(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】洗濯機及びこれに接続される外部情報機器
(51)【国際特許分類】
D06F 33/52 20200101AFI20241031BHJP
D06F 33/70 20200101ALI20241031BHJP
D06F 101/14 20200101ALN20241031BHJP
D06F 101/20 20200101ALN20241031BHJP
D06F 105/52 20200101ALN20241031BHJP
D06F 105/58 20200101ALN20241031BHJP
【FI】
D06F33/52
D06F33/70
D06F101:14
D06F101:20
D06F105:52
D06F105:58
(21)【出願番号】P 2021071567
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】松井 康博
(72)【発明者】
【氏名】内田 麻理
(72)【発明者】
【氏名】森島 彰俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸司
(72)【発明者】
【氏名】山口 龍之介
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109811505(CN,A)
【文献】特開平06-343790(JP,A)
【文献】特開2017-006574(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068845(WO,A1)
【文献】特開2020-103871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00-34/34;58/30-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、を備え、
終了時刻、若しくは運転終了までの時
間を設定して行う予約運転を行う予約運転機能を備えた洗濯機であって、
予約運転時に重視したい重視ポイントを選択する重視ポイント入力部と、前記重視ポイント入力部から入力された重視ポイントを元に予約運転時における制御内容を変更する予約運転管理部と、を備え
、
前記重視ポイント入力部は、予約時刻を変更することなく設定することが可能な重視ポイントと、予約時刻の変更が必要な重視ポイントとを区別して表示することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記予約運転管理部は、予め入力された重視ポイントを元に予約時刻を変更しない範囲で実施可能な制御内容の変更を行うことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記重視ポイント入力部は、選択可能な重視ポイントの表示方法を変更可能であることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記重視ポイント入力部は、選択可能な重視ポイントの表示方法を、過去の選択履歴から変更することを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記重視ポイント入力部は、重視ポイントを選択した際の効果を表示することを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、を備え、
終了時刻、若しくは運転終了までの時
間を設定して行う予約運転を行う予約運転機能を備えた洗濯機であって、
運転コースや洗い時
間の設定、運転予約の設定が可能な操作・表示部を備え、
前記操作・表示部からの予約時刻の設定後に、予約時刻を変更することなく予め選択された重視ポイントを実現するための制御内容に運転コースや洗い時間を変更可能であ
り、
前記操作・表示部は、予約時刻設定後に運転コースを設定、変更する場合には、予約時刻の変更が不要な重視ポイントや設定と、予約時刻の変更が必要な重視ポイントや設定とを分けて表示することを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
洗濯機の通信手段と通信が可能な外部情報機器通信手段を備えた外部情報機器であって、
前記洗濯機の予約運転時に重視したい重視ポイントを選択する重視ポイント入力部と、前記重視ポイント入力部から入力された重視ポイントを元に予約運転時における制御内容を変更する予約運転管理部と、を備え
、
前記重視ポイント入力部は、予約時刻を変更することなく設定することが可能な重視ポイントと、予約時刻の変更が必要な重視ポイントとを区別して表示することを特徴とする外部情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予約運転機能を有する洗濯機及びこれに接続される外部情報機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機は、洗濯から脱水或いは乾燥までの運転が完了する時間を算出する運転時間算出手段と、運転のコースや設定を選択した後に残り時間や終了時刻などを表示する手段を備えている。また、洗濯機は、運転終了時刻を設定して運転を行う予約手段を備えている場合もある。通常、予約運転を使用する場合、算出された運転時間よりも運転終了時刻は後に設定されるため、スタートボタン押下後に待機時間が生じる。
【0003】
一方、洗浄性能、消費電力量、静粛性、運転時間などの性能は、それぞれトレードオフの関係にある。一般的に洗濯機の制御は、それらの性能のバランスを取るように設計されているため、必ずしも使用者が望む制御になっていない場合がある。例えば、運転時間を優先した設計を行うと、消費電力量や静粛性などが悪化する場合がある。
【0004】
そこで、その課題を解決する背景技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1の請求項1には、「洗濯の終了予定時刻を任意に入力可能な入力部を有する洗濯機本体と、当該洗濯機本体の内部に配置された洗濯槽と、当該洗濯槽に収容される被洗濯物を回転させるための駆動力を付与するモータとを備え、前記終了予定時刻までに、被洗濯物を洗濯する複数の工程を終了させる予約運転が可能な洗濯機において、前記複数の工程のうちの最初の工程の開始前に、前記終了予定時刻に基づいて設定された終了目標時刻までの残り時間を取得する時間取得手段と、前記時間取得手段が取得した残り時間に基づいて、前記複数の工程それぞれを、前記モータの平均回転数を所定値としつつ所定の実行時間で行う通常予約モード、または、当該通常予約モードよりも前記モータの平均回転数が小さくかつ実行時間が長く設定された特別予約モードのいずれで行うか決定するモード決定手段とを備えることを特徴とする洗濯機。」が開示されている。この発明によると、予約設定時に終了目標時刻までの残り時間を取得し、モード決定手段が残り時間に基づいて、通常予約モードよりもモータの平均回転数が小さい特別運転モードを適用することで、洗濯物の傷みやしわを低減することが出来ると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、残り時間に応じてモータの回転数が小さい運転を行うことで、洗濯物の傷みやしわを抑制し、低下した洗浄力などを運転時間を延長することで補うようにしている。
【0007】
しかしながら、洗浄性能、脱水性能、消費電力量、静粛性などの性能は、使用者や洗濯物によって優先順位が異なり、必ずしも洗濯物の傷みやしわを優先することが好ましいとは限らない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、予約運転において予約時刻に対して運転時間が短い場合に、向上させたい性能を使用者が選択することが出来る洗濯機及びこれに接続される外部情報機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の洗濯機は、衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、前記外槽を収容する筐体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、前記駆動機構を制御する制御装置と、を備え、終了時刻、若しくは運転終了までの時間を設定して行う予約運転を行う予約運転機能を備えた洗濯機であって、予約運転時に重視したい重視ポイントを選択する重視ポイント入力部と、前記重視ポイント入力部から入力された重視ポイントを元に予約運転時における制御内容を変更する予約運転管理部と、を備え、前記重視ポイント入力部は、予約時刻を変更することなく設定することが可能な重視ポイントと、予約時刻の変更が必要な重視ポイントとを区別して表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予約運転において予約時刻に対して運転時間が短い場合に、向上させたい性能を使用者が選択することが出来る洗濯機及びこれに接続される外部情報機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構造を示すために筐体の一部を切断して示した右側面断面図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の制御ブロック図である。
【
図4】従来技術における予約運転を行う場合の制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の運転制御を示すフローチャートである。
【
図6】5時間後に終了するように洗濯乾燥運転を実施した場合における、従来技術の運転時間と実施例1の予約運転管理部201の運転時間を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例2に係るドラム式洗濯乾燥機100の運転制御を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施例2における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る制御装置7の運転制御を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の実施例4に係るドラム式洗濯乾燥機410と外部情報機器400の関係を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0013】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【0014】
以下の各実施例では、使用者がドラム式洗濯乾燥機100を使用する状態において、使用者の視点から左右方向、上下方向・前後方向と定義する。また、各実施例では、ドラム式洗濯乾燥機を用いて説明するが、縦型洗濯乾燥機、乾燥機機能を持たない洗濯機であっても構わない。本実施例では、ドラム式洗濯乾燥機、縦型洗濯乾燥機は、洗濯機の概念に含まれるものとする。
【実施例1】
【0015】
<ドラム式洗濯乾燥機100>
図1及び
図2を用いて、ドラム式洗濯乾燥機100の構造を説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100を示す外観斜視図である。
図2は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構造を示すために筐体の一部を切断して示した右側面断面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、ドラム式洗濯乾燥機100の外郭を構成する筐体1は、ベース1aの上に取り付けられており、左右の側板1b、前面カバー1c、背面カバー、上面カバー1d、上面カバーパネル1e、前面下部カバー1fで構成されている。左右の側板1bはコの字型の上補強材、前補強材、後補強材に結合されており、ベース1aを含めて箱状の筐体1を形成し、十分な強度を有している。筐体1には、外槽9が収容されている。ドア2は、前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、ヒンジによって開閉可能に支持されている。筐体1の上部中央には、操作・表示部3及び電源スイッチ4を備える。操作・表示部3は筐体1上部に設けた制御装置7に電気的に接続している。また、ベース1aの4隅下部にはゴム製の脚1hが備えられている。
【0017】
図2に示すように、衣類を収容する洗濯兼脱水槽となるドラム8(内槽)は外槽9に内包されて回転可能に支持されている。ドラム8の外周壁および底壁は、通水のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けている。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8bを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8cが複数個設けてあり、洗濯、乾燥時にドラム8が回転すると、衣類はリフタ8cと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下する動きを繰り返す。ドラム8の回転軸Azは、略水平または開口部8a側がやや高くなるように傾斜している。
【0018】
円筒状の外槽9はドラム8を同軸上に内包し、外槽9の後側端面の外側中央には、ドラム8を回転駆動する駆動機構10を設けている。駆動機構10のシャフト10aは外槽9を貫通し、ドラム8と結合している。なお、外槽9は前側中央に衣類を出し入れするための開口部9aを有している。また、駆動機構10には回転速度を検出する回転速度センサ10bが設けられている。外槽9上部には前後方向に前補助ばね9c、後補助ばね9dが設けられており、外槽9が前後方向に倒れないように支持している。外槽9下部には外槽の重量の保持と、外槽の振動の抑制を行うための、防振支持構造20が設けられている。防振支持構造20は、ばね20aとダンパ20bで構成されている。
【0019】
外槽9の開口部9aと筐体1に設けた開口部は、ゴム製のベローズ11で接続しており、ドア2を閉じることで外槽9を水封する。排水口9bは外槽9の底面最下部に設けられており、内部排水ホース12と接続している。内部排水ホース12は糸くずを捕集するための糸屑捕集ボックス13を介して、外部排水ホース14に接続している。糸屑捕集ボックス13には、洗濯水を循環するための循環ポンプ15が設けられており、循環経路15aを介して水をドラム8内に散布する。外部排水ホース14には排水弁14aが設けてあり、排水弁14aを閉じて給水することで外槽9に水を溜め、排水弁14aを開いて外槽9内の水を機外へ排出する。外槽9の下部には振動センサ16を設けており、外槽9の振幅を測定している。前記振幅とあらかじめ設定している閾値を比較し、振幅が大きい場合にはドラム8の回転を停止させて、振動が閾値以下となった場合のみ回転速度を上昇させることで、過大な振動の発生を抑制している。
【0020】
筐体の上部には、乾燥ユニットを設けており、筐体1背面に設けたダクトや外槽9の前面に接続されている。乾燥ユニットは乾燥用ファンやヒータを有しており、乾燥運転時にはヒータで空気を加熱し、乾燥用ファンを駆動させて衣類に温風を当てることで、衣類の乾燥を行う。
【0021】
<制御ブロック>
図3は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の制御ブロック図である。実施例1のドラム式洗濯乾燥機100は、洗濯から脱水、洗濯から乾燥といった洗濯コースにおける終了時刻、若しくは運転終了までの時間などを設定して行う予約運転機能を備えている。
【0022】
ドラム式洗濯乾燥機100の制御装置7は、運転制御部200及び予約運転管理部201で構成されており、操作・表示部3に入力された情報を元にドラム式洗濯乾燥機100の制御を行う。操作・表示部3は洗濯などの運転コースや、洗い時間やすすぎ回数などの設定を入力する手段である。操作・表示部3には重視ポイント入力部3aが含まれており、予約運転時などに重視したい重視ポイントを選択して入力する際に用いられる。
【0023】
洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程において、制御装置7は回転速度センサ10bの出力を元に、駆動機構10の制御を行う。また、給排水は、給水弁17、排水弁14aを制御して行うが、給水の際には水位センサ21で水位を検知しながら、注水する量を制御している。また、洗いやすすぎ工程では、循環ポンプ15で洗濯水やすすぎ水を循環させながら、駆動機構10によりドラム8を回転させて運転を行う。さらに、脱水工程においては、振動が過大とならないよう振動センサ16の出力と予め記録されている閾値を比較し、振動が大きいと判断した場合にはドラム8の回転を停止するよう制御している。
【0024】
<運転フロー>
図4から
図6を用いて、制御方法について説明する。
図4は、従来技術における予約運転を行う場合の制御方法を示すフローチャートである。
【0025】
図4に示すように、電源ボタンを押下した後、ステップS101において、洗濯、乾燥、洗乾(洗濯乾燥)などのコースや、洗い時間、すすぎ回数、脱水時間などの設定を選択する。
【0026】
ステップS102において、選択された設定を実施するために必要な運転時間を算出する。
【0027】
ステップS103において、運転を終了させる時刻となる予約時刻の設定を行う。この際、運転を終了することが可能な時刻のみを表示し、その中から使用者が選択することになる。
【0028】
ステップS104において、スタートボタンを押下し、運転を開始する。その後、ステップS105において、予約時刻と運転時間から算出した待機時間が経過するまで待機する。
【0029】
待機時間終了後、ステップS106において、洗いなどの工程を実施し、予約時刻までに運転を終了する。
【0030】
図5は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の運転制御を示すフローチャートである。制御装置7は、運転制御部200と予約運転管理部201から構成されている。予約運転管理部201は、以下の示すように重視ポイント入力部3aから入力された重視ポイントを元に予約運転時における制御内容を変更するように動作する。
【0031】
図5に示すように、電源を押下した後、ステップS201において、洗濯、乾燥、洗乾などのコースや、洗い時間、すすぎ回数、脱水時間などの設定を選択する。
【0032】
ステップS202において、選択された設定を実施するために必要な運転時間を算出する。
【0033】
ステップS203において、運転を終了させる時刻となる予約時刻の設定を行う。
【0034】
ステップS204において、予約運転管理部201は重視ポイントを表示し、ステップS205において、使用者がその性能の中から向上を希望する重視ポイント(例えば「汚れ落ちをよくしたい」、「電気代を抑えたい」などの重視したい性能)を選択する。
【0035】
ステップS204では、予約時刻を変更することなく設定が可能な重視ポイントのみを表示することで、予約時刻の変更が必要な重視ポイントを選択することを防止できる。
【0036】
運転制御部200は、ステップS206で選択された重視ポイントに応じた運転制御内容を変更し、待機時間を決定する。
【0037】
ステップS207において、スタートボタンを押下して運転が開始し、ステップS208で算出した待機時間を待機する。ここで、重視ポイントとして選択した性能の向上を図るために運転時間を延長するため、従来技術の待機時間よりも実施例1の待機時間の方が短くなる。待機時間終了後、ステップS209において洗いなどの工程を実施し、予約時刻までに運転を終了する。
【0038】
<運転時間>
図6に示す予約運転時の工程ごとの運転時間を用いて、本実施例における予約運転管理部201による制御方法について述べる。
図6は、5時間後に終了するように洗濯乾燥運転を実施した場合における、従来技術の運転時間と実施例1の予約運転管理部201の運転時間を示す図である。
【0039】
図6(a)は、従来技術における運転時間を示す図である。使用者が洗濯乾燥運転を設定すると、運転時間の算出を行う。ここで、運転時間が3時間と算出されると、終了時刻の5時間後に対し、2時間の余裕があることになる。そこで、一般的には2時間の待機時間を設け、2時間後から洗い工程などの運転を開始する。
【0040】
図6(b)から
図6(e)は、実施例1における予約運転管理部201の運転時間を示す図である。
【0041】
図6(b)は、「汚れ落ちをよくしたい」を重視する重視ポイントを選択した場合の運転時間を示している。洗浄性能の向上を図る場合には、洗い時間を延長することで実現することができる。そこで、
図6(b)に示すように、予約時刻までに運転を終了可能な範囲で洗い時間を延長することで、洗浄性能を向上することができる。
【0042】
次に、「静かに運転したい」を重視する重視ポイントを選択した場合の運転時間を
図6(c)に示す。洗いや脱水、乾燥運転では、駆動機構10や乾燥用ファンの回転速度を低下させることで運転音を低下することができる。しかし、洗い時に駆動機構10の回転速度を低下させると洗浄力が低下するため、洗い時間を延長して洗浄性能を維持する。また、脱水時に駆動機構10の回転速度を低下させると脱水率が低下するため、脱水時間を延長することで脱水率を維持する。同様に、乾燥時に乾燥用ファンの回転速度を低下させると衣類の乾燥速度が低下するため、乾燥時間を延長することで衣類の乾燥度を維持する。このように、駆動機構10や乾燥用ファンの回転数を低下させ、その分各工程の運転時間を延長することで、運転音を低下しながら終了時刻までに運転を完了することができる。
【0043】
また、脱水運転においては、衣類の片寄りが大きいと振動が大きくなり、それに伴い運転音も増大する。一般的には、振動センサなどで検出することで過大な振動が発生しないようにしている。ここで、この振動センサが検出する閾値を低下させることで、発生する振動の最大値が低下するため、運転音が低下する。ただし、許容される衣類の片寄り量が低下するため、片寄りが低下するまでのやり直し時間が長くなる可能性があり、運転時間が延長する場合がある。そこで、予めやり直し時間分を考慮して脱水時間を確保することで、終了時刻を変更することなく脱水時の振動に起因した音を低減することができる。
【0044】
次に、「使う水を減らしたい」を重視する重視ポイントを選択した場合の運転時間を
図6(d)に示す。すすぎは、衣類に含まれる洗剤をドラム内に注水して希釈し、衣類に含まれる洗剤量を低下させることで行う。従来技術においては、すすぎ回数が多い程運転時間が延びるため、1回の運転ですすぎ工程は1回から3回程度実施するのが一般的である。すすぎ時の使用水量は、1回のすすぎで使う水を減らして、すすぎ回数を増やすことで、すすぎ性能を維持したまま、低減することができる。例えば、脱水後の衣類に含まれる水量を5Lとし、洗い後の残存洗剤量が5gだったとする。これを20Lの水ですすぎを行うと、残存洗剤量は1/5になる。この工程を3回実施すると、60Lの水を使って、残存洗剤量が0.04gまで低下する。
【0045】
これに対し、実施例1の予約運転管理部201は、すすぎ1回あたりの使用水量を削減し、すすぎ回数を増やすことで節水を図る。1回当たり5Lの水ですすぎを行うと、残存洗剤量は1/2になる。これを7回繰り返すと残存洗剤量は従来技術と同程度の0.04gまで低減することができる。この時の使用水量は35Lであるため、従来技術に対し使用水量を25L削減したことになる。ただし、すすぎ工程とすすぎ工程に含まれる脱水の回数が増えているため、すすぎ工程に必要な時間は長くなる。
図6(d)に示すように、すすぎ工程の時間を延長し、その分待機時間を短縮することで、使用水量を減らしながら、予約時刻までに運転を終了することができる。
【0046】
最後に、「電気代を抑ええたい」を重視する重視ポイントを選択した場合の運転時間を
図6(e)に示す。乾燥運転においては、乾燥用のヒータの入力を低下させる、もしくはヒータのON時間を短縮することで消費電力を低下させる。しかし、それだけでは温風の温度が低下して衣類の乾燥が促進されにくくなるため、同じ運転時間では衣類が乾かなくなってしまう。そこで、その分運転時間を延長することで所定の乾燥度を維持する。
【0047】
予約運転時に待機時間が発生するような場合、予約運転管理部201は、予め入力された重視ポイントを元に予約時刻を変更しない範囲で実施可能な制御内容の変更を行うようにしている。実施例1によれば、予約運転管理部201によって、運転終了時刻や他の性能を悪化させることなく、重視したい性能を向上することができる。
【0048】
<表示画面>
図7乃至
図9は、本発明の実施例1における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【0049】
図7に示すように、重視ポイント入力画面300においては、6個のボタン301~306のそれぞれ「汚れ落ちをよくしたい」、「しっかりすすぎたい」、「電気代を抑えたい」、「使う水を減らしたい」、「脱水の絞りをよくしたい」、「静かに運転したい」という重視ポイントが割り当てられている。さらに、選択した内容の決定ボタン307や1つ前の画面に戻るための戻るボタン308を表示している。重視ポイントの6個のボタンは1つのみ選択可能となっており、あるボタンが選択された状態で他のボタンが選択された場合は、最初に選択されていた項目は非選択状態となる。
【0050】
また、コースや洗い時間などの設定を行って算出した運転時間経過後の終了予定時刻と設定した予約時刻の差が小さいと、重視ポイントによっては制御内容の変更を行うと設定した予約時刻までに運転を完了できない場合がある。そのような場合は、予約時刻を変更することなく制御内容の設定変更が可能な重視ポイントと、予約時刻の変更が必要となる重視ポイントを色や配置などで区別できるように表示する。例えば、「電気代を抑えたい」や「使い水を減らしたい」の重視ポイントを選択すると予約時刻までに終了しない場合、
図7に示す表示ではなく、
図8(a)に示すようにその項目の色を変えて表示して選択できないことを示すことで、使用者が実施できない重視ポイントを選択しようとすることを防止することができる。また、
図8(b)のように、予約時刻を変更することなく制御内容の設定変更が可能な重視ポイントのみを表示し、設定できない項目を表示しないようにしても良い。
【0051】
ここで、重視ポイントの表示は必ずしも予め決められたものである必要はなく、過去の選択履歴などを参考に使用頻度の高い順に並べ替える、もしくは使用者が配置を変更できるようにすることで使い勝手を向上することができる。例えば、
図6の表示に対して、「しっかりすすぎたい」、「脱水の絞りをよくしたい」は使うことがなく、「静かに運転したい」の使用頻度が高い場合などは、
図9に示すように「しっかりすすぎたい」、「脱水の絞りをよくしたい」を表示しないようにしたり、「静かに運転したい」を上部に配置するなどの変更をすることで使い勝手を向上することができる。重視ポイントは、1つのみ設定できるようにしているが、必ずしも1つである必要はなく、複数を選択するようにしても構わない。このように重視ポイント入力部3aは、選択可能な重視ポイントの表示方法を変更可能としている。
【0052】
また、実施例1では重視ポイントのみを表示しているが、重視ポイントを設定した時の効果も合わせて表示しても良い。例えば、「電気代を抑えたい」に関しては、設定時に消費電力量の低減量や電気代を表示しても良い。
【0053】
重視ポイントの設定タイミングにおいては、実施例1ではスタートボタンが押下されるまでに重視ポイントの設定を行っているが、必ずしもそのタイミングである必要はない。運転開始後もドラム式洗濯乾燥機100の操作・表示部3に設定可能な重視ポイントを表示し、使用者が設定を変更できるようにしてもよい。
【0054】
なお、実施例1では、ドラム式洗濯乾燥機を例に述べているが、これに限定されるものでは無く、ドラム式洗濯機やタテ型洗濯乾燥機など、予約運転を行うことができる洗濯機であればよい。
【0055】
実施例1によれば、予約運転において予約時刻に対して運転時間が短い場合に、向上させたい性能を使用者が選択することが出来る。
【実施例2】
【0056】
次に、
図10及び
図11を用いて、本発明の実施例2について説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。実施例1では、予約運転を設定後に設定可能な重視ポイントを表示し、使用者が選択する構成としているが、必ずしも運転ごとに毎回選択する必要はない。予め重視ポイントを選択し、記録することで運転ごとに毎回選択することを省略することができる。
【0057】
すなわち、実施例2では、操作・表示部3からの予約時刻の設定後に、予約時刻を変更することなく予め選択された重視ポイントを実現するための制御内容に運転コースや洗い時間を変更可能としている。
【0058】
図10は、本発明の実施例2に係るドラム式洗濯乾燥機100の運転制御を示すフローチャートである。
【0059】
電源を押下した後、ステップS301において、洗濯、乾燥、洗乾などのコースや、洗い時間、すすぎ回数、脱水時間などの設定を選択する。
【0060】
ステップS302において、選択された設定を実施するために必要な運転時間を算出する。
【0061】
ステップS303において、運転を終了させる時刻となる予約時刻の設定を行う。
【0062】
ステップS304において、スタートボタンを押下して運転を開始する(Step305)。
【0063】
ステップS306において、予め選択された重視ポイントを実現するために必要な運転時間を算出する。
【0064】
ステップS307にて算出した運転時間経過後の終了予定時刻と予約時刻を比較し、制御変更後の運転時間でも終了時刻までに運転が完了する場合はステップS308に進み、設定を変更して運転を開始する。
【0065】
ステップS307において、設定を変更すると予約時刻までに運転が完了しない場合は、設定を変更せずに、運転を開始する。
【0066】
ここで、登録する重視ポイントは1つである必要はなく、重視ポイントに優先順位を設定しても構わない。そうすることで、予約時刻までに余裕がある場合は複数の重視ポイントを実現するように制御を変更することができる。
【0067】
また、登録は1種類としてそれを毎回適用しても構わないが、日中と夜間とで分けたり、曜日毎としても良い。
【0068】
図11は、本発明の実施例2における重視ポイント入力部3aの重視ポイント入力画面300の一例を示す図である。
【0069】
重視ポイント入力画面300には、日中用重視ポイント選択ボタン310と夜間用重視ポイント選択ボタン311がある。ここで、日中用重視ポイント選択ボタン310と夜間用重視ポイント選択ボタン311は、ボタン押下時に、複数の重視ポイントが表示されその中から選ぶことが可能であり、操作していない時は、選択されている重視ポイントが表示されている。このように、実施例2によれば、予め希望する設定を記録させることで、毎回重視ポイントを選択する手間を省くことができる。
【0070】
なお、設定変更の実施の有無を操作・表示部3などに表示しても良い。また、運転終了時には、消費電力量の低減量などの効果を表示するようにしても良い。
【実施例3】
【0071】
次に、
図12を用いて、本発明の実施例3について説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0072】
従来技術における予約運転は、洗い、乾燥、洗乾などの運転コースや、洗い時間やすすぎ回数と言った設定などを入力した後に、予約設定を行う。これは、運転コースや設定によって運転時間が異なるために、設定可能な予約時刻が変化するためである。しかし、運転コースなどを入力した後で予約時刻を設定しようとした場合、希望した予約時刻までに完了しない場合がある。その場合、運転コースなどの入力からやり直すことになってしまう。
【0073】
そこで、実施例3では、予約運転を設定する場合は、予約時刻を先に入力し、その後で運転コースなどを入力する。予約時刻を先に入力するため、選択可能な運転コースや設定には予約時刻までに完了するものだけに制限されるが、希望する予約時刻が設定できないことによる再入力の手間を省くことができる。
【0074】
図12は、本発明の実施例3に係る制御装置7の運転制御を示すフローチャートである。
図12に示すように、電源を入れた後に、ステップS401で予約時刻の設定を行った場合(ステップS401のYes)は、ステップS402で予約時刻までに終了する運転コース、時間などの設定、重視ポイントを表示する。
【0075】
ステップS403において、使用者は表示された設定の中から何れかの重視ポイントを選択し、スタートボタンを押下して運転を開始する(ステップS404)。
【0076】
一方、ステップS401で予約時刻の設定を行わなかった場合(ステップS401のNo)は、全ての運転コース、時間などが表示される(ステップS405)。ステップS403で表示された設定の中から何れかの重視ポイントを選択し、スタートボタンを押下して運転を開始する。
【0077】
上記のように操作・表示部3には、予約時刻設定後に運転コースなどを設定や重視ポイントを変更する場合には、予約時刻の変更が不要な重視ポイントや設定のみを表示するようにしている。また、操作・表示部3には、予約時刻の変更が不要な重視ポイントや設定と予約時刻の変更が必要な重視ポイントや設定を分けて表示するようにしても良い。
【0078】
実施例3によれば、コース設定後に、希望する予約時刻が設定できないことによって、コースを再入力するといった手間を省くことができる。
【0079】
なお、
【実施例4】
【0080】
図13を用いて、本発明の実施例4について説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。実施例1では、予約運転管理部201はドラム式洗濯乾燥機100の構成要素の1つとなっているが、本実施例では予約運転管理部は外部情報機器400に設けている。
【0081】
図13は、本発明の実施例4に係るドラム式洗濯乾燥機410と外部情報機器400の関係を示す制御ブロック図である。
【0082】
外部情報機器400は、外部情報機器予約運転管理部401、操作・表示部402及び外部情報機器通信手段403を設けている。操作・表示部402は、重視ポイント入力部402aを備えている。
【0083】
一方、ドラム式洗濯乾燥機410も通信手段411を設けており、外部情報機器400との通信が可能となっている。使用者は外部情報機器400の操作・表示部402を使って、ドラム式洗濯乾燥機410の設定を行う。この時に予約運転が選択されると、外部情報機器予約運転管理部401は運転時間と予約時刻を比較して、十分な待機時間が生じると判断した場合には、予約時刻の変更なく選択できる重視ポイントを表示する。
【0084】
使用者が何れかの重視ポイントを選択した場合には、外部情報機器予約運転管理部401が制御を変更し、通信手段を介してドラム式洗濯乾燥機410の制御装置7に制御方法を伝達する。このように、実施例4によれば、外部情報機器予約運転管理部401をドラム式洗濯乾燥機410に設ける必要はなく、外部情報機器400で予約運転を管理する。こうすることで、ドラム式洗濯乾燥機410の操作・表示部3に重視ポイントを表示する必要がなくなり、操作・表示部3のコストを抑えることが可能となる。
【0085】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0086】
1…筐体、2…ドア、3…操作・表示部、3a…重視ポイント入力部、7…制御装置、8…ドラム、9…外槽、100…ドラム式洗濯乾燥機、200…運転制御部、201…予約運転管理部、300…重視ポイント入力画面、400…外部情報機器、401…外部情報機器予約運転管理部、402…操作表示部、402a…重視ポイント入力部、403…外部情報機器通信手段、410…ドラム式洗濯乾燥機、411…通信手段