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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】分光分析装置用の光学系
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/20 20060101AFI20241031BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01J3/20
G01J3/36
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022524981
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020081343
(87)【国際公開番号】W WO2021089817
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】19207778.2
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522168534
【氏名又は名称】ヒタチ ハイ-テク アナリティカル サイエンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ハインツ ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,ライナー
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第2953017(FR,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007027008(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19853754(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(1)であって、
-分析されるべき光(L)を入射させるための少なくとも1つの入射開口(2)と、
-前記光(L)のスペクトル分散のための少なくとも1つの回折格子(3)と、
-前記光(L)の前記スペクトルを測定するための少なくとも2つの検出器(5、5a、5b)であって、前記検出器は、前記光学系の分散面の同じ側に配置される、少なくとも2つの検出器と、
-垂直集束ミラー素子に割り当てられた前記検出器(5、5a、5b)上に前記光(L)を集束させるための少なくとも2つの垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)と、を備え、
前記垂直集束ミラー素子(4)は、互いにおよび焦点曲線に対してオフセットされた2つのポリゴングラフ(6a、6b)に沿って前列ミラー素子(4b)および後列ミラー素子(4a)として配置され、前記ポリゴングラフ(6a、6b)の各部分は、前記格子(3)の前記焦点曲線に対するその専用の局所接線に平行であり、それにより、
-前記前列ミラー素子(4b)の偏向角(φ、φ)は、<90°であり、前記前列ミラー素子(4b)の前記焦点曲線に対するオフセット(d)を最小化することを可能にし、
-前記前列ミラー素子(4b)と前記前列ミラー素子(4b)に割り当てられた対応する検出器(5b)との間の距離(d)は、前記対応する検出器(5b)およびそれらのマウントと後列検出器(5a)およびそれらのマウントとの間の衝突を依然として回避しながら最小化され、
-前記前列ミラー素子(4b)の少なくとも1つの端部(7a)は、前記格子(3)から見て、前記隣接する後列ミラー素子(4a)または隣接する直接光検出器(5、5a、5b)の受光領域と重なり合っている、
ことを特徴とする、光学系(1)。
【請求項2】
前記垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)のうちの少なくとも1つの反射面の形状は、円錐のセグメントである、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の光学系(1)。
【請求項3】
前記垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)の少なくとも1つの反射面の形状は、円筒である、
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の光学系(1)。
【請求項4】
前記垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)のうちの少なくとも1つは、平面ミラー素子(4b)に割り当てられた前記検出器(5、5b)のうちの1つに前記光を偏向させる前記平面ミラー素子(4b)である、
ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項5】
少なくとも2つの垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)の偏向角の絶対値(φ、φ、φ)は異なる、
ことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項6】
少なくとも2つの垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)の平均または一定の曲率半径(ρcyl)は異なる、
ことを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項7】
前記偏向角(φ、φ、φ)の異なる絶対値を有する少なくとも2つの垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)は、同じ平均または一定の曲率半径(ρcyl)を有する、
ことを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの検出器(5、5a、5b)は、それに割り当てられた垂直集束ミラー素子(4、4a、4b)を有さず、したがって、前記検出器(5、5a、5b)は、前記スペクトルの一部が前記検出器(5、5a、5b)上に直接結像されるように、前記格子(3)の元の焦点曲線のセグメントに沿って配置される、
ことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの検出器(5、5a、5b)は、垂直集束のためのレンズを備えている、
ことを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項10】
前記光学系(1)の構築原理は、Paschen-Runge設定またはフラットフィールド設定またはCzerny-Turner設定またはEbert-Fastie設定である、
ことを特徴とする、
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項11】
前記検出器(5、5a、5b)は、ライン検出器、好ましくはCCDまたはCMOS検出器である、
ことを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系(1)。
【請求項12】
前記検出器(5、5a、5b)を動作させ、前記光(L)の前記測定されたスペクトルを分析するために、少なくとも前記検出器(5、5a、5b)に接続された動作ユニットをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの光学系(1)を備える分光分析装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析装置用の光学系、およびそのような光学系を備える分光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分光分析装置の光学系は、電磁スペクトルの特定の部分にわたる光の特性を測定するために使用される構成要素である。これは、アークまたはスパーク励起、LIBS、ICPまたはグロー放電励起などによってスペクトル線を生成するために使用される分光分析装置の一部である。これらのスペクトル線の波長および強度は、材料を同定するため、またはそれらの化学組成を分析するために測定される。そのような分光分析装置は、深UVから遠赤外までの広範囲の波長にわたって動作することができる。
【0003】
分光分析装置は、プラズマを発生させる試料の一部の蒸発およびイオン化に必要な励起エネルギーを提供する、試料のスペクトル分析のための励起発生器と、そのプラズマによって放射されたスペクトル線の波長を分離する光学系と、それらのスペクトル線の強度を測定することができる検出器または検出器構成と、測定値を記録し、分光分析装置の機能を制御する読み出しおよび制御システムと、試料の個々の成分の内容に得られた測定値を便利に変換するためのソフトウェアを備えたコンピュータと、を必要とする。最新の分光分析装置は、スペクトル分散のためにほぼ排他的に回折格子を使用する。格子表面が非平面である場合、それらの格子は、結像能力を有する。格子溝の形状および間隔は、これらの結像特性に影響を及ぼす。光学系がいわゆるPaschen-Rungeマウントまたはセットアップにおいて設定される場合、格子は、その基材が曲率半径Rを有する凹球であるRowland格子である。溝の形状および間隔は、結果として生じる焦点曲線(=入射開口の鮮明な像が生じる格子の分散面における曲線)が、Rowland円と呼ばれる直径Rの円であるようなものである。格子、入射開口および検出器などの光学系の全ての構成要素は、Rowland円上に位置する。格子の曲率中心から格子の表面上の溝パターンの対称中心(理想的には格子の幾何学的中心と一致する)までの半径は、格子法線と呼ばれる。これは、全ての角度が測定される格子方程式の基準線である。Paschen-Rungeマウントでは、焦点曲線(円である)は、その法線を中心に対称である。格子基材は、非球形であってもよく、溝の間隔および形状は、Rowland型と異なっていてもよく、その結果、法線の周りで非対称とすることができる非円形焦点曲線が生じる。これは、特定の回折角の下で空間分解線形(アレイ)検出器を使用するために最適化された焦点曲線を有するいわゆるフラットフィールド格子の場合とすることができる。本発明は、これらのシステムのいくつかにも適用されることができ、Paschen-Rungeマウントのみに限定されない。
【0004】
1mmより小さい画素高さを有するCCDセンサまたはCMOSセンサなどのライン検出器を使用する光学系は、検出されるスペクトル線を、分散面に垂直な場合によっては数ミリメートルの高さから、理想的には使用される検出器の画素高さまで圧縮するために、例えばロッドレンズ、シリンドリカルレンズ、シリンドリカルミラーまたは非球面ミラーまたはレンズなどの垂直集束素子から利益を得る。そうでない場合、弱い線からの信号は、不十分な(光)強度レベルのために検出されない可能性がある。これは、大きな焦点距離の光学系に特に当てはまる。そのような純粋に垂直集束は、検出器において行われなければならず、格子の結像特性のために、例えば入射スリットにおいて集合的に行うことはできない。光学系の全体サイズを小さくし、検出器に必要な取り付けスペースを形成するために、垂直光集束と分散面外の偏向とを組み合わせることがしばしば有益である。
【0005】
長年にわたり、検出器における垂直集束および分散面からの偏向の問題に対するいくつかの解決策が記載されており、最新技術は、いくつかの特許によってカバーされている。
【0006】
独国特許第198 53 754号明細書および米国特許第6,614,528号明細書では、分散面からの垂直集束および偏向は、シリンドリカルミラーによって行われる。これらのミラーの長手方向軸は、1つのポリゴングラフに沿って分散面内に取り付けられ、その各部分は、光学系の実際の焦点曲線に対するそれらの専用の局所接線に平行であり且つオフセットされている。ここで、曲率半径ρCylは、全てのシリンドリカルミラーについて等しい。局所接線とポリゴングラフの対応する部分との間のオフセットまたは距離dは、全波長範囲または焦点曲線にわたって一定であり、普遍的に有効な方程式によって決定される。
(1)
【数1】

式中、φは、分散面からの偏向角である。検出器ユニット(それぞれが、ここでは垂直集束シリンドリカルミラー素子、割り当てられた検出器、および取り付けプレートまたはベースプレートから構成される)の組み立て中にミラーエッジの損傷を防止するために、隣接するミラー間にギャップが必要である。ハウジングがそれらの光感受性領域または受光領域よりも遠くに延在する検出器自体のための光学系内に必要な空間を形成するために、φ=±90°の分散面からの標準化された偏向角がシリンドリカルミラーのために選択され、その結果、検出器は、分散面に平行且つ等距離(距離=d)の2つの平面上に配置されるようになる。これにより、それらの取り付け面の一方は、分散面の上方に配置され、他方は、分散面の下方に配置される。シリンドリカルミラーの長さは、使用される割り当てられた検出器の受光領域の長さに適合される。一般に、ミラーの長さは、配置公差を維持するために、割り当てられた検出器の受光領域の長さを僅かに下回る。視野角が増大するため、ミラー形状は、入射スペクトル線がミラー面上に(または隣接するミラー間のギャップ内に)完全に落ちることを確実にするために、回折角が増大するにつれてますます台形にならなければならない。また、ミラー中心点および検出器中心点は、回折角が増大するにつれて、ポリゴングラフのそれらの断面に沿って互いに対してよりオフセットされるようになる。スペクトル線は、まだ焦点曲線から離れた位置に集束されていないため、シリンドリカルミラー面に入射するスペクトル線は、検出器の照射領域上の予想されるFWHMよりもはるかに広い領域にわたって水平に延在する。ミラー面上のこの領域の幅は、シリンドリカルミラーの長手方向軸と、式(1)にしたがって計算された焦点曲線に対する対応する局所接線との間の距離dに依存する。ミラーのエッジでは、スペクトル線の光は、そのミラーに部分的にのみ当たるため、その一部のみが割り当てられた検出器に到達する。したがって、その強度は、空間ドリフトが発生した場合に変化する。したがって、そのような線は、信頼性がないと見なされなければならず、試料のスペクトル評価に使用されるべきではない。したがって、このシステムでは、ミラー間のギャップに部分的または完全に入るスペクトル線が失われる。
【0007】
仏国特許第2953017号明細書では、異なる曲率半径ρCyl1およびρCyl2を有する2列のシリンドリカルミラーが、垂直集束および分散面外の偏向に使用される。2つの列は、式(1)にしたがって互いにおよび焦点曲線に対してオフセットされ、分散面からφ=90°の標準化された1つの偏向角が選択される。前記特許明細書に示されるように、1つの列に属するシリンドリカルミラーの中心点は、いわゆるフォリウム曲線に沿って位置すると見なすことができる。しかしながら、これは、単に、それらの長手方向軸が、前の段落で説明したようにそれらのそれぞれのポリゴングラフに沿って分散面内に依然として取り付けられているという事実の結果である。これは、この設定では、シリンドリカルミラーの各列が、偏向が一方向にのみ生じることを除いて、独国特許第198 53 754号明細書および米国特許第6,614,528号明細書と全く同じ方法で取り付けられることを意味する。スペクトルの隣接する部分をカバーするミラーが異なる列に配置されているため、ミラーエッジは、この設定において衝突することができない。光学系の「三次元」(すなわち、偏向方向)における衝突のない設定を保証するために、曲率半径は、前列ミラー(すなわち、格子により近い列内のミラー)に割り当てられた検出器の取り付け面が後列ミラーに割り当てられた検出器の取り付け面よりも十分に上方に位置するように選択される。この例では、ミラーエッジと検出器マウントとの間の衝突の双方を回避するように選択された曲率半径は、27.5mmおよび75mmである。双方の列1および2からのミラーは、それぞれ距離dおよびdだけ焦点曲線からずれているため、スペクトル線は、これらのシリンドリカルミラーの表面に再び集束されない。したがって、特定の幅の領域内の前列ミラーのエッジの周りでは、スペクトル線は、部分的に一方のミラー上におよび部分的に他方のミラー上に落ちることがあり、したがって、同時に2つの検出器によって検出されるか、または、隣接するミラーエッジ間のギャップに落ち、したがって、全く検出されない。この領域-遷移ゾーン-の幅は、やはり、関連するシリンドリカルミラーの焦点曲線までの距離diに依存する。特に、前列ミラーの曲率半径(ここでは75mm)が大きいほど、遷移ゾーンは広くなる。このゾーンに入るスペクトル線はまた、光学系がプラズマの直視で動作する場合、それらのプラズマの視野において損なわれる可能性がある。適用可能であれば、隣接する検出器からの線の結合信号を使用することは、検出器の特性の変動に起因して問題となり得る。したがって、遷移ゾーンに落ちるスペクトル線は、失われていると見なされなければならない。
【0008】
偏向および垂直集束の別の例として独国特許出願公開第102007027010号明細書および米国特許第8649009号明細書に記載されているような非球面(軸外放物面)ミラーの使用は、独国特許第198 53 754号明細書のギャップの問題を解決せず、垂直集束を改善するだけである。
【0009】
最新技術はまた、垂直集束を使用せず、または垂直集束のみを使用し、偏向を使用せず、または偏向を部分的にのみ実行するいくつかの分光分析装置においても反映される:ほぼギャップなしの波長範囲は、a)|φ|=90°の偏向角で分散面から光をそれらの割り当てられた検出器に偏向させる平面ミラーと、b)直接光検出器ユニット(すなわち、ミラーのない検出器)との交互の設定を使用することによって達成されることができ、aおよびbは、2列に沿って配置され、ミラーエッジは、(格子中心から見た視線内で)隣接する直接光検出器の受光領域と重なる。ここでの遷移ゾーンの幅は、直接光検出器が焦点曲線自体に配置されるため、焦点曲線に対する偏向ミラーの位置のみに依存する。分離された位置での垂直集束は、平面ミラーを一致する円筒形のものと交換することによって、または例えば、適切な結像特性を有するシリンドリカルレンズまたはロッドレンズを検出器自体に固定し、焦点曲線に対するその位置を適切に補正することによって達成されることができる。しかしながら、シリンドリカルレンズまたはロッドレンズの結像特性は、シリンドリカルミラーまたは非球面ミラーの結像特性よりも劣る。ギャップなしのカバレッジを達成するための別の方法は、非圧縮スペクトル線が十分に高い(=垂直方向に延伸する)という条件で、焦点曲線に対して接線方向に分散面の僅かに上方および僅かに下方に検出器を交互に取り付けることによって、および検出器の受光領域を再びオーバーラップさせることによって実現される。この設定は、例えば、シリンドリカルレンズを検出器に適用することによって、面外垂直集束と組み合わせることができる。しかしながら、面外領域では、光量が低下し、プラズマの視野が損なわれる可能性がある。この設定はまた、例えば、検出器の前方にペリスコープとして機能する傾斜エッジを有する窓によって、検出器の受光領域よりも分散面に近い領域から光を収集する手段と組み合わせることができる。これらの設定のいずれにおいても、重複ゾーンは、問題の線をどの検出器で測定するかを選択することを可能にする。ここでも、2つの検出器からの1つのスペクトル線の信号の組み合わせは、光学系がプラズマを直接見ている場合の潜在的に異なる検出器特性およびプラズマの視野の問題のために推奨されない。
【0010】
しかしながら、遷移ゾーンの最小化された幅を有する光学系の利用可能な波長範囲全体にわたって準連続的にスペクトルを検出し、同時に面内垂直集束の選択肢を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】独国特許第198 53 754号明細書
【文献】米国特許第6,614,528号明細書
【文献】仏国特許第2953017号明細書
【文献】独国特許出願公開第102007027010号明細書
【文献】米国特許第8649009号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、隣接し、重なり合い、潜在的に垂直に集束ミラー素子間の遷移ゾーンの範囲を最小化することによって、所望の波長範囲内のスペクトルの準連続的な検出を可能にする光学系を提供することである。本発明の別の目的は、光学系の全体サイズ(高さ)を低減することである。
【0013】
これらの目的は、独立請求項1の特徴を有する光学系によって解決される。光学系の有利なさらなる実施形態は、従属請求項2から11に由来する。さらにまた、この目的は、請求項12に記載の分光分析装置によって解決される。
【0014】
本発明の光学系は、分析される光を光学系に入射させるための少なくとも1つの入射開口と、その光のスペクトル分散のための少なくとも1つの回折格子と、回折光を集束させるとともに回折光を分散面外に偏向させるための少なくとも2つの垂直集束ミラー素子と、回折光のスペクトルを測定するための少なくとも2つの検出器と、を備え、各光集束ミラー素子は、1つの検出器に割り当てられる。ここで、検出器は、光学系の高さを低減するために光学系の分散面の同じ側に配置される。垂直集束ミラー素子は、互いにおよび焦点曲線にオフセットされた2つのポリゴングラフに沿って、前列ミラー素子および後列ミラー素子として配置され、ポリゴングラフの各部分は、格子の焦点曲線に対するその専用の局所接線に平行である。隣接し、重なり合い、潜在的に垂直に集束するミラー素子間の遷移ゾーンの範囲を最小化することによって所望の波長範囲内のスペクトルの準連続的な検出を可能にする光学系を提供するために、焦点曲線に対する前列ミラー素子のミラー軸のオフセットが最小化される。これは、それらの割り当てられた検出器およびそれらのマウントを潜在的に衝突する後列検出器およびそれらのマウントから折り畳むために、前列ミラー素子として配置された垂直集束ミラー素子に対して|φ|<90°の偏向角を選択することによって行われる。
【0015】
ミラー素子の長さが、それらの割り当てられた検出器の受光領域の長さに満たず、ミラー素子の隣接する端部が互いに重なり合うか、またはミラー素子が割り当てられていない隣接する検出器の受光領域に重なり合う場合、特に有利である。そのようにして、隣接する検出器の受光領域ならびにそれらの照射領域も重なり合う。さらにまた、検出器とミラー素子との間の最大発生距離dを最小化することによって、集束ミラー素子を互いに、および焦点曲線から可能な限り小さくオフセットすることによって遷移ゾーンの幅が最小化される場合、非常に有利である。これは、前列ミラー素子に対して|φ|<90°の偏向角を選択することによって達成される。結果として、それらの割り当てられた検出器およびそれらのマウントは、潜在的に衝突する後列検出器およびそれらのマウントから折り畳まれることができる。これは、割り当てられた検出器に必要な取り付けスペースを形成するためにρCylのみが増加される仏国特許第2953017号明細書とは対照的である。最大発生距離を最小化することはまた、本発明の第2の目的である光学系の全高を低減させる。さらにまた、前列ミラー素子に対して|φ|<90°の偏向角を選択することによって、分散面の片側にのみ検出器が配置された従来技術の光学系と比較して、前列ミラー素子の焦点曲線までの距離が低減されることができる。低減した焦点曲線までの距離は、本発明の光学系における前列ミラー素子上の焦点外線領域を低減し、遷移ゾーンの幅を低減する。
【0016】
検出器とミラー素子との間の最大発生距離dを最小化するために、上述したように、Paschen-Runge型分光分析装置における垂直集束ミラーおよび割り当てられた検出器の2つの異なる例示的な空間的配置の遷移ゾーンの結果として生じる幅を推定しなければならず、最も好ましい設定を示している(図5も参照)。
【0017】
2つ以上の検出器が互いに隣接するミラー素子を備えている好ましい実施形態では、ミラー素子は、重なり合いを可能にするために焦点曲線までの異なる距離を有しなければならない。前列は、|φ|<90°の偏向角を特徴とし、検出器マウントの形状に応じて、後列は、図1に示すように同じ偏向角またはより大きい偏向角を有する。
【0018】
隣接する垂直集束ミラー素子の曲面が等しくない曲率半径ならびに等しくない偏向角を有する場合、非常に有利である。これにより、垂直集束ミラー素子と割り当てられた検出器との間の距離、およびシステムの全体サイズが最適化されることができる。
【0019】
光学系が連続波長範囲をカバーする検出器構成を備える別の好ましい実施形態では、検出器構成の少なくとも全ての第2の検出器がミラー素子を備え、各ミラー素子がそれぞれ任意の隣接するミラーまたは任意の隣接する直接光検出器の受光領域と重なる場合に特に有益である。そのようにして、検出器の受光領域ならびにそれらの照射領域が重なり合う。(前列)ミラー素子に対して|φ|<90°の偏向角を選択することによって、それらの割り当てられた検出器およびそれらのマウントは、潜在的に衝突する(後列)直接光検出器から折り畳まれて、割り当てられた検出器に必要な取り付けスペースを形成することができる。したがって、検出器マウントが衝突すると、前列は、直接光検出器に近付けられることができる。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、前記ミラーの少なくとも1つの反射面の形状は、円錐のセグメントである。すなわち、表面は、重なり合うことを可能にするために、ミラー軸に沿って増大する可変曲率半径を有する。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、前記ミラーの少なくとも1つの反射面の形状は、円筒であり、例えば、表面は、ミラー軸に沿って一定の曲率半径を有する。
【0022】
別の実施形態では、光集束素子は、シリンドリカルミラーおよび/または円錐ミラーである。追加的または代替的に、垂直集束素子は、例えばロッドレンズまたは平坦な偏向ミラー素子と組み合わされたシリンドリカルレンズなどの集束レンズである。垂直集束素子の選択は、必要なタスク、解像度、使用される格子、または光学系のサイズに応じて行うことができる。特に、異なる垂直集束素子の組み合わせは、光学系の柔軟性を高める。さらにまた、垂直集束素子または光学系を構築して、垂直集束素子を交換して、柔軟でアップグレード可能な光学系を生成することができる。
【0023】
別の実施形態では、少なくとも1つの検出器は、垂直集束のためのレンズ、例えばロッドレンズまたはシリンダレンズを備えている。
【0024】
別の実施形態では、光学系の構築原理は、Paschen-Runge設定またはフラットフィールド設定またはCzerny-Turner設定またはEbert-Fastie設定である。
【0025】
非常に有益な実施形態では、検出器構成の検出器は、ライン検出器、好ましくはCCDまたはCMOS検出器である。
【0026】
本発明に係る分光分析装置は、少なくとも検出器構成に接続され、検出器構成を動作させ、回折光の測定されたスペクトルを分析するための動作ユニットをさらに備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の少なくとも1つの光学系を備える。
【0027】
上記列挙した実施形態は、本発明に係る装置およびプロセスを提供するために個別にまたは任意の組み合わせで使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面に詳細に示されている。
図1】回折光を測定して等角図を形成するときの本発明に係る光学系の第1の実施形態の概略図である。
図2】正面図における光学系の第1の実施形態における垂直集束素子および検出器の概略詳細図である。
図3】等角図における光学系の第2の実施形態における垂直集束素子の概略詳細図である。
図4】等角図における光学系の第3の実施形態における垂直集束素子および検出器の概略詳細図である。
図5】(a)最新技術に係る、および(b)本発明に係るミラー-検出器設定の空間的配置のための異なる手法における面外偏向およびミラー-検出器設定である。
図6】焦点曲線からの距離におけるスペクトル線の最小線幅である。
図7】遷移ゾーンwTの最小幅をもたらす2つのミラー間の最小安全距離sを達成するための好ましい幾何学的形状を決定するための、法線点における分散面に垂直な断面図である。
図8】Rowland円光学系としての本発明に係る光学系の光路および角度の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、分析されるべき光Lが光学系1に入射する入射開口2と、光Lのスペクトル分散のための格子3と、光Lを集束させるための垂直集束ミラー素子4と、光Lのスペクトルを測定するための検出器5と、を備えるPaschen-Runge設定における光学系1の一般的な構成を示している。分散された光を集束させるために、垂直集束ミラー素子4は、互いにおよび焦点曲線にオフセットされた2つのポリゴングラフ6a、6bに沿って配置される。ポリゴングラフの各部分は、格子3の焦点曲線に対するその専用の局所接線に平行であり、次いで、各垂直集束素子4が割り当てられた検出器5によって測定可能である。垂直集束ミラー素子がポリゴングラフ6a、6bに沿って配置されているため、検出器5またはそれらの中央および焦点曲線は、互いに重なり合うことができる。この光学系では、垂直集束素子4の隣接する端部7a、7bが重なり合い、垂直集束ミラー素子と検出器との間の式(1)にしたがって計算される最大距離dが最小化されることが特に重要である。|φ|<90°、この例では60°の偏向角を選択することにより、前列ミラー素子について、カバーされる波長範囲のほとんどギャップなしの測定が保証されることができる。
【0030】
図2は、図1に示す実施形態において使用される垂直集束ミラー素子4および検出器5の構成の詳細を示している。図1および図4の実施形態の垂直集束ミラー素子4は、互いにおよび焦点曲線に対してオフセットされた2つのポリゴングラフ6a、6bに沿って配置される。図2の視点では、2つのポリゴングラフ6a、6bは、互いに重なり合っており、これが1つのポリゴングラフのみが見える理由である。ポリゴングラフの各部分は、格子3の焦点曲線に対するその専用の局所接線に平行である。この実施形態では、垂直集束ミラー素子4aが検出器5aに割り当てられ、垂直集束ミラー素子4bが検出器5bに割り当てられる。これらの要素の取り扱いを容易にするために、各検出器5aおよび垂直集束ミラー素子4aは、ベースプレート9に取り付けられる。これは、それぞれの垂直集束ミラー素子4bを有する検出器5bにも当てはまる。垂直集束ミラー素子4a、4bは、式(1)にしたがって計算された焦点曲線までの距離d(4a)およびd(4b)内に配置され、検出器5aおよび5bの中央は、焦点曲線を重ね合わせている。
【0031】
一般に、偏向角φは、90°以下とすることができる。ここで、隣接する垂直集束素子の偏向角φは等しくなく、ミラー素子4aでは90°、ミラー素子4bでは60°の値を有する。垂直集束に対するさらなる影響は、ミラー素子4a、4bの曲面8によって行われる。曲面8は、円筒面であるミラー素子4aに対して一方の曲率半径ρ(4a)=27.5mmを有し、円筒面でもあるミラー素子4bに対して他方の曲率半径ρ(4b)=35mmを有する。この実施形態は、d(4b)を最小にしながら、垂直集束ミラー素子の隣接する端部を重ね合わせることを可能にする。この実施形態はまた、垂直集束素子4の容易な交換を可能にし、それにより、ミラー素子を平面ミラー素子によって容易に交換して集束を減衰させることができ、したがって必要に応じて強度レベルを低下させることができる。さらに、集束ミラー素子を平坦な偏向ミラー素子と集束レンズとの組み合わせに置き換えることも可能である。
【0032】
図3に示す第2の実施形態では、垂直集束ミラー素子は、円錐ミラーである。垂直集束ミラー素子4のそれぞれの長手方向軸Aは、ポリゴングラフ6と交差しており、その各部分は、焦点曲線に対するそれらの専用の局所接線に平行である。ポリゴングラフ部分と局所接線との間の距離は、式(1)によって与えられ、ここでρCylは、本実施形態において特徴とされる集束円錐ミラー素子の平均曲率半径であるρAvgによって置き換えられなければならない。隣接する垂直方向に集束する円錐ミラー素子4は、等しい偏向角、この場合は90°を有する。円錐ミラー素子の曲率半径は、その長手方向軸に沿った各点で異なるため、式(1)は、焦点曲線からミラー素子の長手方向軸に沿った各点に対して異なる距離dを提供する。したがって、ミラー素子の長手方向軸は、ポリゴングラフと交差しており、軸は、グラフ自体の上にあることはできない。円錐ミラー素子の一端の曲率半径は、対向する端部の曲率半径よりも小さいため、対応する距離は異なり、したがって、隣接する同一の円錐ミラー素子は、隣接する円錐ミラー素子間の遷移ゾーンの最小幅によって波長範囲の準連続的なカバレッジを提供する屋根の屋根板のように重なり合うことができる。円錐ミラー素子の特定のスポットに当たるスペクトル線の波長の接線方向の焦点は、当然のことながら、分散面からの偏向または分散面に垂直な方向への垂直集束の影響を受けない。したがって、検出器は、他の実施形態のように分散面に平行であることはできず、ρAvgからのビームがそれに当たる点の周りで傾斜しなければならず、円錐ミラー素子の長手方向軸と同時に平面内に留まる。適切な傾斜によって、円錐ミラーの長手方向軸に沿って各スポットに当たる波長ごとに正しい接線方向の焦点が達成される。異なるρAvgおよび/または異なる偏向角φを有する隣接する円錐ミラー素子を使用することも可能である。
【0033】
図4の第3の実施形態は、垂直集束ミラー素子4よりも多数の検出器5を有する。各垂直集束ミラー素子4は、検出器5に割り当てられる必要があるが、光を検出するために、各検出器5は、割り当てられた垂直集束ミラー素子4を有する必要はない。割り当てられた垂直集束ミラー素子4を有しないこれらの直接結像検出器5cは、格子3の焦点曲線のセグメントに沿って直接配置される。いずれにせよ、これらの直接結像検出器5cは、直接結像検出器5cの隣接する端部7a、7bが隣接する垂直集束ミラー素子4の隣接する端部によって重なり合うように、同様に隣接する垂直集束要素4と見なされなければならない。垂直集束ミラー素子4なしで直接結像検出器5cを使用することは、スペクトルの一部が検出器5上に直接結像されることを可能にする。図4の実施形態3はまた、曲面8の曲率半径ρが異なる垂直集束ミラー素子4を使用する。垂直集束素子4bは、曲面8が平面的に見えるように、無限の曲率半径ρを有する。一方、垂直集束素子4aは、垂直集束素子4bよりも小さい曲率半径ρを有し、それにより、曲面8は、円筒状に見える。光集束素子4a、4bの曲率半径ρの差は、集束ミラー素子4aによって垂直集束が効果的に達成されるが、ミラー素子4bは、全く集束しないことを意味する。双方の検出器ユニットに同じベースプレートを使用するために、偏向角は、同じになるように選択され、この例ではφ=90°である。
【0034】
図5は、(a)最新技術に係る、および(b)本発明に係るミラー-検出器設定の空間的配置のための異なる手法における面外偏向およびミラー-検出器設定を示している。図5aは、仏国特許第2953017号明細書に開示されているような最新技術に係る光学系1sを示しており、φ=+90°の偏向角が、互いに大きくオフセットされた2つのポリゴングラフに沿って配置されたミラー-検出器設定(前列ミラーおよび後列ミラー)の双方の列に使用される。ここで、ミラー素子10sは、入射光Lを分散面DPから検出器11sに向けて偏向光LDとして偏向させるために、互いに大きな距離を有する。より小さい距離では、後列および前列ミラー10sの検出器11sまたはそれらのマウントが衝突する。前列ミラー10sと検出器11sとの間の長い距離を一致させるために、ミラー素子10sの垂直曲率が適合される。それにもかかわらず、焦点曲線から遠く離れた前列ミラー素子10sの位置は、前列ミラー10sの焦点外位置においてスペクトル線のより大きな領域をもたらし、前列と後列の隣接するミラー間の重複効果をもたらし、ミラー10sのエッジに近い光の一部は、専用の前列ミラーによって反射されず、後列ミラー10sに意図せず透過する。図5bは、前列ミラー素子4、4bのエッジにおける最小化された遷移ゾーンを特徴とする本発明に係る光学系1を示している。光ピックアップにおいて使用される偏向ミラーは、垂直方向に集束するミラー素子4、4a、4bを提供するために、双方の手法において円筒形である。偏向角φ1,2(さらなる詳細については図7を参照)を挿入するとき、焦点曲線FCに対するミラー軸の距離d1,2は、式(1)にしたがって計算される。90°未満の偏向角φを使用する場合、双方のミラー間の距離Δ=d-dは、図5aと比較してはるかに小さく、その結果、前列ミラー素子4、4bと対応する検出器5、5bとの間の距離dが短くなり、一方では光学系1の高さが小さくなる(図5aに示すような最新技術に係る検出器位置は、より良い比較のために破線として図5bに追加されている)。一方、焦点曲線FCに近い距離dは、前列ミラー素子4、4bのエッジにおいて最小化された遷移ゾーンをもたらす。90°の後列ミラー素子4、4aの偏向角φは、単なる例であり、他の実施形態では異なっていてもよい。
【0035】
図6は、焦点曲線からの距離dにおけるスペクトル線の最小線幅tを示している。ここで、Rowland格子は、曲率半径(ROC)Rを有し、幅Wを有する格子3上の照射領域は、β=0°で法線波長λの焦点曲線FC上にある焦点でもある法線点Nの周りの光ピックアップを使用する。角度ξは、格子の半照射角に対応する。焦点Nからの距離dにおけるβ=0°でのスペクトル線の幅tは、以下の式によって決定される:
(2)t=2d tanξ
ここで、(3)sinξ=W/2R
【0036】
図7は、双方の垂直集束ミラー素子4a、4bを照射するスペクトル線の遷移ゾーンの最小幅をもたらす、前列の一方と後列の他方との2つの垂直集束ミラー素子ミラー4、4a、4b間の最小安全距離Sを達成するための好ましい幾何学的形状を決定するために、法線点において分散面に垂直な断面を示している。以下の式は、図7から導出されることができる:
(4)h1,2=ρcyl-1,2(1-cos (arcsin(b/2ρcyl-1,2)))
(5)A’1,2=b/2 cos (φ1,2/2)
(6)B’1,2=b/2 sin (φ1,2/2)
(7)Δ=d-d
(8)A1,2=A’1,2-h1,2 sin(φ1,2/2)
(9)B1,2=B’1,2+h1,2 cos(φ1,2/2)
(10)B’(A)=(A/cos (φ/2)) sin (φ/2)=A tan (φ/2)
(11)S=Δ+B’(A)-dm/cos (φ/2)-B
ここで、dmは、ミラー素子の中心厚さを示し、bは、ミラー素子の高さを示す。さらなる検討を実行するために、合理的な最大ミラー高さbを推定することができる。スパークOESでは、電極先端と試料(=対電極)との間の距離は、一般に2mmから5mmである。結合レンズまたは結像結合ミラーまたはミラー設定は、発生されたプラズマからの光を入射開口上に結像し、最大5mmのその全高を照射する。分光分析装置光学系では、回折格子3の結像誤差は、線を(とりわけ)入射スリットの高さよりも長くなるようにさせる。Rowland円格子の経験則として、平均7mmの長さが仮定されることができる。本発明の後列ミラー素子4、4aにおいて実現されるように、φ=90°の偏向角でシリンドリカルミラーを使用してスペクトル線の全長から検出器5のセンサ上に光を集束させるために、シリンドリカルミラーの高さは、b=10mmの高さ(=7mm/cos(45°))である必要がある。
【0037】
垂直集束ミラー素子4、4a、4b上に完全に落ちるスペクトル線のみが使用可能であると考えられ、これは、隣接するミラー間の遷移ゾーンWTの幅を以下のようにする:
(12)WT=2 t(β)
【0038】
双方の手法(図5aおよび図5bに係る最新技術および本発明)における遷移ゾーンWTの幅は、(回折格子に最も近い)前列ミラーの焦点曲線FCまでの距離であるdのみによって決定される。図5aおよび図5bに係る手法において後列ミラー素子4、4a、10sについて同じ曲率半径ρcyl-2を仮定すると、タスクは、双方の手法について2つのポリゴングラフ6a、6b間の距離であるΔの最小化である。ここで、前列ミラー素子と後列ミラー素子4、4a、4bとの間の最も近い近接における安全距離sをS=1mmに設定して、ρcyl-1、φ、およびφの適切な値を見つける。dm=2.2mmおよびb=10mmと仮定し、前列ミラー素子および後列ミラー素子4、4a、4bの双方についてdmおよびbの値をとり、sinξ=0.05(式2+3)とするR=400mmおよびW=40mmとさらに仮定すると、図5a(従来技術の光学系1s)および図5b(本発明の光学系1)に示すような設定について、以下が得られる:
光学系1s:ρcyl-1=75mm、ρcyl-2=27.5mm φ=φ=90°
光学系1:ρcyl-1=35mm、ρcyl-2=27.5mm φ=60°、φ=90°
【0039】
これらの値を使用することは、法線点Nにおける図5a(最新技術の光学系1s)および図5b(本発明の光学系1)の手法の遷移ゾーンWTの幅について以下の結果をもたらす:
光学系1s:d=26.517mmおよびd=9.723mm WT=2.6517mm
光学系1:d=15.155mmおよびd=9.723mm WT=1.5155mm
【0040】
光学系1sのより大きな遷移ゾーンWTと比較して、光学系1のより小さな遷移ゾーンWTは、本発明に係る光学系1の改善された性能を示す。
【0041】
図8は、Rowland円光学系としての本発明に係る光学系の光路および角度の概略図を示しており、βは、発生する回折角を示し、αは、入射角を示し、ωは、垂直に対する中間ビームの集束ミラー素子への入射角を示し、Oは、βとともに増加するオフセットを示し、tは、βとともに増加する距離dにおける線幅を示し、Nは、法線点を示し、Wは、照射された格子幅を示し、Rは、格子の曲率半径を示し、ξの決定を示す。図8から、回折角β>0°の場合、距離dおよび角度ξは、焦点曲線(この場合はRowland円)の経路に沿って一定のままであるが、シリンドリカルミラー素子4、4a、4bの軸から検出器5、5a、5bの画素帯域lまでの光路の長さは、以下の式にしたがってβの増加とともに増加し、
(13)l=d/cos ω
シリンドリカルミラーの軸および画素帯域の中心点は、以下のオフセットOだけ互いにオフセットされる:
(14)O=d tan ω
【0042】
ミラー面上の0以外のβのスペクトル線の幅t(β)を計算するために、dは、式(2)において(l/cos ω)によって置き換えられる必要があり、以下をもたらす:
(15)t(β)=2d tan ξ/cos ω
ここで、ωは、βに固有であり、焦点曲線FCの経過に依存する。Rowland円光学系の場合、ω=βが適用される。
【0043】
焦点曲線上の回折角および焦点を決定するために、格子は、
式:
(16)n G λ=sin α+sin β
およびバックフォーカス式:
(17)
【数2】
ここで:n 回折次数
G 格子定数(格子中心における1mm当たりの溝の数)
λ 回折波長
α 入射角
β 回折角
入射開口と格子中心との間の距離
回折λの焦点と格子中心との間の距離
R 格子基材の曲率半径
λ 格子製造時の露光波長
フラットフィールド定数;
が使用される;C=0の場合、光学系を構成する全ての要素は、Rowland円上に位置する。
【0044】
図1から図8に示す実施形態の垂直集束ミラー素子は、大部分がシリンドリカルミラーとして説明されているが、無限の曲率半径ρを有し、したがって平面である曲面8、または円錐面を形成するいくつかの曲率半径ρを含む曲面8を有するミラー素子を有することも可能である。したがって、平面、シリンドリカルミラーまたは円錐ミラーが使用されることができる。これらを組み合わせて光学系1に使用すると特に有益である。ロッドレンズまたはシリンドリカルレンズのような集束レンズは、垂直集束素子4としての垂直集束ミラー素子の代わりに、例えば平面偏向ミラーと組み合わせて、上記の全ての実施形態において使用されることができる。
【0045】
上述したようなPaschen-Runge設定における光学系1の設定は、限定的であるようには意図されておらず、むしろ、光学系1の図1から図8の実施形態はまた、フラットフィールド設定またはCzerny-Turner設定またはEbert-Fastie設定にも適している。
【0046】
さらにまた、上記の全ての実施形態において、検出器5、ならびに直接結像検出器5cは、CCDまたはCMOS検出器などのライン検出器である。
【0047】
上述した光学系1および動作ユニットのうちの少なくとも一方は、分光分析装置に使用されることができるが、これ以上説明しない。これにより、動作ユニットは、少なくとも2つの検出器5を動作させ且つ光Lの測定されたスペクトルを分析するために、少なくとも2つの検出器5の少なくとも検出器構成に接続される。
【0048】
ここに示される実施形態は、本発明の単なる例であり、したがって、限定として理解されてはならない。当業者によって考慮される代替の実施形態は、本発明の保護範囲によって等しく包含される。
【符号の説明】
【0049】
1 本発明に係る光学系
1s 最新技術に係る光学系
2 入射開口
3 格子
4,4a,4b 垂直集束ミラー素子(本発明)
5,5a,5b 検出器(本発明)
5c 直接結像検出器
6,6a,6b ポリゴングラフ、セグメントは、ミラー素子の背後の焦点曲線に対する局所接線に平行である
7a,7b 垂直集束素子の隣接する端部
8 曲面
9 ベースプレート
10s 垂直集束ミラー素子(本発明)
11s 最新技術に係る検出器
100 分光分析装置
α 入射角
β 回折角
φ 偏向角
φ 前列垂直集束ミラー素子4bの偏向角
φ 後列垂直集束ミラー素子4aの偏向角
ξ sin ξ=W/2 Rによって与えられる角度
ω 垂直に対する垂直集束ミラー素子への中間ビームの入射角
A 長手方向軸
A’1,2 A’1,2=b/2cos(φ1,2/2)によって与えられる距離
1,21,2=A’1,2-h1,2sin(φ1,2/2)によって与えられる距離
B’1,2 B’1,2=b/2sin(φ1,2/2)によって与えられる距離
1,21,2=B’1,2+h1,2cos(φ1,2/2)によって与えられる距離
B’(A)B’(A)=(A/cos(φ/2))sin(φ/2)=Atan(φ/2)によって与えられる距離
図3に示す軸Aに垂直な垂直集束ミラー素子4の長さ(高さ)
d 式(1)に係る焦点曲線からの距離
焦点曲線と垂直集束前列ミラーの偏向面の軸との間の距離
焦点曲線と垂直集束後列ミラーの偏向面の軸との間の距離
Δ dとdとの差であり、前記差は、2つのポリゴングラフ6a、6bの間の距離に対応する
Δs 最新技術に係る光学系の偏向面内の後列垂直集束素子と前列垂直集束素子との間の距離
入射開口と格子中心との間の距離
回折波長λ(β)の焦点と格子中心との距離
DP 分散面
dm 垂直集束ミラー素子の中心厚さ
FC 焦点曲線
1,21,2=ρcyl-1,2(1-cos(arcsin(b/2ρcyl-1,2)))によって与えられる垂直集束ミラー素子の曲率の高さ
Ip 検出器の画素帯域
L 試料からの光
LD 偏向光
N β=0の場合の法線点、法線波長の焦点
O シリンドリカルミラーの軸の中心点と検出器の画素帯域との間のオフセット
ρcyl 曲面8の曲率半径
ρCyl-1 前列垂直集束ミラー素子4bの曲面8の曲率半径
ρCyl-2 後列垂直集束ミラー素子4aの曲面8の曲率半径
格子3の曲率半径
S s=Δ+B’(A2)-dm/cos(φ/2)-Bによって与えられる安全距離
t 焦点曲線からの距離dにおける線幅
W 格子3の照射幅
X 水平軸
Y X軸およびZ軸に垂直な軸
Z 垂直軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8