(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】固定給電アンテナを備えたフェーズドアンテナアレイシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/36 20060101AFI20241031BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20241031BHJP
H01Q 3/46 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01Q3/36
H01Q13/02
H01Q3/46
(21)【出願番号】P 2021518173
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(86)【国際出願番号】 FI2019050660
(87)【国際公開番号】W WO2020070375
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-06-27
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】ユーコ アウリンサーロ
(72)【発明者】
【氏名】アンティ ラミネン
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06995726(US,B1)
【文献】特開2018-093397(JP,A)
【文献】特表2006-518968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0030420(US,A1)
【文献】特表2004-506397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/36
H01Q 13/02
H01Q 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定給電アンテナを備えた送信アンテナアレイシステム用のアンテナアレイであって、
前記固定給電アンテナから第1の信号を受信するための内部放射面と、
前記アンテナアレイから第2の信号を放射するための外部放射面と、
前記内部放射面と前記外部放射面との間に配置された高周波の構成要素における電気的接続のためのプラットフォームと、
を備え、
前記プラットフォームは、前記内部放射面および前記外部放射面を動作可能に接続するための移相器を有し、
前記アンテナアレイは、
それぞれのユニットセルが、前記アンテナアレイの前記内部放射面上の第1のアンテナ要素および前記アンテナアレイの前記外部放射面上の第2のアンテナ要素を含む少なくとも2個のユニットセルと、
前記少なくとも2個のユニットセルと接続するように配置され、且つ、前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素との間
に配置され、それぞれのユニットセルに対する移相器を含むプラットフォームと、
をさらに備え
、
前記アンテナアレイのサイズは、m列n行であり、
前記アンテナアレイは、
m×n個のユニットセルと、
高周波の構成要素における電気的接続のためのm個のプラットフォームと、
をさらに備え、
それぞれのプラットフォームは、n個の移相器を含み、且つ、
それぞれのプラットフォームは、それぞれの列の前記n個のユニットセルと接続するように配置される、又は、それぞれの行の前記m個のユニットセルと接続するように配置され、
前記m個のプラットフォームは、
前記m個のプラットフォームにおける隣接する2個のプラットフォーム間の距離が、前記アンテナアレイの波長の少なくとも半分となるように配置され、
前記m個のプラットフォームにおける隣接する2個のプラットフォーム間のギャップを埋めるための吸収材をさらに備える、
ことを特徴とするアンテナアレイ。
【請求項2】
前記アンテナ要素は、概ね誘電体材料で満たされた導波管アンテナ要素である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアレイ。
【請求項3】
それぞれの移相器の第1の端部に接続された第1のエンドファイアラジエータと、
それぞれの移相器の第2の端部に接続された第2のエンドファイアラジエータと、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項
1に記載のアンテナアレイ。
【請求項4】
前記プラットフォームは、
前記内部放射面および前記外部放射面から等距離にあるユニットセルの列又は行において、およそ中央に配置される、
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項5】
前記プラットフォームは、
前記アンテナアレイの一端から前記アンテナアレイの他端まで伸びる、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項6】
前記移相器は、
モノリシックマイクロ波集積回路のようなベクトル変調器型の移相器である、
ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項7】
送信および/又は受信増幅器は、
前記モノリシックマイクロ波集積回路に統合される、
ことを特徴とする請求項
6に記載のアンテナアレイ。
【請求項8】
前記プラットフォームは、
前記アンテナアレイの内部放射面および外部放射面の開口部に対して垂直に配置される、
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項9】
前記プラットフォームに接続された、バイアス電圧および制御信号用の少なくとも1個のコネクタをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項10】
前記プラットフォームは、
前記内部放射面を介して、前記固定給電アンテナから前記第1の信号を受信し、前記受信した第1の信号を、第1の伝送線路を介して、前記移相器に転送するように配置され、
前記移相器は、
位相をずらし、前記第2の信号を生成するために、前記受信した第1の信号の振幅を、調整するように配置され、且つ、前記第2の信号を、第2の伝送線路を介して前記外部放射面に転送するように配置される、
ことを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【請求項11】
前記プラットフォームは、
プリント回路基板、低温同時焼成セラミック、薄膜基板、オンチップアンテナ技術、又は、アルミナで構成される、
ことを特徴とする請求項1から
10のいずれか一項に記載のアンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線通信システム、ならびに、送信および/又は受信のための複数のアンテナの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナアレイは、電波を送信又は受信するための複数のアンテナを含む。アンテナアレイにおいて、複数のアンテナは、その複数のアンテナが、基本的に、同時に1個の送信機又は受信機として機能し、連携して使用されるように、接続および配置される。一般に、アンテナアレイは、単一のアンテナで送信又は受信する場合と比較して、より狭い電波ビームを利用することにより、より高いゲインを獲得するために使用され得る。アンテナアレイは、例えば、異なる特性を有する2個以上の無線通信チャネルを利用することにより信頼性を改善するため、そして、特定の方向から来る干渉を軽減するためにも、使用され得る。
【0003】
無線通信の分野において、ビーム形成とは、一般に、アンテナアレイを使用して、無線信号の送信又は受信を指示することを指す。送信又は受信の方向は、それぞれのアンテナにおける信号の位相および振幅を変更し、単一のデータ信号における送信又は受信のパフォーマンスを向上させることにすることにより制御され得る。
【0004】
ミリ波の利用は、追加の周波数スペクトルの使用を可能にするので、無線通信システムのパフォーマンスを改善するために考慮される1個の側面である。より高い周波数を使用すると、より多くのアンテナを含むアンテナアレイの構築も可能になり、達成可能なゲインを向上させるために使用できる。達成可能なゲインは、少なくとも部分的には、使用されるアンテナアレイに依存する。いくつかの用途においては、広いビームステアリング角範囲を有することも望ましい。したがって、高ゲインおよび大きなビームステアリング角を可能にするアンテナシステム用のモジュールが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様によれば、独立請求項の主題が提供される。いくつかの実施形態は、従属請求項に定義される。
【0006】
本発明の一態様によれば、固定給電アンテナを備える送信アンテナアレイシステム用のアンテナアレイであり、アンテナアレイは、固定給電アンテナから第1の信号を受信するための内部放射面、前記アンテナアレイから第2の信号を放射するための外部放射面、および前記内部放射面と前記外部放射面との間に配置された高周波の構成要素における電気的接続のためのプラットフォームを含む。前記プラットフォームは、前記内部放射面および前記外部放射面を動作可能に接続するための移相器を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記アンテナアレイは、少なくとも2個のユニットセルを含み得る。それぞれのユニットセルは、前記アンテナアレイの内部放射面上に第1のアンテナ要素を、前記アンテナアレイの外部放射面上に第2のアンテナ要素を含み得る。そして、前記プラットフォームは、前記少なくとも2個のユニットセルと接続するように配置され、且つ、前記第1のアンテナ要素と前記第2のアンテナ要素との間に配置され得る。前記プラットフォームは、それぞれのユニットセルに対する移相器を含む。さらに、いくつかの実施形態では、前記アンテナ要素は、概ね誘電体材料で満たされた導波管アンテナ要素であり得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記アンテナアレイのサイズは、m列およびn行であり、mは、nに等しくあり得る。前記アンテナアレイは、m×n個のユニットセルと、高周波の構成要素における電気的接続のためのm個のプラットフォームと、をさらに含む。それぞれのプラットフォームは、n個の移相器を含んでいてもよい。そして、それぞれのプラットフォームは、それぞれの列の前記n個のユニットセルと接続するように配置され得る。又は、それぞれのプラットフォームは、それぞれの行の前記m個のユニットセルと接続するように配置され得る。さらに、いくつかの実施形態では、前記m個のプラットフォームは、前記m個のプラットフォームにおける隣接する2個のプラットフォーム間の距離が、前記アンテナアレイの波長の少なくとも半分となるように配置され得る。いくつかの実施形態では、前記アンテナアレイは、m個のプラットフォームにおける隣接する2個のプラットフォーム間のギャップを埋めるための吸収材を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエンドファイアラジエータは、それぞれの移相器の第1の端部に接続され得る。そして、第2のエンドファイアラジエータは、それぞれの移相器の第2の端部に接続され得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記プラットフォームは、前記内部放射面および前記外部放射面から等距離にあるユニットセルの列又は行において、およそ中央に配置され得る。あるいは、又は、さらに、いくつかの実施形態では、前記プラットフォームは、前記アンテナアレイの一端から前記アンテナアレイの他端まで伸び得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記移相器は、モノリシックマイクロ波集積回路のようなベクトル変調器型の移相器であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、送信および/又は受信増幅器は、前記モノリシックマイクロ波集積回路に統合され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記プラットフォームは、前記アンテナアレイの内部放射面および外部放射面の開口部に対して垂直に配置され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記アンテナアレイは、前記プラットフォームに接続された、バイアス電圧および制御信号用の少なくとも1個のコネクタを、さらに含み得る。あるいは、又は、さらに、いくつかの実施形態では、前記プラットフォームは、前記内部放射面を介して、前記固定給電アンテナから前記第1の信号を受信し、前記受信した第1の信号を、第1の伝送線路を介して、前記移相器に転送するように配置され得る。前記移相器は、位相をずらし、前記第2の信号を生成するために、前記受信した第1の信号の振幅を、調整するように配置され得る。そして、前記移相器は、前記第2の信号を、第2の伝送線路を介して前記外部放射面に転送するように配置され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記プラットフォームは、プリント回路基板、低温同時焼成セラミック、薄膜基板、オンチップアンテナ技術、又は、アルミナで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムにおける第1のアンテナアレイの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナアレイにおけるサブアレイの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナアレイにおける機械的構造モジュールの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、送信アレイの1個のユニットセルの一例を示す垂直断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナアレイにおけるモジュールの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る導波管からマイクロストリップへの遷移の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る2個のユニットセルの一例を示す上面図である。
【
図9】
図9は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムにおける第2のアンテナアレイの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る平面テーパスロットアンテナを使用するアンテナアレイの列の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
追加の周波数スペクトルの需要は絶えず増加しており、したがって、無線通信には、より高いミリ波周波数を使用することが望まれている。このような周波数は、例えば、5Gネットワークのコンテキストで、また、将来のセルラーネットワークでも考慮される。それにもかかわらず、本発明の実施形態は、セルラーネットワークに限定されず、アンテナアレイを使用する任意のシステムで利用することができる。ミリ波周波数は、無線アクセスおよびバックホール接続など、ワイヤレスデバイス間のあらゆる種類の伝送に使用できる。提案されたアンテナソリューションは、少なくとも、高ゲインおよび広いビームステアリング角範囲を必要とする軍事通信およびレーダーシステムにも適用できる。
【0016】
例えば、無線バックホール接続は、通常、必要な信号対雑音比を達成するために高ゲインアンテナを必要とする。一部のアプリケーションでは、30dBi~44dBiのアンテナゲインが必要になる場合がある。この要件に加えて、アンテナのビームステアリング角範囲は、可能な限り大きくする必要がある。例えば、メッシュバックホールネットワークなどの特定のアプリケーションでは、広いビームステアリング角(例えば、少なくとも±30度)が必要になる場合がある。
【0017】
いくつかの既存の解決策は、限定されたステアリング角範囲のために、高いゲインを提供することができても、広いビームステアリング角を提供することができないかもしれない。そして、アンテナビームの方向の微調整のみを可能にするだろう。一方、他のいくつかの既存の解決策は、アンテナの最大ゲインを制限する複雑なアンテナアレイ給電ネットワークにおける高いライン損失のために、広いビームステアリング角を提供できるが、高いゲインを提供できない場合がある。したがって、高ゲインおよび広いビームステアリング角の両方を提供できるアンテナシステムが必要である。
【0018】
本発明の実施形態は、新規の送信アンテナアレイの概念に関し、高ゲインおよび広いビームステアリング角範囲を可能にする。送信アレイは、例えば、ホーンアンテナなどのような固定ビームアンテナによって給電され得る。送信アレイは、2個の放射面(内部放射面および外部放射面)を含み得る。放射面は、エンドファイア型のラジエータを含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、開口した導波管が好ましい場合がある。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、例えば、ダイポール、八木およびビバルディなどのような他のエンドファイア要素が好ましい場合がある。
【0019】
アンテナアレイは、少なくとも1個のプリント回路基板を含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、アンテナアレイにおける内部放射面および外部放射面は、少なくとも1個のプリント回路基板によって互いに接続され得る。少なくとも1個のプリント回路基板は、2個の放射面に垂直に対して配置され得る。一般に、プリント回路基板の数は、プリント回路基板がアンテナアレイに垂直に設置されているか又は水平に設置されているかに応じて、アンテナアレイの列の数又はアンテナアレイの行の数と等しくなる。
【0020】
少なくとも1個のプリント回路基板は、高周波(RF)の構成要素における電気的接続のためのプラットフォームと呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のプリント回路基板は、内部放射面と外部放射面との間に配置され得る。少なくとも1個のプリント回路基板(すなわち、プラットフォーム)は、内部放射面および外部放射面から等距離にあるユニットセルの列又は行において、およそ中央に配置され得る。すなわち、少なくとも1個のプリント回路基板は、内部放射面から少なくとも1個のプリント回路基板までの距離が、外部放射面から少なくとも1個のプリント回路基板までの距離と同じになるように、アンテナアレイ内に配置され得る。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、1個のプリント回路基板は、アンテナアレイの列又は行のユニットセルに接続し得る。さらに、1個のプリント回路基板は、それぞれのユニットセルに対して1個の移相器、あるいは、それぞれのユニットセルに対して1個の増幅器を含み得る。いくつかの実施形態では、移相器は、ベクトル変調器型の移相器であり得る。そして、移相器は、信号の位相および振幅の連続制御を提供するために使用され得る。さらに、いくつかの実施形態では、増幅器は、電力増幅器および低雑音増幅器、PALNA増幅器であり得る。そして、増幅器は、同じアンテナアレイを使用して双方向動作(受信および送信)を可能にするためのベクトル変調器と共に使用され得る。
【0022】
送信アレイの内部放射面は、空間給電技術によって照らされ得る。それ故に、アンテナアレイの給電ネットワークは、アンテナアレイのサイズにいかなる制限も設定しない。したがって、非常に高いアンテナゲインの実現が可能である。一方、送信アレイの外面上のそれぞれのアンテナ要素の振幅および位相は、該要素の入力で制御され得る。それゆえ、アンテナビームの方向を操作することができ、達成されるビームステアリング角範囲はフェーズドアンテナアレイと等しくなり得る。
【0023】
要約すると、送信アンテナアレイの動作は、以下のように簡単に説明され得る。例えば、焦点供給源によって放射される球面波は、送信アレイの内部放射要素を照らし得る。すことができる。いくつかの実施形態では、移相器およびユニットセルの助けにより、受信波は、外部放射要素から所望の方向に放射する平面波に変換され得る。いくつかの実施形態では、アンテナアレイの1個のユニットセルは、1個の受信アンテナ要素、移相器、および対応する1個の送信アンテナ要素を含み得る。送信アンテナアレイは、ビームステアリング用の移相器および増幅器を備えている場合、アクティブと呼ばれ得る。
【0024】
図1は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムの一例を示す図である。アンテナシステム(110)は、固定給電アンテナ(120)および送信アンテナアレイ(130)を含んでよい。固定給電アンテナ(120)は、例えば、給電ホーン又は固定ビームアンテナアレイであってよい。固定給電アンテナ(120)の位置は、固定されてよい、すなわち、固定給電アンテナ(120)は、動作中に、移動しない、あるいは、移動させることができない。送信アンテナアレイ(130)は、統合された移相器、あるいは、増幅器を備えた導波管送信アレイを含んでよい。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、他のタイプのエンドファイアアンテナも同様に考えられ得る。
【0025】
図1において、aは、固定給電アンテナ(120)と送信アンテナアレイ(130)の内部開口、すなわち、内部放射面との間の距離を示している。bは、送信アンテナアレイ(130)の内部開口から送信アンテナアレイ(130)の外部開口、すなわち、外部放射面までの距離である送信アンテナアレイ(130)の厚さを示している。cは、送信アンテナアレイ(130)の幅を示している。通常、cは、x方向およびy方向と同じである。多くの場合、aは、焦点距離Fで表され、cは、幅Dで表される。そして、送信アレイの形状は、F/D比で特徴付けられる。ここで、Dは、送信アンテナアレイ(130)の開口の直径である。例えば、Eバンド(60GHz~90GHzの周波数)で動作する送信アレイの一般的な寸法は、aの場合は30mm~100mm、bの場合は5mm~20mm、cの場合は20mm~150mmである。送信アンテナアレイ(130)の幅cが20mmであれば、8×8個のユニットセルの送信アンテナアレイに対応し、送信アンテナアレイ(130)の幅cが150mmであれば、60×60個のユニットセルの送信アンテナアレイに対応し得る。
【0026】
アンテナシステム(110)の給電システムは、送信された信号が自由空間を伝播し、特性および振る舞いが光に似ているため、空間給電技術と見なされ得る。このような給電技術は、平面アンテナアレイ給電ネットワークのように、ミリ波周波数において顕著である給電ライン損失の影響を受け難い。したがって、大きなアンテナアレイが実装されている場合、給電システムにおいて、大きく且つ変動する損失を回避し得る。その結果、複雑で損失の多い給電ネットワークによって課せられるアレイのサイズに関連する制限を減らすことができる。
【0027】
図2は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムにおける第1のアンテナアレイの一例を示す図である。
図2では、一例として、8×8個のユニットセル(220)を備えた送信アンテナアレイ(210)を示している。すなわち、つまり、x軸上に8個のユニットセル(220)が設けられ、y軸上に8個のユニットセル(220)が設けられている。いくつかの実施形態では、x軸およびy軸の長さは、20mmであってよい。そして、x軸は、
図1におけるパラメータcに対応している。このような場合において、1個のユニットセル(220)の幅x2および長さy2は、2.5mmである。送信アンテナアレイ(210)は、一例として、8×8のマトリクス形式で配置された64個の開口した正方形のユニットセルで構成される。ユニットセルの一端は内部アンテナアレイ(固定給電アンテナに近い内部放射面)を形成し、ユニットセルの他端は外部アンテナアレイ(固定給電アンテナから遠い外部放射面)を形成する。
【0028】
図2において、破線(230)は、送信アンテナアレイ(210)のそれぞれの列に垂直に設置されたフィンラインのプリント回路基板を示している。換言すれば、1個のプリント回路基板は、送信アンテナアレイ(210)の1個の列内の全てのユニットセル(220)を接続し得る。いくつかの実施形態では、プリント回路基板は、ユニットセル(220)の中央、又は、およそ中央に、垂直に設置され得る。プリント回路基板は、アンテナアレイの内部放射面および外部放射面から等距離に配置され得る。すなわち、プリント回路基板は、ユニットセル(220)のおよそ中央に長手方向に配置され得る。ユニットセル(220)は、正方形導波管又は開放端導波管とも呼ばれることがある。
【0029】
2個のプリント回路基板(230)間の距離x3は、ユニットセル(220)の幅x2に等しくてもよい。したがって、例として、ユニットセル(220)の幅x2が2.5mmである場合、2個のプリント回路基板(230)間の距離x3もまた2.5mmであってよい。金属導波管壁の厚さは、計算で考慮に入れればよい。
【0030】
一般に、垂直とは、列によって定義される方向、すなわち、列の要素が互いに積み重ねられる方向を意味する。1個のプリント回路基板は、1個の列又は1個の行における全ての内部放射要素および外部放射要素を、相互に接続してよい。したがって、
図2は、1個のプリント回路基板がユニットセルを垂直に接続する一実施形態を示している。しかしながら、いくつかの実施形態では、1個の列におけるユニットセルの内部放射要素および外部放射要素を接続するために、1個のプリント回路基板を水平に設けてもよい。
【0031】
図3は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナアレイにおけるサブアレイの一例を示す図である。より具体的には、
図3は、
図2の送信アンテナアレイ(210)のサブアレイを示しており、4個のユニットセルのサブアレイが示されている。
図3のユニットセルは、
図2のユニットセル(220)に対応し得る。ユニットセルは、3次元であり得る。
図3のパラメータx2およびパラメータy2は、
図2と同じパラメータであり、パラメータbは、
図1の送信アンテナアレイ(130)の厚さに対応し、これは、導波管セクションの長さとも呼ばれ、アンテナアレイの内部開口からアンテナアレイの外部開口までの長さを示す。パラメータdは、導波管壁の厚さを示す。
【0032】
一例として、ユニットセルの間隔が2.5mmである場合(すなわち、x2およびy2が2.5mmである場合)、dは0.2mmであってよく、x3(導波管の内寸)は2.3mmであってよく、そして、bは、16mmであってよい。本発明の少なくともいくつかの実施形態では、フィンラインのプリント回路基板(
図3には示されていない)は、正方形導波管の中央又はおよそ中央に垂直に設置されてよい。一般に、フィンラインのプリント回路基板は、アンテナアレイの内部開口およびアンテナアレイの外部開口から等距離にある長方形の導波管の中央に設定されたプリント回路基板と呼ばれ得る。プリント回路基板は、例えば、E平面(垂直面)の中央に設定されてよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、例えば、71GHzから76GHzまでの周波数範囲を考慮する場合、71GHzは、使用される導波管サイズのカットオフ周波数に1.09を掛けたもの、又は、約1.09を掛けたものに等しく、波長における要素の間隔の比率は、次に示すものが使用され得る。71GHzの場合、ユニットセル間隔/波長は、0.59になり得る。73.5GHzの場合、ユニットセル間隔/波長は、0.61になり得る。76GHzの場合、ユニットセル間隔/波長は、0.63になり得る。乗数1.09、又は、乗数約1.09を使用することにより、ユニットセルが導波管のカットオフ周波数を十分に超えて動作し、損失を回避することが保証され得る一方で、半波長に近い隣接するユニットセルの間隔は、広角ビームステアリングを可能にするために、維持され得る。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、ユニットセルの間隔は、カットオフ周波数により近い周波数で動作することによって減少させ得る。あるいは、さらに、ユニットセルの間隔は、誘電体導波管を使用することによって減少させ得る。すなわち、送信アレイのユニットセルは、誘電体材料で、完全に、又は、部分的にのみ満たされ得る。
【0035】
図4は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナアレイにおける機械的構造モジュールの一例を示す図である。
図1における送信アンテナアレイ(130)などのようなアンテナアレイは、ある3個の基本部品を含むモジュール構造を有していてもよく、それは、2個の金属ブロックおよびプリント回路基板を含んでよい。例えば、アルミニウムは、ブロックに適する金属であり得る。このようなモジュール構造は、製造および製品の多様性の観点から有利であり、例えば、様々なアンテナゲインカテゴリに対して効率的な製造を可能にする。
【0036】
再び
図4を参照すると、市松模様で示される2個の第1の要素(410)が必要とされ得る。2個の第1の要素(410)は、m×n個の要素を含む任意のアンテナアレイに必要とされ得る。ここで、mは、アンテナアレイにおける列の数であり、nは、アンテナアレイにおける行の数である。第1の要素(410)は、導波管アンテナアレイの端部、又は、導波管アンテナアレイの側部を形成してもよい。さらに、黒色で示される少なくとも1個の第2の要素(420)が必要とされ得る。m個の列を含む任意のアンテナアレイの場合、必要とされる第2の要素(420)の数は、m-1個である。
【0037】
さらに、それぞれの列に1個のプリント回路基板(430)が存在してもよく、好ましくは、それぞれの列の中央、又は、それぞれの列のおよそ中央に、1個のプリント回路基板(430)が存在してもよい。そして、1個のプリント回路基板(430)は、送信アンテナアレイにおける1個の列の全てのユニットセルを接続および支持するように配置されることが好ましい。プリント回路基板(430)は、アンテナアレイの内側放射面および外側放射面から等距離にあるユニットセルにおいて、中央、又は、およそ中央に配置され得る。導波管/ユニットセルは、導波管/ユニットセルの中央で2個の部分に分割され得る。導波管/ユニットセルの長手方向の中心線を横切って電流が流れないためである。m個の列を含む任意のアンテナアレイの場合、必要なプリント回路基板(430)の数は、mであり得る。プリント回路基板(430)は、第1の要素(410)と第2の要素(420)との間に設置され得る。
【0038】
図5は、送信アレイの1個のユニットセルの一例を示す垂直断面図である。ユニットセルは、送信アレイの導波管セクションと呼ばれ得る。ユニットセルの両端部には、放射素子として機能する開口した正方形導波管が存在してよい。一方の端部(510)は、送信アンテナアレイにおける内部放射面上のラジエータとして機能してよく、他方の端部(550)は、送信アレイにおける外部放射面上のラジエータとして機能してよい。構造の中央、すなわち、送信アンテナアレイの内部放射面および外部放射面から等距離の位置には、垂直のフィンライン型のプリント回路基板が存在してもよい。フィンラインという用語は、導波管の内部、例えば、導波管の中央に垂直に設けられるプリント回路基板を指してよい。
【0039】
プリント回路基板は、導波管から伝送線路への遷移構造(510および550)、プリント回路基板上の伝送線路(520および540)、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)のような移相器(530)を含み得る。一方の端部(510)は、固定給電アンテナから受信した信号を、導波管モードから伝送線路モードへ変換し得る。それぞれ、他方の端部(550)は、送信されてきた信号を、伝送線路モードから導波管モードへ変換し得る。一方の端部(510)および他方の端部(550)は、同一の要素であってよい。同様に、伝送線路520および伝送線路540は、移相器(530)の特性に応じて同一の要素であってよい。導波管から伝送線路への遷移構造は、使用される伝送線路のタイプ(つまり、同一平面上の導波管、接地された同一平面上の導波管、又は、マイクロストリップライン)によって異なってよい。コプレーナ導波管、CPWは、移相器(530)のワイヤーボンディングアセンブリ用のフリップチップボンディングおよびマイクロストリップに適している場合がある。
【0040】
プリント回路基板の中央に存在する移相器(530)は、伝送線路(520および540)のパッドに接続し得る。ミリ波信号、すなわち、第1の信号は、最初に、導波管遷移構造(510)による内部放射面から、内部伝送線路(520)に結合されてよく、次に、移相器(530)に伝播してよい。第2の信号は、適切な位相シフトおよび振幅調整を実行することによって生成され得る。第2の信号は、外部伝送線路(540)および導波管遷移構造(550)を介して、外部放射導波管要素、すなわち、外部放射面に伝搬してよい。
【0041】
移相器(530)は、ベクトル変調器型の移相器であってよく、例えば、フリップチップボンディングを使用することによって、プリント回路基板上に組み立てられてよい。ベクトル変調器型チップは、送信時の出力電力を増加させるため、又は、受信時の雑音指数を減少させるために、追加的に増幅器を含んでいてもよい。
【0042】
移相器(530)は、第1の伝送線路(520)を介して第1の信号を受信し、位相をシフトし、第2の信号を生成するために、信号の振幅を調整し得る。さらに、移相器(530)は、第2の伝送線路(540)を介して位相シフトされた第2の信号を送信するように構成され得る。第2の伝送線路(540)も同様にGCPWであり得る。プリント回路基板は、プリント回路基板が出力導波管に適するように、位相シフトされた第2の信号を遷移させるためのブロック(550)を含み得る。移相器は単方向であり得る、すなわち、移相器は、ミリ波信号、すなわち、第1の信号を送信又は受信のどちらかをし得る。ただし、RxベクトルおよびTxベクトルが統合された変調器を備えるPALNA増幅器が使用されてよい。これにより、受信および送信の両方で、同じ送信アンテナアレイを使用できる。いくつかの実施形態では、構成要素510~構成要素550は、高周波(RF)構成要素と呼ばれ得る。
【0043】
図6は、8個のユニットセル(620)を含む送信アンテナアレイの列(610)を示している。送信アンテナアレイの列(610)において、それぞれのユニットセル(620)は、移相器(630)を含み得る。移相器(630)は、
図5における移相器(530)と同様に、MMIC位相移相器であってよい。送信アンテナアレイの列(610)はまた、アクティブベクトル変調バイアス電圧のためのコネクタ(640)を含んでよい。コネクタ(640)は、ベクトル変調制御信号のためのコネクタ(640)でもあり得る。
【0044】
送信アンテナアレイの列(610)において、1個の垂直プリント回路基板は、その列(620)の全てのユニットセルに役立ち得る。すなわち、
図6の例では、1個のプリント回路基板は、内部放射面上の8個の放射アンテナ要素を、外部放射面上の対応する8個の放射アンテナ要素に接続して、8個のユニットセルを形成し得る。導波管送信アレイの場合、列のプリント回路基板は、垂直に積み重ねられたユニットセルの中央、又は、およそ中央に配置され、そして、それは、列(610)を形成し得る。プリント回路基板は、内部放射面および外部放射面から等距離に存在する積み重ねられたユニットセルの中央、又は、およそ中央に配置され得る。放射要素は、導波管セクションの開口端を指してもよい。一方の開口端は、内部放射要素を形成してよく、他方の開口端は、外部放射要素を形成してよい。
【0045】
移相器(630)および増幅器を含むプリント回路基板は、コネクタ(640)に接続されてよく、バイアス電圧および制御信号を、列(610)を介して垂直に受信するように配置されてよい。単数又は複数の制御信号コネクタが存在していてもよく、それらは、プリント回路基板の上部あるいはプリント回路基板の下部のいずれかに配置されてよい。したがって、移相器は、コンピュータによって制御されてよい。
【0046】
プリント回路基板は、例えば、E平面の中央に設置されてよい。一般に、E平面は、導波管内の電界ベクトルの方向に平行な方向である。直交するH平面は、磁場ベクトルを含む。さらに、又は、代わりに、プリント回路基板は、内部放射面および外部放射面上のユニットセルの開口に対して垂直に配置されてよい。
【0047】
あるいは、又は、さらに、導波管アンテナ要素は、誘電体材料、すなわち、ドームとして使用される材料で満たされてよい。さらに、プリント回路基板は、アンテナアレイの内部放射面および外部放射面から等距離にあるアレイユニットセルの中央、又は、およそ中央に配置され得る。
【0048】
本発明の一実施形態では、送信アンテナアレイは、開口した導波管を含み得る。そして、送信アンテナアレイは、ユニットセルとして使用されてよい。そして、ベクトル変調器型移相器は、接地された同一平面の導波管ライン、GCPWに、フリップチップ結合されてもよい。したがって、プリント回路基板は、導波管からGCPWラインへの遷移が含まれてもよい。遷移を実施するための様々な方法があってよいが、本発明のいくつかの実施形態では、2個の連続する遷移が使用されてよい。最初に、導波管からマイクロストリップへの遷移があり、その後に、マイクロストリップからGCPWラインへの遷移が続いてよい。導波管からマイクロストリップへの遷移は、最終的に短絡回路へと終結する指数関数的に先細りのフィンラインセクションを使用してよい。フィンラインの開口端の近くにある開口したマイクロストリップスタブは、結合する構成要素として機能してよい。フィンラインスロットおよび結港するマイクロストリップラインは、互いに垂直に配置されてよい。
【0049】
図7は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る導波管からマイクロストリップへの遷移の一例を示す図である。導波管(710)は、短絡回路(715)、マイクロストリップスタブ(720)、および、フィンラインプリント回路基板(730)を含んでよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、プリント回路基板は、第1の開口した導波管を介して、固定給電アンテナから第1の信号を受信し、受信した第1の信号を伝送線路、例えば、GCPWラインを介して、移相器に転送するように配置されてよい。そして、移相器は、位相をずらし、第2の信号を生成するために、受信した第1の信号の振幅を調整するように配置されてよい。そして、次に、移相器は、位相シフトされた第2の信号を、第2の伝送線路、例えば、GCPWラインを介して、GCPWから導波管の遷移構造へと転送してよい。開口した導波管は、ラジエータとして機能してよい。それぞれの放射導波管要素の位相シフトは、アンテナアレイのビームが特定の方向を指すように調整されてよい。
【0051】
図8は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る2個のユニットセルの一例を示す上面図である。金属の導波管構造(
図4に示す第1の金属部410および第2の金属部420)は、移相器、例えば、MMICからの熱伝達を強化するために、ベクトル変調器チップ(820)の前後に垂直に、特定のヒートバー(810)を含んでよい。一般に、ベクトル変調器チップ(820)は、
図5に示す移相器(530)と呼ばれてよい。
【0052】
図4を参照すると、ヒートバー(810)の端部は、垂直のプリント回路基板(430)の接地面に接触してよい。ヒートバー(810)は、第1の金属部410および第2の金属部420の一体部品であってよい。さらに、ヒートバー(810)は、それぞれの金属ブロックと同時に製造されてよい。いくつかの実施形態では、ヒートバー(810)の内部に、液体冷却用のパイプがあってよい。一例として、水、又は、水およびグリコールの混合物が冷却用の液体として使用されてよい。
【0053】
アンテナシステムの高さ(
図1に示す寸法a)を縮小する必要が生じる場合がある。空間的な給電システムの高さは、例えば、ピルボックス型、又は、放射状平行板型の給電システムによって、減少させ得る。例えば、ピルボックス型の給電システムでは、放物面反射鏡の一部は、給電ホーンによって照らされてよい。そこで、平行板間の反射平面波は、スロットによって、送信アレイの内部放射面上のアンテナ要素に結合されてよい。
【0054】
同様に、中心給電放射平行平板給電システムでは、低シリンダの中心点から半径方向外向きに伝搬していく波面は、スロット(シリンダの上部)により、送信アレイの内部放射面上のアンテナ要素に結合されてよい。本発明は、給電システムにおいて生じる振幅および位相の変化が、送信アレイのベクトル変調器によって補償され得るという意味で、これらの給電システムの統合が立証されるということに留意されたい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、アクティブ送信アンテナアレイは、間にフィンライン型のプリント回路基板が挿入された開口した導波管の補助によって実現され得る。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態によれば、送信アレイを実現するためには、代わりの方法もあってよい。
【0056】
図9は、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るアンテナシステムにおける第2のアンテナアレイの一例を示す図である。
図2に示すアンテナアレイを参照すると、導波管(220)は、
図9に示すアレイ(910)を形成する構造から省略されてよい。このような場合、送信アレイは、垂直プリント回路基板(930)を含んでよい。送信アレイは、互いに少なくとも半波長の距離で離間していてよい。プリント回路基板(930)間の距離は、
図9ではx4で示されている。
図2および
図4を参照すると、プリント回路基板(930)は、それぞれ、プリント回路基板(230)およびプリント回路基板(430)にそれぞれ対応し得る。
図9のアンテナアレイは、内部放射面、外部放射面、およびプリント回路基板(930)を含んでよい。プリント回路基板(930)は、内部放射面および外部放射面を動作可能に接続するための移相器を有し得る。さらに、プリント回路基板(930)は、内部放射面および外部放射面から、ほぼ等距離に配置され得る。一般に、プリント回路基板(930)は、内部放射面と外部放射面との間に配置された高周波(RF)の構成要素における電気的接続のためのプラットフォームと呼ばれ得る。
【0057】
原則として、任意のタイプのエンドファイアラジエータは、
図9に示すアンテナアレイ内のプリント回路基板の両端で使用され得る。適切なエンドファイアラジエータは、例えば、ビバルディ、平面ダイポール、平面テーパスロット、平面スロット、および八木アンテナが含まれ得る。一般に、エンドファイアラジエータは、アンテナ要素として呼ばれてよい。
【0058】
さらに、
図10は、第2のアンテナアレイの列を示しており、本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、平面テーパスロットアンテナが使用されている。列は、内部放射面および外部放射面の両方に、2個の平面テーパスロットアンテナが存在する場合を示している。
【0059】
プリント回路基板を第2のアンテナアレイの構成において、正しい位置に固定するために、適切な支持構造およびスペーサー構造が必要とされ得る。機械的サポートは、さまざまな方法で製造され得る。例えば、同様の金属構造は、第1のアンテナアレイの構造における導波管で用いられてよく、導波管以外では用いられなくてよい。このような場合において、アンテナアレイの内部放射面上の第1の金属構造は、第1のアンテナ要素を形成してよく、アンテナアレイの外部放射面上の第2の金属構造は、第2のアンテナ要素を形成してよい。プリント回路基板は、アンテナアレイの中央、又は、およそ中央に配置されてよく、例えば、内部放射面および外部放射面から等距離に配置されてよい。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、支持構造は、金属又はプラスチックなどが機械加工されたもの、又は、3D印刷されたものであってよい。また、スペーサー構造は、プリント基板間における別個の構成要素であってよい。
【0060】
図5を参照すると、
図10に示される列は、プリント回路基板上の伝送線路(520および540)および移相器(530)、例えば、MMIC集積回路を含み得る。しかしながら、第2のアンテナアレイの構造は、導波管又はフィンライン構造のないエンドファイアアンテナを含み得る。したがって、一例として、信号は、伝送線路(例えば、GCPW)からエンドファイアアンテナに直接結合され得る。
【0061】
第2の実施形態では、送信アレイはまた、m個のプリント回路基板における2個のプリント回路基板間のギャップを埋めるための吸収体材料を含み得る。また、第2の実施形態では、送信アレイは、それぞれの移相器の第1の端部に接続された第1のエンドファイアラジエータ、およびそれぞれの移相器の第2の端部に接続された第2のエンドファイアラジエータを含み得る。
【0062】
第2の実施形態では、アンテナアレイはまた、ユニットセルを含んでよい。第2の実施形態のユニットセルは、内部放射要素/面、プリント回路基板、および外部放射要素/面を含んでよい。プリント回路基板は、移相器をさらに含んでよい。プリント回路基板は、内部放射面および外部放射面から等距離にあるユニットセルの列又は行において、中央又はおよそ中央に配置されてよい。
【0063】
本発明の第1の実施形態又は第2の実施形態は、固定給電アンテナを備えた送信アンテナアレイシステム用のアンテナアレイを含み得る。アンテナアレイは、少なくとも2個のユニットセルを含み得る。それぞれのユニットセルは、アンテナアレイの内部放射面上の第1のアンテナ要素、およびアンテナアレイの外部放射面上の第2のアンテナ要素を含み得る。さらに、アンテナアレイはまた、少なくとも2個のユニットセルを接続するプリント回路基板を含み得る。そして、プリント回路基板は、第1のアンテナ要素と第2のアンテナ要素との間に配置され、プリント回路基板は、それぞれのユニットセルに対する移相器を含む。いくつかの実施形態では、方位角および仰角ビームステアリング用のアンテナアレイの最小サイズは、内部放射面上および外部放射面上の両者の4個のユニットセルであり、2個の同一のアンテナ列に統合されている。
【0064】
第1の実施形態又は第2の実施形態では、アンテナアレイのサイズは、m列およびn行であってよい。アンテナアレイは、m×n個のユニットセルおよびm個のプリント回路基板を含み得る。それぞれのプリント回路基板は、n個の移相器を含み得る。それぞれのプリント回路基板は、それぞれの列におけるn個のユニットセル又はそれぞれの行におけるm個のユニットセルと接続するように配置されてよい。
【0065】
アクティブベクトル変調器型移相器における連続的な位相および振幅の調整は、アンテナビームの全ての方向について、それぞれの放射ユニットセルにおける最適な位相および振幅の励起を可能にするであろう。したがって、位相量子化エラーは発生せず、それによってアンテナの指向性が低下することはない。ベクトル変調器における増幅器により、ユニットセルで信号損失が発生しない。逆に、信号は、ユニットセルで増幅される場合がある。その増幅は、空間給電システムに固有の損失、および焦点供給源に波及する損失の可能性を補償する。ユニットセルの連続ゲイン制御により、送信アレイのF/D比を自由に選択することもできる。
【0066】
従来、ユニットセルは、入ってくる電波の電界Eに平行な平面プリント回路基板スタックアップにより実現されている。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態によれば、ユニットセルは、3Dであってよく、送信アレイの放射面に垂直に配置され得る多層のプリント回路基板上に実現されてよい。
【0067】
本発明の実施形態は、上記のように、少なくとも2個のユニットセルを有するアンテナアレイを含み得る。しかしながら、本発明は、送信アレイ内のユニットセルの数が非常に多い場合に特に有利である。
【0068】
第1の実施形態又は第2の実施形態では、移相器は、例えば、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)として統合された、関連する増幅器(例えば、LNAおよびバッファ増幅器、又は、PAおよびバッファ増幅器)を備えたベクトル変調器型の移相器であってよい。あるいは、又はさらに、移相器は、双方向移相器であってよい。このような場合、PALNA型のアンプが必要とされる場合がある。いくつかの実施形態では、送信および/又は受信増幅器は、MMICに統合され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の実施形態又は第2の実施形態の送信アレイは、プリント回路基板に接続された、バイアス電圧および制御信号用の少なくとも1個のコネクタを備え得る。移相器は、プリント回路基板を使用して、アンテナアレイの列を介してバイアス電圧を受信し、信号を垂直に制御するように配置されてよい。少なくとも1個のコネクタをプリント回路基板に接続されてよい。
【0070】
あるいは、又は、さらに、プリント回路基板は、送信アレイの内部放射面および外部放射面に対して垂直に配置されてよい。いくつかの実施形態では、プリント回路基板は、アンテナアレイ内において、垂直に配置されてよい。アンテナアレイはまた、三次元構造を有していてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、プリント回路基板は、内部放射面を介して固定給電アンテナから第1の信号を受信し、受信した第1の信号を第1の伝送線路を介して移相器に転送するように構成され得てよい。そして、移相器は、位相をずらし、第2の信号を生成するために、受信した第1の信号の振幅を調整するように配置され、位相シフトした第2の信号を、第2の伝送線路を介して外部放射面に転送するように配置される。プリント回路基板はまた、位相シフトした信号を、外部放射面を介して自由空間に送信するように配置されてよい。
【0072】
本発明の実施形態はまた、第1の実施形態又は第2の実施形態に係るアンテナアレイ、および送信アレイの内部開口を照らすための固定給電アンテナを含むアンテナシステムであってよい。
【0073】
構造は、プリント回路基板間のギャップを介して、電磁場がアレイを通って漏れるのを防ぐように設計され得る。例えば、いくつかの吸収材(例えば、ECCOSORB(R)BSRなど)は、この目的のために使用され得る。導波管アレイの利点は、内部放射面と外部放射面との間において、自然に分離されることである。一方、プリント回路基板上のエンドファイアラジエータは、放射要素間の半波長間隔が直接的に許可され得る。
【0074】
第1の実施形態および第2の実施形態では、送信アレイの列(又は行)は、プリント回路基板の代わりに高周波(RF)の構成要素の電気的接続に適する他のプラットフォーム技術によって実現され得る。例えば、低温同時焼成セラミック、LTCC、薄膜基板(石英およびシリコン)などのミリ波プラットフォーム技術は、高周波の構成要素の電気的接続のために使用され得る。さらに、いくつかの実施形態では、オンチップアンテナ技術は、例えば、非常に高い周波数で使用され得る。また、アルミナも、使用され得る。一般に、プリント回路基板は、高周波の構成要素の電気的接続用のプラットフォーム技術と呼ばれる場合がある。
【0075】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、又は、材料に限定されず、関連技術において通常当業者によって認識されるであろうそれらの同等物に拡張されるということを理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0076】
本明細書全体を通して、一実施形態又は実施手段への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1個の実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態において」又は「実施形態において」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。例えば、約又は実質的になどの用語を使用して数値を参照する場合、正確な数値も開示される。
【0077】
本明細書で使用される場合、複数のアイテム、構造要素、構成要素、および/又は材料は、便宜上、共通のリストに提示され得る。ただし、これらのリストは、リストの各メンバーが個別の一意のメンバーとして個別に識別されているかのように解釈する必要がある。したがって、そのようなリストの個々のメンバーは、反対の指示なしに、共通のグループでの提示のみに基づいて、同じリストの他のメンバーと事実上同等であると解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および例は、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で参照され得る。そのような実施形態、実施例、および代替案は、互いに事実上同等であると解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現と見なされるべきであることが理解される。
【0078】
さらに、記載された特徴、構造、又は特徴は、単数又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。 前述の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例など、多数の特定の詳細が提供されている。しかしながら、関連技術の当業者は、本発明が、単数又は複数の特定の詳細なしで、又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実施できることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は操作 本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、詳細に示されていないか、又は説明されていない。
【0079】
前述の例は、単数又は複数の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、発明の能力を行使することなく、また本発明の原理および概念から逸脱することなく、実施の形態、使用法、および詳細に多数の変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除いて、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0080】
「含む」および「含める」という動詞は、この文書では、引用されていない機能の存在も除外も要求もしないオープンな制限として使用されている。従属クレームに記載されている特徴は、特に明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本文書全体での「a」又は「an」、すなわち単数形の使用は、複数を除外しないことを理解されたい。
【0081】
例示的な実施形態では、アンテナアレイなどの装置は、上記の実施形態およびそれらの任意の組み合わせを実行するための手段を含み得る。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、無線通信システムにおける産業用途において理解される。アンテナアレイ用のモジュールおよび本明細書に記載の対応する方法は、様々なデバイス間の無線通信を可能にするために利用され得る。無線通信は、ユーザデバイス、例えば、スマートフォンと通信ネットワークの基地局との間の通信を含み得る。無線通信はまた、基地局間又は基地局と中継ノードとの間のバックホール接続を含み得る。無線通信に加えて、本発明の概念は、高ゲインおよび広いビームステアリング角範囲が必要とされるレーダーアンテナに適用することができる。
【0083】
無線通信ネットワークの例は、無線ローカルエリアネットワーク、WLAN、ならびに4Gおよび5Gネットワークを含む。アンテナアレイ用のモジュールは、アンテナアレイを介して、基地局、例えば、無線信号を送信および/又は受信するための基地局に、接続され得る。アンテナアレイは、少なくとも、広いビームステアリング角範囲を備えた高ゲインアンテナが評価される基地局の配置で利用され得る。例えば、アンテナアレイは、ミリ波周波数で動作するメッシュバックホールネットワークに特に適する。
【符号の説明】
【0084】
100 アンテナシステム
120 固定給電アンテナ
130,210,910 アンテナアレイ
220,620 ユニットセル
230,430,730,930 プリント回路基板
410 第1の金属部
420 第2の金属部
510 受信導波管遷移構造
520 第1の伝送線路
530,630 移相器
540 第2の伝送線路
550 送信導波管遷移構造
610 送信アレイの列
640 制御信号コネクタ
710 導波管
715 短絡回路
720 マイクロストリップスタブ
810 ヒートバー
820 ベクトル変調器チップ