(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】CMMRDの診断方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20241031BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALN20241031BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6806 Z
(21)【出願番号】P 2021552168
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2020055915
(87)【国際公開番号】W WO2020178400
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-20
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デュヴァル,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】クレ,フロランス
(72)【発明者】
【氏名】ギレルム,エレル
(72)【発明者】
【氏名】ブハール,オリヴィエ
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109182525(CN,A)
【文献】国際公開第2016/127067(WO,A1)
【文献】Human Mutation,2019年02月10日,Vol. 40,pp. 649-655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12Q1/00-3/00
DB名 BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要としている患者における
体質性ミスマッチ修復欠損(CMMRD
)癌又は
マイクロサテライト不安定性(MSI
)白血病/リンパ腫を診断する
ためのデータを提供する方法であって、
前記方法は以下:
i)前記患者から得られたサンプルからDNAを抽出する
工程;
ii)前記患者のDNAから(x)個の核酸の長さを有するリピート配列の
数をシーケンシングす
る工程であり、用語「リピート」は、特定の遺伝子座について反復している核酸の数を示す;
iii)安定マイクロサテライト癌を有する少なくとも1人の対照対象(
マイクロサテライト安定性(MSS
)対照対象)について
、工程i)及びii)を繰り返す
工程;
iv)前記患者及び前記MSS対照対象については、1遺伝子座あたりのリードカウン
トのlog10変換
を計算し、そして、前記MSS対照対象から得られた各リピートについては、極限回帰を行う
工程;
v)以下の式:
【化4】
(式中、N=シーケンシングされたリピート
配列の最大数;n=
考慮されるリピート配列の数、Δ=リードの数(それを必要としている患者のサンプル)-リードの数(MSS対照対象からの極限回帰)
であり、用語「リードの数」は、特定の遺伝子座について(x)個の核酸の長さを有するリピート配列が反復している回数を示す)
を処理することによってms.スコア
を計算する工程;
vi)前記それを必要としている患者で得られたms.スコアを前記MSS対照対象のms.スコアと
数学的に比較する
工程;及び
vii)前記それを必要としている患者のms.スコアが前記MSS対照対象のms.スコアを上回る場合、前記それを必要としている患者がCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を有すると結論付ける
ためのデータを提供する工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記シーケンシングが、第二世代シーケンシング
法によって操作される、請求項1記載
の方法。
【請求項3】
10~10000個の数の遺伝子座に対して前記シーケンシングを行う、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記リードの数が、500~400
0である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記リードの数が、1000~4000である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記核酸のリピートの長さ(x)が、8~3
0である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記核酸のリピートの長さ(x)が、8~14である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記CMMRD癌が、CMMRD結腸直腸癌である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記
少なくとも1人のMSS対照
対象が、1~30
まで変化する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記DN
Aが、
生殖細胞DNAである、請求項1~7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それを必要としている患者におけるCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を診断する方法に関する。
【0002】
背景技術:
リンチ症候群(LS)は、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子(すなわち、MLH1、MSH2、MSH6、又はPMS2)におけるヘテロ接合性生殖細胞系列変異によって引き起こされる遺伝性癌症候群である。体質性MMR欠損(CMMRD)は、両アレル生殖細胞系列MMR病原性変種を有する患者において観察される特徴的かつ稀な遺伝性癌症候群である(Online Mendelian Inheritance in Man [OMIM]データベースアクセッション番号276300)。LS患者におけるMMR欠損(dMMR)癌がほとんど成人期に発生するのに対し、CMMRDは、早発性の結腸直腸癌、リンパ腫/白血病、及び脳腫瘍を含む複数のMMR欠損腫瘍を小児期に発症することを特徴とする(1、2)。これら腫瘍は、通常、非常に高悪性度であり、このことは、CMMRDの小児及びその家族にとって適切な処置及び監視の戦略を採用するためには、CMMRDを迅速に検出する必要があることを強調している(3)。予想できるように、MMR欠損新生物を特徴付ける高い変異及びネオアンチゲンの負荷は、最近、CMMRD患者における免疫チェックポイント阻害に対する持続的な応答と関連付けられた(4、5)。
【0003】
CMMRDの診断は、幾つかの理由で困難である。第一に、この稀な癌症候群でみられる腫瘍は広範囲にわたり、そして、明確な疾患固有の臨床的特徴がないことである。これに関して、本発明者らは、最近、CMMRD疑いを診断するためのスコアリングシステムを提案した 2。第二に、患者の約30%において機能的意義が未知である変種(VUS)が検出され、これによって有益な結果が得られないことである(6)。
【0004】
発明の概要:
本研究において、本発明者らは、患者からの初代血液細胞(PBC)のDNA配列解析に基づいてCMMRDの診断を劇的に簡略化及び改善することができる検査法を開発することを目的とした。超並列シーケンシングを用いて、構成的なMMR欠損の主なゲノム的及び機能的な帰結であるMSIが、任意の形質転換のかなり前にCMMRD PBCで発生していた可能性が高い可能性について調べた。
【0005】
したがって、本発明は、それを必要としている患者におけるCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を診断する方法に関する。具体的には、本発明は、その特許請求の範囲によって定義される。
【0006】
発明を実施するための形態:
本発明の第1の態様は、それを必要としている患者におけるCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を診断する方法であって、i)該患者から得られたサンプルからDNAを抽出することと、ii)該患者のDNAから(x)個の核酸の長さを有するリピート配列の数(N)をシーケンシングすることと、iii)安定マイクロサテライト癌を有する少なくとも1人の対照対象(MSS対照対象)について工程i)及びii)を繰り返すことと、iv)該患者及びMSS対照対象については、1遺伝子座あたりのリードカウントをlog10変換し、そして、該MSS対照対象から得られた各リピートについては、極限回帰を行うことと、v)以下の式:
【化1】
(式中、N=シーケンシングされたリピートの最大数;n=リピート配列の数、Δ=リードの数(それを必要としている患者のサンプル)-リードの数(MSS対照対象からの極限回帰))を処理することによってms.スコアを得ることと、vi)該それを必要としている患者で得られたms.スコアを該MSS対照対象のms.スコアと比較することと、vii)該それを必要としている患者のms.スコアが該MSS対照対象のms.スコアを上回る場合、該それを必要としている患者がCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を有すると結論付けることと、を含む方法に関する。
【0007】
本明細書で使用するとき、極限回帰は、検査した患者の較正/参照のために本明細書では使用される。本発明によれば、MSS対照対象から得られた各リピートの極限回帰は、最低相関係数及び回帰勾配を求めることによって行われる。
【0008】
本発明によれば、MSS対照対象から得られた各リピートについて得られた極限回帰は、患者がCMMRD又はMSI白血病/リンパ腫を有する場合に該患者が超えるであろうlog10変換されたリードカウントを予測するためのモデルとして使用される。本発明によれば、1人を超えるMSS対照対象が使用される場合、得られる極限回帰は、全てのMSS対照対象についてのグローバル極限回帰となる。
【0009】
したがって、この方法(全てのサンプル(患者及びMSS対照)についてはlog10及びMSS対照については極限回帰)を使用したとき、そして、患者及びMSS対照対象のms.スコアをMSS対照の最高ms.スコアにリスケールしたとき、患者がCMMRD又はMSI白血病/リンパ腫を有する場合はms.スコアが1を上回るであろう(例えば、
図2を参照)。
【0010】
したがって、本発明の別の実施態様は、それを必要としている患者におけるCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を診断する方法であって、i)該患者から得られたサンプルからDNAを抽出することと、ii)該患者のDNAから(x)個の核酸の長さを有するリピート配列の数(N)をシーケンシングすることと、iii)少なくとも1人のMSS対照対象について工程i)及びii)を繰り返すことと、iv)該患者については、1遺伝子座あたりのリードカウントをlog10変換し、そして、該MSS対照対象から得られた各リピートについては、1遺伝子座あたりのリードカウントをlog10変換し、そして、極限回帰を行うことと、v)以下の式:
【化2】
(式中、N=シーケンシングされたリピートの最大数;n=リピート配列の数、Δ=リードの数(それを必要としている患者のサンプル)-リードの数(MSS対照対象からの極限回帰))を処理することによってms.スコアを得ることと、vi)該それを必要としている患者で得られたms.スコアを該MSS対照対象のms.スコアと比較することと、vii)該それを必要としている患者のms.スコアが該MSS対照対象のms.スコアを上回る場合、該それを必要としている患者がCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を有すると結論付けることと、を含む方法に関する。
【0011】
したがって、本発明の更に別の実施態様は、それを必要としている患者におけるCMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫を診断する方法であって、i)該患者から得られたサンプルからDNAを抽出することと、ii)該患者のDNAから(x)個の核酸の長さを有するリピート配列の数(N)をシーケンシングすることと、iii)少なくとも1人のMSS対照対象について工程i)及びii)を繰り返すことと、iv)該患者については、1遺伝子座あたりのリードカウントをlog10変換し、そして、該MSS対照対象から得られた各リピートについては、1遺伝子座あたりのリードカウントをlog10変換し、そして、最低相関係数及び回帰勾配を求めることによって極限回帰を行い、そして、該患者がCMMRD又はMSI白血病/リンパ腫を有する場合に該患者が超えるであろうlog10変換されたリードカウントを予測するためのモデルとしてこの極限回帰を使用することと、v)以下の式:
【化3】
(式中、N=シーケンシングされたリピートの最大数;n=リピート配列の数、Δ=リードの数(それを必要としている患者のサンプル)-リードの数(MSS対照対象からの限界回帰))を処理することによってms.スコアを得ることと、vi)該それを必要としている患者で得られたms.スコアを該MSS対照対象のms.スコアと比較することと、vii)該それを必要としている患者のms.スコアが該MSS対照対象のms.スコアを上回る場合、該それを必要としている患者がCMMRD癌を有すると結論付けることと、を含む方法に関する。
【0012】
本明細書で使用するとき、「体質性ミスマッチ修復欠損」のための用語「CMMRD」は、典型的には乳幼児期、小児期、又は若年成人期に存在する遺伝性癌素因を意味する。CMMRDを有する個体は、血液悪性腫瘍、脳腫瘍、結腸、小腸、子宮、胃、泌尿器、及び他の種類の癌を発症するリスクがある。CMMRDを有する個体は、両アレルMSH2変異を有するヒトの場合リスクが16倍高いと推定される。該個体は、生涯を通じてこれら癌であるという診断を何度も受ける可能性がある。更に、これら個体では「カフェオレ」斑が報告されている。CMMRDは、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子における変異によって引き起こされる:MLH1、MSH2、MSH6、及びPMS2。ヒトがMMR遺伝子のうちの1つに1つの変異を有する場合、リンチ症候群を有する。CMMRDを発症するには、ヒトが同じMMR遺伝子に2つの遺伝子変異を有していなければならない。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「MSI癌」は、少なくとも2つのマイクロサテライトマーカーで不安定性が検出されることを意味する。対照的に、不安定性が1つのマイクロサテライトマーカーでしか検出されないか又は全く検出されない場合、その癌は「MSS癌」である。この定義は、ペンタプレックス法によって診断を行った場合にのみ有効である(例えば、Suraweera N et al., Evaluation of tumor microsatellite instability using five quasimonomorphic mononucleotide repeats and pentaplex PCR. Gastroenterology. 2002又はBuhard O et al., Multipopulation analysis of polymorphisms in five mononucleotide repeats used to determine the microsatellite instability status of human tumors. J Clin Oncol.2006を参照)。「MSS癌」とは、安定なマイクロサテライトを有する癌を意味する。「MSI癌」とは、不安定なマイクロサテライトを有する癌を指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、用語「リピート」は、特定の遺伝子座について反復している核酸(又は核塩基)の数を意味する。したがって、用語「リピート」は、核酸の長さを意味する。例えば、核酸Aについてのリピートが12である場合、これは、核酸Aが特定の遺伝子座において連続して12回反復していることを意味する。本発明によれば、本明細書で使用するとき、用語「リピート」は、「マイクロサテライト」と同じ意味である。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「リピートの数」又は「リードの数」とは、特定の遺伝子座について特定の長さ(例えば12個の核酸A)の「リピート」が反復している回数を意味する。したがって、「リピートの数」とは、所与のリピートを含有する遺伝子座の数も意味する。
【0016】
使用するとき、用語「リード」は、シーケンサ機器によって生成されたDNA断片を意味し、このDNA断片は、シーケンシングされる遺伝子座の正確なコピーであり、そして、その核酸の含有量及び配列順序を求めるために使用される。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「N」は、検査される遺伝子座の数にも対応する、1回の特定のシーケンシングアッセイの最大リピート数を意味する。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「サンプル」とは、DNA、特に生殖細胞DNAを含有する傾向のある対象から得られた任意の生物学的サンプルを指す。典型的には、サンプルは、血液、血漿、又は血清等の体液サンプルを含むが、これらに限定されない。特定の実施態様では、サンプルは、末梢血単核細胞(PBMC)、初代血液細胞(PBC)、又は腫瘍循環リンパ球様細胞である。特定の実施態様では、PBMC又はPBCから得られた生殖細胞DNAを、CMMRDの診断に使用する。特定の実施態様では、本発明は、サンプルが癌性循環リンパ球様細胞である場合、そして、これら癌性細胞からのDNAをシーケンシングする場合、MSI白血病/リンパ腫の診断にも有用である。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「MSI白血病/リンパ腫」は、マイクロサテライト不安定性を有する全ての白血病及びリンパ腫を意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「患者」は、哺乳類を意味する。典型的には、本発明に係る患者とは、CMMRD癌又はMSI白血病/リンパ腫の癌に罹患している任意の対象(好ましくはヒト)を指す。また、用語「MSS対照対象」とは、MSS癌を有する対象を指す。本発明によれば、使用するMSS対照対象の数は、1~30又はそれ以上であってよい。したがって、数人のMSS対照対象を用いて、本発明の方法に従って極限回帰を行うことができる。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「核酸」又は「核塩基」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、そして、コード又は非コードの核酸配列を指す。核酸は、DNA(デオキシリボ核酸)及びRNA(リボ核酸)の核酸を含む。したがって、核酸の例は、DNA、mRNA、tRNA、rRNA、tmRNA、miRNA、piRNA、snoRNA、及びsnRNAを含むが、これらに限定されない。したがって、核酸は、ゲノム(すなわち、核又はミトコンドリア)のコード及び非コードの領域を包含する。
【0022】
特定の実施態様では、本発明によるシーケンシングは、10~10000個、具体的には100~10000個、より具体的には100~1000個の数の遺伝子座に対して行われる。
【0023】
特定の実施態様では、シーケンシング後の1遺伝子座あたりのリードカウントは、500~4000個、具体的には1000~4000個、具体的には1000~3000個、より具体的には1500~2500個である。
【0024】
特定の実施態様では、特定のリピートにおける核酸の長さ(x)(又は数)は、8~30、具体的には8~14である。本発明によれば、特定のリピートにおける核酸の長さ(x)(又は数)は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30であってよい。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「癌」は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、そして、固形腫瘍及び血液由来の腫瘍を含むが、これらに限定されない。癌という用語は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液、及び血管の疾患を含む。用語「癌」は、更に、原発性癌及び転移性癌の両方を包含する。癌の例は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頚部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮からの癌細胞を含むが、これらに限定されない。更に、癌は、具体的には以下の組織学的種類であってよいが、これらに限定されない:悪性新生物;癌腫;未分化癌腫;巨細胞及び紡錘細胞の癌腫;小細胞癌腫;乳頭癌腫;扁平上皮細胞癌腫;リンパ上皮癌腫;基底細胞癌腫;毛質腫;移行細胞癌腫;乳頭状移行上皮癌腫;腺腫;悪性ガストリノーマ;胆管癌腫;肝細胞癌腫;複合型の肝細胞癌腫及び胆管癌腫;索状腺腫;腺様嚢胞癌腫;腺腫性ポリープにおける腺癌腫;家族性大腸腺腫様ポリポーシス;固形癌腫;悪性カルチノイド腫瘍;気管支肺胞腺癌腫;乳頭状腺癌腫;嫌色素性癌腫;好酸球性癌腫;好酸性腺腫;好塩基球性腺癌腫;明細胞腺癌腫;顆粒細胞癌腫;濾胞性腺癌腫;乳頭及び濾胞の腺癌腫;非被嚢性硬化癌腫;副腎皮質癌腫;子宮内膜癌腫;皮膚付属器癌腫;アポクリン腺癌腫;皮脂腺癌腫腫;耳道腺癌腫;粘表皮癌腫;嚢胞腺癌腫;乳頭状嚢胞腺癌腫;乳頭状漿液性嚢胞腺癌腫;粘液性嚢胞腺癌腫;粘液性腺癌腫;印環細胞癌腫;浸潤性乳管癌腫;髄様癌腫;小葉癌腫;炎症性癌腫;乳房パジェット病;腺房細胞癌腫;腺扁平上皮癌腫;扁平上皮化生を伴う腺癌腫;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質性腫瘍;悪性莢膜腫瘍;悪性顆粒膜細胞腫瘍;及び悪性ロブラストーマ;セルトリ細胞癌腫;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胚性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌腫;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性グリオーマ;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;大細胞性、びまん性悪性リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;エオシン好性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及びヘアリーセル白血病。幾つかの実施態様では、対象は、結腸直腸癌、より具体的には転移性結腸直腸癌に罹患している。
【0026】
特に実施態様では、癌は、結腸直腸癌であり、ひいてはCMMRD結腸直腸癌である。
【0027】
一実施態様では、viii)結果を患者に伝える工程を本発明の方法に追加してもよい。
【0028】
特定の実施態様では、上記の方法により、MSS癌をCMMRD癌と区別することが可能になる。
【0029】
本発明のms.スコアは、入力データを操作し、そして、出力を作成することによって機能を実行するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行することができる。アルゴリズムは、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)等の専用論理回路によって実行することもでき、そして、該回路として装置に実装することもできる。コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサは、一例として、汎用及び専用のマイクロプロセッサ、並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、リードオンリーメモリ若しくはランダムアクセスメモリ、又は両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリ装置である。一般的に、コンピュータは、データを記憶するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気、光磁気ディスク、又は光ディスクを含むか、又は該装置からデータを受け取る若しくは該装置にデータを転送するように動作可能に連結されるか、あるいは両方である。しかし、コンピュータは、このような装置を有する必要はない。更に、コンピュータは、別の装置に組み込まれていてもよい。コンピュータプログラムの命令及びデータを記憶するのに好適なコンピュータ可読媒体は、不揮発性メモリ、媒体、及びメモリ装置の全ての形態を含み、一例として、半導体メモリ装置、例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリ装置;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスク;光磁気ディスク;並びにCD-ROM及びDVD-ROMのディスクを含む。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補完されてもよく、又は該回路に組み込まれてもよい。ユーザとのインタラクションを提供するために、本発明の実施態様は、ユーザに情報を表示するためのディスプレイ装置、例えば、非限定的な例では、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)のモニタ、並びにユーザがコンピュータに入力を提供することができるキーボード及びポインティングデバイス、例えばマウス又はトラックボールを備えるコンピュータで実行することができる。その上、ユーザとのインタラクションを提供するために他の種類の装置を使用してもよく;例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、感覚フィードバックの任意の形態、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックであってよく;そして、ユーザからの入力は、音響、音声、又は触覚による入力を含む任意の形態で受け取ることができる。したがって、幾つかの実施態様では、アルゴリズムは、バックエンドコンポーネント、例えばデータサーバーを含む、又はミドルウェアコンポーネント、例えばアプリケーションサーバーを含む、又はフロントエンドコンポーネント、例えばそれを通してユーザが本発明の実行とインタラクションすることができるグラフィカルユーザーインターフェース若しくはWebブラウザを有するクライアントコンピュータを含む、又は1つ以上のこのようなバックエンド、ミドルウェア、若しくはフロントエンドのコンポーネントの任意の組み合わせを含むコンピューティングシステムで実行することができる。システムのコンポーネントは、任意の形態又は媒体のデジタルデータ通信、例えば通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えばインターネットを含む。コンピューティングシステムは、クライアント及びサーバーを含んでいてよい。クライアント及びサーバーは、一般的に互いに離れており、そして、典型的には、通信ネットワークを通してインタラクションする。クライアントとサーバーとの関係は、それぞれのコンピュータでコンピュータプログラムを走らせ、そして、互いにクライアント-サーバーの関係を有することによって生じる。
【0030】
シーケンシング方法:
本発明によれば、シーケンシング工程は、マクサム-ギルバート法を用いた化学的シーケンシング(Methods in Enzymology 65, 499-560 (1980));サンガー法を用いた酵素的シーケンシングProc.Natl.Acad.Sci.USA 74, 5463-67 (1977));質量分析によるシーケンシング;チップベースの技術を用いたシーケンシング;及びリアルタイム定量PCRを含むが、これらに限定されない任意の方法によって実行することができる。
【0031】
化学的シーケンシングでは、塩基特異的修飾の結果、放射性又は蛍光で標識されたDNA断片が塩基特異的に切断される。4つの別々の塩基特異的切断反応により、4セットのネステッド断片が生成され、これらは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により長さに応じて分離される。オートラジオグラフィー後、ゲル内の各バンド(断片)は塩基特異的な切断事象に由来していることから、配列を直接読み取ることができる。このように、4つの「ラダー」における断片の長さは、そのままDNA配列における特定の位置になる。
【0032】
酵素的シーケンシングでは、プライマー/テンプレート系から出発して、未知のDNA配列領域にプライマーを伸長させ、それによってテンプレートをコピーし、そして、DNAポリメラーゼ、例えば、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼIのKlenow断片、サーマス・アクアチクス(Therm us aquaticus)由来のDNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、又は改変T7 DNAポリメラーゼ、Sequenase(Tabor et al, Proc.Natl.Acad. Scl. USA 84, 4767-4771 (1987))により、連鎖停止試薬の存在下で相補鎖を合成することによって、4つの塩基特異的DNA断片セットを形成する。
【0033】
1990年代半ばから後半にかけて、DNAシーケンシングのための新規方法(ハイスループット・シーケンシング(HTS)法)が幾つか開発され、そして、2000年までに市販のDNAシーケンサに組み込まれた。これらをまとめて「次世代」又は「第二世代」シーケンシング法と呼んだ。これらHTSは、以下を含んでいたが、これらに限定されない:単一分子リアルタイムシーケンシング、イオン半導体、パイロシーケンシング、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ナノポアシーケンシング、連鎖停止、及びハイブリダイゼーションによるシーケンシング。これら方法のうちの幾つかは、全遺伝子シーケンシング(WGS)、全エキソームシーケンシング(WES)、又はターゲティッドシーケンシングが可能である。
【0034】
特定の実施態様では、本発明の方法に係るシーケンシングは、ターゲティッド超並列シーケンシングアプローチを用いて実行される第二世代シーケンシング(NGS)のようなウルトラディープシーケンシングであり、それを用いて、ゲノム内の領域の指定のパネル、本明細書におけるモノヌクレオイドマイクロサテライトがシーケンシングされる(例えば、Goodwin, S and all, 2016. Coming of age: Ten years of next-generation sequencing technologies. Nature Reviews Geneticsを参照)。
【0035】
処置の方法
別の実施態様では、本発明は、また、本発明の方法に係るCMMRD又はMSI白血病/リンパ腫の癌を有すると同定された患者における癌を処置する方法であって、放射線療法、化学療法、免疫療法、又はこれらの組み合わせを用いて該患者を処置する方法に関する。
【0036】
用語「化学療法剤」とは、腫瘍の成長を阻害するのに有効な化学化合物を指す。化学療法剤の例は、チオテパ及びシクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のアルキルスルホナート類;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ等のアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミンを含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシンの合成類似体を含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード類;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン等のニトロスウレア類;エンジイン抗生物質等の抗生物質(例えば、カリチアマイシン(11及びカリチアマイシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed.Engl. 33:183-186 (1994)を参照;ジネミシンAを含むジネミシン;エスペラミシン;更にはネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FU等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサマイトシン等のマイタンシノイド類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.].)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-1 1;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容し得る塩、酸、又は誘導体を含む。また、この定義には、腫瘍に対するホルモンの作用を調節又は阻害する作用を有する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン等の抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容し得る塩、酸、又は誘導体が含まれる。
【0037】
対象がCMMRD癌を有すると結論付けられた場合、医師は患者に標的療法を施すという選択をしてよい。
【0038】
標的癌療法は、癌の増殖、進行、及び拡散に関与する特定の分子(「分子標的」)に干渉することによって癌の増殖及び拡散をブロックする薬物又は他の物質である。標的癌療法は、「分子標的薬」「分子標的療法」「精密医療」、又は類似の名称で呼ばれることもある。
【0039】
幾つかの実施態様では、標的療法は、対象にチロシンキナーゼ阻害剤を投与することからなる。用語「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、受容体及び/又は非受容体のチロシンキナーゼの選択的又は非選択的な阻害剤として作用する様々な処置剤又は薬物のいずれかを指す。チロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、当技術分野において周知であり、そして、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開2007/0254295号に記載されている。当業者であれば、チロシンキナーゼ阻害剤に関連する化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤の効果を再現すること、例えば、関連化合物が、チロシンキナーゼシグナル伝達経路の異なるメンバーに作用して、そのチロシンキナーゼのチロシンキナーゼ阻害剤と同じ効果をもたらすことを理解するであろう。本発明の実施態様の方法で使用するのに好適なチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物の例は、ダサチニブ(BMS-354825)、PP2、BEZ235、サラカチニブ、ゲフィチニブ(Iressa)、スニチニブ(Sutent;SU11248)、エルロチニブ(Tarceva;OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(Gleevec;STI571)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(Zactima; ZD6474)、MK-2206(8-[4-アミノシクロブチル)フェニル]-9-フェニル-1,2,4-トリアゾロ[3,4-f][1,6]ナフチリジン-3(2H)-オン塩酸塩)、これらの誘導体、これらの類似体、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本発明で使用するのに好適な追加のチロシンキナーゼ阻害剤及び関連化合物は、例えば、米国特許公開2007/0254295号、米国特許第5,618,829号、同第5,639,757号、同第5,728,868号、同第5,804,396号、同第6,100,254号、同第6,127,374号、同第6,245,759号、同第6,306,874号、同第6,313,138号、同第6,316,444号、同第6,329,380号、同第6,344,459号、同第6,420,382号、同第6,479,512号、同第6,498,165号、同第6,544,988号、同第6,562,818号、同第6,586,423号、同第6,586,424号、同第6,740,665号、同第6,794,393号、同第6,875,767号、同第6,927,293号、及び同第6,958,340号に記載されており、これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。特定の実施態様では、チロシンキナーゼ阻害剤は、経口投与されており、そして、少なくとも1つの第I相臨床試験、より好ましくは少なくとも1つの第II相臨床試験、更により好ましくは少なくとも1つの第III相臨床試験の対象となっており、そして、最も好ましくは、少なくとも1つの血液学的又は腫瘍学的適応症についてFDAによって承認されている低分子キナーゼ阻害剤である。このような阻害剤の例は、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、BMS-599626(AC-480)、ネラチニブ、KRN-633、CEP-11981、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、AZM-475271、CP-724714、TAK-165、スニチニブ、バタラニブ、CP-547632、バンデタニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、タンズチニブ、ミドスタウリン、エンザスタウリン、AEE-788、パゾパニブ、アキシチニブ、モタセニブ、OSI-930、セジラニブ、KRN-951、ドビチニブ、セリシクリブ、SNS-032、PD-0332991、MKC-I(Ro-317453;R-440)、ソラフェニブ、ABT-869、ブリバニブ(BMS-582664)、SU-14813、テラチニブ、SU-6668、(TSU-68)、L-21649、MLN-8054、AEW-541、及びPD-0325901を含むが、これらに限定されない。
【0040】
対象がCMMRD癌を有すると結論付けられた場合、医師は対象に免疫療法剤を投与するという選択をしてよい。
【0041】
用語「免疫療法剤」とは、本明細書で使用するとき、癌細胞に対する体の免疫応答を間接的若しくは直接的に強化、刺激、若しくは増加させる、及び/又は他の抗癌療法の副作用を減少させる化合物、組成物、又は処置を指す。したがって、免疫療法は、癌細胞に対する免疫系の応答を直接的若しくは間接的に刺激若しくは強化する、及び/又は他の抗癌剤によって引き起こされた可能性のある副作用を軽減する療法である。免疫療法は、当技術分野では、免疫学的療法、生物学的療法生物学的応答調節物質療法、及びバイオセラピーとも呼ばれている。当技術分野において公知の一般的な免疫療法剤の例は、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体、及び非サイトカインアジュバントを含むが、これらに限定されない。あるいは、免疫療法処置は、ある量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞...)を対象に投与することからなっていてもよい。
【0042】
免疫療法剤は、非特異的であってもよい、すなわち、ヒトの身体が癌細胞の増殖及び/若しくは拡散に対抗するのにより有効になるように広く免疫系を増強してもよく、又は特異的であってもよい、すなわち、癌細胞自体を標的としてもよく、免疫療法のレジメンを、非特異的及び特異的な免疫療法剤の使用と組み合わせてもよい。
【0043】
非特異的免疫療法剤は、免疫系を刺激するか又は間接的に改善する物質である。非特異的免疫療法剤は、癌を処置するための主療法として単独で使用されており、その上、主療法に加えて、この場合、非特異的免疫療法剤は他の療法(例えば、癌ワクチン)の有効性を高めるためのアジュバントとしても機能する。また、非特異的免疫療法剤は、この後者の状況では、他の療法の副作用、例えば、特定の化学療法剤によって誘導される骨髄抑制を低減する機能も果たすことができる。非特異的免疫療法剤は、鍵となる免疫系細胞に作用し、そして、サイトカイン及び免疫グロブリンの産生増加等の二次応答を引き起こすことができる。あるいは、剤自体がサイトカインを含んでいてもよい。非特異的免疫療法剤は、一般的に、サイトカイン又は非サイトカインのアジュバントに分類される。
【0044】
多数のサイトカインが、免疫系を増強するために設計された一般的な非特異的免疫療法として、又は他の療法と共に提供されるアジュバントとして、癌の処置に利用されている。好適なサイトカインは、インターフェロン、インターロイキン、及びコロニー刺激因子を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明によって企図されるインターフェロン(IFN)は、IFNの一般的な種類であるIFN-アルファ(IFN-a)、IFN-ベータ(IFN-ベータ)、IFN-ガンマ(IFN-y)を含む。IFNは、例えば、癌細胞の増殖を減速させる、より正常な挙動を有する細胞への発生を促進する、及び/又は抗原の産生を増加させ、それによって、免疫系が癌細胞を認識し、そして、破壊しやすくすることにより、癌細胞に直接作用することができる。IFNは、例えば、血管新生を減速させる、免疫系を増強する、並びに/又はナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、及びマクロファージを刺激することにより、癌細胞に間接的に作用することもできる。組換えIFN-アルファは、Roferon(Roche Pharmaceuticals)及びIntron A(Schering Corporation)として市販されている。IFN-アルファの単独での使用又は他の免疫療法薬又は化学療法薬との併用は、メラノーマ(転移性メラノーマを含む)、腎癌(転移性腎癌を含む)、乳癌、前立腺癌、及び子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)を含む様々な癌の処置において有効性が示されている。
【0046】
本発明によって企図されるインターロイキンは、IL-2、IL-4、IL-11、及びIL-12を含む。市販されている組み換えインターロイキンの例は、Proleukin(登録商標)(IL-2;Chiron Corporation)及びNeumega(登録商標)(IL-12;Wyeth Pharmaceuticals)を含む。Zymogenetics, Inc.(Seattle, Wash.)は、現在、IL-21の組換え形態を試験しており、これも本発明の組み合わせにおいて使用することが企図されている。インターロイキンは、単独で又は他の免疫療法薬若しくは化学療法薬との併用で、腎癌(転移性腎癌を含む)、メラノーマ(転移性メラノーマを含む)、卵巣癌(再発性卵巣癌を含む)、子宮頸癌(転移性子宮頸癌を含む)、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、脳癌、及び前立腺癌を含む様々な癌の処置において有効性が示されている。
【0047】
また、インターロイキンは、様々な癌の処置においてIFN-アルファとの併用で良好な活性を示している(Negrier et al., Ann Oncol. 2002 13(9):1460-8; Touranietal, J. Clin. Oncol. 2003 21(21):398794)。
【0048】
本発明によって企図されるコロニー刺激因子(CSF)は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF又はサルグラモスチム)、及びエリスロポイエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)を含む。1つ以上の成長因子による処置は、従来の化学療法を受けている対象において新たな血液細胞の産生を刺激するのに役立ち得る。したがって、CSFによる処置は、化学療法に関連する副作用を減少させるのに有用であり得、そして、より高用量の化学療法剤の使用を可能にすることができる。様々な組換えコロニー刺激因子が市販されており、例えば、Neupogen(登録商標)(G-CSF;Amgen)、Neulasta(ペグフィルグラスチム;Amgen)、Leukine(GM-CSF;Berlex)、Procrit(エリスロポイエチン;Ortho Biotech)、Epogen(エリスロポイエチン;Amgen)、Arnesp(エリスロポイエチン)である。コロニー刺激因子は、メラノーマ、結腸直腸癌(転移性結腸直腸癌を含む)、及び肺癌を含む癌の処置において有効性が示されている。
【0049】
本発明の組み合わせにおいて使用するのに好適な非サイトカインアジュバントは、レバミゾール、水酸化アルミニウム(アラム)、カルメット・ゲラン桿菌(ACG)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、QS-21、DETOX、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、及びジニトロフェニル(DNP)を含むが、これらに限定されない。他の免疫及び/又は化学療法薬と組み合わせた非サイトカインアジュバントは、例えば、結腸癌及び結腸直腸癌(レビマゾール);メラノーマ(BCG及びQS-21);腎癌及び膀胱癌(BCG)を含む様々な癌に対する有効性が実証されている。
【0050】
特異的又は非特異的な標的を有することに加えて、免疫療法剤は、能動的であってもよい、すなわち、身体自身の免疫応答を刺激してもよく、又は受動的であってもよい、すなわち、体外で生成された免疫系の成分を含んでいてもよい。
【0051】
受動的特異的免疫療法は、典型的には、癌細胞の表面上にみられる特定の抗原に特異的であるか又は特定の細胞増殖因子に特異的である1つ以上のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体は、例えば、特定の種類の癌に対する対象の免疫応答を強化する、血管新生に関与しているもの等の特定の細胞増殖因子を標的とすることによって癌細胞の増殖に干渉する、又は化学療法剤、放射性粒子、若しくは毒素等の剤に連結若しくはコンジュゲートさせたときの他の抗癌剤の癌細胞への送達を強化することによる等の多数の方法で癌の処置において使用することができる。
【0052】
本発明の組み合わせに含めるのに好適な癌免疫療法剤として現在使用されているモノクローナル抗体は、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、イブリツモマブ・チウキセタン(Zevalin(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、セツキシマブ(C-225、Erbitux(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、アレムツズマブ(カンパス(登録商標))、及びBL22を含むが、これらに限定されない。モノクローナル抗体は、乳癌(進行転移性乳癌を含む)、結腸直腸癌(進行及び/又は転移性結腸直腸癌を含む)、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、子宮頸癌、メラノーマ、及び脳腫瘍を含む広範な癌の処置に使用される。他の例は、抗CTLA4抗体(例えばイピリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIMP3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、又は抗B7H6抗体を含む。
【0053】
特に、本発明に従ってCMMRD又はMSI白血病/リンパ腫を有すると診断された患者は、抗CTLA4、抗PD1、抗PD-L1を単独で若しくは組み合わせて含む免疫チェックポイント遮断薬のような免疫療法、又は腫瘍特異的抗原に基づく抗癌ワクチン若しくは樹状細胞ワクチンによって処置することができる。
【0054】
能動的特異的免疫療法は、典型的には、癌ワクチンの使用を含む。癌細胞全体、癌細胞の一部、又は癌細胞由来の1つ以上の抗原を含む癌ワクチンが開発されている。癌ワクチンは、メラノーマ、腎癌、卵巣癌、乳癌、結腸直腸癌、及び肺癌を含む幾つかの種類の癌の処置において、単独で又は1つ以上の免疫若しくは化学療法剤と組み合わせて研究されている。非特異的免疫療法薬は、体の免疫応答を強化するために、癌ワクチンとの併用において有効である。
【0055】
免疫療法処置は、Nicholas P. Restifo, Mark E. Dudley and Steven A. Rosenberg “Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response, Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012)に記載されている養子免疫療法からなっていてもよい。養子免疫療法では、対象の循環リンパ球又は腫瘍浸潤リンパ球をインビトロで単離し、IL-2等のリンホカインによって活性化するか又は腫瘍壊死の遺伝子を形質導入し、そして、再投与する(Rosenberg et al., 1988; 1989)。活性化されるリンパ球は、血液又は腫瘍のサンプルからより早期に単離され、そして、インビトロで活性化(又は「拡大」)された対象自身の細胞であることが最も好ましい。この形態の免疫療法により、幾つかの症例でメラノーマ及び腎癌が退縮した。
【0056】
対象がCMMRD癌を有すると結論付けられた場合、医師は対象に放射線療法剤を投与するという選択をしてよい。
【0057】
用語「放射線療法剤」は、本明細書で使用するとき、癌を処置又は寛解させるのに有効であることが当業者に知られている任意の放射線療法剤を指すことを意図するが、これらに限定されない。例えば、放射線療法剤は、近接照射療法又は放射性核種療法で投与されるもの等の剤であってよい。このような方法は、任意で、化学療法及び/又は別の放射線療法等であるがこれらに限定されない1つ以上の追加の癌療法を施すことを更に含んでいてもよい。
【0058】
本発明のキット又は装置:
本発明の更なる目的は、本発明の方法を実行するためのキット又は装置であって、サンプルからDNAを抽出し、そして、シーケンシングするための手段を含むキット又は装置に関する。
【0059】
幾つかの実施態様では、キット又は装置は、遺伝子座ごとに少なくとも1組のプライマーを含む。
【0060】
以下の図面及び実施例によって本発明を更に説明する。しかし、これら実施例及び図面は、いかなる手段によっても、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1A】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
【
図1A-1】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
【
図1B】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
【
図1B-1】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
【
図1C】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
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図1C-1】A及びA-1)作業仮説:MMR欠損(dMMR)/MSI結腸直腸癌の腫瘍DNA中のモノヌクレオチドマイクロサテライトでは、標準的なPCR法及び断片長サイズの分析を使用して、マイクロサテライト変異が観察される。本発明者らは、CMMRD患者からのPBCは、癌発症前であっても超低レベルのマイクロサテライト変異(UL-MSI)を獲得しており、そして、超並列シーケンシングを用いてこのような変異を検出できるという仮説を立てた。B及びB-1)dMMR腫瘍及びCMMRD PBCにおいてそれぞれMSIとUL-MSIを検出するために使用したアルゴリズムの原理:モノヌクレオチド遺伝子座の主要アリルに基づくスタッターのリードカウントは、log10分布に従う。MSS対照からの極限回帰パラメータ(すなわち、MSIサンプルに最も近い回帰パラメータ)を求めて、遺伝子座ごとに経験的標準モデルを確立した後、観察されたリードカウントをモデルによる予測値と比較し、そして、その差を各サンプルにおける全て遺伝子座について合計して、ms.スコアを導出する。C及びC-1)ms.スコアに基づく発見セット及び検証セットのサンプルの分類。各サンプルの正規化されたms.スコアを、MSS対照、CMMRD患者からのPBC、CMMRD LCL、及びMSI CRC対照についてプロットする。青色の線は、2つの研究に共通するCMMRD症例を特定する。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値並びに中央値を表す。角括弧は、スピアマン相関検定を用いて各分布をMSS対照と比較することによって得られたp値を示す(10000回並び替え)。MPS:超並列シーケンシング。
【
図2A】フルパネルを用いてms.スコアを求めた後の、2つの研究で試験したサンプルの分類(各研究ごとの遺伝子座の数を示す)。ドットは、ms.スコアのスケーリング後にプロットした各サンプルを表す。CMMRDドットは、両研究に共通するサンプルを特定する。発見研究(パネルA)では、予想通り、MSI腫瘍が最も高いms.スコアを有し、CMMRD LCLは、中間のms.スコア値を有し、そして、CMMRD PBCは、ms.スコアの値がほぼ同レベルであった。分布比較のp値を示す(スピアマン相関検定、10000回並べ替え)。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値の分布並びに中央値を表す。検証研究(パネルB)において、症例は、対照群に比べて体系的に高いms.スコアを示したことから、CMMRD PBCサンプルにおけるUL-MSIを評価するためのこの評価基準の利益が確認された。
【
図2B】フルパネルを用いてms.スコアを求めた後の、2つの研究で試験したサンプルの分類(各研究ごとの遺伝子座の数を示す)。ドットは、ms.スコアのスケーリング後にプロットした各サンプルを表す。CMMRDドットは、両研究に共通するサンプルを特定する。発見研究(パネルA)では、予想通り、MSI腫瘍が最も高いms.スコアを有し、CMMRD LCLは、中間のms.スコア値を有し、そして、CMMRD PBCは、ms.スコアの値がほぼ同レベルであった。分布比較のp値を示す(スピアマン相関検定、10000回並べ替え)。エラーバーは、各分布の第1及び第3四分位値の分布並びに中央値を表す。検証研究(パネルB)において、症例は、対照群に比べて体系的に高いms.スコアを示したことから、CMMRD PBCサンプルにおけるUL-MSIを評価するためのこの評価基準の利益が確認された。
【
図3A】フルパネルを用いてms.スコアを求めた後の、2つのアッセイにおけるCMMRD及びMSIのサンプルの分類(各アッセイごとの遺伝子座の数を示す)。A.第1のアッセイは、非腫瘍性MSS対照サンプル15個、CMMRD血液サンプル27個、及びMSI結腸癌4個を用いて行う。B.第2のアッセイは、非腫瘍性MSS対照サンプル10個、CMMRDサンプル6個、及びMSI結腸癌サンプル2個を用いて行う。
【
図3B】フルパネルを用いてms.スコアを求めた後の、2つのアッセイにおけるCMMRD及びMSIのサンプルの分類(各アッセイごとの遺伝子座の数を示す)。A.第1のアッセイは、非腫瘍性MSS対照サンプル15個、CMMRD血液サンプル27個、及びMSI結腸癌4個を用いて行う。B.第2のアッセイは、非腫瘍性MSS対照サンプル10個、CMMRDサンプル6個、及びMSI結腸癌サンプル2個を用いて行う。
【0062】
【0063】
実施例:
材料及び方法
シーケンシング及びデータ解析
サンプルのシーケンシング後、全ての遺伝子座についてリードカウント分布を求め、そして、試験サンプルのリードカウントについて観察された分布とMSS対照から導出された標準モデルによって予測されたリードカウントの分布との間の差を積分することによってms.スコアを得た(作業仮説及びms.スコア法の原理の十分な説明については、
図1A及び
図1Bを参照)。対照MSS症例は1を超えないが、MSIは1を超えるように、MSS対照対象の最も高いms.スコアに基づいてms.スコアをリスケールした。Rベースパッケージを使用して、リードカウント分布解析及びms.スコアの決定を行った。10000回並べ替えるスピアマン相関検定を用いてCMMRD確認患者と対照との間でms.スコアの分布を比較した(更なる詳細については、補足資料及び方法、そして、ms.スコアの決定に使用したスクリプトについては補足ツールも参照)。
【0064】
研究集団
適格対象は、既にCMMRDと診断されている16名の患者(すなわち、4つの主要なMMR遺伝子のうちの1つに両アレル有害生殖系列変異を有する、N=11)又はCMMRDが臨床的に強く疑われる(C4CMMRDコンソーシアムからの事前基準に従って臨床スコアが3以上である、N=5)を含んでいた(2)。MSS(非MSI)対照として、MMR生殖系列に欠陥がないと考えられるMMR活性を有する(MMR-proficient)対象34名を用いた。MSI対照は、結腸直腸癌サンプル(CRC、N=4)及びCMMRD患者から得られたリンパ芽球様細胞株(LCL)(N=7)からなっており、そして、インビトロ培養後に明確なMSI表現型を呈することが既に示されている2。全ての患者が書面によるインフォームド・コンセントを与え、そして、参加施設の機関審査委員会/倫理委員会が本研究を承認した。
【0065】
CMMRの診断を支援するためのMMR遺伝子の変異スクリーニング及び他の機能的検査
全ての解析を、臨床的に承認された研究室で実施した。MLH1、MSH2、及びMSH6の遺伝子の解析は別の研究室で行ったが、PMS2の解析は、既に記載の通りRouen, Lille, or Innsbruck laboratoriesで実施した。LCLは、標準的なエプスタイン・バーウイルス感染後に入手した。エクスビボMSI解析及び及びメチル化抵抗性アッセイは、既に報告されている通りLCLを用いて実施した(6)。
【0066】
研究デザイン
上記のサンプル(CMMRDが確認されたか又は臨床的に強く疑われる16症例、MSI対照11例、及びMSS対照34例)を、部分的に重なる2つのセット、すなわち、発見セット(CMMRD LCL7例、MSI CRC4例、及びMSS対照3例を含む対照14例;CMMRDが確認されたか又は臨床的に強く疑われる8症例)及び検証セット(MSS健常対照31例;CMMRDが確認されたか又は臨床的に強く疑われる14症例(このうち6例は発見セットにも含まれる))に分配した。長さ6~27塩基対のモノヌクレオチドリピートをカバーするプローブの2つの部分的に重なり合うパネルを用いて、この2つのセットを超並列シーケンシングにより別々に解析した(それぞれ発見研究及び検証研究について2586個の関心領域(ROI)及び1187個のROI、395個のROIが2つのセットに共通)。第1のセットは、MSI解析のために既に探索及び検証されたROIを用いて、シーケンシング設定を用いて10000×の理論的カバレッジ深度が可能になるように設計した(7,8)。第2の研究については、本発明者らは、第1のセットと同じ研究で得られた遺伝子座を標的とするプローブを用いて、6000×の理論的カバレッジ深度を望んでいたので、48個のDNAを含めた。発見研究では3件のMSS症例のみのパネルを使用したが、それは、MSI/UL-MSIを同定するための作業アルゴリズムを構築するのに十分であったからである。多型を考慮し、そして、検証研究で解析した遺伝子座の正確なモデルを得るには、少なくとも30件のMSS症例で十分であると考えられた(32個のMSS DNAを初期加工し、1個はライブラリQCに不合格であった)。初期加工された16件のCMMRD症例は、選択バイアスを避けるためにコンソーシアムデータベースから無作為に抽出した(最初はCMMRDが確認されたか又は疑われた16例、2例はライブラリQCに不合格であった)。
【0067】
MNR遺伝子座の超並列シークエンシング
サンプルを別々にシーケンシング及び解析した。DNAの超音波処理及び品質管理の後、NNimblegen SeqCapソリューションを用いてバーコード付きDNAライブラリを得、プールし、そして、Nimblegen製のSeqCap EZ Choiceライブラリキットを用いて標的断片を捕捉した。NextSeq 500(Illumina)でシーケンシングを行った。リードをトリミングし、そして、その品質及びカバレッジ深度を調べた。1サンプルあたりの平均カバレッジ深度は1778~6140の範囲であり、発見研究では平均して242個の遺伝子座がカバーされていなかった。第2の研究では、1サンプルあたりの平均カバレッジ深度は235~5349の範囲であり、1サンプルを除く全てで33個以下のプローブがカバーされていなかった。全体的に、この第2のアッセイでは、より高レベルのPCR/シーケンシングデュープリケートで、サンプルを個々に、そして、サンプルのグローバル平均カバレッジ間で検討した場合、遺伝子座間のカバレッジの均一性が低い、それほど品質のよくないリードが得られた。更に、1つのサンプル(C01.2)では、平均カバレッジが低く(82×)、そして、カバーされていない遺伝子座の数が多かった(n=485)。しかし、適格リードの数が少ない状況において分類アルゴリズムを評価するために、他の全てのサンプルと同様に試験した。
【0068】
hg19レフェレンスゲノムに対してグローバルアラインメント用にFastqファイルを加工し、次いで、ミスアラインメントを最小限に抑えるためにGATK IndelRealignerツールを用いて、リードを含むモノヌクレオチドリピートのより正確なローカルアラインメントを行った。標的モノヌクレオチドリピートを統合的にカバーするリードのカウントをMSIsensorの改良バージョン(11)を用いて得、そして、サンプル中の異常なモノヌクレオチドリピート配列の存在を評価するための更に加工した。
【0069】
MSI/UL-MSI症例を分類するための解析読み出し情報の判定
各サンプルについて、遺伝子座ごとの分布を主要アレルのカウントに対して正規化し、対数変換した:各MSS対照遺伝子座については、線形回帰モデルを適用した。極限回帰パラメータ(すなわち、最小勾配、最大y切片、及び相関係数r)を保持して遺伝子座-極限モデルを作成し、したがって、これを主要アレルに基づくスタッターの分布のバックグラウンドモデルとみなすことができた。参照ゲノム配列と同じヌクレオチド長を有するリピートのみを保持した。多型アレル(別の近位ピークの頻度が0.7を超えている場合にみなされる)及びアーチファクトカウント(ノイズ及び/又は断続リピートを含むリード)を除去した後、該モデルを用いて、標準的なMSSサンプルの各主要アレルのスタッターのリードカウントのlog値を予測した。MSIではモノヌクレオチドリピートが短くなることが多いため、MSIサンプルでは、リードカウントの実測値と予測値との間に正の差がみられるが、MSSではみられない。リードカウントの実測値と予測値との間の差を積分することによって、遺伝子座ごとのms.スコアが得られた。次いで、遺伝子座ごとのms.スコアを合計してサンプルのms.スコアを得、それを特定のサンプルで解析した全てのリピートにおける蓄積された変化の概略評価基準として用いた。次いで、MSS対照のms.スコアが1を超えないように、各研究におけるms.スコアを正規化した:その結果、MSI/UL-MSIに分類されるためには、試験サンプルは1を超える値を示さなければならない。
【0070】
発見研究では、3つのMSS対照サンプルを用いて、パネルの各遺伝子座ごとに標準化された回帰モデル、及びMSS標準についての対数変換されたリードカウントの予測値を作成した。
【0071】
第2の研究では、シーケンシング後に利用可能な31例のMSS対照を用いて、標準化された回帰モデル、及びMSS標準についての対数変換されたリードカウントの予測値を作成した。
【0072】
最適化されたプローブセット:確認された及び疑われるCMMRD個体を検出するための分子検査の適用
2つの研究において、本発明者らは、ROIの数を制限することによってms.スコア判定の改善を試みた。2つのパラメータ:サンプル全体にわたる遺伝子座ごとの平均カバレッジ深度及びms.スコア値の分布を用いて、最も情報量の多いプローブを選択した。第1の研究の22サンプルで平均した各遺伝子座の平均カバレッジ深度は、解析した全遺伝子座の88%において2000リードを超えていた。各選択1000×のウィンドウによって1000~5000リードをカバーする遺伝子座を選択しても、異なるサンプルクラス間で比較した場合のms.スコアの相対値はそれほど変化しなかった(データは示さない)が、組み込まれる遺伝子座の数を減少させた場合にはms.スコアの絶対値が低下した。これは、予測されたことであったが、それは、遺伝子座の数が非常に少ないと、情報が著しく失われ、性能が低下する(感度及び特異度が低くなる)ためである。モノヌクレオチドリピートのサイズはプローブ選択に有効なパラメータとなる可能性があったが、少なくとも8bpのリピートでは差がみられなかった(データは示さない)。
【0073】
最小限のサンプル数(すなわち、n>16)について生のms.スコアが所定の閾値(すなわち、0.1)を超えている遺伝子座だけを残した場合、フルパネルと同程度正確にMSS対照をCMMRD症例又はMSI陽性対照と識別するために必要な遺伝子座は、わずか118個であった。この遺伝子座のサブセットを使用すると、MSS対照のms.スコアは、0~1の範囲(平均=0.47)であったが、CMMRD PBCのms.スコアは、CMMRDの確認例及び疑い例についてそれぞれ12.77~30.74(平均=20.21)及び13.98~16.16(平均=15.07)の範囲であった(MSS対照対全てのCMMRD PBC、P=2.4×10-5;データは示さない)。
【0074】
症例対照研究では、45サンプルを平均した各遺伝子座の平均カバレッジ深度は、解析した全遺伝子座の89%で2000リードを超えていた。各選択1000×のウィンドウによって1000~5000リードをカバーする遺伝子座を選択しても、異なるサンプルクラス間で比較した場合のms.スコアの相対値はそれほど変化しなかった(
図3A)が、極端なカバレッジカテゴリー(すなわち、<1000×及び≧5000×)では、恐らくリードのアーチファクトの蓄積及び/又はPCR/シーケンシングの重複レベルに起因してより低い性能を示した。モノヌクレオチドリピートのサイズは、先行する結果から予想されるように、試験したサンプルの分類に著しい影響は与えなかった(データは示さない)。
【0075】
最小限のサンプル数(すなわち、n>5)について生のms.スコアが同じ閾値(すなわち、0.1)を超えている遺伝子座だけを残した場合、わずか18個の遺伝子座で、フルパネルと同程度正確にMSS対照をCMMRD症例と識別することができた。MSS対照のms.スコアは、0~1の範囲(平均=0.49)であったが、CMMRD PBCのms.スコアは、CMMRDの確認例及び疑い例についてそれぞれ1.74~4.30(平均=2.77)及び1.62~4.13(平均=2.81)の範囲であった(MSS対照対全てのCMMRD PBC、P=2.1×10-7)(データは示さない)。
【0076】
統計解析
Rベースパッケージを使用して、リードカウント分布解析及びms.スコアの決定を行った。サンプル及び対照のms.スコア分布間の比較を、片側ウェルチ2サンプル検定を用いて算出した。
【0077】
解析を行うために書かれたスクリプト(bash及びR)をUbuntu 16.04環境で開発し、そして、これは補足ツールにおいて利用可能である。
【0078】
結果
発見セット:概念実証研究
図1Aにまとめた本発明者らの作業仮説について試験するために、まず、発見セットに含まれる3例のMSS対照及びMSI対照(4つのMSI CRCサンプル及び7つのCMMRD LCL)と比較したとき、CMMRDが確認された対象(N=6)からのPBCにおいてms.スコアを用いて超並列シークエンシングによりUL-MSIを検出することができるかどうかを調べた。MSS対照のms.スコア値は0.56~1の範囲であり、平均は0.74であった。CMMRD LCLのms.スコアは1.40~2.82(平均=1.96)の範囲であったが、CMMRD PBCについては、確認例では1.13~2.89(平均=1.67)の範囲であり、したがって、100%の感度を示す(
図2A)。CMMRD疑い例では1.07~1.11(平均1.09)の範囲であった。各群間でのms.スコアの分布の比較は、MSS対照とMSI対照との対照の間で有意な差を示した(CRC、P=0.029;CMMRD LCL、P=0.0082)だけでなく、確認されたCMMRDのPBCとも有意な差を示した(P=0.012)。興味深いことに、CMMRD疑い例でもUL-MSIが検出され、機能試験及び高い臨床スコア既に得られている診断を裏付ける結果となった。アルゴリズムの重要なインプットは、遺伝子座の数及びカバレッジ深度であった(データは示さない)。長さ8bp以上のマイクロサテライトについては、確認されたCMMRD及びMSS対照のサンプルのms.スコア間で有意な差が観察された(データは示されない)。
【0079】
検証セット:症例対照研究
遺伝子座に関係なく長さ8bp以上のマイクロサテライトにおいてUL-MSIが検出されるという本発明者らによる所見に従って、長さが8bp以上であり、そして、第1の研究と共通する遺伝子座を395個しか含まない、ほぼ完全に異なるマイクロサテライトのパネルを用いて、45サンプルの第2のシリーズをシーケンシングした。CMMRD症例(9確認例、5疑い例)及びMSS対照(健常個体、N=31)のこの第2のシリーズでは、それぞれ確認された及び疑われるCMMRD PBCについての1.19~4.13(平均=2.36)及び1.11~3.84(平均=2.31)と比較して、MSS対照のms.スコアは0~1の範囲(平均0.49)であった(
図2B)。MSSと確認されたCMMRD個体との間でms.スコア分布を比較したところ、統計的に有意な差を示し(P<2.2×10
-16)、ここでも100%の感度でCMMRDサンプルをMSS対照と正確に識別することができた。先行する研究と同様に、CMMRD疑い例は全て、以前に診断されたCMMRD状態を裏付けた。この場合も、アルゴリズムの重要なインプットは、遺伝子座の数及びカバレッジ深度であった(データは示さない)。予想通り、確認されたCMMRD及びMSSのサンプル間のms.スコアの差は、選択された全てのマイクロサテライト(長さ8bp以上;上記を参照、そして、データは示さない)について有意であった。
【0080】
確認された及び疑われるCMMRD個体の検出に最適化されたプローブ
最後に、本発明者らは、CMMRD対象を健常MSS対照と識別するために必要なパネルにおけるプローブ数を制限することを目指した。このパラメータの分布に閾値フィルタを適用することによって、より識別性の高いプローブのサブセットを得た。概念実証研究で使用した第1のパネルでは、フルパネルと同程度正確にMSSをCMMRD又はMSI陽性対照と識別するために必要な遺伝子座はわずか118個であった。この遺伝子座のサブセットを使用して、それぞれCMMRDの確認例及び疑い例についての12.77~30.74(平均=20.21)及び13.98~16.16(平均=15.07)と比較して、MSS対照のms.スコアは0~1の範囲(平均=0.47)であった(MSS対照対確認されたCMMRD PBC、P=0.007;
図1Cを参照)。症例対照研究で使用し、そして、発見研究と同じ2つのパラメータで作動させた第2のパネルでは、わずか18個の遺伝子座で、フルパネルと同程度正確にMSSをCMMRDの確認例及び疑い例と識別することができた。それぞれCMMRDの確認例及び疑い例についての1.74~4.30(平均=2.77)及び1.62~4.13(平均=2.81)と比較して、MSS対照のms.スコアは0~1の範囲(平均=0.49)であった(MSS対照対確認されたCMMRD PBC、P<2.2×10
-16)(
図1C-1)。
【0081】
2つのアッセイにおけるCMMRS及びMSI腫瘍サンプルの分類
CMMRD及び一般にMSI腫瘍サンプルを正しく分類する本発明の方法の能力を確認するために、2つの新たなアッセイを実現した。第1のアッセイは、非腫瘍MSS対照サンプル15個、CMMRD血液サンプル27個、及びMSI結腸癌サンプル4個を用い、そして、第2のアッセイは、非腫瘍MSS対照サンプル10個、CMMRD血液サンプル6個、及びMSI結腸癌サンプル2個を用いた。これら2つのアッセイにより、CMMRD及び一般にMSI腫瘍サンプルを正しく分類する提案した方法の能力が確認された。いずれのアッセイでも、感度及び特異度は100%であった(それぞれ
図3A及びB)。
【0082】
考察
腫瘍DNAのMSI検査は、免疫チェックポイント阻害剤から恩恵を受ける可能性がある転移性癌患者を同定するために重要であることが最近明らかになってきた9。ここでは、本発明者らは、生殖細胞系列DNAのMSI検査を使用して、CMMRD患者における腫瘍の発症の主要な素因を検出することもできることを実証し、そして、該患者については、免疫チェックポイント阻害剤による処置の成功が最近報告された4、5。PBCを用いたCMMRDのスクリーニングのために本明細書で提案した試験は、実行可能であり、そして、本発明者らによる実験で100%の感度及び特異度を示す(表1)。この方法を実行することで、3つの重要なパラメータ、すなわち、1000×~5000×の範囲の平均カバレッジ深度及び少なくとも100個の8塩基対以上の標的モノヌクレオチドリピートの観点から、UL-MSIを有する患者、ひいては、CMMRD症候群に罹患している患者をより容易に特定することができるようになる。重要なことに、この試験は、本発明者らが最近提案し、そして、患者からLCLを培養する必要があるものよりもはるかに迅速である6。更に、患者のPBCの検査から生殖細胞系列MSIを同定するために開発された以前のアプローチよりもはるかに高い感度及び特異度を有する10(表1)。本発明者らは、症候群の迅速な診断を可能にするためにCMMRDスペクトラムの腫瘍を有する小児に対して、そして、後年他の腫瘍が発生する前にこれを使用することを推奨した。
【0083】
参照文献:
本明細書全体を通して、様々な参照文献が本発明が関連する技術分野の技術水準について説明している。これら参照文献の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
【表2】