(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スクリュー型分離装置及び排水処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 43/00 20060101AFI20241031BHJP
C02F 11/125 20190101ALI20241031BHJP
B30B 9/16 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01D43/00 Z
C02F11/125 ZAB
B30B9/16
(21)【出願番号】P 2023036262
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019092007の分割
【原出願日】2019-05-15
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 良行
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】実公昭25-004616(JP,Y1)
【文献】特開2000-317694(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186612(WO,A1)
【文献】特開2011-110525(JP,A)
【文献】特開昭60-034757(JP,A)
【文献】実公昭41-024458(JP,Y1)
【文献】特開2022-066971(JP,A)
【文献】特開2019-214077(JP,A)
【文献】特開平11-333223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 43/00
C02F 11/125
B30B 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、及び、前記対象物排出口よりも他方の端部側に設けられ前記対象物が投入される対象物投入口が設けられるケージングと、
前記ケージングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、
前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、
前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備え、
前記対象物排出口側の対象物排出区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根とのうち、前記第1スクリュー羽根が設けられ、
前記対象物排出区間よりも前記対象物投入口側の対象物搬送区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根との両方が設けられ、
前記第1スクリュー羽根は、前記対象物排出区間における
第1ピッチが前記対象物搬送区間における
第2ピッチよりも短
く、
前記第1ピッチは、延在方向で隣り合う前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根との距離である第3ピッチと等しい、
スクリュー型分離装置。
【請求項2】
有機性排水から汚泥を分離させる固液分離槽と、請求項1に記載のスクリュー型分離装置と、を備えた排水処理システムであって、
前記スクリュー型分離装置が、前記固液分離槽から排出された汚泥を濃縮し、前記汚泥の濃縮時において生じる分離液を前記固液分離槽に返送可能に構成されている、排水処理システム。
【請求項3】
前記スクリュー型分離装置が前記固液分離槽内に設けられている、請求項2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
有機性排水に対して生物処理を行う反応槽と、前記有機性排水から汚泥を分離させる固液分離槽と、請求項1に記載のスクリュー型分離装置と、を備えた排水処理システムであって、
前記スクリュー型分離装置が、前記反応槽から汚泥を引き抜いて濃縮し、前記濃縮された汚泥を前記反応槽に返送するとともに、前記汚泥の濃縮時において生じ
る分離液を前記固液分離槽に供給可能に構成されている、排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー型分離装置及び排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濃縮機や脱水機などのいわゆる分離装置に採用されている方法として、遠心法、浮上濃縮法、およびスクリーン濃縮脱水法などを挙げることができる。また、対象物としての含水率が高い下水や工場排水等の汚泥を、円筒形状のケージング内に投入し、このケージング内に設けたスクリューを回転させることにより、対象物を搬送しつつ圧搾脱水するスクリュー型分離装置が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2つのスクリュー羽根を設けたスクリューを回転させて、対象物を搬送しつつ圧搾する装置が記載されている。この装置は、側面に汚泥投入口が設けられたケージングの内部に、2つのスクリュー羽根に挟まれた第1領域と第2領域を形成する。この装置は、第1領域で、対象物を圧搾することにより脱水しつつ搬送し、脱水した対象物を排出する。また、この装置は、脱水により生じた分離液を第2領域で搬送して、分離液を排出する。このような装置において、分離液を搬送する第2領域に汚泥が投入されると、分離液のSS(Suspended Solid)濃度が適切に低下できなくなり、分離効率を適切に低下できなくなるおそれがある。そのため、特許文献1に記載の装置においては、汚泥が第2領域に投入されないように、第2領域にカバーを設ける旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分離液を搬送する第2領域にカバーを設ける場合、汚泥などの固形物がカバー部に積もって、固形物によって装置が詰まるおそれがあったり、洗浄が困難になるおそれがあったりするなど、装置の操作性に改善の余地がある。従って、スクリュー型分離装置においては、操作性の低下を抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作性の低下を抑制するスクリュー型分離装置および排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のスクリュー型分離装置は、一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、及び、前記対象物排出口よりも他方の端部側に設けられ前記対象物が投入される対象物投入口が設けられるケージングと、前記ケージングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在し、脱水により前記対象物から分離された分離液が流れる分離液流路が内部に設けられるスクリュー軸と、前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備え、前記ケージングの放射方向から見て前記対象物投入口に重畳する箇所を含む搬送促進区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根とのうち、前記第1スクリュー羽根が設けられ、前記搬送促進区間よりも前記対象物排出口側の対象物搬送区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根との両方が設けられ、前記対象物搬送区間における前記スクリュー軸の外周面に、前記分離液流路と連通する分離液流入口が設けられる。
【0008】
前記第2スクリュー羽根は、前記対象物搬送区間において、第1スクリュー羽根に対向する2面のうち一方の面と前記一方の面に対向する前記第1スクリュー羽根との間に、前記脱水した対象物が搬送される第1空間を形成し、前記2面のうち他方の面と前記他方の面に対向する前記第1スクリュー羽根との間に、前記分離液が流入する第2空間を形成し、前記分離液流入口は、前記第2空間に開口することが好ましい。
【0009】
前記分離液流入口よりも前記対象物投入口側に、前記分離液の前記搬送促進区間への流入をせき止める第1隔壁部が設けられることが好ましい。
【0010】
前記対象物投入口よりも前記他方の端部側における前記スクリュー軸に、前記分離液流路と連通する分離液排出口が設けられ、前記スクリュー軸を回転させることで、前記対象物投入口から投入された前記対象物を、前記搬送促進区間、及び前記対象物搬送区間の前記第1空間を経由して前記対象物排出口まで移動させつつ脱水して、脱水した前記対象物を前記対象物排出口から排出し、前記分離液を、前記分離液流入口から前記分離液流路内に流入させ、前記分離液流路内の前記分離液を前記分離液排出口から排出することが好ましい。
【0011】
前記分離液排出口よりも前記対象物投入口側に、前記分離液の前記搬送促進区間への流入をせき止める第2隔壁部が設けられることが好ましい。
【0012】
前記対象物搬送区間よりも前記一方の端部側の区間である対象物排出区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根とのうち、前記第1スクリュー羽根が設けられることが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のスクリュー型分離装置は、一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、及び、前記対象物排出口よりも他方の端部側に設けられ前記対象物が投入される対象物投入口が設けられるケージングと、前記ケージングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備え、前記対象物排出口側の対象物排出区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根とのうち、前記第1スクリュー羽根が設けられ、前記対象物排出区間よりも前記対象物投入口側の対象物搬送区間において、前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根との両方が設けられ、前記第1スクリュー羽根は、前記対象物排出区間におけるピッチが前記対象物搬送区間におけるピッチよりも短い。
【0014】
前記第1スクリュー羽根の前記対象物排出区間におけるピッチは、前記対象物搬送区間において前記延在方向に隣り合う前記第1スクリュー羽根と前記第2スクリュー羽根との間の距離と同じ長さであることが好ましい。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の排水処理システムは、有機性排水から汚泥を分離させる固液分離槽と、前記スクリュー型分離装置と、を備えた排水処理システムであって、前記スクリュー型分離装置が、前記固液分離槽から排出された汚泥を濃縮し、前記汚泥の濃縮時において生じる前記分離液を前記固液分離槽に返送可能に構成されている。
【0016】
前記スクリュー型分離装置が前記固液分離槽内に設けられていることが好ましい。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の排水処理システムは、有機性排水に対して生物処理を行う反応槽と、前記有機性排水から汚泥を分離させる固液分離槽と、前記スクリュー型分離装置と、を備えた排水処理システムであって、前記スクリュー型分離装置が、前記反応槽から汚泥を引き抜いて濃縮し、前記濃縮された汚泥を前記反応槽に返送するとともに、前記汚泥の濃縮時において生じる前記分離液を前記固液分離槽に供給可能に構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るスクリュー型分離装置の一部断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るスクリュー軸の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るスクリュー型分離装置の動作を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、変形例に係るスクリュー型分離装置の一部断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施例による排水処理システムの一部を示す構成図である。
【
図6】
図6は、第1の実施例の変形例を説明するための沈殿池を示す略線図である。
【
図7】
図7は、第2の実施例による排水処理システムの一部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
(スクリュー型分離装置の構成)
図1は、本実施形態に係るスクリュー型分離装置の一部断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、ケージング10、スクリュー軸12、第1スクリュー羽根14、第2スクリュー羽根16、第1隔壁部18、第2隔壁部20、投入部22、排出ポンプ24、傾斜調整部25、及び制御部26を有している。スクリュー型分離装置1は、後述する対象物投入口30Aからケージング10内に投入された前対象物A0を脱水して、脱水した後の対象物Aを、後述する対象物排出口30Bから排出する。そして、スクリュー型分離装置1は、脱水により前対象物A0から分離された分離液Cを、後述する分離液排出口30C、44から排出する。この前対象物A0は、含水率が高い下水や工場排水等の汚泥である。前対象物A0は、スクリュー型分離装置1に脱水される前の対象物であり、本実施形態では、含水率が高い下水や工場排水等の汚泥である。さらに言えば、前対象物A0は、凝集剤が添加された汚泥であり、フロック化された固形成分と水分とを含有する汚泥である。本実施形態においては、スクリュー型分離装置1の前段に設けられた装置により、例えば凝集剤を添加することで、固形物成分をフロック化して、固形物に液体成分が含まれた前対象物A0を生成する。ただし、前対象物A0の性状は任意であり、例えば、凝集剤が添加されずにフロック化されていない汚泥であってもよい。
【0022】
以下、地表Gに平行な方向、すなわち水平方向を、方向Xとする。そして、方向Xのうちの一方の方向を、方向X1とし、方向Xのうちの他方の方向、すなわちX1方向と反対の方向を、X2方向とする。また、方向Xに直交する方向であって、地表Gにも直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。そして、方向Zのうちの一方の方向を、Z1方向とし、方向Zのうちの他方の方向、すなわちZ1方向と反対の方向を、Z2方向とする。Z1方向は、鉛直方向の上方に向かう方向、すなわち地表Gと離れる方向であり、Z2方向は、鉛直方向の下方に向かう方向、すなわち地表G側に向かう方向である。
【0023】
図1に示すように、ケージング10は、延在方向Eに沿って一方の端部10Bから他方の端部10Cまで延在し、内部に空間が設けられる筒状の部材である。ケージング10は、円筒状の部材であるが、端部10B側が縮径されている。ケージング10は、縮径されていない箇所の直径が例えば20cm以上50cm以下程度であるが、その大きさは任意である。延在方向Eは、ケージング10の軸方向である。延在方向Eは、端部10C側から端部10B側に向かうに従って、X1方向に対してZ2方向側に傾斜している。すなわち、ケージング10は、延在方向Eに沿った中心軸が、端部10B(方向X1側)に向かうに従って、Z2方向側に移動する(位置する)向きで、傾斜している。従って、ケージング10は、端部10Bが、端部10Cよりも、Z2方向側、すなわち鉛直方向の下方に位置している。ケージング10は、傾斜角度θが、20°以上90°以下であることが好ましく、30°以上45°以下であることがより好ましい。傾斜角度θは、ケージング10の延在方向Eに沿った中心軸の、水平方向X(地表G)に対する傾斜角度である。
【0024】
ケージング10は、端部10Bに対象物排出口30Bが開口しており、端部10Cに分離液排出口30Cが開口している。分離液排出口30Cは、スクリュー軸12が通る穴とは別の開口であり、スクリュー軸12よりも方向Z1側に設けられている。ただし、分離液排出口30Cは、スクリュー軸12よりも方向Z1側に設けられることに限られず、例えば端部10Cにおけるスクリュー軸12よりも方向Z2側に設けられていてもよく、スクリュー軸12と同じ位置に設けられて内部にスクリュー軸12を貫通可能になっていてもよい。また、分離液排出口30Cは、後述する分離液搬送区間K4におけるケージング10の外周面(側面)10Dに設けられていてもよい。すなわち、分離液排出口30Cは、対象物排出口30Bよりも端部10C側に位置していればよい。対象物排出口30Bは、分離液排出口30Cよりも、Z2方向側、すなわち鉛直方向の下方に位置している。本実施形態において、対象物排出口30Bは、スクリュー軸12が内部を貫通可能になっているが、スクリュー軸12が貫通しない構成であってもよい。
【0025】
ケージング10は、中間部10Aに、対象物投入口30Aが開口している。中間部10Aは、ケージング10の延在方向Eに沿った端部10Bと端部10Cとの間の箇所であり、言い換えれば、延在方向Eに沿った対象物排出口30Bと分離液排出口30Cとの間の箇所である。中間部10Aは、延在方向Eに沿ったケージング10の中央に位置しているが、延在方向Eに沿った端部10Bと端部10Cとの間の任意の位置にあてよい。例えば、ケージング10は、端部10Bから中間部10Aまでの延在方向Eに沿った長さが、延在方向Eに沿ったケージング10の全長に対し、30%以上90%以下であることが好ましい。対象物投入口30Aは、中間部10Aの位置におけるケージング10の外周面10Dに開口している。
【0026】
ケージング10は、このように、対象物投入口30A、対象物排出口30B、及び分離液排出口30Cが開口している筒状の部材である。ケージング10は、対象物投入口30A、対象物排出口30B、及び分離液排出口30C以外には、内部と外部とを連通する穴が形成されていないが、対象物投入口30A、対象物排出口30B、及び分離液排出口30C以外にも開口が形成されていてもよい。ただし、ケージング10は、メッシュ及びパンチングプレートなどのスクリーンとは異なり、全域にわたり多数の開口が形成される構造ではないといえる。
【0027】
スクリュー軸12は、円柱形状であり、ケージング10の内部に設けられて延在方向Eに沿って延在している。スクリュー軸12は、ケージング10の内部において、延在方向Eに沿ってケージング10を貫通するように設けられている。すなわち、スクリュー軸12の一方の端部12Bは、ケージング10の端部10B側に位置しており、ケージング10の端部10Bから、ケージング10の外側に突出している。同様に、スクリュー軸12の他方の端部12Cは、ケージング10の端部10C側に位置しており、ケージング10の端部10Cから、ケージング10の外側に突出している。スクリュー軸12は、端部12B又は端部12Cの少なくともいずれかが、軸受けによって軸支持されたモータ(いずれも図示せず)に連結されている。スクリュー軸12は、このモータが制御部26によって駆動されることにより、延在方向Eを軸中心として、方向Rに回転される。本実施形態では、方向Rは、端部12C側から見て、反時計回りの方向であるが、それに限られない。
【0028】
図1に示すように、第1スクリュー羽根14は、一方の端部14Bから他方の端部14Cまで、ケージング10の内部を、スクリュー軸12の外周面12aに螺旋状に延在するよう設けられている。端部14Bは、第1スクリュー羽根14の巻回が開始される位置であり、ケージング10の端部10B(対象物排出口30B)側の端部、すなわち方向X1側の端部である。端部14Bは、対象物投入口30A(中間部10A)よりも対象物排出口30B(端部10C)側に位置している。また、端部14Cは、第1スクリュー羽根14の巻回が終わる位置であり、ケージング10の端部10C(分離液排出口30C)側の端部、すなわち方向X2側の端部である。端部14Cは、対象物投入口30A(中間部10A)よりも分離液排出口30C(端部10C)側に位置している。第1スクリュー羽根14は、端部14Bから、延在方向Eを中心軸とした放射方向から見た場合に対象物投入口30Aと重なる箇所を経て、端部14Cまで延在する。
【0029】
第1スクリュー羽根14は、端部14Cから端部14Bに向かって、スクリュー軸12の回転方向である方向Rと反対方向に巻回されている。すなわち、スクリュー軸12の回転方向(方向R)が、端部12C側から見て反時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるZ巻き(右手)の螺旋状(スパイラル状)に設けられる。反対に、スクリュー軸12の回転方向(方向R)が、端部12C側から見て時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるS巻き(左手)の螺旋状に設けられる。第1スクリュー羽根14は、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。
【0030】
第1スクリュー羽根14の外周部14Sは、ケージング10の内周面との間に、間隙Hが生じるように構成されている。すなわち、第1スクリュー羽根14の外周部14Sは、ケージング10の内周面とは接触せず、間隙を隔てて離間している。この間隙は、微小な隙間であり、対象物Aの少なくとも一部の通過を抑制する(せき止める)程度の大きさとなっている。また、間隙は、分離液Cなどの液体成分が通過可能な大きさである。間隙は、具体的には、例えば1~2mm程度の隙間である。
【0031】
図1に示すように、第2スクリュー羽根16は、ケージング10の内部において、延在方向Eに沿ってスクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在する。第2スクリュー羽根16は、第1スクリュー羽根14に対して、延在方向Eに沿って所定間隔を隔ててずれた位置に設けられており、第1スクリュー羽根14と同じ巻回方向で巻回されている。第2スクリュー羽根16も、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。第2スクリュー羽根16は、一方の端部16Bから他方の端部16Cまで、螺旋状に延在する。端部16Bは、第2スクリュー羽根16の巻回が開始される位置であり、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Bと、対象物投入口30Aとの間に位置している。端部16Cは、第2スクリュー羽根16の巻回が終わる位置であり、延在方向Eにおいて、第2スクリュー羽根16の端部16Bと、対象物投入口30Aとの間に位置している。従って、第2スクリュー羽根16は、対象物投入口30Aよりも対象物排出口30B側に設けられ、延在方向Eを中心軸とした放射方向から見た場合に対象物投入口30Aと重なる箇所まで延在していない。
【0032】
第2スクリュー羽根16の外周部16Sは、ケージング10の内周面との間に、間隙が生じるように構成されている。すなわち、第2スクリュー羽根16の外周部16Sは、ケージング10の内周面とは接触せず、間隙を隔てて離間している。第2スクリュー羽根16の外周部16Sとケージング10の内周面との間の間隙は、第1スクリュー羽根14の外周部14Sとケージング10の内周面との間の間隙と同等の大きさとなっている。
【0033】
このように、第2スクリュー羽根16は、端部16Bから端部16Cまで延在しており、第1スクリュー羽根14は、端部14Bから端部14Cまで延在している。従って、第2スクリュー羽根16の端部16Bから端部16Cまでの区間(以下、この区間を対象物搬送区間K2とする)では、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との両方が設けられている。また、第2スクリュー羽根16の端部16Bから第1スクリュー羽根14の端部14Bまでの区間(以下、この区間を対象物排出区間K3とする)では、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられていない。また、第2スクリュー羽根16の端部16Cよりも分離液排出口30C(端部10C)側の区間、より具体的には第2スクリュー羽根16の端部16Cから後述の第2隔壁部20までの区間(以下、この区間を搬送促進区間K1とする)においても、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられていない。また、後述の第2隔壁部20から第1スクリュー羽根14の端部14Cまでの区間(以下、この区間を分離液搬送区間K4とする)においても、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられていない。
【0034】
搬送促進区間K1は、延在方向Eにおいて、対象物搬送区間K2と分離液搬送区間K4との間の区間である。搬送促進区間K1は、延在方向Eを中心軸としたケージング10の放射方向から見て、少なくとも一部の区間において、対象物投入口30Aに重なるように設定されている。言い換えれば、搬送促進区間K1は、少なくとも一部の区間が、延在方向Eにおいて、対象物投入口30Aと同じ位置となっている。搬送促進区間K1においては、延在方向Eにおいて隣り合う第1スクリュー羽根14同士の間に、前対象物A0が搬送される空間S1が形成される。なお、延在方向Eに沿った搬送促進区間K1の長さは、ケージング10の延在方向に沿った全長の20%以上60%以下であることが好ましい。
【0035】
対象物搬送区間K2は、搬送促進区間K1よりも、ケージング10の端部10B側、すなわち対象物排出口30B側の区間である。対象物搬送区間K2は、延在方向Eを中心軸としたケージング10の放射方向から見て、対象物投入口30Aに重ならず、延在方向Eにおいて、対象物投入口30Aよりも端部10B側に位置する。対象物搬送区間K2においては、対象物Aが搬送される第1空間S2aと、分離液Cが流入する第2空間S2bとが形成される。ここで、第2スクリュー羽根16の延在方向における一方の面16aと他方の面16bとは、延在方向Eにおいて、それぞれ第1スクリュー羽根14に対向する。この場合、第1空間S2aは、第2スクリュー羽根16の一方の面16aと、一方の面16aに対向する第1スクリュー羽根14との間に形成される。また、第2空間S2bは、第2スクリュー羽根16の他方の面16bと、他方の面16bに対向する第1スクリュー羽根14との間に形成される。なお、
図1では、端部16B側の面を一方の面16aとし、端部16C側の面を他方の面16bとしているが、それには限られず、端部16C側の面を一方の面16aとし、端部16B側の面を他方の面16bとしてもよい。延在方向Eに沿った対象物搬送区間K2の長さは、ケージング10の延在方向に沿った全長の30%以上60%以下であることが好ましい。
【0036】
対象物排出区間K3は、対象物搬送区間K2よりも、ケージング10の端部10B側、すなわち対象物排出口30B側の区間である。対象物排出区間K3は、延在方向Eを中心軸としたケージング10の放射方向から見て、対象物投入口30Aに重ならず、延在方向Eにおいて、対象物投入口30Aよりも端部10B側に位置する。対象物排出区間K3においては、延在方向Eにおいて隣り合う第1スクリュー羽根14同士の間に、対象物Aが搬送される空間S3が形成される。
【0037】
分離液搬送区間K4は、搬送促進区間K1よりも、ケージング10の端部10C側、すなわち分離液排出口30C側の区間である。分離液搬送区間K4は、延在方向Eを中心軸としたケージング10の放射方向から見て、対象物投入口30Aに重ならず、延在方向Eにおいて、対象物投入口30Aよりも端部10C側に位置する。分離液搬送区間K4においては、延在方向Eにおいて隣り合う第1スクリュー羽根14同士の間に、分離液Cが流入する空間S4が形成される。
【0038】
図2は、本実施形態に係るスクリュー軸の模式的な断面図である。
図1及び
図2に示すように、スクリュー軸12は、内部に分離液流路40が形成される、中空の軸状部材、すなわち筒状部材であるといえる。分離液流路40は、スクリュー軸12の内部において延在方向Eに沿って延在する開口(流路)であり、内部に分離液Cが流れる。
【0039】
また、
図1に示すように、スクリュー軸12は、分離液流入口42と、分離液排出口44とが形成される。分離液流入口42は、スクリュー軸12の外周面12aに開口して、分離液流路40と連通する開口である。分離液流入口42は、分離液排出口44よりもスクリュー軸12の端部12B側に設けられる。分離液流入口42は、対象物搬送区間K2におけるスクリュー軸12の外周面12aに開口する。さらに言えば、分離液流入口42は、対象物搬送区間K2の第2空間S2bにおけるスクリュー軸12の外周面12aに開口する。分離液流入口42は、分離液流路40とケージング10の内部とを連通し、ケージング10の内部の分離液Cを分離液流路40に流入させる。対象物搬送区間K2には、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とが設けられ、分離液流入口42が開口しているといえる。
【0040】
本実施形態においては、分離液流入口42として、分離液流入口42A、42Bが設けられる。分離液流入口42Aは、分離液流入口42Bよりも端部12B側に設けられている。分離液流入口42Aは、対象物搬送区間K2の第2空間S2bにおいて、対象物搬送区間K2と対象物排出区間K3との境界位置の近傍に設けられることが好ましい。分離液流入口42Aは、第2空間S2bにおいて端部16Bの近傍に設けられることが好ましい。また、分離液流入口42Bは、対象物搬送区間K2の第2空間S2bにおいて、対象物搬送区間K2と搬送促進区間K1との境界位置の近傍に設けられることが好ましい。分離液流入口42Bは、後述の第1隔壁部18よりも端部16B側であって、第1隔壁部18の近傍に設けられることが好ましい。ただし、分離液流入口42の数は、2つに限られず任意であり、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0041】
分離液排出口44は、スクリュー軸12に開口して、分離液流路40と連通する開口である。分離液排出口44は、分離液流入口42よりもスクリュー軸12の端部12C側に設けられている。分離液排出口44は、搬送促進区間K1よりも端部10C側(方向X2側)に開口している。分離液排出口44は、分離液流路40とケージング10の内部とを連通し、分離液流路40内の分離液Cを分離液流路40外に流出させる。
【0042】
本実施形態においては、分離液排出口44として、分離液排出口44A、44Bが設けられる。分離液排出口44Aは、スクリュー軸12の端部12Cに開口する。分離液排出口44Aが形成される端部12Cは、ケージング10の外部に突出しているため、分離液流路40内の分離液Cは、分離液排出口44Aから、ケージング10の外部に排出される。分離液排出口44Bは、分離液排出口44Aよりも端部12B側に設けられ、スクリュー軸12の外周面12aに開口する。分離液排出口44Bは、分離液搬送区間K4におけるスクリュー軸12の外周面12aに開口している。分離液排出口44Bは、後述の第2隔壁部20よりも端部10C側(方向X2)側であって、第2隔壁部20の近傍に設けられることが好ましい。すなわち、分離液排出口44Bは、分離液搬送区間K4と搬送促進区間K1との境界位置の近傍に設けられることが好ましい。分離液流路40内の分離液Cは、分離液排出口44Bから、ケージング10の内部の分離液搬送区間K4に排出される。分離液搬送区間K4には、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられず、分離液排出口44Bが開口しているといえる。なお、搬送促進区間K1及び対象物排出区間K3には、第1スクリュー羽根14が設けられて第2スクリュー羽根16が設けられず、また、分離液流入口42と分離液排出口44とが設けられていない。
【0043】
スクリュー軸12は、分離液排出口44Aに加え、ケージング10の内部に連通する分離液排出口44Bを設けることで、洗浄時に、後述の第2隔壁部20に堆積した固形成分を適切に排出することができる。また、分離液排出口44A、44Bを設けることで、分離液Cの出口を複数確保することができるため、スクリュー軸12を細くして、汚泥の滞留量を増やすこともできる。ただし、分離液排出口44の数は2つに限られず任意であり、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0044】
分離液排出口44の径は、分離液流入口42の径より小さいことが好ましい。分離液流入口42の径よりも分離液排出口44の径を小さくすることで、分離液流入口42近傍における分離液Cの流れをなだらかにして分離液Cを適切に分離液流路40内に取り込みつつ、分離液排出口44近傍の分離液Cの流速を高くして分離液流路40から分離液Cを適切に排出できる。
【0045】
このように、本実施形態においては、分離液排出口として、ケージング10に開口する分離液排出口30Cと、スクリュー軸12に開口する分離液排出口44A、44Bとが設けられているが、それらの全てが設けられることに限られず、それらのうちの一部のみが設けられていてもよい。例えば、分離液排出口30Cと分離液排出口44Aとが設けられて分離液排出口44Bが設けられなくてもよいし、分離液排出口30Cと分離液排出口44Bとが設けられて分離液排出口44Aが設けられなくてもよいし、分離液排出口44A、44Bが設けられて分離液排出口30Cが設けられなくてもよい。なお、分離液排出口44Aを設けない場合には、分離液排出口44Aを設ける場合と比べて分離液排出口44Bの数を増やすことが好ましく、特に、端部12C側にも設けることが好ましい。
【0046】
また、
図2に示すように、分離液流路40には、閉塞部46が設けられている。閉塞部46は、分離液流路40内に設けられ、延在方向Eに直交する方向に延在する壁であり、分離液流路40を閉塞(遮断)する。閉塞部46は、分離液流路40内を流れる分離液Cをせき止めて、分離液Cが分離液流路40内において、閉塞部46が設けられた位置の反対側に流出することを抑制する。閉塞部46は、延在方向Eにおいて、分離液流入口42よりも端部12B側に設けられている。さらに言えば、閉塞部46は、分離液流入口42Aよりも端部12B側であって分離液流入口42Aの近傍に設けられることが好ましい。閉塞部46の近傍に分離液流入口42Aを設けることで、洗浄時に、閉塞部46に堆積した固形成分を適切に排出することができる。
【0047】
図1に示すように、第1隔壁部18は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第2スクリュー羽根16までにわたって設けられる壁状の部材であり、分離液Cの流出を抑制するバッフルである。第1隔壁部18は、延在方向Eにおいて、分離液流入口42Bと対象物投入口30Aとの間に設けられており、本実施形態では第2スクリュー羽根16の端部16Cに設けられている。第1隔壁部18は、搬送促進区間K1と対象物搬送区間K2とを区切るものであり、搬送促進区間K1と対象物搬送区間K2との境界位置に設けられているともいえる。
【0048】
第2隔壁部20は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第1スクリュー羽根14までにわたって設けられる壁状の部材であり、分離液Cの流出を抑制するバッフルである。第2隔壁部20は、延在方向Eにおいて、分離液排出口44Bと対象物投入口30Aとの間に設けられている。第2隔壁部20は、搬送促進区間K1と分離液搬送区間K4とを区切るものであり、搬送促進区間K1と分離液搬送区間K4との境界位置に設けられているといえる。
【0049】
第1隔壁部18と第2隔壁部20とはこのような位置に設けられているため、第2スクリュー羽根16の端部16Bから第1隔壁部18までの区間が対象物搬送区間K2であり、第1隔壁部18から第2隔壁部20までの区間が搬送促進区間K1であり、第2隔壁部20から第1スクリュー羽根14の端部14Cまでの区間が、分離液搬送区間K4であるといえる。
【0050】
なお、第2隔壁部20は、必須の構成でない。第2隔壁部20が設けられない場合でも、例えば、搬送促進区間K1の空間S1に堆積した対象物A上に分離液Cが溜まり、対象物A上に溜まった分離液Cを、分離液排出口30Cから排出することができる。
【0051】
投入部22は、対象物投入口30Aに接続されており、ケージング10内への前対象物A0の投入量を制御する装置である。投入部22は、例えば開閉弁であり、開くことで前対象物A0をケージング10内に投入し、閉じることで前対象物A0のケージング10内への投入を停止する。また、投入部22は、開度を調整することで、前対象物A0の投入量を調整することも可能である。投入部22は、制御部26の制御により、前対象物A0のケージング10内への投入量を制御する。ただし、投入部22は、前対象物A0のケージング10内への投入量を制御するものであれば、開閉弁に限られず、例えば汚泥を搬送するポンプであってもよい。
【0052】
排出ポンプ24は、排出管24Aを介して、ケージング10の対象物排出口30Bに接続されている。排出管24Aは、対象物排出口30Bに接続されている管である。排出管24Aは、対象物排出口30Bからの対象物Aが導入される。排出ポンプ24は、排出管24Aに設けられるポンプである。排出ポンプ24は、停止時には、ケージング10の端部10Bまで移動してきた対象物Aをせき止める。また、排出ポンプ24は、駆動時には、排出管24Aを吸引することにより、ケージング10内の対象物Aを、対象物排出口30Bから強制的に排出することができる。排出ポンプ24は、制御部26の制御により、ケージング10内の対象物Aの排出量を調整することが可能となっている。ただし、排出ポンプ24は必須の構成でなく、排出ポンプ24により対象物Aを強制的に排出せずに重力により排出させてもよい。
【0053】
傾斜調整部25は、ケージング10に取付けられている。傾斜調整部25は、制御部26の制御により、ケージング10の傾斜角度θを変化させる。ただし、傾斜調整部25は必須の構成でなく、傾斜角度θは一定であってもよい。
【0054】
制御部26は、スクリュー型分離装置1の動作を制御する制御装置である。制御部26は、モータによるスクリュー軸12の回転と、投入部22による前対象物A0の投入量と、排出ポンプ24の動作、すなわちケージング10内の対象物Aの排出量と、傾斜調整部25による傾斜角度θと、の少なくとも1つを制御する。制御部26は、例えば、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータであり、CPUの演算により、スクリュー型分離装置1の動作を制御する。
【0055】
(スクリュー型分離装置の動作)
次に、上述のように構成されたスクリュー型分離装置1の動作および対象物の挙動について説明する。
図3は、本実施形態に係るスクリュー型分離装置の動作を説明するための模式図である。
【0056】
図3に示すように、制御部26は、投入部22を制御して、対象物投入口30Aから、ケージング10内に前対象物A0を投入する。対象物投入口30Aの位置は搬送促進区間K1に重なるため、対象物投入口30Aからの前対象物A0は、搬送促進区間K1の空間S1内に投入される。ここで、搬送促進区間K1には、空間S1を覆うカバー部が設けられていないため、空間S1は対象物投入口30Aと連通して、カバー部によって対象物投入口30Aと空間S1とが遮断されることはない。制御部26は、スクリュー軸12を回転させる。従って、空間S1内に投入された前対象物A0は、重力と、搬送促進区間K1内の第1スクリュー羽根14の面に押されることとにより、液体成分が分離されつつ、対象物排出口30B側に移動する。なお、空間S1内の前対象物A0の固形成分は、空間S1と空間S4とを遮断する第2隔壁部20により、空間S4への侵入がせき止められる。
【0057】
ここで、搬送促進区間K1の空間S1は、対象物搬送区間K2の第1空間S2aと連通しており、第1隔壁部18により、対象物搬送区間K2の第2空間S2bと遮断されている。従って、空間S1内を対象物排出口30B側に移動した前対象物A0は、空間S1と第2空間S2bとを遮断する第1隔壁部18により、第2空間S2bへの流入がせき止められて、対象物搬送区間K2の第1空間S2aに流入する。対象物搬送区間K2の第1空間S2aに流入した前対象物A0は、重力と、搬送促進区間K1内の第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の面に押されることとにより、更に液体成分が分離されつつ、第1空間S2aに連通する対象物排出区間K3の空間S3内に流入する。空間S3内に流入した前対象物A0は、液体成分が分離された対象物Aとして、対象物排出口30B及び排出管24Aを通って、ケージング10の外部に排出される。ここで、制御部26は、排出ポンプ24を駆動させている。従って、空間S3に流入した対象物Aは、排出ポンプ24の駆動により、対象物排出口30B及び排出管24Aを通って、ケージング10の外部に強制的に排出される。
【0058】
一方、搬送促進区間K1で前対象物A0から分離された液体成分は、分離液Cとして、重力により対象物排出口30B側に移動する。搬送促進区間K1で対象物排出口30B側に移動した分離液Cは、第1スクリュー羽根14、第2スクリュー羽根16、及び第1隔壁部18の外周部と、ケージング10の内周面との間の間隙を通って、対象物搬送区間K2の第2空間S2bに流入する。対象物搬送区間K2の第1空間S2aや、対象物排出区間K3の空間S3で分離された分離液Cも、この間隙を通って、対象物搬送区間K2の第2空間S2bに流入する。第2空間S2bに流入した分離液Cは、第2空間S2bに開口する分離液流入口42から、スクリュー軸12の分離液流路40内に流入する。なお、第2空間S2bの分離液Cは、第1隔壁部18により、空間S1への侵入がせき止められる。
【0059】
分離液流路40内では分離液Cが溜まってゆき、水位が分離液排出口44に達すると、分離液流路40内の分離液Cは、分離液排出口44A、44Bから分離液流路40の外部に排出される。分離液流路40内の分離液Cは、分離液排出口44Aから、ケージング10の外部に排出される。また、分離液排出口44Bから排出された分離液Cは、分離液搬送区間K4の空間S4内に流入し、空間S4に連通する分離液排出口30Cから、ケージング10の外部に排出される。より詳しくは、空間S4に流入した分離液Cは、第2隔壁部20により空間S4への流入がせき止められ、空間S4内に溜まってゆき、水位が分離液排出口30Cに達すると、分離液排出口30Cから排出される。なお、空間S1で生成した分離液Cの一部は、第2隔壁部20の外周面とケージング10の内周面との間に形成される間隙から空間S4に流入して、空間S4内に溜まる。空間S4内の分離液Cは、この間隙から搬送促進区間K1の空間S1に流出する可能性もあるが、空間S1から対象物搬送区間K2の第1空間S2aに流入するため、分離液流路40を通って、再度、空間S4に戻ってくる。
【0060】
スクリュー型分離装置1は、以上説明したように、対象物Aと分離液Cとを分離して、外部に排出する。以下、スクリュー型分離装置1による効果を説明する。対象物投入口30Aに重畳する搬送促進区間K1に、固体成分が流入する空間(ここでは第1空間S2a)と液体成分が流入する空間(ここでは第2空間S2b)とを設けた場合、液体成分が固体成分に混じらないように、液体成分が流入する空間に固体成分の投入を防ぐカバー部を設ける場合がある。この場合、カバー部に固体成分が堆積して、固形物によって装置が詰まったりすることにより、操作性に問題が生じるおそれがある。それに対し、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、対象物投入口30Aに重畳する搬送促進区間K1の空間S1を、液体成分と液体成分の両方が流入可能な空間とする。従って、空間S1に、固体成分の侵入を防止するカバー部を設ける必要がなくなり、操作性の低下を抑制することが可能となる。また、カバー部を設けないことで、スクリュー軸12の回転の影響を受けずに前対象物A0の投入量を一定に保つことが可能となり、対象物投入口30Aの面積を広くとって前対象物A0の詰りを抑制することも可能となるため、前対象物A0の投入工程も改善することができる。
【0061】
また、スクリュー型分離装置1は、分離液Cをケージング10の端部10C側に搬送して外部に排出するが、分離液Cをケージング10の端部10Cに導く過程で、分離液Cが空間S1を通ってしまうと、分離液Cが空間S1内の前対象物A0と混ざってしまい、分離効率が低下してしまうおそれがある。それに対し、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、分離液Cを導く分離液流路40をスクリュー軸12内に形成するとともに、分離液Cが流入する第2空間S2bに、分離液流入口42を形成する。従って、分離液Cをケージング10の端部10Cに導く過程で、分離液Cは、分離液流入口42から分離液流路40を通って外部に排出されることとなり、空間S1を通ることが抑制される。従って、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1によると、分離液Cと前対象物A0とが混じることを抑制して、分離効率の低下も抑制できる。
【0062】
また、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、搬送促進区間K1を設けることで、前対象物A0が2つのスクリュー羽根を備える対象物搬送区間K2に到達する前に、予備的に脱水を行う事も可能となり、分離効率を向上させることができる。さらに、搬送促進区間K1を設けることで、前対象物A0の滞留時間を長くすることもできる。
【0063】
なお、スクリュー型分離装置1を洗浄する際には、例えば、分離液排出口44Aから、洗浄用の液体(水など)を、分離液流路40内に流入させる。洗浄用の液体は、分離液排出口44Bからケージング10内に流入して、分離液排出口44Bの近傍の第2隔壁部20に堆積した固形成分を洗い流す。また、洗浄用の液体は、分離液流路40内の閉塞部46に堆積した固形成分と共に、分離液流入口42Bからケージング10内に流出して、閉塞部46に堆積した固形成分を洗い流す。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、ケージング10と、スクリュー軸12と、第1スクリュー羽根14と、第2スクリュー羽根16とを備える。ケージング10は、一方の端部10B側に設けられて対象物Aを排出する対象物排出口30Bと、対象物排出口30Bよりも他方の端部10C側に設けられて前対象物A0が投入される対象物投入口30Aと、が設けられる。スクリュー軸12は、ケージング10の内部に設けられて延在方向Eに沿って延在し、分離液Cが流れる分離液流路40が内部に設けられる。第1スクリュー羽根14は、スクリュー軸12の外周面12aに螺旋状に延在する。第2スクリュー羽根16は、第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eに沿って所定間隔を隔てるようにスクリュー軸12の外周面12aに螺旋状に延在する。搬送促進区間K1においては、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とのうち第1スクリュー羽根14が設けられ、対象物搬送区間K2においては、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とが設けられる。対象物搬送区間K2におけるスクリュー軸12の外周面12aには、分離液流路40と連通する分離液流入口42が設けられる。なお、搬送促進区間K1は、ケージング10の放射方向から見て対象物投入口30Aに重畳する箇所を含む区間であり、対象物搬送区間K2は、搬送促進区間K1よりも対象物排出口30B側の区間である。このスクリュー型分離装置1は、対象物投入口30Aに重畳する搬送促進区間K1において第1スクリュー羽根14のみを設けることで、液体成分と液体成分の両方が流入可能な区間とする。これにより、固体成分の侵入を防止するカバー部を設ける必要がなくなり、操作性の低下を抑制することが可能となる。また、分離液Cを導く分離液流路40をスクリュー軸12に分離液流路40と分離液流入口42とを形成することで、分離液Cは、分離液流入口42から分離液流路40を通って外部に排出されることとなり、前対象物A0との接触が抑制されて、分離効率の低下も抑制できる。
【0065】
また、第2スクリュー羽根16は、対象物搬送区間K2において、第1スクリュー羽根14に対向する2面のうち一方の面16aと一方の面16aに対向する第1スクリュー羽根14との間に、対象物Aが搬送される第1空間S2aを形成し、2面のうち他方の面16bと他方の面16bに対向する第1スクリュー羽根14との間に、分離液Cが流入する第2空間S2bを形成する。分離液流入口42は、第2空間S2bに開口する。このスクリュー型分離装置1は、第2空間S2bに分離液流入口42を設けることで、分離液Cを分離液流路40に適切に導入することが可能となり、分離液Cと前対象物A0との接触を抑制して、分離効率の低下を抑制することができる。
【0066】
また、スクリュー型分離装置1は、分離液流入口42よりも対象物投入口30A側に、分離液Cの搬送促進区間K1への流入をせき止める第1隔壁部18が設けられる。スクリュー型分離装置1は、第1隔壁部18を設けることで、分離液Cと前対象物A0との接触を抑制して、分離効率の低下を抑制することができる。
【0067】
また、スクリュー型分離装置1は、対象物投入口30Aよりも端部10C側におけるスクリュー軸12に、分離液流路40と連通する分離液排出口44が設けられる。スクリュー型分離装置1は、スクリュー軸12を回転させることで、対象物投入口30Aから投入された前対象物A0を、搬送促進区間K1、及び対象物搬送区間K2の第1空間S2aを経由して対象物排出口30Bまで移動させつつ脱水して、脱水した対象物Aを対象物排出口30Bから排出する。また、スクリュー型分離装置1は、分離液Cを、分離液流入口42から分離液流路40内に流入させ、分離液流路40内の分離液Cを分離液排出口44から排出する。スクリュー型分離装置1は、分離液排出口44を設けることで、分離液Cと前対象物A0との接触を抑制しつつ、分離液Cを排出することができる。
【0068】
また、スクリュー型分離装置1は、分離液排出口44よりも対象物投入口30A側に、分離液Cの搬送促進区間K1への流入をせき止める第2隔壁部20が設けられる。スクリュー型分離装置1は、第2隔壁部20を設けることで、分離液Cと前対象物A0との接触を抑制して、分離効率の低下を抑制することができる。
【0069】
また、スクリュー型分離装置1は、対象物搬送区間K2よりも端部10B側の区間である対象物排出区間K3において、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とのうち第1スクリュー羽根14が設けられる。対象物排出区間K3を第1スクリュー羽根14のみの区間とすることで、対象物Aを適切に排出することができる。
【0070】
次に、
図1を参照して、スクリュー羽根のピッチについて説明する。スクリュー羽根のピッチとは、延在方向Eで隣り合うスクリュー羽根同士の間の距離である。第1スクリュー羽根14のピッチが延在方向Eにおいて等しい場合、対象物排出区間K3と搬送促進区間K1と分離液搬送区間K4とにおいては、スクリュー羽根のピッチが、第1スクリュー羽根14のピッチP1(延在方向Eで隣り合う第1スクリュー羽根14同士の間の距離)となり、互いに等しくなる。一方、対象物搬送区間K2においては、第2スクリュー羽根16も設けられるため、対象物搬送区間K2におけるスクリュー羽根のピッチは、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とのピッチP2(延在方向Eで隣り合う第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との間の距離)となる。従って、この場合、対象物排出区間K3におけるスクリュー羽根のピッチが、対象物搬送区間K2におけるスクリュー羽根のピッチより広くなってしまう。この場合、対象物搬送区間K2から対象物排出区間K3にかけて、対象物Aが搬送される空間の広さが変化してしまい、対象物Aを安定的に搬送できなくなるおそれがある。
【0071】
それに対し、本実施形態に係るスクリュー型分離装置1は、対象物排出区間K3におけるスクリュー羽根のピッチを、対象物搬送区間K2におけるスクリュー羽根のピッチと等しくすることで、対象物Aを安定的に搬送することを可能としている。具体的には、本実施形態に係る第1スクリュー羽根14は、対象物排出区間K3におけるピッチP1bを、対象物排出区間K3以外の区間(対象物搬送区間K2と搬送促進区間K1と分離液搬送区間K4)におけるピッチP1aよりも、短くしている。さらに言えば、第1スクリュー羽根14の対象物排出区間K3におけるピッチP1bは、対象物搬送区間K2における第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との間のピッチP2と等しいことが好ましい。これにより、スクリュー型分離装置1は、対象物排出区間K3の空間S3の広さを、対象物搬送区間K2の第1空間S2aの広さと同じにすることが可能となり、対象物Aが搬送される空間の広さを一定に保って、対象物Aを安定的に搬送させることが可能となる。
【0072】
(変形例)
次に、変形例について説明する。
図4は、変形例に係るスクリュー型分離装置の一部断面図である。変形例においては、上述の実施形態と同様に、対象物排出区間K3におけるピッチP1bを対象物搬送区間K2におけるピッチP1aより短くするが、上述の実施形態と異なり、対象物投入口30Aと重畳する区間において第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方を設け、スクリュー軸12に分離液流路40を設けない。変形例において、上述の実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0073】
図4に示すように、変形例に係るスクリュー型分離装置1aにおいては、第2スクリュー羽根16は、端部16Bから、延在方向Eを中心軸とした放射方向から見た場合に対象物投入口30Aと重なる箇所を経て、端部16Cまで延在する。変形例においては、第2スクリュー羽根16の端部16Bから端部16Cまでの対象物搬送区間K2aにおいて、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方が設けられている。対象物搬送区間K2aは、延在方向Eを中心軸としたケージング10の放射方向から見て、対象物投入口30Aに重なっている。変形例に係る対象物搬送区間K2aは、対象物投入口30Aに重なっているため、搬送促進区間K1aを兼ねているということもできる。変形例における第2スクリュー羽根16の端部16Bから第1スクリュー羽根14の端部14Bまでの対象物排出区間K3aと、第2隔壁部20から第1スクリュー羽根14の端部14Cまでの分離液搬送区間K4aとは、上述の実施形態と同様である。変形例に係るスクリュー軸12は、分離液流路40、分離液流入口42、及び分離液排出口44が設けられない。
【0074】
変形例においては、対象物投入口30Aから投入された前対象物A0は、対象物搬送区間K2aの第1空間S2aに投入され、第1空間S2a内において脱水されつつ対象物排出区間K3aの空間S3に流入し、対象物Aとして対象物排出口30Bから排出される。また、第1空間S2aにおいて前対象物A0から分離された分離液Cは、間隙を通って第2空間S2bに流入し、第2空間S2bから分離液搬送区間K4aの空間S4を通って、分離液排出口30Cから排出される。なお、第2空間S2bの外周には、対象物投入口30Aから遮断するためのカバー部が設けられてもよい。
【0075】
変形例においても、対象物排出区間K3aにおける第1スクリュー羽根14のピッチP1bは、対象物搬送区間K2a(搬送促進区間K1a)及び分離液搬送区間K4aにおける第1スクリュー羽根14のピッチP1aより短く、対象物搬送区間K2における第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とのピッチP2と同じ長さとなる。従って、変形例のような構成であっても、対象物排出区間K3aの空間S3の広さを、対象物搬送区間K2aの第1空間S2aの広さと同じにすることが可能となり、対象物Aが搬送される区間を一定に保って、対象物Aを安定的に搬送させることが可能となる。
【0076】
このように、変形例においては、対象物排出口30B側の対象物排出区間K3aにおいて、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とのうち、第1スクリュー羽根14が設けられ、対象物排出区間K3aよりも対象物投入口30A側の対象物搬送区間K2aにおいて、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との両方が設けられる。第1スクリュー羽根14は、対象物排出区間K3aにおけるピッチP1bが、対象物搬送区間K2aにおけるピッチP1aよりも短い。このようにピッチP1bを短くすることで、対象物排出区間K3aの空間S3の広さが、対象物搬送区間K2aの第1空間S2aの広さから大きく変化することが抑制され、対象物Aを安定的に搬送させることが可能となる。また、第1スクリュー羽根14の対象物排出区間K3aにおけるピッチP1bを、対象物搬送区間K2aにおいて延在方向Eに隣り合う第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との間の距離(ピッチP2)と同じ長さにする。これにより、対象物排出区間K3aの空間S3の広さを、対象物搬送区間K2aの第1空間S2aの広さと同じにすることが可能となり、対象物Aを安定的に搬送させることが可能となる。
【0077】
(第1の実施例)
次に、上述したスクリュー型分離装置1を備えた第1の実施例としての排水処理システムについて説明する。
図5は、第1の実施例による排水処理システムの一部を示す構成図である。なお、以降の実施例及び変形例は、スクリュー型分離装置1aにも適用可能である。
【0078】
図5に示すように、この第1の実施例による排水処理システム100は、沈殿池101、沈殿池101の前段に配設された前段設備102、沈殿池101の後段に配設された後段設備103、引き抜きポンプ104、およびスクリュー型分離装置1を備える。沈殿池101は、前段設備102から供給された被処理水を、分離液と汚泥とに沈降分離する固液分離槽である。前段設備102は、例えば下水などの有機性排水を処理する、反応槽などの種々の処理槽を有して構成される設備である。後段設備103は、例えば焼却炉等を備え、スクリュー型分離装置1から排出された汚泥(濃縮汚泥)に対して、焼却処理や廃棄処理を行う設備である。引き抜きポンプ104は、沈殿池101から汚泥を引き抜いてスクリュー型分離装置1に供給するための汚泥引き抜き手段である。スクリュー型分離装置1は、沈殿池101よりも鉛直方向の上方(地表から離れる方向)に設けられている。
【0079】
この排水処理システム100においては、前段設備102から排出された被処理水の少なくとも一部は、沈殿池101に供給される。沈殿池101においては、供給された被処理水を分離液と汚泥とに沈降分離させる。そして、分離された汚泥は、引き抜きポンプ104によって沈殿池101の下部から引き抜かれて、スクリュー型分離装置1に供給される。引き抜かれた汚泥は、対象物投入口30A(
図1参照)を通じて、前対象物A0としてスクリュー型分離装置1の内部に搬入される。
【0080】
スクリュー型分離装置1においては、上述した実施形態と同様にして分離液Cを分離させる。分離された分離液Cは、沈殿池101に返送される。分離された後(脱水された後)の対象物Aは、濃縮汚泥として後段設備103に搬送され、焼却処理や廃棄処理が行われる。以上により、この第1の実施例による排水処理が実行される。
【0081】
以上説明した第1の実施例によれば、上述した実施形態によるスクリュー型分離装置1を用いて、沈殿池101から引き抜いた前対象物A0を濃縮し、分離液Cを沈殿池101に返送している。これにより、対象物Aの濃縮濃度を改善できるとともに、沈殿池101の維持管理性を大幅に改善できる。すなわち、沈殿池101内において多くの場合、中間水が存在する。このような中間水が存在すると、汚泥(前対象物A0)の引き抜き時に汚泥(前対象物A0)よりも水分の方が優先的に引き抜かれてしまう。そのため、汚泥(前対象物A0)を圧縮しても濃縮濃度が増加しないという問題がある。この問題に対して上述した第1の実施例によれば、沈殿池101の後段にスクリュー型分離装置1を配設していることにより、引き抜いた汚泥(前対象物A0)から中間水だけを分離して沈殿池101に返送できる。そのため、汚泥(前対象物A0)の濃縮濃度を向上させることができるので、従来のように沈殿池101内において中間水が含まれた状態であっても汚泥(前対象物A0)の濃縮濃度を向上できる。その上、上述したスクリュー型分離装置1は低コストで製造できるので、排水処理システム100も低コストで実現できる。さらに、汚泥(前対象物A0)がケージング10内において目詰まりした場合であっても、スクリュー軸12を方向Dに対して逆回転させれば、目詰まりを容易に除去することができる。
【0082】
(第1の実施例の第1変形例)
次に、上述した第1の実施例の変形例について説明する。
図6は、第1の実施例の変形例を説明するための沈殿池を示す略線図である。
図6に示すように第1変形例においては、沈殿池101の下部に一実施形態によるスクリュー型分離装置1を設ける。そして、沈殿池101の下部に沈降した汚泥を、漏斗などの汚泥回収装置(図示せず)を用いて、対象物投入口30A(
図1参照)を通じてスクリュー型分離装置1の内部に、前対象物A0として供給する。スクリュー型分離装置1は、濃縮した汚泥(対象物A)を外部に排出し、分離した分離液Cを配管(図示せず)などによって内部または外部を通じて、沈殿池101内に返送する。なお、分離液Cを外部に排出することも可能である。その他の構成は、上述した第1の実施例と同様である。
【0083】
(第1の実施例の第2変形例)
また、第2変形例として、スクリュー型分離装置1の前段に沈殿池101などの重力沈降槽を設けた場合、沈殿池101内に、汚泥を掻き寄せるレーキの上辺に直立させた棒状部材からなる、ピケットフェンス(図示せず)を設けることも可能である。ピケットフェンスを設けることにより、沈殿池101内において汚泥の沈降を促進でき、いわゆる凝集が促進される。したがって、スクリュー型分離装置1による対象物Aと分離液Cとの分離をより一層効率化でき、固液分離性を大きく改善できる。
【0084】
(第2の実施例)
次に、上述した一実施形態によるスクリュー型分離装置1を備えた第2の実施例としての排水処理システムについて説明する。
図7は、第2の実施例による排水処理システムの一部を示す構成図である。
【0085】
図7に示すように、この第2の実施例による排水処理システム200は、反応槽201、反応槽201の前段に配設された前段設備202、反応槽201の後段に配設された沈殿池204、引き抜きポンプ203a,203b、およびスクリュー型分離装置1を備える。スクリュー型分離装置1は、反応槽201及び沈殿池204よりも鉛直方向の上方(地表から離れる方向)に設けられている。
【0086】
反応槽201は、例えば複数の生物反応槽から構成される。反応槽201を構成する生物反応槽は、例えば嫌気槽、無酸素槽、および好気槽などの種々の生物反応槽である。前段設備202は、例えば下水などの有機性排水を処理する、沈砂池や傾斜板沈殿池などを有して構成される設備である。引き抜きポンプ203aは、反応槽201から活性汚泥などの汚泥を引き抜いて、前対象物A0としてスクリュー型分離装置1に供給するための汚泥引き抜き手段である。同様に引き抜きポンプ203bは、反応槽201から汚泥を引き抜いて、後段の沈殿池204に供給するための汚泥引き抜き手段である。沈殿池204は、反応槽201やスクリュー型分離装置1からそれぞれ供給される被処理水や分離液Cを、分離液Cと汚泥(対象物A)とに沈降分離する固液分離槽である。
【0087】
この第2の実施例による排水処理システム200においては、前段設備202から排出された被処理水の少なくとも一部は、反応槽201に供給される。反応槽201においては、被処理水に対して硝化処理や脱窒処理などの生物処理を行う。反応槽201内の活性汚泥は、引き抜きポンプ203a,203bにより引き抜かれる。引き抜きポンプ203aにより引き抜かれた汚泥は、前対象物A0としてスクリュー型分離装置1に供給され、対象物投入口30A(
図1参照)を通じて内部に搬入される。
【0088】
スクリュー型分離装置1においては、搬入された汚泥(前対象物A0)が濃縮されて分離液Cが分離される。分離された分離液Cは、後段の沈殿池204に供給される。一方、反応槽201から引き抜きポンプ203bにより引き抜かれた汚泥および被処理水は、沈殿池204に供給される。沈殿池204においては、第1の実施例と同様に重力沈降による固液分離処理が実行される。以上により、この第2の実施例による排水処理が実行される。
【0089】
以上説明した第2の実施例によれば、スクリュー型分離装置1を用いて、反応槽201から汚泥(前対象物A0)を引き抜いて圧縮濃縮し、圧縮濃縮した汚泥(対象物A)を反応槽201に返送するとともに、分離液Cを固液分離槽としての沈殿池204に供給している。これにより、次のような問題点を解決することができる。
【0090】
すなわち、従来、沈殿池204から反応槽201に向けて汚泥(対象物A)を返送するための返送ポンプ(図示せず)の稼働に使用する電力は極めて大きかった。これに対し、この第2の実施例によれば、スクリュー型分離装置1を用いて圧縮濃縮した汚泥(対象物A)を反応槽201に返送できるので、汚泥(対象物A)の返送に要する電力を大幅に低減できる。さらに、このスクリュー型分離装置1を用いることによって、十分に固液分離を行うことができる。これにより、沈殿池204における汚泥の引き抜きの頻度を低減することができるので、排水処理システム200において電力を削減して省エネルギー化を図ることができる。
【0091】
また、従来、反応槽201内に分離膜を設ける構成の場合、初期コストおよび設備のメンテナンスに要する負担が大きいという問題があった。これに対し、分離膜に代えて、低コストのスクリュー型分離装置1を導入することができるので、初期のコストを低減できる。また、スクリュー型分離装置1の維持管理が容易であることから、メンテナンスの負担を低減できるので、メンテナンスコストを低減できる。
【0092】
さらに、この第2の実施例によれば、反応槽201を高MLSS化することができるので、沈殿池204における負荷を低減でき、反応槽201からの汚泥の引き抜きに使用する引き抜きポンプ203a,203bの消費電力を低減することができる。したがって、排水処理システム200において省エネルギー化を図ることができる。
【0093】
また、各実施例において、スクリュー型分離装置1に投入される汚泥(前対象物A0)は、凝集剤が添加されたものではなく、凝集剤を含有しない。すなわち、沈殿池101の汚泥には、凝集剤が添加されておらず、反応槽201の汚泥にも、凝集剤が添加されていない。このスクリュー型分離装置1は、重力により分離を行うため、凝集剤を含有しない汚泥に対しても、分離効率の低下を抑制することができる。ただし、上述のように、汚泥(前対象物A0)は、凝集剤が添加されたものであってもよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0095】
上述の実施形態においては、スクリュー軸12を円柱状の軸から構成しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではない。例えば、スクリュー軸12を、ケージング10の端部10Cから端部10B側に向けて径が徐々に大きくなる、いわゆる拡径形状にすることも可能である。
【0096】
また、上述の実施形態においては、汚泥を固形分と水分とに分離する固液分離装置を例にしているが、必ずしも汚泥の固液分離に限定されるものではなく、固体と液体とを分離する種々の方法に適用することも可能である。
【0097】
また、上述の実施形態において、分離液排出口30Cの位置は種々変更可能な構成にすることも可能である。
【0098】
また、上述の実施形態においては、分離液Cの移動は間隙を通じて行われているが、必ずしも間隙の構成に限定されるものではない。例えば、第1スクリュー羽根14や第2スクリュー羽根16の少なくとも一部に、メッシュ状や多数の微小孔を有するろ過手段を併せて設け、分離液Cを移動可能に構成してもよい。
【0099】
また、上述した実施形態によるスクリュー型分離装置1を、脱水機の前濃縮機、民需用簡易濃縮機、および合流改善スクリーンなどとして利用することも可能である。
【0100】
上述の一実施形態における第1の実施例においては、引き抜きポンプ104により引き抜かれる汚泥を、沈殿池101内に沈降した汚泥としているが、必ずしも沈降した汚泥に限定されない。例えば、夏季などに沈殿池101内では浮上汚泥が発生しやすくなるが、この浮上汚泥を引き抜きポンプ104によって引き抜いて、スクリュー型分離装置1に供給することも可能である。
【0101】
また、上述の第1の実施例においては、一実施形態によるスクリュー型分離装置1を沈殿池101と組み合わせた例について説明したが、必ずしもこの形態に限定されない。具体的に例えば、ろ過濃縮装置とスクリュー型分離装置1とを組み合わせることも可能である。この場合、ろ過濃縮装置における汚泥を引き抜くラインやろ過濃縮装置の底部に、上述したスクリュー型分離装置1を設置することが可能である。ここで、ろ過濃縮装置においては、運転が間欠運転であるため、濃縮された汚泥はろ過濃縮装置内に一時的に貯留され、汚泥の引き抜きは下部から行われる。そのため、この一時的に貯留された時に汚泥の上部に貯留される上澄み液が濃縮された汚泥とともに引き抜かれる。これにより、上述した第1の実施例における問題と同様の問題が存在するが、この一実施形態によるスクリュー型分離装置1を用いることにより、汚泥を引き抜く際に、上澄み液(上澄み水)を分離することができるので、濃縮された汚泥の濃縮濃度を安定的に高濃度化することが可能になる。
【0102】
以上、本発明の実施形態、実施例及び変形例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 スクリュー型分離装置
10 ケージング
12 スクリュー軸
14 第1スクリュー羽根
16 第2スクリュー羽根
18 第1隔壁部
20 第2隔壁部
30A 対象物投入口
30B 対象物排出口
30C、44 分離液排出口
40 分離液流路
42 分離液流入口
K1 搬送促進区間
K2 対象物搬送区間
K3 対象物排出区間
K4 分離液搬送区間
S1、S3、S4 空間
S2a 第1空間
S2b 第2空間