(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ボウリングシステム、ボウリングプログラムおよびコンピュータが実行する方法
(51)【国際特許分類】
A63D 5/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A63D5/04 C
(21)【出願番号】P 2023132667
(22)【出願日】2023-08-16
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509092214
【氏名又は名称】株式会社GENDA GiGO Entertainment
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 尚久
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特許第7060257(JP,B2)
【文献】特許第6550665(JP,B2)
【文献】特許第5232928(JP,B1)
【文献】特許第5592150(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0287204(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0056054(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63D 1/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得部と、
前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報を取得する位置情報取得部と、
ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得部によって取得された到達前画像を解析し、各ピンが倒れているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出部と、
ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得部によって取得された到達後画像を解析し、各ピンが倒れているか否かを検出するピン検出部と、
前記属性検出部によって検出された倒れているピンの情報および立っているピンの属性と、前記ピン検出部によって検出された倒れているピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出部と、
を有する、ボウリングシステム
であって、
前記属性検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定するとともに、学習済みモデルによって各ピクセルの色を判定させ、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出
し、
前記ピン検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定
し、
前
記位置情報取得部は、
ピンが配置されていない状態でのピン無し画像と、ピンが配置されている状態でのピン有り画像とを前記ピン画像取得部から取得し、
前記ピン無し画像と前記ピン有り画像との差分画像における各ピンのヘッド部分を含むヘッド画像を切り出し、前記ヘッド画像のY軸方向における黒色以外のピクセル数が極大となるX座標を前記ピンのX座標とし、
前記X座標に基づいて前記ヘッド画像からピンごとの個別ヘッド画像を切り出し、前記個別ヘッド画像のY軸方向における上端から下端に向けて、X軸方向における黒色以外のピクセル数が多くなるY座標を前記ピンのY座標とする、
ボウリングシステム。
【請求項2】
投球されたボールのボール速度に基づいてループ時間を算出するループ時間算出部と、
前記ループ時間が経過したとき、または前記属性検出部によって検出された倒れているピンの本数と前記ピン検出部によって検出された倒れているピンの本数との間に変化があったとき、投球が終了したものと判定する投球終了判定部と、
を有する、請求項1に記載のボウリングシステム。
【請求項3】
レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得部と、
前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報を取得する位置情報取得部と、
ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得部によって取得された到達前画像を解析し、各ピンが立っているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出部と、
ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得部によって取得された到達後画像を解析し、各ピンが立っているか否かを検出するピン検出部と、
前記属性検出部によって検出されたピンの属性と、前記ピン検出部によって検出された倒されたピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出部と、
してコンピュータを機能させる、ボウリングプログラム
であって、
前記属性検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定するとともに、学習済みモデルによって各ピクセルの色を判定させ、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出し、
前記ピン検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定し、
前記位置情報取得部は、
ピンが配置されていない状態でのピン無し画像と、ピンが配置されている状態でのピン有り画像とを前記ピン画像取得部から取得し、
前記ピン無し画像と前記ピン有り画像との差分画像における各ピンのヘッド部分を含むヘッド画像を切り出し、前記ヘッド画像のY軸方向における黒色以外のピクセル数が極大となるX座標を前記ピンのX座標とし、
前記X座標に基づいて前記ヘッド画像からピンごとの個別ヘッド画像を切り出し、前記個別ヘッド画像のY軸方向における上端から下端に向けて、X軸方向における黒色以外のピクセル数が多くなるY座標を前記ピンのY座標とする、
ボウリングプログラム。
【請求項4】
コンピュータを用いて構築されたボウリングシステムにおいて、前記コンピュータが実行する方法であって、
レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得ステップと、
前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得ステップにおいて取得された到達前画像を解析し、各ピンが立っているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出ステップと、
ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得ステップにおいて取得された到達後画像を解析し、各ピンが立っているか否かを検出するピン検出ステップと、
前記属性検出ステップにおいて検出されたピンの属性と、前記ピン検出ステップにおいて検出された倒されたピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出ステップと、
を有
し、
前記属性検出ステップでは、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定するとともに、学習済みモデルによって各ピクセルの色を判定させ、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出し、
前記ピン検出ステップでは、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定し、
前記位置情報取得ステップでは、
ピンが配置されていない状態でのピン無し画像と、ピンが配置されている状態でのピン有り画像とを前記ピン画像取得部から取得し、
前記ピン無し画像と前記ピン有り画像との差分画像における各ピンのヘッド部分を含むヘッド画像を切り出し、前記ヘッド画像のY軸方向における黒色以外のピクセル数が極大となるX座標を前記ピンのX座標とし、
前記X座標に基づいて前記ヘッド画像からピンごとの個別ヘッド画像を切り出し、前記個別ヘッド画像のY軸方向における上端から下端に向けて、X軸方向における黒色以外のピクセル数が多くなるY座標を前記ピンのY座標とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボウリングを用いたゲームの幅を広げるのに好適なボウリングシステム、ボウリングプログラムおよびボウリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボウリングシステムでは、投球前後におけるピンの有無を画像処理等で検出し、倒されたピンの数に応じてスコアが算出されている。例えば、特開平6-182019号公報には、投球後におけるピンを撮像手段によって撮像し、正規位置に起立した残ピンの数を検出するコンピューターボウリングが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボウリング場において用意されているゲームとしては、ここ何十年も変わらず、単純に起立した10本のピンのうち投球ボールで倒したピンの本数の多さを競うもの(いわゆる、テンピン・ボウリング)がほとんどである。このため、多様化する娯楽や遊びの中で、昔から代わり映えのない単調なボウリングの魅力や人気が低迷し、集客力が徐々に失われつつあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えることができるボウリングシステム、ボウリングプログラムおよびボウリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るボウリングシステムは、ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えるという課題を解決するために、レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得部と、ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得部によって取得された到達前画像を解析し、各ピンが倒れているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出部と、ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得部によって取得された到達後画像を解析し、各ピンが倒れているか否かを検出するピン検出部と、前記属性検出部によって検出された倒れているピンの情報および立っているピンの属性と、前記ピン検出部によって検出された倒れているピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出部と、を有する。
【0007】
また、本発明の一態様として、ボールがピンに到達する前に倒れているピンの情報および立っているピンの属性を高精度に検出するという課題を解決するために、前記属性検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定するとともに、学習済みモデルによって各ピクセルの色を判定させ、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出してもよい。
【0008】
さらに、本発明の一態様として、ボールがピンに到達した後に倒れているピンを高精度に検出するという課題を解決するために、前記ピン検出部は、前記ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、前記到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出し、前記個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定してもよい。
【0009】
また、本発明の一態様として、ピンの位置情報を高精度に取得するという課題を解決するために、前記位置情報を取得する位置情報取得部は、ピンが配置されていない状態でのピン無し画像と、ピンが配置されている状態でのピン有り画像とを前記ピン画像取得部から取得し、前記ピン無し画像と前記ピン有り画像との差分画像における各ピンのヘッド部分を含むヘッド画像を切り出し、前記ヘッド画像のY軸方向における黒色以外のピクセル数が極大となるX座標を前記ピンのX座標とし、前記X座標に基づいて前記ヘッド画像からピンごとの個別ヘッド画像を切り出し、前記個別ヘッド画像のY軸方向における上端から下端に向けて、X軸方向における黒色以外のピクセル数が多くなるY座標を前記ピンのY座標としてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、投球が終了したか否かを自動的に判定するという課題を解決するために、投球されたボールのボール速度に基づいてループ時間を算出するループ時間算出部と、前記ループ時間が経過したとき、または前記属性検出部によって検出された倒れているピンの本数と前記ピン検出部によって検出された倒れているピンの本数との間に変化があったとき、投球が終了したものと判定する投球終了判定部と、を有していてもよい。
【0011】
本発明に係るボウリングプログラムは、ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えるという課題を解決するために、レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得部と、ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得部によって取得された到達前画像を解析し、各ピンが立っているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出部と、ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得部によって取得された到達後画像を解析し、各ピンが立っているか否かを検出するピン検出部と、前記属性検出部によって検出されたピンの属性と、前記ピン検出部によって検出された倒されたピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出部と、してコンピュータを機能させる。
【0012】
本発明に係るボウリング方法は、ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えるという課題を解決するために、レーン上に配置されたピンのピン画像を撮影手段から取得するピン画像取得ステップと、ボールがピンに到達する前に前記ピン画像取得ステップにおいて取得された到達前画像を解析し、各ピンが立っているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する属性検出ステップと、ボールがピンに到達した後に前記ピン画像取得ステップにおいて取得された到達後画像を解析し、各ピンが立っているか否かを検出するピン検出ステップと、前記属性検出ステップにおいて検出されたピンの属性と、前記ピン検出ステップにおいて検出された倒されたピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るボウリングシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態におけるピンの位置情報の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態におけるピン情報の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の位置情報取得部によって実行される位置情報取得処理を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態におけるピン無し画像の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態におけるピン有り画像の一例を示す図である。
【
図7】本実施形態における差分画像の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態におけるヘッド画像の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態における個別ヘッド画像の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態のボウリングシステムおよびボウリングプログラムによって実行されるボウリング方法を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態の初期配置検出部によって実行される初期配置検出処理を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態の属性検出部によって実行される属性検出処理を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態のピン検出部によって実行されるピン検出処理を示すフローチャートである。
【
図14】実施例1において、(a)ゲーム開始時におけるピンの配置、(b)赤チームの投球後におけるピンの配置、および(c)ピン情報記憶部に記憶されたピン情報を示す図である。
【
図15】実施例1において、(a)青チームの投球前におけるピンの配置、(b)青チームの投球後におけるピンの配置、および(c)ピン情報記憶部に記憶されたピン情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るボウリングシステム、ボウリングプログラムおよびボウリング方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のボウリングシステム100を示すブロック図であり、ボウリング場等に配置されるボウリング装置1と、このボウリング装置1から送られるピン情報に基づいてスコアを算出するサーバ10とを有している。以下、ボウリング装置1およびサーバ10のそれぞれについて説明する。
【0017】
(1)ボウリング装置1
本実施形態のボウリング装置1は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータによって構成されており、
図1に示すように、主として、撮影手段2と、通過検知手段3と、通信手段4と、記憶手段5と、演算処理手段6とを有している。以下、各構成手段について詳細に説明する。なお、ボウリング装置1は、ボウリング場に設置されている既存の機械システム(ピンセッターやレーキ等)とも通信可能に接続されている。
【0018】
撮影手段2は、デジタルビデオカメラ等で構成されており、レーン上に配置されたピンの画像を撮影するものである。本実施形態において、撮影手段2は、静止画像のみならず動画像も画像として撮影する。また、撮影手段2は、レーンごとにピンの画像を撮影してもよく、複数のレーンを同時に撮影してもよい。
【0019】
通過検知手段3は、赤外線センサ等で構成されており、ボウリングのボールが通過したか否かを検知するものである。本実施形態において、通過検知手段3は、赤外線がレーンを横切るように設置され、ボール等の通過によって赤外線が遮られると、出力電位が大きく変動するようになっている。なお、本実施形態では、通過検知手段3として、回帰反射型の赤外線センサを使用しているが、これに限定されるものではなく、ボールの通過を検知しうるものであればよい。
【0020】
通信手段4は、ボウリング装置1に通信機能を実装するものである。本実施形態において、通信手段4は、第4世代(4G)や第5世代(5G)等のキャリアネットワーク規格、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN規格、およびBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応しており、いずれかの通信ネットワークを介してサーバ10に接続するようになっている。
【0021】
記憶手段5は、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段6が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段5は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、
図1に示すように、プログラム記憶部51と、位置情報記憶部52と、学習済みモデル記憶部53と、ピン情報記憶部54とを有している。
【0022】
プログラム記憶部51には、本実施形態のボウリング方法を実行するためのボウリングプログラム1aがインストールされている。そして、演算処理手段6がボウリングプログラム1aを実行することにより、ボウリング装置1としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0023】
位置情報記憶部52は、ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報を記憶するものである。本実施形態において、位置情報としては、
図2に示すように、各ピンのピン番号に対応付けて、各ピンの頂点の画像座標系におけるX座標とY座標とが記憶されている。
【0024】
学習済みモデル記憶部53は、ピンの属性を検出するための学習済みモデルを記憶するものである。本実施形態において、検出可能なピンの属性は、ピンの色または模様である。このため、ピンの属性としてピンの色を検出する場合は、様々な色のピンを撮影したピン画像と、当該ピンを目視によって確認した色とで構成される学習用データセットを用いて機械学習を行わせ、ピン画像を入力するとピンの色を出力する学習済みモデルが学習済みモデル記憶部53に記憶されている。
【0025】
また、ピンの属性としてピンの模様を検出する場合は、様々な模様のピンを撮影したピン画像と、当該ピンを目視によって確認した模様とで構成される学習用データセットを用いて機械学習を行わせ、ピン画像を入力するとピンの模様を出力する学習済みモデルを学習済みモデル記憶部53に記憶させておけばよい。
【0026】
なお、ボウリングプログラム1aおよび学習済みモデルの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、USBメモリやCD-ROM等のように、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体にボウリングプログラム1aおよび学習済みモデルを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行してもよい。また、ボウリングプログラム1aおよび学習済みモデルをパッケージ化し、スマートフォンやタブレット用のアプリケーションとしてダウンロード可能にしてもよい。さらに、ボウリングプログラム1aおよび学習済みモデルを外部サーバ等へ格納し、クラウドコンピューティング方式やASP(Application Service Provider)方式で利用してもよい。
【0027】
ピン情報記憶部54は、投球前後のピン情報を記憶するものである。本実施形態において、ピン情報としては、
図3に示すように、ボウリング場を識別する店舗ID、投球が行われたレーンを識別するレーンID、および投球前後の各ピンのピン番号(1~10)に対応付けて、立っているピンにはピンの色(赤、黄、白、緑等)が記憶され、倒れているピンには空白(-)が記憶される。
【0028】
つぎに、演算処理手段6は、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、プログラム記憶部51にインストールされたボウリングプログラム1aを実行することにより、
図1に示すように、ピン画像取得部61と、位置情報取得部62と、ボール検知部63と、ボール速度算出部64と、属性検出部65と、ループ時間算出部66と、ピン検出部67と、投球終了判定部68と、ピン情報送信部69と、初期配置検出部70として機能する。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0029】
ピン画像取得部61は、レーン上に配置されたピンの画像を撮影手段2から取得するものである。本実施形態において、ピン画像取得部61は、後述するとおり、ピンの位置情報を取得する際には、ピンが配置されていない状態のピン画像であるピン無し画像や、ピンが配置されている状態のピン画像であるピン有り画像を取得する。また、ピン画像取得部61は、ボールを投球する前のピン画像である投球前画像、ボールがピンに到達する前のピン画像である到達前画像、およびボールがピンに到達した後のピン画像である到達後画像を取得するようになっている。
【0030】
位置情報取得部62は、ボウリング装置1の初期設定時に、初期位置に配置された各ピンの画像座標系における位置情報を取得するものである。以下、位置情報取得部62が実行する位置情報取得処理について、
図4を参照しつつ説明する。
【0031】
位置情報取得部62は、まず、
図5に示すように、ピンが配置されていない状態でのピン無し画像と、
図6に示すように、ピンが初期位置に配置されている状態でのピン有り画像とをピン画像取得部61から取得する(ステップS1,S2)。つぎに、位置情報取得部62は、ピン無し画像とピン有り画像との輝度の違いから、
図7に示すような差分画像を生成する(ステップS3)。そして、当該差分画像における各ピンのヘッド部分をトリミングし、
図8に示すような、当該ヘッド部分を含むヘッド画像を切り出す(ステップS4)。
【0032】
つづいて、位置情報取得部62は、
図8に示すように、ヘッド画像のY軸方向における黒色以外のピクセル数が極大となるX座標をピンのX座標として取得する(ステップS5)。なお、
図8において、ヘッド画像中に付加されている曲線は、黒色以外の数の割合をグラフ化したものである。当該グラフにおいて、凸状に膨らんでいる部分の頂点が極大箇所である。
【0033】
また、位置情報取得部62は、ステップS5で取得したX座標に基づいて、ヘッド画像から
図9に示すようなピンごとの個別ヘッド画像を切り出す(ステップS6)。なお、本実施形態において、個別ヘッド画像は、X座標を中心として左右に所定ピクセル分の横幅でヘッド画像から切り出しているが、これに限定されるものではない。
【0034】
つぎに、位置情報取得部62は、ステップS6で切り出したピン画像のY軸方向における上端から下端に向けて、X軸方向における黒色以外のピクセル数が多くなるY座標をピンのY座標として取得する(ステップS7)。各ピンのX座標およびY座標が取得されると、位置情報取得部62は、各ピンのピン番号に対応付けて位置情報(X座標,Y座標)を位置情報記憶部52に保存する(ステップS8)。以上の位置情報取得処理をレーンごとに実行することにより、各レーンで初期位置に配置された各ピンの画像座標系における位置情報が登録される。
【0035】
ボール検知部63は、ボールがレーン上を通過したか否かを検知するものである。具体的には、ボール検知部63は、通過検知手段3からの出力電位を常時監視し、当該出力電位の変動に基づいて、ボールがレーン上を通過したものと検知する。ただし、ボールが通過していない場合でも、細かい電位変動が発生するため、本実施形態では、出力電位の変動量に閾値を設定し、当該閾値以上の変動があればボールが通過したものと判定する一方、閾値未満の変動であれば誤検知であると判定するようになっている。
【0036】
ボール速度算出部64は、投球されたボールのボール速度を算出するものである。本実施形態において、ボール速度算出部64は、通過検知手段3の出力電位が高くなっていた時間、すなわちボールが赤外線を遮っていた時間と、ボールの直径とに基づいて、投球されたボールのボール速度を算出する。このボール速度は、後述するループ時間を算出する際に利用される。
【0037】
属性検出部65は、ボールがピンに到達する前のピン情報を検出するものである。本実施形態において、属性検出部65は、ボールがピンに到達する前にピン画像取得部61によって取得されたピン画像である到達前画像を解析し、各ピンが倒れているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する。
【0038】
具体的には、属性検出部65は、位置情報記憶部52に記憶された各ピンの位置情報に基づいて、到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出す。本実施形態では、各ピンの位置情報(X座標,Y座標)を中心とし、上下左右に所定ピクセルずつ拡張した矩形領域を個別ピン画像として設定している。
【0039】
つぎに、属性検出部65は、個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定する。一方、属性検出部65は、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定するとともに、学習済みモデル記憶部53に記憶された学習済みモデルによって各ピクセルの色を判定させ、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出する。そして、属性検出部65は、立っているピンのピン番号にはピンの色(赤、黄、白、緑等)を出力する一方、倒れているピンのピン番号には空白(-)を出力し、ピン情報記憶部54に記憶させるようになっている。
【0040】
ループ時間算出部66は、投球が終了したか否かを判定するためのループ時間を算出するものである。本実施形態において、ループ時間算出部66は、ボール速度算出部64によって算出されたボール速度に基づいてループ時間を算出する。具体的には、ボール速度が速いほどループ時間が短めに算出され、ボール速度が遅いほどループ時間が長めに算出される算出式によってループ時間を算出するようになっている。
【0041】
ピン検出部67は、ボールがピンに到達した後のピン情報を検出するものである。本実施形態において、ピン検出部67は、ボールがピンに到達した後にピン画像取得部61によって取得された到達後画像を解析し、各ピンが倒れているか否かを検出する。
【0042】
具体的には、ピン検出部67は、ピン画像の画像座標系における各ピンの位置情報に基づいて、到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出す。そして、ピン検出部67は、個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合、ピンが倒れていると判定し、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合、ピンが立っていると判定する。
【0043】
なお、ボールの到達前後でピンの属性が変化することはないため、到達後画像におけるピンの属性については、到達前画像におけるピンのうち同一のピン番号を有するピンの属性をそのまま使用できる。このため、ピン検出部67は、ピンの属性(色)は検出せず、ピンが倒れているか否かのみを検出し、立っているピンのピン番号には、属性検出部65によって検出されたピンの色(赤、黄、白、緑等)を出力し、倒れているピンのピン番号には空白(-)を出力し、ピン情報記憶部54に記憶させるようになっている。
【0044】
投球終了判定部68は、投球が終了したか否かを判定するものである。本実施形態において、投球終了判定部68は、ループ時間算出部66によって算出されたループ時間が経過したとき、または属性検出部65によって検出された倒れているピンの本数(ボール到達前に倒れているピンの本数)と、ピン検出部67によって検出された倒れているピンの本数(ボール到達後に倒れているピンの本数)との間に変化があったとき、投球が終了したものと判定する。
【0045】
ピン情報送信部69は、投球前後のピンに関するピン情報をサーバ10へ送信するものである。本実施形態において、ピン情報送信部69は、属性検出部65によって検出された倒れているピンの情報および立っているピンの属性と、ピン検出部67によって検出された倒れているピンの情報とからなるピン情報を通信手段4を介してサーバ10へ送信するようになっている。
【0046】
初期配置検出部70は、各フレームの最初(1投目)にレーン上に配置されたピンの初期配置を検出するものである。本実施形態において、初期配置検出部70は、1フレーム目については、ボウリングゲームが開始されたことをトリガーとして実行され、2フレーム目以降については、ピンセッターが自動的にピンをセットしたことをトリガーとして実行される。
【0047】
具体的には、初期配置検出部70は、ボールが投球される前にピン画像取得部61によって取得されたピン画像である投球前画像について、属性検出部65と同様の解析を実行することにより、各ピンが倒れているか否か、および立っているピンの色または模様をピンの属性として検出する。そして、予め設定された待機時間が経過したとき、または全てのピンが配置されたことが検出されたとき、投球前のピンに関するピン情報をサーバ10へ送信する。
【0048】
本実施形態において、初期配置検出部70は、全てのピンが立っていることが確認された投球前画像が一定枚数連続したとき、全てのピンが配置されたことを検出する。これにより、投球前画像にレーキ(倒れたピンや残ったピンをピットへ落とすためのバー)が映り込み、ピンが立っていると誤検知してしまうことが防止される。
【0049】
また、本実施形態において、初期配置検出部70は、待機時間内に全ピンの配置が完了した場合、全ピンの属性(色)をピン情報としてサーバ10へ送信する。一方、初期配置検出部70は、待機時間内に全ピンの配置が完了しなかった場合、強制的に全ピンが白色であるとのピン情報をサーバ10へ送信する。これにより、実際のピンの状態と、システム側が認識しているピンの状態との間にズレが生じた場合でも、ゲームを中断することなく続行することができる。
【0050】
例えば、テンピン・ボウリングのゲーム中、1投目を投げた後、ピンが一本残っているにも関わらず、システム側がストライクと判断してしまった場合、システム側はストライクと判断しているため、次はピンが10本揃った状態でセットされることを期待する。しかしながら、実際にはストライクではないため、2投目用のピンが10本揃っていない状態でセットされる。この場合、システム側は次フレームの1投目に移行するため、初期配置検出部70が実行されるが、システム側のスコアを修正することによって、前フレームの2投目の状態に戻せばよい。これにより、2投目を投げた後、次フレームの1投目に移行するため、初期配置検出部70が再度実行され、実際のピンの状態と、システム側が認識しているピンの状態とが、いずれもピンが10本揃った状態で一致される。
【0051】
(2)サーバ10
本実施形態のサーバ10は、クラウドサーバ等のコンピュータによって構成されており、
図1に示すように、主として、通信手段4と、記憶手段7と、演算処理手段8とを有している。以下、各構成手段について詳細に説明する。なお、サーバ10の構成のうち、上述したボウリング装置1と同一もしくは相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0052】
サーバ10側の記憶手段7は、各種のデータを記憶するとともに、サーバ10側の演算処理手段8が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段7は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、
図1に示すように、プログラム記憶部71と、スコア記憶部72とを有している。
【0053】
プログラム記憶部71には、本実施形態のボウリング方法の一部を実行するためのボウリングプログラムがインストールされている。そして、演算処理手段8がボウリングプログラムを実行することにより、サーバ10としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させる。また、スコア記憶部72は、ボウリングを用いたゲームのスコアを記憶するものであり、後述するスコア算出部81によって算出されたスコアを記憶する。
【0054】
サーバ10側の演算処理手段8は、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、プログラム記憶部71にインストールされたボウリングプログラムを実行することにより、
図1に示すように、スコア算出部81として機能する。
【0055】
スコア算出部81は、ボウリング装置1から送られてきたピン情報に基づいて、ボウリングのスコアを算出するものである。本実施形態において、スコア算出部81は、通信手段4を介してボウリング装置1から送られてきたピン情報を取得する。そして、当該ピン情報、すなわちボールがピンに到達する前のピン情報(属性検出部65によって検出された倒れているピンの情報および立っているピンの属性)と、ボールがピンに到達した後のピン情報(ピン検出部67によって検出された倒れているピンの情報)とに基づいて、スコア算出部81は、ボウリングのスコアを算出する。スコアの算出ルールは、ピンの数とピンの属性とを組み合わせて任意に設定でき、管理者側で追加や変更が可能である。
【0056】
また、本実施形態において、スコア算出部81は、算出したスコアを外部からアクセス可能なスコア記憶部72に記憶する。これにより、ボウリング装置1やスマートフォン等にインストールされた専用アプリからサーバ10にアクセスすることで、リアルタイムにスコアを閲覧したり、ゲーム結果を出力しうる他、遠隔店舗にいるユーザ同士のリアルタイム対戦や、複数店舗に跨がった大規模なボウリングイベントや大会の実施が可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、外部のサーバ10にスコア算出部81を設け、複数のボウリング場で発生するピン情報を集約し、サーバ10側でスコアリング作業を実行させている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、各ボウリング場ごとに個別のサーバ10を設置し、当該ボウリング場に設置されているボウリング装置1のみからピン情報を取得してスコアを算出してもよい。あるいは、各ボウリング装置1にスコア算出部81を設け、それぞれのボウリング装置1において個別にスコアを算出するようにしてもよい。
【0058】
つぎに、本実施形態のボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法による作用について説明する。
【0059】
本実施形態のボウリングシステム100を用いてボウリングをプレイする場合、上述したとおり、ボウリング装置1の初期設定として、事前に位置情報取得部62が、初期位置に配置された各ピンの画像座標系における位置情報を取得し、位置情報記憶部52に保存する(
図4)。これにより、高精度なピンの位置情報が取得される。また、この位置情報取得処理をレーンごとに実行することにより、各レーンで初期位置に配置された各ピンの画像座標系における位置情報が予め登録される。
【0060】
つぎに、本実施形態のボウリングシステム100を用いてゲームを開始すると、まず、
図10に示すように、初期配置検出部70が、第1フレームの最初にレーン上に配置されたピンの初期配置を検出する(ステップS10:初期配置検出ステップ)。
【0061】
具体的には、
図11に示すように、初期配置検出部70は、ピン画像取得部61から投球前画像を取得すると(ステップS101)、
図12で後述する属性検出処理と同様の処理を実行し、ボールを投球する前のピン情報を検出する(ステップS102)。その後、待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS103)。その結果、待機時間が経過していなければ(ステップS103:NO)、全ピンの配置が完了したか否かを確認する(ステップS104)。そして、全てのピンが配置されたとき(ステップS104:YES)、投球前のピンに関するピン情報をサーバ10へ送信する(ステップS105)。
【0062】
これにより、サーバ10側では、第1フレームの最初にレーン上に配置された各ピンの色が把握される。このため、サーバ10は、ユーザがボールを投球する前に、配置されたピンの属性に応じたイベントの発生処理を実行することが可能となる。例えば、特別なボーナスが得られるピン(赤色のピン等)が出現した場合、「赤ピン出現!!」等の映像をディスプレイに表示させたり、ファンファーレを鳴らすことで、ゲームを盛り上げることが可能となる。
【0063】
なお、全ピンの配置完了が確認されるまでは(ステップS104:NO)、ステップS101へ戻り、待機時間が経過するまでステップS101からステップS103までの処理を繰り返す。そして、全ピンの配置が完了していない状態で(ステップS104:NO)、待機時間が終了した場合(ステップS103:YES)、強制的に全ピンが白色であるとのピン情報をサーバ10へ送信する。これにより、何らかの理由で、実際のピンの状態と、システム側が認識しているピンの状態との間にズレが生じた場合でも、ゲームがスムーズに続行される。
【0064】
つぎに、ボール検知部63が、ボールがレーン上を通過したか否かを検知する(ステップS11:ボール検知ステップ)。その結果、ボールの通過が検知されると(ステップS11:YES)、さらに、誤検知でないか否かを判定する(ステップS12:誤検知判定ステップ)。そして、誤検知であれば(ステップS12:YES)、ステップS1へと戻る。一方、誤検知でなければ、ステップS13へと進む。これにより、ボールが通過していないのに通過したと誤検知してしまうことが防止される。
【0065】
ボールの通過が確認されると(ステップS12:NO)、ボール速度算出部64が、ボール速度を算出するとともに(ステップS13:ボール速度算出ステップ)、ピン画像取得部61が、ボールがピンに到達する前のピン画像である到達前画像を取得する(ステップS14:到達前画像取得ステップ)。そして、属性検出部65が、当該到達前画像を解析し、ボールがピンに到達する前のピン情報を検出する(ステップS15:属性検出ステップ)。
【0066】
具体的には、
図12に示すように、属性検出部65は、まず、位置情報記憶部52からピンの位置情報を取得すると(ステップS31)、当該位置情報に基づいて、到達前画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出す(ステップS32)。
【0067】
つぎに、属性検出部65は、個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS33)。その結果、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合(ステップS33:NO)、ピンが倒れていると判定する(ステップS37)。一方、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合(ステップS33:YES)、属性検出部65は、ピンが立っていると判定するとともに(ステップS34)、個別ピン画像における各ピクセルの色を学習済みモデルに判定させ(ステップS35)、黒色以外で最も多い色をピンの属性として検出する(ステップS36)。
【0068】
属性検出部65は、ステップS37で検出した倒れているピンの情報と、ステップS36で検出した立っているピンの属性をピン情報記憶部54に記憶させる(ステップS38)。そして、全ての個別ピン画像について属性検出処理が終了していなければ(ステップS38:NO)、ステップS33へと戻り、ステップS33からステップS37までの処理が、全ての個別ピン画像について繰り返し実行され(ステップS38:YES)、本処理を終了する。これにより、ボールがピンに到達する前における、倒れているピンの情報および立っているピンの属性が高精度に検出される。
【0069】
図10に戻り、ピンの属性が検出されると(ステップS15)、ループ時間算出部66が、ループ時間を算出するとともに(ステップS16:ループ時間算出ステップ)、ピン画像取得部61が、ボールがピンに到達した後のピン画像である到達後画像を取得する(ステップS17:到達後画像取得ステップ)。そして、ピン検出部67が、当該到達後画像を解析し、ボールがピンに到達した後のピン情報を検出する(ステップS18:ピン検出ステップ)。
【0070】
具体的には、
図13に示すように、ピン検出部67は、まず、位置情報記憶部52からピンの位置情報を取得すると(ステップS41)、当該位置情報に基づいて、到達後画像から各ピンが配置される所定の領域を個別ピン画像として切り出す(ステップS42)。
【0071】
つぎに、ピン検出部67は、個別ピン画像のそれぞれについて、黒色ピクセルの割合が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS43)。その結果、黒色ピクセルの割合が所定値を超える場合(ステップS43:NO)、ピンが倒れていると判定する(ステップS45)。一方、黒色ピクセルの割合が所定値以下の場合(ステップS43:YES)、ピン検出部67は、ピンが立っていると判定する(ステップS44)。
【0072】
ピン検出部67は、ステップS45で検出した倒れているピンの情報をピン情報記憶部54に記憶させる(ステップS46)。そして、全ての個別ピン画像についてピン検出処理が終了していなければ(ステップS46:NO)、ステップS43へと戻り、ステップS43からステップS46までの処理が、全ての個別ピン画像について繰り返し実行され(ステップS47:YES)、本処理を終了する。これにより、ボールがピンに到達した後に倒れているピンが高精度に検出される。
【0073】
図10に戻り、ボール到達後に倒れているピンが検出されると(ステップS18)、投球終了判定部68が、ループ時間が経過したか否かを判定する(ステップS19:ループ時間判定ステップ)。そして、ループ時間が経過していなければ(ステップS19:NO)、ボール到達前に倒れているピンの本数と、ボール到達後に倒れているピンの本数との間に変化があるか否かを判定する(ステップS20:ピン本数判定ステップ)。
【0074】
その結果、ボール到達前後で倒れているピンの本数に変化があった場合(ステップS20:YES)、あるいは、ボール到達前後で倒れているピンの本数に変化がなくても(ステップS20:NO)、ループ時間が経過した場合(ステップS19:YES)、投球終了判定部68は投球が終了したものと判定する。これにより、ボールがピンに当たっても当たらなくても(ガーターの場合等)、投球が終了したか否かが自動的に判定される。
【0075】
投球の終了が判定されると、ピン情報送信部69が、投球前後のピンに関するピン情報をサーバ10へ送信する(ステップS21:ピン情報送信ステップ)。これにより、サーバ10側のスコア算出部81が、ボウリング装置1から送られてきたピン情報に基づいて、ボウリングのスコアを算出する。当該ピン情報には、ボールの到達前後において倒れているピンの情報のみならず、立っているピンについては、その属性も含まれている。
【0076】
このため、スコアを算出する際にピンの数のみならず、ピンの属性を活用することにより、従来のボウリングとは全く異なる、様々なオリジナルゲームを提供することが可能となる。よって、ボウリングを用いたゲームの幅が広がり、集客力の向上に寄与する。
【0077】
その後は、サーバ10からのレースポンス等により、次の投球がフレームの一投目であるか否かが判定される(ステップS22)。そして、次の投球がフレームの一投目である場合(ステップS22:YES)、ステップS10へと戻り、各フレームの初期配置を検出した上で、上記ステップS11からステップS21までの処理が繰り返される。一方、次の投球がフレームの一投目ではない場合(ステップS22:NO)、新たにピンの属性を検出する必要がないため、ゲームの終了でない限り(ステップS23:NO)、ステップS11へと戻り、以上のステップS11からステップS21までの処理は、ゲームが終了するまで繰り返し実行される(ステップS23)。
【0078】
以上のような本実施形態のボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えることができる。
2.倒れているピンの情報および立っているピンの属性を高精度に検出することができる。
3.ピンが倒れているか立っているかを高精度に検出することができる。
4.ピンの位置情報を高精度に取得することができる。
5.投球が終了したか否かを自動的に判定することができる。
6.ユーザがボールを投球する前に、配置されたピンの属性に応じたイベントを発生させることができ、ゲームを盛り上げることができる。
【0079】
つぎに、本発明に係るボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって示される特徴に限定されるものではない。
【実施例1】
【0080】
本実施例1では、本発明に係るボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法によってプレイ可能となる、ピンの属性を活用した新たなオリジナルゲームの一例について考察を行った。
【0081】
本実施例1のオリジナルゲームとしては、プレイヤーが赤チームと青チームに分かれ、赤いピン5本と青いピン5本を使用して、互いに自チームの色ピンを取り合う色取りゲームの要素を含むボウリングゲームを想定した。基本ルールとしては、以下のとおりである。
(1)一投投げるごとにピンを新たに配置し直し、投げるチームを交代する。
(2)自チームの色ピンを倒せば、そのピン数が自チームのポイントとなり、相手チームの色ピンを倒せば、そのピン数が相手チームのポイントとなる。
(3)ピンの色によらず、全てのピンを倒せばストライクボーナスとして自チームに10ポイントが入る。
(4)色ピンはランダムで配置される。
【0082】
以上のようなオリジナルゲームにおいて、まず、
図14(a)に示すように、ピン番号が1,3,5,7,9の位置に赤ピンが配置され、ピン番号が2,4,6,8,10の位置に青ピンが配置されたとする。この場合、属性検出部65によって立っている各ピンの色が判定され、ピン情報記憶部54には、
図14(c)に示すようなピン情報が記憶される。
【0083】
つぎに、先攻の赤チームのプレイヤーが投球し、
図14(b)に示すように、赤いピンが4本、青いピンが1本倒れたとする。この場合、ピン検出部67によって倒されたピンが判定され、ピン情報記憶部54には、
図14(c)に示すようなピン情報が記憶される。このピン情報に基づいてスコア算出部81によりスコアが算出され、赤チームは4ポイント、青チームは1ポイントというスコアがスコア記憶部72に記憶される。
【0084】
つづいて、後攻の青チームの投球ターンとなるため、ピンが新たに配置される。そして、
図15(a)に示すように、ピン番号が2,3,4,9,10の位置に赤ピンが配置され、ピン番号が1,5,6,7,8の位置に青ピンが配置されたとする。この場合、属性検出部65によって立っている各ピンの色が判定され、ピン情報記憶部54には、
図15(c)に示すようなピン情報が記憶される。
【0085】
つぎに、青チームのプレイヤーが投球し、
図15(b)に示すように、全てのピンが倒れた場合、ピン検出部67によって倒されたピンが判定され、ピン情報記憶部54には、
図15(c)に示すようなピン情報が記憶される。このピン情報に基づいてスコア算出部81によりスコアが算出され、赤チームにはポイントが入らず、青チームにはストライクボーナスとして10ポイントというスコアがスコア記憶部72に記憶される。なお、
図14(c)および
図15(c)において、店舗IDおよびレーンIDは省略している。
【0086】
以上のように、本実施例1のオリジナルゲームにおいては、ピンの数のみならず、ピンの色が検出可能となっていることを利用して、堅実に自チームのピンを狙ったり、あるいは相手チームに多くのポイントを与えてしまうリスクを取ってストライクボーナスを狙うといったように、様々な戦略を駆使しながら、従来にはないボウリングゲームを楽しむことができる。
【0087】
以上の本実施例1によれば、本発明に係るボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法は、ピンの属性を活用することで、従来のボウリングとは全く異なる、様々なオリジナルゲームを提供できることが示された。このため、ボウリングを用いたゲームの幅が広がり、ボウリングの集客力を向上させる可能性があることが確認された。
【0088】
なお、本発明に係るボウリングシステム100、ボウリングプログラム1aおよびボウリング方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した実施例1においては、ランダムでゴールドピンを配置し、当該ゴールドピンを倒すとボーナスポイントが付与されるようなルールを追加してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 ボウリング装置
1a ボウリングプログラム
2 撮影手段
3 通過検知手段
4 通信手段
5 記憶手段(ボウリング装置側)
6 演算処理手段(ボウリング装置側)
7 記憶手段(サーバ側)
8 演算処理手段(サーバ側)
10 サーバ
51 プログラム記憶部(ボウリング装置側)
52 位置情報記憶部
53 学習済みモデル記憶部
54 ピン情報記憶部
61 ピン画像取得部
62 位置情報取得部
63 ボール検知部
64 ボール速度算出部
65 属性検出部
66 ループ時間算出部
67 ピン検出部
68 投球終了判定部
69 ピン情報送信部
70 初期配置検出部
71 プログラム記憶部(サーバ側)
72 スコア記憶部
81 スコア算出部
【要約】
【課題】 ピン自体に属性を持たせ、倒されたピンの属性を自動的に判別してスコアに反映させて新たなゲーム性を与えることができるボウリングシステム、ボウリングプログラムおよびボウリング方法を提供する。
【解決手段】 レーン上に配置されたピン画像を取得するピン画像取得部61と、ボールがピンに到達する前の到達前画像を解析し、各ピンが倒れているか否か、および立っているピンの属性を検出する属性検出部65と、ボールがピンに到達した後の到達後画像を解析し、各ピンが倒れているか否かを検出するピン検出部67と、属性検出部65によって検出された倒れているピンの情報および立っているピンの属性と、ピン検出部67によって検出された倒れているピンの情報とに基づいて、ボウリングのスコアを算出するスコア算出部81と、を有する。
【選択図】
図1