(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】射出成形方法及び射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/70 20060101AFI20241031BHJP
B29C 45/80 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B29C45/70
B29C45/80
(21)【出願番号】P 2022129961
(22)【出願日】2022-08-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】林 謙一
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144479(JP,A)
【文献】特開2011-110700(JP,A)
【文献】特開2009-297912(JP,A)
【文献】特開2009-083410(JP,A)
【文献】特開2007-118349(JP,A)
【文献】特開平10-272660(JP,A)
【文献】特開平09-094855(JP,A)
【文献】特開平09-076314(JP,A)
【文献】特開平08-187757(JP,A)
【文献】特開平05-116193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0213871(US,A1)
【文献】米国特許第05547619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/70
B29C 45/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置により可塑化した低流動性成形材料を用いた溶融樹脂を、型締装置により型締した金型に射出充填して成形を行う射出成形方法において、予め、前記型締装置により、前記金型の可動型と固定型間に所定の型隙間を設け、かつ前記可動型を支持する可動盤の前後の圧力差を0にして型締圧力を0の状態に設定するとともに、前記可動型の型締めを行う型締シリンダにメータアウト回路を接続することにより当該型締シリンダに対して所定の背圧を設定し、この後、前記射出装置により、前記型隙間,前記型締圧力及び前記背圧が設定された前記金型に対して、前記溶融樹脂の射出を開始し、射出充填処理の進行により、前記可動型が予め設定した圧縮開始位置に達すること,又は前記射出充填処理の開始から予め設定した充填未達時間が経過すること,の射出終了条件に達したなら、前記可動型により前記金型内の樹脂を加圧する圧縮処理を行うことにより、当該射出充填処理を終了させる充填終了処理を行うことを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記射出装置及び前記型締装置は、油圧ポンプを含む油圧回路により駆動することを特徴とする請求項1記載の射出成形方法。
【請求項3】
前記射出装置及び前記型締装置は、共通の油圧ポンプにより駆動することを特徴とする請求項2記載の射出成形方法。
【請求項4】
射出装置により可塑化した低流動性成形材料を用いた溶融樹脂を、型締装置により型締した金型に射出充填して成形を行う成形機コントローラを備える射出成形機において、前記型締装置を制御し、前記金型の可動型と固定型間に所定の型隙間を設け、かつ前記可動型を支持する可動盤の前後の圧力差を0にして型締圧力を0の状態に設定するとともに、前記可動型の型締めを行う型締シリンダにメータアウト回路を接続することにより当該型締シリンダに対して所定の背圧を設定する型締制御手段と、前記射出装置を制御することにより、前記型隙間,前記型締圧力及び前記背圧が設定された前記金型に対して、前記溶融樹脂の射出充填処理を行うとともに、当該射出充填処理により、前記可動型が予め設定した圧縮開始位置に達すること,又は前記射出充填処理の開始から予め設定した充填未達時間が経過すること,の射出終了条件に達したなら、前記可動型により前記金型内の樹脂を加圧する圧縮処理を行うことにより、当該射出充填処理を終了させる充填終了処理を行う射出制御手段とを有する成形機コントローラを備えることを特徴とする射出成形機。
【請求項5】
前記型締装置は、タイバー機構部により進退自在に支持され、かつ前記可動型を支持する可動盤と、前記タイバー機構部により進退自在に支持され、かつ前記可動型の型締めを行う型締駆動機構部を内蔵した型締盤と、この型締盤に一体に設け、当該型締盤を前記タイバー機構部の所定位置に固定可能なチャック機構部とを備えることを特徴とする請求項4記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置により可塑化した成形材料(溶融樹脂)を、型締装置により型締した金型に射出充填して成形を行う射出成形方法及び射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機を用いた成形方法は、金型に高圧の型締力を付加して型締を行う方法が一般的である。しかし、この一般的な方法は、高圧の型締力を付加することに伴うエネルギー消費が大きくなり、省エネルギ化の観点からは必ずしも望ましい方法とは言えない。このため、成形品の高品質及び均質性を確保しつつ、必要最小源の型締力を付加して型締を行う成形方法が要請されており、既に、本出願人もこの要請に応える新たな成形方法を特許文献1により提案した。
【0003】
特許文献1に開示される射出成形機の成形方法は、金型に充填された樹脂に対して、常に一定の成形型締力と一定の成形射出圧力との相対的な力関係により所定の型隙間を生じさせるとともに、樹脂の充填終了後も成形型締力による自然圧縮を生じさせ、成形品の高度の品質を確保するとともに、成形条件のシンプル化及び設定容易化、成形サイクル時間の短縮化、さらには、量産性及び経済性を高めることを目的としたものであり、具体的には、型締装置により所定の型締力で型締された固定型と可動型からなる金型に対して、射出装置により所定の射出圧力で樹脂を射出充填して成形を行うに際し、型締装置として少なくとも金型内の樹脂の固化に伴って樹脂の圧縮(自然圧縮)が可能となる型締装置を使用し、予め、射出充填時に可動型と固定型間に所定の隙間(型隙間)が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力(成形射出圧力)と型締力(成形型締力)を求めて設定するとともに、生産時に、成形型締力により型締装置を型締し、かつ成形射出圧力をリミット圧力として設定し、前記射出装置を駆動して金型に対する樹脂の射出充填を行った後、所定の冷却時間の経過後に成形品の取出しを行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1における射出成形機の成形方法は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、成形材料が低粘性(高流動性)の樹脂の場合には特に問題を生じないが、成形材料が低流動性(高粘性)の樹脂の場合、金型キャビティへの樹脂の充填が円滑に行われない事態も生じ、結果的に、樹脂不足による成形不良の発生,成形品におけるバラツキの発生(均質性の低下)を招く虞れがあるとともに、低流動性(高粘性)の樹脂及び金型キャビティ形状の組合わせによっては成形(生産)が困難になる虞れもあった。
【0007】
第二に、同成形方法は、その成形原理から省エネルギ性の高い成形方法となるが、成形材料が低流動性の樹脂の場合には流動抵抗が大きくなるとともに、成形サイクルが長くなる傾向があるため、成形手法の改善による省エネルギ性の向上,及び部品点数の削減によるコストダウンを図る観点からは、必ずしも十分とはいえず、更なる改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形方法及び射出成形機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形方法は、上述した課題を解決するため、射出装置Miにより可塑化した低流動性成形材料を用いた溶融樹脂Rmを、型締装置Mcにより型締した金型Dに射出充填して成形を行うに際し、予め、型締装置Mcにより、金型Dの可動型Dmと固定型Dc間に所定の型隙間Lgを設け、かつ可動型Dmを支持する可動盤5の前後の圧力差を0にして型締圧力Pcを0の状態に設定するとともに、可動型Dmの型締めを行う型締シリンダ6cにメータアウト回路9を接続することにより当該型締シリンダ6cに対して所定の背圧Pbを設定し、この後、射出装置Miにより、型隙間Lg,型締圧力Pc及び背圧Pbが設定された金型Dに対して、溶融樹脂Rmの射出を開始し(S7)、射出充填処理(S8)の進行により、可動型Dmが予め設定した圧縮開始位置Xpに達すること,又は射出充填処理の開始(S7)から予め設定した充填未達時間Tsが経過すること(S15),の射出終了条件(S9)に達したなら、可動型Dmにより金型D内の樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13)を行うことにより、当該射出充填処理(S8)を終了させる充填終了処理(S10)を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る射出成形機Mは、上述した課題を解決するため、射出装置Miにより可塑化した低流動性成形材料を用いた溶融樹脂Rmを、型締装置Mcにより型締した金型Dに射出充填して成形を行う成形機コントローラ2を備える射出成形機を構成するに際して、型締装置Mcを制御することにより、金型Dの可動型Dmと固定型Dc間に所定の型隙間Lgを設け、かつ可動型Dmを支持する可動盤5の前後の圧力差を0にして型締圧力Pcを0の状態に設定するとともに、可動型Dmの型締めを行う型締シリンダ6cにメータアウト回路9を接続することにより当該型締シリンダ6cに対して所定の背圧Pbを設定する型締制御手段Fcと、射出装置Miを制御することにより、型隙間Lg,型締圧力Pc及び背圧Pbが設定された金型Dに対して、溶融樹脂Rmの射出充填処理を行うとともに、当該射出充填処理により、可動型Dmが予め設定した圧縮開始位置Xpに達すること,又は射出充填処理の開始(S7)から予め設定した充填未達時間Tsが経過すること(S15),の射出終了条件(S9)に達したなら、可動型Dmにより金型D内の樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13)を行うことにより、射出充填処理(S8)を終了させる充填終了処理(S10)を行う射出制御手段Fiとを有する成形機コントローラ2を備えることを特徴とする。
【0011】
一方、発明の好適な態様により、射出成形方法の実施に際し、射出終了条件(S9)は、可動型Dmが予め設定した圧縮開始位置Xpに達することを条件とし、かつ充填終了処理(S10)には、可動型Dmにより金型内Dの樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13)を含ませることができる。加えて、射出終了条件には、射出充填処理の開始(S7)から予め設定した充填未達時間Tsが経過すること(S15)を条件とし、かつ充填終了処理(S10)には、可動型Dmにより金型D内の樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13)を含ませることができる。さらに、射出装置Mi及び型締装置Mcは、共通の油圧ポンプ3pにより駆動することが望ましい。また、型締装置Mcは、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmを支持する可動盤5と、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmの型締めを行う型締駆動機構部6を内蔵した型締盤7と、この型締盤7に一体に設け、当該型締盤7をタイバー機構部4の所定位置に固定可能なチャック機構部8とを備えて構成できる。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明に係る射出成形方法及び射出成形機Mによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 成形材料(溶融樹脂Rm)が低流動性(高粘性)であっても、金型Dのキャビティに対する樹脂の充填を円滑に行なうことができる。この結果、樹脂不足による成形不良の発生や成形品におけるバラツキの発生(均質性の低下)を低減して成形品の高品質化を図れるとともに、成形材料Rの種類により成形(生産)が困難になる不具合を回避し、射出成形可能な成形材料Rの種類の拡大により成形対象に対する汎用性及び発展性を高めることができる。しかも、背圧による急激な型開挙動を防止できるため、自然な流動(ナチュラルフロー)を実現することができる。
【0014】
(2) 金型Dのキャビティへ溶融樹脂Rmを射出充填する際の流動抵抗を小さくできるとともに、結果的に成形サイクルを短くできるため、より省エネルギ性を高めることができる。即ち、射出充填時の型締装置Mcに対して、積極的な型締力(駆動力)の付与が不要となるため、エネルギ消費を大幅に低減できるとともに、型締機構の構成簡略化を図れるため、部品類の削減によるコストダウンにも寄与できる。
【0015】
(3) 溶融樹脂Rmには、低流動性成形材料を適用したため、低流動性成形材料を使用する成形品に対して、最適な射出成形方法(射出成形機M)として提供することができる。
【0016】
(4) 射出成形方法の実施に際し、射出終了条件(S9)として、可動型Dmが予め設定した圧縮開始位置Xpに達することを条件とし、かつ充填終了処理(S10)に、可動型Dmにより金型内Dの樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13)を含ませたため、樹脂Rdの充填後、樹脂Rdに対する圧縮処理を行うことができ、低流動性成形材料等を使用する成形品に対して圧縮成形を行う観点からも最適な射出成形方法として提供することができる。
【0017】
(5) 射出成形方法の実施に際し、射出終了条件(S9)として、射出充填処理の開始(S7)から予め設定した充填未達時間Tsが経過すること(S15)を条件とし、かつ充填終了処理(S10)に、可動型Dmにより金型D内の樹脂Rdを加圧する圧縮処理(S12-S13を含ませたため、低流動性成形材料の種類や金型キャビティ形状の組合わせなどにより、設定した充填未達時間Ts内に圧縮開始位置Xpに達しない場合であっても圧縮処理(S12-S13)を行うことによる圧縮成形が可能になる。これにより、樹脂不足による成形不良を低減し、成形品の歩留率を高めることができる。
【0018】
(6) 射出成形機M(射出成形方法)の実施に際し、型締駆動機構部6に、型締シリンダ6cを用いたため、型締シリンダ6cを含む油圧回路3を利用し、射出充填時における樹脂Rdに対する油圧回路3の衝撃緩衝性により、成形品質を高めることができる。
【0019】
(7) 射出成形機M(射出成形方法)の実施に際し、型締シリンダ6cに接続するメータアウト回路9を設けたため、比較的簡易な油圧回路3を追加するのみでメータアウト回路9を実現できる。これにより、容易かつ低コストに実施できるとともに、本発明に係る射出成形方法における背圧制御を容易かつ確実に行うことができる。
【0020】
(8) 好適な態様により、射出成形方法の実施に際し、射出装置Mi及び型締装置Mcを、油圧ポンプ3pを含む油圧回路3により駆動すれば、油圧に基づく衝撃吸収性を利用できるため、本発明に係る射出成形方法を最適な形態により実施することができるとともに、特に、射出充填時における樹脂Rdに対する衝撃を緩衝して成形品質の向上に寄与できる。
【0021】
(9) 好適な態様により、射出成形方法の実施に際し、射出装置Mi及び型締装置Mcを、共通の油圧ポンプ3pにより駆動するようにすれば、油圧ポンプの削減により大幅なコスト低減に寄与できる。即ち、本発明に係る射出成形方法では、射出充填時の型締装置Mcに対し背圧制御のみで実施可能になり、油圧ポンプによる駆動力が不要になるため、本来、射出充填時に必要となる射出装置Mi側と型締装置Mc側に必要な二台の油圧ポンプの型締装置Mc側の油圧ポンプが不要となる。
【0022】
(10) 好適な態様により、射出成形機Mを構成するに際し、型締装置Mcを、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmを支持する可動盤5と、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmの型締めを行う型締駆動機構部6を内蔵した型締盤7と、この型締盤7に一体に設け、当該型締盤7をタイバー機構部4の所定位置に固定可能なチャック機構部8とを備えて構成すれば、本発明に係る射出成形方法を容易かつ確実に実施できるなど、実施の容易性及び実施の確実性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る射出成形方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
【
図2】同射出成形方法の実施に用いる射出成形機の構成図、
【
図3】同射出成形機の要部を抽出して示す具体的回路図、
【
図4】同射出成形機の型締装置の
図3中一点鎖線円A部におけるチャック機構部の拡大断面図、
【
図5】同射出成形機の成形機コントローラにおけるディスプレイの一部を示す設定画面図、
【
図7】同射出成形機の他の状態を示す模式的構成図、
【
図8】同射出成形機の他の状態を示す模式的構成図、
【
図9】同射出成形機の他の状態を示す模式的構成図、
【
図10】同射出成形機の他の状態を示す模式的構成図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る射出成形方法を実施できる射出成形機Mの構成について、
図2-
図4を参照して説明する。
【0025】
図2において、Mは射出成形機であり、機台Mbの上面に設置した射出装置Miと型締装置Mcを備える。
【0026】
射出装置Miは、機台Mb上に進退移動可能に設置し、前端に射出ノズル11nを、後部にホッパー11hをそれぞれ有する加熱筒11を備える。加熱筒11の内部にはスクリュ12を挿入するとともに、加熱筒11の後端にはスクリュ駆動部13を配設する。スクリュ駆動部13は、片ロッドタイプの射出ラム15を内蔵する射出シリンダ14を備え、射出ラム15の前方に突出するラムロッド15rはスクリュ12の後端に結合する。また、射出ラム15の後端には、射出シリンダ14に取付けた計量モータ(オイルモータ)16のシャフトがスプライン結合する。17は、射出装置Miを進退移動させて金型Dに対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダを示す。
【0027】
型締装置Mcは、基本構造として、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmを支持する可動盤5と、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmの型締めを行う型締駆動機構部6を内蔵した型締盤7と、この型締盤7に一体に設け、当該型締盤7をタイバー機構部4の所定位置に固定可能なチャック機構部8とを備える。
【0028】
より具体的には、
図2及び
図3に示すように、機台Mbの上面に離間して固定した第一固定盤21と第二固定盤22を備える。この第一固定盤21と第二固定盤22間の四隅には四本の平行に配したタイバー4m…をそれぞれ架設する。そして、各タイバー4m…により、可動盤5と型締盤7がスライド変位可能に支持される。これにより、前固定盤21に固定型Dcが支持されるとともに、可動盤5に可動型Dmが支持され、この固定型Dcと可動型Dmにより金型Dが構成される。
【0029】
また、
図3に示すように、型締盤7には、型締駆動機構部6を内蔵する。型締駆動機構部6は、片ロッドタイプの型締シリンダ6cにより構成し、前方に突出した型締ラム6crの先端を可動盤5の裏面に固定する。このように、型締駆動機構部6に、型締シリンダ6cを用いれば、型締シリンダ6cを含む後述する油圧回路3を利用できるため、射出充填時における樹脂Rdに対する油圧回路3の衝撃緩衝性により、成形品質を高めることができる。なお、23,23は、後固定盤22と可動盤5間に架設した左右一対の片ロッドタイプの型開閉シリンダを示す。
【0030】
さらに、型締盤7の裏面(第二固定盤22側)にはチャック機構部8を配設する。チャック機構部8は、各タイバー4m…に対応した四つのチャック部8m…により構成する。この場合、一つのタイバー4m(他のタイバー4m…も同じ)は、
図4に示すように、外周面上に、リング状の凹溝部25sを形成するとともに、この凹溝部25s…を軸方向に沿って一定間隔置きに設けて構成する。なお、この凹溝部25s…を設ける範囲は、型締盤7の軸方向における少なくとも移動範囲の全てにおいてチャック部8m…が有効に機能する範囲を選定する。
【0031】
一つのチャック部8m(他のチャック部8m…も同じ)は、上下に二分割したチャック半体部(ハーフナット)8muと8mdを備え、このチャック半体部8muと8mdによりタイバー4mを挟むことによりチャック可能に構成した。例示の場合、
図4に示すように、型締盤7の裏面にガイドレール機構を有する係合部7rを設け、この係合部7rに、各チャック半体部8muと8mdを昇降可能に係合させるとともに、リンク機構により相互に反対方向へ変位可能に構成する。また、一方のチャック半体部8muに対してチャックシリンダ24を結合してチャック半体部8muと8mdを昇降変位可能に構成するとともに、各チャック半体部8muと8mdの内周面には、タイバー4mの外周面に設けた凹溝部25s…に嵌合するリング状の凸条部25t…を形成した。
【0032】
これにより、
図4中、チャックシリンダ24のピストンラムを突出させれば、実線断面で示すチャック半体部8mu,8mdの位置、即ち、チャックポジションXsに変位するため、凸条部25t…と凹溝部25s…が係止して型締盤7を固定するとともに、チャックシリンダ24のピストンラムを引込めれば、仮想線で示すチャック半体部8mu,8mdの位置、即ち、チャック解除ポジションXrに変位するため、凸条部25t…と凹溝部25s…が離間することにより型締盤7の軸方向への移動を許容する。なお、例示したチャック部8mの構成は一例であり、例えば、四つのチャック部8m…を備えるため、チャック半体部8md…の内周面を平坦にし、チャック半体部8mu…の内周面のみに凸条部25t…を設けてもよく、基本的には、同一機能を有する公知の各種機構により置換可能である。
【0033】
このように、型締装置Mcとして、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmを支持する可動盤5と、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmの型締めを行う型締駆動機構部6(型締シリンダ6c)を内蔵した型締盤7と、この型締盤7に一体に設け、当該型締盤7をタイバー機構部4の所定位置に固定可能なチャック機構部8とを備えて構成すれば、本発明に係る射出成形方法を容易かつ確実に実施できるなど、実施の容易性及び実施の確実性を確保することができる。
【0034】
他方、3は油圧回路であり、主要部として、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ3p及び各種切換及び制御を行うバルブ回路32を備えるとともに、本発明に従って、型締シリンダ6cに接続するメータアウト回路9を備える。このように、射出装置Mi及び型締装置Mcを、油圧ポンプ3pを含む油圧回路3により駆動すれば、油圧に基づく衝撃吸収性を利用できるため、本発明に係る射出成形方法を最適な形態により実施することができるとともに、特に、射出充填時における樹脂Rdに対する衝撃を緩衝して成形品質の向上に寄与できる。
【0035】
油圧ポンプ3pは、
図3に示すように、ポンプ部35とこのポンプ部35を回転駆動するサーボモータ36を備える。なお、37はサーボモータ36の回転数を検出するロータリエンコーダを示す。ポンプ部35は、斜板型ピストンポンプにより構成するポンプ機体38を内蔵する。したがって、ポンプ部35は、斜板42を備え、斜板42の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプ機体38におけるポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量が増加するとともに、斜板角を小さくすれば、同ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量が減少する。この結果、斜板角を所定の角度に設定すれば、吐出流量(最大容量)が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することが可能になる。斜板42には、コントロールシリンダ43及び戻しスプリング44を付設するとともに、コントロールシリンダ43は、切換バルブ(電磁バルブ)45を介してポンプ部35(ポンプ機体38)の吐出口に接続する。これにより、コントロールシリンダ43を制御することにより斜板42の角度(斜板角)を変更することができる。
【0036】
また、ポンプ部35の吸入口は、オイルタンク39に接続するとともに、吐出口は、バルブ回路32の一次側に接続する。バルブ回路32の二次側は、前述した射出シリンダ14,計量モータ16,射出装置移動シリンダ17,型締シリンダ6c,型開閉シリンダ23…,チャックシリンダ24…をはじめ、不図示のエジェクタシリンダ等の他の各種アクチュエータに接続する。したがって、バルブ回路32には、これらの各アクチュエータにそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備える。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、上述した射出シリンダ14,計量モータ16,射出装置移動シリンダ17,型締シリンダ6c,型開閉シリンダ23…,チャックシリンダ24…をはじめ、不図示のエジェクタシリンダ等の他の各種アクチュエータに対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有している。これにより、サーボモータ36の回転数を可変制御すれば、可変吐出型油圧ポンプ31の吐出流量及び吐出圧力を可変することができる。
【0037】
さらに、
図3に示すように、型締シリンダ6cの油室(後油室)6mrに接続した作動油ライン48には、メータアウト回路9の流入側を接続し、このメータアウト回路9の流出側は、オイルタンク39に接続する。メータアウト回路9は、逆止弁51,52、方向制御弁(電磁バルブ)53、リリーフ弁(背圧制御弁)54を備え、
図3に示すように接続して構成する。
【0038】
これにより、本実施形態の場合、射出充填工程では、メータアウト回路9を用いた背圧制御のみで型締装置Mcに対する制御が可能となる。即ち、メータアウト回路9の機能により、金型D内における樹脂Rdの圧力は、設定された背圧Pb〔kN〕以下のときはその圧力に維持されるとともに、背圧Pb〔kN〕を越えたときはリリーフ弁54の機能により背圧Pb〔kN〕に維持される。
【0039】
このように、型締シリンダ6cに接続したメータアウト回路9を設けて構成すれば、比較的簡易な油圧回路3を追加するのみでメータアウト回路9を実現できるため、容易かつ低コストに実施できるとともに、本発明に係る射出成形方法における背圧制御を容易かつ確実に行える利点がある。また、射出装置Mi及び型締装置Mcに対して、共通の油圧ポンプ3pにより駆動することができる。即ち、本発明に係る射出成形方法では、射出充填時の型締装置Mcに対し背圧制御のみで実施可能になり、油圧ポンプによる駆動力が不要になるため、本来、射出充填時に必要となる射出装置Mi側と型締装置Mc側に必要な二台の油圧ポンプの型締装置Mc側の油圧ポンプが不要になり、大幅なコスト削減に寄与できる。
【0040】
他方、2は成形機コントローラを示す。この成形機コントローラ2には、コントローラ本体61及びディスプレイ62が含まれる。前述したサーボモータ36は、コントローラ本体61のサーボアンプ出力ポートに接続するとともに、バルブ回路32はコントローラ本体61の制御信号出力ポートに接続する。一方、ロータリエンコーダ37から得るエンコーダパルスは、コントローラ本体61のサーボアンプに接続する。なお、55はバルブ回路32の一次側に接続した油圧を検出する圧力センサであり、この圧力センサ55の検出結果は、成形機コントローラ2のコントローラ本体61に付与される。
【0041】
コントローラ本体61は、CPU及び内部メモリ等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備える。したがって、内部メモリには、各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)を格納するとともに、各種データ(データベース)類を記憶するデータメモリが含まれる。制御プログラムには、本実施形態に係る射出成形方法の少なくとも一部を実現するための制御プログラムが含まれる。
【0042】
ディスプレイ62は、各種表示を行うことができるとともに、タッチパネルが付設され、このタッチパネルにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。
図5に、本実施形態に係る射出成形方法の実施に使用する設定画面、特に、型開閉画面Vmを表示した状態を示す。この型開閉画面Vmには、「圧縮」スイッチ63が設けられているため、この「圧縮」スイッチ63をONにすることにより、本実施形態に係る射出成形方法に使用する設定画面Vsをウィンドウ表示することができる。この設定画面Vsには、圧縮のON/OFF選択キー64,射出前の可動盤5の待機位置〔mm〕を設定する待機位置設定部65a,圧縮の開始位置〔mm〕を設定する圧縮位置設定部65b,射出中の型締保持圧力(背圧)〔kN〕を設定する型締背圧設定部65c,待機位置に移行しなかった場合の充填未達時間Ts〔秒〕を設定する充填未達時間設定部65d,圧縮開始時間Ti〔秒〕を設定する圧縮開始時間設定部65e,1次型締の圧縮圧力〔kN〕を設定する1次型締圧力設定部65f,2次型締の圧縮圧力〔kN〕を設定する2次型締圧力設定部65g,2次型締への切換時間〔s〕を設定する切換時間設定部65hを備える。なお、66は設定画面Vsの「閉じる」キーを示す。
【0043】
次に、射出成形機Mを用いた本実施形態に係る射出成形方法について、主に、
図6-
図10を参照しつつ
図1に示すフローチャートに従って順次説明する。
【0044】
本実施形態に係る射出成形方法の実施に際しては、最初に、設定処理を行う(ステップS1)。この設定処理では、通常の各種成形条件の設定を行うとともに、
図5に示した設定画面Vsを用いて、本実施形態に係る射出成形方法に関連する上述した各種項目の設定を行う。
【0045】
今、型締装置Mc(可動型Dm)は、
図6に示す型開位置Xoにあるものとする(ステップS2)。この型開位置Xoは、チャックシリンダ24…を駆動制御してチャック部8m…をチャック解除ポジションXrに切換えるとともに、型締シリンダ6cを駆動制御して可動盤5を最後退位置(第二固定盤22側)に移動させ、かつ型開閉シリンダ23…を駆動制御して可動盤5及び型締盤7を後退移動させた位置となる。なお、
図6中、71は型締盤位置検出用エンコーダ、72は可動盤位置検出用エンコーダをそれぞれ示す。
【0046】
生産時には、型開閉シリンダ23…を駆動制御し、可動盤5及び型締盤7を、型開位置Xoから
図7に示すチャック位置Xcまで高速で前進移動させる(ステップS3)。そして、チャック位置Xcに達したならチャックシリンダ24…を駆動制御してチャック部8m…をチャックポジションXsに切換えて型締盤7をタイバー4m…に固定する(ステップS4)。なお、
図7中、Laは、型開位置Xoからチャック位置Xcまでの型締盤7の移動ストロークを示す。
【0047】
次いで、型締シリンダ6cを駆動制御して可動盤5を前進移動させ、可動型Dmと固定型Dc間の隙間調整を行なうことにより、可動型Dmを、
図8に示す、設定された待機位置Xwにセットする(ステップS5)。このときの可動型Dmと固定型Dc間には、設定された型隙間Lgが設けられる。なお、
図8中、Lcは調整時における型締ラム6crの移動ストロークを示す。これにより、型締装置Mc側における射出開始の準備が完了するため、メータアウト回路9の方向制御弁53をメータアウトON側に切換える(ステップS6)。
【0048】
他方、射出装置Miでは、計量モータ16の駆動制御によりスクリュ12が回転し、これにより、ホッパー11hに供給された成形材料Rが可塑化されるとともに、可塑化された溶融樹脂Rmはスクリュ12の前方に蓄積される。また、射出装置Miは、射出装置移動シリンダ17の駆動制御により、
図8に示すノズルタッチ位置まで前進移動する。これにより、射出装置Mi側における射出開始の準備が完了する。
【0049】
なお、成形材料Rには、特に、低流動性成形材料を適用することができる。このように、成形材料Rとして低流動性成形材料を適用すれば、低流動性成形材料を使用する成形品に対して最適な射出成形方法(射出成形機M)として提供することができる。
【0050】
以上の射出開始の準備が完了したなら、射出シリンダ14を駆動制御して溶融樹脂Rmの射出を開始する(ステップS7)。この場合、射出開始の直前は、前述したように、可動型Dmと固定型Dc間には型隙間Lgが存在し、また、射出圧力は0の状態にあるとともに、型締力も0の状態となる。したがって、可動盤5の前後の圧力差が0となる平衡状態にあり、可動盤5は停止した状態にある。
【0051】
一方、射出開始により、スクリュ12が前進し、溶融樹脂Rmは射出ノズル11nを通して金型Dのキャビティ内、即ち、可動型Dmと固定型Dc間の型隙間Lgに充填される(ステップS8)。この場合、成形材料Rとして低流動性成形材料を使用するが、初期の型締力は0の状態にあるため、溶融樹脂Rmは、比較的スムースに金型Dのキャビティ内に射出充填される。射出充填処理の進行により、金型D内の樹脂Rdの圧力が上昇するとともに、型締盤7はチャック部8m…のチャックポジションXsにより位置が固定されているため、可動盤5が徐々に後退する。この際、メータアウト回路9の機能により、設定された背圧Pb〔kN〕に維持される。
【0052】
そして、
図9に示すように、可動盤5が、設定された圧縮開始位置Xpに達したなら射出充填処理を終了させる終了処理を行う(ステップS9,S10)。この際、スクリュ12は最前進位置の近傍まで前進する。
図9中、Lsは射出充填時におけるスクリュ12の移動ストロークを示し、Pbは型締ラム6crに付加された背圧〔kN〕を示す。したがって、この場合、可動盤5が圧縮開始位置Xpに達することが射出終了条件となる。
【0053】
この後、圧縮開始時間設定部65eにより設定した圧縮開始時間Ti〔秒〕になったなら可動型Dmにより金型内Dの樹脂Rdを加圧する圧縮処理を開始する(ステップS11)。この場合、圧縮開始時間は「0」も含まれる。圧縮処理は、メータアウト回路9をOFFに切換え、型締シリンダ6cを駆動制御することにより、
図10に示すように、所定の加圧力Ppにより可動盤5を前方(第一固定盤21側)へ加圧する。
図10中、Lpは加圧力Ppにより型締ラム6crが変位した圧縮量を示す。
【0054】
このように、射出終了条件として、可動型Dmが予め設定した圧縮開始位置Xpに達することを条件とするとともに、充填終了処理に、可動型Dmにより金型内Dの樹脂Rdを加圧する圧縮処理を含ませれば、樹脂Rdの充填後、樹脂Rdに対する圧縮処理を行うことができるため、例えば、低流動性成形材料等を使用する成形品に対して圧縮成形を行う観点からも最適な射出成形方法として提供することができる。
【0055】
また、例示の圧縮処理は、
図5に示すように、1次型締圧力〔kN〕と2次型締圧力〔kN〕により設定される。したがって、圧縮処理時には、最初に、1次型締圧力による1次圧縮処理が行われる(ステッS12)。そして、切換時間〔秒〕に達したなら2次型締圧力に切換えられる(ステップS13)。圧縮処理が終了すれば、型開きを行い、成形品のエジェクタ処理を行う(ステップS14)。さらに、次の生産が継続する場合には、同様の成形処理を行う(ステップS15,S2…)。
【0056】
一方、成形材料Rとして低流動性成形材料を使用するため、射出充填処理(ステップS8)において、圧縮開始位置Xpに達するまでに時間がかかる場合が想定される。この場合、圧縮開始位置Xpに達するまでに、設定した充填未達時間Ts〔秒〕が経過したときは、圧縮開始位置Xpに達しない場合であっても射出充填処理を終了させるようにした(ステップS9,S16,S10)。したがって、充填未達時間Tsが経過したなら可動型Dmにより金型内Dの樹脂Rdを加圧する圧縮処理を開始する(ステップS11)。この場合、射出充填処理の開始から予め設定した充填未達時間(充填時間)Tsが経過することが射出終了条件となる。なお、圧縮処理以降の処理は、上述した圧縮開始位置Xpに達した場合と同様に、1次型締圧力による1次圧縮処理,2次型締圧力による2次圧縮処理,成形品のエジェクタ処理が行われる(ステップS12-S14)
【0057】
このように、射出終了条件として、射出充填処理の開始から予め設定した充填未達時間Tsが経過することを条件とするとともに、充填終了処理に、可動型Dmにより金型D内の樹脂Rdを加圧する圧縮処理を含ませれば、低流動性成形材料の種類や金型キャビティ形状の組合わせなどにより、設定した充填未達時間Ts内に圧縮開始位置Xpに達しない場合であっても圧縮処理を行うことによる圧縮成形が可能になるため、樹脂不足による成形不良を低減し、成形品の歩留率を高めることができる。
【0058】
よって、このような本実施形態に係る射出成形方法(射出成形機M)は、予め、型締装置Mcにより、金型Dの可動型Dmと固定型Dc間に所定の型隙間Lgを設け、かつ型締圧力Pcを0の状態に設定するとともに、可動型Dmに対して所定の背圧Pbを設定し、この後、射出装置Miにより、型隙間Lg,型締圧力Pc及び背圧Pbが設定された金型Dに対して、溶融樹脂Rmの射出を開始し、射出充填処理の進行により、予め設定した所定の射出終了条件に達したなら当該射出充填処理を終了させる充填終了処理を行うようにしたため、成形材料(溶融樹脂Rm)が低流動性(高粘性)であっても、金型Dのキャビティに対する樹脂の充填を円滑に行なうことができる。
【0059】
この結果、樹脂不足による成形不良の発生や成形品におけるバラツキの発生(均質性の低下)を低減して成形品の高品質化を図れるとともに、成形材料Rの種類により成形(生産)が困難になる不具合を回避し、射出成形可能な成形材料Rの種類の拡大により成形対象に対する汎用性及び発展性を高めることができる。しかも、背圧による急激な型開挙動を防止できるため、自然な流動(ナチュラルフロー)を実現することができる。
【0060】
加えて、金型Dのキャビティへ溶融樹脂Rmを射出充填する際の流動抵抗を小さくできるとともに、結果的に成形サイクルを短くできるため、より省エネルギ性を高めることができる。即ち、射出充填時の型締装置Mcに対して、積極的な型締力(駆動力)の付与が不要となるため、エネルギ消費を大幅に低減できるとともに、型締機構の構成簡略化を図れるため、部品類の削減によるコストダウンにも寄与できる。
【0061】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0062】
例えば、射出装置Mi及び型締装置Mcは、油圧ポンプ3pを含む油圧回路3により駆動することが最適であるが、他の駆動源や駆動回路を排除するものではない。したがって、射出装置Mi及び型締装置Mcは、共通の油圧ポンプ3pにより駆動することが望ましいが、この駆動方式に限定されるものではない。他方、型締装置Mcは、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmを支持する可動盤5と、タイバー機構部4により進退自在に支持され、かつ可動型Dmの型締めを行う型締駆動機構部6を内蔵した型締盤7と、この型締盤7に一体に設け、当該型締盤7をタイバー機構部4の所定位置に固定可能なチャック機構部8とを備えて構成した場合を例示したが同一機能を有する各種型締装置を利用可能である。このため、型締駆動機構部6は、型締シリンダ6cを用いるとともに、この型締シリンダ6cにはメータアウト回路9を接続することが望ましいが、同様の機能を発揮する他の回路により置換可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る射出成形方法及び射出成形機は、各種成形材料を可塑化し、金型に射出充填して成形を行う各種の射出成形機及び射出成形機に用いる射出成形方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
2:成形機コントローラ,3:油圧回路,3p:油圧ポンプ,4:タイバー機構部,5:可動盤,6:型締駆動機構部,6c:型締シリンダ,7:型締盤,8:チャック機構部,9:メータアウト回路,M:射出成形機,Mi:射出装置,Mc:型締装置,Rm:溶融樹脂,D:金型,Dm:可動型,Dc:固定型,Lg:型隙間,Pb:背圧,Fc:型締制御手段,Fi:射出制御手段,Xp:圧縮開始位置