(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アクチュエータの組立方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/115 20060101AFI20241031BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20241031BHJP
F21V 14/02 20060101ALI20241031BHJP
F21V 19/02 20060101ALI20241031BHJP
B60Q 1/068 20060101ALI20241031BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
B60Q1/115
F21S41/675
F21V14/02 200
F21V19/02 600
F21V19/02 500
B60Q1/068 100
F21W102:10
(21)【出願番号】P 2021185477
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2024-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004509
【氏名又は名称】弁理士法人シリウスIP
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 計一
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-51257(JP,A)
【文献】特開平11-273409(JP,A)
【文献】特開2019-123508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/115
F21S 41/675
F21V 14/02
F21V 19/02
B60Q 1/068
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の照射方向を変化させるために用いられるアクチュエータの組立方法であって、
第1の開口部と第2の開口部が異なる側面に設けられているハウジングを準備する工程と、
モータの回転に伴い回転する回転部材を前記第1の開口部から前記ハウジングの所定位置に載置する工程と、
車両用灯具が備える光学部材を傾動する機構に接続されるロッドを前記第2の開口部から挿入し、前記回転部材と同軸に連結する工程と、
前記ロッドを保持する保持部材を前記第2の開口部に装着する工程と、
を含むアクチュエータの組立方法。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ロッドを進退方向に摺動可能に保持しつつ該ロッドの進退方向と交差する方向へのガタつきを抑制することを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータの組立方法。
【請求項3】
前記モータを前記第1の開口部から前記ハウジングの所定位置に載置する工程と、
前記モータの回転を減速して前記回転部材に伝達する減速機構を構成する部品を前記第1の開口部から所定の位置に載置する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータの組立方法。
【請求項4】
前記ハウジングは、全体が箱型の形状であり、前記ハウジングの高さをH、幅をW、厚みをD(但しH>W>D)とすると、
前記モータを該モータの回転軸が厚み方向に沿うように載置し、
前記回転部材を幅方向に沿うように載置することを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータの組立方法。
【請求項5】
前記ハウジングは、
厚み方向の両側の面の一方に前記第1の開口部が形成されており、
幅方向の両側の面の一方に前記第2の開口部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の傾斜角度に応じて車両用前照灯の光軸を調節して照射方向を変化させるレベリングアクチュエータ装置が知られている。例えば、特許文献1には、電気モータと、電気モータにより回転するロッドと、ロッドの周囲を部分的に覆い、ロッドの回転運動を直線運動に変換するメカトロニクス装置と、を備える照明補正器が開示されている。ロッドの先端には球状部が設けられており、リフレクタの背面にある接続部に嵌められた球状部が進退することでリフレクタが傾動し、ひいては照明器の照射方向が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の照明補正器は、ハウジングの後キャップに電気モジュールを載置し前キャップにメカトロニクス装置やロッドを装着する必要があり、組み立て性に改良の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところの一つは、比較的組み立てが容易な新たなアクチュエータの組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアクチュエータの組立方法は、車両用灯具の照射方向を変化させるために用いられるアクチュエータの組立方法であって、第1の開口部と第2の開口部が異なる側面に設けられているハウジングを準備する工程と、モータの回転に伴い回転する回転部材を第1の開口部からハウジングの所定位置に載置する工程と、車両用灯具が備える光学部材を傾動する機構に接続されるロッドを第2の開口部から挿入し、回転部材と同軸に連結する工程と、ロッドを保持する保持部材を第2の開口部に装着する工程と、を含む。
【0007】
この態様によると、互いに連結される複数の部品を異なる開口部から挿入した後で同軸に連結できるので、組み立て工程の自由度が増し、組み立てが容易となる。
【0008】
保持部材は、ロッドを進退方向に摺動可能に保持しつつ該ロッドの進退方向と交差する方向へのガタつきを抑制してもよい。これにより、保持部材を第2の開口部に装着することで、ロッドの動きを所定の範囲で規制できる。
【0009】
モータを第1の開口部からハウジングの所定位置に載置する工程と、モータの回転を減速して回転部材に伝達する減速機構を構成する部品を第1の開口部から所定の位置に載置する工程と、を含んでもよい。これにより、モータ、減速機構、回転部材を含む回転伝達機構を第1の開口部から載置できるので、ハウジングの向きを変えたり部材を載置する向きを変えたりせずに回転伝達機構をハウジング内に設けることができる。
【0010】
ハウジングは、全体が箱型の形状であり、ハウジングの高さをH、幅をW、厚みをD(但しH>W>D)とすると、モータを該モータの回転軸が厚み方向に沿うように載置し、回転部材を幅方向に沿うように載置してもよい。これにより、モータの回転軸方向の厚みを抑えることで、ハウジングの厚み方向を薄くできる。
【0011】
ハウジングは、厚み方向の両側の面の一方に第1の開口部が形成されており、幅方向の両側の面の一方に第2の開口部が形成されていてもよい。これにより、厚み方向の両側の面の他方を底面としてハウジングを配置することで、ハウジングを回転させずに第1の開口部と第2の開口部の両方から部材を組み付けることができる。
【0012】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的組み立てが容易な新たなアクチュエータの組立方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態に係るアクチュエータを備える車両用灯具の一例を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す車両用灯具を正面方向から見た断面図である。
【
図3】本実施の形態に係るアクチュエータの全体斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るアクチュエータの分解斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係るアクチュエータにおける減速機構の要部を示す部分側面図である。
【
図6】本実施の形態に係る回転部材の斜視図である。
【
図7】本実施の形態に係る回転部材の側面図である。
【
図9】
図8に示すロッドをA方向から見た図である。
【
図10】
図8に示すロッドをB方向から見た図である。
【
図11】
図8に示すロッドをC方向から見た図である。
【
図12】本実施の形態に係る保持部材の斜視図である。
【
図16】
図3に示すアクチュエータのG-G断面図である。
【
図17】ロッドが
図16に示す状態よりも伸長した状態を示す図である。
【
図18】
図3に示すアクチュエータのH-H断面の要部を示す図である。
【
図19】変形例に係るアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
(車両用灯具)
図1は、本実施の形態に係るアクチュエータを備える車両用灯具の一例を示す断面図である。
図2は、
図1に示す車両用灯具10を正面方向から見た断面図である。
図1に示す車両用灯具10は、左右前照灯の一方を示す。前照灯は、車両前部における車幅方向両側にそれぞれ取り付けられており、一対の前照灯により車両前方が照射される。
【0017】
車両用灯具10は、前方に開口を有するランプハウジング12と、ランプハウジング12の開口を閉塞するカバー14と、を備えている。ランプハウジング12とカバー14によって灯具外筐16が構成され、灯具外筐16の内部が灯室16aとして形成されている。
【0018】
灯室16aにはフレーム18が配置されている。フレーム18は、上端部に設けられた上側支持部18aと、下端部に設けられた一対の下側支持部18b,18bと、中間部に設けられたユニット取付部18cと、を有している。一対の下側支持部18bは車両の左右方向に離れて配置されている。
【0019】
フレーム18における下側支持部18bの後側には、スクリュー支持部材20が設けられている。スクリュー支持部材20の上前端部は球状部20aとして設けられている。スクリュー支持部材20,20は、車体の前後方向へ移動自在にランプハウジング12に支持されている。
【0020】
フレーム18の上側支持部18aと下側支持部18b,18bには、それぞれベアリング部材22,24,24が貫通された状態で取り付けられている。
【0021】
ベアリング部材24にはそれぞれスクリュー支持部材20の球状部20aが連結されている。ベアリング部材24は、スクリュー支持部材20に対して任意の方向へ回動可能とされている。
【0022】
ランプハウジング12には、一対のエイミングスクリュー26,26が回転自在かつ前後方向(軸方向)へ移動不能な状態で支持されている。エイミングスクリュー26,26は、車両の左右方向に離れて配置され、それぞれの後端部がランプハウジング12から後方に突出している。エイミングスクリュー26はネジ部26aを有し、ネジ部26aがスクリュー支持部材20に結合されている。
【0023】
フレーム18のユニット取付部18cには灯具ユニット28,28が取り付けられている。なお、ユニット取付部18cに取り付けられる灯具ユニット28は一つでもよく、三つ以上であってもよい。
【0024】
灯具ユニット28は、熱を放出するヒートシンク30と、ヒートシンク30上に配置された基板32と、基板32上に搭載された光源34と、光源34から出射される光を前方へ向けて反射するリフレクタ36と、光源34から出射された光が透過する投影レンズ38と、投影レンズ38を保持するホルダ40と、を有している。
【0025】
灯室16aにはアクチュエータ42が配置されている。アクチュエータ42は、例えば、灯室16aの上部において灯具ユニット28の後側に配置され、ランプハウジング12の一部に固定されている。
【0026】
(車両用灯具における光軸調整)
次に、車両用灯具10における光軸調整について説明する。車両用灯具10は、照射方向の初期調整であるエイミング調整と、車載物の重量によって変化する光軸のズレを調整するレベリング調整と、が可能な構成である。エイミング調整には左右エイミング調整と上下エイミング調整がある。
【0027】
左右エイミング調整は、一方のエイミングスクリュー26が回転操作されることにより行われる。エイミングスクリュー26が回転操作されると、ネジ部26aがネジ止めされているスクリュー支持部材20がエイミングスクリュー26の回転方向に応じて前方又は後方へ送られ、フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって、他方のスクリュー支持部材20の球状部20aとロッド44の先端にある球状部46とを結ぶ線を支点軸として回動される。フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって回動されることにより、灯具ユニット28,28における光軸の向きが左右に変位され左右エイミング調整が行われる。
【0028】
上下エイミング調整は、両方のエイミングスクリュー26,26が同じ方向へ回転操作されることにより行われる。エイミングスクリュー26,26が回転操作されると、ネジ部26a,26aがネジ止めされているスクリュー支持部材20,20がエイミングスクリュー26,26の回転方向に応じて前方又は後方へ送られ、フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって、ロッド44の球状部46を支点として回動される。フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって回動されることにより、灯具ユニット28,28における光軸の向きが上下に変位され上下エイミング調整が行われる。
【0029】
レベリング調整は、アクチュエータ42の駆動機構が動作されることにより行われる。ロッド44は、駆動機構が動作されるとランプハウジング12に対して車両前後方向に移動する。
【0030】
ロッド44が、例えば、前方へ移動されると、ベアリング部材22,24,24がそれぞれ球状部46と球状部20a,20aに対して回動され、ベアリング部材22,24,24の回動に伴って、フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって球状部20a,20aを結ぶ線を支点軸として下向きに回動される。フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって回動されることにより、灯具ユニット28,28における光軸の向きが下方に変位されレベリング調整が行われる。
【0031】
一方、ロッド44が、例えば、後方へ移動されると、ベアリング部材22,24,24がそれぞれ球状部46と球状部20a,20aに対して回動され、ベアリング部材22,24,24の回動に伴って、フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって球状部20a,20aを結ぶ線を支点軸として上向きに回動される。フレーム18と灯具ユニット28,28が一体になって回動されることにより、灯具ユニット28,28における光軸の向きが上方に変位されレベリング調整が行われる。
【0032】
(アクチュエータ)
次に、本実施の形態に係るアクチュエータ42の構成について詳述する。
図3は、本実施の形態に係るアクチュエータの全体斜視図である。
図4は、本実施の形態に係るアクチュエータの分解斜視図である。
図5は、本実施の形態に係るアクチュエータにおける減速機構の要部を示す部分側面図である。
【0033】
アクチュエータ42は、前述のレベリング調整によって車両用灯具の照射方向を変化させるために用いられる。アクチュエータ42は、モータ48と、モータ48の回転軸に固定されているピニオンギア48aと噛み合う平歯ギア52と、平歯ギア52の回転軸となるピン54と、ピン54を支持する軸受部56aが底部に設けられているハウジング56と、ハウジング56の一方の開口部56bを覆うカバー58と、ハウジング56の他方の開口部56cに装着される保持部材60と、ロッド44の一方の端部に装着されるCリング62と、を備える。
【0034】
また、アクチュエータ42は、制御基板86と、ハウジング56の他方の開口部を覆うカバー88と、を更に備える。制御基板86は、プリント配線基板であり、外部の車両ECUやヘッドランプ車両ECUから制御信号を伝達するケーブルが接続されるコネクタ90と、コンデンサ92と、モータ48のロータの回転位置を検出するための3つのホールIC94と、その他の素子が搭載されている。また、
図4に示す制御基板86の裏側には、モータ48の位置決め制御を行う制御用IC(不図示)が搭載されている。
【0035】
本実施の形態に係るモータ48は、ハウジング56の厚みをなるべく薄くするように、扁平モータの一種であるブラシレスDCモータである。ここで、扁平モータとは、主要部品を収容したケースの直径CDに対して回転軸方向のケースの厚みCTが比較的薄いモータをいい、例えば、CD>CTを満たすモータである。平歯ギア52は、同軸に固定されているウォーム64を有し、回転部材50の外周に設けられているヘリカルギア66と噛み合う。ウォーム64とヘリカルギア66とは互いの回転軸が直交するウォームギアを構成する。
【0036】
回転部材50は、モータ48の回転に伴い、ピニオンギア48a、平歯ギア52、ウォーム64及びヘリカルギア66からなる減速機構を介して、回転する。このように、減速機構を介してモータの回転を回転部材50に伝達することで、高速回転で比較的小さなトルクのモータを利用しても回転部材50を適切な回転速度まで減速して回転させ十分な推力を得ることができる。そのため、小型で扁平なブラシレスDCモータをアクチュエータ42に採用することもできる。
【0037】
(回転部材)
図6は、本実施の形態に係る回転部材の斜視図である。
図7は、本実施の形態に係る回転部材の側面図である。回転部材50は、全体が円柱状の部材であり、ロッド44と連結される前端部の回転軸に沿った孔には雌ネジ68が形成されている。回転部材50の後端部の外周にはCリング62が装着される溝70が形成されている。そして、回転部材50の中央には前述のヘリカルギア66が形成されている。回転部材50は、ガラス繊維を含まないナイロン樹脂を主成分とする材料からなる。
【0038】
(ロッド)
図8は、本実施の形態に係るロッドの斜視図である。
図9は、
図8に示すロッドをA方向から見た図である。
図10は、
図8に示すロッドをB方向から見た図である。
図11は、
図8に示すロッドをC方向から見た図である。
【0039】
ロッド44は、球状部46が前端部に設けられている。球状部46は、車両用灯具10が備える光学部材(灯具ユニット28)を傾動する機構の一部を構成するベアリング部材22に接続される接続部である。また、ロッド44の後端部の外周には、回転部材50の雌ネジ68に嵌まる(噛み合う)雄ネジ72が形成されている。これにより、ロッド44は、回転部材50と同軸に相対回転可能に連結される。また、ロッド44及び回転部材50のそれぞれにネジを形成することにより、簡易な加工で回転部材とロッドとを互いに回転可能に連結できる。
【0040】
また、ロッド44は、外周に複数のガイドレール74が軸方向に延びるように設けられている。本実施の形態に係るロッド44は、ロッドの周方向に等間隔(120°間隔)で3つのガイドレール74が設けられている。各ガイドレール74の前端部は傾斜部74aが形成されている。また、各ガイドレール74の後端部は環状部76で連結されており、環状部76と雄ネジ72との間には環状の空間78が形成されている。これにより、ロッド44に回転部材50が連結された状態で回転部材50が相対回転することで、回転部材50の前端部は、雄ネジ72と雌ネジ68とが嵌まり合いながら空間78を通過し、球状部46に向かって進む、あるいは、球状部46から遠ざかるように退避する。
【0041】
また、各ガイドレール74の中央近傍も環状部79で連結されている。環状部79の球状部46側の端面79aは、後述する保持部材60の円弧部に当接するように位置や径が設定されている。ロッド44は、回転部材50とは異なる材料であって、ガラス繊維を含むナイロン樹脂を主成分とする材料からなる。なお、ナイロン樹脂の代わりに摺動性の良い樹脂、例えばポリアセタール樹脂を用いてもよい。
【0042】
(保持部材)
図12は、本実施の形態に係る保持部材の斜視図である。
図13は、
図12に示すロッドをD方向から見た図である。
図14は、
図12に示すロッドをE方向から見た図である。
図15は、
図12に示すロッドをF方向から見た図である。
【0043】
本実施の形態に係る保持部材60は、ロッド44を進退方向に摺動可能に保持しつつロッド44の進退方向と交差する方向へのガタつきを抑制する部材であり、ポリアセタール樹脂を主成分とする材料からなる。そして、ロッド44が進退するハウジング56の開口部56cに装着される。保持部材60は、内周に複数のガイド溝80が軸方向に設けられている。本実施の形態に係る保持部材60は、保持部材60の周方向に等間隔(120°間隔)で3つのガイド溝80が設けられている。ガイド溝80は、ロッド44のガイドレール74が摺動するように構成されている。
【0044】
これにより、ロッド44の複数のガイドレール74のそれぞれが、保持部材60の複数のガイド溝80のそれぞれで等間隔にガイドされる。これにより、保持部材60に対してロッド44が傾きにくくなり、ロッド44が回転せずに保持部材60の軸方向に対してスムーズに摺動する。また、保持部材60の前端部の開口部60aを囲むように3つの円弧部60bが等間隔で設けられており、ロッド44の環状部79が当接するように構成されている。
【0045】
保持部材60は、
図4に示す開口部56cの内周に設けられている角穴56fと係合する突起82が外周に等間隔に3個形成されている。突起82は、ガイド溝80同士の間に設けられている。これにより、保持部材60を開口部56cに簡単に装着でき、保持部材60が開口部56cにおいて回転したりスライドしたりせずにロッド44を保持できる。そのため、ロッド44は、回転部材50が回転した際に保持部材60によって回転が規制される。その結果、回転部材50と同軸のロッド44は、回転部材50の回転によって保持部材60に対して軸方向に摺動することで開口部56cから進退する。このように、本実施の形態に係る回転部材50及びロッド44は、一体としてコンパクトに進退機構を構成できる。
【0046】
図16は、
図3に示すアクチュエータ42のG-G断面図である。
図16は、ロッド44の大半がハウジング56の内部に収縮した状態を示している。
図17は、ロッド44が
図16に示す状態よりも伸長した状態を示す図である。ロッド44は、収縮時に回転部材50の孔の底部50aに突き当たる第1の位置P1(
図16に示す状態)と、伸長時に保持部材60の円弧部60bに突き当たる第2の位置P2(
図17に示す状態)との間で移動できるように回転部材50と連結されている。ロッド44は、第1の位置P1において、ガイドレール74が雌ネジ68とオーバーラップしている。つまり、ロッド44の収縮時にはガイドレール74が回転部材50とオーバーラップすることで、回転部材50とロッド44を一体として短くできる。
【0047】
上述した本実施の形態に係るアクチュエータ42は、扁平モータであるモータ48と、モータ48、回転部材50及びロッド44を収容するハウジング56と、を備える。ロッド44は、回転部材50の回転に伴い回転部材50に対して球状部46が進退するように構成されている。また、
図5に示すように、アクチュエータ42において、モータ48の回転軸X1と回転部材50の回転軸X2とが平行でない。換言すると、回転軸X1と回転軸X2とがねじれの位置にある。なお、本実施の形態に係る回転軸X1と回転軸X2とが成す角は90°である。
【0048】
モータ48の回転軸X1と回転部材50の回転軸X2とがねじれの位置にあることで、モータ48の回転軸方向の厚みが抑えられ、ハウジング56の所定方向の厚みを薄くできる。
【0049】
アクチュエータ42のハウジング(ハウジング56及びカバー58)は、全体が箱型の形状であり、モータ48を支持するハウジング56と、ハウジング56に形成された開口部56bを覆うカバー58と、を有している。開口部56bは、
図4に示すように、カバー58に覆われていない状態でモータ48が露出するように形成されている。これにより、ハウジング56の開口部56cからモータ48をハウジング56に組み付けることができる。
【0050】
図3に示すハウジング56の高さをH、幅をW、厚みをD(ただしH>W>D)とすると、モータ48は、回転軸X1が厚み方向に沿うように配置されており、回転部材50は、幅方向Wに沿うように配置されている。これにより、モータ48の回転軸X1方向の厚みDを抑えることで、ハウジング56の厚み方向を薄くできる。また、ハウジング56は、幅方向の両側の面の一方に、ロッド44がスライドするスライド穴としての開口部56cが形成されている。
【0051】
(アクチュエータの制御方法)
次に、アクチュエータの制御方法の一例について説明する。車両のレベリング制御を行う電子制御ユニット(以下、「車両用ECU」と称す。)は、車両側に設けられているセンサ(例えば車高センサ)からの出力に基づいてアクチュエータ42の動作を制御する。具体的には、車両の傾斜を検出した車両用ECUは、センサからの情報に基づいてその時点での傾斜角度を算出し、所望の傾斜角度(水平状態)になるように、アクチュエータ42におけるロッド44の移動量(進退量)を実現するために必要なモータ48の制御位置情報を算出する。そして、車両用ECUは、算出した制御位置情報に応じた信号を制御用ICに対して出力する。
【0052】
制御位置情報に応じた信号は、コネクタ90を介して制御用ICに入力される。モータ48は、制御基板86に対して電気接続されており、制御用ICにより駆動される。制御基板86にはモータ48のロータの円周方向に沿って所定の間隔で並んだ3個のホールIC94が配列されている。そして、ロータと共にロータマグネットが回転すると、各ホールICにおける磁界が変化し、各ホールICのオン、オフ状態が変化することで、ロータの回転周期に対応したパルス信号が出力される。制御用ICは、このパルス信号をカウントすることで、そのカウント値とモータ48の回転位置とを対応させている。
【0053】
(アクチュエータの組立方法)
次に、上述のアクチュエータの組立方法について説明する。本実施の形態に係るアクチュエータの組立方法は、
図4に示すように、開口部56bと開口部56cが異なる側面に設けられているハウジング56を準備する工程と、回転部材50を開口部56bからハウジング56の所定位置に載置する工程と、車両用灯具が備える光学部材を傾動する機構に接続されるロッド44を開口部56cから挿入し、回転部材50と同軸に連結する工程と、ロッド44を保持する保持部材60を開口部56cに装着する工程と、を含む。回転部材50を載置する所定位置は、ハウジング56の底部に設けられたU字状の突起部84に回転部材50の後端部に装着されたCリング62が保持される位置である。Cリング62は、ポリアセタール樹脂を主成分とする材料からなる係止部である。
【0054】
この組立方法によれば、互いに連結される回転部材50及びロッド44を異なる開口部56b,56cから挿入した後で同軸に連結できるので、組立て工程の自由度が増し、組立てが容易となる。また、予め部品同士を連結してからハウジング56に載置するよりも開口部全体を小さくできる場合がある。
【0055】
また、本実施の形態に係る組立方法は、モータ48を開口部56bからハウジング56の所定位置に載置する工程と、モータ48の回転を減速して回転部材50に伝達する減速機構を構成する平歯ギア52を開口部56bから所定の位置に載置する工程と、を含んでいる。これにより、モータ48、減速機構、回転部材50を含む回転伝達機構を開口部56bから載置できるので、ハウジング56の向きを変えたり部材を載置する向きを変えたりせずに回転伝達機構をハウジング56内に設けることができる。また、保持部材60を開口部56cに装着することで、ロッド44の動きを所定の範囲で規制できる。
【0056】
また、ハウジング56は、厚み方向の両側の面の一方に開口部56bが形成されており、幅方向の両側の面の一方に開口部56cが形成されている。これにより、厚み方向の両側の面の他方を底面としてハウジング56を配置することで、ハウジング56を回転させずに開口部56bと開口部56cの両方から部材を組み付けることができる。
【0057】
(球状部のベアリング部材への組み付け)
本実施の形態に係るアクチュエータ42は、最終的には
図1に示すベアリング部材22に球状部46が組み付けられる。その際、
図16に示すように、球状部46には矢印方向に大きな荷重L(数百N以上)がかかることになり、ロッド44を介して回転部材50の後端部50bがハウジング56の内壁56dに向かって変位しようとする。
【0058】
しかしながら、後端部50b近傍の溝70にCリング62が装着されており、係止部としてのCリング62が突起部84の溝に嵌まることで、後端部50bがハウジング56の所定位置に係止される。そのため、後端部50bが内壁56dに向かって変位しようとすると、Cリング62に大きな力が加わることになり、変位量が多い場合にはCリング62が変形したり割れたりすることになる。
【0059】
そこで、本実施の形態に係るアクチュエータ42は、回転部材50の後端部50bとハウジング56の内壁56dとの間に後端部50bの変位を抑制する変位抑制部を設けている。
図18は、
図3に示すアクチュエータ42のH-H断面の要部を示す図である。
【0060】
本実施の形態に係る変位抑制部は、ハウジング56の内壁56dに設けられている凸部56eである。これにより、ハウジング56の形状を工夫することで凸部56eをハウジング56と一体的に設けることができる。
【0061】
凸部56eがない場合、
図18に示す後端部50bは、内壁56dとの間隔d1まで変位できる。その場合、突起部84に係止されているCリング62に大きな荷重がかかり変形したり割れたりすることがあり得る。しかしながら、内壁56dに凸部56eを設けることで、後端部50bと凸部56eとの隙間をd2(d2<d1)まで小さくできる。その結果、後端部50bの変位量が最大で隙間d2まで小さくなり、Cリング62にかかる荷重が小さくなる。つまり、回転部材50の後端部50bの変位が抑制されることでCリング62の変形や割れが抑制される。
【0062】
本実施の形態に係る凸部56eは、厚みDの方向に延びるリブである。これにより、簡易な形状で確実に回転部材50の後端部50bの変位を抑制できる。また、後端部50bと凸部56eとの隙間d2が0.3~1.0mmであってもよい。これにより、後端部50bの変位を0.3~1.0mm以下に抑えられる。また、凸部の高さは1.0~2.0mmである。これにより、ハウジング56内の他の部材と干渉しにくい凸部56eを設けることができる。
【0063】
(変形例)
上述の実施の形態では、ロッド44に雄ネジを、回転部材50に雌ネジを設けたアクチュエータ42を例に説明したが、ロッドに雌ネジを設け、回転部材に雄ネジを設けたアクチュエータであってもよい。
図19は、変形例に係るアクチュエータの断面図である。なお、アクチュエータ42と同じ構成については同じ符号を付して説明を適宜省略する。変形例に係るアクチュエータ142は、雌ネジ168が形成されているロッド144に、雄ネジ172が形成されている回転部材150を連結させている点が主な特徴である。このように構成されたアクチュエータ142は、上述のアクチュエータ42と同様の機能を奏する。
【0064】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用灯具、 28 灯具ユニット、 42 アクチュエータ、 44 ロッド、 46 球状部、 48 モータ、 48a ピニオンギア、 50 回転部材、 50b 後端部、 52 平歯ギア、 56 ハウジング、 56b 開口部、 56c 開口部、 56d 内壁、 56e 凸部、 58 カバー、 60 保持部材 60a 開口部、 60b 円弧部、 62 Cリング、 64 ウォーム、 66 ヘリカルギア、 68 雌ネジ、 72 雄ネジ、 74 ガイドレール、 76 環状部、 78 空間、 79 環状部、 79a 端面、 80 ガイド溝、 82 突起、 84 突起部、 P1 第1の位置、 P2 第2の位置、 X1 回転軸、 X2 回転軸、 d1 間隔、 d2 隙間。