(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器及びその方法
(51)【国際特許分類】
B01D 11/02 20060101AFI20241031BHJP
B04B 1/02 20060101ALI20241031BHJP
G21C 19/46 20060101ALI20241031BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01D11/02 Z
B04B1/02
G21C19/46 622
G21F9/06 541
(21)【出願番号】P 2023513891
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 IN2021051190
(87)【国際公開番号】W WO2023119303
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】523067067
【氏名又は名称】セクレタリー,デパートメント オブ アトミック エナジー
【氏名又は名称原語表記】Secretary, Department of Atomic Energy
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エム. バラムルガン
(72)【発明者】
【氏名】パンディ エヌ.ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クマール シェーカル
(72)【発明者】
【氏名】ジョーシ ジェイ.ビー.
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-339601(JP,A)
【文献】米国特許第6203483(US,B1)
【文献】特表平05-508110(JP,A)
【文献】特開平02-298372(JP,A)
【文献】特開平02-229559(JP,A)
【文献】特表平10-511042(JP,A)
【文献】特表2005-531398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-12/00
B04B 1/00-15/12
G21C 19/00-19/50,23/00
G21F 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器(ACE)であって、
前記ACEは、
・固定シリンダー/ボウル(3)と、
・固体粒子を含む或いは含まない材料の重相を前記ACEに供給するための重相入口(1)と、
・固体粒子を含む或いは含まない材料の軽相を前記ACEに供給するための軽相入口(2)と、
・軽相材料を後段に出すための軽相出口ポート (14)と、
・重相材料を後段に向けて排出させるための重相出口ポート(15)と、
・軽相堰(9)上を流れる分離した軽相を受けるための軽相収集室(12)と、
・固定シリンダー/ボウル(3)内の軽相収集室(12)上に位置し、アンダーフロー(10)を介して重相堰(11)上を流れる投げ出された重相材料を受け取る重相収集室(13)と、
・固体分離ローターとして機能する回転シリンダー/ボウル(4A)と、
・回転シリンダー/ボウル(4A)は、粒子/固体分離ローターとして固定シリンダー/ボウル(3)の内部に配置され、ねじ継手によって回転シリンダー/ボウル(4B)と結合され、溶媒抽出/処理液体中に存在する固体粒子を分離する固体分離器として機能し、回転シリンダー/ボウル(4A)の内部に配置された偏向バッフル(7A)は、回転シリンダー/ボウル(4A)の内部に入った固体粒子との分散体を当該回転シリンダー/ボウル(4A)の内壁に向かって偏向させ、
・回転シリンダー/ボウル(4A)内にあり、分離固体粒子を前記
回転シリンダー/ボウル(4A)内に閉じ込めるための複数の垂直バッフル(8A)と、
・液体/液体分離ローターとして機能する回転シリンダー/ボウル(4B)と、
・上部の回転シリンダー/ボウル(4B)内に固体粒子を含まない分散体を入れる回転シリンダー/ボウル(4B)用の中央開口部(6B)と、
・回転シリンダー/ボウル(4B)内の偏向バッフル(7B)で、前記分散体を当該回転シリンダー/ボウル(4B)の壁に向けて偏向させ、
・前記分離した分散体を前記
回転シリンダー/ボウル(4B)内に閉じ込めるための、回転シリンダー/ボウル(4B)内の複数の垂直バッフル(8B)と、
を備える、環状遠心抽出器(ACE)。
【請求項2】
回転シリンダー/ボウル(4A)の中央開口部としてオリフィス(6A)を配置し、環状領域を重力により流下する固体粒子との混相の分散体を底部バッフル(5)を介して回転シリンダー/ボウル(4A)内に流入させることができ
る、
前記固体分離部を備える請求項1に記載の環状遠心抽出器(ACE)。
【請求項3】
回転シリンダー/ボウル(4A)内に垂直バッフル(8A)を配置して、固体粒子のない分散体を、前記回転シリンダー/ボウル(4A)内で下から上へと流動させ、前記
回転シリンダー/ボウル(4A)内に閉じ込め
る、
前記固体分離部を備える請求項1に記載の環状遠心抽出器(ACE)。
【請求項4】
溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離する方法であって、
当該方法は、次の段階からなり、
i)重相供給パイプ(1)及び軽相供給パイプ(2)を介して、
固定ボウル(3)と回転ボウル(4A及び4B)の間に、固体粒子を含む或いは含まない材料の重相と固体粒子を含む或いは含まない材料の軽相が、入り、
ii)乱流液体-液体分散体が2相間の物質移動を促進するとき、内側の回転シリンダー/ボウル(4A)の高速回転によるせん断力/表皮摩擦によって、環状領域で両相が勢いよく混合され、
iii)固体粒子との混合相の分散体は、重力によって環状領域に流下し、底面バッフル(5)を介してオリフィス(6A)から回転シリンダー/ボウル(4A)内に入り、
iv)バッフル(7A)を偏向させることにより固体粒子の遠心沈降性を高めることで、回転シリンダー/ボウル(4A)の内部に入った固体粒子を含む分散体が、回転シリンダー/ボウル(4A)の壁面に向かって偏向し、
v)垂直バッフル(8A)により、固体粒子を含む前記分散体を、
回転シリンダー/ボウル(4A)内に閉じ込めるために、前記回転シリンダー/ボウル(4A)内で下から上へと流し、
vi)前記回転シリンダー/ボウル(4A)は、固体粒子を含む前記分散体に剛体回転を与え、高い遠心加速度'a'のために回転軸と同軸になる垂直円筒状の液体自由表面を作り出し、
vii)前記固体粒子が、底部から上に行くにつれて分離し、
viii)固体粒子を含まない前記分散体が、オリフィス(6B)を通って上部回転ボウル(4B)内に入り、
ix)前記分散体を回転シリンダー/ボウル(4B)の壁に向かって偏向させることで、重相と軽相の遠心分離を強化し、
x)垂直バッフル(8B)によって、分散相を、
回転シリンダー/ボウル(4B)内に閉じ込めるために、前記回転シリンダー/ボウル(4B)内で下から上に流し、
xi)前記回転シリンダー/ボウル(4B)が液体に剛体回転を与え、前記液体は前記垂直円筒状の液体自由表面を作り、高い遠心加速度'a'のために回転軸と同軸になり、
xii)前記分散体が、底部から上に行くにつれて分離し、
xiii)前記分離された軽相が、軽相堰(9)上を流れ、固定ボウル(3)にある軽相収集室 (12)に放出され、
xiv)前記分離された重相が、アンダーフロー(10)を介して重相堰(11)上を流れるようにして、固定ボウル(3)内の
前記軽相収集室(12)上にある重相収集室(13)に放出され、
xv)重相と軽相の両方が出てきて、それぞれ重相出口(15)と軽相出口(14)を通って隣接する段に流れ込み、
xvi)下部の回転シリンダー/ボウル(4A)
は、回転シリンダー/ボウル(4B)から切り離
され、
前記固体粒子のさら
なる処理の
ために、固体廃棄物管理施設
に送られる、
方法。
【請求項5】
前記底面バッフル(5)が前記混合相の分散体の渦形成を破壊する、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および使用済み核燃料再処理工業またはその他の溶媒抽出 (固体粒子に遭遇する)処理におけるその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒への高い放射線損傷の複雑さとそれによる溶媒の劣化は、環状遠心抽出器 (ACE)のような高速接触器 (短い滞留時間) を必要とし、現在、高速増殖炉 (FBR) で使用済み核燃料再処理に使用されている。
【0003】
核燃料の溶解によって発生する溶液には、未知の量の未溶解固体が含まれている。これらの固体の大部分は、様々なろ過/分離方法によって除去される。より小さな粒子は、下流の溶媒抽出処理や装置へと運ばれると予想される。機械的または化学的なアップセットから生じる固体/沈殿物は、もう1つの潜在的な懸念分野である。固体は、入口オリフィスから重相堰まで、回転シリンダーの内径に沿って均一に蓄積される。時間の経過と共に、これらの固体は内壁に層を形成し、分離帯の上部にある重相アンダーフロースロットを通る重相の流れを妨げるのに十分な厚さになる。
【0004】
上記の問題を解決するために、ACEユニットの一部としてクリーン・イン・プレイス (CIP) ローターがこれまでの文献で報告されている。一連の高圧スプレーノズルは、底板と上部ローターアセンブリに接続された中空シャフトに取り付けられている。これらのノズルは、溶媒抽出中にACE内に沈殿する固体粒子を除去するために使用される。
【0005】
上記の先行技術に伴う欠点は以下のとおりである。
【0006】
a.放射性遮蔽セル内では、セルの体積に含まれる放射能を封じ込めるために負圧が維持されているため、高圧システムは推奨されない。溶液漏れの場合、蓄積された水溶液は核臨界に対して安全ではない可能性がある。
【0007】
b.スプレーノズルの挿入は、小型回転ボウルの動的バランスのために、高歳差製造技術を必要とするACEの製造に複雑さを加える。この技術は、製造コストを増大させる。
【0008】
c.通常の動作では、固定ボウルに取り付けられた固体回収管に液体が流れることがある。したがって、液体の流れを回避するために、ACEにはそれに統合された別のシステムが必要である。追加システムは、ACEカスケードの各ステージの固定ボウル (ミキシングゾーン) 内に混合相を含む。
【0009】
d.固定ボウル内に集められたミクロンサイズの固体粒子は、固体取扱パイプラインの下流に沈殿することがある。この状況に対処するには、追加のデチョックシステムまたは処理が必要である。
【0010】
e.分離された放射性固体粒子を処理または取り扱うことは大きな関心事である。
【0011】
使用済み核燃料溶解液には、溶解していない固体粒子が含まれている。小さい粒子は溶液と共に持ち越され、溶媒抽出操作に加わると予想される。そのため、高速増殖再処理工場では高速遠心分離器を使用して溶液から未溶解の微粒子を分離している。前述の遠心分離器の故障や誤動作は、処理液中の粒子のキャリーオーバーにつながる。さらに、機械的または化学的処理のアップセットによって新しい固体/沈殿物が生成されることがある。
【0012】
固体粒子は、ACEの内壁にケーキ状の構造を形成する溶媒抽出中の高い遠心力により、回転ボウル内に沈降する。その結果、相分離能力の低下や液液分離器 (回転ボウル) 内の完全なチョークにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許番号US5,908,376号 遠心分離器の自己洗浄ローター 日付 :01.06.1999 発明者 :Lawrence L.Macaluso、David H.Meikarntz
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
遠心分離器の自己洗浄回転アセンブリは、分離器を分解することなく、蓄積された固体を徹底的に洗浄することができる。回転アセンブリは、完全に溶接された閉鎖された回転体で構成される。回転アッセンブリは、両端の中空軸シャフトを有する。軸シャフトの下端は、分離ハウジングを貫通しており、高圧流体継手を備えている。複数のスプレーノズルが、ローター本体内の軸シャフトに取り付けられている。噴射ノズルは、ローターの内面に放射状に洗浄液を噴射するように配置されている。ローターの内部容積は、対応する複数の軸方向ベーンによって複数の室に分割される。少なくとも1つのノズルが各室内に配置されている。
【0015】
そこで、本発明の目的は、従来技術の欠点を除去することができる、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、及び、その方法を提案することである。
【0016】
本発明の他の目的は、分離された固体粒子をさらに処理するための追加システムを必要としない、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および、その方法を提案することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、追加のデチェック設備を必要としない、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および、その方法を提案することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、ACEの動作寿命を向上させる、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離する固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および、その方法を提案することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、最小限の維持コストを確保する、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および、その方法を提案することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、分離した固体粒子をさらなる処理または廃棄物管理施設に送ることを容易にする、溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離するための固体分離部を備えた環状遠心抽出器、および、その方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
溶液から固体粒子を除去するために、固体分離部が、分離部内に固体粒子が沈降するように、ACEの回転ボウルに取り付けられる。
【0022】
固体分離部を有する遠心抽出器を設計し製作した。ボウル内の固体分離部の有無で遠心抽出器(CE)を用いてチョーク実験を行った。実験の結果、固体分離部を有するCEは、フラッディングスループットを失うことなく、固体粒子を分離または保持できることが示された。固体分離のあるボウル内の固体沈殿量は、ねじ継手により物理的に検査でき、起動前に必要な処置を行うことができる。除去された高放射性の固体粒子は、固形廃棄物として廃棄物処理場に送ることができる。
【0023】
環状遠心抽出器は、溶媒抽出操作に広く使用されており、いくつかの長所と短所がある。ACEは、高速増殖体再処理アプリケーションの候補である。その主な欠点の1つは、高い遠心加速度により回転ボウル内に沈殿して流体力学的動作に大きな影響を与える固体粒子に、非常に敏感であることである。
【0024】
ACEは、高速増殖炉の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを分離するために、CORAL施設で20年以上にわたって運用されている。固体粒子は、核再処理中に頻繁に遭遇する。固体粒子を扱うために、固体遠心分離器と結合した新しいACEが開発されている。新設計は、既存のCORAL固定型ボウルでも操作可能である。固体遠心分離器と遠心抽出器が一体となったのは、これが初めてである。
【0025】
新しい固体分離遠心抽出器は、(i)上部が溶媒抽出操作で使用される水溶液と有機溶液を分離する液液分離器として機能し、(ii)下部が溶媒抽出液中に存在する固体粒子を分離する固体分離器として機能する、2つの部分を含む。固体分離部を有する遠心抽出器ボウルの直径と高さは、既存の直径30mmの遠心分離器の固定ボウルを基準に決定される。
【0026】
流体力学と物質移動の実験を行い、実験データを、従来の遠心抽出器のボウルと比較した。実験結果から、固体分離部を有するACEの性能は、フラッディングスループット以外は従来のACEと同等であることが明らかになった。
【0027】
遠心抽出器の回転ボウルの底部に固体収集部を一体化しても、明らかな欠点はない。物質移動効率(および回収)は、この変化の影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による固体分離部を備えた環状遠心抽出器の概略図を示している。
【
図2】駆動部とその支持部を含む単段ACE(固体分離部なし)の概略図を示している。
【
図3】本発明によるボウルの直径と高さの詳細を示している。
【
図4】組み立て時の単段セットアップの写真を示している。
【
図5】単段セットアップ組立状態の写真を示している。
【
図6】駆動部を支持するために固定ボウル(3)上に置かれたシーティングブロック(16)の写真を示している。
【
図7】回転ボウル(4A及び4B)の写真を示している。
【
図8】ACEのボウル(4A及び4B)を回転させるために、シーティングブロック(16)上に置かれたモーター/駆動部の写真を示している。
【
図9】モーター(17)、シーティングブロック(16)、回転ボウル(4A及び4B)の完全な組み立ての写真を示している。
【
図10】パイプ入口とドレインラインを含む単段固定ボウル(3)の写真を示している。
【
図11】垂直バッフル(8A及び8B)及び偏向バッフル(7A及び7B)を備えた回転ボウル(4A及び4B)の3D概略断面図を示している。
【
図12】固体分離部のない回転ボウルの写真断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による固体分離部を備えた環状遠心抽出器(ACE)を
図1に示す。固体遠心分離器は、溶媒抽出操作中に固体粒子を扱うために、既存の環状遠心抽出器のボウルと連結されている。ボウル(4A及び4B)の直径と高さは、(i)単位時間当たりに扱う液体量(L/h)、(ii)粒子の大きさ、(iii)処理液体中に存在する粒子の量(gm/l)などの処理パラメータに基づいて決定される。固定ボウル(3)の直径と高さは、ボウル(4A及び4B)の直径と高さに基づいて決定される。
【0030】
垂直バッフル(8A及び8B)の高さは、対応するボウル(4A及び4B)の高さと常に等しくなる。
その幅は、ボウルの直径の半分に等しい。プラント要件に応じて、その寸法を変更できる。本発明によれば、使用されるボウルの寸法が以下の場合、既存のプラント条件に適合するように36mmの固体分離ACEボウルが開発される。
【0031】
1.ボウル4A:直径=36mm、高さ=34mm
2.ボウル4B:直径=36mm、高さ=33.5 mm
3.固定ボウル(3):直径=50mm、高さ=78.5mm
4.偏向バッフル(7A、7B):直径=26mm、高さ/厚さ=3mm
5.垂直バッフル8A:高さ=34mm、幅=18mm
6.垂直バッフル8B:高さ=33.5mm、幅=18mm
【0032】
新しい固体分離環状遠心抽出器は、(i)上部回転部(4B)が溶媒抽出操作で使用される水溶液と有機溶液を分離する液液分離器として機能し、(ii)底部回転部(4A)が溶媒抽出/処理液中に存在する固体粒子を分離する固体分離器として機能する、2つの回転ボウル部を含む。底部の回転シリンダー/ボウル(4A) (粒子/固体分離ローター) は、回転シリンダー/ボウル (4B)(液体/液体分離ローター) と、ねじ継手 (またはその他の継手) によって結合されている。
【0033】
当該ACEは、そのACEに材料の重相を供給するための重相入口(1)および材料の軽相を供給するための軽相入口(2)の固体分離部と、固定シリンダー/ボウル(3)と、粒子/固体分離ローターである回転シリンダー(4A)と、液体/液体分離ローターである回転シリンダー(4B)と、固定底板上の放射状バッフル(5)と、回転シリンダー(4A)の中央開口部(6A)と、回転シリンダー(4B)の中央開口部(6B)と、ローター(4A)の偏向バッフル(7A)と、ローター(4B)の偏向バッフル(7B)と、軽相堰(9)と、重相(10)の下流領域と、重相堰(11)と、軽相収集室(12)と、重相収集室(13)と、軽相出口部(14)と、重相出口部(15)と、を、含む。
【0034】
固定ボウル(3)の上部には、シーティングブロック(16)と呼ばれるカバーがあり、ねじで結合された2つのボウル(4A、4B)を回転させるモーター/駆動部を支持している。
【0035】
通常動作時には、固定ボウル(3)と回転ボウル(4A及び4B)の間にある重相供給パイプ(1)と軽相供給パイプ(2)を介して、固体粒子を含む或いは含まない重相と、固体粒子を含む或いは含まない軽相がACEに流入する。両相は内側ボウルの高速回転によるせん断力/表皮摩擦と乱流液液分散によって環状領域で激しく混合し、2相間の物質移動を促進する。固体粒子との混合相 (分散体) は、重力によって環状領域を流下し、底面バッフル(5)(混合ベーン、形状:直線または曲線)を介して、オリフィス(6A)を介して、回転ボウル4A(粒子/固体分離ローター、平面または円錐形の底面) 内に入る。
【0036】
底面バッフルの主な機能は、渦形成を破壊することであり、外側のシリンダーの底面または回転シリンダーの底面のいずれかに取り付けられた底部領域に設けられる。回転ボウル(粒子/固体分離ローター、4A)内に固体粒子が侵入した分散体は、バッフル(7A)を偏向させることで、回転シリンダーの壁面に向かって偏向され、固体粒子の遠心沈降性を高める。固体粒子は、粒子/固体分離ローター内で分離され、分散体は回転ボウル内で下から上へと流れる (そして、垂直バッフル(8A)によって室(4~8個)内に閉じ込められる)。
【0037】
回転シリンダーは、固体粒子を含む分散体に剛体回転を与え、液体の垂直円筒形の自由表面を形成し、高い遠心加速度‘a’により回転軸と同軸である。中央部は、空気で占められている。下から入ってきた固体粒子が上に移動すると分離する。固体粒子の沈降速度は、固体粒子と混合相の密度差、混合相の粘度、粒度分布、及び、遠心加速度下での粒子の沈降速度(rω2)に依存する。固体粒子を完全に分離するために、所定のレベルの遠心加速度に対して十分な高さと直径が提供される。
【0038】
オリフィス(6B)を介して上部回転ボウル内(4B、液体/液体分離ローター内部)に入った分散体(固体粒子を含まない)は、バッフル(7B)を偏向させることによって、回転シリンダーの壁に向かって偏向され、重相と軽相の遠心分離を強化する。分散相は分離され、回転ボウルの中で下から上に流れ、垂直バッフル(8B)によって室(4~8個) の中に閉じ込められる。回転シリンダーは、液体に剛体回転を与え、液体の垂直円筒形の自由表面を形成し、高い遠心加速度‘a’により回転軸と同軸である。
中央部は、空気で占められている。下に入った分散体は、上に移動すると分離する。分散相の分離速度は、連続相と分散相の密度差、連続相の粘度、液滴径分布、遠心加速度下での分散相の沈降速度 (rω2)、及び、分散相の凝集挙動に依存する。
【0039】
分散体の完全な分離(ACEの主要な利点と考えられている)ために、所定のレベルの遠心加速度に対して、十分な高さと直径が提供される。分離された軽相が、軽相堰(9)の上を流れ、固定ボウルにある軽相収集室(12)に投入される。同様に、重相は、アンダーフロー(10)を介して重相堰(11)の上を流れ、固定ボウルで軽相収集室上にある重相収集室(13)に投入される。最後に、重相と軽相の両方が、軽相出口(14)と重相出口(15)を通って、隣接する段に出てくる、又は、流れ込む。
【0040】
N回の溶媒抽出サイクル(Nの値は、処理液体中の固体粒子の濃度に依存する)の後、底部回転シリンダー(4A)(粒子/固体分離ローター) は、回転シリンダー(4B)(液体/液体分離ローター) から切り離され、固体はさらなる処理または固体廃棄物管理施設に送られる。
【0041】
利点
a.提案した設計のローターは、溶媒抽出処理液体中に存在する固体粒子を分離する。
【0042】
b.リモートメンテナンスが可能となる。
【0043】
c.分離固体粒子をさらに処理するための追加システムを必要としない。
【0044】
d.ACEの動作寿命を延長する。
【0045】
e.取り外し可能な固体分離部分は、放射性固体粒子のさらなる処理のために廃棄物管理施設に直接送ることができる。
【0046】
f.追加のデチョーク機能を必要とない。