(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】優れた重合度を有する高分子樹脂を含む光学フィルム及びこれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20241031BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20241031BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241031BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
C08G73/14
C08J5/18 CFG
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2023524536
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2021019825
(87)【国際公開番号】W WO2022145891
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188964
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0186076
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドゥ リ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ハク-ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ジュン
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
C08J 5/18
G02B 1/04
G02B 5/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反復単位;第2反復単位;第3反復単位;及び、第4反復単位;を含む高分子樹脂を含み、
前記第1反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、
前記第2反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、
前記第3反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位であり、
前記第4反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位であり、
前記第1ジアミン系化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)であり、前記第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含み、
前記第3反復単位及び第4反復単位を含むアミド反復単位の数は、前記第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して80%以上の比率であ
り、
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有する、光学フィルム。
【請求項2】
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone,3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone,4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane,3,3’-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane,4,4’-6F)、4,4’-メチレンジアニリン(4,4’-Methylenedianiline,MDA)、3,3’-ジアミノベンゾフェノン(3,3’-Diaminobenzophenone)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン(4,4’-Diaminobenzophenone)及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine,CIBZ)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記第1ジアミン系化合物に由来する反復単位数と、第2ジアミン系化合物に由来する反復単位数との比率は、95:5~65:35である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記高分子樹脂は、200,000~500,000の重量平均分子量(weight-average molecular weight,Mw)を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
50μm厚を基準にして3.0以下の黄色度を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
50μm厚を基準にして88%以上の光透過度を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
50μm厚を基準にして0.5%以下のヘイズ(haze)を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
表示パネル;及び
前記表示パネル上に配置された、請求項1~
8のいずれか一項に記載の光学フィルム;を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合度に優れた高分子樹脂を含む光学フィルム及びこれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の薄型化、軽量化、フレキシブル化により、カバーウィンドウとして、ガラスの代わりに光学フィルムを用いることが検討されている。光学フィルムが表示装置のカバーウィンドウとして用いられるためには、優れた光学的特性及び機械的特性を有する必要がある。
【0003】
したがって、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性などといった機械的特性に優れるとともに光学特性にも優れるフィルムを開発することが必要である。
【0004】
光学フィルムの代表としてポリイミド(PI)系樹脂は、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性などに優れていることから、自動車材料、航空素材、宇宙船素材、絶縁コーティング剤、絶縁膜、保護フィルムなどに用いられている。
【0005】
最近では、ポリイミド系樹脂にアミド反復単位を追加したポリアミド-イミド系樹脂が開発されており、ポリアミド-イミド系樹脂を用いて製造されたフィルムは、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性などに優れている他、光学特性にも優れている。ポリアミド-イミド系樹脂は、モノマーとしてジアミン系化合物、ジアンヒドリド(dianhydride)系化合物及びジカルボニル系化合物を用いて製造可能である。
【0006】
しかしながら、ジアミンとして、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)を使用すると、TFDBの剛直な構造により、多量のジカルボニル系化合物との重合の際に、ジカルボニル系化合物がゲル(Gel)化して、重合反応が十分に起きないという問題点がある。
【0007】
このため、多量のジカルボニルを添加しても重合度に優れるポリアミド-イミド系樹脂を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施例は、多量のジカルボニル系化合物を添加した際にも重合度に優れる高分子樹脂を含む光学フィルムを提供しようとする。
【0009】
本発明の他の実施例は、光学特性及び機械的特性に優れた光学フィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例は、第1反復単位;第2反復単位;第3反復単位;及び、第4反復単位;を含む高分子樹脂を含み、前記第1反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、前記第2反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、前記第3反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位であり、前記第4反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位であり、前記第1ジアミン系化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)であり、前記第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含み、前記第3反復単位及び第4反復単位を含むアミド反復単位の数は、前記第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して80%以上の比率である、光学フィルムを提供する。
【0011】
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有してよい。
【0012】
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含んでよい。
【0013】
前記第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone,3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone,4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane,3,3’-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane,4,4’-6F)、4,4’-メチレンジアニリン(4,4’-Methylenedianiline,MDA)、3,3’-ジアミノベンゾフェノン(3,3’-Diaminobenzophenone)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン(4,4’-Diaminobenzophenone)及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine,CIBZ)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上を含んでよい。
【0014】
前記第1ジアミン系化合物に由来する反復単位数と第2ジアミン系化合物に由来する反復単位数との比率は、95:5~65:35であってよい。
【0015】
前記高分子樹脂は、200,000~500,000の重量平均分子量(weight-average molecular weight,Mw)を有してよい。
【0016】
前記光学フィルムは、50μm厚を基準にして3.0以下の黄色度を有してよい。
【0017】
前記光学フィルムは、50μm厚を基準にして88%以上の光透過度を有してよい。
【0018】
前記光学フィルムは、50μm厚を基準にして0.5%以下のヘイズ(haze)を有してよい。
【0019】
本発明のさらに他の実施例は、表示パネル;及び、前記表示パネル上に配置された前記光学フィルムを含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施例によれば、ジアミン系化合物とジカルボニル系化合物との重合反応を調節することによって、多量のジカルボニル系化合物を添加しても重合度に優れる樹脂を含む光学フィルムを提供することができる。
【0021】
本発明の他の実施例は、光学特性に優れた光学フィルムを提供しようとする。
【0022】
本発明の他の実施例に係る光学フィルムは、優れた光学的特性及び機械的特性を有するので、表示装置のカバーウィンドウとして用いられる場合に、表示装置の表示面を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の他の実施例に係る表示装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、以下に説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示の目的で提示されるだけで、本発明の範囲を限定しない。
【0025】
本発明の実施例を説明するための図面に示されている形状、サイズ、比率、角度、個数などは例示的なものであり、本発明が図面に開示の事項に限定されるものではない。明細書全体を通じて、同一の構成要素は同一の参照符号で示してよい。本発明を説明するとき、関連する公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を却ってぼやけさせ得ると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0026】
本明細書において「含む」、「有する」、「からなる」などが使われる場合に、「~のみ」という表現が使われない限り、他の部分が追加されてもよい。構成要素が単数で表現された場合に、特に断りのない限り、複数も含む。また、構成要素を解釈する際に、別の明示的記載がなくても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0027】
位置関係に関する説明において、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などによって2部分の位置関係が説明される場合に、「直に」又は「直接」という表現が使われない限り、2部分の間に1つ以上の別の部分が位置してもよい。
【0028】
空間的に相対する用語である「下(below,beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図面に示されているように、一つの素子又は構成要素と他の素子又は構成要素との相関関係を容易に記述するために使われてよい。空間的に相対する用語は、図面に示されている方向に加え、使用時又は動作時における、素子の異なる方向を含む用語として理解されるべきである。例えば、図示の素子をひっくり返すとき、他の素子の「下(below,beneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に置かれてよい。したがって、例示的な用語である「下」又は「下部」は、下と上のいずれの方向を含んでもよい。同様に、例示的な用語である「上」又は「上部」も、上と下のいずれの方向を含んでもよい。
【0029】
時間関係に関する説明において、例えば、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などでもって、時間的な先後関係が説明される場合に、「直に」又は「直接」という表現が使われない限り、連続しない場合も含んでよい。
【0030】
第1、第2などが様々な構成要素を述べるために使われるが、これらの構成要素は第1、第2などの用語によって限定されない。これらの用語は単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使われるものである。したがって、以下に言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0031】
「少なくとも1つ」との用語は、1つ以上の関連項目から提示可能な全ての組合せを含むものと理解されるべきである。例えば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも1つ」の意味は、第1項目、第2項目又は第3項目のそれぞれの他、第1項目、第2項目及び第3項目のうち2個以上の項目から提示可能な全ての組合せも意味できる。
【0032】
本発明の複数の実施例の各特徴が部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施例が相互に独立して実施されてもよく、関連付けられて一緒に実施されてもよい。
【0033】
本発明の一実施例は、光学フィルムを提供する。本発明の一実施例に係る光学フィルムは高分子樹脂を含む。
【0034】
高分子樹脂は、フィルムに固形分粉末形態、溶液に溶解されている形態、溶液に溶解後に固体化したマトリックス形態など、様々形状及び形態で含まれてよく、本発明と同じ反復単位を含む樹脂であれば、その形状及び形態を問わず、いずれも本発明の高分子樹脂と同じものと見ることができる。ただし、一般に、フィルム内で高分子樹脂は、高分子樹脂溶液を塗布した後に乾燥させて固化させたマトリックスの形態で存在し得る。
【0035】
本発明の一実施例に係る光学フィルムは、イミド反復単位及びアミド反復単位のうちの少なくとも1つを含んでよい。例えば、本発明の一実施例に係る光学フィルムは、ポリイミド系高分子、ポリアミド系高分子及びポリアミド-イミド系高分子のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0036】
本発明の一実施例に係る光学フィルムは、ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物によって形成されたイミド反復単位を含んでよい。
【0037】
本発明の一実施例に係る光学フィルムは、ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物によって形成されたアミド反復単位を含んでよい。
【0038】
本発明の一実施例に係る光学フィルムは、ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物及びジカルボニル系化合物によって形成されたアミド反復単位及びイミド反復単位の両方を含んでよい。
【0039】
本発明の一実施例に係る光学フィルムは、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアミド-イミド樹脂のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0040】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム及びポリアミド-イミド系フィルムのいずれか1つであってよい。ただし、本発明の一実施例はこれに限定されず、光透過性を有するフィルムであれば、本発明の一実施例に係る光学フィルムになり得る。
【0041】
本発明の一実施例に係る高分子樹脂は、第1反復単位、第2反復単位、第3反復単位及び第4反復単位を含む。
【0042】
第1反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、第2反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジアンヒドリド系化合物に由来するイミド反復単位であり、第3反復単位は、第1ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位であり、第4反復単位は、第2ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物に由来するアミド反復単位である。
【0043】
第3及び第4反復単位を含む全てのアミド反復単位の数は、第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して80%以上の比率である。
【0044】
本発明における「由来する反復単位」とは、高分子を形成するためのモノマーがモノマー相互間に連結されながらモノマーの構造が高分子内に反復的に表されるものを意味する。これは、本発明の属する分野において広く通用される用語であり、例えば、ポリエチレンは、エチレンに由来する反復単位を有する高分子であって、エチレンモノマーが相互間に連結されながらエチレンモノマーの構造がポリエチレン高分子内に反復的に表されるものを意味する。
【0045】
本発明において高分子樹脂のイミド(imide)反復単位は、ジアミン系化合物とジアンヒドリド系化合物(dianhydride)を含むモノマー成分から製造されてよい。具体的には、ジアミン系化合物(diamine)とジアンヒドリド系化合物を高分子重合反応(polymerization)してアミド酸(amic acid)を形成し、アミド酸をさらにイミド化してイミド反復単位が形成されてよい。また、アミド(amide)反復単位は、ジアミン系化合物とジカルボニル系化合物(dicarbonyl)を含むモノマー成分から高分子重合反応して製造されてよい。イミド反復単位とアミド反復単位の具体的な構造は、反応するモノマーによって変わってよい。
【0046】
ただし、本発明の一実施例に係る高分子樹脂がこれに限定されるものではない。本発明の一実施例に係る高分子樹脂は、ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物及びジカルボニル系化合物に加えて他の化合物をさらに含むモノマー成分から製造されてよい。したがって、本発明の一実施例に係る高分子樹脂は、イミド反復単位及びアミド反復単位に加えて他の反復単位をさらに有してもよい。
【0047】
本発明の一実施例によれば、第3及び第4反復単位を含む全てのアミド反復単位の数は、第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して80%以上の比率である。好ましくは、第3及び第4反復単位を含む全てのアミド反復単位の数は、第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して95%以上の比率であってよい。より好ましくは、98%以上の比率であってよい。
【0048】
第3反復単位及び第4反復単位を含む全てのアミド反復単位の数が、第1~第4反復単位を含む全体の反復単位の数に対して80%以上の比率であれば、フィルム製造時にフィルムの光学特性が維持される一方で、機械的特性が向上し得る。すなわち、アミド反復単位をイミド反復単位に比べて多量に含むことにより、無色透明でありながら、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性、引張強度及び伸び率などに優れたフィルムを製造することができる。
【0049】
多量のアミド反復単位を形成するために多量のジカルボニル系化合物を添加する場合に、ジカルボニル系化合物がゲル化して重合反応が十分に起きないという問題点がある。
【0050】
本発明は、2種以上のジアミン系化合物を用いて重合反応をすることにより、ジカルボニル系化合物のゲル化を防止又は低下させることができる。したがって、本発明の高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物及び第2ジアミン系化合物の、少なくとも2種のジアミン系化合物に由来する反復単位を含む。
【0051】
具体的には、本発明の一実施例によれば、第1ジアミン系化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)であり、第2ジアミン系化合物は、TFDB以外の他の芳香族ジアミン系化合物を含む。本発明のイミド反復単位とアミド反復単位は、TFDBと、TFDB以外の他の芳香族ジアミン系化合物に由来し得る。
【0052】
第1ジアミン系化合物の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)は、特有の直線形の剛直な構造を有するので、TFDBに由来する反復単位を含む場合に、フィルムの不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性などの機械的物性を向上させる効果に優れる。
【0053】
ただし、TFDBの強直な構造のため、ジカルボニル系化合物との反応時に重合反応が速く進む。速い重合反応によって、一部のジカルボニル系化合物のみがジアミン系化合物と反応し、他の一部のジカルボニル系化合物は重合反応せず、ゲル化(gelation)が起きうる。ジカルボニル系化合物のゲル化は、樹脂の重合度を低下させ、フィルムの光学物性を阻害しうる。このため、TFDBのみを添加して多量のアミド反復単位を含む高分子樹脂を製造することに困難がある。本発明は、所定の範囲のイオン化エネルギーを有する第2ジアミン系化合物を用いて、ジカルボニル系化合物のゲル化を防止し、重合体の重合度を向上させることができる。
【0054】
本発明の一実施例によれば、第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含む。
【0055】
本発明の一実施例において、「芳香族ジアミン系化合物」は、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミン系化合物を意味し、その構造の一部に脂肪族基又はその他置換基を含んでもよい。芳香族環は、単一環、又は単一環が直接又はヘテロ原子で連結された結合環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環は、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環を含んでよく、それらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の一実施例によれば、第2ジアミン系化合物は、下記化学式1で表現されてよい。
【0057】
【0058】
化学式1において、A1は、2価の芳香族有機基を表す。芳香族有機基とは、単一結合と二重結合が交互に連結されて環を形成することによってパイ電子が非偏在化している有機基のことを指す。例えば、A1は、炭素数4~40の2価の芳香族有機基を含む。化学式1に含まれた芳香族有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基、又はハロゲン元素で置換された炭化水素基によって置換されてよい。水素原子と置換された炭化水素基又はハロゲン元素で置換された炭化水素基の炭素数は、1~8であってよい。例えば、A1に含まれた水素は、-F、-CH3、-CF3などで置換されてよい。
【0059】
水素原子がフッ素置換された炭化水素基によって置換されたジアミン系化合物を用いて製造された光学フィルムは、優れた光透過性を有し、優れた加工特性を有し得る。
【0060】
化学式1のA1は、例えば、下記の構造式のいずれか1つで表現される構造を含んでよい。
【0061】
【0062】
前記構造式において、*は結合位置を表す。前記構造式において、Xは、独立に、単一結合、O、S、SO2、CO、CH2、C(CH3)2及びC(CF3)2のいずれか1つであってよい。X及び各環に対する結合位置が特に限定されるものではないが、Xの結合位置は、例えば、各環に対してメタ又はパラの位置であってよい。
【0063】
本発明の一実施例によれば、第2ジアミン系化合物は、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有する芳香族ジアミン系化合物を含む。
【0064】
TFDB以外の7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有する芳香族ジアミン系化合物を第2ジアミン系化合物としてさらに含むことにより、多量のジカルボニル系化合物と、優れた重合度で重合反応させることができる。芳香族ジアミン系化合物のイオン化エネルギーが7.35~7.75eVであれば、ジアミン系化合物とジカルボニル系化合物との重合反応の速度が調節でき、多量のジカルボニル系化合物を含むのであっても、重合反応を円滑に行うことができ、樹脂の重合度を向上させることができる。
【0065】
第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物のイオン化エネルギーが7.35eV未満であれば、ジアミン系化合物の電子供与(electron donating)効果が大きくなり、電荷移動錯体(charge-transfer complex)効果が増加して、光学特性低下を誘発する。また、大きい反応性によって反応速度が速いため、ジカルボニル系化合物のゲル化が起きうる。
【0066】
一方、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物のイオン化エネルギーが7.55eVを超えると、反応性が低下して重合度が減少する。これに伴い、相対的に短い高分子鎖が形成され、高分子鎖の末端基の数は増加することとなる。高分子鎖の末端基の数が増加すると、樹脂の物性が低下することとなる。
【0067】
本発明の一実施例によれば、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含んでよい。
【0068】
スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)置換基は、化合物内の電子の移動を調節する役割を担う。したがって、芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)のうちの少なくとも1つの置換基を含むことにより、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有し得る。これにより、ジカルボニル系化合物との重合反応の反応性及び反応速度を適切に調節することができる。
【0069】
本発明の一実施例によれば、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone,3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone,4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane,3,3’-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane,4,4’-6F)、4,4’-メチレンジアニリン(4,4’-Methylenedianiline,MDA)、3,3’-ジアミノベンゾフェノン(3,3’-Diaminobenzophenone)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン(4,4’-Diaminobenzophenone)及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine,CIBZ)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでよい。前記羅列した芳香族ジアミン系化合物は、いずれも、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有するジアミン系化合物である。
【0070】
本発明の一実施例によれば、第1ジアミン系化合物に由来する反復単位数と第2ジアミン系化合物に由来する反復単位数との比率(第1ジアミン系化合物に由来する反復単位:第2ジアミン系化合物に由来する反復単位)は、95:5~65:35の範囲であってよい。ここで、「第1ジアミン系化合物(又は、第2ジアミン系化合物)に由来する反復単位」とは、第1ジアミン系化合物(又は、第2ジアミン系化合物)に由来するイミド反復単位及びアミド反復単位の両方を含むものを意味する。
【0071】
「第1ジアミン系化合物に由来する反復単位:第2ジアミン系化合物に由来する反復単位」において、第1ジアミン系化合物に由来する反復単位の比率が95:5よりも多いと、TFDBとジカルボニル系化合物とに由来する反復単位比率の増加によってフィルムのヘイズが増加しうる。一方、第2ジアミン系化合物に由来する反復単位の比率が65:35よりも多いと、フィルムの耐熱特性及び強度が低下しうる。
【0072】
本発明の一実施例によれば、ジアンヒドリド系化合物は、下記化学式2で表現されてよい。
【0073】
【0074】
化学式2において、A2は、4価の有機基を表す。例えば、A2は、炭素数4~40の4価の有機基を含んでよい。化学式2に含まれた有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基又はハロゲン置換された炭化水素基によって置換されてよい。ここで、水素原子と置換された炭化水素基又はハロゲン置換された炭化水素基の炭素数は、1~8であってよい。
【0075】
化学式2のA2は、例えば、下記の構造式のいずれか1つで表現される構造を含んでよい。
【0076】
【0077】
前記構造式において、*は結合位置を表す。前記構造式において、Zは独立に、単一結合、O、S、SO2、CO、(CH2)n、(C(CH3)2)n及び(C(CF3)2)nのいずれか1つであってよく、nは1~5である整数であってよい。Zと各環に対する結合位置が特に限定されるものではないが、Zの結合位置は、例えば、各環に対してメタ又はパラの位置であってよい。
【0078】
本発明の一実施例によれば、ジアンヒドリド系化合物は、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2-bis(3,4-dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride,6FDA)、ビフェニルテトラカルボキシリックジアンヒドリド(biphenyl tetracarboxylic dianhydride,BPDA)、ナフタレンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(naphthalene tetracarboxylic dianhydride,NTDA)、ジフェニルスルホンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(diphenyl sulfone tetracarboxylic dianhydride,DSDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボキシリックアンヒドリド(4-(2,5-Oxotetrahydrofuran-3-yl)-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene-1,2-dicarboxylic Anhydride,TDA)、ピロメリト酸ジアンヒドリド(Pyromellitic dianhydride,PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(benzophenone tetracarboxylic dianhydride,BTDA)、オキシジフタリックジアンヒドリド(oxydiphthalic anhydride,ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシランジアンヒドリド(bis(carboxyphenyl)dimethyl silane dianhydride,SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィドジアンヒドリド(bis(dicarboxyphenoxy)diphenyl sulfide dianhydride,BDSDA)、スルホニルジフタリックアンヒドリド(Sulfonyldiphthalic anhydride,SO2DPA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタリックアンヒドリド(isopropylidenediphenoxy bis phthalic anhydride,BPADA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride,CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(1,2,3,4-Cyclopentanetetracarboxylic Dianhydride,CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(1,2,3,4-Cyclohexanetetracarboxylic Dianhydride,CHDA)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(1,2,3,4-Butanetetracarboxylic dianhydride)、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシリックジアンヒドリド(1,2,3,4-Tetramethyl-1,2,3,4-cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride)、ジシクロヘキシル-3,4,3’’,4’’-テトラカルボキシリックジアンヒドリド(Dicyclohexyl-3,4,3’’,4’’-tetracarboxylic Dianhydride)、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボキシリックジアンヒドリド(Tetrahydrofuran-2,3,4,5-tetracarboxylic dianhydride)及びビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボキシリック2,3:5,6-ジアンヒドリド(Bicyclo[2.2.2]octane-2,3,5,6-tetracarboxylic 2,3:5,6-Dianhydride)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでよい。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0079】
本発明の一実施例に係る光学フィルムの製造に用いられるモノマーは、複数の種類のジアンヒドリド系化合物を含んでよい。
【0080】
水素原子がフッ素置換された炭化水素基によって置換されたジアンヒドリド系化合物を用いて製造された光学フィルムは、優れた光透過性を有し、優れた加工特性を有し得る。
【0081】
本発明の一実施例によれば、ジカルボニル系化合物は、下記化学式3で表現されてよい。
【0082】
【0083】
化学式3において、A3は、2価の有機基を表す。例えば、A3は、炭素数4~40の2価の有機基を含んでよい。化学式3に含まれた有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基によって置換されてよい。ここで、水素原子が置換された炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基の炭素数は、1~8であってよい。例えば、A3に含まれた水素は、-F、-CH3、-CF3などで置換されてよい。
【0084】
化学式3のA3は、例えば、下記の構造式のいずれか1つで表現される構造を含んでよい。
【0085】
【0086】
前記構造式において、*は結合位置を表す。前記構造式において、Yは独立に、単一結合、O、S、SO2、CO、CH2、C(CH3)2及びC(CF3)2のいずれか1つであってよい。Yと各環に対する結合位置が特に限定されるものではないが、Yの結合位置は、例えば、各環に対してメタ又はパラの位置であってよい。
【0087】
本発明の一実施例によれば、ジカルボニル系化合物は、テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl Chloride,TPC)、イソフタロイルジクロリド(isophthaloyl dichloride,IPC)、ビフェニルジカルボニルクロリド(Biphenyl dicarbonyl Chloride,BPDC)、4,4’-オキシビスベンゾイルクロリド(4,4’-oxybis benzoyl chloride,OBBC)及びナフタレンジカルボニルジクロリド(naphthalene dicarbonyl dichloride,NTDC)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでよい。
【0088】
本発明の一実施例に係る高分子樹脂は、下記化学式4で表現される第1反復単位、及び下記化学式5で表現される第2反復単位を含んでよい。
【0089】
【0090】
化学式4中のA2は、既に説明された通りである。
【0091】
【0092】
化学式5中のA1及びA2は、既に説明された通りである。
【0093】
本発明の一実施例に係る高分子樹脂は、下記化学式6で表現される第3反復単位及び下記化学式7で表現される第4反復単位を含んでよい。
【0094】
【0095】
化学式6中のA3は、既に説明された通りである。
【0096】
【0097】
化学式7中のA1及びA3は、既に説明された通りである。
【0098】
本発明の一実施例によれば、本発明の高分子樹脂の重量平均分子量(weight-average molecular weight,Mw)は、200,000~500,000であってよい。
【0099】
高分子樹脂の重量平均分子量は、GPC(Alliance e2695/2414 RID,waters)を用いて、下記の条件で測定することができる。
【0100】
ディテクター(検出器):2414 RID,waters
移動相:10mM LiBr in DMAc
サンプル濃度:0.25(w/w)% in DMAc
カラム及びディテクター温度:50℃
流量(Flow Rate):1.0ml/min
【0101】
ジカルボニル系化合物は、ジアミン系化合物、特にTFDBとの速い反応速度によるゲル化により、多量のアミド反復単位を含む高分子樹脂の重合度が低下してしまう。重量平均分子量は重合度と比例関係にあり、重合度が減少すると、高分子樹脂の重量平均分子量も減少する。
【0102】
高分子樹脂の重量平均分子量が200,000未満であれば、重合度が減少し、高分子鎖の末端基の数は増加して高分子樹脂の物性が低下してしまう。一方、重量平均分子量が500,000を超える高分子樹脂を製造することは、工程上の困難がある。高分子樹脂は、重合時に重合粘度を管理して重量平均分子量を調節するが、樹脂の重量平均分子量が500,000を超えると、重合粘度が非常に高いために反応液の流れ性が低下してしまい、制御及び処理が難しく、その上、高分子樹脂を再溶解する際に多量の溶媒が必要であるため、工程上不利である。
【0103】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは光透過性を有する。また、光学フィルムはフレキシブル特性を有する。例えば、光学フィルムは、ベンディング(bending)特性、フォルディング(folding:折り畳み)特性及びローラブル(rollable;巻き取り可能)特性を有する。光学フィルムは、優れた機械的特性及び光学的特性を有し得る。
【0104】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは、光学フィルムが表示パネルを保護するに十分な程度の厚さを有し得る。例えば、光学フィルムは、10~100μmの厚さを有し得る。
【0105】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは、厚さ50μmを基準にして、UV分光光度計で測定された可視光線領域において88%以上の平均光透過度を有し得る。
【0106】
光学フィルムの平均光透過度は、Spectrophotometer(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて、波長360~740nmにて測定することができる。
【0107】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは、50μm厚を基準にして3.0以下の黄色度を有し得る。
【0108】
光学フィルムの黄色度は、標準規格ASTM E313でSpectrophotometer(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて測定することができる。
【0109】
本発明の一実施例によれば、光学フィルムは、50μm厚を基準にして0.5%以下のヘイズを有し得る。
【0110】
光学フィルムのヘイズは、製造された光学フィルムを50mm×50mmに切り取ってMURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装備を用いてASTM D1003によって5回測定し、その平均値を光学フィルムのヘイズとし得る。
【0111】
図1は、本発明のさらに他の実施例に係る表示装置200の一部を示す断面図であり、
図2は、
図1の「P」部分を示す拡大断面図である。
【0112】
図1を参照すると、本発明の他の実施例に係る表示装置200は、表示パネル501、及び、表示パネル501上の光学フィルム100を含む。
【0113】
図1及び
図2を参照すると、表示パネル501は、基板510、基板510上の薄膜トランジスター(TFT)、及び、薄膜トランジスター(TFT)と連結された有機発光素子570を含む。有機発光素子570は、第1電極571、第1電極571上の有機発光層572、及び、有機発光層572上の第2電極573を含む。
図1及び
図2に示す表示装置200は、有機発光表示装置である。
【0114】
基板510は、ガラス又はプラスチックで作られてよい。具体的には、基板510は、高分子樹脂又は光学フィルムのようなプラスチックで作られてよい。図示してはいないが、基板510上にバッファ層が配置されてよい。
【0115】
薄膜トランジスター(TFT)は、基板510上に配置される。薄膜トランジスター(TFT)は、半導体層520、半導体層520と絶縁して半導体層520の少なくとも一部と重なるゲート電極530、半導体層520と連結されたソース電極541、及び、ソース電極541と離隔して半導体層520と連結されたドレイン電極542を含む。
【0116】
図2を参照すると、ゲート電極530と半導体層520との間にゲート絶縁膜535が配置される。ゲート電極530上に層間絶縁膜551が配置され、層間絶縁膜551上にソース電極541及びドレイン電極542が配置されてよい。
【0117】
平坦化膜552は、薄膜トランジスター(TFT)上に配置されて薄膜トランジスター(TFT)の上部を平坦化させる。
【0118】
第1電極571は、平坦化膜552上に配置される。第1電極571は、平坦化膜552に備えられたコンタクトホールを通じて薄膜トランジスター(TFT)と連結される。
【0119】
バンク層580は、第1電極571の一部及び平坦化膜552上に配置されて画素領域又は発光領域を定義する。例えば、バンク層580が複数の画素間の境界領域にマトリックス構造で配置されることにより、バンク層580によって画素領域が定義されてよい。
【0120】
有機発光層572は第1電極571上に配置される。有機発光層572はバンク層580上にも配置されてよい。有機発光層572は、1つの発光層を含んでもよく、上下に積層された2つの発光層を含んでもよい。このような有機発光層572からは、赤色、緑色及び青色のいずれか1つの色を有する光が放出されてよく、白色(White)光が放出されてもよい。
【0121】
第2電極573は有機発光層572上に配置される。
【0122】
第1電極571、有機発光層572及び第2電極573が積層されて有機発光素子570を構成し得る。
【0123】
図示してはいないが、有機発光層572が白色(White)光を発光する場合に、個別画素は、有機発光層572から放出される白色(White)光を、波長別にフィルタリングするためのカラーフィルターを含んでよい。カラーフィルターは、光の移動経路上に形成される。
【0124】
第2電極573上に薄膜封止層590が配置されてよい。薄膜封止層590は、少なくとも1つの有機膜、及び少なくとも1つの無機膜を含んでよく、少なくとも1つの有機膜及び少なくとも1つの無機膜が交互に配置されてよい。
【0125】
以上に説明された積層構造を有する表示パネル501上に、光学フィルム100が配置される。
【0126】
以下では、本発明の他の実施例に係る光学フィルムの製造方法を簡略に説明する。
【0127】
本発明の光学フィルム製造方法は、高分子樹脂を準備する段階;高分子樹脂を溶媒に溶解して高分子樹脂溶液を製造する段階;及び、前記高分子樹脂溶液を用いて光学フィルムを製造する段階;を含む。
【0128】
高分子樹脂を準備する段階は、高分子樹脂を形成するためのモノマーを高分子重合反応(polymeriazation)及びイミド化することで得ることができる。高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物、第2ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物及びジカルボニル系化合物を含むモノマー成分から製造されてよい。本発明は、モノマーの添加順序及び方法によって限定されないが、例えば、ジアミン系化合物が溶解されている溶液に、ジアンヒドリド系化合物系化合物及びジカルボニル系化合物系化合物を順に添加して重合反応させることができる。又は、ランダム性を除去するために、第1ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物、第2ジアミン系化合物、ジカルボニル系化合物の順に添加してもよく、第2ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物、第1ジアミン系化合物、ジカルボニル系化合物の順に添加して重合反応させてもよい。
【0129】
より具体的には、高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物、第2ジアミン系化合物、ジアンヒドリド系化合物及びジカルボニル系化合物を含むモノマーの高分子重合反応及びイミド化によって製造されてよい。第1、第2ジアミン系化合物とジアンヒドリド系化合物とを含むモノマーの高分子重合反応及びイミド化によってイミド反復単位が製造されてよい。また、第1、第2ジアミン系化合物とジカルボニル系化合物とを含むモノマーの高分子重合反応によってアミド反復単位が製造されてよい。
【0130】
したがって、本発明の他の実施例に係る高分子樹脂は、イミド反復単位とアミド反復単位とを有し得る。
【0131】
イミド反復単位及びアミド反復単位は、それぞれ別個に製造した後に共重合してもよく、イミド反復単位をまず製造した後に、アミド反復単位の製造のためにジカルボニル系化合物をさらに添加してもよく、アミド反復単位をまず製造した後に、イミド反復単位の製造のためにジアンヒドリド系化合物をさらに添加してもよい。本発明の高分子樹脂は、反復単位の製造の順序(モノマーの添加の順序)によって限定されない。
【0132】
本発明の他の実施例によれば、ジカルボニル系化合物は、ジアンヒドリド系化合物とジカルボニル系化合物とを合わせたモル(mol)量に対して、80モル%以上の量で添加されてよい。これにより、本願の高分子樹脂は、80%以上の比率でアミド反復単位を含む。好ましくは、ジカルボニル系化合物は、ジアンヒドリド系化合物とジカルボニル系化合物とを合わせたモル(mol)量に対して、95モル%以上の量で添加されてもよく、より好ましくは、98モル%以上の量で添加されてもよい。
【0133】
本発明の他の実施例によれば、第1ジアミン系化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)である。
【0134】
本発明の他の実施例によれば、第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含む。以下、重複を避けるために、既に説明された構成要素に関する説明は省略する。
【0135】
第1ジアミン系化合物として2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-Bis(trifluoromethyl)benzidine,TFDB)が用いられてよく、第2ジアミン系化合物として、前記説明された化学式1の芳香族ジアミン系化合物が用いられてよく、ジアンヒドリド系化合物として、前記説明された化学式2の化合物が用いられてよい。ジカルボニル系化合物として、前記説明された化学式3の化合物が用いられてよい。
【0136】
本発明の他の実施例によれば、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、7.35~7.75eVのイオン化エネルギーを有してよい。
【0137】
本発明の他の実施例によれば、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選ばれる1種以上の官能基を含んでよい。
【0138】
本発明の他の実施例によれば、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone,3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone,4DDS)、3,3’-6F(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane)、4,4’-6F(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane)、MDA(4,4’-Methylenedianiline)、3,3’-CO(3-(Dimethylamino)benzophenone)、4,4’-CO(4-(Dimethylamino)benzophenone)及びCIBZ(Tetrachloridebenzidine)からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含んでよい。
【0139】
本発明の他の実施例によれば、第1ジアミン系化合物と第2ジアミン系化合物との添加量の比率は、95:5~65:35であってよい。
【0140】
本発明の他の実施例によれば、高分子樹脂溶液を製造する段階における溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc,N,N-dimethylacetamide)、ジメチルホルムアミド(DMF,N,N-dimethylformamide)、メチルピロリドン(NMP,1-methyl-2-pyrrolidinone)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(THF,tetrahydrofuran)、クロロホルム(Chloroform)、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone,MEK)などの非プロトン性極性有機溶媒(aprotic solvent)及びそれらの混合物が用いられてよい。ただし、本発明の一実施例はこれに限定されず、公知の他の溶媒が用いられてもよい。
【0141】
以下、例示的な実施例を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下に説明される製造例又は実施例に本発明が限定されるものではない。
【0142】
<実施例1>
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節機及び冷却器が取り付けられている500mL反応器に、窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide)313.34gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせた後、第1ジアミン系化合物としてTFDB 24.02g(0.075mol)を溶解し、第2ジアミン系化合物としての3DDS(Bis(3-aminophenyl)sulfone)6.21g(0.025mol)をさらに溶解し、この溶液を25℃に保持した。ジアミン系化合物が溶解された後、ここに6FDA 0.89g(0.002mol)を添加して2時間撹拌することで6FDAを完全に溶解させた。反応器の温度を10℃に下げた後、TPC(Terephthaloyl Chloride)19.90g(0.098mol)を添加して、1時間の間に完全に溶解及び反応させた後に、25℃に昇温させた。ここに、ピリジン0.35g、無水酢酸0.45gを投入し、80℃で30分撹拌した後に、過剰量のメタノールを滴加してポリアミド-イミド系パウダーを得た。パウダーを減圧フィルターして乾燥した後に、DMAcに再溶解させ、固形分の濃度が14重量%である高分子樹脂溶液を得た。
【0143】
得られた高分子樹脂溶液をキャストした。キャスティングのためにキャスティング基板が用いられる。キャスティング基板の種類に特に制限はない。キャスティング基板として、ガラス基板、ステンレス(SUS)基板、テフロン(登録商標)基板などが用いられてよい。本発明の一実施例によれば、キャスティング基板としてガラス基板が用いられてよい。
【0144】
具体的には、得られた高分子樹脂溶液をガラス基板に塗布してキャストし、80℃の熱風で20分、120℃で20分乾燥させてフィルムを製造した後、製造されたフィルムをガラス基板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0145】
フィルムが固定されたフレームをオーブンに入れて、270℃にて等温で10分間、熱風で乾燥させた。その結果、50μm厚の光学フィルムが完成された。
【0146】
<実施例2~12>
実施例1と同じ方法により、第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量を異ならせて実施例2~12の光学フィルムを製造した。
【0147】
実施例1~12の具体的な第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量は、下記表1の通りである。
【0148】
<実施例13>
実施例1と同じ方法により、第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量を異ならせてフィルムを製造した。製造されたフィルムを、ガラス基板から剥離してフレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームをオーブンに入れて、250℃にて等温で10分間、熱風でもって乾燥させることで、50μm厚の実施例13の光学フィルムが完成された。
【0149】
実施例13の具体的な第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量は、下記表1の通りである。
【0150】
<比較例1~3>
実施例1と同じ方法により、第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量を異ならせて、比較例1~3の光学フィルムを製造した。
【0151】
比較例1~3の具体的な第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジアンヒドリド系化合物の種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量は、下記表1の通りである。
【0152】
<比較例4及び5>
実施例1と同じ方法により、第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量を異ならせて比較例4及び5の光学フィルムを製造した。ただし、比較例4及び5では、ジアンヒドリド化合物を含まず、よって、化学硬化剤及びメタノール精製過程を省略した。
【0153】
比較例4及び5の具体的な第1ジアミン(TFDB)の添加量、第2ジアミンの種類及び添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量は、下記表1の通りである。
【0154】
【0155】
3DDS:Bis(3-aminophenyl)sulfone4DDS:Bis(4-aminophenyl)sulfone
3,3’-6F:2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane
4,4’-6F:2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane
pPDA:para-Phenylene diamine
8FODA:Oxy-4,4’-bis(2,3,5,6-tetrafluoroaniline)
TPC:Terephthaloyl Chloride
BPDC:4,4’-Biphenyl dicarbonyl Chloride
CBDA:1,2,3,4-Cyclobutanetetracarboxylic Dianhydride
【0156】
<測定例>
実施例1~13及び比較例1~5で製造された高分子樹脂及びフィルムに対して次のような測定を行った。
【0157】
1)高分子樹脂の重量平均分子量:GPC(Alliance e2695/2414 RID,waters)を用いて、下記の条件で高分子樹脂の重量平均分子量を測定した。
【0158】
ディテクター(検出器):2414 RID,waters
移動相:10mM LiBr in DMAc
サンプル濃度:0.25(w/w)% in DMAc
カラム及びディテクターの温度:50℃
流量(Flow Rate):1.0ml/min
【0159】
2)黄色度(Y.I.):標準規格ASTM E313でSpectrophotometer(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて黄色度を測定した。
【0160】
3)光透過度(%):Spectrophotometer(CM-3700D,KONICA MINOLTA)を用いて、波長360~740nmにて平均光学透過度を測定した。
【0161】
4)ヘイズ:製造された光学フィルムを50mm×50mmに切り取ってMURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装備を用いてASTM D1003によって5回測定し、その平均値をヘイズ値とした。
【0162】
測定結果は、次の表2の通りである。
【0163】
【0164】
前記表2の測定結果から、本発明の実施例1~13は、高い重量平均分子量を有し、黄色度、光透過度及びヘイズのいずれにも優れていることが確認できる。しかし、比較例1及び4は、ジカルボニル系化合物のゲル化によって、フィルムとして製造不可であった。比較例2は、樹脂の重量平均分子量が低かったし、黄色度及びヘイズが高くて透過度が低いために視認性に劣っていることが確認できる。比較例3は、樹脂の重量平均分子量に優れているが、黄色度及びヘイズが顕著に高かったし、光透過度に顕著に劣っている。比較例5は、樹脂の重量平均分子量に優れているが、黄色度が高く、光透過度も劣っている。
【符号の説明】
【0165】
100:光学フィルム
200:表示装置
501:表示パネル