(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】操出容器用カートリッジ、操作体、及び操出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/00 20060101AFI20241031BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20241031BHJP
A45D 40/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A45D40/00 X
B65D83/00 C
A45D40/06 Z
(21)【出願番号】P 2021091964
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-192802(JP,A)
【文献】実開昭51-122837(JP,U)
【文献】米国特許第05449078(US,A)
【文献】実開平02-001017(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00
B65D 83/00
A45D 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状内容物を備え、操出容器の操作体に装着して使用される操出容器用カートリッジであって、
前記棒状内容物を保持するとともに外周面に突起を有する中皿と、
縦方向に延在して前記突起を挿通させる縦溝を有し、前記中皿を取り囲む内側筒体と、
螺旋状に延在して前記突起が係合する螺旋溝を有し、前記内側筒体を取り囲むとともに該内側筒体の軸線回りへの回転を可能とする案内筒体と、を備え、
前記案内筒体は、
前記螺旋溝の下端部につながり、前記中皿が下方に移動する向きに該内側筒体を回転させた際に前記突起が該螺旋溝から移動する周方向溝と、
前記中皿が下方に移動する向きへの前記内側筒体の回転を継続すると、前記周方向溝を前進する前記突起が前記螺旋溝の下方で
前記周方向溝の延在方向に進退移動不能に保持されるロック溝と、を有
し、
前記突起及び前記案内筒体の少なくとも一方は、前記内側筒体の軸線に沿って傾斜し、前記ロック溝から前記螺旋溝への該突起の移動を誘導する第二傾斜部を有する操出容器用カートリッジ。
【請求項2】
前記内側筒体は、前記中皿が下方に移動する向きに該内側筒体を回転させた際に、前記螺旋溝から前記周方向溝へ移動する手前で前記突起が乗り越える突出部を有する請求項1に記載の操出容器用カートリッジ。
【請求項3】
前記突起及び前記案内筒体の少なくとも一方は、前記
内側筒体の軸線を周回する方向に
沿って、前記周方向溝から前記ロック溝に向かうにつれて前記内側筒体の軸線に近づく向きに傾斜し、前記周方向溝から前記ロック溝への該突起の移動を誘導する第一傾斜部を有する請求項1又は2に記載の操出容器用カートリッジ。
【請求項4】
前記内側筒体の外周面を覆う外側筒体を備え、
前記内側筒体の内周面に、該内側筒体を回転させる際に係合する係合部を有する請求項1~
3の何れか一項に記載の操出容器用カートリッジ。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか一項に記載の操出容器用カートリッジを装着可能な操作体であって、
装着時に前記内側筒体に挿入されて前記中皿を押し上げて、前記ロック溝から前記螺旋溝へ前記突起を移動させる押し上げ部を有する操作体。
【請求項6】
請求項1~
4の何れか一項に記載の操出容器用カートリッジと請求項
5に記載の操作体を含んで構成される操出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操出容器用カートリッジ、操作体、及び操出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップクリーム、或いはスティックタイプの糊のような棒状の内容物を収容する容器として、下部の操作体を回転させることによって上部開口から内容物を繰り出すことができる操出容器が既知である。
【0003】
このような操出容器は、内容物を保持する部分と操作体とが分離不能に結合されていて、内容物を使い切った後はそのまま廃棄されるものが多数である。しかし、省資源化や環境への負荷削減の観点から、内容物を保持する部分を操作体から分離可能としたカートリッジタイプの操出容器も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1のカートリッジは、内容物を繰り出す機構を備えていて、操作体に取り付けられていない状態であっても、カートリッジ下端部を回転させるとこの機構が作動する。このため、例えば輸送中にカートリッジ下端部に外力が作用してこれが不用意に回転してしまうと、意に反して内容物が繰り出されてしまうことになる。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであって、意に反した内容物の繰り出しを防止することができる操出容器用カートリッジを提供することを目的とする。またこのカートリッジに使用して好適な操作体、及びこのカートリッジと操作体とで構成される操出容器についても提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、棒状内容物を備え、操出容器の操作体に装着して使用される操出容器用カートリッジであって、
前記棒状内容物を保持するとともに外周面に突起を有する中皿と、
縦方向に延在して前記突起を挿通させる縦溝を有し、前記中皿を取り囲む内側筒体と、
螺旋状に延在して前記突起が係合する螺旋溝を有し、前記内側筒体を取り囲むとともに該内側筒体の軸線回りへの回転を可能とする案内筒体と、を備え、
前記案内筒体は、
前記螺旋溝の下端部につながり、前記中皿が下方に移動する向きに該内側筒体を回転させた際に前記突起が該螺旋溝から移動する周方向溝と、
前記中皿が下方に移動する向きへの前記内側筒体の回転を継続すると、前記周方向溝を前進する前記突起が前記螺旋溝の下方で前記周方向溝の延在方向に進退移動不能に保持されるロック溝と、を有し、
前記突起及び前記案内筒体の少なくとも一方は、前記内側筒体の軸線に沿って傾斜し、前記ロック溝から前記螺旋溝への該突起の移動を誘導する第二傾斜部を有する操出容器用カートリッジである。
【0008】
前記内側筒体は、前記中皿が下方に移動する向きに該内側筒体を回転させた際に、前記螺旋溝から前記周方向溝へ移動する手前で前記突起が乗り越える突出部を有することが好ましい。
【0009】
前記突起及び前記案内筒体の少なくとも一方は、前記内側筒体の軸線を周回する方向に沿って、前記周方向溝から前記ロック溝に向かうにつれて前記内側筒体の軸線に近づく向きに傾斜し、前記周方向溝から前記ロック溝への該突起の移動を誘導する第一傾斜部を有することが好ましい。
【0011】
前記内側筒体の外周面を覆う外側筒体を備え、
前記内側筒体の内周面に、該内側筒体を回転させる際に係合する係合部を有することが好ましい。
【0012】
また本発明は、上述した操出容器用カートリッジを装着可能な操作体であって、
装着時に前記内側筒体に挿入されて前記中皿を押し上げて、前記ロック溝から前記螺旋溝へ前記突起を移動させる押し上げ部を有する操作体でもある。
【0013】
また本発明は、上述した操出容器用カートリッジと操作体を含んで構成される操出容器でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の操出容器用カートリッジ(以下、「カートリッジ」と称する)は、上記のように案内筒体に周方向溝とロック溝を設けたので、中皿が下方に移動する向きに内側筒体を回転させると、螺旋溝を移動する中皿の突起はそのまま周方向溝を前進し、ロック溝に進退移動不能に保持される。これにより、不用意に内側筒体を回転させる力が作用しても、中皿が上下動することはないため、中皿に保持した内容物が意に反して繰り出される不具合が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る操出容器の一実施形態を示す側面視での半断面図である。
【
図2】
図1に示すカートリッジに治具を取り付ける状態について示した図である。
【
図3】(a)は中皿に内容物を充填した状態を示した図であり、(b)はその際の突起、縦溝、螺旋溝、周方向溝との関係を模式的に示した図である。
【
図4】(a)は中皿が下方に移動する向きに内側筒体を回転させて中皿の突起が突出部を乗り越えた状態を示した図であり、(b)はその際の突起、縦溝、螺旋溝、周方向溝、ロック溝との関係を模式的に示した図である。
【
図5】(a)は内側筒体を逆向きに回転させて突起がロック溝に入り込んだ状態を示した図であり、(b)はその際の突起、縦溝、螺旋溝、周方向溝、ロック溝との関係を模式的に示した図である。
【
図6】カートリッジを操作体に装着する状態を示した図である。
【
図7】(a)はカートリッジを操作体に装着して突起が螺旋溝に入り込んだ状態を示した図であり、(b)はその際の突起、縦溝、螺旋溝、周方向溝、ロック溝との関係を模式的に示した図である。
【
図8】操作体を回転させて内容物を繰り出した状態を示した図である。
【
図9】突起が螺旋溝、周方向溝、及びロック溝の間を移動する状況について示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に従う操出容器の一実施形態(操出容器100)について説明する。なお、本明細書等において上方とは、
図1に示した内側筒体5の軸線Oに沿う向きを基準として、袴部材1の底板部1aに対してカバー9の天壁部9aが位置する側であり、下方とは、その逆側である。
【0017】
本実施形態の操出容器100は、操作体101、カートリッジ102、及びカバー9を備えている。操作体101は、袴部材1と、中具2と、留め具3とで構成される。カートリッジ102は、中皿4と、内側筒体5と、案内筒体6と、外側筒体7と、リング部材8とで構成される。本実施形態では、留め具3、中皿4、内側筒体5、案内筒体6、リング部材8は合成樹脂製であって、袴部材1、中具2、外側筒体7、カバー9は金属製である。なお、上記部材の素材は適宜変更可能であって、例えば袴部材1、中具2、外側筒体7、カバー9は合成樹脂で形成してもよい。また各部材の詳細な形態は後述するが、各部材の中心は何れも軸線Oと一致している。
【0018】
まず、操作体101を構成する袴部材1について説明する。
図1に示すように袴部材1は、概略有底筒状をなすものである。本実施形態では、円板状の底板部1aと、底板部1aの外縁部に対して一体的に連結する円筒状の周壁部1bとを備えている。
【0019】
中具2は、概略円筒状に形成されていて、組み立てられた際は、下端部は袴部材1に挿入され上端部は袴部材1から突出するものである。中具2の下端部は、径方向内側に向かって部分的に折り曲げられていて、周方向に凹凸状をなすように形作られている。
【0020】
留め具3は、上げ底状になる底部3aを備えている。底部3aの外周面は、中具2の後端部に嵌まる凹凸状になっている。底部3aの上面には、円筒状になる筒状壁3bが設けられている。なお筒状壁3bは、後述するように、カートリッジ102を操作体101に装着した際、中皿4を押し上げる機能を有するものであって、本明細書等における「押し上げ部」に相当するものである。筒状壁3bの外周面における根元には、周方向に間隔をあけて設けられる操作体側リブ3cが設けられている。また操作体側リブ3cの上方には、筒状壁3bの外周面から径方向外側に向けて突出する操作体側係合凸部3dが設けられている。
【0021】
このような袴部材1、中具2、及び留め具3で構成される操作体101は、中具2の後端部と留め具3の底部3aとを嵌め合わせつつ、これらを袴部材1に挿入することによって組み立てられる。なお組み立てられた状態において、中具2と留め具3は、袴部材1に対して回転不能且つ抜け出し不能に保持される。
【0022】
次に、
図2を参照しながらカートリッジ102を構成する中皿4について説明する。本実施形態の中皿4は、有底筒状をなす中皿本体4aを備えている。中皿本体4aの下部には、後述するように内容物Nを充填するための孔4bが設けられている。中皿本体4aの外周面には、径方向外側に向けて突出する突起4cが設けられている。本実施形態の突起4cは、径方向外側から内側に向かう視点での形状が、
図9に示すように、右側縁部4dは円弧状になる一方、左側下縁部4eは軸線Oに沿って直線状に延在し、左側上縁部4fは軸線Oに対して斜めに延在している。また突起4cの上部には、上方に向かうにつれて径方向内側に傾く突起傾斜部4gが設けられている。なお突起傾斜部4gは、本明細書等で「第二傾斜部」と称する部位である。
【0023】
内側筒体5は、
図2に示すように概略円筒状をなすものである。内側筒体5の下部に位置する本体5aは、その内周面において、周方向に間隔をあけて設けられるカートリッジ側リブ5bを備えていて、カートリッジ側リブ5bの上方には、径方向内側に向けて突出するカートリッジ側係合凸部5cが設けられている。また本体5aの外周面には、
図1の部分拡大図に示すように、周方向に間隔をあけて設けられる第一リブ5dが設けられていて、第一リブ5dの下方には、径方向外側に向けて突出する第一係合凸部5eが設けられている。なおカートリッジ側リブ5bは、本明細書等で「係合部」と称する部位である。
【0024】
本体5aの上部には、本体5aよりも薄肉になる円筒状の内筒壁5fが設けられている。内筒壁5fの上部には爪部5gが設けられている。また内筒壁5fには、内筒壁5fを貫通する縦溝5hを備えている。本実施形態の縦溝5hは、
図3(b)に示すように、大部分が縦方向(軸線Oに沿う方向)に延在する一方、上端部は径方向外側から内側に向かう視点で左側に向かって延在し、下端部は右側に向かって延在した後に下方に向けて延在している。中皿4が内筒壁5fの内側に取り付けられた際、突起4cは縦溝5hを挿通して内筒壁5fの径方向外側まで突き出ている。縦溝5hは、突起4cよりも一回り大きな幅で形成されているが、その下端部には、
図4(b)の部分拡大図に示すように、縦溝5hの幅を狭めるように突出する2つの突出部5jが設けられていて、対向する突出部5j間の隙間は突起4cよりも狭くなっている。
【0025】
案内筒体6は、概略円筒状をなすものであって、内筒壁5fを取り囲むように形作られている。案内筒体6は、内側筒体5に取り付けられた際、内筒壁5fを取り囲んで、本体5aと爪部5gとの間で抜け止め保持される。案内筒体6の内周面には、軸線Oを中心として螺旋状に延在する(本実施形態では、
図3(b)~
図5(b)に示すように上方から下方に向かう向きで右回りに周回して螺旋状になる)螺旋溝6aが設けられている。螺旋溝6aは、突起4cが収まる幅で螺旋状に延在している。また案内筒体6は、一端側が螺旋溝6aの下端部につながる周方向溝6bを備えている。周方向溝6bは、螺旋溝と同方向に(上方から下方に向かう向きで右回りに)1周近く周回する。そして
図4(b)、
図5(b)、及び
図9に示すように周方向溝6bの他端部側には、螺旋溝6aの下方に位置していて、周方向長さが突起4cよりも若干大きくなるロック溝6cが設けられている。
図9に示すように本実施形態のロック溝6cは、案内筒体6を径方向に貫通するものであるが、螺旋溝6aや周方向溝6bと同様に、案内筒体6を径方向に貫通せずにその内周面に留まっているものでもよい。また
図9に示すように、螺旋溝6aと周方向溝6bがつながる側(図示例ではロック溝6cの左側)の側縁部6dは、軸線Oに沿って直線状に延在している。そして
図9に示すように、案内筒体6の内周面において周方向溝6bとロック溝6cとの間には、上方から下方に向かう向きで右回りに周回する際に径方向内側に向かって傾く案内筒体傾斜部6eが設けられている。なお案内筒体傾斜部6eは、本明細書等で「第一傾斜部」と称する部位である。
【0026】
外側筒体7は、概略円筒状に形成されるものであって、
図2に示すように案内筒体6を取り囲むように形作られている。なお詳細な説明は省略するが、外側筒体7は案内筒体6に対して回り止めされ且つ抜け止めされた状態で保持される。外側筒体7の上部には、中皿4が上昇した際に内容物Nが繰り出される操出口7aが設けられている。また外側筒体7の下端部は、内側筒体5の下端部とほぼ同じ位置まで延在していて、内側筒体5の外周面を覆い隠している。
【0027】
リング部材8は、概略リング状に形成されるものである。リング部材8の内周面には、
図1の部分拡大図に示すように、周方向に間隔をあけて設けられる第二リブ8aが設けられていて、第二リブ8aの下方には、径方向内側に向けて突出する第二係合凸部8bが設けられている。またリング部材8の上部には、爪状に形成された弾性片8cが設けられている。
【0028】
このような中皿4、内側筒体5、案内筒体6、外側筒体7、及びリング部材8で構成されるカートリッジ102は、
図2に示すように、中皿4の径方向外側に内側筒体5、案内筒体6、外側筒体7が位置するように、また内側筒体5の下端部と外側筒体7の下端部の間にリング部材8が位置するようにして組み立てられる。カートリッジ102を組み立てた際、中皿4の突起4cは、縦溝5hを挿通して螺旋溝6aに嵌まり込んでいる。また
図1の部分拡大図に示すように、リング部材8の第二リブ8aと第二係合凸部8bは、内側筒体5の第一リブ5dと第一係合凸部5eにそれぞれ係合するため、リング部材8は、内側筒体5に対して回転不能且つ抜け出し不能に保持される。また上述したように、外側筒体7は案内筒体6に対して回り止めされ且つ抜け止めされた状態で保持される。更に弾性片8cは、外側筒体7の内周面に弾性力をもって当接する。これにより外側筒体7及び外側筒体7に回り止めされた案内筒体6は、内側筒体5及び内側筒体5に回り止めされたリング部材8に対して、がたつくことなく滑らかに回転することができる。
【0029】
また組み立てたカートリッジ102に内容物Nを設けるにあたっては、中皿4を上方に移動させる。この際には、
図2に示す如き治具Jを使用するのが好適である。治具Jの上部には、内側筒体5の下端部に挿入可能な円柱状の挿入部J1が設けられていて、挿入部J1の外周面には、カートリッジ側リブ5bに係合する治具リブJ2が設けられている。そして挿入部J1を内側筒体5の下端部に挿入し、外側筒体7に対して治具Jを回転させる(本実施形態においては、外側筒体7に対して、下方から上方に向かう向きで右回りに回転させる)ことで、
図3(a)に示したように中皿4を上方に移動させることができる。その後は治具Jを一旦取り外し、孔4bから内容物となる素材を充填して所定の形状で固化させることによって、口紅等の如き棒状の内容物Nを中皿4に保持させることができる。なおこの状態において、突起4cは
図3(b)に示すように縦溝5hにおける水平方向に延在する上端部に位置しているため、中皿4が不用意に上下方向に移動することはない。
【0030】
内容物Nを中皿4に設けた後は、
図4(a)に示すように治具Jを再び内側筒体5に取り付ける。そして外側筒体7に対して治具Jを矢印の向きに(外側筒体7に対して、下方から上方に向かう向きで左回りに)回転させると、中皿4が下方に移動する。そして治具Jの回転を継続すると、
図4(b)に示すように縦溝5hを移動する突起4cは、突出部5jを乗り越えて、突出部5jよりも下方に移動する。突起4cが突出部5jを乗り越える際は若干の抵抗が生じるため、治具Jを回転させる作業者に、突起4cが縦溝5hの終了域(下端部)に近づいたことを知覚させることができる。
【0031】
その後も
図5(a)に示すように、外側筒体7に対して治具Jを同じ向きに(外側筒体7に対して、下方から上方に向かう向きで左回りに)回転させると、螺旋溝6aの下端部に位置していた突起4cも同方向に移動するため、突起4cは螺旋溝6aから周方向溝6bに移動する。
図9はこの状態を模式的に示した図であって、矢印Aは、突起4cが螺旋溝6aを下方に向けて移動する状態を示していて、矢印Bは、突起4cが螺旋溝6aから周方向溝6bへ移動する状態を示している。図示したように、突起4cの左側上縁部4fは軸線Oに対して斜めに延在していて、また突起4cの上部には上方に向かうにつれて径方向内側に傾く突起傾斜部4gが設けられているため、突起4cを引っ掛かりなく螺旋溝6aから周方向溝6bへ移動させることができる。
【0032】
そして突起4cが周方向溝6bへ移動した後も、外側筒体7に対して治具Jを同じ向きに(外側筒体7に対して、下方から上方に向かう向きで左回りに)回転させると、突起4cは周方向溝6bを前進して(下方から上方に向かう向きで左回りに回転して)、ロック溝6cに嵌まり込む。図示したように周方向溝6bとロック溝6cとの間には案内筒体傾斜部6eが設けられているため、治具Jを回転させた際に突起4cは、周方向溝6bからロック溝6cへスムーズに移動することができる。
【0033】
ところで
図9に示すように、突起4cの左側下縁部4eは軸線Oに沿って直線状に延在していて、またロック溝6cの側縁部6dも、軸線Oに沿って直線状に延在している。このため、治具Jをやや強めに回転させた場合でも、ロック溝6cに入り込んだ突起4cがロック溝6cを超えて螺旋溝6aの下端部へ移動することを防止することができる。またロック溝6cの周方向長さは突起4cの横幅よりも若干大きくなる程度であるため、突起4cはロック溝6cに回り止め保持される(進退移動不能に保持される)。
【0034】
その後は、治具Jを内側筒体5から取り外す。この状態においては、突起4cがロック溝6cに入り込んでいるため、外側筒体7に対して内側筒体5が回転することがない。すなわち、中皿4が上方に向けて移動することがないため、例えばカートリッジ102を流通させる場合においても、意に反した内容物Nの繰り出しを防止することができる。また本実施形態においては、内側筒体5の外周面は外側筒体7で覆われていて、内側筒体5の外周面を指で摘まむことができないため、カートリッジ102を持ち運ぶ際に意図せず内側筒体5を回転させてしまうこともない。
【0035】
カートリッジ102の内容物Nを使用するにあたっては、
図6に示すように、操作体101にカートリッジ102を装着する。装着時においては、筒状壁3bが内側筒体5の内側に挿通されて、筒状壁3bの上端部が中皿本体4aの下面に押し当たる。このため、
図7に示すように、操作体101に対してカートリッジ102を最後まで押込むと、筒状壁3bによって中皿4は上方に押し上げられる。従って、
図9において矢印Bで示すように、ロック溝6cに入り込んでいた突起4cを、矢印Cに示すように螺旋溝6aへ移動させることができる。また本実施形態においては、
図9に示したように突起4cの上部には突起傾斜部4gが設けられているため、ロック溝6cから螺旋溝6aへ突起4cをスムーズに移動させることができる。
【0036】
操作体101にカートリッジ102を装着した状態において、
図1の部分拡大図に示すように操作体側係合凸部3dとカートリッジ側係合凸部5cは係合するため、使用時においてカートリッジ102が操作体101から不用意に外れてしまうことはない。また操作体側リブ3cとカートリッジ側リブ5bは係合していて、留め具3と袴部材1は回転不能に組み付けられている。従って、
図8に示すように袴部材1を回転させると、内側筒体5も同方向に回転するため、中皿4を上方に移動させて内容物Nを操出口7aから繰り出すことができる。
【0037】
内容物Nを使用した後は、繰り上げた内容物Nを下方に移動させて、
図1に示すようにカバー9を取り付ける。本実施形態のカバー9は、概略有蓋筒状をなすものであって、円板状の天壁部9aと、天壁部9aの外縁部に対して一体的に連結する円筒状の周壁部9bとを備えている。カバー9を取り付けた際に周壁部9bの内周面には中具2の上端部が軽く押し当たるため、持ち運ぶ際にカバー9が不用意に外れてしまうことがない。またカバー9によって操出口7aが覆われるため、埃等が操出口7aを通して内容物Nに付着する不具合も防止することができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0039】
例えば本実施形態においては、「第一傾斜部」として案内筒体6に案内筒体傾斜部6eを設けたが、案内筒体傾斜部6eに相当するものを突起4cに設けてもよい。また「第二傾斜部」として突起4cに設けた突起傾斜部4gは、これに相当するものを案内筒体6に設けてもよい。また本実施形態においては、「係合部」として内側筒体5の内周面にカートリッジ側リブ5bを設けたが、係合部はリブのように内周面から突出するものに限られず、留め具3と袴部材1とが回転不能になるもの(例えば内側筒体5の内周面を凹ませた溝)であればよい。また、突出部5jを廃止した内側筒体5を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1:袴部材
1a:底板部
1b:周壁部
2:中具
3:留め具
3a:底部
3b:筒状壁
3c:操作体側リブ
3d:操作体側係合凸部
4:中皿
4a:中皿本体
4b:孔
4c:突起
4d:右側縁部
4e:左側下縁部
4f:左側上縁部
4g:突起傾斜部(第二傾斜部)
5:内側筒体
5a:本体
5b:カートリッジ側リブ(係合部)
5c:カートリッジ側係合凸部
5d:第一リブ
5e:第一係合凸部
5f:内筒壁
5g:爪部
5h:縦溝
5j:突出部
6:案内筒体
6a:螺旋溝
6b:周方向溝
6c:ロック溝
6d:側縁部
6e:案内筒体傾斜部(第一傾斜部)
7:外側筒体
7a:操出口
8:リング部材
8a:第二リブ
8b:第二係合凸部
8c:弾性片
9:カバー
9a:天壁部
9b:周壁部
100:操出容器
101:操作体
102:カートリッジ(操出容器用カートリッジ)
J:治具
J1:挿入部
J2:治具リブ
N:内容物(棒状内容物)
O:軸線