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特許7579964測定装置、制御装置、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】測定装置、制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01S7/497
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023510791
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010514
(87)【国際公開番号】W WO2022209698
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021055744
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】細井 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮鍋 庄悟
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕美
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 巧磨
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163965(JP,A)
【文献】特開2011-13135(JP,A)
【文献】特開2014-58235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0284268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0361227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の行うべき対処方法及び行ってはいけない対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記行うべき対処方法及び前記行ってはいけない対処方法を示す情報を出力する出力部とを備える
測定装置。
【請求項2】
透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
少なくとも前記透過部材で反射した反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の受光結果を用いて、前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法を示す情報を出力する出力部とを備え、
前記付着物判定部が、前記付着物は水滴、結露、および雪の少なくともいずれかであると判定した場合に、前記対処法特定部は、少なくともヒーターによる加熱を前記対処方法として特定する
測定装置。
【請求項3】
透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
少なくとも前記透過部材で反射した反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の受光結果を用いて、前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法を示す情報を出力する出力部とを備え、
前記付着物判定部が、前記付着物は埃および塵の少なくともいずれかであると判定した場合に、前記対処法特定部は、エアによる除去を前記対処方法として特定する
測定装置。
【請求項4】
透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
少なくとも前記透過部材で反射した反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子の受光結果を用いて、前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法を示す情報を出力する出力部とを備え、
前記付着物判定部が、前記付着物は水分以外の汚れであると判定した場合に、前記対処法特定部は、拭き取りおよび液剤の少なくともいずれかによる洗浄を前記対処方法として特定する
測定装置。
【請求項5】
請求項に記載の測定装置において、
一以上の除去部をさらに備え、
前記出力部は、特定した前記行うべき対処方法及び前記行ってはいけない対処方法に基づいて、一以上の前記除去部を制御する制御信号を出力する
測定装置。
【請求項6】
請求項1または5に記載の測定装置において、
前記出力部は、前記行うべき対処方法及び前記行ってはいけない対処方法を示す情報として、特定された前記行うべき対処方法を実施するよう促す報知を行うための情報および前記行ってはいけない対処方法を報知するための情報を出力する
測定装置。
【請求項7】
一以上の除去部の制御装置であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の行うべき対処方法及び行ってはいけない対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記行うべき対処方法及び前記行ってはいけない対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する制御信号を出力する出力部とを備える
制御装置。
【請求項8】
一以上の除去部の制御方法であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定し、
判定された前記付着物の種類に基づいて一以上の行うべき対処方法及び行ってはいけない対処方法を特定し、
特定された前記行うべき対処方法及び前記行ってはいけない対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する
制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項7に記載の制御装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、制御装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転等に用いることができる距離測定装置の開発が行われている。距離測定装置の一例としては、出射した光が物体に反射されて戻るまでの時間を測定して、周囲の物体との距離を測定するものが挙げられる。
【0003】
このような距離測定装置では、光を出射する出射窓に付着物が生じると測距に影響が生じる。したがって、付着物が生じた場合にはそれを除去する必要がある。
【0004】
特許文献1には、光の受光パワーをモニタし、窓部から汚れなどを取り除くことが必要なときに窓洗浄装置を動作させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-503486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
付着物を取り除くのに適した手段は、付着物が何であるかによって異なる。そのため、付着物の種類を判別した上で、適切な対処を行う必要がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、測定装置の出射窓に付着した付着物の種類に応じて適切な対処方法を特定することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法を示す情報を出力する出力部とを備える
測定装置である。
【0009】
請求項7に記載の発明は、
一以上の除去部の制御装置であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する制御信号を出力する出力部とを備える
制御装置である。
【0010】
請求項8に記載の発明は、
一以上の除去部の制御方法であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定し、
判定された前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定し、
特定された前記対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する
制御方法である。
【0011】
請求項9に記載の発明は、
コンピュータを、請求項7に記載の制御装置として機能させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
図2】第1の実施形態に係る測定装置を例示する図である。
図3】第1の実施形態に係る測定装置の構成を詳しく例示する図である。
図4】第1の実施形態に係る制御部および付着物判定部のハードウエア構成を例示する図である。
図5】強度差分マップの一例である。
図6】透過部材に付着物が存在した場合の内部反射光の受光信号波形の例を示す図である。
図7】複数の出射方向の飽和時間の分布を示す飽和時間マップの一例である。
図8】第1の実施形態に係る測定装置の使用環境を例示する図である。
図9】付着物判定部が付着物の種類を判定する流れを例示するフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る付着物判定部が用いる学習済みモデルを例示する図である。
図11】第3の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
図12】第4の実施形態に係る測定装置の構成を例示する図である。
図13】第5の実施形態に係る判定装置の構成を例示するブロック図である。
図14】第5実施形態に係る判定装置のハードウエア構成を例示する図である。
図15】第5実施形態に係る判定方法の流れを例示するフローチャートである。
図16】第6の実施形態に係る制御装置の構成を例示するブロック図である。
図17】第6実施形態に係る制御方法の流れを例示するフローチャートである。
図18】透過部材に付着物が存在した場合の内部反射光の受光信号波形の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。図2は、本実施形態に係る測定装置10を例示する図である。図1よび図2において、破線矢印は光の経路を模式的に示している。本実施形態に係る測定装置10は、透過部材20を介して光を出射し、対象30からの反射光を検出する装置である。測定装置10は、受光素子18および付着物判定部121を備える。受光素子18は、少なくとも透過部材20で反射した反射光を受光する。付着物判定部121は、透過部材20に付着している付着物の種類を判定する。以下に詳しく説明する。
【0015】
測定装置10は光を出力する発光素子14をさらに備える。発光素子14から出力された光は主に透過部材20を介して測定装置10の外部に出射される。しかし、発光素子14から出力された光の少なくとも一部は、測定装置10の内部で反射された内部反射光となる。内部反射光は受光素子18で受光される。この内部反射光には透過部材20で反射された光も含まれる。また、透過部材20への付着物が存在した場合、内部反射光にはその付着物に起因した反射光が含まれる。
【0016】
透過部材20は測定装置の内側と外側を仕切っている、光を透過する部材である。透過部材20はたとえばガラスまたは樹脂からなる。透過部材20の少なくとも一つの面は測定装置10の外部の空間にさらされており、汚れや雨滴等が付着し得る。付着物に起因した反射光には、たとえば、透過部材20と付着物との界面で反射された光、付着物の内部で反射された光、付着物と空気との界面で反射された光を含む。付着物判定部121は一例として、このような反射光の受光結果を用いて付着物の種類を判定することができる。
【0017】
図3は、本実施形態に係る測定装置10の構成を詳しく例示する図である。本図において、破線矢印は光の経路を模式的に示している。本図を参照し、測定装置10の構成について詳しく説明する。
【0018】
測定装置10は、たとえばパルス光の出射タイミングと反射光(反射したパルス光)の受光タイミングとの差に基づいて、測定装置10から走査範囲160内にある物体(対象30)までの距離を測定する装置である。パルス光はたとえば赤外光等の光である。また、パルス光はたとえばレーザパルスである。測定装置10に備えられた発光素子14から出力され、透過部材20を通って測定装置10の外部へ出射されたパルス光は、物体で反射されて少なくとも一部が測定装置10に向かって戻る。そして、反射光が再び透過部材20を通って測定装置10内に入射する。測定装置10に入射した反射光は受光素子18で受光され、強度が検出される。ここで、測定装置10では発光素子14からパルス光が出射されてから反射光が受光素子18で検出されるまでの時間が測定される。そして、測定装置10に備えられた制御部120は、測定された時間とパルス光の伝搬速さを用いて測定装置10と物体との距離を算出する。測定装置10はたとえばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging, Laser Illuminated Detection and Ranging またはLiDAR:Light Detection and Ranging)装置である。
【0019】
発光素子14はパルス光を出射する。発光素子14は、たとえばレーザーダイオードである。受光素子18は測定装置10に入射したパルス光および上述した内部反射光を受光する。受光素子18は、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)等のフォトダイオードである。本実施形態では、受光素子18が、内部反射光を受光して付着物の判定に用いるための受光素子と対象30からの反射光を受光して測距するための受光素子とを兼ねている例について説明している。ただし、内部反射光を受光して付着物の判定に用いるための受光素子と対象30からの反射光を受光して測距するための受光素子とは別々に設けられていても良い。
【0020】
図3の例において、測定装置10は、可動ミラー16をさらに備える。可動ミラー16は、たとえば一軸可動または二軸可動のMEMSミラーである。可動ミラー16の反射面の向きを変えることにより、測定装置10から出射されるパルス光の出射方向を変化させることができる。可動ミラー16が二軸可動のMEMSミラーである場合、可動ミラー16を二軸駆動する事により、所定の範囲内をパルス光でラスタスキャンすることができる。
【0021】
制御部120は、複数のパルス光による測定結果を含む点群データを生成する。たとえば、走査範囲160内をラスタスキャンする場合、第1の方向161に光の出射方向を変化させる事によりライン状の走査を行う。そして、第2の方向162に光の出射方向を変化させながら複数のライン状走査を行う事により、走査範囲160内の複数の測定結果を含む点群データを生成する事ができる。本図の例において、第1の方向161と第2の方向162とは直交している。
【0022】
一度のラスタスキャンで生成される点群データの単位をフレームと呼ぶ。ひとつのフレームについて測定が終わると、光の出射方向は初期位置に戻り、次のフレームの測定が行われる。こうして、繰り返しフレームが生成される。点群データにおいては、パルス光で測定された距離と、そのパルス光の出射方向を示す情報とが関連付けられている。または、点群データは、パルス光の反射点を示す三次元座標を含んでもよい。制御部120は、算出された距離と、各パルス光を出射する時の可動ミラー16の角度を示す情報とを用いて点群データを生成する。生成された点群データは測定装置10の外部に出力されても良いし、制御部120からアクセス可能な記憶装置に保持されても良い。
【0023】
本図の例において、測定装置10は孔付きミラー15、および集光レンズ13をさらに備える。発光素子14から出力されたパルス光は孔付きミラー15の孔を通過し、可動ミラー16で反射された後に測定装置10から出射される。また、測定装置10に入射した反射光は可動ミラー16および孔付きミラー15で反射された後、集光レンズ13を介して受光素子18に入射する。なお、測定装置10は、コリメートレンズやミラー等をさらに含んでもよい。
【0024】
制御部120は、発光素子14、受光素子18および可動ミラー16を制御することができる。また、制御部120は、受光素子18から受光信号を受信し、上述したように測定装置10から走査範囲160内の物体までの距離を算出する。付着物判定部121はたとえば制御部120を介して判定に必要な情報を取得することができる。
【0025】
図4は、本実施形態に係る制御部120および付着物判定部121のハードウエア構成を例示する図である。付着物判定部121は、集積回路80を用いて実装されている。制御部120は、集積回路80および電子回路を用いて実装されている。集積回路80は、例えば SoC(System On Chip)である。電子回路はたとえば可動ミラー16の駆動回路163、受光素子18の検出回路181、および発光素子14の駆動回路141を含む。駆動回路141は、集積回路80からの制御信号に基づき発光素子14を発光させるための回路であり、たとえばスイッチング回路や容量素子を含んで構成される。検出回路181は、I-Vコンバータや増幅器を含み、受光素子18による光の検出強度を示す信号を出力する。
【0026】
集積回路80は、バス802、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812を有する。バス802は、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ804などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ804は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ806は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス808は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0027】
入出力インタフェース810は、集積回路80を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース810には発光素子14の駆動回路141、受光素子18の検出回路181、および可動ミラー16の駆動回路163が接続されている。
【0028】
ネットワークインタフェース812は、集積回路80を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)、Ethernet、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等の通信網である。なお、ネットワークインタフェース812が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0029】
ストレージデバイス808は、制御部120および付着物判定部121の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、制御部120および付着物判定部121の機能を実現する。
【0030】
集積回路80のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ806に格納されてもよい。この場合、集積回路80は、ストレージデバイス808を備えていなくてもよい。
【0031】
付着物判定部121が行う処理について以下に詳しく説明する。付着物判定部121は測定装置10の動作が開始されると、予め定められた時間毎に透過部材20への付着物の有無を判定する。または、付着物判定部121は、予め定められた操作を受け付けることをトリガとして、透過部材20への付着物の有無を判定する。付着物判定部121はたとえば受光素子18における検出結果に基づいて付着物の有無を判定する事ができる。そして、付着物判定部121は、透過部材20への付着物があると判定した場合に、さらにその付着物の種類を判定する。付着物の有無の判定方法および付着物の種類の判定方法について以下に詳しく説明する。
【0032】
<付着物の有無の判定>
本実施形態に係る付着物判定部121は、内部反射光の大きさに基づいて付着物の有無を判定することができる。発光素子14から光が出力されてから、内部反射光が受光素子18で受光されるまでの時間は、対象30からの反射光が受光素子18で受光されるまでの時間に比べて非常に短い。発光素子14からのパルス光の出射直後に受光素子18においてそのパルス光の内部反射光が受光される。また、内部反射光が受光されるタイミングは測定装置10の構造に依存して定まっている。したがって、パルス光の出射から予め定められた期間に受光した光を内部反射光とみなすことで、対象30からの反射光と区別することができる。
【0033】
測定装置10では、1フレーム分の測定を行うにあたり、複数の方向に順にパルス光が出射され、各パルス光に対して内部反射光の強度が測定される。そして付着物判定部121は受光素子18から内部反射光の受光強度を取得して、各出射方向における内部反射光の強度を示す強度マップを生成する。また、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部(たとえばストレージデバイス808)には、予め初期状態で同様に生成された初期強度マップが保持されている。初期状態とは、透過部材20に付着物が無い、清浄な状態をいう。初期強度マップはたとえば測定装置10の出荷前に生成することができる。付着物判定部121は、初期強度マップを記憶部から読み出して取得し、生成した強度マップと初期強度マップとの差分を示す強度差分マップを生成する。
【0034】
次いで、付着物判定部121は、この強度差分マップに含まれる各データ点の値が、予め定められた基準値A以上であるか否かを判定する。そして、強度差分マップの全データ点に対し、基準値A以上であるデータ点の割合が予め定められた割合B以上であるか否かを判定する。基準値A以上であるデータ点の割合が予め定められた割合B以上である場合、付着物判定部121は、透過部材20に付着物があると判定する。基準値A以上であるデータ点の割合が予め定められた割合B未満である場合、付着物判定部121は、透過部材20に付着物が無いと判定する。
【0035】
図5は、強度差分マップの一例である。本図が取得された際、領域α1に対応する透過部材20の領域は水で濡れており、領域α2に対応する透過部材20の領域は指紋(油脂)で汚れていた。また、領域βに対応する透過部材20の領域に付着物は無かった。本図の例から分かるように、付着物がある領域において、内部反射光の強度の初期状態からの差分が大きい。したがって、強度差分マップを用いて付着物の有無を判定することができる。
【0036】
なお、内部反射光の検出強度は測定条件によって異なる。測定条件はたとえば受光感度、出射強度、受光素子18近辺の温度、測定装置10に取り付けられたレンズの有無および種類(たとえば倍率)等である。したがって、記憶部には予め測定条件と関連付けられた複数の初期強度マップが保持されており、付着物判定部121がフレームの内部反射光の強度マップを取得した際の測定条件に対応する初期強度マップをそれらの中から選択して取得するようにしても良い。
【0037】
<付着物の種類の判定>
付着物判定部121が付着物の種類(水滴、水滴の乾き痕、塵または埃、油分、結露、雪等)を判定する方法について以下に説明する。付着物判定部121は、以下に説明するような複数の判定を組み合わせることにより、付着物の種類を判定できる。複数の判定を組み合わせたフローチャートの例は図9に示しており、詳しく後述する。また、付着物判定部121は、以下に説明するような複数の判定のそれぞれによって、付着物が特定の種類の付着物であることの確からしさを表すスコアを導出してもよい。その場合、付着物判定部121は導出した複数のスコアを合計すること、または所定の重みを用いた、複数のスコアの重み付け和を付着物の種類ごとに求めることにより、付着物の種類ごとの総合スコアを算出してもよい。付着物判定部121は、総合スコアが最も高い付着物の種類を、判定結果として出力することができる。
【0038】
<<飽和時間情報による判定>>
付着物判定部121は、受光素子18の飽和に関する時間の長さを示す飽和時間情報に基づいて、付着物が水分であるか否かを判定できる。
【0039】
図6は、透過部材20に付着物が存在した場合の内部反射光の受光信号波形の例を示す図である。本図では、透過部材20の付着物に起因した内部反射光の波形を示している。本図中、上部に示した波形は、付着物が水分である場合の波形である。そして、本図中、下部に示した波形は付着物が水分以外である場合の波形であり、1つ目のピークが内部反射光を検出したピークである。なお、下部の波形では、対象30で反射された反射光の受光信号が二つの目のピークとして検出されている。
【0040】
図18は、透過部材20に付着物が存在した場合の内部反射光の受光信号波形の他の例を示す図である。本図では、透過部材20の付着物に起因した内部反射光の波形を示している。付着物が水分である場合、内部反射光の受光信号波形は本図の例のようになる場合もある。
【0041】
本図に示すように、付着物が水分である場合、波形が長時間にわたり飽和の影響を受ける。これは、水分によってレンズ効果が生じているためと考えられる。このような、飽和の影響が生じている時間の長さを用いることで、付着物が水分であるか否かを判定できる。
【0042】
判定に用いる事ができる、飽和に関する時間の長さとしては、たとえば本図中に示した時間T1、T2、およびT3が挙げられる。なお、以下では飽和に関する時間の長さを単に「飽和時間」とも呼ぶ。飽和時間は時間T1、T2、およびT3の少なくともいずれである。飽和時間情報は、時間T1、T2、およびT3の少なくともいずれかを示し、付着物判定部121は、付着物に起因した反射光を受光した際の飽和時間に基づいて、付着物が水分であるか否かを判定する。
【0043】
飽和時間はたとえば、受光素子18が飽和している時間の長さT1である。付着物判定部121は、受光素子18が出力する受光信号が予め定められた基準値Cを超えている状態を、受光素子18が飽和している状態であると判定して時間T1を測定する。基準値Cはたとえば受光素子の飽和レベルよりわずかに小さい。ここで、飽和レベルとは、受光素子182が飽和せずに検出できる最大の受光量を意味する。なお、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件に関連付けられた基準値Cが複数保持されており、付着物判定部121は複数の基準値Cの中から判定対象の受光信号が得られた際の測定条件に対応する基準値Cを選択して取得し、判定に用いても良い。
【0044】
飽和時間はたとえば、受光素子の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和の後に初めて傾きがゼロになる時点を終点とする時間の長さT2である。付着物判定部121は、パルス光の出射後、受光素子18が出力する受光信号が上述した基準値Cを超えた時点を飽和が始まった時点とする。また、付着物判定部121は、波形の各点における傾きを算出し、算出した傾きがゼロになる時点を検出して、時間T2を測定する。
【0045】
飽和時間はたとえば、受光素子18の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち早い方を終点とする時間の長さT3である。付着物判定部121は、パルス光の出射後、受光素子18が出力する受光信号が上述した基準値Cを超えた時点を飽和が始まった時点とする。また、付着物判定部121は、受光信号がゼロクロスする時点を検出して飽和後2度目にゼロクロスする時点を特定する。さらに付着物判定部121は、信号値が予め定められた収束レベル範囲内である状態が所定の長さ続いた場合を収束している状態と判定する。そして、収束している状態が生じていると判定された場合、その状態が始まった時点、すなわち、信号値が収束レベル範囲外から収束レベル範囲内となった時点を飽和後初めて収束した時点として特定する。なお、収束レベル範囲はゼロを間に含む範囲であり、収束レベル範囲の上限はゼロよりわずかに大きく、収束レベル範囲の下限はゼロよりわずかに小さい。ただし、収束レベル範囲の上限とゼロとの差は収束レベル範囲の下限とゼロとの差よりも大きくすることができる。たとえば、外乱光が10に入射する場合、受光信号がその外乱光の分、ゼロより大きいレベルに収束することがあるからである。
【0046】
付着物判定部121は、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち早い方を選択し、時間T3を測定する。なお、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点のいずれかが存在しなくてもよい。その場合、付着物判定部121は、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち、特定できた方をT3の終点とする。図18の例において、T2とT3は同じである。
【0047】
付着物判定部121は、複数の出射方向のそれぞれに対する飽和時間情報に基づいて、付着物の種類を判定する。具体的には付着物判定部121は、フレームを生成するための複数の出射方向で検出された内部反射光のそれぞれに対し、飽和時間情報を生成する。そして、付着物判定部121は、複数の出射方向の飽和時間情報が示す飽和時間が、それぞれ予め定められた基準値Dを超えるか否か判定する。また、複数の出射方向において、飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が、予め定められた割合Eを超えている場合に、付着物として水分が存在すると判定する。すなわち、フレーム中の全ての出射方向の内、飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が割合Eを超えている場合に、付着物として水分が存在すると判定する。
【0048】
このような方法により、付着物が水滴(雨滴)、結露、雪等の水分であるか、油汚れ、塵、埃、雨滴の乾き痕等の非水分であるかを判定できる。
【0049】
また、飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が高いほど付着物が水滴(雨滴)、結露、雪等の水分である可能性が高いといえる。したがって、スコアを算出する場合、付着物判定部121はたとえば飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が高いほど、水分(水滴、結露、および雪)に高いスコアを付し、飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が高いほど、水分以外の付着物の種類に低いスコアを付す。または、付着物判定部121は、飽和時間が基準値Dを超える出射方向の割合が割合Eを超えている場合、水分(水滴、結露、および雪)に1のスコアを付し、水分以外の付着物の種類にゼロのスコアを付してもよい。
【0050】
なお、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件および飽和時間の種類(時間T1、T2、およびT3)に関連付けられた基準値Dが複数保持されており、付着物判定部121は複数の基準値Dの中から判定対象の受光信号が得られた際の測定条件および用いる飽和時間の種類に対応する基準値Dを選択して取得し、判定に用いても良い。
【0051】
図7は、複数の出射方向の飽和時間(時間T1)の分布を示す飽和時間マップの一例である。飽和時間マップの生成方法については、後述する。本図の飽和時間マップと、図5の強度差分マップとは同じフレームで得られた。図7に示すように、水が存在する領域に対応する領域α1で長い飽和時間が検出されているのに対し、油脂で汚れていた領域に対応するα2では、飽和時間は短いままであった。このように、飽和時間を用いることで、付着物としての水分の存在を正確に検出できる。
【0052】
<<飽和時間マップにおける形状による判定>>
付着物が水分であると判定された場合、付着物判定部121は、飽和時間の分布を示すマップを生成し、付着物の形状を検出することにより、付着物が水滴であるか否かを判定できる。具体的には、付着物判定部121は、複数の出射方向の飽和時間情報が示す飽和時間の分布を示す飽和時間マップを生成する。すなわち、飽和時間マップはあるフレーム内の複数の出射方向(データ点)についての飽和時間を示す。そして、飽和時間マップにおいて飽和時間情報が示す時間が予め定められた基準値Fを超える領域を抽出する。そして、抽出した領域の形状に基づいて付着物が水滴であるか否かを判定する。
【0053】
たとえば付着物判定部121は、互いに隣接し、飽和時間が基準値Fを超える複数のデータ点からなる領域を抽出する。そして、抽出した領域の円形度を既存の方法を用いて算出する。また、算出した円形度が、予め定められた基準値Gを超えるか否かを判定する。円形度が基準値Gを超える領域が存在した場合、付着物判定部121は付着物として水滴が存在すると判定する。
【0054】
さらに付着物判定部121は、抽出した領域の大きさにさらに基づいて、付着物が水滴であるか否かを判定しても良い。水滴はある程度大きくなると流れ落ちると考えられるからである。たとえば、付着物判定部121は、抽出した領域の円相当径を既存の方法を用いて算出する。そして、円形度が基準値Gを超える領域が存在した場合、その領域の円相当径が予め定められた基準値H以下であるか否かを判定する。そして、領域の円相当径が予め定められた基準値H以下である場合に、付着物判定部121は付着物として水滴が存在すると判定する。
【0055】
また、スコアを算出する場合、付着物判定部121はたとえば算出した円形度が高いほど、水滴に高いスコアを付し、算出した円形度が高いほど、水滴以外の付着物の種類に低いスコアを付す。または、付着物判定部121は、円形度が基準値Gを超える領域が存在した場合、水滴に1のスコアを付し、水滴以外の付着物の種類にゼロのスコアを付してもよい。
【0056】
なお、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件に関連付けられた基準値Fが複数保持されており、付着物判定部121は複数の基準値Fの中から判定対象の受光信号が得られた際の測定条件に対応する基準値Fを選択して取得し、判定に用いても良い。また、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件に関連付けられた基準値Hが複数保持されており、付着物判定部121は複数の基準値Hの中から判定対象の受光信号が得られた際の測定条件に対応する基準値Hを選択して取得し、判定に用いても良い。たとえば、水滴が検出される大きさは測定装置10に設けられたレンズの倍率に依存する。したがって、円相当径に関する基準値Hは、レンズの倍率に応じて設定することができる。
【0057】
付着物判定部121は、付着物として水滴が存在すると判定しなかった場合、付着物が結露または雪であると判定しても良い。
【0058】
<<強度差分マップにおける形状による判定>>
付着物判定部121は上述した強度差分マップを用いて付着物の形状を検出することにより、付着物が水滴または水滴の乾き痕であるか否かを判定できる。具体的には、付着物判定部121は、強度差分マップに含まれる各データ点の値が、予め定められた基準値J以上であるか否かを判定する。そして、値が基準値Jを超える領域を抽出する。そして、抽出した領域の形状に基づいて付着物が水滴または水滴の乾き痕であるか否かを判定する。
【0059】
たとえば付着物判定部121は、互いに隣接し、値が基準値Jを超える複数のデータ点からなる領域を抽出する。そして、抽出した領域の円形度を既存の方法を用いて算出する。また、算出した円形度が、予め定められた基準値Nを超えるか否かを判定する。円形度が基準値Nを超える領域が存在した場合、付着物判定部121は付着物として水滴または水滴の乾き痕が存在すると判定する。なお、付着物が水滴の乾き痕である場合、抽出された領域は、円の外縁を示す領域となる場合がある。
【0060】
さらに付着物判定部121は、抽出した領域の大きさにさらに基づいて、付着物が水滴または水滴の乾き痕であるか否かを判定しても良い。たとえば、付着物判定部121は、抽出した領域の円相当径を既存の方法を用いて算出する。そして、円形度が基準値Nを超える領域が存在した場合、その領域の円相当径が予め定められた基準値P以下であるか否かを判定する。そして、領域の円相当径が予め定められた基準値P以下である場合に、付着物判定部121は付着物として水滴または水滴が存在すると判定する。
【0061】
また、スコアを算出する場合、付着物判定部121はたとえば算出した円形度が高いほど、水滴および水滴の乾き痕に高いスコアを付し、算出した円形度が高いほど、水滴でも水滴の乾き痕でもない付着物の種類に低いスコアを付す。または、付着物判定部121は、円形度が基準値Nを超える領域が存在した場合、水滴および水滴の乾き痕に1のスコアを付し、水滴でも水滴の乾き痕でもない付着物の種類にゼロのスコアを付してもよい。
【0062】
なお、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件に関連付けられた基準値Jが複数保持されており、付着物判定部121は複数の基準値Jの中から判定対象の受光信号が得られた際の測定条件に対応する基準値Jを選択して取得し、判定に用いても良い。
【0063】
なお、強度差分マップにおける形状判定の方法と、飽和時間マップにおける形状判定の方法とは、形状マップの方法が互いに異なっていても良い。
【0064】
付着物判定部121は、付着物として水滴の乾き痕が存在すると判定しなかった場合、付着物が結露、雪、塵、埃、結露または油分であると判定しても良い。
【0065】
<<温度による判定>>
付着物判定部121は、透過部材20の温度および外気温度の少なくとも一方に基づいて、付着物が水滴であるか否かを判定することができる。
【0066】
図8は、本実施形態に係る測定装置10の使用環境を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、温度センサ210から透過部材20の温度および測定装置10の外気温度の少なくとも一方を取得することができる。なお、温度センサ210は測定装置10に含まれていても良い。特に、温度センサ210が透過部材20の温度を測定する場合、温度センサ210は測定装置10に含まれていることが好ましい。
【0067】
たとえば透過部材20の温度から外気温度を引いた値が予め定められた基準値K以下である場合、付着物判定部121は付着物が結露であると判定する。また、透過部材20の温度および外気温度の少なくとも一方が予め定められた基準値L以下である場合、付着物判定部121は、付着物が雪であると判定する。
【0068】
また、付着物判定部121は以下のようにスコアを算出できる。たとえば付着物判定部121は、透過部材20の温度から外気温度を引いた値が予め定められた基準値K以下である場合、結露に1のスコアを付し、結露以外の付着物の種類にゼロのスコアを付す。たとえば付着物判定部121は、透過部材20の温度および外気温度の少なくとも一方が予め定められた基準値L以下である場合、雪に1のスコアを付し、雪以外の付着物の種類にゼロのスコアを付す。
【0069】
<<対象からの反射光強度による判定>>
付着物判定部121は、対象30からの反射光の受光強度にさらに基づいて付着物が水滴であるか否かを判定することができる。付着物の種類によって、光を遮る度合いが異なるからである。制御部120では、フレームごとに、各出射方向について、対象30からの反射光を受光した際の受光強度を示す受光強度マップが生成される。
【0070】
付着物判定部121は、上述した飽和時間マップまたは強度差分マップに基づいて付着物がある可能性が高い付着物領域を特定する。付着物領域は、飽和時間マップにおいて飽和時間情報が示す時間が予め定められた基準値Fを超える領域として特定できる。または、付着物領域は、強度差分マップにおいてデータ点の値が基準値Jを超える領域として特定できる。
【0071】
次いで、付着物判定部121は、付着物領域内の各出射方向における、対象30からの反射光の受光強度を受光強度マップから抽出する。そしてそれらの強度の平均値を算出する。一方、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には、付着物が無い状態における受光強度を示す初期受光強度マップが保持されている。付着物判定部121は、付着物領域内の各出射方向に対応する受光強度を、初期受光強度マップから抽出する。そしてそれらの強度の平均値を算出する。次いで、付着物判定部121は、算出した平均値の差分(受光強度マップから得た平均値と初期受光強度マップから得た平均値との差分)を算出し、算出した差分が基準値M1以上であるか否かを判定する。算出した差分が基準値M1以上である場合、付着物判定部121は付着物が雪であると判定する。算出した差分が基準値M1未満基準値M2以上である場合、付着物判定部121は付着物が塵、埃、水滴、および結露のいずれかであると判定する。算出した差分が基準値M2未満である場合、付着物判定部121は付着物が水滴の乾き痕または油分であると判定する。なお、基準値M1は基準値M2よりも大きい。また、付着物判定部121は、付着物の二つの種類を区別できればよい場合などには、基準値M1と基準値M2の一方のみを用いて判定しても良い。
【0072】
また、付着物判定部121は以下のようにスコアを算出できる。たとえば付着物判定部121は、算出した差分が基準値M1以上である場合、雪に1のスコアを付し、雪以外の付着物の種類にゼロのスコアを付す。たとえば付着物判定部121は、算出した差分が基準値M1未満基準値M2以上である場合、塵、埃、水滴、および結露に1のスコアを付し、塵、埃、水滴、および結露のいずれでもない付着物の種類にゼロのスコアを付す。たとえば付着物判定部121は、算出した差分が基準値M2未満である場合、水滴の乾き痕および油分に1のスコアを付し、水滴の乾き痕および油分のいずれでもない付着物の種類にゼロのスコアを付す。
【0073】
なお、記憶部には予め測定条件と関連付けられた複数の初期受光強度マップが保持されており、付着物判定部121が受光強度マップを取得した際の測定条件に対応する初期受光強度マップをそれらの中から選択して取得するようにしても良い。また、付着物判定部121からアクセス可能な記憶部には予め、測定条件に関連付けられた基準値M1およびM2の組が複数保持されており、付着物判定部121はこれら複数の組の中から判定対象の受光強度マップが得られた際の測定条件に対応する組を選択して取得し、判定に用いても良い。
【0074】
<<移動体の速度と付着物の量の相関に基づく判定>>
付着物判定部121は、移動体の速度と付着物の量の相関の強さに基づいて付着物が水滴である可能性の高さを判定できる。たとえば測定装置10が車両や二輪車等の移動体に取り付けられているとする。その測定装置10の透過部材20に雨滴が付着する場合、移動体の進行方向に向いている面では移動体の速度が高まるほど雨滴の付着量が増大する。したがって、移動体の速度の、透過部材20に向かう方向の成分と、付着物の量との相関が強いほど、付着物が水滴である可能性が高いといえる。
【0075】
具体的には付着物判定部121は以下のような処理を行える。付着物判定部121は、移動体の速度を、移動体に設けられたセンサから取得する。また、記憶部には予め移動体に対する測定装置10の取付方向を示す情報が保持されており、付着物判定部121は記憶部から、測定装置10の取付方向を示す情報を取得する。そして付着物判定部121は、移動体の速度と、測定装置10の取付方向を示す情報とを用いて、移動体の速度の、透過部材20に向かう方向の成分(以下、「対向成分」と呼ぶ)を算出する。また、付着物判定部121は、上述した強度差分マップに含まれる各データ点の値が、予め定められた基準値J以上であるか否かを判定する。そして、基準値J以上であるデータ点の数をカウントする。そして付着物判定部121は、基準値J以上であるデータ点の数と、その強度差分マップが得られた時の対向成分との相関度合いを算出する。
【0076】
具体的には付着物判定部121は、強度差分マップにおいて値が基準値J以上であるデータ点の数とその強度差分マップが得られた時の対向成分とを紐付けた組を複数生成する。複数の組は、たとえば所定の時間間隔で得られた強度差分マップについて生成される。そして、付着物判定部121は、複数の組のデータを用いて、値が基準値J以上であるデータ点の数と対向成分との相関係数を算出する。付着物判定部121は、得られた相関係数が大きいほど、付着物が水滴である可能性が高いと判定する。すなわち付着物判定部121は、得られた相関係数が大きいほど、水滴に高いスコアを付し、得られた相関係数が大きいほど、水滴以外の付着物の種類に低いスコアを付す。
【0077】
本実施形態に係る付着物判定部121は、上記の複数の判定を用いたルールベースで付着物の種類の判定を行う。中でも付着物判定部121は、飽和時間情報を少なくとも用いたルールベースで付着物の種類を判定することが好ましい。
【0078】
図9は、付着物判定部121が付着物の種類を判定する流れを例示するフローチャートである。本図の例では、付着物判定部121は付着物の種類を判定する際、まずS102において付着物判定部121は、上述した強度差分マップにおける形状による判定を行う。そして、強度差分マップにおける付着物の形状の円形度が基準値N以上である場合(S102のY)、S113において付着物判定部121は、上述した飽和時間マップにおける形状による判定を行う。飽和時間マップにおける付着物の形状の円形度が基準値G以上である場合(S113のY)、S112において付着物判定部121は、付着物が水滴であると判定する(S112)。飽和時間マップにおける付着物の形状の円形度が基準値G以上でない場合(S113のN)、S109において付着物判定部121は、付着物が水滴の乾き痕であると判定する(S109)。
【0079】
一方、強度差分マップにおける付着物の形状の円形度が基準値N以上でない場合(S102のN)、次いで付着物判定部121はS101において、上述した飽和時間情報による判定を行う。そして、飽和時間が基準値Dを超える割合が所定の割合Eを超えない場合(S101のN)、付着物判定部121は付着物が水分ではないと判定して次にS103の処理を行う。
【0080】
付着物判定部121はS103において、上述した対象からの反射光強度による判定を行う。そして、受光強度の平均値の差分が基準値M2以上である場合(S103のY)、付着物判定部121は、付着物が塵または埃であると判定する(S104)。一方、受光強度の平均値の差分が基準値M2未満である場合(S103のN)、付着物判定部121は、付着物が油分であると判定する(S110)。
【0081】
一方、S101において、飽和時間が基準値Dを超える割合が所定の割合Eを超える場合(S101のY)、付着物判定部121は付着物が水分であると判定して次にS105の処理を行う。S105では、付着物判定部121は、上述した温度による判定を行う。透過部材20の温度から外気温度を引いた値が基準値K以下である場合(S105のY)、付着物判定部121は付着物が結露であると判定する(S106)。透過部材20の温度から外気温度を引いた値が基準値Kを超える場合(S105のN)、付着物判定部121は次いで外気温度が基準値L以下であるか否か判定する(S107)。外気温度が基準値L以下である場合(S107のY)、付着物判定部121は付着物が雪であると判定する(S108)。外気温度が基準値Lを超える場合(S107のN)、付着物判定部121は付着物が水滴であると判定する(S111)。
【0082】
なお、付着物判定部121は図9の例に限らず、上述した一以上の判定方法およびその他の判定方法を組み合わせて付着物の種類を特定することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る測定装置10は、判定した付着物の種類を示す情報をたとえば表示装置への表示または音声として出力することができる。
【0084】
以上、本実施形態によれば、付着物判定部121は、たとえば受光素子18の飽和に関する時間の長さを示す飽和時間情報等を用いることにより、透過部材20への付着物の種類を精度良く判定することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る付着物判定部121が用いる学習済みモデル40を例示する図である。本実施形態に係る測定装置10は、付着物判定部121が、機械学習による学習済みモデル40を用いて判定を行う点を除いて、第1の実施形態に係る測定装置10と同じである。以下に詳しく説明する。
【0086】
本実施形態に係る付着物判定部121は、学習済みモデル40を付着物判定部121からアクセス可能な記憶部から読み出すことで取得する。付着物判定部121はモデル40に入力データを入力し、モデル40の出力データを得る。モデル40の入力データはたとえば飽和時間情報を含む。また、モデル40の入力データはたとえば、複数の測定方向における検出結果の分布を示すマップを一以上含む。マップとしては上述した強度マップ、強度差分マップ、飽和時間マップ(飽和時間はT1)、飽和時間マップ(飽和時間はT2)、飽和時間マップ(飽和時間はT3)、受光強度マップが挙げられる。また、モデル40の入力データは各マップを得たときの測定条件を示す情報をさらに含んでも良い。モデル40の出力データは、複数の付着物の種類それぞれの、確度を示す情報である。この確度はたとえば、その種類の付着物が透過部材20に付着している確からしさを示す。
【0087】
学習済みモデル40は、ニューラルネットワーク410を含む。学習済みモデル40は、複数の訓練データを用いて予め機械学習がされたモデルである。訓練データは、一以上のマップと、そのマップを得た際に実際に付着していた一以上の付着物の種類を示す情報を関連付けたデータである。
【0088】
付着物判定部121は、付着物の種類を判定するために、受光素子18の検出結果に基づく一以上のマップを生成する。そして、生成した一以上のマップを入力データとしてモデル40に入力し、モデル40の出力データを得る。付着物判定部121は、得られた出力データにおいて、たとえば最も確度が高い付着物の種類を、判定結果として出力する。または、付着物判定部121は、得られた出力データに示された確度が、予め定められた値よりも高い、一以上の付着物の種類を判定結果として出力しても良い。
【0089】
付着物判定部121は、このようなモデル40を用いることにより、精度良く付着物の種類を判定できる。なお、付着物判定部121は、第1の実施形態で説明したようなルールベースの判定と、モデル40を用いた判定とを組み合わせて、付着物の種類を判定しても良い。
【0090】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果を得られる。
【0091】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。本図において、破線の矢印は光の経路を模式的に示している。本実施形態に係る測定装置10は、以下に説明する点を除いて第1または第2の実施形態に係る測定装置10と同じである。
【0092】
本実施形態に係る測定装置10は、透過部材20を介して光を出射し、対象30からの反射光を検出する装置である。測定装置10は、付着物判定部121、対処法特定部122、および出力部123を備える。付着物判定部121は透過部材20への付着物の種類を判定する。対処法特定部122は、付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する。そして、出力部123は特定された対処方法を示す情報を出力する。以下に詳しく説明する。
【0093】
本実施形態に係る付着物判定部121は、第1または第2の実施形態で説明した付着物判定部121と同じである。対処法特定部122は、付着物判定部121から判定結果を示す情報を取得する。対処法特定部122からアクセス可能な記憶部には、予め付着物の種類と対処方法とを関連付けた対処情報が保持されている。対処情報はたとえば付着物の種類と対処方法との対応を示すテーブルである。対処法特定部122はこの記憶部から、対処情報を読み出し、付着物判定部121の判定結果に対応する対処方法を抽出する。なお、付着物判定部121は、一つの付着物の種類に対して、複数の対処方法を特定しても良い。すなわち、対処情報では、一の付着物の種類に対し、複数の対処方法が関連付けられていても良い。
【0094】
次いで本実施形態に係る出力部123は、対処方法を示す情報として、特定された対処方法を実施するよう促す報知を行うための情報を出力する。たとえば出力部123は、測定装置10に接続された表示装置に、「出射窓をクロスで拭いて下さい。」等の表示をさせるための情報を出力する。または、出力部123は、測定装置10に接続されたスピーカーに、「出射窓をクロスで拭いて下さい。」等の音声を出力させるための情報を出力する。
【0095】
付着物の種類と、対処方法との関係について、以下に説明する。たとえば付着物判定部121が、付着物は水滴、結露、および雪の少なくともいずれかであると判定した場合に、対処法特定部122は、少なくともヒーターによる加熱を対処方法として特定する。ただし、付着物判定部121が、付着物は水分であると判定した場合に、対処法特定部122は、少なくともヒーターによる加熱を対処方法として特定してもよい。
【0096】
ヒーターは透過部材20を加熱するよう設けられており、加熱によって透過部材20に付着した水分を蒸発させることができる。なお、水滴等をヒーターで除去するためには、雨の降り始め等、水分の量が少ない段階で加熱を開始することが重要である。水分の量が多いと、加熱によって効率よく水分を除去できないことがあるからである。したがって、測定装置10においては付着物判定部121で透過部材20への付着物の種類を迅速に判別し、対応することが重要である。
【0097】
付着物判定部121が、付着物は水滴であると判定した場合に、対処法特定部122は、ヒーター、エアによる除去、ワイパー、およびウォーターシャワーの少なくともいずれかを対処方法として特定してもよい。また、付着物判定部121が、付着物は雪であると判定した場合に、対処法特定部122は、ヒーター、溶解液シャワーの少なくともいずれかを対処方法として特定してもよい。
【0098】
たとえば付着物判定部121が、付着物は埃および塵の少なくともいずれかであると判定した場合に、対処法特定部122は、エアによる除去を対処方法として特定する。塵や埃が透過部材20に付着した場合、ワイパーやクロスによる拭き取りを行うと、透過部材20を傷つける恐れがある。したがって、コンプレッサーやブロワーを用い、エアによる除去を行うことが好ましい。
【0099】
付着物判定部121が、付着物は埃および塵の少なくともいずれかであると判定した場合に、対処法特定部122は、エアによる除去、およびイオナイザーの少なくともいずれかを対処方法として特定してもよい。
【0100】
また、対処法特定部122は、付着物の種類に対し、行ってはいけない対処方法をさらに特定しても良い。その場合、対処情報には付着物の種類に対し、行ってはいけない対処方法がさらに関連付けられている。対処法特定部122は、対処情報を読み出し、付着物判定部121の判定結果に対応する、行ってはいけない対処方法を抽出する。たとえば、付着物判定部121が、付着物は埃および塵の少なくともいずれかであると判定した場合に、対処法特定部122は、拭き取りを、行ってはいけない対処方法として特定する。出力部123は、行ってはいけない対処方法を、測定装置10に接続された表示装置やスピーカーで報知するための情報をさらに出力することができる。
【0101】
たとえば付着物判定部121が、付着物は水分以外の汚れであると判定した場合に、対処法特定部122は、拭き取りおよび液剤の少なくともいずれかによる洗浄を対処方法として特定する。水分以外の汚れはたとえば油分や水滴の乾き痕である。
【0102】
付着物判定部121が、付着物は水滴の乾き痕であると判定した場合に、対処法特定部122は、ウォーターシャワー、液剤による洗浄の、および濡らしたクロスで拭き取りの少なくともいずれかを対処方法として特定してもよい。付着物判定部121が、付着物は油分であると判定した場合に、対処法特定部122は、拭き取りの少なくともいずれかを対処方法として特定してもよい。
【0103】
本実施形態に係る対処法特定部122および出力部123は図4で示したような集積回路80を用いて実現される。ストレージデバイス808は、対処法特定部122および出力部123の各機能を実現するためのプログラムモジュールをさらに記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをそれぞれメモリ806に読み出して実行することで、対処法特定部122および出力部123の機能を実現する。
【0104】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。くわえて、対処法特定部122は、付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する。したがって、ユーザーは適切な対処を容易に把握できる。
【0105】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態に係る測定装置10の構成を例示する図である。本図において、破線の矢印は光の経路を模式的に示している。本実施形態に係る測定装置10は、以下に説明する点を除いて第3の実施形態に係る測定装置10と同じである。
【0106】
本実施形態に係る測定装置10は、一以上の除去部22をさらに備える。本実施形態に係る出力部123は、特定した対処方法に基づいて、一以上の除去部22を制御する制御信号を出力する。すなわち、出力部123は、対処方法を示す情報として、その対処方法に対応する除去部22を制御する制御信号を出力する。以下に詳しく説明する。
【0107】
除去部22としてはたとえば、ヒーター、ドライヤー、コンプレッサー、ブロワー、ウォーターシャワー、溶解液シャワー、液剤出射器、ワイパー、およびイオナイザーが挙げられる。除去部22は、透過部材20への付着物を除去するように設けられている。
【0108】
たとえば対処法特定部122で特定された対処方法がヒーターによる加熱である場合、出力部123は、ヒーターおよびドライヤーの少なくとも一方を駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法がエアによる除去である場合、出力部123は、コンプレッサーおよびブロワーの少なくとも一方を駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法が溶解液シャワーである場合、出力部123は、溶解液シャワーを駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法がウォーターシャワーである場合、出力部123は、ウォーターシャワーを駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法がイオナイザーである場合、出力部123は、イオナイザーを駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法が拭き取りである場合、出力部123は、ワイパーを駆動させるための制御信号を出力する。対処法特定部122で特定された対処方法が液剤による洗浄である場合、出力部123は、液剤出射器を駆動させるための制御信号を出力する。
【0109】
出力部123から出力された制御信号により、除去部22が駆動され、透過部材20へ付着物が除去される。
【0110】
出力部123は、対処法特定部122で特定された対処方法に対応する除去部22が制御対象として存在しない場合(たとえばクロスによる拭き取り)、第3の実施形態で説明したように、その対処方法を行うよう報知するための情報を表示装置やスピーカーに対して出力しても良い。
【0111】
なお、行ってはいけない対処方法を、対処法特定部122がさらに特定した場合、出力部123は、その対処方法に対応する除去部22を駆動させない。たとえば付着物判定部121が付着物として水滴と塵を特定した場合、出力部123はワイパーを駆動させずに、他の対処方法を優先させて水滴を除去する。
【0112】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。くわえて、本実施形態に係る出力部123は、特定した対処方法に基づいて、一以上の除去部22を制御する制御信号を出力する。したがって、付着物を適切に除去できる。
【0113】
(第5の実施形態)
図13は、第5の実施形態に係る判定装置50の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る判定装置50は、透過部材20を介して光を出射し、対象30からの反射光を検出する測定装置10の、透過部材20に付着している付着物の種類を判定する装置である。測定装置10は、少なくとも透過部材20で反射した反射光を受光する受光素子18を備える。以下に詳しく説明する。
【0114】
本実施形態に係る測定装置10は、付着物判定部121を備えていない点を除いて、第1の実施形態に係る測定装置10と同じである。本実施形態に係る判定装置50は、測定装置10から判定に必要な情報を取得して判定を行う。判定装置50は付着物判定部510を備える。付着物判定部510は、第1または第2の実施形態に係る付着物判定部121と同じ処理を行う。
【0115】
たとえば判定装置50は、測定装置10からたとえば受光素子18の受光結果を示す情報を取得する。そして、付着物判定部510は、受光素子18の飽和に関する時間の長さを示す飽和時間情報に基づいて、付着物が水分であるか否かを判定する。
【0116】
図14は、本実施形態に係る判定装置50のハードウエア構成を例示する図である。判定装置50は、集積回路90を用いて実装されている。集積回路90は、例えば SoC(System On Chip)である。
【0117】
集積回路90は、バス902、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912を有する。バス902は、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ904などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ904は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ906は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス908は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0118】
入出力インタフェース910は、集積回路90を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース910には測定装置10が接続されている。
【0119】
ネットワークインタフェース912は、集積回路90を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース912が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0120】
ストレージデバイス908は、付着物判定部510の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ904は、このプログラムモジュールをメモリ906に読み出して実行することで、付着物判定部510の機能を実現する。
【0121】
集積回路90のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ906に格納されてもよい。この場合、集積回路90は、ストレージデバイス908を備えていなくてもよい。
【0122】
図15は、本実施形態に係る判定方法の流れを例示するフローチャートである。本実施形態に係る判定方法は、コンピュータにより実行される方法である。本実施形態に係る判定方法は、透過部材20を介して光を出射し、対象30からの反射光を検出する測定装置10の、透過部材20に付着している付着物の種類を判定する方法である。測定装置10は、少なくとも透過部材20で反射した反射光を受光する受光素子18を備える。
【0123】
本実施形態に係る判定方法では、たとえば受光素子18の飽和に関する時間の長さを示す飽和時間情報に基づいて、付着物が水分であるか否かが判定される(S510)。
【0124】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0125】
(第6の実施形態)
図16は、第6の実施形態に係る制御装置60の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る制御装置60は、一以上の除去部22を制御する装置である。除去部22は、透過部材20を介して光を出射し対象30からの反射光を検出する測定装置10の、透過部材20への付着物を除去するように設けられている。制御装置60は、付着物判定部610、対処法特定部620、および出力部630を備える。付着物判定部610は、透過部材20への付着物の種類を判定する。対処法特定部620は、付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する。出力部630は、特定された対処方法に基づいて一以上の除去部22を制御する制御信号を出力する。以下に詳しく説明する。
【0126】
本実施形態に係る測定装置10は、付着物判定部121、対処法特定部122、および出力部123を備えない点を除いて、第4の実施形態に係る測定装置10と同じである。また、除去部22は、第4の実施形態で説明した除去部22と同じである。ただし、除去部22は測定装置10に含まれていても良いし、測定装置10とは別途設けられた装置であっても良い。付着物判定部610、対処法特定部620、および出力部630は、それぞれ第4の実施形態に係る付着物判定部121、対処法特定部122、および出力部123と同様の処理を行う。
【0127】
制御装置60は、図14で示したのと同様の集積回路90を用いて実装されている。入出力インタフェース910には測定装置10または除去部22が接続されている。ストレージデバイス908は、付着物判定部610、対処法特定部620、および出力部630の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ904は、このプログラムモジュールをメモリ906に読み出して実行することで、付着物判定部610、対処法特定部620、および出力部630の機能を実現する。
【0128】
図17は、本実施形態に係る制御方法の流れを例示するフローチャートである。本実施形態に係る制御方法は、コンピュータにより実行される方法である。本実施形態に係る制御方法は、一以上の除去部22を制御する方法である。除去部22は、透過部材20を介して光を出射し対象30からの反射光を検出する測定装置10の、透過部材20への付着物を除去するように設けられている。本実施形態に係る制御方法では、まず透過部材20への付着物の種類を判定する(S610)。次いで、判定された付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する。(S620)。そして、特定された対処方法に基づいて一以上の除去部22を制御する(S630)。
【0129】
本実施形態によれば、第4の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0130】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 透過部材を介して光を出射し、対象からの反射光を検出する測定装置であって、
前記透過部材への付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法を示す情報を出力する出力部とを備える
測定装置。
2. 1.に記載の測定装置において、
前記付着物判定部が、前記付着物は水滴、結露、および雪の少なくともいずれかであると判定した場合に、前記対処法特定部は、少なくともヒーターによる加熱を前記対処方法として特定する
測定装置。
3. 1.または2.に記載の測定装置において、
前記付着物判定部が、前記付着物は埃および塵の少なくともいずれかであると判定した場合に、前記対処法特定部は、エアによる除去を前記対処方法として特定する
測定装置。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記付着物判定部が、前記付着物は水分以外の汚れであると判定した場合に、前記対処法特定部は、拭き取りおよび液剤の少なくともいずれかによる洗浄を前記対処方法として特定する
測定装置。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の測定装置において、
一以上の除去部をさらに備え、
前記出力部は、特定した前記対処方法に基づいて、一以上の前記除去部を制御する制御信号を出力する
測定装置。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の測定装置において、
前記出力部は、前記対処方法を示す情報として、特定された前記対処方法を実施するよう促す報知を行うための情報を出力する
測定装置。
7. 一以上の除去部の制御装置であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定する付着物判定部と、
前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定する対処法特定部と、
特定された前記対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する制御信号を出力する出力部とを備える
制御装置。
8. 一以上の除去部の制御方法であって、
前記除去部は、透過部材を介して光を出射し対象からの反射光を検出する測定装置の、前記透過部材への付着物を除去するように設けられており、
前記透過部材への前記付着物の種類を判定し、
判定された前記付着物の種類に基づいて一以上の対処方法を特定し、
特定された前記対処方法に基づいて一以上の前記除去部を制御する
制御方法。
9. コンピュータを、7.に記載の制御装置として機能させるためのプログラム。
【0131】
この出願は、2021年3月29日に出願された日本出願特願2021-055744号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0132】
10 測定装置
14 発光素子
18 受光素子
20 透過部材
22 除去部
30 対象
40 モデル
50 判定装置
60 制御装置
80 集積回路
90 集積回路
120 制御部
121 付着物判定部
122 対処法特定部
123 出力部
210 温度センサ
410 ニューラルネットワーク
510 付着物判定部
610 付着物判定部
620 対処法特定部
630 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18