピーダンスも大きく変化する。そこで、整合部4の制御回路は、可変コイル41、可変コンデンサ42、43を調整することにより、高周波電源2からの出力インピーダンスと、冷凍食品12を含む負荷側インピーダンスを略同一にし、高周波電源2に戻る反射電力Rをほぼ無くすことで、冷凍食品12の加熱効率を向上させる。
【0021】
<出力電力Pと反射電力Rの時間推移の一例>
図2は、本実施例の高周波解凍装置100において、冷凍食品12の解凍中の出力電力Pと反射電力Rの時間推移の一例を示した説明図である。なお、図中の、Δt、Δt、Δt、Δt、ΔR、ΔR、ΔR、Tの各値は、特定の冷凍食品12(例えば、規格化された冷凍弁当)を適切に解凍できるよう、高周波解凍装置100の設計者や、コンビニエンスストアチェーンの本部技術者等が、冷凍食品12の種別毎に実験で求め、予め登録したパラメータであり、高周波解凍装置100の使用者(小売店の店員等)が冷凍食品12の急速解凍時に設定するパラメータではない。
【0022】
図2に示すように、まず、高周波電源2の出力電力をP=P(冷凍食品12の種別毎に設定された初期出力電力値)に固定して冷凍食品12の解凍を開始すると、整合部4は、初回の第1工程(自動整合)では、解凍開始から所定時間(Δt)内は、高周波電源2の出力インピーダンスと冷凍食品12を含む負荷側のインピーダンスを略同一にすることで、反射電力Rをほぼ無くすように自動整合する。
【0023】
その後、初回の第2工程(整合固定)では、先行する第1工程で整合したインピーダンスを一旦固定した状態で、冷凍食品12の解凍を継続する。すると、冷凍食品12の解凍の進行に伴う誘電損失の変化により、反射電力Rが徐々に増大して行き、反射電力が所定の閾値(ΔR)に達する。この閾値に達した時点で(時間t2S)、高周波電源2は、以後の出力電力Pを反射電力Rの増加分に相当する閾値(ΔR)分だけ減じ(出力電力P=P-ΔR)、2回目の第1工程(自動整合)を開始する。
【0024】
2回目の第1工程(自動整合)でも、整合部4は、所定時間(Δt)内は、高周波電源2の出力インピーダンスと冷凍食品12を含む負荷側のインピーダンスを略同一にすることで、反射電力Rをほぼ無くすように自動整合する。図2から明らかなように、2回目の第1工程と第2工程で使用される出力電力Pは、初回の第1工程と第2工程で使用された出力電力P=Pより反射電力Rの増加分だけ小さい、P=P-ΔRに抑制されているため、解凍が進行して加熱され易くなった冷凍食品12であっても、端部、角部、突起部などに電界が過度に集中し、それらが過加熱されるのを抑制することができる。
【0025】
本実施例の高周波解凍装置100では、上記の第1工程と第2工程を、設定された加熱終了時間Tまで繰り返すが、3回目や4回目の第1工程と第2工程でも、解凍の進行状況に対応して、高周波電源2の出力電力P、Pを更に抑制する。このため、加熱開始から加熱終了の何れの時間においても、冷凍食品12に過度な電界が印加されることが無いため、端部、角部、突起部などの過加熱を抑制することができる。
【0026】
<高周波解凍装置100の操作と回答動作のフローチャート>
次に、図3のフローチャートを用いて、所定の冷凍食品12を急速解凍する際の、使用者(例えば、小売店の店員)の操作と、高周波解凍装置100の解凍動作の一例について詳細に説明する。
【0027】
まず、ステップS1では、使用者は、冷凍食品12を加熱室1内にセットする。具体的には、使用者は、加熱室1のドアを開け、下部電極11b上に冷凍食品12を載置した後、ドアを閉める。
【0028】
次いで、ステップS2では、使用者は、高周波解凍装置100のメニューボタン等を操作して、予め用意された被解凍物の候補から、加熱室1内の冷凍食品12に相当するものを選択する。これにより、設計者等が予め用意した解凍条件の中から、加熱室1内の冷凍食品12に対応する解凍条件が選択され、高周波解凍装置100に設定される。ここで設定される解凍条件は、初期の出力電力値P、加熱終了時間T、自動整合する時間Δt(i=1~n)、反射電力の増分閾値ΔR(i=1~n)、および、上部電極11aと下部電極11bの間隔等である。なお、解凍条件が未登録の冷凍食品12を解凍したい場合は、冷凍食品12の素材、形状、重量、温度等を考慮して、使用者が各パラメータを設定しても良い。
【0029】
ステップS3では、使用者は、高周波解凍装置100のスタートボタン等を操作することで、解凍開始を指令する。
【0030】
ステップS4では、加熱室1の昇降機構が稼働し、上部電極11aもしくは下部電極11bが上下方向に移動する。これにより、冷凍食品12の厚さや形状に応じて、電極対の間隔が適切に調整され、上部電極11aと冷凍食品12が近接する。
【0031】
ステップS5では、高周波電源2が起動し、出力電力P=Pを用いた解凍が開始される。以降、高周波解凍装置100は、図2で説明したように、出力電力Pを漸減させながら、冷凍食品12を解凍する。
【0032】
ステップS6では、電力検知部3は、整合部4から高周波電源2へ戻る反射電力Rを検知する。これにより、図2に示した、解凍開始から所定時間(Δt)内は、高周波電源2の出力インピーダンスと冷凍食品12を含む負荷側のインピーダンスが略同一になるように、整合部4の可変コイル41、可変コンデンサ42および43を調整することで、反射電力Rをほぼ無くすようにインピーダンスの自動整合する(第1工程)。
【0033】
ステップS7では、冷凍食品12の解凍開始からの経過時間が、設定された加熱終了時間Tを超えたかを判定する。そして、超える前であれば、ステップS8に進み、超えた後であれば、ステップS11に進む。
【0034】
ステップS8では、電力検知部3は、反射電力Rが増分閾値ΔR以上になったかを判定する。そして、増分閾値ΔR以上になる前は、ステップS6に戻り、反射電力Rを再検知する。一方、増分閾値ΔR以上になった後は、ステップS9に進む。
【0035】
ステップS9では、以後に用いる出力電力Pを現在の出力電力Pより閾値分(ΔR)だけ減じる。これにより、以降の出力電力PはP-ΔRに設定され、2回目の第1工程(自動整合)を開始する。
【0036】
ステップS10では、iを1つ増やす。すなわち、i回目の第1工程と第2工程が終了し、i+1回目の第1工程と第2工程が開始される。これにより、ステップS6で反射電力Rを検知したり、ステップS8で反射電力Rと増分閾値ΔRを比較したりするようになる。
【0037】
このようにして、第1工程と第2工程を繰り返し、経過時間が設定した加熱終了時間Tに達した時点で(ステップS7でNo)、ステップS11に進み、高周波電源2をOFFし、冷凍食品12の加熱を終了する。
【0038】
ステップS2で設定した各パラメータは、加熱室1内の冷凍食品12を適切に解凍するために予め用意されたものであるため、図3の処理を終えることで、冷凍食品12を過加熱なく解凍することができる。
【0039】
なお、自動整合する時間Δt(i=1~n)を長く、反射電力の増分閾値ΔR(i=1~n)を小さく設定すれば、冷凍食品12の加熱効率が向上するため、解凍が完了するまでに要する時間は短くなる。一方、自動整合する時間Δt(i=1~n)を短く、反射電力の増分閾値ΔR(i=1~n)を大きく設定すれば、冷凍食品12の加熱効率は低減するため、解凍が完了するまでに要する時間は長くなるが、解凍中の食品の端部や角部、突起部などの過加熱が発生し難くなり、食品の解凍品質の低下を抑制することが出来る。
【0040】
従って、自動整合する時間Δt(i=1~n)および反射電力の増分閾値ΔR(i=1~n)を適正に設定することにより、解凍に要する時間を長時間化させることなく、食品の過加熱を抑制することが可能となる。
【0041】
なお、本実施例では、上部電極11aおよび下部電極11bはそれぞれ単一の電極としたが、複数の電極が分割して構成される分割電極であってもよい。また、整合部4を構成する可変コイル41や可変コンデンサ42および43の構成は、図1で例示した以外の構成であってもよい。
【0042】
以上で説明したように、本実施例の高周波解凍装置100によれば、冷凍食品の端部や角部、突起部などの過加熱を低減し、食品の解凍品質の向上が可能となる。
【実施例2】
【0043】
次に、図4図5を用いて、本発明の実施例2の高周波解凍装置100について説明をする。なお、以下では、実施例1との共通点については重複説明を省略する。
【0044】
図4は、本実施例の高周波解凍装置100において、解凍時の出力電力Pと反射電力Rの時間推移の一例を示した説明図である。また、図5は、本発明に係る高周波解凍装置において、操作および解凍動作の一例を示したフローチャートである。
【0045】
図4に示すように、本実施例でも、出力電力P=P(初期出力電力値)で解凍を開始し、整合部4は、解凍開始から所定時間(Δt)内は、高周波電源2の出力インピーダンスと冷凍食品12を含む負荷側のインピーダンスを略同一にすることで、反射電力をほぼ無くすように自動整合する(第1工程)。そして、第1工程で整合したインピーダンスを一旦固定し、反射電力Rが所定の閾値(ΔR)に達した時点で(時間t2S)、出力電力を閾値(ΔR)分だけ減じ(出力電力P=P-ΔR)、自動整合を再開する(第2工程)。
【0046】
ここで、実施例1では、閾値ΔR等を設計者等が予め設定した固定値としたが、本実施例の閾値(ΔR)は、出力電力Pと所定の比率N(%)から決定されるものとした。
【0047】
次に、冷凍食品の解凍時における操作ならびに動作の一例について、図4および図5を用いて詳細に説明する。
【0048】
実施例1の図3と本実施例の図5の比較から明らかなように、本実施例は、実施例1のステップS2をステップS2aに置換し、実施例1のステップS8をステップS8aに置換したものであるため、以下では、実施例1に無い、ステップS2a、S8aを中心に説明し、他のステップについては適宜説明を省略する。
【0049】
ステップS2aでは、使用者は、高周波解凍装置100のメニューボタン等を操作して、予め用意された被解凍物の候補から、加熱室1内の冷凍食品12に相当するものを選択する。これにより、加熱室1内の冷凍食品12に対応する解凍条件として、初期の出力電力値P、加熱終了時間T、自動整合する時間Δt(i=1~n)、反射電力の増分比率(%)の閾値N(i=1~n)が設定される。
【0050】
ここでステップS8aでは、電力検知部3は、出力電力Pに対する反射電力Rの比率(%)が、設定した所定の閾値N以上になったかを判定する。そして、比率が閾値Nよりも小さければ、このままの状態で解凍を継続し(ステップS6に戻り)、比率が閾値Nに達した時点で(時間t2S)、ステップS9に進む。
【0051】
本実施例では、自動整合する時間Δt(i=1~n)を長く、反射電力の増分比率(%)の閾値N(i=1~n)を小さく設定すれば、冷凍食品12の加熱効率が向上するため、解凍が完了するまでに要する時間を短くすることが出来る。一方、自動整合する時間Δt(i=1~n)を短く、反射電力の増分比率(%)の閾値N(i=1~n)を大きく設定すれば、冷凍食品12の加熱効率は低減するため、解凍が完了するまでに要する時間は長くなるが、解凍中の食品の端部や角部、突起部などの過加熱が発生し難くなり、食品の解凍品質の低下を抑制することが出来る。
【0052】
従って、自動整合する時間Δt(i=1~n)および反射電力の増分比率(%)の閾値N(i=1~n)を適正に設定することにより、解凍に要する時間を長時間化させることなく、食品の過加熱を抑制することが可能となる。
【0053】
ここで、反射電力の増分比率(%)の閾値N(i=1~n)を、例えば10%程度に設定することで、高周波電源2への反射電力の増大を抑えることにより、高周波電源2の故障率を低減し、長寿命化も図ることが出来る。
【実施例3】
【0054】
次に、図6を用いて、本発明の実施例3の高周波解凍装置100について説明をする。なお、以下では、実施例2との共通点については重複説明を省略する。
【0055】
実施例2では、ステップS2a(図5)で、加熱室1内の冷凍食品12に対応した加熱終了時間Tを予め設定し、加熱経過時間が加熱終了時間Tに達するまで、解凍を継続する構成としていた(ステップS7)。
【0056】
これに対し、本実施例では、図6のステップS2bに示すように、加熱室1内の冷凍食品12に対応した、解凍官僚の判定基準Mを設定する。そして、ステップS7aでは、初期の出力電力値Pに対する反射電力の閾値(ΔR)の比率が、ある所定の閾値M(%)以下となれば、解凍が完了したと判定してステップS11に進み、自動的に加熱を終了させる。この場合、閾値M(%)は解凍完了の判定基準であり、例えば数パーセント程度である。
【符号の説明】
【0057】
100 高周波解凍装置
1 加熱室
11a 上部電極
11b 下部電極
12 冷凍食品
2 高周波電源
3 電力検知部
4 整合部
41 可変コイル
42、43 可変コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6