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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】加工装置、及び、加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20241031BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20241031BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20241031BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20241031BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/16
B23K26/70
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021209386
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094113
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 純
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-001367(JP,A)
【文献】特開2014-222773(JP,A)
【文献】実開昭63-163290(JP,U)
【文献】国際公開第2012/039106(WO,A1)
【文献】特開2016-025112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/08
B23K 26/16
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を吸着可能な複数の吸着孔が一方の面に設けられた表裏反転可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルに吸着された前記加工対象物にレーザ光を照射して加工するレーザ光照射部と、
前記加工テーブルの表裏を反転するテーブル反転機構とを備え、
前記加工テーブルは、前記一方の面から他方の面に貫通して前記レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を有し、
前記レーザ光照射部は、前記加工対象物の表面に溝加工し、
前記テーブル反転機構は、前記加工対象物の表面が溝加工された後、前記加工テーブルの表裏を反転し、
前記レーザ光照射部は、前記加工テーブルの表裏が反転された後、前記貫通開口部を通じて、前記加工対象物の裏面にレーザ光を照射して、前記加工対象物の溝加工された部分を切削する、加工装置。
【請求項2】
加工対象物を吸着可能な複数の吸着孔が一方の面に設けられた表裏反転可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルに吸着された前記加工対象物にレーザ光を照射して加工するレーザ光照射部と、
前記加工対象物を前記加工テーブルに搬送する搬送機構と、
前記加工テーブルに搬送される前に前記加工対象物を加熱する加熱ステージとを備え、
前記加工テーブルは、前記一方の面から他方の面に貫通して前記レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を有し、
前記搬送機構は、前記加熱ステージで加熱された前記加工対象物を前記加工テーブルに搬送するものである、加工装置。
【請求項3】
前記貫通開口部は、前記一方の面から前記他方の面に向かうに連れて拡開する形状を有している、請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記レーザ光により加工された前記加工対象物に残留する加工屑を除去する加工屑除去機構をさらに備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項5】
加工対象物を吸着可能な複数の吸着孔が一方の面に設けられた表裏反転可能な加工テーブルと、
前記加工テーブルに吸着された前記加工対象物にレーザ光を照射して加工するレーザ光照射部と、
前記レーザ光により加工された前記加工対象物に残留する加工屑を除去する加工屑除去機構とを備え、
前記加工テーブルは、前記一方の面から他方の面に貫通して前記レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を有しており
前記貫通開口部は、前記一方の面から前記他方の面に向かうに連れて拡開する形状を有しており、
前記加工屑除去機構は、前記加工対象物にガスを吹き付けるガス噴射部を有しており、当該ガス噴射部は、前記加工テーブルの前記他方の面からガスを噴射し、前記貫通開口部を通じて加工屑を除去する、加工装置。
【請求項6】
前記加工テーブルを表裏反転させる前後において、前記加工テーブルと前記レーザ光照射部との相対位置を変更する位置変更機構をさらに備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記加工テーブルの下側に前記レーザ光による加工で生じた加工屑を収容する加工屑収容部をさらに備える、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項8】
前記複数の貫通開口部が互いに異なる位置に形成された複数の加工テーブルを備える、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項9】
前記加工テーブルに設けられ、前記加工対象物の両端部を前記加工テーブルに押さえつける押圧部をさらに備える、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項10】
前記加工対象物は、支持体に固定された電子素子を樹脂封止したものである、請求項1乃至の何れか一項に記載の加工装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の加工装置を用いて加工品を製造する加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置、及び、加工品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、基材の表面に保護層が形成された板状ワークを表裏反転させて、当該板状ワークの両面にレーザ光を照射し、当該板状ワークを切断するレーザ加工装置が考えられている。
【0003】
このレーザ加工装置は、チャックテーブルとは別に、保護層が分割された板状ワークを表裏反転させる切替機構を備えている。切替機構により表裏反転された板状ワークは、チャックテーブルに載置された保持プレート又は第2のチャックテーブルに吸引されて保持される。ここで、保持プレート又は第2のチャックテーブルには、板状ワークの分割予定ラインに対応した溝状の隙間が形成されている。そして、板状ワークをレーザ光により完全に切断すると、レーザ光が保持プレート又は第2のチャックテーブルの溝状の隙間に進入する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-25112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のレーザ加工装置では、板状ワークを完全に切断した後に、レーザ光が溝状の隙間の表面に照射される。そうすると、溝状の隙間に進入したレーザ光が、保持プレート又は第2のチャックテーブルを損傷する恐れがある。ここで、溝状の隙間に進入したレーザ光が保持プレート又は第2のチャックテーブルが損傷しないようにするためには、レーザ光のエネルギー密度などのレーザ加工条件を制約する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、レーザ光による加工テーブルの損傷を抑制するとともに、加工テーブルの損傷を防止するためのレーザ加工条件の制約を低減することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る加工装置は、加工対象物を吸着可能な複数の吸着孔が一方の面に設けられた表裏反転可能な加工テーブルと、前記加工テーブルに吸着された前記加工対象物にレーザ光を照射して加工するレーザ光照射部とを備え、前記加工テーブルは、前記一方の面から他方の面に貫通して前記レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、レーザ光による加工テーブルの損傷を抑制するとともに、加工テーブルの損傷を防止するためのレーザ加工条件の制約を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】加工対象物(封止済基板)の一例を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る切断装置の構成を模式的に示す図である。
図3】同実施形態の切断用テーブル及びテーブル反転機構を示す斜視図である。
図4】同実施形態の切断用テーブル及びテーブル反転機構における吸着孔を通る断面図である。
図5】同実施形態の開口貫通部と吸着孔及び吸引用流路との位置関係を示す平面図である。
図6】同実施形態の切断用テーブルの一部を拡大した分解斜視図である。
図7】同実施形態の切断用テーブルの(a)レーザ光の走査方向に直交する部分拡大断面図、及び、(b)レーザ光の走査方向に沿った部分拡大断面図である。
図8】同実施形態のレーザ切断及び加工屑除去の手順を示す模式図である。
図9】変形実施形態における封止済基板の反りを矯正する構成及び動作を示す模式図である。
図10】変形実施形態における封止済基板の反りを矯正して切断するまでの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の加工装置は、前述のとおり、加工対象物を吸着可能な複数の吸着孔が一方の面に設けられた表裏反転可能な加工テーブルと、前記加工テーブルに吸着された前記加工対象物にレーザ光を照射して加工するレーザ光照射部とを備え、前記加工テーブルは、前記一方の面から他方の面に貫通して前記レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を有していることを特徴とする。
この加工装置であれば、加工テーブルにレーザ光が通過可能な複数の貫通開口部を設けているので、当該貫通開口部に対応する部分にある加工対象物にレーザ光を照射して加工する場合に、レーザ光が貫通開口部を通過することで、加工テーブルには当たらないようにできる。その結果、レーザ光の照射による加工テーブルの損傷、それに伴う加工対象物へのコンタミ(不純物、異物)の付着を抑制するとともに、加工テーブルの損傷を防止するためのレーザ加工条件の制約を低減することができる。レーザ加工条件の制約を低減できることにより、より高いパルスエネルギー、平均出力を使用することができるため、加工時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
また、レーザ光が貫通開口部を通過するので、レーザ光が加工テーブルで反射して加工対象物に照射されることを防ぎ、加工テーブルで反射したレーザ光による加工対象物の損傷も抑制することができる。
さらに、加工対象物を吸着した加工テーブルを表裏反転させて、加工対象物を両面から加工することができるので、加工時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
加えて、加工対象物を保持した状態を維持して加工テーブルを表裏反転(上下反転)させるので、事前に加工テーブルを表裏反転させた際の位置のシフト量を事前に1回測定しておけば、反転後の位置は計算で補正することができ、反転の都度アライメント(位置調整)をし直す必要が無い。そのため、加工対象物に対するレーザ光照射部のアライメント(位置調整)は加工対象物の吸着後に1回行えば良く、これによっても、加工時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0012】
レーザ光は、加工テーブルに吸着された加工対象物に集光される。このため、加工テーブルの一方の面がレーザ光照射部側を向いている状態(つまり、表裏反転前)では、加工対象物を通過したレーザ光は、貫通開口部の内部を加工テーブルの他方の面に向かって拡がることになる。一方、加工テーブルの他方の面がレーザ光照射部側を向いている状態(つまり、表裏反転後)では、レーザ光は貫通開口部の内部を加工テーブルの一方の面に向かって集光されることになる。
上記何れの状態においてもレーザ光が貫通開口部の内面に当たると加工テーブルが損傷するだけでなく、反射したレーザ光が加工対象物の意図していない領域に当たって加工対象物が損傷してしまう恐れがある。
この問題を好適に解決するためには、前記貫通開口部は、前記一方の面から前記他方の面に向かうに連れて拡開する形状を有していることが望ましい。
【0013】
加工テーブルを表裏反転させると加工対象物の上下位置が変わることが考えられる。ここで、表裏反転させた前後において加工対象物にレーザ光を照射して加工するためには、本発明の加工装置は、前記加工テーブルを表裏反転させる前後において、前記加工テーブルと前記レーザ光照射部との相対位置を変更する位置変更機構をさらに備えることが望ましい。
【0014】
既存の製品レイアウトを有する加工対象物の切断をブレードからレーザ光に切り替えた場合、同じパッケージ寸法を維持するためには、同じカーフ幅(切断で除去される幅)が求められる。ここで、レーザ光のカーフ幅はブレードのカーフ幅に比べて狭いため、通常2列以上の切断線により切断することになる。このため、パッケージ間に細長い端材などの加工屑ができてしまう。そして、この加工屑は切断された加工対象物に残留する恐れがある。
この加工屑を切断された加工対象物から除去するためには、本発明の加工装置は、前記レーザ光により加工された前記加工対象物に残留する加工屑を除去する除去機構をさらに備えることが望ましい。
【0015】
端材などの加工屑を簡単な構成により収集するためには、本発明の加工装置は、前記加工テーブルの下側に前記レーザ光による加工で生じた加工屑を収容する加工屑収容部をさらに備えることが望ましい。
【0016】
加工対象物に対して種々の加工を施すことができるようにするためには、前記複数の貫通開口部が互いに異なる位置に形成された複数の加工テーブルを備えることが望ましい。
例えば、加工対象物を格子状に加工したい場合には、貫通開口部も格子状に設けることになってしまい、加工テーブルを構成することができない。このような場合には、2つの加工テーブルを設けて、一方の加工テーブルでは第1方向(例えばX方向)を加工するようにし、他方の加工テーブルでは、第1方向に直交する第2方向(例えばY方向)を加工するようにする。そうすると、一方の加工テーブルには、第1方向(X方向)に沿った貫通開口部を設け、他方の加工テーブルには、第2方向(Y方向)に沿った貫通開口部を設けることになる。
【0017】
加工対象物としては、樹脂封止された封止済基板を挙げることができる。この封止済基板では、樹脂の厚みが厚ければ厚いほど反りが大きくなってしまう。このように反った封止済基板は、加工テーブルに吸着することが難しくなる。このため、本発明の加工装置は、前記加工テーブルに設けられ、前記加工対象物の両端部を前記加工テーブルに押さえつける押圧部をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、押圧部により加工対象物の両端部が加工テーブルに押さえつけられるので、加工対象物を加工テーブルに確実に吸着できるようになる。
【0018】
本発明の加工装置は、前記加工対象物を前記加工テーブルに搬送する搬送機構と、前記加工テーブルに搬送される前に前記加工対象物を加熱する加熱ステージとを備え、前記搬送機構は、前記加熱ステージで加熱された前記加工対象物を前記加工テーブルに搬送するものであることが望ましい。
この構成であれば、加工テーブルに搬送される前に、加工対象物を加熱ステージにより加熱しているので、加工対象物が変形しやすくなり、加工対象物を加工テーブルに確実に吸着できるようになる。
【0019】
前記加工対象物の具体的な実施の態様としては、例えばリードフレーム又はプリント配線基板等の支持体に固定された例えば半導体チップ等の電子素子を樹脂封止したものであること考えられる。
【0020】
また、上記の加工装置を用いて加工品を製造する加工品の製造方法も本発明の一態様である。
【0021】
加工品の製造方法の具体的な実施の態様としては、前記加工対象物を保持した前記加工テーブルを表裏反転させて、前記加工対象物の両面にレーザ光を照射して前記加工対象物を切断することが望ましい。
このように加工テーブルを表裏反転させて加工対象物の両面にレーザ光を照射して切断するので、加工対象物の表裏反転時の受け渡しを無くし、切断などの加工時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。また、両面から加工することにより、片面からの加工深さを小さくできるため、必要なカーフ幅を小さくすることができる。その結果、レーザ走査列数を削減でき、生産性が向上する。また、加工対象物のパッケージ間のピッチを狭めることができ、その分パッケージを追加したレイアウトにして、1フレーム当たりのパッケージ数が増えて生産性が向上する。さらに、両面から加工することにより、レーザ加工によるテーパ形状を小さくすることができ、品質も向上する。
【0022】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る加工装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<加工装置の全体構成>
本実施形態の加工装置100は、加工対象物である封止済基板Wを切断することによって、複数の加工品である製品Pに個片化する切断装置である。
【0024】
ここで、封止済基板Wとは、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子が固定された支持体に対して、少なくとも電子素子を樹脂封止するように樹脂成形したものである。支持体としては、リードフレーム又はプリント配線板等の基板を用いることができ、これら以外にも、半導体製基板(シリコンウェーハ等の半導体ウェーハを含む)、金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板、樹脂製基板等を用いることができる。また、封止済基板Wを構成する基板には、配線が施されていても施されていなくてもよい。
【0025】
また、本実施形態の封止済基板W及び製品Pは、一方の面が後に実装される実装面となる。本実施形態の説明では、後に実装される一方の面を「実装面」と記載し、その反対側の面を「マーク面」と記載する。
【0026】
ここで、封止済基板Wは、図1に示すように、複数の分割要素W1、W2が連結部W3によって連結されるとともに、互いに隣接する分割要素W1、W2内の切断線CL1、CL2が互いに異なる直線上に設定されたものである。それぞれの分割要素W1、W2は、電子素子が樹脂成形により封止された複数のパッケージが一列に配置されたものである。また、それぞれのパッケージ(電子素子)に対応してリードが設けられている。そして、複数の分割要素W1、W2は、それらの両端部が連結部W3により連結されている。具体的に奇数列の分割要素W1と偶数列の分割要素W2とは、それらのリードが互い違いとなるように構成されている。これにより、奇数列の分割要素W1の切断線CL1が同一直線上に位置し、偶数列の分割要素W2の切断線CL2が同一直線上に位置している。また、奇数列の分割要素W1の切断線CL1と偶数列の分割要素W2の切断線CL2とは互いに異なる直線上に位置している。なお、図1に示す切断線CL1、CL2は、切断が予定される仮想線であり、実際の封止済基板Wには表示されていない。
【0027】
具体的に切断装置100は、図2に示すように、封止済基板Wを保持する2つの切断用テーブル(加工用テーブル)2A、2Bと、封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bに搬送するために封止済基板Wを保持する第1保持機構3と、切断用テーブル2A、2Bに保持された封止済基板Wを切断する切断機構(加工機構)4と、複数の製品Pが移される移載テーブル5と、複数の製品Pを切断用テーブル2A、2Bから移載テーブル5に搬送するために複数の製品Pを保持する第2保持機構6と、第1保持機構3及び第2保持機構6を移動させる搬送用移動機構7とを備えている。なお、第1保持機構3及び搬送用移動機構7により封止済基板Wを搬送する搬送機構(ローダ)が構成され、第2保持機構6及び搬送用移動機構7により複数の製品Pを搬送する搬送機構(アンローダ)が構成される。
【0028】
以下の説明において、切断用テーブル2A、2Bの上面に沿った平面(水平面)内で互いに直交する方向をそれぞれX方向及びY方向、X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とする。具体的には、図2の左右方向をX方向(第1方向)とし、上下方向をY方向(第2方向)とする。
【0029】
<切断用テーブル2A、2B>
2つの切断用テーブル2A、2Bは、封止済基板Wを吸着して保持するものであり、少なくともY方向に移動可能に設けられている。切断用テーブル2Aは、切断用移動機構8AによってY方向に移動可能であり、かつ、回転機構9Aによってθ方向に回動可能である。切断用テーブル2Bは、切断用移動機構8BによってY方向に移動可能であり、かつ、回転機構9Bによってθ方向に回動可能である。なお、切断用テーブル2A、2Bの具体的構成は後述する。
【0030】
<第1保持機構3>
第1保持機構3は、図2に示すように、封止済基板Wを基板供給機構10から切断用テーブル2A、2Bに搬送するために封止済基板Wを保持するものである。この第1保持機構3は、封止済基板Wを吸着保持するための複数の吸着部(不図示)を有している。そして、第1保持機構3が、後述する搬送用移動機構7などにより所望の位置に移動されることにより、封止済基板Wを基板供給機構10から切断用テーブル2A、2Bに搬送する。
【0031】
基板供給機構10は、図2に示すように、複数の封止済基板Wが外部から収容される基板収容部10aと、当該基板収容部10aに収容された封止済基板Wを第1保持機構3により吸着保持される保持位置RPに移動させる基板供給部10bとを有している。
【0032】
<切断機構4>
切断機構4は、図2に示すように、切断用テーブル2A、2Bに吸着された封止済基板Wにレーザ光を照射して、封止済基板Wを切断するものであり、2つのレーザ光照射部41A、41Bを有している。
【0033】
2つのレーザ光照射部41A、41Bは、Y方向に沿って設けられており、それぞれが独立してレーザ光を照射できるように構成されている。各レーザ光照射部41A、41Bは、レーザ発振器と、当該レーザ発振器からのレーザを直線状に走査する例えばガルバノスキャナ等のレーザ光走査部と、レーザ光を集光する集光レンズとを有している。各レーザ光照射部41A、41Bにおいて、レーザ光は、集光レンズによって、切断用テーブル2A、2Bに吸着された封止済基板Wに集光され、レーザ光走査部によって、切断用テーブル2A、2Bに吸着された封止済基板Wに対して直線状に走査される。
【0034】
本実施形態では、2つのレーザ光照射部41A、41Bは、単一の加工ヘッド40に設けられており、当該加工ヘッド40が加工ヘッド移動機構11によりX方向に沿って2つの切断用テーブル2A、2Bの間で移動可能とされている。また、加工ヘッド移動機構11は、Y方向及びZ方向にも加工ヘッド40を移動させることができる。その他、加工ヘッド40に対して2つのレーザ光照射部41A、41Bを少なくともX方向又はY方向に移動可能に構成しても良い。なお、2つのレーザ光照射部41A、41Bは、それぞれ独立して2つの切断用テーブル2A、2Bの間で移動可能に構成しても良い。
【0035】
そして、切断用テーブル2Aでの切断は、切断用テーブル2Aと2つのレーザ光照射部41A、41Bとを相対的に移動させるとともにレーザ光を走査させることによって、封止済基板Wを切断して個片化する。また、切断用テーブル2Bでの切断は、切断用テーブル2Bと、2つのレーザ光照射部41A、41Bとを相対的に移動させるとともにレーザ光を走査させることによって、封止済基板Wを切断して個片化する。なお、切断用テーブル2Aでの切断処理と、切断用テーブル2Bでの切断処理は、交互に行うことができる。
【0036】
<移載テーブル5>
本実施形態の移載テーブル5は、図2に示すように、後述する検査部13により検査された複数の製品Pが移されるテーブルである。この移載テーブル5は、いわゆるインデックステーブルといわれるものであり、複数の製品Pを各種トレイTに仕分けして収容する前に、複数の製品Pが一時的に載置される。さらに、移載テーブル5は、Y方向に沿って前後に移動可能に設けられている。そして、移載テーブル5は、移載用移動機構12によって、第2保持機構6により複数の製品Pが載置される移載位置X1と、仕分け機構15aにより複数の製品Pが搬送される取り出し位置X2との間で移動する。
【0037】
移載テーブル5に載置された複数の製品Pは、検査部13による検査結果(良品、不良品など)に応じて、仕分け機構15aによって各種トレイTに仕分けされる。各種トレイTは、トレイ移動機構15bによりトレイ収容部15cから所望の取り出し位置X2に搬送され、仕分け機構15aによって仕分けられる製品Pが載置される。仕分けされた後に各種トレイTは、トレイ移動機構15bによりトレイ収容部15cに収容される。本実施形態では、トレイ収容部15cに、例えば製品Pを収容する前のトレイT、良品の製品Pを収容したトレイT、リワークが必要な不良品の製品Pを収容したトレイTといった3種類のトレイTを収容するように構成されている。
【0038】
<検査部13>
ここで、検査部13は、図2に示すように、切断用テーブル2A、2Bと移載テーブル5との間に設けられ、第2保持機構6に保持された複数の製品Pを検査するものである。本実施形態の検査部13は、製品Pのマーク面を検査する第1検査部131と、製品Pの実装面を検査する第2検査部132とを有している。第1検査部131は、マーク面を検査するための光学系を有する撮像カメラであり、第2検査部132は、実装面を検査するための光学系を有する撮像カメラである。なお、第1検査部131及び第2検査部132を共通としても良い。
【0039】
また、検査部13により複数の製品Pの両面を検査可能にするために、複数の製品Pを反転させる反転機構14が設けられている(図2参照)。この反転機構14は、複数の製品Pを保持する保持テーブル141と、当該保持テーブル141を表裏逆となるように反転させるモータなどの反転部142とを有している。さらに、反転機構14は、反転機構14をX方向に移動させる反転用移動機構(不図示)によって移載テーブル5まで移動可能とされている。
【0040】
第2保持機構6が切断用テーブル2A、2Bから複数の製品Pを保持した際には、製品Pのマーク面が下側を向いている。この状態で、切断用テーブル2A、2Bから反転機構14に複数の製品Pを搬送する途中で、第1検査部131により製品Pのマーク面が検査される。その後、第2保持機構6に保持された複数の製品Pが反転機構14により反転されて、その後、反転機構14が反転用移動機構によって移載テーブル5の位置まで移動する。この移動の間に、第2検査部132により下側を向いている製品Pの実装面が検査される。その後、製品Pが移載テーブル5に受け渡される。
【0041】
<第2保持機構6>
第2保持機構6は、図2に示すように、複数の製品Pを切断用テーブル2A、2Bから反転機構14に搬送するために複数の製品Pを保持するものである。この第2保持機構6は、複数の製品Pを吸着保持するための複数の吸着部(不図示)を有している。そして、第2保持機構6が、後述する搬送用移動機構7などにより所望の位置に移動されることにより、複数の製品Pを切断用テーブル2A、2Bから保持テーブル141に搬送する。
【0042】
<搬送用移動機構7>
搬送用移動機構7は、図2に示すように、第1保持機構3を少なくとも基板供給機構10と切断用テーブル2A、2Bとの間で移動させるとともに、第2保持機構6を少なくとも切断用テーブル2A、2Bと保持テーブル141との間で移動させるものである。
【0043】
そして、搬送用移動機構7は、図2に示すように、2つの切断用テーブル2A、2B及び移載テーブル5の配列方向(X方向)に沿って一直線に延び、第1保持機構3及び第2保持機構6を移動させるための共通のトランスファ軸71を有している。このトランスファ軸71は、第1保持機構3が基板供給機構10の基板供給部10bの上方に移動できるとともに、第2保持機構6が保持テーブル141の上方に移動できる範囲で設けられている(図2参照)。なお、トランスファ軸71は、第1保持機構3及び第2保持機構6それぞれに個別に設けられたものであっても良い。
【0044】
さらに搬送用移動機構7は、第1保持機構3及び第2保持機構6をトランスファ軸71に対して、X方向及びZ方向それぞれに移動可能に構成されている。各方向への移動機構は、例えば、ラックアンドピニオン機構を用いたものであっても良いし、ボールねじ機構を用いたものであっても良いし、エアシリンダを用いたものであっても良いし、リニアモータを用いたものであっても良い。
【0045】
<切断用テーブル2A、2Bの具体的構成>
次に、切断用テーブル2A、2Bの具体的な構成について、図3図8を参照して説明する。
【0046】
<切断用テーブル2A、2Bの吸着機能>
各切断用テーブル2A、2Bは、図3及び図4に示すように、一方の面2xに封止済基板Wを吸着可能な複数の吸着孔2hが設けられている。複数の吸着孔2hは、切断用テーブル2A、2Bの内部に形成された吸引用流路2Rに連通している。なお、吸引用流路2Rは、図示しない真空ポンプに接続されている。
【0047】
具体的に切断用テーブル2A、2Bは、図5に示すように、平面視において概略矩形状をなすものであり、図6及び図7に示すように、吸引用流路2Rを構成する溝201Mが上面に形成されたベースプレート201と、当該ベースプレート201の上面に溝201Mを塞ぐように設けられ、当該溝201Mに連通する吸引用貫通孔202hが形成されたカバープレート202と、当該カバープレート202の上面に接着され、吸引用貫通孔202hに連通する吸着孔2hが形成された樹脂製の吸着ラバー203とを有している。この吸着ラバー203により、封止済基板Wを吸着した際に、封止済基板Wが破損せず、リークせず、しっかり固定できるようにしている。そして、この吸着ラバー203の上面が、切断用テーブル2A、2Bの一方の面2xとなり、ベースプレート201の下面が、切断用テーブル2A、2Bの他方の面2yとなる。
【0048】
<切断用テーブル2A、2Bの反転機能>
また、各切断用テーブル2A、2Bは、図3及び図4に示すように、テーブル反転機構16によって表裏反転可能に構成されている。これにより、切断用テーブル2A、2Bは、一方の面2xが上方(レーザ光照射部41A、41B)を向く状態(図8(a)参照)と、他方の面2yが上方(レーザ光照射部41A、41B)を向く状態(図8(b)参照)とで切り替え可能に構成されている。
【0049】
テーブル反転機構16は、図3及び図4に示すように、切断用テーブル2A、2Bの互いに対向する両辺部を回転可能に支持するものであり、ここでは、切断用テーブル2A、2Bの長手方向における両端部を回転可能に支持するものである。これにより、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させる際に、切断用テーブル2A、2Bが通過する領域を小さくすることができる。また、テーブル反転機構16に対して切断用テーブル2A、2Bを着脱可能に構成しており、封止済基板Wの形態に応じて専用の切断用テーブル2A、2Bに変更することができる。
【0050】
具体的にテーブル反転機構16は、切断用テーブル2A、2Bの長手方向における両端部に設けられた2つの回転軸部161a、161bと、当該回転軸部161a、161bを転がり軸受等の軸受部を介して回転可能に支持するベース部材162と、一方の回転軸部161に設けられ、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させるモータ又はロータリシリンダ等の回転駆動部163とを有している。なお、ベース部材162は、2つの回転軸部161を回転可能に支持する2つの支持壁162a、162bと、2つの支持壁162a、162bが設けられた底壁162cとを有している。また、本実施形態では、一方の回転軸部161aは、回転駆動部163を介して支持壁162aに回転可能に支持される構成としている。
【0051】
また、2つの回転軸部161a、161bは、切断用テーブル2A、2Bの平面視において、その長手方向における両端部それぞれの中央部に設けられている。2つの回転軸部161a、161bは、それらの回転中心が同一直線上にあり、水平方向に延びている。これら2つの回転軸部161a、161bは、切断用テーブル2A、2Bの長手方向に延びている。その他、2つの回転軸部161a、161bの少なくとも一方には、図4に示すように、切断用テーブル2A、2Bの内部に形成された吸引用流路2Rに連通する内部流路161Rが形成されており、この内部流路161Rが図示しない真空ポンプに接続されている。
【0052】
なお、回転軸部161a、161bの回転中心と切断用テーブル2A、2Bの中心又は切断用テーブル2A、2Bに吸着された封止済基板Wの中心とを一致させるように構成しても良い。このように構成すれば、表裏反転の前後において、封止済基板Wの高さ位置の変化を小さくすることができ、レーザ光照射部41A、41Bとの相対位置の調整を不要又は簡単にすることができる。
【0053】
<切断用テーブル2A、2Bの貫通開口部2T>
そして、本実施形態では、切断用テーブル2A、2Bは、図3図8に示すように、吸着孔2hが設けられた一方の面2xから、当該一方の面2xの裏側の面である他方の面2yに貫通して、レーザ光が通過可能な複数の貫通開口部2Tを有している。この貫通開口部2Tにおいて、切断機構4のレーザ光照射部41A、41Bからのレーザ光により封止済基板Wの切断が行われる。
【0054】
これら複数の貫通開口部2Tは、図5に示すように、切断用テーブル2A、2Bの平面視において、つまり、切断用テーブル2A、2Bの一方の面2x側から見て、複数の吸着孔2h及び当該複数の吸着孔2hに連通する吸引用流路2R(具体的にはベースプレート201の溝201M)とは重ならない位置に形成されている。
【0055】
また、複数の貫通開口部2Tは、封止済基板Wの切断線CL1、CL2(図1参照)に対応した位置に形成されており、切断用テーブル2A、2Bの平面視において切断線CL1、CL2を含むように形成されている。具体的に各貫通開口部2Tは、切断方向における各切断線CL1、CL2の長さよりも長く、パッケージ間の除去されるカーフ幅よりも大きい幅を有している。また、貫通開口部2Tは、レーザ光照射部41A、41Bから照射されるレーザ光が当たらない開口サイズを有している。
【0056】
本実施形態では、封止済基板Wは図2に示すように、奇数列の分割要素W1の切断線CL1と偶数列の分割要素W2の切断線CL2とは互いに異なる直線上に位置しているので、切断用テーブル2A、2Bに形成された複数の貫通開口部2Tも同様に、奇数列の分割要素W1の切断線CL1に対応する貫通開口部2Tと、偶数列の分割要素W2の切断線CL2に対応する貫通開口部2Tとは互いに異なる直線上に位置している(図5参照)。
【0057】
また、貫通開口部2Tは、図7及び図8に示すように、吸着孔2hが設けられた一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて徐々に拡開する形状を有している。具体的に貫通開口部2Tは、レーザ光の走査方向に直交する断面において、一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて拡開する形状を有している。なお、貫通開口部2Tは、レーザ光が当たらない形状であれば良く、等断面形状であっても良いし、一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて段階的に拡開する形状であっても良い。
【0058】
さらに、本実施形態では、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させると、図8に示すように、封止済基板Wの高さ位置が変化することから、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させる前後において、切断用テーブル2A、2Bとレーザ光照射部41A、41Bとの相対位置を変更する位置変更機構17をさらに備えている。この位置変更機構17は、切断用テーブル2A、2Bとレーザ光照射部41A、41Bとの相対位置を変更して、レーザ光の焦点位置を封止済基板Wに調整するものである。
【0059】
この位置変更機構17は、加工ヘッド40を移動させる加工ヘッド移動機構11に設けることができ(図2参照)、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させる前後において加工ヘッド40(レーザ光照射部41A、41B)の高さ位置を変更することができる。また、位置変更機構17を加工ヘッド移動機構11によって構成することもできる。なお、切断用テーブル2A、2Bの高さ位置を変更して、表裏反転前後の高さ位置が同じとなるようにしても良い。
【0060】
<加工屑収容部18>
また、本実施形態の切断装置100は、図3図4及び図8(c)に示すように、封止済基板Wの切断により生じた端材などの加工屑Sを収容する加工屑収容部18をさらに備えている。この加工屑収容部18は、切断用テーブル2A、2Bの下方に設けられている。具体的に加工屑収容部18は、切断用テーブル2A、2Bを支持するベース部材162において2つの支持壁162a、162bの間に設けられている。なお、加工屑収容部18は、ベース部材162に対して着脱可能に構成されており、ベース部材162から取り外して、加工屑Sを切断装置100の外部に廃棄することができる。
【0061】
なお、加工ヘッド40と加工屑収容部18の距離が短い場合、貫通開口部2Tを通過したレーザ光のエネルギー密度が高いため、加工屑収容部18の底面で散乱する可能性がある。それを抑制するために、加工屑収容部18の底面に吸収性の良い表面処理を施したり、又は、加工屑収容部18の底面に吸収材を設けても良い。
【0062】
<加工屑除去機構19>
さらに、本実施形態の切断装置100は、図8(c)に示すように、レーザ光により加工された封止済基板Wに残留する端材等の加工屑Sを除去する加工屑除去機構19をさらに備えている。
【0063】
この加工屑除去機構19は、封止済基板Wに向けて圧縮エア等のガスを吹き付けるガス噴射部191を有しており、当該ガス噴射部191により噴射されるガスにより加工屑Sを除去するものである。また、ガス噴射部191は、切断用テーブル2A、2Bの上方に設けられており、表裏反転された切断用テーブル2A、2Bに対して上方からガスを吹き付けて加工屑Sを除去する構成としている。この構成により、ガス噴射部191から噴射されたガスは、貫通開口部2Tを通過して、残留する加工屑Sに吹き付けられる。ここで、ガスが貫通開口部2Tで絞られているので、ガスの流速を上げつつ、加工屑Sに集中的に当てることができる。除去された加工屑Sは、切断用テーブル2A、2Bの下方に設けられた加工屑収容部18に収容される。なお、表裏反転させていない切断用テーブル2A、2Bに対して上方からガスを吹き付けて加工屑Sを除去する構成としても良い。
【0064】
また、加工屑除去機構19としては、上記のように残留した加工屑Sにガスを吹き付ける構成の他に、残留した加工屑Sに物理的に接触して突き落とす構成としても良い。この場合、加工屑除去機構19は、加工屑Sを突き落とすピン等の突き落とし部材を有しており、当該突き落とし部材を切断用テーブル2A、2Bに対して昇降移動させることによって、加工屑Sを加工屑収容部18に向けて突き落とす。
【0065】
<切断装置100の動作の一例>
次に、切断装置100の動作の一例を説明する。なお、本実施形態においては、切断装置100の動作、例えば封止済基板Wの搬送、封止済基板Wのレーザ切断、加工屑Sの除去、製品Pの検査、製品Pのトレイ収容など、すべての動作や制御は制御部CTL(図2参照)により行われる。
【0066】
基板供給機構10の基板供給部10bは、第1保持機構3により保持される保持位置RPに向けて、基板収容部10aに収容された封止済基板Wを移動させる。
【0067】
次に、搬送用移動機構7は第1保持機構3を保持位置RPに移動させ、第1保持機構3は封止済基板Wを吸着保持する。その後、搬送用移動機構7は、封止済基板Wを保持した第1保持機構3を切断用テーブル2A、2Bに移動させて、第1保持機構3は吸着保持を解除して、封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bに載置する。そして、切断用テーブル2A、2Bは、封止済基板Wを吸着保持する。
【0068】
この状態で、切断用移動機構8A、8Bは、切断用テーブル2A、2Bを所定の切断位置(トランスファ軸71の奥側)に移動させる。この切断位置で、切断用移動機構8A、8B及び加工ヘッド移動機構11によって切断用テーブル2A、2B及び2つのレーザ光照射部41A、41BをX方向及びY方向に相対的に移動させることによって、封止済基板Wを切断して個片化する。なお、必要に応じて、回転機構9A、9Bによって切断用テーブル2A、2Bを回転させる。
【0069】
ここで、具体的な切断方法について説明する。
まずは、封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bに吸着保持した後に、封止済基板Wとレーザ光照射部41A、41Bとのアライメント(位置調整)を行う。ここでは、アライメント用のカメラ20により封止済基板Wのアライメントマークを撮像し、その撮像データを用いて、アライメントを行う。
【0070】
そして、テーブル反転機構16により切断用テーブル2A、2Bを反転させることなく、図8(a)に示すように、封止済基板Wの表面にレーザ光照射部41A、41Bからレーザ光を照射して、その一部を切削して溝加工(ハーフカット)する。図8(a)では、ブレード切断した場合のカーフ幅に合わせるために、パッケージ間に2本の溝加工をした例を示している。
【0071】
上記の溝加工の後に、図8(b)に示すように、テーブル反転機構16により切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させる。反転後はアライメント(位置調整)せずに、反転前の撮像データを回転軸部161a、161bの回転軸を基準として反転したデータを用いる。また、切断用テーブル2A、2Bを反転することにより封止済基板Wの高さ位置が変わる場合には、位置変更機構17により、切断用テーブル2A、2Bとレーザ光照射部41A、41Bとの相対位置を変更して、レーザ光の焦点位置を封止済基板Wに調整する。そして、封止済基板Wの裏面に、貫通開口部2Tを通じて、レーザ光照射部41A、41Bからレーザ光を照射して、ハーフカットにより溝加工された部分を切削して完全に切断(フルカット)する。このフルカットにより生じた端材等の加工屑Sは、加工屑収容部18に落下して収容される。
【0072】
なお、上記のハーフカット及びフルカットにおいて、レーザ光照射部41A、41Bを、異なる切断線CL1、CL2に移動させる際には、レーザ光照射部41A、41Bによるレーザ光の照射を停止する。また、テーブル反転機構16による反転は、封止済基板Wの種類や切断プロセス等に応じて、複数回繰り返しても良い。
【0073】
上記の切断後に、図8(c)に示すように、加工屑除去機構19のガス噴射部191を切断用テーブル2A、2Bの上方に移動させて、表裏反転された切断用テーブル2A、2Bに対して上方からガスを吹き付けて加工屑Sを除去する。この加工屑除去機構19により除去された加工屑Sは、加工屑収容部18に落下して収容される。なお、加工屑除去機構19を切断用テーブル2A、2Bの上方に移動させる前に、加工ヘッド移動機構11によりレーザ光照射部41A、41Bを邪魔にならない位置に退避させても良い。
【0074】
加工屑Sの除去後に、切断用移動機構8A、8Bは、切断用テーブル2A、2Bを所定の搬送位置(トランスファ軸71の手前側)に移動させる。
【0075】
次に、搬送用移動機構7は、第2保持機構6を切断後の切断用テーブル2A、2Bに移動させ、第2保持機構6は、複数の製品Pを吸着保持する。その後、搬送用移動機構7は、複数の製品Pを保持した第2保持機構6を検査部131に移動させる。これにより、第2保持機構6に保持された複数の製品Pは、検査部131で下面側(マーク面)の検査が行われる。
【0076】
この検査の後に、搬送用移動機構7は、第2保持機構6を反転機構14に移動させて、複数の製品Pを反転機構14に受け渡す。反転機構14により複数の製品Pのマーク面が吸着保持された後、反転される。反転後、反転機構14が反転用移動機構により移動し、検査部132で製品Pの実装面が検査される。このように両面検査がされた後、製品Pは反転機構14から移載テーブル5に受け渡される。製品Pが載置された移載テーブル5は、移載用移動機構12によって取り出し位置X2に移動する。そして、移載テーブル5に載置された複数の製品Pは、検査部13による検査結果(良品、不良品など)に応じて、仕分け機構15aによって各種トレイTに仕分けされる。
【0077】
<本実施形態の効果>
本実施形態の切断装置100によれば、切断用テーブル2A、2Bにレーザ光が通過可能な複数の貫通開口部2Tを設けているので、当該貫通開口部2Tに対応する部分にある封止済基板Wにレーザ光を照射して切断する場合に、レーザ光が貫通開口部2Tを通過することで、切断用テーブル2A、2Bには当たらないようにできる。その結果、レーザ光の照射による切断用テーブル2A、2Bの損傷、それに伴う封止済基板Wへのコンタミ(不純物、異物)の付着を抑制するとともに、切断用テーブル2A、2Bの損傷を防止するためのレーザ加工条件の制約を低減することができる。レーザ加工条件の制約を低減できることにより、より高いパルスエネルギー、平均出力を使用することができるため、加工時間を短縮し、生産性を向上させることができる。
【0078】
また、レーザ光が貫通開口部2Tを通過するので、レーザ光が切断用テーブル2A、2Bで反射して封止済基板Wに照射されることを防ぎ、切断用テーブル2A、2Bで反射したレーザ光による封止済基板Wの損傷も抑制することができる。
【0079】
さらに、封止済基板Wを吸着した切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させて、封止済基板Wを両面から加工することができるので、加工時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0080】
加えて、事前に切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させた際の位置のシフト量を事前に1回測定しておけば、反転後の位置は計算で補正することができ、反転の都度アライメント(位置調整)をし直す必要が無い。そのため、封止済基板Wに対するレーザ光照射部41A、41Bのアライメント(位置調整)は封止済基板Wの吸着後に1回行えば良く、これによっても、加工時間を短縮して、生産性を向上させることができる。
【0081】
また、貫通開口部2Tが他方の面2yに向かうに連れて拡開しているので、一方の面2xからレーザ光を照射し、封止済基板Wを通過したレーザ光は、レーザ光が貫通開口部2Tの内面に当たることはない。また、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させて、他方の面2yからレーザ光を照射する場合にも、レーザ光が貫通開口部2Tの内面に当たることはない。これにより、レーザ光が切断用テーブル2A、2Bに当たることによる損傷を抑制するだけでなく、反射したレーザ光が封止済基板Wの意図していない領域に当たって封止済基板Wの品質が損なわれることを防止することができる。
【0082】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0083】
例えば、前記実施形態の2つの切断用テーブル2A、2Bは、複数の貫通開口部2Tが同じ位置に形成されたものであったが、複数の切断用テーブル2A、2Bにおいて、複数の貫通開口部2Tが互いに異なる位置に形成されたものであっても良い。この構成において、一方の切断用テーブル2Aでレーザ加工した後に、他方の切断用テーブル2Bに載せ替えて、封止済基板Wの別の位置にレーザ加工をする構成とすることができる。また、製品レイアウトが互いに異なる2種類の封止済基板それぞれを2つの切断用テーブルでレーザ加工する構成とすることができる。
【0084】
また、図9に示すように、切断用テーブル2A、2Bに搬送される前に封止済基板Wを加熱する加熱ステージ21をさらに備えても良い。この加熱ステージ21は、封止済基板Wが載置されるものであり、載置された封止済基板Wを加熱して柔らかくして変形しやすくするものである。前記実施形態の第1保持機構3及び搬送用移動機構7により構成される搬送機構(ローダ)が封止済基板Wを加熱ステージ21に搬送し、また、加熱ステージ21から切断用テーブル2A、2Bに搬送する。ここで、切断用テーブル2A、2Bに封止済基板Wを載置する際に、搬送機構により封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bに押し付けるように構成しても良い。
【0085】
さらに、前記実施形態の構成に加えて、図9に示すように、切断用テーブル2A、2Bに封止済基板Wの両端部(長手辺部)を切断用テーブル2A、2Bに押さえつける押圧部22をさらに備えても良い。この押圧部22は例えばクランプ部材により構成することができ、切断用テーブル2A、2Bに対してスライド可能又は回転可能に設けられている。
【0086】
そして、押圧部22を開放した状態で封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bに載置し、その押圧部22を閉じた状態とすることで、押圧部22が封止済基板Wを切断用テーブル2A、2Bの一方の面2xに押圧することができる。ここで、押圧部22の開放した状態と押圧した状態との切り替えは、第1保持機構3(ローダ)が接触することにより行われるものであっても良いし、別途押圧部22を駆動する駆動部を設けても良い。また、切断用テーブル2A、2Bに吸着保持された封止済基板Wの反り状態を確認するためのレーザ変位計を設けても良い。
【0087】
その上、図10に示すように、上記の押圧部22により封止済基板Wを押圧した状態で、レーザ光照射部41A、41Bによりカーフ中央部をハーフカット(溝加工)することにより封止済基板Wを変形しやすくして封止済基板Wの反りを矯正しても良い。この場合、封止済基板Wの位置が変わる場合があることから、再度のアライメント(位置調整)を行っても良い。その後、前記実施形態と同様に、封止済基板Wの表面側からカーフ全域をハーフカットし、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させた後に、封止済基板Wの裏面側からカーフ全域をハーフカットして、封止済基板をフルカットする。
【0088】
前記実施形態の切断装置100は、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させて封止済基板Wを切断するものであったが、封止済基板Wの種類等に応じて、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させることなく、封止済基板Wを表面側のみから切断しても良いし、切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させて、封止済基板Wを裏面側のみから切断しても良い。
【0089】
前記実施形態の封止済基板Wは、互いに隣接する分割要素W1、W2内の切断線CL1、CL2が互いに異なる直線上に設定されていたが、それら切断線CL1、CL2が同一直線上に設定されたものであっても良い。この場合、切断用テーブル2A、2Bに設けられた複数の貫通開口部2Tは、切断線CL1、CL2に対応して同一直線上に設けられる。ここで、同一直線上に設けられる複数の貫通開口部2Tをまとめて1本の貫通開口部としても良い。
【0090】
前記実施形態では、2つの切断用テーブルを有するツインカットテーブル方式であって、2つのレーザ光照射部を有するツインレーザ構成の切断装置を説明したが、これに限らず、1つの切断用テーブルを有するシングルカットテーブル方式であって、1つのレーザ光照射部を有するシングルレーザ構成の切断装置や、1つの切断用テーブルを有するシングルカットテーブル方式であって、2つのレーザ光照射部を有するツインレーザ構成の切断装置などであってもよい。
【0091】
前記実施形態の図7及び図8では、切断用テーブル(加工テーブル)2A、2Bの全体において、貫通開口部2Tが一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて拡開する形状となる構成を示した。しかし、これに限らず、貫通開口部2Tの少なくとも一部が一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて拡開する形状であればよい。例えば切断用テーブル2A、2Bを表裏反転させる前の最も下方に位置するベースプレート201においてのみ、貫通開口部2Tが一方の面2xから他方の面2yに向かうに連れて拡開する形状となる構成であってもよい。
【0092】
また、本発明の加工装置は、切断以外の加工を行うものであってもよく、例えば切削や研削などのその他の機械加工を行うものであってもよい。
【0093】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
100・・・切断装置(加工装置)
W・・・封止済基板(加工対象物)
P・・・製品(加工品)
2A、2B・・・切断用テーブル(加工テーブル)
2h・・・吸着孔
2x・・・一方の面
2y・・・他方の面
3・・・第1保持機構(搬送機構)
41A、41B・・・レーザ光照射部
7・・・搬送用移動機構(搬送機構)
17・・・位置変更機構
18・・・加工屑収容部
19・・・加工屑除去機構
21・・・押圧部
22・・・加熱ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10