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特許7579919リポ蛋白コレステロールの定量方法及び定量キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リポ蛋白コレステロールの定量方法及び定量キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/92 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01N33/92 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023111157
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2018149632の分割
【原出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2023118906
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 成則
(72)【発明者】
【氏名】平尾 裕子
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1998/026090(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/011556(WO,A1)
【文献】特開2000-325097(JP,A)
【文献】国際公開第2013/154119(WO,A1)
【文献】特開2001-095600(JP,A)
【文献】特開平09-000299(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066760(WO,A1)
【文献】特開平11-018798(JP,A)
【文献】特開2013-148589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/92
C12Q 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈した被検試料中のHDL(高密度リポタンパク質)コレステロール以外のリポ蛋白コレステロールを反応系外に移行させる第一工程と、反応系内に残存するHDLコレステロールを定量する第二工程とを含むHDLコレステロールの定量において、
前記第一工程に供する前記希釈した被検試料中のHDLコレステロールの濃度が19.1mg/dL以下であり、
前記第一工程において1.2U/mL以上のペルオキシダーゼを存在させることによりHDLコレステロールの測定値の低下を抑制する方法。
【請求項2】
前記希釈の倍率が2~40倍である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一工程において1.2~50.0U/mLのペルオキシダーゼを存在させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第一工程に供する前記希釈した被検試料中のHDLコレステロールの濃度が2.2~7.8mg/dLである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの方法に用いられるHDLコレステロールの定量キットであって、HDLコレステロール以外のリポ蛋白コレステロールを反応系外に移行させる第一試薬と、反応系内に残存するHDLコレステロールを定量する第二試薬とを含み、前記第一試薬が1.2U/mL以上のペルオキシダーゼを含む、定量キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料中のリポ蛋白コレステロールを定量する方法において、リポ蛋白コレステロールの測定値の低下を改善する方法、及びこの方法に用いられる定量キットに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野において、測定対象成分から過酸化水素を生成させ、この過酸化水素を定量することにより測定対象成分の試料中濃度を測定する方法が広く利用されている。このような方法においては、測定対象成分以外の物質から生成される過酸化水素が測定値の誤差要因となるため、測定対象成分以外の物質から生成された過酸化水素を、カタラーゼを作用させて水と酸素に分解する方法や、ペルオキシダーゼを用いてフェノール系又はアニリン系水素供与体化合物と反応させて無色キノンに転化する方法によって、消去する方法が一般的には用いられている。例えば、中性脂肪測定用試薬では内因性遊離グリセロールの消去系が使用され、クレアチニン測定試薬ではクレアチンとザルコシンの消去系が使用され、HDL-コレステロールまたはLDL-コレステロール測定用試薬では目的成分以外のリポ蛋白中コレステロールの消去系が使用されている。
このうち、カタラーゼを用いた消去系がよく使用されているが、試料中にカタラーゼを阻害する成分が混入することによって妨害を受ける場合がある。
【0003】
リポ蛋白質中のコレステロールを定量する方法においてカタラーゼを用いる場合には、一般的には、被検試料中の測定対象外のリポ蛋白質のコレステロールを反応系外に移行させる第一工程(工程(1))においてカタラーゼが使用される。すなわち、工程(1)において、測定対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白に含まれるコレステロールにコレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素がカタラーゼにより除去される。
【0004】
続く第二工程(工程(2))では、前記工程(1)で消去されずに残存する測定対象となるリポ蛋白中のコレステロールにコレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと水素供与体および水素受容体によりキノン色素に変換する。該キノン色素の吸光度を測定することにより、測定対象のリポ蛋白質中のコレステロールが定量される。
その際、工程(1)から存在するカタラーゼの作用を阻害するために、例えばアジ化ナトリウムのようなカタラーゼ阻害剤を工程(2)に加えてカタラーゼを阻害する。しかし、カタラーゼが完全に阻害される前に、工程(2)で生成された測定対象となるリポ蛋白中のコレステロールに由来する過酸化水素が一部除去される場合がある。
【0005】
このようなカタラーゼによる過酸化水素の一部の除去は、通常の測定であればコレステロールの測定値に大きな影響を与えるものではない。しかし、従来、測定値が測定可能な適正範囲を大幅に超えた場合や、被検試料中の物質によって測定値が悪影響を受ける場合には、被検試料を希釈してコレステロールの測定値が低い領域で測定するケースがあった。このようなケースでは、カタラーゼによる過酸化水素の一部の除去による影響が大きくなり、コレステロールの測定値自体が低下する現象が起こり、正確な測定ができない原因となっていた。
【0006】
一方、第一工程と第二工程を用いてリポ蛋白中のコレステロールを定量する方法として、特許文献1には、第一工程でHDL以外のリポ蛋白をカタラーゼで消去し、第二工程でHDLに特異的に作用する界面活性剤を用いてHDLを測定する方法が開示されている。また、特許文献2には、第一工程でsmall, dense LDL以外のリポ蛋白のコレステロールをsmall, dense LDL以外に作用する界面活性剤を用いて消去し、次いで残存したsmall, dense LDL中のコレステロールを定量する方法が開示されている。更に、特許文献3には、トリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)の測定方法として、TRL以外のリポ蛋白のコレステロールをTRL以外に作用する界面活性剤を用いて消去し、次いで残存したTRL中のコレステロールを定量する方法が開示されている。しかしながら、いずれの特許文献にも、希釈検体中のリポ蛋白コレステロール測定値の低下を抑制する方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO98/26090号公報
【文献】特開2013-148589号公報
【文献】特開2017-209035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、被検試料中のリポ蛋白コレステロールを定量する方法において、被検試料を希釈した場合でも、リポ蛋白コレステロールの測定値の低下を抑制し、コレステロールの低測定値における検量線の直線性を改善する方法、及びこの方法に用いられる定量キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、ペルオキシダーゼを用いることにより、カタラーゼを用いる方法と比較して、被検試料を希釈した場合でも、リポ蛋白コレステロールの測定値の低下が改善され、コレステロールの低測定値における検量線の直線性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]希釈した被検試料中のHDL(高密度リポタンパク質)コレステロール以外のリポ蛋白コレステロールを反応系外に移行させる第一工程と、反応系内に残存するHDLコレステロールを定量する第二工程とを含むHDLコレステロールの定量において、前記第一工程に供する前記希釈した被検試料中のHDLコレステロールの濃度が19.1mg/dL以下であり、前記第一工程において1.2U/mL以上のペルオキシダーゼを存在させることによりHDLコレステロールの測定値の低下を抑制する方法。
[2]前記希釈の倍率が2~40倍である、[1]に記載の定量方法。
[3]前記第一工程において1.2~50.0U/mLのペルオキシダーゼを存在させる、[1]または[2]に記載の方法。
前記第一工程において0.5~50.0U/mLのペルオキシダーゼを存在させる、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記第一工程に供する前記希釈した被検試料中のHDLコレステロールの濃度が2.2~7.8mg/dLである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5][1]~[4]のいずれかの方法に用いられるHDLコレステロールの定量キットであって、HDLコレステロール以外のリポ蛋白コレステロールを反応系外に移行させる第一試薬と、反応系内に残存するHDLコレステロールを定量する第二試薬とを含み、前記第一試薬が1.2U/mL以上のペルオキシダーゼを含む、定量キット。

【発明の効果】
【0011】
本発明により、被検試料を希釈した場合でも、リポ蛋白コレステロールの測定値の低下が抑制され、コレステロールの低測定値における検量線の直線性が改善され、安定してリポ蛋白コレステロールを定量する方法、及びこの方法に用いられる定量キットが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試薬Aと試薬Eの組合せ(比較例4)を用いて試料中のHDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図2】試薬Bと試薬Fの組合せ(実施例10)を用いて試料中のHDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図3】試薬Cと試薬F(実施例11)の組合せを用いて試料中のHDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図4】試薬Dと試薬F(実施例12)の組合せを用いて試料中のHDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図5】試薬Gと試薬Kの組合せ(比較例5)を用いて試料中のLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図6】試薬Hと試薬Lの組合せ(実施例13)を用いて試料中のLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図7】試薬Iと試薬Lの組合せ(実施例14)を用いて試料中のLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図8】試薬Jと試薬Lの組合せ(実施例15)を用いて試料中のLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図9】試薬Mと試薬Qの組合せ(比較例6)を用いて試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図10】試薬Nと試薬Rの組合せ(実施例16)を用いて試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図11】試薬Oと試薬Rの組合せ(実施例17)を用いて試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
図12】試薬Pと試薬Rの組合せ(実施例18)を用いて試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した場合の直線性の評価を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、被検試料中のリポ蛋白コレステロールを定量する方法において、被検試料を希釈して得た希釈検体にペルオキシダーゼを添加することによりリポ蛋白コレステロールの測定値の低下を改善することを特徴とする。
【0014】
リポ蛋白中に含まれるコレステロールとしては、エステル型コレステロール(コレステ
ロールエステル)及び遊離型コレステロールがある。本発明において単に「コレステロー
ル」という場合にはこれらの両者を包含する。本発明において、被検試料を希釈して得た希釈検体中のコレステロールの低測定値とは、通常70.0mg/dL以下であり、更には0.1~50mg/dL、特には0.5~40mg/dLの範囲である。
【0015】
本発明の方法で定量しようとするコレステロールを含むリポ蛋白は、電気泳動法又は超遠心にて分類され、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、small, dense LDL、高密度リポタンパク質(HDL)等が挙げられる。また、リポ蛋白としては、カイロミクロン(カイロミクロンレムナントを含む)、VLDL(VLDLレムナントを含む)及びIDLを合わせた密度1.019g/cm3未満のトリグリセリドリッチリポ蛋白(TRL)を挙げることもできる。
【0016】
本発明における被検試料としては、リポ蛋白を含み、リポ蛋白中のコレステロールを定量しようとするものであれば特に限定されないが、通常、血液(全血、血清及び血漿を包含する)等の体液である。本発明においては、被検試料を生理食塩水等の希釈液で希釈して得た希釈検体を用いてリポ蛋白コレステロールの測定を行う。
【0017】
本発明のリポ蛋白コレステロールの定量方法は、希釈検体にペルオキシダーゼを添加すること以外は、この分野において周知のいずれの方法をも採用することができる。例えば、定量試薬を用い、コレステロールにコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと水素供与体および水素受容体によりキノン色素に変え、該色素を吸光度測定して定量する方法が挙げられる。
本発明におけるペルオキシダーゼの添加量は、通常0.1~100.0U/mLであり、好ましくは0.5~50.0U/mLであり、更に好ましくは1.0~30.0U/mLである。
【0018】
本発明においては、被検試料中の測定対象外のリポ蛋白質のコレステロールを反応系外に移行させ選択的に消去する第一工程(工程(1))と、反応系内に残存する測定対象のリポ蛋白質中のコレステロールを定量する第二工程(工程(2))により本発明の方法を行うと、定量対象となるリポ蛋白中のコレステロールをより正確に定量することができる。
【0019】
本発明において、リポ蛋白に対して「反応する」という言葉を用いる場合は、界面活性剤や酵素によってリポ蛋白の構造が変化し、内部のコレステロールに対して酵素が作用しやすくなることを意味する。
【0020】
本発明における工程(1)では、測定対象外のリポ蛋白質中のコレステロールを選択的に消去する。ここで「消去」とはコレステロールを分解し、かつ、その分解物が次の工程(2)で検出されないようにすることを意味する。測定対象外のリポ蛋白に含まれるコレステロールを選択的に消去する方法としては、被検試料に、コレステロールオキシダーゼ、特定のコレステロールエステラーゼを作用させ、生じた過酸化水素を除去する方法が挙げられる。本発明における工程(1)では、被検試料を希釈して得た希釈検体にペルオキシダーゼを添加する。ペルオキシダーゼの作用により過酸化水素と反応して無色キノンを生じる水素供与体化合物を用いることにより、過酸化水素を無色キノンに転化することができる。工程(1)におけるペルオキシダーゼの添加量は、通常0.1~100.0U/mLであり、好ましくは0.5~50.0U/mLであり、更に好ましくは1.0~30.0U/mLである。
【0021】
なお、第1工程において特定のリポ蛋白中のコレステロールを選択的に消去する方法は、LDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/47005等)やHDLコレステロールの定量方法(例えばWO98/26090等)等に広く採用され、周知となっているものである。本発明の工程(1)も、これらの周知の方法により実施することが可能である。
【0022】
続く工程(2)では、前記工程(1)で消去されずに残存する測定対象となるリポ蛋白中のコレステロールを酵素的に定量する。コレステロールの酵素的な定量方法自体はこの分野において周知であり、例えばコレステロールにコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを作用させ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと水素供与体および水素受容体によりキノン色素に変え、該色素を吸光度測定して定量する方法があげられる。前記工程(1)でコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼを用いる場合には、工程(2)では、工程(1)で用いたコレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼをそのまま用いることができ、新たに添加する必要はない。
【0023】
本発明の工程(1)および工程(2)においては、少なくとも1種の界面活性剤を用いることができる。好適な界面活性剤を用いれば、それぞれの工程における酵素反応を促進することができる。
【0024】
本発明で使用することができるコレステロールオキシダーゼとしては、コレステロールを酸化して過酸化水素を生成する能力を有する酵素であれば特に限定されず、例えば動物又は微生物由来のコレステロールオキシダーゼがあげられる。これらは、遺伝子操作により作られたものでもよく、化学修飾の有無も問わない。また、本発明で使用することができるコレステロールエステラーゼとしては、エステル型コレステロールに作用するものであれば、特に制限されるものではない。
【0025】
本発明で使用する、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの各酵素の使用量は、特に制限されるものではなく、適宜設定できるが、通常、0.001U~2000U/mLで、好ましくは0.1~1000U/mLで使用される。
【0026】
本発明で使用する水素供与体としてはアニリン誘導体が好ましく、アニリン誘導体としてはN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-(3-スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシ-5-アニリン(HMMPS)等があげられる。
【0027】
水素受容体としては4-アミノアンチピリンやメチルベンゾチアゾロンヒドラゾン等を用いることができる。
【0028】
反応液には通常の生化学反応に用いられる各種の緩衝液を使用することができ、緩衝液のpHは5~8の間であるのが好ましい。溶液としては、グッド、トリス、リン酸、グリシンの緩衝溶液が好ましく、グッド緩衝液であるビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシエチル)メタン(Bis-Tris)、ピペラジン-1、4-ビス(2-エタンスルフォン酸)(PIPES)、ピペラジン-1、4-ビス(2-エタンスルフォン酸)、1.5ナトリウム塩、一水和物(PIPES1.5Na)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルフォン酸(BES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルフォン酸(HEPES)およびピペラジン-1、4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルフォン酸)(POPSO)が好ましい。
【0029】
本発明における各工程は、pH5~pH10で行うことが好ましく、pH6~pH8で行うことがさらに好ましい。
【0030】
反応温度は各工程とも20℃~45℃で行うことが好ましく、25℃~40℃で行うことがさらに好ましい。反応時間は各工程とも1~10分間で行うことが好ましく、3~7分で行うことがさらに好ましい。
【0031】
本発明の定量方法を実施するに当たり、用いる試薬を複数の試薬組成物に分けてもよい。本発明においては、試薬としては、少なくとも、測定対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去する第一工程(すなわち工程(1))を行うための試薬組成物(第一試薬)と、測定対象となるリポ蛋白中のコレステロールを測定する工程(すなわち工程(2))を行うための試薬組成物(第二試薬)の2種類の試薬組成物を調製し、これら2種類の試薬組成物を組み合わせたものをリポ蛋白コレステロールの定量キットとすることができる。
【0032】
工程(1)を行うための試薬組成物(第一試薬)には、過酸化水素を消去するペルオキシダーゼが含まれる。第一試薬中のペルオキシダーゼの含有量は、通常0.1~100.0U/mLであり、好ましくは0.5~50.0U/mLであり、更に好ましくは1.0~30.0U/mLである。該試薬組成物(第一試薬)にはさらに、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、アニリン誘導体等の水素供与体、定量対象となるリポ蛋白以外のリポ蛋白中のコレステロールを消去するのに適した界面活性剤などを含んでいてもよい。
【0033】
工程(2)を行うための試薬組成物(第二試薬)には、すべてのリポ蛋白に対して反応する界面活性剤が含まれていてもよい。該試薬組成物(第二試薬)にはさらに、4-アミノアンチピリン等の水素受容体、ペルオキシダーゼ等を含ませることができる。
【0034】
工程(1)を行うための試薬組成物(第一試薬)及び工程(2)を行うための試薬組成物(第二試薬)には、必要に応じて、1価の陽イオン(例えば一価の金属イオン)、2価の陽イオン(例えば二価の金属イオン)もしくはそれらの塩、ポリアニオン(例えばヘパリン、デキストラン硫酸塩、リンタングステン酸塩)、血清アルブミンを添加してもよい。また、各試薬組成物のpHは、中性付近、例えばpH5~pH9、好ましくはpH6~8であり、緩衝液を添加してpHを調整すればよい。
【0035】
本発明の方法により測定対象となるリポ蛋白中のコレステロールを定量するには、被検試料を希釈して得た希釈検体に工程(1)を行うための試薬組成物(第一試薬)を添加して反応させ、次いで工程(2)を行うための試薬組成物(第二試薬)を添加して反応させ、吸光度を測定することにより行えばよい。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1~3、比較例1
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として試薬A~Dを、第二試薬をE~Fを以下の組成になるように調製した。
【0038】
試薬A
グッド緩衝液(pH6.6) 100mmol/L
TOOS 1.5mmol/L
カタラーゼ 600U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.4U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.8U/mL
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物 0.25g/L
【0039】
試薬B
グッド緩衝液(pH6.6) 100mmol/L
TOOS 1.5mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.2U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.4U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.8U/mL
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物 0.25g/L
【0040】
試薬C
グッド緩衝液(pH6.6) 100mmol/L
TOOS 1.5mmol/L
ペルオキシダーゼ 6.5U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.4U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.8U/mL
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物 0.25g/L
【0041】
試薬D
グッド緩衝液(pH6.6) 100mmol/L
TOOS 1.5mmol/L
ペルオキシダーゼ 20.0U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.4U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.8U/mL
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物 0.25g/L
【0042】
試薬E
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 3.5U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 14g/L
【0043】
試薬F
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 14g/L
【0044】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のHDLコレステロール濃度を測定した。
【0045】
試料としては、HDL高濃度検体の原液(希釈倍率1倍)、HDL高濃度検体を生理食塩水で2倍、10倍、20倍、40倍希釈したものの5種類の試料を調製した。各試料中のHDLコレステロール濃度を測定し、得られた測定値(mg/dL)に希釈倍率を乗じた原液換算値(mg/dL)を求めた。原液の測定値を理論値としたときの、各希釈倍率の原液換算値の対理論値%を表1~4に示す。
【0046】
第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Aと試薬Eの組合せ(表1:比較例1)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Bと試薬F(表2:実施例1)、試薬Cと試薬F(表3:実施例2)、試薬Dと試薬F(表4:実施例3)の組合せでは希釈の影響による測定値の低下が改善されており、検体希釈時の測定値の正確性が向上したことが確認された。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
実施例4~6、比較例2
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として試薬G~Jを、第二試薬をK~Lを以下の組成になるように調製した。
【0052】
試薬G
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
カタラーゼ 1200U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 2.7g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 0.3g/L
【0053】
試薬H
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 0.5U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 2.7g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 0.3g/L
【0054】
試薬I
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 2.7g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 0.3g/L
【0055】
試薬J
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 3.5U/mL
コレステロールエステラーゼ 0.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.5U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 2.7g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 0.3g/L
【0056】
試薬K
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 6g/L
【0057】
試薬L
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 6g/L
【0058】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のLDLコレステロール濃度を測定した。
試料としては、LDL高濃度検体の原液(希釈倍率1倍)、及びLDL高濃度検体を生理食塩水で2倍、10倍、20倍、40倍希釈したものの5種類の試料を調製した。各試料中のLDLコレステロール濃度を測定し、得られた測定値(mg/dL)に希釈倍率を乗じた原液換算値(mg/dL)を求めた。原液の測定値を理論値としたときの、各希釈倍率の原液換算値の対理論値%を表5~8に示す。
【0059】
第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Gと試薬Kの組合せ(表5:比較例2)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Hと試薬L(表6:実施例4)、試薬Iと試薬L(表7:実施例5)、試薬Jと試薬L(表8:実施例6)の組合せでは希釈の影響による測定値の低下が改善されており、検体希釈時の測定値の正確性が向上したことが確認された。
【0060】
【表5】

【0061】
【表6】



【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
実施例7~9、比較例3
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として試薬M~Pを、第二試薬をQ~Rを以下の組成になるように調製した。
【0065】
試薬M
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
カタラーゼ 1200U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.6U/mL
スフィンゴミエリナーゼ 2.70U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 0.68g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 1.20g/L
【0066】
試薬N
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 0.5U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.6U/mL
スフィンゴミエリナーゼ 2.70U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 0.68g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 1.20g/L
【0067】
試薬O
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 1.7U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.6U/mL
スフィンゴミエリナーゼ 2.70U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 0.68g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 1.20g/L
【0068】
試薬P
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
TOOS 2.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 3.5U/mL
コレステロールエステラーゼ 1.6U/mL
コレステロールオキシダーゼ 0.6U/mL
スフィンゴミエリナーゼ 2.70U/mL
ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル 0.68g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 1.20g/L
【0069】
試薬Q
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ペルオキシダーゼ 5.0U/mL
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 6g/L
【0070】
試薬R
グッド緩衝液(pH7.0) 100mmol/L
4-アミノアンチピリン 4.0mmol/L
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 6g/L
【0071】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した。
試料としては、sdLDL高濃度検体の原液(希釈倍率1倍)、及びsdLDL高濃度検体を生理食塩水で2倍、10倍、20倍、40倍希釈したものの5種類の試料を調製した。各試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定し、得られた測定値(mg/dL)に希釈倍率を乗じた原液換算値(mg/dL)を求めた。原液の測定値を理論値としたときの、各希釈倍率の原液換算値の対理論値%を表9~12に示す。
【0072】
第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Mと試薬Qの組合せ(表9:比較例3)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Nと試薬R(表10:実施例7)、試薬Oと試薬R(表11:実施例8)、試薬Pと試薬R(表12:実施例9)の組合せでは希釈の影響による測定値の低下が改善されており、検体希釈時の測定値の正確性が向上したことが確認された。
【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
実施例10~12、比較例4
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として上記試薬A~Dを、第二試薬を上記E~Fを用いて、直線性の評価を行った。
【0078】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のHDLコレステロール濃度を測定した。
HDL高濃度検体を生理食塩水に対する検体の比が0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0となるように10段階希釈した試料を測定し、得られた測定値をCLSIガイドラインEP-06Aに則り、直線性の評価を行った。試薬Aと試薬Eの組合せ(比較例4)、試薬Bと試薬Fの組合せ(実施例10)、試薬Cと試薬Fの組合せ(実施例11)、試薬Dと試薬Fの組合せ(実施例12)の結果をぞれぞれ図1、2、3及び4に示す。
【0079】
CLSIガイドラインEP-06Aでは希釈レベルと測定値で多項式回帰解析を行い、希釈レベルと測定値の関係に最も適した多項式回帰のあてはめが統計的に選択され、直線性の評価に用いられる。多項式回帰の選択では、一次回帰のあてはめと、多項式回帰の二次回帰または三次回帰のあてはめの間で有意差検定が行われ、一次回帰と二次回帰および三次回帰の両方のあてはめに有意差が無い場合は一次回帰が選択される。一次回帰と、二次回帰または三次回帰のいずれかのあてはめに有意差がある場合は有意差のある多項式回帰が選択され、一次回帰と、二次回帰および三次回帰の両方のあてはめに有意差がある場合は、標準誤差の小さい多項式回帰のあてはめが選択される。図中、Linear fitは一次回帰のあてはめであり、Nonlinear fitは選択された二次または三次回帰のあてはめであり、Difference plot of nonlinearityは一次回帰のあてはめと選択された多項式回帰のあてはめの差である。希釈レベルと測定値の回帰解析で一次回帰が選択された場合は、その時点で希釈レベルと測定値の関係は直線的であると判断される。多項式回帰が選択された場合はDifference plot of nonlinearityを用いて直線性の評価が行われ、Difference plot of nonlinearityの値が全希釈レベルでゼロに近いほど希釈レベルと測定値の関係は直線的であると見なされる。
【0080】
図1(比較例4)では、Difference plot of nonlinearityの値がゼロから上下に離れており、直線にゆがみがあることが示されている。一方、図2(実施例10)、図3(実施例11)では一次回帰が選択され、希釈レベルと測定値の関係が直線であると判断されている。図4(実施例12)では多項式回帰が選択されているが、図1に比べるとDifference plot of nonlinearityの値がゼロに収束しており、特に希釈レベル1~5の、低値域の直線の歪みが改善されていることが分かる。
【0081】
したがって、第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Aと試薬Eの組合せ(図1:比較例4)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Bと試薬F(図2:実施例10)、試薬Cと試薬F(図3:実施例11)、試薬Dと試薬F(図4:実施例12)の組合せでは直線性が改善したことが確認された。
【0082】
実施例13~15、比較例5
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として上記試薬G~Jを、第二試薬を上記K~Lを用いて、直線性の評価を行った。
【0083】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のLDLコレステロール濃度を測定した。
LDL高濃度検体を生理食塩水に対する検体の比が0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0となるように10段階希釈した試料を測定し、得られた測定値をCLSIガイドラインEP-06Aに則り、実施例10~12、比較例4と同様に直線性の評価を行った。試薬Gと試薬Kの組合せ(比較例5)、試薬Hと試薬Lの組合せ(実施例13)、試薬Iと試薬Lの組合せ(実施例14)、試薬Jと試薬Lの組合せ(実施例15)の結果をぞれぞれ図5、6、7及び8に示す。図5(比較例5)では各希釈レベルのDifference plot of nonlinearityの値がゼロから上下に大きく離れており、直線が大きく歪んでいることが示されている。一方、図6(実施例13)~図8(実施例15)においてはDifference plot of nonlinearityの値が一次回帰が選択され、希釈レベルと測定値の関係が直線であると判断されている。
【0084】
したがって、第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Gと試薬Kの組合せ(図5:比較例5)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Hと試薬L(図6:実施例13)、試薬Iと試薬L(図7:実施例14)、試薬Jと試薬L(図8:実施例15)の組合せでは直線性が改善したことが確認された。
【0085】
実施例16~18、比較例6
第一工程に用いる試薬組成物を第一試薬、第二工程に用いる試薬組成物を第二試薬とし、第一試薬として上記試薬M~Pを、第二試薬を上記Q~Rを用いて、直線性の評価を行った。
【0086】
試料2μLに第一試薬150μLを加え、37℃で5分間反応させた後に、第二試薬50μLを加え5分間反応させ、主波長600nm、副波長700nmの吸光度を測定し、予め作成した検量線に基づき、試料中のsdLDLコレステロール濃度を測定した。
sdLDL高濃度検体を生理食塩水に対する検体の比が0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0となるように10段階希釈した試料を測定し、得られた測定値をCLSIガイドラインEP-06Aに則り、実施例10~12、比較例4と同様に直線性の評価を行った。試薬Mと試薬Qの組合せ(比較例6)、試薬試薬Nと試薬Rの組合せ(実施例16)、試薬Oと試薬Rの組合せ(実施例17)、試薬Pと試薬Rの組合せ(実施例18)の結果をぞれぞれ図9、10、11及び12に示す。図9(比較例6)では各希釈レベルのDifference plot of nonlinearityの値がゼロから上下に大きく離れており、直線が大きく歪んでいることが示されている。一方、図10(実施例16)~図12(実施例18)においてはDifference plot of nonlinearityの値が一次回帰が選択され、希釈レベルと測定値の関係が直線であると判断されている。
【0087】
したがって、第一工程でカタラーゼ、第二工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Mと試薬Qの組合せ(図9:比較例6)と比較して、第一工程でペルオキシダーゼを使用した試薬Nと試薬R(図10:実施例16)、試薬Oと試薬R(図11:実施例17)、試薬Pと試薬R(図12:実施例18)の組合せでは直線性が改善したことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12