IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-組換えポリペプチドの精製のための方法 図1
  • 特許-組換えポリペプチドの精製のための方法 図2
  • 特許-組換えポリペプチドの精製のための方法 図3
  • 特許-組換えポリペプチドの精製のための方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】組換えポリペプチドの精製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20241031BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20241031BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20241031BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20241031BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07K1/16
C07K1/18
C07K1/22
C07K1/20
C07K16/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021558939
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020059589
(87)【国際公開番号】W WO2020201519
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】1904741.4
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/991,700
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クシア-トラン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ネハル
(72)【発明者】
【氏名】ウィレイ,トレヴァー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】QING-HONG SHI; ET AL,"DYNAMIC BEHAVIOR OF BINARY COMPONENT ION-EXCHANGE DISPLACEMENT CHROMATOGRAPHY OF PROTEINS VISUALIZED BY CONFOCAL LASER SCANNING MICROSCOPY.",JOURNAL OF CHROMATOGRAPHY A,2012年09月,VOL:1257,PAGE(S):48-57,https://doi.org/10.1016/j.chroma.2012.08.003
【文献】ALGIMANTAS P. VALAITIS; ET AL,"IDENTIFICATION OF THE AMP BINDING SITES OF RABBIT PHOSPHOFRUCTO-1-KINASE ISOZYMES B AND C.",BIOCHIMICA ET BIOPHYSICA ACTA (BBA) - PROTEIN STRUCTURE AND MOLECULAR ENZYMOLOGY,1998年10月12日,VOL:956, NR:3,PAGE(S):232-242,https://doi.org/10.1016/0167-4838(88)90140-9
【文献】NIHAL TUGCU; ET AL,"DISPLACEMENT CHROMATOGRAPHY OF ANTI-SENSE OLIGONUCLEOTIDE AND PROTEINS USING SACCHARIN AS A NON-TOXIC DISPLACER.",REACTIVE AND FUNCTIONAL POLYMERS,2003年,VOL:54, NR:1-3,PAGE(S):37-47,https://doi.org/10.1016/S1381-5148(02)00181-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、前記方法はサッカリンの添加を含むアフィニティクロマトグラフィー法であり、サッカリン濃度は0.01~4Mであ、前記方法。
【請求項2】
(a)積載ステップ、及び/又は(b)洗浄ステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のクロマトグラフィーステップ(a)び/又は(b):
(a)組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液をクロマトグラフィー支持体上に積載するステップ、
(b)クロマトグラフィー支持体を洗浄緩衝液で洗浄するステップ
を含み、ステップ(a)及び/又は(b)の少なくとも1つが、サッカリンの添加を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
クロマトグラフィーがプロテインAアフィニティクロマトグラフィーである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液が、細胞培養供給流、又は清澄化された細胞培養液である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
組換えポリペプチドが抗原結合性タンパク質である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抗原結合性タンパク質が抗体である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の不純物が哺乳動物細胞由来である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物細胞が、CHO、NS0、Sp2/0、COS、K562、BHK、PER.C6、及び/又はHEK細胞から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
方法における1つ以上の不純物が、宿主細胞タンパク質(HCP)、核酸、エンドトキシン、及び/又は細胞培養培地に付随する不純物のうちの1つ以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
サッカリン濃度が、0.01~3.0M若しくは0.05~1.0M、又は0.3~1.5Mである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶液、積載緩衝液/積載ステップ、洗浄緩衝液/洗浄ステップ、及び/又は溶出緩衝液/溶出ステップがアルギニン、及び/又はカプリル酸塩、及び/又はリジン、及び/又は酢酸ナトリウムをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
サッカリンが溶液、積載緩衝液、及び/又は洗浄緩衝液に添加される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
サッカリンが2-スルホ安息香酸アンモニウム塩、サッカリンナトリウム塩二水和物、又はサッカリンナトリウム塩水和物の形態である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
精製された組換えポリペプチドがさらに精製される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
精製された組換えポリペプチドが最終治療製剤に製剤化される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
クロマトグラフィーを用いて1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製するための洗浄緩衝液又は積載緩衝液であって、サッカリンを含み、かつサッカリン濃度が0.01~4Mである、前記洗浄緩衝液又は積載緩衝液。
【請求項18】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む細胞培養の供給流であって、前記供給流はサッカリンを含む溶液であり、かつサッカリン濃度が0.01~4Mである、前記供給流。
【請求項19】
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法におけるサッカリンの使用であって、前記方法はアフィニティクロマトグラフィー法であり、前記方法において使用するサッカリン濃度は0.01~4Mであ、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する新規な方法であって、サッカリンを用いるクロマトグラフィー法である方法に関する。本発明はまた、1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法におけるサッカリンの使用であって、方法がクロマトグラフィー法であるサッカリンの使用を提供する。本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製するための洗浄緩衝液であって、サッカリンを含む洗浄緩衝液をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
組換えポリペプチド、例えば抗体及び他のタンパク質は広範囲の疾患の治療処置のために用いられる。これらの複雑な組換えポリペプチドの生物薬学的製造は、典型的には生物学的宿主系の使用を必要とし、これは遺伝子工学によって好適に活性な形態で産生物を発現することができる。組換えポリペプチドの発現は一般に、原核又は真核の宿主細胞を適切な条件下で培養することを含む。いったん組換えポリペプチドが発現されれば、細胞培養培地から元の宿主細胞及び細胞の破片を分離して、組換えポリペプチド及び他の不純物を含む清澄化された未処理バルク(CUB)又は清澄化された細胞培養液(CCCF)を提供することができる。
【0003】
生物薬学的製造法によって産生された組換えポリペプチドは、典型的には宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、ウイルス、高分子量及び低分子量の種、並びに望ましくない産生物及びプロセスバリアントを含むがこれらに限定されない多数の望ましくない不純物を伴っており、これらは除去することが困難で、製造された生物薬学物質の安全性及び有効性を顕著に低減させる可能性を有することがある。したがって不純物のレベルは規制ガイドラインに適合するように厳密に制御しなければならず、異なる物理化学特性を有する夾雑物のさらなる複雑さによって、特に高濃度の所望の組換えポリペプチド産生物の存在下において、夾雑物及びそれらの残留量の同定、定量、及び除去がさらに困難になる。
【0004】
十分に純粋な組換えポリペプチドを産生するために、下流の生物薬学処理の間に精製の多数の直交プロセスが必要になることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組換えポリペプチドを精製するための改善された方法を提供するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンの添加を含む方法を提供する。
【0007】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、溶液が細胞培養の供給流(フィードストリーム)であり、サッカリンの添加を含む方法を提供する。
【0008】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンの添加を含むクロマトグラフィー法である方法を提供する。
【0009】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液からクロマトグラフィーを用いて組換えポリペプチドを精製するための洗浄又は積載用の緩衝液であって、サッカリンを含む緩衝液をさらに提供する。本発明は組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む細胞培養の供給流であって、サッカリンを含む溶液である供給流をさらに提供する。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンの添加を含む、前記方法。
[項目2]
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、溶液が細胞培養の供給流であり、方法がサッカリンの添加を含む、前記方法。
[項目3]
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンの添加を含むクロマトグラフィー法である、前記方法。
[項目4]
アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、ゲルパーミエーション若しくはゲル濾過クロマトグラフィー、ダイ-リガンドクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合モードクロマトグラフィー(MMC)、及び/又はセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む、項目3に記載の方法。
[項目5]
(a)積載ステップ、(b)洗浄ステップ、及び/又は(c)溶出ステップを含む、項目3又は4に記載の方法。
[項目6]
1つ以上のクロマトグラフィーステップ(a)、(b)、及び/又は(c):
(a)組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液をクロマトグラフィー支持体上に積載するステップ、
(b)クロマトグラフィー支持体を洗浄緩衝液で洗浄するステップ、及び/又は
(c)クロマトグラフィー支持体から溶出緩衝液によって組換えポリペプチドを溶出させるステップ
を含み、ステップ(a)、(b)、及び/又は(c)のうちの少なくとも1つがサッカリンの添加を含む、項目3~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
クロマトグラフィーがプロテインAアフィニティクロマトグラフィーである、項目3~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液が清澄化された細胞培養液である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
組換えポリペプチドが抗原結合性タンパク質である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
抗原結合性タンパク質が抗体である、項目9に記載の方法。
[項目11]
1つ以上の不純物が哺乳動物細胞由来である、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項目12]
哺乳動物細胞が、CHO、NS0、Sp2/0、COS、K562、BHK、PER.C6、及び/又はHEK細胞から選択される、項目11に記載の方法。
[項目13]
方法における1つ以上の不純物が、宿主細胞タンパク質(HCP)、核酸、エンドトキシン、産生物バリアント、プロセスバリアント、及び/又は細胞培養培地に付随する不純物のうちの1つ以上である、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
[項目14]
サッカリンが、0.01~3.0M若しくは0.05~1.0M、又は0.3~1.5Mの濃度である、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
[項目15]
溶液、積載緩衝液/積載ステップ、洗浄緩衝液/洗浄ステップ、及び/又は溶出緩衝液/溶出ステップがアルギニン、及び/又はカプリル酸塩、及び/又はリジン、及び/又は酢酸ナトリウムをさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
[項目16]
サッカリンが溶液、積載緩衝液、洗浄緩衝液、及び/又は溶出緩衝液に添加される、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]
サッカリンが2-スルホ安息香酸アンモニウム塩、サッカリンナトリウム塩二水和物、又はサッカリンナトリウム塩水和物の形態である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
精製された組換えポリペプチドが、(i)任意選択でさらに精製され、かつ(ii)治療用途のために製剤化される、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
クロマトグラフィーを用いて1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製するための洗浄緩衝液又は積載緩衝液であって、サッカリンを含む、前記洗浄緩衝液又は積載緩衝液。
[項目20]
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む細胞培養の供給流であって、サッカリンを含む溶液である、前記細胞培養の供給流。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】組換えポリペプチドを含む6種のプロテインAクロマトグラフィー溶出液においてHCP不純物レベル(ppm)を測定したグラフである。5種の溶出液中で測定したHCPレベルは、当初のCUB(CCCF)プロテインAの積載において0、50、280、500、又は930mMのサッカリンを含んでいた。一方6番目の溶出液のサッカリン含量は0mMであり、対照条件下で溶出した。プロテインAの積載においてサッカリン濃度を増加するとHCPのクリアランスが増加することが示された。280mM以上のサッカリンを積載液に添加すれば、カプリル酸塩洗浄と比較してHCPのクリアランスを大きくするために十分であった。しかし、6種のプロテインA溶出液のそれぞれについて測定した組換えポリペプチドモノマーレベルは極めて類似していることが見出され、6種全てが98.6±0.3%のモノマーを含んでいた。
図2】対照条件(表2)下におけるカプリル酸塩洗浄後のmAb2として知られる回収した抗体のMABSELECT SURE(MSS)クロマトグラムの取得を示すグラフである。抗体mAb2は約120mlで溶出した。抗体mAb2のモノマー純度は93.6%であることが見出され、HCP含量は4517.87ppmであった。
図3図2の同じ回収抗体mAb2のMSSクロマトグラムの取得を示すグラフであり、今回はアルギニン洗浄液を使用した後で、洗浄緩衝液はカプリル酸塩洗浄液中に1.1Mのアルギニンを含んでいた(表2)。抗体mAb2のモノマー純度は96.1%であることが見出され、HCP含量は357.20ppmであった。
図4図2及び図3の同じ回収抗体mAb2のMSSクロマトグラムの取得を示すグラフであるが、今回はサッカリン洗浄後であり、洗浄緩衝液は平衡緩衝液中に0.5Mのサッカリンを含んでいた(表2)。組換えポリペプチドのモノマー純度は97.3%であることが見出され、HCP含量は352.20ppmであった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンの添加を含む方法を提供する。
【0012】
溶液は細胞培養の供給流であってよい。これは収穫された供給流又は連続供給流であってよい。溶液はバイオリアクターからの連続供給流であってよい。溶液は清澄化された未処理バルク(CUB)(又は清澄化された細胞培養収穫/上清/発酵/流体)であってよい。CUBは、清澄化によっていずれの細胞及び/又は細胞破片も除去された細胞培養上清としても知られている。宿主細胞及び細胞破片は清澄化によって、例えば沈降、遠心分離、及び/又は濾過によって、細胞培養培地から分離することができる。溶液は、組換えポリペプチドを発現する細胞の溶解された調製物(例えばライセート)であってよい。溶液は、清澄化された細胞培養液(CCCF)であってよい。清澄化された細胞培養液(CCCF)は、清澄化された未処理バルク(CUB)と等価であり、両方の用語は相互交換可能に用いることができる。
【0013】
バイオリアクターは生産バイオリアクター、又はn-1バイオリアクター若しくはn-2バイオリアクターであってよい。バイオリアクターは潅流モード又は流加(fed batch)若しくはバッチ又はそれらの組合せで操作してよい。バイオリアクターは500リットル、1000リットル、2000リットル、3000リットル、4000リットル、若しくは5000リットル、又はそれを超えるスケールであってよい。バイオリアクターは10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル、25,000リットル、若しくは30,000リットル、又はそれを超えるスケールであってよい。バイオリアクターは単回使用又は固定であってよい。バイオリアクターは哺乳動物宿主細胞における組換えポリペプチドの産生に好適であってよい。哺乳動物宿主細胞はCHO、NS0、Sp2/0、COS、K562、BHK、PER.C6、及び/又はHEK細胞から選択してよい。一態様では、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO)である。
【0014】
溶液は緩衝剤を含んでよい。例えば、溶液は積載緩衝液(load buffer)、平衡緩衝液、洗浄緩衝液、及び/又は溶出緩衝液を含んでよい。溶液はクロマトグラフィーステップからの溶出液を含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物及びサッカリンを含む溶液は、引き続く精製ステップによって精製してよい。これらのステップはサッカリンの添加を含んでも、含まなくてもよい。これらのステップはクロマトグラフィーステップを含んでも、含まなくてもよい。得られた精製された溶液は治療用途のために製剤化されてよい。精製ステップは塩化ナトリウムを含まなくてもよい。
【0015】
本発明は組換えポリペプチドを精製する方法であって、サッカリンを用いるクロマトグラフィー法である方法を提供する。例えば、組換えポリペプチドは1つ以上の不純物を含む溶液から精製される。
【0016】
本発明は組換えポリペプチドを精製する方法におけるサッカリンの使用であって、方法がクロマトグラフィー法である使用も提供する。例えば、組換えポリペプチドは1つ以上の不純物を含む溶液から精製される。
【0017】
本発明は、クロマトグラフィーを用いて組換えポリペプチドを精製するための洗浄緩衝液であって、サッカリンを含む洗浄緩衝液をさらに提供する。例えば、組換えポリペプチドは1つ以上の不純物を含む溶液から精製される。
【0018】
1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法におけるサッカリンの使用が本明細書に記載される。1つ以上の不純物を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法におけるサッカリンの使用であって、方法がクロマトグラフィー法である使用が本明細書に記載される。
【0019】
一実施形態では、本方法は(a)積載(loading)ステップ、(b)洗浄ステップ、及び/又は(c)溶出ステップを含む。一実施形態では、精製された組換えポリペプチドは、(i)任意選択でさらに精製され、(ii)治療用途のために製剤化される。さらなる態様では、精製された組換えポリペプチドはステップ(c)の溶出液から回収され、任意選択で製剤化される。
【0020】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は1つ以上のクロマトグラフィー法を含む。例えば、1つ以上のクロマトグラフィー法は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合モードクロマトグラフィー(MMC)、及び/又はセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む。一実施形態では、1つ以上のクロマトグラフィー法は、アフィニティクロマトグラフィーを含む。一実施形態では、1つ以上のアフィニティクロマトグラフィー法は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む。
【0021】
一実施形態では、本方法は、(i)アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合モデルクロマトグラフィー(MMC)、及び/又はセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのいずれか1つ又はそれらの組合せ、並びに(ii)(a)積載ステップ、(b)洗浄ステップ、及び/又は(c)溶出ステップのいずれか1つ又はそれらの組合せを含む。
【0022】
一実施形態では、用いられる方法は液体クロマトグラフィーである。例えば、用いられる方法は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アニオン若しくはカチオン交換クロマトグラフィー、ゲルパーミエーション若しくはゲル濾過クロマトグラフィー、ダイ-リガンド(dye-ligand)クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、混合モードクロマトグラフィー(MMC)、又はセラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。一態様では、方法はアフィニティクロマトグラフィーである。
【0023】
クロマトグラフィー法はクロマトグラフィー支持体及び移動相を用いて行なわれ、クロマトグラフィー支持体は水性又は非水性である。一実施形態では、非水性相はアガロース、セファロース、ガラス、シリカ、ポリスチレン、コロジオン活性炭、砂、ポリメタクリレート、架橋ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、アガロースとデキストラン表面延長剤、又は他の任意の好適な材料を含む。例えば、非水性相はMABSELECT SUREレジンである。さらなる態様では、非水性相は親和性リガンド、例えばプロテインA、G、L、又はA/Gに連結されている。一態様では、親和性リガンドはプロテインAである。一態様では、非水性相はカチオン交換クロマトグラフィーである。
【0024】
親和性リガンドは天然源由来若しくは合成、又はそれらの合成バリアントであってよい。一実施形態では、用いられるプロテインAは天然源由来であるか若しくは合成であり、又はこれはCH2/CH3領域を有するポリペプチドに結合する能力を有するそれらの合成バリアントである。プロテインAはFc領域に結合することができ、重鎖の可変領域(VH3)に結合することもでき、その親和性はFc領域の非存在下で強化される。プロテインLは軽鎖の可変領域に結合することができる。プロテインGはFc領域に結合することができ、可変領域(Fab)に結合することもできる。したがって、プロテインA、プロテインL、又はプロテインGの1つ以上を用いるアフィニティクロマトグラフィーは、いくつかの異なる抗原結合性タンパク質、例えばIgG、scFv、dAb、Fab、ダイアボディ、ナノボディ、Fc含有融合タンパク質、即ちFc領域を含まない抗原結合性タンパク質を精製するために用いることができる。そのような抗原結合性タンパク質を精製するためのプロテインA、プロテインL、及びプロテインGの使用は公知であり、当技術において日常的である。
【0025】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は積載ステップ、洗浄ステップ、及び/又は溶出ステップを含む。
【0026】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は、サッカリンの添加を含む積載ステップを含む。
【0027】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は、サッカリンの添加を含む洗浄ステップを含む。
【0028】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は、積載ステップ及び/又は洗浄ステップを含み、積載ステップ及び/又は洗浄ステップはサッカリンの添加を含む。
【0029】
一実施形態では、クロマトグラフィー法は、サッカリンの添加を含まない溶出ステップを含む。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、本方法において用いるサッカリンは(a)積載ステップ、(b)洗浄ステップ、及び/又は(c)溶出ステップにおいて存在する。
【0031】
一実施形態では、本方法において用いられるサッカリンは塩の形態である。一態様では、サッカリンは、サッカリンナトリウム(o-スルホベンズイミドナトリウム塩、2-スルホ安息香酸イミドナトリウム塩、又は2,3-ジヒドロ-3-オキソベンズイソスルホナゾールナトリウム塩としても知られている)、例えばサッカリンナトリウム塩水和物(2,3-ジヒドロ-3-オキソベンズイソスルホナゾール水和物としても知られている)、サッカリンナトリウム塩脱水和物、又はサッカリンナトリウム塩二水和物、サッカリンカルシウム、サッカリンヘミカルシウム塩、2-スルホ安息香酸アンモニウム塩、又はアルミニウムサッカリン塩の形態である。一実施形態では、サッカリンは、2-スルホ安息香酸アンモニウム塩、サッカリンナトリウム塩二水和物、又はサッカリンナトリウム塩水和物の形態である。一態様では、サッカリンはサッカリンナトリウム、例えばサッカリンナトリウム塩水和物の形態である。代替的な態様では、本方法において用いられるサッカリンは、N-(2-ニトロフェニルチオ)サッカリンの形態であってよい。サッカリンナトリウム二水和物はサッカリンナトリウム塩二水和物と相互交換可能である。サッカリンナトリウム水和物又はナトリウムサッカリン水和物はいずれもサッカリンナトリウム塩水和物と相互交換可能である。2-スルホ安息香酸アンモニウム塩は2-スルホ安息香酸(サッカリン)アンモニウム塩と相互交換可能である。
【0032】
さらなる実施形態では、本方法で用いるサッカリンの濃度は、約0.001~約4M、約0.1~約3M、約0.1~約2M、又は約0.1~約0.9Mである。サッカリン濃度は約0.5~約1.5M又は約0.6~約1.5Mであってよい。サッカリン濃度は約0.7~約1.5M又は約0.75~約1.5Mであってよい。サッカリン濃度は約0.5~約1.0M又は約0.6~約1.0Mであってよい。サッカリン濃度は約0.7~約1.0M又は約0.75~約1.0Mであってよい。サッカリン濃度は約0.6~約1.4M又は約0.7~約1.3M、又は約0.8~約1.2Mであってよい。特定の態様では、サッカリン濃度は約0.1M、0.15M、0.2M、0.25M、0.275M、0.3M、0.325M、0.35M、0.375M、0.4M、0.425M、0.45M、0.475M、0.5M、0.525M、0.55M、0.575M、0.6M、0.625M、0.65M、0.7M、0.725M、0.75M、0.8M、0.9M、又は1Mから選択される。一実施形態では、サッカリン濃度は約0.01~約4M、約0.01~約3M、約0.05~約3M、0.05~約1M、約0.1~約3M、0.1~約1M、約0.2~約3M、0.2~約1.5M、約0.2~約1M、約0.2~約0.8M、約0.2~約0.6M、約0.3~約3M、約0.3~約1.5M、0.3~約1M、約0.3~約0.8M、又は約0.3~約0.5Mである。一態様では、サッカリン濃度は約0.3M~約0.5Mである。代替的な態様では、本方法で用いられるサッカリン濃度は、例えば約1mM、10mM、50mM、0.1M、0.3M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、又は1Mから増加される。
【0033】
サッカリンは、1つ以上の添加物と組み合わせて用いてよい。例えば、サッカリンは、添加物がサッカリンと同時に、又はサッカリンの添加に続いて若しくはその前に用いられる精製プロセスにおいて用いてよい。サッカリンは添加物と同時にプロセスに添加してよい。サッカリンは添加物と同時に溶液に添加してよい。添加物は脂肪族カルボキシレート又はその塩、例えばカプロエート、ヘプタノエート、カプリル酸塩(カプリレート)、デカノエート、及びドデカノエートであってよい。例えば、添加物はカプリル酸ナトリウムである。添加物はアルギニンであってよい。添加物はリジンであってよい。添加物は酢酸ナトリウムであってよい。添加物は塩化ナトリウムであってよい。サッカリンはカプリル酸塩と同時に用いてよい。サッカリンはアルギニンと同時に用いてよい。サッカリンは酢酸ナトリウムと同時に用いてよい。サッカリンはカプリル酸塩及び酢酸ナトリウムと同時に用いてよい。サッカリンは酢酸ナトリウム及びアルギニンと同時に用いてよい。サッカリンはカプリル酸塩及びアルギニンと同時に用いてよい。サッカリンはカプリル酸塩、アルギニン、及び酢酸ナトリウムと同時に用いてよい。
【0034】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン、脂肪族カルボキシレート若しくはその塩、アルギニン、リジン、酢酸ナトリウム、及び/又は塩化ナトリウムのうちの1つ又は組合せを含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン、カプリル酸塩、酢酸ナトリウム、及び/又はアルギニンのうちの1つ又は組合せを含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン及びカプリル酸塩を含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン及びアルギニンを含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン、酢酸ナトリウム、及びカプリル酸塩を含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン、酢酸ナトリウム、及びアルギニンを含んでよい。組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、サッカリン、酢酸ナトリウム、カプリル酸塩、及びアルギニンを含んでよい。
【0035】
脂肪族カルボキシレート又はその塩の濃度は、約1~約250mM、又は約75~約250mM、又は約100~約250mMであってよい。例えば、カプリル酸ナトリウムの濃度は、約100mM~約250mMである。例えば、カプリル酸ナトリウムの濃度は約100mMである。例えば、カプリル酸ナトリウムの濃度は約250mMである。
【0036】
アルギニンの濃度は約0.1M~約2M、又は約0.5M~約1.5M、又は約0.75M~約1.25Mであってよい。例えば、アルギニンの濃度は約1.1Mである。
【0037】
リジンの濃度は約0.5M~約1M、例えば約0.75Mである。
【0038】
酢酸ナトリウムの濃度は約0.1M~約2M、又は約0.2M~約1.5M、又は約0.2M~約1.2Mであってよい。例えば、酢酸ナトリウムの濃度は約0.1M、約0.3M、又は約1Mである。
【0039】
サッカリンは、組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液に添加される。サッカリンは、いずれのクロマトグラフィーステップにも先立って溶液に添加してよい。クロマトグラフィー支持体に積載される溶液は既にサッカリンを含んでいてよい。例えば、積載液はサッカリン、組換えポリペプチド、及び1つ以上の不純物を含んでいてよい。
【0040】
サッカリンは緩衝液に添加してよい。サッカリンはクロマトグラフィー用の緩衝液に添加してよい。例えば、緩衝液は積載緩衝液、平衡緩衝液、洗浄緩衝液、及び/又は溶出緩衝液であってよい。緩衝液はpH5~9であってよい。緩衝液は、酢酸ナトリウム及び酢酸、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス塩基及び酢酸、並びに/又は3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)のうち1つ以上を含んでよい。
【0041】
一実施形態では、組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液は、積載ステップにおいてクロマトグラフィー支持体に積載される。一態様では、組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液はCCCFである。例えば、CCCFはサッカリンを含む。一態様では、積載液はサッカリンを含む。別の態様では、積載緩衝液はサッカリンを含む。
【0042】
一実施形態では、組換えポリペプチドは平衡緩衝液の存在下でクロマトグラフィー支持体に積載される。例えば、溶液は1つ以上の不純物を含む。一態様では、平衡緩衝液のpHは約5.0~9.0、例えば約5.0~8.0である。一態様では、平衡緩衝液はトリス塩基及び酢酸を含む。別の態様では、pHは約7.5である。一態様では、トリス塩基の濃度は約55mM、及び酢酸の濃度は約45mMである。また任意選択で、平衡緩衝液はサッカリンをさらに含む。一態様では、平衡緩衝液中のサッカリンはサッカリンナトリウム塩水和物の形態である。なおさらなる態様では、平衡緩衝液中のサッカリンの濃度は約0.5~約1.5M、又は約0.3~約0.5Mである。
【0043】
一実施形態では、洗浄ステップでは洗浄緩衝液を用いる。標準的な洗浄緩衝液は当該技術分野で周知である。例えばHolstein et al.、(2015) BioProcess International、13(2):56~62。一態様では、洗浄緩衝液はトリス塩基、酢酸、及び/又は酢酸ナトリウムを含む。一態様では、洗浄緩衝液はトリス塩基及び酢酸を含む。さらなる態様では、洗浄緩衝液は添加物、例えば脂肪族カルボキシレート又はその塩、例えばカプロエート、ヘプタノエート、カプリル酸塩、デカノエート、及びドデカノエート、アルギニン、リジン、並びに/又は塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、洗浄緩衝液を用いる洗浄ステップは塩化ナトリウムを含まない。なおさらなる態様では、添加物濃度は約1~約500mM、又は約75~約300mMである。添加物濃度は約0.1M~約2Mであってよい。
【0044】
一実施形態では、洗浄緩衝液中の緩衝剤がトリス塩基である場合には、トリス塩基の濃度は約55mMであり、緩衝剤が酢酸である場合には、酢酸の濃度は約45mM酢酸である。一態様では、緩衝剤が酢酸ナトリウムである場合には、酢酸ナトリウムの濃度は約300mM~約1Mである。さらなる態様では、添加物がカプリル酸塩である場合には、カプリル酸塩の濃度は約250mM、又は約100mMである。一態様では、カプリル酸塩はカプリル酸ナトリウムである。別の態様では、添加物がアルギニンである場合には、アルギニンの濃度は約1mM~約2M、例えば約1.1Mである。さらに別の態様では、添加物がリジンである場合には、リジンの濃度は約0.5M~約1Mリジン、例えば約0.75Mリジンである。
【0045】
一実施形態では、洗浄緩衝液は0.05~3M、例えば0.05~1M、又は約0.5~約1.5Mのサッカリン濃度を含む。一態様では、洗浄緩衝液中のサッカリン濃度は0.3Mである。別の態様では、洗浄緩衝液は0.5Mのサッカリン濃度を有する。別の態様では、洗浄緩衝液は約1Mのサッカリン濃度を有する。
【0046】
一実施形態では、本方法において用いる洗浄緩衝液のpHは約pH5~約pH9の間、例えば約pH7~約pH9、例えば約pH7.5~約pH8.5である。特に、pHは約pH7.5である。
【0047】
一実施形態では、溶出ステップでは溶出緩衝液を用いる。特定の態様では、溶出緩衝液は酸性であり、例えばpHは約6.5未満である。好適な溶出緩衝液は当該技術分野で周知である。さらなる態様では、溶出緩衝液は塩、グリシン、クエン酸、酢酸ナトリウム、及び/又は酢酸で構成される。一実施形態では、溶出緩衝液は酢酸ナトリウム及び酢酸を含む。本方法で用いられる溶出緩衝液、例えば酢酸ナトリウム及び酢酸の好適な濃度は当業者には明らかである。例えば、酢酸ナトリウムの濃度は1.8mM、酢酸の濃度は28.2mM、溶出緩衝液のpHは3.6である。
【0048】
一実施形態では、溶出ステップはサッカリンの添加を含まない。一実施形態では、溶出緩衝液はサッカリンを含まない。一実施形態では、サッカリンはクロマトグラフィー支持体から組換えポリペプチドを置換するために使用しない。一実施形態では、本方法は置換クロマトグラフィーを含まない。一実施形態では、本方法はサッカリンが置換剤(displacer)である置換クロマトグラフィーを含まない。
【0049】
一実施形態では、本方法において用いる組換えポリペプチドは抗原結合性タンパク質である。さらなる態様では、抗原結合性タンパク質は、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変ドメイン(dAb)、mAbdAb、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、閉鎖コンフォメーション多重特異性抗体、ジスルフィド連結scFv、ダイアボディ、又は可溶性受容体からなる群から選択される。一態様では、抗原結合性タンパク質は抗体である。
【0050】
用語「抗体」は、本明細書中で最も広い意味で用いられ、免疫グロブリン様ドメイン(例えばIgG、IgM、IgA、IgD、又はIgE)を有する分子を意味し、モノクローナル、組換え、ポリクローナル、キメラ、ヒト、ヒト化、二重特異性抗体を含む多重特異性抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、単一可変ドメイン(例えばドメイン抗体(DAB))、抗原結合性抗体断片、Fab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド連結Fv、一本鎖Fv、ジスルフィド連結scFv、ダイアボディ、TANDABS、その他、並びに上記のいずれかの改変されたバージョンを含む(代替の「抗体」フォーマットの概要については、Holliger及びHudson、Nature Biotechnology、2005、Vol 23、No. 9、1126~1136を参照)。
【0051】
抗体の5つのクラス、IgM、IgA、IgG、IgE、及びIgDは、それぞれμ、α、γ、ε、及びδと呼ばれる別個の重鎖アミノ酸配列によって定義され、それぞれの重鎖はκ又はλ軽鎖と対をなすことができる。血清中の抗体の大部分はIgGクラスに属し、ヒトIgGには4つのアイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4があり、それらの配列は主としてそれらのヒンジ領域において異なっている。
【0052】
用語「多重特異性抗原結合性タンパク質」は、少なくとも2つの異なる抗原結合部位を含む抗原結合性タンパク質を意味する。これらの抗原結合部位のそれぞれは、同じ抗原又は異なる抗原の上に存在し得る異なるエピトープに結合することができる。多重特異性抗原結合性タンパク質は、2つ以上の抗原、例えば2つの抗原、又は3つの抗原、又は4つの抗原に対する特異性を有し得る。
【0053】
二重特異性抗体の分類及びフォーマットは、Labrijnら、2019、並びにBrinkmann及びKontermann、2017による総説に総合的に記載されている。二重特異性は一般に、対称的又は非対称的な構築を有すると分類され得る。二重特異性はFcを有してもよく、断片系(Fcを有しない)であってもよい。断片系二重特異性は、多重抗原結合性抗体断片を、Fc領域のない1つの分子、例えばFab-scFv、Fab-scFv2、オルソゴナルFab-Fab、Fab-Fv、タンデムscFc(例えばBiTE及びBiKE分子)、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、タンデムdAb、その他に組み合わせたものである。
【0054】
一態様では、抗体はヒト化又はキメラである。一実施形態では、組換えポリペプチドは抗体であり、抗体はIgG1、IgG4、又はmAbdAbである。本明細書で使用される場合、用語mAbdAbは、さらなる結合ドメイン、特に単一の可変ドメイン、例えばドメイン抗体に連結されたモノクローナル抗体を意味する。mAbdAbは少なくとも2つの抗原結合部位を有し、その少なくとも1つはドメイン抗体由来であり、少なくとも1つは対をなすVH/VLドメイン由来である。特定の態様では、抗体はモノクローナル抗体(mAb)、例えばIgG1又はIgG4などである。代替的な態様では、抗体は二重特異性抗体、例えばmAbdAbである。
【0055】
別の実施形態では、プロセスの1つ以上の不純物は、宿主細胞タンパク質(HCP)、核酸、エンドトキシン、産生物バリアント、プロセスバリアント、及び/又は細胞培養培地に付随する不純物のうち1つ以上である。一態様では、1つ以上の不純物はHCPである。一態様では、核酸は宿主細胞DNAである。
【0056】
一実施形態では、プロセス中に存在する1つ以上の不純物は宿主細胞によって産生され又はこれに由来し、宿主細胞は真核細胞である。一態様では、真核細胞は哺乳動物細胞、真菌細胞、又は酵母細胞である。一態様では、1つ以上の不純物は哺乳動物細胞によって産生され又はこれに由来する。さらなる態様では、哺乳動物細胞はヒト又はげっ歯類(例えばハムスター又はマウス)の細胞から選択される。特に、哺乳動物細胞はCHO、NS0、Sp2/0、COS、K562、BHK、PER.C6、及び/又はHEK細胞から選択される。一態様では、宿主細胞はHEK、CHO、PER.C6、Sp2/0、及び/又はNS0細胞である。別の態様では、酵母細胞はピチア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、又はシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)である。さらなる態様では、真菌細胞はアスペルギルス属の種(Aspergillus sp.)又はアカパンカビ(Neurospora crassa)である。
【0057】
代替的な実施形態では、プロセス中に存在する1つ以上の不純物は宿主細胞によって産生され又はこれに由来し、宿主細胞は原核細胞、例えば細菌細胞である。特に、細菌細胞は大腸菌(E. coli)(例えばW3110、BL21)、枯草菌(B. subtilis)、及び/又は他の好適な細菌である。
【0058】
一実施形態では、宿主細胞タンパク質は、PLBL2(ホスホリパーゼB様2タンパク質)、カテプシンL、カテプシンD、サイロドキシン、神経細胞付着分子、レニン受容体、リポタンパク質リパーゼ、コンドロイチン硫酸プロトグリカン4、アルファ-エノラーゼ、ガレクチン-3-結合タンパク質、Gタンパク質共役型受容体56、V型プロトンATPアーゼサブユニットS1、ニドゲン-1、ATPシンターゼサブユニットベータ、ミトコンドリアル、ビメンチン、ヒートショックタンパク質、アクチン、ペルオキシロドキシン1、SPARC、クラステリン、補体C1r-aサブコンポーネント、メタロプロテイナーゼ阻害剤1、インスリン、硫酸化糖タンパク質1、及び/又はリソソーマル保護タンパク質から選択される。特に、HCPはホスホリパーゼB様2タンパク質(PLBL2)である。PLBL2は、組換えポリペプチドに対する明白な結合のために、抗体の下流の処理の間に除去することが困難なHCP不純物であることが見出されている。一態様では、組換えポリペプチドは抗体、例えばIgG抗体、特にIgG4抗体である。PLBL2の量は、当該技術分野で公知の方法を用いて、例えばELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、例えばWO2015/038884に開示されたPLBL2特異的ELISAによって、測定することができる。代替的な実施形態では、HCPはカテプシンLである。カテプシンLはCHOの細胞培養の間に産生されるプロテアーゼであり、抗体である組換えポリペプチドを分解する可能性がある。一態様では、組換えポリペプチドは抗体、例えばIgG抗体、特にIgG1抗体である。さらなる実施形態では、カテプシンLからの組換えポリペプチドの精製は、ステップ(c)の溶出液中のカテプシンL活性の低減によって(例えばPROMOKINE PK-CA577-K142、カテプシンL活性アッセイキットによって)測定することができる。
【0059】
溶液又は溶出液中に存在する不純物、例えばHCPの量は、ELISA、OCTET(アッセイシステム)、又は他の好適な方法によって決定してよい。本明細書に記載した実施例においては、HCPレベルはELISAによって決定される。HCP含量の低減は、サッカリンのない対照洗浄ステップと比較した場合、及び/又は例えば精製前の清澄化された未処理バルク(CUB)(CCCF)と比較した場合に示される。
【0060】
一実施形態では、溶液又は溶出液は、初期積載中のHCP含量の半分を超えて低減したHCP含量を有し、例えばHCP含量は60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上低減する。
【0061】
一実施形態では、溶液又は溶出液は、500ppm以下、400ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、100ppm以下、75ppm以下、又は50ppm以下のHCP含量を有する。一態様では、HCPである不純物の含量は200ppm以下である。一態様では、HCP含量は195ppm以下、190ppm以下、185ppm以下、180ppm以下、175ppm以下、170ppm以下、165ppm以下、160ppm以下、155ppm以下、又は150ppm以下である。一態様では、HCP含量は190ppm以下である。
【0062】
宿主細胞の核酸、例えばDNA、例えば残存ゲノムDNA(rgDNA)の量は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定することができる。本明細書に記載した実施例では、rgDNAレベルはqPCRによって決定され、rgDNA pg/mgタンパク質として表わされる。rgDNA含量の低減は、サッカリンのない対照プロセスと比較した場合に示され得る。一実施形態では、溶液又は溶出液は、最初の試料と比較して低減したrgDNA含量を有し、例えば、rgDNA含量は10分の1、20分の1、50分の1、100分の1、又はそれ以下に低減する。一実施形態では、rgDNAはサッカリンの添加の後、約50,000pg/mg以下、約30,000pg/mg以下、約25,000pg/mg以下、約10,000pg/mg以下、約5,000pg/mg以下、約1,000pg/mg以下、約500pg/mg以下、約250pg/mg以下、又は約100pg/mg以下になる。
【0063】
PLBL2の量はELISAによって決定することができる。本明細書に記載した実施例では、PLBL2レベルはELISAによって決定され、PLBL2ppmとして表わされる。PLBL2含量の低減は、サッカリンのない対照プロセスと比較した場合に示され得る。一実施形態では、溶液又は溶出液は、最初の積載におけるPLBL2含量の半分を超えて低減したPLBL2含量を有し、例えばPLBL2含量は60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上低減する。一実施形態では、PLBL2はサッカリンの添加の後、約50ppm以下、約25ppm以下、約20ppm以下、約15ppm以下、約10ppm以下、又は約5ppm以下になる。
【0064】
精製された組換えポリペプチドのモノマー含量は、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上であり得る。モノマーは、産生物に関連する不純物である凝集物及び断片に対して区別される。溶出液中の精製された組換えポリペプチドのモノマー純度は、本明細書の実施例においてSEC+HPLCによって測定されるが、代替の好適な方法も用いられ得る。一実施形態では、溶出液中の精製された組換えポリペプチドは約90%~約100%の範囲のモノマー含量を有する。一態様では、溶出液中の精製された組換えポリペプチドは90%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上のモノマー含量を有する。一態様では、モノマー含量は95%以上である。一態様では、溶出液中の精製された組換えポリペプチドは97%以上のモノマー含量を有する。
【0065】
代替的な態様では、精製された組換えポリペプチドの凝集物の量は、全精製ポリペプチドの5%未満、例えば3%未満である。
【0066】
一態様では、精製された組換えポリペプチドは抗体である。
【0067】
収率は、プロセスの開始時と比較した、精製プロセスから得られる組換えポリペプチドのパーセンテージとして測定することができる。精製方法によって不純物と組換えポリペプチドの両方が除去され得ることが知られており、したがってこれらのバランスを取らなければならない。組換えポリペプチドの収率は70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上であってよい。
【0068】
一実施形態では、溶出液中の精製された組換えポリペプチドは95%以上のモノマー含量を有し、溶出液は200ppm以下のHCPを有する。一態様では、溶出液中の精製された組換えポリペプチドは97%以上のモノマー含量を有し、溶出液は200ppm以下のHCP含量を有する。さらなる実施形態では、HCP含量は引き続く下流の処理によってさらに低減する。
【0069】
宿主細胞タンパク質からの組換えポリペプチドの精製は、組換えポリペプチドの断片化をもたらすことが多い。本出願人は、本明細書に記載した精製方法を利用した場合に、組換えポリペプチドの断片化の量が無視可能であることを発見した。一実施形態では、溶出した組換えポリペプチドは約10%未満、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、又は約1%未満の断片化組換えポリペプチドを含有する。例えば、組換えポリペプチドは抗体であり、溶出した抗体は約10%未満、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、又は約1%未満の断片化抗体を含有する。特定の態様では、精製された組換えポリペプチドは約2%未満断片化されている。一態様では、精製された組換えポリペプチドは約1%未満の断片化を有する。
【0070】
一実施形態では、組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液中の1つ以上の不純物のレベルを低減させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスが提供される。
【0071】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液から宿主細胞タンパク質(HCP)を低減させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスである方法が本明細書で提供される。
【0072】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液から宿主細胞DNAを低減させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスである方法が本明細書で提供される。
【0073】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液からPLBL2を低下させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスである方法が本明細書で提供される。
【0074】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液から収率を増加させ、1つ以上の不純物のレベルを低減させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスである方法が本明細書で提供される。
【0075】
組換えポリペプチド及び1つ以上の不純物を含む溶液からモノマー含量を増加させ、1つ以上の不純物のレベルを低減させる方法であって、サッカリンの添加を含む精製プロセスである方法が本明細書で提供される。
【0076】
一実施形態では、1つ以上の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む溶液から組換えポリペプチドを精製する方法であって、
(a)組換えポリペプチド及び1つ以上のHCPの溶液をプロテインAであるクロマトグラフィー支持体上に積載するステップ、
(b)クロマトグラフィー支持体を、サッカリンナトリウム塩水和物を含む洗浄緩衝液によって洗浄するステップ、及び
(c)クロマトグラフィー支持体から溶出緩衝液によって組換えポリペプチドを溶出させるステップ
を含む方法が提供される。
【0077】
一態様では、組換えポリペプチドは抗体である。
【0078】
一態様では、サッカリン濃度は0.1~1M、又は約1Mである。
【0079】
一実施形態では、本方法で用いる洗浄緩衝液は、約0.3M~約0.5M又は約1Mのサッカリンナトリウム塩水和物、55mMのトリス塩基、及び45mMの酢酸を含む。別の態様では、洗浄緩衝液は、約100mM~約250mMのカプリル酸ナトリウム、及び約300mM~約1Mの酢酸ナトリウムをさらに含む。別の態様では、洗浄緩衝液は、1.1Mのアルギニンをさらに含む。
【0080】
定義
本明細書で用いる専門用語は特定の実施形態を説明する目的のためのみであって、限定することを意図していないことを理解されたい。他に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する技術分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0081】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「ポリペプチド(a polypeptide)」への言及は、2つ以上のポリペプチドの組合せ等を含む。
【0082】
単語「含む(comprise)」並びに「comprises」及び「comprising」等の変形は、記述した整数若しくはステップ又は整数の群を含むが、他のいずれの整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群をも除外しないことを意味すると理解される。即ち、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」又は「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」プロセスは、Xのみからなるか、又はさらなる何か、例えばX+Yを含み得る。用語「本質的にXからなる」は、特徴の範囲を、特定された材料又はステップ及び特許請求する特徴の基本的特性に実質的に影響しない材料又はステップに限定する。用語「からなる」は、いずれの追加の成分の存在も除外する。
【0083】
本明細書で用いる「約」は、測定できる値、例えば量、時の経過、その他を指す場合には、開示した方法を実施するために適切な、特定した値から±20%又は±10%、例えば±5%、±1%、及び±0.1%の変動等の好適な誤差の範囲を包含する。
【0084】
本明細書で用いる場合、「アフィニティクロマトグラフィー」は、クロマトグラフィーによる分離をもたらすための、生体分子の一般的特性、例えば等電点、疎水性、又はサイズよりむしろ、生体分子の間の特異的かつ可逆的な相互作用を利用するクロマトグラフィー法である。
【0085】
「緩衝液」は、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によってpHの変化に抗する緩衝化された溶液である。「平衡緩衝液」は、クロマトグラフィーのためのクロマトグラフィー支持体を調製するために用いられる溶液を意味する。「積載緩衝液」は、組換えポリペプチド及び不純物の溶液を支持体上に積載するために用いられる溶液を意味する。平衡緩衝液と積載緩衝液は同一であってよい。平衡緩衝液、積載緩衝液、及び洗浄緩衝液は同一であってよい。「洗浄緩衝液」は、積載が完了した後でクロマトグラフィー支持体から不純物を除去するために用いられる溶液を意味する。「溶出緩衝液」は、クロマトグラフィー支持体から標的の組換えポリペプチドを取り出すために用いられる。
【0086】
「塩」は、酸と塩基の相互作用によって形成される化合物である。
【0087】
「脂肪族カルボキシレート」は、直鎖状又は分枝状であり得る。脂肪族カルボキシレートは脂肪族カルボン酸若しくはその塩であってよく、又は脂肪族カルボキシレートの供給源が脂肪族カルボン酸若しくはその塩であってよい。脂肪族カルボキシレートは直鎖状であり、メタン酸(ギ酸)、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸(ウンデシル酸)、ドデカン酸(ラウリル酸)、トリデカン酸(トリデシル酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、及びイコサン酸(アラキジン酸)、又はそれらの任意の塩からなる群から選択される。したがって、脂肪族カルボキシレートは1~20炭素の長さの炭素骨格を含み得る。例えば、脂肪族カルボキシレートは6~12炭素の骨格を含む。別の例では、脂肪族カルボキシレートは、カプロエート、ヘプタノエート、カプリル酸(カプリレート、カプリル酸塩)、デカノエート、及びドデカノエートからなる群から選択される。脂肪族カルボキシレートの供給源は脂肪族カルボン酸、例えば脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、脂肪族カルボン酸のカリウム塩、及び脂肪族カルボン酸のアンモニウム塩からなる群から選択される。
【0088】
「1つ以上の不純物を含む組換えポリペプチド」は、細胞培養培地である溶液、例えば細胞培養の供給流であってよい。供給流は濾過してよい。溶液は清澄化された未処理のバルク(CUB)(又は清澄化された細胞培養収穫/上清/発酵ブロス)であってよい。CUBは、いずれの細胞及び/又は細胞破片も清澄化によって除去された細胞培養上清としても知られている。溶液は、組換えポリペプチドを発現する細胞の溶解された調製物(例えばライセート)であってよい。清澄化された未処理のバルク(CUB)は、清澄化された細胞培養液(CCCF)と等価であり、両方の用語は相互交換可能に用いることができる。
【0089】
用語「不純物」は、目的の組換えポリペプチドと同じ性質を共有しない任意の産生物を意味する。特に、不純物は、クロマトグラフィーの前の積載試料又はクロマトグラフィーの後の溶出液中に存在する任意の外来の又は望ましくない分子を意味する。「プロセスに関連する不純物」が存在し得る。これらは、目的のポリペプチドが産生されるプロセスの結果として存在する不純物である。例えば、これらは宿主細胞タンパク質(HCP)、RNA、及びDNAを含む。「HCP」は、細胞内の及び/又は分泌されたタンパク質を含む、細胞培養又は発酵の間に宿主細胞によって産生された、目的のポリペプチドに関係のないタンパク質を意味する。宿主細胞タンパク質の例はプロテアーゼであり、これは精製の間及び精製後にまだ存在すれば、目的の組換えポリペプチドに損傷を与える可能性がある。例えば、目的のポリペプチドを含む試料中にプロテアーゼが残存していれば、これは、もともと存在せず、望ましくない「産生物関連」物質又は不純物を創成することがある。プロテアーゼの存在は、精製プロセスの間、経時的に、及び/又は最終的な製剤において、目的のポリペプチドの崩壊、例えば断片化を惹起し得る。
【0090】
本明細書で用いる用語「不純物」には、細胞を増殖させるか、又は目的のポリペプチドの発現を確実にするために用いられる成分、例えば溶媒(例えば酵母細胞を培養するために用いられるメタノール)、抗生剤、メトトレキサート(MTX)、培地成分、凝集剤、その他も含まれる。例えばプロテインA、プロテインG、又はプロテインLクロマトグラフィーの間に試料中に浸出するクロマトグラフィー支持体の一部である分子も含まれる。
【0091】
不純物には、その活性を保持しているが、その構造においては異なるタンパク質、及びその構造における相違のために活性を失ったタンパク質を含む「産生物関連バリアント」も含まれる。これらの産生物関連バリアントには、例えば高分子量種(HMW)、低分子量種(LMW)、凝集タンパク質、前駆体、分解タンパク質、折り畳み異常のタンパク質、低ジスルフィド結合タンパク質、断片、及び脱アミド化種が含まれる。
【0092】
溶出液中のこれらの不純物のいずれか1つの存在を測定して、洗浄ステップが成功したか否かを確証することができる。例えば、本発明者らは、産生物のHCPの百万分率(ppm)として表わされるHCPのレベルの低減を示した(実施例参照)。「ppm」で検出されるHCPはng/mgと等価であり、「ppb」(「10億分率」)はpg/mgと等価である。本発明者らは、残存ゲノムDNA(rgDNA)のpg/mgとして表わされるDNAのレベルの低減も示した(実施例参照)。本発明者らは、産生物の百万分率(ppm)として表わされるPLBL2のレベルの低減も示した(実施例参照)。
【0093】
本明細書で用いる場合、用語「プロテインA」は、天然源(例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁)から回収されたプロテインA、合成によって(例えばペプチド合成によって、又は組換え手法によって)産生されたプロテインA、及びCH2/CH3領域を有するタンパク質に結合する能力を保持したそれらのバリアントを包含する。プロテインAは重鎖の可変領域(VH3)に結合することもでき、その親和性はFc領域の非存在下で強化される。プロテインAは、例えばRepligen又はPharmacia又はGE Healthcareから市販品を購入することができる。
【0094】
「プロテインAアフィニティクロマトグラフィー」又は「プロテインAクロマトグラフィー」は、免疫グロブリン分子のFc部分及び/又は可変領域に対するプロテインAのIgG結合ドメインの親和性を利用する特異的なアフィニティクロマトグラフィー法を意味する。このFc部分は、ヒト又は動物の免疫グロブリン定常ドメインCH2及びCH3、又はこれらと実質的に同様の免疫グロブリンドメインを含む。実際には、プロテインAクロマトグラフィーは、固体支持体であるクロマトグラフィー支持体に固定化されたプロテインAを用いるステップに関与する。Gagnon, Protein A Affinity Chromatography、Purification Tools for Monoclonal Antibodies、155~198ページ、Validated Biosystems、(1996)を参照されたい。プロテインG及びプロテインLも、アフィニティクロマトグラフィーに用いてよい。プロテインAをクロマトグラフィー支持体に固定するために任意の好適な方法を用いることができる。タンパク質を固定化する方法は当技術で周知である。例えばOstrove、in Guide to Protein Purification、Methods in Enzymology、(1990) 182: 357~371を参照されたい。そのようなクロマトグラフィー支持体は、プロテインA又はプロテインLを固定化したものも固定化しないものも、市販の多くの供給源、例えばVector Laboratory(Burlingame、Calif.)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、Calif.)、BioRad(Hercules、Calif.)、Amersham Biosciences(GE Healthcare社の一部、Uppsala、Sweden)、及びMillipore(Billerica、Mass.)から容易に入手可能である。
【0095】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は相互交換可能であり、アミノ酸残基のポリマーを意味し、特定の長さの産生物を意味しない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質はポリペプチドの定義の中に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の改変を意味又は除外しないが、これらのポリペプチドの化学的な又は発現後の改変は特定の実施形態として含まれ又は除外され得る。したがって、例えばグリコシル基、アセチル基、ホスフェート基、脂質基、その他の共有結合を含むポリペプチドの改変は、用語ポリペプチドに明示的に包含される。さらに、これらの改変を含むポリペプチドは、本開示に含まれ又は本開示から除外される個別の種として特定され得る。一実施形態では、分子はポリペプチド若しくはそれに関連するアナログ又はその誘導体である。ポリペプチドは天然の起源(組織由来)、原核若しくは真核の細胞調製物由来の組換え若しくは天然の発現、又は合成法を介して化学的に産生されたものでよい。
【0096】
「組換え」は、ポリペプチドに関して用いる場合、細胞が異種の核酸若しくはポリペプチドの導入によって、又は天然の核酸若しくはポリペプチドの変更によって改変されたことを示す。
【0097】
用語「サッカリン」は、安息香酸スルフイミド、2,3-ジヒドロ-3-オキソベンズイソスルホナゾール、o-スルホベンズイミド、ベンゾ[d]イソチアゾール-3(2H)-オン 1,1-ジオキシド、及び2H-1λ6,2-ベンゾチアゾール-1,1,3-トリオンを含むその同義語を包含する。サッカリンの化学構造は以下のように描かれる。
【0098】
【化1】
【0099】
「アルギニン」への言及は、天然のアミノ酸を意味するのみでなく、アルギニン誘導体又はその塩、例えばアルギニンHCl、アセチルアルギニン、アグマチン、アルギニン酸、N-アルファ-ブチロイル-L-アルギニン、又はN-アルファ-ピバロイルアルギニンをも包含する。
【0100】
用語「カラム体積」又は(「CV」)は、充填カラム中の全体積を意味する。
【0101】
用語「クロマトグラフィー支持体」は、「媒体」、「固体支持体」、「定常相」、「レジン」、「マトリックス」、「ビーズ」、「ゲル」、又はクロマトグラフィーカラムを充填するために用いられる材料を記載するために用いることができる他の任意の用語と相互交換可能である。
【0102】
略語「MSS」は、MABSELECT SUREレジンを意味し、これはプロセススケールでモノクローナル抗体(mAb)を捕捉するために用いられるアフィニティクロマトグラフィー媒体である。
【0103】
ここで本発明を以下の実施例とともに記載する。
【0104】
[実施例]
[実施例1]
プロテインAカラムクロマトグラフィーの条件
プロテインAクロマトグラフィーカラムにMABSELECT SUREレジン(GE Healthcare)を充填した。清澄化された未処理バルク(CUB)(CCCF)培養は、組換えポリペプチド、(i)二重特異性抗体(mAb/dAb)、(ii)モノクローナル抗体1(mAb1)、(iii)モノクローナル抗体2(mAb2)、(iv)モノクローナル抗体3(mAb3)、又は(v)モノクローナル抗体4(mAb4)を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来であった。用いた2-スルホ安息香酸アンモニウム塩、サッカリンナトリウム塩二水和物、サッカリンナトリウム塩水和物、及びL-アルギニンは、Sigma Life Sciences製であった。実施例でサッカリンについて述べる場合には、サッカリンナトリウム塩水和物を意味している。試験した他の任意のサッカリン塩をさらに定義する。
【0105】
装置:
用いたAKTA AVANT調製用クロマトグラフィーシステムは、GE Healthcare製であった。
【0106】
mAb1、mAb2、mAb3、mAb4、及びmAb/dAbの産生のためのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養
清澄化された未処理バルク(CUB)(CCCF)は、5つの抗体産生物:mAb/dAb(IgG1、MW=176kDa、pI=7.5);mAb1(IgG1、MW=149kDa、pI=7.8);mAb2(IgG1、MW=152kDa、pI=9.6);mAb3(IgG1、MW=147.6kDa、pI=7.8);又はmAb4(IgG4、MW=147.8kDa、pI=7.1)のうちの1つを含んでいた。同様の方法を用いて全ての産生物を産生し、収穫した。例えば、mAb/dAbは以下のようにして調製した。mAb/dAbを発現するCHO K1A細胞を一連の振盪フラスコによってスケールアップし、50LのSALTORIUS Single Use Bioreactor(SUB)に接種するために十分な細胞を準備した。50LのSUBに生細胞数1.0×106個細胞/mL、及び作業体積40Lで播種した。温度を固定して培養を維持し、培養3日目までpHの設定値も維持して、細胞培養バッチの終了までpHを低減させた。プロセスを通して規則的な時点で供給した培養液を、3MのZETA PLUSカプセル化フィルターシステム又はMerckのMillistak+HC Proカプセル化フィルターシステムを用いて14日目に収穫した。
【0107】
プロテインAクロマトグラフィー
全ての抗体産生物(mAb/dAb、mAb1、mAb2、mAb3、及びmAb4)を用いてプロテインAクロマトグラフィー実験を実施し、プロテインAクロマトグラフィー溶出液の最終HCP含量に対する異なる洗浄緩衝液の影響を判定した(表1及び表2を参照)。実験は、AKTA AVANT(GE Healthcare)及びMABSELECT SURE(GE Healthcare)を充填したプロテインAクロマトグラフィーカラムを用いて実施した。カラムの充填品質は、最初にHETP(理論段数と等価の高さ)及びピークの非対称性を測定することによって評価した。
【0108】
サッカリン含有洗浄液は別として、試験した積載後のプロテインA洗浄液は全て、抗体精製のための対照プロテインAプロセスにおいて採用したプロテインA洗浄液の変形である。
【0109】
【表1】
【0110】
用いたカラム体積は限定的であることを意図していない。例えば、十分な平衡緩衝液がカラムを通過して、それによりカラムが十分に平衡化される限り(これは例えば平衡緩衝液のカラムのpH及び電導度によって測定することができる)、平衡体積はプロセスへの影響なしに変動し得る。
【0111】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0112】
分析:宿主細胞タンパク質濃度(HCP ELISA)
CHO由来産生物試料中のHCPの全量を定量するために、HCP ELISAを用いる宿主細胞タンパク質分析を社内で開発した(Miharaら、(2015) J. Pharm. Sci. 104: 3991~3996)。このHCP ELISAは、CHO由来の産生物にわたる多数の産生物に使用するための特製のヤギ抗CHO-HCPポリクローナル抗体及び社内生産のHCP参照標準品を用いて開発した。
【0113】
分析:PLBL2濃度(PLBL2 ELISA)
産生物試料中のPLBL2(ホスホリパーゼB様2)の全量を定量するために、PLBL2 ELISAを用いるPLBL2の分析を社内で開発した。このPLBL2 ELISAは、特製のマウス抗PLBL2モノクローナル抗体及び社内生産のPLBL2参照標準品を用いて開発した。
【0114】
分析:残存ゲノムDNA(rgDNA)
DNA分析は、社内開発のqPCR法を用いて実施した。
【0115】
分析:サイズ排除(SEC-HPLC)による純度決定
組換えポリペプチド産生物関連不純物(凝集物及び断片)に対する産生物(モノマー)の純度を、AGILENT(1200又は1260)HPLCシステムにおけるSECカラム(TOSOH TSKGEL G3000SWXL)を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。移動相:100mM 一塩基性リン酸ナトリウム、400mM 塩化ナトリウム、pH6.8、流速0.2mL/分、注入量10μL(5mg/mL試料)、280nmにて検出(バンド幅8nm)。
【0116】
[実施例2]
mAb/dAbを用いるプロテインAにおける3種の異なる洗浄の比較
プロテインAカラムに、mAb/dAbを発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて28mgAb/mLResinを積載した。カプリル酸塩洗浄液を用いると、CHO由来の薬物産生物中の標的HCPレベルが一般に100ppm未満であることを考慮すれば、溶出液中のHCPレベルは高かった。通常、抗体精製プロセスにおけるその後の処理ステップからいくらかのHCP除去が得られるので、プロテインAステップで100ppm未満にすることは重要ではない。しかし、これは用いるステップ及び産生物と特定のHCPとの相互作用の強さ/型に応じて広く変動し得る。カプリル酸塩洗浄液中のカプリル酸塩レベルを250mMに増加すると(高カプリル酸塩)、標的にもっと近づくことができるが、モノマーレベルの低減という犠牲が必要になり、これは産生物が損失することと、産生物に関連する不純物を除去するために余分のプロセスステップが必要になり得ることを意味する。カプリル酸塩洗浄液に0.3Mのサッカリンナトリウム塩を添加しても(カプリル酸塩+0.3Mサッカリン)、178ppmで100ppmの標的に近づくことができ、モノマーの犠牲もない。
【0117】
【表3】
【0118】
[実施例3]
mAb/dAbを用いるプロテインAにおける6種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb/dAbを発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。表4に見られるように、平衡緩衝洗浄液(HCPを特異的に除去する成分を含まない)を含む6種の異なる洗浄緩衝液を試験した。予想されたように、得られた溶出液中のHCPレベルは極めて高かった(4169ppm)。HCPレベルをさらに低減させる試みで、この例ではサッカリンナトリウム塩の濃度を増加させた。これにより、カプリル酸塩洗浄液に添加した場合(59ppm HCP)及び平衡緩衝液に添加した場合(135ppm HCP)に良好な結果が得られた。ここでカプリル酸塩洗浄液中の酢酸ナトリウムレベルを増加させることも試験したが、成功は僅か(855ppm HCP)であった。カプリル酸塩洗浄液中のカプリル酸ナトリウムのレベルを再び増加させると、比較的良好なHCPクリアランスが得られたが、モノマーレベルが犠牲になった。
【0119】
【表4】
【0120】
[実施例4]
mAb1を用いるプロテインAにおける7種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb1を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。ここでは実施例1と同じ洗浄緩衝溶液にアルギニン含有洗浄液を追加して試験した(表5を参照)。アルギニン含有洗浄液は極めて低い(79ppm)HCPレベルをもたらした。カプリル酸塩洗浄液にサッカリン(0.5M)を添加して最も低いHCPレベル(52ppm HCP)が得られ、平衡緩衝液に0.5Mのサッカリンを添加しても良好な結果(135ppm HCP)が得られた。高カプリル酸塩では極めて低いHCPが得られたが、モノマーレベルが95.9%から53.5%に低減した。カプリル酸塩洗浄液中の酢酸ナトリウムレベルを300mMから1.0Mに増加しても(カプリル酸塩高アセテート)、mAb1についてカプリル酸塩洗浄液によって達成されたHCP除去より有益な結果は得られなかった。
【0121】
【表5】
【0122】
[実施例5]
プロテインAクロマトグラフィー後のHCPレベルを低減させるためのCUB(CCCF)添加物としてのサッカリン
二重特異性抗体(mAb/dAb)を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)に異なる濃度でサッカリンを添加した。CHO細胞培養の産生は実施例1に記載した通りであった。次いで抗体をプロテインAクロマトグラフィーによって精製した。全部で6回のプロテインAランがあり、それぞれについてプロテインAカラムに31.4mgAb/mLResinのレベルで積載した。クロマトグラフィーランのうち5回については、同じ抗体濃度を維持しながら異なるサッカリン濃度が得られるように、CUB(CCCF)をサッカリンナトリウム塩水和物溶液と水とで希釈することによって積載液を調製した(表6参照)。6番目のランは対照プロテインAプロセスを含む対照ランであり、CUB(CCCF)はそのまま(サッカリン又は水を添加せずに)積載し、カプリル酸塩による積載後洗浄ステップを含めた。クロマトグラフィー条件の概要は表7及び表8で見られる。
【0123】
6回のプロテインAのランのそれぞれの溶出液を、実施例1に記載したように、HCP ELISA及びSEC-HPLCによって分析した。
【0124】
結果(図1参照)は、CUB(CCCF)に添加するサッカリンナトリウムのレベルを増加させると、プロテインA溶出液中に存在するHCPのレベルが低減することを示す。積載液中の50mMのサッカリンは、積載液中にサッカリンがない場合と比較して、プロテインA溶出液中のHCPのレベルの50%を超える減少をもたらした。積載液中の280mM、500mM、及び630mMのサッカリンは、カプリル酸塩洗浄液(ラン6)と比較してHCPのクリアランスにおいて優れていた。HCPレベルの低減の効果は、サッカリン濃度の増加とともに増加する。
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
[実施例6]
mAb2についてのMABSELECT SUREプロテインAカラム洗浄液のスクリーニング
mAb2についてプロテインAにおけるサッカリンナトリウム洗浄液を試験し、アルギニン洗浄液と比較した。
【0129】
方法及び材料
0.2μMのSTERICUPフィルターを用いて抗体mAb2を濾過し、以下のランに用いた。小スケールのスクリーニング実験を実施した。
・カプリル酸塩洗浄液、
・カプリル酸塩+1.1M L-アルギニン(カプリル酸塩洗浄液中に1.1MのL-アルギニンを含む緩衝液)、
・平衡緩衝液+0.5M サッカリン(カプリル酸塩平衡緩衝液中に500mMのサッカリンを含む緩衝液)。
【0130】
表9は、3種の異なるプロテインAラン(図2図3、及び図4に示すカプリル酸塩、カプリル酸塩+アルギニン、及びカプリル酸塩+サッカリン)の回収、溶出液モノマー純度、及びHCPデータを示す。
【0131】
【表9】
【0132】
サッカリンをプロテインA平衡緩衝液に添加した一方、アルギニン洗浄液では、酢酸ナトリウム及びカプリル酸ナトリウムも含むカプリル酸塩プロテインA洗浄緩衝液にアルギニンを添加した。本実施例におけるデータによれば、洗浄緩衝液中でサッカリンを用いることによって、最大のモノマー純度(97.3%)がもたらされ、高い回収率及び低いHCPレベルも維持された。
【0133】
図2図3、及び図4は、それぞれ、抗体mAb2のカプリル酸塩、アルギニン、及びサッカリンの洗浄ランについてのMSSクロマトグラムを示す。
【0134】
[実施例7]
mAb3を用いるプロテインAにおける12種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb3を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。10mM~3Mの範囲の異なるサッカリン濃度のサッカリンナトリウム塩水和物を含むプロテインA洗浄緩衝液(表2の平衡緩衝液+10mM~3Mサッカリン)を試験した。
【0135】
結果は、10mMのサッカリンがHCPの除去に有効であり、サッカリン濃度を増加するとHCPのクリアランスが改善されることを示す(表10参照)。平衡緩衝液陰性対照では3008ppmのHCPレベルが観察され、このHCPレベルは洗浄ステップにおける3Mのサッカリンによって100分の1以下に低減した。モノマー純度は、1.5Mサッカリンまで異なる溶出液にわたって同程度であった。200mMサッカリンでのHCPのクリアランスはカプリル酸塩洗浄緩衝液と同程度であり、600mMサッカリンでは高カプリル酸塩洗浄緩衝液と同程度であった。
【0136】
【表10】
【0137】
[実施例8]
mAb3を用いるプロテインAにおける13種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb3を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。異なる緩衝系(平衡緩衝液、PBS、MOPS pH7.5、MOPS pH6.5、及びMES pH5.5)を含み、サッカリンナトリウム塩二水物を含む(0.3M、0.5M、又は1M)か若しくは含まないプロテインA洗浄緩衝液を試験した。
【0138】
洗浄緩衝液中で0.3M、0.5M、及び1Mのサッカリンナトリウム塩二水和物を用いると、試験した全ての緩衝系にわたってHCPレベルが一貫して低減した(表11参照)。DNAの結果は、サッカリンナトリウム塩二水和物が1Mの濃度でカプリル酸塩洗浄液と比較して良好なDNAクリアランスを提供したことを示している。
【0139】
【表11】
【0140】
[実施例9]
mAb3を用いるプロテインAにおける14種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb3を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。pH5~pH8の範囲の異なるpHを有し、サッカリンナトリウム塩二水和物を含む(0.3M又は0.5M)か若しくは含まないプロテインA洗浄緩衝液を試験した。表12は、試験した全てのpHにおいてサッカリンナトリウム塩二水和物を用いることによってHCPレベルが低減したことを示している。モノマーのレベルは全てのpHにわたって同程度であった。
【0141】
【表12】
【0142】
[実施例10]
mAb3を用いるプロテインAにおける5種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb3を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。異なるサッカリン塩を含むプロテインA洗浄緩衝液を試験した。サッカリンの3種の塩バリアントの全てが、HCPレベルを減少させた(表13参照)。洗浄緩衝液中のサッカリン及びサッカリンナトリウム塩二水和物は、平衡緩衝液と比較して90%を超えるHCPレベルの減少をもたらした。サッカリン塩はモノマーレベルへの影響を有しなかった。
【0143】
【表13】
【0144】
[実施例11]
mAb4を用いるプロテインAにおける4種の洗浄緩衝液の比較
mAb4は、高レベルのPLBL2とともに精製されることが知られているIgG4抗体である。プロテインAカラムに、mAb4を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。プロテインA洗浄緩衝液、平衡緩衝液+0.5Mサッカリンナトリウム塩二水和物及びカプリル酸塩+1.1M L-アルギニンを試験し、比較した。カプリル酸塩+1.1M L-アルギニン洗浄緩衝液はmAb4のプロテインA精製においてPLBL2レベルを低減させるために既に実施しており、陽性対照として用いた。洗浄緩衝液中のサッカリンナトリウム塩二水和物は、洗浄緩衝液中のアルギニンと比較して、mAb4のプロテインA精製においてPLBL2レベルの低減に優れていた(表14参照)。
【0145】
【表14】
【0146】
[実施例12]
mAb3を用いるプロテインAにおける6種の洗浄緩衝液の比較
プロテインAカラムに、mAb3を発現するCHO培養からのCUB(CCCF)を用いて35mgAb/mLResinを積載した。HCPのクリアランスにおける相乗効果の可能性を検討するため、サッカリンナトリウム塩二水和物及び他の緩衝成分を含むプロテインA洗浄緩衝液を試験した。表15は、平衡緩衝液対照と比較して、平衡緩衝液+0.5Mサッカリンナトリウム塩二水和物がHCPレベルを89.2%低減させ、平衡緩衝液+1.1M L-アルギニンがHCPレベルを87.2%低減させ、平衡緩衝液+100mMカプリル酸塩がHCPレベルを70.5%低減させたことを実証する。したがって、洗浄緩衝液中のサッカリンナトリウム塩二水和物は、mAb3のHCPレベルの低減に優れていた。
【0147】
平衡緩衝液+1.1M L-アルギニン及び平衡緩衝液+100mMカプリル酸塩へのサッカリンナトリウム塩二水和物の添加は、HCPレベルをそれぞれ98.1%及び98.7%低減させ、サッカリンナトリウム塩二水和物を他の緩衝成分と組み合わせた場合に、HCPのクリアランスが増加することが示された。
【0148】
表16は、サッカリンナトリウム塩二水和物をカプリル酸塩洗浄液に添加した場合(HCPレベルが96.7%低減)及びサッカリンナトリウム塩二水和物をカプリル酸塩+1.1M L-アルギニンに添加した場合(HCPレベルが96.9%低減)における同様の相乗効果を示す。
【0149】
【表15】
【0150】
【表16】
図1
図2
図3
図4