(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】音声処理装置及び送受話器
(51)【国際特許分類】
H04M 1/00 20060101AFI20241031BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20241031BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20241031BHJP
H04M 1/21 20060101ALI20241031BHJP
H04R 1/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H04M1/00 V
H04R1/10 101A
H04R3/04
H04M1/00 H
H04M1/21 E
H04R1/08
(21)【出願番号】P 2023091899
(22)【出願日】2023-06-02
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500198966
【氏名又は名称】ラディウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】香田 進
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-108429(JP,A)
【文献】特開2012-195813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
H04R 1/10
H04R 3/04
H04M 1/21
H04R 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機を構成する送受話器と本体との間に設置される音声処理装置であって、
前記送受話器を構成する送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、
前記音声処理部を収容する筐体であって、前記送受話器のモジュラージャックに対応するモジュラープラグが設けられている筐体と、を備えている、
ことを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記送受話器と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項4】
互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、
前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、
前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項5】
本体とともに電話機を構成するハンドセット型の送受話器であって、
送話器及び受話器と、
前記送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、
前記送話器、前記受話器、及び前記音声処理部を収容するハンドセット型の筐体と、を備えている、
ことを特徴とする送受話器。
【請求項6】
前記筐体と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の送受話器。
【請求項7】
前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の送受話器。
【請求項8】
互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、
前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、
前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の送受話器。
【請求項9】
本体とともに電話機を構成するヘッドセット型の送受話器であって、
当該送受話器をユーザの頭部又は耳に固定する固定部材と、
前記固定部材に直接又は間接的に設けられた送話器及び受話器と、
前記送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、
前記音声処理部を収容する筐体と、を備えている、
ことを特徴とする送受話器。
【請求項10】
前記筐体と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、
ことを特徴とする請求項9に記載の送受話器。
【請求項11】
前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、
ことを特徴とする請求項9に記載の送受話器。
【請求項12】
互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、
前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、
前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の送受話器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機の送受話器に接続可能な音声処理装置、及び、音声処理部を備えた送受話器に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザからの質問や要望などを受け付けるために、多くの企業は、コールセンター又はサポートセンターと呼ばれる窓口を設けている。以下では、窓口の一例としてコールセンターを用いる。コールセンターには1又は複数の電話機が設置されている。コールセンターの各オペレータは、その電話機を用いてユーザと通話することによって、ユーザからの質問や要望などを把握し、それらに対する回答などをユーザに伝える。
【0003】
コールセンターに電話をしてくるユーザには、耳が遠いユーザが含まれている。耳が遠いユーザは、オペレータが発話した内容を十分に理解できない場合がある。その結果、オペレータとユーザとの間でコミュニケーションがうまくいかない場合が生じ得る。
【0004】
特許文献1の
図1及び
図2には、電話機を構成する送受話器と本体との間に設置される音声処理器であって、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を、受話側の電話機に依存することなく出力することができる音声処理器が開示されている。
【0005】
この音声処理器は、上述した企業の窓口において利用している電話機を引き続き利用し、本体と送受話器との間に追加して設置するだけで、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、音声処理器を電話機の本体の周辺に設置したうえで、音声処理器と送受話器とをケーブルを用いて有線接続するため(例えば特許文献1の
図2参照)、電話機の本体の周辺が煩雑になりやすい。
【0008】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものである。その目的は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができ、且つ、特許文献1の音声処理器と比較して、電話機の本体の周辺が煩雑にならない音声処理装置又は送受話器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る音声処理装置は、電話機を構成する送受話器と本体との間に設置される音声処理装置であって、前記送受話器を構成する送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、前記音声処理部を収容する筐体であって、前記送受話器のモジュラージャックに対応するモジュラープラグが設けられている筐体と、を備えている。
【0010】
上記の構成によれば、音声処理部は、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を本体に供給する。したがって、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができる。
【0011】
また、上記の構成によれば、音声処理部を収容する筐体に、送受話器のモジュラージャックに対応するモジュラープラグが設けられているため、これらのモジュラージャック及びモジュラープラグを用いて、送受話器の近傍に音声処理装置を固定することができる。したがって、本音声処理装置は、特許文献1の音声処理器と比較して、電話機の本体の周辺が煩雑にならない。
【0012】
このように、音声処理装置は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができ、且つ、特許文献1の音声処理器と比較して、電話機の本体の周辺が煩雑にならない音声処理装置である。
【0013】
本発明の第2の態様に係る音声処理装置においては、上述した第1の態様に係る音声処理装置の構成に加えて、前記送受話器と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、構成が採用されている。
【0014】
それまで利用していた電話機において、送受話器と本体との間に介在していたケーブルを、第2の態様に係る情報処理装置に置き換えるだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又は窓口のオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、上記の構成によれば、それまで利用していた電話機において、送受話器とケーブルとが直接接続されている場合であっても、電話機を容易にアップグレードすることができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係る音声処理装置においては、上述した第1の態様に係る音声処理装置の構成に加えて、前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、構成が採用されている。
【0016】
それまで利用していた電話機の送受話器と本体との間に第3の態様に係る情報処理装置を追加するだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又はオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、本音声処理装置は、それまで利用していた電話機において、送受話器と本体との間に介在するケーブルがモジュラーケーブルである場合に好適である。
【0017】
本発明の第4の態様に係る音声処理装置においては、上述した第1の態様に係る音声処理装置の構成に加えて、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、構成が採用されている。
【0018】
上記の構成によれば、第1の態様に係る情報処理装置と同じ効果を得つつ、電話機における送受話器と本体との間における音声信号の送受信を、それまでの有線方式から無線方式に変更することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の第5の態様に係る送受話器は、本体とともに電話機を構成するハンドセット型の送受話器であって、送話器及び受話器と、前記送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、前記送話器、前記受話器、及び前記音声処理部を収容するハンドセット型の筐体と、を備えている。
【0020】
上記の構成によれば、第1の態様に係る情報処理装置と同じ効果を得ることができる。
【0021】
また、上記の構成によれば、第1の態様に係る情報処理装置のようにそれまで利用していた送受話器に対して音声処理装置を装着しなくてよいため、電話機の送受話器の近辺も煩雑にならない。
【0022】
本発明の第6の態様に係る送受話器においては、上述した第5の態様に係る送受話器の構成に加えて、前記筐体と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、構成が採用されている。
【0023】
それまで利用していた電話機において、送受話器と、当該送受話器と本体との間に介在していたケーブルとを、第6の態様に係る送受話器に置き換えるだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又は窓口のオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、上記の構成によれば、それまで利用していた電話機において、送受話器とケーブルとが直接接続されている場合であっても、電話機を容易にアップグレードすることができる。
【0024】
本発明の第7の態様に係る送受話器においては、上述した第5の態様に係る送受話器の構成に加えて、前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、構成が採用されている。
【0025】
それまで利用していた電話機の送受話器を第7の態様に係る送受話器に置き換えるだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又は窓口のオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、本音声処理装置は、それまで利用していた電話機において、送受話器と本体との間に介在するケーブルがモジュラーケーブルである場合に好適である。
【0026】
本発明の第8の態様に係る送受話器においては、上述した第5の態様に係る送受話器の構成に加えて、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、構成が採用されている。
【0027】
上記の構成によれば、第5の態様に係る情報処理装置と同じ効果を得つつ、電話機における送受話器と本体との間における音声信号の送受信を、それまでの有線方式から無線方式に変更することができる。
【0028】
上記の課題を解決するために、本発明の第9の態様に係る送受話器は、本体とともに電話機を構成するヘッドセット型の送受話器であって、当該送受話器をユーザの頭部又は耳に固定する固定部材と、前記固定部材に直接又は間接的に設けられた送話器及び受話器と、前記送話器から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を前記本体に供給する音声処理部と、前記音声処理部を収容する筐体と、を備えている。
【0029】
上記の構成によれば、第1の態様に係る情報処理装置及び第5の態様に係る送受話器と同じ効果を得ることができる。
【0030】
また、上記の構成によれば、第1の態様に係る情報処理装置のようにそれまで利用していた送受話器に対して音声処理装置を装着しなくてよいため、電話機の送受話器の近辺も煩雑にならない。
【0031】
また、第5の態様に係る送受話器がハンドセット型であるのに対し、第9の態様に係る送受話器は、ヘッドセット型である。したがって、上記の構成によれば、電話機のユーザ(例えば窓口のオペレータ)は、ハンズフリー(両手が空いた状態)で受話側のユーザと通話をすることができる。
【0032】
本発明の第10の態様に係る送受話器においては、上述した第9の態様に係る送受話器の構成に加えて、前記筐体と前記本体との間に介在するケーブルであって、一方の端部が前記筐体に直接接続されているケーブルを更に備えている、構成が採用されている。
【0033】
それまで利用していた電話機において、送受話器と、当該送受話器と本体との間に介在していたケーブルとを、第10の態様に係る送受話器に置き換えるだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又は窓口のオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、上記の構成によれば、それまで利用していた電話機において、送受話器とケーブルとが直接接続されている場合であっても、電話機を容易にアップグレードすることができる。
【0034】
本発明の第11の態様に係る送受話器においては、上述した第9の態様に係る送受話器の構成に加えて、前記筐体には、前記送受話器と前記本体との間に介在するモジュラーケーブルの一方の端部に設けられたモジュラープラグに対応するモジュラージャックが設けられている、構成が採用されている。
【0035】
それまで利用していた電話機の送受話器を第11の態様に係る送受話器に置き換えるだけで、当該電話機のオーナー又はユーザ(例えば窓口を設けている企業又は窓口のオペレータ)は、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができるように、当該電話機をアップグレードすることができる。したがって、本音声処理装置は、それまで利用していた電話機において、送受話器と本体との間に介在するケーブルがモジュラーケーブルである場合に好適である。
【0036】
本発明の第12の態様に係る送受話器においては、上述した第9の態様に係る送受話器の構成に加えて、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備え、前記第1通信部は、前記筐体に収容されており、前記第2通信部には、前記本体に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている、構成が採用されている。
【0037】
上記の構成によれば、第9の態様に係る情報処理装置と同じ効果を得つつ、電話機における送受話器と本体との間における音声信号の送受信を、それまでの有線方式から無線方式に変更することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一態様によれば、受話側のユーザが明瞭と感じられるように音声処理された音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力することができ、且つ、特許文献1の音声処理器と比較して、電話機の本体の周辺が煩雑にならない音声処理装置又は送受話器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態1に係る音声処理装置を適用した状態の電話機の模式図である。
【
図2】
図1に示した音声処理装置と、
図1に示した電話機の送受話器と、の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る送受話器を適用した状態の電話機の本体の模式図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係る送受話器を適用した状態の電話機の本体の模式図である。
【
図5】
図1に示した音声処理装置を適用した状態の電話のブロック図である。
【
図6】
図1に示した音声処理装置を適用した状態の電話における周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔音声処理装置及び送受話器の概要〕
ユーザからの質問や要望などを受け付けるために、多くの企業は、コールセンター又はサポートセンターと呼ばれる窓口を有する。以下では、窓口の一例としてコールセンターを用いる。コールセンターには1又は複数の電話機が設置されている。コールセンターの各オペレータは、その電話機を用いてユーザと通話することによって、ユーザからの質問や要望などを把握し、それらに対する回答などをユーザに伝える。
【0041】
本発明の一実施形態に係る音声処理装置10(
図1及び
図2参照)及び送受話器20A及び20B(
図3及び
図4参照)は、このようなコールセンターに配置され、すでに利用されている電話機1に好適に適用することができる。また、送受話器20A及び20Bの各々は、新品である電話機1を構成する送受話器としても好適に適用することができる。なお、以下においては、電話機1を利用しているユーザを送話側のユーザと称し、電話機1の接続先である電話機を利用しているユーザを受話側のユーザと称する。本願明細書では、電話機1のユーザが音声を発し、電話機1の接続先である電話機のユーザが前記音声を聞き取る態様について主に説明するためである。なお、上述したオペレータは、送話側のユーザの一例である。
【0042】
上述したようなコールセンターに電話をしてくるユーザ(受話側のユーザ)には、耳が遠いユーザが含まれている。音声処理装置10及び送受話器20A,20Bを適用した電話機1は、相手側の電話機を利用しているユーザが耳の遠いユーザである場合に効果を奏しやすい。
【0043】
したがって、音声処理装置10及び送受話器20A,20Bを適用した電話機1を配置する場所は、コールセンターに限定されるものではなく、例えば、病院の入院用病棟のナースセンターであってもよいし、家庭であってもよい。受話側のユーザとしては、次のような例が挙げられる。すなわち、電話機1がコールセンターに配置されている場合であれば、コールセンターを設置している企業の製品又はサービスのユーザが挙げられ、電話機1がナースセンターに配置されている場合であれば、病院に入院している患者が挙げられ、電話機1が家庭に配置されている場合であれば、その家庭の家族が挙げられる。
【0044】
以下では、本発明の実施形態1に係る音声処理装置10について
図1及び
図2を参照して説明し、本発明の実施形態2に係る送受話器20Aについて
図3を参照して説明し、本発明の実施形態3に係る送受話器20Bについて
図4を参照して説明する。
図1は、音声処理装置10を適用した状態の電話機1の模式図である。
図2は、音声処理装置10と、電話機1が備えている送受話器20と、の模式図である。
図3は、送受話器20Aを適用した状態の電話機1の本体30の模式図である。
図4は、送受話器20Bを適用した状態の電話機1の本体30の模式図である。
【0045】
なお、
図1は、モジュラージャックとモジュラープラグとが接続されていない状態の電話機1を示している。
図2は、ポートP11を構成するモジュラープラグと、ポートP21を構成するモジュラージャックとが接続されている状態の送受話器20及び音声処理装置10を示している。
図3及び
図4は、ポートP21A,P21Bを構成するモジュラープラグと、ポートP31を構成するモジュラージャックとが接続されていない状態の電話機1A,1Bを示している。
【0046】
音声処理装置10及び送受話器20A,20Bの各々が備えている音声処理部11,11A,11Bについては、代表として音声処理部11を用い、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、音声処理装置10を適用した状態の電話機1のブロック図である。
図6は、音声処理装置10を適用した状態の電話機1における周波数特性を示すグラフである。
【0047】
〔実施形態1〕
電話機1は、送受話器20と、本体30と、モジュラーケーブル40と、モジュラーケーブル50と、を備えており、これらを1つのパッケージとして販売されている場合が多い。実施形態1では、電話機1を購入した企業が、電話機1をコールセンターに設置しユーザのサポート業務を行っているものとする。実施形態1に係る音声処理装置10は、このように購入済である電話機1に対して後から適用する場合に好適な製品である。以下においては、電話機1を構成する各部材について簡単に説明したのちに、音声処理装置10について説明する。
【0048】
<送受話器>
図1に示すように、送受話器20は、マイクロフォン21と、スピーカー22と、筐体23と、ポートP21と、を備えている。マイクロフォン21及びスピーカー22は、ハンドセット型の筐体23に収容されている。また、マイクロフォン21及びスピーカー22の各々は、筐体23の内部において、ポートP21に接続されている。マイクロフォン21は、送話器の一例であり、スピーカー22は、受話器の一例である。
【0049】
マイクロフォン21は、送話側のユーザが発した音声を音声信号に変換し、音声信号をポートP21に供給する。本実施形態において、音声信号は、アナログ信号であり且つ電気信号である。ただし、マイクロフォン21は、送話側のユーザが発した音声をデジタル信号である音声信号に変換するように構成されていてもよい。
【0050】
マイクロフォン21としては、例えば、エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンを採用することができる。エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンには、駆動用の直流電圧が印加されている。また、エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンは、メーカーあるいは機種ごとに異なる形式のコネクタも用いて接続されている場合が多い。
【0051】
スピーカー22は、ポートP21から供給された音声信号であって、受話側のユーザが発した音声が変換された音声信号を音声に変換し、該音声を出力する。本実施形態において、ポートP21から供給される音声信号は、アナログ信号であり且つ電気信号である。ただし、ポートP21から供給される音声信号は、デジタル信号であり、スピーカー22は、デジタル信号である音声信号を音声に変換するように構成されていてもよい。
【0052】
ポートP21は、送受話器20のポートの一例であり、本実施形態においては、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックを採用している。ただし、ポートP21は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックに限定されない。ポートP21としては、音声信号を入出力可能なモジュラージャックであれば如何なるモジュラージャックを採用してもよい。
【0053】
<本体>
図1に示すように、本体30は、筐体31と、ポートP31,P32と、を備えている。ポートP31,P32は、本体30の一対のポートであり、筐体31に設けられている。
【0054】
ポートP31は、本体30の送受話器20側のポートの一例であり、本実施形態においては、ポートP21と同様にRJ-9規格に準拠したモジュラージャックを採用している。
【0055】
ポートP32は、本体30の回線側のポートの一例であり、本実施形態においては、RJ-11規格に準拠したモジュラージャックを採用している。ただし、ポートP32は、RJ-11規格に準拠したモジュラージャックに限定されない。ポートP32としては、例えば、RJ-12規格又はRJ-14規格に準拠したモジュラージャックを採用してもよい。
【0056】
本体30は、2線式の電話回線を用いた電話機の本体である。本体30は、ポートP32に該電話回線を接続し、ポートP31に送受話器20を接続することによって、受話側の電話機の本体との間で音声信号を双方向通信することができるように構成されている。本体30は、既存の電話機の本体と同様に構成されていればよい。したがって、本実施形態では、本体30に関する説明を省略する。
【0057】
なお、本体30は、後述する音声処理装置10の加算合成器116からポートP31に供給された合成音声信号を後述するモジュラーケーブル50に出力する。
【0058】
<モジュラーケーブル>
モジュラーケーブル40,50の各々は、何れも、複数の信号線を備えている。複数の信号線の各々は、電気信号である音声信号を伝送可能なように、導体により構成されている。
【0059】
図1に示すように、モジュラーケーブル40は、一方の端部にモジュラープラグ41が設けられており、他方の端部にモジュラープラグ42が設けられている。本実施形態では、本体30側のモジュラージャックをモジュラープラグ41とし、送受話器20側のモジュラージャックをモジュラープラグ42とする。モジュラーケーブル40は、後述する音声処理装置10のポートP12と、本体30のポートP31とを接続する。
【0060】
同様に、モジュラーケーブル50は、一方の端部にモジュラープラグ51が設けられており、他方の端部にもモジュラージャックが設けられている。本実施形態では、本体30側のモジュラージャックをモジュラープラグ51とする。モジュラーケーブル50の他方の端部に設けられているモジュラージャックは、
図1に図示を省略されているモジュラーコンセントに接続される。モジュラーケーブル50は、本体30のポートP32を電話回線に接続する。
【0061】
本実施形態において、モジュラーケーブル40は、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグ41,42が設けられたケーブルである。また、本実施形態において、モジュラーケーブル50は、両端にRJ-11規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルである。ただし、モジュラーケーブル40,50の規格は、これらに限定されない。モジュラーケーブル40,50の規格は、上述したポートP21,P31,P32の各々を構成するモジュラージャック、及び、電話回線側のモジュラーコンセントの規格と対応するように適宜選択することができる。
【0062】
<音声処理装置>
図1に示すように、音声処理装置10は、送受話器20と本体30との間に設置される。音声処理装置10は、音声処理部11と、筐体12と、ポートP11,P12と、を備えている。ポートP11,P12は、音声処理装置10の一対のポートであり、筐体12に設けられている。
【0063】
ポートP11は、音声処理装置10の一対のポートのうち送受話器20側のポートの一例であり、本実施形態において、ポートP21と同様にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグを採用している。ポートP11を構成するモジュラープラグの規格は、ポートP21を構成するモジュラージャックと同じ規格となるように適宜定めればよい。すなわち、ポートP11を構成するモジュラープラグは、ポートP21を構成するモジュラージャックと対応している。
【0064】
ポートP12は、音声処理装置10の一対のポートのうち本体30側(換言すればモジュラーケーブル40側)のポートの一例であり、本実施形態において、ポートP21を構成するモジュラージャック及びモジュラーケーブル40のモジュラープラグ42と同様にRJ-9規格に準拠したモジュラージャックを採用している。ポートP12を構成するモジュラージャックは、モジュラーケーブル40の一方の端部に設けられたモジュラープラグ42と対応している。
【0065】
互いに対応しているモジュラープラグ及びモジュラージャックは、嵌合することによって音声信号を伝送することができる。
【0066】
音声処理部11は、送受話器20を構成するマイクロフォン21から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を本体30に供給するように構成されている。音声処理部11の一構成例については、
図5を参照しながら後述する。
【0067】
筐体12は、音声処理部11を収容する。
図1において音声処理部11を図示する破線は、音声処理部11が筐体12の内部に収容されていることを表している。
【0068】
筐体12の形状は、適宜定めることができる。本実施形態においては、筐体12の形状として、6個の平面により構成され、且つ、8個の角と12個の嶺とが丸められた直方体状の形を採用している。
【0069】
図2に示すように、筐体12を構成する6個の平面のうち1つの平面には、スイッチ13が設けられている。スイッチ13は、後述する音声処理部11の調整器115(
図5参照)の具体例の1つであり、音声処理部11が施す音声明瞭化の音声処理の強度を調整するための構成である。
【0070】
また、
図2のように送受話器20の側面をみた場合に、送受話器20の筐体23に対して音声処理装置10の筐体12をオフセットさせることができるように、ポートP11は、筐体12における位置を決定されていることが好ましい。この構成によれば、筐体23のうちマイクロフォン21を収容している部分と、音声処理装置10との間に、オフセット量Δが形成される。したがって、送受話器20を本体30の所定の位置に置いた場合であっても、音声処理装置10と本体30との間に生じ得る干渉を避けることができる。
【0071】
(接続方式の変形例)
なお、
図1に示した音声処理装置10では、筐体12とモジュラーケーブル40とを接続するために、ポートP12を構成するモジュラージャック及びモジュラープラグ42を用いている。
【0072】
ただし、これらのモジュラージャック及びモジュラープラグ42を省略し、筐体12に、送受話器20と本体30との間に介在するケーブルの一方の端部を直接接続する構成を用いてもよい。この場合、本変形例の音声処理装置10は、送受話器20と本体30との間に介在するケーブルであって、一方の端部が筐体12に直接接続されているケーブルを、音声処理部11及び筐体12に加えて備えることになる。なお、
図3に示す送受話器20Aでは、本変形例と同様に、筐体にケーブルが直接接続される方式を採用している。
【0073】
また、音声処理装置10の別の変形例では、送受話器20と本体30との間における通信方式として、無線方式を採用することもできる。この場合、音声処理装置10は、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備えていればよい。ここで、前記第1通信部は、筐体12に収容されており、前記第2通信部には、本体30に設けられたモジュラージャック(ポートP31を構成するモジュラージャック)に対応するモジュラープラグが接続されていればよい。なお、
図4に示す送受話器20Bでは、本変形例と同様に、第1通信部及び第2通信部を用いた無線方式を採用している。
【0074】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る送受話器20Aについて、
図3を参照して説明する。送受話器20Aは、本体30とともに電話機1Aを構成する。
【0075】
図3に示す本体30は、
図1に示す本体30と同一である。したがって、本実施形態では、本体30の説明を省略する。なお、送受話器20Aは、
図1に示す送受話器20をベースにして変形したものである。したがって、本実施形態では、送受話器20Aに関して、送受話器20から変形した点についてのみ説明する。
【0076】
図3に示すように、送受話器20Aは、音声処理部11Aと、マイクロフォン21と、スピーカー22と、筐体23Aと、ケーブル24Aと、を備えている。送受話器20Aのマイクロフォン21及びスピーカー22は、送受話器20のマイクロフォン21及びスピーカー22と同一であるので説明を省略する。筐体23Aは、筐体23と同様の外観を有する。すなわち、筐体23Aは、ハンドセット型の筐体であり、送受話器20Aは、ハンドセット型の送受話器である。筐体23Aは、筐体23と比較して、その内部に音声処理部11Aを収容する点が異なる。なお、音声処理部11Aは、音声処理部11と同一であるが、収容されている筐体が音声処理装置10の筐体12から送受話器20Aの筐体23Aへ変わっているので、符号を11Aに改めている。
【0077】
また、筐体23Aは、ケーブル24Aの一方の端部が直接接続されている点も、筐体23と異なる。なお、ケーブル24Aの他方の端部は、送受話器20AのポートP21Aの一例である。本明細書では、
図1に示すモジュラーケーブル40のように、両端にモジュラープラグが設けられているケーブルをモジュラーケーブルと称し、
図3に示すケーブル24Aのように、両端のうち何れか片方の端部のみにモジュラージャックが設けられているケーブルを、単にケーブルと呼ぶ。
【0078】
本実施形態においては、ポートP21Aとして、本体30のポートP31を構成するモジュラージャックに対応するモジュラープラグ、すなわち、RJ-9規格に準拠したモジュラープラグを採用している。ただし、ポートP21Aを構成するモジュラープラグが準拠する規格は、RJ-9規格に限定されず、ポートP31を構成するモジュラージャックが準拠する規格と対応していればよい。
【0079】
(実施形態2のまとめ)
以上のように、送受話器20Aは、本体30とともに電話機1Aを構成するハンドセット型の送受話器である。送受話器20Aは、音声処理部11Aと、筐体23Aと、を備えている。
【0080】
音声処理部11Aは、マイクロフォン21及びスピーカー22と、マイクロフォン21から供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を本体30に供給する。この音声処理部11Aは、
図1に示す音声処理部11と同じように構成されている。
【0081】
筐体23Aは、マイクロフォン21、スピーカー22、及び音声処理部11Aを収容するハンドセット型の筐体である。
【0082】
また、送受話器20Aは、筐体23Aと本体30との間に介在するケーブル24Aを更に備えている。ケーブル24Aの一方の端部は、筐体23Aに直接接続されている。
【0083】
(接続方式の変形例)
なお、送受話器20Aの変形例では、ケーブル24Aの代わりに、
図1に示すモジュラーケーブル40を採用することもできる。この場合、筐体23Aに対して、モジュラーケーブル40の一方の端部に設けられたモジュラープラグ42に対応するモジュラージャックを設ければよい。
【0084】
また、送受話器20Aの別の変形例では、送受話器20Aと本体30との間における通信方式として、無線方式を採用することもできる。この場合、送受話器20Aは、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部及び第2通信部を更に備えていればよい。ここで、前記第1通信部は、筐体23Aに収容されており、前記第2通信部には、本体30に設けられたモジュラージャック(ポートP31を構成するモジュラージャック)に対応するモジュラープラグが接続されていればよい。なお、
図4に示す送受話器20Bでは、本変形例と同様に、第1通信部及び第2通信部を用いた無線方式を採用している。
【0085】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態2に係る送受話器20Bについて、
図4を参照して説明する。送受話器20Bは、本体30とともに電話機1Bを構成する。
【0086】
図4に示す本体30は、
図1に示す本体30と同一である。したがって、本実施形態では、本体30の説明を省略する。なお、送受話器20Bは、
図3に示す送受話器20Aをベースにして、ハンドセット型からヘッドセット型へ変形し、且つ、送受話器20Bと本体30との間における通信方式を無線方式に変更したものである。したがって、本実施形態では、送受話器20Bに関して、送受話器20Aから変形した点についてのみ説明する。
【0087】
図4に示すように、送受話器20Bは、音声処理部11Bと、マイクロフォン21Bと、一対のスピーカー22B1,22B2と、一対の筐体23B1,23B2と、第1通信部24B1と、第2通信部24B2と、筐体24B3と、ケーブル24B4と、ヘッドバンド25Bと、マイクブームアーム26Bと、を備えている。なお、送受話器20Bは、両耳に対応する一対のスピーカー22B1,22B2を備えた両耳タイプであるが、送受話器20Bの一変形例は、一方の耳に対応する1つのスピーカー22B1を備えた片耳タイプであってもよい。
【0088】
送受話器20Bは、ヘッドセット型の送受話器である。ヘッドバンド25Bは、送受話器20Bをユーザの頭部に固定する固定部材の一例である。なお、送受話器20Bの一変形例においては、ヘッドバンド25Bの代わりに、固定部材の別の一例であるネックバンドを採用することもできる。ヘッドバンド25Bの代わりにネックバンドを採用することにより、送受話器20Bを頭部に固定する場合であっても、頭髪の乱れなどを抑制することができる。また、固定部材の一例として、送受話器20Bを耳に引っかけるためのイヤーループあるいはイヤーフックも挙げられる。イヤーループあるいはイヤーフックを備えた送受話器20Bは、耳掛け式であるヘッドセット型の送受話器である。
【0089】
マイクロフォン21Bは、送受話器20及び送受話器20Aが備えているマイクロフォン21に対応する部材であり、送話器の一例である。送受話器20Bにおいて、マイクロフォン21Bは、マイクブームアーム26Bを介して、筐体23B1に固定されている。
【0090】
スピーカー22B1,22B2は、送受話器20及び送受話器20Aが備えているスピーカー22に対応する部材であり、受話器の一例である。スピーカー22B1は、筐体23B1に収容されており、スピーカー22B2は、筐体23B2に収容されている。
【0091】
上述したように、筐体23B1は、スピーカー22B1を収容し、筐体23B2は、スピーカー22B2を収容する。筐体23B1,23B2は、ハウジングとも呼ばれる。また、筐体23B1,23B2の頭部に接触する側の面には、イヤーパッドが設けられている。
【0092】
また、筐体23B1は、スピーカー22B1に加えて、音声処理部11Bと、第1通信部24B1と、を収容する。なお、音声処理部11Bは、音声処理部11と同一であるが、収容されている筐体が音声処理装置10の筐体12から送受話器20Bの筐体23B1へ変わっているので、符号を11Bに改めている。
【0093】
第1通信部24B1と、第2通信部24B2とは、互いに音声信号を送受信可能な無線通信モジュールを構成する。第1通信部24B1と、第2通信部24B2との間における無線通信の方式は、既存の無線通信の方式のなかから適宜選択することができる。
【0094】
筐体24B3は、第2通信部24B2を収容する筐体である。第2通信部24B2には、本体30のポートP31を構成するモジュラージャックに対応するモジュラープラグが、ケーブル24B4を介して接続されている。このモジュラープラグは、送受話器20BのポートP21Bの一例である。
【0095】
本実施形態においては、ポートP21Bを構成するモジュラープラグとして、RJ-9規格に準拠したモジュラープラグを採用している。ただし、ポートP21Bを構成するモジュラープラグが準拠する規格は、RJ-9規格に限定されず、ポートP31を構成するモジュラージャックが準拠する規格と対応していればよい。
【0096】
上述のように、第2通信部24B2及び筐体24B3と、ポートP21Bを構成するモジュラープラグとの間にケーブル24B4が介在することによって、本体30のポートP31を構成するモジュラージャックが筐体31から奥まった位置に設けられている場合であっても、当該モジュラージャックにポートP21Bを構成するモジュラープラグを差し込むことができる。
【0097】
一方、
図4に示すように、ポートP31を構成するモジュラージャックが筐体31の表面に露出する位置に設けられている場合のみを想定する場合、ケーブル24B4を省略し、筐体24B3に対して直接ポートP31を構成するモジュラージャックを設けることもできる。この場合、送受話器20Bは、ドングルの一態様と言える。
【0098】
なお、第1通信部24B1と、第2通信部24B2との間で無線通信を行うためには、電力を要する。そのため、筐体23B1の内部には、音声処理部11B及び第1通信部24B1に電極を供給する電池が収容されていることが好ましく、筐体24B3の内部には、第2通信部24B2に電極を供給する電池が収容されていることが好ましい。これらの電池は、充電可能な電池(例えばリチウムイオン電池)であることが好ましい。
【0099】
電池を充電する充電器としては、USBケーブルを用いた充電器(例えばPDの規格に準拠したものなど)が広く普及しているので、市場に出回っている技術のなかから適宜選択することができる。この場合、充電用のコネクタとして、USBコネクタ(例えばUSB TypeCの規格に準拠したコネクタ)を筐体23B1及び筐体24B3の各々に設けておけばよい。
【0100】
(実施形態3のまとめ)
以上のように、送受話器20Bは、本体30とともに電話機1Bを構成するヘッドセット型の送受話器である。送受話器20Bは、固定部材の一例であるヘッドバンド25Bと、マイクロフォン21B及び一対のスピーカー22B1,22B2と、音声処理部11Bと、筐体23B1,23B2と、を備えている。
【0101】
ヘッドバンド25Bは、送受話器20Bをユーザの頭部に固定する固定部材である。ただし、固定部材は、送受話器20Bをユーザの耳に固定するように構成することもできる。
【0102】
マイクロフォン21Bは、ヘッドバンド25Bに対して、筐体23B1及びマイクブームアーム26Bを介して固定されている。したがって、本実施形態において、マイクロフォン21Bは、ヘッドバンド25Bに対して、間接的に設けられている。
【0103】
スピーカー22B1,22B2は、ヘッドバンド25Bに対して、筐体23B1,23B2を介して固定されている。したがって、本実施形態において、スピーカー22B1,22B2は、ヘッドバンド25Bに対して、間接的に設けられている。ただし、スピーカー22B1,22B2は、ヘッドバンド25Bに対して、直接固定されていてもよい。
【0104】
音声処理部11Bは、マイクロフォン21Bから供給された、送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を本体30に供給する。
【0105】
筐体23B1は、音声処理部11Bを収容するように構成されている。
【0106】
また、送受話器20Bは、互いに音声信号を送受信可能な第1通信部24B1及び第2通信部24B2を更に備えている。第1通信部24B1は、筐体23B1に収容されている。第2通信部24B2には、本体30のポートP31を構成するモジュラージャックに対応するモジュラープラグが接続されている。このモジュラープラグは、本体30に設けられたモジュラージャックに対応するモジュラープラグの一例である。
【0107】
(接続方式の変形例)
なお、送受話器20Bの変形例では、第1通信部24B1及び第2通信部24B2の代わりに、
図1に示すモジュラーケーブル40を採用することもできる。この場合、筐体23B1に対して、モジュラーケーブル40の一方の端部に設けられたモジュラープラグ42に対応するモジュラージャックを設ければよい。
【0108】
また、送受話器20Bの更なる変形例では、筐体23B1に設けるモジュラージャックと、
図1に示すモジュラープラグ42とを省略し、筐体23B1に、送受話器20Bと本体30との間に介在するケーブルの一方の端部を直接接続する構成を用いてもよい。この場合、本変形例の送受話器20Bは、送受話器20Bと本体30との間に介在するケーブルであって、一方の端部が筐体23B1に直接接続されているケーブルを、音声処理部11B及び筐体23B1に加えて備えることになる。なお、
図3に示す送受話器20Aでは、本変形例と同様に、筐体にケーブルが直接接続される方式を採用している。
【0109】
〔各実施形態が備えている音声処理部〕
図1、
図3及び
図4を参照して上述したように、音声処理装置10は、音声処理部11を備え、送受話器20Aは、音声処理部11Aを備え、送受話器20Bは、音声処理部11Bを備えている。音声処理部11,11A,11Bは、同一の構成を有し、各々が収容されている筐体の違いを明らかにするために、符号を変えられているにすぎない。したがって、以下では、音声処理部11,11A,11Bの代表として音声処理部11を用い、
図5及び
図6を参照して音声処理部11について説明する。
図5は、音声処理装置10を適用した状態の電話機1のブロック図である。
図5では、音声信号の伝送経路を分かりやすくするために、音声処理装置10のみならず電話機1のブロック図を図示している。
図6は、電話機1における周波数特性を示すグラフである。
【0110】
音声処理部11は、マイクロフォン21から供給された音声信号に対して、前記音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を出力するように構成されている。
【0111】
図5に示すように、音声処理部11は、ポートP11と、ポートP12と、分岐部111と、位相補正器112と、フィルタ(バンドパスフィルタ)113と、アンプ114と、調整器115と、加算合成器116と、を備えている。また、音声処理部11は、
図5に図示していない電源部と、検出部と、制御部と、を更に備えている。
【0112】
ポートP11は、マイクロフォン21に接続されるポートである。ポートP11には、マイクロフォン21によって発話者が発した音声から変換された音声信号SVが、マイクロフォン21から供給される。
【0113】
音声信号S
Vは、特許第6548938号の
図1に記載されているように、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む。なお、nは、送話側のユーザに依存し、多少の個人差はあるものの、少なくとも4以上の正の整数である。なお、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分の各々は、それぞれ、特許第6548938号の
図1に記載の第1ホルマント、第2ホルマント、・・・、第n次ホルマントに読み替えられる。
【0114】
なお、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分については、特許文献1に記載されているため本実施形態では、その説明を省略する。
【0115】
分岐部111は、音声信号SVを第1音声信号SV1と第2音声信号SV2とに分岐する。本実施形態において、分岐部111は、第1音声信号SV1と第2音声信号SV2との強度比が1:1になるように、すなわち分配比が1:1になるように構成されている。ただし、分岐部111の分配比は、1:1に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0116】
なお、第1音声信号SV1及び第2音声信号SV2の各々のスペクトルは、音声信号SVのスペクトルと同様である。すなわち、第1音声信号SV1及び第2音声信号SV2の各々は、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む。
【0117】
フィルタ113は、分岐部111を通過した第1音声信号SV1から周波数が400Hz未満の成分である低周波成分を除去するハイパスフィルタである。フィルタ113は、前記低周波成分を含まない第1音声信号SV1’を出力する。したがって、第1音声信号SV1’は、1次のホルマント成分を含まず、且つ、2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む音声信号である。
【0118】
アンプ114は、フィルタ113を通過した第1音声信号SV1’を増幅することによって、2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分の強度が高められた第1音声信号SV1”を出力する。
【0119】
調整器115は、アンプ114のゲインを調整する。
図2に示す音声処理装置10は、筐体12に設けられたスイッチ13を用いて調整器115を制御し、前記ゲインを0~2の3段階に調整するように構成されている。調整器115は、スイッチ13により「0」を選択した場合に前記ゲインが1倍となり、スイッチ13により「1」を選択した場合に前記ゲインが3倍となり、スイッチ13により「2」を選択した場合に前記ゲインが5倍となるように構成されている。
【0120】
ただし、調整器115を構成するスイッチ13の段数、及び、スイッチ13により選択される前記ゲインは、上述した例に限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、スイッチ13により「0」を選択した場合に前記ゲインが0倍となり、スイッチ13により「1」を選択した場合に前記ゲインが1倍となり、スイッチ13により「2」を選択した場合に前記ゲインが5倍となるように構成されていてもよい。前記ゲインを0倍に設定した場合、音声処理装置10における音声処理は実質的にキャンセルされる。したがって、音声処理部11は、マイクロフォン21から供給された音声信号に対して、音声を明瞭化するための音声処理を施すことなく、その音声信号を音声に変換してスピーカーより出力する。音声明瞭化の処理が不要であることが分かっている場合には、上述したように音声処理をキャンセルしてもよい。また、通常は、音声処理をキャンセルしたまま使用しておき、聞き手側のユーザにおいて聞き取りにくそうな仕草が認められた場合に、発話者側のユーザが調整器115を適宜調節し、音声処理装置10における音声処理の度合いを調節することもできる。また、調整器115は、ゲインを離散的に変化させるスイッチ13の代わりにゲインを連続的に変化させるボリュームを採用することもできる。また、聞き手となるユーザがある程度特定できる場合には、前記ゲインを予め設定しており、調整器115を省略することもできる。
【0121】
位相補正器112は、アンプ114を通過した第1音声信号SV1”の位相と合うように、第2音声信号SV2の位相を補正する。すなわち、位相補正器112は、第1音声信号SV1”と位相が合っている第2音声信号SV2’を出力する。
【0122】
加算合成器116は、アンプ114を通過した第1音声信号SV1”と、位相補正器112を通過した第2音声信号SV2’とを加算合成することによって合成音声信号SSVを生成し、合成音声信号SSVをポートP12に供給する。
【0123】
ポートP12は、本体30に接続されるポートである。ポートP12の端子には、加算合成器116から合成音声信号SSVが供給される。
【0124】
このように音声処理装置10は、マイクロフォン21から供給された音声信号SVに対して音声処理を施し、合成音声信号SSVをスピーカー22に供給する。
【0125】
マイクロフォン21は、アナログ信号である音声信号SVをポートP11に供給する。ポートP12は、アナログ信号である合成音声信号SSVを本体30に供給する。ただし、マイクロフォン21は、デジタル信号である音声信号SVをポートP11に供給し、且つ、ポートP12は、デジタル信号である合成音声信号SSVを本体30に供給するように構成されていてもよい。
【0126】
また、音声処理部11において、位相補正器112、フィルタ113、アンプ114、及び加算合成器116の各々は、アナログ回路により構成されている。ただし、位相補正器112、フィルタ113、アンプ114、及び加算合成器116の各々は、デジタル回路により構成されていてもよい。
【0127】
また、音声処理部11において、音声処理部11は、第1音声信号SV1に対してフィルタリング処理を施すフィルタとしてハイパスフィルタであるフィルタ113を備えている。ただし、フィルタ113は、分岐部111を通過した第1音声信号SV1から、(1)周波数が400Hz未満の成分である低周波成分と、(2)周波数が7kHzを超える成分である高周波成分と、を除去するように構成されていてもよい。すなわち、フィルタ113は、周波数が400Hz以上であり7kHz以下である成分を通過させるバンドパスフィルタであってもよく、周波数が400Hz以上であり5kHz以下である成分を通過させるバンドパスフィルタであってもよい。なお、この場合、フィルタ113は、1つのバンドパスフィルタとして実現されていてもよいし、ハイパスフィルタとローパスフィルタとを直列に接続することによって実現されていてもよい。
【0128】
また、音声処理部11において、筐体12は、アルミニウム製である。ただし、筐体12を構成する材料は、アルミニウムに限定されず、例えば銅やステンレスなどの金属であってもよい。また、筐体12を構成する材料は、樹脂を主にし、その表面に金属層が設けられたものであってもよい。筐体12は、少なくともその表面が金属により覆われていることによって、外部から内部へ侵入する電磁波を遮蔽することができる。ただし、筐体12を構成する材料として樹脂を用いる場合であっても、筐体12の表面に設ける金属層を省略してもよい。その場合、筐体12の内部において、電磁波対策を講じることが好ましい。
【0129】
なお、
図5に図示していない電源部、検出部、及び制御部の各々は、次のように構成されている。
【0130】
電源部は、音声処理部(特にアンプ114)及び制御部に電力を供給する。音声処理装置10を持ち運び可能な構成とするために、電源部は、充電可能な電池(例えばリチウムイオン電池)であることが好ましい。電源部として電池を用いることにより、発話者は、電源ケーブルを気にすることなく、自由に動きながら発話することができる。
【0131】
電池を充電する充電器としては、USBケーブルを用いた充電器(例えばPDの規格に準拠したものなど)が広く普及しているので、市場に出回っている技術のなかから適宜選択することができる。この場合、充電用のコネクタとして、USBコネクタ(例えばUSB TypeCの規格に準拠したコネクタ)を筐体12に設けておけばよい。
【0132】
ただし、電源部としてACアダプタに代表される交流/直流変換器を用いてもよい。電源部として交流/直流変換器を用いることにより、商用電源を利用することができるので、発話者は電力の残量を気にすることなく発話することができる。また、電源部は、電池と交流/直流変換器との両方を採用していてもよい。
【0133】
検出部は、前記電源部から前記音声処理部に前記電力が供給されているか否かを検出するように構成されている。電源部が通常どおり機能している場合であれば、検出部は、「Yes」を示す検出情報を制御部に供給する。一方、電源部が通常どおり機能していない場合であれば、検出部は、「No」を示す検出情報を制御部に供給する。電源部が交流/直流変換器でる場合、通常どおり機能していない状態の例としては、停電が挙げられる。また、電源部が電池である場合、通常どおり機能していない状態の例としては、電池切れが挙げられる。
【0134】
制御部は、検出部の検出結果に応じて、音声信号SVに対して音声処理を施す、あるいは、施さないように、選択部を制御する。制御部は、検出部の検出結果が「Yes」である場合、音声信号SVに対して音声処理を施すように選択部を制御する。一方、制御部は、検出部の検出結果が「No」である場合、音声信号SVに対して音声処理を施さないように選択部を制御する。
【0135】
また、音声処理装置10は、ポートP11と分岐部111との間に介在する極性切り替え器及びアンプを更に備えていてもよい。
【0136】
(スピーカー)
スピーカー22は、ポートP21から供給された音声信号であって、受話側のユーザが発した音声が変換された音声信号を音声に変換し、該音声を出力する。本実施形態において、ポートP21から供給される音声信号は、アナログ信号であり且つ電気信号である。ただし、ポートP21から供給される音声信号は、デジタル信号であり、スピーカー22は、デジタル信号である音声信号を音声に変換するように構成されていてもよい。
【0137】
<音声処理装置の周波数特性>
図6は、音声処理装置10を適用した電話機1における周波数特性を示すグラフである。
図6に示した特性線aは、マイクロフォン21から供給される音声信号S
Vの周波数特性を示す。
図6に示した特性線bは、ポートP11と分岐部111との間に介在するアンプにより出力値を調整されたあとの音声信号S
Vの周波数特性を示す。
図6に示した特性線cは、アンプ114を通過したあとの第1音声信号S
V1”の周波数特性を示す。
図6に示した特性線dは、合成音声信号S
SVの周波数特性を示す。
図6に矢印で示した特性線bと特性線dとの差が、音声処理装置10により実施される音声処理の効果である。
【0138】
なお、特性線cにより表される第1音声信号SV1”の周波数特性の出力レベルは、調整器115を用いてアンプ114のゲインを調整することによって、調整することができる。
【0139】
<音声処理部の効果>
【0140】
ここでは、音声処理部11を備えた音声処理装置10を用いて、その効果を説明する。この効果は、音声処理部11Aを備えた送受話器20A、及び、音声処理部11Bを備えた送受話器20Bにおいても同様に得られる。
【0141】
音声処理部11は、難聴者との対面による会話において確実に会話内容を伝達できる方法を提供する機能を搭載する会話補助装置である。従来の補聴器や集音器などとは全く逆の発想から誕生した手法で声を発する側で聴覚障害者が聴こえ易くなる音声処理をした音声を、音声処理装置10を介して発話者側が発することによって、難聴者が補聴器等を用いずとも会話内容の伝達が可能となる。
【0142】
音声処理部11による音声明瞭化技術によれば高齢化により聴覚障害の原因となる内耳の聴覚器官である「蝸牛」の音声~電気信号への変換効率とくに高い周波数帯域(ホルマントと呼称される)の効率低下が言語の理解を阻害している点に注目し、言葉に含まれる高い周波数成分を強調する処理を施すことにより聴こえを取り戻すことが出来る事という特長を採り入れている。音声のスペクトル分析に於いて一番低い周波数に現れるレベルの大きいピーク周波数を第1ホルマント、2番目に現れるピーク周波数を第2ホルマントなどと呼称されそれぞれのピーク周波数は整数倍のポイントに現れるがそのピーク周波数は発声者の骨格などにより異なるが一般的には言語を理解するに必要なホルマント成分は第1ホルマントから第4ホルマントを確実に聴きとる必要がある事が長年にわたる我々の多くの知見結果により解明されており、音声処理部11に於いては400Hz~5KHzを重点的に補償することでその効果を発揮出来ることが確認されている。
【0143】
以上のように、音声処理部11は、ポートP11と、分岐部111と、フィルタ113と、アンプ114と、位相補正器112と、加算合成器116と、ポートP12と、を備えている。
【0144】
上記の構成によれば、アンプ114は、第1音声信号SV1’を増幅し、第2音声信号SV2を増幅しない。したがって、音声処理部11において、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。したがって、音声処理部11は、聞き手側のユーザが補助装置を用いずとも明瞭と感じられる合成音声信号SSVを出力することができる。
【0145】
その結果、聞き手側のユーザとの間で誤解が生じたり、聞き手側のユーザの気分を害したりする可能性を低減することができるので、発話者側のユーザと聞き手側のユーザとの間におけるコミュニケーションを円滑に進めやすくなる。
【0146】
なお、音声を明瞭化する場合、第1音声信号SV1から、(1)周波数が400Hz未満の成分である低周波成分と、(2)周波数が7kHzを超える成分である高周波成分と、を除去したうえで、第1音声信号SV1’を増幅し、位相が合っている第1音声信号SV1”と第2音声信号SV2とを加算合成することが好ましいことを発明者は、見出した。しかしながら、通常、人の声の波長は、100Hz以上1kHz以下程度になっている。したがって、音声処理部11において、フィルタ113は、多くの場合、前記低周波成分のみを第1音声信号SV1から除去することができればよい。すなわち、フィルタ113においては、第1音声信号SV1から前記高周波成分を除去するように構成しなくてもよい。したがって、フィルタ113を簡易に構成することができ、コストを抑制することができる。
【0147】
また、音声処理部11において、位相補正器112、フィルタ113、アンプ114、及び加算合成器116の各々は、アナログ回路により構成されている、ことが好ましい。
【0148】
上記の構成によれば、音声処理部11を容易に構成することができ、且つ、音声処理部11を小型化することができる。また、フィルタ113をデジタル回路により構成した場合と比較して、このように構成された音声処理装置10は、聞き手側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号SSVを出力することができる。これは、アナログ回路により構成したフィルタ113のほうが、デジタル回路により構成したフィルタ113よりも、通過帯域の下限領域(すなわち400Hz近傍の領域)におけるフィルタリング特性がなだらかになりやすいためだと考えられる。
【0149】
また、音声処理部11は、調整器115を更に備えていることが好ましい。
【0150】
上記の構成によれば、聞き手側のユーザの様子に応じて、発話者側のユーザは、聞き手側のユーザの意図とは関係なく、アンプ114のゲインを調整することができる。すなわち、合成音声信号における明瞭化の度合いを調整することができる。したがって、このように構成された音声処理部11は、聞き手側のユーザに応じて明瞭化の度合いを調整した合成音声信号SSVを出力することができる。
【0151】
また、音声処理部11において、フィルタ113は、下限周波数未満である前記低周波成分と、上限周波数を超える前記高周波成分とを除去するように構成されていることが好ましい。また、前記下限周波数以上且つ前記上限周波数以下である帯域には、2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分が含まれていてもよい。
【0152】
本願の発明者は、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域がおよそ400Hz以上7kHz以下であることを見出した。このように構成された音声処理部11によれば、アンプ114は、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域に含まれる第1音声信号SV1’を増幅する。
【0153】
音声処理部11は、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。
【0154】
また、音声処理部11において、音声信号SV及び合成音声信号SSVの各々は、アナログ信号である、ことが好ましい。
【0155】
また、音声処理部11において、位相補正器112、フィルタ113、アンプ114、及び加算合成器116の各々は、アナログ回路により構成されている、ことが好ましい。
【0156】
これにより、音声処理部11を容易に構成することができ、且つ、音声処理器を小型化することができる。また、フィルタ113をデジタル回路により構成した場合と比較して、このように構成された音声処理部11は、聞き手側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号を出力することができる。
【0157】
〔音声処理部の変形例〕
以下では、音声処理部11,11A,11Bの代表として音声処理部11を用いて音声処理部の変形例について説明する。
【0158】
音声処理部11は、例えば以下に示す特許番号に係る特許掲載公報に記載された構成を含むように、又はその構成と組み合わされて実現され得る。特許第3731179号及び特許第6548938号の各々の特許公報に記載された技術は、いずれも、1次(あるいは低次)のホルマント成分と、高次のホルマント成分とに着目して音声明瞭化の音声処理を実施する技術である(例えば、特許第3731179号の
図1、及び、特許第6548938号の
図4参照)。そのため、音声処理部11を実現する構成として、
図5のブロック図に示す構成に代えて、特許第3731179号の
図2、
図4、及び
図6の各図に図示されている構成を採用することもできるし、特許第6548938号の
図5の構成を採用することもできる。音声処理部11は、マイクロフォン21から供給された送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施し、且つ、該音声処理を施された音声信号を本体30に供給するものであればよい。
【0159】
また、
図5に図示した音声処理部11の代わりに、特許第7105756号の特許公報の
図4の構成を採用することもできる。
【0160】
〔参考例〕
以下では、音声処理装置10及び送受話器20A,20Bの代表として音声処理装置10を用いて本発明の参考例について説明する。
【0161】
音声処理装置10において、音声処理装置10が接続される送受話器20は、本体30とともに電話機1を構成する。すなわち、
図1に示す実施形態1において、音声処理装置10及び送受話器20の接続対象となる機器は、電話機1の本体30である。ただし、本参考例において、音声処理装置10及び送受話器20の接続対象となる機器は、本体30に限定されず、例えば、パーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンやタブレット端末に代表される携帯端末であってもよい。
【0162】
この場合、音声処理装置10とパーソナルコンピュータ又は携帯端末とを接続するための規格は、既存の規格のなかから適宜選択することができる。このような規格の例としては、USB、Buletooth、及びHDMI(登録商標)が挙げられる。
【0163】
例えば、USBを用いて音声処理装置10とパーソナルコンピュータとを接続する場合、音声処理装置10の筐体12にType-AやType-CなどのUSBコネクタを設け、モジュラーケーブル40の代わりにUSBケーブルを用いればよい。また、例えば、Buletoothを用いて送受話器20Bとパーソナルコンピュータとを接続する場合、第1通信部24B1の代わりにBuletoothの規格に準拠した通信モジュールを用いればよい。
【0164】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0165】
1 電話機
10 音声処理装置
P11 ポート(モジュラープラグ)
P12 ポート(モジュラージャック)
11,11A,11B 音声処理部
111 分岐部
112 位相補正器
113 フィルタ
114 アンプ
115 調整器
116 加算合成器
12 筐体(音声処理装置の筐体)
13 スイッチ
20,20A,20B 送受話器
P21 ポート(モジュラージャック)
21 マイクロフォン(送話器)
22 スピーカー(受話器)
23,23A,23B1,23B2 筐体(送受話器の筐体)
24A ケーブル
24B1 第1通信部
24B2 第2通信部
25B ヘッドバンド(固定部材)
26B マイクブームアーム
30 本体
P31,P32 ポート(モジュラージャック)
40,50 モジュラーケーブル
41,42,51 モジュラープラグ
【要約】
【課題】受話側のユーザが明瞭と感じられる音声信号を受話側の電話機に依存することなく出力でき、且つ、本体の周辺が煩雑にならない音声処理器を提供すること。
【解決手段】音声処理装置(10)は、送話器(マイクロフォン21)から供給された送話側の音声を表す音声信号に対して、該音声を明瞭化するための音声処理を施す音声処理部(11)と、音声処理部(11)を収容する筐体(12)であって、送受話器(20)のモジュラージャック(ポートP21)に対応するモジュラープラグ(ポートP11)が設けられている筐体(12)と、を備えている。
【選択図】
図1