(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子打楽器およびフレームの接続方法
(51)【国際特許分類】
G10D 13/10 20200101AFI20241031BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G10D13/10 160
G10H1/00 A
(21)【出願番号】P 2023548797
(86)(22)【出願日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2023022109
(87)【国際公開番号】W WO2023248898
(87)【国際公開日】2023-12-28
【審査請求日】2023-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2022100870
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】野々村 怜
(72)【発明者】
【氏名】谷田 涼
(72)【発明者】
【氏名】内海 圭太
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169628(JP,A)
【文献】実開昭60-166000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/10
G10H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面において、打撃を受ける打面と、打撃を受けることを想定しない非打撃面と、を有する電子打楽器であって、
前記打面への打撃の振動を検出するセンサと、
前記打面の骨格を形成する第1フレームと、
前記第1フレームに固定される弾性体と、
前記弾性体を介して前記第1フレームに接続され、センサが取り付けられていない第2フレームと、を備え、
前記第2フレームの上面によって前記非打撃面が形成されることを特徴とする電子打楽器。
【請求項2】
一端側が前記第1フレームに固定されることによって前記第1フレームに片持ち状態で支持される複数の前記弾性体を備え、
前記第2フレームは、前記複数の弾性体の他端側に固定されることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【請求項3】
前記第1フレームは、ロッドを挿入するための挿入孔を備え、
前記複数の弾性体の各々は、前記挿入孔を中心にした放射状に延びていることを特徴とする請求項2記載の電子打楽器。
【請求項4】
前記第1フレームの上面側にボルトによって固定される前記弾性体と、前記ボルト及び前記第2フレームの接触を規制する接触規制手段と、を備えることを特徴とする請求項2記載の電子打楽器。
【請求項5】
前記接触規制手段は、前記弾性体から前記第2フレーム側に立ち上がり、前記ボルトを取り囲む複数の突起であることを特徴とする請求項4記載の電子打楽器。
【請求項6】
前記突起は、前記ボルトとは反対側の外周面に形成され、前記ボルトの軸回りの方向に延びる凹溝を備えることを特徴とする請求項5記載の電子打楽器。
【請求項7】
前記弾性体は、その一端側に形成される嵌合穴を備え、
前記第1フレームは、前記嵌合穴に挿入され、前記弾性体の固定位置を定めるための固定突起と、その固定突起に対する前記弾性体の回転を規制する回転規制手段と、を備えることを特徴とする請求項2記載の電子打楽器。
【請求項8】
前記第1フレームの上面から立ち上がる壁状の前記回転規制手段と、前記弾性体の外周面との接触により、前記固定突起に対する前記弾性体の回転が規制されることを特徴とする請求項7記載の電子打楽器。
【請求項9】
前記打面と前記第1フレームとが一体化されて形成されることを特徴とする請求項1記載の電子打楽器。
【請求項10】
上面において、打撃を受ける打面と、打撃を受けることを想定しない非打撃面とを有する電子打楽器
におけるフレームの接続方法であって、
前記打面への打撃の振動を検出するセンサと、
前記打面の骨格を形成する第1フレームと、
前記第1フレームに固定される弾性体と、
上面が前記非打撃面として構成され、センサが取り付けられていない第2フレームと、を備える前記電子打楽器
の前記第2フレームを、前記弾性体を介して前記第1フレームに接続することを特徴とする
フレームの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子打楽器およびフレームの接続方法に関し、特に、打面への打撃時に生じるノイズを低減できる電子打楽器およびフレームの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、支持体10に支持される被打撃部22(第1フレーム)と、その被打撃部22と共に電子打楽器の円形の輪郭を形成するフレーム44(第2フレーム)と、を備える電子打楽器が記載されている。被打撃部22の上面は打撃を受ける打面22aであり、被打撃部22の裏面のケース23に取り付けられたピエゾセンサ24によって打面22aへの打撃時の振動が検出される。
【0003】
一方、フレーム44にはセンサが取り付けられておらず、フレーム44の上面は、打撃を受けることが想定されていない非打撃面である。つまり、フレーム44は、被打撃部22と共に電子打楽器の円盤形状(上面や輪郭の形状)を形成することによって外観を向上させるためのフレームである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-026726号公報(例えば、段落0021,0022,0039,0040、
図1~3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、被打撃部22(第1フレーム)への打撃時の振動がフレーム44(第2フレーム)に伝達されると、フレーム44自体の振動などによってノイズが生じ易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、打面への打撃時に生じるノイズを低減できる電子打楽器およびフレームの接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の電子打楽器は、上面において、打撃を受ける打面と、打撃を受けることを想定しない非打撃面と、を有する電子打楽器であって、前記打面への打撃の振動を検出するセンサと、前記打面の骨格を形成する第1フレームと、前記第1フレームに固定される弾性体と、前記弾性体を介して前記第1フレームに接続され、センサが取り付けられていない第2フレームと、を備え、前記第2フレームの上面によって前記非打撃面が形成される。
【0008】
本発明のフレームの接続方法は、上面において、打撃を受ける打面と、打撃を受けることを想定しない非打撃面とを有する電子打楽器におけるフレームの接続方法であって、前記打面への打撃の振動を検出するセンサと、前記打面の骨格を形成する第1フレームと、前記第1フレームに固定される弾性体と、上面が前記非打撃面として構成され、センサが取り付けられていない第2フレームと、を備える前記電子打楽器の前記第2フレームを、前記弾性体を介して前記第1フレームに接続する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における電子打楽器の分解斜視図である。
【
図3】(a)は、第1の変形例を示すリムの断面図であり、(b)は、第2の変形例を示すリムの断面図であり、(c)は、第3の変形例を示すリムの断面図であり、(d)は、第4の変形例を示すリムの断面図であり、(e)は、第5の変形例を示すリムの断面図であり、(f)は、第6の変形例を示すリムの断面図である。
【
図4】(a)は、第7の変形例を示すリムの断面図であり、(b)は、第8の変形例を示すリムの断面図であり、(c)は、第9の変形例を示すリムの断面図であり、(d)は、第10の変形例を示すリムの断面図であり、(e)は、第11の変形例を示すリムの断面図であり、(f)は、第12の変形例を示すリムの断面図である。
【
図5】第2実施形態における電子打楽器の分解斜視図である。
【
図8】電子打楽器、ロッド、及び支持具の分解斜視図である。
【
図9】(a)は、
図7のIXa-IXa線におけるケースの部分拡大断面図であり、(b)は、
図9(a)の矢印IXb方向視におけるケースの部分拡大下面図である。
【
図10】第3実施形態における電子打楽器の分解斜視図である。
【
図12】
図11のXII-XII線における電子打楽器の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態の電子打楽器100について説明する。
図1は、第1実施形態における電子打楽器100の分解斜視図であり、
図2は、電子打楽器100の部分拡大断面図である。なお、
図2では、円盤状のヘッド1の中心軸に沿う平面で切断した断面を図示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、電子打楽器100は、アコースティックのドラムを模す打楽器である。電子打楽器100は、上面が打面となる膜状のヘッド1を備える。ヘッド1は、合成繊維を編み上げたメッシュ用いて円盤状に形成され、ヘッド1の外縁には円環状のヘッド枠10が固定される。
【0012】
ヘッド枠10は、樹脂材料を用いて形成されており、ヘッド1とヘッド枠10とが金型成形によって一体的に成形される。なお、ヘッド枠10を樹脂以外の材料(例えば、金属や木材)を用いて形成し、接着などによってヘッド1にヘッド枠10を接合しても良い。
【0013】
ヘッド枠10は、電子打楽器100の胴部2に固定される。胴部2は、後述する弾性体3を支持するための円盤状の支持部20を備え、支持部20の外縁からは、ヘッド1を支持するための支持壁21が上方に突出している。支持壁21の下部からは、ヘッド枠10を固定するための底壁22が外周側に延びており、底壁22の外縁からは、外周壁23が上方に突出している。これらの各壁21,22,23は周方向に連続しており、各壁21,22,23によって取り囲まれる空間にヘッド枠10が収容される。
【0014】
なお、本実施形態では、支持部20と各壁21,22,23とが樹脂材料を用いて一体に形成されているが、例えば、各壁21,22,23と別体に形成された支持部20を支持壁21の内周面に固定する構成でも良い。
【0015】
底壁22には、周方向等間隔に並ぶ複数(本実施形態では、6個)のめねじ穴24が形成され、ヘッド枠10には、めねじ穴24と対応する位置に複数の挿入孔11が形成される。支持壁21にヘッド1を載置した状態で、ヘッド枠10の挿入孔11に挿入したボルトB1(
図2参照)をめねじ穴24にねじ込むことにより、ヘッド枠10が下方に引っ張られ、ヘッド1に張力が付与される。なお、以下の説明においては、ヘッド1に張力が付与された状態であって、ヘッド1が打撃される前の状態を単に「打撃前の状態」と記載して説明する。
【0016】
打撃前の状態では、胴部2の支持部20に支持される弾性体3がヘッド1に接触する。弾性体3は、所定の柔軟性を有する弾性体(ゴム、エラストマー、又はそれらの発泡材料など)を用いて形成されるので、演奏者がスティック等によってヘッド1を打撃した際(以下「ヘッド1への打撃時」という)には、その打撃によるヘッド1の振動(打撃による衝撃)が弾性体3によって吸収される。これにより、ヘッド1への打撃時の打音を低減できる。
【0017】
弾性体3は、その中央に配置される多角形(本実施形態では、6角形)状の中央弾性体30と、その中央弾性体30の周囲を取り囲む複数(本実施形態では、3個)の周辺弾性体31と、から構成される。弾性体3を中央弾性体30及び周辺弾性体31に分割することにより、それらの各弾性体30,31を成形するための金型を小型化できる。
【0018】
中央弾性体30の周囲に複数の周辺弾性体31が配置された状態においては、弾性体3が全体として円盤状に形成される。この円盤状の弾性体3の直径は、支持壁21の内径と同一またはそれよりも僅かに小さく形成されている。
【0019】
弾性体3を支持する支持部20には、センサ支持部材4(
図2参照)が固定される。センサ支持部材4は、ヘッドセンサS1が取り付けられる円盤状のセンサ支持部40と、そのセンサ支持部40の外縁から上方に突出する壁部41と、を備えた椀状に形成される。壁部41の上面には、その周方向に並ぶ複数のめねじ穴(図示せず)が形成され、胴部2の支持部20には、壁部41のめねじ穴と上下で対面する複数の挿入孔25(
図1参照)が形成される。挿入孔25に挿入されたボルト(図示せず)を壁部41のめねじ穴にねじ込むことにより、支持部20の下面にセンサ支持部材4が固定される。
【0020】
ヘッドセンサS1は、円盤状の圧電素子であり、クッション性を有する両面テープによってセンサ支持部40の上面に接着される。ヘッド1への打撃時の振動は、弾性体3、胴部2の支持部20、及びセンサ支持部材4を介してヘッドセンサS1に伝達される。
【0021】
弾性体3(中央弾性体30及び周辺弾性体31)には、弾性体3の上面および下面を上下に繋ぐ複数の貫通孔32が形成されているので、そのような貫通孔32が形成されていない場合に比べ、ヘッド1への打撃時に弾性体3の振動によって生じる音を効果的に低減できる。一方、貫通孔32が形成されていない領域では、ヘッド1への打撃時の振動が弾性体3自体を介して支持部20に伝達される。これにより、ヘッド1への打撃時の振動を支持部20を介してヘッドセンサS1に伝達できる。よって、ヘッド1への打撃時の打音を低減させつつ、ヘッド1への打撃を精度良く検出できる。
【0022】
なお、本実施形態では、ハニカム状(断面六角形)の貫通孔32が上下に直線状に延びており、貫通孔32の断面積(内径)が上端から下端にかけて一定になっているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通孔32は、弾性体3の厚み方向(上下方向)に対して傾斜する直線状であっても良いし、貫通孔32がその上端から下端にかけて直線や曲線を組み合わせた形状(例えば、螺旋状や蛇行する形状など)に形成されていても良い。また、貫通孔32の断面形状は円形や他の多角形状であっても良いし、貫通孔32の上端から下端にかけての一部または全部の領域において、貫通孔32の断面積(内径)が変化する構成でも良い。
【0023】
ヘッド1への打撃時に支持部20に伝達される振動は、貫通孔32を介して伝播されるものだけではなく、弾性体3自体(貫通孔32が形成されていない部位)を伝わる振動も存在する。よって、例えば、弾性体3が硬ければ、ヘッド1への打撃時の振動が弾性体3を介して支持部20に伝達され易くなるが、弾性体3を硬くし過ぎると、ヘッド1への打撃時の振動が吸収され難くなる。また、弾性体3を柔らかければ、ヘッド1への打撃時の振動が弾性体3で吸収され易くなるが、弾性体3を柔らかくし過ぎると、ヘッド1への打撃時の振動が支持部20に伝達され易くなる。
【0024】
よって、弾性体3をゴムやエラストマーなどの弾性材料(発泡材料ではないソリッドのもの)から形成する場合には、JIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプAの硬度計で測定した硬度が10以上50以下を示す弾性材料を用いることが好ましい。
【0025】
また、弾性体3をゴムや合成樹脂などの発泡材料(スポンジ)から形成する場合には、JIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプEの硬度計で測定した硬度が20以上75以下を示す発泡材料を用いることが好ましい。
【0026】
これらの硬度を示す弾性材料または発泡材料を用いて弾性体3を形成することにより、ヘッド1への打撃時の振動を弾性体3で適度に吸収しつつ、ヘッド1への打撃時の振動を弾性体3を介して支持部20(ヘッドセンサS1)に適度に伝達できる。よって、ヘッド1への打撃時の打音を低減させつつ、ヘッド1への打撃を精度良く検出できる。
【0027】
ここで、ヘッド1は、合成樹脂製のフィルムを用いて形成しても良いが、本実施形態では、ヘッド1が通気性を有する材料(複数の貫通孔を有するメッシュ)を用いて形成される。更に、支持部20にも複数の貫通孔26が形成される。これは、ヘッド1への打撃時の打音をより効果的に低減させるためである。
【0028】
即ち、例えばヘッド1が合成樹脂製のフィルムで形成され、通気性を有していない構成であると、ヘッド1への打撃時の打音(ヘッド1自体から生じる音)が低減され難くなる。一方、ヘッド1が通気性を有していても、板状の支持部20が貫通孔26を備えていない構成であると、ヘッド1への打撃時の振動に支持部20(胴部2)が共鳴することがあり、ヘッド1への打撃時の打音が減音され難くなる。
【0029】
これに対して本実施形態では、ヘッド1が通気性を有し、支持部20には複数の貫通孔26が形成されるため、ヘッド1、弾性体3、及び支持部20を通過する空気の流路を確保できる。これにより、ヘッド1への打撃時に、ヘッド1自体の振動によって生じる音や、支持部20などの他の部材の共鳴によって生じる音を低減できる。
【0030】
また、打撃前の状態では、ヘッド1に弾性体3が接している。これにより、ヘッド1への打撃時の振動が弾性体3で吸収され易くなるので、かかる打撃時の打音を効果的に低減できる。更に、打撃前の状態でヘッド1に弾性体3が接することにより、アコースティックのドラムに近い打感を得ることができる。
【0031】
支持部20の貫通孔26は、支持部20の略全体に形成されているが、センサ支持部40と対面する領域では、支持部20に貫通孔26が形成されていない。これにより、埃などの異物が貫通孔26を介してセンサ支持部材4の内部に侵入することを抑制できる。
【0032】
次いで、電子打楽器100の胴部2を支持する外枠部材5の構成について説明する。外枠部材5は、胴部2の外周側に配置される筒状の外周部50と、その外周部50の下端から内周側に張り出す底部51と、を備え、それらの各部50,51が樹脂材料を用いて一体に形成される。
【0033】
外周部50の上面には、周方向に連続する溝状の凹部52(
図2の拡大部分参照)が形成され、凹部52には円環状のリム53が固定される。リム53は、凹部52に嵌め込まれるベース部53aと、そのベース部53aよりも径方向寸法が小さい本体部53bと、を備え、それらの各部53a,53bがゴムを用いて一体に形成される。
【0034】
本体部53bの上端は、ヘッド1(ヘッド枠10)よりも上方に位置しており、この本体部53bを打撃することによってリムショットなどを模した演奏が行われる。このリム53(本体部53b)への打撃は、リムセンサS2(
図1参照)によって検出される。リムセンサS2は、円盤状の圧電素子であり、クッション性を有する両面テープによって外枠部材5の底部51の上面に接着される。
【0035】
リム53(本体部53b)が打撃された際には、外枠部材5の外周部50及び底部51を介して伝達される振動がリムセンサS2で検出される。また、上述した通り、ヘッド1への打撃時の振動は、ヘッドセンサS1(
図2参照)で検出される。これらのセンサS1,S2で検出された打撃は電気信号に変換され、図示しない音源装置に出力される。これにより、電子打楽器100への打撃位置に応じた楽音が生成される。
【0036】
この場合、ヘッド1への打撃時の振動がリムセンサS2で検出されたり、リム53への打撃時の振動がヘッドセンサS1で検出されたりすると、それらの各打撃を精度良く判別することができない。よって、本実施形態では、胴部2と外枠部材5との間にゴム製の弾性体6が介在される。
【0037】
弾性体6は、中央に貫通孔60を有する円盤状(円環状)に形成され、弾性体6の外縁側には、周方向に並ぶ複数の挿入孔61(
図1参照)が形成される。挿入孔61に挿入したボルト(図示せず)を胴部2の底壁22のめねじ穴(図示せず)にねじ込むことにより、胴部2に弾性体6が固定される。
【0038】
また、弾性体6の外縁側には、周方向に並ぶ複数の筒状の筒部62が形成され、胴部2の底壁22の底面には、筒部62と上下で対面する複数の位置決め凹部27(
図2参照)が形成される。よって、位置決め凹部27に筒部62を嵌め込むことにより、胴部2に対して弾性体6を周方向で位置決めした状態で、胴部2に弾性体6をねじ止めできる。
【0039】
弾性体6の内縁側には、周方向に並ぶ複数の挿入孔63が形成され、外枠部材5の底部51の上面には、挿入孔63と対応する位置に複数の凸部54が形成される。凸部54にはめねじ穴55(
図2参照)が形成され、弾性体6の挿入孔63に挿入したボルト(図示せず)をめねじ穴55にねじ込むことにより、外枠部材5に弾性体6が固定される。
【0040】
弾性体6の挿入孔63(外枠部材5のめねじ穴55)は、支持部20の貫通孔26と上下で対面する。よって、支持部20の貫通孔26を通した工具(ドライバーなど)により、めねじ穴55へのボルトのねじ込みを容易にできる。
【0041】
このように、胴部2と外枠部材5との間にゴム製の弾性体6を介在させることにより、ヘッド1やリム53への打撃時の振動を弾性体6で吸収(減衰)できる。即ち、ヘッド1への打撃時の振動がリムセンサS2で検出されることや、リム53への打撃時の振動がヘッドセンサS1で検出されることを抑制できるので、ヘッド1又はリム53のいずれが打撃されたのかを精度良く判定できる。
【0042】
また、本実施形態では、外枠部材5(底部51)が弾性体6の内縁側にねじ止めされ、胴部2(底壁22)が弾性体6の外縁側にねじ止めされている。即ち、外枠部材5による弾性体6の支持位置は、弾性体6による胴部2の支持位置よりも内周側に位置している。そして、外枠部材5の底部51に形成された凸部54に弾性体6が支持されるため、凸部54の外周側には、弾性体6(胴部2)の下方への変位を許容する空間が形成される。よって、ヘッド1が打撃された際には、弾性体6の弾性変形によって胴部2が外枠部材5の底部51側に沈み込むように変位するので、この胴部2の変位によってヘッド1への打撃時の衝撃を吸収できる。
【0043】
また、弾性体6の中央に貫通孔60が形成されると共に、外枠部材5の底部51の内周側にも貫通孔56が形成されている。即ち、本実施形態では、通気性を有するヘッド1、弾性体3の貫通孔32、胴部2(支持部20)の貫通孔26、弾性体6の貫通孔60、及び、外枠部材5(底部51)の貫通孔56により、ヘッド1から外枠部材5の底部51にかけて空気の流路が確保されている。これにより、ヘッド1への打撃時の打音を効果的に低減できる。
【0044】
次いで、リム53の詳細構成を説明する。
図2の拡大部分に示すように、リム53のベース部53aは、外枠部材5(外周部50)の凹部52に嵌め込まれているが、ベース部53aは、その全周にわたって凹部52に接着剤または両面テープで接着されている。これにより、リム53が打撃された時に、外枠部材5に対してリム53がバタつくことを抑制できる。
【0045】
また、リム53のベース部53aは、本体部53bの下端から内周側に突出しており、径方向に延びるベース部53aの上面53cと、その上面53cの外縁から上方に延びる本体部53bの内周面53dとによってリム53の内周面に屈曲部分Pが形成される。一方、ベース部53a及び本体部53bによって形成されるリム53の外周面53eは、その上端から下端にかけて外周側に下降傾斜する湾曲面である。このようなリム53の形状により、リム53(本体部53b)が外周側から打撃された際に、リム53の内周面の屈曲部分Pを起点にしてリム53が内周側(
図2の右側)に変形し易くなる。この変形により、リム53への打撃時の衝撃を吸収できるので、かかる打撃による打音を低減できる。
【0046】
なお、リム53は、JIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプAの硬度計で測定した硬度が10以上50以下を示す弾性材料を用いて形成することが好ましい。このような軟質の弾性材料からリム53を形成することにより、リム53が打撃された時の打音を効果的に低減できる。
【0047】
次いで、
図3及び
図4を参照して、リム53の変形例を説明する。なお、上述したリム53と同一の部分には同一の符号を付して説明する。
図3(a)~(f)は、第1~6の変形例を示すリム53の断面図であり、
図4(a)~(f)は、第7~12の変形例を示すリム53の断面図である。
【0048】
図3(a)に示すように、第1の変形例のリム53は、本体部53bの下端からベース部53aが外周側に突出しており、リム53の外周面には、径方向に延びるベース部53aの上面53cと、その上面53cの内縁から上方に延びるリム53(本体部53b)の外周面53eとによって屈曲部分Pが形成される。これにより、リム53が打撃された場合(以下「打撃時」という)に、屈曲部分Pを起点にしてリム53が変形し易くなる。
【0049】
図3(b)に示すように、第2の変形例のリム53は、ベース部53aの上面53cと、本体部53bの内周面53dとの境界部分に凹部53fが形成される。凹部53fは、リム53の全周にわたって連続する環状に形成される。これにより、リム53の内周面(凹部53fの深部)に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53が変形し易くなる。
【0050】
図3(c)に示すように、第3の変形例のリム53は、第2の変形例のリム53(
図3(b)参照)において、ベース部53aの内周面53gと本体部53bの内周面53dとを面一にしたものである。即ち、この変形例のリム53は、ベース部53aの径方向の寸法と、本体部53bの下端部(凹部53fが形成されていない領域)の径方向の寸法とが略同一になっている。この変形例においても、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53が変形し易くなる。
【0051】
図3(d)に示すように、第4の変形例のリム53は、第2の変形例のリム53(
図3(b)参照)において、リム53の内周面ではなく、本体部53bの外周面53eの下端側に凹部53fを形成したものである。これにより、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53が変形し易くなる。なお、この第4の変形例と同様、第3の変形例(
図3(c)参照)のリム53においても、凹部53fをリム53の外周面に形成することは可能である。
【0052】
図3(e)に示すように、第5の変形例のリム53は、その外周面の上端側から凸部53hが突出するL字状に形成される。これにより、リム53の外周面に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53(凸部53h)が変形し易くなる。
【0053】
図3(f)に示すように、第6の変形例のリム53は、第5の変形例のリム53(
図3(e)参照)において、リム53の内周面の上端側からも凸部53hを突出させてT字状に形成したものである。これにより、リム53の外周面および内周面に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53(凸部53h)が変形し易くなる。
【0054】
図4(a)に示すように、第7の変形例のリム53は、第6の変形例のリム53(
図3(f)参照)において、リム53の内周面および外周面の下端側からも凸部53hを突出させてH字状に形成したものである。これにより、リム53の外周面および内周面に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53(凸部53h)が変形し易くなる。
【0055】
図4(b)に示すように、第8の変形例のリム53は、その内周面の下端側(上下方向中央よりも下側)と、外周面の上端側(上下方向中央よりも上側)とに一対の凹部53fを形成したものである。即ち、リム53の内周側の凹部53fと、外周側の凹部53fとが異なる高さに形成される。これにより、リム53の内周面および外周面に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53が変形し易くなる。
【0056】
図4(c)に示すように、第9の変形例のリム53は、その上面に凹部53fを形成したものである。凹部53fは、リム53の上面の径方向中央部分に形成されており、リム53の上面には、凹部53fを挟んで一対の凸部53iが形成される。これにより、リム53の上面(凹部53fの深部)に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53(凸部53i)が変形し易くなる。
【0057】
図4(c)に示す変形例のリム53では、内周側の凸部53iの高さと、外周側の凸部53iの高さとが同一であるが、
図4(d)に示す第10の変形例のリム53は、内周側の凸部53iよりも外周側の凸部53iの高さを高くしたものである。即ち、内周側と外周側とで凸部53iが異なる高さで形成されている。この変形例においても、リム53の上面(凹部53fの深部)に屈曲部分Pが形成されるので、打撃時に屈曲部分Pを起点にしてリム53(凸部53i)が変形し易くなる。
【0058】
図4(e)に示すように、第11の変形例のリム53は、内部に空洞53jを有する中空状に形成したものであり、空洞53jは、周方向に連続して形成されている。これにより、打撃時に空洞53j側に向けてリム53が変形し易くなる(リム53の変形を空洞53jで受け入れることができる)。
【0059】
図4(f)に示すように、第12の変形例のリム53は、第11の変形例のリム53(
図4(e)参照)において、空洞53jに繋がるスリット53kをリム53の下面に形成したものである。スリット53kは、周方向に連続して形成されている。これにより、打撃時に空洞53j側に向けてリム53がより変形し易くなる。なお、
図4(f)では、スリット53kをリム53の下面に形成しているが、スリット53kをリム53の内周面、外周面、又は上面に形成しても良い。
【0060】
これらの
図3及び
図4に示す各変形例の構成においても、リム53の変形によって打撃時の衝撃を吸収できるので、かかる打撃による打音を低減できる。
【0061】
次いで、
図5を参照して、第2実施形態の電子打楽器200の全体構成について説明する。
図5は、第2実施形態における電子打楽器200の分解斜視図である。なお、
図5では、後述するカバー206(
図6又は
図8参照)を本体フレーム201から取り外した状態を図示している。
【0062】
図5に示すように、第2実施形態の電子打楽器200は、アコースティックのシンバルを模す打楽器である。電子打楽器200の骨格は、本体フレーム201によって形成される。本体フレーム201は、電子打楽器200の上面を形成する上面部210を備える。扁平な半円状の上面部210のうち、直線状に形成される部位に円弧状の円弧部211が接続される。
【0063】
上面部210と円弧部211とが樹脂材料を用いて一体に形成されており、それらの各部210,211によって本体フレーム201の外縁が全体として円形に形成される。上面部210及び円弧部211によって取り囲まれる半円状の開口部分は、ヘッド202を収容するための空間である。
【0064】
ヘッド202の外縁にはヘッド枠220が接続されており、これらのヘッド202及びヘッド枠220は、形状が半円状である点を除き、第1実施形態のヘッド1及びヘッド枠10と同様の構成である。なお、これらのヘッド202及びヘッド枠220と同様、後述する弾性体203、支持フレーム204、及びベースフレーム205の各部材も半円状に形成される(直線部分と円弧部分とを有している)。よって、以下の説明においては、半円状の各部材の直線部分や円弧部分に沿う縁部を「ヘッド枠220の直線部」や「ベースフレーム205の円弧部」などと記載して説明する。
【0065】
ヘッド枠220の直線部および円弧部の各々には、複数の挿入孔221が形成される。この挿入孔221は、本体フレーム201の上面部210及び円弧部211に対し、ヘッド枠220及びベースフレーム205をボルトB2(
図6参照)によって共締めするための孔である。
【0066】
このヘッド枠220及びベースフレーム205の固定構造について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図6は、電子打楽器200の部分拡大断面図である。なお、
図6では、
図5で250の符号が付された挿入孔250(ベースフレーム205の直線部および円弧部に形成された挿入孔250)を含む平面で切断した断面を図示している。また、
図6では、一部の内部構造(ボルトB3など)を除き、主に電子打楽器200の切断面のみ(端面)を図示している。
【0067】
図5及び
図6に示すように、ベースフレーム205は、樹脂を用いて扁平な半円状に形成され、ベースフレーム205の直線部および円弧部には、ヘッド枠220の挿入孔221と上下で対面する複数の挿入孔250が形成される。
【0068】
本体フレーム201の上面部210及び円弧部211の各々の下面には、複数のめねじ穴212(
図6の拡大部分参照)が形成される。ヘッド枠220及びベースフレーム205の各々の挿入孔221,250に挿入したボルトB2をめねじ穴212にねじ込むことにより、ヘッド枠220及びベースフレーム205が本体フレーム201の下面に固定される。
【0069】
ヘッド202とベースフレーム205との間の空間には、支持フレーム204と、その支持フレーム204に支持される弾性体203と、が収容される。支持フレーム204は、ボルトB3(
図6参照)を介してベースフレーム205に支持されているが、この支持構造については
図7を参照して後述する。
【0070】
支持フレーム204は、樹脂を用いて扁平な半円状に形成される。支持フレーム204の直線部および円弧部の上面には、弾性体203を位置決めするための溝状の位置決め凹部240が形成される。
【0071】
弾性体203の直線部および円弧部の下面には、位置決め凹部240と対応する形状の位置決め凸部230(
図6参照)が形成される。なお、弾性体203の位置決め凸部230を位置決め凹部240に嵌め込んだ状態で、支持フレーム204に弾性体203を接着する構成でも良いし、支持フレーム204に弾性体203を単に載置する(接着しない)構成でも良い。
【0072】
弾性体203は、所定の柔軟性を有する弾性体(ゴム、エラストマー、又はそれらの発泡材料など)を用いて形成されるので、演奏者がスティック等によってヘッド202を打撃した際(以下「ヘッド202への打撃時」という)には、その打撃によるヘッド202の振動が弾性体203によって吸収される。これにより、ヘッド202への打撃時の打音を低減できる。
【0073】
ヘッド202への打撃時の振動は、ヘッドセンサS1(
図6参照)によって検出される。ヘッドセンサS1は、円盤状の圧電素子であり、クッション性を有する両面テープによって支持フレーム204の下面に接着される。ヘッド202への打撃時の振動は、弾性体203及び支持フレーム204を介してヘッドセンサS1に伝達される。
【0074】
弾性体203には、その上面および下面を繋ぐ複数の貫通孔231が形成されているので、そのような貫通孔231が形成されていない場合に比べ、ヘッド202への打撃時に弾性体203の振動によって生じる音を効果的に低減できる。一方、貫通孔231が形成されていない領域では、ヘッド202への打撃時の振動が弾性体203自体を介して支持フレーム204に伝達される。よって、ヘッド202への打撃時の打音を低減させつつ、ヘッド202への打撃を精度良く検出できる。
【0075】
なお、本実施形態では、断面円形の貫通孔231が上下に直線状に延びており、貫通孔231の断面積(内径)が上端から下端にかけて一定になっているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通孔231は、弾性体203の厚み方向(上下方向)に対して傾斜する直線状であっても良いし、貫通孔231がその上端から下端にかけて直線や曲線を組み合わせた形状(例えば、螺旋状や蛇行する形状など)に形成されていても良い。また、貫通孔231の断面形状はハニカム状(断面六角形)や他の多角形状であっても良いし、貫通孔231の上端から下端にかけての一部または全部の領域において、貫通孔231の断面積(内径)が変化する構成でも良い。
【0076】
弾性体203をゴムやエラストマーなどの弾性材料(発泡材料ではないソリッドのもの)から形成する場合には、JIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプAの硬度計で測定した硬度が10以上50以下を示す弾性材料を用いることが好ましい。また、弾性体203をゴムや合成樹脂などの発泡材料(スポンジ)から形成する場合には、JIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプEの硬度計で測定した硬度が20以上75以下を示す発泡材料を用いることが好ましい。これにより、第1実施形態と同様、ヘッド202への打撃時の打音を低減させつつ、ヘッド202への打撃を精度良く検出できる。
【0077】
また、ヘッド202が通気性を有し、支持フレーム204には、その上面および下面を繋ぐ複数の貫通孔241が形成される。更に、ベースフレーム205にも支持フレーム204と対面する領域に複数の貫通孔(
図7参照)が形成されている。即ち、電子打楽器200には、ヘッド202、弾性体203、支持フレーム204、及びベースフレーム205を通過する空気の流路が確保されている。これにより、ヘッド202への打撃時に、ヘッド202自体の振動によって生じる音や、支持フレーム204やベースフレーム205などの他の部材の共鳴によって生じる音を低減できる。
【0078】
また、打撃前の状態では、ヘッド202に弾性体203が接している。これにより、ヘッド202への打撃時の振動が弾性体203で吸収され易くなるので、かかる打撃時の打音を効果的に低減できる。
【0079】
ここで、例えば特開2019-148623号公報に記載されるように、ヘッドによって打面が形成される従来の電子打楽器においては、フープによってヘッド枠を打楽器の胴部側に押し込むことにより、ヘッドに張力を付与することが一般的である。
【0080】
上記の従来技術のような構成の場合、フープや、そのフープを胴部側に押し込むためのテンションボルトをヘッド(ヘッド枠)よりも外周側に配置する必要があり、電子打楽器が径方向で大型化するという問題点がある。また、フープ(ヘッド枠)を上下に変位させるスペースを確保する必要があるため、電子打楽器の外縁(エッジ)部分を薄く形成することができない。よって、電子打楽器をシンバルのような扁平な形状に形成することが難しいという問題点がある。
【0081】
これに対して本実施形態の電子打楽器200は、上記のような問題点を解決できる構成を備えている。この構成について、
図5及び
図7を参照して説明する。
図7は、電子打楽器200の部分拡大断面図である。なお、
図7では、
図5で251の符号が付された挿入穴251を含む平面で切断した断面を図示している。また、
図7では、一部の内部構造(ケース207など)を除き、主に電子打楽器200の切断面のみ(端面)を図示している。
【0082】
図5及び
図7に示すように、ベースフレーム205の上面には、ボルトB3の頭部を回転可能に挿入するための挿入穴251が形成される。挿入穴251は、ベースフレーム205の直線部に沿う3箇所(
図5参照)と、円弧部の中央部分の1箇所とに形成される。
【0083】
挿入穴251は、ボルトB3の頭部の直径と同一の(又はそれよりも僅かに大きい)内径を有する円形の穴である。挿入穴251の底面には貫通孔252(
図7の右側の拡大部分参照)が形成され、この貫通孔252から挿入した工具(ドライバーなど)によってボルトB3を回転させることが可能になっている。
【0084】
ベースフレーム205の挿入穴251と上下で対面する位置には、支持フレーム204にめねじ孔242が形成される。よって、めねじ孔242に下方からねじ込まれたボルトB3をベースフレーム205の挿入穴251に挿入(載置)した状態で、ボルトB3をめねじ孔242から抜く(緩める)方向に回すことにより、ベースフレーム205に対して支持フレーム204を上方に変位させることができる。一方、ボルトB3をめねじ孔242にねじ込む方向に回すことにより、支持フレーム204を下方に変位させることができる。即ち、ボルトB3のねじ込み量を調整することにより、ベースフレーム205に対して支持フレーム204を上下に相対変位させることができる。
【0085】
このように、本実施形態では、ヘッド202の外縁に接続されるヘッド枠220と、そのヘッド枠220が固定されるベースフレーム205と、そのベースフレーム205の上方に配置される支持フレーム204と、その支持フレーム204をベースフレーム205に対して上下に相対変位させるボルトB3と、を備え、支持フレーム204に弾性体203が支持されている。
【0086】
これにより、ボルトB3の回転によって支持フレーム204をベースフレーム205に対して上方に変位させ、ヘッド202を弾性体203で押し上げることにより、ヘッド202に張力を付与できる。よって、上述した従来技術のように、フープや、そのフープを胴部側に押し込むためのテンションボルトをヘッド202(ヘッド枠220)よりも外周側に配置する必要がない。よって、電子打楽器200を径方向で小型化できる。更に、フープ(ヘッド枠220)を上下に変位させるスペースを確保する必要がないため、電子打楽器200の外縁(エッジ)部分を薄く形成できる。従って、電子打楽器200をシンバルのような扁平な形状に形成できる。
【0087】
ここで、シンバルのボウを模すヘッド202への打撃は、上記の通りヘッドセンサS1で検出される。一方、ボウのエッジ部分を模す本体フレーム201の円弧部211への打撃は、円弧部211のセンサ取付面213に取り付けられたエッジセンサ(図示せず)で検出される。
【0088】
センサ取付面213は、円弧部211の外周側に向けて下降傾斜しており、このセンサ取付面213にエッジセンサが接着される。エッジセンサは、シート状の感圧センサ(例えばメンブレンスイッチなど)である。
【0089】
センサ取付面213を含めた円弧部211の上面および下面がゴム製のカバー206(
図7参照)によって覆われているが、センサ取付面213(エッジセンサ)とカバー206との間には空間が形成される。よって、演奏者がスティックなどでカバー206を打撃すると、カバー206の弾性変形によってエッジセンサが押し込まれる。これにより、カバー206(円弧部211)への打撃がエッジセンサで検出される。
【0090】
なお、エッジセンサは、カバー206への打撃を検出する機能に加え、演奏者が円弧部211を掴むチョーク奏法を検出する機能も有している。カバー206への打撃とチョーク奏法との判別方法は、公知の方法が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、公知の方法としては、例えば特開平06-035450号公報の段落0005~0008等に記載された方法が例示される。
【0091】
エッジセンサや上記のヘッドセンサS1で検出された打撃は電気信号に変換され、図示しない音源装置に出力される。これにより、電子打楽器200への打撃位置に応じた楽音が生成される。このような電子打楽器200の演奏は、ロッド500に電子打楽器200を支持した状態で行われる。
【0092】
ロッド500に対する電子打楽器の支持構造の従来技術としては、例えば国際公開第2022/044171号が例示される。この従来技術では、支持ゴム3の貫通孔30に支持具20を引っ掛けることによってロッド2に電子打楽器1を支持している。貫通孔30の下端に連なる支持ゴム3の下面は、外周側に向けて下降傾斜する被支持面(支持具20に支持される面)として構成されているが、この被支持面は、支持具20の上端部に形成される山形の支持面よりも勾配が小さくなっている。これは、電子打楽器1の揺動を可能にするための隙間を支持具20の上面と支持ゴム3の下面との間に形成するためである。
【0093】
しかし、この従来の電子打楽器の支持構造では、次の問題点がある。第1に、電子打楽器1の重心が貫通孔30(ロッド2)の中心軸からずれた位置にあると、支持具20の上面と支持ゴム3の下面との間の隙間の分、電子打楽器1がロッド2に対して傾いてしまう。即ち、電子打楽器1をロッド2に水平に支持することができない。第2に、打撃による電子打楽器1の揺動時に支持具20と支持ゴム3とが接触および離隔を繰り返すと、その接触による振動をセンサ(電子打楽器への打撃の振動を検出するためのもの)が誤検出することがある。
【0094】
これに対して本実施形態の電子打楽器200は、これらの問題点を解決できる支持構造を備えている。この支持構造について、
図7~
図9を参照して説明する。まず、ロッド500と、そのロッド500の支持具501に支持されるケース207との概略構成について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図8は、電子打楽器200、ロッド500、及び支持具501の分解斜視図である。なお、
図7の左側の拡大部分では、ロッド500(支持具501)から電子打楽器200が取り外された状態が図示されると共に、断面のハッチングを省略して図示している。また、
図8では、電子打楽器200の本体フレーム201からケース207を取り外した状態が図示される。
【0095】
図7及び
図8に示すように、電子打楽器200を支持する棒状のロッド500には支持具501が装着され、支持具501は、中央に装着孔510を有する筒状に形成される。支持具501には、その上端側から外周面511に向けて下降傾斜する傾斜面512が形成される。傾斜面512は、ロッド500を挟んで対称に一対に形成され、それら一対の傾斜面512の上端同士が湾曲面513(
図8参照)によって接続される。湾曲面513は、上方に凸の湾曲面であり、これらの傾斜面512及び湾曲面513により、電子打楽器200のケース207を支持する山形の支持面が形成される。
【0096】
本体フレーム201の上面部210には、円形の挿入孔214が形成され、この挿入孔214にケース207の被挿入部270が挿される。被挿入部270は筒状に形成され、被挿入部270の下端部からは、張出部271がフランジ状に張り出している。張出部271の外周面には、ケース207の底壁部272(
図8参照)が接続され、底壁部272の外縁からは、外壁部273が上方に突出している。
【0097】
なお、本体フレーム201に対するケース207の装着は、本体フレーム201(上面部210)の挿入孔214に被挿入部270を挿入した状態で、図示しないボルトでねじ止めすることによって行われる。このケース207の装着状態においては、本体フレーム201の上面部210の下面、底壁部272、及び外壁部273によって取り囲まれる空間が形成され、この空間には基板などの電子部品が収納される。
【0098】
被挿入部270の内周側は、中央にロッド挿入孔274aを有する被支持部274によって閉塞され、これらのケース207を構成する各部270~274は、ゴムやエラストマー(合成樹脂)などの弾性材料を用いて一体に形成されている。
【0099】
次いで、
図7及び
図9を参照して、被支持部274の詳細構成について説明する。
図9(a)は、
図7のIXa-IXa線におけるケース207の部分拡大断面図であり、
図9(b)は、
図9(a)の矢印IXb方向視におけるケース207の部分拡大下面図である。なお、
図7の左側の拡大部分および
図9(a)では、突起274bに隠れている被支持部274の下面(突起274bが形成されていない部位)を破線で図示している。
【0100】
図7及び
図9に示すように、被支持部274の下面には、下方に突出する突起274bが形成される。突起274bは、ロッド挿入孔274aを挟んで一対に形成され、一対の突起274bの内周面274c同士が湾曲面274dによって接続される。湾曲面274dは、上方に凸の湾曲面であり、これらの内周面274c及び湾曲面274dは、支持具501の傾斜面512及び湾曲面513(
図8参照)に支持される被支持面となる。
【0101】
突起274bの内周面274cは、ロッド挿入孔274aの下端から外周側(ロッド挿入孔274aから離れる方向)に向けて下降傾斜する平面であり、ロッド挿入孔274aの中心軸(ロッド500の軸心)に対する内周面274cの傾斜角は、ロッド500の軸心に対する支持具501の傾斜面512の傾斜角と同一に(又はそれよりも小さく)設定される。よって、ロッド500をロッド挿入孔274aに挿入し、支持具501に被支持部274を支持させた支持状態(以下「被支持部274の支持状態」という)においては、支持具501の傾斜面512に突起274bの内周面274cが面接触する(
図7参照)。
【0102】
また、被支持部274の湾曲面274dの曲率は、支持具501の湾曲面513(
図8参照)の曲率と同一である。よって、図示は省略するが、被支持部274の支持状態では、支持具501の湾曲面513に湾曲面274dが面接触する。
【0103】
このように、本実施形態の被支持部274は、ロッド500が挿入されるロッド挿入孔274aと、そのロッド挿入孔274aの下端部の周囲から下方に突出する突起274bと、を備え、突起274bは、支持具501の傾斜面512(支持面)に接触する内周面274c(被支持面)を備えている。即ち、被支持部274と支持具501の傾斜面512との間には、ゴム製の突起274b(第3弾性体)が介在されるので、電子打楽器200が打撃される前の状態において、ロッド500に対する電子打楽器200の傾きを突起274bによって規制できる(
図7参照)。これにより、電子打楽器200の重心がロッド挿入孔274aの中心(ロッド500の軸心)からずれている場合であっても、ロッド500に対して電子打楽器200が水平に支持され易くなる。
【0104】
この支持状態から電子打楽器200のヘッド202が打撃された際には、突起274b(第3弾性体)の弾性変形によって電子打楽器200の揺動が許容される。具体的には、被支持部274の下面には、突起274bの外周面274eを取り囲む溝274fが形成されている。よって、突起274bを挟んでロッド500(ロッド挿入孔274a)とは反対側(
図7の右側)に位置するヘッド202が打撃された際には、その打撃に伴う突起274bの変形を溝274fで受け入れることができる。この突起274bの変形により、ロッド500(支持具501)に対する電子打楽器200の揺動が可能になる。
【0105】
この電子打楽器200の揺動時には、一対の突起274bの弾性変形が交互に繰り返されるが、この弾性変形の際にも、支持具501の傾斜面512と突起274bの内周面274cとの密着状態が維持される。即ち、上記の従来技術とは異なり、電子打楽器200の揺動時に支持具501と被支持部274(突起274b)とが接触および離隔を繰り返すことを抑制できる。これにより、かかる接触による振動をヘッドセンサS1が誤検出することを抑制できる。
【0106】
ここで、本実施形態の電子打楽器200のように、本体フレーム201の板状の上面部210(
図5参照)を円弧部211と一体に形成すると、ヘッド202やカバー206(
図8参照)への打撃時の振動が上面部210に伝達されることによってノイズが生じるという問題点が生じた。これに対し、例えば、特開2017-026726号公報のように、打撃を受ける被打撃部22(第1フレーム)と、その被打撃部22の打面22aと共に電子打楽器の上面を構成するフレーム44(第2フレーム)とを単に別体にする構造では、上記のようなノイズを十分に抑制することができない。
【0107】
この問題点を解決する第3実施形態の電子打楽器300について、
図10~
図12を参照して説明する。なお、上述した第2実施形態の電子打楽器200と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0108】
まず、
図10及び
図11を参照して、電子打楽器300の全体構成を説明する。
図10は、第3実施形態における電子打楽器300の分解斜視図であり、
図11は、電子打楽器300の上面図である。なお、
図10では、第1フレーム301aの円弧部211からカバー206(
図11参照)が取り外された状態を図示する一方、
図11では、円弧部211にカバー206が装着された状態を図示している。また、
図11では、第2フレーム301bの外形を二点鎖線で図示している。
【0109】
図10及び
図11に示すように、第3実施形態の電子打楽器300は、上述した第2実施形態と同様の円弧部211(
図10参照)を備える第1フレーム301aと、その第1フレーム301aに重ねられるように接続される第2フレーム301bと、を備える。
【0110】
以下の説明においては、第1フレーム301aのうち、第2フレーム301bが固定される(第2フレーム301bによって覆われる)部位を固定部310aと記載して説明する。
【0111】
固定部310aは、円弧部211の両端を繋ぐようにして水平方向(
図11の上下方向)に延びており、これらの固定部310a及び円弧部211は樹脂材料を用いて一体に形成されている。円弧部211の一端から他端に向かって固定部310aが延びる方向(
図11の上下方向)を長手方向とすると、固定部310aの長手方向中央部分には円形の挿入孔311aが形成され、この挿入孔311aに支持ゴム308(
図10参照)の被挿入部270が挿入される。
【0112】
なお、第1フレーム301a(固定部310a)には、基板などの電子部品を収納するための凹みが挿入孔311aの周囲に形成されているが、
図10,11では、それらの電子部品や凹みを省略して図示している。
【0113】
支持ゴム308は、第2実施形態の底壁部272及び外壁部273(
図8参照)を省略した点を除き、第2実施形態のケース207と実質的に同一の構成である。即ち、支持ゴム308は、第2実施形態のケース207と同様、挿入孔311aの下端側の縁に引っ掛けられるフランジ状の張出部271や、支持具501(
図8参照)を介してロッド500に支持される被支持部274を備えている。
【0114】
また、図示は省略するが、固定部310a及び円弧部211の下面には、上述した第2実施形態と同様のめねじ穴212(
図6の拡大部分参照)が形成されている。このめねじ穴212にベースフレーム205(
図6参照)がねじ止めされることにより、固定部310aと円弧部211とによって取り囲まれる半円状の開口部分には、打面となるヘッド202(
図11参照)が収容される。即ち、第1フレーム301aは、ヘッド202を周辺側から支持しており、ヘッド202を取り囲むように第1フレーム301aが隣接する。よって、このヘッド202への打撃時の振動は、第2実施形態と同様、ヘッドセンサS1(
図6参照)によって検出され、このヘッドセンサS1は、支持フレーム204及びベースフレーム205を介して第1フレーム301aに支持される。
【0115】
このように、固定部310a及び円弧部211からなる第1フレーム301aは、演奏者によって打撃される打撃領域(打面)の骨格を形成するフレームである。一方、第1フレーム301aに重ねられるように接続される第2フレーム301bは、ヘッド202やカバー206(打面)と共に電子打楽器300の上面を構成するフレームであるが、第2フレーム301bにはセンサが取り付けられていない。つまり、第2フレーム301bは、第1フレーム301aと共にシンバルを模した円盤形状の電子打楽器300を形作る(電子打楽器300の外観を向上させる)ための装飾用のフレームであり、第2フレーム301bの上面は、打撃を受けることが想定されていない非打撃面である。
【0116】
第2フレーム301bは、アコースティックシンバルを模す形状のベル部310b及びボウ部311bを有した半円状に形成され、これらのベル部310b及びボウ部311bが樹脂材料を用いて一体に形成されている。ベル部310bの中央には、ロッド500(
図8参照)を挿入するための円形の挿入孔312bが形成され、ベル部310bは、挿入孔312bから外周側に下降傾斜する椀状に形成される。
【0117】
ボウ部311bは、ベル部310bの外縁から外周側に下降傾斜する板状に形成され、このボウ部311bが弾性体309a~309cを介して第1フレーム301aに支持される。かかる支持状態においては、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bが非接触となっており、弾性体309a~309cは、それらの各フレーム301a,301bよりも軟質な材料(ゴムやエラストマーなど)を用いて形成されている。
【0118】
弾性体309a~309cによる第2フレーム301bの支持構造(
図12参照)の詳細は後述するが、弾性体309a~309cを介して第2フレーム301bを第1フレーム301aに弾性支持することにより、ヘッド202やカバー206(
図11参照)への打撃時に第1フレーム301aから第2フレーム301bに伝達される振動を弾性体309a~309cで減衰できる。よって、第2フレーム301bの振動によるノイズが生じることを抑制できるので、演奏者に良好な演奏感を付与できる。
【0119】
弾性体309a~309cは、平面視において半楕円状に形成され、以下の説明においては、弾性体309a~309cの長径方向(例えば、
図11における弾性体309aの左右方向)を「長手方向」と記載し、短径方向(例えば、
図11における弾性体309aの上下方向)を「幅方向」と記載して説明する。弾性体309の長手方向の両端側には上下に延びる一対の貫通孔390,391(
図10参照)が形成される。
【0120】
貫通孔390は、弾性体309a~309cの基端部分(一端側)を第1フレーム301aに固定するための孔であり、貫通孔391は、弾性体309a~309cの先端部分(他端側)に第2フレーム301bを固定するための孔である。
【0121】
第1フレーム301aの固定部310aには、挿入孔311aを挟んでヘッド202とは反対側に突出する突出部312aが一体に形成され、この突出部312aの先端側の上面からは、円柱状の固定突起313aが立ち上がっている。また、第1フレーム301aの挿入孔311aを挟んだ固定部310aの長手方向両端側にも同様の固定突起313aが形成される。
【0122】
これらの固定突起313aにねじ込まれるボルトB4によって弾性体309a~309cが第1フレーム301aに固定される。また、弾性体309a~309cの貫通孔391に挿入されるボルトB5(
図10参照)によって弾性体309a~309cに第2フレーム301bが固定される。この固定構造について、
図11及び
図12を参照して説明する。
図12は、
図11のXII-XII線における電子打楽器300の部分拡大断面図である。
【0123】
なお、以下の説明においては、主に弾性体309aによる第2フレーム301bの固定構造について説明するが、弾性体309b,309cによる第2フレーム301bの固定構造も実質的に同一の構成である。
【0124】
図11及び
図12に示すように、固定突起313a(
図12の拡大部分参照)の各々にはめねじ穴314aが形成されており、固定突起313aに弾性体309a~309cの貫通孔390を嵌め込んだ状態で、めねじ穴314aにボルトB4をねじ込むことによって弾性体309aが第1フレーム301aに固定される。この固定状態では、固定突起313aの上面とボルトB4の頭部との間に挟まれたワッシャW1によって弾性体309aの上方への変位(第1フレーム301aの固定突起313aからの弾性体309aの脱落)が規制される。なお、固定突起313aの周囲における弾性体309aの厚みは、固定突起313aの高さと同一に形成される。
【0125】
弾性体309aの先端側(
図12の左側)の上面からは、円柱状の支持凸部392が立ち上がっており、この支持凸部392に貫通孔391が形成される。第2フレーム301b(ボウ部311b)の下面からは、弾性体309aの貫通孔391に挿入される円柱状の固定突起313bが下方に突出している。固定突起313bは、第2フレーム301bに複数(本実施形態では3箇所に)形成されており、この複数の固定突起313bの各々は、第1フレーム301aに固定された3つの弾性体309a~309cと対応する位置(貫通孔391に挿入可能な位置)に形成される。
【0126】
固定突起313bにはめねじ穴314bが形成されており、弾性体309aの貫通孔391に固定突起313bを挿入した状態で、めねじ穴314bにボルトB5をねじ込むことによって弾性体309aに第2フレーム301bが固定される。この固定状態では、固定突起313bの下面とボルトB5の頭部との間に挟まれたワッシャW2によって第2フレーム301bの上方への変位(弾性体309aの貫通孔391からの第2フレーム301bの脱落)が規制される。
【0127】
なお、弾性体309aの支持凸部392と第2フレーム301bの下面との間にもワッシャW3が挟まれているが、この支持凸部392を挟む上下のワッシャW2,W3間の弾性体309aの厚みは、ワッシャW2,W3の間隔と同一である。
【0128】
このように、本実施形態では、3つの弾性体309a~309c(
図11参照)によって第2フレーム301bが弾性支持されているが、これら3つの弾性体309a~309cのうち、第1フレーム301aの突出部312aに固定される弾性体309aは、突出部312aの突出先端よりも更に外周側に突出しており、片持ち状態で第1フレーム301aに固定されている。
【0129】
また、固定部310aの長手方向(
図11の上下方向)両端側には一対の弾性体309b,309cが固定されているが、これら一対の弾性体309b,309cの各々の他端側には、固定部310aを貫通する貫通孔315aが形成される。即ち、弾性体309b,309cも同様に、第1フレーム301aに片持ち状態で固定される。
【0130】
このように、本実施形態では、弾性体309a~309cの基端側が第1フレーム301aに片持ち状態で固定される一方、弾性体309a~309cの先端側に第2フレーム301bが固定される。よって、ヘッド202やカバー206への打撃時にロッド500(
図8参照)に対して第1フレーム301aが揺動した際には、弾性体309a~309cの全体が撓むように変形しつつ、その変形に伴う弾性体309a~309cの復元力によって第2フレーム301bが第1フレーム301aの揺動に追従する。即ち、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bを相対的に揺動させることができる。
【0131】
第1フレーム301aに対する第2フレーム301bの相対的な揺動を許容することにより、ヘッド202やカバー206への打撃時に第1フレーム301aのみが揺動し易くなる(第2フレーム301bの揺動を比較的小さくできる)。これにより、第2フレーム301bの揺動(振動)によって生じるノイズを効果的に低減できる。
【0132】
弾性体309a~309cは、各フレーム301a,301bにボルトB4,B5によって固定されているため、この固定部分で弾性体309a~309cを安定的(強固)に保持するためには、比較的硬度の高いゴムを用いて弾性体309a~309cを形成することが好ましい。この一方で、ゴムの硬度を高くし過ぎると弾性体309a~309cが撓み難くなるため、第1フレーム301aに対する第2フレーム301bの相対的な揺動が生じ難くなる。
【0133】
これに対し、本実施形態の弾性体309a~309cは、その上下方向の厚みが幅方向の厚みよりも小さい板状に形成される。これにより、比較的硬度の高いゴムを用いて弾性体309a~309cを形成した場合でも、弾性体309a~309cが上下に撓み易くなる。よって、ボルトB4,B5による固定部分で弾性体309a~309cを安定的に保持できると共に、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bを相対的に揺動させ易くできる。
【0134】
また、第1フレーム301aに対する第2フレーム301bの揺動時には、弾性体309a~309c(ボルトB5やワッシャW2,W3を含む)を除き、第2フレーム301bが他の部材(ヘッド202、カバー206、支持ゴム308等)に接触しないように構成されている。このような接触を防止することにより、第2フレーム301bと他の部材との衝突音が生じたり、その衝突による振動をヘッドセンサS1が誤検出したりすることを抑制できると共に、第2フレーム301b(他の部材)が損傷することを抑制できる。
【0135】
ここで、弾性体309a~309cは、第1フレーム301aの挿入孔311aの中心、即ち、電子打楽器300の揺動軸O(
図11参照)を中心にした放射方向に突出している。これは、ヘッド202への打撃時の第1フレーム301aの揺動に対し、第2フレーム301bの全体を均一に上下動させるためである。
【0136】
即ち、例えば、弾性体309a~309cのうち、一対の弾性体309b,309cの先端を弾性体309aと同じ方向に(
図11の左側に)向けることも可能である。しかしながら、そのような構成では、揺動軸Oを中心にした径方向のうち、各弾性体309a~309cの突出方向側(
図11の左側)に向けて沈み込む(又は浮き上がる)ように第2フレーム301bが揺動し易くなる。つまり、第2フレーム301bの一部の領域のみが上下に揺動し易くなる一方、他の領域ではそのような揺動が生じ難くなる。
【0137】
第2フレーム301bの一部の領域のみが上下に大きく揺動すると、その領域で各フレーム301a,301b同士が接触し、その衝突音によって演奏感が悪くなったり、各フレーム301a,301bが損傷し易くなったりする。また、各フレーム301a,301b同士の衝突による振動をヘッドセンサS1が誤検出することもある。このような各フレーム301a,301bの接触を防止するために、各フレーム301a,301bの上下の間隔を広くすると、電子打楽器300自体の厚みが厚くなってアコースティックのシンバルらしさが損なわれる。
【0138】
これに対して本実施形態では、揺動軸Oを中心にした放射方向に弾性体309a~309cを突出させる構成である。即ち、揺動軸Oを中心にした径方向と弾性体309a~309cの長手方向とが一致しているので、ヘッド202(
図11参照)への打撃時に、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bの全体が均一に上下動し易くなる。これにより、上記のように第2フレーム301bの一部の領域のみが上下に揺動し易い場合に比べ、各フレーム301a,301b同士の上下の間隔を極力狭くしつつ、各フレーム301a,301b同士の接触を抑制できる。よって、電子打楽器300をアコースティックのシンバルらしい扁平な厚みに形成することを可能にしつつ、各フレーム301a,301bの衝突音が発生することや、各フレーム301a,301bが損傷することを抑制できる。
【0139】
また、弾性体309a~309cは、第1フレーム301aの下面側に固定することも可能であるが、本実施形態では、第1フレーム301aの上面側に固定している。これは、弾性体309a~309cの一部やそれらの固定部分(ボルトB4やワッシャW1)の露出を抑制することによって外観を向上させるためである。
【0140】
この一方で、ボルトB4によって第1フレーム301aの上面側に弾性体309a~309cを固定すると、第2フレーム301bの上下の揺動時にボルトB4が第2フレーム301bに接触するおそれがある。
【0141】
これに対して本実施形態では、
図12の拡大部分に示すように、弾性体309aの上面には、第2フレーム301bに向けて突出する緩衝突起393が一体に形成される。緩衝突起393は、ボルトB4の頭部(ワッシャW1)の周囲に形成されるので、第2フレーム301bが上下に揺動した場合に、ボルトB4と第2フレーム301bとの接触を緩衝突起393によって規制できる。よって、そのような接触による衝突音の発生や第2フレーム301bの損傷を抑制できると共に、その衝突による振動をヘッドセンサS1が誤検出することを抑制できる。
【0142】
ボルトB4の軸回りの方向を周方向とすると、緩衝突起393は、ボルトB4の周方向において等間隔に3個(
図11の拡大部分参照)形成される。このような複数の緩衝突起393でボルトB4を取り囲むことにより、例えば緩衝突起393をボルトB4の周方向に連続する環状に形成する場合に比べ、緩衝突起393と第2フレーム301bとの接触面積を低減できる。よって、緩衝突起393と第2フレーム301bとの衝突時に生じるノイズを低減できる。
【0143】
ボルトB4の軸と直交する方向における緩衝突起393の寸法は、ボルトB4の周方向における緩衝突起393の寸法よりも小さく形成される。つまり、複数の緩衝突起393の各々は、ボルトB4を取り囲む板状に形成されており、ボルトB4とは反対側を向く各緩衝突起393の外周面には凹溝394(
図12の拡大部分参照)が形成される。この凹溝394は、緩衝突起393と第2フレーム301bとの接触時に、ボルトB4やワッシャW1とは反対側に緩衝突起393を変形させるためのものである。
【0144】
即ち、例えば緩衝突起393に凹溝394が形成されていない構成の場合、第2フレーム301bとの接触時に緩衝突起393がボルトB4(ワッシャW1)側に倒れるように変形するおそれがある。このような変形によって緩衝突起393がボルトB4やワッシャW1に接触すると、緩衝突起393が損傷し易くなる。
【0145】
これに対して本実施形態では、緩衝突起393の外周面に凹溝394が形成され、この凹溝394は、ボルトB4の周方向における緩衝突起393の両端にわたって延びている。これにより、第2フレーム301bとの接触時に緩衝突起393がボルトB4(ワッシャW1)側に変形することを抑制できるので、ボルトB4やワッシャW1に緩衝突起393が接触することを抑制できる。よって、第2フレーム301bと緩衝突起393とが繰り返し接触しても、緩衝突起393が損傷し難くなる。
【0146】
ここで、ヘッド202への打撃時の第1フレーム301aの揺動時には、第1フレーム301aに対し、第2フレーム301bが上下に揺動するだけではなく相対的に回転することもある。この回転によって第2フレーム301bが他の部材(例えば、ヘッド202やカバー206)に接触すると、ノイズの発生や他の部材の損傷などの問題点が生じる一方、そのような接触を防止するために第2フレーム301bと他の部材との隙間を大きくとると、電子打楽器300が大型化したり外観が悪化したりする。
【0147】
よって、第1フレーム301aに対する第2フレーム301bの相対的な回転を規制することが望ましいところ、そのような回転を規制するための手段として、例えば貫通孔390(
図12の拡大部分参照)及び固定突起313aに互いに嵌合可能な凹凸を形成する構成が採用可能である。この構成の一例としては、貫通孔390及び固定突起313aの断面形状を多角形にする構成が例示される。また、他の例としては、固定突起313aの外周面に周方向に並ぶ複数の壁状の凸部を形成し、それらの凸部を嵌め込み可能な凹部を貫通孔390の内周面に形成する構成が例示される。
【0148】
しかしながら、互いに嵌合可能な凹凸を貫通孔390及び固定突起313aに形成する構成、即ち固定突起313aの近傍で凹凸を嵌合させる構成では、弾性体309a~309cの回転時に凹凸の嵌合部分に作用する荷重が大きくなり易い。凹凸の嵌合部分に作用する荷重が大きくなると、その凹凸部分で弾性体309a~309cが損傷し易くなると共に、凹凸の嵌合力を超えて弾性体309a~309cが回転し易くなってしまう。よって、本実施形態では、固定突起313aから離れた位置で弾性体309a~309cの回転を規制する構成を採用している。この構成について、以下に説明する。
【0149】
図11の拡大部分に示すように、弾性体309aの基端面395からは、平面視において略矩形状の規制突起396が突出している。一方、第1フレーム301a(固定部310a及び突出部312a)の上面には、基端面395と接触すると共に規制突起396を取り囲む壁状の規制壁316aが一体に形成される。規制壁316aは、弾性体309aの基端面395と規制突起396の外周面とに沿って形成される。これにより、規制壁316aと弾性体309aの基端面395との接触や、規制壁316aと規制突起396(ボルトB4の周方向を向く規制突起396の側面)との接触により、固定突起313a(
図12参照)回りの弾性体309aの回転を規制できる。
【0150】
また、第1フレーム301aの上面には、弾性体309aの幅方向を向く側面397に沿う壁状の規制壁317aが一体に形成され、弾性体309aは、その幅方向両側が一対の規制壁317aによって挟まれている。この規制壁317aと弾性体309aの側面397との接触によっても、固定突起313a回りの弾性体309aの回転を規制できる。
【0151】
このような規制壁316a,317aは、弾性体309b,309cの周囲にも同様に形成されており(
図10参照)、これらの規制壁316a,317aによって弾性体309a~309cの回転を規制できる。これにより、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bが相対的に回転することを抑制できるので、第2フレーム301bと他の部材(例えば、ヘッド202)との間の隙間を比較的小さくしても、ヘッド202への打撃時の揺動によって第2フレーム301bが他の部材に接触することを抑制できる。よって、電子打楽器300が大型化したり外観が悪化したりすることを抑制しつつ、第2フレーム301bと他の部材との接触によるノイズの発生を抑制できる。更に、第2フレーム301bと他の部材との接触による振動をヘッドセンサS1が誤検出することを抑制できる。
【0152】
また、本実施形態では、第1フレーム301aの上面から立ち上がる壁状の規制壁316a,317aと、弾性体309a~309cの外周面(基端面395、規制突起396の側面、及び側面397)との接触によって弾性体309a~309cの回転を規制する構成である。このような構成であれば、固定突起313aから離れた位置で弾性体309a~309cの回転を規制できる。
【0153】
これにより、弾性体309a~309cの回転時に規制壁316aと規制突起396との嵌合部分に加わる荷重を小さくできる。よって、弾性体309a~309cの基端面395と規制突起396との接続部分(規制突起396の根元部分)に亀裂が生じることを抑制しつつ、弾性体309a~309cの回転を規制できる。また、弾性体309a~309cの基端面395や側面397と、規制壁316a,317aとの接触部分に加わる荷重も低減できるので、弾性体309a~309cが損傷することを抑制しつつ、弾性体309a~309cの回転を規制できる。
【0154】
以上、上記実施形態に基づき説明をしたが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0155】
上記各実施形態では、ヘッド1,202に通気性を持たせる構成の一例として、合成繊維を編み上げたメッシュを用いる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、布、不織布、又は貫通孔を有するフィルム等、通気性を持つ他の材料からヘッド1,202を形成しても良いし、ヘッド1,202に通気性を持たせない(例えば、合成樹脂製のフィルムからヘッド1,202を形成する)構成でも良い。
【0156】
上記各実施形態では、デュロメータタイプAの硬度計で10以上50以下の硬度を示す弾性材料、又はデュロメータタイプEの硬度計で20以上75以下の硬度を示す発泡材料を用いて弾性体3,203が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上記の硬度よりも硬い又は柔らかい材料を用いて弾性体3,203を形成しても良い。
【0157】
上記各実施形態では、弾性体3,203が単層である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、複数枚の弾性体3,203を上下に重ねる構成でも良いし、そのような複数層の弾性体3,203のうち、一又は複数層の弾性体3,203を他の弾性体3,203とは異なる硬度で形成しても良い。
【0158】
上記各実施形態では、ハニカム状(断面六角形)や断面円形の貫通孔32,231が弾性体3,203に点在する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通孔32,231が直線や曲線を組み合わせた長孔であっても良いし、そのような長孔形状の貫通孔32,231と、ハニカム状(又は他の多角形)や断面円形の貫通孔32,231とを組み合わせる(繋げるように形成する)構成でも良い。
【0159】
上記各実施形態では説明を省略したが、貫通孔32,231が形成されていない領域において、弾性体3,203の上面および下面は平面であっても良いし、弾性体3,203の上面および下面の少なくとも一方(又は両方)に凹凸や溝が形成されていても良い。
【0160】
上記各実施形態では説明を省略したが、弾性体3,203における貫通孔32,231の開口率(弾性体3,203の面積に対する貫通孔32,231の開口面積の割合)を小さくし過ぎると、弾性体3,203が過剰に硬くなり、ヘッド1,202への打撃時の打音が低減され難くなる。一方、貫通孔32,231の開口率を大きくし過ぎると、弾性体3,203が過剰に柔らかくなり、ヘッド1,202への打撃時の振動がヘッドセンサS1に伝達され難くなる。よって、弾性体3,203における貫通孔32,231の開口率は、20%以上80%以下にすることが好ましい。これにより、ヘッド1,202への打撃時の打音を低減させつつ、ヘッド1,202への打撃を精度良く検出できる。
【0161】
上記第1実施形態では、ヘッドセンサS1がセンサ支持部材4に取り付けられる場合を説明し、第2実施形態では、ヘッドセンサS1が支持フレーム204の下面に取り付けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば第1実施形態において、ヘッドセンサS1を支持部20の上面または下面に直接取り付けても良い。また、例えば第2実施形態において、ヘッドセンサS1が取り付けられるセンサ支持部材4を支持フレーム204の下面に固定する構成や、ヘッドセンサS1を支持フレーム204の上面に直接取り付ける構成でも良い。
【0162】
上記各実施形態では、打撃前の状態でヘッド1,202に弾性体3,203が接触する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。少なくともヘッド1,202への打撃時に弾性体3,203がヘッド1,202に接触する構成であれば、打撃前の状態で弾性体3,203の一部または全部がヘッド1,202に接触していなくても良い。
【0163】
上記各実施形態では、上下に延びるハニカム状(断面六角形)の貫通孔26,241が胴部2(支持部20)や支持フレーム204に形成され、それらの貫通孔26,241の断面積(内径)が上端から下端にかけて一定になっているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、貫通孔26,241は、支持部20や支持フレーム204の厚み方向(上下方向)に対して傾斜していても良いし、貫通孔26,241の断面形状は他の多角形状や円形であっても良い。また、貫通孔26,241の上端から下端にかけての一部または全部の領域において、貫通孔26,241の断面積(内径)が変化する構成でも良い。また、貫通孔26,241を省略しても良い。
【0164】
上記第1実施形態では、外枠部材5が弾性体6を介して胴部2を支持する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、外枠部材5や弾性体6を省略する構成でも良い。この構成の場合には、ヘッド枠10にリムセンサ(例えば、シート状のメンブレンスイッチ)を取り付けることにより、アコースティックのドラムを模した電子打楽器100を構成できる。
【0165】
上記第1実施形態では、外枠部材5(底部51)による弾性体6の支持位置が、弾性体6による胴部2(底壁22)の支持位置よりも内周側に位置する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、外枠部材5による弾性体6の支持位置を、弾性体6による胴部2の支持位置よりも外周側に位置させる(弾性体6の外縁側に外枠部材5を固定し、弾性体6の内縁側に胴部2を固定する)ことにより、それらの2点の支持位置を径方向でずらしても良い。
【0166】
上記第1実施形態では、弾性体6が環状に(周方向で連続して)形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、周方向に並ぶ(断続する)複数の弾性体6によって胴部2を支持する構成でも良い。
【0167】
上記第1実施形態では、外枠部材5に取り付けられたリムセンサS2(圧電素子)でリム53への打撃(振動)を検出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、リムセンサS2を省略し、外枠部材5の凹部52とリム53との間に設けたシート状の感圧センサ(例えばメンブレンスイッチなど)でリム53への打撃を検出しても良い。
【0168】
上記第1実施形態(リム53の変形例)では、外枠部材5の外周部50(凹部52)にリム53(ベース部53a)を接合する構成の一例として、接着剤または両面テープによる接着を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、金型を用いた一体成型(加硫接着)や、溶着などの他の公知の手段によって外枠部材5の外周部50(凹部52)にリム53(ベース部53a)を接合する構成でも良い。この構成においても、打撃時のリム53のバタつきを抑制できる。
【0169】
上記第1実施形態(リム53の変形例)では、外枠部材5の外周部50の上面(凹部52)にリム53が接合される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、外枠部材5の外周部50の側面にリム53を接合しても良い。
【0170】
上記第1実施形態では、弾性体6(胴部2)の下方への変位を許容するための凸部54が周方向に複数(断続的に)形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凸部54が周方向に連続して形成されていても良い。
【0171】
上記第2実施形態では、ボルトB3によって支持フレーム204を上方に変位させ、ヘッド202を弾性体203で押し上げることによってヘッド202に張力を付与する場合を説明したが、この張力の付与方法を第1実施形態の電子打楽器100(ドラムを模す打楽器)に適用しても良い。
【0172】
上記第2実施形態では、支持フレーム204を上方に押し上げる変位手段の一例として、支持フレーム204にねじ込まれる(頭部がベースフレーム205の挿入穴251に載置される)ボルトB3を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ベースフレーム205に下方からねじ込まれたボルトの軸部で支持フレーム204を押し上げても良い。即ち、ベースフレーム205に対して支持フレーム204を上下に相対変位させることができる構成であれば、上記の形態に限定されるものではない。
【0173】
上記第2実施形態では、電子打楽器200が打撃される前の状態において、突起274bの内周面274c(被支持面)が支持具501の傾斜面512(支持面)に面接触する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、電子打楽器200が打撃される前の状態において、突起274bの内周面274cと支持具501の傾斜面512との間に隙間を形成する(国際公開第2022/044171号の支持構造を第2実施形態の電子打楽器200に適用する)構成でも良い。
【0174】
上記第2実施形態では、打撃前にロッド500に対して電子打楽器200が傾くことを抑制する一方、打撃時に電子打楽器200の揺動を許容する弾性体(第3弾性体)の一例として、被支持部274に一体に形成された突起274bを例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、被支持部274とは別体に形成した弾性体(突起274bに相当するもの)を被支持部274と支持具501(傾斜面512)との間に介在させる構成でも良い。
【0175】
また、突起274b(第3弾性体)を支持する山形の支持面(以下「支持面」という)の一例として、一対の平面状の傾斜面512が支持具501の外周面511に向けて下降傾斜する構成を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一対の傾斜面512の一部または全部が曲面状に形成されていても良いし、支持面を円錐状または半球状に形成しても良い。また、支持面と支持具501の外周面511との間に水平面(ロッド500の軸方向と直交する平面)が介在される構成(即ち、山形の支持面が該水平面から立ち上がる凸形状に形成される構成)でも良い。即ち、突起274b(第3弾性体)を支持できる構成であれば、山形の支持面の形状は上記の形態に限定されるものではない。
【0176】
上記第2実施形態では、突起274bの周囲を取り囲む溝274fが形成される場合を説明したが、溝274fを省略しても良い。
【0177】
上記第3実施形態では、ゴム製の弾性体309a~309cが片持ち状態で第1フレーム301aに固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、弾性体309a~309cの全体が第1フレーム301aに支持されていても良いし、コイルバネや板バネなどの他の公知の弾性体を各フレーム301a,301bの間に介在させても良い。即ち、2つのフレーム(板状の部材)を互いに弾性的に接続できる構造であれば、他の公知の支持構造を適用できる。他の公知の支持構造としては、特開2013-142872号公報のように、弾性部材44b及び連結ねじ45を用いて第2プレート44に対して第1プレート41を弾性支持する構造などが例示され、このような支持構造を各フレーム301a,301bに適用しても良い。
【0178】
上記第3実施形態では、ボルトB4,B5によって弾性体309a~309cを各フレーム301a,301bに固定する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ボルトB4,B5を省略し、各フレーム301a,301bに弾性体309a~309cを接合(接着または溶着)しても良い。この場合には、第1フレーム301aの規制壁316a,317a(回転規制手段)を省略しても良い。即ち、各フレーム301a,301bに対する弾性体309a~309cの固定方法は適宜設定できる。
【0179】
上記第3実施形態では、複数の弾性体309a~309cが各フレーム301a,301bの間に介在される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ロッド500回りに連続する(1つの)円弧状または円環状の弾性体を各フレーム301a,301bの間に介在させても良い。
【0180】
上記第3実施形態では、3つの弾性体309a~309cが同一の部品である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、弾性体309a~309cのうち、ロッド500を挟んでヘッド202(打面)とは反対側の領域(弾性体309aが配置される領域)は、ヘッド202やカバー206への打撃時に第2フレーム301bの揺動が大きくなり易いため、かかる領域に配置される弾性体309aの剛性(硬度や上下方向の厚み)を他の弾性体309b,309cよりも大きくしても良い。
【0181】
上記第3実施形態では、第2フレーム301b(挿入孔312bの内周面)がロッド500に非接触である場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、支持ゴム308を介して第2フレーム301bをロッド500に支持させる構成でも良い。このような構成の一例として、国際公開第2022-044171号の支持ゴム3によるボウフレーム4の支持構造が例示される。
【0182】
上記第3実施形態では、ロッド500を中心にした放射方向に弾性体309a~309cが突出している場合、即ち、電子打楽器300の揺動軸Oを中心にした径方向と弾性体309a~309cの長手方向とが一致している場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、揺動軸Oを中心にした径方向に対し、弾性体309a~309cの長手方向が一致していない(例えば、傾斜している)構成でも良い。
【0183】
上記第3実施形態では、平面視において弾性体309a~309cが半楕円形に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、平面視において弾性体309a~309cが矩形であっても良いし、円形であっても良い。即ち、第1フレーム301aに対して第2フレーム301bを弾性支持できるものであれば、弾性体309a~309cの形状は適宜設定できる。
【0184】
上記第3実施形態では、ボルトB4と第2フレーム301bとの接触を規制する手段(接触規制手段)の一例として、ボルトB4を取り囲む複数の緩衝突起393を例示したが、必ずしもこれに限られない。例えば、緩衝突起393をボルトB4の周方向に連続する環状に形成しても良い。また、突起状のものでボルトB4を取り囲むのではなく、ボルトの周囲における弾性体309a~309cの厚みを全体的に厚くする(ボルトB4を凹部に埋め込む)ことによってボルトB4と第2フレーム301bとの接触を規制しても良い。また、弾性体309a~309cを用いてボルトB4と第2フレーム301bとの接触を規制するのではなく、例えば、それらの接触を規制するゴムやクッションなどの緩衝材を、各フレーム301a,301bのいずれか一方または両方に設ける構成でも良い。
【0185】
上記第3実施形態では、緩衝突起393の外周面に凹溝394が形成され、ボルトB4の周方向における緩衝突起393の両端にわたって凹溝394が延びる場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ボルトB4の周方向において凹溝394が断続的に形成されていても良いし、ボルトB4の周方向における緩衝突起393の両端に達しない長さで凹溝394が形成されていても良い。
【0186】
上記第3実施形態では、第1フレーム301aの規制壁316a,317aと、弾性体309a~309cの外周面(基端面395、規制突起396の側面、及び側面397)との接触によって弾性体309a~309cの回転を規制する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、弾性体309a~309cの回転を規制する他の構成として、互いに嵌合可能な凹凸を貫通孔390及び固定突起313aに形成する構成や、第1フレーム301aに弾性体309a~309cを接合する構成が例示される。
【0187】
上記第3実施形態では、第1フレーム301aの固定部310aと円弧部211とに取り囲まれた空間にヘッド202(打面)が設けられ、そのヘッド202への打撃をヘッドセンサS1(支持フレーム204に取り付けられたセンサであって、支持フレーム204及びベースフレーム205を介して第1フレーム301aに間接的に支持されたセンサ)で検出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られない。
【0188】
例えば、ヘッド202(弾性体203)、支持フレーム204、及びベースフレーム205を省略すると共に、固定部310a及び円弧部211によって取り囲まれる空間を塞ぐような板状に第1フレームを形成し、その第1フレームにヘッドセンサS1を取り付けても良い。即ち、ヘッド202に相当する打面を、板状の第1フレームの上面(又はその上面を覆うゴムなどの緩衝用のカバー)で形成し、その打面への打撃時の振動を検出するためのセンサを第1フレームが直接支持する構成でも良い。つまり、ヘッド202と第1フレーム301aとが一体化されて形成されるような構成でも良い。
【符号の説明】
【0189】
300 電子打楽器
301a 第1フレーム
311a 挿入孔
313a 固定突起
316a,317a 規制壁(回転規制手段)
301b 第2フレーム
309a~309c 弾性体
390 貫通孔(嵌合穴)
393 緩衝突起(接触規制手段)
394 凹溝
500 ロッド
B4 ボルト
S1 センサ