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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 1/00 20060101AFI20241031BHJP
   C03C 3/118 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C03B1/00
C03C3/118
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021509815
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019047112
(87)【国際公開番号】W WO2020041216
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】62/721,233
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】デュッタ,インドラジット
(72)【発明者】
【氏名】ガレア,ジャン マルク
(72)【発明者】
【氏名】フーリハン,メリンダ アン
(72)【発明者】
【氏名】ランバーソン,リサ アン
(72)【発明者】
【氏名】モレナ,ロバート マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジエン-ジー ジェイ
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-65933(JP,A)
【文献】特開平7-157316(JP,A)
【文献】特開2016-183085(JP,A)
【文献】特開平9-208229(JP,A)
【文献】米国特許第3915684(US,A)
【文献】特表2009-504563(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115731(WO,A1)
【文献】井上博之,「ガラスの材料設計」,日本金属学会会報,日本,1992年,第31巻、第7号,第604~607ページ
【文献】伊藤節郎,「ガラスの基礎と応用」,エレクトロニクス実装学会誌,日本,2003年,第6巻、第2号,第185~189ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
C03B1/00-5/44
C03B17/00-18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
20重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNa O、
0重量%以上かつ6重量%以下のMgO、
7重量%以上かつ9重量%以下のCaO、
0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb 、及び
0重量%超かつ1.5重量%以下のAlF
のガラス構成成分を有する、第1のガラス組成物を溶融器中で溶融させるステップ
前記第1のガラス組成と同一のガラス構成成分を有する第2のガラス組成物を前記溶融器に供給するステップであって、前記第2のガラス組成物の少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、前記第1のガラス組成物の前記成分の濃度とは異なる、ステップ;
前記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも3つのガラス物品を前記溶融器からドロー加工するステップであって、前記少なくとも3つのガラス物品は:
前記第1のガラス組成物で構成される、第1のガラス物品;
前記第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物のいずれでもないガラス組成物で構成される、少なくとも1つの中間ガラス物品;並びに
前記第1のガラス組成物とは異なるガラス組成物で構成される、最終ガラス物品
を含む、ステップ
を含む、方法であって
記少なくとも1つの中間ガラス物品中の前記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、前記第1のガラス組成物中の前記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度と、前記第2のガラス組成物中の前記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度との間であり;
前記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有し、前記最終ガラス物品は、前記特性のセットに関して、前記第1の値のセットとは異なる第2の値のセットを有し、前記少なくとも1つの中間ガラス物品は、前記特性のセットに関して、前記第1の値のセットと前記第2の値のセットとの間の、中間の値のセットを有し;及び
前記第1のガラス物品と前記最終ガラス物品は共に、20℃から260℃まで、40×10 -7 /℃から70×10 -7 /℃までの範囲内の熱膨張係数(「CTE」)を有する、方法。
【請求項2】
前記最終ガラス物品は前記第2のガラス組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のガラス組成物の前記少なくとも1つのガラス構成成分の前記濃度は、前記第1のガラス組成物の前記少なくとも1つのガラス構成成分の前記濃度と、2重量%以下だけ異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性のセットは、CTE、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度のうちの1つ以上を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記特性のセットは、前記最終ガラス物品が65GPa以上100GPa以下のヤング率を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記特性のセットは、前記最終ガラス物品が1000℃以上1500℃以下の200ポアズ温度を含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年8月22日出願の米国仮特許出願第62/721,233号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示はガラス物品の製造方法に関し、より詳細には、目標熱膨張率を有するガラス物品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス物品は、半導体パッケージング業界を含む様々な業界で使用される。半導体パッケージング業界では、熱機械的ステップ及びリソグラフィステップを含んでよい加工のために、チップをキャリア基板(例えばガラスプレート)上に置く。しかしながら、加工技法は製造業者間で異なる場合があり、異なる製造技法に対して異なるキャリア要件が発生し、異なる製造業者の全ての要件を満たす単一のキャリア基板設計の製造が困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、半導体製造において使用するためのガラスキャリアの別の製造方法に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される様々な態様によると、ガラス物品の製造方法は、第1のガラス組成物を溶融器中で溶融させるステップであって、上記第1のガラス組成物は複数のガラス構成成分の組み合わせを含む、ステップを含む。次に第2のガラス組成物を上記溶融器に供給してよい。この第2のガラス組成物は同一のガラス構成成分の組み合わせを有するが、少なくとも1つのガラス構成成分の濃度が、上記第1のガラス組成物中の同じ成分の濃度とは異なる。上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、以下を含む少なくとも3つのガラス物品を上記溶融器からドロー加工してよい:(1)上記第1のガラス組成物から形成された第1のガラス物品;(2)上記第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物のいずれからなるものでもない、少なくとも1つの中間ガラス物品;並びに(3)上記第1のガラス組成物とは異なる組成物からなる最終ガラス物品。上記少なくとも1つの中間ガラス物品中の上記少なくとも1つの成分の濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度との間となり得る。上記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有してよい。上記最終ガラス物品は、同じ特性のセットに関して、上記第1の値のセットとは異なる第2の値のセットを有してよい。上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記特性のセットに関して、上記第1の値のセットと上記第2の値のセットとの間の、中間の値のセットを有してよい。
【0006】
いくつかの態様は、上記最終ガラス物品が上記第2のガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0007】
いくつかの態様は、上記第2のガラス組成物の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度が、上記第1のガラス組成物の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、2重量%以下だけ異なる、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0008】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの成分が、SiO、Al、B、NaO、MgO、CaO、AlF、及びSbから選択される、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0009】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの成分がAlFを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0010】
いくつかの態様は、上記特性のセットが、熱膨張係数(「CTE」)、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度のうちの1つ以上を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0011】
いくつかの態様は、上記第1のガラス物品のCTEが、上記最終ガラス物品のCTEと等しいか、又は±7.5×10-7/℃以下だけ異なる、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0012】
いくつかの態様は、上記第1のガラス物品の屈折率が、上記最終ガラス物品の屈折率と±0.01以下だけ異なる、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0013】
いくつかの態様は、上記第1のガラス物品のCTEの百分率としての、上記少なくとも1つの中間ガラス物品のCTEと上記第1のガラス物品のCTEとの間の差が、上記第1のガラス物品のヤング率の百分率としての、少なくとも1つの上記中間ガラス物品のヤング率と上記第1のガラス物品のヤング率との間の差よりも大きい、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0014】
いくつかの態様は、上記溶融器内の上記組成物の粘度が、上記少なくとも3つのガラス物品をドロー加工する上記ステップ中に、25ポアズ以下だけ変動する、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0015】
いくつかの態様は、上記溶融器内の上記ガラス混合物の200ポアズ温度が1500℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0016】
いくつかの態様は、上記少なくとも3つのガラス物品がブール形状である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0017】
いくつかの態様は、上記第2のガラス組成物を供給する上記ステップが、上記少なくとも3つのガラス物品をドロー加工する上記ステップと同時である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0018】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの中間ガラス物品が、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも3つのガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0019】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの中間ガラス物品が、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも8つのガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の記濃度との間である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0020】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの中間ガラス物品が、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも18個のガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0021】
いくつかの態様は、上記少なくとも1つの中間ガラス物品が、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも28個のガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0022】
いくつかの態様は、上記と同じガラス構成成分の組み合わせを有する第3のガラス組成物を、上記溶融器に供給するステップを更に含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、上記第1のガラス組成物及び上記第2のガラス組成物の同じ成分の濃度とは異なる。上記方法は更に、上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも1つの追加の第1のガラス物品と、追加の最終ガラス物品とを、上記溶融器からドロー加工するステップを含む。上記追加の第1のガラス物品は、上記特性のセットに関して追加の第1の値のセットを有し、上記追加の最終ガラス物品は、上記特性のセットに関して追加の最終的な値のセットを有する。
【0023】
いくつかの態様は、上記特性のセットが、熱膨張係数(「CTE」)、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度のうちの1つ以上を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0024】
いくつかの態様は、上記第1のガラス物品のCTEが、上記追加の最終ガラス物品のCTEと等しいか、又は±15×10-7/℃以下だけ異なる、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0025】
いくつかの態様は、上記第1のガラス物品のCTEの百分率としての、上記追加の第1のガラス物品のCTEと上記第1のガラス物品のCTEとの間の差が、上記第1のガラス物品のヤング率の百分率としての、上記追加の第1のガラス物品のヤング率と上記第1のガラス物品のヤング率との間の差よりも大きい、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0026】
いくつかの態様は、上記溶融器内の上記組成物の粘度が、上記第1のガラス物品をドロー加工する上記ステップ及び上記追加の最終ガラス物品をドロー加工する上記ステップ中に、25ポアズ以下だけ変動する、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0027】
いくつかの態様は、上記溶融器内の上記ガラス混合物の200ポアズ温度が1500℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0028】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物がアルカリボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0029】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物がアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0030】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が亜鉛ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0031】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:60重量%以上かつ65重量%以下のSiO;1.5重量%以上かつ5.0重量%以下のAl;0重量%以上かつ2重量%以下のB;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;0重量%以上かつ10重量%以下のKO;2重量%以上かつ10重量%以下のMgO;0重量%以上かつ2重量%以下のCaO;0重量%以上かつ2重量%以下のTiO;及び10重量%以上かつ15重量%以下のZnOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0032】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:60重量%以上かつ65重量%以下のSiO;10重量%以上かつ15重量%以下のAl;2重量%以上かつ4重量%以下のB;2重量%以上かつ5重量%以下のLiO;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;1重量%以上かつ3重量%以下のMgO;及び0重量%以上かつ3重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0033】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;及び7重量%以上かつ9重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0034】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:56重量%以上かつ66重量%以下のSiO;9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl;3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;0重量%以上かつ14重量%以下のKO;0重量%以上かつ2重量%以下のMgO;及び0重量%以上かつ8重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0035】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;22重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ8重量%以下のMgO;及び7重量%以上かつ12重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0036】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:35重量%以上かつ48重量%以下のSiO;17重量%以上かつ20重量%以下のAl;0重量%以上かつ5重量%以下のNaO;0重量%以上かつ7重量%以下のKO;0重量%以上かつ4重量%以下のMgO;0重量%以上かつ8.5重量%以下のCaO;及び25重量%以上かつ32重量%以下のLaを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0037】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0038】
いくつかの態様は、上記第1のガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0.5重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0039】
いくつかの態様は:56重量%以上かつ66重量%以下のSiO;9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl;3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;0重量%以上かつ14重量%以下のKO;0重量%以上かつ2重量%以下のMgO;及び0重量%以上かつ8重量%以下のCaOを含むガラス組成物から形成された、ガラス物品を含む。
【0040】
いくつかの態様は:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含むガラス組成物から形成された、ガラス物品を含む。
【0041】
いくつかの態様は、目標熱膨張係数(CTE)を有するガラス物品を製造するための方法を含む。上記方法は:初期全体陽イオン電場強度を有する溶融ベースガラス組成物(又は「第1のガラス組成物」)を溶融させるステップ;ある温度範囲にわたって上記目標CTEを決定するステップ;及び上記溶融ベースガラス組成物中の、第1の陽イオン電場強度を有する、ある量の第1のアルカリ土類成分又は第1のアルカリ成分を、上記第1の陽イオン電場強度とは異なる第2の陽イオン電場強度を有する、ある量の第2のアルカリ土類成分又は第2のアルカリ成分で置換して、改質済みガラス組成物を製造するステップを含む。上記溶融ベースガラス組成物から形成されるベースガラス物品は、上記温度範囲にわたって、平均ベースガラス熱膨張係数CTEを有する。上記改質済みガラス組成物は、上記目標CTEの±1.0×10-7/℃以内である、上記温度範囲にわたる平均熱膨張係数CTEと、上記初期全体陽イオン電場強度とは異なる改質後全体陽イオン電場強度とを有する。
【0042】
いくつかの態様は、上記第2の陽イオン電場強度が上記第1の陽イオン電場強度未満であり;上記改質後全体陽イオン電場強度が上記初期全体陽イオン電場強度未満であり;CTEがCTEより大きい、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0043】
いくつかの態様は、上記置換するステップが、ある量の上記第1のアルカリ土類成分を、ある量のアルカリ成分で置換するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0044】
いくつかの態様は、上記第1のアルカリ土類成分がMgOを含み、上記アルカリ成分がNaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0045】
いくつかの態様は、上記置換するステップが、ある量の上記第1のアルカリ土類成分を、ある量の上記第2のアルカリ土類成分で置換するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0046】
いくつかの態様は、上記置換するステップが、ある量の上記第1のアルカリ成分を、ある量の上記第2のアルカリ成分で置換するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0047】
いくつかの態様は、上記第2の陽イオン電場強度が上記第1の陽イオン電場強度より大きく;上記改質後全体陽イオン電場強度が上記初期全体陽イオン電場強度より大きく;CTEがCTE未満である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0048】
いくつかの態様は、上記置換するステップが、ある量の上記第1のアルカリ成分を、ある量のアルカリ土類成分で置換するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0049】
いくつかの態様は、上記第1のアルカリ成分がNaOを含み、上記アルカリ土類成分がMgOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0050】
いくつかの態様は、上記温度範囲が0℃~300℃である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0051】
いくつかの態様は、上記温度範囲が20℃~260℃である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0052】
いくつかの態様は、CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、85×10-7/℃以上かつ95×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0053】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、80×10-7/℃以上かつ100×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0054】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品のヤング率が68GPa以上である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0055】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、75×10-7/℃以上かつ85×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0056】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品のヤング率が73GPa以上である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0057】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、40×10-7/℃以上かつ70×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0058】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、40×10-7/℃以上かつ60×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0059】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品のヤング率が90GPa以上である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0060】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、40×10-7/℃以上かつ54×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0061】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、90×10-7/℃以上かつ150×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0062】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品のヤング率が65GPa以上である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0063】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品のヤング率が72GPa以上である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0064】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物の200P温度が1500℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0065】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物の200P温度が1450℃以下である、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0066】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物がアルカリボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0067】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物がアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0068】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が亜鉛ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0069】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が:60重量%以上かつ65重量%以下のSiO;1.5重量%以上かつ5.0重量%以下のAl;0重量%以上かつ2重量%以下のB;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;0重量%以上かつ10重量%以下のKO;2重量%以上かつ10重量%以下のMgO;0重量%以上かつ2重量%以下のCaO;0重量%以上かつ2重量%以下のTiO;及び10重量%以上かつ15重量%以下のZnOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0070】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が:60重量%以上かつ65重量%以下のSiO;10重量%以上かつ15重量%以下のAl;2重量%以上かつ4重量%以下のB;2重量%以上かつ5重量%以下のLiO;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;1重量%以上かつ3重量%以下のMgO;及び0重量%以上かつ3重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0071】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;及び7重量%以上かつ9重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0072】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が:45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;22重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ8重量%以下のMgO;及び7重量%以上かつ12重量%以下のCaOを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0073】
いくつかの態様は、上記ベースガラス組成物が:35重量%以上かつ48重量%以下のSiO;17重量%以上かつ20重量%以下のAl;0重量%以上かつ5重量%以下のNaO;0重量%以上かつ7重量%以下のKO;0重量%以上かつ4重量%以下のMgO;0重量%以上かつ8.5重量%以下のCaO;及び25重量%以上かつ32重量%以下のLaを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0074】
いくつかの態様は、上記改質済みガラス組成物を成形用容器に送達するステップを更に含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0075】
いくつかの態様は、上記成形用容器を用いて上記改質済みガラス組成物をガラスブールに成形するステップを更に含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0076】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、80×10-7/℃以上かつ100×10-7/℃以下である場合に、上記目標CTEを決定する上記ステップが、以下の式:
CTE=(-1.17[重量%SiO])-(1.31[重量%Al])-(0.84[重量%B])+(4.36[重量%NaO])+(0.98[重量%MgO])+(47.1[重量%TiO])-(0.64[重量%ZnO])+(4.45[重量%KO])-(37.2[重量%CaO])-1.17
に従って上記目標CTEを決定するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0077】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、40×10-7/℃以上かつ70×10-7/℃以下である場合に、上記目標CTEを決定する上記ステップが、以下の式:
CTE=(6.58[重量%SiO])+(0.67[重量%Al])+(0.04[重量%B])+(3.64[重量%NaO])+(0.59[重量%MgO])+(1.34[重量%CaO])+6.58
に従って上記目標CTEを決定するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0078】
いくつかの態様は、上記目標CTEが、20℃~260℃の温度範囲にわたって、90×10-7/℃以上かつ150×10-7/℃以下である場合に、上記目標CTEを決定する上記ステップが、以下の式:
CTE=(137.56[重量%SiO])-(5.47[重量%Al])+(1.18[重量%LiO])+(2.22[重量%NaO])+(1.32[重量%KO])-(5.37[重量%MgO])-(0.09[重量%CaO])+137.56
に従って上記目標CTEを決定するステップを含む、上述の態様のいずれかの方法を含む。
【0079】
いくつかの態様は:56重量%以上かつ66重量%以下のSiO;9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl;3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO;6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;0重量%以上かつ14重量%以下のKO;0重量%以上かつ2重量%以下のMgO;及び0重量%以上かつ8重量%以下のCaOを含むガラス組成物から形成された、ガラス物品を含む。
【0080】
いくつかの態様は、熱膨張係数(CTE)が20℃~260℃の温度範囲にわたって90×10-7以上かつ150×10-7/℃以下である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0081】
いくつかの態様は、ヤング率が70GPa以上かつ100GPa以下である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0082】
いくつかの態様は、上記ヤング率が72GPa以上かつ85GPa以下である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0083】
いくつかの態様は、200ポアズ温度が0℃以上かつ1500℃以下である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0084】
いくつかの態様は、上記200ポアズ温度が1250℃以上かつ1500℃である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0085】
いくつかの態様は、上記ガラス組成物の密度が2.25g/cm以上かつ2.75g/cm以下である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0086】
いくつかの態様は、13重量%<[重量%LiO+重量%NaO+重量%KO]<31重量%である、上述の態様のいずれかのガラス物品を含む。
【0087】
本明細書で開示される様々な実施形態は、いずれの順列で組み合わせることができる。
【0088】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも単なる例であり、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを目的としていることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は1つ以上の実施形態を図示しており、本説明と併せて、これらの様々な実施形態の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、ある例示的なガラス製造装置の概略図
図2】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、合計改質因子陽イオン電場強度(X軸)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図3】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、合計改質因子陽イオン電場強度(X軸)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図4】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図5】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図6】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、異なる例示的なガラス組成物に関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図7】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、異なる例示的なガラス組成物に関する、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図8】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図9】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図10】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~300℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図11】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~390℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図12】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~300℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図13】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~390℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図14】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~300℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図15】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なガラス組成物に関する、20℃~390℃にわたる、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図16】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、フッ素を用いずに作製された同じガラスのCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する、フッ素を含有するいくつかのガラスの測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図17】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、フッ素を用いずに作製された同じガラスの測定された弾性率(X軸;GPaを単位とする値)に対する、フッ素を含有するいくつかのガラスの測定された弾性率(Y軸;GPaを単位とする値)のプロット
図18】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、1.3重量%のフッ素を含む同じガラス組成物、及び標準製造ガラスQEと比較した、2つのフッ素非含有製造ガラスHS5.1及びHS5.9に関する温度(X軸;℃を単位とする値)に対する対数粘度(Y軸;ポアズを単位とする値)のプロット
図19】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図20】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図21】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図22】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロット
図23】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図24】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図25】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図26】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する、別のモデルを用いた予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロット
図27】本明細書で図示及び説明される1つ以上の実施形態による、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する、別のモデルを用いた予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロット
【発明を実施するための形態】
【0090】
これより、目標熱膨張係数CTEを有するガラス物品の製造方法の様々な実施形態について詳細に言及する。これらの実施形態は添付の図面に図示されている。可能な限り、図面全体を通して、同一又は同様の部品を指すために同一の参照番号を使用する。図面中の構成要素は必ずしも縮尺が正確ではなく、実施形態の原理を例示するために強調が施される。
【0091】
用語「ガラス(glass)」及び「ガラス組成物(glass composition)」は、ガラス材料及びガラスセラミック材料の両方を包含する。というのは、これらの材料のクラスはいずれも一般に理解されているためである。同様に、用語「ガラス構造(glass structure)」は、ガラスを含む構造を包含する。
【0092】
用語「熱膨張係数(coefficient of thermal expansion)」又はCTEは、ASTM E228に従って決定される、特定の温度範囲にわたる平均CTEである。特段の記載がない限り、上記温度範囲は約20℃~約260℃である。
【0093】
基板の弾性率(ヤング率とも呼ばれる)は、ギガパスカル(GPa)を単位として提供される。基板の弾性率は、基板のバルク試料に対する共振超音波顕微鏡検査で決定される。
【0094】
基板の密度は、基板の圧縮の程度の尺度であり、g/cmを単位として提供される。密度はASTM C693に従って決定される。
【0095】
200ポアズ温度は、ガラス溶融物が200ポアズの粘度を示す温度であり、℃を単位として提供される。この温度はASTM C965に従って決定される。
【0096】
基板の表面品質は、表面の平坦性又は粗度の数値記述であり、例えばTROPEL(登録商標)FLATMASTER(登録商標)MSP(Multi‐Surface Profiler)を用いて決定される。
【0097】
基板の屈折率は、該基板中の光の速度に対する真空中の光の速度の比率である。屈折率は比であるため、単位はない。屈折率は屈折計、例えばBausch and Lomb Low Range Precision Refractometer又はMetricon Prism Couplerを用いて決定してよい。
【0098】
基板の抵抗率は、電流の流れに対する、指定された材料の抵抗力の尺度であり、Ω・mを単位として提供される。抵抗率は、ASTM D‐257及び/又はASTM D‐657に従って決定してよい。
【0099】
基板の縁部強度は、基板の破壊係数の尺度であり、MPaを単位として提供される。縁部強度は、基板の4点曲げを実施することによって決定してよい。
【0100】
溶融物の粘度は、流れに抵抗する単位面積あたりの力(ここで上記流れの中では、単位距離だけ離間した平行な複数の層が互いに対して単位速度を有する)によって測定される、内部摩擦の大きさを表現する量である。粘度は本明細書ではポアズを単位として提供され、ASTM C965によって決定してよい。
【0101】
数値(範囲の端点を含む)は、本明細書では、用語「約(about)」、「およそ(approximately)」等が前に付けられた概数として表現され得る。このような場合、他の実施形態は、その特定の数値を含む。ある数値が概数として表現されているかどうかに関わらず、本開示には:概数として表現されたもの;及び概数として表現されていないものという2つの実施形態が含まれる。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でも、また他方の端点と独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0102】
構成成分の濃度は、特段の記載がない限り、酸化物ベースの重量パーセント(重量%)として指定される。
【0103】
用語「…から形成される(formed from)」は、「…を含む(comprise)」、「…から本質的になる(consist essentially of)」、又は「…からなる(consists of)」のうちの1つ以上を意味することができる。例えば、ある特定の材料から形成された構成部品は、この特定の材料を含む場合も、この特定の材料から本質的になる場合も、この特定の材料からなる場合もある。
【0104】
本明細書中で使用される方向に関する用語、例えば「上方(up)」、「下方(down)」、「右(right)」、「左(left)」、「前(front)」、「後(back)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」は、図面を図示された状態で参照して使用されているだけであり、特段の記載がない限り、絶対的な配向を含意することを意図したものではない。
【0105】
特段の記載がない限り、本明細書に記載のいずれの方法が、そのステップを特定の順序で実施することを必要とするものとして解釈されること、及びいずれの装置について特定の配向が必要とされることは、全く意図されていない。従って、方法クレームが、その複数のステップが従うべき順序を実際に記載していない場合、あるいはいずれの装置クレームが、個々の構成部品に対して順序又は配向を実際に記載していない場合、あるいは特許請求の範囲若しくは明細書において、これらのステップが特定の順序に限定されるべきであること、又は装置の構成部品の特定の順序若しくは配向が必要となることが、具体的に記載されていない場合、順序又は配向が推定されることは、いかなる点でも一切意図されていない。これは:複数のステップの配置、動作フロー、構成部品の順序、又は構成部品の配向に関する論理の問題;文法的構成又は句読点から導出される明白な意味;及び本明細書に記載の実施形態の個数又はタイプを含む、解釈のためのいずれの非明示的根拠にも当てはまる。
【0106】
本明細書中で使用される場合、単数形「ある(a、an)」及び「上記(the)」は、文脈によってそうでないことが明示されていない限り、複数の参照物を含む。従って例えば、「ある」構成部品に対する言及は、文脈によってそうでないことが明示されていない限り、2つ以上のこのような構成要素を有する態様を含む。また、単語「又は(or)」は、前に「…のいずれか一方(either)」(又は「又は」が排他的なものであることを明確に意味することを示す他の類似の語句、例えば「x又はyのうちの一方のみ(only one of x or y)」等)が付けられていない場合、包括的なもの(例えば「x又はy(x or y)」は、x及びyのうちの一方又は両方を意味する)として解釈されるものとする。
【0107】
用語「及び/又は(and/or)」もまた、包括的なもの(例えば「x及び/又はy(x and/or y)」はx及びyのうちの一方又は両方を意味する)として解釈されるものとする。「及び/又は」又は「又は」が、3つ以上の項目の群に対して接続詞として使用される状況では、上記群は、1つの項目のみ、全ての項目、又はこれらの項目のいずれの組み合わせ若しくはこれらの項目のうちのいずれの個数を含むと解釈されるものとする。更に、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、「有する(have、having)」、「含む(include、including)」等の用語は、用語「備える、含む(comprise、comprising)」と同義として解釈されるものとする。
【0108】
特段の記載がない限り、本明細書(特許請求の範囲を除く)で使用される、寸法、物理的特性等を表現するもの等の全ての数又は表現は、全ての場合において用語「およそ」で修飾されているものとして理解される。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、本明細書又は特許請求の範囲に記載されている、用語「およそ」で修飾された各数値パラメータは、記載されている有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用して解釈されるものとする。
【0109】
本明細書において、範囲は「約(about)」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されている場合、別の実施形態は、上記1つの特定の値から、及び/又は上記別の特定の値までを含む。同様に、先行語句「約」の使用によって、値が概数として表されている場合、上記特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるだろう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でも、また他方の端点と独立しても、重要であることが理解されるだろう。
【0110】
図面は、正確な縮尺で描画された1つ以上の実施形態を図示するもの、及び/又は正確な縮尺で描画されていない1つ以上の実施形態を図示するものとして解釈されるものとする。即ち、図面は例えば:(a)正確な縮尺で描画された全ての特徴;(b)正確な縮尺で描画されていない全ての特徴;又は(c)正確な縮尺で描画された1つ以上の特徴、及び正確な縮尺で描画されていない1つ以上の特徴を示すものとして解釈され得る。従って図面は、図示されている特徴のうちのいずれの、単独での、又は互いに対する、サイズ、比率、及び/又は他の寸法を記述するためのサポートを提供する役割を果たすことができる。更に、このような全てのサイズ、比率、及び/又は寸法は、いずれの方向に0~100%可変であるものとして理解されるものとし、従ってこのような値、又はこのような値が形成できる全ての範囲若しくは部分範囲を記述する特許請求の範囲に対して、サポートを提供する。
【0111】
特許請求の範囲に記述される用語には、広く使用されている一般的な辞書及び/又は関連する技術用語辞書の見出し語、当業者が共通して理解する意味等を参照して決定される、その通常の慣用的な意味が与えられるものとし、ここで、以下の例外を条件として、これらのソースのうちのいずれの1つ又は組み合わせによって与えられる最も広い意味が、特許請求の範囲の用語に与えられる(例えば2つ以上の関連する辞書の見出し語を組み合わせて、見出し語の組み合わせの最も広い意味を提供する)ことになることが理解される:(a)ある用語が、その通常の慣用的な意味よりも拡張された様式で使用される場合、この用語には、その通常の慣用的な意味に加えて、追加の拡張的意味が与えられるものする;あるいは(b)ある用語が、この用語が後ろに句「この文書で使用される際には、…を意味するものとする(as used in this document shall mean)」又は類似の語句(例えば「この用語は…を意味する(this term means)」、「この用語は…として定義される(this term is defined as)」、「本開示の目的のために、この用語は…を意味するものとする(for the purposes of this disclosure this term shall mean)」等)を伴って記述されることによって、異なる意味を持つものとして明示的に定義されている場合。具体例への言及、「即ち(i.e.,)」の使用、単語「発明(invention)」の使用等は、例外(b)を発動すること、又は記述されている特許請求の範囲の用語の範囲を他の様式で制限することを意図したものではない。例外(b)が適用される状況以外では、本文書に含まれるいずれの内容も、特許請求の範囲の放棄又は否認とはみなされないものとする。
【0112】
半導体パッケージング業界では、異なる複数の製造業者が包括的なキャリア基板要件(即ちサイズ、形状等)を有しており、これらはある程度均一である。しかしながら、特性の仕様(即ち熱膨張係数、弾性率等)は製造業者毎、更には施設毎に異なっている場合がある。例えば半導体パッケージングプロセスの熱プロファイルは、特定の製造業者に固有である場合があり、その結果、この特定の熱プロファイルに合わせた熱特性、例えば熱膨張係数(CTE)等を有するキャリア基板が必要になる。特定のCTE要件に加えて、ガラスキャリアは、特定の半導体パッケージング操作との併用に好適であると考えられる弾性率、粘度、表面品質、及び縁部強度要件といった特定の他の特性を有することも必要とされる場合がある。キャリア基板に関する広範な特性仕様は、異なる複数のパッケージング操作での使用に適合するキャリア基板の経済的かつ効率的な大量生産を求めているガラス基板の製造業者に、固有の課題を提示する。
【0113】
例えば半導体製造研究室は、半導体の広範な製作後加工を実施する必要がある場合がある。この加工は典型的には、半導体をキャリア基板上に置くステップと、これに続いて熱機械的ステップ及びリソグラフィステップを実施するステップを含む。これらのステップを用いて、金属接続、エポキシ成形コンパウンド、ハンダ付け等を付与できる。歴史的に、半導体パッケージング業界は、基板キャリアとしてポリマー材料を使用してきた。ポリマー材料は、ローエンドのチップのパッケージングには十分であったが、パッケージング加工温度におけるポリマーの固有の構造的不安定性のため、ハイエンド製品の製造には不十分であることが証明されている。
【0114】
この業界における最近のトレンドは、ガラスウェハ(直径200mm/300mm)又はパネル(500mm×500mm)を基板として使用することである。製造業者、及び製作後加工に含まれる特定のステップに応じて、キャリア基板は、製作後加工全体を通して様々な量の応力及び反りを受ける可能性があり、従って例えばカスタムCTE要件を有する。
【0115】
これらのカスタムCTE要件を満たすガラスを得るプロセスを簡略化するために、ガラス物品のライブラリを形成してよく、これらのガラス物品は、ある一定の範囲内の組成物を有する(即ち組成が類似している)ものの、該ライブラリ内の各物品間で異なる物理的特性を有する。類似の組成に関するこの特性の範囲によって、エンドユーザは、プロセスの検証にいくつかの例示的なガラスしか必要とならない場合に、ガラスの完全なバッチを特に生成する必要なしに、ある特定のガラス物品を選択及び試験して、このガラス物品を特定の用途に使用できるかどうかを決定できる。当然のことながら、半導体製造におけるCTE以外の様々な他の特性及び用途が考慮され、実現可能である。
【0116】
本明細書に記載の方法は、様々な製造業者が採用するプロセスに適合した組成物を含むキャリア基板の形成を促進しながら、該キャリア基板のCTEを含む特性を、個々の製造業者の仕様を満たすように微調整できるようにする。具体的には、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、ガラス物品の製造方法に関する。いくつかの実施形態では、上記方法は、第1のガラス組成物を溶融器中で溶融させるステップであって、上記第1のガラス組成物は複数のガラス構成成分の組み合わせを含む、ステップを含む。次に第2のガラス組成物を上記溶融器に供給してよい。この第2のガラス組成物は同一のガラス構成成分の組み合わせを有してよいが、少なくとも1つのガラス構成成分の濃度が、上記第1のガラス組成物中の同じ成分(「変動成分(varied component)」と呼ばれる場合もある)の濃度とは異なる。いくつかの実施形態では、上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも3つのガラス物品を上記溶融器からドロー加工してよい。これらの少なくとも3つのガラス物品は:(1)上記第1のガラス組成物から形成された第1のガラス物品;(2)上記第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物のいずれからなるものでもなく、また上記第2のガラス組成物の供給と同時に、又は何らかの異なる時点においてドロー加工してよい、少なくとも1つの中間ガラス物品;並びに(3)上記第1のガラス組成物とは異なり、かつ上記第2のガラス組成物とは同一であっても異なっていてもよい組成物からなる、最終ガラス物品を含んでよい。上記少なくとも1つの中間ガラス物品中の上記少なくとも1つの成分の上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度との間となり得る。上記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有してよい。上記最終ガラス物品は、同じ特性のセットに関して、上記第1の値のセットとは異なる第2の値のセットを有してよい。上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記特性のセットに関して、上記第1の値のセットと上記第2の値のセットとの間の、中間の値のセットを有してよい。
【0117】
当然のことながら、2つ以上の第2のガラス組成物を上記溶融器に追加してよい。例えば上記方法は、第3のガラス組成物を上記溶融器に供給するステップを更に含んでよい。この第3のガラス組成物は、同じガラス構成成分の組み合わせを含んでよいが、上述の第2のガラス組成物と同様、少なくとも1つのガラス構成成分の濃度が、上記第1のガラス組成物及び上記第2のガラス組成物の両方における濃度とは異なってよい。そして上記方法は更に、上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも1つの追加の第1のガラス物品と、追加の最終ガラス物品とを、上記溶融器からドロー加工するステップを含んでよい。上記追加の第1のガラス物品は、上記と同じ特性のセットに関して追加の第1の値のセットを有してよく、上記追加の最終ガラス物品は、上記と同じ特性のセットに関して追加の最終的な値のセットを有してよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、上記第1のガラス組成物中の上記変動成分の濃度は、上記第2のガラス組成物中での濃度と2重量%以下だけ異なっていてよい。例えば、上記第1のガラス組成物中の上記変動成分の濃度は、上記第2のガラス組成物中での濃度と、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、又はこれらのいずれの小数部分だけ異なっていてよい。更に、上記第1のガラス組成物の全ての成分の濃度が、上記第2のガラス組成物中での濃度と異なっていてよく、又は1つを除く全ての成分の濃度が、上記第1のガラス組成物中に存在する濃度を保持していてもよい。従って、上記第1のガラス組成物の1つの成分、2つの成分、3つの成分、…、最大で全ての成分の濃度が、上記第2のガラス組成物中での濃度と異なっていてよい。
【0119】
上記第1のガラス組成物と上記第2のガラス組成物との間で濃度が異なっていてよい少なくとも1つの成分、即ち変動成分は、構成成分のうちのいずれであってもよい。例示的な変動成分としては、限定するものではないが、SiO、Al、B、NaO、MgO、CaO、AlF、及びSbが挙げられる。一実施形態では、変動成分はAlFである。いくつかの実施形態ではAlFは存在しない(0重量%)場合があるが、他の実施形態では、0重量%超かつ約1.5重量%以下だけ存在してよい。更なる実施形態では、AlFは、0.5重量%以上かつ約1.5重量%以下だけ存在してよい。
【0120】
上述のように、上記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有してよく、上記最終ガラス物品は第2の値のセットを有してよく、上記少なくとも1つの中間ガラス物品は中間の値のセットを有してよい。このような特性としては、限定するものではないが、CTE、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度が挙げられる。いくつかの実施形態では、上記第1のガラス物品のCTEは、上記最終ガラス物品のCTEから±7.5×10-7/℃以内だけ異なっていてよい。第3のガラス組成物が溶融器に追加されるいくつかの実施形態では、上記第1のガラス物品のCTEは、上記追加の最終ガラス物品のCTEから±15×10-7/℃以内だけ異なっていてよい。同じ又は異なる実施形態において、上記第1のガラス物品の屈折率は、上記最終ガラス物品の屈折率から±0.01以下だけ異なっていてよい。
【0121】
特定の特性は、全てのガラス物品のドロー加工を含む本方法を通して略不変のままであってよい。例えばいくつかの実施形態では、溶融器内での組成物の粘度は、上記少なくとも3つのガラス物品のドロー加工中、25ポアズ以下だけ変化し得る。同じ又は異なる実施形態において、溶融器内でのガラス混合物の200ポアズ温度は、1500℃以下であってよい。2つ以上の第2のガラス組成物、例えば第3のガラス組成物を溶融器に追加したときにも、同様の効果が観察され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、特性のセットのうちの1つの特性の値だけが、第1のガラス物品、最終ガラス物品、及び中間ガラス物品の間で異なる。他の実施形態では、全てのこのような値が異なる。更なる実施形態では、特性のセットのうちの、1個の特性から全ての特性までのいずれの個数の特性の値が、第1のガラス物品、最終ガラス物品、及び中間ガラス物品の間で異なっていてよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、2つ以上の特性の値の、第1のガラス物品、最終ガラス物品、及び中間ガラス物品の間での差が、同程度でない場合がある。例えば、ある特性の値が、別の特性の値に比べてはるかに大きな程度で異なっている場合がある。いくつかの実施形態では、例えば、第1のガラス物品のCTEの百分率としての、少なくとも1つの中間ガラス物品のCTEと第1のガラス物品のCTEとの間の差は、第1のガラス物品のヤング率の百分率としての、少なくとも1つの中間ガラス物品のヤング率と第1のガラス物品のヤング率との間の差よりも大きくてよい。2つ以上の第2のガラス組成物、例えば第3のガラス組成物を溶融器に追加したときにも、同様の効果が観察され得る。
【0124】
製造されるガラス物品の形状は特に限定されない。例示的な形状としては、限定するものではないが、ガラスブールが挙げられる。異なる固有のガラス組成物を含むいずれの個数のガラス物品を、溶融器からドロー加工できる。例えば数百個、更には数千個のガラス物品をドロー加工できる。ドロー加工する個数はより少なくてもよい。例えば少なくとも5個のガラス物品、即ち1個の第1のガラス物品、1個の最終ガラス物品、及び3個の中間ガラス物品をドロー加工してよい。同じ又は異なる実施形態において、少なくとも10個のガラス物品、即ち少なくとも8個の中間ガラス物品をドロー加工してよい。同様に、同じ又は異なる実施形態において、少なくとも20個のガラス物品、即ち少なくとも18個の中間ガラス物品をドロー加工してよい。同様に、同じ又は異なる実施形態において、少なくとも30個のガラス物品、即ち少なくとも28個の中間ガラス物品をドロー加工してよい。2つ以上の第2のガラス組成物、例えば第3のガラス組成物を溶融器に追加したときにも、同様の個数のガラス物品をドロー加工できるが、当然のことながら、このような条件下では更に多数のガラス物品をドロー加工できる。第1のガラス組成物と第2のガラス組成物との間で少なくとも1つの成分の濃度が変化しているため、ドロー加工されるガラス組成物は、第1のガラス組成物から第2のガラス組成物へと、時間の経過と共にゆっくりと変化する。各中間物品を、異なる時点においてドロー加工してよい。従って各中間物品は、第1のガラス組成物中での上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度と第2のガラス組成物中での上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度との間の、上記少なくとも1つのガラス構成成分の異なる濃度を有する。2つの中間物品を同時にドロー加工すると、組成の差はわずかとなり得る。時間が経過するほど、組成の差はより顕著になり得る。
【0125】
ここで図1を参照すると、溶融ガラスからガラス物品のライブラリを形成するための例示的なガラス製造装置100が、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って概略図で示されている。ガラス製造装置100は、溶融用容器1、清澄用容器3、混合用容器4、送達用容器8、及び成形用容器10を含む。ガラスバッチ材料は、矢印2によって示されているように溶融用容器1に導入される。バッチ酸化物を含む上記バッチ材料を溶融させて、溶融ガラス6を形成する。溶融用容器1は、バッチ材料を溶融させるための加熱素子(図示せず)を含んでよい。清澄用容器3は、溶融用容器1から溶融ガラス6を受け取り、溶融ガラス6から気泡を除去する、高温加工エリアを有する。清澄用容器3は接続チューブ5によって混合用容器4に流体接続される。即ち、清澄用容器3から混合用容器4へと流れる溶融ガラスは、接続チューブ5を通って流れる。そして混合用容器4は接続チューブ7によって送達用容器8に流体接続され、従って混合用容器4から送達用容器8へと流れる溶融ガラスは、接続チューブ7を通って流れる。
【0126】
送達用容器8は、下降管9を通して成形用容器10へと溶融ガラス6を供給する。送達用容器8は、ガラスを加熱する、及び/又は溶融状態に維持するための、加熱素子(図示せず)を含んでよい。いくつかの実施形態では、送達用容器8は溶融ガラスを冷却及び調質して、ガラスを成形用容器10に供給する前にガラスの粘度を上昇させることができる。成形用容器10は例えば、フュージョンドローデバイス、スロットドローデバイス、又は鋳型であってよい。得られるガラス物品の形状は、採用される特定の成形用容器10に応じて様々となる。しかしながらいくつかの実施形態では、成形用容器10から得られるガラス物品は、ガラスブールの形状であってよく、その後これをガラスプレートに成形できる。溶融器内の組成物を変化させると、得られるガラス物品は、各ガラス物品のわずかに異なる組成によって、異なる特性を示す。
【0127】
本明細書に記載の方法のある便利な用途は、ベースガラス組成に変更を加えることによって達成できるある範囲の目標CTEを有する、ガラス物品のライブラリの製造である。いくつかの実施形態では、上記方法は、溶融ベースガラス組成物中の、第1の陽イオン電場強度を有するある量の第1のアルカリ土類成分又は第1のアルカリ成分を、第1の陽イオン電場強度とは異なる第2の陽イオン電場強度を有する、ある量の第2のアルカリ土類成分又は第2のアルカリ成分で置換するステップを含む。理論によって束縛されるものではないが、酸化物ガラスのCTEは、陽イオンと酸素ネットワークとの間の結合の強度に依存すると考えられる。従ってガラスの全体的な陽イオン電場強度の調整は、以下で更に詳細に説明されるように、得られるガラス物品のCTEの変更を効果的に推進できる。
【0128】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、溶融用容器1に追加する様々なバッチ酸化物の量を調整し、1つ以上のバッチ酸化物を異なるバッチ酸化物で置換することによって、ガラス物品のCTEを選択的に修正、又は「微調整(tune)」できる。本明細書中で使用される場合、用語「置換する(replace)」は、あるバッチ酸化物の量を減少させ、更にはガラス組成物から排除して、異なるバッチ酸化物をガラス組成物に追加する、又はその量を増大させることを意味する。ガラス製造プロセスが連続法である実施形態では、あるバッチ酸化物を別のバッチ酸化物で置換することは、時間の経過と共に、置換対象のバッチ酸化物が減少するか、又は溶融用容器1中の溶融ガラス組成物から排除されるように、ある量の上記別のバッチ酸化物を溶融用容器1に追加し、更なる量の置換対象のバッチ酸化物を追加しないことを含んでよい。従って、置換対象の1つ以上バッチ酸化物は、溶融用容器1に導入されたガラスバッチ酸化物中で置換でき、最終的に溶融ガラス6となることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、溶融ベースガラス組成物中のある量の1つ以上のバッチ酸化物(例えば、第1の陽イオン電場強度を有する第1のアルカリ土類成分又は第1のアルカリ成分)を、ある量の異なるバッチ酸化物(例えば第1の陽イオン電場強度とは異なる第2の陽イオン電場強度を有する第2のアルカリ土類成分又は第2のアルカリ成分)で置換して、ガラス組成物に関する全体的な陽イオン電場強度を修正することによって、目標熱膨張係数CTEを達成してよい。即ち、ガラス組成物の熱膨張係数が、ガラス組成物の全体的な陽イオン電場強度に関連することが決定された。例えば目標CTEがベースガラスの熱膨張係数CTEよりも高い場合、目標CTEを達成するためにガラス組成物の全体的な陽イオン電場強度を低下させる必要があり、一方、目標CTEがベースガラスの熱膨張係数CTEよりも低い場合、目標CTEを達成するためにガラス組成物の全体的な陽イオン電場強度を上昇させる必要がある。本明細書中で使用される場合、用語「ベースガラス(base glass)」及び「ベースガラス組成物(base glass composition)」は、改質前の初期ベースガラス組成物を指す。ベースガラス組成物は、「第1のガラス組成物(first glass composition)」と呼ばれる場合もある。結果として得られる、又は改質されたベースガラス組成物は、本明細書中では「改質済みガラス(modified glass)」又は「改質済みガラス組成物(modified glass composition)」と呼ばれる。改質済みガラス組成物は、「第2のガラス組成物(second glass composition)」及び「第3のガラス組成物(third glass composition)」と呼ばれる場合もある。
【0130】
陽イオンの陽イオン電場強度はZ/rとして表すことができ、ここでZは陽イオンの電荷(単位なし)であり、rは陽イオンの半径(単位:オングストローム)である。ガラス組成物の全体的な陽イオン電場強度は、以下のようにして計算される:まず、特定の酸化物のモル分率を計算する。本出願の目的のために、全体的な陽イオン電場強度の計算においては以下の酸化物のみを考慮する:SiO、NaO、CaO、MgO、Al、KO、LiO、及びZnO。次に、陽イオン/分子の個数と上記モル分率及び各陽イオンの電場強度とを乗算し、全体的な陽イオン電場強度に対する各酸化物からの寄与を得る。全体的な陽イオン電場強度は、各酸化物の寄与の合計である。表1は、バッチ酸化物に含まれ得る様々な陽イオンの陽イオン電場強度値を提供する。
【0131】
【表1】
【0132】
これらのガラスを硬化させる1つの方法は、イオン交換による硬化である。図2及び3は、合計改質因子陽イオン電場強度(X軸)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)の例示的なプロットである。図2及び3のR値から理解できるように、CTEは合計改質因子陽イオン電場強度と強く相関している。この例では、MgOをNaO及びCaOにイオン交換すると、CTEは約45×10-7/℃~約65×10-7/℃となり、電場強度の上昇がCTEの低下と関連する。同様に、MgO及びCaOをKOにイオン交換すると、CTEは約80×10-7/℃~約100×10-7/℃となり、電場強度の上昇がCTEの低下と関連する。
【0133】
ガラス組成物に関して望ましい全体的な陽イオン電場強度(従って目標CTE)を達成するために、バッチ酸化物中のある量の第1のアルカリ土類成分を、ある量の第2のアルカリ土類成分で置換でき、バッチ酸化物中のある量の第1のアルカリ成分を、ある量の第2のアルカリ成分で置換でき、バッチ酸化物中のある量のアルカリ土類成分を、ある量のアルカリ成分で置換でき、又はバッチ酸化物中のある量のアルカリ成分を、ある量のアルカリ土類成分で置換できる。いくつかの実施形態では、ある量のいずれの成分を、ある量の他のいずれの成分で置換してよい。
【0134】
例えば、目標CTEがベースガラスCTEよりも高い場合、いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物中のある量の第1のアルカリ土類成分を、この第1のアルカリ土類成分の陽イオン電場強度より低い陽イオン電場強度を有する、ある量のアルカリ成分で、又はある量の第2のアルカリ土類成分で、置換してよい。いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物中のある量の第1のアルカリ成分を、この第1のアルカリ成分の陽イオン電場強度より低い陽イオン電場強度を有する、ある量の第2のアルカリ成分で、置換してよい。例えばいくつかの実施形態では、ある量のMgOをある量のNaOで置換する。
【0135】
別の例として、目標CTEがベースガラスCTEよりも低い場合、いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物中のある量の第1のアルカリ成分を、この第1のアルカリ成分の陽イオン電場強度より高い陽イオン電場強度を有する、ある量のアルカリ土類成分で、又はある量の第2のアルカリ成分で、置換してよい。いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物中のある量の第1のアルカリ土類成分を、この第1のアルカリ土類成分の陽イオン電場強度より高い陽イオン電場強度を有する、ある量の第2のアルカリ土類成分で、置換してよい。例えばいくつかの実施形態では、ある量のNaOをある量のMgOで置換する。
【0136】
実施形態では、置換対象となるある量の1つ以上のバッチ成分は、線形モデル化を含むがこれに限定されない数学的モデル化を用いて、目標CTEに基づいて決定できる。使用される特定のモデルは実施形態に依存し、ベースガラス組成、及びCTEを測定する温度範囲を含む、複数の因子に応じて変化し得る。従って実施形態では、上記方法は:ベースガラス組成物を溶融させるステップ;上記ベースガラス組成物からガラス物品を形成するステップ;上記ベースガラス組成物を改質して、2つ以上の改質済みベースガラス組成物を形成するステップ;各上記改質済みベースガラス組成物からガラス物品を形成するステップ;上記ベースガラス組成物及び上記改質済みベースガラス組成物から作製された各上記ガラス物品のCTEを測定するステップ;並びに上記ガラス物品の測定されたCTE、及び上記ガラス物品のガラス組成に基づいて、線形回帰を展開するステップを含む。この線形回帰分析に使用されるガラス組成物の個数は、特定の実施形態に応じて変化し得る。しかしながら、採用されるガラス組成物の個数は、意味のある線形回帰分析を得るために十分なものでなければならないことを理解されたい。
【0137】
ベースガラス組成物は、多数の好適なガラス組成物のうちのいずれの1つであってよい。例えばベースガラス組成物は、アルカリボロアルミノシリケートガラス組成物、アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物、亜鉛ボロアルミノシリケートガラス組成物等であってよい。ガラス組成物は:ある特定の温度における、若しくは温度の範囲(例えば0℃~400℃、0℃~300℃、0℃~260℃、20℃~300℃、若しくは20℃~260℃)にわたる、そのCTE;その密度;そのヤング率;その200ポアズ温度;又はガラス物品の加工若しくは使用のために必要となり得る他の特性に基づいて選択してよい。200ポアズ温度は、ガラスの粘度が200ポアズとなる最低温度であり、十分に溶融したガラスの最低温度の指標である。
【0138】
ガラス組成物は一般に、SiO、Al、少なくとも1つのアルカリ土類酸化物及び/又はアルカリ酸化物、例えばNaO及びKOの組み合わせを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は更に、少量の1つ以上の酸化物、例えば限定するものではないがSnO、Sb、ZrO、ZnO等を含んでよい。これらの成分は、清澄剤として、及び/又はガラス組成物のCTEを更に修正するために、添加してよい。
【0139】
実施形態では、ガラス組成物は一般に、35重量%以上かつ75重量%以下の量のSiOを含む。SiOの含有量が低すぎると、好適な耐衝撃性を有する結晶化ガラスを得るのが困難になる。他方で、SiOの含有量が高すぎると、ガラスの溶融性能が低下して粘度が上昇するため、ガラスの成形が困難になる。いくつかの実施形態では、SiOはガラス組成物中に、60重量%以上かつ65重量%以下、56重量%以上かつ66重量%以下、45重量%以上かつ55重量%以下、35重量%以上かつ48重量%以下、35重量%以上、又は45重量%以上の量で存在する。
【0140】
ガラス組成物はAlも含んでよい。Alは、ガラス組成物中に存在するアルカリ酸化物、例えばNaO等と組み合わされて、イオン交換による強化に対する感受性が向上する。更にAlの量を増大させると、ガラスの軟化点も上昇する可能性があり、これによりガラスの成形性が低下する。本明細書に記載のガラス組成物は、1.5重量%以上かつ27重量%以下、1.5重量%以上かつ5重量%以下、8重量%以上かつ15重量%以下、10重量%以上かつ15重量%以下、9.5重量%以上かつ12重量%以下、17重量%以上かつ20重量%以下、又は22重量%以上かつ27重量%以下の量のAlを含んでよい。
【0141】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ガラス物品が形成されるガラス組成物中のホウ素濃度はフラックスであり、これをガラス組成物に添加すると、粘度‐温度曲線の勾配を低減し、また曲線全体を下方に下げることによって、ガラスの成形性を改善し、ガラスを軟化させることができる。実施形態では、ガラス組成物は、0重量%以上のBかつ2重量%以下のB、2重量%以上かつ4重量%以下のB、8重量%以上かつ10重量%以下のB、又は10重量%以上かつ15重量%以下のBを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、ホウ素及びホウ素含有化合物を含まなくてよい。
【0142】
ガラス組成物の実施形態は更に、1つ以上のアルカリ酸化物(例えばNaO、KO、LiO等)を含んでよい。上記アルカリ酸化物は、ガラス組成物の溶融を促進し、200ポアズ温度を低下させ、ガラスの軟化点を低下させることによって、ガラス組成物中のSiO及び/又はAlの濃度が比較的高いことによる軟化点の上昇を相殺する。上記アルカリ酸化物はまた、ガラス組成物の耐化学性の改善、及びCTEの望ましい値への微調整を支援する。上記アルカリ酸化物は一般に、ガラス組成物中に6重量%以上かつ40重量%以下の量で存在する。いくつかの実施形態では、アルカリ酸化物の量は、6重量%以上かつ28重量%以下、8重量%以上かつ23重量%以下、9重量%以上かつ17重量%以下、又は1重量%以上かつ8重量%以下であってよい。本明細書に記載の全てのガラス組成物において、アルカリ酸化物は少なくともNaO及びKOを含む。いくつかの実施形態では、アルカリ酸化物は更にLiOを含む。
【0143】
望ましいCTEを達成するために、ガラス組成物の実施形態は、1重量%以上かつ18重量%以下、6重量%以上かつ18重量%以下、0重量%以上かつ8重量%以下、0重量%以上かつ5重量%以下、又は1重量%以上かつ8重量%以下の量のNaOを含む。
【0144】
ガラス中のKOの濃度もまた、ガラス組成物のCTEに影響を及ぼす。従っていくつかの実施形態では、KOの量は、0重量%以上かつ14重量%以下、0重量%以上かつ10重量%以下、又は0重量%以上かつ7重量%以下、0重量%超かつ14重量%以下、0重量%超かつ10重量%以下、又は0重量%超かつ7重量%以下である。
【0145】
LiOを含むガラス組成物の実施形態では、LiOは、2重量%以上かつ7.5重量%以下、2重量%以上かつ5重量%以下、又は3重量%以上かつ7.5重量%以下の量で存在してよい。しかしながらいくつかの実施形態では、ガラス組成物は、リチウム及びリチウム含有化合物を実質的に含まなくてよい。
【0146】
上述のように、ガラス組成物の実施形態は、1つ以上アルカリ土類酸化物を更に含んでよい。アルカリ土類酸化物としては例えば、MgO、CaO、SrO、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アルカリ土類酸化物は、CTEに影響を及ぼすだけでなく、ガラスバッチ酸化物の溶融性を改善し、ガラス組成物の耐化学性を向上させる。本明細書に記載のガラス組成物では、ガラス組成物は一般に、1重量%以上かつ22重量%以下、2重量%以上かつ12重量%以下、1重量%以上かつ6重量%以下、9重量%以上かつ22重量%以下、12.5重量%以上かつ21重量%以下、7重量%以上かつ20重量%以下、0重量%超かつ12.5重量%以下、又は0重量%超かつ10重量%以下の量の、少なくとも1つのアルカリ土類酸化物を含む。
【0147】
MgOは、0重量%以上かつ12重量%以下、1重量%以上かつ10重量%以下、2重量%以上かつ10重量%以下、1重量%以上かつ3重量%以下、9重量%以上かつ12重量%以下、0重量%超かつ8重量%以下、又は0重量%超かつ4重量%以下の量で存在してよい。しかしながらいくつかの実施形態では、MgOがガラス組成物に含まれないことを考えることもできる。
【0148】
別の例では、CaOはガラス組成物中に、0重量%以上かつ12重量%以下の量で存在してよい。実施形態では、CaOは、0重量%超かつ8.5重量%以下、0重量%超かつ8重量%以下、0重量%超かつ3重量%以下、0重量%超かつ2重量%以下、3重量%以上かつ6重量%以下、7重量%以上かつ12重量%以下、又は8重量%以上かつ12重量%以下の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、CaOはガラス組成物中に存在しなくてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、SrOはガラス組成物中に、0.5重量%超かつ3重量%以下の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、SrOはガラス組成物中に存在しなくてもよい。
【0150】
SiO、Al、アルカリ酸化物、及びアルカリ土類酸化物に加えて、例示的なベースガラス組成物の第1の実施形態は任意に、例えば限定するものではないがSnO、Sb、As、F、及び/又は(NaCl等に由来する)Clといった、1つ以上の清澄剤を含んでよい。清澄剤がガラス組成物中に存在する場合、清澄剤は、1重量%以下、更には0.5重量%以下の量で存在してよい。清澄剤の含有量が高すぎると、清澄剤がガラス構造に入り込んで、ガラスの様々な特性に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、清澄剤の含有量が低すぎると、ガラスの成形が困難になる場合がある。例えばいくつかの実施形態では、SnOは清澄剤として、0.25重量%以上かつ0.50重量%以下の量で含まれる。
【0151】
いくつかの実施形態のガラス組成物には、他の金属酸化物が更に含まれていてよい。例えばガラス組成物はZnO又はZrOを更に含んでよく、これらはそれぞれ、化学的攻撃に対するガラスの耐性を改善する。このような実施形態では、追加の金属酸化物は、10重量%以上かつ15重量%以下の量で存在してよい。例えばガラス組成物は、15重量%以下の量のZrOを含んでよい。ZrOの量が多すぎると、これはガラス組成物中で溶解しない可能性があり、またヤング率を上昇させる可能性がある。実施形態では、ZnOは、15重量%以下、又は12重量%以下の量で含まれていてよい。いくつかの実施形態では、ZnOはアルカリ土類酸化物のうちの1つ以上の代替物、例えばMgOの部分的代替物として、又はCaO及びSrOのうちの少なくとも一方に加えて、若しくはこれに代えて、含まれていてよい。従って、ガラス組成物中のZnOの含有量は、高すぎる場合又は低すぎる場合に、アルカリ土類酸化物に関して上述したものと同じ影響を有し得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、60重量%以上かつ65重量%以下のSiO、1.5重量%以上かつ5.0重量%以下のAl、0重量%以上かつ2重量%以下のB、6重量%以上かつ18重量%以下のNaO、0重量%以上かつ10重量%以下のKO、2重量%以上かつ10重量%以下のMgO、0重量%以上かつ2重量%以下のCaO、0重量%以上かつ2重量%以下のTiO、及び10重量%以上かつ15重量%以下のZnOを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、60重量%以上かつ65重量%以下のSiO、10重量%以上かつ15重量%以下のAl、2重量%以上かつ4重量%以下のB、2重量%以上かつ5重量%以下のLiO、6重量%以上かつ18重量%以下のNaO、1重量%以上かつ3重量%以下のMgO、及び0重量%以上かつ3重量%以下のCaOを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;及び7重量%以上かつ9重量%以下のCaOを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、56重量%以上かつ66重量%以下のSiO、9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl、3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO、6重量%以上かつ18重量%以下のNaO、0重量%以上かつ14重量%以下のKO、0重量%以上かつ2重量%以下のMgO、及び0重量%以上かつ8重量%以下のCaOを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、45重量%以上かつ55重量%以下のSiO、22重量%以上かつ27重量%以下のAl、8重量%以上かつ10重量%以下のB、0重量%以上かつ8重量%以下のNaO、0重量%以上かつ8重量%以下のMgO、及び7重量%以上かつ12重量%以下のCaOを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、35重量%以上かつ48重量%以下のSiO、17重量%以上かつ20重量%以下のAl、0重量%以上かつ5重量%以下のNaO、0重量%以上かつ7重量%以下のKO、0重量%以上かつ4重量%以下のMgO、0重量%以上かつ8.5重量%以下のCaO、及び25重量%以上かつ32重量%以下のLaを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0.5重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、ベースガラス組成物は、45重量%以上かつ55重量%以下のSiO;20重量%以上かつ27重量%以下のAl;8重量%以上かつ10重量%以下のB;0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び0重量%超かつ1.5重量%以下のAlFを含む。
【0161】
上述のように、ベースガラス組成物の選択に続いて、線形回帰分析を実施して、ガラス組成物の構成成分の濃度に熱膨張係数を関連付ける線形回帰式を展開してよい。実施形態では、複数のガラス組成物に対する線形回帰の当てはめを用いて、目標CTEを達成するために必要な、1つ以上の構成成分の特定の量を決定してよい。例えば、線形回帰の当てはめにより、ガラスバッチ混合物中の各構成成分に関する係数を提供できる。いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(-1.17[重量%SiO])-(1.31[重量%Al])-(0.84[重量%B])+(4.36[重量%NaO])+(0.98[重量%MgO])+(47.1[重量%TiO])-(0.64[重量%ZnO])+(4.45[重量%KO])-(37.2[重量%CaO])-1.17
に従って決定してよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(6.58[重量%SiO])+(0.67[重量%Al])+(0.04[重量%B])+(3.64[重量%NaO])+(0.59[重量%MgO])+(1.34[重量%CaO])+6.58
に従って決定してよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(137.56[重量%SiO])-(5.47[重量%Al])+(1.18[重量%LiO])+(2.22[重量%NaO])+(1.32[重量%KO])-(5.37[重量%MgO])-(0.09[重量%CaO])+137.56
に従って決定してよい。
【0164】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(156.62[重量%SiO])-(3.41[重量%Al])-(6.38[重量%B])+(4.70[重量%NaO])+(3.56[重量%MgO])-(0.62[重量%CaO])-(7.68[重量%F])+156.52
に従って決定してよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(142.70[重量%SiO])-(2.62[重量%Al])-(8.08[重量%B])+(0.45[重量%CaO])-(8.99[重量%F])+(4.35[重量%MgO])+(4.31[重量%NaO])+142.70
に従って決定してよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(115.77[重量%SiO])+(0.07[重量%Al])-(4.24[重量%B])+(3.72[重量%NaO])-(3.00[重量%MgO])-(1.38[重量%CaO])-(9.49[重量%F])+115.77
に従って決定してよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、20℃~260℃の温度範囲にわたる目標CTEは、以下の式:
CTE=(119.24[重量%SiO])+(0.20[重量%Al])-(3.20[重量%B])-(1.95[重量%CaO])-(0.86[重量%F])-(5.48[重量%MgO])+(3.20[重量%NaO])+119.24
に従って決定してよい。
【0168】
線形回帰モデル化に基づく他の式も考えられる。具体的な線形回帰及び係数は、ベースガラス組成、目標CTE、及びCTEを測定する温度範囲に基づいて、変化し得る。従って、目標CTEを式に挿入してよく、この式を解くことによって、バッチ酸化物の濃度を決定し、目標CTEに近い修正済み熱膨張係数CTEを有する改質済みガラス組成物を形成できる。
【0169】
線形回帰分析を実施することによって、ガラス組成物の構成成分の濃度にヤング率を関連付ける線形回帰式を展開してもよい。実施形態では、複数のガラス組成物に対する線形回帰の当てはめを用いて、目標ヤング率(E)を達成するために必要な、1つ以上の構成成分の特定の量を決定してよい。例えば、線形回帰の当てはめにより、ガラスバッチ混合物中の各構成成分に関する係数を提供できる。いくつかの実施形態では、目標Eは、以下の式:
=(4.77[重量%SiO])-(4.31[重量%Al])-(3.33[重量%B])+(1.67[重量%NaO])+(25.88[重量%MgO])+(5.32[重量%CaO])-(3.01[重量%F])+4.77
に従って決定してよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、目標Eは、以下の式:
=(113.95[重量%SiO])+(0.22[重量%Al])-(2.75[重量%B])-(0.39[重量%CaO])-(0.94[重量%F])-(0.49[重量%MgO])-(0.47[重量%NaO])+113.95
に従って決定してよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、目標Eは、以下の式:
=(91.49[重量%SiO])+(0.21[重量%Al])-(2.67[重量%B])+(0.15[重量%CaO])+(1.86[重量%F])-(0.16[重量%MgO])-(6.53[重量%NaO])+91.49
に従って決定してよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、目標Eは、以下の式:
=(-10.97[重量%SiO])+(3.95[重量%Al])-(1.97[重量%B])+(3.03[重量%CaO])+(0.39[重量%F])+(0.09[重量%MgO])-(1.60[重量%NaO])-10.97
に従って決定してよい。
【0173】
実施形態では、改質済みガラス組成物のCTEは、対応する温度範囲にわたる目標CTEの±1.0×10-7/℃である。CTEの精度は、使用される具体的な線形回帰、CTEを測定及び概算する温度範囲、及びガラス組成に左右される場合があることを理解されたい。
【0174】
更に、線形回帰モデル化に基づいて他の特性を予測することも考えられる。例えば実施形態では、ガラス組成物に関するヤング率(「弾性率」又は「E‐mod」とも呼ばれる)を、線形回帰に基づいて予測できる。従って、改質済みガラス組成物の1つ以上の特性を、ガラス組成物からガラス物品を製造する前に予測できる。これにより、改質済みガラス組成物が加工要件を満たすこと、及び改質済みガラス組成物から形成されたガラス物品が望ましい特性を有することを、バッチ酸化物の混合及びガラス物品の製造前に確認できる。
【0175】
望ましい特性は、特定の実施形態、最終的な使用法、及びガラス組成物の加工要件に応じて変化し得るが、実施形態では、ガラス物品のヤング率は65GPA以上であり、これにより、加工中のガラスの曲がりを最小限に抑え、ガラスを電子デバイス用のキャリア基板として使用する場合等に、ガラスに取り付けられるデバイスに対する損傷を防止できる。例えばガラス物品のヤング率は、68GPa以上、70GPa以上、72GPa以上、73GPa以上、74GPa以上、75GPa以上、76GPa以上、78GPa以上、80GPa以上、82GPa以上、84GPa以上、86GPa以上、88GPa以上、又は90GPa以上であってよい。ガラス物品のヤング率は、65GPa以上かつ100GPa以下、70GPa以上かつ100GPa、又は72GPa以上かつ85GPa以下であってよい。
【0176】
実施形態では、ガラス組成物の200ポアズ(200P)温度は1500℃未満であり、これにより、ガラスを多用な加工施設で溶融させることができる。例えばガラス組成物の200P温度は、1500℃以下、又は1450℃以下であってよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物の200P温度は、1000℃以上かつ1500℃以下、1050℃以上かつ1500℃以下、1100℃以上かつ1500℃以下、1150℃以上かつ1500℃以下、1200℃以上かつ1500℃以下、1250℃以上かつ1500℃以下、1300℃以上かつ1500℃以下、1000℃以上かつ1450℃以下、1050℃以上かつ1450℃以下、1100℃以上かつ1450℃以下、1150℃以上かつ1450℃以下、1200℃以上かつ1450℃以下、1250℃以上かつ1450℃以下、又は1300℃以上かつ1450℃以下である。
【実施例
【0177】
以下の実施例は、本明細書に記載の実施形態の1つ以上の特徴を例示する。
【0178】
実施例1
アルカリ/アルカリ土類亜鉛ボロアルミノシリケートガラスのベースガラス組成物、及びアルカリ/アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスのベースガラス組成物を、そのCTE(20℃~260℃の範囲にわたって85~95×10-7/℃)、ヤング率(65GPa超)、及び溶融の容易さ(1500℃未満の200ポアズ温度)に基づいて選択した。各ベースガラス組成物をわずかに変化させて、改質済みガラス組成物を製造した。ガラス組成物を、蓋付きPtるつぼ内で、1450℃~1475℃の温度で溶融させ、パティ状に注ぎ、冷却してガラス物品を形成した。アルカリ/アルカリ土類亜鉛ボロアルミノシリケートガラス物品を荒く粉砕して2度目の溶融に供し、ガラスの良好な均質性を保証した。次に全てのガラス物品を特性決定した。特に、X線蛍光(X‐ray fluorescence :XRF)を用いて化学組成を特性決定し、膨張率測定によって熱膨張係数(CTE)を測定し、また共振超音波分光分析(resonant ultrasound spectroscopy:RUS)を用いてヤング率を測定した。例えば、1つ以上の測定は、ASTM E228及び/又はASTM C623及び/又はASTM C1198‐09(2013)に従って実施してよい。
【0179】
表2及び3は、アルカリ/アルカリ土類亜鉛ボロアルミノシリケートガラス組成物に関する、組成、測定されたCTE、及び測定されたヤング率を示し、表3は、アルカリ/アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物に関する、組成及び測定されたCTEを示す。表2及び3で提供されている組成物に関して、組成物1(「Comp.1」)はベースガラス組成物として機能した。なお、78~100×10-7/℃のCTE範囲は、NaOをMgOで置換することによって、又はMgOをNaOで置換することによって得られた。従って、表2及び3で提供されているデータは、陽イオン電場強度の調整によってCTEを制御できることを実証している。
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
表2及び3で提供されている各ガラス組成物に関して、測定されたヤング率値は69GPaを超えたが、各ガラス組成物に関する予測200ポアズ温度は1450℃未満であった。
【0183】
【表4】
【0184】
表4に示されているアルカリ/アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物に関して、CTE値は85~96×10-7/℃の範囲で示されているが、組成物は78~100×10-7/℃の範囲全体を包含するように選択してもよい。開始ガラス組成物(Comp.20)中に存在するMgOの量が、Comp.1のMgOの量に比べて少ないため、上記範囲全体にわたるCTEを達成するために、MgO及びCaOの両方をNaOで置換する必要があった。
【0185】
表2~4で提供されている組成物及び特性データを組み合わせ、標準線形回帰分析を用いて、CTE及びヤング率両方の予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表5で提供されている。
【0186】
【表5】
【0187】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表2~4で提供されている。全ての場合において、CTEに関する予測値は1.0×10-7/℃以内であり、ヤング率に関する予測値は1.0GPa以内であった。測定値と予測値との間の一致は、図4及び5に示されている。具体的には、図4は、表2及び3からのガラスに関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図5は、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図4及び5両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された78~100×10-7/℃のCTE範囲にわたって、CTE及びヤング率の両方に関する高い予測能力を有している。
【0188】
目標CTEを有するガラスの製造のための、上記モデルの有用性を確認するために、NaO及びMgOの量を変化させた、1週間のトライアルを実施した。他の酸化物成分の微量の変動は、バッチ形成中の原材料の損失又は溶融中の選択的な揮発による損失による、特定の成分の過剰補償の必要等の問題に関連する。組成物及び予測CTEは表6で報告されている。各ガラス組成物に関して、表4で提供されている回帰係数に基づき、予測CTEは20℃~260℃にわたって84~93×10-7/℃の範囲であり、予測ヤング率は65GPa超であった。
【0189】
【表6】
【0190】
実施例2
別のベースガラス組成物を、そのCTE(20℃~260℃の範囲にわたって40~70×10-7/℃)、ヤング率(72GPa超)、及び溶融の容易さ(1500℃未満の200ポアズ温度)に基づいて選択した。ガラス組成物は、上述のようにして調製した。表7及び8は、上記ガラス組成物に関する、組成、測定されたCTE、及び測定されたヤング率を示す。
【0191】
【表7】
【0192】
【表8】
【0193】
標準線形回帰分析を用いて、表7~8で提供されている組成物及び特性データに基づいて、CTE及びヤング率の両方の予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表9で提供されている。
【0194】
【表9】
【0195】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表8で提供されている。全ての場合において、CTEに関する予測値は1.6×10-7/℃以内であり、ここで1つを除く全ての予測値は1.0×10-7/℃以内であり、またヤング率に関する予測値は1.0GPa以内であった。測定値と予測値との間の一致は、図6及び7に示されている。具体的には、図6は、表7からのガラスに関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図7は、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図6及び7両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された40~70×10-7/℃のCTE範囲にわたって、CTE及びヤング率の両方に関する高い予測能力を有している。
【0196】
表9に記載のモデルを用いて、追加の様々なガラス組成物に関してCTE及びヤング率を予測した。特に、以下のComp.80をベースガラス組成物として使用して、様々な追加のガラス組成物を生成した。組成物は表10で提供されており、様々な特性の予測値が表11で提供されている。
【0197】
【表10】
【0198】
【表11】
【0199】
表11に示すように、各ガラス組成物は、40×10-7/℃~60×10-7/℃のCTE、72GPa超のヤング率、及び1500℃未満の200ポアズ温度を有すると予測される。
【0200】
このコンセプトを多様なガラスに対して、多様なCTEを達成するために使用できることを更に確認するために、異なる複数の開始ガラス組成物を研究した。60×10-7/℃未満の範囲のCTEを包含するために2つのモデル化されたガラス組成物を選択し、表8で提供されている線形回帰モデルを用いてCTEをモデル化した。結果は以下の表12で提供されている。
【0201】
【表12】
【0202】
モデル化されたデータに基づき、異なるベースガラス組成物を開始材料とし、組成を調整することによって、CTEを40~60×10-7/℃の範囲内で微調整できる。各組成物は、上記目標範囲内のCTE、72GPa超のヤング率、及び1500℃未満の200ポアズ温度を有していたが、これは、これらのガラスが、ベースガラス組成物と同一又は同様の条件下において、加工に適したままとなることを示している。
【0203】
表9に記載のモデルを用いて、異なるベースガラス組成物から改質されたガラス組成物に関するCTE及びヤング率を予測した。特に以下のComp.110を改質して、様々な追加のガラス組成物を生成した。組成物は表13で提供されており、様々な特性の予測値が表14で提供されている。
【0204】
【表13】
【0205】
【表14】
【0206】
表14に示されているように、各ガラス組成物は、40×10-7/℃~60×10-7/℃のCTE、90GPa超のヤング率、及び1500℃未満の200ポアズ温度を有すると予測される。
【0207】
実施例3
より高いCTEを達成するために、LiOを含むガラス組成物を研究した。特に以下のComp.123を改質して、90×10-7/℃~130×10-7/℃のCTEを有するガラス組成物を生成した。組成物は表15で提供されており、様々な特性の予測値が表16で提供されている。
【0208】
【表15】
【0209】
【表16】
【0210】
標準線形回帰分析を用いて、表15で提供されている組成物及び特性データ、並びに対応する測定された特性に基づいて、CTE及びヤング率の両方の予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表17で提供されている。
【0211】
【表17】
【0212】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表16で提供されている。表16に示されているように、各ガラス組成物は、90×10-7/℃~130×10-7/℃のCTE、72GPa超のヤング率、及び1500℃未満の200ポアズ温度を有すると予測される。測定値と予測値との間の一致は、図8及び9に示されている。具体的には、図8は、表16からのガラスに関する、予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図9は、予測ヤング率(X軸;GPa)の関数としての、測定されたヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図8及び9両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された90~130×10-7/℃のCTE範囲にわたって、CTE及びヤング率の両方に関する高い予測能力を有している。
【0213】
より広い温度範囲にわたってCTEを調整する能力を調査するために、追加の組成物に対する研究を行った。特に、以前の実験では、20℃~260℃の範囲にわたるCTEが観察された。20℃~300℃及び20℃~390℃にわたって測定された90×10-7/℃~150×10-7/℃の範囲のCTEを有する追加のガラス組成物が、表18で提供されており、様々な範囲にわたるCTEの予測値が表19で提供されている。
【0214】
【表18】
【0215】
【表19】
【0216】
標準線形回帰分析を用いて、表18で提供されている組成物及び特性データ、並びに対応する測定された特性に基づいて、20℃~300℃、及び20℃~390℃にわたるCTEの予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表20で提供されている。
【0217】
【表20】
【0218】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表19で提供されている。表19に示されているように、各ガラス組成物は、90×10-7/℃~150×10-7/℃のCTEを有すると予測される。測定値と予測値との間の一致は、図10及び11に示されている。具体的には、図10は、表18からのガラスに関する、20℃~300℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図11は、表18からのガラスに関する、20℃~390℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図10及び11両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~300℃及び20℃~390℃で測定された90~150×10-7/℃のCTEに関する高い予測能力を有している。
【0219】
実施例4
より広い温度範囲にわたってCTEを調整する能力を調査するために、追加の組成物に対する研究を行った。特に、以前の実験では、20℃~260℃の範囲にわたるCTEが観察された。20℃~300℃及び20℃~390℃にわたって測定された40×10-7/℃~70×10-7/℃の範囲のCTEを有する追加のガラス組成物が、表21で提供されており、予測CTE値が表22で提供されている。
【0220】
【表21】
【0221】
【表22】
【0222】
標準線形回帰分析を用いて、表21で提供されている組成物及び特性データ、並びに対応する測定された特性に基づいて、20℃~300℃、及び20℃~390℃にわたるCTEの予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表23で提供されている。
【0223】
【表23】
【0224】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表22で提供されている。表22に示されているように、各ガラス組成物は、40×10-7/℃~70×10-7/℃のCTEを有すると予測される。測定値と予測値との間の一致は、図12及び13に示されている。具体的には、図12は、表21からのガラスに関する、20℃~300℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図13は、表21からのガラスに関する、20℃~390℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図12及び13両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~300℃及び20℃~390℃で測定された40~70×10-7/℃のCTEに関する高い予測能力を有している。
【0225】
20℃~300℃及び20℃~390℃にわたって測定された80×10-7/℃~100×10-7/℃の範囲のCTEを有する追加のガラス組成物が、表24で提供されており、予測CTE値が表25で提供されている。
【0226】
【表24】
【0227】
【表25】
【0228】
標準線形回帰分析を用いて、表24で提供されている組成物及び特性データ、並びに対応する測定された特性に基づいて、20℃~300℃、及び20℃~390℃にわたるCTEの予測モデルを構築した。得られた回帰係数は表26で提供されている。
【0229】
【表26】
【0230】
これらの線形回帰モデルからの予測結果は、上の表25で提供されている。表25に示されているように、各ガラス組成物は、80×10-7/℃~100×10-7/℃のCTEを有すると予測される。測定値と予測値との間の一致は、図14及び15に示されている。具体的には、図14は、表23からのガラスに関する、20℃~300℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図15は、表23からのガラスに関する、20℃~390℃にわたる予測CTE(X軸;値×10-7/℃)の関数としての、測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図14及び15両方のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~300℃及び20℃~390℃で測定された80~100×10-7/℃のCTEに関する高い予測能力を有している。
【0231】
実施例5
上述の方法の製造の実施中に、ガラスの粘度は、使用される成形プロセスの助けとならないことが発見された。図1を参照すると、この成形プロセスは、ガラスを下降管9から成形用容器10へと流してブールを形成するステップを伴う。ガラスの粘度曲線が急峻であることにより、成形用容器10を完全に充填しないブール形状がもたらされた。ガラスは下降管9の直下の中央部に蓄積され、成形用容器10の縁部へと流れなかった。所定の時間量にわたって成形用容器10を充填した後、成形用容器10を下降管9から離れるように移動させ、プレスを用いて、ガラスを鋳型の縁部に向かって外向きに移動させた。ガラス粘度が高すぎる場合、プレスによって、成形用容器10を適切に充填するために十分な程度にガラスを移動させることができず、ブールについて望ましい寸法を有しないブールがもたらされた。許容できないブールは、丸みを帯びた縁部、及び全体にわたって不均一な厚さを有し、一方で適切に作製されたブールは、直線状の縁部を有し、全体にわたって均一な厚さを維持する。この問題を修正するために、粘度曲線の急峻さを低減することによって、ガラスが成形用容器10の充填中に更に多量に流れ、また後続のプレス中に、外向きに移動して成形用容器10全体を充填するために十分な流動性を保持するようにしてよい。
【0232】
フッ素をガラスに添加すると、融点及び成形温度の両方において、ガラスの粘度が低下するが、フッ素は温度が低いほど大きな影響を有する。従ってフッ素は、融点よりも成形温度において、ガラスを大きく軟化させ、より緩やかな粘度曲線をもたらす。様々なCTE値の複数のガラスを(AlFの形態の)フッ素と共に溶融させ、特性を測定した。表27は、フッ素と共に溶融させた組成物を、粘度、熱膨張係数(CTE)、及び弾性率を含むデータと共に示す。フッ素を含まない同一の組成物に関する、測定されたCTE及び弾性率も、これらの表に含まれている。更に、1200℃の液相線温度が、液相がCa/Na固溶体長石である組成物193に関して測定された。
【0233】
【表27】
【0234】
図16は、フッ素を用いずに作製された同じガラスのCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する、フッ素を含有するいくつかのガラスの測定されたCTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図16、及び特に約1.0の傾向線勾配において示されているように、最高で約1.3重量%のフッ素の添加は、ガラスの測定されたCTEに有意な影響を及ぼさない。エラーバーのサイズから、フッ素を含むガラスのCTEとフッ素を含まないガラスのCTEとの間の差は、測定システムの精度の範囲内であると結論づけることができる。
【0235】
図17は、フッ素を用いずに作製された同じガラスの測定された弾性率(X軸;GPaを単位とする値)に対する、フッ素を含有するいくつかのガラスの測定された弾性率(Y軸;GPaを単位とする値)のプロットである。図17、及び特に約1.0の傾向線勾配において示されているように、最高で約1.3重量%のフッ素の添加は、ガラスの測定された弾性率に有意な影響を及ぼさない。エラーバーのサイズから、フッ素を含むガラスの弾性率とフッ素を含まないガラスの弾性率との間の差は、測定システムの精度の範囲内であると結論づけることができる。
【0236】
図18は、1.3重量%のフッ素を含む同じガラス組成物、及び標準製造ガラスQEと比較した、2つのフッ素非含有製造ガラスHS5.1及びHS5.9に関する温度(X軸;℃を単位とする値)に対する対数粘度(Y軸;ポアズを単位とする値)のプロットである。図18で確認できるように、フッ素をHS5.1及びHS5.9ガラスに添加すると、ガラスの高温粘度が低下し、またフッ素を含まないガラスの粘度曲線に比べて粘度曲線が緩やかになる。標準製造ガラスQEは、最も緩やかな粘度曲線勾配を呈するため、試験した系のうち最も加工しやすいものである。しかしながら、フッ素を含むガラスの挙動の、観察された差異は、ブールの製造を可能とするために十分なものである。この粘度変化は、製造用溶融物でブールを形成するステップを支援することが示された。
【0237】
図19は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図19のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された50~59×10-7/℃のCTEに関して、高い予測能力を有している。
【0238】
図20は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図20のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された49~62×10-7/℃のCTEに関して、高い予測能力を有している。
【0239】
図21は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図21のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された70~80×10-7/℃のCTEに関して、高い予測能力を有している。
【0240】
図22は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたCTE(X軸;値×10-7/℃)に対する予測CTE(Y軸;値×10-7/℃)のプロットである。図22のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された68~80×10-7/℃のCTEに関して、高い予測能力を有している。
【0241】
図23は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図23のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された50~59×10-7/℃のCTEを有する材料のヤング率に関して、高い予測能力を有している。
【0242】
図24は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図24のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された49~62×10-7/℃のCTEを有する材料のヤング率に関して、高い予測能力を有している。
【0243】
図25は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する予測ヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図25のR値から確認できるように、このモデルは、20℃~260℃で測定された70~80×10-7/℃のCTEを有する材料のヤング率に関して、高い予測能力を有している。
【0244】
図26及び27は、例示的なフッ素含有ガラス組成物に関する、測定されたヤング率(X軸;GPa)に対する、別のモデルを用いた予想ヤング率(Y軸;GPa)のプロットである。図26及び27のR値から確認できるように、これらのモデルは、20℃~260℃で測定された70~80×10-7/℃のCTEを有する材料のヤング率に関して、有意な予測能力を有していない。いずれの特定の理論によって束縛されることを意図したものではないが、これらの相関は、この範囲のガラス組成物についてCTE及びヤング率のデータの量が限られているため、不十分であったと考えられる。
【0245】
本明細書に記載の実施形態は、半導体デバイス、ディスプレイデバイス、センサ等といった電子デバイスで使用できる、調整可能なCTE及び他の特性を有するガラス物品の製造方法を含む。いくつかの実施形態では、上記方法は:第1のガラス組成物を溶融器中で溶融させるステップ;及び第2のガラス組成物を上記溶融器に供給するステップを含む。この第2のガラス組成物は同一のガラス構成成分の組み合わせを有するが、少なくとも1つのガラス構成成分の濃度が、上記第1のガラス組成物中の同じ成分の濃度とは異なる。上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、以下を含むガラス物品を上記溶融器からドロー加工してよい:(1)上記第1のガラス組成物から形成された第1のガラス物品;(2)上記第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物のいずれからなるものでもなく、また上記第2のガラス組成物の供給と同時に、又は何らかの異なる時点においてドロー加工してよい、少なくとも1つの中間ガラス物品;並びに(3)上記第1のガラス組成物とは異なり、かつ上記第2のガラス組成物とは同一であっても異なっていてもよい組成物からなる、最終ガラス物品。上記少なくとも1つの中間ガラス物品中の上記少なくとも1つの成分の上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つの成分の濃度との間となり得る。上記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有してよい。上記最終ガラス物品は、同じ特性のセットに関して、上記第1の値のセットとは異なる第2の値のセットを有してよい。上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記特性のセットに関して、上記第1の値のセットと上記第2の値のセットとの間の、中間の値のセットを有してよい。同じ又は異なる実施形態において、上記方法は、上記溶融ベースガラス組成物中の、第1の陽イオン電場強度を有する、ある量の第1のアルカリ土類成分又は第1のアルカリ成分を、上記第1の陽イオン電場強度とは異なる第2の陽イオン電場強度を有する、ある量の第2のアルカリ土類成分又は第2のアルカリ成分で置換するステップを含み、これにより、ベースガラス組成物をわずかに調整することによって、様々なCTEを有するガラス組成物を得ることができる。更に有利には、様々な実施形態は、線形モデル化に基づいて予測できる望ましいヤング率及び200ポアズ温度を有するガラス組成物を提供する。
【0246】
特許請求の範囲に記載の主題は、本文書で説明又は図示されたいずれの実施形態、特徴、又は特徴の組み合わせと同一の広がりを有さず、また同一の広がりを有すると解釈してはならない。これは、該特徴又は特徴の組み合わせの単一の実施形態のみが本文書で図示及び説明されている場合にさえ、当てはまる。
【0247】
請求対象の主題の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を実施できることは、当業者には明らかであろう。従って請求対象の主題は、添付の請求項及びその均等物以外に照らして制限されることはない。
【0248】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0249】
実施形態1
第1のガラス組成物を溶融器中で溶融させるステップであって、上記第1のガラス組成物は複数のガラス構成成分の組み合わせを含む、ステップ;
上記第1のガラス組成物と同一のガラス構成成分の組み合わせを有する第2のガラス組成物を上記溶融器に供給するステップであって、上記第2のガラス組成物の少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、上記第1のガラス組成物の上記成分の濃度とは異なる、ステップ;
上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも3つのガラス物品を上記溶融器からドロー加工するステップであって、上記少なくとも3つのガラス物品は:
上記第1のガラス組成物で構成される、第1のガラス物品;
上記第1のガラス組成物及び第2のガラス組成物のいずれでもないガラス組成物で構成される、少なくとも1つの中間ガラス物品;並びに
上記第1のガラス組成物とは異なるガラス組成物で構成される、最終ガラス物品
を含む、ステップ
を含む、方法であって:
上記少なくとも1つの中間ガラス物品中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度との間であり;
上記第1のガラス物品は、ある特性のセットに関して第1の値のセットを有し、上記最終ガラス物品は、上記特性のセットに関して、上記第1の値のセットとは異なる第2の値のセットを有し、上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記特性のセットに関して、上記第1の値のセットと上記第2の値のセットとの間の、中間の値のセットを有する、方法。
【0250】
実施形態2
上記最終ガラス物品は上記第2のガラス組成物を含む、実施形態1に記載の方法。
【0251】
実施形態3
上記第2のガラス組成物の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度は、上記第1のガラス組成物の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、2重量%以下だけ異なる、実施形態1又は2に記載の方法。
【0252】
実施形態4
上記少なくとも1つのガラス構成成分は、SiO、Al、B、NaO、MgO、CaO、AlF、及びSbから選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
実施形態5
上記少なくとも1つのガラス構成成分はAlFを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
実施形態6
上記第1のガラス組成物は、0.5重量%以上かつ1.5重量%以下のAlFを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0255】
実施形態7
上記特性のセットは、熱膨張係数(「CTE」)、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度のうちの1つ以上を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0256】
実施形態8
上記第1のガラス物品のCTEは、上記最終ガラス物品のCTEと等しいか、又は±7.5×10-7/℃以下だけ異なる、実施形態7に記載の方法。
【0257】
実施形態9
上記第1のガラス物品の屈折率は、上記最終ガラス物品の屈折率と±0.01以下だけ異なる、実施形態7又は8に記載の方法。
【0258】
実施形態10
上記第1のガラス物品のCTEの百分率としての、上記少なくとも1つの中間ガラス物品のCTEと上記第1のガラス物品のCTEとの間の差は、上記第1のガラス物品のヤング率の百分率としての、少なくとも1つの上記中間ガラス物品のヤング率と上記第1のガラス物品のヤング率との間の差よりも大きい、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0259】
実施形態11
上記溶融器内の上記組成物の粘度は、上記少なくとも3つのガラス物品をドロー加工する上記ステップ中に、25ポアズ以下だけ変動する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0260】
実施形態12
上記溶融器内の上記ガラス混合物の200ポアズ温度は1500℃以下である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0261】
実施形態13
上記少なくとも3つのガラス物品はブール形状である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
実施形態14
上記第2のガラス組成物を供給する上記ステップは、上記少なくとも3つのガラス物品をドロー加工する上記ステップと同時である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0263】
実施形態15
上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも3つのガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
実施形態16
上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも8つのガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
実施形態17
上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも18個のガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と、上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
実施形態18
上記少なくとも1つの中間ガラス物品は、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度がそれぞれ異なる少なくとも28個のガラス物品を含み、上記濃度は、上記第1のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度と上記第2のガラス組成物中の上記少なくとも1つのガラス構成成分の上記濃度との間である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0267】
実施形態19
上記第1のガラス組成物及び上記第2のガラス組成物と同一のガラス構成成分の組み合わせを有する第3のガラス組成物を、上記溶融器に供給するステップであって、上記少なくとも1つのガラス構成成分の濃度は、上記第1のガラス組成物及び上記第2のガラス組成物の上記成分の濃度とは異なる、ステップ;並びに
上記溶融器の内容物を溶融状態に維持したまま、少なくとも1つの追加の第1のガラス物品と、追加の最終ガラス物品とを、上記溶融器からドロー加工するステップであって、上記追加の第1のガラス物品は、上記特性のセットに関して追加の第1の値のセットを有し、上記追加の最終ガラス物品は、上記特性のセットに関して追加の最終的な値のセットを有する、ステップ
を更に含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
実施形態20
上記特性のセットは、熱膨張係数(「CTE」)、ヤング率、密度、200ポアズ温度、表面品質、屈折率、抵抗率、及び縁部強度のうちの1つ以上を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0269】
実施形態21
上記第1のガラス物品のCTEは、上記追加の最終ガラス物品のCTEと等しいか、又は±15×10-7/℃以下だけ異なる、実施形態20に記載の方法。
【0270】
実施形態22
上記第1のガラス物品のCTEの百分率としての、上記追加の第1のガラス物品のCTEと上記第1のガラス物品のCTEとの間の差は、上記第1のガラス物品のヤング率の百分率としての、上記追加の第1のガラス物品のヤング率と上記第1のガラス物品のヤング率との間の差よりも大きい、実施形態20又は21に記載の方法。
【0271】
実施形態23
上記溶融器内の上記組成物の粘度は、上記第1のガラス物品をドロー加工する上記ステップ及び上記追加の最終ガラス物品をドロー加工する上記ステップ中に、25ポアズ以下だけ変動する、実施形態19~22のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
実施形態24
上記溶融器内の上記ガラス混合物の200ポアズ温度は1500℃以下である、実施形態19~23のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
実施形態25
上記第1のガラス組成物はアルカリボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
実施形態26
上記第1のガラス組成物はアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0275】
実施形態27
上記第1のガラス組成物は亜鉛ボロアルミノシリケートガラス組成物を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0276】
実施形態28
上記第1のガラス組成物は:
60重量%以上かつ65重量%以下のSiO
1.5重量%以上かつ5.0重量%以下のAl
0重量%以上かつ2重量%以下のB
6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ10重量%以下のKO;
2重量%以上かつ10重量%以下のMgO;
0重量%以上かつ2重量%以下のCaO;
0重量%以上かつ2重量%以下のTiO;及び
10重量%以上かつ15重量%以下のZnO
を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0277】
実施形態29
上記第1のガラス組成物は:
60重量%以上かつ65重量%以下のSiO
10重量%以上かつ15重量%以下のAl
2重量%以上かつ4重量%以下のB
2重量%以上かつ5重量%以下のLiO;
6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;
1重量%以上かつ3重量%以下のMgO;及び
0重量%以上かつ3重量%以下のCaO
を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
実施形態30
上記第1のガラス組成物は:
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
20重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;及び
7重量%以上かつ9重量%以下のCaO
を含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0279】
実施形態31
上記第1のガラス組成物は:
56重量%以上かつ66重量%以下のSiO
9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl
3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO;
6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ14重量%以下のKO;
0重量%以上かつ2重量%以下のMgO;及び
0重量%以上かつ8重量%以下のCaO
を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0280】
実施形態32
上記第1のガラス組成物は:
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
22重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ8重量%以下のMgO;及び
7重量%以上かつ12重量%以下のCaO
を含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0281】
実施形態33
上記第1のガラス組成物は:
35重量%以上かつ48重量%以下のSiO
17重量%以上かつ20重量%以下のAl
0重量%以上かつ5重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ7重量%以下のKO;
0重量%以上かつ4重量%以下のMgO;
0重量%以上かつ8.5重量%以下のCaO;及び
25重量%以上かつ32重量%以下のLa
を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0282】
実施形態34
上記第1のガラス組成物は:
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
20重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;
7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;
0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び
0重量%超かつ1.5重量%以下のAlF
を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0283】
実施形態35
上記第1のガラス組成物は:
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
20重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;
7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;
0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び
0.5重量%超かつ1.5重量%以下のAlF
を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
実施形態36
56重量%以上かつ66重量%以下のSiO
9.5重量%以上かつ12.0重量%以下のAl
3.0重量%以上かつ7.5重量%以下のLiO;
6重量%以上かつ18重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ14重量%以下のKO;
0重量%以上かつ2重量%以下のMgO;及び
0重量%以上かつ8重量%以下のCaO
を含むガラス組成物から形成された、ガラス物品。
【0285】
実施形態37
45重量%以上かつ55重量%以下のSiO
20重量%以上かつ27重量%以下のAl
8重量%以上かつ10重量%以下のB
0重量%以上かつ8重量%以下のNaO;
0重量%以上かつ6重量%以下のMgO;
7重量%以上かつ9重量%以下のCaO;
0重量%以上かつ0.7重量%以下のSb;及び
0重量%超かつ1.5重量%以下のAlF
を含むガラス組成物から形成された、ガラス物品。
【0286】
実施形態38
実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法によって形成された、ガラス物品。
【符号の説明】
【0287】
1 溶融用容器
2 矢印
3 清澄用容器
4 混合用容器
5、7 接続チューブ
6 溶融ガラス
8 送達用容器
9 下降管
10 成形用容器
100 ガラス製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図26
図27