(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】原子炉機器の水中切断装置及び水中切断方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/30 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G21F9/30 531E
G21F9/30 531J
(21)【出願番号】P 2021067445
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】木尾 賢治
(72)【発明者】
【氏名】古川 悌
(72)【発明者】
【氏名】川又 久仁夫
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-121434(JP,A)
【文献】特開2006-038790(JP,A)
【文献】特開2008-157798(JP,A)
【文献】特開2013-249595(JP,A)
【文献】特開2017-042832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の原子炉に隣接するプールの周辺に取り付けた走行レールと、
前記プールを跨ぐように前記走行レール上に配置して前記プール上を走行する走行架台と、
前記プール内に取り付けて上面に原子炉機器を載置して回転させる回転テーブルと、
前記走行架台から前記プールの水深方向に昇降移動可能に取り付けて水を張った前記プール内の前記回転テーブル上に配置した前記原子炉機器を鋸刃で切断するバンドソーと、
を備え、
前記走行架台は、前記走行レールの走行方向と直交する方向に進退移動する横行架台を備え、前記横行架台は、架台本体の下面から垂直方向に延びる支持脚部を2つ有し、一方の前記支持脚部は平面視で前記原子炉機器の内側に配置し、他方の前記支持脚部は平面視で前記原子炉機器の外側に配置して前記バンドソーを前記原子炉機器に跨るように配置して前記プールの水深方向に昇降移動可能なことを特徴とする原子炉機器の水中切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された原子炉機器の水中切断装置であって、
前記一方の支持脚部は、前記横行架台から前記原子炉機器の上面までの長さに設定していることを特徴とする原子炉機器の水中切断装置。
【請求項3】
請求項
1に記載された原子炉機器の水中切断装置であって、
前記支持脚部は、長手方向に沿って昇降可能な昇降架台を備え、前記昇降架台は脚部の長手方向に沿って進退自在な前記バンドソーを備えたことを特徴とする原子炉機器の水中切断装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載の原子炉機器の水中切断装置を用いて原子力発電所の原子炉に隣接するプール内の回転テーブル上に載置した原子炉機器上に走行架台を移動して横行架台でバンドソーを位置合わせする工程と、
前記バンドソーを下降して前記原子炉機器を所定幅で2回縦切断して切断片を取り除く工程と、
前記原子炉機器の切り欠き箇所から前記バンドソーの鋸刃切替部で鋸刃を横向きに切り替えて前記回転テーブルを回転して横切断し、前記横切断後に前記回転テーブルを逆回転して前記鋸刃を前記切り欠き箇所から抜き出して前記鋸刃を縦向きに切り替えて縦切断を繰り返し行って前記原子炉機器を細断する工程と、
を有することを特徴とする原子炉機器の水中切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉機器の切断作業を原子炉に隣接する水を張ったプール内で遠隔で行う原子炉機器の水中切断装置及び水中切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所定の稼働年数を経て老朽化した原子力発電所を廃炉、改修する工事が実施されつつある。従来の原子炉機器の解体作業は、作業員の放射性被曝を低減するために、原子炉に隣接する水を張ったプール内に原子炉機器を移動させてプラズマ切断(特許文献1に開示)、高圧水(アグレッシブウォータージェット)切断(特許文献2に開示)、バンドソーを用いた切断(特許文献3に開示)などを用いて行っている。
【0003】
しかしながら、プラズマ切断や、高圧水切断の場合、ノズルと切断対象物の距離が重要なため、濁ったり暗かったりする水中ではノズルの位置決めが極めて困難となる。また、プラズマ切断で発生する切断ヒュームやドロス、高圧水切断で用いる砥粒の回収作業が難しいという問題がある。また原子炉圧力容器は板厚が厚いためプラズマや高圧水では切断が難しい。
【0004】
特許文献3に開示のバンドソー切断装置は、原子力機器を旋回するターンテーブルと、原子力機器の近辺に設置する垂直コラムと、垂直コラムに昇降自在に取り付けた昇降台車と、昇降台車に着脱自在に取り付けたバンドソーを有する構成である。しかしながらプール内のターンテーブル上に原子力機器を配置するときに、原子力機器の近辺に設置した垂直コラムのバンドソーユニットがテーブル面に張り出しているため(
図1,2参照)天井クレーンを用いてバンドソーユニットを吊り上げて垂直コラムから取り外さなければ原子力機器をテーブル上に設置できず、また、原子力機器を回転テーブルに設置した後は、再度天井クレーンを用いてバンドソーユニットを吊り上げて、昇降台車に取り付けなければならず、工程数が増加して作業時間がかかるという問題があった。また、鋸刃の交換作業の際には、バンドソーユニットを昇降台車から取り外して天井クレーンで吊上げて作業フロアまで搬送しなければならず作業時間がかかるという問題があった。また円筒状の原子力機器の縦切断作業を繰り返して一周した後、最後の縦切断のときにバンドソーの上昇作業を行わずバンドソーの刃先を横向きに切り替えた状態で横切断を実施している。しかしながら切断中に鋸刃の向きを変えるような著しい負荷を鋸刃にかけると損傷又は摩耗が激しくなり、メンテナンス性が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3801451公報
【文献】特開2007-85855号公報
【文献】特開2006-38790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、バンドソーを水中又は水上間で容易に移動できる原子炉機器の水中切断装置及び水中切断方法を提供することにある。また縦方向及び横方向に切断する鋸刃に著しい負荷をかけることなく原子炉機器を細断できる原子炉機器の水中切断装置及び水中切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、原子力発電所の原子炉に隣接するプールの周辺に取り付けた走行レールと、
前記プールを跨ぐように前記走行レール上に配置して前記プール上を走行する走行架台と、
前記プール内に取り付けて上面に原子炉機器を載置して回転させる回転テーブルと、
前記走行架台から前記プールの水深方向に昇降移動可能に取り付けて水を張った前記プール内の前記回転テーブル上に配置した前記原子炉機器を鋸刃で切断するバンドソーと、
を備え、
前記走行架台は、前記走行レールの走行方向と直交する方向に進退移動する横行架台を備え、前記横行架台は、架台本体の下面から垂直方向に延びる支持脚部を2つ有し、一方の前記支持脚部は平面視で前記原子炉機器の内側に配置し、他方の前記支持脚部は平面視で前記原子炉機器の外側に配置して前記バンドソーを前記原子炉機器に跨るように配置して前記プールの水深方向に昇降移動可能なことを特徴とする原子炉機器の水中切断装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、原子炉機器を切断するバンドソーを水中又は水上へ容易に移動できるため、原子炉機器の切断作業を短時間かつ容易に実施できる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記一方の支持脚部は、前記横行架台から前記原子炉機器の上面までの長さに設定していることを特徴とする原子炉機器の水中切断装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、原子炉機器を切断するバンドソーを水中又は水上へ容易に移動できるため、プール内の回転テーブル上に原子炉機器を短時間で容易に配置することができる。またバンドソーを水上に移動して、プールの縁に横行するだけで鋸刃交換を短時間且つ容易に行うことができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記支持脚部は、長手方向に沿って昇降可能な昇降架台を備え、前記昇降架台は脚部の長手方向に沿って進退自在な前記バンドソーを備えたことを特徴とする原子炉機器の水中切断装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、バンドソーを支持する2本の支持脚部を同じ長さに合わせることができ、切断中のバンドソーのフレームに歪みが生じることなく安定した切断作業を実現できる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし第3のいずれか1の手段を用いて原子力発電所の原子炉に隣接するプール内の回転テーブル上に載置した原子炉機器上に走行架台を移動して横行架台でバンドソーを位置合わせする工程と、
前記バンドソーを下降して前記原子炉機器を所定幅で2回縦切断して切断片を取り除く工程と、
前記原子炉機器の切り欠き箇所から前記バンドソーの鋸刃切替部で鋸刃を横向きに切り替えて前記回転テーブルを回転して横切断し、前記横切断後に前記回転テーブルを逆回転して前記鋸刃を前記切り欠き箇所から抜き出して前記鋸刃を縦向きに切り替えて縦切断を繰り返し行って前記原子炉機器を細断する工程と、
を有することを特徴とする原子炉機器の水中切断方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、切断中に鋸刃の向きを切り換えることによりバンドソーの鋸刃に著しい負荷をかけることなく原子炉機器を切断することができ、鋸刃の損傷、摩耗などの経年劣化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子炉機器を切断するバンドソーを水中又は水上へ容易に移動できるため、プール内の回転テーブル上に原子炉機器を短時間で容易に配置することができる。またバンドソーを水上に移動して、プールの縁に横行するだけで鋸刃交換を短時間且つ容易に行うことができる。
本発明によれば、バンドソーの鋸刃に著しい負荷をかけることなく原子炉機器を切断することができ、鋸刃の損傷、摩耗などの経年劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の原子炉機器の水中切断装置の斜視図である。
【
図2】本発明の原子炉機器の水中切断装置の平面図である。
【
図9】本発明の原子炉機器の水中切断装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原子炉機器の水中切断装置及び水中切断方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0014】
本発明の切断対象物となる原子炉機器は、原子炉圧力容器内に取り付けたドライヤ、セパレータなど構造物の他にも、原子炉圧力容器(本体)、原子炉容器蓋を含んでいる。
本発明の原子炉機器の水中切断装置を設置する場所は、一例として原子力発電所の原子炉に隣接するDSP(ドライヤ・セパレータ・プール)である。DSPは、原子炉圧力容器の直径よりもわずかに長いプール幅であり、プール長さは設置する設備により異なるが、一例としてプール幅の約2倍の長さである。
【0015】
[原子炉機器の水中切断装置10]
図1は、本発明の原子炉機器の水中切断装置の斜視図である。
図1中のY軸はプール12の長さ方向を示し、X軸はプール幅の長さ方向を示し、Z軸はプール12の水深、換言すると高さ方向を示している。
図2は本発明の原子炉機器の水中切断装置の平面図である。
図示のように本発明の原子炉機器の水中切断装置10は、原子力発電所の原子炉に隣接するプール12の周辺に取り付けた走行レール16と、プール12を跨ぐように走行レール16上に配置してプール12上を走行する走行架台20と、プール12内に取り付けて上面に原子炉機器11を載置して回転させる回転テーブル50と、走行架台20からプール12の水深方向に昇降移動可能に取り付けて水を張ったプール12内の回転テーブル50上に配置した原子炉機器11を鋸刃70で切断するバンドソー60と、を備えている。
【0016】
走行レール16は、プール12の周辺のオペレイティングフロア14上に取り付けている。本実施形態の走行レール16はプール12の長さ方向(
図1中のY軸)に沿って2本のレールでプール12を間に挟むように平行に配置している。
走行架台20は、プール12を跨ぐように走行レール16の2本のレール上に配置している。走行架台20は、平面視でほぼ矩形のフレーム本体22と、フレーム本体22の四隅下から下方に延びる脚部24と、脚部24の下端に設けて走行レール16を転動する走行車輪26を備えている。走行架台20は、走行車輪26に設けた駆動モータ(不図示)により走行レール16上を進退自在に走行できる。走行レール16上を進退自在な走行架台20の駆動源は、電動モータ、油圧モータ等を用いることができる。
【0017】
フレーム本体22は上面に走行レール16の走行方向(
図1中のY軸)と直交する方向(
図1中のX軸)に延びる横行用リニアレール30を2本設けている。横行用リニアレール30には長手方向、換言するとプール幅の方向に沿って進退移動し、レール間を跨るように横行架台32を設けている。横行架台32は架台本体34の下面から垂直方向に延びて後述するバンドソー60を支持する支持脚部36,37を2本有している。横行架台32は、駆動モータ33と、ピニオンギア(不図示)、ラックギア35を用いて横行用リニアレール30上を進退自在に走行できる。横行用リニアレール30上を進退自在な横行架台32の駆動源は、電動モータ、油圧モータ、圧縮空気等を用いることができる。2本の支持脚部36,37には、昇降用リニアレール38を設けている。昇降用リニアレール38には長手方向、換言するとプールの水深方向(
図1中のZ軸)に沿って進退移動し、脚部間を跨るようにバンドソー60を設けている。バンドソー60は昇降用駆動モータ40と、ボールねじ42と、バンドソー60に接続したスライドガイド44を用いて、昇降用リニアレール38の長手方向に沿って進退自在に走行できる。昇降用リニアレール38上を進退自在なバンドソー60の駆動源は、電動モータ、油圧モータ、圧縮空気等を用いることができる。なお支持脚部36,37間の長さはバンドソー60の長手方向長さとほぼ同じ長さに設定している。後述する懐長さの大きいバンドソー60の長手方向をプール12の長手方向と平行に配置して原子炉機器11に跨るようにするため、2本のうち一方の支持脚部36は平面視で原子炉機器11と重なる位置(原子炉機器11の内側)に配置する必要があり横行架台32から原子炉機器11の上面までの長さ(原子炉機器11の上面に干渉しない長さ)に設定している。他方の支持脚部37は平面視で原子炉機器11と重ならない位置(原子炉機器11の外側)に配置するため横行架台32からプール12の底面近辺まで達する長さに設定している。このためスライドガイド44は、原子炉機器11の上面までしか伸ばせない一方の支持脚部36に1箇所、他方の支持脚部37に2箇所に取り付けてバンドソー60を支持している。スライドガイド44でバンドソー60を3点支持した構成により、バンドソー60のフレーム62を強固に支持できて切断中に歪むことがなくなる。
【0018】
回転テーブル50は、プール12の底面に配置し、上面に原子炉機器11を載置可能に構成している。回転テーブル50の直径は、プール幅よりもわずかに短く、原子炉圧力容器の直径よりも長く設定し、上面には載置した原子炉機器11を固定支持して転倒を防止するツメ(不図示)を設けている。このような回転テーブル50は、テーブル軸を中心としてテーブル上面に載置した原子炉機器11を所定速度で回転できる。
【0019】
図3はバンドソーの説明図である。
図4は縦切断の全体説明図である。本実施形態のバンドソー60は、正面視で逆凹状のフレーム62と、フレーム62の四隅に配置した4つのホイール(うち1つは駆動ホイール64と、3つは従動ホイール66)を有している。駆動ホイール64は鋸刃回転モータ68を設置している。鋸刃70は、駆動ホイール64と従動ホイール66に巻架されている。従動ホイール66のいずれか1つには鋸刃70の張力(張り具合)を調整する張力調整部72を設けている。張力調整部72は駆動源に油圧シリンダ等を用いて鋸刃70の張力を調整できる。
【0020】
バンドソー60は、鋸刃70を横向き(横切断)と縦向き(縦切断)に切り替える鋸刃方向切替部74を有している。鋸刃方向切替部74は、中空ロータリアクチュエータ75と、中空に配置したガイドローラ76を有している。中空ロータリアクチュエータ75は一部に鋸刃交換用の切れ込みを有している。ガイドローラ76は、ローラ間で鋸刃70を挟み、中空回転部分に配置している。このような構成の鋸刃方向切替部74は、中空ロータリアクチュエータ75の駆動モータにより、中空回転部分のガイドローラ76を水平方向と、垂直方向に回転して、鋸刃70の向きを横方向(横切断)と縦方向(縦切断)に切り替えることができる。本実施形態のバンドソー60は、1工程で原子炉機器11を縦切断できるように設定された懐長さ(
図1中のZ軸方向)の切断装置を用いている(
図4参照)。
バンドソー60のフレーム62には水中カメラ80を設けている。水中カメラ80は、切断中の鋸刃70と原子炉機器11の様子を撮影可能に配置して、鋸刃70の摩耗、損傷具合などを確認できる。
【0021】
[原子炉機器の水中切断方法]
上記構成による本発明の原子炉機器の水中切断装置を用いた水中切断方法について以下説明する。
図5は原子炉機器の細断方法の説明
図1である。
図6は原子炉機器の細断方法の説明
図2である。
図7は原子炉機器の細断方法の説明
図3である。
図8は原子炉機器の細断方法の説明
図4である。
【0022】
原子炉機器の水中切断装置10の走行架台20をプール12の奥(原子炉圧力容器と反対側)に移動して回転テーブル50の上面を開けておく。天井クレーンを用いて原子炉機器11をプール12内の回転テーブル50上面に配置する。次に原子炉機器11上に走行架台20を移動させて、横行架台32によりバンドソー60を原子炉機器11上の切断箇所に位置決めする(位置合わせ工程)。プール幅が狭いため、バンドソー60の鋸刃70はプール長さ方向に沿って配置している(
図5(1)参照)。
【0023】
鋸刃回転モータ68を駆動させて鋸刃70を回転し、支持脚部36,37の長手方向に沿って水上のバンドソー60を下降して原子炉機器11を水中で縦切断する。本実施形態のバンドソー60は、懐長さが原子炉機器11の高さよりも長いため、1工程で縦切断できる。次に、原子炉機器11を所定幅で縦切断できる位置まで回転テーブル50を回転させる。把持装置90で切断後に切断片となる箇所を把持する(
図5(2)参照)。バンドソー60を下降して原子炉機器11を縦切断する(
図6(3)参照)。把持装置90で切断片をプール12内の別の場所へ移動して仮置きする(
図6(4)参照、切断片を取り除く工程)。
【0024】
原子炉機器11は平面視でC字状となり切断片を除去した箇所は切り欠き箇所となる。原子炉機器11の切り欠き場所で鋸刃方向切替部74により鋸刃70を縦方向から横方向に切り替える。次に、原子炉機器11を所定幅で横切断できる位置まで回転テーブル50を回転させる(
図7(5)参照)。所定幅まで横切断した後、回転テーブル50を逆回転して鋸刃70を原子炉機器11の切り欠き箇所まで戻す。バンドソー60を上方移動した後、横切断箇所まで回転テーブル50上の原子炉機器11を回転させる。鋸刃方向切替部74により鋸刃70を横方向から縦方向に切り替える。把持装置90で切断後に切断片となる箇所を把持する。バンドソー60を下降して原子炉機器11を縦切断する(
図7(6)参照)。把持装置90で切断片をプール12内の別の場所へ移動して仮置きする(
図8(7)参照)。
図7(5)~
図8(7)の作業を繰り返す。最後に
図6(4)で切断した切断片を把持装置90で回転テーブル50上に戻して把持しながら横切断して細断する(
図8(8)参照、細断工程)。
【0025】
このような本発明によれば、バンドソーの鋸刃に著しい負荷をかけることなく原子炉機器を切断することができ、鋸刃の損傷、摩耗などの経年劣化を抑えることができる。また原子炉機器を切断するバンドソーを水中又は水上へ容易に移動できるため、プール内の回転テーブル上に原子炉機器を短時間で容易に配置することができる。
【0026】
[変形例]
図9は本発明の原子炉機器の水中切断装置の変形例の説明図である。変形例の原子炉機器の水中切断装置10Aは、横行架台32Aにプール12の水深方向に向けて多段階に伸縮する伸縮機構を備えている。その他の構成は
図1に示す構成と同一であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
変形例の横行架台32Aは、支持脚部36A,37Aを同じ長さとし、プール12の上方まで届く長さに設定している。支持脚部36A,37Aは、第1の昇降用リニアレール38Aを昇降可能な昇降架台46を有している。昇降架台46は昇降用駆動モータ40Aと、ボールねじ42Aと、昇降架台46に接続したスライドガイド(不図示)を用いて、昇降用リニアレール38Aの長手方向に沿って進退自在に走行できる。昇降用リニアレール38A上を進退自在な昇降架台46の駆動源は、電動モータ、油圧モータ、圧縮空気等を用いることができる。昇降架台46は脚部の長手方向に沿って昇降用リニアレール38Bを設けている。バンドソー60Aは昇降用駆動モータ40Bと、ボールねじ42Bと、バンドソー60Aに接続したスライドガイド44Aを用いて、昇降用リニアレール38Bの長手方向に沿って進退自在に走行できる。昇降用リニアレール38B上を進退自在なバンドソー60Aの駆動源は、電動モータ、油圧モータ、圧縮空気等を用いることができる。
このような構成の原子炉機器の水中切断装置10Aは、バンドソー60Aを支持する2本の支持脚部36A,37Aを同じ長さに合わせることができ、切断中のバンドソー60Aのフレームに歪みが生じることなく安定した切断作業を実現できる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0029】
10,10A 原子炉機器の水中切断装置
11 原子炉機器
12 プール
14 オペレイティングフロア
16 走行レール
20 走行架台
22 フレーム本体
24 脚部
26 走行車輪
30 横行用リニアレール
32,32A 横行架台
33 横行用駆動モータ
34 架台本体
35 ラックギア
36,36A,37,37A 支持脚部
38 昇降用リニアレール
40 昇降用駆動モータ
42 ボールねじ
44 スライドガイド
46 昇降架台
50 回転テーブル
60 バンドソー
62 フレーム
64 駆動ホイール
66 従動ホイール
68 鋸刃回転モータ
70 鋸刃
72 張力調整部
74 鋸刃方向切替部
75 中空ロータリアクチュエータ
76 ガイドローラ
80 水中カメラ
90 把持装置