IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

特許7579836計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器
<>
  • 特許-計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器 図1
  • 特許-計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器 図2
  • 特許-計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器 図3
  • 特許-計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】計時器用の多機能補正デバイスと、そのような多機能補正デバイスを備える計時器
(51)【国際特許分類】
   G04B 27/00 20060101AFI20241031BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
G04B27/00 K
G04G21/00 304G
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197710
(22)【出願日】2022-12-12
(65)【公開番号】P2023089956
(43)【公開日】2023-06-28
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】21215204.5
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・フィリポン
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・エグリ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・クルヴォワジエ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0187074(US,A1)
【文献】特開2006-24424(JP,A)
【文献】特開昭51-126872(JP,A)
【文献】特開2016-136389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 27/00
G04G 21/00
H01H 25/00-25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメント(1)の現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を実行するための少なくとも1つの機能補正器(10、12)を有する前記時計ムーブメント(1)を備える計時器ケース(2)のための多機能補正デバイス(100、200、300)であって、前記多機能補正デバイス(100、200、300)は、
- 前記計時器ケース(2)と一体化されるように構成された円筒体(110)と、
- 回転軸(X-X)を有する制御ステム(120)であって、前記回転軸(X-X)に沿って、前記円筒体(110)内で並進移動でき、前記少なくとも1つの機能補正器(10、12)と相作用できる突起(123)を備える端部(122)を有する、制御ステム(120)と、
- 前記制御ステム(120)と一体化された制御部材(130、330)とを備え、
前記制御部材(130、330)は、複数の角度位置の間で、前記制御ステム(120)の前記回転軸(X-X)を中心に回転移動でき、前記突起(123)は、前記制御部材(130、330)の回転が、前記突起(123)の前記角度位置を、前記回転軸(X-X)を中心に、前記時計ムーブメント(1)に対して補正するように構成され、前記制御部材(130、330)の前記角度位置のうちの1つの角度位置(P3)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記時計ムーブメント(1)に含まれる複数の機能補正器(10、12)に面して配置でき、これによって、前記補正デバイス(100、200、300)は、前記制御部材(130、330)が押されたとき、前記機能補正器(10、12)に関連付けられた機能の組合せを同時に実行できることを特徴とする、多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項2】
時計ムーブメント(1)の現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を実行するための少なくとも1つの機能補正器(10、12)を有する前記時計ムーブメント(1)を備える計時器ケース(2)のための多機能補正デバイス(100、200、300)であって、前記多機能補正デバイス(100、200、300)は、
- 前記計時器ケース(2)と一体化されるように構成された円筒体(110)と、
- 回転軸(X-X)を有する制御ステム(120)であって、前記回転軸(X-X)に沿って、前記円筒体(110)内で並進移動でき、前記少なくとも1つの機能補正器(10、12)と相作用できる突起(123)を備える端部(122)を有する、制御ステム(120)と、
- 前記制御ステム(120)と一体化された制御部材(130、330)とを備え、
前記制御部材(130、330)は、複数の角度位置の間で、前記制御ステム(120)の前記回転軸(X-X)を中心に回転移動でき、前記突起(123)は、前記制御部材(130、330)の回転が、前記突起(123)の前記角度位置を、前記回転軸(X-X)を中心に、前記時計ムーブメント(1)に対して補正するように構成され、前記制御部材(130、330)の前記角度位置の1つの角度位置(P4)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記制御部材(130、330)が押されたとき、前記時計ムーブメント(1)に対して非アクティブであることを特徴とする、多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項3】
前記制御部材(130、330)の前記角度位置のうちの1つの角度位置について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記時計ムーブメント(1)に含まれる機能補正器(10、12)に面して配置でき、これによって、前記補正デバイス(100、200、300)は、前記制御部材(130、330)が押されたとき、前記機能補正器に関連付けられた機能を実行できることを特徴とする、請求項2に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項4】
前記制御部材(130、330)の前記角度位置のうちの1つの角度位置(P3)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記時計ムーブメント(1)に含まれる複数の機能補正器(10、12)に面して配置でき、これによって、前記補正デバイス(100、200、300)は、前記制御部材(130、330)が押されたとき、前記機能補正器(10、12)に関連付けられた機能の組合せを同時に実行できることを特徴とする、請求項2に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項5】
前記制御部材(130、330)の前記角度位置の1つの角度位置(P4)について、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記制御部材(130、330)が押されたとき、前記時計ムーブメント(1)に対して非アクティブであることを特徴とする、請求項1に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項6】
前記時計ムーブメント(1)は、第1の機能補正器(10)および第2の機能補正器(12)を備え、前記制御部材(130、330)の第1の角度位置では、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記第1の機能補正器(10)に面して配置でき、前記制御部材(130、330)の第2の角度位置では、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記第2の機能補正器(12)に面して配置でき、関連付けられた時計ムーブメント(1)の機能を起動、選択、リセット、または補正するために、前記制御部材(130、330)に加えられる圧力によって、前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)が、前記選択された機能補正器(10、12)と接触できることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項7】
前記円筒体(110)は、回転軸(X-X)を備える回転円筒の形状を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項8】
前記制御ステム(120)は、前記円筒体(110)と同軸であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項9】
前記多機能補正デバイス(100、200)は、前記ケース(2)のミドル(20)に部分的に収容されるように構成されたプッシュボタンであり、前記制御部材(130)はプッシュピースであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項10】
前記多機能補正デバイス(300)は、前記ケース(2)のミドル(20’)の厚さに完全に一体化されるように構成された小型補正ボタンであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項11】
前記制御部材(130、330)は、凹部の形状と相補的な形状を有するツールを受け入れるように構成された凹部(135)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項12】
前記多機能補正デバイス(100、200、300)は、前記制御部材(130、330)が静止位置に確実に戻るように、前記円筒体(110)と前記制御部材(130、330)との間に設けられた戻り部材(140)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項13】
前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、前記回転軸(X-X)に垂直な平面から突出することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項14】
前記制御ステム(120)の前記端部(122)の前記突起(123)は、半月形状の柱であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項15】
前記制御部材(130、330)の前記複数の角度位置をインデクス付けするためのインデクス部材(150)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項16】
前記インデクス部材(150)は、前記制御部材(130、330)によって搬送されるインデクスフレーム(152)に収容されたインデクスボール(151)を備えるインデクサによって形成されることを特徴とする、請求項15に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項17】
前記インデクサは、前記円筒体(110)に形成されたハウジング(155)と協働することを特徴とする、請求項16に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)。
【請求項18】
少なくとも第1の機能補正器(10)および第2の機能補正器(12)を備える時計ムーブメント(1)を包囲するケース(2)を備える計時器であって、各機能補正器(10、12)は、現在時刻から派生する機能の表示、補正、選択、作動、またはリセットを可能にし、前記ケース(2)は、請求項1から5のいずれか一項に記載の多機能補正デバイス(100、200、300)が取り付けられるハウジング(21、21’)を備えるミドル(20、20’)を有し、前記多機能補正デバイス(100、200、300)は、前記時計ムーブメント(1)の前記第1の機能補正器(10)および/または前記第2の機能補正器(12)と相互作用するための複数の角度位置を有する、計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば文字盤に表示された情報を単一の制御部材によって選択および/または補正できるようにする、計時器用の多機能補正デバイスに関する。
【0002】
本発明はさらに、たとえば文字盤に表示された情報を選択および/または補正して、たとえば現在時刻から派生するいくつかの機能を補正、作動、またはリセットすることを可能にする、そのような多機能補正デバイスを備える計時器に関する。
【背景技術】
【0003】
計時器、特に腕時計によって、ユーザは、現在時刻を知ることができる。この現在時刻は、この補正動作のための特定の位置に到達するまで、巻真に動作を加える(たとえば、引っ張る)ことによって補正できる。
【0004】
腕時計はまた、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなど、一般にコンプリケーションと呼ばれる、現在時刻から派生する機能を表示、補正、作動、およびリセットするために使用できる。
【0005】
この目的のために、腕時計のケースのミドルに補正デバイスを組み込んで、これらの補助機能を制御および/または補正できるようにする必要がある。
【0006】
これらの補正デバイスは、補正器またはプッシュボタンボタン式からなることができる。
【0007】
プッシュボタンは、一般に、時計ケースのミドルの外側に配置され、ユーザが容易にアクセス可能なプッシュピース式の制御部材を備え、プッシュボタンは、ユーザがツールを使用する必要なく、補助機能を制御および/または補正することを可能にする。
【0008】
補正ボタンは典型的には小型のプッシュボタンであり、腕時計のミドルに挿入され、ユーザが容易にアクセスして取り扱うことができる突出したプッシュピースの代わりに、小型で典型的には、先の尖ったツールを介して操作できる。これらの補正ボタンは、通常、迅速な機能補正に使用される。
【0009】
いくつかの計時器、特に腕時計は、複数のコンプリケーションを備えており、多数の機能をユーザに提供するが、ケース上に、これら補正デバイスの数を増やす必要がある。
【0010】
しかしながら、ミドルにおける補正デバイスの数を増やすと、レイアウトの問題が生じ、特に、落ち着いたエレガントな外観が求められるミッドレンジおよびトップレンジの計時器の場合、審美的な問題が生じる可能性がある。
【0011】
ミドルの補正デバイスの数の増加はまた、様々な補正手段を統合して取り付けるために、腕時計ケースに作る必要のある開口部の数を増加させるため、シールの問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに関連して、本発明は、時計ケースのミドルに単一の開口部を取り付ける必要がある同じ補正デバイスを使用して、少なくとも2つの異なる機能を選択、起動、および/または補正できるようにする多機能補正デバイスを提案することによって、従来技術の前述した欠点に対する解決策を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、少なくとも第1の機能補正器および第2の機能補正器を有する時計ムーブメントを備える計時器のケースのための多機能補正デバイスに関し、機能補正部材のおのおのは、特に、前記時計ムーブメントの機能を起動、選択、リセット、または補正することを可能にし、前記多機能補正デバイスは、多機能補正デバイスに含まれ、ケースの外側からユーザがアクセス可能な単一の制御部材によって、時計ムーブメントの機能補正部材のうちの1つを選択および/または起動するように構成される。
【0014】
本発明による多機能補正デバイスはさらに、
- 前記計時器ケースと一体化されるように構成された円筒体と、
- 回転軸X-Xを有する制御ステムとを備え、制御ステムは、回転軸X-Xに沿って、円筒体内で並進移動でき、
制御部材は、前記制御ステムと一体化され、円筒体に対して回転および並進移動でき、
多機能補正デバイスは、制御部材の回転によって、制御ステムを、回転軸X-Xを中心に、制御ステムの一端の突起が、第1の機能補正器に面するように位置する第1の起動位置と、制御ステムの前記端部の前記突起が、第2の機能補正器に面するように位置する第2の軌道位置との間を回転させ、
時計ムーブメントの選択された機能を起動、選択、リセット、または補正するために、制御部材に加えられる圧力によって、制御ステムの前記端部の突起が、選択された機能補正器と接触できることを特徴とする。
【0015】
本発明のおかげで、ユーザは、起動させたい前記時計ムーブメントの少なくとも1つの機能補正器を容易に選択し、プッシュピースが押されたとき、その機能補正器を調整できる。
【0016】
したがって、本発明による多機能補正デバイスは、時計ケースのミドルに作られるべき開口部の数を最小限にすることを可能にする。結果として、シーリング、レイアウト、および審美性に関する問題は、ミドルに埋め込まれる補正デバイスの数を低減することによって回避される。
【0017】
なお、本発明による多機能補正デバイスは、時刻設定機能を実現する巻真に接続された設定りゅうずとは異なる補正デバイスであり、任意選択的にバレルを巻き上げできることが留意される。したがって、本発明による多機能補正デバイスは、バレルを巻くための巻真に接続されておらず、ムーブメントの現在時刻を設定することはできない。
【0018】
本発明によれば、補正デバイスは、典型的には計時器のケースのミドルの外側に配置された突出したプッシュピース制御部材を有するプッシュボタン、またはミドルの厚さに一体化され、たとえばツールを使用して、ケースの外側からユーザがアクセス可能な、典型的には補正制御部材を有する補正ボタンのいずれかであると理解される。
【0019】
前の段落で述べた特徴に加えて、本発明による多機能補正デバイスは、個別に、または技術的に可能な任意の組合せにしたがって考えられる、次のうちの1つまたは複数の補完的な特徴を有することができる。
- 制御部材の角度位置のうちの1つの角度位置について、制御ステムの端部の突起は、時計ムーブメントに含まれる機能補正器に面して配置でき、これによって、補正デバイスは、制御部材が押されたとき、機能補正器に関連付けられた機能を実行でき、
- 制御部材の角度位置のうちの1つの角度位置について、制御ステムの端部の突起は、時計ムーブメントに含まれる複数の機能補正器に面して配置でき、これによって、補正デバイスは、制御部材が押されたとき、機能補正器に関連付けられた機能の組合せを同時に実行でき、
- 制御部材の角度位置のうちの1つの角度位置について、制御ステムの端部の突起は、制御部材が押されたとき、時計ムーブメントに対して非アクティブであり、
- 時計ムーブメントは、第1の機能補正器および第2の機能補正器を備え、制御部材の第1の角度位置では、制御ステムの端部の突起は、第1の機能補正器に面して配置でき、制御部材の第2の角度位置では、制御ステムの端部の突起は、第2の機能補正器に面して配置でき、関連付けられた時計ムーブメントの機能を起動、選択、リセット、または補正するために、制御部材に加えられる圧力によって、制御ステムの前記端部の突起が、選択された機能補正器と接触でき、
- 円筒体は、回転軸X-Xを備える回転円筒の形状を有し、
- 制御ステムは、円筒体と同軸であり、
- 前記多機能補正デバイスは、前記ケースのミドルに部分的に収容されるように構成されたプッシュボタンであり、制御部材はプッシュピースであり、
- 前記多機能補正デバイスは、前記ケースのミドルの厚さに完全に一体化されるように構成された小型補正ボタンであり、
- 制御部材は、凹部の形状と相補的な形状を有するツールを受け入れるように構成された凹部を備え、
- 多機能補正デバイスは、制御部材が静止位置に確実に戻るように、円筒体と制御部材との間に設けられた戻り部材を備え、
- 制御ステムの前記端部の突起は、回転軸X-Xに垂直な平面から突出し、
- 制御ステムの前記端部の突起は、半月形状の柱であり、
- デバイスは、制御部材の前記複数の角度位置をインデクス付けするためのインデクス部材を備え、
- インデクス部材は、制御部材によって搬送されるインデクスフレームに収容されたインデクスボールを備えるインデクサによって形成され、
- 前記インデクサは、円筒体に形成されたハウジングと協働する。
【0020】
本発明はさらに、本発明による多機能補正デバイスを備える計時器に関する。
【0021】
有利なことに、計時器は、少なくとも第1の機能補正器および第2の機能補正器を備える時計ムーブメントを包囲するケースを備え、各機能補正器は、特に、現在時刻から派生する機能の表示、補正、選択、作動、またはリセットを可能とし、前記ケースは、本発明による多機能補正デバイスが取り付けられるハウジングを備えるミドルを有し、多機能補正デバイスは、時計ムーブメントの第1の機能補正器および/または第2の機能補正器と相互作用するための複数の角度位置を有する。
【0022】
有利なことに、時計ムーブメントは、第1の機能補正器および第2の機能補正器を備える。
【0023】
有利なことに、第1の機能補正器および第2の機能補正器は、重ね合わされた旋回レバーによって形成される。
【0024】
有利なことに、計時器は腕時計である。
【0025】
有利なことに、計時器のムーブメントは機械式ムーブメントである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の目的、利点、および特徴は、以下の図を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、時計ケースミドルに取り付けられた、本発明による多機能補正デバイスの第1の例示的な実施形態の上面図である。
図2図2は、本発明による多機能補正デバイスの第1の例示的な実施形態の、図1に例示される軸A-Aに沿った矢状断面図である。
図3図3は、本発明による多機能補正デバイスの第2の例示的な実施形態の矢状断面図である。
図4図4は、本発明による多機能補正デバイスの第3の例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
すべての図において、別段の指示がない限り、共通の要素には同じ参照番号が付されている。
【0029】
一般に、以下に説明する様々な例示的な実施形態に共通して、本発明による多機能補正デバイスにより、ケースの外側からユーザがアクセス可能な単一の制御部材によって、現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正する様々な機能を直接的または間接的に実行するために、時計ムーブメントに含まれる少なくとも1つの機能補正器を選択および/または起動できる。
【0030】
したがって、制御部材は、ケースの内部に取り付けられた時計ムーブメントに含まれる現在時刻から派生する情報に関連付けられた様々な機能を制御するためのユーザインターフェースを形成する。
【0031】
図1は、計時器ケース2のミドル20に取り付けられた、本発明による多機能補正デバイス100の第1の例示的な実施形態の上面図を示す。図1を参照して示すように、多機能補正デバイス100が全体的に見えるように、ミドル20が透明に図示される。
【0032】
計時器ケース2は、たとえば腕時計ケースである。
【0033】
ケース2は、外面24および内面23を有するミドル20を備える。ミドル20の内面23は、時計ムーブメント1(全体は図示せず)を受け入れるように意図された内部空間を画定する。
【0034】
時計ムーブメント1は、現在時刻を表示するための手段を搬送および駆動し、特に、現在時刻から派生する少なくとも1つの情報を表示するための少なくとも1つのコンプリケーションを備える。この目的のために、時計ムーブメント1は、現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、および/または補正するために、異なる機能の直接的または間接的な実行を可能にする。
【0035】
図示される例示的な実施形態では、時計ムーブメント1は、第1の機能補正器10および第2の機能補正器12を備え、現在時刻から派生する少なくとも1つの機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットを可能にする。しかしながら、この表現は、本質的に限定的ではない。
【0036】
たとえば、時計ムーブメント1は、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなどのコンプリケーションを備えることができる。
【0037】
機能補正器10、12は、たとえば、特に図1に図示されるように、旋回ピン11を中心に旋回するように取り付けられた重ね合わされたレバーである。しかしながら、他のタイプの機能補正器を考慮できる。
【0038】
図2は、本発明による多機能補正デバイス100の第1の例示的な実施形態の、図1に例示される軸A-Aに沿った矢状断面図を示す。
【0039】
図1から図2を参照して図示されるこの第1の例示的な実施形態では、多機能補正デバイス100は、多機能プッシュボタン式からなる。
【0040】
多機能補正デバイス100は、ケース2と一体化されるように構成され、より具体的には、ミドル20に取り付けられるように構成された円筒体110を備える。円筒体110は、長手方向軸X-Xに沿って延在し、円形外部断面または多角形断面を有することができる。
【0041】
図1から図2に図示される例示的な実施形態では、円筒体110は、長手方向軸X-Xと一致する回転軸を有する回転円筒である。
【0042】
円筒体110は、管状部分111および頭部112を含み、頭部112は、円筒体110の第1の端部を形成する。
【0043】
管状部分111は、ケース2のミドル20に、管状部分を組み立てるためのねじ付き部分を有することができる。この目的のために、ミドル20は、ねじ込みによって、本発明による多機能補正デバイス100を取り付けるためのタップ部分を備える貫通ハウジング21を備える。
【0044】
代替実施形態によれば、管状部分111は、ミドル20のハウジングに直接打ち込みできる。
【0045】
頭部112は、ミドル20の外側、すなわち時計ムーブメント1の反対側に残る円筒体110の一部である。
【0046】
頭部112は、肩部113が頭部112を管状部分111から分離するように、管状部分111の直径よりも大きい直径を有する。したがって、肩部113は、多機能補正デバイス100が取り付けられたときに、ケース2のミドル20の外面24と接触するように意図された、この場合円形である軸受面または停止面を形成する。
【0047】
多機能補正デバイス100はさらに、回転軸X-Xを有する円形の円筒形の制御ステム120を備える。
【0048】
制御ステム120は、軸X-Xに沿って円筒体110内で、より具体的には、制御ステム120を受け入れるために設けられた円筒体110を通って内部穴においてスライドするように構成される。
【0049】
制御ステム120は、円筒体110と同軸である。
【0050】
制御ステム120はまた、円筒体110内で回転軸X-Xを中心に回転移動できる。制御ステム120は、ケース2の外側からユーザが操作できる制御部材130と一体化される。
【0051】
この第1の例示的な実施形態では、制御部材130はプッシュピースである。プッシュピースは、ケースのミドルの外側にあるように意図されたユーザ操作式プッシュボタンの可動の突起部分を意味すると理解される。
【0052】
制御ステム120は、
- ケース2の外部に面し、たとえば打ち込みまたはねじ込みによって制御部材130と一体的に形成された第1の端部121と、
- ケース2の内部に面し、時計ムーブメント1の機能補正器10、12と接触し、ユーザが制御部材130を押すと機能補正器を作動させることを意図された第2の端部122と、
- 第1の端部121と第2の端部122との間の接合部を形成する中央部分と、を備える。
【0053】
図1および図2に図示される例示的な実施形態では、制御ステム120の第1の端部121は、制御部材130をねじ込むために半径方向外面に形成されたねじ切りを有する。
【0054】
制御ステム120の第2の端部122は、異なる角度位置で時計ムーブメント1に面して配置されるように意図されている。
【0055】
たとえば、多機能補正デバイス100の位置のうちの1つの位置は、制御ステム120の第2の端部122を、機能補正デバイス10、12に面して配置することを可能にする。多機能補正デバイス100の位置のうちの1つの位置は、制御ステムの第2の端部122を、複数の機能補正器10、12に面して配置することを可能にする。多機能補正デバイス100の位置のうちの1つの位置は、制御ステムの第2の端部122を、計時器ムーブメントの機能補正器に面しないように配置することを可能にする。
【0056】
制御ステム120の第2の端部122は、制御ステム120の回転軸X-Xに垂直な平面から突出する少なくとも1つの突起、たとえば支柱123を有する。
【0057】
図1および図2に図示される例示的な実施形態では、支柱123は半月形状を有する。ケース2の内部に面する端部122における支柱123の形状および位置は、時計ムーブメント1の様々な機能補正器の位置にしたがって構成される。
【0058】
制御ステム120の回転軸X-Xの下に位置する機能補正器10、12を用いて、2つの機能補正器10、12の同時起動を可能にするように、または機能補正器10、12のどちらの同時起動も可能にしないように、角度位置を定義できる。
【0059】
図1および図2に図示される例示的な実施形態によれば、制御部材130の角度位置に応じて、支柱123は、
- (図1に図示するように)第1の機能補正器10のフィンガ13に面して、
- 第2の機能補正器12のフィンガ14に面して、
- 2つの機能補正器10、12を同時に作動させるために、第1の機能補正器10のフィンガ13と、第2の機能補正器12のフィンガ14とに面して、
- いかなる機能も実行しないように、機能補正器10、12のフィンガ13、14のどちらにも面しないように配置できる。
【0060】
制御ステム120の第2の端部122は、有利なことに、円筒体110の管状部分111の外径よりも大きい外径を有する。したがって、第2の端部122はまた、多機能補正デバイス100の静止位置に戻るときに、円筒体110に対して、より具体的には、円筒体110の管状部分111に対して当接する接合点を形成するように構成される。
【0061】
したがって、第2の端部122は、制御部材130の安定した静止位置を確保するための手段を形成する。
【0062】
プッシュピース式の制御部材130は、円筒体110の周りを同心円状にスライドするように構成された全体的なカプセル形状を有する。制御部材130は、制御ステム120の第1の端部121を受け入れるために、その中心にタップ穴を有するシャフト131を設けられた内部中空部を備える。
【0063】
多機能補正デバイス100の静止位置への戻りは、ミドル20に固定された円筒体110と制御部材130との間に配置された戻り部材140、たとえば戻りばねによって確実に行われる。したがって、戻り部材140は、ユーザが制御部材130を押していないときに、制御部材130および制御ステム120を静止位置に再配置する傾向がある。
【0064】
この目的のために、円筒体110は、頭部112に形成され、戻り部材140の第1の端部を、第1の端部が当接するように受け入れるように構成された端部空洞を備える。戻り部材140の第2の端部は、制御部材130の内部部分に当接する。
【0065】
したがって、以前に見られるように、操作されるムーブメントの機能補正器10、12の選択は、円筒体110に対する制御部材130の角度位置を補正することによって、ユーザによって実行される。
【0066】
制御部材130の回転は、制御部材と一体化された制御ステム120を回転させ、したがって、制御ステム120の支柱123の角度位置を、回転軸X-Xに対して補正することによって、時計ムーブメントに面する制御ステム120の支柱123の位置を補正することを可能にする。
【0067】
次に、同じ制御部材130を押すと、制御ステム120の第2の端部122の支柱123が、選択された機能補正器10、12の1つまたは複数のフィンガ13、14と接触し、同じように動作して、機能補正器10、12に関連付けられた1つまたは複数の機能を、起動、選択、リセット、または補正することを可能にする。
【0068】
本発明による多機能補正デバイス100はさらに、たとえば、時計ムーブメント1の1つまたは複数の機能補正器10、12の起動など、所望の機能を実行するために、制御部材130が正しい位置に配置されていることを、たとえば高感度な方式でユーザに示すためのインデクス部材150を備えることができる。したがって、そのようなインデクス部材は、支柱123が1つまたは複数の機能補正器10、12に面するように正しく配置されることを保証する。
【0069】
インデクス部材150はさらに、制御部材130の複数の安定したインデクス位置を画定することを可能にする。
【0070】
例として、インデクス部材150は、インデクスボール151と、たとえば、制御部材130の周辺部分132に設けられた制御部材130によって搬送されるインデクスフレーム152に収容されたばねとを備える、インデクサによって形成される。
【0071】
ボールインデクサは、回転軸X-Xを中心に回転移動できる制御部材130の、複数の安定したインデクス位置をマークするように構成される。
【0072】
ボールインデクサは、円筒体110の半径方向外面、より具体的には、円筒体110の頭部112に設けられた複数のハウジング155と協働する。円筒体110は、所望のインデクス位置と同数のハウジング155を備える。
【0073】
説明される例示的な実施形態では、インデクス部材150は、制御部材130の4つの位置をインデクス付けするように構成される。したがって、円筒体110は、たとえば、頭部112の周囲の半径方向外面に互いに90°で配置された4つのハウジング155を有する。制御部材130の4つのインデクス位置は、上記の操作を可能にする支柱123の4つの位置、すなわち、
- (図1に図示するように)第1の機能補正器10を起動させるための第1の角度位置と、
- 第2の機能補正器12を起動させるための第2の角度位置と、
- 第1の機能補正器10および第2の機能補正器12を同時に起動させるための第3の角度位置と、
- 制御部材130が押されたときに機能補正器のどちらも起動させないための第4の角度分離位置とに有利に対応する。
【0074】
インデクス位置やインデクス位置の数は、例として与えられたことは言うまでもない。他の代替案も考えられる。たとえば、第1の機能補正器または第2の機能補正器のいずれかを起動させるために第1の位置および第2の位置のみをインデクス付けすることからなる、より単純な代替実施形態を挙げることができる。
【0075】
別の代替実施形態はまた、第1の位置、第2の位置、および第3の位置をインデクス付けできる。
【0076】
制御部材130が所定の位置にあるとき、ユーザは、軸X-Xに平行な、図1のF1で示される矢印によって示される方向に押すことによって、制御部材130を操作する。
【0077】
加えられた圧力は、戻り要素140に対して作用し、支柱123が、1つまたは複数の選択された機能補正器10、12と接触するまで、制御部材130および制御ステム120を、ケース2の内部に向かって変位させる。制御部材130をさらに押すと、1つまたは複数の機能補正器10、12を調整して、それに関連付けられた現在時刻から派生する情報を起動、選択、リセット、または補正できるようになる。
【0078】
多機能補正デバイス100はさらに、円筒体110と制御ステム120との間にシールを形成するためのシール部材160を備える。シール部材は、たとえば、互いに重ね合わされた1つまたは2つのOリングによって形成される。
【0079】
シール部材160は、時計ケース2の内部と、時計ケース2の外部との間に必要なシールを提供する一方で、制御ステム120および制御部材130が並進および回転移動することを可能にするように構成される。
【0080】
図3は、本発明による多機能補正デバイスの第2の例示的な実施形態を示す。
【0081】
図3を参照して示すように、多機能補正デバイス200は、以下に説明する特徴を除いて、上述の多機能補正デバイス100と同一である。
【0082】
この第2の例示的な実施形態では、制御部材130は、制御部材130の回転を容易にするためのツールを受け入れるように意図された凹部135を備えるプッシュピースである。ツールが、凹部135の形状を補完する形状を有することは言うまでもない。
【0083】
図4は、本発明による多機能補正デバイスの第3の例示的な実施形態を示す。
【0084】
図4を参照して示すように、多機能補正デバイス300は、以下に説明する特徴を除いて、上述の多機能補正デバイス100と同一である。
【0085】
この第3の例示的な実施形態では、多機能補正デバイス300は、時計ケース2のミドル20’に完全に一体化されるように意図された小型多機能補正ボタン式からなる。図3を参照して示すように、多機能補正デバイス300が全体的に見えるように、ミドル20が透明に図示される。
【0086】
ミドル20’は、ねじ込みまたは打ち込みによって円筒体110を受け入れるように構成された貫通ハウジング21’を備える。
【0087】
この例示的な実施形態では、制御部材130は、ミドル20’の外面24から突出しないようにハウジング21’内に収容された小型補正器である。
【0088】
制御部材330は、ミドル20’に収容され、したがって、ユーザが容易にアクセス可能ではない制御部材130の回転を可能にするツールを受け入れるように意図された凹部135を備える。
【0089】
この第3の例示的な実施形態の制御部材330は、図1から図2を参照して説明した制御部材130と同じように機能し、同じ特徴を有する。
【0090】
制御部材330は、凹部135の形状と協働するように構成された小さなツールを使用することによって、ケース2の外側からユーザが操作できる。
【0091】
本発明は、特に、時計ムーブメントに含まれる2つの機能補正器を選択および/または起動するための様々な例示的な実施形態において説明された。しかしながら、本発明は、時計ムーブメントの複数の機能補正器の選択および/または起動にも適用可能である。
【0092】
この目的のために、制御ステム120の第2の端部122は、様々な形状の1つまたは複数の支柱、または突起要素を備え、複数のフィンガが、複数の機能補正器の起動を可能にする。
【0093】
たとえば、四角形の中心から外れた柱を用いて、制御要素を4分の1回転させることによって、時計ムーブメントの4つの機能補正器を起動できる。
【0094】
本願において、制御ステム120は、機械式時計ムーブメントの2つのレバー式の機能補正器を動作させる。しかしながら、制御ステムは、現在時刻から派生する任意のメカニズムの少なくとも1つの機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットするための機能を確保する電気接触式の機能補正器と相互作用するように考慮される。
【0095】
本発明はさらに、日付、タイムゾーン、またはクロノグラフなど、現在時刻から派生する機能を表示、補正、選択、作動、またはリセットするための少なくとも2つの機能補正器10、20を備える時計ムーブメント1と、制御部材130、330が押された場合、時計ムーブメント1の機能補正器10、12の選択および操作を可能にする本発明による多機能補正デバイス100とを包囲するケース2を備える、腕時計などの計時器に関する。
【0096】
ケース2は、本発明による多機能補正デバイス100、200、300が、打ち込みまたはねじ込みによって取り付けられるハウジング21を備えるミドルを備える。
【符号の説明】
【0097】
1 時計ムーブメント
2 計時器ケース、腕時計ケース
10 第1の機能補正器、機能補正デバイス
11 旋回ピン
12 第2の機能補正器、機能補正デバイス
13 フィンガ
14 フィンガ
20 ミドル
20’ ミドル
21 ハウジング
21’ ハウジング
23 内面
24 外面
100 多機能補正デバイス
110 円筒体
111 管状部分
112 頭部
113 肩部
120 制御ステム
121 第1の端部
122 第2の端部
123 突起、支柱
130 制御部材
131 シャフト
132 周辺部分
135 凹部
140 戻り部材、戻り要素
150 インデクス部材
151 インデクスボール
152 インデクスフレーム
155 ハウジング
160 シール部材
200 多機能補正デバイス
300 多機能補正デバイス
330 制御部材
A-A 軸
X-X 長手方向軸、回転軸
図1
図2
図3
図4