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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】試料管用のマイクロシステムラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/00 20060101AFI20241031BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20241031BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G09F3/00 Q
G06K19/077 200
G06K19/07 170
G09F3/00 M
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022527858
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020060251
(87)【国際公開番号】W WO2021097100
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】62/934,411
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522186262
【氏名又は名称】フォンダシオン アンスティトゥー パストゥール ド ダカール
(73)【特許権者】
【識別番号】522186273
【氏名又は名称】サル アマドゥ アルファ
(73)【特許権者】
【識別番号】522186284
【氏名又は名称】ジャーニュ シェイク ティディアン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サル アマドゥ アルファ
(72)【発明者】
【氏名】ジャーニュ シェイク ティディアン
(72)【発明者】
【氏名】ンダウ シディー
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028488(JP,A)
【文献】特開2005-125144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0337461(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0025464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G09F 1/00-5/04
G06K 19/07
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料管用の伸縮可能かつ装着可能なマイクロ流体薄膜ラベルであって、該マイクロ流体薄膜ラベルは、前記試料管の外面上に取り付けられるか、又は直接印刷されることが可能であり、該ラベルは、フィルム上に作製された薄膜導電体及び金属(銅)コネクタを備え、前記コネクタ上に、前記試料管を個別に冷却及び加熱する手段と、前記試料管の温度を測定する手段と、前記試料管内の試料の体積を監視する手段と、試料情報を記憶する手段とを備える、マイクロ流体薄膜ラベル。
【請求項2】
前記試料管を個別に冷却及び加熱する前記手段は、その構成要素である前記コネクタ上のp型Sb2Te3膜及びn型Bi2Te3膜を熱共蒸発を介して堆積させることによって作製された熱電マイクロ冷却器であって、この手段が前記試料管外壁と接触するように取り付けられる、熱電マイクロ冷却器である、請求項1に記載のマイクロ流体薄膜ラベル。
【請求項3】
前記試料管を個別に加熱する手段が、温度センサーとして使用できる、正の温度係数(PTC)を有する銅製の抵抗温度検出器(RTD)であり、該抵抗温度検出器(RTD)は、この検出器が前記試料管外壁と接触するように取り付けられ、前記薄膜ラベルは、所望の設定値及び前記RTDセンサーから読み出された温度に基づいて各管の温度を制御するPIDコントローラーを更に備える、請求項2に記載のマイクロ流体薄膜ラベル。
【請求項4】
前記試料管内の前記試料の体積を監視する前記手段は、前記試料管外壁と接触するように取り付けられた一組の薄膜電極ストリップを備える容量性流体レベルセンサーである、請求項3に記載のマイクロ流体薄膜ラベル。
【請求項5】
試料情報を記憶する前記手段は、前記ラベルの表面に印刷された無線周波数識別(RFID)フィルムチップ及びアンテナを使用することによるものである、請求項4に記載のマイクロ流体薄膜ラベル。
【請求項6】
前記マイクロ流体薄ラベルは、前記試料管の前記外面上に取り付けることができ、該ラベルは、フィルム上に作製された薄膜導電体及び銅コネクタを備え、前記コネクタには、温度及び体積感知手段、並びに熱電マイクロ冷却器、オンフィルムRFIDタグ及びPIDコントローラーが追加され、前記試料管を加熱する手段が温度センサーとして使用できる、正の温度係数(PTC)を有する銅製の抵抗温度検出器(RTD)であり、該抵抗温度検出器(RTD)は、この検出器が前記試料管外壁と接触するように取り付けられ、前記熱電マイクロ冷却器は、その構成要素である前記コネクタ上のp型Sb2Te3膜及びn型Bi2Te3膜を熱共蒸着を介して前記フィルム上に堆積され、前記熱電マイクロ冷却器は、前記試料管外壁と接触するように取り付けられ、前記試料管内の前記試料の体積を監視する前記手段は、前記試料管外壁と接触するように取り付けられた一組の薄膜電極ストリップを備える容量性流体レベルセンサーであり、前記PIDコントローラーは、所望の設定値及び前記RTDセンサーから読み出された温度に基づいて各管の温度を制御するために使用される、請求項1に記載のマイクロ流体薄ラベル。
【請求項7】
前記ラベルは、フォトリソグラフィ及びウェットエッチングを使用してフィルム上に作製された薄膜導電体及び銅コネクタを備える、請求項6に記載のマイクロ流体薄ラベル。
【請求項8】
前記試料管の所望の設定温度は、前記試料管の前記RFIDタグに手動でコード化される、請求項6又は7に記載のマイクロ流体薄ラベル。
【請求項9】
前記試料管の前記外面上に取り付けられるか、又は直接印刷された請求項8に記載のマイクロ流体薄ラベルを備える、試験管。
【請求項10】
インテリジェント携帯型搬送装置であって、
a.蓋閉鎖機構を含むハウジングであって、該ハウジングは、試料管を保持するように構成され、製品識別技術を用いて前記試料管を追跡及び監視して、前記試料管が前記装置に追加されるか又は前記装置から取り外されるときに前記試料管を一意に識別する手段を備える、ハウジングと、
b.前記試料管の外面上に取り付けられるか、又は直接印刷された電子メモリラベルに直接電力を供給する電池パックと、
c.前記試料管内の試料とクラウドサーバーとの間のインターフェースとして機能する一体型無線通信電子機器を有するマイクロコントローラー/コンピューターと、
を備え、
該インテリジェント携帯型搬送装置は、請求項8に記載のマイクロ流体薄ラベルを含む試料管を備えることを特徴とし、所与のスロット内に各管を配置すると、前記RFIDタグがスキャンされ、前記設定温度がオンボードのマイクロコントローラー/コンピューターに伝達され、該インテリジェント携帯型搬送装置は、各管TECマイクロ冷却器をそれ自体のPIDコントローラーに接続する代わりに、多重化電子機器を使用して、輸送ボックス内の全ての管が単一の出力ワイヤを共有することを可能にする、インテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項11】
全地球測位システム(GPS)から信号を受信して、前記インテリジェント携帯型搬送装置の位置を決定する全地球測位受信機モジュールを更に備える、請求項10に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項12】
前記インテリジェント携帯型搬送装置内の環境条件を監視する少なくとも1つのセンサーモジュールを更に備える、請求項10又は11に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項13】
前記ハウジングは、RF放射エネルギーを封じ込めるためにRF吸収材料から構築された内壁を更に備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項14】
前記吸収材料は、炭素繊維である、請求項13に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項15】
前記電池パックは、ソーラー充電式電池又はワイヤレス充電式電池又は磁気充電式電池からなる群より選択される、請求項10~14のいずれか一項に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【請求項16】
前記インテリジェント携帯型搬送装置への物理的なアクセスが暗号化され、アクセスが許可された担当者のみに許可される、請求項10~15のいずれか一項に記載のインテリジェント携帯型搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管上に電子ラベルを固定することを可能にするシステムに関する。特に、本発明は、標本の輸送及びバンキングのリアルタイムリモートセンシング及び監視のためのモノのインターネット(IoT)ベースのプラットフォームを指す。本技術は、リモートデジタルインターフェースで監視される相互接続されたスマート収集管及び輸送ボックスに基づいており、試料識別情報、温度、体積、地理的位置特定、密封及びバイオバンキング等の重要なパラメータのリアルタイム試料監視を可能にする。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で知られている複数のインテリジェント携帯型搬送装置が存在しており、これらは、滅菌及び非滅菌の医療用インプラント、生物由来物質、又は輸送中に継続的な監視を必要とする他の材料の一時的な保管又は輸送に有用である。
【0003】
この意味において、流体、材料及び生体組織の輸送及び保存の分野に関する特許文献1には、主に健康分野等に関する生体材料の保存及び輸送の両方には、遵守すべき一連の複雑な手順が含まれ、それが法律及び健康規制によって厳密に管理されることが記載されている。特に、この文献には以下のことが述べられている。
【0004】
「今日では、オペレーターによって行われる前記材料の輸送は、前述のように多くの規則に従う作業であるにもかかわらず、単純な保温若しくは冷却密封容器、又はアイスバー若しくは従来の小型商業用冷蔵庫(特定のものではない)を用いて行われることが、オペレーターに知られている。密封容器については、所望の温度(高温及び低温の両方)を設定することが困難であり、特にその温度を一定に保つことが困難であり、一方、小型商業用冷蔵庫については、輸送が容易で信頼性が高く、温度を調節する必要があり、いずれの場合も、特別な問題が発生することは一目瞭然である。ただし、商業用冷蔵庫は、非常に近似的な温度調節を特徴としており、通常、顕著な熱衝撃がない限り、温度が設定温度に対する変動の影響を受けた場合には情報を提供しないことが知られている。いずれにせよ、冷蔵庫内部の温度に関する情報は与えられておらず、収容された生体材料又は器官が熱衝撃によって影響を受ける原因となり得る冷蔵庫の開放の監視は全く行われていない。」
【0005】
上記の問題を解決するために、特許文献1は、生体材料等を輸送するための装置を開示しており、該装置は、リアルタイムでの温度の正確な内部監視を備え、これは、材料の冷却及び加熱温度を維持するための汎用性、信頼性、及び効率が高いと述べている。かかる装置は、例えばGPSシステム又は適切なシステムを介して、装置の位置のリアルタイム監視及び装置の追跡のための手段を提供している。かかる装置は、装置の開放、かかる開放の持続時間、並びに任意の物質の除去及び挿入を制御及び調節するための手段を提供しており、抽出又は挿入された物質のかかる監視は、タグ等によって実施される。かかる装置は、周囲環境とリアルタイムで相互作用することができ、リアルタイムで制御することができる。かかる装置は、更なる確認のためのデータ記憶手段を提供している。
【0006】
加えて、特許文献2はまた、生体材料等を輸送するための装置を提供しており、該装置は、規制対象製品がインテリジェント携帯型搬送装置に追加されるか、又はそこから除去される際に、規制対象製品を一意に識別するための無線周波数識別(RFID)タグ及びリーダー等の製品識別技術を備えている。特許文献2のインテリジェント携帯型搬送装置の主要かつ非排他的な目的は、輸送中に継続的な監視を必要とする滅菌及び非滅菌の医療用インプラント、生物由来物質、又は他のRFID対応材料の輸送目的のための一時的な保管プロセスとしてのものである。
【0007】
しかしながら、当技術分野で知られているインテリジェント携帯型搬送装置は、いずれも、リモート操作インターフェースからリアルタイムで体積を監視し、温度を監視及び調整し、試料識別情報を提供し、密封及び位置決めすることによって、現場(field)から分析前ステップ及びバイオバンキングステップを確保することができない。かかる装置は、特に低資源環境における疫病調査において、発生を抑えるために有用であり、病原体の早期発見及び同定である。これは、試料を安全かつ確実に収集及び輸送して迅速に処理するための実験室の物流及びロジスティクスが断片的であることによるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017025789号公報
【文献】米国特許出願公開第20130106607号公報
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】平行板フリンジ静電容量法を示す図面である。
図1B】容量性流体レベルセンサー用のカスケード電極の複数のセットを示す図面である。
図2】熱電効果を示す図面であり、温度差の電圧への直接変換及びその逆として理解される。
図3】一体型クラウド接続輸送ボックスを示す図面である。
図4】提案した本発明のラベル付き試験管の概略的な図面である。
図5】薄層ラベルの微細加工プロセスフロー示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、標本の輸送及びバンキングのリアルタイムリモートセンシング及び監視のためのモノのインターネット(IoT)ベースのプラットフォームを開発することを提案する。本技術は、リモートデジタルインターフェースで監視される相互接続されたスマート収集管及び輸送ボックスに基づいており、試料識別情報、温度、体積、地理的位置特定、密封及びバイオバンキング等の重要なパラメータのリアルタイム試料監視を可能にする。
【0011】
現在、低資源環境における疫病調査において、発生を抑えるための最大の課題は、病原体の早期発見及び同定である。これは、試料を安全かつ確実に収集及び輸送して迅速に処理するための実験室の流通及びロジスティクスが断片的であることによるものである。この問題を解決するための本発明の手法は、スマート接続装置を使用することによって、現場から分析前ステップ及びバイオバンキングステップを確保することである。体積、温度、試料識別情報、密封及び位置決めは、リモート操作インターフェースからリアルタイムで監視される。
【0012】
したがって、提案する解決策は、2つの主目的からなる。
【0013】
試料管用の伸縮可能かつ装着可能なマイクロ流体薄膜ラベル(以下、マイクロ流体薄型ラベル)の開発。装着可能な薄膜マイクロ流体技術は、in situ汗代謝産物分析、バイタルサイン監視、及び歩行分析を含むバイオセンシング用途に使用されてきた。同様の技術を、試料管用のステッカーラベルとして使用する。このラベルは、温度(温度を測定する手段、具体的には抵抗温度検出器(RTD)を含む)、試料体積(体積を測定する手段を含む)を測定する一方で、オンチップの集積RFIDタグを介して試料情報を記憶する。さらに、そして最も重要なことに、マイクロ流体ベースのラベルはまた、温度を制御する手段を含む。
【0014】
特に、かかる伸縮可能かつ装着可能なマイクロ流体ラベルは、薄膜ラベル上に作製された一体型の熱電(TEC)冷却器を介して各管を個別に冷却及び加熱することを可能にする。PIDコントローラーを使用して、所望の設定値及びRTDセンサーからの温度読み出しに基づいて各管の温度を制御する。各管の所望の設定温度は、管のRFIDタグに手動でコード化される。
【0015】
一体型クラウド接続輸送ボックスの開発。このボックスの主要な機能は、各管にスロット/コンパートメントを設けることにより試料を物理的に保管することに加えて、試料とクラウドサーバーとの間のインターフェースである。さらに、このボックスは追加の機能も提供する。これらの技術革新は、試料輸送のターンアラウンドタイムを低減し、高品質な試料保存、最適な分取、及び効率的かつ容易なバイオバンク管理を可能にする。
【0016】
より具体的には、輸送ボックスの各管スロット/コンパートメントは、一体型RFIDリーダーを有する。管を所与のスロット内に配置すると、RFIDタグがスキャンされ、設定温度がオンボードのマイクロコントローラー/コンピューターに伝達される。好ましくは、各管TECマイクロ冷却器をそれ自体のPIDコントローラーに接続する代わりに、多重化電子機器を使用して、輸送ボックス内の全ての管が単一の出力ワイヤを共有することを可能にする。
【0017】
各管の温度は、正の温度係数(PTC)を有する銅製の抵抗温度検出器(RTD)を用いて測定される。銅RTDは、薄膜ラベル上に設計され、作製される。電気抵抗は温度に比例するので、記憶済みの較正曲線を使用して、薄膜RTDに小さな電流を流し、電圧を測定することによって、各管の温度を測定することができる。
【0018】
本発明の伸縮可能かつ装着可能なマイクロ流体薄型ラベルは、標準的なマイクロ/ナノ加工技術を用いることによって構築されることに更に留意されたい。特に、薄膜ラベルは、好ましくはカプトン(Kapton)基板のような低コストで容易に入手可能な材料を使用することによって作製され、パッケージングされる。図5に示されるように、薄膜導電体及び金属(銅)コネクタは、フォトリソグラフィ及びウェットエッチングを使用してチップ上に作製され、温度及び体積センサー、並びに熱電マイクロ冷却器及びオンチップRFIDタグが追加される。パッケージングされると、薄膜マイクロ冷却器ラベルはエッペンドルフ(Eppendorf)管の外壁に取り付けられる。薄膜ラベルが試験管に巻きついているため、静電容量方式で容易に試料の液面を測定することができる。
【0019】
マイクロ流体薄型ラベルの微細加工における第1のステップは、TEC接点、体積センサー、及び試料識別コードのために使用される全ての銅センサー及びコネクタを含むフォトマスクを設計及び作製することである。本発明者らは、Pyralux可撓性基板を使用しており、これは、前面及び背面上の2つの銅層によって覆われたカプトン層からなり、前面上にフォトレジスト層が塗布される。マスクは、フォトリソグラフィプロセスで使用され、基板前面上にセンサー及びコネクタがパターニングされる。露光されたフォトレジストは溶液中で現像され、所望のセンサー及びコネクタが、ウェットエッチング及び残りのフォトレジストの剥離を介して前面上に作製される。さらに、本発明者らは、コネクタ上の構成要素の熱共蒸着を介してp型SbTe膜及びn型BiTe膜を堆積させることで、熱電マイクロ冷却器を作製する。
【0020】
したがって、本発明は、試料又は試験管用の伸縮可能かつ装着可能なマイクロ流体薄型ラベルを提供する。かかるラベルは、温度、体積、及び試料情報を局所的かつ個別に(試験管試料ごとに)監視することができ、試料を局所的かつ個別に(試料ごとに)冷却及び/又は加熱することができる。かかる手段は、標準的なマイクロ/ナノ加工技術を用いた薄膜マイクロ流体試料管ラベルに基づいている。かかる薄膜導電体、絶縁体、及び金属コネクタは、スパッタリング及び電子ビーム蒸着等の薄膜堆積技術を用いてチップ上に作製され、温度及び体積センサー、並びに熱電マイクロ冷却器及びオンチップRFIDタグが追加される。パッケージングされると、提案するマイクロ流体ラベルは、試験管の外壁に取り付けることができ、それにより、試験管と密接に接触する。薄膜マイクロ流体ラベルが試験管に巻きついているため、静電容量方式で容易に試料の液面が測定される。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様は、試験管に関する情報を登録及び転送するマイクロ流体薄膜ラベルを指し、前記マイクロ流体薄膜ラベルは、試験管の外面上に取り付けられるか、又は直接印刷されることが可能であり、前記ラベルは、試験管を個別に冷却及び加熱する手段と、試験管の温度を測定する手段と、試験管内の試料の体積を監視する手段と、試料情報を記憶する手段とを備える。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、試験管内の試料の体積を監視する手段は、試料管外壁と接触するように取り付けられた一組の薄膜電極ストリップを備える容量性流体レベルセンサーである。試験管中の流体レベルの非接触(又は無接触)測定を行う複数の方法が存在することに留意されたい。本発明を実施するために非限定的に採用される1つの手法は、図1Aの平行板フリンジ静電容量法である。センサーは、試料管外壁と接触する一組の薄膜電極ストリップからなる。低周波の正弦波電圧信号が駆動電極に印加され、管内の生体試料中にフリンジ電界線が生成される。フリンジ電界の強度は、生体試料の誘電率と直接相関し得る。このように、センサーは、管内部の生体試料のレベル(すなわち、体積)を正確に測定することを可能にするカスケード電極の複数のセット(図1B)からなる。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態において、試験管の温度を制御する手段は、コネクタ上の構成要素の熱共蒸発を介してp型SbTe膜及びn型BiTe膜を堆積することによって作製された熱電マイクロ冷却器である。この意味で、生体試料は通常、氷で満たされたポリスチレンボックス/アイスボックスを使用して輸送されることに留意されたい。かかる低温保管方法は、非常に非効率的で無秩序的であり、個々の試料管を異なる温度で冷却することができない。改善された代替形態として、本発明は、固体状の熱電(TE)冷却器を使用して、個々の生体試料管の低エネルギー標的冷却を可能にする。熱電効果(図2)は、温度差の電圧への直接変換であり、その逆も同様である。熱電冷却器は、電圧が印加されると温度差を生じる。熱電変換の性能指数は、ZT=S2σT/κとして定義され、式中、Tは絶対温度であり、σは電気伝導率であり、κは熱伝導率であり、Sはゼーベック係数(電圧差を温度差で割ったもの(ΔV/ΔT)として定義される)である。
【0024】
電子ビーム(eビーム)蒸着を使用して、SbTeの熱電薄膜(約100nm)を成膜し、試料管ラベル上のモジュールにパターニングする。マイクロ/ナノ加工されたTE冷却器は、輸送ボックス内に配置された電池パックによって個々に電力供給される。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態において、試験管を加熱する手段は、電子メモリラベル上に堆積されたマイクロヒーターによるものである。この意味で、試料管ラベルは、冷却に加えて、生体試料を加熱することもできる。これは、試料管ラベル上に堆積されたマイクロヒーターによって達成される。これらのマイクロヒーターは、ジュール加熱に基づいて作動し、金又は白金薄膜で作製することができる。マイクロヒーターから放散される電力は、ヒーターの電流及び電気抵抗に比例する。後者は、マイクロヒーターの断面積及び長さによって慎重に調整することができる。マイクロヒーターは、eビーム蒸着及びリフトオフプロセスによってラベルの表面上に作製することができる。
【0026】
加熱に加えて、薄膜マイクロヒーターはまた、冷却及び加熱プロセスの両方の間、温度センサーとして使用することができる。これは、ヒーターの抵抗温度依存性(RTD)を利用することによって達成される。各マイクロヒーターは、その電気抵抗が温度の関数として相関するように較正される。センシングモードでは、非常に小さい電流がヒーター(RTD)に供給され、電気抵抗を決定するために電圧が測定される。ヒーターの電気抵抗から、生体試料の温度を推定することができる。
【0027】
本発明の更に別の好ましい実施形態において、試料情報を記憶する手段は、電子メモリラベルの表面に印刷された無線周波数識別(RFID)フィルムチップ及びアンテナを使用することによるものである。無線周波数識別(RFID)薄膜チップ及びアンテナを試料管のラベルの表面に印刷して、ID、試料名、患者情報、温度、電力及び流体レベル等の情報を記憶することができる。チップへの電力は輸送ボックスから供給される。
【0028】
本発明の更に別の好ましい実施形態において、薄層ラベルの微細加工における第1のステップは、TEC接点、体積センサー、及び試料識別コードのために使用される全ての銅センサー及びコネクタを含むフォトマスクを設計及び作製することである。本発明者らは、好ましくは、Pyralux可撓性基板を使用しており、これは、前面及び背面上の2つの銅層によって覆われたカプトン層からなり、前面上にフォトレジスト層が塗布される。マスクは、フォトリソグラフィプロセスで使用され、基板前面上にセンサー及びコネクタがパターニングされる。露光されたフォトレジストは溶液中で現像され、所望のセンサー及びコネクタが、ウェットエッチング及び残りのフォトレジストの剥離を介して前面上に作製される。さらに、本発明者らは、コネクタ上の構成要素の熱共蒸着を介してp型SbTe膜及びn型BiTe膜を堆積させることで、熱電マイクロ冷却器を作製する。
【0029】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、本発明は、マイクロ流体薄型ラベルを指し、前記マイクロ流体薄型ラベルは、試験管の外面上に取り付けることができ、前記ラベルは、好ましくはフォトリソグラフィ及びウェットエッチングを使用してフィルム上に作製された薄膜導電体及び金属(銅)コネクタを備え、コネクタには、温度及び体積感知手段、並びに熱電マイクロ冷却器、オンフィルムRFIDタグ及びPIDコントローラーが追加され、温度センサーは、正の温度係数(PTC)を有する銅製の抵抗温度検出器(RTD)であり、該抵抗温度検出器(RTD)は、この検出器が試料管外壁と接触するように取り付けられ、熱電マイクロ冷却器は、コネクタ上の構成要素の熱共蒸着を介してp型SbTe膜及びn型BiTe膜によってフィルム上に堆積され、前記熱電マイクロ冷却器は、試料管外壁と接触するように取り付けられ、試験管内の試料の体積を監視する手段は、試料管外壁と接触するように取り付けられた一組の薄膜電極ストリップを備える容量性流体レベルセンサーであり、PIDコントローラーは、所望の設定値及びRTDセンサーから読み出された温度に基づいて各管の温度を制御するために使用される。
【0030】
好ましくは、各管の所望の設定温度は、管のRFIDタグに手動でコード化される。
【0031】
本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかの別の好ましい実施形態において、前記ラベルは、一体型クラウド接続輸送ボックスに保管された電池パックから直接電力供給される。
【0032】
本発明の第2の態様は、試験管の外面上に取り付けられるか、又は直接印刷された本発明の第1の態様又はその好ましい実施形態のいずれかのマイクロ流体薄型ラベルを備える試験管を提供する。
【0033】
既に述べたように、本発明の第1の態様のマイクロ流体薄型ラベルは、試料管の外面上に取り付けるか、又は直接印刷することができ、図3に示すような一体型クラウド接続輸送ボックス内に保管された電池パックから直接給電されることに更に留意されたい。このボックスの主要な機能は、試料管を物理的に保管することに加えて、電子機器、電池を収容すること、及び試料とクラウドサーバーとの間のインターフェースとして機能することである。したがって、ボックスは、一体型無線通信電子機器を有する固定された試料ホルダーからなる。試料RFIDタグが読み取られ、ボックスのマイクロコントローラー内に記憶される。試料情報、ロット番号は、ボックスのGPS位置と共に、ウェブブラウザー又はモバイルアプリを介してアクセスされ得るクラウドベースのサーバーにリアルタイムで送信される。試料の加熱及び冷却は局所的に生じ、比較的低い熱負荷を必要とするので、小型のソーラー充電式電池がボックスの主電源として使用される。ボックス内の各試料管スロットには、コネクタ及びリード線が嵌められ、これにより、ボックスと試料管との間のエネルギー及びデータの伝達が可能になる。試料の安全性を確保するために、ボックスへの物理的なアクセスは暗号化され、アクセスは許可された担当者のみに許可される。
【0034】
さらに、既に述べたように、管を所与のスロット内に配置すると、RFIDタグがスキャンされ、設定温度がオンボードのマイクロコントローラー/コンピューターに伝達される。好ましくは、各管TECマイクロ冷却器をそれ自体のPIDコントローラーに接続する代わりに、多重化電子機器を使用して、輸送ボックス内の全ての管が単一の出力ワイヤを共有することを可能にする。
【0035】
したがって、本発明の第3の態様は、インテリジェント携帯型搬送装置又は一体型クラウド接続輸送ボックスを提供し、これは、
a.蓋閉鎖機構を含むハウジングであって、ハウジングは、試験管を保持するように構成され、製品識別技術を用いて前記試験管を追跡及び監視して、前記試験管が装置に追加されるか又は装置から取り外されるときに前記試験管を一意に識別する手段を備える、ハウジングと、
b.試験管の外面上に取り付けられるか、又は直接印刷された電子メモリラベルに直接電力を供給する電池パックと、
c.試験管試料とクラウドサーバーとの間のインターフェースとして機能する一体型無線通信電子機器と、
を備える。
【0036】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態において、製品識別技術は、無線周波数識別(RFID)技術を含む。
【0037】
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態において、インテリジェント携帯型搬送装置は、全地球測位システム(GPS)から信号を受信して、前記インテリジェント携帯型搬送装置の位置を決定する全地球測位受信機モジュールを更に備える。
【0038】
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態において、インテリジェント携帯型搬送装置は、インテリジェント携帯型搬送装置内の環境条件を監視する少なくとも1つのセンサーモジュールを更に備える。
【0039】
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態において、インテリジェント携帯型搬送装置は、RF放射エネルギーを封じ込めるためにRF吸収材料から構築された内壁を更に備え、好ましくは、吸収材料は、炭素繊維である。
【0040】
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態において、電池パックは、ソーラー充電式電池である。
【0041】
本発明の第3の態様の別の好ましい実施形態において、インテリジェント携帯型搬送装置への物理的アクセスは暗号化され、アクセスは許可された担当者のみに許可される。
【0042】
最後に、本発明の第3の態様の更に別の好ましい実施形態において、管を所与のスロット内に配置すると、RFIDタグがスキャンされ、設定温度がオンボードのマイクロコントローラー/コンピューターに伝達され、各管TECマイクロ冷却器をそれ自体のPIDコントローラーに接続する代わりに、多重化電子機器を使用して、輸送ボックス内の全ての管が単一の出力ワイヤを共有することを可能にする。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5