(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20241031BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 S
H02J7/00 302D
(21)【出願番号】P 2022570047
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046382
(87)【国際公開番号】W WO2022131310
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020210606
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀 智貴
(72)【発明者】
【氏名】加納 隼人
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-211861(JP,A)
【文献】特開2014-023271(JP,A)
【文献】特開2019-004631(JP,A)
【文献】特開2017-174683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
H01M 50/20
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部への前記電動作業機の接続又は非接続を判定するように構成された接続判定部と、
前記接続判定部により判定された前記電動作業機の接続又は
非接続に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備える、
バッテリパック。
【請求項2】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機が一連の動作を実行する第1のアクチュエータを備えているか前記一連の動作を実行しない第2のアクチュエータを備えているかを含み、前記一連の動作は、前記第1のアクチュエータが、第1の位置から第2の位置へ移動し、前記第2の位置から前記第1の位置へ戻る動作に相当する、
バッテリパック。
【請求項3】
前記第1の位置は、前記
第1のアクチュエータの初期位置に相当し、
前記第2の位置は、前記
第1のアクチュエータの前記初期位置からの変位量が最大となる位置に相当する、
請求項
2に記載のバッテリパック。
【請求項4】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機が作業するためのモータよりも消費電力が小さい前記電動作業機の内部を冷却するための冷却ファンを備えているか否かを含む、
バッテリパック。
【請求項5】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部への前記電動作業機の接続又は非接続を判定するように構成された接続判定部と、
前記接続判定部により判定された前記電動作業機の接続又は
非接続に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記禁止領域制御部は、前記接続判定部により前記電動作業機の非接続が判定された場合は、前記接続判定部により前記電動作業機の接続が判定された場合よりも、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
バッテリパック。
【請求項6】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機の負荷を含み、
前記禁止領域制御部は、前記負荷が軽い場合は、前記負荷が重い場合よりも、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
バッテリパック。
【請求項7】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かを含み、前記一連の動作は、前記アクチュエータが、第1の位置から第2の位置へ移動し、前記第2の位置から前記第1の位置へ戻る動作に相当し、
前記禁止領域制御部は、前記電動作業機が前記一連の動作を実行するアクチュエータを備えている場合には、前記電動作業機が前記一連の動作を実行するアクチュエータを備えていない場合よりも、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
バッテリパック。
【請求項8】
前記第1の位置は、前記アクチュエータの初期位置に相当し、
前記第2の位置は、前記アクチュエータの前記初期位置からの変位量が最大となる位置に相当する、
請求項
7に記載のバッテリパック。
【請求項9】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かを含み、
前記禁止領域制御部は、前記電動作業機が前記冷却ファン及び/又は前記ライトを備えている場合には、前記電動作業機が前記冷却ファン及び/又は前記ライトを備えていない場合よりも、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
バッテリパック。
【請求項10】
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成された禁止領域制御部であって、前記禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められ、前記禁止領域において前記バッテリからの放電が禁止され、前記電流範囲は、放電電流値の範囲であり、前記電圧範囲は、放電電圧値の範囲である、禁止領域制御部と、を備え、
前記バッテリは、第1のバッテリブロックと、第2のバッテリブロックとを含み、前記第1のバッテリブロックは、前記接続部に接続された前記電動作業機に応じて、前記第2のバッテリブロックに直列又は並列に接続するように構成されており、
前記電動作業機の仕様は、前記第1のバッテリブロックと前記第2のバッテリブロックとの接続が、直列か並列かを含み、
前記禁止領域制御部は、前記接続が並列の場合、前記接続が直列の場合よりも、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
バッテリパック。
【請求項11】
前記禁止領域は、第1の領域と、第2の領域とを含み、前記第2の領域の前記電流範囲は、前記第1の領域の前記電流範囲よりも前記放電電流値が小さく、且つ前記第1の領域の前記電流範囲に隣接しており、
前記禁止領域制御部は、前記第1の領域を固定し、前記第2の領域の前記電圧範囲を狭く設定することにより、前記禁止領域を狭く設定するように構成されている、
請求項
5~10のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2020年12月18日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2020-210606号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2020-210606号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電動作業機に電力を供給するバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1に記載のバッテリパックは、バッテリの過負荷又は過放電が検出されると、バッテリからの放電を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記バッテリパックは、放電を禁止する条件が固定されている。そのため、バッテリの電力供給先に依らず同じ条件で放電が停止するが、電力供給先に依っては更に放電しても、バッテリを保護できることがあり得る。したがって、バッテリパックの実用性の向上が望まれる。
【0006】
本開示の1つの局面は、より実用性が高いバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面のバッテリパックは、バッテリと、接続部と、接続判定部と、受信部と、禁止領域制御部と、を備える。接続部は、電動作業機に接続されるように構成される。接続判定部は、接続部への電動作業機の接続又は非接続を判定するように構成される。受信部は、接続部に接続された電動作業機から、作業機情報を受信するように構成される。作業機情報は電動作業機の仕様を含む。禁止領域制御部は、(i)接続判定部により判定された電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)接続部に接続された電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させるように構成される。禁止領域は、電流範囲と電圧範囲とで定められている。禁止領域において、バッテリからの放電が禁止される。電流範囲は、放電電流値の範囲である。電圧範囲は、放電電圧値の範囲である。
【0008】
本開示の1つの局面のバッテリパックは、(i)判定された電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)接続されている電動作業機の仕様に応じて、禁止領域を変化させる。これにより、バッテリパックに電動作業機を接続せずに試験装置を接続して試験を実行する時における禁止領域を、バッテリパックに電動作業機を接続する時における禁止領域と変えることができる。また、バッテリパックの保護の必要性が比較的低い電動作業機をバッテリパックに接続する時における禁止領域を、バッテリパックの保護の必要性が比較的高い電動作業機をバッテリパックに接続する時における禁止領域と変えることができる。さらに、作業を直ちに停止できない電動作業機をバッテリパックに接続する時における禁止領域を、作業を直ちに停止できる電動作業機をバッテリパックに接続する時における禁止領域と変えることができる。したがって、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0009】
電動作業機の仕様は、電動作業機の負荷を含んでもよい。
【0010】
バッテリパックが比較的負荷が軽い電動作業機に接続された場合は、バッテリパックが比較的負荷が重い電動作業機に接続された場合と、バッテリパックの保護の必要性が異なる。よって、電動作業機の負荷に応じて、禁止領域を変化させることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0011】
電動作業機の仕様は、電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かを含んでもよい。一連の動作は、アクチュエータが、第1の位置から第2の位置へ移動し、第2の位置から第1の位置へ戻る動作に相当してもよい。
【0012】
一連の動作を実行するアクチュエータが一連の動作中に放電が停止すると、電動作業機の作業が途中で終わり、作業効率が低下する。よって、電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かに応じて、禁止領域を変化させることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0013】
第1の位置は、アクチュエータの初期位置に相当してもよい。第2の位置は、アクチュエータの初期位置からの変位量が最大となる位置に相当してもよい。
【0014】
初期位置から最大限変位した位置へ移動し、最大限変位した位置から初期位置へ戻るアクチュエータを備えた電動作業機の作業効率の低下を抑制することができる。
【0015】
電動作業機の仕様は、電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かを含んでもよい。
【0016】
バッテリからメインモータへの放電が停止して作業が停止した後に、電動作業機の内部を冷却したい場合や、ライトを点灯させたい場合がある。このような場合に、冷却ファンを駆動したり、ライトを点灯させたりできることが望まれる。よって、電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かに応じて、禁止領域を変化させることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0017】
バッテリは、第1のバッテリブロックと、第2のバッテリブロックとを含んでもよい。第1のバッテリブロックは、接続部に接続された電動作業機に応じて、第2のバッテリブロックに直列又は並列に接続してもよい。電動作業機の仕様は、第1のバッテリブロックと第2のバッテリブロックとの接続が、直列か並列かを含んでもよい。
【0018】
第1バッテリブロックと第2バッテリブロックとの接続が並列の場合は、接続が直列の場合と比べて、第1及び第2バッテリブロックに含まれる複数のセルの各々に流れる電流の値が小さい。したがって、接続が並列の場合は、接続が直列の場合とは、バッテリパックの保護の必要性が異なる。よって、接続が直列か並列かに応じて、禁止領域を変化させることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0019】
禁止領域制御部は、接続判定部に電動作業機の非接続が判定された場合は、接続判定部により電動作業機の接続が判定された場合よりも、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0020】
接続部に電動作業機の代わりに試験装置を接続して試験を実行する場合に、接続部に電動作業機を接続する場合よりも、禁止領域が狭く設定される。そのため、試験中に放電がすぐに止まり、バッテリパックの試験を継続できなくなることを回避できる。
【0021】
禁止領域制御部は、負荷が軽い場合は、負荷が重い場合よりも、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0022】
電動作業機の負荷が比較的軽い場合は、電動作業機の負荷が比較的重い場合よりも、バッテリパックの保護の必要性が低い。よって、電動作業機の負荷が比較的軽い場合は、電動作業機の負荷が比較的重い場合よりも禁止領域を比較的狭く設定することにより、バッテリパックをより有効に利用することができる。
【0023】
禁止領域制御部は、電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えている場合には、電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えていない場合よりも、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0024】
電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えている場合は、禁止領域を比較的狭く設定することにより、一連の動作中にアクチュエータが停止することを回避して、作業効率の低下を抑制することができる。
【0025】
禁止領域制御部は、電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えている場合には、電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えていない場合よりも、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0026】
電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えている場合には、禁止領域が比較的狭く設定される。これにより、電動作業機のメインモータへの比較的多い電力の供給が停止した後でも、冷却ファン及び/又はライトへ比較的少ない電力を供給することができる。ひいては、電動作業機の作業が停止した後でも、冷却ファン及び/又はライトを使用することができる。
【0027】
禁止領域制御部は、接続が並列の場合、接続が直列の場合よりも、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0028】
第1バッテリブロックと第2バッテリブロックとの接続が並列の場合は、接続が直列の場合よりも、バッテリブロックの各セルに流れる電流値が小さい。したがって、接続が並列の場合は、接続が直列の場合よりも、バッテリパックの保護の必要性が低い。よって、接続が並列の場合は、禁止領域を比較的狭く設定することにより、バッテリパックをより有効に利用することができる。
【0029】
禁止領域は、第1の領域と、第2の領域とを含んでもよい。第2の領域の電流範囲は、第1の領域の電流範囲よりも放電電流値が小さく、且つ第1の領域の電流範囲に隣接する。禁止領域制御部は、第1の領域を固定し、第2の領域の電圧範囲を狭く設定することにより、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0030】
バッテリパックの使用可能な電圧範囲を広げることにより、バッテリパックを適切に保護しつつ、バッテリパックを有効に利用することができる。
【0031】
禁止領域は、第1の領域と、第2の領域とを含んでもよい。第2の領域の電流範囲は、第1の領域の電流範囲よりも放電電流値が小さく、且つ第1の領域の電流範囲に隣接する。禁止領域制御部は、第1の領域を固定し、第2の領域の電流範囲を狭く設定することにより、禁止領域を狭く設定してもよい。
【0032】
バッテリパックの使用可能な電流範囲を広げることにより、バッテリパックを適切に保護しつつ、バッテリパックを有効に利用することができる。
【0033】
本開示の別の1つの局面のバッテリパックは、以下の項目1~11であってもよい。
【0034】
項目1.
バッテリと、
電動作業機に接続されるように構成された接続部と、
前記接続部への前記電動作業機の接続又は非接続を判定するように構成された接続判定部と、
前記接続部に接続された前記電動作業機から、作業機情報を受信するように構成された受信部であって、前記作業機情報は、前記電動作業機の仕様を含む、受信部と、
前記バッテリから流れる放電電流値を検出するように構成された電流検出部と、
前記放電電流値とカウンタ加減算値との対応を示す複数の相関データを記憶した記憶部であって、前記複数の相関データは、(i)前記電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて互いに異なる、記憶部と、
選択された相関データと、前記電流検出部により検出された前記放電電流値とに基づいて、所定の周期でカウンタ加減算値を算出するように構成された加減算値算出部であって、前記選択された相関データは、(i)前記接続判定部により判定された前記電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)前記接続部に接続された前記電動作業機の仕様に応じて、前記複数の相関データから選択される、加減算値算出部と、
前記加減算算出部により算出された前記カウンタ加減算値を積算して、カウンタ値を算出するように構成されたカウンタ値算出部と、
前記カウンタ算出部により算出された前記カウンタ値が閾値に到達したことに応じて、前記バッテリからの放電を禁止するように構成された放電制御部と、を備える、
バッテリパック。
【0035】
本開示の別の1つの局面のバッテリパックは、検出された放電電流値と、(i)判定された電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)接続されている電動作業機の仕様に応じて選択された相関データと、に基づいて、カウンタ加減算値を算出する。上記バッテリパックは、算出したカウンタ加減算値を積算してカウンタ値を算出し、カウンタ値が閾値に到達したことに応じて、過電流状態にあると判定して、バッテリからの放電を禁止する。したがって、(i)判定された電動作業機の接続又は非接続、あるいは、(ii)接続されている電動作業機の仕様に応じて、放電開始から放電停止までの時間を変化させることができる。したがって、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0036】
項目2.
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機の負荷を含む、
項目1に記載のバッテリパック。
【0037】
バッテリパックが比較的負荷が軽い電動作業機に接続された場合は、バッテリパックが比較的負荷が重い電動作業機に接続された場合と、バッテリパックの保護の必要性が異なる。よって、電動作業機の負荷に応じて、選択された相関データが変わることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0038】
項目3.
前記電動作業機の前記電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かを含み、前記一連の動作は、前記アクチュエータが、第1の位置から第2の位置へ移動し、前記第2の位置から前記第1の位置へ戻る動作に相当する、
項目1又は2に記載のバッテリパック。
【0039】
一連の動作を実行するアクチュエータが一連の動作中に放電が停止すると、電動作業機の作業が途中で終わり、作業効率が低下する。よって、電動作業機が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かに応じて、選択された相関データが変わることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0040】
項目4.
前記第1の位置は、前記アクチュエータの初期位置に相当し、
前記第2の位置は、前記アクチュエータの前記初期位置からの変位量が最大となる位置に相当する、
項目3に記載のバッテリパック。
【0041】
初期位置から最大限変位した位置へ移動し、最大限変位した位置から初期位置へ戻るアクチュエータを備えた電動作業機の作業効率の低下を抑制することができる。
【0042】
項目5.
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かを含む、
項目1~4のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【0043】
バッテリからメインモータへの放電が停止して、作業が停止した後に、電動作業機の内部を冷却したい場合や、ライトを点灯させたい場合がある。このような場合に、冷却ファンを駆動したり、ライトを点灯させたりできることが望まれる。よって、電動作業機が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かに応じて、選択された相関データが変わることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0044】
項目6.
前記バッテリは、第1のバッテリブロックと、第2のバッテリブロックとを含み、前記第1のバッテリブロックは、前記接続部に接続された前記電動作業機に応じて、前記第2のバッテリブロックに直列又は並列に接続可能に構成されており、
前記電動作業機の仕様は、前記第1のバッテリブロックと前記第2のバッテリブロックとの接続が、直列か並列かを含む、
項目1~5のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【0045】
第1バッテリブロックと第2バッテリブロックとの接続が並列の場合は、接続が直列の場合と比べて、第1及び第2バッテリブロックに含まれる複数のセルの各々に流れる電流の値が小さい。したがって、接続が並列の場合は、接続が直列の場合とは、バッテリパックの保護の必要性が異なる。よって、接続が直列か並列かに応じて、選択された相関データが変わることにより、バッテリパックの実用性を向上させることができる。
【0046】
項目7.
前記カウンタ加減算値は、正の値であるカウンタ加算値と、負の値であるカウンタ減算値とを含み、前記カウンタ加算値は、所定値以上の前記放電電流値に対応し、前記カウンタ減算値は、前記所定値未満の前記放電電流値に対応し、
第1の相関データにおける前記カウンタ加算値は、第2の相関データにおける前記カウンタ加算値よりも大きく設定されており、前記第1の相関データは、前記複数の相関データのうちの前記電動作業機の非接続に応じた相関データに相当し、前記第2の相関データは、前記複数の相関データのうちの前記電動作業機の接続に応じた相関データに相当する、
項目1~6のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【0047】
電動作業機の非接続が判定された場合には、電動作業機の接続が判定された場合と比べて、カウンタ値の増加率が大きくなり、早期に放電が停止する。したがって、接続部が電動作業機に接続されていないにもかかわらず放電している場合には、早期に放電を停止してバッテリパックを保護することができる。また、接続部に正規の制御に従った電動作業機以外の電動作業機が接続されている場合には、電動作業機の接続が判定されず、電動作業機の非接続が判定される。したがって、接続部に何等かの電動作業機が接続されていても、正規の制御に従った放電が行なわれていない場合には、早期に放電を停止してバッテリパックを保護することができる。
【0048】
項目8.
前記第1の相関データにおける前記カウンタ減算値の大きさは、前記第2の相関データにおける前記カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている、
項目1~7のいずれか1項に記載のバッテリパック。
【0049】
電動作業機の非接続が判定された場合には、電動作業機の接続が判定された場合と比べて、カウンタ値の減少率が小さくなる。したがって、バッテリパックが異常な放電をしている場合には、バッテリパックが正常に放電している場合よりも、バッテリパックの保護をより強くすることができる。
【0050】
項目9.
前記電動作業機の仕様は、前記電動作業機の負荷を含み、
第3の相関データにおける前記カウンタ加算値は、第4の相関データにおける前記カウンタ加算値よりも大きく設定されており、前記第3の相関データは、前記複数の相関データのうちの前記負荷が重いことに応じた相関データに相当し、前記第4の相関データは、前記複数の相関データのうちの前記負荷が軽いことに応じた相関データに相当する、
項目7又は8に記載のバッテリパック。
【0051】
バッテリパックに接続されている電動作業機の負荷が重い場合には、負荷が軽い場合と比べて、カウンタ値の増加率が大きくなるため、早期に放電を停止させてバッテリパックを保護することができる。
【0052】
項目10.
前記第3の相関データにおける前記カウンタ減算値の大きさは、前記第4の相関データにおける前記カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている、
項目9に記載のバッテリパック。
【0053】
バッテリパックに接続されている電動作業機の負荷が重い場合には、負荷が軽い場合と比べて、カウンタ値の減少率が小さくなるため、バッテリパックの保護をより強くすることができる。
【0054】
項目11.
前記第1の相関データにおける前記カウンタ加算値は、前記第3の相関データにおける前記カウンタ加算値よりも大きく設定されている、
項目9又は11に記載のバッテリパック。
【0055】
電動作業機の非接続が判定された場合には、接続された電動作業機の負荷が重い場合と比べて、カウンタ値の増加率が大きくなり、早期に放電が停止する。したがって、バッテリパックが異常な放電をしている場合には、バッテリパックに接続されている電動作業機の負荷が重い場合よりも、バッテリパックの保護をより強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】第1実施形態に係る電動作業機の一例であるピンタッカの外観を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電動作業機の別の一例であるインパクトドライバの外観を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るバッテリシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る放電禁止領域及び使用可能領域の一例である。
【
図5】第1実施形態に係る放電禁止領域及び使用可能領域の別の一例である。
【
図6】第1実施形態に係るバッテリパックの保護処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る遮断判定処理を示すサブルーチンである。
【
図8A】第2実施形態に係る遮断判定処理を示すサブルーチンの一部である。
【
図8B】第2実施形態に係る遮断判定処理を示すサブルーチンの残りである。
【
図9】第2実施形態に係る電動作業機の分類の例を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る第1バッテリブロックと第2バッテリブロックを含むバッテリであって、第1バッテリブロックが第2バッテリブロックに直列に接続されたバッテリを電動作業機が使用する一例である。
【
図11】第2実施形態に係る第1バッテリブロックと第2バッテリブロックを含むバッテリであって、第1バッテリブロックが第2バッテリブロックに並列に接続されたバッテリを電動作業機が使用する一例である。
【
図12】第3実施形態に係るバッテリパックの保護処理を示すフローチャートである。
【
図13】第3実施形態に係る過電流判定処理を示すサブルーチンである。
【
図14】第3実施形態に係る放電電流値とカウンタ加減算値との相関を示すグラフの一例である。
【
図15】第3実施形態に係る放電電流値と放電停止及び遮断判定に到達するまでの到達時間との相関を示すグラフの一例である。
【
図16】第4実施形態に係る過電流判定処理を示すサブルーチンである。
【
図17】第4実施形態に係る放電電流値とカウンタ加減算値との相関を示すグラフの一例である。
【
図18】第4実施形態に係る放電電流値と放電停止及び遮断判定に到達するまでの到達時間との相関を示すグラフの一例である。
【符号の説明】
【0057】
1…バッテリシステム、6…バッテリパック、バッテリMCU…150、10…電動作業機、10A…ピンタッカ、10B…インパクトドライバ、12…モータハウジング、18,22…トリガ、23…先端工具、100…バッテリ側接続部、111…第1正極端子、112…第1負極端子、113…充電端子、114…第1放電端子、115…第1検出端子、116…第1通信端子、130A…第1のバッテリブロック、130B…第2のバッテリブロック、135…温度検出回路、162…遮断素子、163…バッテリシャント抵抗、171…充電制御回路、172…第1放電制御回路、173…第1検出回路、174…第1通信回路、180…第1正極ライン、190…第1負極ライン、200A,200B…作業機側接続部、211…第2正極端子、212…第2負極端子、214…第2放電端子、215…第2検出端子、216…第2通信端子、作業機MCU…250、260…ドライバ、270…モータ、272…第2放電制御回路、273…第2検出回路、274…第2通信回路、280…ライト、281…冷却ファン、282…FET、283…作業機シャント抵抗、284…スイッチ、290…ハンマ打ち込み機構、480…第2正極ライン、490…第2負極ライン。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
【0059】
(第1実施形態)
<1.構成>
<1-1.バッテリシステムの全体構成>
本実施形態に係るバッテリシステム1は、バッテリパック6と、電動作業機10と、を備える。バッテリパック6は、電動作業機10に接続されて電動作業機10へ電力を供給する。電動作業機10は、バッテリパック6から電力を受けて駆動する。
【0060】
バッテリパック6は、後述する充電可能なバッテリ130を備える。バッテリ130は、複数のバッテリブロックを含み、各バッテリブロックは、直列接続された複数のバッテリセルを含む。バッテリ130は、リチウムイオンバッテリである。
【0061】
バッテリパック6の上面には、電動作業機10に接続されるバッテリ側接続部100が設けられている。バッテリ側接続部100には、後述する複数の端子が設けられている。
【0062】
電動作業機10は、電動工具、園芸工具などを含む。電動工具は、ピンタッカ、インパクトドライバ等を含む。園芸工具は、草刈機、トリマ等を含む。
【0063】
まず、電動作業機10の一例として、ピンタッカ10Aについて、
図1を参照して説明する。ピンタッカ10Aは、本体部4とマガジン9とを備える。本体部4は、作業機側接続部200Aと、モータハウジング12と、ハンドルグリップ16と、トリガ18と、ギヤハウジング14と、射出部15と、を備える。別の実施形態では、本体部4又はマガジン9がピンタッカ10Aから除去されてもよい。別の実施形態では、作業機側接続部200A、モータハウジング12、ハンドルグリップ16、トリガ18、ギヤハウジング14、及び射出部15の少なくも一つが、本体部4から除去されてもよい。
【0064】
モータハウジング12は、後述するモータ270とドライバ260とを収容する。ハンドルグリップ16は、モータハウジング12の上方に設けられており、ユーザにより把持される。作業機側接続部200Aは、モータハウジング12及びハンドルグリップ16の水平方向における第1端に設けられており、バッテリ側接続部100が接続されるように構成されている。作業機側接続部200Aには、後述する複数の端子が設けられている。
【0065】
トリガ18は、ハンドルグリップ16に設けられている。ユーザがトリガ18を引くことにより、ドライバ260にモータ270を駆動するための制御指令が入力され、ドライバ260によりモータ270が駆動される。
【0066】
ギヤハウジング14は、モータハウジング12及びハンドルグリップ16の水平方向における第2の端部に設けられており、図示しないハンマ打ち込み機構290を収容する。第2端は、水平方向において第1端に対向する。
【0067】
マガジン9には、複数のピン8が、一列に並べられ、列方向の第1端(すなわち、バッテリパック6側)から第2端(すなわち、ギヤハウジング14側)へ向けてばねで付勢された状態で収容されている。
【0068】
ハンマ打ち込み機構290は、モータ270の回転により、ハンマをギヤハウジング14内で下方(第1の位置)から上方(第2の位置)へ移動させて圧縮コイルばねを圧縮させ、その後、圧縮コイルばねの弾発力によりハンマを下方(第1の位置)に打ち込むことで、ピン8を射出部15から発射させる。すなわち、モータ270及びハンマ打ち込み機構290は、第1の位置から第2の位置へ移動し、第2の位置から第1の位置へ戻る一連の動作を実行する。第1の位置は、モータ270及びハンマ打ち込み機構290の初期位置に相当し、第2の位置は、モータ270及びハンマ打ち込み機構290の初期位置からの変位量が最大となる位置に相当する。本実施形態では、モータ270及びハンマ打ち込み機構290が、本開示のアクチュエータの一例に相当する。
【0069】
次に、電動作業機10の一例として、インパクトドライバ10Bについて、
図2を参照して説明する。インパクトドライバ10Bは、柱状のグリップ26と、円柱状のヘッド27と、トリガ22と、作業機側接続部200Bと、を備える。別の実施形態では、グリップ26、ヘッド27、トリガ22及び作業機側接続部200Bの少なくとも一つが、インパクトドライバ10Bから除去されてもよい。
【0070】
グリップ26は、ユーザに把持される。ヘッド27は、グリップ26の上側に設けられており、後述するモータ270とドライバ260とを収容している。また、ヘッド27は、先端に先端工具23が装着可能に構成されている。
【0071】
作業機側接続部200Bは、グリップ26の下面に設けられており、バッテリ側接続部100が接続されるように構成されている。作業機側接続部200Bには、後述する複数の端子が設けられている。すなわち、作業機側接続部200Bは、作業機側接続部200Aと同じ形状に構成されている。以下では、作業機側接続部200A及び作業機側接続部200Bをまとめて、作業機側接続部200と称する。
【0072】
トリガ22は、グリップ26に設けられている。ユーザがトリガ22を引くことにより、ドライバ260にモータ270を駆動するための制御指令が入力され、ドライバ260によりモータ270が駆動される。ひいては、ユーザがトリガ22を引くことにより、先端工具23が回転する。
【0073】
<1-2.バッテリシステムの電気的構成>
<1-2-1.バッテリパックの電気的構成>
次に、バッテリパック6の電気的構成について、
図3を参照して説明する。バッテリパック6は、バッテリ30と、バッテリMicro Control Unit(以下、MCU)150と、Analog Front End(以下、AFE)140と、レギュレータ161と、遮断素子162と、バッテリシャント抵抗器163と、温度検出回路135と、充電制御回路171と、第1放電制御回路172と、第1検出回路173と、第1通信回路174と、を備える。別の実施形態では、MCU150、AFE140、レギュレータ161、遮断素子162、バッテリシャント抵抗器163、温度検出回路135、充電制御回路171、第1放電制御回路172、第1検出回路173及び第1通信回路174の少なくとも一つが、バッテリパック6から削除されてもよい。
【0074】
バッテリ側接続部100は、6個の端子を含む。具体的には、バッテリ側接続部100は、第1正極端子111と、第1負極端子112と、充電端子113と、第1放電端子114と、第1検出端子115と、第1通信端子116と、を備える。別の実施形態では、第1正極端子111、第1負極端子112、充電端子113、第1放電端子114、第1検出端子115、及び第1通信端子116の少なくとも一つが、バッテリ側接続部100から削除されてもよい。
【0075】
第1正極端子111は、第1正極ライン180を介して、バッテリ130の正極に接続されている。第1負極端子112は、第1負極ライン190を介して、バッテリ130の負極に接続されている。充電端子113は、充電制御回路171に接続されている。第1放電端子114は、第1放電制御回路172に接続されている。第1検出端子115は、第1検出回路173に接続されている。第1通信端子116は、第1通信回路174に接続されている。
【0076】
レギュレータ161は、バッテリ130の正極に接続されており、バッテリ130の電力を受けて、バッテリMCU150、AFE140等のバッテリパック6内の各種回路に供給する電源を生成する。
【0077】
バッテリシャント抵抗器163は、第1負極ライン190上に設けられており、バッテリ130へ流入する充電電流の値及びバッテリ130から流出する放電電流の値を検出し、検出した電流値をAFE140へ出力する。温度検出回路135は、バッテリ130のバッテリ温度を検出し、検出したバッテリ温度をバッテリMCU150へ出力する。
【0078】
AFE140は、アナログ回路であり、バッテリMCU150と、Serial Peripheral Interface(SPI)通信を実行するように構成されている。AFE140は、バッテリMCU150からの指令に従って、バッテリ130に含まれる各バッテリセルのセル電圧値とバッテリ30のバッテリ電圧値を検出する。また、AFE140は、複数のバッテリセルの残容量を均等化させるセルバランス処理を実行する。さらに、AFE140は、検出したセル電圧値、バッテリ電圧値を、入力された電流値等をデジタル信号に変換し、変換した各デジタル信号をバッテリMCU150へ送信する。
【0079】
また、AFE140は、バッテリパック6が充電器に接続されている場合には、入力された各種値に基づいてバッテリ130の状態を判定する。そして、AFE140は、バッテリ30の充電を停止すべき場合(例えば、過充電状態である場合)に、充電停止信号を充電制御回路171へ送信する。充電制御回路171は、AFE40から充電停止信号が入力された場合に、充電端子113から充電器へ放電停止信号を出力する。
【0080】
バッテリMCU150は、CPU150a、メモリ150b及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを含む。バッテリMCU150は、第1放電制御回路172、第1検出回路173、及び第1通信回路174に接続されている。
【0081】
第1検出回路173は、第1検出端子115の電位に基づいて、バッテリパック6に対する電動作業機10又は充電器の接続又は非接続を検出し、接続信号又は非接続信号をバッテリMCU150へ出力する。
【0082】
第1通信回路174は、半二重のシリアル通信を実行する、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART)である。第1通信回路174は、第1通信端子116を介して、データの送受信を行う。
【0083】
バッテリMCU150は、第1検出回路173から接続信号が入力されると、省エネモードからアクティブモードへ移行する。バッテリMCU150は、バッテリパック6が電動作業機10に接続されている場合には、バッテリ130の放電制御を実行し、バッテリパック6が充電器に接続されている場合には、バッテリ130の充電制御を実行する。
【0084】
具体的には、バッテリMCU150は、AFE140から受信したセル電圧、バッテリ電圧値、放電電流値、及び温度検出回路135から入力されたバッテリ温度に基づいて、バッテリ30の放電制御及び充電制御を実行する。
【0085】
バッテリMCU150は、バッテリ130が過電流状態、過熱状態、及び過放電状態のいずれかである場合、バッテリ30からの放電を禁止する放電禁止信号を第1放電制御回路172へ出力する。また、バッテリMCU150は、バッテリ130が放電可能な状態の場合には、放電許可信号を第1放電制御回路172へ出力する。第1放電制御回路172は、バッテリMCU150から入力された放電禁止信号又は放電許可信号を、第1放電端子114から電動作業機10へ出力する。また、バッテリMCU150は、バッテリ30が放電可能な状態であると判定している場合、第1放電制御回路172へウォッチドッグパルス信号(一定周期のパルス信号)を出力する。第1放電制御回路172は、ウォッチドッグパルス信号が入力されない場合、放電禁止信号を、第1放電端子114から電動作業機10へ出力する。電動作業機10は、放電禁止信号を受信すると、バッテリ130からモータ270への放電経路を遮断する。
【0086】
さらに、バッテリMCU150は、電動作業機10へ放電禁止信号を出力しても放電が続き、バッテリ130のセル電圧値及び放電電流値が禁止領域AAに入った場合に、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。例えば、遮断素子162がField Effect Transistor(FET)である場合、バッテリMCU150は、FETをオフにする。また、遮断素子162がSCPである場合、バッテリMCU150は、SCPのヒューズを溶断させる。
【0087】
図4及び
図5に示すように、禁止領域AAは、電流範囲と電圧範囲とで定められている。電流範囲は、I0よりも大きい放電電流値の範囲に相当する。電圧範囲は、V2未満のセル電圧値の範囲に相当する。
【0088】
ここで、電動作業機10が比較的負荷の軽い機種である場合など、禁止領域AAを比較的狭くしても、バッテリパック6を保護できる場合がある。したがって、バッテリMCU50は、禁止領域AAを固定せず、電動作業機10の接続の有無及び/又は電動作業機10の仕様に応じて、禁止領域AAを変化させる。
【0089】
禁止領域AAは、第1の領域A1と第2の領域A2とを含む。第1の領域A1は、I1よりも大きい放電電流値の範囲とV2未満のセル電圧値の範囲を有し、第2の領域A2は、I0よりも大きく且つI1以下の放電電流値の範囲とV0以上でV1未満のセル電圧値の範囲を有する。すなわち、第2の領域A2の電流範囲は、第1の領域A1の電流範囲よりも放電電流値が小さく、第1の領域A1の電流範囲に隣接している。なお、V2>V1>V0であり、例えば、V2=2.5V、V1=1.0V、V0=0Vである。また、I1>I0であり、例えば、I1=50A、I0=5Aである。
【0090】
図4及び
図5に示すように、バッテリMCU150は、第1の領域A1を固定し、第2の領域A2の範囲を変化させる。ひいては、バッテリMCU150は、使用可能領域A3を変化させる。使用可能領域A3は、I0よりも大きい電流範囲とV2未満の電圧範囲で決まる領域から第2の領域A2を除いた領域である。
【0091】
<1-2-2.電動作業機の電気的構成>
次に、電動作業機10の電気的構成について、
図3を参照して説明する。電動作業機10は、作業機MCU250と、ドライバ260と、モータ270と、FET282と、作業機シャント抵抗器283と、第2放電制御回路272と、第2検出回路273と、第2通信回路274と、スイッチ284と、を備える。別の実施形態では、作業機MCU250、ドライバ260、モータ270、FET282、作業機シャント抵抗器283、第2放電制御回路272、第2検出回路273、第2通信回路274、及びスイッチ284の少なくとも一つは、電動作業機100から除去されてもよい。
【0092】
作業機側接続部200は、第2正極端子211と、第2負極端子212と、第2放電端子214と、第2検出端子215と、第2通信端子216と、を備える。別の実施形態では、第2正極端子211、第2負極端子212、第2放電端子214、第2検出端子215、及び第2通信端子216の少なくとも一つは、作業機側接続部200から除去されてもよい。
【0093】
第2正極端子211は、第1正極端子111に接続されるように構成されている。第2負極端子212は、第1負極端子112に接続されるように構成されている。第2放電端子214は、第1放電端子114に接続されるように構成されている。第2検出端子215は、第1検出端子115に接続されるように構成されている。第2通信端子216は、第1通信端子116に接続されるように構成されている。
【0094】
モータ270は、3相のブラシレスモータである。ドライバ260は、モータ270を駆動するための3相のブリッジ回路である。ドライバ260は、作業機MCU250からの制御指令に応じて、モータ270を駆動する。別の実施形態では、モータ270は、ブラシ付きモータであってもよい。
【0095】
FET282は、第2正極ライン480上に設けられている。第2正極ライン480は、第2正極端子211とモータ270とを接続するラインである。作業機シャント抵抗器283は、第2負極ライン490上に設けられている。第2負極ライン490は、第2負極端子212とモータ270とを接続するラインである。作業機シャント抵抗器283は、モータ270に流れる電流の値を検出し、検出した電流値を作業機MCU250へ出力する。
【0096】
作業機MCU250は、CPU250a、メモリ250b及びI/O等を備えたマイクロコンピュータを含む。作業機MCU250は、スイッチ284、第2放電制御回路272、第2検出回路273、及び第2通信回路274に接続されている。
【0097】
スイッチ284は、電動作業機10のトリガ18,22が引かれると、オン信号を作業機MCU250へ出力し、トリガ18,22が放されると、オフ信号を作業機MCU250へ出力する。
【0098】
第2放電制御回路272は、第2放電端子214を介して放電禁止信号が入力された場合に、放電禁止信号を作業機MCU250へ出力するとともに、停止信号をドライバ260へ出力する。停止信号は、モータ270の駆動を停止させるための制御指令に相当する。作業機MCU250は、放電禁止信号が入力されると、停止信号をドライバ260へ出力するとともに、FET282をオフにする。また、作業機MCU250は、第2通信端子216及び第2通信回路274を介して、シリアル通信で放電禁止状態であることを受信すると、停止信号をドライバ260へ出力するとともに、FET282をオフにする。したがって、バッテリパック6から電動作業機10へ放電禁止信号が出力される又はシリアル通信で放電禁止状態であることが伝達されると、ドライバ260がモータ270の駆動を停止させるとともに、第2正極ライン480の導通が遮断される。
【0099】
第2検出回路273は、第2検出端子215の電位に基づいて、電動作業機10に対するバッテリパック6の接続又は非接続を検出し、接続信号又は非接続信号を作業機MCU250へ出力する。
【0100】
第2通信回路274は、半二重のシリアル通信を実行する、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter(UART)である。第2通信回路274は、第2通信端子216を介して、データの送受信を行う。
【0101】
また、電動作業機10は、冷却ファン281、及び/又はライト280を更に備えていてもよい。冷却ファン281及びライト280は、モータ270よりも消費電力が十分に小さい。冷却ファン281は、モータ270の駆動により生じた熱を冷却するために設けられる。
【0102】
<2.処理>
<2-1.バッテリパックの保護処理>
次に、バッテリMCU150が実行するバッテリパック6の保護処理について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0103】
まず、S10では、バッテリMCU150は、第1検出回路173からの入力信号に基づいて、バッテリパック6に電動作業機10が接続されているか、又は、放電電流値が遮断閾値Ith0以上かを判定する。Ith0は、禁止領域AAの電流範囲よりも小さい値であり、I0に相当する。放電電流値が遮断閾値Ith0未満である場合は、放電を継続できる。バッテリパック6に電動作業機10が接続されておらず、且つ、放電電流値が遮断閾値Ith0未満であると判定した場合は、バッテリパック6に電動作業機10が接続されている又は放電電流値が遮断閾値Ith0以上であると判定されるまで、バッテリMCU150は、S10の処理を繰り返し実行する。バッテリMCU150は、電動作業機10が接続されている又は放電電流値が遮断閾値Ith0以上であると判定した場合は、S20の処理へ進む。
【0104】
S20では、バッテリMCU150は、第1通信回路174及び第1通信端子116を介して、シリアル通信により、電動作業機10と初回通信を行う。バッテリMCU150は、初回通信では、バッテリパック6の型番などを電動作業機10へ送信し、電動作業機10から作業機情報を受信する。作業機情報は、電動作業機10の型番、仕様などである。
【0105】
続いて、S30では、バッテリMCU150は、第1通信回路174及び第1通信端子116を介して、シリアル通信により、電動作業機10と定期通信を行う。電動作業機10は、定期的にバッテリパック6へバッテリ情報を要求する。バッテリMCU150は、電動作業機10から要求を受信すると、要求に応じたバッテリ情報を応答する。
【0106】
具体的には、S40では、バッテリMCU150は、第1放電端子114から出力している出力信号が、放電許可信号か放電禁止信号化を判定する。出力信号が放電許可信号である場合は、S50において、バッテリMCU150は、第1通信回路174及び第1通信端子116を介して、シリアル通信により、電動作業機10へ放電許可状態であることを応答する。出力信号が放電禁止信号である場合は、S60において、バッテリMCU150は、第1通信回路174及び第1通信端子116を介して、シリアル通信により、電動作業機10へ放電禁止状態であることを応答する。
【0107】
続いて、S70では、バッテリMCU150は、放電電流値、セル電圧値、バッテリ温度を取得する。
【0108】
続いて、S80では、バッテリMCU150は、S70において取得した放電電流値に基づいて、過電流保護を実行するか否か判定する。具体的には、バッテリMCU150は、放電電流値が電流閾値以上である場合に、過電流保護を実行すると判定する。バッテリMCU150は、過電流保護を実行しないと判定した場合は、S90の処理へ進み、過電流保護を実行すると判定した場合は、S110の処理へ進む。
【0109】
続いて、S90では、バッテリMCU150は、S70において取得したバッテリ温度に基づいて、温度保護を実行するか否か判定する。具体的には、バッテリMCU150は、バッテリ温度が温度閾値以上である場合に、温度保護を実行すると判定する。バッテリMCU150は、温度保護を実行しないと判定した場合は、S100の処理へ進み、温度保護を実行すると判定した場合は、S110の処理へ進む。
【0110】
続いて、S100では、バッテリMCU150は、S70において取得したセル電圧値に基づいて、過放電保護を実行するか否か判定する。具体的には、バッテリMCU150は、セル電圧値が電圧閾値以下である場合に、過放電保護を実行すると判定する。ここでの電圧閾値は、禁止領域AAの電圧範囲よりも大きい値である。バッテリMCU150は、過放電保護を実行しないと判定した場合は、S120の処理へ進み、過放電保護を実行すると判定した場合は、S110の処理へ進む。
【0111】
S110では、バッテリMCU150は、第1放電制御回路172及び第1放電端子114を介して、電動作業機10へ放電禁止信号を出力し、S120の処理へ進む。
【0112】
S120では、バッテリMCU150は、遮断判定処理を実行し、S30の処理へ戻る。遮断判定処理の詳細は後述する。
【0113】
<2-2.遮断判定処理>
次に、バッテリMCU150が実行する遮断判定処理について、
図7のサブルーチンを参照して説明する。
【0114】
まず、S200では、バッテリMCU150は、第1検出回路173からの入力信号に基づいて、バッテリパック6に電動作業機10が接続されているか否か判定する。本実施形態では、バッテリMCU150は、電動作業機10が接続か非接続かに応じて、第2の領域A2の範囲を変化させる。
【0115】
バッテリパック6に電動作業機10が接続されていないときに、バッテリパック6に試験装置を接続して、バッテリパック6の試験を実行することがある。バッテリパック6の試験を実行する場合に、禁止領域AAが広いと、試験中に放電がすぐに止まり、バッテリパック6の試験を継続できないことがある。そこで、バッテリMCU150は、バッテリパック6に電動作業機10が接続されていない場合は、バッテリパック6に電動作業機10が接続されている場合よりも、禁止領域AAを狭く設定する。具体的には、バッテリMCU150は、第2の領域A2の電圧範囲を狭く設定することにより、禁止領域AAを狭くする。
【0116】
すなわち、
図4及び
図5において、バッテリMCU150は、バッテリパック6に電動作業機10が接続されていない場合は、セル電圧値V1の値を比較的小さくして、第2の領域A2を比較的狭くするとともに、使用可能領域A3を比較的広くする。一方、バッテリMCU150は、バッテリパック6に電動作業機10が接続されている場合は、セル電圧値V1の値を比較的大きくして、第2の領域A2を比較的広くするとともに、使用可能領域A3を比較的狭くする。セル電圧値V1をV2と等しい値にしてもよいし、セル電圧値V1をV0と等しい値にしてもよい。
【0117】
S210では、バッテリMCU150は、遮断フラグをオンに設定にし、比較的広く設定した第2の領域A2に応じた第2電圧閾値Vth2及び第2電流閾値Ith2を設定する。すなわち、バッテリMCU150は、セル電圧値V1を第2電圧閾値Vth2に設定し、放電電流値I0を第2電流閾値Ith2に設定する。この後、S240の処理へ進む。
【0118】
S220では、バッテリMCU150は、放電電流値が、遮断閾値Ith0未満か否か判定する。バッテリMCU150は、放電電流値が遮断閾値Ith0未満であると判定した場合は、S230の処理へ進む。S230では、バッテリMCU150は、遮断フラグをオフに設定し、S240の処理へ進む。
【0119】
一方、S220において、バッテリMCU150は、放電電流値が遮断閾値Ith0以上であると判定された場合、すなわち、電動作業機10が接続されておらず、且つ放電電流値が遮断閾値Ith0以上であると判定された場合は、遮断フラグの設定は行わない。
【0120】
続いて、S240及びS250では、バッテリMCU150は、第1の条件を満たすか否か判定する。第1の条件は、バッテリ130のセル電圧値及び放電電流値が、第1の領域A1に入っていることに応じて成立する。
【0121】
まず、S240では、バッテリMCU150は、取得したセル電圧値のうちの最小値が、第1電圧閾値Vth1未満であるか否か判定する。第1電圧閾値Vth1は、第1の領域A1に応じて設定されている固定値であり、セル電圧値V2に相当する。バッテリMCU150は、最小セル電圧値が第1電圧閾値Vth1以上であると判定した場合は、S270の処理へ進み、最小セル電圧値が第1電圧閾値Vth1未満であると判定した場合は、S250の処理へ進む。
【0122】
S250では、バッテリMCU150は、放電電流値が第1電流閾値Ith1よりも大きいか否か判定する。第1電流閾値Ith1は、第1の領域A1に応じて設定されている固定値であり、放電電流値I1に相当する。バッテリMCU150は、放電電流値が第1電流閾値Ith1以下であると判定した場合は、S270の処理へ進み、放電電流値が第1電流閾値Ith1よりも大きいと判定した場合は、S260の処理へ進む。
【0123】
S260では、バッテリMCU150は、バッテリ130のセル電圧値及び放電電流値が、第1の領域A1に入っているため、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。これにより、バッテリ130からの放電が停止する。
【0124】
続いて、S270では、バッテリMCU150は、遮断フラグがオンか否か判定する。バッテリMCU150は、遮断フラグがオンである場合は、S280の処理へ進み、遮断フラグがオフである場合は、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0125】
続いて、S280及びS290では、バッテリMCU150は、第1の条件を満たさなかったことに応じて、第2の条件を満たすか否か判定する。第2の条件は、バッテリ130のセル電圧値及び放電電流値が、第2の領域A2に入っていることに応じて成立する。
【0126】
S280では、バッテリMCU150は、最小セル電圧値が、第2電圧閾値Vth2未満であるか否か判定する。バッテリMCU150は、最小セル電圧値が第2電圧閾値Vth2未満であると判定した場合は、S280の処理へ進む。バッテリMCU150は、最小セル電圧値が第2電圧閾値Vth2以上であると判定した場合は、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0127】
S290では、バッテリMCU150は、放電電流値が第2電流閾値Ith2よりも大きいか否か判定する。バッテリMCU150は、放電電流値が第2電流閾値Ith2よりも大きいと判定した場合は、S300の処理へ進む。バッテリMCU150は、放電電流値が第2電流閾値Ith2以下であると判定した場合は、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0128】
S300では、バッテリMCU150は、バッテリ130のセル電圧値及び放電電流値が、第2の領域A2に入っているため、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。その後、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0129】
<3.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0130】
(1-1)バッテリパック6は、電動作業機10が接続されていない場合は、電動作業機10が接続されている場合よりも、禁止領域AAを狭く設定する。これにより、バッテリパック6に試験装置を接続して試験を実行する場合に、禁止領域AAが比較的狭く設定されるため、試験中に放電がすぐに止まり、バッテリパック6の試験を継続できなくなることを回避できる。
【0131】
(1-2)第2の領域A2の電圧範囲を狭く設定することにより、バッテリパック6の使用可能な電圧範囲を広げることができる。ひいては、バッテリパック6を適切に保護しつつ、バッテリパック6を有効に利用することができる。
【0132】
(第2実施形態)
<1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0133】
前述した第1実施形態では、遮断判定処理において、電動作業機10が接続か非接続かに応じて第2の領域A2の範囲を変更した。これに対し、第2実施形態では、遮断判定処理において、電動作業機10が接続か非接続かに加えて、電動作業機10の仕様に応じて第2の領域A2の範囲を変更する点で、第1実施形態と相違する。
【0134】
<2.遮断判定処理>
本実施形態では、バッテリMCU150は、
図7に示す遮断判定処理の代わりに、
図8A及び8Bに示す遮断判定処理を実行する。
【0135】
まず、S400では、バッテリMCU150は、第1検出回路173からの入力信号に基づいて、バッテリパック6に電動作業機10が接続されているか否か判定する。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、バッテリMCU150は、電動作業機10が接続か非接続かに応じて、第2の領域A2の範囲を変化させる。
【0136】
S400において、バッテリMCU150は、電動作業機10が接続されていると判定した場合は、S410の処理へ進み、電動作業機10が接続されていないと判定した場合は、S450の処理へ進む。
【0137】
S410では、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Aに属しているか否か判定する。
図9に示すように、バッテリMCU50は、電動作業機10の仕様に応じて、電動作業機10を、モデル群Aとモデル群Bとを含む2つ以上のモデル群に分ける。
【0138】
電動作業機10の仕様は、電動作業機10が冷却ファン281及び/又はライト280を備えているか否かを含む。また、電動作業機10の仕様は、電動作業機10の負荷を含む。また、電動作業機10の仕様は、電動作業機10が一連の動作を実行するアクチュエータを備えた特殊作業機か否かを含む。また、電動作業機10の仕様は、バッテリ130に含まれる複数のバッテリブロックの接続が直列か並列かを含む。別の実施形態では、これらの電動作業機10の仕様の少なくとも1つが除去さてもよいし、別の電動作業機の仕様が追加されてもよい。
【0139】
そして、本実施形態では、バッテリMCU50は、電動作業機10がモデル群Bに属している場合、モデル群Aに属している場合よりも、第2の領域A2の範囲を狭く設定することにより、禁止領域AAを狭くする。3つ以上のモデル群に分ける場合は、モデル群C、モデル群Dと、順に禁止領域AAを狭く設定する。
【0140】
具体的には、電動作業機10が冷却ファン281及び/又はライト280を備えていない電動作業機10は、モデル群Aに分類し、冷却ファン281及び/又はライト280を備えている電動作業機10は、モデル群Bに分類する。バッテリMCU150は、電動作業機10が冷却ファン281及び/又はライト280を備えていない場合は、第2の領域A2の電圧範囲を比較的広く設定することにより、禁止領域AAを比較的広くする。電動作業機10が冷却ファン281及び/又はライト280を備えている場合は、モータ270が停止した後に、冷却ファン281を駆動させて電動作業機10の内部を冷却したり、ライト280を点灯させたりしたいことがある。よって、この場合、バッテリMCU150は、第2の領域A2の電圧範囲を比較的狭く設定することにより、禁止領域AAを比較的狭する。ひいては、バッテリMCU150は、モータ270の停止後に冷却ファン281及び/又はライト280を使用できるようにする。
【0141】
また、負荷が比較的重い電動作業機10は、モデル群Aに分類し、負荷が比較的軽い電動作業機10は、モデル群Bに分類する。バッテリMCU150は、電動作業機10の負荷が比較的重い場合、第2の領域A2の電圧範囲を比較的広く設定することにより、禁止領域AAを比較的広くする。ひいては、バッテリMCU150は、早く放電を遮断できるようにする。一方、電動作業機10の負荷が比較的軽い場合、バッテリパック6の保護の必要性が低い。よって、この場合、バッテリMCU150は、第2の領域A2の電圧範囲を比較的狭く設定することにより、禁止領域AAを比較的狭くする。ひいては、バッテリMCU150は、セル電圧値が低くなっても放電できるようにする。
【0142】
また、バッテリMCU150は、電動作業機10が通常作業機である場合、電動作業機10をモデル群Aに分類し、電動作業機10が特殊作業機である場合、電動作業機10をモデル群Bに分類する。通常作業機は、インパクトドライバ10Bのように、アクチュエータが一連の動作を実行しない作業機である。特殊作業機は、ピンタッカ10Aのように、アクチュエータが一連の動作を実行する作業機である。バッテリMCU150は、電動作業機10が通常作業機である場合、第2の領域A2の電圧範囲を比較的広く設定することにより、禁止領域AAを比較的広くする。電動作業機10が特殊作業機である場合、アクチュエータの一連の動作中に放電が停止すると、作業が途中で止まり、作業効率が低下する。よって、この場合、バッテリMCU150は、第2の領域A2の電圧範囲を比較的狭く設定することにより、禁止領域AAを比較的狭くする。ひいては、バッテリMCU150は、アクチュエータの一連の動作中に放電が停止しないようにする。
【0143】
また、バッテリMCU150は、電動作業機10の定格電圧がVsaである場合、電動作業機10をモデル群Aに分類し、電動作業機10の定格電圧がVsbである場合、電動作業機10をモデル群Bに分類する。定格電圧Vsaは、定格電圧Vsbの2倍であり、定格電圧Vsaは、例えば、36Vであり、定格電圧Vsbは、例えば、18Vである。
【0144】
図10及び
図11に示すように、バッテリ130は、第1のバッテリブロック130Aと第2のバッテリブロック130Bとを含む。バッテリMCU150は、シリアル通信により、電動作業機10の仕様として、定格電圧がVsaであることを受信した場合は、
図10に示すように、第1のバッテリブロック130Aを第2のバッテリブロック130Bに直列に接続する。一方、バッテリMCU150は、電動作業機10の仕様として、定格電圧がVsbであることを受信した場合は、
図11に示すように、第1のバッテリブロック130Aを第2のバッテリブロック130Bに並列に接続する。直列接続及び並列接続のいずれの場合でも、バッテリシャント抵抗器163を流れる放電電流値は等しい。しかしながら、並列接続の場合に各バッテリセルに流れる放電電流値は、直列接続の場合に各バッテリセルに流れる放電電流値の半分になる。
【0145】
よって、バッテリMCU150は、電動作業機10の定格電圧がVsaである場合、第2の領域A2の電流範囲を比較的広く設定することにより、禁止領域AAを比較的広くする。一方、バッテリMCU150は、電動作業機10の定格電圧がVsbである場合、第2の領域A2の電流範囲を比較的狭く設定することにより、禁止領域AAを比較的狭くする。
【0146】
S410において、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Aに属していると判定した場合は、S420の処理へ進む。S420では、バッテリMCU150は、遮断フラグAをオンに設定し、比較的広く設定した第2の領域A2に応じた第2電圧閾値Vth2及び第2電流閾値Ith2を設定する。
【0147】
一方、S410において、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Aに属していないと判定した場合は、S430の処理へ進む。S430では、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Bに属しているか否か判定する。バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Bに属していると判定した場合は、S440の処理へ進む。バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群Bに属していないと判定した場合は、S410及びS430と同様に、モデル群C、Dと順に属しているか否か判定する。ここでは、電動作業機10がモデル群A又はモデル群Bに属している場合について説明し、電動作業機10がモデル群C以降のモデル群に属する場合については説明を割愛する。
【0148】
S440では、バッテリMCU150は、遮断フラグBをオンに設定し、第3電圧閾値Vth3及び第3電流閾値Ith3を設定する。第3電圧閾値Vth3及び第3電流閾値Ith3は、比較的狭く設定した第2の領域A2に対応している。
【0149】
また、S450及びS460では、バッテリMCU150は、S220及びS230と同様の処理を実行する。なお、S460では、バッテリMCU150は、すべての遮断フラグA,B…をオフに設定する。遮断フラグの数は、モデル群の数に対応している。
【0150】
S450において、バッテリMCU150は、放電電流値が遮断閾値Ith0以上であると判定した場合は、遮断フラグを設定しない。
【0151】
続いて、S470及びS480では、バッテリMCU150は、S240及びS250と同様に、第1の条件が成立するか否か判定する。バッテリMCU150は、第1の条件が成立する場合は、S490において、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。
【0152】
続いて、S500では、バッテリMCU150は、遮断フラグAがオンか否か判定する。バッテリMCU150は、遮断フラグAがオンであると判定した場合は、S510の処理へ進む。S510及びS520では、バッテリMCU150は、S280及びS290と同様に、第2の条件が成立するか否か判定する。バッテリMCU150は、第2の条件が成立する場合には、S530において、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。バッテリMCU150は、第2の条件が成立しない場合には、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0153】
一方、バッテリMCU150は、S500において、遮断フラグAがオフであると判定した場合は、S540の処理へ進む。S540では、バッテリMCU150は、遮断フラグBがオンか否か判定する。バッテリMCU150は、遮断フラグBがオンであると判定した場合は、S550の処理へ進む。S550及びS560では、バッテリMCU150は、第2電圧閾値Vth2及び第2電流閾値Ith2の代わりに、第3電圧閾値Vth3及び第3電流閾値Ith3を用いて、S280及びS290と同様に、第2の条件が成立するか否か判定する。バッテリMCU150は、第2の条件が成立する場合には、S570において、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。バッテリMCU150は、第2の条件が成立しない場合には、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0154】
バッテリMCU150は、S540において、遮断フラグBがオフであると判定した場合は、遮断フラグC、Dと順に判定し、第2の条件が成立するか否か判定する。また、バッテリMCU150は、すべての遮断フラグがオフである場合は、本サブルーチンを終了して、S30の処理へ戻る。
【0155】
<3.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1-1)~(1-2)に加え、以下の効果が得られる。
【0156】
(1-3)電動作業機10の負荷が比較的軽い場合は、電動作業機10の負荷が比較的重い場合よりも、バッテリパック6の保護の必要性が低い。よって、電動作業機10の負荷が比較的軽い場合は、禁止領域AAを比較的狭く設定することにより、バッテリパック6をより有効に利用することができる。
【0157】
(1-4)電動作業機10が一連の動作を実行するアクチュエータを備えている場合は、禁止領域AAを比較的狭く設定することにより、一連の動作中にアクチュエータが停止することを回避して、作業効率の低下を抑制することができる。
【0158】
(1-5)電動作業機10が冷却ファン281及び/又はライト280を備えている場合には、禁止領域AAが比較的狭く設定される。これにより、モータ270への比較的多い電力の供給が停止した後でも、冷却ファン281及び/又はライト280へ比較的少ない電力を供給することができる。ひいては、電動作業機10の作業が停止した後でも、冷却ファン281及び/又はライト280を使用することができる。
【0159】
(1-6)第1のバッテリブロック130Aが第2のバッテリブロック130Bに並列に接続されている場合は、直列に接続されている場合よりも、バッテリパック6の保護の必要性が低い。よって、接続が並列の場合は、禁止領域AAを比較的狭く設定することにより、バッテリパック6をより有効に利用することができる。
【0160】
(1-7)第1のバッテリブロック130Aが第2のバッテリブロック130Bに並列に接続されている場合は、バッテリパック6の使用可能な電流範囲を広げることにより、バッテリパック6を適切に保護しつつ、バッテリパック6を有効に利用することができる。
【0161】
(第3実施形態)
<1.第3実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0162】
第1実施形態では、バッテリMCU150は、バッテリパックの保護処理において、放電電流値が電流閾値以上である場合に、過電流保護を実行して、電動作業機10へ放電禁止信号を出力した。これに対して、第3実施形態では、バッテリMCU150は、放電電流値の積算値に基づいてバッテリパック6の過電流状態を判定し、バッテリパック6が過電流状態である場合には、放電禁止信号を出力する点で、第1実施形態と異なる。さらに、バッテリMCU150は、放電禁止信号を出力しても放電電流が流れ続ける場合に、さらに、第1正極ライン180の導通を遮断する点で、第1実施形態と異なる。
【0163】
<2.処理>
<2-1.バッテリパックの保護処理>
バッテリMCU150が実行するバッテリパック6の保護処理について、
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0164】
S15では、バッテリMCU150は、第1検出回路173からの入力信号に基づいて、バッテリ側接続部100への電動作業機の接続又は非接続を判定する。すなわち、バッテリMCU150は、第1検出回路173から接続信号が入力された場合には、電動作業機の接続を判定し、第1検出回路173から非接続信号が入力された場合には、電動作業機の非接続を判定する。第1検出回路173は、バッテリパック6に対応した正規の制御を実行する電動作業機が接続されている場合には、接続信号をバッテリMCU150へ出力する。また、第1検出回路173は、バッテリパック6に対して何も接続されていない場合、及び、バッテリパック6に対応していない非正規の制御を実行する電動作業機が接続されている場合には、非接続信号をバッテリMCU150へ出力する。したがって、バッテリMCU150は、バッテリパック6に正規の電動作業機が接続された場合のみ、電動作業機の接続を判定する。
【0165】
S25~S75では、バッテリMCU150は、
図6に示すフローチャートのS20~S70と同様の処理を実行する。
【0166】
S85では、バッテリMCU150は、過電流判定処理を実行する。過電流判定処理の詳細は後述する。
【0167】
S95~S125では、バッテリMCU150は、
図6に示すフローチャートのS90~S120と同様の処理を実行する。なお、S125における遮断判定処理は、第1実施形態に係る遮断判定処理を実行してもよいし、第2実施形態に係る遮断判定処理を実行してもよい。
【0168】
S135では、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。これにより、バッテリ130からの放電が停止する。
【0169】
<2-2.過電流判定処理>
次に、バッテリMCU150が実行する過電流判定処理について、
図13のサブルーチンを参照して説明する。
【0170】
S205では、バッテリMCU150は、S15と同様に、第1検出回路173からの入力信号に基づいて、バッテリ側接続部100への電動作業機の接続又は非接続を判定する。バッテリMCU150は、S205において、電動作業機の接続を判定した場合は、S215の処理へ進み、電動作業機の非接続を判定した場合は、S225の処理へ進む。
【0171】
S215では、バッテリMCU150は、バッテリシャント抵抗器163により検出された放電電流値と、パターンaの相関データに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値と、を算出する。
【0172】
S225では、バッテリMCU150は、バッテリシャント抵抗器163により検出された放電電流値と、パターンbの相関データに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値と、を算出する。
【0173】
相関データは、放電電流値と過電流カウンタ加減算値との対応(以下、過電流相関データ)と、放電電流値と遮断カウンタ加減算値との対応(以下、遮断相関データ)と、を含む。メモリ150bは、予め、パターンa及びbの過電流相関データと、パターンa及びbの遮断相関データと、を記憶している。本実施形態では、過電流カウンタ加減算値及び遮断カウンタ加減算値の各々が、本開示のカウンタ加減算値の一例に相当する。
【0174】
バッテリMCU150は、所定の周期で、繰り返し過電流カウンタ加減算値を算出し、算出した過電流カウンタ加減算値を積算して、過電流カウンタ値を算出する。同様に、バッテリMCU150は、所定の周期で、繰り返し遮断カウンタ加減算値を算出し、算出した遮断カウンタ加減算値を積算して、遮断カウンタ値を算出する。
【0175】
後述するように、バッテリMCU150は、過電流カウンタ値に基づいて、バッテリ130が過電流状態か否か判定し、バッテリ130が過電流状態であると判定した場合に、バッテリ130の放電を禁止する。また、バッテリMCU150は、遮断カウンタ値に基づいて、放電を禁止した後に放電が続いているか否か判定し、放電が続いていると判定した場合に、放電を遮断する。
【0176】
図14に、パターンa及びbの過電流相関データと、パターンa及びbの遮断相関データのグラフを示す。パターンaは、電動作業機の接続が判定された場合の相関データに相当する。パターンbは、電動作業機の非接続が判定された場合の相関データに相当する。すなわち、パターンaは、正規の放電が行なわれている場合の相関データに相当し、パターンbは、異常な放電が行われている場合の相関データに相当する。
【0177】
過電流カウンタ加減算値は、正の値である過電流カウンタ加算値と、負の値である過電流カウンタ減算値と、を含む。遮断カウンタ加減算値は、正の値である遮断カウンタ加算値と、負の値である遮断カウンタ減算値と、を含む。過電流カウンタ加算値及び遮断カウンタ加算値は、所定位置以上の放電電流値に対応する。過電流カウンタ減算値及び遮断カウンタ減算値は、所定値未満の放電電流値に対応する。
【0178】
上述したように、パターンbにおける過電流カウンタ加算値は、バッテリパック6が早く過電流判定されて保護されるように、パターンaにおける過電流カウンタ加算値よりも大きく設定されている。すなわち、同じ放電電流値において、パターンbにおける過電流カウンタ加算値は、パターンaにおける過電流カウンタ加算値よりも大きく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンbにおける遮断カウンタ加算値は、パターンaにおける遮断カウンタ加算値よりも大きく設定されている。
【0179】
したがって、
図15に示すように、同じ放電電流値において、電動作業機の非接続が判定された場合は、電動作業機の接続が判定された場合よりも、早い時点で、過電流判定されて放電が停止される。さらに、同じ放電電流値において、電動作業機の非接続が判定された場合は、電動作業機の接続が判定された場合よりも、早い時点で、遮断判定される。
【0180】
また、パターンbにおける過電流カウンタ減算値の大きさは、過電流カウンタ値の減少が緩やかになるように、パターンaにおける過電流カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている。すなわち、同じ放電電流値において、パターンbにおける過電流カウンタ減算値の大きさは、パターンaにおける過電流カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンbにおける遮断カウンタ減算値の大きさは、パターンaにおける遮断カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている。
【0181】
S235では、バッテリMCU150は、S215又はS225において算出した算出した過電流カウンタ加減算値を、過電流カウンタ値に加算して、過電流カウンタ値を更新する。さらに、バッテリMCU150は、S215又はS225において算出した算出した遮断カウンタ加減算値を、遮断カウンタ値に加算して、遮断カウンタ値を更新する。本実施形態では、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の各々は、本開示のカウンタ値の一例に相当する。
【0182】
続いて、S245では、バッテリMCU150は、過電流カウンタ値が、第1閾値X1よりも大きいか否か判定する。バッテリMCU150は、過電流カウンタ値が第1閾値X1以下であると判定した場合は、S95の処理へ進み、過電流カウンタ値が第1閾値X1よりも大きいと判定した場合は、S255の処理へ進む。
【0183】
S255では、バッテリMCU150は、遮断カウンタ値が第2閾値X2よりも大きいか否か判定する。第1閾値X1及び第2閾値X2は、時間t1≦時間t2となるように設定されている。時間t1は、放電開始から過電流カウンタ値が第1閾値X1に到達するまでの時間に相当する。時間t2は、放電開始から過電流カウンタ値が第2閾値X2に到達するまでの時間に相当する。
図4では、同じパターンにおいて、過電流カウンタ加減算値は、遮断カウンタ加減算値よりも大きく設定されているが、本開示は必ずしもこの設定に限定されない。時間t1≦時間t2の関係が成立するのであれば、同じパターンにおいて、遮断カウンタ加減算値が、過電流カウンタ加減算値よりも大きく設定されていてもよい。
【0184】
バッテリMCU150は、遮断カウンタ値が第2閾値X2以下であると判定した場合は、S115の処理へ進む。すなわち、バッテリMCU150は、バッテリ130が過電流状態であると判定した場合は、S115の処理へ進む。S115では、バッテリMCU150は、第1放電制御回路172及び第1放電端子114を介して、電動作業機10へ放電禁止信号を出力し、放電を禁止する。
【0185】
バッテリMCU150は、遮断カウンタ値が第2閾値X2よりも大きいと判定した場合は、S135の処理へ進む。S115において放電禁止信号を出力したことにより放電が停止した場合には、遮断カウンタ値は減少し、遮断カウンタ値が第2閾値X2よりも大きくなることはない。バッテリMCU150が電動作業機10へ放電禁止信号を出力したにも関わらず放電が続いた場合に、遮断カウンタ値が第2閾値X2を超える。この場合、バッテリMCU150は、遮断判定をして、S135の処理へ進む。S135では、バッテリMCU150は、放電禁止信号を出力しても放電が停止しないため、遮断素子162をオフにして、第1正極ライン180の導通を遮断する。
【0186】
<3.効果>
以上説明した第3実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0187】
(2-1)バッテリパック6は、検出された放電電流値と、判定された電動作業機10の接続又は非接続に応じて選択された相関データと、に基づいて、過電流カウンタ加減算値及び遮断カウンタ加減算値を算出する。さらに、バッテリパック6は、算出した過電流カウンタ加減算値及び遮断カウンタ加減算値に基づいて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値を算出し、過電流カウンタ値が第1閾値X1を超えたことに応じて、バッテリ130からの放電を禁止する。バッテリパック6は、放電を禁止しても放電が続いた場合には、遮断カウンタ値が第2閾値X2を超えたことに応じて、第1正極ライン180の導通を遮断する。したがって、判定された電動作業機の接続又は非接続に応じて、放電開始から放電停止までの時間を変化させることができる。よって、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0188】
(2-2)電動作業機の非接続が判定された場合には、電動作業機の接続が判定された場合と比べて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の増加率が大きくなり、早期に放電が停止する。したがって、バッテリパック6が電動作業機10に接続されていないにもかかわらず放電している場合には、早期に放電を停止してバッテリパック6を保護することができる。また、バッテリパック6に正規の制御に従った電動作業機10以外の電動作業機が接続されている場合には、電動作業機の接続が判定されず、電動作業機の非接続が判定される。したがって、バッテリパック6に何等かの電動作業機が接続されていても、正規の制御に従った放電が行なわれていない場合には、早期に放電を停止してバッテリパック6を保護することができる。
【0189】
(2-3)電動作業機の非接続が判定された場合には、電動作業機の接続が判定された場合と比べて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の減少率が小さくなる。したがって、バッテリパック6が異常な放電をしている場合には、バッテリパック6が正規の放電をしている場合よりも、バッテリパックの保護をより強くすることができる。
【0190】
(第4実施形態)
<1.第3実施形態との相違点>
第4実施形態は、基本的な構成は第3実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第3実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0191】
前述した第3実施形態では、過電流判定処理において、バッテリMCU150は、電動作業機の接続判定か非接続判定かに応じて、異なる過電流相関データ及び遮断相関データを選択して、過電流加減算値及び遮断加減算値を算出した。これに対し、第4実施形態では、過電流判定処理において、電動作業機の接続判定か非接続判定かに加えて、電動作業機10の仕様に応じて、異なる過電流相関データ及び遮断相関データを選択して、過電流加減算値及び遮断加減算値を算出する点で、第3実施形態と相違する。
【0192】
<2.過電流判定処理>
本実施形態では、バッテリMCU150は、
図13に示す過電流判定処理の代わりに、
図16に示す過電流判定処理を実行する。
【0193】
まず、S305では、バッテリMCU150は、S205と同様の処理を実行する。バッテリMCU150は、電動作業機の接続が判定された場合には、S315の処理へ進み、電動作業機の非接続が判定された場合には、S355の処理へ進む。本実施形態でも、第3実施形態と同様に、バッテリMCU150は、電動作業機の接続判定か非接続判定かに応じて、異なる過電流相関データ及び遮断相関データを選択する。
【0194】
S315では、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群M1に属しているか否か判定する。本実施形態でも、第2実施形態と同様に、バッテリMCU50は、
図9に示すように、電動作業機10の仕様に応じて、電動作業機10を、モデル群M1とモデル群M2とを含む2つ以上のモデル群に分ける。モデル群M1は、モデル群Bに対応し、モデル群M2は、モデル群Aに対応する。
【0195】
バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群M1に属していると判定した場合は、S325へ進み、電動作業機10がモデル群M2に属していないと判定した場合は、S335の処理へ進む。S335では、バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群M2に属しているか否か判定する。バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群M2に属していると判定した場合は、S345の処理へ進む。バッテリMCU150は、電動作業機10がモデル群M2に属していないと判定した場合は、S315及びS335と同様に、モデル群M3、M4と順に属しているか否か判定する。ここでは、電動作業機10がモデル群M1又はモデル群M2に属している場合について説明し、電動作業機10がモデル群M3以降のモデル群に属する場合については説明を割愛する。
【0196】
S325では、バッテリMCU150は、バッテリシャント抵抗器163により検出された放電電流値と、パターンaaの相関データとに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値と、を算出する。
【0197】
S345では、バッテリMCU150は、バッテリシャント抵抗器163により検出された放電電流値と、パターンbbの相関データとに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値と、を算出する。
【0198】
S355では、バッテリMCU150は、バッテリシャント抵抗器163により検出された放電電流値と、パターンzの相関データに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値と、を算出する。
【0199】
図17に、パターンaa、bb、zの過電流相関データと、パターンaa、bb、zの遮断相関データのグラフを示す。メモリ150bは、予め、パターンaa、bb、zの過電流相関データと、パターンaa、bb、zの遮断相関データと、を記憶している。パターンaaは、電動作業機10がモデル群M1に属している場合の相関データに相当する。パターンbbは、電動作業機10がモデル群M2に属している場合の相関データに相当する。パターンzは、電動作業機10の非接続が判定されている場合の相関データに相当する。
【0200】
モデル群M2に属する電動作業機10は、モデル群M1に属する電動作業機10よりもバッテリパック6の保護の必要性が高い。したがって、
図17に示すように、同じ放電電流値において、パターンbbにおける過電流カウンタ加算値は、パターンaaにおける過電流カウンタ加算値よりも大きく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンbbにおける遮断カウンタ加算値は、パターンaaにおける遮断カウンタ加算値よりも大きく設定されている。また、同じ放電電流値において、パターンbbにおける過電流カウンタ減算値の大きさは、パターンaaにおける過電流カウンタ減算値よりも小さく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンbbにおける遮断カウンタ減算値の大きさは、パターンaaにおける遮断カウンタ減算値よりも小さく設定されている。
【0201】
電動作業機10がモデル群M1及びM2のどちらに属している場合でも、バッテリパック6は正規の放電を行っている。したがって、電動作業機10の非接続が判定された場合は、モデル群M2に属する電動作業機10がバッテリパック6に接続されている場合よりも、バッテリパック6の保護の必要性が高い。よって、
図17に示すように、同じ放電電流値において、パターンzにおける過電流カウンタ加算値は、パターンbbにおける過電流カウンタ加算値よりも大きく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンzにおける遮断カウンタ加算値は、パターンbbにおける遮断カウンタ加算値よりも大きく設定されている。また、同じ放電電流値において、パターンzにおける過電流カウンタ減算値の大きさは、パターンbbにおける過電流カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている。同様に、同じ放電電流において、パターンzにおける遮断カウンタ減算値の大きさは、パターンbbにおける遮断カウンタ減算値の大きさよりも小さく設定されている。
【0202】
図18に示すように、同じ放電電流値において、モデル群M2に属した電動作業機10がバッテリパック6に接続されている場合は、モデル群M1に属した電動作業機10がバッテリパック6に接続されている場合よりも、早い時点で、過電流判定されて放電が停止されるとともに、早い時点で、遮断判定される。さらに、同じ放電電流値において、電動作業機の非接続が判定された場合は、モデル群M2に属した電動作業機10がバッテリパック6に接続されている場合よりも、早い時点で、過電流判定されて放電が停止されるとともに、早い時点で、遮断判定される。
【0203】
続いて、S365~S385では、バッテリMCU150は、S235~S255と同様の処理を実行する。
【0204】
<3.効果>
以上説明した第4実施形態によれば、(2-1)~(2-3)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0205】
(2-4)バッテリMCU150は、検出された放電電流値と、バッテリパック6に接続された電動作業機10の仕様に応じて選択された相関データと、に基づいて、過電流カウンタ加減算値及び遮断カウンタ加減算値を算出する。したがって、判定された電動作業機の接続又は非接続に加えて、バッテリパック6に接続された電動作業機10の仕様に応じて、放電開始から放電停止までの時間を変化させることができる。よって、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0206】
(2-5)電動作業機10の仕様が、電動作業機10の負荷を含むことにより、電動作業機の負荷に応じて、異なる相関データが選択される。これにより、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0207】
(2-6)電動作業機10が一連の動作を実行するアクチュエータを備えているか否かに応じて、異なる相関データが選択される。これにより、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0208】
(2-7)電動作業機10が冷却ファン及び/又はライトを備えているか否かに応じて、異なる相関データが選択される。これにより、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0209】
(2-8)第1のバッテリブロック130Aと第2のバッテリブロック130Bとの接続が直列か並列かに応じて、異なる相関データが選択される。これにより、バッテリパック6の実用性を向上させることができる。
【0210】
(2-9)バッテリパック6に接続されている電動作業機10の負荷が重い場合には、負荷が軽い場合と比べて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の増加率が大きくなるため、早期に放電を停止させてバッテリパック6を保護することができる。
【0211】
(2-10)バッテリパック6接続されている電動作業機10の負荷が重い場合には、負荷が軽い場合と比べて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の減少率が小さくなるため、バッテリパック6の保護をより強くすることができる。
【0212】
(2-11)電動作業機の非接続が判定された場合には、接続された電動作業機10の負荷が重い場合と比べて、過電流カウンタ値及び遮断カウンタ値の増加率が大きくなるため、早期に放電が停止する。したがって、バッテリパック6が異常な放電をしている場合には、バッテリパック6に接続されている電動作業機10の負荷が重い場合よりも、バッテリパック6の保護をより強くすることができる。
【0213】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0214】
(a)第1及び第2実施形態では、バッテリパック6が自身で放電を禁止する禁止領域AAは可変であるが、バッテリパック6が電動作業機10に放電を禁止させる領域は一定であったが、本開示はこれに限定されない。すなわち、S80において過電流保護を実行する放電電流値の範囲、及び/又は、S100において過放電保護を実行する放電電圧値の範囲を、電動作業機10の接続の有無、及び/又は電動作業機10の仕様に応じて変化させてもよい。
【0215】
(b)第3及び第4実施形態では、バッテリMCU150は、相関データに基づいて、過電流カウンタ加減算値と、遮断カウンタ加減算値の両方を算出したが、どちらか一方のみでもよい。すなわち、バッテリMCU150は、過電流カウンタ値に基づいた放電禁止信号の出力と、遮断カウンタ値に基づいた遮断素子162のオフへの切り替えの両方を必ずしも実行する必要はなく、どちらか一方のみを実行してもよい。
【0216】
(c)バッテリMCU150及び作業機MCU250は、MCUでなくてもよく、個別の各種電子部品の組み合わせであってもよいし、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)であってもよいし、Application Specific Standard Product(ASSP)であってもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate
Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスであってもよいし、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0217】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。