(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20241031BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20241031BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
H05K7/20 H
H05K7/20 F
H05K7/20 Q
(21)【出願番号】P 2024014915
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオユー
(72)【発明者】
【氏名】七種 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
(72)【発明者】
【氏名】楊 学雍
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-512380(JP,A)
【文献】特開2009-237955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
前記発熱体の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材と、
相互間に前記熱拡散部材を跨ぐように配置されると共に、互いに向かい合う一側面のみに吐出口が設けられることで、前記熱拡散部材に向かって空気を吐出可能な一対のファンと、
を有し、
前記筐体は、前記一対のファンの並び方向に沿って延在し、排気口が形成された外壁を有し、
前記排気口は、前記並び方向を基準とした場合に前記一対のファンの間に位置して
おり、
さらに、前記筐体は、底面から突出するように設けられ、前記並び方向に沿って延在する突出部を有し、
前記突出部は、その長手方向に沿って延在する一対の立壁を有し、該一対の立壁の一方又は両方には通気口が形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記ファンは、前記一側面と直交する端面に設けられた吸込口を有し、
前記筐体は、前記排気口と同一面で前記外壁に形成され、前記ファンの吐出口のない側面に対向する吸気口を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
ディスプレイを搭載した蓋体と、
前記外壁が設けられた前記筐体の一縁部と、前記蓋体とを回動可能に連結するヒンジと、
をさらに備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
少なくとも一部が前記一対のファンの間に配置され、該一対のファンの間に配置された部分に前記発熱体を実装した基板をさらに備え、
前記基板は、前記ファンの厚み方向を基準とした場合に前記吐出口の高さの中間に位置している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電子機器であって、
前記筐体は、前記外壁の長手方向と直交する方向に延在し、それぞれ第2の吸気口が形成された一対の側壁を有し、
前記第2の吸気口は、前記側壁の長手方向を基準とした場合に前記ファンに対して前記排気口及び前記吸気口とは反対側に位置している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記熱拡散部材は、金属プレートの表面にヒートパイプを接続した部材、又は、ベーパーチャンバである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記通気口は、前記突出部の長手方向を基準として、前記排気口及び前記一対のファンの少なくとも一方と対応する位置にある
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を搭載している。この種の電子機器は、通常、ファンやヒートシンクを備え、発熱体が発生する熱を吸熱して外部に放熱する冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷却モジュールは、左右一対のファンと、各ファンの後方を向いた吐出口の直後に配置された一対のヒートシンクとを備える。ヒートシンクは、発熱体の熱がヒートパイプを用いて輸送され、その熱をファンの送風で筐体外へと放熱する。つまりヒートシンクには発熱体の熱が集中する。従って、筐体は、ヒートシンクの直上や直下での表面温度が局所的に高くなることがある。特に、近年の大幅な薄型化が図られた筐体は表面温度の一層上昇し易くなる。
【0005】
しかも特許文献1の構成は、各ファンの後方にヒートシンクを設置しているため、ヒートシンクによって筐体内のスペースが侵食されている。その結果、例えば筐体の前方に配置されるバッテリ装置や各種デバイスの設置スペースの確保が難しくなるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、筐体の表面温度を抑えると共に、筐体内のスペース効率を向上することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、前記発熱体の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材と、相互間に前記熱拡散部材を跨ぐように配置されると共に、互いに向かい合う一側面のみに吐出口が設けられることで、前記熱拡散部材に向かって空気を吐出可能な一対のファンと、を有し、前記筐体は、前記一対のファンの並び方向に沿って延在し、排気口が形成された外壁を有し、前記排気口は、前記並び方向を基準とした場合に前記一対のファンの間に位置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、筐体の表面温度を抑えると共に、筐体内のスペース効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、筐体の底面を斜め後方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、筐体の底面を斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、冷却モジュール及びその周辺部での筐体の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図6】
図6は、冷却モジュール及びその周辺部での筐体の内部構造を模式的に示す正面断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る熱拡散部材を有する冷却モジュール及びその周辺部での筐体の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、構成が異なる冷却モジュールを筐体に搭載した場合の電子機器の冷却性能及び筐体の表面温度を比較したシミュレーション実験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCである。電子機器10は、蓋体11と筐体12をヒンジ14で相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態ではノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
蓋体11は、薄い扁平な箱状の筐体である。蓋体11はディスプレイ16を搭載している。ディスプレイ16は、例えば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイである。
【0013】
筐体12は、薄い扁平な箱体である。筐体12の上面(表面12a)にはキーボード装置18及びタッチパッド19が臨んでいる。以下、筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、オペレータがキーボード装置18を操作する姿勢を基準とし、筐体12の幅方向(左右)をそれぞれX1,X2方向、筐体12の奥行方向(前後)をそれぞれY1,Y2方向、筐体12の厚み方向(上下)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。これら各方向は、説明の便宜上定めた方向であり、電子機器10の使用状態又は設置姿勢等によって変化する場合も当然にあり得る。
【0014】
筐体12は、上面及び四周側面を形成する筐体部材20と、下面を形成するカバー材21とで構成されている。筐体部材20は、筐体12の表面12aを形成するカバープレート20Aの四周縁部に立壁20Bを形成したものである。このため筐体部材20は下面が開口した略バスタブ形状を有する。カバー材21は略平板形状を有し、筐体部材20の下面開口を閉じる蓋となる。筐体部材20及びカバー材21は厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。立壁20Bはカバー材21に形成してもよい。この場合、筐体部材20はカバープレート20Aのみで構成されるとよい。
【0015】
ヒンジ14は、筐体12の後縁部に形成された凹状のヒンジ配置溝12bに設置され、筐体12と蓋体11とを連結する。ヒンジ14は、例えば回転軸となるヒンジシャフト14aをヒンジ筐体14bの長手方向の両端部にそれぞれ支持した構造である(
図5参照)。本実施形態のヒンジ14は、ヒンジ筐体14bがヒンジ配置溝12bの長手方向に沿って延在した、いわゆるワンバー形状に構成されている。ヒンジ14は、ヒンジ筐体14bが蓋体11と一体となって回転しつつ斜め後方へと下降する(
図5参照)。ヒンジ14は、このようにして蓋体11の回動角度を稼ぐ構造、いわゆるドロップダウン構造である。ヒンジ14の構造は上記以外でもよい。
【0016】
図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、カバー材21を取り外して筐体部材20の内部を下面側から見た図である。
【0017】
図2に示すように、筐体12の内部には、冷却モジュール24と、マザーボード25と、バッテリ装置26とが収容されている。筐体12の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0018】
マザーボード(基板)25は、電子機器10のメインボードとなる回路基板である。マザーボード25は、筐体12のY2側寄りに配置され、X方向に延在している。バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード25のY1側寄りに配置され、X方向に延在している。
【0019】
本実施形態のマザーボード25は、CPU(Central Processing Unit)25aを実装している。マザーボード25は、CPU25a以外にも、各種の電子部品、例えばGPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、通信モジュール等を実装することができる。
【0020】
マザーボード25は、例えば上面(第1面25A)が筐体部材20に対する取付面となり、下面(第2面25B)がCPU25a等の実装面となる。
【0021】
次に、冷却モジュール24の構成例を説明する。
【0022】
CPU25aは、筐体12内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。冷却モジュール24は、CPU25aが発生する熱を吸熱及び拡散し、筐体12外へと排出することができる。冷却モジュール24は、CPU25a以外の発熱体、例えばGPU等を冷却するように構成してもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の冷却モジュール24は、熱拡散部材28と、一対のファン30,30とを備える。
【0024】
熱拡散部材28はCPU25aの熱を吸熱して拡散するものである。熱拡散部材28は、金属プレート28aと、ヒートパイプ28bとを有する。
【0025】
金属プレート28aは、銅又はアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成された薄いプレートである。本実施形態の金属プレート28aは銅プレートである。金属プレート28aは、左右のファン30,30の間でX方向に延在している。金属プレート28aは、左右のファン30,30の間に配置されたマザーボード25の一部(部分25C)と、部分25Cに実装されたCPU25aを第2面25B側(Z2側)から覆っている(
図6も参照)。金属プレート28aはCPU25aの表面に接続される。金属プレート28aとCPU25aとの間には、例えば熱伝導グリース及びCPU25aの外形と略同一サイズの銅ブロック等が介在する。金属プレート28aのX方向に沿う各縁部28a1,28a2には板ばね32が取り付けられている。板ばね32は金属プレート28aをCPU25aに対して押し付ける部品である。
【0026】
ヒートパイプ28bは、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ28bは、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内側の密閉空間に作動流体を封入した構成である。作動流体としては、水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。ヒートパイプ28bは例えば2本1組で用いることができる。ヒートパイプ28bは、金属プレート28aのCPU25aに対する接続面の裏面に固定されている。各ヒートパイプ28bは、長手方向の中央付近がCPU25aとZ方向にオーバーラップしている。これによりヒートパイプ28bは、金属プレート28aに伝達されたCPU25aの熱を金属プレート28aよりも高い効率で迅速に拡散することができる。
【0027】
一対のファン30,30は、相互間に熱拡散部材28を跨ぐようにX方向に並んで配置され、互いに向かい合っている。各ファン30は、互いに向かい合う側面30aのみに吐出口34を有する。つまり左右のファン30の吐出口34は、相互間に熱拡散部材28を挟んで対向している。これにより各ファン30は熱拡散部材28に向かって空気を吐出可能である。各ファン30は、Z方向を向いた上下の端面30b,30cのうち、少なくともZ2側の端面30cに吸込口35を有する。吸込口35はZ1側の端面30bにも設けることができる。端面30b,30cは、側面30aと直交し、さらにインペラ30dの回転軸の軸方向と直交する面である。
【0028】
ファン30はハウジングの内部に収容したインペラ30dをモータによって回転させる遠心ファンである(
図6参照)。これによりファン30は、吸込口35から吸い込んだ空気を吐出口34から吐出することができる。
【0029】
次に、ファン30によって筐体12内に空気を導入し、ファン30から吐出された空気を筐体12外に排出する吸排気構造について説明する。
【0030】
図3は、筐体12の底面12cを斜め後方から見た斜視図である。
図4は、筐体12の底面12cを斜め前方から見た斜視図である。
図5は、冷却モジュール24及びその周辺部での筐体12の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図6は、冷却モジュール24及びその周辺部での筐体12の内部構造を模式的に示す正面断面図である。
【0031】
図2~
図5に示すように、電子機器10の吸排気構造は、筐体12の後縁部(Y2側縁部)の立壁30B(外壁38)に形成された排気口40を備える。排気口40は、ファン30の吐出口34から吐出され、熱拡散部材28の表面を通過しつつこれを冷却した空気(温風)を筐体12外に排出するための開口である。
【0032】
本実施形態の場合、Y2側の立壁30Bは、その長手方向に沿って延在し、Y1側に凹んだヒンジ配置溝12bを有する。外壁38はヒンジ配置溝12bの底壁(前壁)である。排気口40は、外壁38の長手方向の中央付近に設けられている。排気口40は、例えばX方向に近接して並んだ複数(
図3では4個)の開口部40aで構成されている。排気口40は、左右のファン30,30の並び方向(X方向)を基準とした場合にファン30,30の間に位置している。熱拡散部材28は外壁38に近接した位置でX方向に延在している。このため排気口40は、金属プレート28aのY2側の縁部28a2と近接し、対向している。
【0033】
立壁30Bはヒンジ配置溝12bを持たない構成とすることもできる。この場合、排気口40は、外壁である立壁30B自体に形成すればよく、後述する吸気口42についても同様である。
【0034】
電子機器10の吸排気構造は、外壁38に形成された吸気口42を備えることができる。吸気口42は、筐体12外の空気をファン30の吸込口35へと導入するための開口である。
【0035】
吸気口42は、排気口40と同一面で外壁38に形成されている。吸気口42は、例えばX方向に近接して並んだ複数(
図3では4個)の開口部42aで構成されている。吸気口42は一対設けられ、外壁38の長手方向で排気口40を跨ぐように配置されている。各吸気口42は左右のファン30,30のY2側にそれぞれ位置しており、外壁38の左右端部付近にある。
【0036】
各ファン30は、外壁38側を向いたY2側の側面30eには吐出口34が設けられていない(
図2参照)。側面30eは吐出口34が形成された側面30aと交差している。吸気口42は、吐出口34がない側面30eに対して近接し、対向している。
【0037】
電子機器10の吸排気構造は、筐体12の側縁部(X1,X2側縁部)の立壁30B(側壁44)に形成された吸気口(第2の吸気口)46を備えることができる。吸気口46は、筐体12外の空気をファン30の吸込口35へと導入するための開口である。
【0038】
左右の側壁44は、外壁38の長手方向であるX方向と直交するY方向に延在している。各側壁44は筐体12の外周を形成するZ方向に沿う鉛直面と、この鉛直面からZ2側に向かって次第に筐体12の中央側に傾斜したテーパ面44aとを有する。吸気口46は、各側壁44のテーパ面44aにそれぞれ設けられている。吸気口46は、例えばY方向に近接して並んだ複数(
図3では2個)の開口部46aで構成されている。左右の吸気口46は、側壁44の長手方向(Y方向)を基準とした場合にファン30に対して排気口40及び吸気口42とは反対側に位置している。つまり吸気口46はファン30よりも前方(Y1側)にある。
【0039】
図2~
図6に示すように、電子機器10の吸排気構造は、筐体12の底面12cに設けた突出部48に形成された通気口50,51,52を備えることができる。
【0040】
突出部48は、底面12cから突出している。突出部48は、X方向に長尺でZ方向に扁平な角筒状を成している。突出部48のX方向長さは、筐体12のX方向幅の略全長に亘っている。突出部48は底面12cの前後方向(Y方向)でY2側に寄った位置に設けられている。突出部48は、その長手方向(X方向)に沿って延在する一対の立壁48a,48bを有する。Y2側の立壁48bは、外壁38の直ぐ前方にある。筐体12の平面視において、突出部48は左右のファン30,30と上下にオーバーラップ位置に配置されている(
図2参照)。
【0041】
突出部48の長手方向の端部(左右の端面)には、それぞれ入出力ポート54が2個ずつ設けられている。入出力ポート54は、HDMI(登録商標)規格に準拠したもの、USB3.0通信規格に準拠したもの等を例示できる。これにより電子機器10は、側壁44にテーパ面44aを有しつつ、ある程度の高さが必要な入出力ポート54の設置が可能となっている。また突出部48は、机の上面等の載置面に載置された筐体12の後部を前部よりも持ち上げる後脚部としても機能する。これにより電子機器10は、使用時にキーボード装置18が前下がりの傾斜姿勢となり、操作性が向上する。
図3~
図6中の参照符号55は、電子機器10を載置面に載置する際の脚部となるゴム脚である。Y2側のゴム脚55は、突出部48の底面に設けられている。
【0042】
突出部48は、通気口50~52を備えることにより、電子機器10の吸排気構造の一部としても機能することができる。
【0043】
通気口50は、Y2側の立壁48bの長手方向の中央付近に設けられている。通気口50は、排気口40の補助排気口として機能する。通気口50は、例えばX方向に近接して並んだ複数(
図3では4個)の開口部50aで構成されている。通気口50は、X方向で左右のファン30,30の間に位置している。つまり通気口50は、少なくとも一部が排気口40とY方向にオーバーラップする位置にある。
【0044】
通気口51は、通気口50と同一面で立壁48bに形成されている。通気口51は、吸気口42の補助吸気口として機能する。通気口51は、例えばX方向に近接して並んだ複数(
図3では3個)の開口部51aで構成されている。通気口51は、一対設けられ、立壁48bの長手方向で通気口50を跨ぐように配置されている。各通気口51は左右のファン30,30のY2側にそれぞれ位置しており、立壁48bの左右端部付近にある。つまり通気口51は、少なくとも一部が吸気口42とY方向にオーバーラップする位置にある。
【0045】
通気口52は、Y1側の立壁48aに設けられている。通気口52は、吸気口42の補助吸気口として機能する。通気口52は、例えばX方向に近接して並んだ複数(
図3では3個)の開口部52aで構成されている。通気口52は、一対設けられ、X方向で左右のファン30,30のY1側にそれぞれ位置している。各通気口51は、立壁48aの左右両端付近にそれぞれ設けられている。各ファン30は、通気口51側を向いたY1側の側面30fにも吐出口34がない。
【0046】
図5及び
図6に示すように、各ファン30の吸込口35が形成された端面30cは、突出部48の内側空間48cを臨んでいる。以下、端面30cを「吸込面30c」と呼ぶこともある。内側空間48cは、底面12cを形成するカバー材21の内面21aから突出部48の高さ分だけZ2側に深くなった溝状の空間である。つまり内側空間48cは、筐体12の内部空間をZ方向に拡張している。
【0047】
吸込面30cはZ2側を向いた面であり、内側空間48cの上部を覆うように配置されている。これによりファン30は、立壁48a,48bに設けた各通気口50,51から筐体12外の空気を吸込口35から円滑に吸い込むことができる。ファン30は厚み方向の一部、つまり吸込面30cが内側空間48c内に挿入されていることが好ましい。
【0048】
内側空間48cの深さ、つまりカバー材21の内面21aから突出部48の内底面48dまでのZ2方向高さは、例えば2.5~4mm程度とすることができる。内面21aから吸込面30cまでのZ2方向高さは、例えば0.5~1.5mm程度とすることができる。この際、吸込面30cと内底面48dの間には、1mm以上の隙間を確保しておくことが好ましい。これによりファン30は、通気口50,51から内側空間48c内に導入された空気を吸込口35で一層円滑に吸い込むことができる。またファン30の直下に内側空間48cがあることで、ファン30の厚みを拡張することができ、ファン30の風量を増大させることもできる。吸込面30cは内面21aよりもZ1側に位置していてもよい。
【0049】
ファン30は、Z2側の端面30cと共にZ1側の端面30bにも吸込口35を設けることで、外壁38に設けた各吸気口42からも筐体12外の空気を一層円滑に吸い込むこともできる。
【0050】
次に、冷却モジュール24による冷却作用について説明する。
図2~
図6中に示す1点鎖線の矢印は空気の流れを模式的に示したものである。
【0051】
電子機器10は、CPU25a等の発熱体が発生する熱は熱拡散部材28に伝達され、効率よく拡散される。熱拡散部材28の両側部にあるファン30は、吸気口42を通して外気(冷風)を吸込口35に吸い込み、吐出口34から吐出する。各ファン30は、吸気口46及び通気口51,52からも外気(冷風)を吸い込むこともできる。
【0052】
左右のファン30の吐出口34から吐出された空気は、熱拡散部材28の表面に沿って流れて熱拡散部材28を冷却し、同時にCPU25aの電子部品も直接的に冷却する。冷却後の空気(温風)は、外壁38の中央に開口する排気口40を通して筐体12外へと排出される。温風の一部は、通気口50からも筐体12外へと排出することができる。
【0053】
熱拡散部材28は、CPU25a等の発熱体の熱を拡散することができれば、上記した金属プレート28a及びヒートパイプ28bを備えた構成に限られない。
【0054】
図7は、変形例に係る熱拡散部材56を有する冷却モジュール57及びその周辺部での筐体12の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【0055】
図7に示す冷却モジュール57は、
図2、
図5及び
図6に示す冷却モジュール24と比べて、熱拡散部材28とは構成が異なる熱拡散部材56を備える。熱拡散部材56はベーパーチャンバである。以下、熱拡散部材56を「ベーパーチャンバ56」と呼ぶこともある。
【0056】
ベーパーチャンバ56はプレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ56は、2枚の薄い金属プレートの間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。作動流体は、上記したヒートパイプ28bと同一又は同様なものを用いることができる。ベーパーチャンバ56は、上記した金属プレート28aと比べると大幅に高い熱伝導率を有する。
【0057】
ベーパーチャンバ56は、上記した金属プレート28aと略同一範囲に設置することができる。これによりベーパーチャンバ56は、左右のファン30,30の間でマザーボード25の部分25C及びCPU25aを第2面25B側(Z2側)から覆う。ベーパーチャンバ56は、上記した金属プレート28aと同様にCPU25aの表面に対して熱伝導グリースや銅ブロック等を介して接続される。これによりベーパーチャンバ56は、CPU25aの熱を効率よく吸熱し、迅速に拡散することができる。
【0058】
突出部48は省略されてもよい。
図7に示す電子機器10は、筐体12に突出部48を設けない構成を例示している。この場合、筐体12は、カバー材21の底面12cに吸気口58を設けることが好ましい。吸気口58は各ファン30の吸込面30cと上下にオーバーラップする位置に形成された開口である。吸気口58は各ファン30の吸込口35に近接し、対向する。これによりファン30は吸気口58を通して吸込口35で外気を吸い込むことができる。
【0059】
なお、ベーパーチャンバ56は、
図5に示す突出部48を有する構成に適用してもよい。冷却モジュール57は、突出部48を備えた構成の筐体12に搭載してもよい。
【0060】
次に、本実施形態の電子機器10の作用効果について
図8を参照して説明する。
【0061】
図8は、構成が異なる冷却モジュールを筐体12に搭載した場合の電子機器の冷却性能及び筐体12の表面温度を比較したシミュレーション実験の結果を示す表である。
【0062】
図8において、右欄の「冷却モジュール24」は、熱拡散部材28を備えた冷却モジュール24での実験結果を示す。中欄の「冷却モジュール57」は、熱拡散部材56を備えた冷却モジュール57での実験結果を示す。
【0063】
左欄の「冷却モジュール60」は、比較例であり、従来技術と同様な冷却モジュールでの実験結果を示す。冷却モジュール60は、左右のファン61の後方にヒートシンク62をそれぞれ配置した構成である。CPU25a等の発熱体の熱は、銅プレート63を介してヒートパイプ64に伝達され、ヒートパイプ64で効率よく左右のヒートシンク62に輸送される。従って、冷却モジュール60のファン61は、銅プレート63側を向いた吐出口34の他、ヒートシンク62側を向いた第2吐出口65を有する。
【0064】
図8において、「ファン静圧」は、ファン30の静圧の大小を評価したものである。「合計風量」は、左右のファン30,30(61,61)の合計の風量(CFM)を示す。「重量」は、各冷却モジュール24,57,60の重量の大小を評価したものである。「上面温度」は、筐体12の表面12aでの高温部分の温度(℃)を示す。「底面温度」は、筐体12の底面12cでの高温部分の温度(℃)を示す。
【0065】
実験の結果、本実施形態の冷却モジュール24,57は、比較例の冷却モジュール60と比べて、ファン30の静圧が大きいこと、さらにファン30(61)の合計風量はほとんど変わらない反面、風速が速くなることが分かった。なお、本実施形態の冷却モジュール24,57は、比較例の冷却モジュール60と比べて、ヒートシンク62を持たない分だけ重量が軽いという利点もある。
【0066】
そして、本実施形態の冷却モジュール24,57は、比較例の冷却モジュール60と比べて、上面温度が大幅に低下することが分かった。つまり本実施形態の電子機器10は、オペレータが直接手で触れる機会が多いキーボード装置18及びその周辺での表面12aの温度が顕著に低下する。このため電子機器10はユーザビリティが大幅に向上することが確認された。ここで、比較例の冷却モジュール60の上面温度が高い理由の1つとしては、CPU25aの熱がヒートシンク62に集中した結果、その直上にある表面12aに局所的な高温部を生じさせたためと考えられる。
【0067】
なお、本実施形態の冷却モジュール24,57は、比較例の冷却モジュール60と比べて、底面温度はほとんど変わらないことが分かった。具体的には、冷却モジュール60と比べて、冷却モジュール57の上面温度は多少高いが、冷却モジュール24の上面温度は低下することが分かった。
【0068】
このように、本実施形態の冷却モジュール24,57は、冷却性能は従来のヒートシンク62を備えた冷却モジュール60と同等以上の冷却能力を担保しつつ、温度抑制が特に必要な上面温度を低下させることができる。特に熱拡散部材28を用いた冷却モジュール24は、冷却性能の点でも極めて有効であることが確認された。
【0069】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、筐体12内に設けられ、発熱体(例えばCPU25a)を冷却する冷却モジュール24(57)を備える。冷却モジュール24(57)は、発熱体の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材28(56)と、一対のファン30,30とを備える。一対のファン30,30は、相互間に熱拡散部材28(56)を跨ぐように配置されると共に、互いに向かい合う側面30aのみに吐出口34が設けられることで、熱拡散部材28(56)に向かって空気を吐出可能である。筐体12はファン30,30の並び方向(X方向)に沿って延在し、排気口40が形成された外壁38を有する。排気口40はX方向を基準とした場合に一対のファン30,30の間に位置している。
【0070】
このように電子機器10は、各ファン30の吐出口34を互いに向かい合う方向に設置している。各吐出口34からの送風は熱拡散部材28(56)の表面を通過し、その後方にある排気口40から筐体12外へと排出される。これにより電子機器10は、発熱体の熱を熱拡散部材28(56)で迅速に拡散させつつ、これをファン30からの送風で直接的に冷却できる。このため電子機器10は、従来の冷却モジュール60のようにヒートシンク62に発熱体の熱が集中し、その直上や直下にある筐体12の表面温度が局所的に高温になることを回避できる。その結果、電子機器10は、例えば薄型化が図られた筐体12であってもその表面温度を抑えることができ、ユーザビリティが向上する。しかも冷却モジュール24(57)は、通常、ファンと筐体の排気口との間に配置されるヒートシンクが不要となる。これにより冷却モジュール24(57)の重量が軽減される。さらに電子機器10は、筐体12内での冷却モジュール24(57)の占有スペースが縮小する。その結果、電子機器10は、筐体12内のスペース効率が向上し、例えばバッテリ装置26や無線通信用のアンテナ等の各種デバイスの設置スペースを拡大できる。
【0071】
筐体12は、排気口40と同一面で外壁38に形成され、ファン30の吐出口のない側面30eに対向する吸気口42を有することができる。これにより電子機器10は、例えば
図7に示す底面12cに開口する吸気口58を省略し、又は開口面積を低減することができ、筐体12の外観品質が向上する。なお、このように排気口40と吸気口42を同一面に形成できるのは次の理由による。すなわち冷却モジュール24(57)は、従来の冷却モジュール60のようなヒートシンク62を持たない。このため筐体12は、ファン30の直後にヒートシンクを通過した温風のための排気口を設ける必要がなく、この空いたスペースに吸気口42を形成できるためである。
【0072】
図2に示すように、筐体12の内部には、ファン30からの空気の流れをより円滑なものとするための空間(ダクト構造部70)を形成することもできる。ダクト構造部70は、周囲が気密壁70aで囲まれた空間である。気密壁70aは例えばスポンジやゴムを帯板状に形成した部材である。気密壁70aは、空気の通過を完全に遮断できる必要はないが、ある程度の通気抵抗を有して空気の流れる方向を規制できる必要がある。気密壁70aは、例えばマザーボード25の第1面25Aとキーボード装置18の下面との間と、第2面25Bとカバー材21の内面21aとの間とでそれぞれ起立する。
【0073】
ダクト構造部70の範囲は、例えばZ方向ではマザーボード25の第1面25Aとキーボード装置18との間と、第2面25Bと突出部48の内底面48dとの間に形成される。ダクト構造部70の範囲は、例えばX方向では左右のファン30,30間に形成される。ダクト構造部70の範囲は、Y方向では排気口40と突出部48のY1側の立壁48aとの間に形成される。
【0074】
これによりファン30の吐出口34からの空気は、ダクト構造部70内を流れて円滑に排気口40や通気口50へと排出される。その結果、電子機器10は、熱拡散部材28(56)及び発熱体(CPU25a)を冷却した温風が筐体12内でファン30の吸込口35に逆流することを防ぐことができ、冷却効率が一層向上する。
【0075】
図5~
図7に示すように、マザーボード25の部分25Cは、ファン30の厚み方向(Z方向)を基準とした場合に吐出口34の高さの中間に位置していることができる。これによりファン30の吐出口34からの冷風は、キーボード装置18とマザーボード25の第1面25Aとの間と、マザーボード25の第2面25Bと内面21a又は内側空間48cとの間とにそれぞれ円滑に流れる。これにより電子機器10は、筐体12の表面温度を一層低下させることができる。
【0076】
筐体12は、吸気口42を設けた外壁38と直交する左右の側壁44のそれぞれに吸気口46を有することもできる。そうするとファン30の吸込量が増大して吐出風量が増大するため、冷却モジュール24(57)の冷却能力が一層向上する。
【0077】
筐体12は、底面12cから突出するように設けられ、ファン30,30の並び方向(X方向)に沿って延在する突出部48を有することもできる。突出部48は、その長手方向に沿って延在する一対の立壁48a,48bの一方又は両方に通気口50~52が形成されていることができる。これにより各通気口50~52をその配置によって排気口又は吸気口として機能させることができる。
【0078】
ここで、電子機器10は、ファン30と外壁38との間にヒートシンクが配置されないため、ヒートシンクの幅分だけファン30の配置が外壁38に近づく。これにより電子機器10は、ファン30と上下にオーバーラップする位置に設置される突出部48のY方向位置を可能な限り後方に寄せることができる。このため電子機器10は、突出部48を底面12cの後端近くに配置でき、底面12c側の意匠のまとまりがよくなり、外観品質が向上する。
【0079】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 電子機器
11 蓋体
12 筐体
16 ディスプレイ
18 キーボード装置
24,57,60 冷却モジュール
25 マザーボード
25a CPU
28,56 熱拡散部材
30,61 ファン
34 吐出口
35 吸込口
38 外壁
40 排気口
42,46,58 吸気口
48 突出部
50~52 通気口
【要約】
【課題】筐体の表面温度を抑えると共に、筐体内のスペース効率を向上することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、前記発熱体の熱を吸熱して拡散する熱拡散部材と、相互間に前記熱拡散部材を跨ぐように配置されると共に、互いに向かい合う一側面のみに吐出口が設けられることで、前記熱拡散部材に向かって空気を吐出可能な一対のファンと、を有し、前記筐体は、前記一対のファンの並び方向に沿って延在し、排気口が形成された外壁を有し、前記排気口は、前記並び方向を基準とした場合に前記一対のファンの間に位置している。
【選択図】
図2