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特許7579898射出成形支援システム、射出成形支援方法、射出成形機およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】射出成形支援システム、射出成形支援方法、射出成形機およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023011984
(22)【出願日】2023-01-30
(65)【公開番号】P2024107846
(43)【公開日】2024-08-09
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐亮
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030221(JP,A)
【文献】特開平08-309814(JP,A)
【文献】特開2022-141495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援システムであって、
前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部と、
学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部と、
前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データを反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させる成形制御部と、
前記成形品に対する評価を受け付ける評価受付部と、
前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部と、
を備える射出成形支援システム。
【請求項2】
前記評価受付部は、前記射出成形機が予め定めた数の成形品を成形した後に、該成形品に対する評価を受け付ける
請求項1に記載の射出成形支援システム。
【請求項3】
前記成形制御部は、前記情報受付部が受け付けた前記成形条件に従って、前記射出成形機に第1の成形品を成形させ、前記学習データを反映させた前記成形条件に従って、前記射出成形機に第2の成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記射出成形機が、前記第2の成形品を少なくとも3つ成形した後に、該成形品に対する評価を受け付ける
請求項2に記載の射出成形支援システム。
【請求項4】
前記評価受付部は、最初に評価を受け付けた後に、前記射出成形機が成形品を成形するごとに、該成形品に対する評価を受け付ける
請求項2に記載の射出成形支援システム。
【請求項5】
前記評価受付部は、スライダーバーを提示し、該スライダーバーのスライダーの位置を前記評価として受け付ける
請求項1に記載の射出成形支援システム。
【請求項6】
前記評価受付部は、前記情報受付部が受け付けた前記不良種類の数に応じた数のスライダーバーを提示する
請求項5に記載の射出成形支援システム。
【請求項7】
前記評価受付部は、先に提示したスライダーバーの端部に、スライダーが移動された場合には、新たに提示するスライダーバーの長さを伸長する
請求項5に記載の射出成形支援システム。
【請求項8】
前記評価受付部は、数値入力欄を提示し、該数値入力欄に入力する数値を評価として受け付ける
請求項1に記載の射出成形支援システム。
【請求項9】
前記評価受付部は、前記情報受付部が受け付けた前記不良種類の数に応じた数の数値入力欄を提示する
請求項8に記載の射出成形支援システム。
【請求項10】
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記学習データがある場合に、該評価が合格基準を満足する該学習データを前記学習済データとして生成する
請求項1に記載の射出成形支援システム。
【請求項11】
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記学習データがない場合に、前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの最適解を求め、
前記成形制御部は、前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、
さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がある場合に、該評価が合格基準を満足する該最適解を前記学習済データとして生成する
請求項1に記載の射出成形支援システム。
【請求項12】
前記学習データ生成部は、前記設計変数の上限値と下限値との範囲内の前記学習データを生成し、
前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がなくかつ前記最適解と前記上限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも前記上限値を大きくして複数の前記学習データを再生成し、
前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がなくかつ前記最適解と前記下限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも前記下限値を小さくして複数の前記学習データを再生成し、
前記成形制御部は、前記学習データ生成部が再生成した前記学習データを反映した前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再生成した学習データがある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再生成した学習データを前記学習済データとして生成する
請求項11に記載の射出成形支援システム。
【請求項13】
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再生成した学習データがない場合に、前記学習データ生成部がこれまでに生成および再生成した前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、
前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、
さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する
請求項12に記載の射出成形支援システム。
【請求項14】
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がない場合に、前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、
前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、
さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する
請求項11に記載の射出成形支援システム。
【請求項15】
前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がない場合に、前記最適解を求める際に用いられる目的関数を変更するとともに、前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、
前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、
前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、
さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する
請求項11に記載の射出成形支援システム。
【請求項16】
条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援方法であって、
前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付けるステップと、
学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定するステップと、
前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成するステップと、
前記学習データを反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させるステップと、
前記成形品に対する評価を受け付けるステップと、
前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成するステップと
を備える射出成形支援方法。
【請求項17】
条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機であって、
前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部と、
学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部と、
前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データを反映させた前記成形条件に従って成形品を成形する成形部と、
前記成形品に対する評価を受け付ける評価受付部と、
前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部と
を備える射出成形機。
【請求項18】
コンピュータを射出成形支援システムとして動作させるプログラムであって、
コンピュータを請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の射出成形支援システムとして機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形支援システム、射出成形支援方法、射出成形機およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形では、高品質の成形品を得るために、複数の成形条件を適切に設定する必要がある。このため、表示装置の画面に従った簡単な入力で成形条件を設定することが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2671253号公報
【文献】特許第6305963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出成形の成形条件の設定に際しては、機械学習等の学習により成形条件を決定することも考えられる。しかしながら、人工知能、機械学習、または深層学習などを利用する場合には、大量の学習データが必要となり、成形品の形状が変更されると学習データを再度採取する必要があるため、多くの時間を必要とし、汎用性も低い。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、人間の感覚的な評価値を利用し、比較的少量の学習データにより成形条件を設定することのできる射出成形支援システム、射出成形支援方法、射出成形機およびプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援システムが提供される。この射出成形支援システムは、成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部と、学習対象とする条件要素を、成形品の情報と不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部と、設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部と、学習データを反映させた成形条件に従って射出成形機に成形品を成形させる成形制御部と、成形品に対する評価を受け付ける評価受付部と、学習データと評価とに少なくとも基づいて、成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、成形条件の設定を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】射出成形支援システム1の構成を示すブロック図である。
図2】射出成形支援システム1の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】学習データ生成部103が生成した学習データの例を示した図である。
図4】提示する数値入力欄140の例を示した図である。
図5】提示するスライダーバーの例を示した図である。
図6】スライダーバー150の長さを伸長する例を示した図である。
図7】提示する数値入力欄140の別の例を示した図である。
図8】数値入力欄140とスライダーバー150を一緒に提示した例を示した図である。
図9】射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図10】射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図11】射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図12】射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図13】射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
図14】射出成形機の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本開示の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態において、射出成形支援システム1を動作させるソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、射出成形支援システム1を構成する複数の構成要素のうちの1つの構成要素を示す。各構成要素は、本実施形態における1以上の回路装置で構成される。回路装置は、抵抗器のような電気回路要素およびアンドゲートのような電子回路要素を複数組み合わせてなる回路ユニットであって、具体的には、1つのコンピュータを構成するマザーボードと称される主基板上に取り付けられる装置、例えば、中央演算処理装置、メインメモリ、サウンドシステムである。また、回路装置は、マザーボードに通信接続される機器、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、モニタのような、いわゆる外部装置を含む。各構成要素は、物理的には、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源であるが、概念上は、ハードウェア資源と当該ハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含んでなる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、本実施形態における情報は、アナログデータとデジタルデータを含んでいう。具体的にこれら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路において、でこれらの情報の通信およびこれらの情報を用いた種々の演算が実行される。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.射出支援システムの構成
図1は、射出成形支援システム1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、射出成形支援システム1は、処理部11と、記憶部12と、一時記憶部13と、外部装置接続部14と、通信部15とを有しており、これらの構成要素が射出成形支援システム1の内部において通信バス16を介して電気的に接続されている。
【0014】
処理部11は、例えば、1つ以上の中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)により実現されるもので、記憶部12に記憶された所定のプログラムに従って動作し、種々の機能を実現する。
【0015】
記憶部12は、様々な情報を記憶する不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスにより実現される。なお、記憶部12は、射出成形支援システム1と通信可能な別の装置に配するようにすることも可能である。
【0016】
一時記憶部13は、揮発性の記憶媒体である。これは、例えばランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメインメモリにより実現され、処理部11が動作する際に一時的に必要な情報(引数、配列等)、あるいは実行中のアプリケーションプログラムの全部または一部を記憶する。
【0017】
外部装置接続部14は、例えばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)や高精細度マルチメディアインターフェース(High-Definition Multimedia Interface:HDMI(登録商標))といった規格に準じた接続部であり、キーボード等の入力装置やモニタ等の表示装置を接続可能としている。また、射出成形機2との接続を行ってもよい。
【0018】
通信部15は、例えばローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)規格に準じた通信手段であり、射出成形支援システム1とローカルエリアネットワークやこれを介したインターネット等のネットワークとの間の通信を実現する。また、外部装置接続部14に代えて、射出成形機2との通信を行うこともできる。なお、射出成形機2を外部装置接続部14に接続した場合には、通信部15は、省略することも可能である。
【0019】
なお、射出成形支援システム1には、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能であり、複数のコンピュータを用いて射出成形支援システム1を構成することも可能である。
【0020】
2.射出成形支援システム1の機能
次に、射出成形支援システム1の機能について説明する。射出成形支援システム1は、プログラムにしたがって動作することで、後述する各機能部を実現する。このプログラムは、コンピュータを射出成形支援システム1として動作させるプログラムである。具体的には、記憶部12に記憶されているプログラム、つまり、ソフトウェアに基づいて、ハードウェアである処理部11が動作することで、後述する各機能部を実現する。このとき、処理部11は、必要に応じて、記憶部12と、一時記憶部13と、外部装置接続部14と、通信部15とを動作させる。
【0021】
図2は、射出成形支援システム1の機能的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、射出成形支援システム1は、情報受付部101と、設計変数決定部102と、学習データ生成部103と、成形制御部104と、評価受付部105と、学習済データ生成部106とを備える。
【0022】
情報受付部101は、射出成形機2を操作するオペレータ3から射出成形機2の成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける(図中矢印Aで示す)。このとき情報受付部101が受け付ける射出成形機2の成形条件は、初期成形条件である。初期成形条件は、テスト成形用の成形条件である。初期成形条件は、射出成形機2で成形品を成形することができるが、例えば、成形された成形品に成形不良が発生する等、所望する品質の成形品を成形するまでには至っておらず、修正の余地がある成形条件である。
【0023】
成形品の情報は、例えば、樹脂材料の種類、ランナー形状(円形、矩形、ダイレクトゲート等であり、矩形と円形の時はその寸法も含む)、製品の肉厚の最小値および最大値、製品部分の重量、射出工程から保圧工程に切り換わる時の圧力(VP切換圧力)等である。ランナー形状の情報は、例えば、円形、矩形またはダイレクトゲート等がある。例えば、ランナー形状が円形または矩形等の場合、ランナー形状の情報には、円形または矩形等の寸法も含まれる。ダイレクトゲートとは、スプルー部分と製品部分とを直接接続して、スプルー部分から製品部分に樹脂材料が直接流入する金型構造のことである。ダイレクトゲートの場合、スプルー部分と製品部分とを連通するランナー部分は、金型装置に形成されていない。
【0024】
成形条件は、複数の条件要素によって構成されている。射出成形機2は、図示しない型締装置と図示しない射出装置とを少なくとも備えている。型締装置は、搭載した金型装置の型開き、型閉じ、および型締めを行う。射出装置は、例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料を加熱かつ可塑化して溶融状態にし、計量した溶融樹脂を金型装置のキャビティ空間の中に射出充填する。条件要素は、例えば、樹脂温度(溶融温度とも称する)、金型温度、射出速度、保圧力(保持圧力とも称する)、保圧時間(保持圧力時間とも称する)、冷却時間、型締力(型締圧力とも称する)、型閉速度、型開速度などである。条件要素の設定データは、温度値、圧力値、速度値のように所定の単位の数値の形式である場合に限らず、例えば、ONおよびOFF等のように所定の選択肢の形式である場合もある。射出成形機2の動作は、条件要素を複数持つ成形条件に従って制御されている。
【0025】
情報受付部101が受け付ける成形品の情報および成形条件(初期成形条件)は、図示しない表示装置および図示しない入力装置を使ってオペレータ3が数値等で直接入力してもよく、表示装置に表示されている複数の選択項目の中から入力装置を使ってオペレータ3が選択的に入力してもよく、または、特許文献1および特許文献2に記載されている装置等を用いて入力してもよい。入力装置は、例えば、図示しない操作パネル、キーボード、マウス、またはタッチパネル等である。タッチパネルは、例えば、表示装置の表示画面上に取り付けられ、表示画面に表示した各種ボタンおよびスライダーバーなどを物理的な各種ボタンおよびスライダーバーのように操作することを可能にする。また、情報受付部101が受け付ける成形品の情報および成形条件(初期成形条件)は、予め記憶部12に記憶しておき、記憶部12から読み込むことで入力してもよく、または記憶部12から読み込んだデータから演算した結果を自動的に入力してもよい。成形不良の不良種類は、例えば、成形品の反り、ウェルドライン、フローマーク、ヒケ、ボイド、バリ、焼け、転写不良等である。成形不良の不良種類は、前述の表示装置および前述の入力装置を使って、表示された複数種類の成形不良の中からオペレータ3が選択的に入力するようにしてもよい。
【0026】
設計変数決定部102は、成形条件の条件要素のうち学習対象とする条件要素を、成形品の情報と成形不良の不良種類とに基づいて設計変数として決定する。設計変数決定部102は、成形条件を構成する複数の条件要素のうち学習対象とする少なくとも1つの条件要素を、成形品の情報と成形不良の不良種類とに基づいてそれぞれ設計変数として決定する。設計変数決定部102は、1つの条件要素を設計変数として決定してもよいし、少なくとも2つの条件要素をそれぞれ設計変数として決定してもよい。ここで、設計変数の決定に用いられる成形不良の不良種類は、1つの不良種類でもよいし、少なくとも2つの不良種類の組み合わせでもよい。設計変数の決定は、テーブルのようなデータベースを参照することで行い、例えば、成形不良が「ヒケ」の場合、条件要素のうちの樹脂温度、金型温度、射出速度、保圧力、保圧時間、冷却時間の6つをそれぞれ設計変数として決定する。このときの設計変数の個数は、6個である。例えば、テーブルは、成形品の情報および不良種類のデータと、成形品の情報および不良種類に基づいて決定される設計変数のデータと、を関連付けたデータとして予め記憶部12に記憶しておくとよい。なお、設計変数の決定は、オペレータが任意に決定するようにしてもよい。
【0027】
学習データ生成部103は、設計変数を、その設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する。学習データ生成部103は、各設計変数を、それら設計変数で構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する。学習データ生成部103は、一度に複数の学習データを生成することができる。例えば、設計変数がn個であれば、n次元の空間のうち、各設計変数の上限値と下限値との間が変数空間となる。つまり、学習データ生成部103は、設計変数の上限値と下限値との範囲内の学習データを生成することとなる。設計変数の上限値と下限値は、予め定めた手法によってデータベースから抽出されるデータの読み込み、または、予め定めた計算式による算出結果により決定される。例えば、設定されている成形不良の不良種類が「ヒケ」である場合、6種類の設計変数のうち、樹脂温度、金型温度、射出速度の上限値と下限値は、それぞれ所定の手法によってデータベースから抽出されるデータを読み込むことで決定され、保圧力、保圧時間、冷却時間の上限値と下限値は、所定の計算式により算出される。生成する学習データの個数は、学習データを生成する手法によっても異なるが、自動または手動で設定される。
【0028】
また、学習データ生成部103は、前述のような学習データを生成する際に、例えば、実験計画法を用いる。また好ましくは、学習データ生成部103は、前述のような学習データを生成する際に、例えば、ラテン超方格(LHD)を用いるとよい。ラテン超方格とは、設計変数空間に一様にサンプル点が配置されるように、学習データの設計変数の組み合わせを決める手法の1つである。1つのサンプル点は、1つの学習データを示し、設計変数決定部102で設計変数として決定した条件要素に設定される設定データの候補となるデータを設計変数毎に1つずつ有することになる。したがって、言い換えると、ラテン超方格とは、設計変数空間に一様に各サンプル点が配置されるように、つまりは当該設計変数空間に一様に各学習データが配置されるように、各学習データのそれぞれに対して設計変数毎に代入される設定データの候補となるデータの組み合わせを決めることができる手法の1つである。設計変数に代入される設定データの候補となるデータとは、例えば、数値で示されるデータである。ラテン超方格は、少ない数の学習データでも効率よく学習データの設計変数に代入される設定データの候補となるデータの組み合わせを網羅できる。
【0029】
図3は、学習データ生成部103が生成した学習データの例を示した図である。図3は、学習データ生成部103が生成した学習データ1から学習データ12までの12個の学習データの例を示した図である。図3は、設計変数決定部102で樹脂温度、金型温度、射出速度、保圧力、保圧時間、および冷却時間の6つの条件要素をそれぞれ設計変数として決定したあと、学習データ生成部103で生成された学習データを示した図である。図3で示す1つの学習データは、設計変数決定部102で設計変数として決定した6つの条件要素のそれぞれに設定される設定データの候補となるデータを設計変数毎に1つずつ、合計6つのデータで構成されている。設定データの候補となる1つのデータとは、例えば、数値である。
【0030】
また、学習データ生成部103は、後述するように学習済データ生成部106で最適解を求めた場合において、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がなくかつ最適解と設計変数の上限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも設計変数の上限値を大きくして複数の学習データを再生成し、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がなくかつ最適解と設計変数の下限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも設計変数の下限値を小さくして複数の学習データを再生成する。ここで、少なくとも設計変数の上限値を大きくするとは、設計変数の上限値のみ大きくする場合だけに限定されず、設計変数の上限値を大きくしかつ設計変数の下限値を小さくする場合もあることを意味する。また、少なくとも設計変数の下限値を小さくするとは、設計変数の下限値のみ小さくする場合だけに限定されず、設計変数の上限値を大きくしかつ設計変数の下限値を小さくする場合もあることを意味する。なお、前述のように設計変数の上限値および下限値のうちのどちらか一方またはそれら両方を変更すること以外は、学習データ生成部103で最初に学習データを生成した際の動作と同じであるため、ここでの説明を省略する。
【0031】
成形制御部104は、各学習データを反映させた成形条件に従ってそれら学習データ毎に射出成形機2に成形品を成形させるよう射出成形機2の制御を行う。具体的には、成形制御部104は、情報受付部101が受け付けた成形条件(初期成形条件)に従って、射出成形機2に第1の成形品を成形させ、各学習データを反映させた成形条件に従って、それら学習データ毎に射出成形機2に第2の成形品を成形させる。このとき、成形制御部104は、評価受付部105が最初の評価を受け付ける前に、予め定めた数の第2の成形品を射出成形機2に成形させる。好ましくは、成形制御部104は、評価受付部105が最初の評価を受け付ける前に、少なくとも3つの第2の成形品を射出成形機2に成形させるとよい。さらに好ましくは、成形制御部104は、評価受付部105が最初の評価を受け付ける前に、3つの第2の成形品を射出成形機2に成形させるとよい。オペレータ3は、例えば、予め定めた数が3つの場合であれば、最初の1つ目から3つ目までの第2の成形品を見比べながらそれぞれの評価を後述する評価受付部105に入力することができるので、1つ目の第2の成形品の評価から精度の高い評価を行うことができる。
【0032】
また、成形制御部104は、後述するように学習済データ生成部106で最適解を求めた場合に、各最適解を反映させた成形条件に従ってそれら最適解毎に射出成形機2に第2の成形品を成形させる。また、成形制御部104は、前述したように学習データ生成部103で学習データを再生成した場合に、再生成した各学習データを反映した成形条件に従ってそれら学習データ毎に射出成形機2に第2の成形品を成形させる。また、成形制御部104は、後述するように学習済データ生成部106で最適解を再び求めた場合に、再び求めた各最適解を反映させた成形条件に従ってそれら最適解毎に射出成形機2に第2の成形品を成形させる。また、成形制御部104は、後述する学習済データ生成部106が学習済データを生成した場合には、その学習済データを反映させた成形条件に従って射出成形機2に第3の成形品を成形させる。第3の成形品は、製品としての成形品である。
【0033】
生成または再生成した学習データを反映した成形条件とは、1つの学習データを初期成形条件(テスト成形用の成形条件)に反映した成形条件のことである。初期成形条件とは、射出成形機2で成形品を成形するために必要な各種条件要素にそれぞれ設定データが予め設定されている成形条件ではあるが、当該成形条件に従って射出成形機2に成形させた成形品についてはオペレータ3が所望する成形品の品質にまで至っていないときの成形条件のことである。つまり、生成または再生成した学習データを反映した成形条件とは、予め設定した初期成形条件に対して、設計変数として予め決定された条件要素の設定データのみ、1つの学習データが有している当該設定データの候補となるデータに置き換えることによって生成される成形条件のことである。
【0034】
また、求めたまたは再び求めた最適解を反映した成形条件とは、1つの最適解を前述の初期成形条件(テスト成形用の成形条件)に反映した成形条件のことである。つまり、求めたまたは再び求めた最適解を反映した成形条件とは、予め設定した初期成形条件に対して、設計変数として予め決定された条件要素の設定データのみ、1つの最適解が有している当該設定データの候補となるデータに置き換えることによって生成される成形条件のことである。
【0035】
また、学習済データを反映した成形条件とは、学習済データを前述の初期成形条件(テスト成形用の成形条件)に反映した成形条件のことである。つまり、学習済データを反映した成形条件とは、予め設定した初期成形条件に対して、設計変数として予め決定された条件要素の設定データのみ、学習済データが有している当該設定データの最終的なデータに置き換えることによって生成される最終的な成形条件のことである。学習済データを反映した成形条件に従って射出成形機2で成形される成形品は、所望する品質を満足する製品としての成形品(第3の成形品)である。
【0036】
評価受付部105は、各学習データを反映させた成形条件に従ってそれら学習データ毎に射出成形機2が成形した(図中矢印Bで示す)各成形品21(第2の成形品に相当する)を、オペレータ3がそれぞれ評価した(図中矢印Cで示す)評価結果、つまり、各成形品21に対する評価を受け付ける(図中矢印Dで示す)。
【0037】
また、評価受付部105は、後述するように学習済データ生成部106で最適解を求めた場合に、各最適解を反映させた成形条件に従ってそれら最適解毎に射出成形機2が成形した(図中矢印Bで示す)各成形品21(第2の成形品に相当する)を、オペレータ3がそれぞれ評価した(図中矢印Cで示す)評価結果、つまり、各成形品21に対する評価を受け付ける(図中矢印Dで示す)。
【0038】
また、評価受付部105は、後述するように学習データ生成部103で学習データを再生成した場合に、再生成した各学習データを反映させた成形条件に従ってそれら学習データ毎に射出成形機2が成形した(図中矢印Bで示す)各成形品21(第2の成形品に相当する)を、オペレータ3がそれぞれ評価した(図中矢印Cで示す)評価結果、つまり、各成形品21に対する評価を受け付ける(図中矢印Dで示す)。
【0039】
また、評価受付部105は、後述するように学習済データ生成部106で最適解を再び求めた場合に、再び求めた各最適解を反映させた成形条件に従ってそれら最適解毎に射出成形機2が成形した(図中矢印Bで示す)各成形品21(第2の成形品に相当する)を、オペレータ3がそれぞれ評価した(図中矢印Cで示す)評価結果、つまり、各成形品21に対する評価を受け付ける(図中矢印Dで示す)。
【0040】
オペレータ3による評価は、成形品21の目視や、手による成形品21への接触等により行われる。また、オペレータ3による評価は、成形品21の画像データを取得し画像データを比較または画像解析することによって行う、あるいは、各種測定機器を使用して実測して行うようにすることができる。
【0041】
また、評価受付部105は、射出成形機2が予め定めた数の成形品21を成形した後に、例えば、射出成形機2が、少なくとも3つの成形品21を成形した後に、成形品21に対する評価を受け付ける。また、好ましくは、評価受付部105は、射出成形機2が、3つの成形品21(第2の成形品に相当する)を成形した後に、成形品21に対する評価を受け付けるとよい。そして、評価受付部105は、最初に評価を受け付けた後は、射出成形機2が成形品21(第2の成形品に相当する)を成形するごとに、成形品21に対する評価を受け付ける。
【0042】
評価受付部105は、前述の入力装置を使ってオペレータ3が評価を入力することで、オペレータ3の評価を受け付ける。評価は、情報受付部101で受け付けた注目する成形不良の不良種類毎に行われる。このときの評価は、成形不良の度合いである。また、注目する成形不良の不良種類以外の成形不良が新たに発生する場合もある。評価は、注目する成形不良の不良種類毎の評価の他に、注目する成形不良の不良種類以外に発生した成形不良の不良種類に対する評価を1つにまとめた評価を加えてもよい。このときの評価も、成形不良の度合いである。これにより、注目する成形不良の不良種類毎の評価にそれぞれ改善傾向が見られたとしても、別の成形不良の評価に悪化する傾向があれば、後述する最適解を求める際にそれら評価を反映させることができる。また、同様の傾向があれば、設計変数の組み合わせを再検討する等の対応も行うことができる。また、評価には、注目する成形不良の不良種類毎の評価の他に、注目する成形不良の不良種類も含めた成形品21の品質に対してオペレータ3が所望する品質を満足しているか、または満足していないかの単純な2者択一の評価を加えてもよい。
【0043】
評価受付部105が受け付ける評価は、例えば、注目する成形不良の不良種類毎に、初期成形条件を使って成形された第1の成形品に対して、評価する成形品21の成形不良の不良度合いが同じであればゼロとし、当該不良度合いが小さくなる方向、つまりは成形不良が改善される方向をマイナスとし、良い評価の限界値をマイナス10とし、当該不良度合いが大きくなる方向、つまりは成形不良が悪化する方向をプラスとし、悪い評価の限界値をプラス10として、マイナス10からプラス10までの数値範囲の間の数値を入力する、などのようにして行われる。評価として入力される数値は、数値範囲の中で1刻み(例えば、0,1,2,等)、0.1刻み(例えば、0.0,0.1,0.2,等)、0.01刻み(例えば、0.00,0.01,0.02,等)、さらに細かく刻んだ数値、または、さらに大きく刻んだ数値などで入力することができる。これに限らず数値範囲または刻み幅は、適宜設計すればよい。評価受付部105は、例えば、図示しない表示部、例えば、外部装置接続部14に接続されたモニタ等の表示装置に、数値入力欄140を提示してもよい。図4は、図示しない表示部に、数値入力欄140として、不良度合いを数値で入力するための数値入力欄141を提示した一例を示している。評価受付部105は、オペレータ3が前述の入力装置を使って数値入力欄140に入力する数値を評価として受け付けるようにしてもよい。また、評価受付部105は、図示しない表示部に情報受付部101が受け付けた不良種類の数に応じた数の数値入力欄140を提示してもよい。
【0044】
また、評価受付部105は、前述の表示装置に、前述の数値入力欄140ではなくスライダーバーを提示し、そのスライダーバーのスライダーの位置を評価として受け付けるようにしてもよい。スライダーは、オペレータ3が前述の入力装置を使って動かす。図4は、提示するスライダーバーの例を示した図である。同図に示すスライダーバー150は、オペレータ3が評価に応じてスライダー151を動かすことで評価の入力が可能なもので、評価受付部105は、スライダー151の位置を前述したような数値に変換して受け付ける。このとき、例えば、スライダーバーの左端の下方に「非常に良い」、同中央の下方に「同じ」、同右端の下方に「非常に悪い」、同左端と同中央との中間の下方に「良い」、および、同中央と同右端との中間の下方に「悪い」と表示してもよい。これにより、オペレータ3は、容易に評価を入力することができる。また、評価受付部105は、図示しない表示部に情報受付部101が受け付けた不良種類の数に応じた数のスライダーバー150を提示する。オペレータ3による評価は、射出成形機2が最初にテスト成形として成形した第1の成形品を基準として、該当する成形不良の不良種類が改善されたか否かを示すものであるが、単に良し悪しを評価するだけでなく、その程度を評価できるようにするため、評価受付部105は、射出成形機2が、最初に少なくとも3つの成形品21を成形した後に、成形品21に対する評価を受け付けるようにしている。また、好ましくは、評価受付部105は、射出成形機2が、最初に3つの第2の成形品を成形した後に、第2の成形品に対する評価を受け付けるようにするとよい。
【0045】
また、評価受付部105は、最初に評価を受け付けた後に、射出成形機2が成形品21を成形するごとに、成形品21に対する評価を受け付けるが、その際に、最良または最悪の評価を受け付けた場合、つまり、先に提示したスライダーバー150の端部に、スライダー151が移動された場合には、図5に示すように、新たに提示するスライダーバー150の長さを伸長し、さらに良い評価またはさらに悪い評価を入力することができるようにする機能を設けている。図5は、スライダーバー150の長さを伸長する例を示した図である。このとき、評価受付部105は、スライダー151の移動範囲が大きくなるので、スライダー151の位置から変換される数値の数値範囲も大きくする。
【0046】
また、評価受付部105が受け付ける評価として、成形不良の不良度合いに換えて、成形品21を実測した測定値、例えば、寸法および重量などを評価対象として入力可能にしてもよい。また、評価受付部105が受け付ける評価として、成形不良の不良度合いに換えて、成形品21の成形不良の箇所を実測した測定値、例えば、寸法などを評価対象として入力可能にしてもよい。例えば、寸法は、長さ、面積または体積などである。また、評価受付部105が受け付ける評価として、成形不良の不良度合いに換えて、成形品21に発生した同一の成形不良箇所の個数を評価対象として入力可能にしてもよい。その他、評価受付部105が受け付ける評価として、成形不良の不良度合いに換えて、成形品21および成形不良を実測可能な測定値を評価対象として入力可能にしてもよい。
【0047】
例えば、図7は、設定されている成形不良の不良種類が「反り」である場合において、図示しない表示部に、評価受付部105が受け付ける評価を数値で入力するための数値入力欄140として、成形品21の「反り」を実測した測定値を入力するための数値入力欄142を提示した場合の一例を示している。また、1種類の成形不良に対して、図示しない表示部に、数値入力欄140とスライダーバー150を一緒に表示するようにしてもよい。例えば、図8は、設定されている成形不良の不良種類が「反り」である場合において、図示しない表示部に、評価受付部105が受け付ける評価として、成形品21の「反り」の不良度合いを入力するためのスライダーバー150と数値入力欄141とを一緒に提示した場合の一例を示している。このとき、オペレータ3は、スライダーバー150または数値入力欄141のどちらか一方を使って成形品21の「反り」の不良度合いを入力することができる。また、図示を省略するが、例えば、設定されている成形不良の不良種類が「反り」である場合において、図示しない表示部に、評価受付部105が受け付ける評価として、成形品21の「反り」の不良度合いを入力するためのスライダーバー150と、成形品21の「反り」を実測した測定値を入力するための数値入力欄142と、を一緒に提示するようにしてもよい。このとき、オペレータ3は、成形品21の「反り」の不良度合いと実測値(実測した測定値に相当する)の両方を一緒に入力することができる。
【0048】
また、例えば、評価受付部105は、オペレータ3が前述の入力装置を使って終了ボタンを操作することで、注目する成形不良の不良種類も含めた成形品21の品質に対してオペレータ3が所望する品質を満足しているか、または満足していないかの単純な2者択一のうちの満足していることを示す評価を受け付けるようにしてもよい。また、例えば、評価受付部105は、オペレータ3が終了ボタンを操作しなければ、注目する成形不良の不良種類も含めた成形品21の品質に対してオペレータ3が所望する品質を満足していないものとして、成形不良の度合いを示す評価を受け付けるようにしてもよい。
【0049】
学習済データ生成部106は、学習データ生成部103が生成した学習データと、その評価とに少なくとも基づいて、成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する。ここで、成形不良は、成形品の品質を低下させる要因となる。成形品21(第2の成形品に相当する。)の品質がオペレータ3の所望する品質であるとき、評価受付部105が受け付けた成形品21対する評価が予め定めた合格基準を満足しているものとする。
【0050】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する学習データがある場合に、当該評価が予め定めた合格基準を満足する当該学習データを学習済データとして生成する。また、学習済データ生成部は、前述した学習データ生成部103が再生成した学習データに対しても、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する当該再生成した学習データがある場合に、当該評価が予め定めた合格基準を満足する当該再生成した学習データを学習済データとして生成する。
【0051】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価を定量化するが、その定量化には、目的関数を用いる。目的関数としては、例えば、情報受付部101が受け付けた不良種類の数が1つである場合にはファジー理論を用いた関数、情報受付部101が受け付けた不良種類の数が複数である場合には、スカラー化法などを用いた少なくとも1つの品質評価式を利用する。前述のスカラー化法は、乗数的スカラー化法が好ましい。また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が実測値の場合、当該実測値を目的関数値として直接扱ってもよい。この場合の目的関数としては、例えば、情報受付部101が受け付けた不良種類の数が1つである場合には実測値、情報受付部101が受け付けた不良種類の数が複数である場合には、スカラー化法などを用いて少なくとも1つとする。また同様に、スカラー化法は、乗数的スカラー化法が好ましい。また、サイクルタイムも考慮し、少なくとも2つの目的関数を用いた多目的最適設計を適用するようにしてもよい。多目的最適設計は、目的関数が複数個存在した場合に、これらを同時に最小化する手法である。
【0052】
また、後述する最適解を求める際に、少なくとも2つの目的関数を用いた多目的最適設計を適用すれば、複数の最適解を求めることができる。複数の最適解を求めることができれば、学習済データを速やかに発見できる可能性がより高まる。後述する最適解を求める際に、品質に関する目的関数と、サイクルタイムに関する目的関数と、を含む少なくとも2つの目的関数を用いた多目的最適設計を適用すれば、複数の最適解を求めることができるとともに、成形品の品質に加えて、成形品の生産性も考慮した最適解を求めることができる。なお、例えば、サイクルタイムは、充填時間、保圧時間、および、冷却時間を足し合わせた時間である。充填時間は、速度制御に基づき樹脂材料を金型装置のキャビティ空間に充填するための時間である。保圧時間は、金型装置の中の溶融樹脂が逆流しないように、ゲート部分の溶融樹脂が冷えて固化するまで、圧力制御に基づき金型装置の中の溶融樹脂に圧力を付与するための時間である。冷却時間は、保圧の終了後から金型装置の中の溶融樹脂が冷えて全体が固化するまでの時間である。なお、求める最適解の個数は、自動または手動で設定される。
【0053】
学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する学習データがない場合に、学習データと評価とに少なくとも基づき、最適化手法を使って設計変数に対する少なくとも1つの複数の最適解を求める。
【0054】
1つの最適解は、設計変数決定部102で設計変数として決定した条件要素に設定される設定データの候補となる最適値を設計変数毎に1つずつ有している。最適解は、学習データを生成する際に用いた各設計変数の上限値と下限値との間の範囲内で求められてもよい。また、最適解は、学習データを生成する際に用いた各設計変数の上限値と下限値のうちのどちらか一方またはそれら両方とは異なる上限値と下限値の間の範囲内で求められてもよい。また、学習済データ生成部106が求める最適解は、好ましくは複数個がよい。また、学習済データ生成部106は、前述したように評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がある場合に、当該評価が予め定めた合格基準を満足する最適解を学習済データとして生成する。
【0055】
また、学習済データ生成部106は、学習データ生成部103が再生成した学習データに対して、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する当該学習データがない場合に、学習データ生成部103がこれまでに生成および再生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づき、最適化手法を使って設計変数に対する少なくとも1つの最適解を再び求める。
【0056】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がない場合に、これまでに生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、最適化手法を使って設計変数に対する少なくとも1つの最適解を再び求める。
【0057】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がない場合に、最適化手法を使って最適解を求める際に用いられる目的関数を変更するとともに、これまでに生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、当該最適化手法を使って設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求める。
【0058】
最適解を再び求める場合でも、1つの最適解は、設計変数決定部102で設計変数として決定した条件要素に設定される設定データの候補となる最適値を設計変数毎に1つずつ有している。また、最適解を再び求めるとき、最適解は、学習データを生成または再生成する際に用いた各設計変数の上限値と下限値との間の範囲内で求められてもよい。また、最適解を再び求めるとき、最適解は、学習データを生成または再生成する際に用いた各設計変数の上限値と下限値のうちのどちらか一方またはそれら両方とは異なる上限値と下限値の間の範囲内で求められてもよい。また、学習済データ生成部106が再び求める最適解は、好ましくは複数個がよい。また、学習済データ生成部106は、再び求めた最適解に対して、前述したように評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する当該再び求めた最適解がある場合に、当該評価が予め定めた合格基準を満足する当該再び求めた最適解を学習済データとして生成する。
【0059】
ここで、学習済データ生成部106が最適解を求めるとは、射出成形支援システム1あるいは学習済データ生成部106のどちらかに備える図示しない最適解生成部に最適解を求めさせる場合も含むものとする。また、学習済データ生成部106が最適解を再び求めるとは、射出成形支援システム1あるいは学習済データ生成部106のどちらかに備える図示しない最適解生成部に最適解を再び求めさせる場合も含むものとする。
【0060】
最適化手法には、例えば、タグチメソッドや応答曲面法などのような各種手法を用いることができるが、その中でも、RBFネットワークとDifferential Evolutionとを組み合わせた手法を用いることが好ましい。以下の説明では、RBFネットワークとDifferential Evolutionとを組み合わせた手法を用いる場合を一例にして説明する。
【0061】
学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する学習データがない場合に、学習データと評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて応答曲面を生成し、当該応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する少なくとも1つの最適解を求める。
【0062】
また、学習済データ生成部106は、学習データ生成部103が再生成した学習データに対して、前述したように評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する当該学習データがない場合に、学習データ生成部103がこれまでに生成および再生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて新たな応答曲面を再生成し、当該新たな応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する少なくとも1つの最適解を再び求める。
【0063】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がない場合に、これまでに生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて新たな応答曲面を再生成し、当該新たな応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する少なくとも1つの最適解を再び求める。
【0064】
また、学習済データ生成部106は、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する最適解がない場合に、最適解を求める際に用いられる目的関数を変更するとともに、これまでに生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて新たな応答曲面を再生成し、当該新たな応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求める。
【0065】
ここで、RBFネットワークは、評価した学習データに基づいて、応答曲面を作成して、設計変数と目的関数の関係を近似する手法である。RBFネットワークとは、入力層、中間層、出力層の3層から成るフィードフォワード型のニューラルネットワークであり、中間層で使用される基底関数に、ガウス関数が用いられているものである。このRBFネットワークを用いた場合、出力層が設計変数と目的関数値の関係を表す近似式(応答曲面)に当たる。学習データの評価を行うことで、入力とその出力の対応がわかるため、これを利用して近似式内の未知パラメータを求めることで、近似式を作ることができ、最適解を求めることができるようになる。RBFネットワークでは段階的に学習データを追加する逐次近似最適化を容易に行うことができ、少ない学習データで精度の高い最適解を得ることが可能となる。それにより学習済データを速やかに発見できる可能性がより高まる。
【0066】
また、Differential Evolution(以下、DEと称する)は、RBFネットワークを用いて作成した応答曲面に対して最適解を求める手法である。DEは、差分進化と称される場合もある。設計変数は連続的な値であり、目的関数と設計変数の関係式は非線形性の強い、複雑な式になることが予想されるため、非線形計画法よりもメタヒューリスティクスを使用することで満足する最適解に辿り着く可能性が高くなるためである。DEとは、生物の進化を模倣した遺伝的アルゴリズムの1種であり、関数の勾配は使用しないメタヒューリスティクスでもある。このアルゴリズムは、近似した関数の最適解を求めるためのアルゴリズムである。なお、メタヒューリスティクスは、関数の勾配を使用せず、関数値のみから最適解を求める方法であり、物理現象、生命・生物現象、社会現象などにおける類推を基に作られたアルゴリズムである。また、非線形計画法は、関数の勾配を利用して最適解を探索する方法である。なお、「最適解を求める」は、「最適解を生成する」と言い替えてもよい。
【0067】
またここで、予め定めた合格基準を満足するとは、例えば、評価受付部105が受け付けた評価の中に、注目する成形不良の不良種類も含めた第2の成形品の品質に対してオペレータ3が所望する品質を満足しているか、または満足していないかの単純な2者択一の評価が含まれている場合に、「満足している」の評価であることでもよい。
【0068】
また、予め定めた合格基準を満足するとは、例えば、評価受付部105が受け付けた評価であって、注目する成形不良の不良種類毎の評価が各成形不良の不良度合いまたは実測値をそれぞれ数値で示している場合において、注目する成形不良の不良種類のすべてにおいて、各評価を示す各数値が、予め定めた各閾値に対して各成形不良が改善する側の数値であることでもよい。
【0069】
また、予め定めた合格基準を満足するとは、例えば、評価受付部105が受け付けた評価であって、注目する成形不良の不良種類毎の評価が各成形不良の不良度合いまたは実測値をそれぞれ数値で示している場合において、注目する成形不良の不良種類のすべてにおいて、成形不良の不良種類毎に改善していることを示す許容範囲を予め定め、各評価を示す数値が、各許容範囲の中にあることでもよい。
【0070】
また、予め定めた合格基準を満足するとは、例えば、評価受付部105が受け付けた評価の中に、注目する成形不良の不良種類以外に発生した成形不良の不良種類に対する評価を1つにまとめた評価が含まれている場合において、当該評価についても注目する成形不良の不良種類毎の評価と同様に予め定めた閾値または許容範囲を用いて合格判定を行い、当該評価と注目する成形不良の不良種類毎の評価のすべてとが合格基準を満足することでもよい。
【0071】
またその他にも、評価受付部105が受け付けた評価を目的関数または品質評価式を用いて定量化し、当該定量化した評価が合格基準を満足しているか否かを判定するようにしてもよい。オペレータ3が入力した評価は、スクロールバーの位置に対応するパラメータ値に変換されるだけでは相対的な値で曖昧であるので、ファジー理論を用いて定量化を行うようにしている。この場合も合格基準には、前述と同様に予め定めた閾値または許容範囲が用いられる。なお、合格基準は、良品基準と称してもよい。
【0072】
3.射出成形支援システム1の動作
次に、射出成形支援システム1の動作の流れを説明する。図6は、射出成形支援システム1の動作の流れを示すアクティビティ図である。なお、射出成形支援システム1の動作の中で、オペレータ3が入力した各種情報、各種条件および各種データ等は、記憶部12または一時記憶部13に記憶され、必要に応じて記憶部12または一時記憶部13から読み込まれるとよい。射出成形支援システム1の動作の中で、射出成形支援システム1の各部で生成または算出された各種情報、各種条件および各種データ等は、記憶部12または一時記憶部13に記憶され、必要に応じて記憶部12または一時記憶部13から読み込まれるとよい。学習データおよび最適解は、記憶部12または一時記憶部13に記憶され、必要に応じて記憶部12または一時記憶部13から読み込まれるとよい。評価受付部105が受け付けた評価は、当該評価に対応する学習データおよび最適解に関連付けて記憶部12または一時記憶部13に記憶され、必要に応じて記憶部12または一時記憶部13から読み込まれるとよい。学習データ、最適解、およびそれらに対応する評価は、テーブルなどのデータベースの形式で記憶部12に記憶され、必要に応じて記憶部12から読み込まれるようにしてもよい。合格基準は、予め記憶部12または一時記憶部13に記憶され、必要に応じて記憶部12または一時記憶部13から読み込まれるとよい。
【0073】
まず、オペレータ3が例えば特許文献1または特許文献2に記載されている装置等を用いて決定した成形条件または自身が決定した成形条件を入力し、情報受付部101が成形条件を受け付ける(A101)。このときの成形条件は、テスト成形用の成形条件(初期成形条件)である。また、予め記憶部12に記憶しておいた成形条件を読み込むことで成形条件を入力してもよい。つぎに、その成形条件に基づいて、成形制御部104が、射出成形機2にテスト成形を行わせる(A102)。このテスト成形により成形された第1の成形品は、以後の評価に際して基準として用いられてもよい。これらの処理の後、または並行して、情報受付部101が、成形品の情報と注目する成形不良の不良種類を受け付ける(A103)。
【0074】
続いて、設計変数決定部102が、成形条件の条件要素のうち学習対象とする少なくとも1つの条件要素を、成形品の情報および成形不良の不良種類に基づいて設計変数として決定し(A104)、学習データ生成部103が、必要とする学習データの数を決定して(A105)、決定した数の学習データを生成する(A106)。学習データの数は、設計変数の数に応じて予め定められた数である。設計変数の決定に用いられる成形不良の不良種類は、1種類でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
【0075】
学習データ生成部103が学習データを生成すると、成形制御部104は、学習データの最初の3つをそれぞれ反映させた3つの成形条件に従って、射出成形機2に、成形条件の異なる3つの第2の成形品を順次成形させる。つまりは、1つ目の学習データから順番に各設計変数のデータをそれぞれに対応する条件要素の設定データとして、テスト用の成形条件の中で設計変数として選ばれていない他の条件要素の設定データと合わせた成形条件で射出成形機2に、成形条件の異なる3つの第2の成形品を順次成形させる(A107)。そして、オペレータ3が3つの第2の成形品を見比べるなどしながら評価をし、評価受付部105が、オペレータ3による3つの第2の成形品に対するそれぞれの評価を受け付ける(A108)。
【0076】
例えば、第2の成形品の成形不良の不良種類に対するオペレータ3の評価は、図示しない表示装置に表示されるスライダーバー150のスライダー151の位置をオペレータ3が操作することによって行う。例えば、成形不良の不良種類がヒケであるとき、3つの第2の成形品がある場合は、オペレータ3が3つの第2の成形品のヒケの状態を見比べて、ヒケに関して3つの第2の成形品の出来栄えに順位付け等を行ってから、それぞれの第2の成形品のヒケに対して、図4に示されるようなスライダーバー150のスライダー151の位置を操作して評価を入力する。成形不良の不良種類が複数種類あるときは、例えば、ヒケの他に反りがある場合は、ヒケと同じようにして別に表示されているスライダーバー150のスライダー151を操作して評価を入力する。
【0077】
ここで、評価受付部105が受け付けた3つの評価に、予め定めた合格基準を満足する評価が含まれていた場合には、学習済データ生成部106は、評価が予め定めた合格基準を満足する第2の成形品を成形した際に用いられた学習データを学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する。つまり、学習済データ生成部106は、前述のようにして生成した学習済データの各設計変数のデータをそれぞれに対応する条件要素の設定データとして、テスト成形用の成形条件(初期成形条件)の中で設計変数として選ばれていない他の条件要素の設定データと合わせた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A109)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。
【0078】
一方、評価受付部105が受け付けた3つの評価に、予め定めた合格基準を満足する評価が含まれていない場合には、成形制御部104は、次の学習データがあれば、次の学習データ(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に第2の成形品を成形させる(A110)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A108)。評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する学習データを学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A109)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。また、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、次の学習データがあれば、次の学習データ(1つ)に対する同様の処理を繰り返す。
【0079】
また、学習データ生成部103が生成した全ての学習データを用いて第2の成形品を成形した結果、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合には、学習済データ生成部106は、すべての学習データとそれらに対応する評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて応答曲面を生成する(A111)。次に、学習済データ生成部106は、作成した当該応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する少なくとも1つの最適解を求める(A112)。このとき、好ましくは、複数の最適解を求めるとよい。ここでは、複数の最適解を求めることができる。設計変数決定部102において複数種類の設計変数が決定されている場合、1つの最適解は、複数種類の設計変数で構成されている。最適解の設計変数の組み合わせは、学習データの設計変数の組み合わせと同じである。
【0080】
学習済データ生成部106が最適解を生成すると、成形制御部104は、1つの最適解を反映させた1つの成形条件に従って、射出成形機2に、第2の成形品を成形させる(A113)。つまりは、各設計変数のデータをそれぞれに対応する条件要素の設定データとして、テスト成形用の成形条件(初期成形条件)の中で設計変数として選ばれていない他の条件要素の設定データと合わせた成形条件で射出成形機2に、第2の成形品を成形させる。そして、オペレータ3が第2の成形品を見比べるなどしながら評価をし、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A114)。
【0081】
評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する最適解を学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品の成形条件に決定する。つまり、学習済データ生成部106は、前述のようにして生成した最適解の各設計変数のデータをそれぞれに対応する条件要素の設定データとして、テスト成形用の成形条件(初期成形条件)の中で設計変数として選ばれていない他の条件要素の設定データと合わせた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A115)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。
【0082】
一方、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、成形制御部104は、次の最適解があれば、次の最適解(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に第2の成形品を成形させる(A116)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A114)。評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する最適解を学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A115)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。また、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、次の最適解があれば、次の最適解(1つ)に対する同様の処理を繰り返す。
【0083】
また、学習済データ生成部106が生成した全ての最適解を用いて第2の成形品を成形した結果、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合には、つぎの3つの動作のうちの少なくとも1つを実施するとよい。また、つぎの3つの動作のうちの少なくとも2つを決められた順番に実施してもよい。また、つぎの3つの動作は、それぞれ連続して実施してもよい。つぎの3つの動作のうちの少なくとも1つを実施することで、学習済データを速やかに発見できる可能性がより高まる。また、つぎの3つの動作を必要に応じて使い分けることで、学習済データを速やかに発見できる可能性がより高まる。
【0084】
1つ目の動作(追加の動作1)では、最初に設計変数毎の上限値及び下限値のうちの少なくとも一方を必要に応じて変更する(A211)。次に複数の学習データを再生成する(A212)。そうして再生成した各学習データに基づき成形される第2の成形品を評価する(A213~A216)。さらに、再生成した全ての学習データを用いて第2の成形品を成形した結果、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合には、これまでに生成および再生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、及び、それらの評価とに少なくとも基づき少なくとも1つの最適解を再び求める(A217)。このとき、好ましくは、複数の最適解を再び求めるとよい。そして、後述する2つ目の動作における第2の成形品の成形および評価の動作と同様に、再び求めた最適解に基づき成形される第2の成形品を評価する(A222~A225)。
【0085】
前述したように学習データ生成部103は、設計変数の上限値と下限値との範囲内の学習データを生成する。学習データ生成部103は、例えば、先で求めた最適解と前回用いた上限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも上限値を前回用いた上限値よりも大きくして複数の学習データを再生成し、先に求めた最適解と前回用いた下限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも下限値を前回用いた下限値よりも小さくして複数の学習データを再生成する(A211~A212)。
【0086】
詳しくは、次の一例の通りである。前述したように学習データ生成部103は、設計変数毎の上限値と下限値との範囲内の学習データを生成する。学習データ生成部103は、各設計変数に対して、先で求めた最適解の数値と前回用いた上限値との差が予め定めた値よりも小さい場合には、少なくとも上限値を前回用いた上限値よりも大きくし、先に求めた最適解の数値と前回用いた下限値との差が予め定めた値よりも小さい場合には、少なくとも下限値を前回用いた下限値よりも小さくする(A211)。そのあと、学習データ生成部103は、複数の学習データを再生成する(A212)。
【0087】
成形制御部104は、再生成した最初の学習データ(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に第2の成形品を成形させる(A213)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A214)。
【0088】
評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する再生成した学習データを学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A215)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。
【0089】
一方で、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、先程再生成した次の学習データ(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に次の第2の成形品を成形させる(A216)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A214)。評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する再生成した学習データを学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A215)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。また、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、次の学習データがあれば、次の学習データ(1つ)に対する同様の処理を繰り返す。
【0090】
さらに、学習データ生成部103が再生成した全ての学習データを用いて第2の成形品を成形した結果、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合には、これまでに生成および再生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、及び、それらの評価とに基づいて、RBFネットワークを用いて新たな応答曲面を再生成し、当該新たな応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する複数の最適解を再び求める(A217)。そして、後述する2つ目の動作における第2の成形品の成形および評価の動作と同様に、再び求めた最適解に基づき成形される第2の成形品を評価する(A222~A225)。
【0091】
また、1つ目の動作は、当該1つ目の動作、2つ目の動作、または3つ目の動作において、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合に、それら動作のあとに実施されてもよい。
【0092】
2つ目の動作(追加の動作2)では、まず、これまでに生成した学習データと、これまでに求めた最適解と、および、それらの評価とに少なくとも基づいて少なくとも1つの最適解を再び求める(A221)。このとき、好ましくは、複数の最適解を再び求めるとよい。そして、再び求めた最適解に基づき成形される第2の成形品を評価する(A222~A225)。また、これまでに再生成した学習データおよびそれらの評価があれば、それらについても最適解を再び求める際に用いる。また、これまでに再び求めた最適解およびそれらの評価があれば、それらについても最適解を再び求める際に用いる。詳しくは、次の一例の通りである。学習済データ生成部106は、学習データ生成部がこれまでに生成した前記学習データと、これまでに求めた最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、RBFネットワークを用いて新たな応答曲面を再生成し、当該新たな応答曲面に対してDifferential Evolutionを用いて設計変数に対する複数の最適解を再び求める(A221)。
【0093】
成形制御部104は、再び求めた最初の最適解(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に第2の成形品を成形させる(A222)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A223)。評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する再び求めた最適解を学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A224)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。
【0094】
一方で、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、成形制御部104は、再び求めた次の最適解があれば、再び求めた次の最適解(1つ)を反映させた成形条件に従って、射出成形機2に次の第2の成形品を成形させる(A225)。そして、評価受付部105が、オペレータ3による第2の成形品に対する評価を受け付ける(A223)。評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価であれば、学習済データ生成部106は、当該評価に対応する再び求めた最適解を学習済データとして生成し、生成した学習済データを反映させた成形条件を第3の成形品を成形するときの最終的な成形条件に決定する(A224)。そして、最終的な成形条件で成形を行って、計画されている個数の第3の成形品を生成する。また、評価受付部105が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する評価でなければ、再び求めた次の最適解があれば、再び求めた次の最適解(1つ)に対する同様の処理を繰り返す。
【0095】
また、2つ目の動作は、当該2つ目の動作、1つ目の動作、または3つ目の動作において、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合に、それら動作のあとに実施されてもよい。
【0096】
3つ目の動作(追加の動作3)では、最初に、最適解を求める際に用いられる目的関数を変更する(231)。次に、2つ目の動作と同様に少なくとも1つの最適解を再び求める(A221)。このとき、好ましくは、複数の最適解を求めるとよい。そのあと、2つ目の動作と同様に当該再び求めた最適解に基づき成形される第2の成形品を評価する(A222~A225)。詳しくは次の一例の通りである。3つ目の動作は、例えば、注目する成形不良の不良種類が2種類以上の場合に実施される。例えば、前回最適解を求める際には2種類以上の注目する成形不良の不良種類に対して、スカラー化法などを用いて定式化した1つの品質評価式を1つの目的関数にしていた場合、今回最適解を再び求める際には、注目する成形不良の不良種類毎に個別の目的関数を用いるようにする。また、その逆の場合もある。それぞれの個別の目的関数は、例えば、ファジー理論を用いて定式化したものである。また、前述のスカラー化法としは、乗数的スカラー化法が好ましい。
【0097】
また、3つ目の動作は、当該3つ目の動作、1つ目の動作、または2つ目の動作において、予め定めた合格基準を満足する評価を得ることができなかった場合に、それら動作のあとに実施されてもよい。
【0098】
4.その他
ところで、上述の射出成形支援システム1は、射出成形機に組み込むこともできる。図7は、射出成形機の構成例を示した図である。同図に示すように、条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機5は、成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部501と、成形条件のうち学習対象とする条件要素を、成形品の情報と成形不良の不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部502と、設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部503と、学習データを反映させた成形条件に従って成形品を成形する成形部504と、成形品に対する評価を受け付ける評価受付部505と、学習データと評価とに少なくとも基づいて、成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部506とを備える。なお、成形部504は、例えば、射出成形機5に備える図示しない射出装置および型締装置などである。
【0099】
情報受付部501、設計変数決定部502、学習データ生成部503、評価受付部505、学習済データ生成部506は、それぞれ、情報受付部101、設計変数決定部102、学習データ生成部103、評価受付部105、学習済データ生成部106に対応し、成形部504は、成形制御部104と射出成形機2を併せたものに相当する。
【0100】
なお、射出成形支援システム1と射出成形機5が行う射出成形支援方法は、条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援方法であって、成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付けるステップと、成形条件のうち学習対象とする条件要素を、成形品の情報と成形不良の不良種類とに基づいて設計変数として決定するステップと、設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成するステップと、学習データを反映させた成形条件に従って射出成形機に成形品を成形させるステップと、成形品に対する評価を受け付けるステップと、学習データと評価とに少なくとも基づいて、成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成するステップとを備えるものとなる。
【0101】
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0102】
(1)条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援システムであって、前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部と、学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部と、前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部と、前記学習データを反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させる成形制御部と、前記成形品に対する評価を受け付ける評価受付部と、前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部と、を備える射出成形支援システム。
【0103】
(2)前記評価受付部は、前記射出成形機が予め定めた数の成形品を成形した後に、該成形品に対する評価を受け付ける上記(1)に記載の射出成形支援システム。
【0104】
(3)前記成形制御部は、前記情報受付部が受け付けた前記成形条件に従って、前記射出成形機に第1の成形品を成形させ、前記学習データを反映させた前記成形条件に従って、前記射出成形機に第2の成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記射出成形機が、前記第2の成形品を少なくとも3つ成形した後に、該成形品に対する評価を受け付ける上記(2)に記載の射出成形支援システム。
【0105】
(4)前記評価受付部は、最初に評価を受け付けた後に、前記射出成形機が成形品を成形するごとに、該成形品に対する評価を受け付ける上記(2)に記載の射出成形支援システム。
【0106】
(5)前記評価受付部は、スライダーバーを提示し、該スライダーバーのスライダーの位置を前記評価として受け付ける上記(1)に記載の射出成形支援システム。
【0107】
(6)前記評価受付部は、前記情報受付部が受け付けた前記不良種類の数に応じた数のスライダーバーを提示する上記(5)に記載の射出成形支援システム。
【0108】
(7)前記評価受付部は、先に提示したスライダーバーの端部に、スライダーが移動された場合には、新たに提示するスライダーバーの長さを伸長する上記(5)に記載の射出成形支援システム。
【0109】
(8)前記評価受付部は、数値入力欄を提示し、該数値入力欄に入力する数値を評価として受け付ける上記(1)に記載の射出成形支援システム。
【0110】
(9)前記評価受付部は、前記情報受付部が受け付けた前記不良種類の数に応じた数の数値入力欄を提示する上記(8)に記載の射出成形支援システム。
【0111】
(10)前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記学習データがある場合に、該評価が合格基準を満足する該学習データを前記学習済データとして生成する上記(1)に記載の射出成形支援システム。
【0112】
(11)前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記学習データがない場合に、前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの最適解を求め、前記成形制御部は、前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がある場合に、該評価が合格基準を満足する該最適解を前記学習済データとして生成する上記(1)に記載の射出成形支援システム。
【0113】
(12)前記学習データ生成部は、前記設計変数の上限値と下限値との範囲内の前記学習データを生成し、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がなくかつ前記最適解と前記上限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも前記上限値を大きくして複数の前記学習データを再生成し、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がなくかつ前記最適解と前記下限値との差が予め定めた値よりも小さい場合に、少なくとも前記下限値を小さくして複数の前記学習データを再生成し、前記成形制御部は、前記学習データ生成部が再生成した前記学習データを反映した前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再生成した学習データがある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再生成した学習データを前記学習済データとして生成する上記(11)に記載の射出成形支援システム。
【0114】
(13)前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再生成した学習データがない場合に、前記学習データ生成部がこれまでに生成および再生成した前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する上記(12)に記載の射出成形支援システム。
【0115】
(14)前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がない場合に、前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する上記(11)に記載の射出成形支援システム。
【0116】
(15)前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記最適解がない場合に、前記最適解を求める際に用いられる目的関数を変更するとともに、前記学習データと、前記最適解と、それらの評価とに少なくとも基づいて、前記設計変数に対する少なくとも1つの前記最適解を再び求め、前記成形制御部は、再び求めた前記最適解を反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させ、前記評価受付部は、前記成形品に対する評価を受け付け、さらに前記学習済データ生成部は、前記評価受付部が受け付けた評価が予め定めた合格基準を満足する前記再び求めた最適解がある場合に、該評価が予め定めた合格基準を満足する該再び求めた最適解を前記学習済データとして生成する上記(11)に記載の射出成形支援システム。
【0117】
(16)条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機の射出成形支援方法であって、前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付けるステップと、学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定するステップと、前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成するステップと、前記学習データを反映させた前記成形条件に従って前記射出成形機に成形品を成形させるステップと、前記成形品に対する評価を受け付けるステップと、前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成するステップとを備える射出成形支援方法。
【0118】
(17)条件要素を複数持つ成形条件に従って制御される射出成形機であって、前記成形条件と、成形品の情報と、注目する成形不良の不良種類とを受け付ける情報受付部と、学習対象とする前記条件要素を、前記成形品の情報と前記不良種類とに基づいて設計変数として決定する設計変数決定部と、前記設計変数を該設計変数が構成する変数空間に一様に分布させた複数の学習データを生成する学習データ生成部と、前記学習データを反映させた前記成形条件に従って成形品を成形する成形部と、前記成形品に対する評価を受け付ける評価受付部と、前記学習データと前記評価とに少なくとも基づいて、前記成形条件に反映させることで所望する品質の成形品を成形可能な学習済データを生成する学習済データ生成部とを備える射出成形機。
【0119】
(18)コンピュータを射出成形支援システムとして動作させるプログラムであって、コンピュータを上記(1)乃至(15)のいずれか1つに記載の射出成形支援システムとして機能させるプログラム。
もちろん、この限りではない。
【0120】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1 :射出成形支援システム
2 :射出成形機
3 :オペレータ
5 :射出成形機
11 :処理部
12 :記憶部
13 :一時記憶部
14 :外部装置接続部
15 :通信部
16 :通信バス
21 :成形品
101 :情報受付部
102 :設計変数決定部
103 :学習データ生成部
104 :成形制御部
105 :評価受付部
106 :学習済データ生成部
140 :数値入力欄
141 :数値入力欄
142 :数値入力欄
150 :スライダーバー
151 :スライダー
501 :情報受付部
502 :設計変数決定部
503 :学習データ生成部
504 :成形部
505 :評価受付部
506 :学習済データ生成部
図1
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