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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子モジュール及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 59/00 20060101AFI20241031BHJP
   H01H 45/00 20060101ALI20241031BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01H59/00
H01H45/00 A
H01H50/54 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023519121
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2021076644
(87)【国際公開番号】W WO2022069469
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】20199173.4
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】キーフル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ラープ,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルケ,ハンス
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0158506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0172672(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
H01H 45/00
H01H 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路(70)並びに第一のスイッチング閾値電圧(switching threshold voltage)を有する少なくとも1つの第一の制御接点(control contact)(50)を備えた少なくとも1つの第一のMEMSスイッチ(10)及び前記第一のスイッチング閾値電圧とは異なる第二のスイッチング閾値電圧を有する第二の制御接点(50’)を備えた少なくとも1つの第二のMEMSスイッチ(10’)を有する電子モジュールであって、前記第一のMEMSスイッチ(10)及び前記第二のMEMSスイッチ(10’)の前記制御接点(50、50’)が前記電気回路(70)に連結されている電子モジュールであって、
前記第一のMEMSスイッチが第一の信号を切り替え、これにより、前記第一のスイッチング電圧が閾値を超えたことが示され、前記第二のMEMSスイッチが、更に、第二の信号を切り替え、これにより、前記第二のスイッチング電圧が閾値を超えたことが示され、ここで、前記電子モジュールが、前記第一のMEMSスイッチ(10)のスイッチング位置及び前記第二のMEMSスイッチ(10’)のスイッチング位置に応じて、少なくとも1つの信号(Vlow、Vhigh)を出力する信号装置を有する電子モジュール。
【請求項2】
前記第一の制御接点(50)及び前記第二の制御接点(50’)が、前記電気回路(70)の同一の電位に連結される、請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記第一の制御接点(50)及び前記第二の制御接点(50’)が前記電気回路(70)の分圧器の部分電圧に連結される請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記第一のMEMSスイッチ及び前記第二のMEMSスイッチが、それぞれ、ソース接点及びドレイン接点を有し、ここで、前記第一のMEMSスイッチのソース接点及びドレイン接点は、前記第一のスイッチング接点により、第一の導電経路に沿って導電的に接続可能であり、前記第二のMEMSスイッチのソース接点及びドレイン接点は、前記第二のスイッチング接点により、第二の導電経路に沿って導電的に接続可能であり、ここで、前記第一の導電経路及び前記第二の導電経路が互いに並列に接続されているか又は接続可能である請求項1~のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記第一のスイッチング閾値電圧及び/又は前記第二のスイッチング閾値電圧とは異なる第三のスイッチング閾値電圧を有する第三の制御接点を備えた少なくとも1つの第三のMEMSスイッチを有する請求項1~のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項6】
第一のMEMSスイッチ(10)及び第二のMEMSスイッチ(10’)並びに第三のMEMSスイッチ及び/又は1つ若しくは複数の更に別のMEMSスイッチが、それぞれの曲げ要素(30)を有して形成されている請求項1~のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項7】
ガルバニック絶縁された電圧測定が可能な請求項に記載の電子モジュール。
【請求項8】
少なくとも前記第一のMEMSスイッチ及び前記第二のMEMSスイッチが、それぞれの曲げ要素を有して形成されており、前記第一のMEMSスイッチ及び前記第二のMEMSスイッチが、曲げ要素当たり少なくとも2つのスイッチング接点を有し、これらのスイッチング接点が互いに導電的に接続されており、導電接続を確立し又は遮断することができる請求項1~のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項9】
前記信号装置が、前記電気回路の電圧を少なくとも1つの電圧間隔と比較し、ここで、前記第一のMEMSスイッチ及び/又は前記第二のMEMSスイッチが、それぞれ、電圧間隔の限界を規定する請求項のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項10】
前記第一のスイッチング閾値電圧及び/又は前記第二のスイッチング閾値電圧及び/又は更に別のスイッチング閾値電圧が、それぞれの場合に、MEMSスイッチ(10、10’)の少なくとも1つの幾何学的な及び/又は材料によって決定されるパラメータ(h、b、L)、及び/又はMEMSスイッチの電極間隔(g)及び/又は誘電応力及び/又は層応力及び/又はMEMSスイッチの層材料(10、10’)によって定義される請求項1~のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項11】
前記電気回路(70)が、更に別のMEMSスイッチ(120)を有し、前記電気回路(70)が、更に別のMEMSスイッチ(120)の負荷回路を形成する請求項1~10のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電子モジュール(60)を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路と少なくとも1つの第一のMEMSスイッチとを有する電子モジュール及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSスイッチ(MEMS=Micro-Electro-Mechanical Switch)を有する電子モジュールが知られている。
【0003】
そのようなMEMSスイッチは、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0004】
MEMSスイッチは、通常、特に静電的に偏向させることができる曲げ要素、例えば曲げビーム、を有する。曲げ要素は、電気的なスイッチング接点を担持しており、これらのスイッチング接点は、偏向の結果として、対応して配置された対向接点と、接触することができ、従って、導電接続を提供し又は中断することができる。
【0005】
従って、MEMSスイッチを有する電子モジュールは、MEMSスイッチの曲げ要素を偏向させるために用いられる制御電流回路と、MEMSスイッチによって切り替えられる負荷電流回路との間で、ガルバニック絶縁を可能にするスイッチング機能を有する。
【0006】
電子モジュールの場合、負荷電流回路の電圧を監視することが望ましいことがよくある。このようにして、例えば、負荷電流回路中に配置された負荷を、過電圧又は不足電圧から保護することができる。このような電圧の監視は、スイッチ自体の保護のためにも必要である。特に産業用装置の制御装置では、このような電圧の監視が定期的に行なわれている。
【0007】
電圧の監視、即ち電圧測定、をするために、アナログ/デジタルコンバータが知られているが、このコンバータは、例えば光結合素子のような、追加の部品が設けられていない限り、負荷電流回路からガルバニック絶縁することができない。ガルバニック絶縁された電圧測定は、容量性の電圧測定によって行なうことができる。しかし、それは複雑な評価電子装置を必要とする。更に、そのような容量性の電圧測定は、交流電圧用途においてのみ達成することができる。原理的には、電圧測定の目的でMEMS電圧計を設けることもできる。しかし、そのようなMEMS電圧計も、複雑な評価電子装置及び追加の部品を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第一02017215236A1号明細書
【文献】国際公開第2018/028947A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、ガルバニック絶縁された電圧測定を可能にする改良された電子モジュールを提供することにある。特に、本発明による電子モジュールは、追加のプロセスコストやプロセス費用を要することなく、製造できるようにしなければならない。更に、本発明の課題は、そのような電子モジュールを有する、好ましくは制御及び/又は調整モジュールを備えた、改良された装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこれらの目的は、請求項1記載の特徴事項を有する電子モジュールによって、また、請求項13記載の特徴事項を有する装置によって解決される。本発明の好ましい発展形態は、関連する従属請求項、以下の説明及び図面に明記されている。
【0011】
本発明による電子モジュールは、電気回路と、第一のスイッチング閾値電圧を有する少なくとも1つの第一の制御接点を備えた少なくとも1つの第一のMEMSスイッチと、前記第一のスイッチング閾値電圧とは異なる第二のスイッチング閾値電圧を有する少なくとも1つの第二の制御接点を備えた少なくとも1つの第二のMEMSスイッチとを有する。本発明による電子モジュールでは、前記第一及び前記第二のMEMSスイッチの制御接点、即ち前記第一の制御接点及び前記第二の制御接点、は、前記電気回路に連結されている。
【0012】
このようにして、第一のMEMSスイッチによって、そして、第二のMEMSスイッチによって、前記第一のスイッチング閾値電圧及び/又は前記第二のスイッチング閾値電圧を超過していることに基づいて、第一及び/又は第二のMEMSスイッチを切り替えることによって、前記電気回路内の電圧を測定することが可能である。従って、異なる第一及び第二のスイッチング閾値電圧に基づいて、前記電気回路内の電圧を推定することができる。従って、本発明による電子モジュールの場合、電圧測定は、第一及び第二のMEMSスイッチによって行なわれる。従って、電圧測定は、電気回路からガルバニック絶縁された方法で行なわれる。前記電気回路に連結されている必要があるのは、第一及び第二の制御接点のみである。本発明による電子モジュールの場合、電圧測定は、複数のMEMSスイッチによって行なうことができるので、特に、複数の電気回路には、第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチと共に、更に別のMEMSスイッチが設けられるとよい。本発明による電子モジュールでは、他の構成要素を設けるための更に別のプロセスステップは必要ない。言い換えれば、電子モジュールの場合、前記電気回路に、いずれにせよMEMSスイッチが設けられるのであれば、電圧測定のための第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチも、本発明による電子モジュールの製造プロセスに容易に組み入れることができる。
【0013】
本発明による電子モジュールを使用することにより、電圧測定を、例えば光結合素子などの、追加部品なしで済ませることができる。その結果、追加の1つ又は複数のMEMSスイッチによるスペースの増加は最小限に抑えられるにも拘らず、全体的な結果では、スペースが節約され、従ってコストも節約される。
【0014】
本発明による電子モジュールの場合、第一のMEMSスイッチは、好ましくは、第一の信号を切り替えるように構成されており、これにより、第一のスイッチング閾値電圧を超過していることが示され、第二のMEMSスイッチは、好ましくは、他の第二の信号を切り替えるように構成されており、これにより、第二のスイッチング閾値電圧を超過していることが示され、ここで、電子モジュールは、第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置に依存する少なくとも1つの信号を出力する信号装置を有する。本発明のこの発展形態では、信号装置は、第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置のそれぞれに依存する信号を出力することができるか、又は第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置の双方に依存する信号を出力することができる。
【0015】
本発明による電子モジュールの場合、第一の制御接点及び第二の制御接点は、好ましくは、電気回路の同一の電位に連結されている。本発明による電子モジュールの場合、共通接地電位にある各対向接点を第一の制御接点及び第二の制御接点に割り当てることも好都合である。このようにして、第一のMEMSスイッチによって、そして、第二のMEMSスイッチによって、電圧間隔を見つけることができ、この電圧間隔において、第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチによって、電気回路の電圧が電圧間隔内にあるか又は電圧間隔外にあるかを、また必要に応じて、電気回路の電圧が電圧間隔のどちらの側にあるかを、容易に確認することができる。
【0016】
本発明による電子モジュールの好ましい発展形態の1つでは、第一の制御接点及び第二の制御接点は、前記電気回路の分圧器の部分電圧に連結されている。分圧器の部分電圧からでも、第一のスイッチング閾値電圧と第二のスイッチング閾値電圧とは互いに関連づけることができる。従って、この構成でも、第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチによって電圧を測定することができる。
【0017】
本発明による電子モジュールの場合、特に好ましくは、第一のMEMSスイッチと第二のMEMSスイッチとが互いに並列に接続されている。この構成では、第一のMEMSスイッチの第一のスイッチング閾値電圧と第二のMEMSスイッチの第二のスイッチング閾値電圧とにより、電圧間隔を非常に簡単に形成することができ、第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチのスイッチング処理の結果として、前記電圧間隔に対する前記電気回路の電圧の位置を簡単に決定することができる。
【0018】
この場合、第一及び第二のMEMSスイッチが互いに並列に接続されるという表現は、第一及び第二のMEMSスイッチが、それぞれ、ソース接点及びドレイン接点を有し、このとき、第一のMEMSスイッチのソース接点及びドレイン接点が、第一のスイッチング接点によって第一の伝導経路に沿って導電的に接続可能であり、第二のMEMSスイッチのソース接点及びドレイン接点が、第二のスイッチング接点によって第二の伝導経路に沿って導電的に接続可能であり、ここで、第一及び第二の伝導経路が、互いに並列に接続されているか又は接続可能であることを、意味する。
【0019】
第一及び/又は第二のMEMSスイッチのそれぞれのソース接点及びドレイン接点は、第一及び/又は第二のMEMSスイッチのそれぞれのスイッチングによって、それぞれ導電接続され得るか又は電気的に絶縁され得るスイッチング接点を、それぞれ、形成することを理解するべきである。上述の発展形態のこの用語に沿って、第一及び第二の制御接点は、それぞれ、第一及び第二のMEMSスイッチのゲート接点と呼ばれ得ることを理解するべきである。
【0020】
本発明による電子モジュールは、有利には、第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置に依存する少なくとも1つの信号を出力する信号装置を有する。信号装置は、本発明のこの発展形態において、既述の信号装置であることが好ましい。本発明のこの発展形態において、信号装置は、第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置にそれぞれ依存する信号を出力することができるか、又は第一のMEMSスイッチのスイッチング位置及び第二のMEMSスイッチのスイッチング位置の両方に依存する信号を出力することができる。もし、例えば、第一及び第二の制御接点を有する第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチが電気回路の同一の電圧電位に連結されていて、且つ、第一及び第二のMEMSスイッチが互いに並列に接続されている場合には、電気回路の電圧が最低のスイッチング閾値電圧を超過した際に、関連するMEMSスイッチが切り替えられる。次いで、対応するMEMSスイッチは、関連するスイッチング閾値電圧を超過していることを示す信号を切り替えることができる。電気回路の電圧が、関連するMEMSスイッチの他のスイッチング閾値電圧に達した場合に、このMEMSスイッチもオンとなり、このMEMSスイッチは、例えば、電圧が関連するスイッチング閾値電圧を超過していることを示す他の第二の信号を能動的に切り替えることができる。
【0021】
本発明による電子モジュールの好ましい発展形態の1つでは、電子モジュールは、第一及び/又は第二のスイッチング閾値電圧とは異なる第三のスイッチング閾値電圧を有する制御接点を備えた少なくとも1つの第三のMEMSスイッチを備えている。このように、電圧測定の分解能又は電圧測定の測定範囲を、更に別のスイッチング閾値電圧によって増加させることができる。有利には、第一及び/又は第二及び/又は第三のスイッチング閾値電圧とは異なるスイッチング閾値電圧を有する制御接点を備えた第四のMEMSスイッチも、電子モジュールの一部であってよい。
【0022】
本発明による電子モジュールの場合、第一のMEMSスイッチ及び/又は第二のMEMSスイッチ及び/又は第三のMEMSスイッチ及び/又は更に別のMEMSスイッチ及び/又は全てのMEMSスイッチは、それぞれ曲げ要素で、好ましくはそれぞれ曲げビームで、形成されている。このように、制御接点は、曲げ要素、特に曲げビーム、を偏向させる電極を形成する。有利には、曲げ要素、特に曲げビーム、は、少なくとも1つのスイッチング接点を担持し、該スイッチング接点によって、曲げ要素の偏向の結果として導電接続を提供することができる。
【0023】
特に好ましくは、本発明による電子モジュールの場合、即ち、本発明による電子モジュールによって、ガルバニック絶縁された電圧測定が可能である。ガルバニック絶縁された電圧測定は、特に、以下に説明する発展形態によって可能である。換言すれば、以下に説明する本発明の発展形態の特徴が実現されているような方法で、ガルバニック絶縁された電圧測定が可能である。
【0024】
この点に関し、本発明の有利な発展形態の1つにおいて、少なくとも第一のMEMSスイッチ及び第二のMEMSスイッチは、それぞれ曲げ要素、特にそれぞれ曲げビーム、で形成され、第一及び第二のMEMSスイッチは、曲げ要素当たり少なくとも2つのスイッチング接点を備えていることが好ましく、これらのスイッチング接点は、互いに導電接続されており、導電接続を確立し又は中断することができる。スイッチング接点によって、本発明による電子モジュールのMEMSスイッチは、電子モジュールの制御接点からガルバニック絶縁された方法で、信号、特に、第一のスイッチング閾値電圧を超過していることを示す上述の第一の信号、と、第二のスイッチング閾値電圧を超過していることを示す第二の信号とを、切り替えることができる。制御接点に存在する電圧は、切り替えられた信号によって、特に第一及び/又は第二の信号によって、容易に測定することができる。
【0025】
本発明の有利な発展形態の1つでは、第一の制御接点に存在する電圧は、第一のMEMSスイッチの曲げ要素に対して相対的に測定される。即ち、この制御接点に存在する電圧は、第一のMEMSスイッチの曲げ要素の電位、特にゼロ電位、に対して測定される。本発明の有利な発展形態の1つでは、第二の制御接点に存在する電圧は、第二のMEMSスイッチの曲げ要素の電位、特にゼロ電位、に対して測定される。
【0026】
理想的には、本発明による電子モジュールの場合、信号装置は、電子回路の電圧を少なくとも1つの電圧間隔と比較し、ここで、第一のMEMSスイッチ及び/又は第二のMEMSスイッチが、それぞれ電圧間隔の限界を規定する。本発明のこれまでの発展形態に関して既に説明したように、第一及び/又は第二のMEMSスイッチによって電圧間隔を形成することができ、電気回路の電圧を、前記電圧間隔と比較することができる。
【0027】
好ましくは、本発明による電子モジュールの場合、第一のスイッチング閾値電圧及び/又は第二のスイッチング閾値電圧及び/又は更に別のスイッチング閾値電圧は、MEMSスイッチの少なくとも1つの幾何学的パラメータ及び/又は材料依存のパラメータによって規定されている。好ましくは、幾何学的パラメータ及び/又は材料依存パラメータは、曲げ要素の長さ及び/若しくは幅及び/若しくは厚さ、並びに/又はMEMSスイッチの電極間隔及び/若しくは誘電体応力及び/若しくは層応力及び/若しくは層材料である。この点に関し、曲げ要素の長さ又は幅又は厚さは、スイッチング閾値電圧を、簡単な方法で、規定することができる。同様に、電極間隔、誘電体応力若しくは層応力、又は層材料は、MEMSスイッチのスイッチング閾値電圧に影響を与える。
【0028】
好ましくは、本発明による電子モジュールの場合、電気回路は、更に別のMEMSスイッチを有し、電気回路は、更に別のMEMSスイッチの負荷回路を形成する。このようにして、まず、電子モジュールの負荷回路が1つのMEMSスイッチによって切り替えられ、電気回路の電圧が複数のMEMSスイッチによって測定される。従って、負荷回路の切り替え及び負荷回路の電圧測定は、同じ技術により実現される。
【0029】
本発明による装置は、特に、制御モジュール及び/又は調整モジュールを有する。この装置は、上記のような電子モジュールを有する。特に好ましくは、電子モジュールは、制御及び/又は調整モジュールの一部である。
【0030】
以下、本発明を、図面に示す実施例に基づいて、更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明による電子モジュールの第一のMEMSスイッチを断面図で概略的に示す。
図2図2は、図1による第一のMEMSスイッチを平面図で概略的に示す。
図3図3は、図1及び図2による第一のMEMSスイッチと第二のMEMSスイッチとを有する本発明による電子モジュールを平面図で概略的に示す。
図4図4は、図3による本発明による電子モジュールを有する本発明による装置を概略基本図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示されている、本発明による電子モジュール(図1及び図2に示されていない)のMEMSスイッチ10は、基板20及びそれに枢動可能に取り付けられた曲げビーム30を有する。曲げビーム30は、自由端40によって、基板20の方向に偏向可能である。曲げビーム30の自由端40を偏向させるために、基板20上には、曲げビーム30に面する表面に電極50が平面状に被着されており、この電極は、曲げビーム30上に位置する対向電極(図面には明示されていない)に静電引力を及ぼし、それにより、曲げビーム30の自由端40は、電極50に向かって、従って基板20に向かって移動することができる。偏向の目的で、第一のMEMSスイッチ10の第一の制御接点を形成する電極50に電圧が印加され、その結果、曲げビーム30が偏向させられる。
【0033】
図1及び図2には具体的に示されていないが、曲げビーム30は、その自由端40に2つのスイッチング接点を有し、これらのスイッチング接点は、図面の平面に対して垂直に互いに導電接続されており、自由端40において、そのうち1つは図面の平面の前方にあり、もう1つは図面の平面の後方にある。本発明の文脈において、両スイッチング接点は、ソース接点及びドレイン接点とも呼ぶことができる。従って、それらのスイッチング接点は、図面の平面に対して垂直に導電接続を確立し又は中断することができる。図示の実施例では、曲げビーム30の自由端40が基板20に向かって動かされる場合、導電接続が確立される。第一のMEMSスイッチ10の自由端40の偏向のためには、第一の制御接点を形成する電極50において、第一のスイッチング閾値電圧を形成する電圧が必要である。この第一のスイッチング閾値電圧は、曲げビーム30の幾何学的寸法に依存する。曲げビーム30の長さLが大きいほど(図2参照)、曲げビーム30は基板20に向かって移動しやすくなる。言い換えると、長さLが増加するに連れて、第一のMEMSスイッチ10の自由端40を偏向させるために必要なスイッチング閾値電圧は減少する。
【0034】
それに反して、幅bが増加すると(図2参照)、第一のMEMSスイッチ10の曲げビーム30の曲げ剛性が増加し、それに対応して第一のスイッチング閾値電圧が増加する。更に、第一のスイッチング閾値電圧は、曲げビーム30と基板20との間の距離gの増加とともに増加する。従って、幾何学的寸法によって、第一のスイッチング閾値電圧を第一のMEMSスイッチ10に合わせて調整することができる。本発明による電子モジュール60(図3)は、第一のMEMSスイッチ10だけを有しているのではなく、第二のMEMSスイッチ10’をも有しており、この第二のMEMSスイッチにおいては、屈曲ビーム30’は、より短い長さLを有する。その結果、第二のMEMSスイッチ10’を切り替えるためのより高い電圧を第二のMEMSスイッチ10’の第二の制御接点50’に印加する必要がある。従って、第二のMEMSスイッチ10’は、第一のMEMSスイッチ10よりも高いスイッチング閾値電圧を有する。
【0035】
第一のMEMSスイッチ10及び第二のMEMSスイッチ10’は、それぞれ、負荷電位VLast及び接地電位VLast,GNDを含む負荷回路70の同じ電位に配置される。負荷電位VLast及び接地電位VLast,GNDは、それぞれ、第一のMEMSスイッチの電極50及び対向電極-図1に図示されていない-、並びに第二のMEMSスイッチ10’の第二の制御接点50’及び第二の対向制御接点-図1に図示されていない-に、導電的に連結されている。この場合に、接地電位VLast,GNDは、それぞれ、第一のMEMSスイッチ10及び第二のMEMSスイッチ10’の曲げビーム30,30’に導かれ、他方、負荷電位VLastは、それぞれ、基板20上に位置する電極50及び第二の制御接点50’に導かれる。従って、第一のMEMSスイッチ10及び第二のMEMSスイッチ10’は、負荷電位VLast及び接地電位VLast,GNDによって、切り替えることができる。
【0036】
図3に示す実施例では、負荷電位VLastは、電気出力線Outと接触可能である。その接触を可能にするために、出力線Out及び負荷電位VLastは、それぞれ、櫛歯100,110を有する櫛形構造体80,90に連結されており、これらの櫛歯は、更に別のMEMSスイッチ120によって互いに導電接触させることができる。この更に別のMEMSスイッチ120が切り替えられると、櫛歯100,110は互いに導電接触させられ、その結果、出力線Outは負荷電位VLastにされる。本発明による電子モジュール60の場合には、第一のMEMSスイッチ10及び第二のMEMSスイッチ10’によって、負荷電位VLastと接地電位VLast,GNDとの間の電圧を決定することができる。第一閾値スイッチング電圧と第二閾値スイッチング電圧とが互いに異なる結果、負荷電圧VLastが第一閾値スイッチング電圧を超えると、MEMSスイッチ10はオンになる。この場合、第一のMEMSスイッチ10はオンとなり、第一のMEMSスイッチ10が第一の信号切替回路Vlowをオン状態とすることによって、電圧信号Vlowを出力する。そのオン状態では、第一の信号切替回路において、第一の閾値スイッチング電圧を超える負荷電圧VLastを検出することができる。負荷電圧VLastが第二の閾値スイッチング電圧を超えると、第二のMEMSスイッチ10’は、それに対応して、第二の信号切替回路をオン状態とし、その第二の信号切替回路は信号Vhighを出力する。従って、本発明による信号装置を形成する電圧信号Vlow及びVhighに基づいて、負荷電位VLastが第一閾値スイッチング電圧及び第二閾値スイッチング電圧の制限内にあるかどうかを容易に判定することができる。
【0037】
本発明による電子モジュール60は、本発明による産業用装置300の一部である制御モジュール及び調整モジュール200の一部である。産業用装置300は、図面に示されていない産業用モータの制御及び調整のために使用される。
【符号の説明】
【0038】
10 第一のMEMSスイッチ
10’ 第二のMEMSスイッチ
20 基板
30 曲げビーム
30’ 曲げビーム
40 自由端
50 電極/第一の制御接点
50’ 電極/第二の制御接点
60 電子モジュール
70 電気回路(負荷電流回路)
80 櫛形構造体
90 櫛形構造体
100 櫛歯
110 櫛歯
120 他のMEMSスイッチ
200 制御モジュール及び調整モジュール
300 産業用装置
b 幅
g 間隔
h 厚さ
L 長さ
Out 電気出力線
Last 負荷電位
Last,GND 接地電位
low 電圧信号
high 電圧信号

図1
図2
図3
図4