IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】方向調整機構を有するヘッドギア
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022528183
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 NZ2020050152
(87)【国際公開番号】W WO2021096372
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】62/935,539
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513259285
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー、カペルビッチ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、ガレス、シムズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、モンロイ、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ブレア、ライムンド、ダッドソン、マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ロバート、ジェフ、スライト
(72)【発明者】
【氏名】ビディ、ジャイシュクマール、シャー
(72)【発明者】
【氏名】カビン、マニッカム
【審査官】立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158544(WO,A1)
【文献】特表2016-516527(JP,A)
【文献】特表2017-531464(JP,A)
【文献】米国特許第04796338(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
可動摩擦係合部材であって、前記摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、前記アパーチャは、前記ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、それにより、前記フィラメントは、前記方向調整ユニットを通したフィラメント経路を辿り、前記摩擦係合部材は、第1の形態において、前記フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、前記フィラメントに対する係合形態を提供する、可動摩擦係合部材を含み、
前記フィラメントが前記方向調整ユニットを通過するとき、前記フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、前記フィラメントガイドは、それが前記フィラメントに係合する位置において、前記方向調整ユニット内の前記フィラメントの曲げに対して前記フィラメントを拘束するために前記フィラメントに係合するように構成され、
前記摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が前記係合解除形態から前記係合形態に移動するとき、前記摩擦係合部材が、前記フィラメント経路と直交する方向に延びる所定の細長い経路に沿って前記方向調整ユニットに対して移動することができるように、前記方向調整ユニットに取り付けられる、方向調整ユニット。
【請求項2】
複数のフィラメントガイドを含む、請求項1に記載の方向調整ユニット。
【請求項3】
前記摩擦係合部材は、前記フィラメントガイドの対間に配置される、請求項2に記載の方向調整ユニット。
【請求項4】
少なくとも2つの摩擦係合部材を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項5】
記フィラメントガイドは、前記2つの摩擦係合部材の中間の位置に提供される、請求項4に記載の方向調整ユニット。
【請求項6】
複数のフィラメントガイドを備え、前記フィラメントガイドのうちの少なくとも1つは、前記2つの摩擦係合部材の中間の位置に提供される、請求項4に記載の方向調整ユニット。
【請求項7】
摩擦係合部材は、それぞれの枢動軸の周りで可動であり、前記第1の形態は、第1の枢動形態を含み、及び前記第2の形態は、第2の枢動形態を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項8】
各枢動軸は、前記方向調整ユニットに対して可動である、請求項に記載の方向調整ユニット。
【請求項9】
各枢動軸は、他の枢動軸から独立して可動である、請求項に記載の方向調整ユニット。
【請求項10】
ベースを含み、各枢動軸は、前記方向調整ユニットの前記ベースに向かって及びそれから離れて可動である、請求項又はに記載の方向調整ユニット。
【請求項11】
取付けスロットを含み、各摩擦係合部材は、フォロワを含むベース部材を含み、前記取付けスロットは、前記方向調整ユニット上又はその中に前記摩擦係合部材を可動に保持するために、前記フォロワを可動に保持するための保持空間を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項12】
記アパーチャは、前記ベース部材から離間され、請求項11に記載の方向調整ユニット。
【請求項13】
少なくとも2つの取付けスロットを含み、各取付けスロットは、摩擦係合部材の前記ベース部材のそれぞれの部分を可動に保持するための保持空間を有する、請求項11又は12に記載の方向調整ユニット。
【請求項14】
各取付けスロットは、保持されている間、所定の経路に沿った前記取付けスロット内のフォロの並進移動を可能にするような大きさである、請求項1113のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項15】
前記取付けスロットは、前記方向調整ユニットが側面から見られるときに細長い、請求項1114のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項16】
前記取付けスロットは、前記方向調整ユニットが側面から見られるとき、実質的に垂直な方向に延びる、請求項15に記載の方向調整ユニット。
【請求項17】
前記取付けスロットは、少なくとも1つの狭窄セクションを含んで、前記ベース部材が前記狭窄セクションを越えて移動することに抵抗する、請求項1116のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項18】
各取付けスロットは、前記スロット内で前記フォロがその枢動軸の周りで枢動することを可能にするような大きさである、請求項1117のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項19】
摩擦係合部材は、
a.枢動軸を中心とした前記方向調整ユニットに対する枢動移動、及び
b.前記ユニットが前記枢動軸に沿って見られるとき、前記枢動軸から離れて延びる前記所定の細長い経路に沿った、前記枢動軸に直交する方向における前記方向調整ユニットに対する並進移動の両方のために前記方向調整ユニット内に取り付けられる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【請求項20】
前記所定の細長い経路は、前記方向調整ユニットの前記摩擦係合部材及びハウジングの一方における細長い取付けスロットと、前記方向調整ユニットの前記摩擦係合部材及びハウジングの他方におけるフォロワとによって画定され、前記フォロワは、前記取付けスロット内に受け入れられる、請求項19に記載の方向調整ユニット。
【請求項21】
摩擦係合部材が前記フィラメントに対する前記係合解除形態であるとき、前記フィラメントは、前記フィラメントと前記摩擦係合部材との間のその移動に対する第1の抵抗で前記方向調整ユニットを通して移動することができ、各摩擦係合部材が前記フィラメントに対する前記係合形態であるとき、前記フィラメントは、前記フィラメントと前記摩擦係合部材との間のその移動に対する第2の抵抗で前記方向調整ユニットを通して移動することができ、前記第2の抵抗は、前記第1の抵抗よりも大きい、請求項1~20のいずれか一項に記載の方向調整ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸療法システムに関する。特に、本開示は、呼吸マスクシステムの様々な構成要素に関する。
【0002】
本開示は、以下の先行する特許出願、2014年4月24日に出願された国際公開第2014/175752号パンフレット、2015年9月16日に出願された同第2016/043603号パンフレット、2017年3月16日に出願された同第2017/158544号パンフレット、2016年3月15日に出願された同第2017/160166号パンフレット及び2018年3月16日に出願された米国特許出願第62/644002号明細書の開示に関し、それらの出願の内容全体が参照により本明細書に援用される。本出願は、2018年11月5日に出願された米国特許出願第62/755766号明細書、2018年11月5日に出願された同第62/755777号明細書及び2019年5月3日に出願された同第62/842982号明細書並びに2019年11月5日に出願されたPCT/ニュージーランド特許出願公開第2019/050147号明細書の内容全体も参照により援用し、それらの出願のそれぞれの内容全体が参照により本明細書に援用される。本出願は、2019年11月14日に出願された米国特許出願第62/935539号明細書からの優先権を主張し、その内容全体も参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
装着者との間に実質的に気密のシールを提供するマスクは、種々の分野で使用されている(例えば、ガスマスク、ダイビングマスク、呼吸療法マスク)。これらのマスクのいくつかは、マスクを装着者の顔面に固定するために、1つ又は複数のストラップを含むヘッドギアを使用する。
【0004】
呼吸マスクは、多くの呼吸器疾患又は症状のいずれかを患っている人の気道に呼吸療法を提供するために使用される。こうした療法としては、限定されないが、持続気道陽圧(CPAP)療法及び非侵襲的換気(NIV)療法を挙げることができる。
【0005】
CPAP療法は、睡眠中に患者の気道が断続的に塞がり、ある期間にわたり患者が呼吸できなくなる症状である閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するために使用することができる。呼吸の停止、すなわち無呼吸により、患者は、覚醒することになる。反復性の且つ頻繁な無呼吸により、患者は、十分且つ回復性の夜間の睡眠をめったにとれなくなる可能性がある。
【0006】
CPAP療法は、呼吸マスクを介して患者の気道に持続陽気圧の供給を送達することを伴う。持続陽圧は、患者の気道内で添え木として作用し、患者の呼吸及び睡眠が妨げられないように気道を開存位置で固定する。
【0007】
呼吸マスクは、典型的には、患者インタフェース及びヘッドギアを含み、患者インタフェースは、患者の鼻及び/若しくは口内又はその周りに気密シールを形成するシール又はクッションを介して患者の気道に持続陽気圧の供給を送達するように構成される。呼吸マスクは、フルフェイス、鼻、直接鼻、ピロー及び口マスクを含む様々なスタイルで入手可能であり、1つ又は複数の鼻孔、鼻及び/又は口との気密シールを形成する。シール又はクッションは、ヘッドギアによって患者の顔面の適所に保持される。
【0008】
気密シールを維持するため、ヘッドギアは、使用中に患者インタフェースが患者の顔面に対して安定した位置で保持されるように、患者インタフェースに支持を提供しなければならない。こうした呼吸マスクは、NIV及び他の圧力又は流量関連療法を送達するためにも使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様は、こうしたヘッドギアに関連する改善された構成要素、例えばヨークアセンブリ、方向調整ユニット、フィラメント、1つ若しくは複数のストラップの任意の1つ又は複数を提供することができる。
【0010】
本開示の態様は、使用時、フィラメントに対するせん断応力を低減させ、それにより使用中に関連する構成要素に対する摩損を低減させる、改善された方向調整ユニット及び関連するフィラメント設計を提供することができる。こうした改善された方向調整ユニットは、呼吸マスクの一部を形成することができる。
【0011】
いくつかの構成では、これは、方向調整ユニットの摩擦係合部材に、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合形態であるとき、フィラメントの対応する平坦な又は実質的に平坦な部分に係合する摩擦係合部材の少なくとも1つの直線状又は実質的に直線状の部分を形成する、横断面形状を有するアパーチャを提供することによって達成される。
【0012】
いくつかの構成では、「直線状」という表現は、「真っ直ぐ」と同義に呼ぶことができる。
【0013】
本明細書に記載するシステム、方法及び装置は、革新的な態様を有し、それらのいずれも、不可欠であることはないか、又はそれらの望ましい属性を単独で担うものではない。ここで、請求項の範囲を限定することなく、有利な特徴のいくつかについて概説する。
【0014】
本開示の一態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
a)可動摩擦係合部材であって、摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、可動摩擦係合部材
を含み、
b)フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成される、方向調整ユニットが提供される。
【0015】
フィラメントガイドは、方向調整ユニットのフィラメント入口及び/又は出口に提供され得る。
【0016】
フィラメントガイドは、摩擦係合部材のアパーチャに隣接し得る。
【0017】
方向調整ユニットは、複数のフィラメントガイドを含み得る。
【0018】
摩擦係合部材は、フィラメントガイドの対間に配置され得る。
【0019】
方向調整ユニットは、少なくとも2つの摩擦係合部材を含み得る。
【0020】
フィラメントガイドは、2つの摩擦係合部材の中間の位置に提供され得る。
【0021】
その又は各摩擦係合部材のその又は各アパーチャは、横断面において直線状又は実質的に直線状である係合面を形成する空洞を含み得、係合面は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合形態であるとき、フィラメントの平坦な又は実質的に平坦な部分に係合するためのものである。
【0022】
その又は各摩擦係合部材は、それぞれの枢動軸の周りで可動であり得、第1の形態は、第1の枢動形態を含み、及び第2の形態は、第2の枢動形態を含む。
【0023】
枢動軸は、方向調整ユニットに対して可動であり得る。
【0024】
方向調整ユニットは、ベースを含み得、各枢動軸は、方向調整ユニットのベースに向かって及びそれから離れて可動である。
【0025】
各枢動軸は、他の枢動軸から独立して可動であり得る。
【0026】
フィラメントガイドは、使用時にフィラメントが係合する少なくとも1つのガイド面を含み得る。
【0027】
ガイド面は、フィラメントの少なくとも上面に係合するように配置され得る。
【0028】
ガイド面は、フィラメントの少なくとも下面に係合するように配置され得る。
【0029】
ガイド面は、使用時、フィラメントの平坦な又は実質的に平坦な部分に摺動可能に係合するために、横断面において直線状又は実質的に直線状であり得る。
【0030】
方向調整ユニットは、複数のフィラメントガイドを含み得、各フィラメントガイドは、フィラメントを案内し、且つそれに係合するように構成されたガイド面を含み、ガイド面は、ユニットが側面から見られるとき、方向調整ユニットの長手方向軸に沿って整列されている。
【0031】
方向調整ユニットは、複数のフィラメントガイドを含み得、各フィラメントガイドは、フィラメントを案内し、且つそれに係合するように構成されたガイド面を含み、ガイド面は、ユニットが上方から見られるとき、方向調整ユニットの長手方向軸に沿って整列されている。
【0032】
フィラメントガイドは、フィラメントが通過する開口部を含み得る。
【0033】
方向調整ユニットは、少なくとも1つのハウジングを含み得、その又は各摩擦係合部材は、少なくとも1つのハウジングに収容され、且つそれに対して可動である。
【0034】
方向調整ユニットは、少なくとも2つの摩擦係合部材を含み得、摩擦係合部材は、ハウジングに収容され、且つそれに対して可動である。
【0035】
方向調整ユニットは、少なくとも2つの摩擦係合部材と、複数のハウジングとを含み得、各摩擦係合部材は、それぞれのハウジングに収容され、且つそれに対して可動である。
【0036】
その又は各ハウジングは、ベース及び頂部と、ベース及び頂部間の対向する端部とを含み得、その又は各摩擦係合部材のアパーチャは、係合解除形態と係合形態との間において、概ね、対向する端部に向かい及びそれから離れる方向に可動である。
【0037】
フィラメントガイドは、ハウジングの対向する端部間において且つそれから離間されて、ハウジングの中間壁を含み得るか又はそれに提供され得る。
【0038】
フィラメントガイドは、ハウジングの対向する端部の少なくとも1つを含み得るか又はそれに提供され得る。
【0039】
ハウジングの対向する端部は、ハウジングの端壁を含み得る。
【0040】
フィラメントガイドのガイド面は、使用時、フィラメントの平坦な部分又は実質的に平坦な部分に摺動可能に係合するために、横断面において実質的に直線状であり得る。
【0041】
フィラメントは、四角形の断面のものであり得、且つ矩形の断面のものであり得る。
【0042】
方向調整ユニットは、複数のフィラメントガイドを含み得、各フィラメントガイドは、フィラメントを案内し、且つそれに係合するように構成されたガイド面を含み、ガイド面は、ユニットが側面から見られるとき、方向調整ユニットの長手方向軸に沿って整列されている。
【0043】
方向調整ユニットは、複数のフィラメントガイドを含み得、各フィラメントガイドは、フィラメントを案内し、且つそれに係合するように構成されたガイド面を含み、ガイド面は、ユニットが上方から見られるとき、方向調整ユニットの長手方向軸に沿って整列されている。
【0044】
その又は各摩擦係合部材は、ベース部材であって、それを通して枢動軸が延びる、ベース部材を含み得る。
【0045】
方向調整ユニットは、取付けスロットを含み得、取付けスロットは、方向調整ユニット上又はその中に摩擦係合部材を可動に保持するために、フォロワを可動に保持するための保持空間を含む。
【0046】
その又は各摩擦係合部材は、ベース部材を有し得、アパーチャは、ベース部材から離間され得る。
【0047】
ベース部材は、フォロワを含み得る。
【0048】
方向調整ユニットは、少なくとも2つの取付けスロットを含み得、各取付けスロットは、摩擦係合部材のベース部材のそれぞれの部分を可動に保持するための保持空間を有する。
【0049】
各保持空間は、保持されている間、所定の経路に沿った保持空間内のフォロの並進移動を可能にするような大きさであり得る。
【0050】
取付けスロットは、方向調整ユニットが側面から見られるときに細長いことができる。
【0051】
取付けスロットは、方向調整ユニットが側面から見られるとき、実質的に垂直な方向に延び得る。
【0052】
保持空間は、少なくとも1つの狭窄セクションを含んで、ベース部材が前記狭窄セクションを越えて移動することに抵抗し得る。
【0053】
各保持空間は、保持空間内でフォロがその枢動軸の周りで枢動することを可能にするような大きさであり得る。
【0054】
その又は各摩擦係合部材は、
枢動軸を中心とした方向調整ユニットに対する枢動移動、及び
ユニットが枢動軸に沿って見られるとき、枢動軸から離れて延びる所定の細長い経路に沿った、枢動軸に直交する方向における方向調整ユニットに対する並進移動
の両方のために方向調整ユニット内又はその上に取り付けられ得る。したがって、枢動軸自体が所定の細長い経路に沿って移動する。その又は各摩擦係合部材は、同時に枢動軸を中心として枢動することができる。
【0055】
所定の細長い経路は、方向調整ユニットの摩擦係合部材及びハウジングの一方における細長いスロットと、方向調整ユニットの摩擦係合部材及びハウジングの他方におけるフォロワとを含み得、フォロワは、スロット内に受け入れられる。
【0056】
ガイド面は、摩擦係合部材の枢動軸に実質的に平行な方向に見られるとき、平面状の部分を含み得る。
【0057】
ガイド面は、摩擦係合部材の枢動軸に実質的に平行な方向に見られるとき、直線状又は実質的に直線状であり得る。
【0058】
アパーチャは、
a)非円形、
b)非楕円形、
c)四角形、
d)少なくとも1つの直線状部分、
e)少なくとも1つの円弧状部分、
f)摩擦係合部材の枢動軸に実質的に平行な少なくとも1つの部分、
g)三角形
のいずれかであり得るか又はそれを含み得る。
【0059】
アパーチャは、方向調整ユニットが側面から見られるとき、枢動軸からオフセットされ得る。
【0060】
空洞は、枢動軸に実質的に垂直な方向において少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延び得る。
【0061】
係合面は、少なくとも1つの摩擦係合部材の少なくとも1つの内部空洞壁面の一部を形成し得る。
【0062】
空洞は、矩形の細長い物体又は角柱若しくは立方体の形状を有し得る。
【0063】
空洞は、三角形の細長い物体又は角柱若しくは立方体の形状を有し得る。
【0064】
内部空洞側壁面の少なくとも一部は、方向調整ユニットが側面から見られるとき、平坦な又は実質的に平坦なプロファイルを有し得る。
【0065】
空洞は、摩擦係合部材が側面から見られるとき、実質的に直線状であり得る。
【0066】
空洞は、摩擦係合部材が側面から見られるとき、実質的に円弧状であり得る。
【0067】
少なくとも1つの摩擦係合部材は、ベース部材であって、それを通して枢動軸が延びる、ベース部材と、ベース部材から延びる少なくとも1つのアーム部材とを含み得、アパーチャは、アーム部材に提供される。
【0068】
アーム部材は、ベース部材及び枢動軸から離れて延び得る。
【0069】
アーム部材は、複数のアーム部材部分を含み得、少なくとも1つのアーム部材部分は、別のアーム部材部分に対して傾斜される。
【0070】
アーム部材は、その長さの少なくとも一部に沿ってテーパ状であり得る。
【0071】
アーム部材は、その長さの少なくとも一部に沿って矩形の断面のものであり得る。
【0072】
方向調整ユニットは、使用時、少なくとも係合形態において、摩擦係合部材がフィラメントに摩擦係合するように構成され得る。
【0073】
方向調整ユニットは、その又は各摩擦係合部材がフィラメントに対する係合解除形態であるとき、フィラメントが、フィラメントと摩擦係合部材との間のその移動に対する第1の抵抗で方向調整ユニットを通して移動することができ、各摩擦係合部材がフィラメントに対する係合形態であるとき、フィラメントが、フィラメントと摩擦係合部材との間のその移動に対する第2の抵抗で方向調整ユニットを通して移動することができ、第2の抵抗が第1の抵抗よりも大きいように構成され得る。
【0074】
フィラメントガイドは、フィラメントが通過する開口部を含み得、開口部は、フィラメントの少なくとも1つの部分よりも小さく、それにより、フィラメントの前記少なくとも1つの部分は、開口部を通過することができない。
【0075】
少なくとも1つの摩擦係合部材のアパーチャの少なくとも1つの縁の少なくとも一部は、面取りされ得る。
【0076】
アパーチャの縁の全周囲が面取りされ得るか、又はフィラメントと直接係合する縁の部分のみが面取りされ得る。
【0077】
アパーチャは、フィラメントの長手方向軸に沿って見られるとき、3つ以上の側面を含み得る。
【0078】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
a)可動摩擦係合部材であって、摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、それにより、フィラメントは、方向調整ユニットを通したフィラメント経路を辿り、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、可動摩擦係合部材
を含み、
b)フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、それがフィラメントに係合する位置において、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成され、
c)摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に移動するとき、摩擦係合部材が、フィラメント経路と直交する方向に延びる所定の細長い経路に沿って方向調整ユニットに対して移動することができるように、方向調整ユニットに取り付けられる、方向調整ユニットが提供される。
【0079】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
a)少なくとも1つの可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、それにより、フィラメントは、方向調整ユニットを通したフィラメント経路を辿り、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、少なくとも1つの可動摩擦係合部材
を含み、及び
b)フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、それがフィラメントに係合する位置において、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成され、
c)摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に移動するとき、少なくとも2つの自由度に関して方向調整ユニットに対して可動である、方向調整ユニットが提供される。
【0080】
2つの自由度の1つは、摩擦係合部材がフィラメント経路に沿って枢動するような摩擦係合部材の枢動移動を含み得る。
【0081】
2つの自由度の1つは、フィラメント経路と直交する方向に延びる所定の細長い経路に沿った摩擦係合部材の並進移動を含み得る。
【0082】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
上記の記載のいずれかの方向調整ユニット、及び
少なくとも1つのフィラメント
を含むヘッドギアが提供される。
【0083】
ヘッドギアは、
摩擦係合部材のアパーチャが、横断面において直線状又は実質的に直線状である係合面を形成する空洞を含み、及び
フィラメントが、フィラメント本体であって、係合形態であるとき、方向調整ユニットの係合面と接触される、その長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの平坦な又は実質的に平坦な外面を有するフィラメント本体を含む
ように構成され得る。
【0084】
フィラメントは、
a)第1の形状及び/又はサイズを有する本体部分、
b)第2の形状及び/又はサイズを有する端部部分、及び
c)本体部分と端部部分との間に長手方向に提供された遷移部分であって、本体部分の形状及び/又はサイズから、端部部分の形状及び/又はサイズに遷移する形状及び/又はサイズを有する、遷移部分
をさらに含み得る。
【0085】
ヘッドギアは、ヘッドギアを呼吸マスクに接続するように構成されたヨークアセンブリを含み得る。
【0086】
方向調整ユニットは、少なくとも部分的にヨークアセンブリ内に配置され得る。
【0087】
ヨークアセンブリは、中心部分と、中心部分から延びる少なくとも1つの横方向に延びる部分とを含み得、少なくとも1つの横方向に延びる部分は、ヘッドギアの少なくとも1つのストラップに接続するように構成される。
【0088】
ヘッドギアは、ヘッドギアを呼吸マスクに接続するように構成されたフレームを含み得る。
【0089】
方向調整ユニットは、少なくとも部分的にフレーム内に配置され得る。
【0090】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、フィラメントに対する第1の形態と第2の形態との間で可動である、可動摩擦係合部材
を含み、
第1の形態は、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第1の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する予備作動形態を提供し、
第2の形態は、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第2の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する係合形態を提供し、
第2の摩擦力は、第1の摩擦力よりも大きい、方向調整ユニットが提供される。
【0091】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、フィラメントに対する第1の形態と第2の形態との間で可動である、可動摩擦係合部材
を含み、
摩擦係合部材は、両方の形態におけるとき、アパーチャを通したフィラメントの移動に抵抗するためにフィラメントに摩擦係合し、移動に対する抵抗は、各形態について異なる、方向調整ユニットが提供される。
【0092】
第1の形態であるとき、アパーチャを通した中心軸は、ハウジングに対して第1の傾斜角で傾斜され得る。
【0093】
第2の形態であるとき、アパーチャの中心軸は、フィラメントの長手方向軸に対して第2の傾斜角で傾斜され得、第2の傾斜角は、第1の傾斜角よりも大きい。
【0094】
方向調整ユニットは、ハウジングを含み得、摩擦係合部材は、ハウジング内に可動に取り付けられる。
【0095】
ハウジングは、フィラメントに実質的に垂直な垂直ハウジング軸を含み得、アパーチャを通した中心軸は、垂直ハウジング軸に対してある傾斜角で傾斜される。
【0096】
ハウジングは、入口開口部であって、それを通してフィラメントがハウジング内に延びる、入口開口部を含み得、入口開口部は、アパーチャ中心軸と非平行である中心入口開口部軸を含む。
【0097】
中心入口開口部軸は、摩擦係合部材が第1の形態であるとき、アパーチャ中心軸に対してある傾斜角で傾斜され得る。
【0098】
アパーチャ中心軸は、摩擦係合部材が第1の形態であるとき、中心入口開口部軸に対して傾斜され得る。
【0099】
摩擦係合部材は、細長いことができ、且つ長手方向軸を含み、長手方向軸は、第1及び第2の形態の両方におけるとき、ハウジングの垂直軸と非平行である。
【0100】
第1の傾斜角は、0~10°、若しくは0.5~8°、若しくは1~6°であり得るか、又は約3°である。
【0101】
第2の傾斜角は、25°未満であり得る。
【0102】
傾斜角は、第1の形態と第2の形態との間で増加し得る。
【0103】
第2の形態であるときの最大傾斜角は、1~30°若しくは2~25°だけ増加し得るか、又は約6°である。
【0104】
ハウジングは、入口開口部及び摩擦係合部材におけるアパーチャを通したフィラメント経路を含み得、フィラメント経路は、摩擦係合部材が第1の形態であるとき、非直線状であるか又は少なくとも非直線状の部分を含む。
【0105】
入口開口部は、垂直寸法を有し得、及びフィラメントは、垂直寸法を有し、入口開口部の垂直寸法は、フィラメントの垂直寸法より10~50%若しくは15~40%大きいか、又は約25%大きい。
【0106】
本発明の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
ハウジング、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、ハウジング内に可動に取り付けられる、可動摩擦係合部材
を含み
摩擦係合部材は、第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供し、
ハウジングは、第1の形態であるときに摩擦係合部材が当接するハウジング壁を含み、ハウジング壁は、摩擦係合部材の移動を制限し、
摩擦係合部材及びハウジング壁の少なくとも一方は、摩擦係合部材とハウジング壁との間に離散的な接触領域を提供するように構成され、離散的な接触領域は、ハウジング壁の面積よりも小さい、方向調整ユニットが提供される。
【0107】
離散的な接触領域は、ハウジング壁及び/又は摩擦係合部材上の表面形状部によって画定され得る。
【0108】
表面形状部は、摩擦係合部材とハウジング壁との間に離散的な接触領域を提供するように構成された突出部分を含み得る。
【0109】
突出部分は、ハウジング壁の縁を含み得る。
【0110】
ハウジング壁は、縁がハウジング内に突出するように傾斜され得る。
【0111】
縁は、ハウジング内に突出するハウジング壁の下縁であり得る。
【0112】
縁は、ハウジング内に突出するハウジング壁の上縁であり得る。
【0113】
突出部分は、
a)細長いリブ、
b)直線状の形状部、
c)円弧状の形状部、
d)三角形の形状部、
e)ドーム状の形状部
のいずれか1つ又は複数を含む。
【0114】
表面形状部は、離散的な非接触領域を提供するように構成された凹部を含み得、摩擦係合部材とハウジング壁との間の離散的な接触領域は、凹部に隣接する1つ又は複数の領域によって画定され得る。
【0115】
方向調整ユニットは、複数の離散的な接触領域を含み得る。
【0116】
ハウジングは、離散的な接触領域を含み得る。
【0117】
摩擦係合部材は、離散的な接触領域を含み得る。
【0118】
摩擦係合部材は、第1の形態であるとき、フィラメントに対する係合解除形態を提供し得る。
【0119】
摩擦係合部材は、第1の形態であるとき、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第1の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する予備作動形態を提供し得、
第2の形態は、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第2の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する係合形態を提供し、
第2の摩擦力は、第1の摩擦力よりも大きい。
【0120】
摩擦係合部材は、両方の形態におけるとき、アパーチャを通したフィラメントの移動に抵抗するためにフィラメントに摩擦係合し、移動に対する抵抗は、各形態について異なる。
【0121】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
a)ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
b)少なくとも1つの可動摩擦係合部材であって、摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有する少なくとも1つの可動摩擦係合部材を含む方向調整ユニットであって、アパーチャは、フィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供し、摩擦係合部材は、係合形態と係合解除形態との間で可動である、方向調整ユニット
を含み、
c)方向調整ユニットは、フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、それがフィラメントに係合する位置において、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成される、ヘッドギアが提供される。
【0122】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
a)ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
b)方向調整ユニット
を含み、方向調整ユニットは、
c)可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、可動摩擦係合部材
を含み、
d)方向調整ユニットは、フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、それがフィラメントに係合する位置において、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成され、
e)少なくとも1つの摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に移動するとき、摩擦係合部材が、フィラメント経路と直交する方向に延びる所定の細長い経路に沿って方向調整ユニットに対して移動することができるように、方向調整ユニットに取り付けられる、ヘッドギアが提供される。
【0123】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
a)ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
b)方向調整ユニット
を含み、方向調整ユニットは、
c)少なくとも1つの可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、少なくとも1つの可動摩擦係合部材
を含み、
d)方向調整ユニットは、フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドをさらに含み、フィラメントガイドは、それがフィラメントに係合する位置において、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成され、
e)摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に移動するとき、少なくとも2つの自由度に関して可動である、ヘッドギアが提供される。
【0124】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
方向調整ユニット
を含み、方向調整ユニットは、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、フィラメントに対する第1の形態と第2の形態との間で可動である、可動摩擦係合部材
を含み、
第1の形態は、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第1の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する予備作動形態を提供し、
第2の形態は、摩擦係合部材とフィラメントとの間の第2の摩擦力で摩擦係合部材がフィラメントに係合する係合形態を提供し、
第2の摩擦力は、第1の摩擦力よりも大きい、ヘッドギアが提供される。
【0125】
本開示のさらなる態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
方向調整ユニット
を含み、方向調整ユニットは、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、フィラメントに対する第1の形態と第2の形態との間で可動である、可動摩擦係合部材
を含み、
摩擦係合部材は、両方の形態におけるとき、アパーチャを通したフィラメントの移動に抵抗するためにフィラメントに摩擦係合し、移動に対する抵抗は、各形態について異なる、ヘッドギアが提供される。
【0126】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアであって、
ヘッドギアのストラップのフィラメント、及び
方向調整ユニット
を含み、方向調整ユニットは、
ハウジング、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを含み、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、摩擦係合部材は、ハウジング内に可動に取り付けられる、可動摩擦係合部材
を含み、
摩擦係合部材は、第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供し、
ハウジングは、第1の形態であるときに摩擦係合部材が当接するハウジング壁を含み、ハウジング壁は、摩擦係合部材の移動を制限し、
摩擦係合部材及びハウジング壁の少なくとも一方は、摩擦係合部材とハウジング壁との間に離散的な接触領域を提供するように構成され、離散的な接触領域は、ハウジング壁の面積よりも小さい、ヘッドギアが提供される。
【0127】
本開示の別の態様によれば、上記の記載のいずれか1つの方向調整ユニット及びヘッドギアを含む呼吸マスクが提供される。
【0128】
本開示の別の態様によれば、上記の記載の呼吸マスクを含む呼吸療法システムが提供される。
【0129】
本開示の別の態様によれば、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニットであって、
可動摩擦係合部材であって、少なくとも1つの摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成するアパーチャを有し、アパーチャは、ヘッドギアのストラップのフィラメントを、それを通して受け入れるように配置され、それにより、フィラメントは、方向調整ユニットを通したフィラメント経路を辿り、摩擦係合部材は、第1の形態において、フィラメントに対する係合解除形態を提供し、且つ第2の形態において、フィラメントに対する係合形態を提供する、可動摩擦係合部材
を含み、
摩擦係合部材は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に移動するとき、摩擦係合部材が、フィラメント経路に直交する方向に方向調整ユニットに対して移動することができるように、方向調整ユニットに取り付けられる、方向調整ユニットが提供される。
【0130】
摩擦係合部材は、
枢動軸を中心とした方向調整ユニットに対する枢動移動、及び
枢動軸に直交する方向における方向調整ユニットに対する並進移動
の両方のために方向調整ユニットに取り付けられ得る。
【0131】
摩擦係合部材は、摩擦係合部材が、枢動軸を中心として非枢動状態から枢動状態に移動し、且つまた枢動軸に直交する方向に非並進的変位状態から並進的変位状態に移動するように、係合解除形態から係合形態に移動し得る。
【0132】
方向調整ユニットは、フィラメントが方向調整ユニットを通過するとき、フィラメントを案内するように構成されたフィラメントガイドを含み得、フィラメントガイドは、方向調整ユニット内のフィラメントの曲げに対してフィラメントを拘束するためにフィラメントに係合するように構成される。
【0133】
アパーチャは、横断面において直線状又は実質的に直線状である係合面を形成する空洞を画定し得、係合面は、少なくとも1つの摩擦係合部材が係合形態であるとき、フィラメントの平坦な又は実質的に平坦な部分に係合するためのものである。
【0134】
本開示のさらなる態様は、その新規な態様のすべてにおいて考慮されるべきであり、以下の説明から明らかとなるであろう。
【0135】
図面を通して、参照番号を再使用して参照要素間の全体的な対応を示す場合がある。ここで、図面を参照して、本開示の複数の実施形態について例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1a】係合形態における方向調整ユニットの断面図である。
図1b】係合形態における図1aの方向調整ユニットの斜視断面である。
図1c】係合解除形態における図1aの方向調整ユニットの断面図である。
図1d】係合解除形態における図1aの方向調整ユニットの斜視断面である。
図2a】方向調整ユニットとフィラメントとを含む呼吸マスクのためのヘッドギアのヨークアセンブリ(エンドキャップは、示されていない)の種々の構成要素の組立分解図である。
図2b-c】図2aのヨークアセンブリの切欠き図である。
図2d】(エンドキャップ及び任意選択的な第2の方向調整ユニットは、示されていない)部分的組立状態における図2aのヨークアセンブリの図である。
図3a-b】フィラメントと摩擦係合部材アパーチャの側壁との間の関連する接触面を示す正面断面図をそれぞれ示す。
図4】ヨークアセンブリに組み付けられた一実施形態による矩形アパーチャを有する方向調整ユニットを示す断面図である。
図5a-d】一実施形態による方向調整ユニットのハウジングがヨークアセンブリ内に固定して取り付けられることを可能にするハウジングスリーブの異なる図をそれぞれ示す。
図6a】方向調整ユニットの摩擦係合部材のアパーチャを通して収容された矩形断面を有するフィラメントの切欠き斜視図を示し、アパーチャは、矩形断面を有する。
図6b】方向調整ユニットの2つの摩擦係合部材のアパーチャを通して収容された矩形断面を有するフィラメントの切欠き斜視図を示し、アパーチャは、矩形断面を有する。
図6c】摩擦係合部材が枢動するように配置される関連するハウジングが半透明で示される、図6bの構成の代替的な切欠き斜視図を示す。
図6d図6cの構成の代替的な切欠き斜視図を示す。
図7】方向調整ユニットの2つの摩擦係合部材と、関連する摩擦係合部材アパーチャを通して延びるフィラメントとを含む、各摩擦係合部材の枢動軸に対して平行な法線ベクトルを有する平面における、一実施形態による方向調整ユニットの切欠き断面図であり、各摩擦係合部材の正面とアパーチャとの交差部に鋭利な縁が形成される。
図8】方向調整ユニットの2つの摩擦係合部材と、関連する摩擦係合部材アパーチャを通して延びるフィラメントとを含む、各摩擦係合部材の枢動軸に対して平行な法線ベクトルを有する平面における、一実施形態による係合形態の方向調整ユニットの切欠き断面図であり、各摩擦係合部材の前面とアパーチャとの上方交差部に丸みを帯びた縁が提供される。
図9a】方向調整ユニットの2つの摩擦係合部材と、関連する摩擦係合部材アパーチャを通して延びるフィラメントとを含む、各摩擦係合部材の枢動軸に対して平行な法線ベクトルを有する平面における、一実施形態による係合解除形態の方向調整ユニットの切欠き断面図であり、各摩擦係合部材の前面とアパーチャとの上方交差部と、各摩擦係合部材の後面とアパーチャとの下方交差部とに丸みを帯びた縁が提供される。
図9b】ハウジングの一部が示される、図9aの構成の切欠き斜視断面図である。
図9c】フィラメントが除去された図9aの配置の断面破断図である。
図9d】各摩擦係合部材の枢動軸に平行な法線ベクトルを有する平面における、方向調整ユニットの2つの摩擦係合部材と、関連する摩擦係合部材アパーチャを通して延びるフィラメントとを有する、一実施形態による係合形態における方向調整ユニットの断面破断図であり、各摩擦係合部材の前面とアパーチャとの間の上部交差部に丸みを帯びた縁が提供される。
図9e図9dの配置の破断斜視断面図である。
図9f】フィラメントが除去された図9dの配置の断面破断図である。
図10a】ヨークアセンブリに組み付けられた、一実施形態による三角形アパーチャを有する方向調整ユニットを示す断面図である。
図10b図10aの方向調整ユニットの斜視断面図である。
図10c】摩擦係合部材が枢動するように配置される関連するハウジングが半透明で示される、図10aの方向調整ユニットの切欠き斜視図である。
図11】一実施形態による方向調整ユニットの摩擦係合部材の側面図であり、摩擦係合部材は、互いに対して斜めに配置された2つのアーム部分を含む。
図12】一実施形態による方向調整ユニットの摩擦係合部材の断面側面図であり、摩擦係合部材は、単一アーム部分を含む。
図13a-c】単一アーム部分摩擦係合部材のそれぞれの側断面図、正面図及び斜視図を示す。
図14a-b】単一アーム部分摩擦係合部材の側断面図及び斜視図を示す。
図14c】複数の調整可能な寸法を特定する単一アーム部分摩擦係合部材の正面図を示す。
図14d】一実施形態の第1の組の寸法を有する単一アーム部分摩擦係合部材の正面図を示す。
図14e】一実施形態の第2の組の寸法を有する単一アーム部分の正面図を示す。
図15a】垂直軸に対して平行に延びるそれぞれの枢動軸を有する2つの単一アーム部分摩擦係合部材を有する方向調整ユニットの切欠き側面図である。
図15b図15aの方向調整ユニット1800の切欠き上面図である。
図16a】摩擦係合部材の前面、すなわち図における右面とアパーチャとの間の上方交差部に形成された丸みを帯びた縁を有する、一実施形態の2アーム部分摩擦係合部材の側面図を示す。
図16b】可視化を向上させるために断面アパーチャ容積が塗りつぶされている、図16aの2アーム部分摩擦係合部材の代替側面図を示す。
図16c図16a及び図16bの2アーム部分摩擦係合部材の輪郭側面図を示す。
図16d図16a~図16cの2アーム部分摩擦係合部材の側面設計図を示す。
図16e図16a~図16dの2アーム部分摩擦係合部材の正面図である。
図16f図16a~図16eの2アーム部分摩擦係合部材の背面図である。
図16g図16a~図16fの2アーム部分摩擦係合部材の斜視断面図である。
図16h図16a~図16gの2アーム部分摩擦係合部材の斜視図である。
図16i図16a~図16hの2アーム部分摩擦係合部材の輪郭正面斜視図である。
図16j図16a~図16iの2アーム部分摩擦係合部材の輪郭背面斜視図である。
図17a】一実施形態によるフィラメントの斜視図を示す。
図17b図17aのフィラメントの側面図を示す。
図17c】一実施形態によるフィラメントの上面図を示す。
図18a】一実施形態による方向調整ユニットとフィラメントとを含むヨークアセンブリの切欠き側面図を示す。
図18b】フィラメントとヨークアセンブリとの相互作用を強調表示する、図18aの構成の拡大切欠き側面図を示す。
図19】一実施形態によるヘッドギア、シールアセンブリ及びフレームアセンブリを含むマスクアセンブリの斜視図である。
図20-22】それぞれ図19のマスクアセンブリの正面図、側面図及び後面斜視図である。
図23】シールアセンブリ、フレームアセンブリ及びヘッドギアの前部分の分解図である。
図24図23に対応するヘッドギアの1つの形態のさらなる分解図である。
図25】一実施形態による呼吸用マスクの分解斜視図である。
図26a】方向調整ユニットのハウジングの断面破断図である。
図26b図26aのハウジングの破断斜視断面図である。
図26c図26aのハウジングの斜視断面図である。
図26d図26cのものよりも上方から見た図26aのハウジングの斜視断面図である。
図26e図26aのハウジングの正面図である。
図26f図26aのハウジングの後面図である。
図26g】摩擦係合部材を有する図26aのハウジングの上面図である。
図26h】摩擦係合部材を有する図26aのハウジングの底面図である。
図27】係合解除形態から係合形態に移動する、いくつかの又は任意に選択された異なる段階における方向調整ユニットの、枢動及び垂直変位の観点からの向きを示す断面破断図であり、初期段階1~3及び/又は末期段階5~7のいずれかは、省略することができる。
図28a】ヘッドギア、患者インタフェースのヨーク(患者インタフェースのシール/クッションは、示されていないことに留意されたい)及び本開示による方向調整ユニットの側面図であり、ヘッドギアは、伸長され、方向調整ユニットの摩擦係合部材は、作動されている、すなわちヘッドギアの伸長に抵抗している状態である。
図28b】ヨーク及び本開示による方向調整ユニットを含むヘッドギアの側面図であり、ヘッドギアは、後退され、方向調整ユニットの摩擦係合部材は、非作動にされている、すなわちヘッドギアの後退に抵抗していない状態である。
図29】本開示による方向調整ユニットの別の実施形態の断面側面図であり、修正されたハウジング及び修正された摩擦係合部材を有する。
図30a図28のヘッドギアの斜視図である。
図30b図30aの矩形の内側の特徴の拡大断面図であり、図28aのように作動された方向調整ユニットの摩擦係合部材を示す。
図31a図28のヘッドギアの斜視図である。
図31b図31aの矩形の内側の特徴の拡大断面図であり、図28bのように非作動にされた方向調整ユニットの摩擦係合部材を示す。
図32図29のハウジング及び摩擦係合部材の断面側面図であり、予備作動された状態又は図28bのように非作動にされた状態における摩擦係合部材を示す。
図33図29のハウジング及び摩擦係合部材の断面側面図であり、図28aによる、作動状態における摩擦係合部材を示す。
図34a-34b】フィラメントの長手方向軸に沿って見た、図28~33のハウジングの端面図である。
図35】摩擦係合部材が作動状態である図28~34の方向調整ユニットのCTスキャンである。
図36図9aの方向調整ユニットのハウジングの接触面に接触する摩擦係合部材の拡大概略側面図である。
図37図28~35の方向調整ユニットの断面側面図であり、ユニットのさらなる特徴を示す。
図38a-38c】ハウジングの接触面の変形形態を示す、図36に対応する図である。
図39図28~38の方向調整ユニットの断面側面図であり、ユニットのさらなる特徴を示す。
図40a-40e】それぞれ方向調整ユニットハウジングの第1の端面図、第2の端面図、側面図、底面図及び平面図を示す。
図41a-41d】それぞれ図28~40の方向調整ユニットの摩擦調整部材の平面図、正面図、側面図及び後面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0137】
ここで、添付の図を参照して、システム、構成要素並びに組立及び製造方法の実施形態について説明する。図を通して、同様の数字は、同様の又は類似する要素を指す。以下では、いくつかの実施形態、例及び例示を開示するが、当業者であれば、本明細書に記載する本発明が、具体的に開示する実施形態、例及び例示の範囲を超え、本発明の他の使用並びに本発明の明らかな変更形態及び均等物を含み得ることを理解するであろう。本明細書に提示する説明で使用する用語は、本発明のいくつかの具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用されるという理由のみで、いかなる限定的又は制限的な形態でも解釈されるように意図されない。さらに、本発明の実施形態は、いくつかの新規な特徴を含むことができ、いずれの単一の特徴もその望ましい属性を単独で担うものではなく、本明細書に記載する本発明を実施するために不可欠であることもない。
【0138】
以下の説明では、いくつかの用語は、単に参照の目的で使用される場合があり、したがって限定的であるように意図されない。例えば、「上」及び「下」等の用語は、参照する図面における方向を指す。「水平」、「垂直」、「前」、「後」、「左」、「右」、「後部」及び「側部」等の用語は、患者インタフェースに関して、使用者の頭部が直立の向きにある状態で装着時の向きにあることが多い、考察される構成要素又は要素について記載する本文及び関連する図面を参照することによって明らかとなる、一貫しているが、任意の基準系における構成要素又は要素のいくつかの部分の向き及び/又は場所を述べるものである。さらに、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、別個の構成要素について説明するために使用する場合がある。こうした用語は、具体的に上述した語句、それらの派生語及び同様に重要な語句を含む場合がある。
【0139】
別段文脈から明らかに必要でない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む」、「含んでいる」等の語句は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち「限定されないが、含む」という意味で解釈されるべきである。特に、「~することができる」、「~し得る」、「~であり得る」、「~である場合がある」、「例えば」等、本明細書で使用する条件付きの文言は、別段具体的な定めのない限り又は使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、概して、いくつかの実施形態がいくつかの特徴、要素及び/又は状態を含むが、他の実施形態を含まないことを示唆するように意図される。したがって、こうした条件付きの文言は、概して、特徴、要素及び/若しくは状態が何らかの点で1つ若しくは複数の実施形態に必要であること、又は1つ若しくは複数の実施形態が、著者の入力若しくは指示があってもなくても、これらの特徴、要素及び/若しくは状態が任意の特定の実施形態に含まれるか若しくは任意の特定の実施形態で実施されるべきであるか否かを判断する論理を必然的に含むことを示唆するように意図されない。
【0140】
「実質的に」という用語は、列挙した特徴、パラメータ又は値が正確に達成される必要はなく、例えば、公差、測定誤差、測定精度限界及び当業者に既知である他の要素を含む偏差又は変動が、その特徴が提供するように意図された効果を排除しない量で発生する可能性があることを意味する。
【0141】
本明細書では、数値データを範囲形式で表現又は提示する場合がある。こうした範囲形式は、単に便宜上及び簡潔にするために使用され、したがって範囲の上下限として明示的に列挙される数値を含むように柔軟に解釈されるだけでなく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲のすべてを、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように含むようにも解釈されるべきであることが理解されるであろう。例示として、「1~5」という数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値のみを含むように解釈されるべきではなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むようにも解釈されるべきである。したがって、この数値範囲に含まれるのは、2、3及び4等の個々の値と、「1~3」、「2~4」及び「3~5」等の部分範囲とである。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲(例えば、「1より大きい」)に適用され、範囲の広さ又は記載される特徴に関わらず適用されるべきである。
【0142】
「代替的に」という用語は、2つ以上の選択肢の1つの選択を指し、別段文脈において明確な指示がない限り、一度に列挙された選択肢のみ又は列挙された選択肢の1つのみに選択を限定するように意図されない。
【0143】
本開示は、広義には、本出願の本明細書において個々に又はまとまって言及されるか又は示される部品、要素及び特徴を前記部品、要素又は特徴の2つ以上の任意の又はすべての組合せで含むと言うことも可能である。
【0144】
本開示は、呼吸マスクのためのヘッドギアの種々の構成要素に関する。特に、関連する構成要素は、呼吸マスクのためのヘッドギアのための方向調整ユニット、方向調整ユニットに作動的に結合されたフィラメントを収容するストラップ又は呼吸マスクのためのヘッドギアに関連する他の構成要素と組み合わされ得る2つの組合せに関連することができる。
【0145】
方向ロックユニット又は方向抵抗ユニットと呼ばれることもある方向調整ユニットは、ハウジングに対するヘッドギアの位置を調整することを可能にする。いくつかの実施形態における摩擦係合部材は、ワッシャの形態、例えばロックワッシャ又は調整ワッシャであり、それを通してフィラメントが延びるアパーチャを含む。
【0146】
図1a~図1dは、本発明者らの先行する出願である米国特許出願第62/644002号明細書の方向調整ユニット1800の実施形態を示し、ハウジング1810、第1及び第2のロック要素(例えば、摩擦係合部材1820、1822)及びヘッドギアストラップのフィラメント1830を含む。ハウジング1810は、第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842を含み、第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842は、それぞれ第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822を収容するように構成される。摩擦係合部材1820は、摩擦からの摩損に対して少なくとも幾分かの耐性を提供する材料(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、アルミニウム、鋼)から作製することができる。図示する構成では、第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842は、ハウジング1810の内壁1812よって分離される。しかしながら、他の構成では、第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842は、必ずしも物理的に別個の空間ではなく、例えばチャンバの一部であり得る。ハウジング1810は、2つの端壁1814を有し、それらは、内壁1812とともに、フィラメント1830を収容する長尺状の外部開口部1860を有するか、又は換言すればフィラメントを通過させることができる。フィラメント1830は、長尺状の糸、繊維、ひも、ワイヤ又はフィラメント、例えばナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンファイバ又は金属(例えば、アルミニウム、銅、銀)ワイヤであり得る。有利には、摩擦、摩損、擦り切れ及び広がりに対する少なくとも幾分かの耐性を提供する材料を選択することができる。矩形断面(例えば、リボン、バンド又はベルト)又は複数の糸、繊維、ひも、ワイヤ若しくはフィラメント(例えば、ケーブル又は編組線若しくは撚線)を含む他の形状又は幾何学的形状を使用することができる。これらのすべてをフィラメント1830と称することができる。
【0147】
フィラメントの1つ又は複数の材料は、実質的に非弾性であるように選択することができ、したがって、フィラメント1830は、伸長張力下で実質的に同じ長さであり続けることができる。外部ハウジング開口部1860は、互いに実質的に位置合せすることができる。図の右側に示すハウジングの端壁1814の外部開口部1860は、内壁1812及び図の左側に示す端壁1814の外部開口部1860の一方又は両方よりも大きいものであり得る。これにより、ハウジング1810を通したフィラメント1830の経路の操作又はかたよりが可能になる。第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842は、内壁1812と、端壁1814の一方と、側壁1816の対とによってそれぞれ境界が定められ、側壁1816は、ハウジング1810の端壁1814間に延びる。第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842は、ハウジング1810の頂部及び底部の一方又は両方において開放しているように構成される。
【0148】
第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842の各々は、ハウジング1810の対向する側壁1816に位置合せされる摩擦係合部材リテーナ1850の対を有する。摩擦係合部材リテーナ1850の各対は、それぞれの第1のチャンバ1840又は第2のチャンバ1842内に第1の摩擦係合部材1820又は第2の摩擦係合部材1822の一方を枢動保持するように構成される。摩擦係合部材リテーナ1850は、円形ブッシュ1852及び長尺状スロット1854を含み、円形ブッシュ1852は、入口が形成されるように、ハウジング1810の底部と交差する。この入口は、第1の摩擦係合部材1820及び/又は第2の摩擦係合部材1822が摩擦係合部材リテーナ1850内に受け入れられることを可能にするように構成される。スロット1854は、円形ブッシュ1852からハウジング1810の頂部に向かって半径方向に延びることができる。
【0149】
図1a~図1dを参照すると、第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822は、円筒状シャフトを形成するベース1824と、それらのそれぞれのベース1824から延びるアームとをそれぞれ含む。円筒状シャフト1824は、ハウジング1810と実質的に同じ幅Wであり、アームは、第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842内に嵌まるようにより幅が狭い。図示する構成では、アームは、第1のアーム部分1872及び第2のアーム部分1874を含み、第1のアーム部分1872は、円筒状ベース1824から半径方向又は垂直方向に延び、第2のアーム部分1874は、第1のアーム部分1872の端部から鈍角で延びる。このため、第1のアーム部分1872及び第2のアーム部分1874は、概して、2つのそれぞれ異なる方向に延びる。こうした鈍角の2アーム部分又は2つのアーム部分の摩擦係合部材は、本明細書を通して2アーム部分摩擦係合部材と称するものとする。
【0150】
この特定の図示する実施形態では、第1の摩擦係合部材1820のアームの第1のアーム部分1872は、第2の摩擦係合部材1822のアームの第1のアーム部分1872よりも短い。第1の摩擦係合部材1820のアームの第1のアーム部分1872と第2のアーム部分1874との間の角度は、第2の摩擦係合部材1822のアームの対応する角度よりも大きい。これらの角度は、第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822の一方又は両方の第2のアーム部分1874が、摩擦係合部材1820、1822の1つの位置でハウジング1810の対応する壁(例えば、それぞれ内壁1812及び端壁1814)に対して実質的に平坦に位置するように選択することができる。アームの第2のアーム部分1874は、フィラメント1830を受け入れるように構成されたアパーチャ1876を含む。アパーチャ1876は、第2のアーム部分1874を貫く関連する細長い空洞への入口を形成し、これを通してフィラメント1830が延びる。第1及び第2のチャンバ1840、1842は、その中に収容されることになる摩擦係合部材のサイズに応じてサイズが異なり、すなわち第1の摩擦係合部材1820が第2の摩擦係合部材1822よりも小さいため、第1のチャンバ1840は、第2のチャンバ1842よりも小さい。各摩擦係合部材1820、1822は、他方から独立して移動するように構成され得る。
【0151】
したがって、いくつかの構成では、方向調整ユニットの摩擦係合部材は、異なり得る。しかしながら、例えば図9に記載されるような他の構成では、方向調整ユニットの摩擦係合部材は、同一であり得ることを理解されたい。
【0152】
第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822の円筒状ベース1824は、摩擦係合部材リテーナ1850の円形ブッシュ1852の直径と実質的に同じ直径を有し、スナップフィット構成又は締り嵌め構成で円形ブッシュ1852によって受け入れられ且つ保持されるように構成される。スナップフィット構成は、円形ブッシュ1852の入口が円筒状シャフト1824の直径よりも狭いことによって提供される。摩擦係合部材リテーナ1850のスロット1854は、第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822を入口に押し通してハウジング1810に組み付けることができる容易さを向上させるように、入口が開いて屈曲することを可能にするように構成される。第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822は、ハウジング1810の第1のチャンバ1840及び第2のチャンバ1842内に組み付けられると、円筒状ベース1824を通して伸びる枢動軸を中心として前後に枢動することができる。
【0153】
フィラメント1830は、ハウジング1810の外部開口部1860と、第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822のアパーチャ1876とを通過するように構成することができる。
【0154】
ここで、本明細書に開示する実施形態の各々による方向調整ユニットの全体的な動作について、図1a~図1dに示す特定の実施形態を参照して説明する。
【0155】
フィラメント1830に張力を加えることは、第1及び第2の摩擦係合部材1820、1822を、係合位置若しくは形態とも呼ばれるロック位置若しくは形態及び/又は係合解除位置若しくは形態とも呼ばれる開放位置若しくは形態間で前後に枢動させる。図1a及び図1bは、力が(矢印によって示されるように)図の左側に向かう方向にフィラメント1830に加えられる係合形態における方向調整ユニットを示す。いくつかの実施形態では、この形態においてフィラメント1830に加えられる力により、第1及び第2の摩擦係合部材1820、1822は、(図1a及び図1bに示す向きから見たときに)反時計回り方向に枢動され、その結果、方向調整ユニット1800を通したフィラメント1830の経路は、非直線状又は蛇行状であり、且つ/又は例えばフィラメント1830と第1及び第2の摩擦係合部材1820、1822との間の接触面積の増加及び/又は接触圧の増加に起因して、フィラメント1830の移動に抵抗するために増大した摩擦力が適用される。
【0156】
図1c及び図1dは、方向調整ユニットを、(矢印で示すように)図の右側に向かう方向に力がフィラメント1830に加えられる開放、すなわち係合解除又はロック解除形態で示す。この形態では、第1及び第2の摩擦係合部材1820、1822は、アパーチャ1876及び外部開口部1860が実質的に直線状に整列するように、(図1c及び図1dに示す向きで見たときに)時計回り方向に枢動させることができる。これは、フィラメント1830が方向調整ユニット1800を通して実質的に自由に引っ張られるために、滑らかであり、非蛇行状であり、低摩擦の経路及び/又は減少した接触圧を提供する。閉位置及び開位置において第1及び第2の摩擦係合部材1820、1822によってフィラメント1830に及ぼされる摩擦力の異なる量に基づいて、方向調整ユニット1800を通してフィラメント1830を移動させるために必要な力の量を変化させることができる。
【0157】
方向調整ユニット1800の図示する実施形態は、第1の摩擦係合部材1820及び第2の摩擦係合部材1822を利用するが、より少ない又は多い摩擦係合部材を使用することができる。摩擦係合部材の数、フィラメント1830のタイプ、長さ及び厚さ並びに摩擦係合部材1820の幾何学的形状は、係合、閉鎖又は係止形態である間に方向調整ユニット1800に打ち勝つために必要な所定量の力(「降伏力」)と、方向調整部材を係合解除位置/形態になるように開放するか、解除するか又は移動させるために必要な第2の所定量の力(「開放力」)とを達成するために変更することができる設計パラメータである。
【0158】
摩擦係合部材1820は、使用時、関連するヨークアセンブリ20又は他のヘッドギア構成要素の外向きの移動に応答して、係合解除形態(図1c及び図1d)と係合形態(図1a及び図1b)との間で移動することができる。摩擦係合部材1820の係合解除形態と係合形態との間のそのような移動は、ヘッドギアの円周方向の大きさが大きくなることに応答しても起こり得る。
【0159】
摩擦係合部材1820が移動又は枢動することができるとき、伸長方向におけるフィラメント1830の移動は、図1a及び図bに示すように、フィラメント1830と摩擦係合部材1820との摩擦によって制限する(例えば、阻止又は防止する)ことができる。逆に、図1c及び図1dに示すように、摩擦係合部材1820が係合解除形態で向けられる場合、フィラメント1830と摩擦係合部材1820との摩擦は、低減し、伸長方向におけるフィラメント1830の移動は、係合形態と比較してより容易になる。
【0160】
方向調整ユニット1800の動作のさらなる詳細については、上記において且つ本明細書の第1段絡で参照したような本出願人の先行する特許出願に記載されている。
【0161】
いくつかの構成では、方向調整ユニット1800の最小の力は、約2ニュートン~8ニュートンである。いくつかの構成では、2ニュートン~8ニュートンの最小の力を有する2つ以上の方向調整ユニットを組み合わせて、4~16ニュートン又は16~32ニュートンの全体的な最小の力をもたらすことができる。
【0162】
いくつかの構成では、方向調整ユニット1800の最小の力は、約4ニュートン~6ニュートンである。いくつかの構成では、4ニュートン~6ニュートンの最小の力を有する2つ以上の方向調整ユニットを組み合わせて、8ニュートン~12ニュートン又は16~32ニュートンの全体的な最小の力をもたらすことができる。
【0163】
本開示の理解を容易にする目的のため、本明細書を通して以下の定義を使用する。
【0164】
枢動軸に対して平行な法線ベクトルを有する平面は、本明細書を通して側面とも称することができる。
【0165】
枢動軸に対して平行な法線ベクトルを有するとともに、摩擦係合部材の中心線と交差する平面は、本明細書を通して中心面とも称することができる。
【0166】
中心面は、摩擦係合部材の質量中心と交差することができるか、又は摩擦係合部材の質量中心に対して横方向にオフセットして提供することができる。
【0167】
中心線は、摩擦係合部材を通して延びる線であり、それに沿って、アパーチャは、少なくとも部分的に対称である。
【0168】
図2a~図2dは、本開示の一実施形態による呼吸マスクのためのヘッドギアのヨークアセンブリ20の異なる図を示す。
【0169】
図2aは、呼吸マスクのためのヘッドギアのヨークアセンブリ20(エンドキャップは、示されていない)の種々の構成要素の分解図である。ヨークアセンブリ20は、前部材21a及び後部材21bを含むヨークハウジング21を含む。前部材21aと後部材21bとは、ヨークハウジング21内に方向調整ユニットを固定するために締り嵌めで永久的に接続される。ヨークハウジング内には、フィラメント分割インサート22が配置されるか、又は代替的に、インサートが不要であるように、フィラメント分割器がヨークハウジングと一体化され得る。
【0170】
フィラメント分割インサート22の目的は、ヨークアセンブリ20の方向調整ユニットに対する適所にフィラメントを誘導することである。
【0171】
フィラメント分割インサート22は、第1のフィラメント1830を摺動可能に収容する第1のガイドチャネル221を含む。第1のガイドチャネル221は、フィラメント分割インサート22の第1の端部に配置された第1の開口部を有する。第1のガイドチャネル221の第1の開口部は、フィラメント分割インサート22の第1の垂直レベルに配置される。第1のガイドチャネル221は、フィラメント分割インサート22の第2の端部に配置された第2の開口部をさらに含む。第1のガイドチャネル221の第2の開口部は、フィラメント分割インサート22の第2の垂直レベルに配置することができる。第1の垂直レベル及び第2の垂直レベルは、同じ垂直レベルに関することができる。第1の垂直レベルは、第2の垂直レベルと異なり得る。いくつかの構成では、使用時、第1の垂直レベルは、第2の垂直レベルよりも上方又は下方であり得る。
【0172】
ヨークアセンブリ20は、図1a~図1dを参照して示すもの等、方向調整ユニット1800をさらに含む。方向調整ユニット1800は、ハウジング1810と、ハウジング1810に枢動軸を中心として枢動するように配置された少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822とを含む。少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822は、使用時、フィラメント1830を収容する、それを通して延びる空洞を画定するアパーチャ1876を有する。少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822は、フィラメント1830に関して第1の枢動形態における係合解除形態を提供する。少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822は、フィラメント1830に関して第2の枢動形態における係合形態をさらに提供する。
【0173】
図2b及び図2cは、図2aのヨークアセンブリ20の切欠き図である。図2bでは、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822のアパーチャが、フィラメント1830及びフィラメント分割インサート22とどのように作動的に関連するかを示すために、方向調整ユニットハウジング1810が取り除かれている一方、図2cは、使用時に摩擦係合部材1820、1822が枢動可能に配置されるハウジング1810を示す。いくつかの実施形態において、別個のハウジング構成要素を有することが不要であるが、代わりにヨーク自体が少なくとも1つの摩擦係合部材のためのハウジングを提供できることも認識されたい。図2dは、部分的に組み立てられた状態における(エンドキャップ及び任意選択的な第2の方向調整ユニットは、示されていない)図2aのヨークアセンブリ20の図である。
【0174】
図2a~図2dを参照すると、アパーチャ1876又は前記アパーチャによって形成される空洞は、横断面において、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822が係合形態であるとき、フィラメント1830の対応する平坦な又は実質的に平坦な部分又は外面に係合する、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の少なくとも1つの直線状の又は実質的に直線状の部分を形成する。いくつかの構成では、フィラメントの対応する平坦な又は実質的に平坦な部分又は外面は、横断面において、係合面の直線状の又は実質的に直線状の部分に対応する直線状の又は実質的に直線状の部分を有する。
【0175】
ここで、「横」断面とは、アパーチャ境界全体を観察することが可能な断面を意味する。横断面は、正面図の平面に対して平行であり得る。
【0176】
以下でさらに説明するように、アパーチャは、摩擦係合部材を通して延びる空洞を形成する。いくつかの構成では、空洞は、中心軸に沿って延びる。このため、「横断面」は、空洞及び/又はアパーチャの中心軸又は延在部分と交差する任意の断面も意味することができる。いくつかの構成では、横断面は、中心軸に対して垂直である。他の構成では、横断面は、中心軸に対して角度をなして配置することができる。
【0177】
「直線状」という表現は、本開示を通して「真っ直ぐ」とも称され得ることも理解されるべきである。それぞれの嵌合する直線状の若しくは平坦な面又は領域を有するフィラメント設計及び対応する摩擦係合部材アパーチャにより、使用時、フィラメントに作用するせん断力が低減すると考えられる。
【0178】
本発明者らは、丸い形状、例えば円形断面を有するフィラメントが、使用時、丸いフィラメントを包囲する幾分より大きいサイズの対応する丸いアパーチャを有する摩擦係合部材に作動的に結合されると、キンク又は永久的な変形の形態でフィラメントに損傷をもたらす、機構の自然の動作によって生成される負荷に耐えることができない可能性があることが分かった。この理由は、高い局所応力点が、摩擦係合部材とフィラメントとの接触点においてフィラメントに変形をもたらすことであり得る。これにより、丸いフィラメントは、断面の形状を卵形状に変えることにより永久的に変形され、したがってフィラメントが機構を通して自由に戻ることを阻止される可能性がある。
【0179】
使用時にフィラメントに作用する応力(σ)は、以下の応力式:
σ=/A
を使用して定義することができ、式中、Fは、関連する力に関し、Aは、接触面の面積に関する。接触面の面積が増大すると、任意の所与の力に対する応力が低減することになる。
【0180】
丸い又は円形フィラメントと、わずかにより大きい丸い又は円形アパーチャとの接触面の面積は、比較的小さく、接触面領域における局所応力は、比較的大きくなる。
【0181】
本出願人は、フィラメント及びアパーチャ(及び/又はアパーチャにより摩擦係合部材を通して形成された空洞の関連する内部空洞側壁面)の形状を、フィラメントのそれぞれの平坦な又は実質的に平坦な部分が、摩擦係合部材の係合面の対応する横断面の直線状の又は実質的に直線状の部分に係合するように変更することにより、接触面の面積の増大を達成し得ることが分かった。
【0182】
係合面は、アパーチャの内壁若しくは内面又はアパーチャによって形成される空洞の内部空洞面を含むことができる。
【0183】
係合面の第1の横断面の第1の横断面の直線状の又は実質的に直線状の部分と、係合面の第2の横断面の少なくとも1つの第2の横断面の直線状の又は実質的に直線状の部分とは、合わせて、少なくとも1つの平坦な又は本質的に平坦な係合面又は領域を形成することができる。
【0184】
係合面の横断面の直線状の又は本質的に直線状の部分は、フィラメントとの相互接触面領域を拡張することができ、それにより関連する接触面にわたってより均一に力が分散される。
【0185】
こうした設計により、フィラメントが摩擦係合部材の内部空洞壁面に係合するとき、係合又は接触面は、平坦であり、著しくより広い面積にわたって均一な圧力を与えることを確実にすることができる。これらの平坦面が互いに係合することにより、係合のレベルが繰返し可能且つより一貫したものとなり、それにより、より一貫したレベルの摩擦が方向調整ユニットに供給されることになる。さらに、接触面を増大させることにより、フィラメントに加えられる応力が最小限になり、予期される寿命サイクル中にフィラメントに対する永久的な損傷を防止することができる。
【0186】
図3a及び図3bは、フィラメント1830と、摩擦係合部材アパーチャ1876の側壁との間の関連する接触面を示す正面断面図をそれぞれ示す。図3aの例では、フィラメント及び摩擦係合部材アパーチャ1876の両方が横断面において矩形であり、図3bでは、フィラメント及び摩擦係合部材アパーチャは、本発明者らによる先行する開示のように、横断面が円形である。それぞれの接触点は、矢印によって概して特定される。図3aから見えるように、矩形フィラメントを組み込むことにより、重なる半径のわずかな部分のみが互いに接触する円形のフィラメント及びアパーチャとは対照的に、フィラメントの全表面積の著しくより大きい割合が摩擦係合部材アパーチャの表面と接触し、フィラメントにおける応力が著しく低下する。この接触面積の増大により、同じ力が加えられた場合にフィラメントにおいて発生する応力が著しく低下する。
【0187】
フィラメントと摩擦係合部材との接触面は、それらが互いに垂直であるとともに、摩擦係合部材が枢動するときに完全に係合することができる場合、最高の機械的効率で機能する。
【0188】
上述したように、図1a~図1dを参照すると、各フィラメントは、係合形態において、各摩擦係合部材の少なくとも2つの面、例えば内部空洞壁面、すなわち摩擦係合部材アパーチャ1876によって形成された空洞の上方前縁及び摩擦係合部材アパーチャ1876によって形成された空洞の下方後縁と接触するように構成される。
【0189】
いくつかの構成では、例えば図16e及び図16fを参照すると、摩擦係合部材アパーチャ1876は、正面図において、すなわち少なくとも1つの摩擦係合部材1820の正面において、丸みがない、非円形、非楕円形又は非卵形である。
【0190】
いくつかの構成では、摩擦係合部材1820の係合面の少なくとも1つの横断面の直線状の又は実質的に直線状の部分は、枢動軸に対して平行な若しくは実質的に平行であり、且つ/又はフィラメント1830の長手方向軸に対して実質的に垂直な横軸又は横方向軸に沿って直線状である。
【0191】
いくつかの構成では、摩擦係合部材アパーチャ1876は、枢動軸に対してオフセットして提供され、枢動軸に対して垂直な成分を有する軸に沿って少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822を通して延びることができる。
【0192】
いくつかの構成では、図2a~図2d、図3a~図3b、図4図6a~図6d、図13a~図13c、図14a~図14b、図16a~図16jを参照して示すように、アパーチャは、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の正面、例えば前面において矩形である。
【0193】
いくつかの構成では、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の前面は、少なくとも1つの摩擦係合部材の第1のアーム部分又は第2のアーム部分の外面に対して平行な平面において形成することができる。
【0194】
いくつかの構成では、矩形アパーチャ1876の側部辺縁は、枢動軸に対して平行又は実質的に平行であり得る。
【0195】
いくつかの構成において、アパーチャ1876は、枢動軸及び枢動軸に直角な長手方向軸に平行な平面において矩形の横断面を有する。
【0196】
いくつかの構成において、アパーチャ1876は、少なくとも1つの摩擦係合部材の第1のアーム部分又は第2のアーム部分の表面に形成された前面に平行な平面において矩形の横断面を有する。
【0197】
図4は、本開示の一実施形態による、横断面における、矩形アパーチャ1876を有する方向調整ユニット1800を示す正面断面図である。この図では、方向調整ユニット1800は、前部材21a及び後部材21bを含むヨークハウジング21に組み付けられる。方向調整ユニット1800の後方にフィラメント分割インサート22が示されている。図4では、任意選択的なハウジングスリーブ1899は、ヨークハウジング21内で方向調整ユニット1800を配置及び位置決めするように示されている。ハウジングスリーブ1899は、異なるサイズ又は形状のヨークアセンブリ設計の同じタイプ又は形状の方向調整ユニットを使用する可能性を可能にするように、いくつかの状況において好適であり得ることが理解されるべきである。しかしながら、いくつかの構成では、方向調整ユニットハウジング1810は、任意選択的なハウジングスリーブ1899の必要なしに、ヨークハウジング21によって形成された空洞内に確実に嵌まるような形状である。
【0198】
図5a~図5cは、それぞれ一実施形態による方向調整ユニットのハウジングがヨークアセンブリ20内に確実に取り付けられることを可能にするハウジングスリーブ1899の異なる図を示す。
【0199】
図6aは、方向調整ユニット1800の摩擦係合部材1820、1822のアパーチャ1876を通して収容される、矩形断面を有するフィラメント1830の切欠き斜視図を示し、そこでは、アパーチャ1876は、矩形フィラメント1830を摺動可能に受け入れるように矩形断面を有する。
【0200】
図6bは、方向調整ユニット1800の摩擦係合部材1820、1822の対のアパーチャ1876を通して収容される、矩形断面を有するフィラメント1830の切欠き斜視図を示し、そこでは、アパーチャ1876は、矩形断面を有する。
【0201】
図6cは、図6bの配置の代替破断斜視図を示し、摩擦係合部材1820、1822がスロット又は保持空間84を介して摺動可能且つ枢動可能に配置される関連する方向調整ユニットハウジング1810が半透明に示されている。図6dは、図6cの配置の代替破断斜視図を示す。各スロット84は、摩擦係合部材1820、1822が、使用中に移動することができる一方、枢動軸を中心として依然として枢動することが可能である所定の細長い経路を画定するように、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸から離れて延びる垂直方向に細長い。換言すれば、枢動軸は、摩擦係合部材1820、1822が枢動軸を中心として枢動する一方、それ自体、最初の枢動軸位置から別の枢動軸位置まで所定の細長い経路に沿って移動することができる。したがって、各摩擦係合部材1820、1822は、最初の枢動軸位置から第2の枢動軸位置に並進的に離れて移動することができるように構成される。所定の細長い経路は、この例では、ハウジング1810のベースから離れて、概してハウジング1810の頂部に向かって延びる。したがって、各摩擦係合部材1820、1822は、この取付け配置により、少なくとも2つの自由度に関して - この例では、枢動軸を中心として枢動的に且つ枢動軸から並進的に離れて - 移動することができるように構成される。
【0202】
本明細書に記載される実施例では、スロット84は、ハウジング1810に形成され、摩擦係合部材1820、1822は、スロット84に受け入れられるフォロを含む。この例では、摩擦係合部材1820、1822の外側に突出したベース部材が各フォロワを形成する。代替実施形態では、スロットを摩擦係合部材1820、1822に提供することができ、このとき、フォロは、例えば、ハウジング1810の壁から外側に突出する突出部としてハウジングに提供される。
【0203】
図7図8並びに図9d及び図9eは、係合形態における、すなわちフィラメント1830及びそれぞれの摩擦係合部材1820、1822が摩擦面接触するときの方向調整ユニット1800のそれぞれの切欠き図を示す。
【0204】
上述したように、図1a~図1dを参照すると、各フィラメント1830は、係合形態では、各摩擦係合部材の少なくとも2つの面、例えば内部空洞壁面と接触する可能性がある。これらの内部空洞壁面E、81、82は、図7図8及び図9a~図9fに明確に示されている。
【0205】
図7は、本開示の一実施形態による、方向調整ユニット1800と関連するフィラメント1830との断面切欠き側面図(すなわち各摩擦係合部材1820の枢動軸に対して垂直な平面における図)である。図7から容易に分からないが、アパーチャは、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の少なくとも1つの直線状の若しくは実質的に直線状の又は非弓形の部分を形成する横断面形状を有する。それに応じて、フィラメント1830は、対応する横断面の平坦な又は実質的に平坦な部分を有する。円形の又は円筒状のフィラメント及びアパーチャ横断面と比較すると、上で説明したように使用時、フィラメント1830と摩擦係合部材1820、1822の係合面との接触面は、増大し、それによりフィラメント1830に対する応力が低減する。この特定の実施形態では、アパーチャ1876は、各摩擦係合部材1820、1822の正面とアパーチャ1876との交差部において鋭利な縁を形成する。摩擦係合部材1820、1822の断面は、フィラメント1830が、摩擦係合部材1820、1822と摩擦係合部材ハウジング1810との間に形成されたものの経路を通して引っ張られるとき、フィラメント1830と摩擦係合部材1820、1822との間で発生する相互作用を示す。
【0206】
摩擦係合部材1820、1822の正面と摩擦係合部材1820、1822を通した矩形アパーチャ1876との交差部に形成された鋭利な縁(E)は、フィラメント1830を干渉する可能性があり、高い応力にさらされる接触点は、状況により、例えば鋭利な縁とフィラメント面との接触に起因して発生する高レベルの摩滅により、永久的に損傷を受ける可能性がある。
【0207】
フィラメント1830に対する局所応力をさらに軽減するために、且つ使用時にフィラメント1830及び/又は摩擦係合部材1820、1822に対する損傷又は摩損をさらに低減させるか又は防止するように、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアパーチャ縁に丸み、面取り又はフィレットが付けられる。
【0208】
このため、いくつかの実施形態によれば、アパーチャは、前方面であり得る、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の正面において、丸みを帯びた縁を形成する。
【0209】
図9a~図9fは、一実施形態によるこのような丸みを帯びたアパーチャ縁をそれぞれ含む摩擦係合部材1820、1822の対を示す。図9dは、図7に対応する断面側面図を示し、各摩擦係合部材1820、1822の前面とアパーチャ1876との間の上部交差部に形成される上部前部アパーチャ縁81は、丸みを帯びている。ここで、「前」及び「後」という表現は、係合解除形態から係合形態に移動するときのフィラメント移動方向を示す矢印A(図7を参照されたい)の前後方向を基準として解釈されるべきものであり、「前」は、これらの図の右側に向かい、「後」は、左側に向かう。
【0210】
図8は、摩擦係合部材アパーチャ1820、1822の上方前縁81に丸みを付けることが、フィラメント1830との相互作用に与える影響を示す。この特定の実施形態では、各摩擦係合部材アパーチャ1876の下方後縁82は、フィラメント1830に対して好ましくない方向に干渉する可能性がある鋭利な縁を維持する。しかしながら、本発明の開発段階中、この下方後アパーチャ縁82がフィラメントの摩損及び損傷に対して与える影響は、上方前縁81が与える影響よりも低いことが分かった。このため、上方前アパーチャ縁81に丸みを付けることのみで、フィラメント1830の予測される寿命を依然として増大させながら、より費用効果の高い解決法を提供することができる。しかしながら、上方前縁81及び下方後縁82の両方、すなわちアパーチャ1876によって形成される空洞の直径方向反対側の部分の縁に丸みを付け得ることが考えられる。
【0211】
図9a~図9fの実施形態では、前部上部アパーチャ縁と後部下部アパーチャ縁との両方が丸みを帯び、ハウジング1810の一部が同様に示される。
【0212】
図9a~図9cは、係合解除形態における方向調整ユニット1800のそれぞれの破断図を示す一方、図9d~図9fは、係合形態における方向調整ユニット1800のそれぞれの破断図を示す。
【0213】
図9bは、図9aの構成の切欠き斜視断面図である。図9d及び図9eは、矩形フィラメント1830と摩擦係合部材1820、1822との相互作用を示し、そこでは、摩擦係合部材1820、1822は、係合形態であり、フィラメント1830は、各摩擦係合部材アパーチャの上方前縁81及び下方後縁82と接触して、各摩擦係合部材1820、1822に対して2つの接触エリア、面又は領域を生成し、その結果、フィラメント1830と2つの摩擦係合部材1820、1822との間に合計4つの接触エリア、面又は領域がある。丸みを帯びた縁81、82は、それらの長さに沿って一定の半径を有し得る。
【0214】
いくつかの構成では、丸みを帯びた縁は、摩擦係合部材の枢動軸に平行である曲率軸に対して曲率を有する。丸みを帯びた縁81、82は、非円形であるか又は一定の半径を有さないフィレットが形成されるように、曲率軸周りの湾曲した断面プロファイルを有し得る。
【0215】
図9a~図9fの実施形態は、摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間の相互作用中に高い応力の局所点を除去するために、丸みを帯びた上部及び下部接触縁を有する摩擦係合部材アパーチャの理想的断面プロファイルを示すと言うことができる。
【0216】
別の実施形態では、アパーチャ1876は、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の正面において三角形であり、これは、横断面が三角形であることを意味する。三角形アパーチャ1876は、上述した矩形アパーチャと同様に、横断面において、少なくとも1つの直線状の又は実質的に直線状の部分を有する、摩擦係合部材の係合面を形成する。より詳細には、三角形アパーチャ1876は、横断面において、各々が関連する三角形の側壁を表す、少なくとも3つの直線状の若しくは実質的に直線状の又は非弓形の部分を形成する。したがって、三角形アパーチャ1876は、(横断面が)三角形のフィラメント1830とともに使用される場合、使用時、フィラメント1830に対する応力を低減させる上述した増大した表面接触面積を提供する。
【0217】
したがって、アパーチャ1876は、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸及び枢動軸に対して法線方向の長手方向軸に対して平行な平面において、三角形横断面を有することができる。
【0218】
いくつかの構成では、三角形アパーチャの側面は、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸に対して平行又は実質的に平行である。
【0219】
図10aを参照してこうした構成を示す。図10aは、一実施形態による三角形アパーチャ1876を有する方向調整ユニットを示す、図4と同様の横断面図である。図10bは、図10aの方向調整ユニットの横断面組立分解斜視図である。図10cは、図9の方向調整ユニットの代替的な切欠き斜視図であり、そこでは、摩擦係合部材1820、1822が枢動するように配置される関連するハウジング1810が半透明で示されている。
【0220】
図10a~図10cを参照して示すように、三角形アパーチャは、枢動軸に対して平行であるか又は実質的に平行である側面よりも、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸の近くに配置された頂点を有する。換言すれば、三角形アパーチャの頂点は、枢動軸を指す。
【0221】
いくつかの構成では、三角形アパーチャは、断面アパーチャ形状が対称的に提供される中心軸に関連して、他の任意の角度向きで配置することができる。換言すれば、三角形アパーチャは、フィラメント1830の長手方向軸を中心として回転した任意の所望の向きに向けることができる。
【0222】
いくつかの構成では、アパーチャは、5つ以上の辺、例えば5~12の辺を有する多角形横断面を有することができる。ここでは、アパーチャは、横断面が多角形を形成する。多角形横断面は、規則的である(すなわち多角形のすべての辺の長さが等しく且つすべての内角が等しい)か、又は不規則である(すなわち規則的でない任意の多角形)か、又は凹状である(すなわち180度を超える少なくとも1つの内角を有する)か、又は凸状であり得る(すなわち180度を超える内角を有しない)。
【0223】
一実施形態では、アパーチャ1876は、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸に対して垂直な又は実質的に垂直な少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822を通して延びる。
【0224】
いくつかの構成では、アパーチャ1876は、枢動軸に対して実質的に垂直である、すなわちフィラメント1830の長手方向軸と実質的に位置合せされ、摩擦係合部材1820、1822の前面から延びる、中心アパーチャ軸を中心として対称的に、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822を通して延びることができる。したがって、アパーチャ1876は、摩擦係合部材1820、1822を通して延びるフィラメント係合空洞又はボアへの入口を画定する。空洞又はボアは、1つ又は複数の直線状の又は湾曲した部分を含むことができる。いくつかの構成では、空洞又はボアは、その長さに沿って実質的に直線状である。いくつかの構成では、空洞又はボアは、湾曲するか若しくは弓形であるか、又はその長さに沿って少なくとも1つの湾曲した若しくは弓形の部分を有する。
【0225】
いくつかの構成では、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822を通して延びるアパーチャは、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の少なくとも1つの内部空洞壁面によって画定された空洞又はボアを形成する。
【0226】
図4図10a、図13b、図14c~図14e、図16eに示すように、いくつかの構成では、少なくとも1つの内部空洞壁面は、摩擦係合部材1820、1822の前面と摩擦係合部材1820、1822の後面との間の空洞又はボアの長さ又は長さの一部に沿って維持される直線状又は実質的に直線状又は非円弧状のプロファイル又は部分を有する。
【0227】
任意の3つの直交する基準軸に関して、少なくとも1つの内部空洞壁面は、前記基準軸の1つに沿った直線状又は実質的に直線状の部分又はプロファイルを有する一方、残りの2つの直交する基準軸を基準にして非直線状であり得る。
【0228】
アパーチャ1876が矩形の横断面を有するいくつかの構成では、空洞又はボアは、立方体又は矩形の角柱である。
【0229】
アパーチャ1876が三角形の横断面を有するいくつかの構成では、空洞又はボアは、三角形の細長い物体又は角柱の形状を有する。
【0230】
以下では、摩擦係合部材1820、1822についてさらに記載する。
【0231】
いくつかの構成では、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822は、ベース部材1824であって、それを通して枢動軸が延びる、ベース部材1824と、ベース部材1824から離れて延びるアームとを有する。少なくとも第1のアーム部分1872は、ベース部材1824から枢動軸に垂直な方向に延びる。この例におけるベース部材1824は、摩擦係合部材1820、1822から外側に突出し、ハウジング1810のスロット84に受け入れられるフォロワを形成する少なくとも1つの突出部分を含む。各ベース部材1824は、そのようなフォロの対を形成し得る。
【0232】
いくつかの構成では、少なくとも1つの摩擦係合部材は、枢動軸から離れて第1のアーム部分1872の端部から延びる第2のアーム部分1820を含み、第2のアーム部分1820は、アームがその長さに沿って曲がるように第1のアーム部分1872に対して傾斜される。このような摩擦係合部材は、図1a~図1d、図2a、図6a~図9b、図10b~図10c、図11図16a~図16f及び図17を参照すると示されている。
【0233】
図11を参照すると、一実施形態による方向調整ユニット1800の摩擦係合部材の断面側面図が示されている。図11から観察され得るように、第1のアーム部分1872は、ベース部材1824から枢動軸に垂直な方向に延びる。任意選択的に実質的に矩形の断面を有する第2のアーム部分1820は、第1のアーム部分1872に対してある角度で第1のアーム部分1872から延びる。摩擦係合部材アパーチャ1876は、第2のアーム部分1820に提供され、中心軸に沿って第2のアーム部分1820を通して延びる。
【0234】
いくつかの実施形態では、ベース部材1824の横方向の断面形状は、枢動軸に沿って見られるとき、少なくとも一部が円形又は少なくとも円弧状であり得る。横方向断面におけるベース部材1824は、一定の直径又は少なくとも一定の直径部分を有し得る。ベース部材1824は、その枢動軸を中心として枢動することも、係合解除形態と係合形態との間でスロット84内において並進移動することもでき、この例では、ハウジング1810のスロット84は、一定の幅を有する。
【0235】
図11において、ベース部材1824の横方向の断面形状は、2つの平坦な縁を有する部分円形断面であり、すなわち2つの対向する円弧状部分が2つの対向する直線状部分によって結合される。図11において、2つの平坦な縁は、平行である。
【0236】
図11に示す直立した摩擦係合部材位置は、係合解除形態における摩擦係合部材位置を示す。この係合解除形態では、前面を構成する平面FFPは、枢動軸から第1の垂直距離D1に提供され、後面を構成する平面RFPは、枢動軸から第2の垂直距離D2に提供される。図11から分かるように、第1の距離D1と第2の垂直距離D2とは、等しくなく、すなわち、第2のアーム部分は、枢動軸を基準として対称に提供されない。図11において、第2のアーム部分1820の前面及び後面は、垂直軸及び枢動軸を含む平面と平行である。摩擦係合部材がハウジングに対して固定されるその枢動軸の周りのみで枢動することが許容される実施形態を考えると、摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に向かって(例えば、図11に示す向きで見たときに)時計回りに枢動するとき、対称的にオフセットした第2のアーム部分1820により、アパーチャ1876の固定点は、図11に示す放物線又は曲率半径Aを辿ることになる。この構成では、摩擦係合部材1820、1822の固定点は、最初に上方に湾曲した経路に沿って移動し、その後、下方に湾曲した経路に沿って移動する。以下にさらに詳細に、特に図27を考慮して明らかにされるように、摩擦係合部材がその枢動軸の周りで枢動することを許容されるが、スロット84によってハウジング内で垂直に移動することも許容される代替実施形態では、アパーチャ1876の固定点は、異なる放物線を辿ることになる。
【0237】
いくつかの実施形態では、ベース部材1824の横方向の断面形状は、図10b~図10c、図12図13a~図14bに示すように、円形であり得る。
【0238】
図12は、摩擦係合部材1820、1822の断面側面図であり、ここで、摩擦係合部材は、単一の直線状のアーム部分1872を含む。したがって、関連するアパーチャ1876及び空洞又はボアは、単一アーム部分1872を通して提供される。図12の摩擦係合部材1820、1822は、角度を付けられない又は直線状の摩擦係合部材、すなわち「平坦」摩擦係合部材を形成し、単一アーム部分1872は、枢動軸に垂直な軸、例えば垂直軸に沿ってそのベース部材1824から延びる。換言すれば、図12の摩擦係合部材は、単一アーム部分とベースとからなり、単一アーム部分1872は、枢動軸に平行な法線ベクトルを有する平面において、枢動軸に垂直な軸に沿ってベースから対称的に延びる。したがって、単一アーム部分摩擦係合部材は、第2のアーム部分1820をさらに含まない。
【0239】
図12に示す直立摩擦係合部材位置は、係合解除形態の摩擦係合部材位置を示す。この係合解除形態では、前面を含む平面FFPは、枢動軸から第1の垂直方向距離D1に提供され、後面を含む平面RFPは、枢動軸から第2の垂直方向距離D2に提供される。図12から見ることができるように、第1の垂直方向距離D1及び第2の垂直方向距離D2は、等しい。図12では、第1のアーム部分1872の前面及び後面は、垂直軸及び枢動軸を含む平面に対して平行である。図12の構成を考慮すると、摩擦係合部材が係合解除形態から係合形態に向かって右回りに枢動すると、第1のアーム部分1872が対称的に位置合せされるため、アパーチャの固定点1876は、図12に示す枢動軸に対して画定された半径を有する放物線又は曲率(A)に追従する。この構成では、摩擦係合部材1820、1822の固定点は、最初に、下向きに湾曲した経路のみに沿って移動する。
【0240】
図11及び図12の実施形態で見ることができるように、係合解除形態では、アパーチャ1876の中心軸は、水平面と整列し得、ハウジング1810のベース及び/又は頂部と平行であり得る。図11から観察され得るように、アパーチャ1876の中心は、枢動軸から水平後方に(すなわち左側に)位置する。枢動軸がハウジング1810に対して固定されたままである実施形態では、すなわち摩擦係合部材1820、1822とハウジング1810との間のすべての相対的配向に関して、曲率が枢動軸を基準とすると、曲率は、枢動軸とアパーチャ1876の中心との間に定義される半径に従う。これは、アパーチャ1876が、曲率半径を下方に辿る前に、最初に水平面より上方に曲率に従うことを意味する。換言すれば、図11において、曲率半径のセグメントは、係合解除形態における摩擦係合部材の面において中心軸と交差する水平面よりも上方に位置する。曲率に従う間の関連する上方及び下方への移動により、摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間の接触が、この移動を通して異なる地点で起こる。したがって、図11の構成を有する摩擦係合部材は、アパーチャの内部空洞側壁面に沿ったいくつかの地点又は位置で摩耗を経験し得る。異なる摩擦係合部材1820、1822を図12で見ることができる。ここで、摩擦係合部材1820、1822は、アパーチャの中心を枢動軸と一直線上に枢動軸より上に垂直に配置し、これは、アパーチャが、係合解除形態から係合形態に向かう途中で下向きの曲率にのみ移動することを意味する。これは、状況により、摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間のより一貫した接触点をもたらし得る。これはまた、したがって、摩擦係合部材1820、1822によって生成されるより一貫した再現可能な摩擦力をもたらし得る。
【0241】
図11を参照して示されるようないくつかの構成では、少なくとも第1のアーム部分1872は、枢動軸に垂直な平面においてテーパ状の断面を有する。例えば、図12に示すような単一アーム部分1872の摩擦係合部材構成にも、テーパ状の断面が提供され得ることを理解されたい。テーパ状断面は、加えられるトルク力が最も高くなる枢動軸に近い位置に追加の材料を提供することにより、第1のアーム部分1872に剛性の向上を提供し得る。
【0242】
図12を参照して示すようないくつかの構成では、少なくとも第1のアーム部分1872は、枢動軸に垂直な平面において矩形の断面を有する。
【0243】
いくつかの構成では、係合形態において、少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822の少なくとも1つの横断面の直線状又は実質的に直線状の領域は、使用時、フィラメント1830の対応する平面又は実質的に平面の領域に摩擦係合するように配置される。摩擦係合部材182、1822に係合するフィラメント1830の部分の形状は、フィラメント1830に係合するアパーチャ1876の壁の部分の形状と類似又は酷似するように構成され得る。
【0244】
図13a~図13cは、単一アーム部分の摩擦係合部材1820、1822のそれぞれの側面図、正面図及び斜視図を示す。図12と同様に、摩擦係合部材は、側面から見たとき、垂直軸に関して対称であり得る(図13aを参照されたい)。これにより、組立時に摩擦係合部材1820、1822をいずれの向きでも摩擦係合部材ハウジング1810に挿入することができ、これは、組立プロセスを簡略化し得る。
【0245】
図14a~図14bは、他の実施形態による摩擦係合部材の側面図及び斜視図である。図13a~図13cに示される実施形態と比較して、図14a及び図14bの摩擦係合部材は、より短い第1のアーム部分1872を有する。さらに、第1のアーム部分1872の幅は、図13b及び図13cに示されるものよりも大きくされる。これにより、図13a~図13cの摩擦係合部材1820、1822のものよりもかなり広いアパーチャ1876が得られ、アパーチャ1876は、この例では矩形の断面である。
【0246】
したがって、図14a及び図14bの摩擦係合部材1820、1822は、先行する実施形態のフィラメントよりも著しく幅の広いフィラメント1830を採用することができる。より幅の広いフィラメント1830により、より広い接触面積にわたって力負荷を拡散することにより耐キンク性を向上させる等の利益を提供することができる。それは、ねじれにも抵抗することができ、それにより包装/保管におけるヘッドギアのねじれの発生が低減する。
【0247】
いくつかの構成では、摩擦係合部材1820、1822は、フィラメント1830の広げられた側が、ハウジング1810のその側と平行な患者の顔に対して平行に延びるように、反転又は90度回転され得ることが理解されるであろう。摩擦係合部材1820、1822を回転させることにより、大幅な改造を必要とせずに、摩擦係合部材を現在のヨークハウジングに適合させることも可能であり得る。
【0248】
代替構成では、摩擦係合部材が位置するヨークの内部のみが変更の必要があるように、摩擦係合部材1820、1822及びハウジング1810を含む方向調整ユニット1800全体を反転させることができる。
【0249】
図14cは、複数の調整可能な寸法を特定する単一アーム部分摩擦係合部材1820、1822の正面図を示す。
【0250】
以下の表1は、いくつかの構成による前記調整可能な寸法に対する好適な範囲を特定する。しかしながら、これらの寸法は、限定的であると見なされるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の寸法も使用することができる。
【0251】
【表1】
【0252】
図14dは、H1が20mmである、実施形態の第1の組の寸法を有する単一アーム部分の摩擦係合部材の正面図を示す。図14eは、H1が1mmである、実施形態の第2の組の寸法を有する単一アーム部分の正面図を示す。図14d及び図14eは、本開示の範囲内の摩擦係合部材1820、1822の可能な範囲の例示的なグループの各端部にある2つの例を示す。
【0253】
図15aは、それぞれの枢動軸を有する2つの摩擦係合部材1820、1822を有する方向調整ユニット1800の破断側面図である。
【0254】
図15bは、図15aの方向調整ユニット1800の破断上面図である。
【0255】
図16a~図16jは、本開示の一実施形態による2アーム部分/2つのアーム部分の摩擦係合部材1820、1822のそれぞれの異なる図を示す。図16aは、第1及び第2の傾斜アーム部分1872、1874を有し、摩擦係合部材1820、1822の前面、すなわち図中の右側の面とアパーチャ1876との間の上部の交差部に形成された丸みを帯びた又は面取りされた縁を有する、摩擦係合部材1820、1822の側面図を示す。図16bは、図16aの摩擦係合部材1820、1822の代替側面図を示し、ここでは、明瞭化のためにアパーチャ容積が埋められる。図16cは、図16a及び図16bの摩擦係合部材の輪郭側面図を示す。図16dは、図16a~図16cの摩擦係合部材の側面設計図を示す。図16eは、図16a~図16dの摩擦係合部材の正面図を示す。図16eは、図16a~図16eの摩擦係合部材の後面図を示す。図16gは、図16a~図16fの摩擦係合部材の斜視断面図を示す。図16hは、図16a~図16gの摩擦係合部材の斜視図を示す。図16iは、図16a~図16hの摩擦係合部材の斜視輪郭正面図を示す。図16jは、図16a~図16iの摩擦係合部材の斜視輪郭後面図を示す。図16a~図16iにおいて、ベース部材は、図11のものと同じ形状を有し、すなわち横方向断面において少なくとも部分的に円形である。
【0256】
いくつかの実施形態では、ベース部材1824は、横断面において、第1のアーム部分1872から枢動軸の方向に横方向外側に突出し得る。これにより、ベース部材1824の外側横方向端部は、摩擦係合部材1820、1822の第1のアーム部分1872及び/又は第2のアーム部分1820がハウジング1810内に形成された空洞内で移動することを可能にしながら、ハウジング1810のスロット84に受け入れられるフォロを形成することができる。
【0257】
図17a~図17cは、本開示の一実施形態による呼吸インタフェース又はマスクのためのヘッドギアのためのフィラメント1830のそれぞれ斜視図、側面図及び上面図を示す。フィラメント1830は、その長手方向軸に沿って延びるフィラメント本体を含む。フィラメント本体は、第1の形状及び大きさを有する本体部分181を含む。フィラメント本体は、この例では、同じ形状であるが、より小さいサイズを有する端部部分183をさらに含み、端部部分183のフィラメント1830は、その長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの平坦な又は実質的に平坦な外面を有する。使用時に摩擦係合部材1820、1822に係合するのは、フィラメント1830のこの端部部分183である。さらに、フィラメント本体は、本体部分181と端部部分183との間に長手方向に提供された遷移部分182を含む。遷移部分182は、フィラメント1830の長手方向軸に沿った長手方向距離にわたり、本体部分181の第1の幾何学的形状及び/又はサイズから、端部部分183の形状及び/又はサイズに遷移する形状及び/又はサイズを有する。
【0258】
いくつかの構成では、遷移部分182又は少なくともその一部分は、使用時、摩擦係合部材ハウジング1810の外部開口部1860のサイズよりも大きいサイズ、すなわち少なくとも1つの断面寸法を有する。このように、遷移部分182又は少なくとも本体部分181は、摩擦係合部材ハウジング1810に完全に入ることが阻止される。図17bを参照して示すように、遷移部分182は、側断面図において、曲率を有し得る第1の幅狭構成182aを含むことができ、そこでは、幅は、本体部分の幅から中間幅まで低減する。遷移部分182は、中間部分182bをさらに含むことができ、そこでは、幅は、第1の幅狭構成182aに続いて実質的に一定である。さらに、中間部分182bに続き、さらなる曲率を有し得る第2の幅狭構成体182cは、中間部分182bの幅からフィラメント1830の端部部分183の幅まで低減する幅を有する。
【0259】
図18aは、本開示の一実施形態による、方向調整ユニット1800と図18a及び図18bのフィラメント1830とを含むヨークアセンブリ20の切欠き側面図を示す。ヨークアセンブリ20の、図18aのヨークハウジング211の受入構造よりも大きい遷移部分182の少なくとも一部分のサイズによって形成されたハードストップは、ストラップがハウジング1810内に過度に入らないように制限する。この箇所での高い耐屈曲性により、関連するヨークアセンブリ20が弛緩状態でヘッドギアに対してねじれるリスクが最小限になり、そこでは、ストラップの遷移部分は、ヨークハウジング内に隙間なく挿入することができるように、端部においてより小さいサイズのフィラメント1830に向かって遷移し、テーパ状になるか又は湾曲する。これにより、ストラップが収納されるか又は使用されていないとき、ねじれてキンクするリスクを低減させる高い耐屈曲性が提供される。
【0260】
図18bは、ライントラック/ヨーク/摩擦係合部材ハウジング1810とともにストラップを示す、図18aの構成の拡大切欠き側面図を示し、そこでは、遷移部分182がその長手方向位置において、方向調整ユニット1800に損傷を与え、且つ/又は方向調整ユニット1800が正確に機能することを阻止する可能性がある、遷移部分182がハウジング1810の内側に過度に挿入されることを制限するハードストップを提供する。
【0261】
一実施形態では、フィラメント1830の矩形の横断面(すなわちフィラメントの長手方向軸に対して垂直な断面)の寸法は、0.85mm(W)×0.85mm(H)であり得、それは、0.85mm幅及び0.85mm高さの断面を意味する。こうした構成では、矩形の横断面は、等辺長方形、すなわち正方形を形成する。
【0262】
他の実施形態では、フィラメント1830の各辺が0.7mm~3mmの範囲のサイズを有するように寸法を変更することができる。これは、フィラメントが、0.85mm×0.85mmの正方形、0.75mm×2.5mmの矩形、3.00mm×3.00mmの正方形の断面、1つの3.00mm辺と2つの1.5mm辺とを有する三角形の断面又は寸法の他の任意の組合せを有し得ることを意味する。
【0263】
実験により、フィラメント1830の例えば少なくとも1つの断面寸法におけるサイズが摩擦係合部材1820、1822のアパーチャのサイズよりも30~200ミクロン小さいことにより、2つの構成要素が係合解除及び係合形態において十分に機能的に作用するための適切な隙間が可能になることが示された。
【0264】
いくつかの構成では、(摩擦係合部材の正面で見える)摩擦係合部材アパーチャ1876横断面の、フィラメント1830横断面に対する面積の比は、1:1.0201~1:1.3061の範囲であり得る。
【0265】
以下の表2は、矩形の横断面を有するアパーチャ及びフィラメントに対する。比の例を含む寸法例の選択肢を特定する。したがって、A:Fの比は、1:1~1:1.5の範囲であり得る。
【0266】
【表2】
【0267】
一実施形態において、呼吸マスクのためのヘッドギア200が提供される。ヘッドギア200は、少なくとも1つのストラップ208と、少なくとも1つのヨークアセンブリ20とを含む。ストラップ208は、以下でさらに記載するように、フィラメントガイドと、フィラメントガイド内に延びてヨークアセンブリ20に入る少なくとも1つのフィラメント1830とを含む。ストラップ208の周囲、すなわちフィラメント1830及びフィラメントガイドの周囲に弾性シースのようなシースを提供し得る。また、ヘッドギア200は、本明細書に開示された実施形態のいずれかによる方向調整ユニット1800を含む。フィラメント1830は、その長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの平坦な又は実質的に平坦な外面を有し、それにより、係合形態において、フィラメント1830の実質的に平坦又は平坦な外面の少なくとも平坦な又は実質的に平坦な部分は、方向調整ユニット1800の摩擦係合部材1820、1822の少なくとも1つの係合面の横断面の実質的に直線状又は直線状の部分に接触される。
【0268】
いくつかの構成では、少なくとも1つのストラップ208の周りのシースは、可撓性、弾性及び/又はばね弾性であり、ヨークアセンブリ20が使用者の手によって外側に引っ張られたときにアイドル長から伸びることができる一方、ヨークアセンブリ20が解放されると、そのアイドル長に戻ろうとすることが可能である。フィラメント1830は、シースを通して延び得る。ヘッドギアの少なくとも1つのフィラメント1830は、第1の幾何学的形状を有するコア部分181をさらに含む。フィラメント1830は、第2の幾何学的形状を有する端部部分183をさらに含む。フィラメント1830は、コア部分181と端部部分183との間に長手方向に提供された遷移部分182をさらに含む。遷移部分182は、フィラメント1830の長手方向軸に沿った長手方向距離にわたり、コア部分181の第1の幾何学的形状から端部部分183の第2の幾何学的形状に遷移する形状を有する。
【0269】
いくつかの構成では、ヨークアセンブリ20は、ヘッドギアを呼吸マスクに接続するように配置される。
【0270】
いくつかの構成では、少なくとも1つのストラップ208は、フィラメント1830を収容するための空洞をその中に形成する。ストラップの空洞の少なくとも一部分は、フィラメント1830の形状に適合した形状を有し得る。例えば、横方向に矩形の断面を有するフィラメント1830の場合、ストラップの空洞の少なくとも一部は、矩形のフィラメント1830に適合するようにわずかに大きい寸法で横方向に矩形であり得る。
【0271】
横方向に三角形の断面を有するフィラメント1830の場合、ストラップ空洞の少なくとも一部は、三角形のフィラメント1830に適合するように、わずかに大きい寸法で横方向に三角形であり得る。
【0272】
方向調整ユニット1800は、組み立てられたとき、ヨークアセンブリ20内に配置され得る。方向調整ユニット1800のハウジング1810は、使用時、フィラメント1830の少なくとも一部、例えば遷移部分182及び/又は端部部分183の一部を摺動可能に収容するための外部開口部1860を含み得る。いくつかの構成では、外部開口部1860は、遷移部分182が方向調整ユニット1800に完全に入ることを防ぐように、使用中、フィラメント1830の遷移部分182の一部よりも小さいサイズ、すなわち少なくとも1つの断面寸法を有する。
【0273】
いくつかの構成では、ヨークアセンブリ20は、中心部分と、中心部分から延びる少なくとも1つのセクションとを含み、少なくとも1つのセクションは、ヘッドギアの少なくとも1つのストラップ208に接続するように構成される。
【0274】
図19図25は、一実施形態による、患者への呼吸療法の提供のための呼吸インタフェースシステム100又は呼吸マスクシステム100の一例を示す。マスクシステム100は、マスク102などのインタフェースを含み得る。図示された配置では、マスク102は、本明細書でさらに詳細に記載するように、シール又はシールモジュール及びフレームを含む。図示されたマスクシステム100は、ヘッドギア200(本明細書では「ヘッドギアアセンブリ」と呼ばれる場合もある)も含む。マスク102及びヘッドギア200は、ヘッドギア200をマスク102に取り付けるための接続システムを含み得る。ヘッドギア200をマスク102に取り付けるために、様々な形態の接続システムが使用され得る。同様に、マスク102は、少なくとも1つ、場合により複数の異なるタイプのヘッドギアに結合され得る。
【0275】
図25を参照すると、マスク102は、シール104とフレーム106とを含み得る。シール104は、患者の口及び/又は鼻の周囲を且つ/又は下を封止するように構成することができる。図示する構成では、シール104は、使用者の鼻にのみ呼吸ガス流を送達するように構成された鼻シールである。特に、図示するシール104は、使用者の鼻孔とシールを形成するように構成された鼻ピローの対と、鼻ピローを包囲するとともに、使用者の鼻の下側、使用者の鼻の側部及び使用者の上唇の1つ又は複数と二次シールを生成するように構成される二次封止部分とを含む。
【0276】
しかしながら、本開示の特徴は、例えば、限定なしに、鼻シール、フルフェイス鼻上シール、フルフェイス鼻下シールなどのフルフェイスシールなど、他のタイプのマスクシールを有する他のマスクシステムに実装することができる。
【0277】
フレーム106は、シール104を支持し、シール104をヘッドギア200に取り付けるように構成される。フレーム106は、マスク102を介して患者に呼吸ガスの流れを送達するガス導管110に取り付けられるように構成されたガス入口108(図25を参照されたい)も含み得る。
【0278】
シール104は、取付けフレーム又はクリップ122を含むことができ、取付けフレーム又はクリップ122は、いくつかの構成では、第1の部分122a及び第2の部分122bを含むことができ、第1の部分122a及び第2の部分122bは、それらの間にシール104のリムを捕捉する。クリップ122は、スナップフィット、摩擦嵌合又は他の好適な構成などにより、フレーム106に選択的に接続するように構成される。フレーム106は、シール104の内部からガスを排気するように構成される通気孔140を含むことができる。任意選択的に、マスク102は、排気流を制御するように通気孔140を覆うベントインサート又はディフューザ152を含むことができる。
【0279】
呼吸マスクシステム100のヘッドギア200は、マスク102を患者の顔面に保持するために使用される。ヘッドギア200は、典型的には、マスク102に取り付けられ、患者の顔面に封止接触してマスク102を保持するために、患者の頭部の後部の周囲に巻き付く。
【0280】
一形態では、ヘッドギア200は、本明細書においてより詳細に記載するように、マスク102に取り付けられるように構成されたヨークアセンブリ20又は収集部を含み得る。
【0281】
ヨークアセンブリ20は、ヘッドギア200のストラップに取り付けられるように構成することができ、ストラップ及びヨーク20は、協働して、使用者の頭部を包囲する閉ループを形成する。図示する実施形態では、ヘッドギア200は、患者の頭部の後方に巻き付くように構成された後部ストラップ204と、患者の頭部の頂部の上に巻き付くように構成された上部ストラップ206と、使用中に使用者の頬に沿って延びるように構成された前部ストラップ208の対(図25を参照されたい)とを含むストラップのアセンブリを含む。いくつかの構成において、上部ストラップ206は、不要であり得る。
【0282】
いくつかの構成では、例えば図23及び図24に示すように、少なくとも1つのフィラメント1830は、上述したように、コア部分181、遷移部分183及び端部部分183を含む。
【0283】
いくつかの構成では、各前部ストラップ208は、ヘッドギアアセンブリ200の後部ストラップ204、例えば後部ストラップ204の自由端207又は自由端207に結合されたコネクタに後部コネクタ205によって取り付けられる。別の形態では、後部ストラップ204は、使用中に患者の頬に沿って延びる前部ストラップを形成する側部延長部を含む。
【0284】
一形態では、ヘッドギア200は、調整可能(例えば、手動調整可能、自動調整可能)であり得、且つ/又はヘッドギア200が比較的低い量の抵抗で長さを低減させることを可能にするとともに、ヘッドギア200の長さの増大に抵抗する、上述のような1つ又は複数の方向調整ユニット1800を組み込むことができる。いくつかの構成では、インタフェースアセンブリ100を装着するためにヘッドギア200を長くすることができるように、方向調整ユニット1800の係止力を無効にすることができる。いくつかの形態では、ヨークアセンブリ20は、自動調整可能なヘッドギアシステムで使用されるフィラメントのための収集部を形成し得る。この形態では、ヨークアセンブリ20は、1つ又は複数の方向調整1800を組み込むことができ、それらのそれぞれは、本明細書で摩擦係合部材1820、1822と称することができる1つ又は複数のロック要素を含むことができる。摩擦係合部材1820、1822は、ヘッドギア200の伸長中にフィラメント1830に摩擦係合するが、ヘッドギア200の収縮中に比較的摩擦のない移動を可能にするように構成される。
【0285】
摩擦係合部材1820、1822及び/又はフィラメント1830は、上述したような少なくとも1つの平坦な又は実質的に平坦な部分又は領域又は外面を有し得る。
【0286】
方向調整ユニット1800は、ヨークアセンブリ又は収集部20の端部に組み込むことができ、ヨークアセンブリ20又は収集部の本体は、その本体内にフィラメントを受け入れるのに十分に中空であり得る。ヘッドギア200又はその任意の部分は、本出願人の米国特許出願公開第2016/0082217号明細書、2015年9月16日に出願された米国特許出願公開第14/856,193号明細書及び国際公開第2016/043603号パンフレットに開示された実施形態のいずれかに従って構成することができ、上記出願の全体が参照により本明細書に援用される。
【0287】
恐らく図23及び図24に最もよく示すように、ヘッドギア200は、各前部ストラップ208に対して1つ、2つのフィラメント1830を含む。しかしながら、任意の数のフィラメントを使用することができる。
【0288】
図23及び図24を参照すると、各前部ストラップ208は、コネクタ209を取り付けることができる自由端を含み得る。各コネクタ209は、ヨークアセンブリ20に位置する相補的なストラップコネクタ203に係合し得る。好ましくは、ヨークアセンブリ20は、実質的に長尺状であり、ヨークアセンブリ20の前部材21a及び後部材21bの各端部又はその近くに位置するストラップコネクタ203を含む。
【0289】
任意選択的に、前部ストラップは、ヨークアセンブリに位置するコネクタ上にオーバーモールドすることもできる。前部ストラップ208とヨークアセンブリ20との接続は、スナップフィット接続、ねじ及びねじ山タイプの接続、オーバーモールド接続又はフック接続など、任意の適切な接続形態であり得る。1つの構成では、各ストラップコネクタ203は、ヨークアセンブリ20の各端部に位置するキャップ210(図23図24には示さず)を含む。各キャップ210は、ヨークアセンブリをヘッドギアアセンブリ200の前部ストラップ208に取り付けるためにスナップフィット構成で前部ストラップ208のコネクタ209を受け入れるように構成された、アパーチャ又は凹部などの開口部を含み得る。
【0290】
図24を参照すると、フィラメント1830は、前部ストラップコネクタ2081を介して、上部ストラップ206及び/又は後部ストラップ204に接続することができ、それによりフィラメント1830のコア部分181の一端1811を前部ストラップコネクタ2081に固定することができる。
【0291】
これは、前部ストラップ208が、例えば、使用時にストラップ208が接続されるヨークアセンブリを引っ張る結果として伸長するとき、前部ストラップ208及びコア部分端1811の両方が前部ストラップコネクタ2081内又はそれに隣接してともに接続されるため、前部ストラップ208の伸長する部分がフィラメント1830に関して移動、例えば摺動することを意味する。これにより、フィラメント1830の端部部分183の自由端は、前記フィラメントが提供されたストラップ208のコネクタ209により近づくように移動することになる。これにより、フィラメント1830の端部部分183と、フィラメント1830が配置される方向調整ユニット1800とが相対的に移動することになる。ヨークアセンブリ20及び間接的に方向調整ユニット1800もコネクタ209に接続されるため、フィラメント1830は、方向調整ユニット1800に対して移動する。この相対移動により、フィラメント1830と、フィラメントが提供された摩擦係合部材の空洞との摩擦により、関連する摩擦係合部材1820、1822は、それらの係合解除形態からそれらの係合形態に向かって移動するように作動する。
【0292】
例えば、使用者が自らの手でヨークアセンブリ20を解放したとき、ストラップ208がその伸長状態からその非伸長状態に戻ることができる場合、反対の現象が発生する。ストラップ208におけるばね弾性は、ストラップ208をその伸長状態からその無作動状態に後退させるように作用する。このシナリオでは、フィラメント1830の端部部分183の自由端間の距離は、前記フィラメント1830が提供されたストラップ208のコネクタ209からさらに離れて移動する。これにより、フィラメント1830の端部部分183と、フィラメント1830が配置される方向調整ユニット1800とが相対的に移動することになる。この相対移動により、フィラメント1830と、フィラメントが提供された摩擦係合部材の空洞との摩擦により、摩擦係合部材1820、1822は、それらの係合形態からそれらの係合解除形態に向かって移動する。
【0293】
横断面において、フィラメント1830の対応する平坦な又は実質的に平坦な部分に係合する直線状又は実質的に直線状の部分を有する摩擦係合部材の係合面を形成するアパーチャを有する少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822を有する方向調整ユニット1800は、任意のヘッドギア設計、すなわち本明細書に開示するもの以外の設計でも提供できることが理解されるべきである。こうした設計では、それぞれの方向調整ユニット1800及びフィラメント1830は、係合解除状態と係合状態との間の移動をトリガするそれらの間の相対移動を依然として可能にしながら、ヘッドギアの他の構成要素に関して異なるように方向付けるか、配置するか又は接続することができる。
【0294】
上述したように、ヨークアセンブリ20は、マスク102のフレーム106に取り付けるように構成することもできる。一形態では、フレーム106は、ヨークアセンブリ20及びフレーム106が互いに取り付けられるとき、内部にヨークアセンブリ20の少なくとも一部を受け入れるように構成された凹状領域又は整列特徴部を含み得る。フレーム106とのヨークアセンブリ20の取外し可能な接続を容易にするように、カバースリーブ又は前部分22を構成することができる。
【0295】
図26a~図26hを参照すると、一実施形態による方向調整ユニット1800のハウジング1810が示されている。この実施形態では、ハウジング1810は、2つの摩擦係合部材1822、1820を単一のハウジングに保持するように適合される。しかしながら、ハウジング1810は、他の実施形態に従って任意の所定数の摩擦係合部材を保持するように適合され得ることを理解されたい。したがって、任意の所定数の摩擦係合部材は、いくつかの実施形態により、ハウジング内に直列に、すなわち前後に配置され得る。同様に、方向調整ユニット1800は、直列の複数のハウジングを含み得、このとき、各ハウジングは、単一の摩擦係合部材1820、1822を含む。例えば、方向調整ユニット1800は、2つの摩擦係合部材1820、1822を含む単一ハウジングを含み得るか、又は方向調整ユニット1800は2つのハウジングを含み、このとき、各ハウジングは、単一の摩擦係合部材を含む。各ハウジングにおけるフィラメントガイドの特徴は、2つの摩擦係合部材を含む単一のハウジングを含む方向調整ユニットが、それぞれ単一の摩擦係合部材を含む2つのハウジングを含む方向調整ユニットと実質的に同様の性能を提供するであろうように、摩擦係合部材の動作を実質的に分離させるものである。
【0296】
図26aは、方向調整ユニットのハウジング1810の断面破断図である。ハウジング1810は、使用時、フィラメント(図示せず)を摺動可能に保持するための第1の開口部8311を有するフィラメントガイド831を含む。フィラメントガイド831は、ハウジング1810の中間壁又は構造又は少なくとも隣接する摩擦係合部材1820、1822間に配置された中間構造を形成し得る。フィラメントガイド831の目的は、フィラメントが2つの摩擦係合部材1820、1822間の正しい又は所望の垂直位置に整列されることを可能にすることである。特に、フィラメントガイド831は、フィラメント1830の軸に垂直な方向においてフィラメント1830を抑制し、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸に向かう又は離れる移動に抵抗し、ハウジング1810内の入口及び出口アパーチャ8321、8331に対してフィラメントの拘束をする。これは、ハウジング1810を通した所望のフィラメント経路に沿ってフィラメントを制約し、ハウジング1810内の又はその又は各摩擦係合部材1820、1822に対するフィラメントの曲げを最小化又は少なくとも制御し、一方の摩擦係合部材の動作を他方から少なくとも部分的に分離し、それにより2つの摩擦係合部材が実質的に独立して動作するようにすることを促進するものである。このように、フィラメントは、実質的に同一の又はより密接に同一の向きで各摩擦係合部材1820、1822に入るため、一連の最初の摩擦係合部材1820、1822の構成は、一連の後続の摩擦係合部材1820、1822にあまり影響を与えないであろう。隣接する摩擦係合部材間のフィラメントの拘束は、ハウジング1810に出入りするときのフィラメント1830の曲げを最小限に抑える役割も果たすが、必ずしも完全に除去せず、したがってハウジング1810内及び各摩擦係合部材1820に対するフィラメント1830の望ましくない変曲を最小限に抑えるが、必ずしも除去しない。フィラメント1830のそのような変曲は、例えば、図1a及び図8に見ることができる。望ましくない変曲は、摩擦係合部材の動作に反するフィラメント1830の変曲と表現することができる。このフィラメント1830の望ましくない変曲は、一般に、ハウジング1810に入るとき若しくは出るとき又は摩擦係合部材間で発生する。
【0297】
したがって、摩擦係合部材1820、1822の中間にあるときのフィラメントガイド831は、フィラメントが1つの摩擦係合部材1820から出た後、次の摩擦係合部材1820に入る前に長手方向軸に沿ってフィラメントの位置合わせをするか、少なくともその位置合わせを改善することにより、1つの摩擦係合部材1820、1822の枢動が別の摩擦係合部材1820、1822の枢動に対して低減した影響を確実に与えることを補助する。したがって、フィラメントガイド831は、摩擦係合部材1820間でフィラメント1830を曲げないように又は直線状にするように作用すると言うことができる。したがって、フィラメントガイドは、少なくとも部分的に、1つの摩擦係合部材1820の動作を別のものから分離する。
【0298】
上述したように、ハウジング1810は、各摩擦係合部材1820、1822のベース部材1824を摺動可能に保持するための保持空間を提供する少なくとも1つの取付けスロット84をさらに含む。スロット84は、摩擦係合部材1820、1822が、上述のようにハウジング1810に対して枢動し、またハウジング1810のベースに向かって又はベースから離れて摺動又は並進することを可能にするように構成され、そのような移動の範囲は、摩擦係合部材1820がスロット84の端に当接することによって制限される。したがって、各スロット84は、枢動軸を中心とした枢動移動に加えて、摩擦係合部材1820、1822が移動することができる所定の細長い経路を画定する。摩擦係合部材1820、1822のこの並進移動は、アパーチャ1876の位置がフィラメントの経路を辿ることを可能にし、例えばフィラメントがハウジング1810の内側で曲がるとき、フィラメントの位置の垂直移動に対応して垂直に移動する、各摩擦係合部材1820、1822が係合解除位置から係合位置に移動するときにフィラメントとともに移動するなどであるが、これらに限定されない。
【0299】
各スロット84は、ハウジングの側壁85の一部を形成し得る。各摩擦係合部材1820、1822は、ハウジング1810の2つの横方向に対向するスロット84を使用してハウジング1810に取り付けられ得る。2つの横方向に対向するスロット84は、ハウジング1810の2つの横方向に対向する側壁に形成され得る。
【0300】
しかしながら、代替実施形態では、各摩擦係合部材1820、1822をハウジング1810に取り付けるために単一のスロット84のみが必要とされ得ることが理解されるべきである。そのような単一のスロット84は、例えば、ハウジング1810の固体ベース又は下部領域に形成され得る。ベース部材1824の外周とスロット表面842との間の摩擦力は、例えば、スロット表面及び/又はベース部材1824を滑らかに設計することにより、且つ/又は適切な材料/材料コーティングの選択により、且つ/又は構成要素間の適切な公差により、望ましくは最小限に維持するか又は少なくとも低減することが可能である。したがって、デュアルスロット又はシングルスロット84の形状及び表面を調整することにより、ベース部材1824の外側とスロット表面との間の摩擦力を所望の比較的低いレベルに維持することができる。
【0301】
各スロット84によって形成される保持空間は、保持されたベース部材1824がその保持空間内でその枢動軸の周りで枢動することを可能にするような大きさであり得る。換言すれば、保持空間は、ベース部材1824に対して十分に大きく、枢動軸がスロット84に沿って並進的に変位できるように、ベース部材1824がハウジング1810のベースから離れてスロット84に沿って並進的に変位することを可能にする。
【0302】
いくつかの実施形態では、スロット84は、ベース部材1824の枢動軸に沿って見られるとき、ベース部材1824の横方向断面形状に類似するが、それよりも大きい横方向断面形状を有し得る。スロット84のサイズ又はスロット84の寸法のサイズは、スロット84に対するベース部材1824の所定又は所望の最大移動量を可能にするように構成することができる。
【0303】
ベース部材1824の横方向断面形状が円形である実施形態では、スロット84は、ベース部材1824を円形スロット84内に可動に保持できるように、対応するが、より大きい円形形状又は少なくとも部分円形又は弧状端部を有し得る。そのような実施形態では、ベース部材1824の枢動軸は、摩擦係合部材1820、1822が係合解除形態から係合形態に移動するとき、ハウジング1810に対して実質的に固定された状態に保たれることになる。したがって、各摩擦係合部材1820、1822のアパーチャは、枢動軸がハウジング1810に対して実質的に固定されたままであるため、図11及び図12に示すものと同様の弧に沿って移動することになるであろう。
【0304】
本出願人は、ハウジング1810に対する摩擦係合部材1820、1822の枢動角、ハウジング1810に出入りするフィラメントの位置及び摩擦係合部材1820、1822間のフィラメント1830の位置のそれぞれ及び/又は任意の組み合わせが、摩擦係合部材1820、1822が係合解除位置から係合位置に移動するときに摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間に及ぼされる摩擦力の量に関連することを理解した。
【0305】
一実施形態では、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸は、ハウジング1810に対して固定され、フィラメント1830は、ハウジング1810に入るとき又は出るとき、「垂直」方向に部分的に拘束されるか、又は大きく拘束されず、例えば、この構成は、図1図7図8図10図12に示されている。換言すれば、フィラメント1830とハウジング1810のベースとの間の距離は、拘束されない。この実施形態では、ハウジング1810に入るとき又は出るときにフィラメント1830に対する拘束が限られているため、ハウジング1810に対する摩擦係合部材1820、1822の枢動角は、フィラメント1830がハウジング1810を通して延びる蛇行経路に大きく影響するであろう。フィラメント1830は、フィラメント1830の材料特性及びフィラメント1830と摩擦係合部材1820、1822との係合によって及ぼされる力のため、ハウジング内で曲がるか又は屈曲する傾向がある。摩擦係合部材1820、1822の位置決め以外のフィラメント1830に対する拘束がないため、枢動角は、フィラメント1830がハウジング1810を通過するとき、フィラメント1830に形成される曲がり又はキンクを大きく決定し、したがって摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間に作用する摩擦力を大きく決定すると言える。
【0306】
さらなる実施形態では、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸は、ハウジング1810に対して固定され、ハウジング1810のフィラメントガイド831は、ハウジング1810内のある位置でフィラメント1830を大きく拘束する。この実施形態では、フィラメントガイド831とともに、ハウジング1810に対する摩擦係合部材1820、1822の枢動角は、その中に形成される蛇行経路を決定し、したがってフィラメント1830に形成される曲がり又はキンクを決定することになる。フィラメント1830の剛性のため、摩擦係合部材1820、1822の枢動角は、制限されることがある。枢動軸が固定されるこの状況では、フィラメント1830の曲がり又はキンクは、フィラメント1830がその又は各摩擦係合部材1820、1822のアパーチャ1876を通り、フィラメントガイド831のアパーチャ8331を通して延びる能力によって制限されることになる。フィラメント1830がこれらのアパーチャ1876、8331(及び形成される蛇行経路)を通して延びる能力は、フィラメント1830の剛性によって制限されることになる。したがって、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸が固定されるハウジング1810にフィラメントガイド831を含めることにより、枢動角及びフィラメント1830に形成される曲がり又はキンクは、フィラメント1830によってとられるフィラメント経路がフィラメントガイドによって拘束されることによって制限され得、したがって、フィラメント1830と摩擦係合部材1820、1822との間の摩擦力の量は、好ましくない方法で制限され得る。
【0307】
本出願人は、摩擦係合部材1820、1822をハウジング1810に可動に取り付けて、それらの間の相対移動、特に摩擦係合部材1820、1822の枢動軸に直交する方向の相対移動及び特に枢動軸がハウジング1810に対して概ね垂直に上方に、ハウジング1810のベースから離れて移動することができる方向の相対移動を可能にすることにより、フィラメント1830が、フィラメント1830の剛性によって制限されないか、又はより少ない制限で、完全に又は少なくともより係合した位置でその又は各摩擦係合部材1820、1822のアパーチャ1876を通り、フィラメントガイド831のアパーチャ8331を通して延びることが可能であることを認識した。
【0308】
ベース部材1824が枢動可能に保持されることに加えて、ハウジング1810に対して変位、すなわち例えば垂直方向に並進変位することが許容されるようにスロット84を設計することにより、摩擦係合部材1820、1822が垂直方向に変位しながら枢動することが許容されるため、摩擦係合部材1820、1822の1つ又は複数がフィラメント1830の鋭い曲線に係合することが可能である。フィラメント1830のこの鋭い湾曲、曲線又はキンクは、フィラメントガイド831の追加に部分的に起因して形成され、このとき、フィラメントが係合部材1820、1822の1つ又は複数のアパーチャ1876を出て、フィラメントガイド831のアパーチャ8331に入るとき、アパーチャ8331がフィラメント1830を拘束し、したがって鋭い湾曲、曲線又はキンクが形成されることを引き起こす。摩擦係合部材1820、1822の枢動軸が変位されることを許容することにより、枢動軸は、ハウジング1810に対してもはや固定されない。このようにして、ハウジング1810及び摩擦係合部材1820、1822は、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸をハウジング1810に対して浮動、並進可能又は可動にすることができるように構成される。
【0309】
また、摩擦係合部材1820、1822がハウジング1810に対して摺動可能に垂直方向に変位されることを許容することにより、所与の枢動角に対する各摩擦係合部材のアパーチャ1876の垂直変位は、係合解除位置にあるとき、フィラメントガイド831のアパーチャ8331の中心軸を通した想定線により緊密に従うことを許容することが可能であり得る。これは、摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間の摩擦力が、係合解除形態から係合形態に移動するときにのみ、直線的に漸増することを意味し得る。
【0310】
図9a~図9f及び図26a~図26fのハウジング1810は、各摩擦係合部材のベース部材1824がハウジング1810に対して枢動できるだけでなく、垂直方向に変位することができるように設計されたスロット84を有する。したがって、スロット84は、ベース部材1824の枢動軸がハウジング1810に対して変位されること又は可動であることを可能にするように設計される。
【0311】
図26aにハウジング1810の長手方向軸が示されている。長手方向軸は、フィラメントガイド831の開口部8311を通して対称的に描かれている。長手方向軸に垂直である「垂直」軸も示されている。図26a~図26dから観察され得るように、スロット84が明確に示されている。スロット84は、ベース部材1824のための保持空間を形成する(図9a~図9fを参照されたい)。
【0312】
図9a~図9fから観察され得るように、保持空間は、横方向断面において、ベース部材1824(及びその枢動軸)が保持空間内で移動することができるようにベース部材1824の断面幅よりも大きい、例えば長手方向軸に沿って延びる幅を有し得る。
【0313】
保持空間は、保持されたベース部材1824が、ある程度、その保持空間内で枢動軸に垂直な方向に移動することができるような大きさであり得る。
【0314】
図26a~図26cを参照すると、スロット84は、細長い形状、長円形状又は楕円形状を形成する。スロット84は垂直軸に沿って延びる。見ることができるように、スロット84の少なくとも一部は、ハウジング1810の側壁85の2つの対向する平行な表面842によって形成される。図26a~図26dにおいて、2つの対向する平行な表面842は、垂直軸と平行である。枢動軸に沿って見られるとき、楕円形スロット84は、水平方向の幅よりも大きい垂直方向の長さを有し、丸みを帯びた端部を有する。下側の丸みを帯びた端部は、開いているが、ジョー841の形態の狭められた部分を含み、ジョー841は、ベース部材1824より狭く、ベース部材1824をスロット84内に保持する。
【0315】
しかしながら、2つの対向する平行な表面842は、ベース部材1824がハウジング1810のベースから離れて変位できるように、少なくとも垂直軸に沿った成分を有する任意の他の軸、例えば枢動軸に直交する任意の軸によって配向され、それと整列され得ることが理解されるべきである。
【0316】
図26a~図26d及び図9a~図9fの実施形態では、横方向断面のスロット84は、ベース部材1824が枢動軸に直交する方向に移動することができるように、例えばその幅よりも大きい垂直軸に沿って延びる長さを有する。したがって、保持空間の長さは、ハウジング1810のベースから離れて実質的に垂直に、概ねフィラメント1830に向かう方向に延び得る。
【0317】
いくつかの実施形態では、スロット84の長さは、フィラメントガイド831の少なくとも一部と平行又は実質的に平行に延びる。
【0318】
いくつかの実施形態では、スロット84は、ベース部材1824の少なくとも部分的に円弧状の形状に少なくとも部分的に合致する円弧状の形状を有する端部部分を有する。
【0319】
図26a~図26d及び図26hで観察され得るように、スロット84は、少なくとも1つの狭窄セクション841を有し得、これは、ベース部材1824が前記狭窄セクションを越えて移動することを防止し、それによりハウジング1810のスロット84内に留めるためのものである。摩擦係合部材1820、1822は、ジョー841を弾性的に変形させることにより、ベース部材1824をスロット84内に押し込むことによってハウジング1810に取り付けられ、ジョー841は、ベース部材1824がスロット84内に完全に受け入れられるとスナップバックする。
【0320】
ハウジング1810は、フィラメント1830を案内するための1つ又は複数のさらなるフィラメントガイドをさらに含み得る。各フィラメントガイドは、少なくともフィラメントに接触するように構成されたガイド面を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのフィラメントガイドは、フィラメントが延びる開口部を含む。例えば、ハウジングは、使用時、フィラメント1830を摺動可能に案内するための第2の開口部8321を有する第2のフィラメントガイド832をさらに含み得る。フィラメントガイド832は、ハウジング1810の第1の端壁を形成し得る。図9a~図9dを参照すると、少なくとも1つの摩擦係合部材は、ハウジングの第1のフィラメントガイド831と第2のフィラメントガイド832との間に配置される。
【0321】
ハウジング1810は、使用時、フィラメント1830を摺動可能に案内するための第3の開口部8331を有する第3のフィラメントガイド833をさらに含み得る。第3のフィラメントガイド833は、ハウジング1810の第2の端壁を形成し得、第2の端壁は、第1の端壁のそれとは反対である。
【0322】
本出願人は、ハウジング1810が、フィラメント1830を摺動可能に案内するための第1の開口部8331を有する第1のフィラメントガイド831、フィラメント1830を摺動可能に案内するための第2の開口部8321を有する第2のフィラメントガイド832及びフィラメント1830を摺動可能に案内するための第3の開口部8331を有する第3のフィラメントガイド833を含む実施形態において、摩擦係合部材1820、1822の枢動軸が並進移動する能力は有用であり得ることを見出した。
【0323】
本出願人は、単一の摩擦係合部材1820、1822のためにフィラメントガイドの対を提供し、その後、追加の摩擦係合部材1820、1822ごとに追加のフィラメントガイドを提供し、各摩擦係合部材1820、1822が2つのフィラメントガイドの中間に位置することを提案する。したがって、単一の摩擦係合部材1820、1822を含むハウジング1810では、2つのフィラメントガイドが提供されることになる。2つの摩擦係合部材1820、1822を含むハウジング1810では、3つのフィラメントガイドが提供され、3つの摩擦係合部材1820、1822を含むハウジング1810では、4つのフィラメントガイドが提供されることになる。
【0324】
2つの摩擦係合部材を有するこのような実施形態では、フィラメント1830は、複数の位置で拘束、すなわち摺動可能に案内される。フィラメント1830は、第2のフィラメントガイド832及び第3のフィラメントガイド833によってそれぞれハウジング1810の入口及び出口で拘束され、また第1のフィラメントガイド831によってハウジング1810内で拘束される。これらの3つのフィラメントガイドは、フィラメント1830を所定の「垂直」位置で拘束するか、又は別の言い方をすれば、例えば図9dで見たときに複数の位置で実質的に水平となるようにフィラメント1830を拘束する。係合部材1820、1822がフィラメント1830の横方向の移動に応答して枢動すると、フィラメント1830を前部及び後部アパーチャ縁81及び82に係合し始め、3つのフィラメントガイド831、832、822及びその又は各摩擦係合部材1820、1822のアパーチャ1876によって提供された空洞によって画定される蛇行経路を形成する。この前部及び後部アパーチャ縁81及び82とフィラメント1830との接触は、第1のフィラメントガイド831と第2のフィラメントガイド832又は第3のフィラメントガイド833の1つとの間でフィラメント1830が曲がること、すなわちキンクすることをもたらす。フィラメント1830の剛性及びハウジング1810の出口及び入口における拘束は、フィラメントが静止位置で定義される水平軸より上に曲がるか又はキンクしなければならないことを意味する。このため、係合部材1820、1822の枢動軸は、係合部材1820、1822が完全に枢動して、十分な摩擦力でフィラメント1830に係合できるように垂直方向に並進する。
【0325】
いくつかの実施形態において、方向調整ユニットがハウジング1810に取り付けられた3つ以上の摩擦係合部材1820、1822を含む場合、第3のフィラメントガイド833は、ハウジング1820のさらなる中間壁を形成し得る。開口部を有するフィラメントガイドは、摩擦係合部材1820、1822の各隣接する対間に提供され得る。
【0326】
図26b~図26dを参照すると、ハウジング1810内の第1の開口部8311、第2の開口部8321及び/又は第3の開口部8331は、ハウジング1810を摩擦係合部材1820、1822の枢動軸の方向に見られるとき、断面が直線状又は実質的に直線状のフィラメント係合面を有し得る。それぞれの係合面は、使用時、フィラメントの平坦な部分又は実質的に平坦な部分に摺動可能に係合する。
【0327】
図26dを参照すると、横断面において、第1の開口部8311、第2の開口部8321及び/又は第3の開口部8331は、ハウジング1810を通して延びる長手方向軸と整列され得る。換言すれば、長手方向軸は、第1の開口部8311、第2の開口部8321及び/又は第3の開口部8331のそれぞれの中心を通過する。
【0328】
図26e及び図26fは、一実施形態によるハウジング1810のそれぞれの正面図及び後面図を示す。図26eは、一実施形態によるハウジング1810の正面図を示し、第3のフィラメントガイド/端壁833、第3の開口部8331及び側壁85が特定される。図26fは、一実施形態によるハウジング1810の後面図を示し、この図では、第2のフィラメントガイド/端壁833、第2の開口部8321及び側壁85が特定される。
【0329】
図26e及び図26fから観察され得るように、それぞれの端壁は、改良されたツーリングを可能にするドラフト角261を含み得る。
【0330】
また、それぞれの側壁85と端壁833、832との間に段差262が提供されることが観察され得る。これは、改良されたマルチコアツール設計を可能にし得る。
【0331】
図26gを参照すると、図26aのハウジングの上面図が、2つの保持された摩擦係合部材1822、1820とともに示されている。摩擦係合部材は、ここでは、係合解除形態で示されている。この実施形態では、ハウジング1810は、それぞれの第1、第2及び第3のフィラメントガイド831、832、833とそれぞれの側壁85との間に開放空洞を形成し、この空洞内において、それぞれの摩擦係合部材1822、1820は、移動することが許容される。
【0332】
図26hは、図26gの配置の底面図であり、それぞれの摩擦係合部材1822、1820のベース部材1824が狭窄セクション841によってそれぞれのスロット84内に保持されていることが明確に分かる。
【0333】
図27は、フィラメント(図示せず)がフィラメントガイド821、832、833及び/又は摩擦係合部材1820に対して、例えば右方向に引っ張られて移動したとき、摩擦係合部材1820の枢動軸がハウジング1810に対して移動することを許容するスロット84を有するハウジング1810に保持される摩擦係合部材1820の、枢動及び垂直並進変位に関する向きを示した断面概略図である。摩擦係合部材1820の向きを変えるのは、フィラメントと、摩擦係合部材1820が保持されるハウジング1810との間のこの相対的移動である。組み付けられたフィラメントがなければ、摩擦係合部材に対して作用する唯一の力は、重力の力である。
【0334】
より詳細には、図27は、係合解除形態から係合形態に移るときに異なる枢動角度でとられる、ハウジング1810の長手方向軸(開口部8311、8321、8331に沿って対称的に配置)及び(図27の左端の摩擦係合部材1820によって示されるような係合解除位置における)枢動軸の元の垂直位置に関する摩擦係合部材1820の相対移動の例を示す。
【0335】
摩擦係合部材1820が係合解除形態から係合形態に向かって移動するとき、枢動軸の垂直位置は、所与の枢動角に対して変化する。また、相対的な観点から、摩擦係合部材1820のアパーチャ1876は、図11及び図12に示されるような固定枢動軸の解決策の場合よりも、ハウジング1810の開口部8311、8321、8331に関してより中心に置かれることを保つことが観察され得る。換言すれば、ハウジング1810の長手方向軸に対するアパーチャ1876の垂直方向の変位は、この実施形態では低減される。これは、主として、フィラメント1830が第1のフィラメントガイド831のアパーチャ8311によって拘束されるためである。この拘束は、ハウジング入口アパーチャと出口アパーチャとの間でハウジング1810内においてフィラメント1830が変曲する傾向に抵抗し、さらに重要なことに、第1の係合部材1820と第2の係合部材1822との間の図1a及び図8に示すフィラメント1830の湾曲を少なくともある程度最小化する。その又は各フィラメントガイド831、832、833によるフィラメント1830の拘束は、各摩擦係合部材1820のアパーチャ1876がフィラメント1830の変曲に従うようにハウジング1810内で並進移動したくなることを引き起こす。フィラメント1830の剛性は、曲げ又はキンクが形成されると、フィラメントが摩擦係合部材1820、1822をハウジング1810のベースから離れて上方に持ち上げることを意味するが、それは、フィラメントが左右で拘束され、したがって上方に曲がらなければならないからである。これを可能にするために、各摩擦係合部材1820の枢動軸は、スロット84によって画定される所定の細長い経路に沿ってハウジング1810に対して垂直に変位可能である。したがって、各摩擦係合部材1820は、少なくともある程度、フィラメント1830の経路に沿うように、ハウジング1810に対して浮動又は移動することができる。
【0336】
ハウジングの長手方向軸に対するアパーチャ1876の一般的な位置合わせは、多くの要因に依存し、要因とは、例えば、フィラメント1830に対する摩擦係合部材アパーチャ1876のサイズ及び形状、ハウジング1810の隣接開口部8311、8321、8331の相対サイズ、位置、相対向き及び位置合わせ、アパーチャ1876の左面の中心と最も近いフィラメントガイド831、832、833との間の長手方向の距離、アパーチャ1876の右面の中心と最も近いフィラメントガイド831、832、833との間の長手方向の距離及び/又はフィラメント1830の必要な引っ張り力に対する摩擦係合部材1820の重さである。別の要因は、摩擦係合部材1820のそれに関する曲げに対する抵抗又は曲げに対する相対的な抵抗の点でのフィラメント1830の材料特性又は他の材料特性に関するものである。したがって、多かれ少なかれ曲がることができるフィラメント1830は、係合解除形態から係合形態に移動されるときの摩擦係合部材1820の垂直変位に影響を与えることになる。
【0337】
この範囲において、図27は、ハウジング1810に対して垂直方向に変位可能である枢動軸を有する摩擦係合部材1820が係合解除形態と係合形態との間を一般に移動し得る方法の一例の配置としてもっぱら見なすべきである。図27において、摩擦係合部材1820の両側の開口部8311、8321、8331は、長手方向軸が各開口部の中心に沿って延びるように、長手方向軸に沿って配置される。摩擦係合部材1820のアパーチャ1876の中心は、円によって識別される。同様に摩擦係合部材1820の枢動軸も円によって識別される。アパーチャ1876の右面の中心、すなわち右面の縁間の中間は、正方形によって識別される。同様に、アパーチャ1876の左面の中心、すなわち右面の縁間の中間も正方形によって識別される。これらの位置は、摩擦係合部材1820の異なる部分の経路をより容易に見ることができるように、図27において強調表示されている。
【0338】
この実施形態では、第1のフィラメントガイド831のアパーチャ8311は、横断面におけるフィラメント1830のサイズ及び形状と横断面のサイズ及び形状が密接に類似し、その結果、フィラメント1830とアパーチャ8311との間に最小限の隙間のみが存在する。同様に、ハウジング1810の入口及び出口開口部8321、8331は、フィラメント1830と同様に密接に類似させることができる。フィラメント1830、アパーチャ831及び開口部8321、8331間のこの密接な誤差は、ハウジング1810を通した所望の経路に沿ってフィラメント1830を正確に案内することを支援する。ハウジング1810を通したフィラメント1830の経路の制御は、摩擦係合部材1820の移動、したがって摩擦係合部材1820とフィラメント1830との間の摩擦係合の正確且つ所望の制御を達成することを支援する。これは、ハウジング1810に出入りするフィラメント1830が、例えば、図9dで見られるとき、より直線的又は水平な軌道でそれを行うことも保証し、湾曲又は曲がった軌道でハウジング1810に出入りする傾向を最小化する。
【0339】
図27では、摩擦係合部材の7つの異なる向きが示されている。示された向きの数は、任意であり、説明のために含まれる。摩擦係合部材1820、1822は、図27に示されるよりも大きい程度又は小さい程度に移動し得る。
【0340】
向き番号1は、係合解除形態に一致する。向き番号1では、摩擦係合部材1820の左面のアパーチャ1876の中心は、長手方向軸と交差する。向き番号7は、係合形態に一致する。向き番号7では、摩擦係合部材1820の右面のアパーチャ1876の中心は、長手方向軸と交差する。向き番号2~6は、それぞれ係合解除形態と係合形態との間の中間段階に一致する。向き番号4は、左側の面の中心とその左側に最も近いハウジング開口部との間の長手方向距離が、右側の面の中心とその右側に最も近いハウジング開口部との間の長手方向距離と等しい段階を示す。アパーチャ1876の中心は、長手方向軸上又はそれに非常に近い位置にある。この向きでは、フィラメント1830は、摩擦係合部材1820の両側で比較的均等に曲がり得る。
【0341】
図27から、アパーチャ1876の中心は、図11又は図12に示されるものと同じ円弧に沿って移動しないことを観察し得る。代替的に、向き番号1及び4間において、アパーチャ1876の中心は、長手方向軸に比較的近いままであり(所定の細長い経路に沿った枢動軸の並進移動が許容されるため)、その後、アパーチャ1876の中心と長手方向軸との間の垂直距離が着実に増加する。そこで、摩擦係合部材1820がスロット84内で垂直方向に移動することを許容することにより、アパーチャ1876の中心は、係合解除形態と係合形態との間の初期段階において長手方向軸に比較的近い状態に維持され得る。
【0342】
また、枢動軸は、向き番号1から垂直方向にわずかに下方に移動し、向き番号2でその最も低い垂直レベルを見出し、その後、向き番号3及び4間で元の枢動軸レベルと交差するように垂直方向に上方に移動することを観察することができ、その後、向き番号7でその最大値に達するまで垂直レベルが着実に増加することを見ることができる。
【0343】
上述した配置は、アパーチャ1876が、固定されない枢動軸を中心として移動することを可能にするように構成される。換言すれば、アパーチャ176は、複数の自由度、特に枢動軸を中心とした枢動移動及び枢動軸自体がハウジング1810に対して移動する並進移動に従い、ハウジング1810に対して相対的に移動するように構成される。これにより、フィラメント1830が通過するハウジング1810のアパーチャによって拘束されながらフィラメントがハウジング1810を通して移動するとき、その又は各摩擦係合部材1820、1822がフィラメント1830に追従することが可能になる。さらに、この配置は、フィラメント1830がハウジングを通して移動するとき、各アパーチャ1876の向きがハウジング1810に対して枢動し、その又は各摩擦係合部材1820、1822とフィラメント1830との間の摩擦係合を変化させることを依然として可能にする。これにより、フィラメント1830が曲がるか又はキンクした場合、係合解除形態において配置されるその水平位置よりも曲げ又はキンクがフィラメント1830のセクションを上昇させるように、その又は各摩擦係合部材1820がフィラメント1830に係合することが可能になる。
【0344】
図28を参照すると、ヘッドギア200を、伸長された/伸長している状態及び後退された/後退している状態において見ることができる。図28では、ヨーク21のみが示されていることに留意されたい。患者インタフェース102のクッション/シールは、明確にするために省略される。伸長された状態において、ヘッドギア200は、患者インタフェース102が使用者の顔から離されるように伸長される。呼吸ガスが効果的に使用者に送達されるために、患者インタフェース102は、使用者の顔と接触するべきであるため、これは、使用上望ましくない。図28aは、極端な伸長度を示すが、患者インタフェース102が使用者の顔から離れ得ることは、望ましくない。ヘッドギア200が伸長され、また図28aに示すように伸長されると、方向調整ユニット1810は、摩擦係合部材1820、1822がハウジング1810内で移動した作動状態から、摩擦係合部材1820、1822がフィラメント1830に摩擦係合してヘッドギアの伸長に抵抗する第2の状態に移行する。換言すれば、方向調整ユニット1810が作動状態であるとき、使用者の顔から離れる患者インタフェース102の移動は、抵抗される。方向調整ユニット1810が係合されるときの摩擦係合部材1820、1822の位置は、ヘッドギアが矢印Aの方向に引張伸長力を受けるときの図30を参照して見ることもできる。この位置では、摩擦係合部材1820、1822はハウジング1810及び/又はフィラメント1830に対して、例えばハウジング1810の想定垂直軸に対して傾斜される。
【0345】
ヘッドギア200が、患者インタフェース102が使用者の顔に接触する図28bに示す位置に向かって後退されると、方向調整ユニットは、非作動化され、摩擦係合部材1820、1822は、フィラメント1830に付与される摩擦力が減少するハウジング1810内の位置に移動し、フィラメント1830は、方向調整ユニットを通して比較的自由に移動することができる。方向調整ユニット1810が係合解除されたときの摩擦係合部材1820、1822の位置は、ヘッドギアが矢印Bの方向への後退力を受けるときの図31を参照して見ることもできる。この位置では、摩擦係合部材1820、1822は、ハウジング1810及び/又はフィラメントに対してあまり傾斜されない。
【0346】
図29図41を参照すると、さらなる又は修正された特徴を含む別の方向調整ユニット1800が開示されている。これらの特徴は、以下のいずれか1つ又は複数を含み、最初に図29を参照して見ることができる:
a)摩擦係合部材1820、1822は、ヘッドギア200が張力を受けるか否かに関わらず、ハウジング1810を通したフィラメント1830の滑りを防止するか又は少なくとも低減するように、摩擦係合部材1820、1822が常にフィラメント1830に摩擦係合するように予備作動することができる、すなわちハウジング1810内に配置することができる。したがって、摩擦係合部材1820、1822は、それらの位置又はヘッドギア200が張力を受けるか否かに関わらず、常にフィラメント1830に摩擦係合する。しかしながら、摩擦係合の量は、ハウジング1810及びフィラメント1830に対する摩擦係合部材1820、1822の位置に依存して依然として変化する。これを達成する方法に関する一例は、ハウジング1810の垂直軸に対して及び/又はフィラメント1830に対して摩擦係合部材1820、1822を傾斜させて、ハウジング1810を通したフィラメント1830の不要な滑りを防止するか又は少なくとも減少させることである。
b)フィラメント入口及び出口開口部1876は、予備作動中にフィラメント1830が座屈することを可能にするために、垂直方向により大きいことができる。
c)摩擦係合部材1810、1822と接触面との間の表面張力を低減するために、ハウジング1810内の1つ又は複数の内部接触面を変更し得る。表面張力は、接触面が湿っているとき又は表面に汚染物質があるときに存在し得る。これは、摩擦係合部材1820、1822がハウジング1830内の所与の位置で固着することを回避又は低減するのに役立ち得る。
d)組立中、ハウジング1810内の摩擦係合部材1820、1822の正しい位置を促すためのハウジング1810の修正。
【0347】
これらの図の任意の1つ又は複数を図1図28の方向調整ユニット1800の特徴の任意のものと組み合わせることができる。
【0348】
図32を参照すると、摩擦係合部材1820、1822の予備作動の特徴を見ることができる。この予備作動は、ヘッドギア200が伸長される前に、摩擦係合部材1820、1822が、第2の状態に移行する前に、所定の程度までフィラメント1830に摩擦係合することを保証するものである。
【0349】
これは、開口部1876の中心軸がハウジング入口開口部1860の中心軸と平行でないように摩擦係合部材1820、1822及びハウジング1810を構成することによって達成される。換言すれば、摩擦係合部材1820、1822及びハウジング1810は、開口部1860を通してハウジング1810に入り、開口部1876を通したフィラメント経路が非直線又は蛇行状であるように構成される。
【0350】
摩擦係合部材1820、1822は、それぞれ上部アーム部分1874を含み、その軸1874Aは、摩擦係合部材1820、1822が予備作動状態であるとき、ハウジング1810の垂直軸VAに対して傾斜される。図32で分かるように、開口部1876の中心軸1876Aは、ハウジング入口開口部1860の中心軸1860Aと非平行である。したがって、ヘッドギア200の伸長に抵抗している間又はその最中に引張力がフィラメント1830に加えられる前に、上部アーム部分1874は、ハウジング1810の垂直軸VAに対して、すなわちフィラメントの長手方向軸に垂直な軸に対して傾斜される。フィラメント1830がハウジング1810を通して延びるにつれて、フィラメント長手方向軸が移動し且つ/又は曲がることが理解されるであろう。本発明者らは、ここで、想定されるフィラメント軸が、ハウジング入口開口部の中心軸1860Aとハウジング出口開口部1860の対応する中心軸とを結ぶ線であることに言及する。摩擦係合部材1820の中心軸1876Aは、ハウジング入口開口部1860の中心軸1860Aに対して傾斜角を有することになる。この例では、摩擦係合部材1820の中心軸1876Aは、ハウジング1810のベースに対して傾斜角を有することになる。この傾斜角、すなわち予備作動角度PAは、アパーチャ1876を通したフィラメント経路がフィラメント長手方向軸と完全に整列しないようにし、したがってアパーチャ1876がある程度、フィラメント1830に摩擦係合するようにするものである。0~4°の予備作動角度PAが許容可能であると決定される。約3°の予備作動角度PAが好ましいと考えられる。予備作動角度PAは、フィラメント1830の長手方向軸に対して測定され得る。また、この予備作動角度は、フィラメント1830の長手方向軸及びフィラメントアパーチャ1876の中心軸CAが傾斜されるか又は非平行であるようなものであることが分かる。
【0351】
図33を参照すると、上部アーム部分1874、すなわちフィラメントアパーチャ1876を含むアームの部分の角度は、引張力がヘッドギア200に加えられると、予備作動角度PAから作動角度AAに増加する。そのような引張力は、摩擦係合部材1820、1822がヘッドギア伸長を再検討している間及び/又はヘッドギア伸長中など、ヘッドギア伸長が起こる前に加えられ得る。作動角度AAは、1~30°だけ予備作動角度を増加し得る。一例では、作動角度AAは、最大25°であり得る。図33の例では、作動角度AAは、約9°であり、すなわち、摩擦係合部材1820、1822は、予備作動角度PAから約6°枢動する。
【0352】
摩擦係合部材1820、1822に予備作動角度PAを与えることは、ハウジング1810内において、且つフィラメント1830が入口及び出口アパーチャ1860を介してハウジング1810に出入りするとき、フィラメント1830が座屈する効果を有することができる。図29及び図34を参照すると、ハウジング1810内のフィラメント入口及び出口アパーチャ1860の垂直寸法1860Hは、概して垂直方向におけるフィラメント1830の座屈に対応するように増加される。
【0353】
ハウジング1810内の入口及び出口アパーチャ1860の垂直寸法1860Hは、好ましくは、フィラメント1830の垂直寸法より10~50%大きい。入口及び出口アパーチャ1860の必要な垂直寸法は、予備作動角度PAに比例し、より大きい予備作動角度PAは、より大きい垂直寸法を有するアパーチャ1860を必要とする。
【0354】
一例では、例えば1mm×1mmの正方形の断面を有する正方形のフィラメント1830が提供され得る。この例では、入口及び出口アパーチャ1860は、約1.25mmの垂直寸法、すなわちフィラメントの垂直寸法より約25%大きい垂直寸法を有する。この例では、入口及び出口アパーチャ1860は、約1.1mmの横断寸法を有する。
【0355】
図29及び図35を参照すると、
a)入口アパーチャ1860-上面1860Tは、フィラメント1830に係合する。
b)出口アパーチャ1860-底面1860Bは、フィラメント1830に係合する。
【0356】
図35は、摩擦係合部材1820、1822が作動状態における方向調整ユニット1820のCTスキャンの線画であり、摩擦係合部材1820、1822の作動角度AAによってフィラメント1830が座屈される状態を示す。
【0357】
図36を参照すると、この図は、摩擦係合部材1820、1822が非作動状態であるとき、摩擦係合部材1820、1822の上部アーム部分1874が当接するハウジング1810の内壁W間の想定接触領域CRを概略的に示す。摩擦係合部材1820、1822と壁Wとの間の当接は、ハウジング1810内での摩擦係合部材1820、1822の移動の範囲を制限する役割を果たす。
【0358】
図36に示すように、ハウジング1810の内壁Wは、実質的に平面であり、上部アーム部分1874の平面的な面が静止する比較的大きい接触領域CRをもたらす。この比較的大きい接触領域CRは、例えば、方向調整ユニット1800が使用中に湿った状態になったとき、又は洗浄後、又は他の汚染物質にさらされたとき、摩擦係合部材1820、1822とハウジング1810の隣接する内壁Wとの間に作用する表面張力をもたらし得る。この表面張力は、摩擦係合部材1820、1822が非作動/予備作動状態で固着し得るように、非作動/予備作動状態と作動状態との間の摩擦係合部材1820、1822の移動を好ましくない方法で妨げ得る。
【0359】
摩擦係合部材1820、1822の内壁W及び/又は上部アーム部分1874は、内壁Wと上部アーム部分1874との間のより小さい接触面積を提供するように修正することが可能である。
【0360】
この減少した接触面積をどのように達成することができるかの例には、以下のいずれか1つ又は複数が含まれる:
a)内壁Wの一部が内壁Wの残りの部分よりもハウジング1810内にさらに突出するように内壁Wを配置すること;
b)内壁W及び/又は摩擦係合部材1820、1822により小さい接触領域CRを画定し、したがって摩擦係合部材1820、1822の固着を減らすのに役立つ1つ又は複数の離散的な表面形状部を提供すること。
【0361】
1つ又は複数の離散的な表面形状部は、以下を含み得る:
a)内壁W及び/又は摩擦係合部材1820、1822から突出する1つ又は複数の突出部分;
b)内壁W及び/又は摩擦係合部材1820、1822に1つ又は複数の凹部を提供すること。
【0362】
記載した例では、ハウジング1810の内壁Wに接触するのは、摩擦係合部材1820、1822の上部、すなわち上部アーム部分1874である。しかしながら、摩擦係合部材1820、1822の任意の他の部分は、ハウジング1810の内壁Wに接触するように構成され得ることが想定される。
【0363】
同様に、ハウジング1810の内壁Wは、第1の形態であるとき、摩擦係合部材1820、1822が当接するハウジング1810のいずれかの内面であり得る。
【0364】
図37を参照すると、この例では、内壁Wの一方又は両方は、内壁Wの平面から、摩擦係合部材1820、1822の方向にハウジング1810内に突出する突出部分Pを含む。突出部分Pは、非作動/予備作動状態であるとき、摩擦係合部材1820、1822が当接する比較的小さい表面積の当接面を提供する。この比較的小さい突出部分Pは、図36の例と比較して、あらゆる表面張力を低減する。
【0365】
図37の例では、突出部分Pは、内壁Wの下部がハウジング1810内に突出するように、ハウジング1810の垂直軸VAに対して内壁Wを傾斜させることによって提供される。特に、内壁Wの下縁は、ハウジング内に突出する。内壁Wの傾斜は、線Lで示されている。
【0366】
この例では、内壁Wの傾斜のさらなる効果は、これが摩擦係合部材1820、1822を上述の予備作動位置に強制的に押し込むことである。方向調整ユニット1800は、このように、ハウジング1810と、フィラメント1830が通過する摩擦係合部材1820、1822の対とを含み、ハウジング1820は、摩擦係合部材1820、1822の一方が静止する少なくとも1つの内面を含み、内面は、摩擦係合部材1820、1822が静止状態であるときにフィラメント及び/又はハウジング1810のベースに対して傾斜するように傾斜を付けられ、それにより摩擦係合部材1820、1822が静止状態から離れる前に、例えばフィラメント1830に引張力が加えられたとき、フィラメント1830に摩擦係合するようにする。
【0367】
別の例では、内壁Wは、内面の上部がハウジング1810内に突出するように傾斜させることができる。
【0368】
別の例では、ハウジング1810の1つの内壁Wのみが突出部分Pを含む。これは、いずれの表面張力も低減するのに十分であり得る。しかしながら、ハウジング1810の両方の内壁Wが突出部分Pを含み得ることが想定される。
【0369】
図38を参照すると、突出部分Pのさらなる例が開示されている。これらの例では、突出部分Pは、平面的な内壁Wから突出する離散的な突出形状部を含む。このように、壁Wは、ハウジング垂直軸VAと実質的に平行であるか又は傾斜され得る。
【0370】
図38aの例では、突出部分Pは、係合解除状態であるときに摩擦係合部材1820、1822が静止する離散的な接触縁PEを提供する三角形の突出部によって提供される。このような離散的な接触縁PEは、比較的小さい接触面積を有する。
【0371】
図38bの例では、突出部分Pは、湾曲した外面を有するドームを含む突出部によって提供される。この例における突出部分Pは、半球状である。摩擦係合部材1820、1822は、この例では、突出部分Pに接線で接触し、ここでも、接触領域CRは、比較的小さい。
【0372】
図38cの例では、突出部分Pは、内壁Wの少なくとも一部に沿って延びるリブによって提供される。リブは、内壁Wの全幅に沿って、摩擦係合部材1820、1822の全幅に沿って又は内壁W又は摩擦係合部材1820、1822の幅の一部のみに沿って延び得る。
【0373】
リブは、実質的に直線状若しくは円弧状又はその組み合わせであり得る。
【0374】
その又は各内壁Wに複数の突出部分Pを提供することができる。突出部分は、等間隔であり得る。
【0375】
内壁W上の形状部は、1つ又は複数の隣接する凹部を含み得る。凹部は、摩擦係合部材1820、1822の上部アーム部1874に接触する内壁Wの表面積を減少させる役割も果たす。凹部は、スロット又は例えばディンプルを含み得る。凹部は、より大きい/より広い溝又はチャネルを含み得る。
【0376】
代替的に又は追加的に、摩擦係合部材1820、1822は、1つ又は複数の突出部分P又は1つ又は複数の凹部を提供され得る。特に、上部アーム部分1874は、そのように提供され得る。
【0377】
また、摩擦係合部材1820、1822及び内壁Wの両方は、1つ若しくは複数の突出部分P及び/又は1つ若しくは複数の凹部を提供され得ることも想定される。
【0378】
突出部分は、内壁W全体が凸状又は凹状であることによって提供され得る。内壁Wが凸状である場合、内壁Wの中央の頂点部分のみが摩擦係合部材1820、1822に接触する。内壁Wが凹状である場合、内壁Wの周縁部のみが摩擦係合部材1820、1822に接触する。
【0379】
上述したように、摩擦係合部材1820、1822は、組立中にハウジング1810のベースを通してハウジング1810に挿入される。図39を参照すると、挿入方向が矢印Aで示されている。組立プロセスのこの部分を支援するために、摩擦係合部材1820、1822が挿入される2つのハウジング空洞C1、C2の上部は、傾斜した遷移部分TPを含み得る。この例では、各遷移部分TPは、円弧状である。各遷移部分TPは、直線状及び/又は平面状であり得る。摩擦係合部材1820、1822の上部アーム部分1874がそれぞれのハウジング空洞C1、C2に上向きに移動すると、傾斜した遷移部分TPは、摩擦係合部材1820、1822のアパーチャ1876が空洞C1、C2に完全に挿入されてハウジング1810の入口及び出口アパーチャ8321、8331と整列するように、ハウジング1810の狭い上部部分に上部アーム部分1874を案内することを促進する。傾斜した遷移部分TPは、摩擦係合部材1820、1822がハウジング1810に挿入されるとき、上部アーム部分1874を空洞C1、C2の壁から離れて、空洞C1、C2の中心に向かって方向付けるように作用する。
【0380】
図40は、図28図39の特徴に従うハウジング1810の図を示す。図40eは、摩擦係合部材1820、1822を収容する2つの空洞を連結するハウジング1810の上面における開口部Oも示す。これは、製造中、ツーリングのためのアクセスを容易にする。
【0381】
図28図41の方向調整ユニット1810は、上述した特徴の任意の1つ又は任意の組み合わせを含み得ることが理解されるであろう。例えば、方向調整ユニット1810は、摩擦係合部材1820、1822が予備作動角度を有するが、表面張力を低下させる特徴を有さないように構成され得る。
【0382】
一般に、上記の実施形態は、複数の摩擦係合部材1820、1822を参照して記載されていることが理解されるであろう。また、上述した利点のいくつか又はすべては、1つの摩擦係合部材1820、1822のみを含む方向調整ユニットになおも提供され得ることも想定される。同様に、3つ以上の任意の数の摩擦係合部材1820、1822を提供することも可能である。
【0383】
複数の摩擦係合部材1820、1822が提供される場合、各摩擦係合部材1820、1822の移動は、他の摩擦係合部材1820、1822の移動から独立し得る。例えば本明細書の図の向きでは、左側の摩擦係合部材1820は、右側の摩擦係合部材1822から独立して移動し得る。移動の独立性は、ハウジング1810に対する独立した枢動移動及び/又は独立した並進移動であり得る。一方の摩擦係合部材1820、1822の枢動軸は、他方の枢動軸から独立して移動することができる。
【0384】
さらに、任意の数のフィラメントガイドを提供することができる。ハウジング1810の入口及び出口にのみフィラメントガイドを提供することで十分であり得る。また、各対の摩擦係合部材1820、1822間又は摩擦係合部材1820、1822の1つ又は一部のみの間又は隣接してフィラメントガイドを提供することで十分であり得る。
【0385】
ヨーク自体が少なくとも1つの摩擦係合部材1820、1822のためのハウジング1810を提供できる例では、ハウジング1810の任意の又はすべての特徴、例えばスロット84、フィラメントガイド及びハウジングのベース、側面及び上面の任意のもの又はすべて並びに任意の中間壁などをヨーク上に提供することができる。
【0386】
本明細書を通して別段明確な要求がない限り、「含む」、「含んでいる」等の語句は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に包括的な意味、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0387】
本発明について、例として且つそのあり得る実施形態に関して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、そうした実施形態に対する変更形態又は改善形態がなされ得ることが理解されるべきである。本発明は、個別に又は集合的に、本出願の本明細書において言及又は指示した部分、要素及び特徴を前記部分、要素又は特徴の2つ以上のあらゆる組合せで含むと広義に言うこともできる。さらに、既知の均等物を有する本発明の所定の構成要素又は完全体について言及する場合、こうした均等物は、個々に示されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0388】
本明細書に記載した現時点で好ましい実施形態に対する様々な変形形態及び変更形態が当業者に明らかになるであろうことに留意すべきである。こうした変形形態及び変更形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、且つその付随する利点を低減させることなく作成することができる。例えば、様々な構成要素は、必要に応じて位置を変えることができる。したがって、こうした変形形態及び変更形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。さらに、本発明を実施するために、特徴、態様及び利点のすべてが必ずしも必要であるとは限らない。したがって、本発明の範囲は、続く特許請求の範囲によってのみ定義されるように意図される。
【0389】
本明細書を通して従来技術のいかなる考察も、そうした従来技術が本分野において広く知られているか、又は共通の一般知識の一部を形成する容認として決して見なされるべきではない。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図10a
図10b
図10c
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図15a
図15b
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図16f
図16g
図16h
図16i
図16j
図17a
図17b
図17c
図18a
図18b
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26a
図26b
図26c
図26d
図26e
図26f
図26g
図26h
図27
図28a)】
図28b)】
図29
図30a)】
図30b)】
図31a)】
図31b)】
図32
図33
図34a)】
図34b)】
図35
図36
図37
図38a)】
図38b)】
図38c)】
図39
図40a)】
図40b)】
図40c)】
図40d)】
図40e)】
図41a)】
図41b)】
図41c)】
図41d)】