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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】固体撮像素子、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/76 20230101AFI20241031BHJP
【FI】
H04N25/76
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023021031
(22)【出願日】2023-02-14
(62)【分割の表示】P 2018129588の分割
【原出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2023053312
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2017149559
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】植野 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン ゼイツーニ
(72)【発明者】
【氏名】ノアム エシェル
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】牧川 潔志
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0085523(US,A1)
【文献】特開2011-234243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換によりアナログ信号を生成し、前記アナログ信号を比較器に垂直信号線を介して出力するように構成された画素回路と、
前記垂直信号線に接続された第1の電流源と、
前記垂直信号線および前記比較器に接続された第1の回路と、
を具備し、
前記第1の回路は、
前記第1の電流源と前記垂直信号線との間に接続された第1のトランジスタと、
前記垂直信号線に接続された入力端子を含むアンプと、
前記アンプの前記入力端子に接続された第1の端子と前記アンプの出力端子に接続された第2の端子とを含むキャパシタと
を備え
前記画素回路は、浮遊拡散層の電位を増幅する増幅トランジスタを備える
光検出装置。
【請求項2】
前記アンプは、電源と基準端子との間においてカスコード接続された一対のトランジスタを含み、
前記キャパシタの前記第2の端子は、前記一対のトランジスタの接続点に接続され、前記キャパシタの前記第1の端子は、前記第1の電流源と前記第1のトランジスタとの接続点に接続され、
前記一対のトランジスタのうち前記電源に接続されたトランジスタのゲートは、前記垂直信号線に接続される
請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記第1のトランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、
前記第1の電流源は、前記第1のバイアス電圧と異なる第2のバイアス電圧が印加された第2のトランジスタを備える
請求項2記載の光検出装置。
【請求項4】
前記第1のトランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、
前記第1の電流源は、第2のトランジスタを備え、
前記第1のトランジスタのゲートは前記第2のトランジスタのゲートに接続される
請求項2記載の光検出装置。
【請求項5】
前記キャパシタの前記第1の端子は、前記第1の電流源と前記第1のトランジスタとの接続点に接続される
請求項1記載の光検出装置。
【請求項6】
比較結果に基づいて制御信号を生成して前記第1の回路へ出力するように構成された制御回路をさらに具備し、
前記比較器は、前記アナログ信号を参照信号と比較して前記比較結果を出力するように構成される
請求項1記載の光検出装置。
【請求項7】
前記第1の回路は、
前記キャパシタの前記第1の端子と前記アンプの出力端子との間の経路を開閉するように構成された第1のスイッチと、
前記第1のトランジスタと前記第1の電流源との接続点または所定の基準端子に前記キャパシタの前記第2の端子を接続するように構成された第2のスイッチと
を備える
請求項1記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第1の回路は、
前記第1のトランジスタと前記第1の電流源の接続点と、前記キャパシタの前記第1の端子との間の経路を開閉するように構成された第1のスイッチと、
前記アンプの出力端子または所定の基準端子に前記キャパシタの前記第2の端子を接続するように構成された第2のスイッチと
を備える
請求項1記載の光検出装置。
【請求項9】
前記比較器は、
前記アナログ信号を受け取るように構成された第1のキャパシタと、
参照信号を受け取るように構成された第2のキャパシタと、
前記第1および第2のキャパシタに接続された一方のトランジスタと所定電圧を受け取るように構成された他方のトランジスタとを備える差動増幅回路と
を備える
請求項1記載の光検出装置。
【請求項10】
スイッチトキャパシタ回路をさらに具備し、
前記スイッチトキャパシタ回路は、
別のアンプの出力端子と別のキャパシタの第1の端子との間の経路を開閉するように構成された第1の入力側スイッチと、
前記第1のトランジスタと前記第1の電流源との接続点と、前記別のキャパシタの第2の端子との間の経路を開閉するように構成された第2の入力側スイッチと、
前記第1の端子と論理回路との間の経路を開閉するように構成された第1の出力側スイッチと、
前記第2の端子と所定の基準端子との間の経路を開閉するように構成された第2の出力側スイッチと
を備える請求項1記載の光検出装置。
【請求項11】
前記画素回路は、第1の半導体チップに配置され、
前記第1の回路および前記キャパシタは、前記第1の半導体チップに積層された第2の半導体チップに配置される
請求項1記載の光検出装置。
【請求項12】
前記第1の回路は、
第2の電流源と、
前記第2の電流源と電源との間に挿入され、前記垂直信号線に接続されたゲートを有するN型トランジスタと、
前記電源と前記第2の電流源との間において前記N型トランジスタと並列に接続されたクランプトランジスタと
を備え、
前記キャパシタは、前記第1のトランジスタと前記第1の電流源との接続点と、前記N型トランジスタおよび前記第2の電流源の接続点とに接続される
請求項1記載の光検出装置。
【請求項13】
前記クランプトランジスタのゲート電圧を変更するように構成されたゲート電圧供給部をさらに具備する
請求項12記載の光検出装置。
【請求項14】
垂直信号線に接続された画素回路と、
前記垂直信号線に接続された電流源と、
前記垂直信号線および前記電流源の間に接続された第1のトランジスタを備える第1の回路と、
前記垂直信号線を介して受け取った画素信号を比較するように構成された比較器と
を具備し、
前記画素回路は、浮遊拡散層の電位を増幅する増幅トランジスタを備える
光検出装置。
【請求項15】
前記第1の回路は、
前記垂直信号線に接続された入力端子を有するアンプと、
前記アンプの入力端子に接続された第1の端子と前記アンプの出力端子に接続された第2の端子とを有するキャパシタと
を備える請求項14記載の光検出装置。
【請求項16】
前記画素回路は、第1の半導体チップに配置され、
前記第1の回路および前記キャパシタは、前記第1の半導体チップに積層された第2の半導体チップに配置される
請求項15記載の光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子、および、撮像装置に関する。詳しくは、垂直信号線が配線された固体撮像素子、および、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像装置などにおいて画像データを撮像するために固体撮像素子が用いられている。一般に固体撮像素子には、二次元格子状に複数の画素回路が配列され、また、列ごとに垂直信号線が配線されている。そして、画素回路は、それらの垂直信号線を介して信号を出力する。ここで、垂直信号線に寄生容量が生じていると、その寄生容量に起因して、垂直信号線の電位が一定になるまでの整定時間が長くなってしまう。そこで、寄生容量の影響を軽減するために、垂直信号線の電位低下の度合いに比例した電流を供給するカレントミラー回路を垂直信号線に接続した固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-234243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、垂直信号線の電位低下の度合いに比例した電流の供給により、その電位が一定になるまでの整定時間を短くして読み出し速度を向上させることができる。しかしながら、カレントミラー回路の接続により、ノイズが増大して信号品質が低下するおそれがある。寄生容量を含む垂直信号線の配線容量を低減すれば、カレントミラー回路を不要にして信号品質の低下を抑制することができるが、配線容量を低減するには、垂直信号線の材質や製造プロセスの改良が必要となってしまう。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、垂直信号線を介して信号が出力される固体撮像素子において、垂直信号線の配線容量の低減を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、アナログ信号を処理する論理回路と、光電変換により上記アナログ信号を生成して所定の信号線を介して上記論理回路に出力する画素回路と、上記所定の信号線に接続された負性容量回路とを具備する固体撮像素子である。これにより、所定の信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記負性容量回路は、上記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、上記アンプの上記入力端子および出力端子に両端が接続されたキャパシタとを備えてもよい。これにより、「1」より大きなゲインに応じて信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、上記負性容量回路は、上記電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、電源と基準端子との間においてカスコード接続された一対のトランジスタからなるアンプと、上記一対のトランジスタの接続点に一端が接続され、上記電流源と上記挿入トランジスタとの接続点に他端が接続されたキャパシタとを備え、上記一対のトランジスタのうち上記電源に接続されたトランジスタのゲートは、上記所定の信号線に接続されてもよい。これにより、「1」以下のゲインにより信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記挿入トランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、上記電流源は、上記第1のバイアス電圧と異なる第2のバイアス電圧が印加された第2のトランジスタを備えてもよい。これにより、異なるバイアス電圧が第1および第2のトランジスタに印加された負性容量回路により配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記挿入トランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、上記電流源は、第2のトランジスタを備え、上記挿入トランジスタのゲートは上記第2のトランジスタのゲートに接続されてもよい。これにより、同一のバイアス電圧が第1および第2のトランジスタに印加された負性容量回路により配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、上記負性容量回路は、上記電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、上記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、上記アンプの上記入力端子に一端が接続され、上記電流源と上記挿入トランジスタとの接続点に他端が接続されたキャパシタとを備えてもよい。これにより、負性容量値を増大した負性容量回路により、信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、上記論理回路は、上記アナログ信号と所定の参照信号とを比較して比較結果を出力する比較器と、上記比較結果に基づいて制御信号を生成して上記負性容量回路へ出力する制御回路とを備えてもよい。これにより、アナログ信号から制御信号が生成されるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記負性容量回路は、上記電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、キャパシタと、上記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、上記キャパシタの一端と上記アンプの出力端子との間の経路を開閉する第1のスイッチと、上記制御信号に従って上記挿入トランジスタと上記電流源との接続点または所定の基準端子に上記キャパシタの他端を接続する第2のスイッチとを備えることもできる。これにより、逐次比較型の回路とキャパシタを共有する負性容量回路により信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記比較器は、上記アナログ信号と上記所定の参照信号との間の電圧を分圧して入力電圧として出力する分割回路と、上記入力電圧と所定電圧との差分を増幅する差動増幅回路とを備えてもよい。これにより、比較器の動作電圧が低下するという作用をもたらす。
【0015】
また、この第1の側面において、上記負性容量回路は、上記電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、キャパシタと、上記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、上記挿入トランジスタおよび上記電流源の接続点と、上記キャパシタの一端との間の経路を開閉する第1のスイッチと、上記制御信号に従って上記アンプの出力端子または所定の基準端子に上記キャパシタの他端を接続する第2のスイッチとを備えることもできる。これにより、逐次比較型の回路とキャパシタを共有する負性容量回路により信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0016】
また、この第1の側面において、上記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、上記負性容量回路は、上記電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、上記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、スイッチトキャパシタ回路とを備え、上記スイッチトキャパシタ回路は、キャパシタと、上記アンプの出力端子と上記キャパシタの一端との間の経路を開閉する第1の入力側スイッチと、上記挿入トランジスタおよび上記電流源の接続点と、上記キャパシタの他端との間の経路を開閉する第2の入力側スイッチと、上記一端と上記論理回路との間の経路を開閉する第1の出力側スイッチと、上記他端と所定の基準端子との間の経路を開閉する第2の出力側スイッチとを備えることもできる。これにより、サンプルホールド回路とキャパシタを共有する負性容量回路により信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0017】
また、この第1の側面において、上記画素回路は、第1の半導体チップに配置され、上記負性容量回路および上記論理回路は、上記第1の半導体チップに積層された第2の半導体チップに配置されてもよい。これにより、積層型の固体撮像素子において、信号線の配線容量が低減するという作用をもたらす。
【0018】
また、この第1の側面において、上記所定の信号線に接続された第1電流源をさらに具備し、上記負性容量回路は、上記第1電流源と上記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、第2電流源と、上記第2電流源と電源との間に挿入され、ゲートが上記所定の信号線に接続されたN型トランジスタと、上記電源と上記第2電流源との間において上記N型トランジスタと並列に接続されたクランプトランジスタと、上記挿入トランジスタおよび上記第1電流源の接続点と上記N型トランジスタおよび上記第2電流源の接続点とに両端が接続されたキャパシタとを備えてもよい。これにより、第2電流源のドレイン電圧がクランプされるという作用をもたらす。
【0019】
また、この第1の側面において、上記クランプトランジスタのゲート電圧を変更するゲート電圧供給部をさらに具備してもよい。これにより、ストリーキング量が調整されるという作用をもたらす。
【0020】
また、本技術の第2の側面は、アナログ信号を処理してデジタル信号を出力する論理回路と、光電変換により上記アナログ信号を生成して所定の信号線を介して上記論理回路に出力する画素回路と、上記所定の信号線に接続された負性容量回路と、上記デジタル信号を記録する記録部とを具備する撮像装置である。これにより、配線容量が低減した信号線から出力されたアナログ信号が記録されるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、垂直信号線を介して信号が出力される固体撮像素子において、垂直信号線の配線容量の低減を容易にすることができるという優れた効果を奏し得る。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
図3】本技術の第1の実施の形態における画素回路の一構成例を示す回路図である。
図4】本技術の第1の実施の形態におけるカラム信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図5】本技術の第1の実施の形態におけるADC(Analog to Digital Converter)の一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態における負性容量回路の一構成例を示す回路図である。
図7】本技術の第2の実施の形態における負性容量回路の一構成例を示す回路図である。
図8】本技術の第2の実施の形態における線形モデルの一例を示す回路図である。
図9】本技術の第2の実施の形態における負性容量回路のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。
図10】本技術の第3の実施の形態における負性容量回路の一構成例を示す回路図である。
図11】本技術の第3の実施の形態における線形モデルの一例を示す回路図である。
図12】本技術の第3の実施の形態における負性容量回路のゲイン特性の一例を示すグラフである。
図13】本技術の第3の実施の形態における負性容量回路のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。
図14】本技術の第4の実施の形態における負性容量回路の一構成例を示す回路図である。
図15】本技術の第5の実施の形態におけるカラム信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図16】本技術の第5の実施の形態におけるADCの一構成例を示す回路図である。
図17】本技術の第5の実施の形態におけるAD変換期間以外のカラム信号処理部の状態の一例を示す図である。
図18】本技術の第5の実施の形態におけるAD変換期間内のカラム信号処理部の状態の一例を示す図である。
図19】本技術の第5の実施の形態の変形例におけるカラム信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図20】本技術の第5の実施の形態の変形例におけるADCの一構成例を示す回路図である。
図21】本技術の第6の実施の形態におけるカラム信号処理部の一構成例を示すブロック図である。
図22】本技術の第6の実施の形態におけるサンプルホールド回路の一構成例を示す回路図である。
図23】本技術の第6の実施の形態における奇数回目のサンプリング期間内のカラム信号処理部の状態の一例を示す図である。
図24】本技術の第6の実施の形態における偶数回目のサンプリング期間内のカラム信号処理部の状態の一例を示す図である。
図25】本技術の第7の実施の形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
図26】本技術の第7の実施の形態におけるロジックチップの一構成例を示すブロック図である。
図27】本技術の第8の実施の形態における負性容量回路の一構成例を示す回路図である。
図28】本技術の第8の実施の形態における垂直信号線およびドレイン電圧の電圧変動の一例を示すグラフである。
図29】本技術の第8の実施の形態におけるグランド電流およびストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。
図30】本技術の第9の実施の形態におけるカラム信号処理部の一構成例を示す回路図である。
図31】本技術の第9の実施の形態におけるゲート電圧供給部の一構成例を示す回路図である。
図32】本技術の第9の実施の形態におけるグランド電流およびストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。
図33】本技術の第10の実施の形態における比較器の一構成例を示す回路図である。
図34】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
図35】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(垂直信号線に負性容量回路を接続した例)
2.第2の実施の形態(ゲインの小さいアンプを設けた負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
3.第3の実施の形態(2分割したトランジスタの一方を配置した負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
4.第4の実施の形態(2分割したトランジスタの一方とゲインの大きなアンプとを配置した負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
5.第5の実施の形態(ADCとキャパシタを共有する負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
6.第6の実施の形態(サンプルホールド回路とキャパシタを共有する負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
7.第7の実施の形態(積層型の固体撮像素子において負性容量回路を垂直信号線に接続した例)
8.第8の実施の形態(垂直信号線に、クランプトランジスタを追加した負性容量回路を接続した例)
9.第9の実施の形態(垂直信号線に、クランプトランジスタを追加した負性容量回路を接続し、クランプトランジスタのゲート電圧を制御する例)
10.第10の実施の形態(垂直信号線に負性容量回路を接続し、低電圧の比較器を用いる例)
11.移動体への応用例
【0024】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、画像データを撮像する装置であり、撮像レンズ110、固体撮像素子200、記録部120および撮像制御部130を備える。撮像装置100としては、例えば、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラの他、撮像機能を持つスマートフォンやパーソナルコンピュータ、車載カメラ等が想定される。
【0025】
撮像レンズ110は、入射光を集光して固体撮像素子200に導くものである。固体撮像素子200は、撮像制御部130の制御に従って画像データを撮像するものである。この固体撮像素子200は、撮像した画像データを記録部120に信号線209を介して供給する。
【0026】
撮像制御部130は、固体撮像素子200を制御するものである。例えば、撮像制御部130は、撮像のタイミングを示す一定の周波数(30ヘルツなど)の垂直同期信号を生成し、固体撮像素子200に信号線139を介して供給する。記録部120は、画像データを記録するものである。
【0027】
[固体撮像素子の構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この固体撮像素子200は、垂直ドライバ210、画素アレイ部220、タイミング制御部240およびDAC(Digital to Analog Converter)250を備える。また、固体撮像素子200は、カラム信号処理部300、水平転送走査回路260および画像信号処理部270を備える。これらの回路は、単一の半導体チップに搭載されるものとする。
【0028】
画素アレイ部220には、二次元格子状に複数の画素回路230が配列される。以下、画素アレイ部220において所定の方向(水平方向など)に配列された画素回路230の集合を「行」と称し、行に垂直な方向に配列された画素回路230の集合を「列」と称する。また、画素アレイ部220の行数は、M(Mは整数)であり、列数はN(Nは整数)である。さらに、画素アレイ部220には、列ごとに、列方向に沿って229-n(nは1乃至Nの整数)が配線されている。
【0029】
垂直ドライバ210は、行を順に選択して駆動するものである。このように、行を順に駆動させる制御方式は、ローリングシャッター方式と呼ばれる。なお、垂直ドライバ210は、ローリングシャッター方式の代わりに、全行を同時に駆動するグローバルシャッター方式を用いることもできる。
【0030】
タイミング制御部240は、垂直同期信号VSYNCに同期して、垂直ドライバ210、DAC250、カラム信号処理部300および水平転送走査回路260の動作タイミングを制御するものである。
【0031】
DAC250は、DA(Digital to Analog)変換により所定の参照信号を生成してカラム信号処理部300に供給するものである。参照信号として、例えば、のこぎり波状のランプ信号が用いられる。
【0032】
画素回路230は、光電変換により、アナログの画素信号を生成するものである。n列の画素回路230は、垂直信号線229-nを介してカラム信号処理部300に画素信号を出力する。
【0033】
カラム信号処理部300は、列ごとに、画素信号に対してAD(Analog to Digital)変換処理などの信号処理を実行するものである。このカラム信号処理部300は、信号処理後のデータを画素データとして水平転送走査回路260の制御に従って順に画像信号処理部270に供給する。M×N個の画素データにより1枚の画像データが生成される。
【0034】
水平転送走査回路260は、カラム信号処理部300を制御して画素データを順に出力させるものである。
【0035】
画像信号処理部270は、画像データに対して、ホワイトバランス処理や画素加算処理などの所定の画像処理を実行するものである。この画像信号処理部270は、処理後の画像データを記録部120に出力する。
【0036】
なお、画像信号処理部270を固体撮像素子200の内部に配置しているが、画像信号処理部270の一部または全てを固体撮像素子200の外部に配置してもよい。
【0037】
[画素回路の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態における画素回路230の一構成例を示す回路図である。この画素回路230は、フォトダイオード231、転送トランジスタ232、リセットトランジスタ233、浮遊拡散層234、増幅トランジスタ235および選択トランジスタ236を備える。
【0038】
フォトダイオード231は、入射光を光電変換して電荷を生成するものである。転送トランジスタ232は、垂直ドライバ210からの転送信号TXに従って、フォトダイオード231から浮遊拡散層234へ電荷を転送するものである。
【0039】
リセットトランジスタ233は、垂直ドライバ210からのリセット信号RSTに従って、浮遊拡散層234から電荷を引き抜いて、電荷量を初期化するものである。
【0040】
浮遊拡散層234は、フォトダイオード231から転送された電荷を蓄積して、蓄積した電荷量に応じた電圧を生成するものである。
【0041】
増幅トランジスタ235は、浮遊拡散層234の電圧の信号を増幅するものである。選択トランジスタ236は、垂直ドライバ210からの選択信号SELに従って増幅トランジスタ235により増幅された信号を画素信号として垂直信号線229-nを介してカラム信号処理部300に出力するものである。
【0042】
なお、画素回路230の構成は、光電変換により画素信号を生成することができるものであれば、図3に例示したものに限定されない。例えば、複数の画素が浮遊拡散層234を共有する共有型の構造とすることもできる。
【0043】
[カラム信号処理部の構成例]
図4は、本技術の第1の実施の形態におけるカラム信号処理部300の一構成例を示すブロック図である。このカラム信号処理部300は、列ごとに、負性容量回路310、電流源320、ADC331、スイッチ334およびメモリ335を備える。列数がN個であるため、負性容量回路310、電流源320、ADC331、スイッチ334およびメモリ335は、それぞれN個ずつ配置される。
【0044】
電流源320は、一定の電流を供給するものである。この電流源320は、対応する列の垂直信号線229-nと基準電位(接地電位など)の端子との間に挿入される。
【0045】
負性容量回路310は、負の容量のキャパシタとして機能する回路である。一般に、垂直信号線に寄生容量が生じて配線容量が増大すると、その配線容量の増大に起因して、垂直信号線の電位が一定になるまでの整定時間が長くなってしまう。これにより、読出し速度が低下するおそれがある。しかし、垂直信号線229-1には負性容量回路310が接続されているため、配線容量を低減して、読出し速度の低下を抑制することができる。
【0046】
垂直信号線の材質を誘電率の低いものに変更することや、プロセスルールの微細化によっても配線容量を低減することができるが、プロセス開発に多大な時間や費用がかかり、困難を伴う。これに対して、負性容量回路310を接続する方法では、垂直信号線の材質の変更などが不要であるため、配線容量を容易に低減することができる。
【0047】
ADC331は、対応する列の垂直信号線229-nを介して出力された、アナログ信号(画素信号)Ainに対してAD変換を行うものである。このADC331は、DAC250からの参照信号REFとアナログ信号Ainとを比較し、その比較結果に基づいてデジタル信号Doutを生成する。ADC331は、そのデジタル信号Doutをスイッチ334へ出力する。なお、ADC331は、特許請求の範囲に記載の論理回路の一例である。
【0048】
スイッチ334は、タイミング制御部240の制御に従って、対応する列のADC331からのデジタル信号Doutを画素データとしてメモリ335に出力するものである。
【0049】
メモリ335は、対応する列の画素データを保持するものである。このメモリ335は、水平転送走査回路260の制御に従って画素データを画像信号処理部270に出力する。
【0050】
[ADCの構成例]
図5は、本技術の第1の実施の形態におけるADC331の一構成例を示すブロック図である。このADC331は、比較器332およびカウンタ333を備える。
【0051】
比較器332は、画素アレイ部220内の画素回路230からのアナログ信号Ainと、DAC250からの参照信号REFとを比較するものである。この比較器332は、比較結果を示す比較結果信号をカウンタ333に出力する。比較器332として、例えば、アナログ信号Ainと、参照信号REFとの差分を増幅する差動増幅回路が用いられる。
【0052】
カウンタ333は、比較結果信号が所定レベルの期間に亘って、タイミング制御部240からのクロック信号CLKに同期して計数値を計数するものである。このカウンタ333は、計数値を示すデジタル信号Doutをスイッチ334に出力する。
【0053】
なお、ADC331は、リセットレベルと信号レベルとの差分を求めるCDS(Correlated Double Sampling)処理をさらに行ってもよい。ここでリセットレベルは、リセット直後のアナログ信号Ainのレベルであり、信号レベルは、浮遊拡散層234への電荷の転送直後のアナログ信号Ainのレベルである。CDS処理を行う場合、例えば、カウンタ333は、リセットレベルのAD変換時にダウンカウンタを実行し、信号レベルのAD変換時にアップカウンタを実行する。これにより、リセットレベルと信号レベルとの差分の正味の画素データが得られる。
【0054】
また、比較器332およびカウンタ333からなる傾斜型のADC331によりAD変換を行っているが、後述する逐次比較型など、ADCは傾斜型に限定されない。
【0055】
[負性容量回路の構成例]
図6は、本技術の第1の実施の形態における負性容量回路310の一構成例を示す回路図である。負性容量回路310は、アンプ311およびキャパシタ312を備える。アンプ311の入力端子は、垂直信号線229-nに接続される。このアンプ311のゲインは、「1」よりも大きいものとする。また、キャパシタ312の両端は、アンプ311の入力端子および出力端子に接続される。
【0056】
また、電流源320は、N型トランジスタ321により実現される。このN型トランジスタ321のゲートには所定のバイアス電圧Vb1が印加される。また、N型トランジスタ321のソースは垂直信号線229-nに接続され、ドレインは、所定の基準電位(例えば、接地電位)の端子に接続される。N型トランジスタ321として、例えば、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタが用いられる。
【0057】
また、垂直信号線229-nには、寄生容量500が生じているものとする。垂直信号線229-nの電位をVsとし、垂直信号線229-nと逆側の電位(接地電位)を基準とすると、寄生容量500には、+Vsの電圧が印加される。
【0058】
一方、負性容量回路310において、アンプ311のゲインを「2」とすると、キャパシタ312の垂直信号線229-n側の端子にはVsが印加され、その逆側の端子には2Vsが印加される。このため、垂直信号線229-nと逆側の電位(2Vs)を基準とすると、キャパシタ312には、-Vsの電圧が印加される。
【0059】
寄生容量500に+Vsが印加され、キャパシタ312に-Vsが印加されるため、垂直信号線229-nの配線容量は、負性容量回路310を接続しない場合と比較して低下する。寄生容量500とキャパシタ312との静電容量が同一と仮定すると、寄生容量500およびキャパシタ312のそれぞれの充電量の合計が「0」クーロン(C)となる。このため、寄生容量および負性容量の合計の容量(すなわち、配線容量)は、「0」ファラッド(F)となる。
【0060】
なお、アンプ311のゲインは、「2」に限定されず、寄生容量500の影響を十分に低減することができる値であれば、「2」以外の値であってもよい。ただし、ゲインが「1」以下であると、負性容量回路310の容量が負性とならないため、ゲインには「1」より大きな値が設定される。
【0061】
このように、本技術の第1の実施の形態では、垂直信号線229-nに負性容量回路310を接続したため、負性容量回路310を接続しない場合と比較して、垂直信号線229-nの配線容量を低減することができる。これにより、垂直信号線229-nの電位が一定になるまでの整定時間を短くして読出し速度を速くすることができる。また、垂直信号線229-1の材質変更やプロセスルールの微細化が不要であるため、配線容量を容易に低減することができる。
【0062】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、負性容量回路310内にゲインが「1」より大きなアンプ311を配置していたが、そのゲインが大きいほど、回路規模が増大し、また、列ごとのゲインのばらつきが大きくなる。そして、列ごとのゲインのばらつきが大きいと、同じ明るさであっても列ごとの信号レベルにばらつきが生じるため、画像データの画質が低下してしまう。この第2の実施の形態の負性容量回路310は、負性容量回路310の改良により、画像データの画質低下を抑制する点において第1の実施の形態と異なる。
【0063】
図7は、本技術の第2の実施の形態における負性容量回路310の一構成例を示す回路図である。第2の実施の形態の負性容量回路310は、N型トランジスタ313をさらに備え、アンプ311の代わりにアンプ314を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0064】
アンプ314は、電源と基準電位(接地電位など)の端子との間においてカスコード接続されたN型トランジスタ315および316を備える。N型トランジスタ315のゲートは、垂直信号線229-nに接続され、N型トランジスタ316のゲートには、バイアス電圧Vb1'が印加される。このバイアス電圧Vb1'の値は、バイアス電圧Vb1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。同一とすれば、バイアス電圧を供給する回路の規模を削減することができる。
【0065】
また、N型トランジスタ313は、電流源となるN型トランジスタ321にカスコード接続される。言い換えれば、N型トランジスタ313は、垂直信号線229-nと電流源との間に挿入される。このN型トランジスタ313のゲートには、バイアス電圧Vb1と異なるバイアス電圧Vb2が印加される。N型トランジスタ313、315および316として、例えば、MOSトランジスタが用いられる。なお、N型トランジスタ313は、特許請求の範囲に記載の挿入トランジスタの一例である。
【0066】
また、キャパシタ312の一端は、N型トランジスタ313および321の接続点に接続され、キャパシタ312の他端は、N型トランジスタ315および316の接続点に接続される。
【0067】
図8は、本技術の第2の実施の形態における線形モデルの一構成例を示す回路図である。図7における回路は、図8の線形モデルにより表すことができる。この線形モデルにおいて、垂直信号線229-n上のノードN1と、ノードN1とノードN2との間の経路の相互コンダクタンスはgm1である。また、ノードN1とノードN3との間の経路の相互コンダクタンスはgm2である。ノードN3に接続されるループ回路の相互コンダクタンスは、gm2である。また、ノードN2と接地電位との間の経路の抵抗は、Rである。ノードN3とノードN2との間には容量Cのキャパシタが挿入される。また、ノードN1の電位をvとし、ノードN2の電位をvとし、ノードN3の電位をvとする。
【0068】
それぞれのノードについて次の電荷保存式が成立する。
m1=v/R+sC(v-v) ・・・式1
sC(v-v)=gm2 ・・・式2
=-gm2 ・・・式3
上式において、sは、複素数を表す。iは、垂直信号線229-nに流れる電流を表す。iの単位は、例えば、アンペア(A)であり、相互コンダクタンスgm1およびgm2の単位は、例えば、ジーメンス(G)である。抵抗Rの単位は、例えば、オームであり、電位v1、v2およびv3の単位は、例えば、ボルト(v)である。
【0069】
式2は、次の式に変形することができる。
【数1】
【0070】
式4より、線形モデルは、角周波数gm2/Cに極を持つハイパスフィルタの性質を有する。次に式1および式3より、次の式が得られる。
【数2】
【0071】
式5より、線形モデルは、角周波数gm2/Cに零点を持ち、それより低い角周波数gm2/{C(1+gm2R)}に極を持つ伝達特性を有する。そして、式4および式5を式3に代入すると、次の式が得られる。
【数3】
【0072】
式6より、負荷としての線形モデルのインピーダンスZは、次の式により表される。
【数4】
上式において、インピーダンスZの単位は、オームである。
【0073】
式7に対して低周波近似を行うと、次の式が得られる。
【数5】
【0074】
式8より、角周波数がgm2/{C(1+gm2R)}よりも十分に低いときに、線形モデルは、-gm1R・Cの負性容量を持つ。言い換えるならば、負性容量値は、キャパシタ312の容量に、アンプ314のDC(Direct Current)ゲインを乗じた値となる。安易な直感に反して、相互コンダクタンスgm2は、負性容量値に現れない。また、式7より、高周波数帯域においてインピーダンスZは次の式により表される。
【数6】
【0075】
式9より、線形モデルは、理想的な負性容量とならず、高周波数帯域においては負性抵抗になる。垂直信号線229-nの寄生容量にも依存するが、理想的な負性容量とならないことは、垂直信号線229-nを不安定化させるおそれがある。例えば、リンギングを引き起こしうる。したがって、零点角周波数gm2/{C(1+gm2R)}を極力大きく維持したまま、負性容量値-gm1R・Cを極力大きくすることが好ましい。設計パラメータで言い換えるならば、負性容量値を大きくする観点から、アンプ314の相互コンダクタンスgm1は大きいことが好ましく、安定性を保つ観点から、N型トランジスタ313の相互コンダクタンスgm2は、大きいことが好ましい。また、負性容量値を大きくする観点において抵抗Rおよび容量Cは大きいことが好ましいが、安定性を保つ観点においては、それらは小さい方が好ましい。アンプ314にソースフォロワを用いた場合を考えると、抵抗Rが1/gm1であるため、次の式が成立する。
【数7】
【0076】
式10より、負性容量値は-Cとなり、キャパシタ312の容量Cのみにより決定される。一方で零点周波数は、次の式により表される。
【数8】
【0077】
式11より、相互コンダクタンスgm1およびgm2は、いずれも大きいことが求められる。一方で、零点周波数は、それらの相互コンダクタンスのうち小さい方で決まる構成となっており、相互コンダクタンスは、ほぼ、そのバイアス電流により決定されることから、消費電流を求める際には、注意が必要となる。
【0078】
なお、ソースフォロワをスーパーソースフォロワに置き換えた場合、まず、そのDCゲインgm1Rは、変わらず、ほぼ「1」なので、負性容量値が-Cになることは変わらないが、相互コンダクタンスgm1は、固有ゲイン1段分、増大する。このため、安定性は改善すると考えることができる。ソースフォロワのバイアス電流を増大することでも、同様の効果は得られるが、相互コンダクタンスgm1を増大する観点からは、スーパーソースフォロワ構成の方が、電流効率は良いと考えられる。
【0079】
上述したように、アンプ314のゲインが「1」以下であっても、負性容量回路310の容量は負性となる。このため、アンプのゲインを「1」より大きくしなければならない、第1の実施の形態と比較して、負性容量回路310の回路規模を削減することができる。また、列ごとのゲインのばらつきを抑制して、画像データの画質を向上させることができる。
【0080】
図9は、本技術の第2の実施の形態における負性容量回路310のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、インピーダンスZであり、横軸は、角周波数である。同図より、零点周波数より低い周波数帯域において、容量は-Cとなる。
【0081】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、電流源にカスコード接続されたN型トランジスタ313と、カスコード接続された一対のトランジスタからなるアンプ314とを設けたため、アンプ314のゲインを「1」以下にすることができる。これにより、列ごとのゲインのばらつきを抑制して、画像データの画質を向上させることができる。
【0082】
<3.第3の実施の形態>
上述の第2の実施の形態では、電流源のN型トランジスタ321と、垂直信号線229-nとの間にN型トランジスタ313を挿入していた。このN型トランジスタ313の挿入により、ダイナミックレンジの低減、トランジスタの総面積の増大、および、バイアス電圧を供給する回路の回路規模の増大の懸念がある。この第3の実施の形態の負性容量回路310は、N型トランジスタ313を削減した点において第2の実施の形態と異なる。
【0083】
図10は、本技術の第3の実施の形態における負性容量回路310の一構成例を示す回路図である。この第3の実施の形態の負性容量回路310は、N型トランジスタ313を備えず、N型トランジスタ321の代わりにN型トランジスタ321-1および321-2を備える点において第2の実施の形態と異なる。
【0084】
N型トランジスタ321-1および321-2は、垂直信号線229-nと接地電位との間においてカスコード接続され、それらのゲートには、バイアス電圧Vb1が印加される。また、N型トランジスタ321-1および321-2のそれぞれのゲート長の和は、N型トランジスタ321のゲート長と等しく、N型トランジスタ321-1および321-2のそれぞれのゲート幅は、N型トランジスタ321のゲート幅と等しい。すなわち、N型トランジスタ321-1および321-2は、N型トランジスタ321を2分割したものと等価である。
【0085】
また、キャパシタ312の一端は、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点に接続される。接地側のN型トランジスタ321-2は、電流源として用いられ、負性容量回路310内にN型トランジスタ321-1、キャパシタ312およびアンプ314が配置される。
【0086】
このように、電流源のN型トランジスタ321をN型トランジスタ321-1および321-2に2分割し、それらの一方をN型トランジスタ313の代わりに用いたため、N型トランジスタ313の分、トランジスタの総面積を削減することができる。なお、N型トランジスタ321-1は、特許請求の範囲に記載の挿入トランジスタの一例である。
【0087】
図11は、本技術の第3の実施の形態における線形モデルの一構成例を示す回路図である。図10における回路は、図11の線形モデルにより表すことができる。第3の実施の形態の線形モデルは、ノードN3と基準電位の端子との間の経路の抵抗値がRである点において第2の実施の形態と異なる。それぞれのノードについて次の電荷保存式が成立する。
m1=v/R+sC(v-v) ・・・式12
【数9】
=-gm2 ・・・式14
【0088】
第2の実施の形態の式1乃至式3と、第3の実施の形態の式12乃至式14とを比較すると、式13において、実効的な相互コンダクタンスg'm2が現れる点が特徴的である。式13を変形すると、次の式が得られる。
【数10】
【0089】
式15より、線形モデルは、角周波数g'm2/Cに極を持つハイパスフィルタである。また、式12および式14より、次の式が得られる。
【数11】
【0090】
式16より、線形モデルは、角周波数gm2/Cに零点を持ち、それより低い角周波数gm2/{C(1+gm2R)}に極を持つ伝達特性を有する。式15および式16を式14に代入すると、次の式が得られる。
【数12】
【0091】
式17より、負荷としての線形モデルのインピーダンスZは、次の式により表される。
【数13】
【0092】
次に、第3の実施の形態における固有のパラメータである抵抗Rおよび相互コンダクタンスgm2を求める。まず、相互コンダクタンスgm2だが、ここは飽和動作であることから、次の式が成立する。
=(k/A)・(V-V-Vth ・・・式19
上式において、Iは、N型トランジスタ321-1または321-2のドレイン電流である。Aは、N型トランジスタ321-1および321-2のそれぞれのゲート長の比率、すなわち分割比である。kは所定の係数である。Vは、ゲート電圧である。Vは、分割ノードの電圧である。Vthは、閾値電圧である。これらの電圧の単位は、例えば、ボルト(V)である。
【0093】
式19を変形すると、次の式が得られる。
V=V-Vth-(A・I/k)1/2 ・・・式20
【0094】
また、式19の両辺を微分すると、次の式が得られる。
=2(k/A)・(V-V-Vth
=2{(k・Id)/A}1/2
=(1/A1/2)・gm_LM0 ・・・式21
上式においてgm_LM0は、分割前のN型トランジスタ321の相互コンダクタンスである。
【0095】
次に抵抗Rであるが、抵抗Rに対応するN型トランジスタ321-2は、三極間領域となるため、次の式が成立する。
={2k/(1-A)}・{(V-Vth)V-V/2} …式22
【0096】
式20および式22より、次の式が得られる。
={(1-A)/2k}・{1/(V-Vth-V)}
={(1-A)/2}・{1/(A・k・Id)}1/2
={(1-A)/(2A1/2)}・(1/gm_LM0) ・・・式23
【0097】
また、同様にして、g'm2に関して次の式が得られる。
g'm2=gm2+1/R
={1/A1/2+2A1/2/(1-A)}・gm_LM0
=(1/A1/2){(1+A)/(1-A)}・gm_LM0…式24
【0098】
また、式18より、低周波数帯域におけるインピーダンスZは、次の式により表される。
【数14】
【0099】
上式におけるgm1・Rは、アンプ314のゲインを表す。アンプ314として、ゲインが「1」のソースフォロワを用いるとすると、式25は、次の式により表される。
【数15】
【0100】
式26より、負性容量回路310は、-(g/g'm2)・Cの負性容量を持つ。この第3の実施の形態の負性容量には、第2の実施の形態と異なり、相互コンダクタンスの比g/g'm2という係数が現れる。この係数は、負性容量のゲインである。この負性容量ゲインは、次の式により表される。
/g'm2=(1-A)/(1+A) ・・・式27
【0101】
図12は、本技術の第3の実施の形態における負性容量回路310のゲイン特性の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、式27に例示した負性容量ゲインであり、横軸は分割比Aである。
【0102】
また、式18より、高周波数帯域におけるインピーダンスZは、次の式により表される。
【数16】
【0103】
式28より、第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、インピーダンスZが負性抵抗となる。アンプ314として、ゲインが「1」のソースフォロワを用いるとすれば、インピーダンスZは、次の式により表される。
【数17】
【0104】
同様に、次の式により表される中間周波数帯域について考える。
【数18】
【0105】
式30に示す中間周波数帯域においてインピーダンスZは、次の式により表される。
Z=v/i
=-(g/g'm2)・(1/gm1+1/gm2
=-{(1+A)/(1-A)}・(1/gm1+1/gm2)…式31
【0106】
式31より、中間周波数帯域においてインピーダンスZは、負性抵抗となる。
【0107】
図13は、本技術の第3の実施の形態における負性容量回路310のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、インピーダンスZを示し、横軸は角周波数を示す。同図のグラフは、式26、式29および式31から得られる。同図に例示するように、負性容量回路310のインピーダンス特性には、2つの極と、2つの零点とが現れる。
【0108】
このように本技術の第3の実施の形態では、N型トランジスタ321を2分割して、その一方を負性容量回路310内に配置したため、N型トランジスタ313を削減することができる。
【0109】
<4.第4の実施の形態>
上述の第3の実施の形態では、ゲインが「1」のアンプ314を負性容量回路310内に配置していたが、この構成では十分に大きな負性容量値を得られないおそれがある。この第4の実施の形態の負性容量回路310は、負性容量値を増大した点において第3の実施の形態と異なる。
【0110】
図14は、本技術の第4の実施の形態における負性容量回路310の一構成例を示す回路図である。この第4の実施の形態の負性容量回路310は、アンプ314の代わりに、ゲインが「1」より大きなアンプ311を配置した点において第3の実施の形態と異なる。アンプ311の配置により、負性容量値は、第3の実施の形態の場合よりも増大する。ただし、安定性を保つ観点から、出力インピーダンス(すなわち、線形モデルにおける抵抗R)を抑制することが望ましい。
【0111】
このように、本技術の第4の実施の形態では、ゲインが「1」より大きなアンプ311を配置したため、負性容量値を増大させることができる。
【0112】
<5.第5の実施の形態>
上述の第4の実施の形態では、列ごとに、ADC331の外部にキャパシタ312を配置していたが、列数の増大に伴って回路規模が増大するおそれがある。例えば、ADCがキャパシタを内蔵する場合、そのキャパシタをADCと負性容量回路310とが共有する構成とすれば、回路規模を削減することができる。この第5の実施の形態の負性容量回路310は、ADCとキャパシタを共有する点において第4の実施の形態と異なる。
【0113】
図15は、本技術の第5の実施の形態におけるカラム信号処理部300の一構成例を示すブロック図である。この第5の実施の形態のカラム信号処理部300は、ADC331の代わりにADC370を配置し、キャパシタ312を設けず、スイッチ341および343とキャパシタ342とをさらに配置した点において第4の実施の形態と異なる。
【0114】
スイッチ341の一端にはバイアス電圧Vb1が印加され、他端は、N型トランジスタ321-1および321-2の両方のゲートに共通に接続される。このスイッチ341は、タイミング制御部240からの制御信号SW1に従って、バイアス電圧Vb1の供給源と、N型トランジスタ321-1および321-2の両方のゲートとの間の経路を開閉する。
【0115】
キャパシタ342の一端は、N型トランジスタ321-1および321-2の両方のゲートに共通に接続され、他端は、基準電位VSSの端子に接続される。
【0116】
スイッチ343は、タイミング制御部240からの制御信号SW2に従って、アンプ311の出力端子と、ADC370との間の経路を開閉するものである。なお、スイッチ343は、特許請求の範囲に記載の第1のスイッチの一例である。
【0117】
図16は、本技術の第5の実施の形態におけるADC370の一構成例を示す回路図である。このADC370は、DAC371、比較器374および逐次比較制御部375を備える。
【0118】
DAC371は、DA(Digital to Analog)変換を行うものであり、互いに容量の異なる複数のキャパシタ372と、キャパシタ372と同数のスイッチ373とを備える。
【0119】
キャパシタ372のそれぞれの一端は、スイッチ343と比較器374の入力端子との間の経路に共通に接続される。スイッチ373は、デジタル信号Doutに基づいて、対応するキャパシタ372の他端を、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点と、所定の基準電位(接地電位など)の端子とのいずれかに接続するものである。なお、スイッチ373は、特許請求の範囲に記載の第2のスイッチの一例である。
【0120】
比較器374は、DAC371からのアナログ信号Ainの電位と所定の基準電位(接地電位など)とを比較するものである。この比較器374は、比較結果を逐次比較制御部375に出力する。
【0121】
逐次比較制御部375は、比較器374の比較結果からなるデジタル信号Doutを生成してDAC371に帰還させるとともに、スイッチ334へ出力するものである。なお、比較器374および逐次比較制御部375を含む回路は、特許請求の範囲に記載の論理回路の一例である。
【0122】
例えば、初期状態において、スイッチ373の全ては、対応するキャパシタ372の接続先をN型トランジスタ321-1および321-2の接続点に接続する。そして、アナログ信号Ainが基準電位より大きい場合に逐次比較制御部375は、デジタル信号Doutの第1ビットを生成する。その第1ビットに従って、スイッチ373は、最も容量の大きなキャパシタ372の接続先を基準電位に切り替えて放電させる。
【0123】
第1ビットの生成後においてアナログ信号Ainが基準電位より大きい場合に逐次比較制御部375は、デジタル信号Doutの第2ビットを生成する。その第2ビットに従って、スイッチ373は、2番目に容量の大きなキャパシタ372の接続先を基準電位に切り替えて放電させる。以下、同様の制御が繰り返し実行される。そして、アナログ信号Ainが基準電位以下の場合にスイッチ373は、キャパシタ372を放電させず、比較動作が終了する。画素当たりのデジタル信号Doutのビット数が16ビットである場合には、比較回数は最大で16回であり、途中で比較動作が終了した場合には残りのビットには固定値が設定される。このように、ビットごとに比較動作を逐次的に実行するADCは、逐次比較型のADCと呼ばれる。
【0124】
図17は、本技術の第5の実施の形態におけるAD変換期間以外のカラム信号処理部300の状態の一例を示す図である。AD変換の開始前、または、AD変換の終了後において、タイミング制御部240は、制御信号SW1およびSW2により、スイッチ341および343を閉状態にする。これにより、N型トランジスタ321-1、アンプ311、スイッチ343およびキャパシタ372からなる回路は、第4の実施の形態の負性容量回路310と同様の構成になる。
【0125】
また、キャパシタ372には、アナログ信号Ainが保持される。このように第5の実施の形態の負性容量回路310は、キャパシタ372をADC370と共有する。このため、ADC370の外部にキャパシタ312を配置する必要が無くなり、カラム信号処理部300の回路規模を削減することができる。
【0126】
なお、タイミング制御部240は、AD変換期間内にスイッチ341を開状態にしてバイアス電圧Vb1の供給を停止しているが、スイッチ341自体を設けずに、常にバイアス電圧Vb1を供給する構成としてもよい。ただし、キャパシタ342の充電時間が長くなり、消費電力も増大するおそれがある。
【0127】
図18は、本技術の第5の実施の形態におけるAD変換期間内のカラム信号処理部300の状態の一例を示す図である。AD変換期間内において、タイミング制御部240は、制御信号SW1およびSW2により、スイッチ341および343を開状態にする。これにより、N型トランジスタ321-1、アンプ311、スイッチ343およびキャパシタ372からなる回路はループ回路でなくなり、また、容量は負性ではなくなる。また、ADC370は、逐次比較制御により、キャパシタ372に保持されたアナログ信号Ainをデジタル信号Doutに変換する。
【0128】
図17および図18に例示したようにスイッチ343を開閉することにより、負性容量回路310をイネーブルまたはディセーブルに設定することができる。ここで、「イネーブル」は、負性容量回路310の容量が負性であることを意味する。
【0129】
このように本技術の第5の実施の形態では、キャパシタ372を負性容量回路310およびADC370が共有するため、ADC370の外部にキャパシタ312を配置する必要が無くなる。これにより、ADC370の外部にキャパシタ312を配置する場合と比較して、カラム信号処理部300の回路規模を削減することができる。
【0130】
[変形例]
上述の第5の実施の形態では、負性容量回路310をイネーブルにするスイッチ343をアンプ311の出力端子に接続していたが、ループ経路上であれば、スイッチ343を別の個所に配置することができる。例えば、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点とADC370との間にスイッチ343を配置することもできる。この第5の実施の形態の変形例におけるカラム信号処理部300は、スイッチ343の配置箇所が異なる点において第5の実施の形態と異なる。
【0131】
図19は、本技術の第5の実施の形態の変形例におけるカラム信号処理部300の一構成例を示すブロック図である。第5の実施の形態の変形例におけるカラム信号処理部300は、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点とADC370との間の経路上にスイッチ343が配置される点において第5の実施の形態と異なる。
【0132】
図20は、本技術の第5の実施の形態の変形例におけるADC370の一構成例を示す回路図である。第5の実施の形態の変形例のADC370においてキャパシタ372のそれぞれの一端は、スイッチ373と比較器374との間の経路に共通に接続される。また、スイッチ373は、デジタル信号Doutに基づいて、キャパシタ372の他端を、アンプ311と基準電位の端子とのいずれかに接続する。
【0133】
このように、本技術の第5の実施の形態の変形例によれば、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点とADC370との間の経路上にスイッチ343を配置したため、その経路を開閉することができる。これにより、負性容量回路310をイネーブルまたはディセーブルにすることができる。
【0134】
<6.第6の実施の形態>
上述の第5の実施の形態では、負性容量回路310は、キャパシタ372をADC370と共有していたが、ADC以外の回路と共有することもできる。例えば、負性容量回路310は、サンプルホールド回路とキャパシタを共有することができる。この第6の実施の形態の負性容量回路310は、サンプルホールド回路とキャパシタを共有する点において第5の実施の形態と異なる。
【0135】
図21は、本技術の第6の実施の形態におけるカラム信号処理部300の一構成例を示すブロック図である。この第6のカラム信号処理部300は、アンプ311およびスイッチ343を設けず、サンプルホールド回路350をさらに配置した点において第5の実施の形態と異なる。また、ADC370の代わりに、逐次比較型でないADC331を備える。なお、第5の実施の形態と同様に逐次比較型のADC370を配置することもできる。
【0136】
サンプルホールド回路350は、垂直信号線229-nからのアナログ信号を取込み(すなわち、サンプリングし)、保持するものである。サンプルホールド回路350は、保持したアナログ信号AinをADC331に供給する。
【0137】
図22は、本技術の第6の実施の形態におけるサンプルホールド回路350の一構成例を示す回路図である。このサンプルホールド回路350は、アンプ351と、スイッチ352乃至355と、キャパシタ356および357と、スイッチ358乃至361とを備える。
【0138】
アンプ351の入力端子は、垂直信号線229-nを介して画素回路230に接続され、出力端子は、スイッチ352および354に接続される。スイッチ352は、タイミング制御部240からの制御信号SMP1に従って、キャパシタ356の一端とアンプ351との間の経路を開閉するものである。スイッチ353は、タイミング制御部240からの制御信号SMP2に従って、キャパシタ356の一端とADC331との間の経路を開閉するものである。
【0139】
また、スイッチ354は、制御信号SMP2に従って、キャパシタ357の一端とアンプ351との間の経路を開閉するものである。スイッチ355は、制御信号SMP1に従って、キャパシタ357の一端とADC331との間の経路を開閉するものである。
【0140】
スイッチ358は、制御信号SMP1に従って、キャパシタ356の他端と、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点との間の経路を開閉するものである。スイッチ359は、制御信号SMP2に従って、キャパシタ356の他端と基準電位(接地電位など)の端子との間の経路を開閉するものである。
【0141】
また、スイッチ360は、制御信号SMP2に従って、キャパシタ357の他端と、N型トランジスタ321-1および321-2の接続点との間の経路を開閉するものである。スイッチ361は、制御信号SMP1に従って、キャパシタ357の他端と基準電位の端子との間の経路を開閉するものである。
【0142】
図23は、本技術の第6の実施の形態における奇数回目のサンプリング期間内のカラム信号処理部300の状態の一例を示す図である。奇数回目のサンプリング期間内において、タイミング制御部240は、制御信号SMP1により、スイッチ352、355、358および361を閉状態にし、制御信号SMP2により、残りのスイッチを開状態にする。これにより、N型トランジスタ321-1、アンプ351、スイッチ352、キャパシタ356およびスイッチ358からなる回路は、第4の実施の形態の負性容量回路310と同様の回路となり、容量が負性になる。また、キャパシタ356はアナログ信号をサンプリングし、その一方でキャパシタ357は、偶数回目にサンプリングした信号を保持する。
【0143】
図24は、本技術の第6の実施の形態における偶数回目のサンプリング期間内のカラム信号処理部300の状態の一例を示す図である。偶数回目のサンプリング期間内において、タイミング制御部240は、制御信号SMP1により、スイッチ352、355、358および361を開状態にし、制御信号SMP2により、残りのスイッチを閉状態にする。これにより、N型トランジスタ321-1、アンプ351、スイッチ354、キャパシタ357およびスイッチ360からなる回路は、第4の実施の形態の負性容量回路310と同様の回路となり、容量が負性になる。また、キャパシタ356は奇数回目にサンプリングした信号を保持し、その一方でキャパシタ357は、アナログ信号をサンプリングする。
【0144】
上述したように、キャパシタ356と、スイッチ352、353、358および359とからなる回路において、入力側のスイッチ352および358と、出力側のスイッチ353および359とが交互に開閉する。このような回路は、スイッチトキャパシタ回路と呼ばれる。キャパシタ357と、スイッチ354、355、360および361とからなる回路も同様にスイッチトキャパシタ回路として機能する。なお、スイッチトキャパシタ回路を2つ配置しているが、1つのみ配置してもよい。ただし、スイッチトキャパシタ回路を1つのみとした場合、奇数回目のサンプリングと偶数回目のホールドとを並列に実行することができなくなる。
【0145】
なお、スイッチ352および354は、特許請求の範囲に記載の第1の入力側スイッチの一例であり、スイッチ358および360は、特許請求の範囲に記載の第2の入力側スイッチの一例である。スイッチ353および355は、特許請求の範囲に記載の第1の出力側スイッチの一例であり、スイッチ359および361は、特許請求の範囲に記載の第2の出力側スイッチの一例である。
【0146】
このように、本技術の第6の実施の形態では、負性容量回路310が、サンプルホールド回路とキャパシタを共有するため、サンプルホールド回路350の外部にキャパシタ312を配置する必要が無くなる。これにより、サンプルホールド回路350の外部にキャパシタ312を配置する場合と比較して、カラム信号処理部300の回路規模を削減することができる。
【0147】
<7.第7の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、画素アレイ部220を、タイミング制御部240などの画素アレイ部220以外の回路とともに単一の半導体チップに設けていた。しかし、半導体チップの面積を一定とすると、画素アレイ部220以外の回路の分、画素アレイ部220の面積が狭くなるおそれがある。画素アレイ部220の面積を広くするには、例えば、固体撮像素子200内の回路のそれぞれを、積層した複数の半導体チップに分散して配置すればよい。この第7の実施の形態の固体撮像素子200は、積層された複数の半導体チップに回路を分散して配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0148】
図25は、本技術の第7の実施の形態における固体撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この第7の実施の形態の固体撮像素子200は、積層された画素チップ201およびロジックチップ202を備える。画素チップ201は、画素アレイ部220が配置された半導体チップである。なお、画素チップ201は、特許請求の範囲に記載の第1の半導体チップの一例である。
【0149】
図26は、本技術の第7の実施の形態におけるロジックチップ202の一構成例を示すブロック図である。このロジックチップ202は、上側カラム信号処理部301、画像信号処理部270および下側カラム信号処理部302が配置された半導体チップである。
【0150】
上側カラム信号処理部301には、カラム信号処理部300のうち、全列の半分に対応する回路が配置される。一方、下側カラム信号処理部302には、カラム信号処理部300のうち、残りの列に対応する回路が配置される。垂直ドライバ210、DAC250および水平転送走査回路260は、例えば、ロジックチップ202に配置される。これらは、図26において省略されている。
【0151】
このように、本技術の第7の実施の形態では、積層した画素チップ201およびロジックチップ202に回路を分散して配置したため、単一の半導体チップに配置する場合と比較して画素アレイ部220の面積を広くすることができる。
【0152】
<8.第8の実施の形態>
上述の第2の実施の形態では、垂直信号線229-nに負性容量回路310を接続して配線容量を低減していたが、グランド電流の変動によりストリーキングが生じるおそれがある。この第8の実施の形態の固体撮像素子200は、電流源となるN型トランジスタ316のドレイン電圧をクランプして、ストリーキングを抑制した点において第2の実施の形態と異なる。
【0153】
図27は、本技術の第8の実施の形態における負性容量回路310の一構成例を示す回路図である。この第8の実施の形態の各列の負性容量回路310は、クランプトランジスタ383がさらに設けられた点において第2の実施の形態と異なる。同図において、図7のN型トランジスタ321は電流源381として動作し、N型トランジスタ316は電流源382として動作する。電流源381の供給する電流をIとし、電流源382の供給する電流をIとする。また、N型トランジスタ315のゲート・ソース間電圧をVGSとし、電流源382(N型トランジスタ316)のドレイン電圧をVとする。なお、電流源381は、特許請求の範囲に記載の第1電流源の一例であり、電流源382は、特許請求の範囲に記載の第2電流源の一例である。
【0154】
クランプトランジスタ383は、電源と電流源382との間において、N型トランジスタ315と並列に接続される。クランプトランジスタ383として、例えば、N型のMOSトランジスタが用いられる。このクランプトランジスタ383のゲートには、固定のゲート電圧VGCLPが印加される。なお、全ての列について同一のゲート電圧VGCLPが供給される。
【0155】
図28は、本技術の第8の実施の形態における垂直信号線229-nおよびドレイン電圧Vの電圧変動の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、垂直信号線229-nの電圧、または、ドレイン電圧Vを示し、同図における横軸は時間を示す。また、同図における太い実線は、垂直信号線229-nの電圧の変動を示す。同図における点線は、クランプトランジスタ383を設けない第2の実施の形態のドレイン電圧Vの変動を示す。一方、細い実線は、クランプトランジスタ383を設けた第8の実施の形態のドレイン電圧Vの変動を示す。
【0156】
タイミングT0において転送信号TXが画素回路230に入力されると、垂直信号線229-nの電圧は、タイミングT1以降においてDKからOFに低下する。DKは、ダークカレントに応じた電圧であり、OFは、入射光量に応じた電圧である。
【0157】
入射光量が非常に大きいと、DKからOFへの低下量は大きくなる。この場合であっても、電流Iに対応する電流源381は、飽和領域で動作するように設計されている。一方、電流Iに対応する電流源382(N型トランジスタ316)のドレイン電圧Vは、垂直信号線229-nの電圧よりもゲート・ソース間電圧VGSだけ低い。このため、クランプトランジスタ383を設けない第2の実施の形態では、ドレイン電圧Vの低下により、電流源382が飽和領域でなく、線形領域で動作してしまうおそれがある。電流源382が線形領域で動作すると、電流Iが小さくなる。この電流Iの変動により、電流IおよびIの合計のグランド電流が変動し、ストリーキング特性が悪化してしまう。
【0158】
そこで、第8の実施の形態の負性容量回路310では、クランプトランジスタ383を追加している。この構成では、垂直信号線229-nの電圧がゲート電圧VGCLPよりも低下すると、電流Iにおいてクランプトランジスタ382を流れる電流が支配的となる。垂直信号線229-nの電圧が低くなるほど、クランプトランジスタ382を流れる電流の割合が大きくなり、ドレイン電圧Vは、ゲート電圧VGCLPに応じた一定の電圧CLPに固定(クランプ)される。
【0159】
図29は、本技術の第8の実施の形態におけるグランド電流およびストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。同図におけるaは、グランド電流IGNDの変動の一例を示すグラフである。同図におけるbは、グランド電流とダークカレントとの差分ΔIGNDの変動の一例を示すグラフである。同図におけるcは、ストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。また、同図における縦軸は、電流またはストリーキング量を示し、同図における横軸は、垂直信号線229-nの電圧VSLを示す。また、同図において、点線は、クランプトランジスタ383を設けない第2の実施の形態のグランド電流およびストリーキング量の変動を示す。一方、実線は、クランプトランジスタ383を設けた第8の実施の形態のグランド電流およびストリーキング量の変動を示す。
【0160】
クランプトランジスタ383を設けない第2の実施の形態では、点線に例示するように、電流Iの変動により、電流IおよびIの合計のグランド電流IGNDが変動し、ストリーキング量が増大する。一方、クランプトランジスタ383を設けた第8の実施の形態では、実線に例示するように、電流源382の飽和領域動作に必要な電圧マージンを確保することができるため、電流Iの変動を抑制することができる。これにより、電流IおよびIの合計のグランド電流IGNDの変動を抑制し、ストリーキング量を減少させることができる。
【0161】
このように、本技術の第8の実施の形態によれば、クランプトランジスタ383により、電流源382のドレイン電圧Vをクランプするため、ストリーキング特性を改善することができる。
【0162】
<9.第9の実施の形態>
上述の第8の実施の形態では、クランプトランジスタ383のゲート電圧VGCLPを固定値としていたが、ゲート電圧VGCLPの適正値が想定と異なるおそれがある。この第9の実施の形態の固体撮像素子200は、ゲート電圧VGCLPを可変にして、その値を調整する点において第8の実施の形態と異なる。
【0163】
図30は、本技術の第9の実施の形態におけるカラム信号処理部300の一構成例を示す回路図である。第9の実施の形態におけるカラム信号処理部300は、ゲート電圧供給部410をさらに配置した点において第8の実施の形態と異なる。
【0164】
ゲート電圧供給部410は、ゲート電圧VGCLPを生成して全列のクランプトランジスタ383のそれぞれに供給するものである。
【0165】
図31は、本技術の第9の実施の形態におけるゲート電圧供給部410の一構成例を示す回路図である。このゲート電圧供給部410は、可変電流源411と、N型トランジスタ412、415および418と、スイッチ413、414、416および417とを備える。
【0166】
可変電流源411およびN型トランジスタ412は、電源に直列に接続される。可変電流源411およびN型トランジスタ412の接続点の電圧がゲート電圧VGCLPとしてクランプトランジスタ383のゲートに供給される。
【0167】
N型トランジスタ415および418は、可変電流源411およびN型トランジスタ412の接続点に並列に接続される。スイッチ413および414は、可変電流源411およびN型トランジスタ412の接続点に直列に接続され、これらの接続点がN型トランジスタ415のゲートに接続される。スイッチ416および417は、可変電流源411およびN型トランジスタ412の接続点に直列に接続され、これらの接続点がN型トランジスタ418のゲートに接続される。
【0168】
可変電流源411の供給する電流の値は、レジスタなどに保持された制御信号により調整される。また、スイッチ413、414、416および417を開閉させる制御信号SW10、SW11、SW12およびSW13もレジスタなどに保持される。
【0169】
上述の構成において、作業者は、レジスタ内の制御信号を変更することによって、ゲート電圧VGCLPの値を調整することができる。なお、ゲート電圧VGCLPを変更することができるのであれば、ゲート電圧供給部410の構成は、同図に例示した回路に限定されない。
【0170】
図32は、本技術の第9の実施の形態におけるグランド電流およびストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。同図におけるaは、グランド電流IGNDの変動の一例を示すグラフである。同図におけるbは、グランド電流とダークカレントとの差分ΔIGNDの変動の一例を示すグラフである。同図におけるcは、ストリーキング量の変動の一例を示すグラフである。また、同図における縦軸は、電流またはストリーキング量を示し、同図における横軸は、垂直信号線229-nの電圧VSLを示す。また、同図において、点線は、クランプトランジスタ383を設けない第2の実施の形態のグランド電流およびストリーキング量の変動を示す。一方、実線は、クランプトランジスタ383を設けた第9の実施の形態のグランド電流およびストリーキング量の変動を示す。
【0171】
同図に例示するように、ゲート電圧供給部410はゲート電圧VGCLPを変更することにより、ストリーキング量を調整することができる。
【0172】
このように本技術の第9の実施の形態によれば、ゲート電圧供給部410がゲート電圧VGCLPを変更するため、ストリーキング量を所望の値に調整することができる。
【0173】
<10.第10の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、アナログ信号Ainと、参照信号REFとの差分を増幅する差動増幅回路をADC331内の比較器332として用いていたが、この構成において固体撮像素子200の消費電力をさらに削減することができる。この第10の実施の形態の固体撮像素子200は、消費電力をさらに削減した点において第1の実施の形態と異なる。
【0174】
図33は、本技術の第10の実施の形態における比較器420の一構成例を示す回路図である。この第10の実施の形態においては、各列において比較器331の代わりに比較器420が配置される。比較器420は、キャパシタ421、422および430と、P型トランジスタ423および424と、スイッチ425および426と、N型トランジスタ427乃至429とを備える。P型トランジスタ423、P型トランジスタ424、N型トランジスタ427、N型トランジスタ428およびN型トランジスタ429として、例えば、MOSトランジスタが用いられる。
【0175】
キャパシタ421および422のそれぞれの一端は、N型トランジスタ427のゲートに共通に接続される。また、キャパシタ421の他端には、垂直信号線229-nを介してアナログ信号Ainが入力される。キャパシタ422の他端には、参照信号REFが入力される。
【0176】
P型トランジスタ423および424は、電源に並列に接続される。P型トランジスタ423のゲートは、ドレインとP型トランジスタ424のゲートとに接続される。N型トランジスタ427は、N型トランジスタ429とP型トランジスタ423との間に挿入され、N型トランジスタ428は、N型トランジスタ429とP型トランジスタ424との間に挿入される。N型トランジスタ429のゲートには、所定のバイアス電圧Vbcが印加される。また、P型トランジスタ424およびN型トランジスタ428の接続点の電位が、比較器420の比較結果信号としてカウンタ333に供給される。
【0177】
スイッチ425は、N型トランジスタ427のゲートとドレインとの間を開閉するものである。スイッチ426は、N型トランジスタ428のゲートとドレインとの間を開閉するものである。キャパシタ430は、N型トランジスタ428のゲートと接地端子との間に挿入される。
【0178】
上述の構成において、キャパシタ421および422は、アナログ信号Ainと参照信号REFとの間の電圧を、それらの容量値に基づく分圧比により分圧する。また、P型トランジスタ423および424と、スイッチ425および426と、N型トランジスタ427乃至429とからなる回路は、差動増幅回路として機能する。この差動増幅回路は、キャパシタ421および422からの入力電圧と、キャパシタ430からの所定電圧との差分を増幅する。なお、キャパシタ421および422からなる回路は、特許請求の範囲に記載の分割回路の一例である。
【0179】
このように、本技術の第10の実施の形態によれば、アナログ信号Ainと参照信号REFとの間の電圧を分圧して差動増幅回路に入力するため、比較器420を第1の実施の形態よりも低い電圧で駆動し、消費電力を削減することができる。
【0180】
<11.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0181】
図34は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0182】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図34に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0183】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0184】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0185】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0186】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0187】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0188】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0189】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0190】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0191】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図34の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0192】
図35は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0193】
図35では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0194】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0195】
なお、図35には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0196】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0197】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0198】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0199】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0200】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031に適用され得る。具体的には、図1の撮像装置100を、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、読出し速度を速くして、フレームレートを向上させることが可能になる。
【0201】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0202】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0203】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0204】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)アナログ信号を処理する論理回路と、
光電変換により前記アナログ信号を生成して所定の信号線を介して前記論理回路に出力する画素回路と、
前記所定の信号線に接続された負性容量回路と
を具備する固体撮像素子。
(2)前記負性容量回路は、
前記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、
前記アンプの前記入力端子および出力端子に両端が接続されたキャパシタと
を備える
前記(1)記載の固体撮像素子。
(3)前記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、
前記負性容量回路は、
前記電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
電源と基準端子との間においてカスコード接続された一対のトランジスタからなるアンプと、
前記一対のトランジスタの接続点に一端が接続され、前記電流源と前記挿入トランジスタとの接続点に他端が接続されたキャパシタと
を備え、
前記一対のトランジスタのうち前記電源に接続されたトランジスタのゲートは、前記所定の信号線に接続される
前記(1)記載の固体撮像素子。
(4)前記挿入トランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、
前記電流源は、前記第1のバイアス電圧と異なる第2のバイアス電圧が印加された第2のトランジスタを備える
前記(3)記載の固体撮像素子。
(5)前記挿入トランジスタのゲートには第1のバイアス電圧が印加され、
前記電流源は、第2のトランジスタを備え、
前記挿入トランジスタのゲートは前記第2のトランジスタのゲートに接続される
前記(3)記載の固体撮像素子。
(6)前記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、
前記負性容量回路は、
前記電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
前記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、
前記アンプの前記入力端子に一端が接続され、前記電流源と前記挿入トランジスタとの接続点に他端が接続されたキャパシタと
を備える
前記(1)記載の固体撮像素子。
(7)前記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、
前記論理回路は、
前記アナログ信号と所定の参照信号とを比較して比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果に基づいて制御信号を生成して前記負性容量回路へ出力する制御回路と
を備える前記(1)記載の固体撮像素子。
(8)前記負性容量回路は、
前記電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
キャパシタと、
前記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、
前記キャパシタの一端と前記アンプの出力端子との間の経路を開閉する第1のスイッチと、
前記制御信号に従って前記挿入トランジスタと前記電流源との接続点または所定の基準端子に前記キャパシタの他端を接続する第2のスイッチと
を備える前記(7)記載の固体撮像素子。
(9)前記負性容量回路は、
前記電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
キャパシタと、
前記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、
前記挿入トランジスタおよび前記電流源の接続点と、前記キャパシタの一端との間の経路を開閉する第1のスイッチと、
前記制御信号に従って前記アンプの出力端子または所定の基準端子に前記キャパシタの他端を接続する第2のスイッチと
を備える前記(7)記載の固体撮像素子。
(10)前記比較器は、
前記アナログ信号と前記所定の参照信号との間の電圧を分圧して入力電圧として出力する分割回路と、
前記入力電圧と所定電圧との差分を増幅する差動増幅回路と
を備える前記(7)から(9)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(11)前記所定の信号線に接続された電流源をさらに具備し、
前記負性容量回路は、
前記電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
前記所定の信号線に入力端子が接続されたアンプと、
スイッチトキャパシタ回路と
を備え、
前記スイッチトキャパシタ回路は、
キャパシタと、
前記アンプの出力端子と前記キャパシタの一端との間の経路を開閉する第1の入力側スイッチと、
前記挿入トランジスタおよび前記電流源の接続点と、前記キャパシタの他端との間の経路を開閉する第2の入力側スイッチと、
前記一端と前記論理回路との間の経路を開閉する第1の出力側スイッチと、
前記他端と所定の基準端子との間の経路を開閉する第2の出力側スイッチと
を備える前記(1)記載の固体撮像素子。
(12)前記画素回路は、第1の半導体チップに配置され、
前記負性容量回路および前記論理回路は、前記第1の半導体チップに積層された第2の半導体チップに配置される
前記(1)から(11)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(13)前記所定の信号線に接続された第1電流源をさらに具備し、
前記負性容量回路は、
前記第1電流源と前記所定の信号線との間に挿入された挿入トランジスタと、
第2電流源と、
前記第2電流源と電源との間に挿入され、ゲートが前記所定の信号線に接続されたN型トランジスタと、
前記電源と前記第2電流源との間において前記N型トランジスタと並列に接続されたクランプトランジスタと、
前記挿入トランジスタおよび前記第1電流源の接続点と前記N型トランジスタおよび前記第2電流源の接続点とに両端が接続されたキャパシタと
を備える前記(1)から(12)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(14)前記クランプトランジスタのゲート電圧を変更するゲート電圧供給部をさらに具備する
前記(13)に記載の固体撮像素子。
(15)アナログ信号を処理してデジタル信号を出力する論理回路と、
光電変換により前記アナログ信号を生成して所定の信号線を介して前記論理回路に出力する画素回路と、
前記所定の信号線に接続された負性容量回路と、
前記デジタル信号を記録する記録部と
を具備する撮像装置。
【符号の説明】
【0205】
100 撮像装置
110 撮像レンズ
120 記録部
130 撮像制御部
200 固体撮像素子
201 画素チップ
202 ロジックチップ
210 垂直ドライバ
220 画素アレイ部
230 画素回路
231 フォトダイオード
232 転送トランジスタ
233 リセットトランジスタ
234 浮遊拡散層
235 増幅トランジスタ
236 選択トランジスタ
240 タイミング制御部
250、371 DAC
260 水平転送走査回路
270 画像信号処理部
300 カラム信号処理部
301 上側カラム信号処理部
302 下側カラム信号処理部
310 負性容量回路
311、314、351 アンプ
312、342、356、357、372、421、422、430 キャパシタ
313、315、316、321、321-1、321-2、412、415、418、427、428、429 N型トランジスタ
320、381、382 電流源
331、370 ADC
332、374、420 比較器
333 カウンタ
334、341、343、352~355、358~361、373、413、414、416、417、425、426 スイッチ
335 メモリ
350 サンプルホールド回路
375 逐次比較制御部
383 クランプトランジスタ
410 ゲート電圧供給部
411 可変電流源
423、424 P型トランジスタ
12031 撮像部
図1
図2
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