(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クリップ取付器具及びクリップの取付方法
(51)【国際特許分類】
B25B 27/20 20060101AFI20241031BHJP
F16B 19/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B25B27/20 B
F16B19/10 B
(21)【出願番号】P 2023114433
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517191091
【氏名又は名称】日本プラスチックス・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】田中 美津次
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-042023(JP,A)
【文献】特開2013-044391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/20
F16B 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面視でΩ状の形状を有し、前後の面が上下端に対し前後方向に膨出して形成された膨出部と、部品のクリップボスを案内するために、
左右方向の中央にΩ状の形状に対して内側に配置され、前記クリップボスの厚さに対して間隔が狭くなるように前後に配置されるクリップボス案内部と、前記クリップボス案内部に形成され、前記クリップボスに形成された嵌合穴に嵌合されるクリップボス嵌合部と、を有するクリップを前記クリップボスに取り付けるためのクリップ取付器具において、
間にクリップ収容部を形成するように両側に配置された2つの把持部を有し、前記クリップを2つの前記把持部の間から挿入して前記クリップ収容部に収容することで、少なくとも前記クリップの前記膨出部を収容可能であり、
前記把持部の先端は、前記クリップが脱落することを防止するために、先端の内面が前記膨出部を係止するように内側に湾曲して形成されている湾曲部を有し、
前記クリップ収容部には、
前記クリップが前記クリップボスに取り付けられた際に、前記クリップボスの嵌合穴に嵌合した前記クリップボス嵌合部が離脱しないように、前記クリップボス案内部の前後に配置され、前記クリップボス案内部の間隔が広がる方向への移動を規制する案内部規制部が設けられていることを特徴とするクリップ取付器具。
【請求項2】
前記案内部規制部は、前記クリップボス案内部との間に、0.05mmから1.0mm程度の隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のクリップ取付器具。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載のクリップ取付器具を使用したクリップのクリップボスへの取り付け方法において、
(1)前記クリップの先端側を上方にして配置するクリップ配置工程
(2)配置されたクリップに対して、クリップ取付器具の2つの把持部の間のクリップ収容部に挿入されるように上方からクリップ取付器具を挿入収容工程
(3)収容された前記クリップを移動してクリップボスにクリップボス案内部を挿入し、クリップボスの嵌合穴にクリップボス嵌合部を嵌合する嵌合工程
(4)クリップ取付器具を引き上げてクリップを開放する開放工程
を含むことを特徴とするクリップのクリップボスへの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車内装部品を本体パネル等に取り付ける際に使用されるクリップをクリップボスに取り付けるためのクリップ取付器具及びクリップの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の内装に使用される内装材は、自動車本体側の本体パネルに対してクリップ等を用いて取り付けられているものが多い。内装材取り付け用のクリップは多数の形態が提案されている。こうした内装材取付用のクリップの中で、内装材にクリップボスを設け、このクリップボスにクリップを取り付けて使用されるものがある(例えば、特許文献1)。こうしたクリップは、内装部品のクリップボスを設けることで様々な内装部品に適用可能であるという有利な効果がある。また、予めクリップが内装部品に取り付けられている状態で本体パネルにアッセンブリーするので、アッセンブリー時にクリップを一つ一つ部品箱から取り出して取り付ける必要がなく、本体パネルへのアッセンブリーにおける効率化に資するという効果も奏する。
【0003】
しかし、内装部品のクリップボスにクリップを取り付ける際には、クリップの把持、クリップの移動、クリップボスへの取り付け及びクリップの開放という工程が必要であり、ロボットの自動化が難しかった。そのため、人間により手動で取り付けられていたという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、クリップを内装部品のクリップボスに取り付ける際に、クリップの把持及び開放という工程を簡略化し、クリップ取付器具を移動させるだけで内装部品にクリップを取り付けることができるクリップ取付器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。
本発明にかかるクリップ取付器具は、
側面視でΩ状の形状を有し、前後の面が上下端に対し前後方向に膨出して形成された膨出部と、部品のクリップボスを案内するためのクリップボス案内部と、前記クリップボス案内部に形成され、前記クリップボスに形成された嵌合穴に嵌合されるクリップボス嵌合部と、を有するクリップを前記クリップボスに取り付けるためのクリップ取付器具において、
間にクリップ収容部を形成するように両側に配置された2つの把持部を有し、前記クリップを2つの前記把持部の間から挿入して前記クリップ収容部に収容することで、少なくとも前記クリップの前記膨出部を収容可能であり、
前記把持部の先端は、前記クリップが脱落することを防止するために、先端の内面が前記膨出部を係止するように内側に湾曲して形成されている湾曲部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るクリップ取付器具によれば、クリップに対して把持部の間から挿入するだけで、特に把持部を狭くして積極的に挟持するといった動作をすることなく、把持部の先端に形成された湾曲部によってクリップを脱落させることなく把持することができる。そのため、クリップを掴み取るには単にクリップ取付器具をクリップに対して接近させるという移動だけでクリップを把持することができる。一方、クリップボスに取り付けた後は、クリップボス嵌合部がクリップボスの嵌合穴に嵌合されクリップボスに固定されるので、単にクリップ取付器具を遠ざけるだけでクリップを開放させることができる。
【0008】
また、本発明にかかるクリップ取付器具において、前記クリップ収容部には、前記クリップの前記クリップボス案内部の移動を規制する案内部規制部が設けられていることを特徴とするものであってもよい。このような構成を採用することによって、クリップボスに取り付けたクリップからクリップ取付器具を外す際に、クリップボス嵌合部が案内規制部によってクリップボスの嵌合穴から外れる移動が防止されるため、クリップが誤ってクリップボスから離脱することを低減することができる。
【0009】
さらに、本発明にかかるクリップ取付器具において、前記案内部規制部は、前記クリップボス案内部との間に、0.05mmから1.0mm程度の隙間が設けられていることを特徴とするものであってもよい。かかる範囲に設定することで、クリップをクリップボスに取り付ける妨げとならず、また、クリップからクリップ取付器具を外す際に、クリップのクリップボス嵌合部が嵌合穴から外れるのを防止し、効果的にクリップボスにクリップを固定させることができる。
【0010】
さらに、本発明は、前述したクリップ取付器具を使用したクリップのクリップボスへの取り付け方法を提供する。本発明にかかる取り付け方法は、
(1)前記クリップの先端側を上方にして配置するクリップ配置工程
(2)配置されたクリップに対して、クリップ取付器具の2つの把持部の間のクリップ収容部に挿入されるように上方からクリップ取付器具を挿入収容工程
(3)収容された前記クリップを移動してクリップボスにクリップボス案内部を挿入し、クリップボスの嵌合穴にクリップボス嵌合部を嵌合する嵌合工程
(4)クリップ取付器具を引き上げてクリップを開放する開放工程
とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる取り付け方法によれば、クリップを把持する際には、クリップ取付器具の把持部の幅を狭めて挟持するという工程を必要とせず、クリップ収容部に挿入するという動作のみでクリップを掴み取ることができる。その後、クリップをクリップボスの上方に移動し、クリップボスをクリップボス案内部に挿入することでクリップボスにクリップを固定することができる。クリップ取付器具を外す際には、把持部同士を広げるという動作をすることなく、単にクリップに対して引き離すのみでクリップから離脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるクリップ200の斜視図及び側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるクリップ取付器具100の斜視図及び側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるクリップボス300斜視図である。
【
図4】
図4は、クリップ200をクリップボス300に取り付ける取付工程を示す図である。
【
図5】
図5は、クリップ200をクリップボス300に取り付ける取付工程を示す図である。
【
図6】
図6は、クリップ200をクリップボス300に取り付ける取付工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、実施形態にかかるクリップ取付器具100について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0014】
まず、はじめに、本発明にかかるクリップ取付器具100で使用されるクリップ200の実施形態について説明する。
図1に実施形態にかかるクリップの斜視図(
図1A)及び側面図(
図1B)が示されている。なお、説明の便宜上、
図1における矢印方向をそれぞれ上下方向、左右方向及び前後方向として説明する。クリップ200は、
図1に示すように上方方向の端部に左右方向からの側面視で三角形状となる頂点210を有し、下方側は開放された開放部220を有している。上下の中央近傍では前後方向に膨出した膨出部230を有しており、全体的に側面視で上下端部に対して中央が膨らんだΩ状に形成されている。また、クリップ200の左右方向の中央には、クリップ200のΩ状の形状に対して内側に配置されるクリップボス案内部240が形成されている。クリップボス案内部240は、取り付けられるクリップボス300(
図3参照)の厚さに対してわずかに狭く作製されており、クリップボス300を開放部220側から差し込むことで自然と案内されるとともに、クリップボス300にクリップ200を取り付けたときに、クリップボス300をしっかりと挟み込んで移動しづらくなるように作製されている。さらに、このクリップボス案内部240には、クリップボス300に取り付けられた際に簡単に外れることを防止するため、後述するクリップボス300に形成された嵌合穴330に嵌合されるクリップボス嵌合部250が設けられている。こうして作製されたクリップ200は、
図6Bに示すように、クリップボス300に対して、開放部220側からはめ込まれ、クリップボス嵌合部250がクリップボス300の嵌合穴330に嵌合することで固定される。なお、クリップ200は、プラスチック製であっても、金属製であってもよい。
【0015】
次に、上述したクリップ200をロボット等で自動的にクリップボス300に取り付けるためのクリップ取付器具100について説明する。
図2にクリップ取付器具100の斜視図(
図2A)及び側面図(
図2B)が示されている。クリップ取付器具100は、把持部110が2つに間隔をおいて先端に突き出すように作製されており、この把持部110の間にクリップ収容部120が形成されている。クリップ収容部120は、少なくともクリップ200の膨出部230及びこれより上方部分が収容される。クリップ収容部120は、クリップ200の外周側面に対して反転した形態をなしており、クリップ200の膨出部230より上方ではほぼ面で接触するように形成される。把持部110の先端の内面側は、一旦、掴まえたクリップ200が容易に脱落しないように、それぞれ内側に湾曲して形成され、クリップ200の膨出部230を支持する。また、クリップ収容部120は、内面左右方向の中央には、クリップを掴まえた際にクリップボス案内部240に相当する位置にクリップボス案内部240の移動を規制する案内部規制部130が設けられている。この案内部規制部130は、クリップ200を捕まえた際に、クリップボス案内部240がクリップボス300を通過するのに支障がない程度で、かつ一度クリップボス300に取り付けられ、クリップボス嵌合部250がクリップボス300の嵌合穴330に嵌合した後には、容易にクリップボス嵌合部250がクリップボス300の嵌合穴330が離脱しないように位置を規制する。具体的には、クリップ200の大きさ、形状にもよるが、クリップボス案内部240と案内部規制部130との間に0.05mmから1.0mm程度の隙間ができるように形成するとよい。
このような構成を採用することによって、クリップボス300に取り付けたクリップ200からクリップ取付器具100を外す際に、クリップボス嵌合部250がクリップボス300の嵌合穴330から外れることが防止されるため、クリップが誤ってクリップボスから離脱することを防止することができる。
【0016】
以上のようにして作製されたクリップ取付器具100は、以下のようにしてクリップボス300に取り付けられる。クリップボス300は、
図3に示すように、部品に形成されてクリップ200が取りつけられる場所であり、立設板310とこの立設板310の両側に形成される壁面320と、立設板310に形成された嵌合穴330を有している。まず、クリップ200をロボットがピックアップし易い位置に頂点210が上方となるように複数配置する。クリップ200は既知の技術によって自動的にセットされるようにするとよい。配置されたクリップ200に対して
図4Aに示すように、クリップ取付器具100はクリップ収容部120に収容されるように上方からはめ込んでいく。すると、
図4Bに示すように、クリップ200の膨出部230を含む上方部分がクリップ収容部120にはめ込まれてクリップ200は、
図5Aに示すように、把持部110の先端の内面側の湾曲部でクリップ200の膨出部230を支持してしっかりと掴まえられることになる。そして、この状態のまま、
図5Bに示すように、クリップ200を、開放部220がクリップボス300の立設板310の上方の位置となるように移動する。この状態からクリップ取付器具100を下降させることで、
図6Aに示すように、クリップ200内にクリップボス300の立設板310がクリップボス案内部240に案内され、クリップボス嵌合部250がクリップボス300の嵌合穴330に嵌合して固定される。そして、
図6Bに示すように、クリップ取付器具100を上昇させることでクリップ200はクリップ取付器具100から開放されてクリップボス300に取り付けられる。このように本発明にかかるクリップ取付器具100によれば、クリップ200を把持する際には、クリップ取付器具100の把持部110の幅を狭めて挟持するという工程を必要とせず、クリップ収容部120に挿入するという動作のみでクリップ200を掴み取ることができる。その後、クリップ200をクリップボス300の上方に移動し、クリップボス300をクリップボス案内部240に挿入することでクリップ200を固定することができる。またクリップ取付器具100を外す際には、把持部110同士を広げるという動作をすることなく、単にクリップ200に対して引き離すのみでクリップ200から離脱することができる。
【0017】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
上述した実施の形態で示すように、自動車関連部品に対するクリップの取り付け方法として産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
100…クリップ取付器具、110…把持部、120…クリップ収容部、130…案内部規制部、200…クリップ、210…頂点、220…開放部、230…膨出部、240…クリップボス案内部、250…嵌合部、300…クリップボス、310…立設板、320…壁面、330…嵌合穴
【要約】 (修正有)
【課題】クリップを内装部品のクリップボスに取り付ける際に、積極的にクリップの把持及び開放という工程を簡略化し、クリップ取付器具を移動させるだけで内装部品にクリップを取り付けることができるクリップ取付器具を提供する。
【解決手段】本発明にかかるクリップ取付器具100は、クリップを、クリップボスに取り付けるためのクリップ取付器具において、クリップ収容部120を形成するように両側に配置された2つの把持部110を有し、クリップ収容部120は、少なくともクリップの膨出部を収容可能であり、把持部110の先端は、クリップが脱落することを防止するために、先端の内面が膨出部を係止するように内側に湾曲して形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図2