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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】抗ネクチン-4抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241031BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241031BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241031BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/30
C12N15/13
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P29/00
C12P21/08
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023561035
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2022058626
(87)【国際公開番号】W WO2022207822
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】21166441.2
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21170941.5
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21172723.5
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21209332.2
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523374873
【氏名又は名称】エマージェンス セラピューティクス ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】316011983
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(73)【特許権者】
【識別番号】503196857
【氏名又は名称】アンスティテュ・ジャン・パオリ・エ・イレーヌ・カルメッテス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
【住所又は居所原語表記】232 Boulevard Sainte-Marguerite,F-13009 Marseille,France
(73)【特許権者】
【識別番号】505179971
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】エラン、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ロスピス、フロランス
(72)【発明者】
【氏名】プレヴィユ、グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】オリーヴ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロペス、マルク
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510432(JP,A)
【文献】特表2018-531913(JP,A)
【文献】Wu S. et al.,Dermatol Online J,2019年,Vol. 25:13030
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに
(b)相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖(VL)領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、VL領域
を含むか、あるいは
(c)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに
(d)相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖(VL)領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む、VL領域を含む、
ネクチン-4に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(a)配列番号13に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および
(b)配列番号14に示されるアミノ酸配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
キメラ抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗原結合断片である、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
クラスIgG、クラスIgM、クラスIgAの抗体またはそれらの抗原結合断片であるか、あるいは一本鎖抗体、または抗体Fv断片である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
(a)(i)配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(b)(i)配列番号41に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号42に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(c)(i)配列番号55に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号56に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(d)(i)配列番号69に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号70若しくは103に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(e)(i)配列番号41に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号56に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(f)(i)配列番号41に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号70若しくは103に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、または
(g)(i)配列番号55に示されるアミノ酸配列を含むVL領域、および
(ii)配列番号70若しくは103に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、または
(h)(i)配列番号69に示されるアミノ酸配列を含むVH領域、および
(ii)配列番号56に示されるアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
薬剤における使用のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
がんおよび/または炎症性障害を予防するおよび/または治療する方法における請求項6に記載の使用のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
がんが、ネクチン-4過剰発現と関連している、請求項6または7に記載の使用のための、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
がんが、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんである、請求項6~8のいずれかに記載の使用のための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体の1つ以上、あるいは請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体のいずれか1つの少なくとも1つのVLおよび/または1つのVHをコードする核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体がキメラ抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体がヒト化抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項16】
前記抗体がサブクラスIgG1の抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
前記抗体がサブクラスIgG2の抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項18】
前記抗体がサブクラスIgG3の抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体がサブクラスIgG4の抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ネクチン-4に対する特異性を有する抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ネクチンは、上皮および内皮の接合部を組織化するのを助ける接着分子であり、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスおよびポリオウイルスの進入のための受容体として役立つ。
【0003】
ネクチンは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、ポリオウイルス受容体(PVR/CD155)のホモログであり、このため、ポリオウイルス受容体結合タンパク質(PRR)とも呼ばれてきた。現在までに、PVR/CD155、ネクチン-1/PRR1/CD111、ネクチン-2/PRR2/CD112、ネクチン-3/PRR3およびネクチン-4/PRR4(1、10~13)の5個のメンバーが述べられている。それらの細胞外ドメインは、それらのアミノ酸配列において30%と55%との間の同一性を共有する、3個の免疫グロブリン様(Ig)-タイプV、C、Cドメインで構成されている。
【0004】
ネクチン/PRR分子の発現は一般に、より限定された発現プロファイルを示すネクチン-3および-4を例外として、造血細胞、神経細胞、内皮細胞および上皮細胞を含む組織において広範囲に及ぶ。
【0005】
ネクチン-4は、特に興味深い標的である。それは、胎児の発育中に発現するが、その発現は、ネクチンファミリーの他のメンバーの発現と比較して、成体組織においては減少し、非常に制限されている。ネクチン-4は、膀胱がんの83%、乳がん(主にトリプルネガティブおよびERBB2+)の78%、膵臓がんの71%、肺がんの55%、卵巣がんの57%、頭頸部がんの59%、および食道がんの55%において、腫瘍関連抗原である。
【0006】
これらの病態におけるネクチン-4の発現は、おそらくは、遊走、増殖および転移の形成のより高い能力をインビトロで腫瘍細胞に付与するネクチン-4の能力の結果として、予後不良と関連している。正常組織においては、ネクチン-4は、皮膚、唾液腺、膀胱および食道において検出されるのみである。進行性尿路上皮がんの二次治療についてのエンホルツマブベドチンの保健当局による最近の承認は、がんの治療についての標的としてのネクチン-4の検証を完了した。
【発明の概要】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、ネクチン-4に対する特異性を有する抗体、その抗原結合断片並びにその使用に関する。
【0008】
特に、本発明は、モノクローナル抗ネクチン-4抗体15A7.5 mAbに由来するヒト化抗体を提供する。
【0009】
本発明者らは、ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で特異的に結合する抗体、すなわち15A7.5 mAb、並びにそれに由来する抗体を初めて提供する。インビトロでは、この選択性は、腫瘍細胞と比較して、および同じアッセイにおけるHA22 mAb(エンホルツマブ)の活性を参照して、mAb 15A7.5に、ケラチノサイトに対するより低い結合親和性、内部移行および細胞毒性活性を提供する。
【0010】
インビボでは、ケラチノサイトに対するこの低い結合能は、皮膚におけるより低い吸収率のため、mAb 15A7.5に、より長い半減期を与える。
【0011】
異種移植マウスモデルにおいては、樹立した腫瘍の、エキサテカンと結合させた4mg/kgのmAbの単回静脈内投与での治療は、迅速かつ長続きする退縮に至った。
【0012】
より具体的には、本発明者らは、そのような構成において、15A7.5が、エンホルツマブベドチンのサロゲート、すなわち、市販のエンホルツマブベドチンと区別することができない第三者によって非GMP法を使用して製造されたエンホルツマブベドチン製品よりも効率的であることを実証する。
【0013】
従って、抗体15A7.5、および特にそれに由来するヒト化バリアントはすなわち、より低い関連皮膚毒性並びにより高い抗腫瘍選択性および有効性を通して、ネクチン-4陽性がん治療の治療指標を改善する新しい方法を表す。
【0014】
すなわち、本発明の第1の態様は、ネクチン-4に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、それぞれ、該抗体または抗原結合抗体断片の結合特異性を定義するCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3と呼ばれる3個のCDRを含むVH領域および任意にVL領域を特徴とする抗体またはその抗原結合断片に関する。ヒトネクチン-4に対する結合が、好ましい。
【0015】
本発明の抗体は、特定のアミノ酸配列を特徴とするモノクローナル抗体(mAb)またはモノクローナル抗体断片である。別に示さなければ、用語「モノクローナル」は、単一種、すなわち単一アミノ酸組成の抗体または抗体断片を指す。
【0016】
本発明の抗体の抗原結合部位は、重鎖可変ドメイン/領域(VH)および/若しくは抗体軽鎖可変ドメイン/領域(VL)、またはVH/VLの対を含む。可変ドメイン/領域は、抗体を抗原に結合させることに直接関与する、軽鎖および重鎖の対のそれぞれを意味する。重鎖の可変ドメインは、「VH」と略し、軽鎖の可変ドメインは、「VL」と略す。
【0017】
用語「抗原結合部位」は、リガンド(例えば抗原、すなわちネクチン-4、またはその抗原断片)が実際に結合する、抗体由来の抗体分子の領域(複数可)を意味する。
【0018】
本発明に係る抗体の抗原結合部位は、抗原に対する結合部位の親和性にさまざまな程度で寄与する6個の相補性決定領域(CDR)を含有し得る。3個の重鎖可変ドメインCDR(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)および3個の軽鎖可変ドメインCDR(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)がある。また、より少ないCDRで構成される(すなわち、結合特異性が3個、4個または5個のCDRによって決定される)機能的抗原結合部位も本発明の範囲内に含まれる。例えば、6個のCDRの完全なセットより少なくても、結合については十分であり得る。いくつかの場合においては、VHドメインまたはVLドメインは、十分であろう。
【0019】
本発明によれば、VH領域またはそのCDRのみで、完全な抗原結合部位を構成し得る。特定の実施態様においては、抗体は、本明細書において定義するVH領域またはそのCDRのみを含む。他の実施態様においては、抗体は、VL領域またはそのCDRと、特に本明細書において定義するVL領域またはそのCDRと一緒に、本明細書において定義するVH領域またはそのCDRを含む。
【0020】
VH領域またはVL領域内のCDRの位置は、その両方が当業者に公知である、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)またはIMGT付番システムに従って定義し得る。IMGT付番は、抗原受容体、鎖のタイプ、または種が何でも、可変ドメインを比較するために定義されてきた(Lefranc M.-P.,“Unique database numbering system for immunogenetic analysis”Immunology Today,18,509(1997);Lefranc M.-P.,“The IMGT unique numbering for Immunoglobulins,T cell receptors and Ig-like domains”The Immunologist,7,132-136(1999))。
【0021】
本発明の更なる態様は、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号1若しくは7に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号2若しくは8に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号3若しくは9に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、
並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号4若しくは10に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号5若しくは11に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号6若しくは12に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む、ネクチン-4に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0022】
本明細書において使用する配列番号によって表される特定のアミノ酸配列は、添付の配列表に提供する。配列番号1~6は、IMGT付番システムに従って本発明の親抗体の6個のCDR配列を定義する。配列番号7~12は、Kabatに従って本発明の親抗体の6個のCDR配列を定義する。別途明記しなければ、本明細書においては、Kabatシステムを使用する。
【0023】
本発明によれば、これらのCDR配列における1個または2個のアミノ酸の置換が、可能である。特定の実施態様においては、保存的アミノ酸置換、すなわち類似の生化学的特性を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換、例えば、脂肪族アミノ酸、例えばGly、Ala、Val、Leu若しくはIleの別の脂肪族アミノ酸についての置換、塩基性アミノ酸、例えばHis、Lys若しくはArgの別の塩基性アミノ酸に対する置換、酸性アミノ酸若しくはそのアミド、例えばAsp、Glu、Asn若しくはGlnの別の酸性アミノ酸若しくはそのアミドに対する置換、芳香族アミノ酸、例えばPhe、Tyr若しくはTrpの別の芳香族アミノ酸に対する置換、またはヒドロキシ若しくは硫黄含有アミノ酸、例えばSer、Thr、Met若しくはCysの別のヒドロキシ若しくは硫黄含有アミノ酸に対する置換が、好ましい。
【0024】
抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する該インタクトな抗体の一部を含む分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。該用語はまた、融合タンパク質、例えば非免疫グロブリンペプチドまたはポリペプチドとの融合タンパク質、および非タンパク質性構造、例えば標識または毒素とのコンジュゲートを包含する。用語「抗体の抗原結合断片」、「その抗原結合断片」、「抗体の断片」または「その断片」は、本明細書において互換的に使用し得る。
【0025】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、一価または多価であり得、すなわちそれは、単一の抗原結合部位または複数の抗原結合部位を含み得る。例えば、Fab断片は、単一の抗原結合部位を有し、IgGクラスの抗体またはFv断片若しくはscFv断片は、2個の抗原結合部位を有し、IgMクラスの抗体は、5個の抗原結合部位を有する。用語「抗体」はまた、異なる抗原結合部位を有するヘテロ特異性抗体、例えばヘテロ二重特異性抗体、特に抗原上の2つの異なるエピトープに向けられた抗体を包含する。本明細書において使用する「エピトープ」は、抗体が結合する抗原の領域である。用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を含む。
【0026】
さらなる好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、IMGT付番システムに従って
(i)配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2および配列番号6のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0027】
別の好ましい実施態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、Kabatに従って
(i)配列番号7のCDR-H1、配列番号8のCDR-H2、および配列番号9のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号10のCDR-L1、配列番号11のCDR-L2および配列番号12のCDR-L3を含むVL領域
を含む。
【0028】
より具体的には、抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号13に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(b)VL領域、特に配列番号14に係るアミノ酸配列、または該配列の全長にわたって少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0029】
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、候補配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である該配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLASTなどの公に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の技能の範囲内にあるさまざまな方法で達成することができる。
【0030】
本発明の抗体は、キメラ抗体、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗原結合断片であり得る。
【0031】
本発明によれば、「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部は特定の起源または種に由来し、一方、重鎖および/または軽鎖の残りは異なる起源または種に由来する抗体を指す。
【0032】
「多重特異性抗体」は、2個以上の異なるエピトープに結合する。エピトープは、同じまたは異なる抗原上にあり得る。多重特異性抗体の好ましい例は、2個の異なるエピトープに結合する「二重特異性抗体」である。
【0033】
好ましい実施態様においては、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。
【0034】
用語「ヒト化抗体」または「抗体のヒト化バージョン」は、重鎖および軽鎖の両方が抗体工学の結果としてヒト化されている抗体を指す。ヒト化鎖は典型的には、全体として分析したときに原種の生殖系列配列よりもヒト生殖系列配列に相同性においてより近いように、V領域のアミノ酸配列が変化している鎖である。例えば、マウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域中に移植して、「ヒト化抗体」を調製し得る。例えば、Riechmann,L.,et al.,Nature 332(1988)323-327;およびNeuberger,M.S.,et al.,Nature 314(1985)268-270を参照されたい。本発明によって包含されるヒト化抗体の他の形態は、本発明に係る特性を生じさせるために定常領域が元の抗体のものからさらに修飾または変更されたものである。ヒト化の評価は、結果として生じるアミノ酸配列に基づき、方法論自体に基づくものではない。
【0035】
別の好ましい実施態様は、ヒト抗体に関連する。
【0036】
本明細書において使用する用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。ヒト抗体は、最先端の技術において周知である(van Dijk,M.A.,and van de Winkel,J.G.,Curr.Opin.Chem.Biol.5(2001)368-374)。ヒト抗体はまた、免疫時に、内因性免疫グロブリン産生なしにヒト抗体の全レパートリーまたは選択されたものを産生することができる、トランスジェニック動物(例えば、マウス)において産生させることができる。
【0037】
本発明の抗体は、任意の好適なクラスのものであり得る。用語「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。本明細書において使用する「定常ドメイン」または「定常領域」は、可変領域以外の抗体のドメインの総体を意味する。定常領域は、抗原の結合に直接は関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示す。抗体は、抗体の5個の主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそれらの任意のサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2のいずれでもあり得る。免疫グロブリンのさまざまなクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。本発明によれば、クラスIgG、IgA若しくはIgMの抗体またはその断片が、特に好適である。
【0038】
好ましい実施態様によれば、本発明の抗体は、クラスIgG、例えばサブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくは(of)IgG4、クラスIgM、クラスIgAまたはそれらの抗原結合断片から選択される。
【0039】
特定の実施態様においては、本発明のヒト化抗体またはヒト抗体は、少なくとも3個、好ましくは6個の相補性決定領域(CDR)の組合せによって定義される、すなわち
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号21、35、49若しくは63に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号22、36、50若しくは64に係るアミノ酸配列
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号23、37、51若しくは65に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号24、38、52若しくは66に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号25、39、53若しくは67に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号26、40、54若しくは68に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0040】
本発明に係る特定のヒト化抗体またはヒト抗体は、
(a)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(b)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(c)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(d)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(e)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(f)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(g)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(h)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(j)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
または
(k)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(l)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(m)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(n)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
または
(o)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、
または
(p)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、
または
(q)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、
並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域
を含み得る。
【0041】
特に好ましいのは、上記で定義したヒト化抗体(a)、(b)、(c)、(d)、(j)、(k)、(n)および(q)である。
【0042】
もちろん、本発明に係るヒト化抗体またはヒト抗体はまた、それらのVH領域および/またはVL領域によって定義し得る。
【0043】
そのような抗体は、
(i)配列番号27、41、55若しくは69から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28、42、56、70若しくは103から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み得る。
【0044】
本発明に係る特定のヒト化抗体またはヒト抗体は、それらのVH領域および/またはVL領域によって定義し得、ここで、そのような抗体は、
(a)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(b)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(c)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(d)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(e)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(f)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(g)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(h)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(j)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(k)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(l)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(m)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(n)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
(o)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(p)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、
あるいは
(q)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、
および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む。
【0045】
特に好ましいのは、上記で定義したヒト化抗体(a)、(b)、(c)、(d)、(j)、(k)、(n)および(q)である。
【0046】
特に好ましい実施態様によれば、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で結合する。そのような特異的結合は、とりわけ、本発明の抗体に基づく治療中のより少ない副作用、特に低下した皮膚毒性を可能にする。
【0047】
本明細書において使用する用語「結合」および「特異的結合」は、ネクチン-4抗原のエピトープに対する本発明の抗体またはその断片の結合を指す。抗体の結合強度の尺度を、親和性と称する。インビトロアッセイを使用してそのような結合および/または親和性を決定する方法は、当業者に公知である。本発明によれば、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光での検出が、本明細書において記載され、特に好ましい。
【0048】
抗原に対する抗体の結合の親和性は、用語Ka(抗体/抗原複合体からの抗体の会合速度定数)、KD(解離定数)、およびKdis(kD/ka)によって定義される。
【0049】
本発明に係る抗体およびその抗原結合断片は好ましくは、少なくとも40、好ましくは少なくとも45、より好ましくは少なくとも50および最も好ましくは少なくとも55(nM)の解離定数KDを示す。
【0050】
本発明の特に好ましい実施態様は、
(i)配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2および配列番号6のCDR-L3を含むVL領域
を含むヒト化抗体およびその抗原結合断片であって、
ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で結合する、抗体およびその抗原結合断片に関する。
【0051】
本発明のさらなる態様は、本明細書において記載するモノクローナル抗ネクチン-4抗体9A2.7、3A1.4、および8F06並びにそれらの抗原結合断片に関する。これら抗体のヒト化バリアントが、好ましい。
【0052】
すなわち、本発明はまた、
(a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号79、87若しくは95に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号80、88若しくは96に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号81、89若しくは97に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号83、91若しくは99に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号84、92若しくは100に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号85、93若しくは101に係るアミノ酸配列、
または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VL領域
を含む、ネクチン-4に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0053】
一つの実施態様は、
(i)配列番号79のCDR-H1、配列番号80のCDR-H2、および配列番号81のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号83のCDR-L1、配列番号84のCDR-L2および配列番号85のCDR-L3を含むVL領域;
あるいは
(a)配列番号82に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号86に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、抗ネクチン4抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0054】
抗体9A2.7は、そのようなVH領域配列およびVL領域配列を特徴とする。
【0055】
一つの実施態様は、
(i)配列番号87のCDR-H1、配列番号88のCDR-H2、および配列番号89のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号91のCDR-L1、配列番号92のCDR-L2および配列番号93のCDR-L3を含むVL領域;
あるいは
(a)配列番号90に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号94に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、抗ネクチン4抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0056】
抗体3A1.4は、そのようなVH領域配列およびVL領域配列を特徴とする。
【0057】
一つの実施態様は、
(i)配列番号95のCDR-H1、配列番号96のCDR-H2、および配列番号97のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号99のCDR-L1、配列番号100のCDR-L2および配列番号101のCDR-L3を含むVL領域;
あるいは
(a)配列番号98に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号102に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、抗ネクチン4抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0058】
抗体8F06は、そのようなVH領域配列およびVL領域配列を特徴とする。
【0059】
配列番号79~86は、mAb 9A2.7を特徴付ける。
【0060】
配列番号87~94は、mAb 3A1.4を特徴付ける。
【0061】
配列番号95~102は、mAb 8F06を特徴付ける。
【0062】
より低い結合親和性に加えて、本明細書において提供する本発明の抗体および断片はまた好ましくは、腫瘍細胞と比較して、ケラチノサイトに対してより低い内部移行および/またはより低い細胞毒性活性を示す。
【0063】
特に好ましい実施態様によれば、本発明の抗体および断片は、腫瘍細胞と比較して、ケラチノサイトに対してより低い結合親和性、より低い内部移行およびより低い細胞毒性活性を示す。
【0064】
もちろん、腫瘍が発現するヒトネクチン-4に対する特異的な結合が、好ましい。すなわち、本明細書において提供する抗体は、好ましくは、ネクチン-4に対する特異的な結合を示し、他のタンパク質、特にネクチン-1などのヒトネクチンファミリーのタンパク質に対しては本質的な反応性または交差反応性を何ら示さない。
【0065】
さらなる態様によれば、本発明はまた、ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するヒトネクチン-4に対してより高い親和性で結合することを特徴とするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片に関する。比較のために、結合親和性は、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光によって検出し得る。
【0066】
さらなる実施態様によれば、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、該抗体または抗原結合断片に結合している標識基および/またはエフェクター基を含む。標識基は、例えば、イメージング時に検出可能である、色素、常磁性基、放射性基または蛍光性基であり得る。好ましいエフェクター基は、治療基、特に化学療法活性剤などの細胞毒性剤、薬物、抗炎症剤、放射性同位体、トポイソメラーゼ毒などの毒素、核分解酵素などの酵素およびその断片、成長阻害剤、抗生物質並びに当業者に公知の全ての好適な抗がん剤および抗腫瘍剤である。特に好ましいのは、トポイソメラーゼ毒であるカンプトテシン、並びにエキサテカンのようなその誘導体および/または構造類似体、並びにデルクステカンのようなその誘導体である。
【0067】
抗腫瘍剤の好ましい実施態様は、toll様受容体(TLR)アゴニストまたはインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)経路を含むがこれらに限定されない抗腫瘍免疫刺激剤に関する。
【0068】
別の好ましい実施態様によれば、抗炎症剤は、ステロイド、並びにグルココルチコイド、例えばコルチゾールおよびその誘導体などのコルチコステロイド、またはアルドステロンおよびその誘導体などのミネラルコルチコイドを含む群から選択し得る。
【0069】
本発明のさらなる態様によれば、抗体またはその抗原結合断片は、薬剤における使用のため、特に治療用途またはインビトロおよびインビボ診断用途を含む診断用途のためである。
【0070】
抗体またはその抗原結合断片は、がんおよび/または炎症性障害を予防するおよび/または治療する方法において役に立ち得、ここで、該がんおよび/または炎症性障害は、好ましくはネクチン-4過剰発現と関連している。
【0071】
予防および/または治療するがんは、任意の種類のがんであり得、ここで、用語「がん」は、本明細書においては、増殖性疾患を指すために使用する。本発明に従って予防および/または治療するがんは好ましくは、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんからなる群から選択される。
【0072】
腫瘍上で発現するネクチン-4について高度に特異的であるため、本発明の抗体およびその断片はまた、例えば上記のような標識基に結合して、診断において使用し得る。
【0073】
さらなる態様によれば、本明細書において記載する抗体またはその抗原結合断片は、好ましくはネクチン-4発現と関連している炎症性障害を予防するおよび/または治療する方法において使用し得る。そのような治療は好ましくは、当業者に公知の抗炎症剤と組み合わせ得る。好ましい抗炎症剤は、上記している。
【0074】
本発明の別の態様は、本明細書において記載する少なくとも2つの異なるモノクローナル抗体または断片の組合せである。
【0075】
さらに、本発明は、上記で示した抗体VH領域、若しくは抗体VL領域をコードする、または完全抗体若しくは抗体断片をコードする核酸分子、例えばDNA分子、あるいは好ましくは発現制御配列、特に異種発現制御配列と機能的に連結している上記で示した前記核酸分子(複数可)を含むベクターまたはベクター系、すなわち複数のベクターに関する。
【0076】
さらに、本発明は、上記した核酸分子またはベクター若しくはベクター系を含む細胞に関する。本明細書において使用する用語「ベクター」は、それが結合している別の核酸を増幅させることができる核酸分子を指す。好ましい実施態様によれば、ベクターは、発現ベクターである。「発現ベクター」は、それらが機能的に連結されている核酸の発現を導くことができる。抗体の組換え産生のためのベクター、特に発現ベクターは、当技術分野において周知である。
【0077】
細胞は、抗体または抗体断片を産生するための公知の宿主細胞、例えば大腸菌細胞などの原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳類細胞、例えばCHO細胞若しくはハイブリドーマ細胞であり得る。
【0078】
本発明のなおさらなる態様は、本明細書において記載する抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物に関する。典型的には、抗体または抗体断片は、活性剤および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物として投与する。抗体または抗体断片を製剤化するための好適な担体および賦形剤の例は、生理食塩水および水性緩衝液を含み、当技術分野において周知である。
【0079】
治療する障害の段階および重症度に依存して、医薬組成物は、障害の経過の間に、1回または数回投与し得る。例えば、それは、好適な期間の間、毎日、1日おき、週2回または週1回投与し得る。
【0080】
特定の実施態様においては、医薬組成物は、非経口的に、例えば皮下、筋肉内若しくは静脈内への注射によってまたは注入によって投与する。さらなる実施態様においては、医薬組成物は、局所的に、例えば経口で、鼻にまたは肺に、例えばエアロゾルとして投与し得る。
【0081】
さらに、本発明を、以下の表、図面および実施例によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】Ch-15A7.5は、ヒトネクチン-4を認識する。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-15A7抗体の用量範囲(0.3ng/mL~5μg/mL)を使用した、ネクチン-4のN末端Flagタグ付きエピトープをトランスフェクトしたMDA-MB231のフローサイトメトリー解析。親MDA-MB231細胞を、コントロールとして含める。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。インレイ:抗ネクチン-1、-2および-3 mAb(5μg/mL)での親MDA-MB231細胞の染色。平均蛍光強度を表す。
図2】Ch-15A7.5は、ヒトネクチン-4のIgV様ドメインを認識する。ELISAによる検出。 96ウェルプレートを、示されるとおり、5μg/mLのネクチン-1細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec1-VCC)、またはネクチン-4 IgV様ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-V)、またはネクチン-4細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-VCC)で、4℃で一晩コーティングした。Ch15A7.5は、ネクチン-4細胞外ドメイン、より正確にはネクチン-4 IgV様ドメインを認識し、ネクチン-1細胞外ドメインは認識しない。
図3】Ch-15A7.5エピトープの特性評価。競合アッセイを、ELISAによって実施した。 96ウェルプレートを、5μg/mLのネクチン-4細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec4-VCC)で、4℃で一晩コーティングした。ペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mAb(5μg/mL)の結合を、漸増濃度(2.75ng/mL~6μg/mL)のリツキシマブ、Ch-15A7 mAb、エンホルツマブ(HA22)、Ch-N41 mAbおよびCh-14A5 mAbの存在下で測定した。HA22、Ch-N41およびCH-14A5は、ネクチン-4のIgVドメインを認識する。
図4】ネクチン-4結合についてのCh-15A7.5 mAbのネクチン-1との競合。競合を、フローサイトメトリーによって評価した。 ヒトネクチン-4 cDNAをトランスフェクトした50,000個のCHO細胞を、96ウェルプレートに播種した。細胞を、漸増濃度(8ng/mL~5μg/mL)のアイソタイプコントロールまたはCh-15A7.5 mAbと45分間インキュベートした。洗浄後、プレートを、20μg/mLのネクチン-1細胞外ドメインFc融合組換えタンパク質(Nec1-VCC)とインキュベートした。ネクチン-1結合が、フィコエリトリンに結合したヤギ抗ヒトFc抗体とのインキュベート後に明らかになった。
図5】カニクイザル、ラットおよびマウス由来のネクチン-4との交差反応性。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-15A7(A)、Ch-3A1.4(B)、Ch-9A2.7(C)またはエンホルツマブ(HA22、D)抗体の用量範囲(0.05ng/mL~5μg/mL)を使用した、ヒト、カニクイザル、ラットまたはマウスのネクチン-4をトランスフェクトしたCHO細胞のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。表は、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用してGraphPad Prism 9ソフトウェアによって決定した推定EC50値を報告する。~記号は、不十分な曲線当てはめのため、報告した値があいまいであることを示す。
図6】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 エンホルツマブ(HA22、四角)、Ch-15A7.5(丸)、Ch-3A1.4(三角)およびCh-9A2.7(菱形)の用量範囲(1.2ng/mL~5μg/mL)を使用した、TNBC細胞株(SUM190、黒色記号)および正常分化(0.1mM CaCl)ヒトケラチノサイト(NHEK、白抜き記号)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を、GraphPad Prism 9ソフトウェアを用いて行った。水平バーは、SUM190細胞上のHA22抗体で得られた最大染色強度の50%に置いている。
図7】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 5μg/mLのHA22(エンホルツマブ)、Ch-15A7.5、およびCh-8F06を使用した、TNBC細胞株(SUM190、A)および正常分化(0.1mM CaCl)ヒトケラチノサイト(NHEK、B)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。
図8】腫瘍細胞株およびヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4への異なる結合。免疫組織化学による検出。 高発現レベルのネクチン-4腫瘍細胞株(SUM190)、低発現レベルのネクチン-4腫瘍細胞株(SUM149)、ヒトおよびカニクイザルの皮膚の凍結保存OCT包埋ブロックを、15A7.5 mAb(A)および9A2.7 mAb(B)で染色するために加工した。各mAbについて報告されたクイックスコアを示す(A、B)。C、ヒト皮膚上のクイックスコアSUM190の比。
図9】腫瘍細胞株およびヒトケラチノサイトにおける異なる内部移行。蛍光による検出 エンホルツマブ(HA22)、Ch-15A7.5およびアイソタイプコントロールmAbを、4.58と5.55との間の色素抗体比に達するようにpHABチオール反応性色素に結合させた。これらの抗体色素コンジュゲートのそれぞれの用量範囲(1.6ng/mL~5μg/mL)を、SUM190PTネクチン-4発現細胞株(A)正常ヒト分化(0.1mM CaCl)ケラチノサイト(B)とデュープリケートでインキュベートした。細胞内蛍光を、24時間後に蛍光マイクロプレートリーダー(ClarioStar)で記録した。蛍光強度を、色素抗体コンジュゲート濃度の関数の形で報告する。
図10】腫瘍細胞および正常分化ヒトケラチノサイトに対する異なるインビトロ細胞毒性活性。MTTアッセイによって測定した細胞生存率。 エンホルツマブ(HA22、菱形)、Ch-15A7.5(三角形)およびCh-9A2.7(四角形)のmAbをα-アマニチンと結合させて、抗体薬物コンジュゲートを生成させ、用量範囲(7.7pg/mL~15μg/mL)のその細胞毒性活性を、SUM190PTネクチン-4発現細胞株(A、D)または正常ヒト分化(0.1mM CaCl)ケラチノサイト(B、E)に対して比較評価した。5日間のインキュベーション期間後の生存率(MTTアッセイ)を報告する。EC50値は、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用して、GraphPad Prism 9ソフトウェアによって決定した。各条件について、Ch-15A7.5 ADC(C)またはCh-9A2.7 ADC(F)のEC50のHA22-ADCのEC50に対する比を、計算し、報告した。示すデータは、2つの異なるネクチン-4発現腫瘍細胞株(SUM190PTおよびMDA-MB468)およびヒトケラチノサイトについての3人の独立したドナーを代表する。
図11】SUM190を移植したNSGマウスのCh-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-MA-PS-βGlu-エキサテカンおよびCh-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mmに達したときに開始した。Ch-15A7.5-MA-PS-βGlu-エキサテカン(Ch-15A7.5-Ex)は2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-Ex)は8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図12】腫瘍細胞に対するヒト化バリアントの見かけの親和性。フローサイトメトリーによる検出。 ネクチン-4を発現するT47Dヒト腫瘍細胞を、付番し、Ch-15A7.5または示されるヒト化バリアントの用量範囲(169pg/mL~30μg/mL)とインキュベートした。HおよびLと関連する数字は、導入された逆変異の数を指す。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。平均蛍光強度を報告する。GraphPad Prism 9ソフトウェアは、非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を使用した。
図13】SUM190を移植したNSGマウスのHA22-MA-PS-βGlu-EエキサテカンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-MA-PS-βGlu-エキサテカンおよびHA22-MA-PS-βGlu-エキサテカン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mmに達したときに開始した。HA22MA-PS-βGlu-エキサテカン(HA22-Ex)は2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-Ex)は8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図14】SUM190を移植したNSGマウスのHA22-MA-PS-βGlu-EエキサテカンおよびHA22-MC-GGFG-DX8951 ADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NSGマウス(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を両側に同所的に異種移植した。5個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールである、MA-PS-βGlu-エキサテカン(ICT-ExおよびHA22-Ex)またはMC-GGFG-DX8951(ICT-およびHA22-Dxd)のいずれかと結合したICT-およびHA22並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EV)。マウスの治療(単回静脈内注射)を、腫瘍が約150mmに達したときに開始した。HA22-ExおよびHA22-Dxdは2用量(4または8mg/kg)で評価し、ICT-EXおよびICT-Dxdは8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図15】SUM190を移植したNOD-ScidマウスのCh-15A7.5-α-アマニチンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NOD-Scidマウス(n=10/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-α-アマニチンおよびCh-15A7.5-α-アマニチン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EVサロゲート)。マウスの治療(7日間間隔で2回静脈内注射、矢じり)を、腫瘍が約120mmに達したときに開始した。Ch-15A7.5-α-アマニチンは2用量(0.5または1mg/kg)で評価し、ICT-α-アマニチンは1mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは0.5または2mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図16】SUM190を移植したNOD-ScidマウスのHA22-α-アマニチンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NOD-Scidマウス(n=10/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-α-アマニチンおよびHA22-α-アマニチン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EVサロゲート)。マウスの治療(7日間間隔で2回静脈内注射、矢じり)を、腫瘍が約120mmに達したときに開始した。HA22-α-アマニチンは2用量(0.5または1mg/kg)で評価し、ICT-α-アマニチンは1mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは0.5または2mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図17】SUM190を移植したNOD-ScidマウスのCh-15A7.5-α-アマニチンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NOD-Scidマウス(n=10/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-α-アマニチンおよびCh-15A7.5-α-アマニチン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EVサロゲート)。マウスの治療(1回静脈内注射、矢じり)を、腫瘍が約120mmに達したときに開始した。Ch-15A7.5-α-アマニチンは3用量(2、4および8mg/kg)で評価し、ICT-α-アマニチンは8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図18】SUM190を移植したNOD-ScidマウスのHA22-a-アマニチンADCでの治療は、長続きする腫瘍退縮期間を誘導する。 NOD-Scidマウス(n=10/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT細胞を同所的に異種移植した。3個の異なるADCを試験した:アイソタイプコントロールであるICT-α-アマニチンおよびHA22-α-アマニチン並びにエンホルツマブベドチンサロゲートであるHA22-MC-vc-PABC-MMAE(EVサロゲート)。マウスの治療(1回静脈内注射、矢じり)を、腫瘍が約120mmに達したときに開始した。HA22-α-アマニチンは3用量(2、4および8mg/kg)で評価し、ICT-α-アマニチンは8mg/kgで与え、エンホルツマブベドチン(EV)サロゲートは4mg/kgで与えた。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
図19】腫瘍細胞株および正常分化ヒトケラチノサイトが発現したネクチン-4へのCh-15A7.5およびそのヒト化バリアントの異なる結合。フローサイトメトリーによる検出。 Ch-5A12.2、Ch-15A7.5およびそのヒト化バリアント15A7.5-H1L2、-H1L3、-H2L2、-H2L3、-H3L0、-H3L2、-H3L3の用量範囲(8pM~33nM)を使用した、TNBC細胞株(SUM190、上部パネル)および正常分化(0.1mM CaCl)ヒトケラチノサイト(NHEK、下部パネル)のフローサイトメトリー解析。細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒトFc抗体で染色した。正規化した平均蛍光強度を示す。非線形曲線当てはめ(4パラメータ)を、GraphPad Prism 9ソフトウェアを用いて行った。Ch-5A12.2のEC50と比較した、Ch-15A7.5およびそのヒト化バリアントのケラチノサイトに対するはるかに低い見かけのEC50(下部パネル)に留意されたい。
図20】親抗体クローン5A12.2の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
図21】9A2.7のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
図22】3A1.4のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
図23】8F06のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列には、下線を引いている。
図24】親抗体クローン15A7.5の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VK)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列は、灰色で影付けしている。
図25】15A7.5のヒト化バリアントの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列。IMTG命名法によるH-CDR配列およびL-CDR配列は、灰色で影付けしている。
図26】ヒト化15A7.5バリアントの親和性値
【実施例
【0083】
材料および方法
細胞株:
ヒト乳がん細胞株MDA-MB231(ATCC、Manassas,VA)は、10%ウシ胎児血清、50IU/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを補充したDMEM中で培養した。細胞に、PVRL4 cDNAを含有する発現ベクターp3XFLR4.C1をトランスフェクトした。ヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株SUM190PT(BioIVT、Westbury,NY)は、5%ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、1%Hepes、1%インスリン、1μg/mLヒドロコルチゾン、6.8ng/mLトリヨードL-チロシン、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを有するHam’s F12培地中で培養した。チャイニーズハムスター卵巣CHO細胞株は、10%ウシ胎児血清、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび2mMグルタミンを補充したDMEM中で培養した。ヒト乳がんMDA-MB-468細胞株およびT47D細胞株は、10%ウシ胎児血清、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを補充したRPMI中で培養した。
【0084】
ELISA:
サンドイッチ酵素結合免疫吸着法を使用して、Ch-15A7.5抗体の特異性を制御し、異なるmab間の競合アッセイを実施した。96ウェルプレートを、10nMのネクチン-4-VCC-Fc、ネクチン-1-VCC-Fc(細胞外部分全体)またはネクチン-4-V-Fc(IgVドメインのみを含む)で、+4℃で一晩コーティングした。洗浄およびPBS 1%BSAでの飽和後、細胞を、10nMのペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mabと25℃で2時間インキュベートした。競合の場合においては、0.5nMのペルオキシダーゼコンジュゲートCh-15A7.5 mabの結合を、可変濃度(0.018nM~40nM)の「冷」mabの存在下で測定した。100μLのペルオキシダーゼ基質を添加し(One Step ABST、Pierce)、ODを405nmで読み取った。
【0085】
フローサイトメトリー:
(天然のまたはトランスフェクトされた)ネクチン-4を発現する細胞または細胞株(10,000~50,000)を、示された抗体の用量範囲とインキュベートした。洗浄後、細胞を次いで、フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗ヒト抗体(5μg/mL)Jackson Immuno Research)で染色した。固定後、細胞を、フローサイトメトリー取得前に、生存率色素(e780、Invitrogen)で染色した。
【0086】
免疫組織化学:
-80℃で保存していた凍結サンプルを、ドライアイス上で維持し、引き続く切片の数を最大化することを可能にするであろうようにプラスチック製クライオモールド中に置き、Optimal Cutting Temperature(OCT)培地中に包埋した。OCTの凍結ブロックをOCTとディスク上に載せ、凍結切片法を、NX70クライオスタット(Thermo Scientific)上で、-20℃で実施した。凍結切片(7μm)を、スーパーフロストプラススライド(VWR)上に載せた。各一連の試験について必要とされる数のスライドだけを、準備し、使用まで-80℃で保存した。残りのブロックは、さらなる使用まで-80℃で保存した。切片を、スライド上に配置し、アセトン中-20℃で10分間固定した。Roche DABキットのプロトコルの一部として、内因性ペルオキシダーゼを、スライドを過酸化水素(H)中に浸すことによって阻害した。各mabのいくつかの希釈物を、ノイズ対シグナル比を最適化するために試験し、0.5μg/mLのマウス15A7.5 mabおよび10μg/mLのマウス9A2.7mabを、最適として決定した。二次抗体のマウス組織への非特異的結合を軽減するために、ウサギ抗マウスIgG(4μg/mL、Abcam)を、一次Abインキュベーション後に添加した。omni-map抗ウサギHRP(Roche)を次いで使用して、製造業者(Ventana automat)の指示書に従ってDAB染色を実施した。染色強度および染色された細胞の比率の両方の評価を、実施した。訓練を受けた2人の技術者が、同じ顕微鏡視野を独立して順次観察した。染色された細胞の比率および染色強度の両方を、各視野について評価した。各染色について、10個の視野を、組織の最善の可視化を可能にする倍率で無作為に選択した。採点手順は以下のとおりであった:(i)陽性に染色された細胞の比率を推定し、0~4のスコアを各視野について割り付けた(0=0~5%;1=5~25%;2=25~50%;3=50~75%;および4=75~100%);並びに(ii)染色強度は、陰性の、弱い、中間の、および強い褐色染色の存在に対応して、それぞれ0、1、2、または3として採点した。各視野および各観察者についての最終スコアは、2個の値の掛け算であった(0=組織中に何ら染色なし;12=組織が、強く染色された細胞を含有する)。各組織型について、各スライドセットの5枚のスライドのそれぞれに対して、10個の独立した観察野を、染色強度および標識された細胞の比率の両方について並行して採点した。技術者は同時に、所与の視野(仮想スライド、コンピューター画面上)を観察し、他の観察者の結果がわからないように独立して採点した。各スライドについて、各技術者の10個の得点を平均して、各観察者についての最終スコアを設定した。2人の観察者の最終スコアを平均し、所与のスライドの組織スコアを得た。ヒトの皮膚については、再現性の最初のセットの結果のみを提示する。
【0087】
内部移行アッセイ
1万個のSUM190PTまたはヒト分化ケラチノサイト(0.1mM CaCl2)を、96ウェルプレート中に播種し、引き続きpHABチオール反応性色素をコンジュゲートした抗ネクチン-4mAbおよびアイソタイプコントロールの用量範囲(1.6ng/mL~5μg/mL)と37℃で24時間インキュベートした。内部移行およびエンドリソソーム処理の後、酸性環境は、色素に蛍光を発せさせる。蛍光強度を、プレートリーダー上で532nmの励起波長および560nmの発光波長でモニタリングした。
【0088】
インビトロ細胞毒性アッセイ
ADCのインビトロ細胞毒性活性を分析するために、細胞生存率を、製造業者(Biosource、CA,USA)が推奨するAlamarBlue染色プロトコルを使用して評価した。該試験は、蛍光酸化還元指示薬を組み込む。蛍光強度は、細胞の代謝低下に比例する。実験は、96ウェルプレート中で0日目に3000細胞/ウェル(SUM190PTまたは分化NHEK)をADCの連続希釈液とトリプリケートでインキュベートすることによって行った。1/10体積のalamarBlue溶液を37℃で2時間インキュベートし、595nm(FLUOstar Optima、BMG Labtech)で読み取ることによって、AlamarBlueを、5日目に測定した。
【0089】
マウス実験
NOD/SCID(非肥満糖尿病/重症複合免疫不全)/gcヌルマウス(NSG)は、Charles River Laboratory(Margate,UK)から入手した。6~7週齢の雌(n=5/群)に、Matrigel中に包埋したSUM190PT(0.5×10個)細胞を両側に同所的に異種移植した。ADCでの治療を、それぞれの実験において言及するとおり実施した。腫瘍サイズ(n=10/群)を、その後1週間に2回ノギスでモニタリングし、サイズを、以下の式(L×l×h×Pi/6)を用いて報告した。
【0090】
ハイブリドーマのシーケンシング
ハイブリドーマのシーケンシングのために、RNAをまず、ハイブリドーマ細胞ペレットから抽出した。cDNAを逆転写により生成させ、VHドメインおよびVLドメインを、Prime STARMax DNA Polymerase(Takara)を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅した。PCR産物を引き続き、専用の重鎖および軽鎖発現ベクター中にクローニングし、次いでシーケンシングした。
【0091】
キメラ抗体の生成、産生、精製および制御
軽鎖発現ベクターは、Vカッパ鎖をコードしている。使用するペイロードに依存して、D265C(ThiomAb)L234AおよびL235Aの変異を有するFc断片をコードするもの、P331S、L234QおよびL235Fの変異を有するFc断片をコードするものの2つの異なる重鎖発現ベクターを使用した。両方のFc断片とも、「Fcサイレント」である。抗ネクチン-4エンホルツマブ(HA22)の配列もまた、同じベクター中にクローニングした。
【0092】
軽鎖ベクターおよび重鎖ベクターを、1.2/1の比で播種したHEK293中にトランスフェクトした。6日間の産生後、培養上清を清澄化し、mAbを、製造業者の指示書に従ってMabSelect PrismA樹脂(GE Healthcare)を使用して精製した。0.5Mグリシン、3M NaCl、pH8.9を結合バッファとして使用し、0.1Mクエン酸pH3を溶出について使用した。即座の中和を、10%(V/V)1M Tris-HCl pH9を用いて行った。モノクローナルキメラ抗体を次いで、PBS 1×pH7.4(Mini dialysis devices、2mL-10k、Thermo Scientific)に対して透析し、その後、0.22μMフィルタ(Milelex GV hydrophilic PVDF,Millipore)上で濾過した。濃度は、各モノクローナル抗体の比吸光係数(E1% 280nm)を考慮して、Nanodrop 2000 Spectrophotometer(Thermo Scientific)を用いて決定した。純度は、10%イソプロパノールを補充した0.2M NaPO、0.3M NaCl pH6.9中で平衡化したProtein-BEH 200Aカラムを使用する、Acquity UPLC-HClass Bio(Waters)を使用して、UPLC-SECによって決定した。抗体の質量は、逆相カラム(PLRP-S 4000A、Agilent technologies)を使用して、Xevo G2-S Q-Tof質量分析計(Waters)において決定した。全てのサンプルを、製造業者の指示書に従って、37℃でのPNGase Fグリコシダーゼ(New England Biolabs)を用いた脱グリコシル化後、分析した。最終物質の断片化および/または凝集は、SDS-PAGEによって評価した。エンドトキシン負荷は、chromogenic LAL-kinetic assay(Charles River Endosafe)を使用して決定した。
【0093】
抗体コンジュゲーション
チオール反応性色素pHAB(Promega)を、製造業者の指示書に従ってマレイミド化学を使用して、選択した抗ネクチン-4 ThiomAb(D265C、L234A、L235A)抗体のシステインにコンジュゲートさせた。簡単に言うと、抗体を、0.1Mリン酸バッファpH7.0に対して透析した後、穏やかな攪拌下室温で1時間2.5mMで還元した。引き続き、DTTを、Zebaスピン脱塩カラム(7MWCO)上で2回洗浄/遠心分離することによって除去した。1.2LのpHdye試薬(10μg/mL DMSO)を100μgの抗体に添加し、遮光して室温で1時間インキュベートした。Zeba脱塩カラムでの過剰な色素の除去後、色素抗体比を、異なる抗体間の同等のコンジュゲーションを確認するために計算した。
【0094】
切断可能なリンカー(バリン アラニン)または非切断可能なリンカーを有するシステイン反応性リンカー-アマニチン化合物(Heidelberg Pharma)を、マレイミド化学を使用して、選択した抗ネクチン-4 ThiomAb(D265C、L234A、L235A)抗体の操作されたシステイン残基にコンジュゲートさせた。簡単に言うと、PBS 1×pH7.4中のThiomAb抗体をTCEPで還元し、鎖間ジスルフィドをデヒドロアスコルビン酸によって再酸化した。引き続き、操作されたシステインを、システイン反応性リンカーであるアマニチン化合物HDP 30.1699とのコンジュゲーションのために使用した。コンジュゲートは、透析によって精製した。LC-MS分析による薬物-抗体比(DAR)は、コンジュゲートしたmAbあたり1.44個と1.79個との間の毒素であった。SEC-HPLCによって決定したところ、2%未満の物質が凝集していた。
【0095】
システイン反応性リンカー-エキサテカン化合物マレイミド-Gly-PSAR10-グルクロニド-エキサテカン(MabLink)を、選択した抗ネクチン-4mAb(P331S、L234QおよびL235F)のシステイン残基にコンジュゲートさせた。簡単に言うと、PBS 1×、1mM EDTA中のmAbを37℃で2時間14モル当量のTCEPで還元し、その後、バッファを100mM KPO、1mM EDTA pH7.4に交換した(Amicon ultra 30kDa)。12モル当量のシステイン反応性リンカー-エキサテカン化合物を使用して、室温で35分間、反応性システインとコンジュゲートさせた。バッファを次いで、100mM KPO pH8.0に交換した後、酸素の非存在下37℃で24時間インキュベートして、マレイミドを自己加水分解させた。最後のバッファ交換を、20mM His pH6.0中で実施した後、0.22μMフィルタで濾過した。LC-MS分析による薬物-抗体比(DAR)は、コンジュゲートしたmAbあたり7.77個と7.82個との間の毒素であった。SEC-HPLCによって決定したところ、8%未満の物質が凝集していた。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] (a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号1、7、79、87若しくは95に係るアミノ酸配列または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号2、8、80、88若しくは96に係るアミノ酸配列または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号3、9、81、89若しくは97に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号4、10、83、91若しくは99に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号5、11、84、92若しくは100に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号6、12、85、93若しくは101に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VL領域を含む、ネクチン-4に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[2] (i)配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2、および配列番号3のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2および配列番号6のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]の抗体または抗原結合断片。
[3] (i)配列番号7のCDR-H1、配列番号8のCDR-H2、および配列番号9のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号10のCDR-L1、配列番号11のCDR-L2および配列番号12のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]または[2]の抗体または抗原結合断片。
[4] (a)配列番号13に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号14に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域 を含む、[1]~[3]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[5] (i)配列番号79のCDR-H1、配列番号80のCDR-H2、および配列番号81のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号83のCDR-L1、配列番号84のCDR-L2および配列番号85のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]の抗体または抗原結合断片。
[6] (i)配列番号87のCDR-H1、配列番号88のCDR-H2、および配列番号89のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号91のCDR-L1、配列番号92のCDR-L2および配列番号93のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]の抗体または抗原結合断片。
[7] (i)配列番号95のCDR-H1、配列番号96のCDR-H2、および配列番号97のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号99のCDR-L1、配列番号100のCDR-L2および配列番号101のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]の抗体または抗原結合断片。
[8] (a)配列番号82に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号86に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、[1]または[5]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[9] (a)配列番号90に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号94に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、[1]または[6]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[10] (a)配列番号98に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(b)VL領域、特に配列番号102に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、[1]または[7]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[11] キメラ抗体、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはそれらの抗原結合断片である、[1]~[10]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[12] クラスIgG、例えばサブクラスIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4、クラスIgM、クラスIgAの抗体またはそれらの抗原結合断片であるか、あるいは一本鎖抗体、または抗体Fv断片である、[1]~[11]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[13] (a)相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖(VH)領域であって、
(i)該CDR-H1が、配列番号21、35、49若しくは63に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-H2が、配列番号22、36、50若しくは64に係るアミノ酸配列または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-H3が、配列番号23、37、51若しくは65に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VH領域、並びに任意に
(b)可変軽鎖(VL)領域、特に相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むVL領域であって、
(i)該CDR-L1が、配列番号24、38、52若しくは66に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(ii)該CDR-L2が、配列番号25、39、53若しくは67に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含み、
(iii)該CDR-L3が、配列番号26、40、54若しくは68に係るアミノ酸配列、または置換、特に1個若しくは2個のアミノ酸の保存的置換を含むアミノ酸配列を含む、VL領域を含む、[1]~[4]、[11]または[12]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[14] (a)(i)配列番号21のCDR-H1、配列番号22のCDR-H2、および配列番号23のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号24のCDR-L1、配列番号25のCDR-L2、および配列番号26のCDR-L3を含むVL領域、または
(b)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号38のCDR-L1、配列番号39のCDR-L2、および配列番号40のCDR-L3を含むVL領域、または
(c)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号50のCDR-H2、および配列番号51のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2、および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、または
(d)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
(e)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域、
(f)(i)配列番号35のCDR-H1、配列番号36のCDR-H2、および配列番号37のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、または
(g)(i)配列番号49のCDR-H1、配列番号41のCDR-H2、および配列番号42のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号66のCDR-L1、配列番号67のCDR-L2および配列番号68のCDR-L3を含むVL領域、
(h)(i)配列番号63のCDR-H1、配列番号64のCDR-H2、および配列番号65のCDR-H3を含むVH領域、並びに任意に
(ii)配列番号52のCDR-L1、配列番号53のCDR-L2および配列番号54のCDR-L3を含むVL領域を含む、[1]~[4]、[11]、[12]または[13]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[15] (i)配列番号27、41、55若しくは69から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28、42、56若しくは70若しくは103から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、[1]~[4]および[11]~[14]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[16] (a)(i)配列番号27に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも 90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号28に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(b)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号42に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(c)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(d)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(e)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(f)(i)配列番号41に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(g)(i)配列番号55に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号70若しくは103に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、あるいは
(h)(i)配列番号69に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および任意に
(ii)VL領域、特に配列番号56に係るアミノ酸配列、または少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%若しくは少なくとも99%のその同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、[1]~[4]および[11]~[15]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[17] ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で結合する、[1]~[16]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[18] 結合親和性が、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光によって検出される、[17]の抗体または抗原結合断片。
[19] ヒト分化ケラチノサイトが発現するネクチン-4と比較して、腫瘍が発現するネクチン-4に対してより高い親和性で結合する、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[20] 結合親和性が、フローサイトメトリー、免疫組織化学および/または蛍光によって検出される、[20]に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
[21] 抗体または抗原結合断片に結合している標識基および/またはエフェクター基を含む[1]~[20]のいずれかの抗体または抗原結合断片。
[22] 標識基が、イメージング時に検出可能である、色素、常磁性基、放射性基または蛍光性基である、[21]の抗体または抗原結合断片。
[23] エフェクター基が、治療基、特に細胞毒性剤である、[21]の抗体または抗原結合断片。
[24] 薬剤における使用のための、特に治療用途またはインビトロおよびインビボ診断用途を含む診断用途のための、[1]~[23]のいずれかの抗体または断片。
[25] がんおよび/または炎症性障害を予防するおよび/または治療する方法における[18]に記載の使用のための、[1]~[23]のいずれかの抗体または断片。
[26] がんが、ネクチン-4過剰発現と関連している、[24]または[25]に記載の使用のための、[1]~[23]のいずれかの抗体または断片。
[27] がんが、尿路上皮がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん頭頸部がんおよび/または食道がんである、[24]~[26]のいずれかに記載の使用のための、[1]~[23]のいずれかの抗体または断片。
[28] [1]~[23]のいずれかに記載の少なくとも2つの異なるモノクローナル抗体または断片の組合せ。
[29] [1]~[23]のいずれかに記載の抗体の1つ以上、または[1]~[23]の抗体のいずれか1つの少なくとも1つのVLおよび/若しくは1つのVHをコードする核酸。
[30] [29]に記載の核酸を含むベクター。
[31] [30]のベクターを含む宿主細胞。
[32] [1]~[27]のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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【配列表】
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