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  • 特許-地盤改良方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20241031BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 17/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02D3/12 101
C09K17/06 P
C09K17/32 Z
C09K17/40 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021066988
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162260
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】武藤 裕久
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-157700(JP,A)
【文献】特開2019-011630(JP,A)
【文献】特開2020-007897(JP,A)
【文献】特開2016-175803(JP,A)
【文献】特開2010-235721(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0256770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C09K 17/00 - 17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に含まれるウレアーゼを抽出した酵素水溶液にカルシウム化合物を混合して第1溶液とし、その第1溶液から析出した析出物を取り除き、その析出物が取り除かれた前記第1溶液と尿素を水に溶解させた第2溶液とを地盤に注入する地盤改良方法。
【請求項2】
前記第1溶液と前記第2溶液とは混合された状態で地盤に注入される請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
前記第1溶液からの前記析出物の析出は、前記第1溶液に消泡剤を添加した状態で攪拌することによって行われる請求項1又は2に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地震による地盤の液状化を抑制するための地盤改良方法が開示されている。この地盤改良方法では、ウレアーゼを水に溶解させた第1溶液と、尿素及びカルシウム塩を水に溶解させた第2溶液と、を地盤に注入するようにしている。第1溶液と第2溶液とは、地盤に対して個別に注入したり、混合した状態で注入したりされる。
【0003】
第1溶液及び第2溶液が注入された地盤では、ウレアーゼによって尿素が加水分解されることによって二酸化炭素及びアンモニアが生じる。そして、その二酸化炭素とカルシウム塩から生じるカルシウムイオンとを反応させることにより、炭酸カルシウムを地盤中に析出させる。これにより、地盤を液状化しにくい性質となるように改質することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5599032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記地盤改良方法では、入手が簡単な豆類などの植物を用いて第1溶液を形成することが考えられる。この場合、植物が有するウレアーゼ等の成分を水に抽出することにより第1溶液が形成される。
【0006】
上述したように形成された第1溶液と第2溶液とが混じり合うと、第1溶液に含まれる植物由来の成分が、第2溶液のカルシウム塩の作用によってタンパク質等を含む析出物として析出される。こうした析出物が第1溶液及び第2溶液の地盤への浸透を妨げるため、第1溶液及び第2溶液を地盤に対し広い範囲に浸透させることが困難になる。
【0007】
その結果、地盤の広い範囲で第1溶液及び第2溶液によって炭酸カルシウムを析出させることが困難になる。従って、その炭酸カルシウムによって地盤の液状化を効果的に抑制することができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する地盤改良方法では、植物に含まれるウレアーゼを抽出した酵素水溶液にカルシウム化合物を混合したものが第1溶液とされる。酵素水溶液にカルシウム化合物が混合された第1溶液からはタンパク質等の析出物が析出されるため、その析出物が第1溶液から取り除かれる。上記析出物が取り除かれた第1溶液と尿素を水に溶解させた第2溶液とが地盤に注入される。
【0009】
上記方法によれば、植物に含まれるウレアーゼを抽出した酵素水溶液には、植物由来の成分が含まれる。このため、第1溶液を形成する際、酵素水溶液にカルシウム化合物が混合されると、上記植物由来の成分が塩化カルシウムの作用によってタンパク質等を含む析出物として析出される。そして、第1溶液からタンパク質等の析出物が取り除かれた状態で、その第1溶液と第2溶液とが地盤に注入される。このため、上記析出物が第1溶液及び第2溶液の地盤への浸透を妨げることはない。従って、第1溶液及び第2溶液を地盤に対し広い範囲に浸透させることができ、地盤の広い範囲で第1溶液及び第2溶液によって炭酸カルシウムを析出させることができる。その結果、上記炭酸カルシウムによって地盤の液状化を効果的に抑制することができる。
【0010】
上記地盤改良方法においては、第1溶液と第2溶液とは混合された状態で地盤に注入されるものとすることが考えられる。
炭酸カルシウムは、第1溶液と第2溶液との混合が進むほど析出しやすい。上記方法によれば、第1溶液と第2溶液とが混合された状態で地盤に注入されるため、地盤での炭酸カルシウムの析出を効率よく行うことができる。
【0011】
上記地盤改良方法においては、第1溶液からの析出物の析出が第1溶液に消泡剤を添加した状態で攪拌することによって行われるものとすることが考えられる。
第1溶液からのタンパク質等の析出物の析出は、酵素水溶液にカルシウム化合物を混合して攪拌することによって行われるため、酵素水溶液及びカルシウム化合物からなる第1溶液が泡立ちやすくなる。しかし、上記方法によれば、第1溶液に消泡剤が添加されているため、上記攪拌時に第1溶液が泡立つことを抑制できる。
【0012】
上記地盤改良方法においては、第1溶液及び第2溶液を地盤に注入することによって地盤で炭酸カルシウムが析出する際、地盤の砂質量に対する炭酸カルシウムの析出比が1~4%となるように、上記第2溶液における尿素のモル濃度を予め調整することが考えられる。
【0013】
上記方法によれば、第2溶液における尿素のモル濃度を上述したように調整することにより、尿素等の材料を少なく抑えつつ、効率よく地盤に炭酸カルシウムを析出させることができる。
【0014】
上記地盤改良方法において、第1溶液及び第2溶液を地盤に注入することによって地盤で炭酸カルシウムが析出する際、その炭酸カルシウムの粒径及び析出量が定められた値となるように、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量を予め調整することが考えられる。
【0015】
上記方法によれば、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量を上述したように調整することにより、地盤で析出する炭酸カルシウムの粒径及び析出量を地盤の液状化抑制にとって適切な値となるように調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の地盤改良方法で用いられる溶液注入プラントを示す略図。
図2】第2溶液における尿素のモル濃度の変化に対する炭酸カルシウムの析出比の変化を示すグラフ。
図3】第1溶液の形成に用いられるナタマメの量と炭酸カルシウムの析出比の時間変化との関係を示すグラフ。
図4】溶液注入プラントの他の例を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、地盤改良方法の一実施形態について、図1図3を参照して説明する。
図1は、液状化を抑制するための溶液を地盤に注入する溶液注入プラントを概略的に示している。図1に示すように、溶液注入プラントは、水槽1,2、ミキサー3,4、グラウトポンプ5,6、流量圧力管理装置7、分流圧力管理装置8、及び混合ユニット9を備えている。混合ユニット9としては、T字管、ミキシングヘッドを有する圧力注入機、又はラインミキサー等を採用することが考えられる。
【0018】
水槽1は、植物に含まれるウレアーゼを抽出した酵素水溶液を溜めるためのものである。水槽1は水中ポンプ1aを備えている。水中ポンプ1aは、水槽1内の酵素水溶液を汲み上げてミキサー3に供給するためのものである。ミキサー3は、酵素水溶液と塩化カルシウム等のカルシウム化合物とを攪拌して混合する。これにより、ミキサー3内には、酵素水溶液にカルシウム化合物を混合した第1溶液が形成される。グラウトポンプ5は、ミキサー3内の第1溶液を吸い込むとともに、その第1溶液を分流圧力管理装置8に吐出する。この第1溶液は、分流圧力管理装置8及び混合ユニット9を介して地盤に注入される。
【0019】
水槽2は、水を溜めるためのものであり、水中ポンプ2aを備えている。水中ポンプ2aは、水槽2内の水を汲み上げてミキサー4に供給するためのものである。ミキサー4は、水と尿素とを攪拌して混合する。これにより、ミキサー4内には、水に尿素を溶解させた第2溶液が形成される。グラウトポンプ6は、ミキサー4内の第2溶液を吸い込むとともに、その第2溶液を流量圧力管理装置7に吐出する。この第2溶液は、流量圧力管理装置7及び分流圧力管理装置8を介して混合ユニット9に供給され、混合ユニット9で第1溶液と混合された状態で地盤に注入される。
【0020】
次に、上記溶液注入プラントを用いた地盤改質方法について説明する。この地盤改質方法では、以下のような第1工程、第2工程、及び第3工程が順に行われる。
[第1工程]
この工程は、上述した第1溶液を製造するためのものである。この工程では、粉砕した所定量のナタマメの種子を通水性のある袋に入れ、その袋を水槽1に溜められた水に1~4時間程度つけておく。これにより、ナタマメの種子に含まれるウレアーゼ等の成分が抽出され、水槽1内の水が酵素水溶液となる。なお、水槽1は、ナタマメの種子から抽出された成分の沈殿が生じないよう、酵素水溶液を攪拌するための攪拌設備を有するものとすることが好ましい。
【0021】
水槽1内の酵素水溶液は、水中ポンプ1aによってミキサー3に送られる。ミキサー3では、酵素水溶液を攪拌しながら、所定量の塩化カルシウムが投入されるとともに、消泡剤も投入される。このときのミキサー3による攪拌時間は、例えば1分以上とされる。これにより、ミキサー3内では、酵素水溶液に対し塩化カルシウムを混合した第1溶液が形成される。
【0022】
[第2工程]
この工程は、第1溶液から析出するタンパク質等の析出物を同第1溶液から取り除くためのものである。この工程では、第1溶液がミキサー3内で攪拌される。第1溶液における酵素水溶液と塩化カルシウムとが混合されると、酵素水溶液に含まれる植物由来の成分が、塩化カルシウムの作用によってタンパク質等を含む析出物として析出される。こうして析出したタンパク質等を含む析出物を沈殿させ、その析出物をミキサー3内の第1溶液から取り除く。
【0023】
なお、上述した第1工程及び第2工程が行われている間、水槽2及びミキサー4を用いて第2溶液が形成される。詳しくは、水槽2に溜められた水が水中ポンプ2aによってミキサー4に送られる。ミキサー4では、水を攪拌しながら、所定量の尿素が導入される。このときのミキサー4による攪拌時間は、例えば1分以上とされる。これにより、ミキサー4内では、水に尿素を溶解させた第2溶液が形成される。
【0024】
[第3工程]
この工程は、第1溶液及び第2溶液を地盤に注入するためのものである。この工程では、析出物が取り除かれた後の第1溶液が、ミキサー3からグラウトポンプ5によって分流圧力管理装置8に送られる。また、第2溶液が、ミキサー4からグラウトポンプ6により分流圧力管理装置8に送られる。第1溶液及び第2溶液は、分流圧力管理装置8を介して混合ユニット9に送られ、その混合ユニット9で混合された後に地盤に注入される。
【0025】
次に、上記地盤改良方法で用いられる第2溶液における尿素のモル濃度について説明する。
上記尿素のモル濃度を定めるに当たり、次のような実験を実施した。この実験は、上記尿素のモル濃度の変化に対する地盤での炭酸カルシウムの析出比の変化を調べるためのものである。なお、上記炭酸カルシウムの析出比は、地盤における乾燥した砂の単位質量当たりに含まれる炭酸カルシウムの質量の割合(%)を表している。
【0026】
上記実験では、第1溶液の形成に用いられるナタマメの量を一定とし、且つ、第1溶液における塩化カルシウムと第2溶液における尿素とのモル比を所定値(例えば「1」)に固定した条件のもとで行われる。この実験では、上述した条件のもと、第2溶液における尿素のモル濃度を段階的に変化させつつ、乾いた砂に第1溶液及び第2溶液を注入し、その砂における炭酸カルシウムの析出比を測定する。
【0027】
図2は、この実験における実験結果を示している。図2から分かるように、第2溶液における尿素のモル濃度が小さい領域では、炭酸カルシウムの析出比が小さくなる。炭酸カルシウムの析出比が1%未満である場合には、地盤の液状化を抑制できないおそれがある。一方、第2溶液における尿素のモル濃度が大きい領域では、そのモル濃度が大きくなるほど、炭酸カルシウムの析出比が大きくはなる。ただし、上記尿素のモル濃度が大きくなりすぎると、尿素のモル濃度の増加に対する炭酸カルシウムの析出比の増加が鈍くなる傾向がある。そして、炭酸カルシウムの析出比が4%よりも大きくなると、上述した傾向が大きくなる。
【0028】
この実験結果から、上記地盤改良方法での第2溶液における尿素のモル濃度については、炭酸カルシウムの析出比が1~4%となるように調整することが、尿素の使用量に対し効率的に炭酸カルシウムを析出させるうえで好ましいことが分かる。従って、上記地盤改良方法では、炭酸カルシウムの析出比が1~4%となるように、第2溶液における尿素のモル濃度が調整される。
【0029】
次に、上記地盤改良方法で用いられる第1溶液におけるウレアーゼの溶解量について説明する。
上記ウレアーゼの溶解量を定めるに当たり、次のような実験を実施した。この実験は、上記ウレアーゼの溶解量の変化に対する地盤での炭酸カルシウムの析出に要する時間の変化を調べるためのものである。
【0030】
上記実験では、第1溶液における塩化カルシウムと第2溶液における尿素とのモル比を所定値(例えば「1」)に固定し、且つ、第2溶液における尿素のモル濃度を一定とした条件のもとで行われる。この実験では、ウレアーゼの溶解量が異なる複数の第1溶液、すなわちナタマメ30gを用いた第1溶液とナタマメ90gを用いた第1溶液とを用意しておく。そして、上述した条件のもと、それら第1溶液及び第2溶液を乾いた砂に注入し、その砂における炭酸カルシウムの析出比を所定時間経過毎に測定する。
【0031】
図3は、この実験における実験結果を示している。図3から分かるように、ナタマメ30gを用いた第1溶液では、ナタマメ90gを用いた第1溶液と比較して、炭酸カルシウムの析出速さが遅くなる。すなわち、ウレアーゼの溶解量の少ない第1溶液の方が、ウレアーゼの溶解量の多い第1溶液よりも、炭酸カルシウムの析出速さが遅くなる。こうした炭酸カルシウムの析出速さは、析出した炭酸カルシウムの粒径に影響を及ぼす。すなわち、炭酸カルシウムの析出速さが遅くなるほど、析出した炭酸カルシウムの粒径が大きくなる。
【0032】
従って、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量が少ないほど、炭酸カルシウムの析出速さが遅くなり、析出する炭酸カルシウムの粒径が大きくなる。このことから、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量が多すぎると、炭酸カルシウムの析出速さが速くなって同炭酸カルシウムの粒径が小さくなるため、その炭酸カルシウムによって地盤の液状化を抑制することが困難になる。一方、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量が少なすぎると、析出する炭酸カルシウムの粒径は大きくなるものの、炭酸カルシウムの析出量が少なくなるため、その炭酸カルシウムによって地盤の液状化を抑制することが困難になる。
【0033】
この実験結果から分かるように、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量については、析出する炭酸カルシウムの粒径及び析出量が地盤の液状化を効果的に抑制できる値となるように調整することが好ましい。従って、上記地盤改良方法では、析出する炭酸カルシウムの粒径及び析出量が地盤の液状化を効果的に抑制しうる値となるように、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量が調整される。第1溶液におけるウレアーゼの溶解にナタマメを用いる場合、第1溶液と第2溶液の総量1リットル当たり、例えば5g~90g程度のナタマメを用いることが効果的である。
【0034】
次に、本実施形態の地盤改良方法の作用効果について説明する。
(1)第1溶液の酵素水溶液は、粉砕したナタマメの種子を水につけることによって形成される。このため、酵素水溶液には植物由来の成分が含まれる。第1溶液は上記酵素水溶液に塩化カルシウムを混合することによって形成される。第1溶液を形成するために酵素水溶液に塩化カルシウムを混合すると、酵素水溶液に含まれる植物由来の成分が、塩化カルシウムの作用によってタンパク質等を含む析出物として析出される。第2工程では、こうして析出したタンパク質等の析出物が第1溶液から取り除かれる。そして、第3工程で、析出物が取り除かれた第1溶液と第2溶液とが地盤に注入される。このため、上記析出物が第1溶液及び第2溶液の地盤への浸透を妨げることはない。従って、第1溶液及び第2溶液を地盤に対し広い範囲に浸透させることができ、地盤の広い範囲で第1溶液及び第2溶液によって炭酸カルシウムを析出させることができる。その結果、上記炭酸カルシウムによって地盤の液状化を効果的に抑制することができる。
【0035】
(2)第3工程で、第1溶液と第2溶液とは混合された状態で地盤に注入される。炭酸カルシウムは、第1溶液と第2溶液との混合が進むほど析出しやすい。このため、上述したように第1溶液と第2溶液とが混合された状態で地盤に注入すれば、地盤での炭酸カルシウムの析出を効率よく行うことができる。
【0036】
(3)第1工程で第1溶液を形成するに当たり、酵素水溶液に塩化カルシウムを投入するだけでなく消泡剤も導入した状態で攪拌される。続く第2工程では第1溶液から析出されるタンパク質等の析出物が取り除かれ、第3工程では上記第1溶液がグラウトポンプ5により吸い込まれて分流圧力管理装置8及び混合ユニット9に吐出される。第3工程において、第1工程での攪拌に伴って第1溶液が泡立っていると、グラウトポンプ5による第1溶液の吸い込み及び吐出がしづらくなる。
【0037】
しかし、第1工程で上述したように消泡剤が投入されるため、グラウトポンプ5で第1溶液を分流圧力管理装置8及び混合ユニット9に圧送する際、第1溶液が泡だった状態になることを抑制でき、上記圧送を行いにくくなることを抑制できる。更に、グラウトポンプ5で圧送された第1溶液が泡だっていないため、その第1溶液と第2溶液とが混合ユニット9で混合されやすくなる。
【0038】
(4)第1溶液及び第2溶液を地盤に注入することによって地盤で炭酸カルシウムが析出する際、地盤の砂質量に対する炭酸カルシウムの析出比が1~4%となるように、第2溶液における尿素のモル濃度が調整される。これにより、尿素等の材料を少なく抑えつつ、効率よく地盤に炭酸カルシウムを析出させることができる。
【0039】
(5)第1溶液及び第2溶液を地盤に注入することによって地盤で炭酸カルシウムが析出する際、その炭酸カルシウムの粒径及び析出量が定められた値となるように、第1溶液におけるウレアーゼの溶解量が調整される。これにより、地盤で析出する炭酸カルシウムの粒径及び析出量を地盤の液状化抑制にとって適切な値とすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図4に示すように、溶液注入プラントの構成を変更してもよい。この溶液注入プラントでは、ミキサー3からの第1溶液の吸引とミキサー4からの第2溶液を吸引とを一つのグラウトポンプ10で行い、そのグラウトポンプ10によって第1溶液及び第2溶液を分流圧力管理装置8に向けて吐出する。第1溶液及び第2溶液は、分流圧力管理装置8を介しての混合ユニット9に供給され、混合ユニット9で第1溶液と混合された状態で地盤に注入される。
【0041】
・第1溶液と第2溶液とを個別に地盤に注入してもよい。この場合、地盤で第1溶液と第2溶液とが混ざることによって炭酸カルシウムが析出する。
・炭酸カルシウムの析出比が1~4%となるように第2溶液における尿素のモル濃度を調整したが、こうした調整を必ずしも行う必要はない。
【0042】
・第1工程において、必ずしも第1溶液に消泡剤を添加する必要はない。
・酵素水溶液を形成するための植物は、ウレアーゼを多く含む植物であれば何でもよい。例えばナタマメ以外の豆類、例えば大豆、小豆、豌豆といった植物を用いてもよい。また、必ずしも豆類である必要はなく、西瓜、白瓜、真桑瓜、及び甜瓜といったウリ科の植物を用いてもよい。
【0043】
・第1溶液を形成するためのカルシウム化合物として、塩化カルシウム以外のカルシウム化合物を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…水槽
1a…水中ポンプ
2…水槽
2a…水中ポンプ
3,4…ミキサー
5,6…グラウトポンプ
7…流量圧力管理装置
8…分流圧力管理装置
9…混合ユニット
10…グラウトポンプ
図1
図2
図3
図4