(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】共面導波伝送線及びその設計方法
(51)【国際特許分類】
H01P 3/00 20060101AFI20241031BHJP
H01P 1/04 20060101ALI20241031BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01P3/00 100
H01P3/00 101
H01P1/04
H01P5/08 C
(21)【出願番号】P 2023536505
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2022084437
(87)【国際公開番号】W WO2023123719
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111682905.8
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521079271
【氏名又は名称】深▲せん▼▲飛▼▲驤▼科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲書▼▲倫▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 嘉▲帥▼
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-158856(JP,A)
【文献】特開2007-123950(JP,A)
【文献】特開2012-015310(JP,A)
【文献】特開2004-120659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0108965(US,A1)
【文献】中国実用新案第211578935(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00
H01P 1/04
H01P 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共面導波伝送線であって、第1誘電体基板、RF信号を伝送するための中心導体ストリップ及び前記中心導体ストリップの対向する両側に間隔をあけて設置された2本の接地導体ストリップを含み、前記第1誘電体基板は対向して設置された第1表面及び第2表面を有し、前記中心導体ストリップ及び前記接地導体ストリップはいずれも前記第1表面に積層して固定され、前記中心導体ストリップは、外部SMAコネクターに接続するための第1セグメントと、前記第1セグメントの前記SMAコネクターから離れた端から延伸し外部チップに接続するための第2セグメントとを含み、前記第1セグメントの前記第2セグメントへの延伸方向に直交する方向の距離を幅とし、前記第1セグメントの幅は前記第2セグメントの幅よりも大きく、それにより前記第1セグメントと前記第2セグメントは階段構造になり、インピーダンス整合を実現
する、前記共面導波伝送線において、
前記第1表面には前記第2表面に向かって凹んで形成された矩形の凹溝が設けられ、前記中心導体ストリップの一部は前記凹溝の前記第2表面から離れた側に積層して固定され、それにより前記凹溝は欠陥接地構造に形成され、RF信号の予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現することを特徴とする共面導波伝送線。
【請求項2】
前記第1セグメントは前記凹溝の前記第2表面から離れた側に積層して固定されることを特徴とする請求項1に記載の共面導波伝送線。
【請求項3】
前記凹溝の幅は前記第1セグメントの幅よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の共面導波伝送線。
【請求項4】
前記第1セグメントから前記第2セグメントへの延伸方向の距離を長さとし、前記凹溝の長さが前記第1セグメントの長さと同じであることを特徴とする請求項3に記載の共面導波伝送線。
【請求項5】
前記第2表面に積層して固定される金属接地層と、前記第1誘電体基板を貫通する複数の第1金属化貫通孔とをさらに含み、前記第1金属化貫通孔はそれぞれ前記接地導体ストリップ及び前記金属接地層に接続されることを特徴とする請求項1に記載の共面導波伝送線。
【請求項6】
複数の前記第1金属化貫通孔は前記中心導体ストリップの対向する両側に間隔をあけて設置されることを特徴とする請求項5に記載の共面導波伝送線。
【請求項7】
複数の前記第1金属化貫通孔は等ピッチで配列されることを特徴とする請求項6に記載の共面導波伝送線。
【請求項8】
前記金属接地層の前記第1誘電体基板から離れた側に積層して設けられ
る第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板を貫通して前記金属接地層に接続される第2金属化貫通孔とをさらに含み、前記第2金属化貫通孔は前記SMAコネクターのパッドにおける接地ピンに電気的に接続することに用いられることを特徴とする請求項5に記載の共面導波伝送線。
【請求項9】
前記第2金属化貫通孔は2つあり、各前記第2金属化貫通孔は対応する1つの前記第1金属化貫通孔に正対して設置されることを特徴とする請求項
8に記載の共面導波伝送線。
【請求項10】
共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法であって、該方法は請求項1~9のいずれか1項に記載の共面導波伝送線に基づき、前記共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は、
前記第1表面に前記凹溝を設置し、前記凹溝と前記中心導体ストリップの相対位置を調整するステップS1と、
前記凹溝の幅及び長さを調整し、RF信号の前記予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現するステップS2とを含む共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送線の技術分野に関し、特に共面導波伝送線及び共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WIFI 6(IEEE802.11ax)技術がますます広く応用されていることに伴い、WIFI 6の2.4GHz及び5GHz2つの帯域での伝送線の要件が高くなっており、伝送線は2つの帯域のインピーダンス整合(impedance matching)を実現するために重要な特性指標となっている。インピーダンス整合は主に高周波伝送線に用いられ、これにより、すべての高周波のマイクロ波信号がいずれも負荷点に伝達できる目的を達成し、且つ信号が起点に返送されることがほとんどなく、エネルギー効率を向上させる。伝送線のインピーダンス整合の方法は常に1/4波長インピーダンス変換器による整合があり、階段形、三角形又は台形インピーダンス変換器、スタブアップロードによる整合(単一スタブアップロード及び二重スタブアップロードを含む)を用いてもよい。
【0003】
関連技術では、WIFI 6チップテストのテストボート(Evaluation Board、略称するEVB)での伝送線は一般的に共面導波(coplanar waveguide、CPWと略称される)伝送線構造を用いる。テストボートにおいて、伝送線の一端がSMAコネクターに接続され、伝送線の他端がwifi6チップに接続される。
図1~2を同時に参照し、
図1は関連技術の共面導波伝送線の構造模式図であり、
図2は
図1のA部分の立体構造模式図である。具体的には、共面導波伝送線は、誘電体基板A1、RF信号を伝送するための中心導体ストリップA2及び前記中心導体ストリップの対向する両側に間隔をあけて設置された2本の接地導体ストリップA3を含み、前記誘電体基板A1は対向して設置された第1表面及び第2表面を有し、前記中心導体ストリップA2及び前記接地導体ストリップA3はいずれも前記第1表面に積層して固定され、前記中心導体ストリップは、外部SMAコネクターに接続するための第1セグメントA21と、前記第1セグメントA21の前記SMAコネクターから離れた端から延伸しwifi6チップに接続するための第2セグメントA22とを含み、前記第1セグメントA21の前記第2セグメントA22への延伸方向に直交する方向の距離を幅とし、前記第1セグメントA21の幅が前記第2セグメントA22の幅よりも大きく、階段構造が形成されてインピーダンス整合を実現する。
【0004】
しかしながら、関連技術の共面導波伝送線のインピーダンス整合の実現方法は階段構造であり、wifi6帯域範囲内に、関連技術の共面導波伝送線の反射係数のS11の値が2.4GHz~2.5GHz及び5GHz~6GHz2つの帯域において約15dB及び10dBであり、wifi6チップテストにおけるEVBの要件を満たさず、また、実物の加工の誤差及び実際の電磁損耗により、実際のテスト特性がさらに悪くなり、これはwifi6チップのテスト特性に大きな影響を及ぼす。
【0005】
従って、上記問題を解決するために、新たな伝送線及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の従来技術の欠陥に対して、本発明はインピーダンス整合が良好で、伝送指標が良好な共面導波伝送線及び共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、第1態様によれば、本発明の実施例は共面導波伝送線を提供し、第1誘電体基板、RF信号を伝送するための中心導体ストリップ及び前記中心導体ストリップの対向する両側に間隔をあけて設置された2本の接地導体ストリップを含み、前記第1誘電体基板は対向して設置された第1表面及び第2表面を有し、前記中心導体ストリップ及び前記接地導体ストリップはいずれも前記第1表面に積層して固定され、前記中心導体ストリップは、外部SMAコネクターに接続するための第1セグメントと、前記第1セグメントの前記SMAコネクターから離れた端から延伸し外部チップに接続するための第2セグメントとを含み、前記第1セグメントの前記第2セグメントへの延伸方向に直交する方向の距離を幅とし、前記第1セグメントの幅は前記第2セグメントの幅よりも大きく、それにより前記第1セグメントと前記第2セグメントは階段構造になり、インピーダンス整合を実現し、前記第1表面には前記第2表面に向かって凹んで形成された矩形の凹溝が設けられ、前記中心導体ストリップの一部は前記凹溝の前記第2表面から離れた側に積層して固定され、それにより前記凹溝は欠陥接地構造に形成され、RF信号の予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現する。
【0008】
好ましくは、前記第1セグメントは前記凹溝の前記第2表面から離れた側に積層して固定される。
【0009】
好ましくは、前記凹溝の幅は前記第1セグメントの幅よりも大きい。
【0010】
好ましくは、前記第1セグメントから前記第2セグメントへの延伸方向の距離を長さとし、前記凹溝の長さが前記第1セグメントの長さと同じである。
【0011】
好ましくは、前記共面導波伝送線は、前記第2表面に積層して固定される金属接地層と、前記第1誘電体基板を貫通する複数の第1金属化貫通孔とをさらに含み、前記第1金属化貫通孔はそれぞれ前記接地導体ストリップ及び前記金属接地層に接続される。
【0012】
好ましくは、複数の前記第1金属化貫通孔は前記中心導体ストリップの対向する両側に間隔をあけて設置される。
【0013】
好ましくは、複数の前記第1金属化貫通孔は等ピッチで配列される。
【0014】
好ましくは、前記共面導波伝送線は、前記金属接地層の前記第1誘電体基板から離れた側に積層して設けられる前記第2誘電体基板と、前記第2誘電体基板を貫通して前記金属接地層に接続される第2金属化貫通孔とをさらに含み、前記第2金属化貫通孔は前記SMAコネクターのパッドにおける接地ピンに電気的に接続することに用いられる。
【0015】
好ましくは、前記第2金属化貫通孔は2つあり、各前記第2金属化貫通孔は対応する1つの前記第1金属化貫通孔に正対して設置される。
【0016】
第2態様によれば、本発明の実施例は共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法を提供し、該方法は本発明の実施例に係る上記共面導波伝送線に基づき、前記共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は、
前記第1表面に前記凹溝を設置し、前記凹溝と前記中心導体ストリップの相対位置を調整するステップS1と、
前記凹溝の幅及び長さを調整し、RF信号の前記予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現するステップS2とを含む。
【発明の効果】
【0017】
関連技術に比べて、本発明の共面導波伝送線及び共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は、第1誘電体基板の第1表面に矩形の凹溝を設置し、且つ前記中心導体ストリップの一部を前記凹溝に積層して固定することにより、前記凹溝は欠陥接地構造に形成され、RF信号のwifi6帯域内のインピーダンス整合を実現する。具体的には、前記凹溝の幅及び長さを調整することにより、RF信号の前記予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現する。より好ましくは、第2誘電体基板及び第2金属化貫通孔を設置し、第2金属化貫通孔を外部のSMAコネクターのパッドにおける接地ピンに電気的に接続することにより、EVBボードとSMAコネクターとの接触度を効果的に向上させ、それによりEVBボードのテスト特性、特にwifi6チップの5GHz~6GHz帯域の高周波部分のテストの伝送指標を向上させる。
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。以下の図面を参照しつつ詳細に説明することにより、本発明の上記または他の態様の内容がより明確で理解しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】関連技術の共面導波伝送線の構造模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係る共面導波伝送線の構造模式図である。
【
図6】関連技術の共面導波伝送線の反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【
図7】本発明の共面導波伝送線の反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【
図8】本発明の実施例に係る共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0021】
本明細書に記載された具体的な実施形態/実施例は、本発明の構想を説明するための本発明の特定の具体的な実施形態であり、いずれも説明的かつ例示的であり、本発明の実施形態及び本発明の範囲を制限しないものと解釈すべきである。本明細書に記載された実施例以外、当業者であれば、本願の特許請求の範囲及び明細書に開示された内容に基づいて明らかな他の技術的解決手段を採用することができ、これらの技術的解決手段は本明細書に記載された実施例に対していかなる明らかな置換及び修正を行う技術的解決手段を採用することを含み、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0022】
本発明の実施例は共面導波伝送線100を提供する。
【0023】
図3~5を同時に参照し、
図3は本発明の実施例に係る共面導波伝送線の構造模式図であり、
図4は
図3のB部分の拡大模式図であり、
図5は
図3のB部分の立体構造模式図である。
【0024】
前記共面導波伝送線100は、第1誘電体基板1、第2誘電体基板2、中心導体ストリップ3、接地導体ストリップ4、金属接地層5、第1金属化貫通孔6及び第2金属化貫通孔7を含む。
【0025】
前記第1誘電体基板1は対向して設置された第1表面11及び第2表面(図示せず)を有する。
【0026】
前記第2誘電体基板2は前記第1誘電体基板1の第2表面側に積層して設けられる。具体的には、前記第2誘電体基板2は前記金属接地層5の前記第1誘電体基板1から離れた側に積層して設けられる。前記第2誘電体基板2の厚さが前記第1誘電体基板1の厚さよりも大きい。
【0027】
前記中心導体ストリップ3はRF信号を伝送することに用いられる。前記中心導体ストリップ3は前記第1表面11に積層して固定される。
【0028】
具体的には、前記中心導体ストリップ3は、外部SMAコネクターに接続するための第1セグメント31と、前記第1セグメント31の前記SMAコネクターから離れた端から延伸し外部チップに接続するための第2セグメント32とを含む。
【0029】
前記接地導体ストリップ4は前記第1表面11に積層して固定される。前記接地導体ストリップ4は2つあり、前記中心導体ストリップ3の対向する両側に間隔をあけて設置される。
【0030】
前記第1セグメント31の前記第2セグメント32への延伸方向に直交する方向の距離を幅とする。前記第1セグメント31の幅がW1である。前記第2セグメント32の幅がW2である。前記第1セグメント31の幅W1が前記第2セグメント32の幅W2よりも大きく、それにより前記第1セグメント31と前記第2セグメント32は階段構造になり、インピーダンス整合を実現する。
【0031】
RF信号のwifi6帯域内のインピーダンス整合をより良好に実現するために、前記共面導波伝送線100は凹溝10により実現される。具体的には、前記第1表面11には前記第2表面に向かって凹んで形成された矩形の凹溝10が設けられる。前記中心導体ストリップ3の一部は前記凹溝10の前記第2表面から離れた側に積層して固定され、前記第1セグメント31は前記凹溝10の前記第2表面から離れた側に積層して固定される。それにより前記凹溝10は欠陥接地構造に形成され、RF信号の予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現する。予め設定された帯域はwifi6帯域である。具体的には、wifi6帯域は1GHz~7GHzの範囲である。
【0032】
本実施形態では、前記凹溝10の幅をS2とする。前記凹溝10の幅S2は前記第1セグメント31の幅W1よりも大きい。つまり、前記第1表面11から前記第2表面への方向における前記第1セグメント31の正投影は完全に前記凹溝10内にある。より好ましくは、前記第1セグメント31が前記凹溝10の中央に位置する。
【0033】
前記第1セグメント31から前記第2セグメント32への延伸方向の距離を長さとする。前記凹溝10の長さがL1である。前記凹溝10の長さが前記第1セグメント31の長さと同じである。もちろん、これに限定されず、前記凹溝10の長さL1を調整することで、インピーダンス整合に有利である。
【0034】
前記金属接地層5は前記第2表面に積層して固定される。前記金属接地層5は接地することに用いられる。
【0035】
前記第1金属化貫通孔6は前記第1誘電体基板1を貫通する。前記第1金属化貫通孔6はそれぞれ前記接地導体ストリップ4及び前記金属接地層5に接続される。
【0036】
前記第1金属化貫通孔6は複数ある。本実施形態では、複数の前記第1金属化貫通孔6は前記中心導体ストリップ3の対向する両側に間隔をあけて設置される。該構造は前記中心導体ストリップ3がRF信号を伝送して信号干渉を防止することに有利である。
【0037】
より好ましくは、複数の前記第1金属化貫通孔6は等ピッチで配列される。該構造により、前記接地導体ストリップ4及び前記金属接地層5の接地効果が良好になり、電圧差が防止され、それにより前記中心導体ストリップ3がRF信号を伝送して信号干渉を防止することに有利である。
【0038】
前記第2金属化貫通孔7は前記SMAコネクターのパッドにおける接地ピンに電気的に接続することに用いられる。前記第2金属化貫通孔7は前記第2誘電体基板2を貫通して前記金属接地層5に接続される。
【0039】
具体的には、前記第2金属化貫通孔7は2つある。各前記第2金属化貫通孔7は対応する1つの前記第1金属化貫通孔6に正対して設置される。前記第2金属化貫通孔7は前記金属接地層5を通じて前記第1金属化貫通孔6に接続され、すなわち前記SMAコネクターのパッドにおける接地ピンは順に第2金属化貫通孔7、前記金属接地層5、前記第1金属化貫通孔6を通じて前記接地導体ストリップ4に接続され、該構造はEVBボードとSMAコネクターとの接触度を効果的に向上させ、それによりEVBボードのテスト特性、特にwifi6チップの5GHz~6GHz帯域の高周波部分のテストの伝送指標を向上させる。
【0040】
共面導波伝送線100のインピーダンス整合が良好で伝送指標が良好である特性を有することを検証するために、関連技術の共面導波伝送線と本発明の共面導波伝送線100の反射係数の振幅と周波数の関係曲線を比較して、以下のとおりである。
【0041】
図1~2に示される関連技術の共面導波伝送線構造を参照し、誘電体基板A1は、誘電率ε=4.4で高さが6.6milであるD_FR4誘電体材料を用い、前記第1セグメントA21の幅は13.77milであり、前記第1セグメントA21と接地導体ストリップA3との隙間S1=19milである。前記第1セグメントA21はチップのパッドに接続される伝送線であり、従って、前記第1セグメントA21は細い高インピーダンス線であり、50オームから高インピーダンスのインピーダンス整合を実現するために、関連技術の共面導波伝送線の整合方法は階段構造を用いる。
【0042】
図6を参照し、
図6は関連技術の共面導波伝送線の反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【0043】
B1は、CPWによりシミュレートされた反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
B2は、凹溝10の長さL1=104mil、凹溝10の幅をS2=34milに変更した場合の反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
B3は、凹溝10の長さL1=104mil、凹溝10の幅をS2=38milに変更した場合の反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
B4は、凹溝10の長さL1=114mil、凹溝10の幅をS2=34milに変更した場合の反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【0044】
B1~B4の曲線比較から分かるように、該反射係数の振幅と周波数の関係曲線は2.4GHz~2.5GHz及び5GHz~6GHz2つの帯域において反射係数S11の値が約15dB及び10dBであり、チップテストEVBの要件を満たさず、実物の加工の誤差及び実際の電磁損耗により、実際のテスト特性がさらに悪くなり、これはチップのテスト特性に大きな影響を及ぼす。
【0045】
本発明の共面導波伝送線100において、第1誘電体基板1の厚さh1=6.6milであり、第2誘電体基板2の厚さh2=40.5milであり、第1セグメント31と接地導体ストリップ4との隙間S1=19milであり、第2セグメント32と接地導体ストリップ4との隙間S3=20milであり、第1セグメント31の幅W1=13.77milであり、凹溝10の幅S2=34milであり、凹溝10の長さL1=114milであり、第2金属化貫通孔7は正方形であり、第2金属化貫通孔7の幅L2=16milである。
【0046】
図7を参照し、
図7は本発明の共面導波伝送線の反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【0047】
C1は、EVBボードによるテストデータの反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
C2は、CPWによりシミュレートされた反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
C3は、凹溝10の長さL1=114mil、凹溝10の幅をS2=34milに変更し、第2金属化貫通孔7の構造を改定した場合のテストデータの反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
C4は、凹溝10の長さL1=114mil、凹溝10の幅をS2=34milに変更した場合の反射係数の振幅と周波数の関係曲線であり、
C5は、凹溝10の長さL1=114mil、凹溝10の幅をS2=34milに変更した場合のテストデータの反射係数の振幅と周波数の関係曲線である。
【0048】
C1~C5の曲線比較により
図4から分かるように、
凹溝10の長さL1=104milが変化しないように維持する場合には、凹溝10の幅S2を変更すると、幅が大きいほど反射係数の振幅(すなわちS11の値)が良好になる。凹溝10の幅S2が変化しないように維持する場合には、凹溝10の長さL1が短いほど特性が悪くなる。
【0049】
凹溝10の大きさを合理的に調節することにより2.4GHz及び5GHz帯域のインピーダンス整合を実現することができ、S11の値は基本的に-25dB以下に維持され、ひいては約-30dBに達し、チップのEVBテストの環境要件を完全に満たす。
【0050】
また、測定データから分かるように、第2金属化貫通孔7構造を設置すると、低周波部分での特性は基本的に変化しないが、高周波部分で特性は一定程度で向上し、特にwifi6チップの5GHz~6GHz帯域のテスト効果が著しく、共面導波伝送線100の伝送特性が良好である。
【0051】
本発明は共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法をさらに提供する。
【0052】
前記共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は前記共面導波伝送線100に基づくものである。
【0053】
図8を参照し、
図8は本発明の実施例に係る共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法のフローチャートである。前記共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は、
前記第1表面11に前記凹溝10を設置し、前記凹溝10と前記中心導体ストリップ3の相対位置を調整するステップS1と、
前記凹溝10の幅及び長さを調整し、RF信号の前記予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現するステップS2とを含む。
【0054】
関連技術に比べて、本発明の共面導波伝送線及び共面導波伝送線のインピーダンス整合の設計方法は、第1誘電体基板の第1表面に矩形の凹溝を設置し、前記中心導体ストリップの一部を前記凹溝に積層して固定することにより、前記凹溝は欠陥接地構造に形成され、RF信号の予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現する。具体的には、前記凹溝の幅及び長さを調整することにより、RF信号の前記予め設定された帯域内のインピーダンス整合を実現する。より好ましくは、第2誘電体基板及び第2金属化貫通孔を設置し、第2金属化貫通孔を外部のSMAコネクターのパッドにおける接地ピンに電気的に接続することにより、EVBボードとSMAコネクターとの接触度を効果的に向上させ、それによりEVBボードのテスト特性、特にwifi6チップの5GHz~6GHz帯域の高周波部分のテストの伝送指標を向上させる。
【0055】
なお、以上、図面を参照して説明される各実施例は本発明の範囲を単に説明するために用いられ、本発明の範囲を限定するものではなく、当業者が理解できるように、本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに本発明に対して行われた変更や同等置換はすべて本発明の範囲に含まれるべきである。また、文脈が別段の指示をしない限り、単数形で出現する単語は複数形を含み、逆も同様である。また、特に断らない限り、いずれかの実施例の全部又は一部はいずれかの他の実施例の全部又は一部と組み合わせて使用することができる。