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特許7579783脊椎手術を行うシステム及び方法、並びに手術部位における流体を維持するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】脊椎手術を行うシステム及び方法、並びに手術部位における流体を維持するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B17/56
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021523432
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019057599
(87)【国際公開番号】W WO2020092080
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】62/751,964
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ワレン,ジェームス・ジー.
(72)【発明者】
【氏名】カルシージョ,スティーブン・ジェイ.
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061132(JP,A)
【文献】特表平07-502419(JP,A)
【文献】特開2001-228868(JP,A)
【文献】特表2007-522837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0098531(US,A1)
【文献】特表2008-511397(JP,A)
【文献】特表2016-515441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脊椎の手術部位において外科手術を行う手術システムであって、
周囲への開口部を規定する近位端、遠位端、及び作業チャネルを規定する内面を有し、前記遠位端が前記患者内に配置されて前記手術部位への前記作業チャネルを提供するように構成された開創器と、
前記開創器に連結され、前記手術部位に流体を供給して、前記開創器の前記作業チャネル内に流体を充填する流入源と、
前記開創器に連結され、前記手術部位から前記流体を取り除く流出源と、
前記開創器の前記内面に連結された電気式流体感知部材を含み、前記作業チャネルに充填された流体のレベルに基づいてセンサ入力信号を供給する流体レベルセンサと、
前記流体レベルセンサ、並びに前記流入源及び前記流出源から選択された少なくとも一方と通信し、前記センサ入力信号に基づいて、前記流入源によって供給される流体の流量、前記流出源によって前記手術部位から取り除かれる流体の流量、又はこれらの両方を制御して、前記作業チャネル内で流体の閾値レベルが維持されるように構成されたコントローラと、
を備え、
前記開創器は、外面を更に含み、前記開創器の前記内面と前記外面との間に前記作業チャネルから分離した流体チャネルを規定し、前記流体チャネルは前記開創器の前記遠位端の流体出口と連通され、前記流体出口は前記作業チャネルと連通して前記流体を前記作業チャネルに供給する、
手術システム。
【請求項2】
前記電気式流体感知部材は、前記開創器内の流体のインピーダンス又は抵抗を感知するように構成された、
請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記開創器は、前記開創器に連結されるとともに前記コントローラと通信し、前記開創器の向きを感知するように構成された傾斜センサを更に備えた、
請求項1又は2に記載の手術システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業チャネル内の流体の閾値レベルに応じたユーザ入力信号を受信して、前記ユーザ入力信号に基づいて前記流出源及び前記流入源を制御するように構成された、
請求項1~3のいずれか1つに記載の手術システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記作業チャネル内の流体の入替流量に応じたユーザ入力信号を受信して、前記ユーザ入力信号に基づいて前記流出源及び前記流入源を制御するように構成された、
請求項1~4のいずれか1つに記載の手術システム。
【請求項6】
前記流入源は、前記開創器の前記近位端に連結された、
請求項1~5のいずれか1つに記載の手術システム。
【請求項7】
前記流出源は、前記開創器の前記近位端に連結された、
請求項1~6のいずれか1つに記載の手術システム。
【請求項8】
前記開創器の前記近位端に連結され、前記作業チャネルと連通するアクセス開口部を規定する結合部材を更に備え、
前記流入源及び前記流出源は、前記結合部材に連結された、
請求項1~7のいずれか1つに記載の手術システム。
【請求項9】
吸引を含む手術器具で患者の脊椎の手術部位において外科手術を行う手術システムであって、
周囲への開口部を規定する近位端、遠位端、及び作業チャネルを規定する内面を有し、前記遠位端が前記患者内に配置されて前記手術部位への前記作業チャネルを提供するように構成された開創器と、
前記開創器に連結され、前記手術部位に流体を供給して前記開創器の前記作業チャネル内に流体を充填するとともに、流入入力信号を供給する流入センサを有する流入源と、
前記開創器に連結され、前記手術部位から流体を取り除くとともに、流出入力信号を供給する流出センサを有する第1の流出源と、
切断部材を有する手術器具と連通して、吸引中に前記手術部位から流体を取り除くように配置された第2の流出源と、
前記開創器に連結され、前記作業チャネルに充填された流体のレベルに基づいてセンサ入力信号を供給する流体レベルセンサと、
前記流入源及び前記流体レベルセンサと通信する第1のコントローラと、
前記第1のコントローラ及び前記第1の流出源と通信する第2のコントローラと、
を備え、
前記第1のコントローラは、前記流入源によって供給される流体の流量を制御するように構成され、
前記第2のコントローラは、前記センサ入力信号、前記流入入力信号及び前記流出入力信号に基づいて、前記第1の流出源を制御して前記第1の流出源によって取り除かれる流体の流量を制御して、前記第2の流出源の動作による感知された変化を補償し、前記作業チャネル内で流体の閾値レベルを維持するように構成された、
手術システム。
【請求項10】
吸引を含む手術器具で患者の脊椎の手術部位において外科手術を行う手術システムであって、
近位端、遠位端、及び作業チャネルを規定する内面を有し、前記遠位端が前記患者内に配置されて前記手術部位への前記作業チャネルを提供するように構成された開創器と、
前記開創器に連結され、前記手術部位に流体を供給して前記開創器の前記作業チャネル内に流体を充填する流入源と、
前記手術器具と連通して、吸引中に前記手術部位から流体を取り除くように構成された流出源と、
前記開創器に連結され、前記作業チャネルに充填された流体のレベルに基づいて流体レベルセンサ入力信号を供給する流体レベルセンサと、
前記流体レベルセンサ及び前記流入源と通信し、前記流出源と通信しないコントローラであって、前記流入源によって提供される流体の流量を制御して、前記流出源の動作による感知された変化を補償し、前記作業チャネル内で流体の閾値レベルを維持するように構成されたコントローラと、
を備えた手術システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記流出源の動作により、前記流体レベルセンサが前記流体のレベルの低下を感知したとき、前記流入源を制御して前記作業チャネルに供給する流体の流量を増加させるように構成された、
請求項10に記載の手術システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記手術器具の前記吸引の終了により、前記流体レベルセンサが前記作業チャネルに充填された流体のレベルの増加を感知したとき、前記流入源を制御して前記作業チャネルに供給される流体の流量を減少させるように構成された、
請求項10又は11に記載の手術システム。
【請求項13】
患者の脊椎の手術部位において外科手術を行う手術システムであって、
周囲への開口部を規定する近位端、遠位端、外面、及び作業チャネルを規定する内面を有し、前記遠位端が前記患者内に配置されて前記手術部位への前記作業チャネルを提供し、前記内面と前記外面との間の流体チャネル、及び前記遠位端の前記流体チャネル及び前記作業チャネルと連通する流体出口を規定する開創器と、
前記流体チャネルと連通し、前記流体チャネル及び前記流体出口を介して前記手術部位に流体を供給して前記開創器の前記作業チャネル内に流体を充填する流入源と、
前記手術部位から流体を取り除く流出源と、
前記開創器に連結され、前記作業チャネルに充填された流体のレベルに基づいてセンサ入力信号を供給する流体レベルセンサと、
前記流体レベルセンサ、並びに前記流入源及び前記流出源から選択された少なくとも一方と通信し、前記センサ入力信号に基づいて、前記流入源によって供給される流体の流量、前記流出源によって取り除かれる流体の流量、又はこれらの両方を制御し、前記作業チャネル内で流体の閾値レベルを維持するように構成されたコントローラと、
を備えた手術システム。
【請求項14】
前記流体レベルセンサは、前記患者内に配置されるように構成された、前記開創器の一部に連結された、
請求項1~13のいずれか1つに記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
対象特許出願は、2018年10月29日に出願された米国仮特許出願第62/751,964号の優先権及びすべての利益を主張する。これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの外科手術は、多くの場合、身体の小さな開口部若しくは空洞内で、又は視界が制限された小さな切開部を介して、器具を用いて骨や組織を切除することを伴う。特に興味深いのは、脊椎の低侵襲手術(MIS)である。例えば、経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)では、問題のある椎間板は、細片化した骨を用いた椎体間スペーサを受け入れるように準備され、問題のある椎間板に隣接する2つの椎骨の固定(fusion)を促進する。図1を参照すると、椎間板の準備は、椎間関節を除去して、椎間板にアクセスすることを含んでいてもよい。線維輪を切除し(即ち、環状切除術)、線維輪に含まれる髄核の少なくとも一部を骨鉗子(rongeuers)により手動で取り除く(即ち、椎間板切除術)。また、椎間板に隣接する各椎骨のエンドプレートも準備され、やすり(rasp)及び様々なキュレットが手動で展開され、椎間板スペーサを受け入れる円形スペースを準備する。手動器具とは対照的に電動手術器具を使用することを考慮する場合、内視鏡又は手術用顕微鏡の明瞭な視野を提供し、電動手術器具の高速変形によって発生する熱を低減することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、当技術分野では、低侵襲脊椎手術を行う改善されたシステム及び方法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示の利点は、添付図面に関連して検討すると、以下の詳細な説明を参照することによってより理解されるので、容易に理解できるであろう。
【0005】
図1】特定の構造及び領域を識別する人間の脊椎の軸方向の断面図を示している。開創器が人体内に配置されて手術部位への作業チャネルを提供する。
図2】開創器、流入源、流出源、コントローラ、並びに開創器及び手術部位における流体の閾値レベルを維持するセンサを含んだ手術システムの第1変形例の説明図である。
図3】流出源と通信する第2のコントローラを含んだ手術システムの第2変形例の説明図である。
図4】流入源と通信する第2のコントローラを含んだ手術システムの第3変形例の説明図である。
図5】第1の流出源及び第2の流出源を含んだ手術システムの第4変形例の説明図である。
図6】開創器に結合された電気式流体感知部材を含んだセンサの1つの構成の説明図である。
図7】開創器と連通する測定容器、及び測定容器に連結された圧力センサを含んだセンサの他の構成の説明図である。
図8】開創器の内面と外面との間で定義された流入チャネル及び流出チャネルを含んだ、開創器の1つの構成の断面図である。
図9】結合部材、及び開創器の内面近くに配置された流入チューブ及び流出チューブによって規定される流入出チャネルの1つの構成を示す斜視図である。
図10】開創器に連結された傾斜センサを含んだ手術システムの他の変形例の説明図である。
図11】開創器における流体レベルを維持するステップを含んだ、手術システムを使用する方法の説明図である。
図12】Kワイヤに続いて複数の拡張器、開創器を連続して配置する方法の説明図である。
図13】内視鏡のステップを含んだ、手術システムを使用する方法の説明図である。
図14】内視鏡及び手術器具を含んだ、手術システムを使用する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、本開示の全体を通して参照される、特定の構造及び部位を備えた人間の脊椎の軸方向の断面を示している。図1のコンパスローズ(羅針図)を参照すると、解剖学的方向も、標準的な医学慣例、即ち、身体の中央へ向かう内側(M)、身体の両側面に向かう外側(L)、身体の前面に向かう前側(A)、及び身体の背面に向かう後側(P)に従って参照されることに留意されたい。脊椎は、椎間板(IVD)によって区切られる一連の椎骨(V)を含んでいる。図1は、椎間板(IVD)が平面で見えるように、1つの椎骨(V)の上部に配置された1つの椎間板(IVD)を示している。椎骨スペース(VS)は、椎骨(V)及びこれに隣接する椎骨(V)を含んだ、解剖学のボリュームと見做すことができる。椎骨(V)をさらに囲むものは、様々な筋肉組織及び血管構造である。椎骨(V)及び椎間板(IVD)の前面は、身体の主要な心臓血管として機能する、下大静脈(IVC)及び大動脈(AO)である。識別された筋肉組織は、一般的に椎骨(V)及び椎間板(IVD)の横側にある大腰筋(PM)と、一般的にそれらの後方にある脊柱起立筋(ES)と、を含んでいる。筋膜(FAS)及び脂肪組織が筋肉組織を覆い、その上の皮膚(OS)が筋膜(FAS)を覆っている。
【0007】
椎骨(V)は、棘突起(SP)及び横突起(TP)を含み、一般的にそれらの間に椎弓板(LAM)が延びている。椎弓根(PED)は、椎間(識別された上関節窩(SAF))と椎骨(V)の間で延びている。これらの組織は共同して、頭蓋から尾部方向に延びる脊髄(SC)を取り囲む椎骨(V)の一部を形成する。椎間板(IVD)は、繊維輪(AF)と、椎骨を一緒に保持する靭帯として機能しつつわずかな運動を可能にする、椎骨(V)と線維軟骨関節を形成する外側の線維輪である線維輪(AF)を含んでいる。線維輪(AF)は、椎間板スペース(IVDS)を定義することができる。椎間板スペース(IVDS)の内部には、髄核(NP)が配置されている。髄核(NP)は、ジェル状の構造であって、圧縮荷重下で椎間板(IVD)内のすべての方向に圧力を分散するように構成されている。
【0008】
上述したように、特に興味深いのは、低侵襲手法による椎間板スペース(IVDS)の準備である。低侵襲手術(MIS)に共通であり、図12に示すように、Kワイヤ(図示せず)、複数の拡張器58、及び開創器22が連続して配置され、関心のある領域の手術部位21への作業チャネル(working channel)28を提供する。いくつかの視覚化は、開創器22を介して提供される作業チャネル28によって実現することができるが、椎間板スペース(IVDS)内又は椎骨スペース(VS)内の意味のある視覚化は、特に、例えば、側面及び背面では不可能である可能性がある。また、上述した領域にアクセスできる視覚化装置(例えば、内視鏡など)を配置した場合であっても、特に、図13に示すような手術器具62を使用して組織を切除した後、血液及び骨の破片が視野を遮る可能性がある。
【0009】
ここで図2を参照すると、本開示の第1変形例による外科システム20が示されている。手術システム20は、近位端27、遠位端26、内面23、外面24、及び遠位端26と近位端27との間で延びる中心軸25を有する開創器22を含むことができる。開創器22では、遠位端26は、患者内に配置されて、手術部位21への作業チャネル28を提供するように構成されている。近位端27は、周囲に開放された開口部29を規定する。実行中の手術が経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)である場合など、いくつかの変形例では、開創器22の遠位端26は、椎間関節の除去後に、椎間板スペース(IVDS)に隣接して配置され、椎間板へのアクセスを提供して所望の組織を切除することができる。また、脊椎に関する内視鏡手術など、いくつかの内視鏡手術では、手術部位21は、実在する大気圧に晒すことができない。いくつかの場合には、手術部位21は、領域内の生理学的制約のために加圧することができず、他の場合には、それは非現実的である可能性がある。従って、特定の変形例では、開創器22の開口部29は、周囲に開放されて、手術部位21内の圧力を高めることとは対照的に、開創器22内の過剰物質(例えば、空気)が開口部29を通って逃げることによって、手術部位21が大気圧よりも高い圧力に晒されるのを防ぐ。
【0010】
手術システム20はまた、開創器22と連通して手術部位21に流体を供給し、手術部位21及び開創器22に流体41を充填する流入源31、並びに開創器22と連通して手術部位21から流体を取り除く流出源32を含んでいてもよい。例示的な流入源は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,238,010号明細書に開示されている。流入源31及び/又は流出源32は、例えば、吸引源、又は蠕動ポンプなどの陽圧ポンプを含んでいてもよい。流入源31及び流出源32は、例えば、開創器22に連結されたチューブによって、開創器と連通することができる。特定の構成では、流体は、水、生理食塩水などの適切な流体、好ましくは液体である。他の利点の中で、流体41は、図14に示すように、内視鏡66からの手術部位21の視覚化を改善するか、又は手術器具62及びその近くの組織の冷却を改善することができる。
【0011】
図2を引き続いて参照すると、手術システム20は、開創器22に連結されて、開創器22に充填された流体のレベルに基づいてセンサ入力信号44を供給するセンサ33を更に含んでいてもよい。流体のレベルは、遠位端26から開創器22まで延びる流体の高さ又は体積に関連することができる。手術システム20はまた、センサ33、流入源31及び流出源32の少なくとも1つと通信し、流入源31によって手術部位21に供給される流体の流量、流出源32によって手術部位21から取り除かれる流体の流量、又はこれらの両方を制御し、開創器22及び手術部位21において流体の閾値レベル48を維持するコントローラ43を含んでいてもよい。流体の閾値レベル48は、開創器22において維持される流体の所要の範囲に関係し、最小閾値48’及び最大閾値48”の少なくとも一方を含んでいる。最小閾値48’は、手術システム20の動作中、流体の所要の最小レベルが手術部位21及び開創器22内に存在することを保証するように定義することができる。例えば、最小閾値48’は、流体レベルが開創器22の遠位端26、例えば、開創器22の中心軸25に沿って上方に1/3、1/2又は3/4以上に維持されるように定義することができる。他の例では、最小閾値48’は、開創器22内に維持される流体のおおよその最小定常状態体積、例えば、0.5mL、0.1mL、1mL、5mLなどであってもよい。最大閾値48”は、例えば、手術システム20の動作中、開創器22から流体が溢れないことを保証するように定義することができる。
【0012】
今まで通り図2を参照すると、コントローラ43は、開創器22に充填された流体の閾値レベル48に応じたユーザ入力信号を受信して、ユーザ入力信号に基づいて流出源32及び/又は流入源31を制御するように構成されていてもよい。例えば、ユーザ入力信号は、手術システム20の動作中、手術部位21及び開創器22内で維持される流体の所要のレベルに関係していてもよい。ユーザ入力信号は、ボタン、GUI、つまみ(knob)、スライダなどのユーザ入力デバイス(図示せず)により供給されてもよい。ユーザ入力デバイスは、コントローラ43にユーザ入力信号を供給することが可能なインターフェースをオペレータに提供して、流体の閾値レベル48など、手術システム20の動作パラメータを調整する。
【0013】
手術システム20の動作の一例では、コントローラ43によって受信された流体の閾値レベル48の増加に関するユーザ入力信号は、コントローラ43が流入源31を制御して流入流量を維持しつつ、コントローラ43が流出源32を制御して流出流量を一時的に減少させる結果となる可能性がある。その代わりに、例えば、コントローラ43は、流出源32を制御して流出流量を制御しつつ、流入源31を制御して流入流量を一時的に増加させ、増加した流体の閾値レベル48内で流体41を維持することもできる。
【0014】
これとは逆に、コントローラ43に供給された流体の閾値レベル48の増加に関するユーザ入力信号は、コントローラ43が流入源31を制御して流入流量を維持しつつ、コントローラ43が流出源32を制御して流出流量を一時的に増加させる結果となる可能性もある。その代わりに、例えば、コントローラ43は、流出源32を制御して流出流量を維持しつつ、コントローラ43が流入源31を制御して流入流量を一時的に減少させ、減少した流体の閾値レベル48内で流体41を維持することもできる。
【0015】
付加的又は代替的に、コントローラ43はまた、開創器22に充填された流体の入替流量(turnover rate)に関するユーザ入力信号を受信するように構成されていてもよい。コントローラ43は、入替流量に関するユーザ入力信号に基づいて、流出源32及び流入源31の少なくとも一方を制御することができる。開創器22に充填された流体の入替流量は、手術部位21からの流出流量に調整された、手術部位21への同期流入流量に関連することができ、手術部位21への新しい流体の連続供給を保証し、破片を取り除いて明瞭な視覚化を容易にする。例えば、調整済の流体の流入流量及び流出流量が供給されると、手術部位21における流体の旋回運動は、手術部位21から破片を遠ざける結果となる可能性がある。
【0016】
入替流量は、状況に応じて、ユーザが上下に調整することができる。例えば、入替流量の増加に関するユーザ入力信号は、コントローラ43が流出源32及び流入源31を制御して、流出流量及び流入流量を夫々増加させる結果となる可能性がある。入替流量の増加は、手術部位21で生成された破片が手術部位21から所望の速さで排出されない状況にとって有利となる可能性がある。
【0017】
これとは逆に、入替流量の減少に関するユーザ入力信号は、コントローラ43が流出源32及び流入源31を制御して、流出流量及び流入流量を夫々減少させる結果となる可能性がある。入替流量の減少は、手術部位21で破片がほとんど生成されず、流体の旋回運動が不必要に視覚化を妨げる状況にとって有利となる可能性がある。
【0018】
図3を参照すると、第2変形例では、手術システム20は、他の構成要件の中で、開創器22と連通されて流体を取り除くとともに、流出入力信号53を供給する流出センサ50を有する流出源32を含むことができる。特定の構成では、流出源32は、吸引システム49であってもよい。吸引システム49は、例えば、ストライカーコーポレーション(ミシガン州カラマズー)によって製造され、商品名NEPTUNEで販売されている手術廃棄物管理システムであってもよい。この手術廃棄物管理システムは、数ある中でも、共有する米国特許第7,621,898号明細書、米国特許第8,216,199号明細書、米国特許第8,740,866号明細書、米国特許第8,915,897号明細書、及び米国特許第9,579,428号明細書に開示され、参照することでその全体が本明細書に組み込まれる。流出センサ50は、圧力センサ、流量センサ、又はその両方であってもよく、これを使用して流出源32の動作特性に関する流出入力信号53を生成することができる。例えば、流出源32の動作特性は、流出源32によって生成される圧力差、又は流出源32によって手術部位21から取り除かれる物質の質量流量/体積流量を含んでいてもよい。
【0019】
上述した第2変形例の手術システム20は、(上述した第1変形例のセンサと同様な)流体レベルセンサ33と、第1のコントローラ55と、第1のコントローラ55及び流出源32と通信する第2のコントローラ56と、を更に含んでいてもよい。そして、第1のコントローラ55は、受信した流出入力信号53及び流体レベルセンサ入力信号44に基づいて、流入源31を制御する。特定の変形例では、第1のコントローラ55は、流入源31及び流出源32の少なくとも一方と通信し、流体レベルセンサ入力信号44及び流出入力信号53に基づいて、流入源によって供給される流体の流量、流出源32によって取り除かれる流体の流量、又はこれらの両方を制御する。例えば、流出入力信号53がコントローラ(複数も可能)に供給され、流出源32の動作特性に関するフィードバックを提供し、流出源32の動作を補償して、開創器22における流体の閾値レベル48を維持するようにしてもよい。
【0020】
有利なことには、上述したフィードバックによって、コントローラ(複数も可能)が、流出源32の動作により、流体レベルセンサ33によって検出できるより速く、流体41のレベルの変化を予測することができる。より具体的には、流出源32の動作特性の変化は、開創器22における流体41のレベルの結果として生じる変化に先行する。このため、流体レベルセンサ33は、流出源32の動作特性の変化に応答して、開創器22における流体のレベルの変化を伝達する際の遅延を経験することができる。従って、提供された流出源32の動作特性のフィードバックは、手術システム20の過渡動作に対してスムーズな応答を促進する。
【0021】
図4に示す第3変形例では、手術システム20は、他の構成要素の中で、流入入力信号57を供給する流入センサ52を有する流入源31と、手術部位21から流体を取り除く(上述した先の変形例における流出源と同様な)流出源32と、を含んでいてもよい。流入センサ52は、圧力センサ、流量センサ、又はこれらの両方を含むことができ、これを使用して流入源31の動作特性に関する流入入力信号57を生成することができる。例えば、入力源31の動作特性は、流入源31によって生成される圧力差、又は流入源31によって手術部位21に供給される流体の質量流量/体積流量を含むことができる。
【0022】
上述した第3変形例の手術システム20はまた、開創器22に結合され、開創器22における流体41のレベルに反応する流体レベルセンサ入力信号44を供給する(上述した先の変形例における流体レベルセンサと同様な)流体レベルセンサ33と、第1のコントローラ55と、第1のコントローラ55及び流入源31と通信する第2のコントローラ56と、を含んでいてもよい。そして、第1のコントローラ55は、流入入力信号57及び流体レベルセンサ入力信号44に基づいて、流出源32を制御する。特定の変形例では、第1のコントローラ55は、流入源31及び流出源32の少なくとも一方と通信して、流体レベルセンサ入力信号44及び流入入力信号57に基づいて、流入源31によって供給される流体の流量、流出源32によって取り除かれる流体の流量、又はこれらの両方を制御する。例えば、流入入力信号57がコントローラ(複数も可能)に供給され、流入源31の動作特性に関するフィードバックを提供し、入力源31の動作を補償して、開創器22における流体の閾値レベル48を維持するようにしてもよい。
【0023】
有利なことには、上述したフィードバックによって、コントローラ(複数も可能)が、流入源31の動作により、流体レベルセンサ33によって検出できるより早く、流体41のレベルの変化を予測することができる。より具体的には、流入源31の動作特性の変化は、開創器22における流体41のレベルの結果として生じる変化に先行する。このため、流体レベルセンサ33は、流入源31の動作特性の変化に応答して、開創器22における流体のレベルの変化を伝達する際の遅延を経験することができる。従って、提供された流入源31の動作特性のフィードバックは、手術システム20の過渡動作に対してスムーズな応答を促進する。
【0024】
図5に示す第4変形例では、手術システム20は、他の構成要素の中で、流入入力信号57を供給する流入センサ52を有する流入源31と、開創器22と連通して手術部位21から流体を取り除くとともに、流出入力信号53を供給する流出センサ50を有する(上述した先の変形例と同様な)第1の流出源32と、を含んでいてもよい。手術システム20はまた、切断部材60を有する手術器具62の流出口63と連通して、手術部位21から流体を取り除くことができる第2の流出源51を含んでいてもよい。特定の変形例では、第2の流出源51は、例えば、集中壁吸引システム(a centralized wall suction system)であってもよい。集中壁吸引システムは、いくつかの構成では、手術システム20によって制御されなくてもよい。手術システム20は、第1のコントローラ55及び第1の流出源32と通信する第2のコントローラ56を更に含んでいてもよい。そして、第1のコントローラ55は、流入源31を制御して流入源31によって供給される流体の流量を制御し、第2のコントローラ56は、センサ入力信号44、流入入力信号57、及び流出入力信号53の少なくとも1つに基づいて第1の流出源32を制御して第1の流出源32によって取り除かれる流体の流量を制御し、開創器22における流体の閾値レベル48を維持して、第2の流出源51の動作による感知された変化を補償する。
【0025】
例示的なシナリオでは、流入源31及び第1の流出源32がコントローラ43によって制御されて、開創器22及び手術部位21における流体の閾値レベル48を維持し、ユーザは、第2の流出源51と連通した手術器具62、例えば、吸入源に連結されたシェーバを挿入することができる。第2の流出源51が第1の流出源32から電気的に独立していてもよいため、コントローラ43は、流体41に導入されるシェーバに関連する吸引を予期しなくともよい。シェーバの挿入動作及び吸引動作は、最初に、開創器22に充填された流体41のレベルを迅速に減少させることができる。流体41が完全に吸引されて流体が残らないようにすることは重要である。従って、コントローラ43は、これを迅速かつ応答性のよい方法で補償するように構成されている。コントローラ43は、流入源31の流入流量を増加させることによって、第1の流出源32の流出流量を減少させることによって、又はこれらの両方によってそうすることができる。シェーバが解剖学的構造内で動作状態にある間、新しいパラメータ(複数も可能)を維持することができる。同様に、シェーバが開創器22から取り外されると、新しいパラメータ(複数も可能)は、変更されないままであっても、望ましくない量の流体が、開創器22内に迅速に蓄積されるか、又は開創器22から溢れる結果となるおそれがある。コントローラ43は、流入源31の流入流量を減少させるか、第1の流出源32の流出流量を増加させるか、又はこれらの両方によって、これを迅速かつ応答性よく補償するように構成されている。上述の機能は、流体の最小閾値48’が開創器22において維持され、流体の最大閾値48”が特定のユーザの介入又は入力の要求なしに超えないことを有利に保証する。換言すると、外科医は、シェーバの挿入又は取り外しの前に、手術システム20のパラメータ(複数も可能)を調整するために手術を中止する必要はない。また、この機能は、独立して動作するように構成された(即ち、手術システム20に電気的に統合されていない)、市販型又は独立型の手術器具に特によく適している可能性がある。
【0026】
いくつかの変形例では、複数のコントローラを使用して手術システム20の様々な構成要素を動作させているが、例えば、複数のサブコントローラを有する単一のコントローラを使用して同様な能力を提供することも考えられる。
【0027】
ここで図6を参照すると、1つの変形例では、上述したセンサ33は、開創器22の内面23又は外面24の周りに配置された電気式流体感知部材34を含んでいてもよく、上述したコントローラ(複数も可能)にセンサ入力信号44を供給する。電気式流体感知部材34は、開創器22における流体のインピーダンス又は抵抗など、インピーダンス又は抵抗を感知するように構成することができる。図7に示す追加の変形例では、開創器22は、開創器22と連通する測定容器36を更に含んでいてもよく、センサ33は、測定容器36内の圧力を測定して上述したコントローラ(複数も可能)にセンサ入力信号44を供給するように構成された圧力センサ37を含んでいる。特定の変形例では、センサ入力信号44は、センサ33によって確認された開創器22まで延びる流体の高さ又は体積に関連していてもよい。上述したコントローラ(複数も可能)は、流体の閾値レベル48とセンサ入力信号44とを比較し、流体の閾値レベル48とセンサ入力信号44との比較に基づいて、流出源32及び流入源31の少なくとも一方を制御して、流体の閾値レベル48内で流体41を維持することができる。
【0028】
ここで図8を参照すると、開創器22の変形例が示されている。開創器22は、流入ポート71及び流出ポート72の少なくとも一方を含んでいてもよい。流入ポート71は、流入源31と連通された流入チューブ74を受けて流入経路77を規定するように適合され、流出ポート72は、流出源32と連通された流出チューブ75に連結されて流出経路78を規定するように適合されている。図8は、開創器22に連結された流入ポート71及び流出ポート72、より具体的には、開創器22の遠位端26の近傍を示している。説明の目的のために、流入ポート71及び流出ポート72は、開創器22の反対側に位置しているが、他の位置及び配置も本開示の範囲内である。流入ポート71及び流出ポート72は、流入源31と流出源32との間の連通を夫々提供する、ルアーフィッティング、又は他の適切な接続を使用して、流入チューブ74及び流出チューブ75に夫々取り外し可能に連結されるように適合されている。
【0029】
図8は、作業チャネル28から少なくとも部分的に分離された流入出チャネル79を規定する開創器22を示している。図示された変形例の流入出チャネル79は、開創器22の内面23と外面24との間で規定されている。換言すると、流入出チャネル79は、開創器22の内面23と外面24との間、並びに遠位端26と近位端27との間で延びる環状のスペースであってもよい。近位端27の流入出チャネル79は、流入ポート71及び流出ポート72の少なくとも一方と連通して配置されるように適合されている。遠位端26の流入出チャネル79は、流体が遠位端26から流出するように開口していてもよい。図8に示す変形例では、遠位端26の流入出チャネルは閉じており、内面23は、流入出チャネル79と作業チャネル28との間を連通する複数の開窓(fenestrations)80を含んでいる。開窓80は、例えば、内面23の少なくとも一部、特に、図8に示すように、内面の下部の周りに円周方向に配置された開口であってもよい。図8は、流入チューブ74及び流出チューブ75のそれぞれに連通された、流入出チャネル79を示している。1つの変形例では、流入出チャネルを規定する環状のスペースは、開創器22の縦方向に延びる複数の仕切り(図示せず)を含み、複数の仕切りが、流入チューブ74から受けた流入流体と流出チューブ75によって取り除かれる流体との間の流体仕切りを提供するようにしてもよい。
【0030】
流入出チャネル79と開創器22との間を連通する他の方法も考えられる。開創器22はまた、図9に示すように、開創器22に結合されるように構成された結合部材81を含んでいてもよい。結合部材81は、開創器22の作業チャネル28内にぴったりと挿入されて締まり嵌めによって固定されるようなサイズのプラグ82とすることができる。アクセス開口部83は、1つ以上の手術器具、例えば、切断器具62又は内視鏡66を受け入れるのに適切なサイズのアクセス開口部83を備えた結合部材81によって規定することができる。開創器22はまた、結合部材81に夫々結合される、流入チューブ74及び流出チューブ75を更に含んでいてもよい。流入チューブ74及び流出チューブ75のそれぞれは、結合部材81から遠位側へと延びている。流入チューブ74の遠位端86は、結合部材81から所望の距離を隔てて、例えば、開創器22の遠位端26の近傍に配置されている。同様に、流出チューブ75の遠位端88は、結合部材81から所望の距離を隔てて、例えば、開創器22の遠位端26の近傍に配置されている。図9は、流出チューブ75の遠位端88の遠位側に配置された、流入チューブ74の遠位端86を示している。この配置は、開創器22からの破片で満たされた流体を流出チューブ75が吸い上げることを促進し、流入チューブ74は、手術部位21のより近くに新しい流体を供給することを促進することができる。この配置はまた、上述した旋回効果を提供し、内視鏡66の視界から破片を取り除くことができる。図示の実施形態では、流入チューブ74及び流出チューブ75は、並んで配置され、さらに開創器22の内面23の近傍に配置されている。内面23の近傍に流入チューブ74及び流出チューブ75が配置されていると、実質的に作業チャネル28の全体が、とりわけ、手術器具62及び/又は内視鏡66がアクセス開口部83を通過するのを妨げないままとなる。
【0031】
ここで図10を参照すると、他の変形例では、上述した開創器22は、上述したコントローラ(複数も可能)のいずれかと通信し、開創器22の向きに関する信号を生成するように構成された傾斜センサ35を更に含んでいてもよい。上述したコントローラ(複数も可能)は、感知された開創器22の向きに基づいて、流入源32及び流出源31の少なくとも一方を制御することができる。例えば、感知された向きが直立からの定義された偏差を超えていると、コントローラ(複数も可能)は、手術システム20が自動的に作動しないようにすることができる。例えば、傾斜センサ35は、加速度計、ジャイロスコープ、又は向きを特定する他のセンサを含んでいてもよい。同様に、手術システム20は、外科手術中に比較的安定したままであることが望まれる、手術システム20の開創器22の突然の動きを検知するように構成された、追加又は個別の加速度計(複数も可能)又はジャイロスコープ(複数も可能)を含んでいてもよい。所定の閾値を超えた突然の動きが検知されると、コントローラ(複数も可能)は、手術システム20の動作を終了することができる。さらに、手術システム20は、デバイスセンサ(図示せず)が開創器22に連結されていない限り、手術システム20の意図しない動作を防ぐように構成されたデバイスセンサを含んでいてもよい。一例では、デバイスセンサは、開創器22に結合されて補完的なリーダによって検知されると、本開示の全体を通して説明した方法で手術システム20の動作を許可する、読取可能なタグ(例えば、高周波認識(RFID)タグ)を備えたクリップであってもよい。これとは逆に、補完的なリーダによって読み取り可能なタグが検知されないと、手術システム20が動作しないようにしてもよい。
【0032】
手術システム20は、患者又は手術部位内の他の望ましい構造に対する開創器22の位置を保持するように適合された、保持部材30を含んでいてもよい。図2は、開創器22に強固に結合されたフランジを含む保持部材30を示している。保持部材30は、ロボット、例えば、手術ナビゲーションシステム(図示せず)を利用して、特に、患者の動きに応答して開創器22の姿勢(即ち、位置及び向き)を正確に維持する、MAKO(登録商標)ロボテックアーム支援技術(マコサージカルコーポレーション,フィートローダーデール,フロリダ)に結合されて動作することができる。
【0033】
他の変形例では、偏向可能なバルブ(図示せず)を開創器22に結合して、開口部29内に配置するようにしてもよい。一例では、偏向可能なバルブは、ダックビルバルブである。一例では、偏向可能なバルブは、手術器具62(複数も可能)によって突き刺されるように適合された材料(例えば、エラストーマ)から形成されたダイアフラムである。バルブと器具(複数も可能)の間の部分的なシールを提供して、開創器22に維持される流体のレベルが大気圧又はその近くに留まるようにし、作業チャネル28から開口部29を通って流体が漏出することを防いてもよい。開創器22に照明源(図示せず)を結合して、作業チャネル28を介して照明を提供するように構成することも考えられる。
【0034】
本開示はまた、患者の脊椎の手術部位21において外科手術を行う様々な方法に関する。図11に示す1つの変形例では、この方法は、患者の背部に開創器22を配置させて、開創器22の遠位端26を患者の脊椎の手術部位21に隣接して配置するステップと、流入源31から手術部位21に流体を供給して、手術部位21及び開創器22に流体41を充填するステップと、センサ33を使用して開創器22に充填された流体のレベルを感知するステップと、感知された開創器22の流体のレベルに基づいて流入源31、流出源32又はこれらの両方を制御して、開創器22内に流体を維持するステップと、を含んでいる。例えば、開創器22内に維持された流体41は、流体の閾値レベル48であってもよい。他の利点の中でも、開創器22内に流体を維持することで、内視鏡66からの手術部位21の視覚化により外科医を支援、又は手術器具62(図9では図示せず)及びその近くの組織の冷却を改善することができる。
【0035】
本開示の様々な方法の特定の変形例では、この方法は、開創器22内で維持される流体の閾値レベル48に関するコントローラ43へのユーザ入力を受け取って、ユーザ入力信号に基づいて流出源32及び流入源31を制御するステップを更に含んでいる。ユーザ入力信号は、ボタン、GUI、つまみ、スライダなど、コントローラ43にユーザ入力信号を供給可能なインターフェースをオペレータに提供して、流体の閾値レベル48など、手術システム20の動作パラメータを調整する、ユーザ入力デバイス(図示せず)によって供給することができる。例えば、ユーザ入力信号は、手術システム20の動作中に、手術部位21及び開創器21内で維持される所要の流体レベルに関連していてもよい。また、本開示の方法の特定の追加の変形例では、この方法は、流体の入替流量に関するコントローラ43へのユーザ入力信号を受け取って、ユーザ入力信号に基づいて流出源32及び流入源31を制御するステップを更に含んでいる。開創器22に充填された流体の入替流量は、破片を取り除いて明確な視覚化を容易にする、手術部位21からの流体の流出流量に調整された、手術部位21への流体の同期流入流量に関連していてもよい。流体の同期流入流量は、状況による必要性に基づいて、ユーザによって上下に調整することができる。
【0036】
図12を参照すると、本開示の方法のさらなる変形例では、開創器22を配置する上述のステップは、Kワイヤ(図示せず)、直径が徐々に増加する複数の拡張器58、遠位端26及び近位端27を有する開創器22を連続して配置し、複数の拡張器58及び開創器22の遠位端26が患者の脊椎の手術部位21に隣接した位置に置くステップと、複数の拡張器58及びKワイヤを取り外し、開創器22が患者の脊椎の手術部位21に隣接した位置への作業チャネル28を提供したままとするステップと、を更に含んでいてもよい。
【0037】
脊椎に関する手術などのいくつかの内視鏡手術では、手術部位21は、実質的に大気圧を条件とすることができない。いくつかの例では、手術部位21は、領域内の生理学的制約により加圧されない可能性がある一方、他の例では、それは非現実的でもある。従って、他の変形例では、流入源31により手術部位21に流体を供給するステップは、手術部位21を大気圧(例えば、1atm)より高い圧力に晒すことなく、手術部位21に流体を供給するステップを更に含んでいる。
【0038】
図9,11及び12を参照すると、内視鏡66の遠位端は、開創器22を通って挿入されて、流体41内に沈められてもよい。本出願に適した1つの例示的な内視鏡66は、ストライカーコーポレーション(ミシガン州カラマズー)によって製造された、1181HD3チップカメラを含んでいる。カメラ(又は照明源)が、手術器具62のノーズチューブ(nosetube)の遠位端の近傍(又はシェーバの外管の遠位端若しくはその近傍)に連結されていてもよいことが考えられる。さらに、レンズ又は画像センサが、操作可能なアセンブリの構成要素、即ち、ユーザからの入力に応答して患者の解剖学的構造内で結合するように構成された構成要素であってもよいことが考えられる。本出願に適した1つの例示的な操作可能なカメラは、2017年2月10日に出願された共有の国際公開第2017/139304号パンフレットに開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。その代わりに、内視鏡66の代わりに、顕微鏡を使用してもよい。
【0039】
図9,11及び12に示す内視鏡66は、遠位端とその反対側の近位端との間を規定するシャフトを含んでいる。内視鏡66の遠位端又はその近傍は、内視鏡66のハンドピース又はその近傍にあるカメラと通信するレンズ又は画像センサである。シャフトの近位端は、医師が把持して操作するように適合されたハンドピースに連結することができる。シャフトの遠位端、より具体的には、レンズ又は画像センサは、流体41内に沈められている。特定の構成では、外科手術の少なくとも一部の間、手術器具62を操作して、内視鏡66の視野内で切断部材60を回転させてもよい。流体41から流入又は流出が取り除かれると、流体の入替が内視鏡66の視野の妨げを最小にし、流体41内の組織切除を行う利点をさらに実現する。例えば、流入又は流出が提供又は取り除かれると、旋回効果が生じて、内視鏡66の遠位端のレンズ又は画像センサから破片を遠ざけることができる。
【0040】
いくつかの変形例では、この方法は、流体41内に手術器具62の切断部材60を沈め、流体41内に沈められた手術器具62を動作させて組織を切除するステップを更に含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、沈められるとは、流体41内に配置、及び/又は流体の表面下に配置されることを意味する。手術器具62を動作させて流体41内で切断部材60を回転させることで、椎間板スペース(IVDS)内で組織を切除する。バードリルヘッド(a bur head)を含む切断部材60を備えた手術器具62について、この方法は、バードリルヘッドの全体を沈めることを含んでいてもよい。流体41内で組織切除を行う利点は、切断部材60の略全体及びその周囲の組織が流体と直接接触し、これによって流体への熱伝達を最大化することで容易に実現される。切断部材60及びその周囲の組織の潜在的な温度上昇が制限され、切断部材60の切断効率を向上、及び/又はその周囲の組織の損傷の可能性を低減することができる。
【0041】
特に興味深い他の例示的な手術器具62は、シェーバである。シェーバは、アウターチューブと、アウターチューブ内に回転可能に配置された管状駆動シャフトと、を含んでいる。管状駆動シャフトは、各アウターチューブ内のウィンドウと管状駆動シャフトとの間を規定する切断部材60を備えている。手術器具62の流出口63(図10及び11参照)は、切断部材60を規定するウィンドウと連通していてもよい。このウィンドウは、手術器具62が管状駆動シャフトを回転させて組織を切除する場合、流体41内に沈められるように適合されている。流出口63が流体41内に沈められると、シェーバによってもたらされる強力な吸引の利点が十分に実現される。例示的なシェーバは、ESSx(登録商標)マイクロデブリダーシステム(ストライカーコーポレーション(ミシガン州カラマズー))、及び/又は共有の米国特許第6,152,941号明細書、米国特許第6,689,146号明細書、米国特許第7,717,931号明細書、米国特許第8,475,481号明細書に開示されたシェーバを含んでいる。各明細書は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切な手術器具62は、ルータ、高周波(RF)アブレーション用電極、鋸、又は鋸ドライバによって受け入れられるように構成されたブレード、メス、超音波カッタ(sonopet)、キュレット、やすり、トロカールスリーブ、生検鉗子、結紮装置、組織ステープラ、組織はさみ、ストライカーコーポレーション(ミシガン州カラマズー)によって製造されたS2πDriver(登録商標)、Sumex(登録商標)、Maestro(登録商標)及びArilドリルシステム、及び/又は内視鏡ハンドピースによって受け入れられるように構成された他の内視鏡切断装置を含むことができる。
【0042】
本開示の全体を通して説明したように、手術システム20は、流体41内、例えば、椎間板スペース(IVDS)及び/又は椎骨スペース(VS)内に沈められて組織を切除するように適合された切断部材60を備えた手術器具62を含んでいる。上述したバードリルシステム及びシェーバシステムは、真っ直ぐでも曲がっていてもよい。1つの例示的な手術器具62は、共有の国際公開第2016/054140号パンフレットに開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本開示の手術システム20は、ナビゲーション支援であってもよいことが考えられる。例えば、1つ以上のナビゲーションマーカ(図示せず)は、共有の米国特許第9,901,407号明細書に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるように、手術室の光学カメラによって検知可能なナビゲーションマーカを有する適切な位置で患者に結合することができる。ナビゲーションマーカは、椎間板スペース(IVDS)内における手術器具62の切断部材60の術中位置の決定を容易にすることができる。付加的に又は代替的に、手術器具62及び内視鏡66のそれぞれは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第8,657,809号明細書、米国特許出願公開第2014/0135617号明細書、及び米国特許出願公開第2014/0243658号明細書に開示されている、コンピュータ実装ナビゲーションシステムの構成要素及び特徴を含むことができる。また、開創器22は、1つ以上のナビゲーションマーカを含んでいてもよい。
【0043】
手術システム20によって提供される手術器具62、内視鏡66及び流出源32の利用は、これらが椎間板スペース(IVDS)に配置されると、椎間板スペース(IVDS)から手術器具62を取り外す必要性を軽減又は不要とすることができる。著しい改善は上述した手動の骨鉗子を使用した既存の方法を超える。他の利点の中でも、上行性及び/又は下行性の神経根に対する神経損傷のリスクが軽減される。また、手術器具62の使用中の内視鏡66の改善された視覚化は、椎体間スペーサを配置するに先立って、髄核(NP)のより徹底的で標的化された除去、及びエンドプレートのより徹底的で標的化された準備を提供する。椎間板スペース(IVDS)の十分な準備は、視覚化されていない手動の器具に関連付けられた基本的な方法に依存する必要性がなく、視覚的に確認することができる。
【0044】
本開示は、経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)及び椎弓切除外科手術の特定のステップという面で、手術システム20を説明した。しかしながら、流体41内で行われるのによく適した他の脊椎手術には、側方経路腰椎椎体間固定術(XLIF)、後方経路腰椎椎体間固定術(PLIF)、椎間孔拡大術、椎間関節突起切除術などが含まれるが、これらに限定されない。また、流体41内で手術を行う上述のシステム及び方法は、外科手術の間、他の開口部、人体内の空洞、及び/又は患者の皮膚及び/又は骨を介して切除された貫通開口部を必要とする、他の手術によく適している可能性がある。例には、耳腔、鼻腔、口腔又は眼腔に供給される流体が含まれている。さらなる例には、脳神経外科手術中に開頭部に供給される流体、整形外科手術中に関節腔に供給される流体、又は心臓胸部外科手術中に軟組織の空所スペースに供給される流体が含まれている。
【0045】
手術システムのいくつかの変形例は、上述の説明で検討してきた。しかしながら、本明細で検討した変形例は、網羅的、又は本発明を特定の形態に限定することを意図するものではない。使用される用語は、限定というよりはむしろ説明の言葉の性質を意図している。上記の教示を考慮すれば多くの修正及び変形が可能であり、本発明は、具体的に記載されている以外の方法で実施することができる。
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