(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】マルチコア光ファイバとシングルコア光ファイバとの接続器
(51)【国際特許分類】
G02B 6/38 20060101AFI20241031BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B6/38
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2022039514
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2024-01-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立開発研究法人情報通信研究機構「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」副題「標準クラッド径マルチコアファイバ伝送路技術の確立」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大樹
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-021322(JP,A)
【文献】特開2016-061941(JP,A)
【文献】特開2019-066772(JP,A)
【文献】特開2013-195561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0104244(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0039622(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104698533(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112162365(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255-6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/36- 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プラグが設けられたマルチコア光ファイバと、第2プラグが設けられたシングルコア光ファイバと、を接続する接続器であって、
前記第1プラグが差し込まれる第1ジャックと、
前記第2プラグが差し込まれる第2ジャックと、
を備え、
前記第1ジャックは、第1方向に沿って前記第1プラグが差し込まれた際に、前記第1プラグにおいて前記マルチコア光ファイバの端部を収容する第1フェルールを保持する第1スリーブを有し、
前記第2ジャックは、前記第1方向とは逆方向に沿って前記第2プラグが差し込まれた際に、前記第2プラグにおいて前記シングルコア光ファイバの端部を収容する第2フェルールを保持する第2スリーブを有し、
前記マルチコア光ファイバの複数のコアは、当該マルチコア光ファイバの長手方向に直交するファイバ断面において、前記ファイバ断面の中心を中心とする所定半径の円の上に等間隔で配置され、
前記第1方向に直交する面内における前記第1スリーブの位置は、前記第1方向に直交する面内における前記第2スリーブの位置に対して
前記所定
半径だけオフセットされて
おり、
前記第1ジャックは、前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグの前記第1方向を回転軸とする回転位相が第1位相、第2位相、第3位相及び第4位相の内のいずれかの位相となる様に規制する規制部材を備え、
前記第2位相は、前記第1位相より90度だけ大きく、
前記第3位相は、前記第1位相より180度だけ大きく、
前記第4位相は、前記第1位相より270度だけ大きく、
前記第1プラグが前記第1位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から第2方向に位置し、
前記第1プラグが前記第2位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、
前記第1プラグが前記第3位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、
前記第1プラグが前記第4位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、
前記第1方向に直交する面内における前記第1スリーブの位置から前記第1方向に直交する面内における前記第2スリーブの位置に向かう方向は前記第2方向である、接続器。
【請求項2】
前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグの前記第1フェルールの端面は、前記第2ジャックに差し込まれた前記第2プラグの前記第2フェルールの端面に接する様に構成されている、請求項1に記載の接続器。
【請求項3】
前記第1ジャックは、前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグの一部分を取り囲むハウジングを有し
前記第1ジャックのハウジングは、第1面と、前記第1面に対向する第2面と、前記第1面と前記第2面に接続する第3面と、前記第3面に対向し、かつ、前記第1面と前記第2面に接続する第4面と、を有し、
前記第1ジャックのハウジングの内部には、前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグを保持するための保持部材が、前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のそれぞれに対応して設けられ、
前記保持部材それぞれには、前記第1ジャックに差し込まれる前記第1プラグの前記回転位相を規制するためのガイド溝が設けられる、請求項
1又は2に記載の接続器。
【請求項4】
前記第1ジャックのハウジングの前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面のそれぞれには、対応する前記保持部材に設けられた前記ガイド溝に対応するガイド溝が設けられることを特徴とする請求項
3に記載の接続器。
【請求項5】
前記第1ジャックのハウジングの内部において、各面の接続箇所には前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグを支持する支持部材が設けられることを特徴とする請求項
4に記載の接続器。
【請求項6】
前記マルチコア光ファイバは、4つのコアを有する、請求項1から
5のいずれか1項に記載の接続器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバ(MCF)とシングルコア光ファイバ(SCF)とを接続するための接続器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバとして、1つのコアを有するシングルコア光ファイバ(SCF)と、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ(MCF)とが使用されている。従来、通信局舎間を接続する光ケーブルにはSCFが主に使用されていたが、伝送容量の増加に伴いMCFの光ケーブルの敷設が進んでいる。
【0003】
MCFとSCFとが混在する状況においては、MCFとSCFとを接続しなければならない状況が生じ得る。ここで、一般的に、
図1(A)に示す様に、SCFの1つのコアは、光ファイバの長手方向とは直交する円状の断面(以下、ファイバ断面と表記する)においてその中心に配置される。一方、
図1(B)に示す様に、MCFの複数のコアは、ファイバ断面において、その中心から所定距離rの円周上に等間隔で配置される。
図1(B)は、4コアの場合を示している。なお、以下の説明においては、光ファイバの長手方向をZ方向とし、Z方向に直交する面内の1つの方向をX方向とし、当該面内においてX方向と直交する方向をY方向とする。また、以下の説明においては、Z方向に直交する断面を単に"断面"と表記する。
【0004】
非特許文献1は、ファイバ断面内において、MCFの複数のコアの内の1つのコアと同じ位置に1つのコアを設けたSCFを開示している。非特許文献1のSCFを使用することで、SCFのコアとMCFの複数のコアの内の1つコアとを容易に接続することが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】深井 千里、他、"遠隔光路切替ノードの心線切替のためのマルチコアファイバ回転機構を用いた光スイッチの検討"、電子情報通信学会 技術報告、OFT2021-4(2021年5月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の構成では、特殊なSCFを必要とする。
【0007】
本発明は、特殊なSCFを必要とすることなく、MCFの複数のコアの内の1つのコアと、SCFのコアとを接続するための接続器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、第1プラグが設けられたマルチコア光ファイバと、第2プラグが設けられたシングルコア光ファイバと、を接続する接続器は、前記第1プラグが差し込まれる第1ジャックと、前記第2プラグが差し込まれる第2ジャックと、を備え、前記第1ジャックは、第1方向に沿って前記第1プラグが差し込まれた際に、前記第1プラグにおいて前記マルチコア光ファイバの端部を収容する第1フェルールを保持する第1スリーブを有し、前記第2ジャックは、前記第1方向とは逆方向に沿って前記第2プラグが差し込まれた際に、前記第2プラグにおいて前記シングルコア光ファイバの端部を収容する第2フェルールを保持する第2スリーブを有し、前記マルチコア光ファイバの複数のコアは、当該マルチコア光ファイバの長手方向に直交するファイバ断面において、前記ファイバ断面の中心を中心とする所定半径の円の上に等間隔で配置され、前記第1方向に直交する面内における前記第1スリーブの位置は、前記第1方向に直交する面内における前記第2スリーブの位置に対して前記所定半径だけオフセットされており、前記第1ジャックは、前記第1ジャックに差し込まれた前記第1プラグの前記第1方向を回転軸とする回転位相が第1位相、第2位相、第3位相及び第4位相の内のいずれかの位相となる様に規制する規制部材を備え、前記第2位相は、前記第1位相より90度だけ大きく、前記第3位相は、前記第1位相より180度だけ大きく、前記第4位相は、前記第1位相より270度だけ大きく、前記第1プラグが前記第1位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から第2方向に位置し、前記第1プラグが前記第2位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、前記第1プラグが前記第3位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、前記第1プラグが前記第4位相であるとき、前記第1フェルールの端面において、前記複数のコアの内の1つのコアは、前記ファイバ断面の中心から前記第2方向に位置し、前記第1方向に直交する面内における前記第1スリーブの位置から前記第1方向に直交する面内における前記第2スリーブの位置に向かう方向は前記第2方向である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、特殊なSCFを必要とすることなく、MCFの複数のコアの内の1つのコアと、SCFのコアとを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】一実施形態による接続器の2つのスリーブの位置関係の説明図。
【
図7】一実施形態による接続器の1つのジャックの内部構造を示す図及び差込口から見た状態を示す図。
【
図8】一実施形態による接続器の1つのジャックにプラグを差し込んだ状態を示す図。
【
図9】一実施形態による接続器の1つのジャックの内部構造を示す図、差込口から見た状態を示す図及び断面図。
【
図10】一実施形態による接続器の1つのジャックにプラグを差し込んだ状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
まず、本明細書で使用する用語について説明する。光ファイバを光通信装置等に接続するためにコネクタが使用されている。なお、本明細書において用語"コネクタ"とは、用語"プラグ"と用語"ジャック"の総称である。また、本明細書において、用語"プラグ"とは、通常、光ファイバの端部に設けられる光学部材を意味する。また、本明細書において、用語"ジャック"とは、プラグが差し込まれる様に構成された光学部材を意味する。例えば、ジャックは、光通信装置に設けられる。光ファイバの端部に設けられたプラグを光通信装置に設けられたジャックに差し込むことで、当該光通信装置に当該光ファイバを接続することができる。
【0013】
以下の説明において、プラグをジャックに差し込む方向を差込方向と表記する。また、以下の説明において、前側及び後側とは、他の方向についてのものであることを明記しない限り、差込方向における前側及び後側を意味するものとする。ジャックは、プラグが差し込まれた状態で、プラグの前側の一部分を取り囲むハウジングを有する。ハウジングには、プラグを差し込むための開口(差込口)が設けられる。以下の説明において、差込方向において開口とは逆側のハウジングの面を背面と表記する。
【0014】
光ファイバ同士を融着によらず接続するためにアダプタが使用されている。本明細書において用語"アダプタ"は、2つのジャックを有し、端部にプラグが設けられた光ファイバ(以下、プラグ付き光ファイバ)同士を接続するための光学部材(接続器)を意味する。より具体的には、アダプタは、2つのジャックの背面同士を接続した光学部材である。アダプタは、例えば、光分配架で使用され、2つのプラグ付き光ファイバのプラグを、それぞれ、アダプタの2つのジャックに差し込むことで、当該2つの光ファイバのコア同士が接続される。なお、本明細書においては、アダプタもコネクタの1つとする。
【0015】
図2(A)及び
図2(B)は、SCコネクタのプラグ80を示し、ここで、
図2(A)は、側面図であり、
図2(B)は、
図2(A)の上側から見た平面図である。なお、説明を簡略化し、発明の理解を促進するため、各図面が示す光学部材の構造は、実際の構造を正確に表すものではなく簡略化したものとしている。さらに、各図面が示す光学部材の縮尺は、図面により異なる。また、発明の理解を促進させるため、図面においては、各光学部材を構成する要素の内、説明対象の要素を分かり易く表示している。このため、図面において、各光学部材を構成する要素間の相対的な大きさは、実際のものとは異なり得る。
【0016】
図2(A)及び
図2(B)に示す様に、プラグ80の1つ面にはガイドキー81が設けられ、他の3つの側面の内の対向する2つの側面には凹部82が設けられる。また、フェルール83は、光ファイバの先端部分を収容している。
【0017】
図3は、従来のSCコネクタのアダプタを示している。なお、
図3(A)は、外観図であり、
図3(B)は、内部構造を示す図である。上述した様に、アダプタは、2つのジャック90Lと90Rの背面同士を接続したものである。ジャック90Rには、-Z方向に沿ってプラグ80が挿入され、ジャック90Lには、+Z方向に沿ってプラグ80が挿入される。なお、以下の説明において、ジャック90Lと90Rを総称してジャック90と表記する。ジャック90は、プラグ80が差し込まれた状態でプラグ80の一部を取り囲むハウジング95を有する。プラグの差込方向に直交するハウジング95の断面は長方形であり、ハウジング95は4つの面を有する。この4つの面の内の1つの面には、ガイド溝91が設けられる。ガイド溝91は、ガイドキー81に適合し、ハウジング95の差込口の大きさは、ガイドキー81をガイド溝91に沿って差し込まないと、プラグ80をジャックに差し込むことができない様に設定される。この様に、ガイドキー81及びガイド溝91により、ジャック90に差し込む際のプラグ80の向き、より詳しくは、差込方向(Z方向)を回転軸とするプラグ80の回転位相が規制される。また、
図3(B)に示す様に、ジャック90は、その内部に2つの弾性係止爪92を有する。プラグ80がジャック90に差し込まれた状態において、2つの弾性係止爪92は、プラグ80の凹部82それぞれと係合してプラグを保持する。
【0018】
さらに、
図3(B)に示す様に、ジャック90Lは、その内部にプラグ80のフェルール83が差し込まれるスリーブ93Lを有する。同様に、ジャック90Rは、その内部にプラグ80のフェルール83が差し込まれるスリーブ93Rを有する。以下の説明において、スリーブ93L及びスリーブ93Rを総称してスリーブ93とも表記する。スリーブ93は円筒状であり、その長手方向に沿ってスリット(割り)が設けられる。
図4は、スリーブ93の断面を示している。"割り"により、フェルール83が差し込まれた際に、スリーブ93は、フェルール83の直径に応じて広がり、その弾性力によりフェルール83を保持する。
【0019】
アダプタは、ジャック90Lに差し込まれたプラグ80のフェルール83の端面が、ジャック90Rに差し込まれたプラグ80のフェルール83の端面に接する様に、そのサイズや形状が設定される。このため、スリーブ93Lとスリーブ93Rは、その断面の中心が一致する様に設けられる。したがって、ジャック90Rに差し込まれたプラグ80のフェルール83の端面と、ジャック90Lに差し込まれたプラグ80のフェルール83の端面とは、その中心が一致する様に突き合わされ、これにより、2つのフェルール83が収容している光ファイバのコア同士が接続される。
【0020】
なお、光ファイバのコネクタには、上述したSCコネクタ以外にも様々な種類が存在するが、基本的には、ジャック90に差し込まれたプラグ80を保持する構造(例えば、SCコネクタにおける弾性係止爪92と凹部82)と、プラグ80をジャック90に差し込む際に、プラグ80の向き(回転位相)を規制するための構造(例えば、SCコネクタにおけるガイドキー81及びガイド溝91)と、プラグ80のフェルール83を保持し、フェルール83同士を突き合わせる際に、差込方向とは直交する面内におけるフェルール83の位置を規制するための構造(スリーブ93)と、を有する。
【0021】
なお、例えば、LCコネクタの様に、ジャックに差し込まれたプラグを保持する構造と、プラグの向きを規制するための構造が同じコネクタも存在する。具体的には、LCコネクタにおいては、プラグにレバー状の部材が設けられ、このレバー状の部材により、ジャックに差し込む際のプラグの向きが規制され、かつ、このレバー状の部材によりプラグがジャックに保持される。
【0022】
上述した様に、MCFの複数のコアは、ファイバ断面の中心から所定半径の円周上に等間隔で配置され、SCFのコアはファイバ断面の中心に配置されるため、プラグ付きSCFをジャック90Rに差し込み、プラグ付きMCFをジャック90Lに差し込んでも、SCFのコアは、MCFのいずれのコアにも接続されない。
【0023】
<第一実施形態>
図5は、本実施形態によるアダプタ(接続器)の構成図である。本実施形態によるアダプタは、
図3と同様に、2つのジャック90Lと90Rの背面同士を接続したものである。但し、
図5(A)及び
図5(B)に示す様に、ジャック90Lを、ジャック90Rに対してX方向に距離(長さ)"r"だけシフトさせた上で接続する。したがって、
図6に示す様に、スリーブ93Lの中心94Lも、スリーブ93Rの中心94Rに対して距離"r"だけシフトする。例えば、
図1(B)に示す様な、断面の中心から半径rの位置に4つのコアが配置されたプラグ付きMCFをジャック90Lに差し込み、プラグ付きSCFをジャック90Rに差し込むものとする。ここで、プラグ付きMCFをジャック90Lに差し込んだとき、そのプラグ80の回転位相が、
図1(B)に示す様に、コア#1とコア#3がY方向に並び、コア#2とコア#4がX方向に並ぶように規制される様にする。そうすることで、MCFのコア#4と、SCFのコアとを接続させることができる。
【0024】
また、ジャック90Lを、ジャック90Rに対して-X方向に距離"r"だけシフトさせることで、MCFのコア#2と、SCFのコアとを接続させることができる。同様に、ジャック90Lを、ジャック90Rに対してY方向や、-Y方向に距離"r"だけシフトさせることで、MCFのコア#1やコア#3と、SCFのコアとを接続させることができる。
【0025】
MCFのコア数が4コア以外であっても、コアが半径rの円状に並んでいる場合、ジャック90Lを、ジャック90Rに対して距離rだけ、MCFの接続するコアの方向にシフトさせることで、MCFの1つのコアとSCFのコアとを接続することができる。具体的には、MCFのファイバ断面の中心からMCFのコアそれぞれへの方向をコア方向とする。例えば、
図1(B)において、コア#1のコア方向は+Y方向であり、コア#2のコア方向は+X方向であり、コア#3のコア方向は-Y方向であり、コア#4のコア方向は-X方向である。この場合、差込方向に直交する面内において、スリーブ93Lの中心94Lからスリーブ93Rの中心94Rに向かう方向が、1つのコアのコア方向に一致する様にすることで、MCFの1つのコアをSCFのコアに接続させることができる。なお、プラグ付きSCFをジャック90Lに差し込み、プラグ付きMCFをジャック90Rに差し込んでも同様である。
【0026】
以上、本実施形態によると特殊なSCFを用いることなくMCFの複数のコアの内の1つのコアとSCFのコアとを接続することができる。また、アダプタの2つのジャックの接続を調整するのみであるため、アダプタにも特殊な部品は必要ではない。なお、説明の簡略化のため、
図5では、ジャック90L及びジャック90Rの構成を同じとしていたが、スリーブ93Lとスリーブ93Rの中心が上記の様にシフトしていれば良く、ジャック90L及びジャック90Rの外観の形状等については
図5の構成に限定されない。
【0027】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、MCFが
図1に示す4コアの場合、MCFのコア#1~コア#4それぞれにSCFのコアを接続させるためのジャック90Lのシフト方向はそれぞれ異なっていた。つまり、MCFのコア#1~コア#4それぞれにSCFのコアを接続させるためのアダプタは異なるものとなっていた。本実施形態では、1つのアダプタでMCFのコア#1~コア#4のいずれにも接続できる様にする。
【0028】
図7(A)は、本実施形態のジャック90Lの内部構造を示し、
図7(B)はジャック90Lの差込口から見た状態を示している。なお、ジャック90Rは第一実施形態と同様である。本実施形態のジャック90Lは、プラグ80を4つの回転位相のいずれであっても差し込める様にしたものである。なお、以下の説明においては、4つの位相を第1位相から第4位相とし、第1位相を基準位相とする。第2位相は、第1位相を所定方向に90度だけ回転させた位相であり、第3位相は、第1位相を所定方向に180度だけ回転させた位相であり、第4位相は、第1位相を所定方向に270度だけ回転させた位相である。このため、
図7(B)に示す様に、ジャック90Lのハウジング95の断面を正方形にする。
【0029】
本実施形態では、ジャック90Lのハウジング95の総ての面にガイドキー81を差し込むためのガイド溝を設ける。つまり、ハウジング95には、ガイド溝91-1、91-2、91-3、91-4が設けられる。
図7(A)は、ジャック90Lの内部構造を示す図である。なお、
図7(A)はガイド溝91-2が手前側にある状態を示している。なお、
図3に示す様に、ガイド溝91はハウジング95の一部に設けられ、よって、ジャック90Lの差込口から見ると、ガイド溝91-1~ガイド溝91-4の端部が見えることになる。しかしながら、
図7(B)では、ガイド溝91-1~ガイド溝91-4を強調して表示するために、ガイド溝91-1~ガイド溝91-4の端部を省略して表記している。
【0030】
図7(B)に示す様に、ハウジング95の内部には、保持部材である4つの弾性係止爪92-1~92-4が設けられている。ハウジング95の内部に設けられるスリーブ93Lについては、図の簡略化のために省略している。各弾性係止爪92-1~92-4それぞれには、ハウジング95の、ガイド溝91-1~ガイド溝91-4に対応するガイド溝を設ける。各弾性係止爪92-1~92-4それぞれに設けるガイド溝により、プラグ80を第1位相から第4位相のいずれかでジャック90Lに挿入することができる。なお、第1位相から第4位相は、それぞれ、ガイドキー81を、ガイド溝91-1からガイド溝91-4それぞれに沿って差し込んだときの回転位相である。
【0031】
図8は、プラグ80を第1位相でジャック90Lに差し込んだ状態、つまり、ガイドキー81が、弾性係止爪92-1に設けられたガイド溝に沿う様にプラグ80をジャック90Lに差し込んだ状態を示している。なお、プラグ80の状態を強調して表示するため、
図8においてプラグ80の手前側にある弾性係止爪92-2については省略している。第1位相でプラグをジャック90Lに差し込むと、弾性係止爪92-1及び弾性係止爪92-3は、プラグ80によってハウジング95の内面に向けて押される。一方、弾性係止爪92-2及び92-4は、
図8の手前側からと奥側から凹部82それぞれと係合してプラグ80を保持する。なお、他の状態でプラグ80を差し込んだ際も同様である。この様に、ハウジング95の内部には、プラグ80を挿入可能とするために弾性係止爪92-1~92-4が変形できるような空間が設けられる。
図8では、弾性係止爪92-1~92-4が設けられる領域においてハウジング95の厚みを薄くすることで、弾性係止爪92-1~92-4を変形可能とするための空間を確保している。
【0032】
以上、プラグ付きMCFを4つの回転位相のいずれでもジャック90Lに差し込める様にジャック90Lを構成することで、SCFのコアを、
図1(B)に示すMCFのコア#1~コア#4のいずれにも接続させることができる。
【0033】
なお、ジャック90Lの断面を正方形にすることで、プラグ80をジャック90Lに差し込んだ際、プラグ80とハウジング95の内部面との接触領域が減少し、プラグ80の保持が不安定となり得る。このため、ハウジング95の内部において、4つの隅(各面の接続箇所)それぞれに支持部材であるガイド26-1~26-4を設ける構成とすることができる。
図9(A)は、
図7(A)に対応し、ジャック90Lの内部構造を示している。また、
図9(B)は、
図7(B)に対応し、ジャック90Lの外部から差込口を見た図である。また、
図9(C)は、
図9(A)のA-A´線での断面図である。なお、
図9(B)及び
図9(C)においても、ガイド溝を強調するために、ガイド溝の端部を省略している。
【0034】
図10は、プラグ80を第1位相でジャック90Lに差し込んだ際の
図9(A)のA-A´線での断面図である。ガイドキー81は、弾性係止爪92-1のガイド溝に沿って差し込まれている。また、弾性係止爪92-1及び92-3は、プラグ80によって、ハウジング95の内面側に向けて移動する様に変形している。一方、弾性係止爪92-2及び92-3は、それぞれ、プラグ80の凹部82に係合してプラグ80を保持している。さらに、ハウジング95の内部の4つの隅それぞれに設けられたガイド26-1~26-4のそれぞれが、プラグ80に接してプラグ80を支持している。
【0035】
図9及び
図10に示す様に、ハウジング95の内部にガイド26-1~26-4を設けでジャック90Lに差し込まれたプラグ80を支持することで、プラグ80を安定して保持することができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、ジャック90Lのハウジング95の各面にガイド溝91-1~91-4を設けていた。これは、弾性係止爪に設けたガイド溝とガイドキー81の状態を外から視認させるためと、ガイドキー81の厚みが大きく、ハウジング95にもガイド溝91-1~91-4を設けないと、プラグ80を差し込むことができない様な場合を想定したものである。しかしながら、
図8や
図10の様に、弾性係止爪のみにガイド溝を設ければ、ハウジング95にガイド溝91-1~91-4を設けなくともプラグ80を差し込むことができる場合には、ハウジング95にガイド溝を設ける必要はない。
【0037】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0038】
以上の構成により、特殊なSCFを必要となることなく、MCFの複数のコアの内の1つのコアと、SCFのコアとを接続することができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
90L、90R:ジャック、93L、95L:スリーブ