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特許7579913バナジウム電解液及びその製造方法、並びに応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バナジウム電解液及びその製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20241031BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20241031BHJP
   C01G 31/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
C01G31/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023099339
(22)【出願日】2023-06-16
(65)【公開番号】P2024052508
(43)【公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】202211209048.4
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523231244
【氏名又は名称】湖南省銀峰新能源有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hunan Province Yinfeng New Energy Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.066 Quanzhou North Road,Ningxiang Hi-Tech Zone,Changsha City,Hunan Province 410000(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】呉 雄偉
(72)【発明者】
【氏名】徐 輝
(72)【発明者】
【氏名】謝 浩
(72)【発明者】
【氏名】呂 善光
(72)【発明者】
【氏名】呉 雪文
(72)【発明者】
【氏名】付 娜
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112843786(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109666796(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114262808(CN,A)
【文献】国際公開第2021/146797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C01G 31/00-31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナジウム電解液の製造方法であって、
(1)バナジウム鉱石を取り、その中に硫酸を加え、均一に混合して、混合物を得るステップと、
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物を熟成させて、熟成材を得るステップであって、前記熟成の温度は40~130℃であり、時間は12時間より長い、ステップと、
(3)ステップ(2)で得られた前記熟成材を水で浸出して、バナジウム含有浸出液を得るステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加えて、第1の浄化液を得るステップと、
(5)ステップ(4)で得られた前記第1の浄化液に酸化剤、リン酸鉄二水和物種結晶、第2の不純物除去剤を加えて、第2の浄化液を得るステップと、
(6)ステップ(5)で得られた前記第2の浄化液に還元剤、凝集剤を加え、濾過した後、濾液を得るステップと、
(7)ステップ(6)で得られた前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得るステップと、
(8)ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を逆抽出して、逆抽出液を得るステップと、
(9)ステップ(8)で得られた前記逆抽出液から有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得るステップと
を含むことを特徴とするバナジウム電解液の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記硫酸は、質量濃度が90~98%である硫酸溶液であり
記硫酸と前記バナジウム鉱石の質量比は1:(4~20)であり、
前記硫酸を加える前に、水を加えることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【請求項3】
ステップ(4)において、先ず前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0~2.0に調整してから、第1の不純物除去剤を加え
記第1の不純物除去剤は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウムのうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【請求項4】
ステップ(5)において、前記酸化剤は、塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素のうちの一種又は複数種であり
記第2の不純物除去剤は、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素アンモニウムのうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【請求項5】
ステップ(6)において、前記還元剤は、亜硫酸塩、二酸化硫黄、硫黄単体、亜鉛粉末、有機硫黄化合物、シュウ酸塩、アスコルビン酸、一酸化炭素のうちの一種又は複数種であり
記凝集剤は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムのうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【請求項6】
ステップ(7)において、前記抽出液は、抽出剤、リン酸トリブチル、スルホン化灯油からなる混合液であり、前記抽出剤は、P204、N235、P507のうちの一種又は複数種であることを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【請求項7】
ステップ(9)は、具体的には、
前記逆抽出液を拡散透析して、透析液を得ることと、
次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得ることと、
それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得ることと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のバナジウム電解液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金技術分野に関し、特にバナジウム電解液及びその製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
バナジウム電池は、現在急速に発展している環境に優しい電池の一つとして、エネルギー貯蔵容量及び電力調整可能、大電流ロスレス深放電、簡単な操作維持保守、高い安全性、優れた信頼性、長寿命、低汚染等の特性を備えており、大規模なエネルギー貯蔵方向において他の電池と比較して比類のない利点を有する。しかし、コストの問題で応用が制限されている。バナジウム電解液は、バナジウム電池のコアエネルギー貯蔵モジュールとして、そのコストがバナジウム電池全体の総コストの41%を占めているため、電解液の生産コストをどのように制御するかは、バナジウム電池の工業化及び規模化応用を促進する鍵である。
【0003】
現在、バナジウム電解液を製造する方法は、メタバナジン酸アンモニウム又は五酸化バナジウムを利用して、高純度の五酸化バナジウムを製造してから、高純度の五酸化バナジウムを用いて、低温溶解還元、電解、高温還元溶解等の方法で電解液を製造している。
【0004】
これらの方法は、電解液を製造する過程が煩雑で、コストが高く、しかも原料としてメタバナジン酸アンモニウム或いは五酸化バナジウムが用いられ、これもバナジウム鉱石或いはバナジウム廃材から一連の複雑な冶金工程を通じて得られ、コストが比較的高く、バナジウム電解液のコストを制御し難くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、先行技術におけるバナジウム電解液の製造過程が複雑で、コストが高いという技術的問題を解決するよう、バナジウム電解液及びその製造方法、並びに応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための、本発明の技術方案は以下の通りである。
【0007】
バナジウム電解液の製造方法であって、
(1)バナジウム鉱石を取り、その中に硫酸を加え、均一に混合して、混合物を得るステップと、
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物を熟成させて、熟成材を得るステップと、
(3)ステップ(2)で得られた前記熟成材を水で浸出して、バナジウム含有浸出液を得るステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加えて、第1の浄化液を得るステップと、
(5)ステップ(4)で得られた前記第1の浄化液に酸化剤、リン酸鉄二水和物種結晶、第2の不純物除去剤を加えて、第2の浄化液を得るステップと、
(6)ステップ(5)で得られた前記第2の浄化液に還元剤、凝集剤を加え、濾過した後、濾液を得るステップと、
(7)ステップ(6)で得られた前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得るステップと、
(8)ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を逆抽出して、逆抽出液を得るステップと、
(9)ステップ(8)で得られた前記逆抽出液から有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得るステップとを含むバナジウム電解液の製造方法。
【0008】
好ましくは、ステップ(1)において、前記硫酸は、質量濃度が90~98%である硫酸溶液であり、
任意選択的に、ステップ(1)において、前記硫酸と前記バナジウム鉱石の質量比は1:(4~20)である。
【0009】
好ましくは、ステップ(1)において、前記硫酸を加える時、前記混合物の温度は50~130℃である。好ましくは、前記硫酸の添加速度は0.05~10mL・min-1・g-1である。
【0010】
任意選択的に、ステップ(1)において、硫酸を加える前に、水を加える。好ましくは、水と前記バナジウム鉱石の質量比は、(0.001~0.2):1である。
【0011】
好ましくは、ステップ(1)において、前記バナジウム鉱石を破砕するステップを更に含む。好ましくは、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕する。
【0012】
好ましくは、ステップ(2)において、前記熟成の温度は40~130℃であり、時間は12時間より長い。さらに好ましくは、前記熟成は、保湿環境下で行われる。
【0013】
好ましくは、ステップ(2)において、前記熟成材を破砕するステップを更に含む。好ましくは、前記熟成材を、粒度が5mm未満になるまで破砕する。
【0014】
好ましくは、ステップ(3)において、水と前記熟成材の質量比は、(0.5~5):1である。
【0015】
好ましくは、ステップ(3)において、浸出の温度は、10~90℃である。
【0016】
好ましくは、ステップ(4)において、先ず前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0~2.0に調整してから、第1の不純物除去剤を加え、
任意選択的に、前記第1の不純物除去剤は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウムのうちの一種又は複数種である。
【0017】
好ましくは、前記第1の不純物除去剤と前記バナジウム含有浸出液中のアルミニウムイオンのモル比は(0.5~10):1である。
【0018】
好ましくは、ステップ(4)において、前記第1の不純物除去剤を加えた後、濾過するステップを更に含む。
【0019】
好ましくは、ステップ(4)において、前記第1の不純物除去剤を加えた後、5~90℃で不純物除去反応を行う。
【0020】
好ましくは、ステップ(4)において、調整ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0~2.0に調整し、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石を採用する。pH値を1.0~2.0に調整した後、固液分離の方式により前記バナジウム含有浸出液及び湿鉱材を得る。
【0021】
好ましくは、ステップ(5)において、前記酸化剤は、塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素のうちの一種又は複数種であり、
任意選択的に、前記第2の不純物除去剤は、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素アンモニウムのうちの一種又は複数種である。
【0022】
好ましくは、前記酸化剤と前記第1の浄化液中の2価鉄イオンのモル比は(0.2~1):1である。
【0023】
好ましくは、前記第2の不純物除去剤と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は(0.5~2):1である。
【0024】
好ましくは、前記リン酸鉄二水和物種結晶と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は(0.01~0.2):1である。
【0025】
好ましくは、ステップ(5)において、前記酸化剤を加えた後、前記第1の浄化液のpH値を1.5~2.5に調整するステップを更に含む。
【0026】
好ましくは、ステップ(5)において、前記第2の不純物除去剤を加えた後、得られた反応液を濾過するステップを更に含む。
【0027】
好ましくは、ステップ(5)において、前記第2の不純物除去剤を加えた後、5~90℃で不純物除去反応を行う。
【0028】
好ましくは、ステップ(6)において、前記還元剤は、亜硫酸塩、二酸化硫黄、硫黄単体、亜鉛粉末、有機硫黄化合物、シュウ酸塩、アスコルビン酸、一酸化炭素のうちの一種又は複数種であり、
任意選択的に、前記凝集剤は、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウムのうちの一種又は複数種である。
【0029】
好ましくは、前記還元剤と前記第2の浄化液中の5価バナジウムイオンのモル比は(1~3):1である。
【0030】
好ましくは、前記凝集剤と前記第2の浄化液中のバナジウムイオンのモル比は(0.01~0.1):1である。
【0031】
好ましくは、ステップ(6)において、前記還元剤を加えた後、前記第2の浄化液のpH値を1.7~2.2に調整するステップを更に含む。
【0032】
好ましくは、ステップ(6)において、前記凝集剤を加えた後、1~2時間撹拌して反応させ、限外濾過膜を使用して濾過して、濾液を得る。
【0033】
好ましくは、ステップ(7)において、前記抽出液は、抽出剤、リン酸トリブチル、スルホン化灯油からなる混合液であり、前記抽出剤は、P204、N235、P507のうちの一種又は複数種である。ここで、P204は、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)を指す。N235は、トリオクチルアミンを指す。P507は、2-エチルヘキシルリン酸2-エチルヘキシルを指す。
【0034】
好ましくは、前記抽出液は、下記の重量部の原料が混合されてなる:
抽出剤 10~25部、
リン酸トリブチル 4~10部、
スルホン化灯油 65~86部。
【0035】
好ましくは、ステップ(7)において、前記濾液と抽出液の体積比は1:(0.2~1)である。
【0036】
好ましくは、ステップ(8)は、具体的には、ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を、pH値が1.5~2.0である硫酸溶液で洗浄してから、1.5~2.5mol/Lの硫酸溶液で逆抽出して、逆抽出液を得ることを含む。
【0037】
好ましくは、ステップ(8)において、pH値が1.5~2.0である硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は(0.5~5):1である。
【0038】
好ましくは、ステップ(8)において、1.5~2.5mol/Lの硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は(0.05~0.6):1である。
【0039】
好ましくは、ステップ(9)は、具体的には、前記逆抽出液を拡散透析して、透析液を得ることと、次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得ることと、それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得ることとを含む。
【0040】
好ましくは、ステップ(9)において、拡散透析膜を通して硫酸溶液を回収する。前記拡散透析において、前記逆抽出液の流速は0.15~0.30×10-3/(h.m)であり、水と前記逆抽出液の流速比は(0.5~1.5):1である。
【0041】
好ましくは、ステップ(9)において、前記バナジウム電解液に水及び/又は硫酸溶液を加え、前記バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度を1.3~1.8mol/Lに調整し、硫酸根イオン濃度を4.0~4.5mol/Lに調整することを更に含む。前記硫酸溶液の質量濃度は90~98%である。
【0042】
本発明は、前記バナジウム電解液の製造方法により製造されるバナジウム電解液を更に提供する。
【0043】
本発明は、前記バナジウム電解液の電池分野への応用を更に提供する。
【発明の効果】
【0044】
本発明の上記の方案は、少なくとも以下の有益な効果を含む。
【0045】
(1)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、バナジウム鉱石を取り、その中に硫酸を加え、均一に混合して、混合物を得るステップと、前記混合物を熟成させて、熟成材を得るステップと、前記熟成材を水で浸出して、バナジウム含有浸出液を得るステップと、前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加えて、第1の浄化液を得るステップと、前記第1の浄化液に酸化剤、リン酸鉄二水和物種結晶、第2の不純物除去剤を加えて、第2の浄化液を得るステップと、前記第2の浄化液に還元剤、凝集剤を加え、濾過した後、濾液を得るステップと、前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得るステップと、前記バナジウムを担持した有機相を逆抽出して、逆抽出液を得るステップと、前記逆抽出液から有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得るステップとを含む。本発明のバナジウム電解液の製造方法は、電解液の製造コストを大幅に削減するだけでなく、エネルギー消費が低く、汚染が小さく、製造された電解液製品の純度が高く、電解液中の不純物イオンが制御可能であり、品質が安定しており、適用性が強く、各種の電解液の応用環境に適用可能である。
【0046】
(2)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(1)~(3)において、バナジウム鉱石を原料として、直接、完成品のバナジウム電解液を製造し、熟成の方式により前記バナジウム含有浸出液中のバナジウムの原子価状態が主に四価であることを保証し、工程全体で基本的にバナジウムの原子価状態が最終完成品の前記バナジウム電解液の原子価状態と一致することを維持し、進んではプロセスにおける酸化還元コストを削減する。
【0047】
(3)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、バナジウム鉱石を原料として、直接、完成品のバナジウム電解液を製造し、バナジウム沈殿工程が言及されないため、工程全体にわたってアンモニア態窒素廃水が発生せず、製造方法全体にわたって処理すべき工程廃水量が比較的少なく、ラフィネートのみを処理すればよく、ラフィネートも不純物除去処理後に全部再利用可能であるため、「ゼロ」エミッションを実現し、かつ処理コストが比較的低い。
【0048】
(4)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(1)において、前記バナジウム鉱石を破砕するステップを更に含む。前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕する。バナジウム鉱石の粒度を制御することにより、鉱石粉砕コストを削減でき、バナジウム鉱石中のバナジウムの選択的浸出を実現し、浸出液中の不純物を低減し、後続の不純物除去のコストを削減できる。
【0049】
(5)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(1)において、前記硫酸を加える時、前記混合物の温度は50~130℃である。前記硫酸の添加速度は0.05~10ML・min-1・g-1である。前記硫酸の添加速度を制御することにより、前記混合物の温度を50~130℃に加熱させた後、ステップ(2)の熟成過程で、保温により熟成させ、熟成に必要な熱量を外部からの熱エネルギーなしで確保でき、前記硫酸を添加する時に熱量を放出する特性を十分に活用し、熟成に必要な温度を確保するだけでなく、エネルギー消費コストを大幅に削減する。
【0050】
(6)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(4)において、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0~2.0に調整し、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石を採用する。バナジウム鉱石を使用して前記バナジウム含有浸出液中の酸を中和することで、バナジウム鉱石中の酸消費物質が前もって消費され、したがって熟成に必要な酸消費が低減される一方、これにより他の中和剤を置き換えることで、中和のコストが削減され、バナジウムの損失が低減されるだけでなく、廃棄物残渣量も減少される。
【0051】
(7)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(4)~(6)において、化学沈殿法により、ステップ(7)の抽出前にアルミニウム、鉄、マグネシウムを除去し、アルミニウム、鉄、マグネシウムとバナジウムの共抽出問題を解決するだけでなく、氷晶石及びリン酸鉄を得ることができ、資源の回収利用を実現する。
【0052】
(8)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(6)において、前記凝集剤を加えた後、1~2時間撹拌して反応させ、限外濾過膜を使用して濾過して、濾液を得る。前記凝集剤と限外濾過膜による濾過とを組み合わせた方式により、溶液中の微粒子及び一部の陰イオンを効果的に除去することができる。不純物の浄化除去を実現するだけでなく、抽出過程での乳化現象を低減する。
【0053】
(9)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(9)において、前記逆抽出液を拡散透析して、透析液を得、次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得、それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得る。拡散透析の方式により前記逆抽出液中の硫酸を回収する場合、一方で、前記逆抽出液中の硫酸の濃度が比較的高く、アルカリ中和の方式では、アルカリ消費量が多く、しかも溶液自体も数回の浄化を経ており、その不純物含有量が高くなく、アルカリ中和の方式は、不純物イオンを持ち込むとともに、バナジウムの損失を増やし、大量の廃棄物残渣が生成される。拡散透析の方式により前記逆抽出液中の硫酸を回収する場合、コストが比較的低く、不純物イオンを持ち込むことがなく、バナジウムの損失が少なく、廃棄物残渣が生成されない。一方、拡散透析で回収された硫酸溶液は処理せずに直接工程に戻して使用でき、これにより工程プロセスでの硫酸消費を大幅に低減する。
【0054】
(10)本発明のバナジウム電解液の製造方法は、ステップ(9)において、得られた透析液を抽出、逆抽出して二次逆抽出液を得る。二次抽出により、不純物イオンの除去を実現するだけでなく、バナジウムイオンの濃度がバナジウム電解液に必要な濃度に達することを確保するように、バナジウムイオンの濃度の濃縮を実現することができる。
【0055】
(11)本発明のバナジウム電解液の不純物イオン濃度のうち、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムは30mg/L以下であり、ケイ素イオンは5mg/L以下であり、その他の不純物イオンは全て「GB/T 37204~2018-全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」標準の一級品の要件を満たしている。一部の不純物は、GB/T 37204~2018「全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」標準の一級品の要件よりもはるかに低いが、特に、比較的除去し難い鉄、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、シリコン、クロム、モリブデン等である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の各実施例のうち、具体的な条件が明記されていないものは、従来の条件又は製造業者によって提案された条件に従って行われる。使用される試薬又は機器のうち、メーカーが明記されていないものは、全て市場から購入できる従来の製品であり、異なるメーカー及びモデルの原材料は、本発明の技術方案の実施及び技術的効果の実現に影響を与えない。
【0057】
実施例1
本実施例のバナジウム電解液の製造方法は、以下のステップを含む。
【0058】
(1)バナジウム鉱石を取り、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕する。前記バナジウム鉱石に水を加えてから、その中に0.05mL・min-1・g-1の速度で質量濃度が90%である硫酸溶液を加え、50℃で均一に混合して、混合物を得る。
【0059】
ここで、前記水と前記バナジウム鉱石の質量比は、0.1:1である。前記硫酸溶液と前記バナジウム鉱石の質量比は1:12である。
【0060】
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物を熟成させて、熟成材を得、前記熟成材を、粒度が5mm未満になるまで破砕する。
【0061】
ここで、前記熟成は、保湿環境下で行われ、前記熟成の温度は40℃であり、時間は12時間より長い。
【0062】
(3)ステップ(2)で得られた前記熟成材を水で10℃で浸出して、バナジウム含有浸出液を得る。
【0063】
ここで、水と前記熟成材の質量比は、0.5:1である。前記バナジウム含有浸出液は、固液分離により得ることができる。固液分離後、前記バナジウム含有浸出液及び浸出残渣が得られる。
【0064】
(4)先ずステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0に調整してから、前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加えて、5℃で不純物除去反応を行い、反応液を濾過した後、第1の浄化液を得る。
【0065】
ここで、前記第1の不純物除去剤は、フッ化ナトリウムとフッ化アンモニウムとが30:8の重量比で混合されてなる。前記第1の不純物除去剤と前記バナジウム含有浸出液中のアルミニウムイオンのモル比は0.5:1である。前記第1の不純物除去剤によりアルミニウムイオンが除去されて、氷晶石であるヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムが得られる。
【0066】
本実施例の好ましい実施形態として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0に調整するには、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石を採用する。pH値を1.0に調整した後、固液分離の方式により前記バナジウム含有浸出液及び湿鉱材を得る。なお、本実施例の代替可能な実施形態として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.0に調整するには、化学試薬を採用しても良い。
【0067】
資源の十分な利用を促進するために、前記ステップ(1)の前記バナジウム鉱石にステップ(4)で生成された前記湿鉱材が混ざっていても良い。
【0068】
(5)ステップ(4)で得られた前記第1の浄化液に酸化剤を加え、前記第1の浄化液のpH値を2.5に調整してから、その中にリン酸鉄二水和物種結晶及び第2の不純物除去剤を加え、5℃で不純物除去反応を行い、得られた反応液を濾過して第2の浄化液を得る。
【0069】
ここで、前記酸化剤は、塩素酸ナトリウムであり、前記酸化剤と前記第1の浄化液中の2価鉄イオンのモル比は0.6:1である。
【0070】
前記第2の不純物除去剤はリン酸ナトリウムである。前記第2の不純物除去剤と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は2:1である。前記第2の不純物除去剤により鉄イオンが除去されて、リン酸鉄が得られる。
【0071】
前記リン酸鉄二水和物種結晶と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は0.1:1である。
【0072】
(6)ステップ(5)で得られた前記第2の浄化液に還元剤を加え、前記第2の浄化液中の5価バナジウムを4価バナジウムに還元し、前記第2の浄化液のpH値を2.2に調整してから、その中に凝集剤を加え、2時間撹拌して反応させ、限外濾過膜を使用して濾過して、濾液を得る。
【0073】
ここで、前記還元剤は、亜硫酸ナトリウムであり、前記還元剤と前記第2の浄化液中の5価バナジウムイオンのモル比は3:1である。
【0074】
前記凝集剤は、ポリアクリルアミドである。前記凝集剤と前記第2の浄化液中のバナジウムイオンのモル比は0.01:1である。
【0075】
(7)ステップ(6)で得られた前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得る。
【0076】
なお、抽出時にラフィネートも生成されるが、資源の十分な利用を実現するために、中和・不純物除去を経た水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水、或いは前記ステップ(1)で前記バナジウム鉱石に加えられる水に使用され得る。
【0077】
ここで、前記抽出液は、下記の重量部の原料を含む。即ち、抽出剤25部、リン酸トリブチル4部、スルホン化灯油65部。前記抽出剤は、P204とP507とが1:9の重量比で混合されてなる。前記濾液と抽出液の体積比は1:0.5である。
【0078】
(8)ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を、pH値が1.5である硫酸液で洗浄してから、2.0mol/Lの硫酸溶液で逆抽出して、逆抽出液を得る。
【0079】
ここで、pH値が1.5である硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は0.5:1である。
【0080】
2.0mol/Lの硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は0.3:1である。
【0081】
資源の十分な利用を実現するために、前記硫酸溶液で洗浄された水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水に使用され得る。
【0082】
(9)ステップ(8)で得られた前記逆抽出液を拡散透析し、拡散透析膜を通して硫酸溶液を回収し、透析液を得る。次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得る。それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得る。
【0083】
適切な濃度のバナジウム電解液を得るために、バナジウム電解液に水及び/又は硫酸溶液を加えても良いが、前記バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度を1.8mol/Lに調整し、硫酸根イオン濃度を4.5mol/Lに調整する。ここで、前記硫酸溶液の質量濃度は98%である。
【0084】
ここで、前記拡散透析において、前記逆抽出液の流速は0.30×10-3/(h.m)であり、水と前記逆抽出液の流速比は1:1である。本実施例において、抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得るが、ステップ(7)、(8)と同じ方式で行っても良いし、実際の状況に従って他の試薬を選んで抽出及び逆抽出を行っても良い。
【0085】
資源の十分な利用を実現するために、拡散透析膜を通して回収した硫酸溶液は、ステップ(1)で加えられる水又は硫酸溶液に使用され得る。
【0086】
実施例2
本実施例のバナジウム電解液の製造方法は、以下のステップを含む。
【0087】
(1)バナジウム鉱石を取り、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕する。前記バナジウム鉱石に水を加えてから、その中に10mL・min-1・g-1の速度で質量濃度が94%である硫酸溶液を加え、130℃で均一に混合して、混合物を得る。
【0088】
ここで、前記水と前記バナジウム鉱石の質量比は、0.2:1である。前記硫酸溶液と前記バナジウム鉱石の質量比は1:4である。
【0089】
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物を熟成させて熟成材を得、前記熟成材を、粒度が5mm未満になるまで破砕する。
【0090】
ここで、前記熟成は、保湿環境下で行われ、前記熟成の温度は130℃であり、時間は12時間より長い。
【0091】
(3)ステップ(2)で得られた前記熟成材を水で50℃で浸出して、バナジウム含有浸出液を得る。
【0092】
ここで、水と前記熟成材の質量比は5:1である。前記バナジウム含有浸出液は、固液分離により得ることができる。固液分離後、前記バナジウム含有浸出液及び浸出残渣が得られる。
【0093】
(4)先ずステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.5に調整してから、前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加え、90℃で不純物除去反応を行い、反応液を濾過した後、第1の浄化液が得られる。
【0094】
ここで、前記第1の不純物除去剤は、フッ化カリウムである。本実施例の代替可能な実施形態として、前記第1の不純物除去剤は、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウムのうちの一種又は複数種であっても良い。前記第1の不純物除去剤と前記バナジウム含有浸出液中のアルミニウムイオンのモル比は5:1である。前記第1の不純物除去剤によりアルミニウムイオンが除去されて、氷晶石であるヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムが得られる。
【0095】
本実施例の好ましい実施態様として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.5に調整し、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石を採用する。pH値を1.5に調整した後、固液分離の方式により前記バナジウム含有浸出液及び湿鉱材を得る。なお、本実施例の代替可能な実施形態として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を1.5に調整するには、化学試薬を採用しても良い。
【0096】
資源の十分な利用を促進するために、前記ステップ(1)の前記バナジウム鉱石は、ステップ(4)で生成された前記湿鉱材が混ざっていても良い。
【0097】
(5)ステップ(4)で得られた前記第1の浄化液に酸化剤を加え、前記第1の浄化液のpH値を2.0に調整してから、その中にリン酸鉄二水和物種結晶及び第2の不純物除去剤を加え、90℃で不純物除去反応を行い、得られた反応液を濾過して、第2の浄化液を得る。
【0098】
ここで、前記酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムである。前記酸化剤と前記第1の浄化液中の2価鉄イオンのモル比は0.2:1である。
【0099】
前記第2の不純物除去剤は、リン酸である。本実施例の代替可能な実施形態として、前記第2の不純物除去剤は、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素一ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素一カリウム、リン酸水素アンモニウムのうちの一種又は複数種であっても良い。前記第2の不純物除去剤と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は1.2:1である。前記第2の不純物除去剤により鉄イオンが除去されて、リン酸鉄が得られる。
【0100】
前記リン酸鉄二水和物種結晶と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は0.2:1である。
【0101】
(6)ステップ(5)で得られた前記第2の浄化液に還元剤を加え、前記第2の浄化液中の5価バナジウムを4価バナジウムに還元し、前記第2の浄化液のpH値を1.7に調整してから、その中に凝集剤を加え、2時間攪拌して反応させ、限外濾過膜を使用して濾過して、濾液を得る。
【0102】
ここで、前記還元剤は二酸化硫黄である。本実施例の代替可能な実施形態として、前記還元剤は、硫黄単体、亜鉛粉末、有機硫黄化合物、シュウ酸塩、アスコルビン酸、一酸化炭素のうちの一種又は複数種であっても良く、前記還元剤と前記第2の浄化液中の5価バナジウムイオンのモル比は1:1である。
【0103】
前記凝集剤は、ポリアクリル酸ナトリウムである。前記凝集剤と前記第2の浄化液中のバナジウムイオンのモル比は0.1:1である。
【0104】
(7)ステップ(6)で得られた前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得る。
【0105】
なお、抽出時にラフィネートも生成されるが、資源の十分な利用を実現するために、中和・不純物除去を経た水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水、或いは前記ステップ(1)で前記バナジウム鉱石に加えられる水に使用され得る。
【0106】
ここで、前記抽出液は、下記の重量部の原料を含む。即ち、抽出剤18部、リン酸トリブチル7部、スルホン化灯油86部。前記抽出剤はN235である。前記濾液と抽出液の体積比は1:0.2である。
【0107】
(8)ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を、pH値が2.0である硫酸溶液で洗浄してから、2.5mol/Lの硫酸溶液で逆抽出して、逆抽出液を得る。
【0108】
ここで、pH値が2.0である硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は5:1である。
【0109】
2.5mol/Lの硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は0.05:1である。
【0110】
資源の十分な利用を実現するために、前記硫酸溶液で洗浄された水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水に使用され得る。
【0111】
(9)ステップ(8)で得られた前記逆抽出液を拡散透析し、拡散透析膜を通して硫酸溶液を回収し、透析液を得る。次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得る。それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得る。
【0112】
適切な濃度のバナジウム電解液を得るために、バナジウム電解液に水及び/又は硫酸溶液を加えても良いが、前記バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度を1.3mol/Lに調整し、硫酸根イオン濃度を4.2mol/Lに調整する。ここで、前記硫酸溶液の質量濃度は94%である。
【0113】
ここで、前記拡散透析において、前記逆抽出液の流速は0.15×10-3/(h.m)であり、水と前記逆抽出液の流速比は0.5:1である。
【0114】
資源の十分な利用を実現するために、拡散透析膜を通して回収した硫酸溶液は、ステップ(1)で加えられる水又は硫酸溶液に使用され得る。
【0115】
実施例3
本実施例のバナジウム電解液の製造方法は、以下のステップを含む。
【0116】
(1)バナジウム鉱石を取り、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕する。前記バナジウム鉱石に水を加えてから、その中に5mL・min-1・g-1の速度で質量濃度が98%である硫酸溶液を加え、90℃で均一に混合して、混合物を得る。
【0117】
ここで、前記水と前記バナジウム鉱石の質量比は、0.1:1である。前記硫酸溶液と前記バナジウム鉱石の質量比は1:20である。
【0118】
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物を熟成させて熟成材を得、前記熟成材を、粒度が5mm未満になるまで破砕する。
【0119】
ここで、前記熟成は、保湿環境下で行われ、前記熟成の温度は85℃であり、時間は12時間より長い。
【0120】
(3)ステップ(2)で得られた前記熟成材を水で90℃で浸出して、バナジウム含有浸出液を得る。
【0121】
ここで、水と前記熟成材の質量比は2.5:1である。前記バナジウム含有浸出液は、固液分離により得ることができる。固液分離後、前記バナジウム含有浸出液及び浸出残渣が得られる。
【0122】
(4)先ずステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を2.0に調整してから、前記バナジウム含有浸出液に第1の不純物除去剤を加え、47℃で不純物除去反応を行い、反応液を濾過した後、第1の浄化液が得られる。
【0123】
ここで、前記第1の不純物除去剤は、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムである。前記第1の不純物除去剤と前記バナジウム含有浸出液中のアルミニウムイオンのモル比は10:1である。前記第1の不純物除去剤によりアルミニウムイオンが除去されて、氷晶石であるヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムが得られる。
【0124】
本実施例の好ましい実施態様として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を2.0に調整し、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石を採用する。pH値を2.0に調整した後、固液分離の方式により前記バナジウム含有浸出液及び湿鉱材を得る。なお、本実施例の代替可能な実施形態として、ステップ(3)で得られた前記バナジウム含有浸出液のpH値を2.0に調整するには、化学試薬を採用しても良い。
【0125】
資源の十分な利用を促進するために、前記ステップ(1)の前記バナジウム鉱石は、ステップ(4)で生成された前記湿鉱材が混ざっていても良い。
【0126】
(5)ステップ(4)で得られた前記第1の浄化液に酸化剤を加え、前記第1の浄化液のpH値を1.5に調整してから、その中にリン酸鉄二水和物種結晶及び第2の不純物除去剤を加え、45℃で不純物除去反応を行い、得られた反応液を濾過して、第2の浄化液を得る。
【0127】
ここで、前記酸化剤は、過酸化水素であり、前記酸化剤と前記第1の浄化液中の2価鉄イオンのモル比は1:1である。
【0128】
前記第2の不純物除去剤は、リン酸カリウムである。前記第2の不純物除去剤と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は0.5:1である。前記第2の不純物除去剤により鉄イオンが除去されて、リン酸鉄が得られる。
【0129】
前記リン酸鉄二水和物種結晶と前記第1の浄化液中の鉄イオンのモル比は0.01:1である。
【0130】
(6)ステップ(5)で得られた前記第2の浄化液に還元剤を加え、前記第2の浄化液中の5価バナジウムを4価バナジウムに還元し、前記第2の浄化液のpH値を2.0に調整してから、その中に凝集剤を加え、1時間撹拌して反応させ、限外濾過膜を使用して濾過して、濾液を得る。
【0131】
ここで、前記還元剤は、硫黄単体と亜鉛粉末とが1:1の重量比で混合されてなる。前記還元剤と前記第2の浄化液中の5価バナジウムイオンのモル比は2:1である。
【0132】
前記凝集剤は、ポリアクリルアミドである。前記凝集剤と前記第2の浄化液中のバナジウムイオンのモル比は0.05:1である。
【0133】
(7)ステップ(6)で得られた前記濾液と抽出液とを混合し、抽出してバナジウムを担持した有機相を得る。
【0134】
なお、抽出時にラフィネートも生成されるが、資源の十分な利用を実現するために、中和・不純物除去を経た水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水、或いは前記ステップ(1)で前記バナジウム鉱石に加えられる水に使用され得る。
【0135】
ここで、前記抽出液は、下記の重量部の原料を含む。即ち、抽出剤10部、リン酸トリブチル10部、スルホン化灯油76部。前記抽出剤は、P204と、N235と、P507とが1:3:1の重量比で混合されてなる。前記濾液と抽出液の体積比は1:1である。
【0136】
(8)ステップ(7)で得られた前記バナジウムを担持した有機相を、pH値が1.8である硫酸溶液で洗浄してから、1.5mol/Lの硫酸溶液で逆抽出して、逆抽出液を得る。
【0137】
ここで、pH値が1.8である硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は2.7:1である。
【0138】
1.5mol/Lの硫酸溶液と前記バナジウムを担持した有機相の体積比は0.6:1である。
【0139】
資源の十分な利用を実現するために、前記硫酸溶液で洗浄された水は、前記ステップ(3)の浸出に用いられる水に使用され得る。
【0140】
(9)ステップ(8)で得られた前記逆抽出液を拡散透析し、拡散透析膜を通して硫酸溶液を回収し、透析液を得る。次いで、得られた透析液を抽出、逆抽出して、二次逆抽出液を得る。それから、前記二次逆抽出液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得る。
【0141】
適切な濃度のバナジウム電解液を得るために、前記バナジウム電解液に水及び/又は硫酸溶液を加えても良いが、前記バナジウム電解液中のバナジウムイオン濃度を1.5mol/Lに調整し、硫酸根イオン濃度を4.0mol/Lに調整する。ここで、前記硫酸溶液の質量濃度は90%である。
【0142】
ここで、前記拡散透析において、前記逆抽出液の流速は0.22×10-3/(h.m)であり、水と前記逆抽出液の流速比は1.5:1である。
【0143】
資源の十分な利用を実現するために、拡散透析膜を通して回収した硫酸溶液は、ステップ(1)で加えられる水又は硫酸溶液に使用され得る。
【0144】
実施例4
本実施例は、ステップ(9)で二次抽出及び逆抽出が行われない点を除いて、実施例1と同様のバナジウム電解液の製造方法を採用する。
【0145】
本実施例において、ステップ(9)は、具体的には、ステップ(8)で得られた前記逆抽出液を拡散透析し、拡散透析膜を通して硫酸溶液を回収し、透析液を得ることと、次いで、得られた透析液を活性炭吸着カラムに通して有機相を取り除いて、バナジウム電解液を得ることとを含む。
【0146】
実施例5
本実施例は、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石にステップ(4)で生成された前記湿鉱材が混ざって、バナジウム鉱石混合物が形成されるとともに、前記水と前記バナジウム鉱石の質量比、及び前記硫酸と前記バナジウム鉱石混合物の質量比が変更された点を除いて、実施例1と同様のバナジウム電解液の製造方法を採用する。
【0147】
本実施例において、ステップ(1)は、具体的には、バナジウム鉱石を取り、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕することと、破砕された前記バナジウム鉱石と、ステップ(4)で生成された前記湿鉱材とを質量比1:2.5で混合して、バナジウム鉱石混合物を得ることと、前記バナジウム鉱石混合物に水を加えてから、その中に0.05mL・min-1・g-1の速度で質量濃度が90%である硫酸溶液を加え、50℃で均一に混合して、混合物を得ることとを含む。
【0148】
ここで、前記水と前記バナジウム鉱石混合物の質量比は0.001:1である。前記硫酸溶液と前記バナジウム鉱石混合物の質量比は1:13である。
【0149】
実施例6
本実施例は、ステップ(1)の前記バナジウム鉱石にステップ(4)で生成された前記湿鉱材が混ざって、バナジウム鉱石混合物が形成されるとともに、加えられる水を、ステップ(9)で逆流拡散透析膜により回収された硫酸溶液に置き換え、質量濃度が90%である硫酸溶液と前記バナジウム鉱石の質量比が変更された点を除いて、実施例1と同様のバナジウム電解液の製造方法を採用する。
【0150】
本実施例において、ステップ(1)は、具体的には、バナジウム鉱石を取り、前記バナジウム鉱石を、粒度が2mm未満でかつ粒度が1~2mmの範囲内にあるバナジウム鉱石の質量が50%以上を占める粉末に破砕することと、破砕された前記バナジウム鉱石とステップ(4)で生成された前記湿鉱材を質量比1:0.6で混合して、バナジウム鉱石混合物を得ることと、前記バナジウム鉱石混合物にステップ(9)で逆流拡散透析膜により回収された硫酸溶に0.05mL・min-1・g-1の速度で質量濃度が90%である硫酸溶液を加え、50℃で均一に混合して、混合物を得ることとを含む。
【0151】
ここで、逆流拡散透析膜により回収された硫酸溶液は、濃度が1.1mol/Lであり、かつ前記バナジウム鉱石混合物との質量比が0.04:1である。質量濃度が90%である前記硫酸溶液と前記バナジウム鉱石混合物との質量比は1:14である。
【0152】
ステップ(9)で逆流拡散透析膜により回収された硫酸溶液を加えることにより、水を加えるステップを置き換えることができる一方、質量濃度が90%である硫酸溶液の使用量を低減することができる。
【0153】
効果比較例
本発明に記載のバナジウム電解液の製造方法の技術的効果を検証するために、以下の試験を行う。
【0154】
実施例1~4、比較例1~3で得られたバナジウム電解液を取り、GB/T 37204~2018「全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」の規定方法に従って検測し、前記バナジウム電解液の成分を測定する。
【0155】
実験の結果は、以下の通りである。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】
【0156】
上記の実施例において、実施例4から分かるように、抽出が1回だけ行われる場合、電解液中の一部の不純物イオンがGB/T 37204~2018「全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」標準要件を満たし難く、残りの実施例では、不純物イオンが全てGB/T 37204~2018「全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」標準中の一級品の要件を満たし、明らかな差異がない。実施例5~6では、GB/T 37204~2018「全バナジウムレドックスフロー電池用電解液」標準中の一級品要件を満たす上で、熟成用の酸及び水の使用量がある程度低下しており、実施例1と比較して、質量濃度が90%である前記硫酸溶液の使用量を大幅に低減し、したがって資源化利用をより良好に実現する。
【0157】
技術常識から分かるように、本発明は、その精神的本質又は必要な特徴から逸脱しない他の実施形態によって実現され得る。したがって、上記の開示された実施形態は、各方面で例示に過ぎず、唯一のものではない。本発明の範囲内又は本発明と同等の範囲内の全ての変更は本発明に含まれる。