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特許7579975電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置
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  • 特許-電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置 図1
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  • 特許-電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/22 20060101AFI20241031BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20241031BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02P25/22
B60T13/74 G
B60T13/74 Z
B60T8/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023527831
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2022022504
(87)【国際公開番号】W WO2022259956
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021095801
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】臼井 拓也
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078230(JP,A)
【文献】特開2019-193473(JP,A)
【文献】特開2010-083282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12-8/1769
8/32-8/96
13/00-13/74
H02P21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ブレーキの制御装置であって、
前記電動ブレーキは、
制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、
2系統のコイルを有し、前記電動機構を駆動する電動モータと、を備え、
前記制御装置は、
前記電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部と、
前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部と、
前記第1モータ駆動部及び前記第2モータ駆動部を制御するコントロール部であって、
前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、
前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向の第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、
前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記被制動部材に対する前記制動部材の接触位置を検知する、
コントロール部と、
を備える電動ブレーキの制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の電動ブレーキの制御装置であって、
前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクは、前記要求トルクの大きさと前記第1トルクの大きさとの差である、
電動ブレーキの制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の電動ブレーキの制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記第1系統コイルに流れる電流に対する前記接触位置の変化量が、所定の閾値を超えたときに、前記制動部材の接触位置に関する物理量を更新する、
電動ブレーキの制御装置。
【請求項4】
請求項に記載の電動ブレーキの制御装置であって、
前記コントロール部は、
前記電動ブレーキに使用可能な電流に所定の制限がされておらず、かつ前記第2トルクを発生させても前記電動ブレーキの応答性が確保できる場合に、前記第1電流指令及び前記第2電流指令を出力する、
電動ブレーキの制御装置。
【請求項5】
請求項に記載の電動ブレーキの制御装置であって、
前記第1トルクの大きさは、
前記電動ブレーキが作動していない状態で、前記制動部材と前記被制動部材とが接触することにより発生する引き摺りトルクに起因して設定される、前記制動部材と前記被制動部材との間のクリアランスと、
前記接触位置の検知誤差と、
に基づいて設定される、
電動ブレーキの制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電動ブレーキの制御装置であって、
前記コントロール部は、
所定の条件が成立した場合、前記第1電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、前記第2電流指令を前記第1モータ駆動部に出力する、
電動ブレーキの制御装置。
【請求項7】
電動ブレーキの制御方法であって、
前記電動ブレーキは、
制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、
2系統のコイルを有し、前記電動機構を駆動する電動モータと、を備え、
前記電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部、及び前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部を制御するコントロール部により、
前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、
前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向のある第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、
前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記被制動部材に対する前記制動部材の接触位置を検知する、
電動ブレーキの制御方法。
【請求項8】
モータ制御装置であって、
2系統のコイルを有する電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部と、
前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部と、
前記第1モータ駆動部及び前記第2モータ駆動部を制御するコントロール部であって、
前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、
前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向の第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、
前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記モータ制御装置によって制御されて作動する接触部材の、被接触部材に対する接触位置を検知する、
コントロール部と、
を備えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パッドの接触位置(ブレーキパッドとディスクロータとの接触位置)を検出する電動ディスクブレーキに関する技術が開示されている。特許文献1の技術は、クリアランス領域における減力方向動作時に計測されたモータの1[rev]分の位置-電流特性を記憶し、増力方向動作時に計測された電流値から、記憶した電流値を差し引くことにより、電流リプルが除去された補正後の電流を得る。この上で、特許文献1の技術は、補正後の電流の位置変化量(dI/dX)が閾値を超えたか否かを判定することにより、パッドの接触位置を検出する。この技術によれば、推力センサがなくても、パッドの接触位置を検出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-83282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つのロータに対し、2系統のコイルに通電することによってモータのトルクを発生させる技術がある。この場合、2系統のコイルは、それぞれ別系統のインバータに接続され、かつ別系統の電流センサによって電流を検出し、モータを制御する。このような技術を用いた電動ディスクブレーキで、パッドの接触位置を検出する場合に、例えば、片方の系統で特許文献1に記載のように位置変化量からパッドの接触位置を検出することが考えられる。しかし、片方の系統になるため、位置変化量(傾き)が小さくなり、検出精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的の一つは、1つのロータに対し、2系統のコイルに通電することによってトルクを発生させる構成であっても、位置検出精度の低下を抑制できる電動ブレーキの制御装置、電動ブレーキの制御方法、及びモータ制御装置を提供することにある。
【0006】
本発明の一実施形態は、電動ブレーキの制御装置であって、前記電動ブレーキは、制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、2系統のコイルを有し、前記電動機構を駆動する電動モータと、を備え、前記制御装置は、前記電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部と、前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部と、前記第1モータ駆動部及び前記第2モータ駆動部を制御するコントロール部であって、前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向の第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記被制動部材に対する前記制動部材の接触位置を検知する、コントロール部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、電動ブレーキの制御方法であって、前記電動ブレーキは、制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、2系統のコイルを有し、前記電動機構を駆動する電動モータと、を備え、前記電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部、及び前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部を制御するコントロール部により、前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向の第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記被制動部材に対する前記制動部材の接触位置を検知する。
【0008】
さらに、本発明の一実施形態は、モータ制御装置であって、2系統のコイルを有する電動モータの第1系統コイルに接続される第1モータ駆動部と、前記電動モータの第2系統コイルに接続される第2モータ駆動部と、前記第1モータ駆動部及び前記第2モータ駆動部を制御するコントロール部であって、前記電動モータに要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によって前記電動モータに発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ前記要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、前記第1系統コイルに通電するための第1電流指令を前記第1モータ駆動部に出力し、前記要求トルクと前記第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ前記第1トルクと逆方向の第2トルクが発生するように、前記第2系統コイルに通電するための第2電流指令を前記第2モータ駆動部に出力し、前記第1電流指令による前記第1系統コイルの電流変化に基づいて、前記モータ制御装置によって制御されて作動する接触部材の、被接触部材に対する接触位置を検知する、コントロール部と、を備える。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、1つのロータに対し、2系統のコイルに通電することによってトルクを発生させる構成であっても、位置検出精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態によるモータ制御装置(電動ブレーキの制御装置)を示すブロック図。
図2】電動モータにトルクを発生させる制御処理を示すブロック図。
図3】ブレーキパッド(接触部材、制動部材)の接触位置を検出する制御処理を示す流れ図。
図4】制動を行ったときの電流とブレーキパッド(接触部材、制動部材)の位置との関係を示す特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態による電動ブレーキの制御装置(モータ制御装置)を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、図3に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0012】
図1において、車両(自動車)に搭載されるモータ制御システム1は、電動モータとしてのブレーキモータ2と、モータコントローラとしてのモータ制御装置7とを備えている。モータ制御システム1は、車両のブレーキシステムを構成している。モータ制御システム1は、車両のコントローラ(車両コントローラ)としての上位の制御装置33を備える構成とすることもできる。実施形態では、上位の制御装置33は、車両の運動制御を決定する統合コントローラに対応する。以下、上位の制御装置33は、統合制御装置33という。
【0013】
ブレーキモータ2は、車両に制動力を与える電動ブレーキ機構(図示せず)を駆動する。電動ブレーキ機構は、例えば、電動モータによりブレーキパッドをディスクロータに押付ける電動キャリパを備えた電動式ディスクブレーキに対応する。電動ブレーキ機構(より具体的には、電動キャリパ)は、制動部材としてのブレーキパッドを被制動部材としてのディスクロータに押圧する電動機構に対応する。ブレーキモータ2と電動ブレーキ機構(電動キャリパ)は、電動ブレーキを構成している。モータ制御装置7は、電動ブレーキの制御装置に対応する。
【0014】
ブレーキモータ2は、固定子となるステータ3と、ステータ3の中央部に回転可能に設けられた永久磁石回転子となるロータ4とを含んで構成されている。ブレーキモータ2のロータ4は、例えば、図示しない回転直動変換機構の回転軸に接続されている。ブレーキモータ2(ロータ4)の回転は、回転直動変換機構により直線運動に変換され、電動ブレーキ機構のブレーキパッドをディスクロータに対して近接、離間する。
【0015】
ブレーキモータ2は、冗長性を確保するために、2つの巻線組5,6を備えている。即ち、ブレーキモータ2は、スター結線される3相巻線U1,V1,W1からなる第1巻線組5と、同じくスター結線される3相巻線U2,V2,W2からなる第2巻線組6とを有する3相同期電動機、換言すれば、3相2重巻線とした6相モータ(1つのロータ4に対して2系統の3相コイルでトルクを発生する6相モータ)として構成されている。第1巻線組5および第2巻線組6は、ステータ3に互いに絶縁された状態で設けられている。
【0016】
なお、電動ブレーキ機構(電動ブレーキ)は、電動式ディスクブレーキ(電動キャリパ)に限定されず、例えば、電動モータによりシューをドラムに押付けて制動力を付与する電動シリンダを備えた電動式ドラムブレーキを用いてもよい。また、電動ブレーキ機構(電動ブレーキ)は、電動モータを備えた液圧式のディスクブレーキ(電動パーキングブレーキ機能付の液圧式のディスクブレーキ)、電動モータでケーブルを引っ張ることによりパーキングブレーキをアプライ作動させるケーブルプラー式電動パーキングブレーキを用いてもよい。
【0017】
即ち、電動ブレーキ(電動ブレーキ機構)は、電動モータ(電動アクチュエータ)の駆動に基づいて摩擦部材(パッド、シュー)を回転部材(ロータ、ドラム)に押圧(推進)し、制動力の付与、解除(押圧力の保持、解除)を行うことができる構成であれば、各種の電動ブレーキ(電動ブレーキ機構)を用いることができる。また、電動ブレーキ機構(電動ブレーキ)は、例えば、ブレーキフルードの圧力を制御し、車両の4輪にそれぞれ配置されるシリンダ装置(例えば、ブレーキキャリパおよびピストン)を加圧して制動する電動倍力装置であってもよい。
【0018】
モータコントローラとしてのモータ制御装置7は、ブレーキモータ2を制御する。より具体的には、モータ制御装置7は、ブレーキモータ2の第1巻線組5の各巻線U1,V1,W1、および、第2巻線組6の各巻線U2,V2,W2を駆動制御する。このために、モータ制御装置7は、第1巻線組5(U1,V1,W1)を駆動制御する第1駆動制御系(第1モータ駆動部8、第1コントロール部9)と、第2巻線組6(U2,V2,W2)を駆動制御する第2駆動制御系(第2モータ駆動部10、第2コントロール部11)とを備えている。
【0019】
即ち、モータ制御装置7は、第1モータ駆動部8と、第1コントロール部9と、第2モータ駆動部10と、第2コントロール部11とを備えている。また、モータ制御装置7は、第1通信インターフェイス12と、第2通信インターフェイス13と、インターフェイス(I/F)14とを備えている。このように、モータ制御装置7は、1つのブレーキモータ2を2系統で駆動できるように、2系統の3相コイル(第1巻線組5、第2巻線組6)、インバータ(第1モータ駆動部8、第2モータ駆動部10)およびCPU(第1コントロール部9、第2コントロール部11)を備えている。
【0020】
第1モータ駆動部8は、ブレーキモータ2を駆動する。第1モータ駆動部8は、例えば、インバータ回路により構成されている。第1モータ駆動部8は、第1直流電力線17を介して蓄電装置(バッテリ)等の車両の第1電源29と接続されている。これと共に、第1モータ駆動部8は、U1相動力線18、V1相動力線19、W1相動力線20を介してブレーキモータ2の第1巻線組5の各巻線U1,V1,W1と接続されている。また、第1モータ駆動部8は、信号線25,26を介して第1コントロール部9と接続されている。
【0021】
第1モータ駆動部8(インバータ回路)は、例えばトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を含んで構成されている。第1モータ駆動部8(インバータ回路)の各スイッチング素子は、その開・閉が第1コントロール部9からの指令信号(例えば、パルス信号)に基づいて制御される。第1モータ駆動部8(インバータ回路)は、ブレーキモータ2の駆動時に、第1コントロール部9からの指令信号に基づいて直流電力から3相(U相、V相、W相)の交流電力を生成し、その交流電力をブレーキモータ2の第1巻線組5(各巻線U1,V1,W1)に供給する。
【0022】
第1コントロール部9は、第1モータ駆動部8と接続している。第1コントロール部9は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれ、演算回路(CPU)となるマイクロコンピュータを含んで構成されている。第1コントロール部9は、第1モータECU(M_ECU_1)に対応し、例えば、電力回路(Power Management IC)と、マイクロコンピュータと、ドライバ回路(Pre Driver)とを備えている。第1コントロール部9は、第1直流電力線17を介して車両の第1電源29と接続されると共に、信号線25,26を介して第1モータ駆動部8と接続されている。第1コントロール部9は、第1モータ駆動部8(インバータ回路)を制御(スイッチング制御)することにより、ブレーキモータ2を駆動(正回転、逆回転)する。
【0023】
第1コントロール部9は、ブレーキモータ2のロータ4の回転をフィードバック制御するための回転センサ15と接続されている。回転センサ15は、例えば、ブレーキモータ2のロータ4の回転角(回転位置、モータ角度)を検出する。第1コントロール部9は、第1通信インターフェイス12を介して通信線となる車両データバス31と接続されている。車両データバス31は、例えば、車体に搭載された通信ネットワークとしてのCAN(Controller Area Network)を構成している。車両に搭載された多数の電子機器、例えば、統合制御装置33、サスペンション制御装置(図示せず)、ステアリング制御装置(図示せず)等の各種のECUは、車両データバス31により、それぞれの間で車両内の多重通信を行う。
【0024】
第2モータ駆動部10も、第1モータ駆動部8と同様に、ブレーキモータ2を駆動する。第2モータ駆動部10も、第1モータ駆動部8と同様に、例えば、インバータ回路により構成されている。第2モータ駆動部10は、第2直流電力線21を介して蓄電装置(バッテリ)等の車両の第2電源30と接続されている。これと共に、第2モータ駆動部10は、U2相動力線22、V2相動力線23、W2相動力線24を介してブレーキモータ2の第2巻線組6の各巻線U2,V2,W2と接続されている。第2電源30は、第1モータ駆動部8および第1コントロール部9に接続される第1電源29とは別の電源(別系統の電源)である。このように電源の供給経路を2重系統とすることにより、冗長性を確保している。
【0025】
また、第2モータ駆動部10は、信号線27,28を介して第2コントロール部11と接続されている。第2モータ駆動部10(インバータ回路)も、例えばトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を含んで構成されている。第2モータ駆動部10(インバータ回路)の各スイッチング素子は、その開・閉が第2コントロール部11からの指令信号(例えば、パルス信号)に基づいて制御される。第2モータ駆動部10(インバータ回路)は、ブレーキモータ2の駆動時に、第2コントロール部11からの指令信号に基づいて直流電力から3相(U相、V相、W相)の交流電力を生成し、その交流電力をブレーキモータ2の第2巻線組6(各巻線U2,V2,W2)に供給する。
【0026】
第2コントロール部11は、第2モータ駆動部10と接続している。第2コントロール部11も、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれ、演算回路(CPU)となるマイクロコンピュータを含んで構成されている。第2コントロール部11は、第2モータECU(M_ECU_2)に対応し、例えば、電力回路(Power Management IC)と、マイクロコンピュータと、ドライバ回路(Pre Driver)とを備えている。第2コントロール部11は、第2直流電力線21を介して車両の第2電源30と接続されると共に、信号線27,28を介して第2モータ駆動部10と接続されている。第2コントロール部11は、第2モータ駆動部10(インバータ回路)を制御(スイッチング制御)することにより、ブレーキモータ2を駆動(正転、逆転)する。
【0027】
第2コントロール部11は、ブレーキモータ2のロータ4の回転をフィードバック制御するための回転センサ16と接続されている。回転センサ16は、例えば、ブレーキモータ2のロータ4の回転角(回転位置、モータ角度)を検出する。回転センサ16も、第1モータ駆動部8に接続される回転センサ15とは別の回転センサである。これにより、冗長性を確保している。第2コントロール部11は、第2通信インターフェイス13を介して車両データバス31と接続されている。また、第2コントロール部11は、インターフェイス14を介して、速度センサ32と接続されている。速度センサ32は、例えば、車両の速度を検出するセンサである。速度センサ32は、例えば、車輪の回転速度を検出する車輪センサを採用してもよい。
【0028】
統合制御装置33は、第1コントロール部9と第2コントロール部11とに接続されている。即ち、統合制御装置33は、例えば、CANと呼ばれる車両データバス31を介して第1コントロール部9と第2コントロール部11とに接続されている。統合制御装置33は、例えば、自動運転制御装置(自動運転ECU)から得られた目標軌跡に対して車両を動かすための車両運動制御を決める統合的な制御装置(統合ECU)である。統合制御装置33は、各アクチュエータ制御装置(アクチュエータECU)、例えば、モータ駆動装置(モータ駆動ECU)、ブレーキ制御装置(ブレーキECU)、ステアリング制御装置(ステアリングECU)、サスペンション制御装置(サスペンションECU)等に必要な制御指令(例えば、自動運転に関する制御指令)を出力する。
【0029】
実施形態では、モータ制御装置7は、例えば、ブレーキモータ2を駆動するモータ駆動装置(モータ駆動ECU)とブレーキに関する統合的な制御を行うブレーキ制御装置(ブレーキECU)との両方を兼ねている。即ち、モータ制御装置7(ブレーキモータ制御ECU)は、モータ駆動機能とブレーキ制御機能との両方を有する制御装置として一体に構成されている。しかし、これに限らず、例えば、モータ駆動装置(モータ駆動ECU)とブレーキ制御装置(ブレーキECU)とをそれぞれ別々(別体)に構成してもよい。
【0030】
統合制御装置33は、セントラル制御装置(セントラルECU)とも呼ばれ、モータ制御装置7の上位の制御装置に対応する。統合制御装置33も、演算回路(CPU)となるマイクロコンピュータを含んで構成されている。この場合、統合制御装置33は、例えば、同じ処理を並列に行うと共に互いに処理結果に相違がないかを監視できるようにデュアルコア(二重回路)により構成されている。即ち、統合制御装置33は、2つのコントロール部33A,33B(第1セントラルECU(C_ECU_1)、第2セントラルECU(C_ECU_2))により構成されている。
【0031】
第1コントロール部9および第2コントロール部11は、それぞれ統合制御装置33と接続されている。また、第2コントロール部11は、通信線34(CPU間通信線)を介して、第1コントロール部9に接続されている。第2コントロール部11は、第1モータ駆動部8の状態を監視する。より具体的には、第2コントロール部11は、第1モータ駆動部8における相電流の状態を監視する。
【0032】
このために、第1モータ駆動部8のU1相動力線18、V1相動力線19、W1相動力線20には、相電流モニタ回路35が接続されている。相電流モニタ回路35は、第2コントロール部11に接続されており、第2コントロール部11は、相電流モニタ回路35により、第1モータ駆動部8の相電流を監視する。第2コントロール部11は、相電流モニタ回路35でのモニタ値が正常範囲外となり、制御指令通りに制御できていない場合等に、第1コントロール部9が異常と判断する。
【0033】
ところで、前述の特許文献1の電動ディスクブレーキは、電流の位置変化量が閾値を超えたか否かに基づいて、パッドの接触位置(ブレーキパッドとディスクロータとの接触位置)を検出する。このような特許文献1の技術を、1つのロータに対して2系統のコイルに通電することによってモータのトルクを発生させる電動ディスクブレーキで用いることを考える。
【0034】
この場合に、例えば、片方の系統で特許文献1に記載のように位置変化量からパッドの接触位置の検出を行うと、推力に対する電流の変化量(傾き)が小さく、検出精度を十分に確保できない可能性がある。また、検出に時間を要してしまうおそれもある。そこで、実施形態では、1つのロータに対し2系統のコイルに通電することによってトルクを発生させる構成で、位置検出の精度、より具体的には、ディスクロータ(被接触部材、被制動部材)に対するブレーキパッド(接触部材、制動部材)の接触位置の検出精度を高める。
【0035】
このために、実施形態では、ブレーキパッド(単に、パッドともいう)の接触位置の検出の動作のときに、高精度の検出を行う場合は、動作を実現するために必要なトルクを両系統のコイルで等分して発生させることは行わない。即ち、実施形態では、パッドの接触位置の検出の動作のときに、いずれか一方のコイル(例えば、第1系統コイル)を検知側コイルとし、他方のコイル(例えば、第2系統コイル)となる非検知側コイルには、動作方向とは逆側にトルクが発生するように通電させる。
【0036】
これにより、動作を実現するために必要な検知側コイルの電流量を増やすことができ、ブレーキパッドがディスクロータに接触したとき(即ち、推力が発生したとき)の推力変化に対する電流変化量を大きくできる。この結果、実施形態では、電流誤差の通電量に対する比率を小さくすることができる。即ち、実施形態では、推力の推定誤差を小さくすることができるため、パッドの接触位置の検出精度を向上できる。
【0037】
以下、これらの点について、図1に加え、図2ないし図4も参照しつつ説明する。なお、図2では、図面が複雑になることを避けるために、2つのコントロール部9,11を仮想的に1つコントロール部として表しているが、実施形態では、図1に示すように、2つのコントロール部9,11を備えている。また、2つのコントロール部9,11は、通信線34(CPU間通信線)を介して接続されている。そこで、以下の説明では、パッドの接触位置の検出の処理を、第1コントロール部9と第2コントロール部11とで行う場合を例に挙げて説明する。
【0038】
しかし、これに限らず、第1コントロール部9で行う処理を第2コントロール部11で行い、第2コントロール部11で行う処理を第1コントロール部9で行ってもよい。また、第1コントロール部9で行う処理と第2コントロール部11で行う処理との両方の処理を、第1コントロール部9と第2コントロール部11とのうちのいずれか一方のコントロール部9(11)で行ってもよい。即ち、第1コントロール部9と第2コントロール部11とのうちのいずれか一方または両方が、第1モータ駆動部8および第2モータ駆動部10を制御するコントロール部に対応する。
【0039】
実施形態では、ブレーキモータ2は、1つのロータ4に対し、2系統のコイル(第1巻線組5、第2巻線組6)を備えている。ブレーキモータ2は、2系統のコイル(第1巻線組5、第2巻線組6)に通電することによってトルクを発生させるモータ制御が行われる。2系統のコイル(第1巻線組5、第2巻線組6)は、それぞれ別系統のインバータ(第1モータ駆動部8、第2モータ駆動部10)に接続され、かつ、別系統の電流センサ41,42(図2)によって電流を検出し、モータ制御を行う。
【0040】
実施形態では、故障に対し、モータ制御を極力継続できるように、電源29,30は、冗長な構成になっている。即ち、実施形態では、それぞれがインバータにより構成される第1,第2モータ駆動部8,10は、それぞれ別々の電源29,30に接続されている。なお、図示は省略するが、例えば、いずれか一方の電源29,30が故障したときに、故障した側の電源29(30)との電気的接続を遮断できるような電源回路を設け、この電源回路に、両方のモータ駆動部8,10を接続する構成としてもよい。
【0041】
また、ブレーキモータ2を制御するシステム(ブレーキシステム)を構成する場合、制御手段となるCPU(マイクロコンピュータ)を1つとすることも可能である。しかし、CPUの故障時に制御を継続するためには、CPUが冗長に存在していることが望ましく、その場合、お互いのCPUの演算結果を、CPU間通信等を用いて共有できる構成となっていることが望ましい。このため、実施形態では、2つのCPU(マイクロコンピュータ)を有する構成、即ち、第1コントロール部9と第2コントロール部11との2つのコントロール部9,11を有する構成とすると共に、第1コントロール部9と第2コントロール部11とを通信線34(CPU間通信線)で接続している。
【0042】
図2に示すように、2つのCPUを含んで構成されるコントロール部9,11は、インバータとなる第1モータ駆動部8および第2モータ駆動部10を制御することによって、それぞれ独立した3相のコイルである第1巻線組5および第2巻線組6に通電する。この結果、第1巻線組5および第2巻線組6に流れた電流を電流センサ41,42(図2)で検出すると共に、ブレーキモータ2のモータ角度を角度センサ(モータ角度センサ)となる回転センサ15,16によって検出することで、所望のモータトルクを発生するためのフィードバックループを構築している。
【0043】
図2では、第1電流センサ41は、第1巻線組5の電流を検出し、第2電流センサ42は、第2巻線組6の電流を検出する。電流センサ41,42は、それぞれが3相コイルである第1巻線組5および第2巻線組6に流れる電流(U相、V相、W相)を直接検出するように、それぞれの系統に3個ずつ配置することができる。また、電流センサの配置場所と電流の検出タイミングを既知の技術により適切に設定することで、電流センサを2つ、または、1つとしてもよい。即ち、3相の電流を直接検出または推定できればよい。
【0044】
図2は、ブレーキモータ2にトルクを発生させるためにコントロール部9,11内で実行される制御内容(制御処理)の一例を示している。コントロール部9,11は、位置制御器43と、電流指令算出部44(第1電流指令算出部44A、第2電流指令算出部44B)と、電流制御器45(第1電流制御器45A、第2電流制御器45B)とを備えている。位置制御器43は、上位の制御から指示されたモータ角度指令Cと、回転センサ15,16から検出されたモータ角度との偏差に基づいて、トルク指令Tを算出する。
【0045】
位置制御器43は、算出したトルク指令Tを電流指令算出部44に出力する。この場合、位置制御器43は、電流指令算出部44の第1電流指令算出部44Aと第2電流指令算出部44Bとにそれぞれトルク指令Tを出力する。実施形態では、上位制御から指令がモータ角度指令Cであり、このモータ角度指令Cに基づいてトルク指令Tを算出するが、上位制御からの指令は、例えば、速度指令またはモータトルク指令であってもよい。
【0046】
電流指令算出部44には、位置制御器43からトルク指令Tが入力される。電流指令算出部44では、一方のコイルとなる第1巻線組5で発生させるトルクと他方のコイルとなる第2巻線組6で発生させるトルクとの合計が、ブレーキモータ2で出力すべき所望のトルク(要求トルク)となるように、電流指令id1,iq1,id2,iq2を算出する。電流指令算出部44は、算出した電流指令id1,iq1,id2,iq2を電流制御器45(第1電流制御器45A、第2電流制御器45B)に出力する。
【0047】
ここで、電流指令算出部44は、第1電流指令算出部44Aと、第2電流指令算出部44Bとを備えている。第1電流指令算出部44Aは、例えば、パッドの接触位置を検知する側(検知側)となる一方の系統(例えば、第1系統)の電流指令id1,iq1を算出する。この場合、第1電流指令算出部44Aでは、トルク指令Tに「1/K×α」を乗算することにより、電流指令id1,iq1を算出する。「K」は、モータのトルク定数である。第2電流指令算出部44Bは、例えば、パッドの接触位置を検知しない側(非検知側)となる他方の系統(例えば、第2系統)の電流指令id2,iq2を算出する。この場合、第2電流指令算出部44Bでは、トルク指令Tに「-1/K×(α-1)」を乗算することにより、電流指令id2,iq2を算出する。これにより、電流指令算出部44では、トルク(トルク指令)を電流(電流指令)に変換するためのゲインを、検知側で「1/K×α」、非検知側で「-1/K×(α-1)」としている。
【0048】
「α」について、説明する。例えば、通常の制動時は、「α」を「0.5」に設定する。この場合、電流指令算出部44では、検知側と非検知側とのそれぞれで、ブレーキモータ2で出力すべき所望のトルク(要求トルク)の半分を出力する電流指令id1,iq1,id2,iq2が算出される。一方、パッドの接触位置の検出を高精度に行うときは、「α」を「1」以上に設定する。この場合、電流指令算出部44では、検知側でα倍のトルク(第1トルク)を出力する電流指令id1,iq1が算出され、非検知側で逆トルク、即ち、検知側と非検知側の合計が所望のトルクとなるような逆方向のトルク(第2トルク)を出力する電流指令id2,iq2を算出する。
【0049】
第1電流指令算出部44Aで算出された電流指令id1,iq1および第2電流指令算出部44Bで算出された電流指令id2,iq2は、電流制御器45に出力される。この場合、第1電流指令算出部44Aで算出された電流指令id1,iq1は、第1電流制御器45Aに出力され、第2電流指令算出部44Bで算出された電流指令id2,iq2は、第2電流制御器45Bに出力される。これにより、電流指令算出部44は、ブレーキモータ2で所望のトルク(要求トルク)を出力するための電流指令id1,iq1,id2,iq2を電流制御器45に分配する。
【0050】
電流制御器45(第1電流制御器45A、第2電流制御器45B)は、例えば第1系統の3相コイルとなる第1巻線組5と第2系統の3相コイルとなる第2巻線組6とのそれぞれに通電する電流を制御する。電流制御器45(第1電流制御器45A、第2電流制御器45B)では、電流センサ41,42によって検出または推定された3相電流と、回転センサ15,16によって検出されたモータ角度(電気角位相)とに基づいて、3相電圧値を決定し、第1モータ駆動部8および第2モータ駆動部10を制御する。
【0051】
即ち、電流制御器45の第1系統側(例えば、第1コントロール部9側)となる第1電流制御器45Aでは、電流センサ41によって検出または推定された3相電流iU1,iV1,iW1(またはid1,iq1)と回転センサ15によって検出されたモータ角度(電気角位相)とに基づいて、3相電圧値vU1,vV1,vW1を決定し、第1モータ駆動部8を制御する。電流制御器45の第2系統側(例えば、第2コントロール部11側)となる第2電流制御器45Bでは、電流センサ42によって検出または推定された3相電流iU2,iV2,iW2(またはid2,iq2)と回転センサ16によって検出されたモータ角度(電気角位相)とに基づいて、3相電圧値vU2,vV2,vW2を決定し、第2モータ駆動部10を制御する。
【0052】
電流を制御するための処理は、一般に高速で実行する必要がある。このため、コントロール部9,11がそれぞれのモータ駆動部8,10に対して独立して存在する場合は、電流を制御するための処理をそれぞれのコントロール部9,11に実装することが好ましい。即ち、第1系統側の電流制御の処理を第1コントロール部9に実装し、第2系統側の電流制御の処理を第2コントロール部11に実装することが好ましい。
【0053】
また、例えば、モータ角度指令に基づいてそれぞれの系統で実現すべき電流指令またはモータトルク指令を算出する処理は、一方のCPU(第1コントロール部9または第2コントロール部11)のみで実行し、指令の算出結果を、CPU間通信(通信線34)を用いて他方のCPU(第2コントロール部11または第1コントロール部9)に伝送してもよい。
【0054】
また、それぞれのCPU(コントロール部9,11)で独立して同一の計算を実行し、それぞれの系統で実現すべきトルク指令のみをそれぞれのCPU(コントロール部9,11)で使用してもよい。また、それぞれのCPU(コントロール部9,11)で独立して計算した結果を、CPU間通信(通信線34)を用いて伝送し、それぞれのCPU(コントロール部9,11)で比較して選択してもよい。
【0055】
実施形態では、コントロール部9,11は、パッドの接触位置の検知を行う。このとき、実施形態では、高精度でパッドの接触の位置の検知を行うことができるように、パッドの接触位置を検知する側(検知側)の系統のコイル(第1巻線組5または第2巻線組6)では、要求トルク(トルク指令T)よりも大きな第1トルクを発生させる。これに対して、パッドの接触位置を検知しない側(非検知側)の系統のコイル(第2巻線組6または第1巻線組5)では、要求トルク(トルク指令T)とは逆方向で、かつ、要求トルク(トルク指令T)と第1トルクとの差に基づく第2トルクを発生させる。
【0056】
コントロール部9,11で行われるパッドの接触位置の検出処理について、図3を参照しつつ説明する。図3の制御処理は、例えば、所定の制御周期(例えば、1ms)で繰り返し実行される。
【0057】
図3の制御処理が開始されると、S1では、パッドの接触位置の検出を行う必要があるか否かを判定する。パッドの接触位置の検出は、例えば、車両が起動しているとき(例えば、車両電源がONのとき、イグニッションがONのとき)、または、走行中の一定時間が経過したとき等に行われることが望ましい。そこで、S1では、例えば、車両電源がONであるか否か、または、イグニッションがONであるか否かを判定する。S1で「YES」、即ち、パッドの接触位置の検出を行う必要があると判定された場合は、S2に進む。これに対して、S1で「NO」、即ち、パッドの接触位置の検出を行う必要がないと判定された場合は、S1の処理を繰り返す。
【0058】
S2では、シフトレバー(ATレンジ)がPレンジ(駐車位置)以外であるか否かを判定する。実施形態では、パッドの接触位置の検出は、制動時等のブレーキ制御中、または、パッドの接触位置を検出するための動作指令に基づく動作中に行うものとする。このため、S2では、接触位置の検出を行うためのブレーキ指令を、「ドライバ(運転者)の操作に基づいて出力されるブレーキ指令」とするか「ドライバの操作に基づかずにブレーキシステムから出力されるブレーキ指令」とするかを判定する。S2で「YES」の場合は、ドライバの操作に基づくブレーキ指令が出力されるものとして、S3に進む。
【0059】
これに対して、S2で「NO」の場合は、ブレーキシステムからブレーキ指令が出されるものとして、S10に進む。なお、S2の処理は、車両が停車中であり、仮にドライバの制動意思とは異なる制動動作が行われても問題がないことを判断できればよい。このため、S2の処理は、例えば、パーキングブレーキ作動時(パーキングブレーキが作動中)であるか否か、または、停車保持制御介入時(停車保持制御が介入中)であるか否かを判定してもよい。即ち、S2では、パーキングブレーキ作動時または停車保持制御介入時をPレンジである(Pレンジと同等)として判定してもよい。
【0060】
先ず、S2で「YES」と判定された場合、即ち、Pレンジ以外であると判定された場合について説明する。S2で「YES」と判定されると、S3に進む。S3では、ブレーキ指令があるか否かを判定する。S3で「NO」、即ち、ブレーキ指令なしと判定された場合は、S3の処理を繰り返す。一方、S3で「YES」、即ち、ブレーキ指令ありと判定された場合は、S4に進む。このように、S3では、ブレーキ指令が出されるまで待機となる。
【0061】
S4では、パッドの接触位置の検出を高精度に行ってもよいか否かを判定する。高精度の位置検出(高精度の接触位置の検出)を行ってよいか否かは、ブレーキシステムの状態とブレーキ指令によって決まる。高精度の位置検出を行ってよい状態としては、例えば、温度、バッテリ電圧の状況の他、フェイルによる電流制限がない場合(ブレーキシステムで使用できる電流が制限されていない場合)、かつ、ブレーキ指令としてブレーキ応答性が制限値以上の場合になる。
【0062】
即ち、高精度の位置検出は、ブレーキパッドの温度、電源の電圧(バッテリ電圧)等が予め設定された範囲内のときに行うことが好ましい。予め設定された範囲は、位置検出を高精度で行うことができる温度の範囲、バッテリ電圧の範囲として設定することができる。また、高精度の位置検出は、電流の許容値が予め設定された値以上のときに行うことが好ましい。予め設定された値は、高精度の位置検出を行うことができる電流を確保できる値として設定することができる。このように電流の制限を設ける理由は、高精度の位置検出を行う場合、いずれかのコイル(第1系統コイル)で逆方向のトルクを付与することにより、通常のブレーキ動作よりも多くの電流を消費するためである。
【0063】
また、高精度の位置検出は、ブレーキ指令の応答性が予め設定された制限値以上のときに行うことが好ましい。予め設定された制限値は、高精度の位置検出を行っても応答性を確保できる値として設定することができる。このようにブレーキ応答性に制限を設ける理由は、高精度の位置検出を行う場合、片方(一方)のモータ駆動回路(例えば、第1モータ駆動部8)でブレーキパッドを制動側に動作させるためである。
【0064】
即ち、高精度の位置検出を行う場合、片方(他方)のモータ駆動回路(例えば、第2モータ駆動部10)は、制動側とは逆方向のトルクを発生させるために用いられる。これにより、高精度の位置検出を行う場合は、両方のモータ駆動回路(例えば、第1モータ駆動部8および第2モータ駆動部10)でブレーキパッドを制動側に動作させるときと比較して、ブレーキ応答性が遅くなるため、ブレーキ応答性に制限を設けている。
【0065】
S4で「YES」、即ち、パッドの接触位置の検出を高精度に行ってもよいと判定された場合は、S5に進む。これに対して、S4で「NO」、即ち、パッドの接触位置の検出を高精度に行うことは好ましくないと判定された場合は、S13に進む。
【0066】
S5では、パッドの接触位置の検出を高精度で行うためのαの値を設定する。即ち、検知側は、α>1を設定してトルク指令の「α倍」を出力する。これにより、検知側コイルの電流量を増やすことができ、ブレーキパッドがディスクロータに接触したとき(推力が発生したとき)の推力変化に対する電流変化量を大きくできる。このため、通電量に対する電流誤差の比率を小さくすることができる。即ち、推力の推定誤差を小さくすることができるため、パッドの接触位置の検出精度を向上できる。
【0067】
これに対して、非検知側は、動作方向とは逆側にトルク指令の「(α-1)倍」のトルクが発生するように通電させ、検知側と非検知側の合計トルク値が指令トルク値となるようにする。αの値は、非ブレーキ時にブレーキパッドとディスクロータとが接触して発生する引き摺りトルクを所定の値まで低減するために必要なクリアランス(ブレーキパッドとディスクロータとのクリアランス)と、制動時にクリアランスを詰めて制動力を発生するまでに許容される無駄時間を両立させるために必要なパッド接触位置の検出誤差と、から設定することができる。
【0068】
ここで、引き摺りトルクはクリアランス量と反比例する。このため、引き摺りトルクを必ず所定量以下にするためには、待機位置を「引き摺りトルクを所定量にするためのクリアランス量」+「パッド接触位置の検出誤差」とする必要がある。従って、パッド接触位置の検出誤差分、制動力を発生するまでに必要なピストン移動量が増加し、無駄時間が増大することになる。このため、パッド接触位置の検出誤差を小さくすることが、無駄時間を短縮することに繋がる。
【0069】
一方、電流を用いてパッド接触位置を検出するということは、ピストンがブレーキパッドに接触して推力が発生した際、推力に比例して電流が増加することを利用している。電流、あるいは電流の変化量がある閾値を超えた位置を検出することは、推力、あるいは推力の変化量がある閾値を超えた位置を検出することと同義となるが、認識している電流には誤差が含まれる。このため、その誤差分だけ、推力の推定誤差となり、パッド接触位置の検出誤差となる。このため、後述の図4に示すように、α>1とすると、α=0.5の場合に比べ推力の変化量に対する電流の変化量が増加し、相対的に推力変化量に対する電流誤差の比率が小さくすることができ、パッド接触位置の検出誤差も小さくすることができる。
【0070】
電流の認識誤差は、センサ仕様、マイコンのAD変換誤差等から見積り可能である。また、電流と推力の関係、推力と位置の関係、引き摺りトルクとクリアランス量の関係、クリアランス量と無駄時間の関係は、設計値や実験などから見積り可能である。
【0071】
従って、S5のαの値、即ち、検知側のトルク(第1トルク)を設定するためにトルク指令に乗算するαの値は、電動ブレーキが作動していない状態で、引き摺りトルクに起因して設定されるクリアランスと、接触位置の検知誤差と、に基づいて設定することができる。S5でαの値を設定したら、S6に進む。
【0072】
S6では、検知側に設定する駆動回路の系統を設定する。このS6では、第1系統を検知側に設定しているが、検知側の系統は、例えば、ブレーキ動作1回、1トリップ、一定時間、一定ブレーキ回数等で交代してもよい。即ち、S6では、第1モータ駆動部8および第1巻線組5を検知側として設定し、第2モータ駆動部10および第2巻線組6を非検知側として設定する。また、S6では、条件が成立した場合、即ち、ブレーキ動作、トリップ、時間、ブレーキ回数等が閾値(切換えの判定値)に達した場合に、第2モータ駆動部10および第2巻線組6を検知側として設定し、第1モータ駆動部8および第1巻線組5を非検知側として設定する。
【0073】
このように、検知側と非検知側との切換え(交代)は、ブレーキ動作回数、トリップ、時間、ブレーキ回数等に応じて行うことができる。このように交代してパッドの接触位置の検出を行う場合は、それぞれの系統が同等の作動回数となるので両系統の負荷が同等になり、検知側を片側の系統に固定する場合と比較して耐久性を向上できる。また、検知側と非検知側を交代して合計2回、パッドの接触位置の検出を行うことにより、両系統のそれぞれで検出を行ってもよい。
【0074】
S6で検知側と非検知側の設定を行ったら、検知側となる第1電流指令算出部44Aと非検知側となる第2電流指令算出部44Bは、ブレーキ指令に基づく電流指令id1,iq1,id2,iq2を出力する。具体的には、ブレーキ指令をトルク指令Tとした場合、検知側となる第1電流指令算出部44Aは、トルク指令Tに「1/K×α」を乗算した電流指令id1,iq1を出力する。この場合、図3のS5の処理により「α>1」に設定されている場合は、トルク指令Tと同方向で、かつ、トルク指令Tよりも大きいトルクを発生する電流指令id1,iq1が第1電流指令算出部44Aから出力される。また、非検知側となる第2電流指令算出部44Bは、トルク指令Tに「-1/K×(α-1)」を乗算した電流指令id2,iq2を出力する。この場合、図3のS5の処理により「α>1」に設定されている場合は、トルク指令Tと逆方向で、かつ、トルク指令Tと第1トルクとの差に基づくトルクを発生する電流指令id2,iq2が第2電流指令算出部44Bから出力される。
【0075】
S6で検知側と非検知側の設定を行うと共に、ブレーキ指令に基づく電流指令id1,iq1,id2,iq2を出力したら、S7に進む。S7では、検知側の系統の位置に対する電流値を記録する。続くS8では、S7で記録した電流に基づいて、電流に対する位置の変化量(di/dx)が閾値を超えたか否かを判定する。S8で「NO」、即ち、変化量(di/dx)が閾値を超えていないと判定された場合は、S7に戻る。即ち、再度S7で電流を記録し、位置変化量(di/dx)が閾値を超えるまでS7とS8の処理を繰り返す。閾値は、例えば、ブレーキパッドとディスクロータとが接触したときの変化量(電流変化量)として、予め計算、実験、シミュレーション等により求めておくことができる。
【0076】
これに対して、S8で「YES」、即ち、変化量(di/dx)が閾値を超えたと判定された場合は、S9に進む。S9では、パッド接触位置を更新する。即ち、S9では、閾値を超えたときの位置をパッドの接触位置とし、この接触位置を最新の接触位置として更新する。S9でパッド接触位置を更新したら、今回のブレーキ指令に基づくパッド接触位置の検出は完了する。即ち、エンドを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0077】
一方、S4で「NO」と判定され、S13に進んだ場合は、S13でαを設定する。S13では、パッドの接触位置の検出を高精度で行うことができない場合のαを設定する。即ち、検知側は、α=0.5を設定し、検知側と非検知側とでそれぞれ所望のトルクの半分を出力する。この場合は、通常のブレーキ時と同じ駆動回路動作と電流で、パッドの位置検出を行うことができる。なお、α=0.5の場合、S6で検知側に設定する系統は、どちらに設定してもよい。
【0078】
次に、S2で「NO」と判定された場合、即ち、Pレンジであると判定された場合について説明する。S2で「NO」と判定されると、S10に進む。この場合は、Pレンジであるので、S10で、ドライバがブレーキペダルを踏んでいるか否かを判定する。即ち、S10では、ドライバのペダル操作によるブレーキ指令が出力されているか否かを判定する。S10で「YES」、即ち、ドライバによるブレーキ指令が出力されていると判定された場合は、S11に進む。S10で「NO」、即ち、ドライバによるブレーキ指令が出力されていないと判定された場合は、S12に進む。
【0079】
ここで、ドライバによるブレーキ指令が出力されている場合、ブレーキシステムとしては、パッドの接触位置の検出を行う車輪のブレーキを一旦解除してから、ブレーキ指令を出力する必要がある。これに対して、ドライバによるブレーキ指令が出力されていない場合、ブレーキシステムとしては、ブレーキ指令を出力するだけである。即ち、ドライバによるブレーキ指令が出力されているか否かで、ブレーキシステムの必要な動作が異なる。そこで、S10では、ドライバがブレーキペダルを踏んでいるか否かを判定する。
【0080】
なお、車両の4輪のうちのいずれの輪でパッドの接触位置の検出を行うかは、例えば、4輪それぞれのパッドの接触位置が更新されてからの経過時間から決定することができる。例えば、更新されてからの経過時間が長い車輪から接触位置の検出を行うことができる。また、パッドの接触位置を検出する車輪の数は、1輪でもよいし、対角の2輪でもよい。
【0081】
S10で「YES」と判定され、S11に進んだ場合は、ドライバによるブレーキ指令が出力されている場合のブレーキ指令を算出する。即ち、S11では、例えば、任意の1輪のブレーキを解除してから、この任意の1輪のパッドの接触位置検出のためのブレーキ指令(パッド接触位置検出用ブレーキ指令)を算出する。このブレーキ指令(パッド接触位置検出用ブレーキ指令)は、例えば、上位の制御からのモータ角度指令Cとして位置制御器43に出力することができる。
【0082】
これに対して、S10で「NO」と判定され、S12に進んだ場合は、ドライバによるブレーキ指令が出力されていない場合のブレーキ指令を算出する。即ち、S12では、任意の1輪のパッドの接触位置検出のためのブレーキ指令(パッド接触位置検出用ブレーキ指令)を算出する。このブレーキ指令(パッド接触位置検出用ブレーキ指令)も、例えば、上位の制御からのモータ角度指令Cとして位置制御器43に出力することができる。S11およびS12のパッド接触位置検出用ブレーキ指令は、S4において高精度の検出を行うことが可能と判定される範囲での単調に増加するブレーキ指令であればよい。このため、詳細な説明は省略する。
【0083】
図4は、S7、S8およびS9の処理による接触位置検出の動作時の電流とピストン位置との関係を示している。即ち、図4は、高精度(α>1)の接触位置検出の動作時の検知側コイルと非検知側コイルのピストン位置に対する電流の特性、および、通常(α=0.5)の接触位置検出の動作時の検知側コイルと非検知側コイルのピストン位置に対する電流の特性を示している。ピストン位置は、ブレーキパッドの位置に対応する。
【0084】
高精度(α>1)の接触位置検出の動作時は、検知側コイルにブレーキ指令値より大きい電流量を通電させる。これと共に、非検知側コイルには、検知側コイルと非検知側コイルの通電量の合計がブレーキ指令値となるように、動作方向とは逆側のトルクが発生する電流量を通電させる。図4では、このときの電流と位置との特性(波形)を示しており、図4の特性線51が検知側コイルの電流の特性(波形)に対応し、図4の特性線52が非検知側コイルの電流の特性(波形)に対応する。
【0085】
また、通常(α=0.5)の接触位置検出の動作時は、検知側コイルと非検知側コイルでブレーキ指令値の半分ずつの電流量を通電させる。図4の特性線53は、このときの検知側コイルの電流の特性(波形)に対応する。このような図4から明らかなように、高精度(α>1)の接触位置検出の動作時は、通常(α=0.5)の接触位置検出の動作時と比較して、電流変化量を大きくでき、電流誤差の通電量に対する比率を小さくできる。即ち、ピストン位置(パッドの接触位置)の推定誤差を小さくできる。
【0086】
このように、実施形態のモータ制御システム1は、電動モータとしてのブレーキモータ2と、ブレーキモータ2を制御するモータコントローラとしてのモータ制御装置7とを備えている。実施形態では、モータ制御装置7は、電動ブレーキの制御装置に対応する。電動ブレーキは、例えば、ブレーキパッド(制動部材)をディスクロータ(被制動部材)に押圧する電動キャリパ(電動機構)と、電動キャリパを駆動するブレーキモータ2とを備えている。ディスクロータは、被接触部材に対応し、ブレーキパッドは、モータ制御装置7によって制御されて作動する接触部材に対応する。
【0087】
なお、実施形態のモータ制御装置7は、車両に制動力を付与する電動ブレーキのブレーキモータ2を制御する。しかし、これに限らず、モータ制御装置は、例えば、車両の操舵を行う電動ステアリングのステアリングモータを制御する構成としてもよい。この場合、モータ制御装置は、電動ステアリングの制御装置に対応する。
【0088】
モータ制御装置7は、第1モータ駆動部8と、第2モータ駆動部10と、コントロール部としての第1コントロール部9および/または第2コントロール部11とを備えている。第1モータ駆動部8は、ブレーキモータ2の第1系統コイルとなる第1巻線組5に接続されている。第2モータ駆動部10は、ブレーキモータ2の第2系統コイルとなる第2巻線組6に接続されている。
【0089】
コントロール部9,11(第1コントロール部9および/または第2コントロール部11)は、第1モータ駆動部8および第2モータ駆動部10を制御する。この場合、コントロール部9,11は、ブレーキモータ2を介して電動ブレーキを制御する。コントロール部9,11は、図3のS4で「YES」と判定された場合、第1モータ駆動部8と第2モータ駆動部10とに対して、次の出力を行う。
【0090】
即ち、コントロール部9,11は、ブレーキモータ2に要求される要求トルクを発生させるためのトルク指令によってブレーキモータ2に発生するトルクよりも大きなトルクであり、かつ、要求トルクと同方向の第1トルクが発生するように、第1巻線組5に通電するための第1電流指令を第1モータ駆動部8に出力する。即ち、要求トルクをトルク指令Tとし、第1電流指令を電流指令id1,iq1とすると、電流指令id1,iq1は、トルク指令Tに「1/K×α」を乗算することにより算出される。このとき、図3のS5の処理により「α>1」である。このため、コントロール部9,11は、第1トルク(トルク指令Tと同方向で、かつ、トルク指令Tよりも大きいトルク)を発生する電流指令id1,iq1を第1モータ駆動部8に出力することができる。
【0091】
また、併せて、コントロール部9,11は、要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクであり、かつ、第1トルクとは逆方向のトルクである第2トルクが発生するように、第2巻線組6に通電するための第2電流指令を第2モータ駆動部10に出力する。即ち、要求トルクをトルク指令Tとし、第2電流指令を電流指令id2,iq2とすると、電流指令id2,iq2は、トルク指令Tに「-1/K×(α-1)」を乗算することにより算出される。このとき、図3のS5の処理により「α>1」である。このため、コントロール部9,11は、第2トルク(トルク指令Tと逆方向で、かつ、トルク指令Tと第1トルクとの差に基づくトルク)を発生する電流指令id2,iq2を第2モータ駆動部10に出力することができる。
【0092】
実施形態では、コントロール部9,11は、第1電流指令によって第1巻線組5に流れる電流変化に基づいて、ディスクロータ(被制動部材、被接触部材)に対するブレーキパッド(制動部材、接触部材)の接触位置を検知する。即ち、コントロール部9,11は、図3のS8の処理により、検知側となる第1巻線組5の電流変化量(di/dx)に基づいて、より具体的には、電流変化量(di/dx)と閾値との比較に基づいて、位置検出(接触位置の検知)を行う。
【0093】
実施形態では、要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクは、要求トルクと第1トルクとの差分である。即ち、要求トルクをトルク指令Tとし、第1トルクを「α×T」とした場合、要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクは、「(α-1)×T」、即ち、「α×T-T」であり、要求トルク「T」と第1トルク「α×T」との差分としている。
【0094】
また、コントロール部9,11は、第1巻線組5に流れる電流に対する接触位置の変化量が、所定の閾値を超えたときに、ブレーキパッドの接触位置に関する物理量を更新する。即ち、コントロール部9,11は、図3のS8の処理により、検知側となる第1巻線組5の電流変化量(di/dx)が所定の閾値を超えたときに、図3のS9の処理により、パッドの接触位置の更新を行う。所定の閾値は、例えば、ブレーキパッドとディスクロータとが接触したときの変化量(電流変化量)として、予め計算、実験、シミュレーション等により求めておくことができる。
【0095】
実施形態では、コントロール部9,11は、電動ブレーキに使用可能な電流に所定の制限がされていなく、かつ、電動ブレーキの応答性が所定値を超える場合に、第1電流指令および第2電流指令を出力する。即ち、コントロール部9,11は、図3のS4の処理で「YES」と判定された場合に、第1電流指令および第2電流指令、即ち、「α>1」とした電流指令id1,iq1,id2,iq2を出力する。図3のS4では、ブレーキモータ2に供給する電流に所定の制限がされてなく、かつ、電動ブレーキの応答性が所定値を超える場合に、「YES」と判定される。
【0096】
電流の制限(所定の制限)は、第1モータ駆動部8に第1トルクを発生させる指令を出力し、第2モータ駆動部10に第2トルクを発生させる指令を出力しても、第1巻線組5および第2巻線組6に対する電流の供給を確保できるように設定することができる。また、応答性の制限(応答性の所定値)は、第2巻線組6で要求トルクとは逆方向のトルクを発生させても電動ブレーキの応答性を確保できるように設定することができる。
【0097】
実施形態では、第1トルクの大きさは、引き摺りトルクに起因して設定されるクリアランスと接触位置の検知誤差とに基づいて設定される。引き摺りトルクは、電動ブレーキが作動していない状態で、ブレーキパッドとディスクロータが接触することで発生する回転抵抗(トルク)である。クリアランスは、ブレーキパッドとディスクロータとの間の間隔である。
【0098】
即ち、コントロール部9,11は、図3のS5の処理により、「α」を、1よりも大きい値(α>1)として設定する。このとき、「α」は、前述したように、「クリアランス」と「接触位置の検知誤差」に基づいて設定することができる。
【0099】
実施形態では、コントロール部9,11は、所定の条件が成立した場合、第1電流指令を第2モータ駆動部10に出力し、第2電流指令を第1モータ駆動部8に出力する。即ち、コントロール部9,11は、図3のS6の処理により検知側の系統を設定する。このとき、コントロール部9,11は、ブレーキ動作回数、トリップ、時間、ブレーキ回数等に応じて検知側の系統と非検知側の系統との切換え(交代)を行うことができる。切換えの条件(所定の条件)は、例えば、ブレーキ動作1回、1トリップ、一定時間、一定ブレーキ回数とすることができる。
【0100】
以上のように、実施形態によれば、コントロール部9,11(第1コントロール部9および/または第2コントロール部11)は、第1モータ駆動部8に第1電流指令、即ち、要求トルク(T)と同方向で要求トルクよりも大きなトルクとなる第1トルク(α×T,α>1)を発生させる電流指令id1,iq1を出力する。また、これと共に、コントロール部9,11は、第2モータ駆動部10に第2電流指令、即ち、要求トルク(T)と逆方向で要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクとなる第2トルク(T-α×T,α>1)を発生させる電流指令id2,iq2を出力する。
【0101】
このため、ブレーキモータ2のロータ4に加わる負荷(ブレーキパッドの推力)の変化に応じた第1巻線組5の電流(モータ電流)の変化量(di/dx)を大きくすることが可能になる。即ち、1つのロータ4に対して2系統の第1巻線組5および第2巻線組6に通電することによってトルクを発生させる構成で、ロータ4の負荷の変化に応じた第1巻線組5の電流の変化量(di/dx)を大きくすることが可能になる。これにより、電流の変化に基づいて位置検出を行う場合に、この位置検出の精度の低下を抑制できる。
【0102】
実施形態によれば、コントロール部9,11は、第1電流指令(電流指令id1,iq1)によって第1巻線組5に流れる電流変化に基づいて、ディスクロータ(被制動部材、被接触部材)に対するブレーキパッド(制動部材、接触部材)の接触位置を検知する。この場合、ディスクロータ(被制動部材、被接触部材)に対するブレーキパッド(制動部材、接触部材)の接触に基づく負荷の変化に応じた第1巻線組5の電流の変化量(di/dx)を大きくできるため、接触位置の検出精度の低下を抑制できる。
【0103】
そして、接触位置を精度よく検出できるため、ピストンがブレーキパッドに接触するまでのクリアランス、延いては、ブレーキパッドがディスクロータに接触するまでのクリアランスに誤差分を考慮する必要がなくなる。この結果、クリアランスを小さく設定することができ、ブレーキ時のクリアランスを詰める量が減り、その分の作動音を低減できる。さらには、クリアランスを小さく設定することができる分、ブレーキの応答性が向上し、停止距離を縮めることができる。
【0104】
実施形態によれば、要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクは、「α×T-T」、即ち、要求トルク「T」と第1トルク「α×T」との差分である。このため、コントロール部9,11は、第1モータ駆動部8に第1電流指令(「α>1」とした電流指令id1,iq1)を出力し、第2モータ駆動部10に第2電流指令(「α>1」とした電流指令id2,iq2)を出力することにより、ロータ4の負荷の変化に応じた第1巻線組5の電流の変化量(di/dx)を大きくしつつ、ブレーキモータ2で要求トルク「T」を発生させることができる。また、ブレーキモータ2では、要求トルク「T」が発生するため、接触位置の検出を行うときの発生推力(ブレーキパッドの推力)を小さくできる。即ち、接触位置の検出のために、ブレーキモータ2で発生するトルクを大きくする必要がないため、ブレーキパッド、ディスクロータ、電動キャリパ(電動機構)等に加わる負荷を抑制できる。
【0105】
実施形態によれば、コントロール部9,11は、図3のS8の処理により、第1巻線組5に流れる電流に対する接触位置の変化量(di/dx)が、所定の閾値を超えたときに、図3のS9の処理により、ブレーキパッドの接触位置に関する物理量を更新する。このため、閾値との比較によりブレーキパッドの接触位置に関する物理量を精度よく検出できる。また、この精度のよい物理量を更新することにより、接触位置の検知を高い精度で維持できる。
【0106】
実施形態によれば、コントロール部9,11は、図3のS4の処理により、使用可能な電流に所定の制限がされていなく、かつ、応答性が所定値を超える場合に、第1電流指令(「α>1」とした電流指令id1,iq1)および第2電流指令(「α>1」とした電流指令id2,iq2)を出力する。これにより、ブレーキパッドの接触位置の検知を行うときに、第1電流指令(「α>1」とした電流指令id1,iq1)および第2電流指令(「α>1」とした電流指令id2,iq2)の出力に伴って、電動ブレーキの制動力が低下すること、および、応答性が低下することを抑制できる。
【0107】
実施形態によれば、第1トルクの大きさ(より具体的には、第1トルクを算出するときにトルク指令に乗算されるαの大きさ)は、引き摺りトルクに起因して設定されるクリアランスと接触位置の検知誤差とに基づいて設定される。これにより、必要な精度を確保することができる。即ち、必要とされる範囲で、ロータ4の負荷の変化に応じた電流の変化量を大きくでき(より具体的には、通電量に対する電流誤差の比率を小さくすることができ)、位置検出の精度を確保できる。
【0108】
実施形態によれば、コントロール部9,11は、所定の条件が成立した場合、第1電流指令(「α>1」とした電流指令id1,iq1と同等の電流指令id2,iq2)を第2モータ駆動部10に出力し、第2電流指令(「α>1」とした電流指令id2,iq2と同等の電流指令id1,iq1)を第1モータ駆動部8に出力する。これにより、所定の条件が成立した場合は、ブレーキモータ2のロータ4に加わる負荷の変化に応じた第2巻線組6の電流の変化量を大きくすることが可能になる。このため、例えば、電流の変化に基づいて位置検出を行う場合に、両系統で位置検出の精度の低下を抑制できる。
【0109】
なお、実施形態では、第1コントロール部9(セカンダリ系)と第2コントロール部11(プライマリ系)とを備えた2重系とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、3重系、4重系等、2重系以上の複数系に用いることができる。例えば、3重系の構成でパッドの接触位置の検出を行う場合は、例えば、検知側の電流を残りの2系統で逆側に電流を流して所望のトルクとなるようにしてもよいし、残りの1系統で逆側に電流を流して所望のトルクとなるようにしてもよい。
【0110】
実施形態では、第2コントロール部11が第1コントロール部9を監視する構成、即ち、第2コントロール部11が相電流モニタ回路35により第1モータ駆動部8の相電流を監視する構成とした場合を例に挙げて説明した。換言すれば、実施形態では、監視する側を第2コントロール部11とすると共に監視される側を第1コントロール部9とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、監視する側を第1コントロール部とすると共に監視される側を第2コントロール部としてもよい。
【0111】
いずれの場合も、接触位置の検出を行うときに、検知側を第1系統(第1モータ駆動部8、第1系統コイルとなる第1巻線組5)とし、非検知側を第2系統(第2モータ駆動部10、第2系統コイルとなる第2巻線組6)としてもよいし、検知側を第2系統(第2モータ駆動部10、第2系統コイルとなる第2巻線組6)とし、非検知側を第1系統(第1モータ駆動部8、第1系統コイルとなる第1巻線組5)としてもよい。即ち、検知側の系統と非検知側の系統は、常に同じにしてもよいし、切換えてもよい。
【0112】
実施形態では、第1モータ駆動部8と第2モータ駆動部10とにより駆動される電動モータとして、ブレーキモータ2、即ち、車両に制動力を与える電動ブレーキを制御(駆動)するブレーキモータ2とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、第1モータ駆動部と第2モータ駆動部とにより駆動される電動モータとして、例えば、車両の操舵アクチュエータを制御(駆動)するステアリングモータとしてもよい。この場合には、第1コントロール部と接続する第1モータ駆動部と第2コントロール部と接続する第2モータ駆動部とによりステアリングモータを駆動することができる。即ち、実施形態による接触位置の検出は、6相モータを使用し、機械部材同士の接触点をモータトルクの変曲点として検出が可能な構成に用いることができ、例えば、電動パーキングシステム、ステアリングシステムにも適用可能である。また、車両に搭載される電動機構に限定されず、電動モータで駆動される各種の電動機構に用いることができる。
【0113】
実施形態では、車両のコントローラ(車両コントローラ)として、自動運転制御装置(自動運転ECU)から得られた目標軌跡に対して車両を動かすための車両運動制御を決める統合制御装置33(統合ECU、セントラルECU)を備えた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両のコントローラ(車両コントローラ)としては、例えば、ステアリング制御装置、サスペンション制御装置等、統合制御装置33以外の制御装置、即ち、上位の制御装置でなくてもよい。車両のコントローラ(車両コントローラ)としては、車両に搭載されている各種の制御装置(ECU)に対応する。
【0114】
以上説明した実施形態によれば、コントロール部は、第1モータ駆動部に第1電流指令(要求トルクと同方向で要求トルクよりも大きなトルクとなる第1トルクを発生させる指令)を出力し、第2モータ駆動部に第2電流指令(要求トルクと逆方向で要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクとなる第2トルクを発生させる指令)を出力する。このため、電動モータのロータに加わる負荷の変化に応じた第1系統コイルの電流の変化量を大きくすることが可能になる。即ち、1つのロータに対して2系統のコイルに通電することによってトルクを発生させる構成で、ロータの負荷の変化に応じた第1系統コイルの電流の変化量を大きくすることが可能になる。これにより、例えば、電流の変化に基づいて位置検出を行う場合に、この位置検出の精度の低下を抑制できる。
【0115】
実施形態によれば、コントロール部は、第1電流指令による第1系統コイルの電流変化に基づいて、被接触部材(被制動部材)に対する接触部材(制動部材)の接触位置を検知する。この場合、被接触部材(被制動部材)に対する接触部材(制動部材)の接触に基づく負荷の変化に応じた第1系統コイルの電流の変化量を大きくできるため、接触位置の検出精度の低下を抑制できる。
【0116】
実施形態によれば、要求トルクと第1トルクとの差に基づくトルクは、要求トルクの大きさと第1トルクの大きさとの差である。このため、コントロール部は、第1モータ駆動部に第1電流指令を出力し、第2モータ駆動部に第2電流指令を出力することにより、ロータの負荷の変化に応じた第1系統コイルの電流の変化量を大きくしつつ、電動モータで要求トルクを発生させることができる。
【0117】
実施形態によれば、コントロール部は、第1系統コイルに流れる電流に対する接触位置の変化量が、所定の閾値を超えたときに、制動部材の接触位置に関する物理量を更新する。このため、閾値との比較により制動部材の接触位置に関する物理量を精度よく検出できる。また、この精度のよい物理量を更新することにより、接触位置の検知を高い精度で維持できる。
【0118】
実施形態によれば、コントロール部は、電動ブレーキに使用可能な電流に所定の制限がされておらず、かつ電動ブレーキの応答性が所定値を超える場合に、第1電流指令及び第2電流指令を出力する。これにより、制動部材の接触位置の検知を行うときに、第1電流指令及び第2電流指令の出力に伴って、電動ブレーキの制動力が低下すること、および、応答性が低下することを抑制できる。
【0119】
実施形態によれば、第1トルクの大きさは、引き摺りトルクに起因したクリアランスと接触位置の検知誤差とに基づいて設定される。これにより、必要な精度を確保することができる。即ち、必要とされる範囲で、ロータの負荷の変化に応じた電流の変化量を大きくでき(より具体的には、通電量に対する電流誤差の比率を小さくすることができ)、位置検出の精度を確保できる。
【0120】
実施形態によれば、コントロール部は、所定の条件が成立した場合、第1電流指令を第2モータ駆動部に出力し、第2電流指令を第1モータ駆動部に出力する。これにより、所定の条件が成立した場合は、電動モータのロータに加わる負荷の変化に応じた第2系統コイルの電流の変化量を大きくすることが可能になる。このため、例えば、電流の変化に基づいて位置検出を行う場合に、両系統で位置検出の精度の低下を抑制できる。
【0121】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0122】
本願は、2021年6月8日付出願の日本国特許出願第2021-095801号に基づく優先権を主張する。2021年6月8日付出願の日本国特許出願第2021-095801号の明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。
【符号の説明】
【0123】
2:ブレーキモータ(電動モータ)、5:第1巻線組(第1系統コイル)、6:第2巻線組(第2系統コイル)、7:モータ制御装置(制御装置)、8:第1モータ駆動部、9:第1コントロール部(コントロール部)、10:第2モータ駆動部、11:第2コントロール部(コントロール部)
図1
図2
図3
図4