IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マック ライズ アイピー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-アミューズメント乗り物 図1
  • 特許-アミューズメント乗り物 図2
  • 特許-アミューズメント乗り物 図3
  • 特許-アミューズメント乗り物 図4
  • 特許-アミューズメント乗り物 図5
  • 特許-アミューズメント乗り物 図6a
  • 特許-アミューズメント乗り物 図6b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アミューズメント乗り物
(51)【国際特許分類】
   A63G 31/16 20060101AFI20241031BHJP
   A63G 31/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A63G31/16
A63G31/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022562768
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020086814
(87)【国際公開番号】W WO2021209167
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】102020110219.4
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522402302
【氏名又は名称】マック ライズ アイピー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Mack Rides IP GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾルニック フランク
(72)【発明者】
【氏名】ケベーレ トールセン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ミヒャエル
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/096211(WO,A1)
【文献】特開平09-066170(JP,A)
【文献】特開2009-254731(JP,A)
【文献】特開2012-200457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0014567(US,A1)
【文献】実開平01-096359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 31/16
A63G 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口及び/又は出口領域(8)並びに体験領域(9)と、
少なくとも1つの第1の座席列配置部(20)を有するフレーム(10)と、
を有し、
前記第1の座席列配置部(20)は、乗客のための少なくとも1つの座席(41)を有する少なくとも1つの座席列(40)を昇降する昇降装置(50)と、前記昇降装置(50)に接続されたリンク(30)と、を有し、
前記少なくとも1つの座席列(40)は、ジョイント(45)を介して前記リンク(30)に接続され、
前記リンク(30)は、前記ジョイント(45)と前記フレーム(10)とを接続し、
前記昇降装置(50)は、前記少なくとも1つの第1の座席列配置部(20)の前記少なくとも1つの座席列(40)を垂直軸(Z)の方向に持ち上げることが可能であり、
前記少なくとも1つの座席列(40)が、前記入口及び/又は出口領域(8)並びに前記体験領域(9)に配置されることが可能であり、
少なくとも1つのアクチュエータ(51、52、53)が設けられ、前記少なくとも1つのアクチュエータ(51、52、53)が、前記少なくとも1つの座席列(40)に、前記ジョイント(45)に関するローリング運動、ピッチング運動及び/又はヨーイング運動を付与するように構成され、
前記少なくとも1つのアクチュエータ(51、52、53)は、クランク駆動装置(55)及び/又は回転駆動装置を有すること
を特徴とするアミューズメント乗り物(1)。
【請求項2】
前記フレームは、前記入口及び/又は出口領域(8)と前記体験領域(9)との間で前記垂直軸(Z)を中心として回転可能であることを特徴とする請求項1に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの座席列(40)は、前記入口及び/又は出口領域(8)と前記体験領域(9)との間で前記垂直軸(Z)の方向に昇降することにより、前記入口及び/又は出口領域(8)と前記体験領域(9)とへ移動可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの座席列(40)は、前記入口及び/又は出口領域(8)と前記体験領域(9)との間で前記垂直軸(Z)を横切る軸に沿って移動することにより、前記入口及び/又は出口領域(8)と前記体験領域(9)とへ移動可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項5】
前記ジョイント(45)は、少なくとも2つの自由度を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項6】
前記ジョイント(45)は、ボールジョイント、ユニバーサルジョイント、又は十字ジョイントの何れかであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの座席列(40)のローリング運動及び/又はピッチング運動を共同で発生させることができる2つのアクチュエータ(51、52、53)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項8】
前記リンク(30)は、少なくとも2つの横脚(32)と少なくとも1つの縦脚(34)とを有する平行四辺形リンクであることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの縦脚(34)は、前記垂直軸(Z)に平行に配置されていることを特徴とする請求項8に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの縦脚(34)は、一端が前記昇降装置(50)に結合されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項11】
前記昇降装置(50)は、伸縮式ピストン油圧式シリンダであることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの座席列(40)は、互いに並んで配置された複数の座席(41)を有し、及び/又は、前記座席列(40)は、凹形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の座席列配置部(20)は、互いに間隔を空けて配置された少なくとも2つの座席列(40)を有することを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項14】
少なくとも1つの更なる座席列配置部(21)が設けられ、前記少なくとも1つの更なる座席列配置部(21)が、前記第1の座席列配置部(20)から距離を置いて前記フレーム(10)上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項15】
前記第1の座席列配置部(20)及び前記少なくとも1つの更なる座席列配置部(21)は、前記垂直軸(Z)の反対側にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項14に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項16】
前記第1の座席列配置部(20)と前記少なくとも1つの更なる座席列配置部(21)との間に、不透明及び/又は吸音性の壁(24)が設けられていることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【請求項17】
2つの前記座席列配置部(20、21)は、前記垂直軸(Z)を中心とする回転、前記垂直軸(Z)に沿った昇降、または前記垂直軸(Z)を横切る軸に沿った移動によって、前記入口及び/又は出口領域(8)並びに前記体験領域(9)の間で交互に移動することが可能であることを特徴とする請求項14乃至請求項16の何れか一項に記載のアミューズメント乗り物(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有するアミューズメント乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミューズメント乗り物は、様々な構成のものが従来から知られており、遊園地や公共のお祭りなどで、多数の乗客の娯楽として使用される静止型または半静止型の装置である。
【0003】
これまでのアミューズメント乗り物は、体験の提示、特にマルチメディア体験として、動き、映像、環境音、特殊効果などを組み合わせ、乗客の五感に訴えるように構成されていた。このようなアミューズメント乗り物は、従来から、例えば「フライングシアター」と呼ばれている。この「フライングシアター」は、また、マルチメディア的、マルチ感覚的で、メディアを駆使したアトラクションとして定義されている。映写や体験のプレゼンテーションは、フィルムドームで行われる。
【0004】
このような種類のアミューズメント乗り物は、通常、複数の座席を有する座席列を有し、座席列は、6つのプリズム状に配置されたアクチュエータを有するヘキサポッド(スチュワートプラットフォーム)によってフレーム上に配置されている。アクチュエータは、フレームと座席列の3カ所にペアで取り付けられている。このヘキサポッドにより、座席列は直線3方向とピッチ、ロール、ヨーの3つの回転の6自由度で移動することができる。
【0005】
プロジェクションドームのフィルムスクリーンを遮るものがないようにするため、通常、座席の列はヘキサポッドによって入退場位置からプロジェクションドームの前方に移動し、体験中はその位置に留まる。乗客の乗降のために、座席列の前方に乗降スペースが確保できるまで、座席列が後方へ移動される。このようなアミューズメント乗り物は、例えば、US9311 599 B1(特許文献1)により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US9 311 599 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような種類のアミューズメント乗り物は、従来は有効であると実証されてきたが、ヘキサポッド(スチュワートプラットフォーム)での操作は複雑でコストがかかり、人手がかかるという欠点があることが判明している。また、最大収容人数が限られ、フィルムドームに落下しないようにするため乗客の安全な乗降には、かなりの費用がかかるというデメリットもある。
【0008】
また、従来技術から知られているアミューズメント乗り物は、スチュワートプラットフォームの設計のためにかなりの建設スペースを必要とし、ヘキサポッドの複雑な構成と低い処理能力のためにアミューズメント乗り物の収益性が損なわれるという欠点がある。
【0009】
本発明の目的は、従来から知られているアミューズメント乗り物の欠点を好適に解消する改良型乗り物を提案することである。さらに、本発明の目的は、アミューズメント乗り物の少なくとも1列の座席を数自由度で移動させることができる簡素で堅牢な移動装置を有し、省スペース設計であり、移動における高い力動性を可能にするアミューズメント乗り物を提案することである。また、本発明によるアミューズメント乗り物は、高い乗客スループットと低い人員要件での安全な運行を可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題は、請求項1の特徴を有するアミューズメント乗り物によって解決される。
【0011】
本発明の更なる有利な実施形態は、従属請求項において与えられる。
【0012】
請求項1の特徴を有するアミューズメント乗り物は、入口及び/又は出口領域並びに体験領域と、少なくとも1つの第1の座席列配置部を有するフレームと、を有し、座席列配置部は、リンクと、乗客のための少なくとも1つの座席を有する少なくとも1つの座席列と、昇降装置とを有する。少なくとも1つの座席列は、ジョイントを介してリンクに接続されており、リンクは、ジョイントとフレームとを接続し、昇降装置は、少なくとも1つの第1の座席列配置部の少なくとも1つの座席列を垂直軸の方向に沿う運動、すなわち昇降が可能であり、少なくとも1つの座席列が、入口及び/又は出口領域並びに体験領域で移動可能である。
【0013】
本発明は、少なくとも1つの座席列がジョイントとリンクを介してフレームに接続され、リンクはフレームから片持ちアームのように突出し、単一の旋回軸を中心に揺動可能にフレームに保持されるという考えに基づいている。昇降装置は、旋回軸を中心にリンクを揺動させることができ、少なくとも1つの座席列を第1の自由度で昇降させることが可能である。少なくとも1つの座席列の更なる自由度の運動がリンクと少なくとも1つの座席列の間のジョイントを中心として発生する。
【0014】
体験領域は、投影面を有する部屋を有することができ、投影面は、ドーム状または球状とすることができる。入口及び又は出口領域は、複数の階層を有していてもよく、階層の数は、座席列配置部における座席列の数に対応し得る。それぞれの階層にプラットフォームを設け、乗客が乗降する際に、その上にそれぞれの座席列が位置される。さらに、フレームを垂直軸の周りに回転させると、それに応じて少なくとも1つの座席列が昇降装置によって持ち上げられる。
【0015】
さらに、本発明は、少なくとも1つの座席列配置部の少なくとも1つの座席列を移動させることにより、空間的に分離した入口及び/又は出口領域と体験領域との間で少なくとも1つの座席列を往復させることができる、という考えに基づいている。例えば、入口及び/又は出口領域にいる乗客は、好適には、体験領域での体験を知覚しないことができ、他の乗客は、体験領域での体験を楽しみながら、搭乗及び/又は降りるプロセスを知覚することができず、結果として、妨害又は気が散ることがない。このようにされたアミューズメント乗り物は、体験価値とスループットの両方を大幅に向上させることができる。本発明の更なる有利な実施形態では、フレームが、入口及び/又は出口領域と体験領域の間で、垂直軸を中心に回転可能である。その結果、フレームは垂直軸を中心として回転させることができ、入口及び/又は出口領域と体験領域とが垂直軸に対して異なる周方向角度をもって配置される。入口領域、体験領域、及び出口領域は、空間的に分離されていてもよく、入口領域は、専ら乗客の搭乗のためにあり、出口領域は、少なくとも1つの座席列のうちの少なくとも1つの座席から降りるためにある。このような構成では、入口領域から体験領域を経て出口領域まで乗客が移動するため、特にアミューズメント乗り物内の乗客の流れを制御しやすくなる。あるいは、入口及び/又は出口領域は、乗客が乗り降りする共通の領域であってもよい。
【0016】
本発明のさらに有利な実施形態では、入口及び/又は出口領域並びに体験領域で、少なくとも1つの座席列が昇降により垂直軸方向に移動可能である。入口及び/又は出口領域並びに体験領域は、垂直軸に対して異なる階層に配置することができる。
【0017】
さらに、本発明のさらなる発展として、少なくとも1つの座席列は、垂直軸を横切る方向の軸に沿った移動によって、入口及び/又は出口領域と体験領域とへ移動可能である。
【0018】
本発明の更なる有利な構成によれば、ジョイントが、少なくとも2自由度、好ましくは3自由度の動きを可能にする。少なくとも2つの自由度は、好ましくは、ピッチ、ロールおよび/またはヨーの3つの回転方向のうちの少なくとも2つを含み、それによって好ましくは、ジョイントは、ピッチ、ロールおよび重畳したロールピッチ動作を可能にする。好ましい構成では、ジョイントは座席列の長手方向軸のほぼ中央の質量中心に位置する。
【0019】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、座席列とリンクの間のジョイントが、ボールジョイント、ユニバーサルジョイント及び/又は十字ジョイントである。好ましくは、ボールジョイント、ユニバーサルジョイント及び/又は十字ジョイントは、旋回点を有している。
【0020】
さらに、本発明のさらなる展開によれば、少なくとも1つの座席列のローリング、ピッチング及び/又はヨーイング運動を発生させることができる少なくとも1つのアクチュエータを備える。少なくとも1つのアクチュエータは、好ましくは、1つの座席列を動かすことができ、あるいは、複数の座席の列を、対応する結合手段を介して少なくとも1つのアクチュエータによって列外に出し、または、移動させることができる。少なくとも1つのアクチュエータは、一端がリンクに、他端が座席列に支持され、さらに好ましくは、電気的、空気圧的及び/又は油圧的に駆動することができる。少なくとも1つのアクチュエータは、体験に合わせた座席列の動的な動きを生成できるように、短い反応時間と高い運動性を有することが望ましい。
【0021】
本発明のさらなる発展として、ロール、ピッチおよび/またはヨーの動きを共同で発生させることができる少なくとも2つのアクチュエータが設けられる。2つのアクチュエータは、互いに独立して作用することができ、協調的な送り動作によって、ロール、ピッチおよび/またはヨーの動き、好ましくは共通の旋回点、すなわちジョイントの旋回点を中心とする回転の動きを生じさせることができる。
【0022】
さらに、少なくとも1つのアクチュエータがクランク駆動装置または回転駆動装置であると有利である。クランク駆動装置は、それぞれの座席列に結合され、従動クランクの位置によって座席列を、ジョイントを中心に偏位させる従動クランクに偏心して支持された連結ロッドを有し得る。アミューズメント乗り物のさらなる発展形として、回転駆動装置は、電気式、油圧式または空気圧式の回転駆動装置とすることもでき、油圧式の回転駆動装置が特に好ましい。
【0023】
本発明のさらなる実施形態によれば、リンクは、少なくとも2つの長さ方向脚部と少なくとも1つのサイド脚部とを有する平行四辺形リンクであってもよい。少なくとも2つの長さ方向脚部は、一方ではフレーム上の旋回軸にそれぞれ回転可能に配置され、同様に少なくとも1つのサイド方向の脚にも接続されている。長さ方向脚により、少なくとも1つのサイド脚は、フレームから間隔をあけて配置されている。平行四辺形リンクは、フレームに対してサイド脚の向きを予め定めることができ、好ましくは、平行四辺形リンクの少なくとも1つのサイド脚が垂直軸と平行、すなわち垂直に配置される。したがって、少なくとも1つの座席列は、少なくとも1つのアクチュエータを個別に作動させることなく、一定のピッチ角で昇降させることができる。ジョイントと少なくとも1つのアクチュエータのための収容部は、サイド脚に設けることができる。さらに、フレーム、リンク、プレゼンテーション装置や隣接する座席列を乗客の視界から遮るスクリーンを設けることも可能である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つのサイド脚が昇降装置に結合されている。少なくとも1つのサイド脚は、長さ方向脚と接続することができ、純粋に圧縮荷重を受ける部品として、荷重に適合した断面形状を有することができる。昇降装置の力点位置の選択により、一種のカップリング駆動により、昇降装置の送り動作を加速または減速するように伝導することができる。
【0025】
本発明のさらに有利な実施形態では、昇降装置が伸縮式ピストン、特に油圧式シリンダである。このような昇降装置は、十分な動力により大きな力を発生させることができるため、好ましくは、少なくとも1つの座席列を垂直軸方向に昇降させるために単一の油圧シリンダのみが使用される。
【0026】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの座席列が、少なくとも2つの座席列を有する。少なくとも2つの座席列は、間隔を空けて配置されている。それぞれの座席列配置部の少なくとも2つの座席列が、他の1つの上に、すなわち垂直軸の方向に間隔をあけて配置されていると、特に好ましい。特に、少なくとも2つの座席列がそれぞれ平行四辺形リンクによってフレームに連結されていると好ましい。少なくとも2つの座席列のリンクは、さらなるサイド脚、すなわち同期ロッドによって互いに接続することができ、この同期ロッドは、好ましくは、昇降装置に直接結合される。したがって、昇降装置の昇降動作は、少なくとも2つの座席列に同期して伝達することができ、少なくとも2つの座席列の間の距離は、固定して予め定められている。このように、1つの昇降装置は、上下に配置された少なくとも2つの座席列を同期して昇降させるので、衝突を排除することができ、少なくとも2つの座席列の昇降位置を同期させるための追加の手段は必要ない。そのため、昇降装置の性能の利用やコスト構造を改善することができる。
【0027】
本発明のさらなる展開によれば、上下に配置された2つの座席列の間のフレームに、プレゼンテーション技術、特にプロジェクタを配置することができ、このプロジェクタは、スクリーン、特にドーム状のスクリーンにフィルム投影を行うように構成されている。
【0028】
本発明の更なる有利な実施形態は、少なくとも1つの座席列が、並んで配置された複数の座席を有する。座席列の座席は、直線に沿って配置されてもよいし、好ましい実施形態では、曲線に沿って配置されてもよく、垂直軸の半径方向に対して外側に向かう凹状の形状を有する。このようにそれぞれの座席列の座席を配置することで、個々の乗客の体験の視点は向上し、同じ広さを維持しながら座席列の座席数を増やすことができる。
【0029】
さらに、本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つのさらなる座席列が設けられ、さらなる座席列は、第1の座席列から距離を置いてフレーム上に配置される。
【0030】
好ましい実施形態では、第1の座席列と少なくとも1つの更なる座席列は、垂直軸の周りにオフセットして配置することができ、例えば垂直軸の反対側に配置し、すなわち回転方向で180°オフセットして配置することができる。アミューズメント乗り物の収容人数をさらに増やすために、2つ以上の座席列配置部を設けることを可能である。例えば、3列、4列、またはそれ以上の座席列配置部を垂直軸周りに等間隔に配置することができる。第1の座席列配置部と少なくとも1つの更なる座席列配置部の昇降装置および少なくとも1つのアクチュエータは、互いに独立して制御することができ、このため、座席列配置部の一方を体験モードで駆動し、他の座席列配置部を乗客が乗降できるアイドルモードとすることが可能である。このように2つの座席列配置部を配置することで、従来のアミューズメント乗り物に比べてサイクルタイム、つまり乗車定員をさらに増やすことができ、待ち時間を短縮することができる。座席列配置部の列数は同じで、座席列、すなわち座席列配置部のフレーム上のリンクの配置は、垂直軸に線対称とすべきである。
【0031】
あるいは、少なくとも2つの座席列配置部が、フレーム上で横方向または高さ方向にオフセットして配置することができる。例えば、少なくとも2つの座席列は、フレーム上の座席列配置部または座席列配置部を有するフレームのいずれかが、垂直軸に垂直な軸に沿って移動することにより、それぞれの座席列配置部の座席を入口および/または出口領域と体験領域との間で移動させることができる。
【0032】
座席列配置部が高さ方向にオフセットされて配置している場合、それぞれの座席列配置部の座席列は、垂直軸と平行な軸に沿って交互に、または任意の順序で配置することができる。一方の座席列配置部の座席列が体験領域に配置されている間、他方の座席列配置部の座席列は、入口及び/又は出口領域に配置され得る。
【0033】
好ましい実施形態によれば、アミューズメント乗り物は、少なくとも1つの入口及び/又は出口領域と、少なくとも1つの体験領域とを有し、座席列配置部は、垂直軸周りの回転によって、垂直軸における昇降によって、又は垂直軸を横切る軸に沿った移動によって、入口及び/又は出口領域又は体験領域へ交互に移動させることができる。そのため、対応する駆動装置によってフレームを垂直軸の周りに移動させることができる。この旋回運動は、すでに体験やショーの一部となり得る。
【0034】
さらに、第1の座席列配置部と第2の座席列配置部との間に不透明な壁や遮音性の高い壁を設けると有利である。不透明な壁や遮音壁は、乗降領域にいる乗客が、これから起こる体験を観察して準備する機会を既に持つことを防ぐことを目的としており、これによりサプライズ効果や体験価値を高めることができる。また、不透明及び/又は防音壁により、他の座席列配置部における乗客の体験領域における体験が、乗客の乗降によって妨げられることを防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、従来から知られているアミューズメント乗り物の欠点が好適に解消される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】垂直軸を中心に回転可能なフレームと、互いに向かい合って配置され、リンクによって移動可能にフレームに支持される、各々の座席列を有する2つの座席列配置部と、を備えたアミューズメント乗り物を上から見た非常に単純化した概略図である。
図2図1によるアミューズメント乗り物の高度に簡略化された概略側面図である。
図3図2による詳細Aの拡大図である。
図4図1によるアミューズメント乗り物の高度に簡略化された概略上面図である。
図5図4による詳細Bの拡大図である。
図6a】ジョイントがユニバーサルジョイントとして構成されているアミューズメント乗り物の第2の実施形態を示す図である。
図6b図6aの断面線A-Aによるユニバーサルジョイントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるアミューズメント乗り物の2つの例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0038】
以下、実施形態において、同一または機能的に同一の構成要素には、同一の参照符号を付しているが、個々の図では、わかりやすくするために、同一または機能的に類似した部品にすべて参照番号を付しているわけではない。
【0039】
図1は、垂直軸Zを中心に回転可能なフレーム10が、垂直軸Zと同軸に配置されたアミューズメント乗り物1を示す図である。垂直軸Z及びフレーム10は、鉛直方向に整列している。
【0040】
さらに、アミューズメント乗り物1は、フレーム10上の垂直軸Zの反対側に配置された2つの座席列配置部20、21を備えている。特に図2及び図4から分かるように、各列の座席列配置部20、21は、規則的に乗客2が着座できる複数の座席41、すなわち乗客収容部を有する3列の座席列40を備えている。座席列40の座席41は、それぞれの座席列40の縦軸Xに沿って配置されており、それぞれの縦軸Xは、初期状態において、垂直軸Zから径方向に垂直に突出する横軸Yを横切るように配置されている。それぞれの座席列40における座席41の向きは、垂直軸Zから離れる方向において横軸Yに平行であることが好ましい。座席列配置部20、21の座席列40の数は同じである。
【0041】
それぞれの座席41は、それぞれの乗客を座席41に形状結合により支持することができる支持装置42を有していてもよい。支持装置42は、図6aに示すように、例えば、安全バーや安全ベルトであってもよい。
【0042】
それぞれの座席列40は、リンク30を介してフレーム10に連結されており、リンク30と座席列40との間にはジョイント45が配置されており、ジョイント45によって座席列40がピッチ角φおよびロール角θで回転できるようになっている。ピッチ角φが±15°で回転する例が図2の左側に示されている。また、それぞれの座席列40は、ピッチ角とは独立にロール角θだけジョイント45を中心に回転することができ、図4に示すように、ロール角θは約±10°とすることができる。従って、ジョイント45は、少なくとも2自由度での回転運動が可能である。ジョイント45は、横軸Yに配置されている。
【0043】
ジョイント45は、図3および図5に示すように、ボールジョイントとして構成することができ、このボールジョイントは、それぞれの縦軸Xにおいてそれぞれの座席列40を中心に、すなわち質量中心の平面で支持する。
【0044】
リンク30は、平行四辺形リンクとして構成されており、それぞれの座席列40は、平行四辺形リンクを介してフレーム10に連結される。平行四辺形リンクは、台形を形成する複数の横脚32と縦脚34を有する。横脚32は、旋回軸を中心に回転可能なように一端がフレーム10に旋回ジョイント12で支持され、片持ちアームの要領でフレーム10から突出している。他端では、横脚32は、縦脚34を介してフレーム10から離れる方向に向く側で、さらに旋回ジョイント12によって接続されている。縦脚34のフレーム10から離れる側の面には、座席列40を支持するジョイント45が配置される収容部36が設けられている。また、アミューズメント乗り物1の機構を乗客の視界から遮るために、スクリーン38を設けてもよい。それぞれの座席列配置部20、21における座席列40は、垂直軸Zに沿って互いに離間しており、これにより、座席列40の間には、例えば、衝突を回避するのに十分な距離が確保されている。好ましくは、2つの座席列配置部20、21の座席列40または座席列40のリンク30は、垂直軸Zに関して対称に配置される。
【0045】
さらに、収容部36には、第1のアクチュエータ51と第2のアクチュエータ52が設けられている。第1のアクチュエータ51および第2のアクチュエータ52は、クランク駆動装置55として構成されてもよく、それぞれクランク58および連結ロッド57を有し、連結ロッド57は、それぞれの座席列40に結合されていてもよい。それぞれの連結ロッド57は、アクチュエータ51、52にクランク58で支持されており、クランクの位置またはアクチュエータ51、52の回転方向に応じて、連結ロッド57が座席列40に対応する力またはトルクを加えるようになっている。この力によるトルクでジョイント45の旋回点を中心とした回転運動が強制され、対応する座席列40が傾く。第1のアクチュエータ51および第2のアクチュエータ52は、それぞれの長手方向軸Xにおいて、ジョイント45から離れて配置されている。第1のアクチュエータ51と第2のアクチュエータ52は、横軸Yにおいて互いに間隔をあけて配置されている。
【0046】
第1のアクチュエータ51と第2のアクチュエータ52は、アミューズメント乗り物1の運転中に互いに送り運動が合わせられるように調整される。例えば、図3に示すように2つのアクチュエータ51、52のそれぞれを逆方向に同期回転運動させると、図4に示すようなローリング運動が得られ、アクチュエータ51、52の回転方向が同じに同期回転すると、図2に示すようなピッチング運動が得られる。
【0047】
さらに、昇降装置50が設けられており、この昇降装置50は、例示的な実施形態によれば、油圧シリンダによって形成されている。座席列配置部20、21の各々は、それぞれの座席列配置部20、21の全ての座席列40を昇降させるように構成された、独自の昇降装置50を有している。昇降装置50は、一端をフレーム10、または、フレーム10がそこから垂直軸Zに沿って突出し得る回転プラットフォームに支持され得る。もう一方の端では、昇降装置50がリンク30に接続され、それにより、昇降装置50の送り運動を、垂直軸Zにほぼ平行な、座席列40の運動に変換することができる。図1および図3に示すように、昇降装置50は、別の縦脚34を介して、それぞれの座席列配置部20、21の座席列40のそれぞれのリンク30、すなわち平行四辺形リンクに接続される。別の縦脚34は同期リンクとして機能し、これを介してそれぞれの座席列配置部20、21のすべての座席列40を同期して上げ下げすることができる。
【0048】
収容部36は、平行四辺形リンクとして構成されたリンク30によって、収容部36の空間方向、すなわちオイラー角(ロール角、ピッチ角、およびヨー角φ、θ、ψ)における向きが、昇降の際に変化しないように保持される。
【0049】
アミューズメント乗り物1が動作しているとき、異なる座席列配置部20、21の昇降装置50は、互いに独立して制御することができ、座席列配置部20、21内のそれぞれのアクチュエータ51、52は、2つの座席列配置部20、21と同様に独立して制御できる。好ましくは座席列配置部20、21の座席列40の移動は互いに同期して行われる。
【0050】
アミューズメント乗り物1は、入口及び/又は出口領域8と体験領域9とをさらに備えてもよく、フレーム10は、入口及び/又は出口領域8と体験領域9との間のほぼ中央に配置されてもよい。
【0051】
入口及び/又は出口領域8は、以下に詳細に説明するように、階段によってアクセス可能ないくつかの階層を有することができ、乗客は、これらを通して、体験のためにアミューズメント乗り物1に入り、アミューズメント乗り物1の乗車後に再びアミューズメント乗り物1を離れることができる。スムーズかつスループットを最適化するため、乗客は出口とは物理的に別の入口からアミューズメント乗り物1へと誘導される。
【0052】
体験領域9は、投影面を有する部屋として構成することができ、本実施形態における投影面は、画像表現が表示され得る映像ドーム6として構成されている。さらに、マルチメディア、マルチ感覚、メディアベースの経験を乗客に提示することができる空間音または特殊効果を再生するための適切な手段が、体験領域9に設けられてもよい。
【0053】
再び図1を参照すると、第1の座席列配置部20が入口及び又は出口領域8に配置され、第2の座席列配置部21が体験領域9に配置されている。第2の座席列配置部21の座席列40の1つの座席41に位置する乗客は、マルチメディア、マルチ感覚、メディアベースの体験をすることができ、入口及び又は出口領域8の他の乗客は乗降することができる。体験が完了すると、アミューズメント乗り物のフレーム10は垂直軸Zを中心に回転され、2つの座席列配置部20、21は、体験領域9と入口及び/又は出口領域8との間で交互に配置される。
【0054】
体験領域9にいる乗客が邪魔されずに体験を知覚できるように、フレーム10は、第1の座席列配置部20と第2の座席列配置部21との間に、できるだけ防音かつ不透明で、これら2つを体験領域9の壁とともに視覚的および音響的に切り離す壁24を備えている。
【0055】
体験中、映像表示は、座席列の上または下のフレームに配置された少なくとも1つのプロジェクタ5によって提供されてもよい。映像表示に応じて、昇降装置50及び第1のアクチュエータ51及び/又は第2のアクチュエータ52は、体験領域9に配置された座席列配置部20、21を作動させることができる。
【0056】
図6a及び図6bは、アミューズメント乗り物1の第2の実施形態を示しており、既に説明した実施形態とジョイント45の構成が異なる。
【0057】
ジョイント45はカルダンジョイント(ユニバーサルジョイント)として構成されており、図示の実施形態では、3つの立体角、すなわちオイラー角での運動をすることができる。このカルダンジョイントにより、それぞれの座席列40は、ロール運動、ピッチ運動、ヨー運動、またはこれらの空間角への重ね合わせ運動をするように調整または旋回することができる。
【0058】
ジョイント45は、第1のジョイント軸61と第2のジョイント軸62とを有し、これらは中間部材65によって連結されている。第1のジョイント軸61は、リンク30と平行に配置され、リンク30または収容部36に回転可能に連結されている。第1のジョイント軸61の回転により、ロール角φでロール運動が行われる。第2のジョイント軸62は、座席列40と平行、すなわち後方に配置され、連結手段43を介して座席列40に回転可能に連結されている。第2のジョイント軸62の回転により、ピッチ角θのピッチング運動が行われる。
【0059】
第2のジョイント軸62は、第1のジョイント軸61を枠部64に抱き込んでおり、第1のジョイント軸61と第2のジョイント軸62は、それらの理論的中心軸(破線で示す)が交差するように配置されることが好ましい。枠部64は、直方体であってもよく、開口を備えていてもよく、この開口は、第2のジョイント軸62が2つの中心軸によって形成される共通平面内でいわゆるヨー角ψが±30°、好ましくは±15°で揺動可能であるような寸法にされていてもよい。
【0060】
第2のジョイント軸62は、中間部材65を介して第1のジョイント軸61に連結されており、この中間部材65は、第3のジョイント軸63を有し、第3のジョイント軸63は、第2のジョイント軸62と直交し、第1のジョイント軸61、第2のジョイント軸62、及び、第3のジョイント軸63の中心軸が一点で交差するように枠部64から順に配置されている。第3のジョイント軸63は、第2のジョイント軸62又はその枠部64上に回転可能に支持され、回転剛性的に第1のジョイント軸61に接続されている。
【0061】
ジョイント軸61、62、63のそれぞれにアクチュエータ51、52、53が割り当てられており、第1のアクチュエータ51が第1のジョイント軸61を、第2のアクチュエータ52が第2のジョイント軸62を、第3のアクチュエータ53が第3のジョイント軸63を駆動させる。
【0062】
アクチュエータ51、52、53は、任意の回転駆動装置とすることができ、好ましくは、アクチュエータ51、52、53は、油圧式回転駆動装置である。第1のアクチュエータ51は、リンク30または収容部36に支持され、第2のアクチュエータ52は、座席列40に支持され、第3のアクチュエータ53は、第1のジョイント軸61又は第2のジョイント軸62のいずれかに配置され、第3のジョイント軸63を第2のジョイント軸62に対して回転させてヨー角ψのヨー運動を生じさせるように構成してもよい。
【0063】
本発明に従えば、高い乗客スループットに対して最適に動作させることができ、従来のアミューズメント乗り物と比較して改善された性能の利用が可能なアミューズメント乗り物1が提供される。アミューズメント乗り物1のこの新しい構成により、怪我のリスクが低減し、アミューズメント乗り物の操作者の人数を減らしながら、安全な運転を可能にする。
【符号の説明】
【0064】
1…アミューズメント乗り物
2…乗客
5…フィルムプロジェクタ
6…映像ドーム
7…壁
8…出口領域
9…体験領域
10…フレーム
12…旋回ジョイント
20…第1の座席列配置部
21…第2の座席列配置部
24…壁
30…リンク
32…横脚
34…縦脚
36…収容部
40…座席列
41…座席
43…連結手段
45…ジョイント
50…昇降装置
51…第1のアクチュエータ
52…第2のアクチュエータ
53…第3のアクチュエータ
55…クランク駆動装置
57…連結ロッド
58…クランク
61…第1のジョイント軸
62…第2のジョイント軸
63…第3のジョイント軸
64…枠部
65…接続部
X…縦軸
Y…横軸
Z…垂直軸
θ…ピッチ角
φ…ロール角
ψ…ヨー角
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b