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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】クランク装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/32 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F02B75/32 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024092359
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2024090944の分割
【原出願日】2024-06-04
【審査請求日】2024-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522207051
【氏名又は名称】久保田 了
(74)【代理人】
【識別番号】100169188
【弁理士】
【氏名又は名称】寺岡 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 了
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2008/010490(JP,A1)
【文献】特開2015-161207(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/150307(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースに離隔した一対の対向した穴を開けてその内周面に配設された、一対の対向した内周太陽歯車と、
遊星歯車を前記内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転する遊星歯車と、
前記遊星歯車を自転および公転可能に支持する単独のクランク部材と、
前記遊星歯車を前記内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転することによって、直線往復動をするピストンと、
を備え、
前記クランク部材は、両端に回転軸を共通にする第1回転軸および第2回転軸と、前記第1回転軸および前記第2回転軸の間に、前記第1回転軸および前記第2回転軸とは前記回転軸が異なる第3回転軸と、前記第1回転軸と前記第3回転軸を結ぶ第1の柄と、前記第2回転軸と前記第3回転軸を結ぶ第2の柄とを有し、
前記ピストンは、前記第3回転軸の周方向に摺動可能にされ、
前記遊星歯車は、前記第1回転軸と前記第2回転軸の周面にそれぞれ配設され、
前記クランクケースの穴の内周面に、離隔した一対の対向した板状部材の外周面を配置し
前記板状部材の平面部における外周面に近い位置に係合部を設け、
前記係合部と、前記第1回転軸と前記第2回転軸とに設けた別の係合部を、それぞれ係合する、
クランク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クランク装置の振動を低減させ、かつ、静粛性をさらに向上させる技術が提案されている。かかるクランク装置は、内周太陽歯車と遊星歯車を有する機構と、遊星歯車の自転および公転に応じて直線往復動する作用部とを備えたものである(特許文献1)。
【0003】
特許文献1によれば、クランク装置100は、その縦断面概要模式図である図17図18図19図20に、その順に示すような動きをする。内周太陽歯車101は、内周に歯車を有し、その歯車は遊星歯車102の外周の歯車と噛み合うようにされている。内周太陽歯車101は、内周が遊星歯車102の外周よりも約2倍大きくされている。そして、遊星歯車102の端面(外周と同じ)を除く円盤面の端面に極めて近い位置に、ピストン103の片側の端部と回転可能なように固定されている。ピストン103のもう一方の片側は、内周太陽歯車101の穴部101aから挿通されている。
【0004】
まず図17に示すように、内周太陽歯車101の上側に遊星歯車102が位置している。そして内周太陽歯車101の内周の歯車が、遊星歯車102の外周の歯車と噛み合った状態で、遊星歯車102を矢印方向に回転させる。すると図18の位置へと遊星歯車102が移動する。それとともにピストン103が内周太陽歯車101の中側に入る。さらに遊星歯車102を矢印方向に回転させると、図19の位置に遊星歯車102が移動する。それとともにピストン103が内周太陽歯車101のさらに中側に入る。さらに遊星歯車102を矢印方向に回転させると、図20の位置に遊星歯車102が移動する。それとともにピストン103が、略図18の位置へと移動する。さらに遊星歯車102を矢印方向に回転させると、図17の位置に遊星歯車102が移動する。これらを繰り返すことで、ピストン103の略上下への往復運動を可能とするクランク装置100の稼働ができる。ピストン103の略上下への往復運動を可能とすることにより、クランク装置100の振動を低減させ、かつ、静粛性をさらに向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-114959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のクランク装置100は、図17図18図19図20に示した動作を実現するために、図21に示す縦断面概要模式図の構造を採用している。その構造は、ピストン103を下方向に移動する際に、第1クランク110が押下され、その押下の力を第2クランク111が受ける構造である。しかしながら、第2クランク111は、第1クランク110の押下の力を受けるには、構造上弱くならざるを得ない。たとえば、第1クランク110の直下は、支持出来ないため、クランク装置100の全体が構造上弱くなってしまう。そうすると、エンジンを稼働しようとすると、エンジンの爆発力に耐えることができなくなり、大排気量のエンジンには搭載できないことになって、適用範囲が狭くなってしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、大排気量エンジンの爆発力に耐えることができるクランク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、クランク装置は、クランクケースに離隔した一対の対向した穴を開けてその内周面に配設された、一対の対向した内周太陽歯車と、遊星歯車を内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転する遊星歯車と、遊星歯車を自転および公転可能に支持する単独のクランク部材と、遊星歯車を内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転することによって、直線往復動をするピストンと、を備え、クランク部材は、両端に回転軸を共通にする第1回転軸および第2回転軸と、第1回転軸および第2回転軸の間に、第1回転軸および第2回転軸とは回転軸が異なる第3回転軸と、第1回転軸と第3回転軸を結ぶ第1の柄と、第2回転軸と第3回転軸を結ぶ第2の柄とを有し、 ピストンは、第3回転軸の周方向に摺動可能にされ、遊星歯車は、第1回転軸と第2回転軸の周面にそれぞれ配設され、クランクケースの穴の内周面に、離隔した一対の対向した板状部材の外周面を配置し、板状部材の平面部における外周面に近い位置に係合部を設け、係合部と、第1回転軸と第2回転軸とに設けた別の係合部を、それぞれ係合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、大排気量エンジンの爆発力に耐えることができるクランク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態のクランク装置の分解斜視図である。
図2】本実施の形態のクランク装置の右側面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】本実施の形態の正面図である。
図5】本実施の形態のクランク装置を示す、図4のB-B断面図であり、図5図7図9図11の順に示すような動作をする様子を示す図の一つである。
図6】本実施の形態のクランク装置の正面図である。
図7】本実施の形態のクランク装置を示す、図6のB-B断面図であり、図5図7図9図11の順に示すような動作をする様子を示す図の一つである。
図8】本実施の形態のクランク装置の正面図である。
図9】本実施の形態のクランク装置を示す、図8のB-B断面図であり、図5図7図9図11の順に示すような動作をする様子を示す図の一つである。
図10】本実施の形態のクランク装置の正面図である。
図11】本実施の形態のクランク装置を示す、図10のB-B断面図であり、図5図7図9図11の順に示すような動作をする様子を示す図の一つである。
図12】本実施の形態の変形例である、カンチレバー(片持ち)構造体のクランク装置の分解斜視図である。
図13】本実施の形態のクランク装置の左側面図である。
図14図13のC-C断面図である。
図15】本実施の形態のクランク装置の正面図である。
図16】本実施の形態のクランク装置の右側面図である。
図17】従来のクランク装置の、縦断面概要模式図であり、図17図18図19図20の順に示すような動作をする様子を示す図の1つである。
図18】従来のクランク装置の、縦断面概要模式図であり、図17図18図19図20の順に示すような動作をする様子を示す図の1つである。
図19】従来のクランク装置の、縦断面概要模式図であり、図17図18図19図20の順に示すような動作をする様子を示す図の1つである。
図20】従来のクランク装置の、縦断面概要模式図であり、図17図18図19図20の順に示すような動作をする様子を示す図の1つである。
図21】従来のクランク装置が採用した構造を説明するための、縦断面概要模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(クランク装置の構成)
以下、本実施の形態のクランク装置について、図1図2および図3に基づいて説明する。クランク装置1は、それを構成するクランクケース2a,2bに穴2a1,2b1を開けている。また、穴2a1,2b1の内周面には、一対の対向した内周太陽歯車2a2,2b2が配設されている。この「一対の対向した」は、言うまでもなく図1に示す分解斜視図の状態ではなく、各部材が組み立てられてクランク装置1となった状態でのことである。
【0012】
また、クランク装置1は、遊星歯車3を内周太陽歯車2a2,2b2に噛み合わせつつ自転および公転する遊星歯車部3a1,3a2を有する。この遊星歯車部3a1,3a2は、内周太陽歯車2a2,2b2と噛み合って自転および公転する歯車である。また、ピストン4は、遊星歯車3を内周太陽歯車2a2,2b2に噛み合わせつつ自転および公転することによって、直線往復動をする。
【0013】
また、クランク部材5は、両端に回転軸を共通にする第1回転軸6aおよび第2回転軸6bを有する。第1回転軸6aおよび第2回転軸6bの間には、第1回転軸6aおよび第2回転軸6bとは回転軸が異なる第3回転軸6cを有する。さらに、第1の柄6dは、第1回転軸6aと第3回転軸6cを結ぶものである。さらに、第2の柄6eは、第2回転軸6bと第3回転軸6cを結ぶ。
【0014】
そして、前述の遊星歯車3と遊星歯車部3a1は、円筒形状をなし、第1回転軸6a側の第1の柄6dに遊星歯車3がくっつくまで挿入し、固定されている。また、前述の遊星歯車3と遊星歯車部3a2は、円筒形状をなし、第2回転軸6b側の第2の柄6eに遊星歯車3がくっつくまで挿入し、固定されている。この結果、2つの遊星歯車3が第1の柄6dと第2の柄6eの外側(第1回転軸6a側および第2回転軸6b側)に配置されている。
【0015】
また、ピストン4は、第3回転軸6cの周方向に摺動可能にされている。詳述すると、ピストン4の筒状の穴部4aが、第3回転軸6cの周面を360°覆うようにされている。また、遊星歯車3は、第1回転軸6aと第2回転軸6bの周面6f,6gにそれぞれ配設される。そして、クランクケース2aの穴2a1の内周面には、円柱状の偏心カム7a(板状部材)の外周面7cを対向させ、円柱状の偏心カム7aの平面部7eにおける外周面7cに近い位置に貫通孔7g(係合部)を設ける。また、クランクケース2bの穴2b1の内周面には、円柱状の偏心カム7bの外周面7dを対向させ、円柱状の偏心カム7bの平面部7fにおける外周面7dに近い位置に貫通孔7h(係合部)を設ける。そして、貫通孔7hに、第1回転軸6a(別の係合部)が挿入され係合し、貫通孔7gに、第2回転軸6b(別の係合部)が挿入され係合する。この係合は、遊星歯車3を内周太陽歯車2a2,2b2に噛み合わせつつ自転および公転する動作を妨げるものであってはならない。
【0016】
ここで、円柱状の偏心カム7aの外周面7c、および円柱状の偏心カム7bの外周面7dは、周方向に連続して形成された歯車部7c1,7d1と、周方向に連続して形成された歯車部のない歯車無し部7c2,7d2に分かれている。なお、歯車部7c1,7d1は、内周太陽歯車2a2,2b2とは噛み合わせていない。そして、歯車部7c1,7d1は、クランクケース2a,2bの穴2a1,2b1の外部側に向けて配置されている。そして、歯車無し部7c2,7d2は、クランクケース2a,2bの穴2a1,2b1の内部側に向けて配置されている。もちろん、円柱状の偏心カム7a,7bを、クランクケース2a,2bの穴2a1,2b1に挿入しても、内周太陽歯車2a2,2b2は露出している。
【0017】
また、円柱状の偏心カム7aの平面部7eにおける外周面7cに近い位置、および円柱状の偏心カム7bの平面部7fにおける外周面7dに近い位置とは、理想的に言えば、第1回転軸6aおよび第2回転軸6bから第3回転軸6cまでの偏心量と同じ距離を、後述するカム回転中心軸(円柱状の偏心カム7a,7bの平面部7e,7fの中心)から離した位置である。この位置に貫通孔7g,7hの中心を位置させると、ピストン4の完全な直線往復動が可能となる。しかし、ピストン4の完全な直線往復動をさせなくても、ピストン4の実質的な直線往復動を可能とすることでも十分にクランク装置1の振動を低減させ、かつ、静粛性を向上させることができる。そのため、上記の理想的な位置およびそこからずれた位置を含めて、上記の「近い位置」と表現している。
【0018】
駆動装置8について説明する。駆動装置8は、基台9と円柱棒10と円柱棒10を回転させる取っ手11a,11bを有している。基台9は対向する2つの盛り上がり部9a,9bを有している。盛り上がり部9a,9bの頂面9a1,9b1の略中央部には、円柱棒10を密に収容可能な円柱周面凹部9a2,9b2を有している。そして、円柱周面凹部9a2,9b2に嵌め合わせるように円柱棒10が配置されている。円柱棒10は、円柱周面凹部9a2,9b2に嵌め合わせた状態で周方向に回転可能である。
【0019】
そして、円柱棒10の両端に取っ手11a,11bが固定される。取っ手11a,11bは、扁平な円柱状をなし、その片方の円柱の平面には、外周面に沿って形成された歯車11a1,11b1を有する。取っ手11a,11bは、もう片方の円柱の平面には、取っ手部11a2,11b2を有している。取っ手11a,11bは、同一形状をしており、歯車11a1,11b1同士が向き合っている。そして、取っ手部11a2,11b2を円柱状の取っ手11a,11bの周方向に回転させることで、円柱棒10を、円柱周面凹部9a2,9b2に嵌め合わせた状態で周方向に回転させることができ、それとともに歯車11a1,11b1も回転させることができる。また、取っ手11a,11bは、その上部で円柱状の偏心カム7a,7bが。穴2a1,2b1からクランクケース2a,2bの外側にずれるのを防止するように抑えている(たとえば図2に示す)。
【0020】
(クランクケース2aとクランクケース2bの組み立て)
クランクケース2aは、ネジ穴2a5,2a6,2a7,2a8を有している。クランクケース2bは、ネジ穴2b5,2b6,2b7,2b8を有している。これらのネジ穴は、全て貫通孔である。ネジ穴2a5とネジ穴2b5を図示しないネジでネジ固定し、ネジ穴2a6とネジ穴2b6を図示しないネジでネジ固定し、ネジ穴2a7とネジ穴2b7を図示しないネジでネジ固定し、ネジ穴2a8とネジ穴2b58図示しないネジでネジ固定する。すると、クランクケース2aとクランクケース2bの組み立てが完了する。
【0021】
(クランクケース2a,2bと基台9との組み立て)
そして、基台9の盛り上がり部9a,9bの頂面9a1,9b1の四隅には、貫通したネジ穴9a3,9a3,9b3,9b3を有している。クランクケース2a,2bの図1には図示しない下面には、ネジ穴9a3,9a3,9b3,9b3と位置が合うネジ穴が形成されており、これらのネジ穴同士をネジ結合することができる。そのネジ結合をすると、取っ手11a,11bの歯車11a1,11b1が円柱状の偏心カム7a,7bの歯車部7c1,7d1とそれぞれ噛み合わせることができる。
【0022】
(クランク装置1の動作)
取っ手11a,11bの歯車11a1,11b1が、円柱状の偏心カム7a,7bに回転力を与えると、円柱状の偏心カム7a,7bの貫通孔7g,7hに、第2回転軸6bと第1回転軸6aがそれぞれ挿入されているため、第1回転軸6aと第2回転軸6bに公転力が伝達する。
【0023】
そして、第1回転軸6aと第2回転軸6bへの公転力は、遊星歯車部3a1,3a2を内周太陽歯車2a2,2b2に噛み合わせつつ自転および公転する力となる。その力は、第3回転軸6cを公転させる。その公転力により、ピストン4は、第3回転軸6cの周方向に摺動可能にされているため、ピストン4の略完全な直線往復動を可能とする。
【0024】
このクランク装置1の動きを、図4から図11、特に図5図7図9図11を用いて説明する。まず図5に示すように、第2の柄6eの裏側に隠れている遊星歯車部3a2が内周太陽歯車2a2と噛み合った状態で、遊星歯車部3a2が矢印方向に90°回転および公転する。すると、クランク装置1は図7の状態となる。そして、さらに遊星歯車部3a2が内周太陽歯車2a2と噛み合った状態で、遊星歯車部3a2が矢印方向に90°回転および公転する。すると、クランク装置1は図9の状態となる。そして、さらに遊星歯車部3a2が内周太陽歯車2a2と噛み合った状態で、遊星歯車部3a2が矢印方向に90°回転および公転する。すると、クランク装置1は図11の状態となる。そして、さらに遊星歯車部3a2が内周太陽歯車2a2と噛み合った状態で、遊星歯車部3a2が矢印方向に90°回転および公転する。すると、クランク装置1は図5の状態に戻る。これらの動きを繰り返すことで、図4から図11に示すように、ピストン4の略上下への往復運動を可能とするクランク装置1の稼働ができる。
【0025】
なお、偏心カム7aの外周面7cの歯車無し部7c2と、偏心カム7bの外周面7dの歯車無し部7d2がある。また、クランクケース2aの穴2a1の内周面と、クランクケース2bの穴2b1の内周面には、一対の対向した内周太陽歯車2a2,2b2に隣接する歯車無し部2a3,2b3がある。この歯車無し部7c2,7d2と、歯車無し部2a3,2b3は、対向する位置にあり、それらの間には、ベアリング12a,12bが配設されている。このベアリング12a,12bは、歯車無し部2a3,2b3に固定されている。このベアリング12a,12bを構成する個々の球が回転し、転がり軸受けとして機能する。
【0026】
(本実施の形態によって得られる主な効果)
本実施の形態のクランク装置1は、上述のように、ピストン4の略完全な直線往復動を可能としているため、クランク装置1の振動を低減させ、かつ、静粛性をさらに向上させることができる。また、クランク装置1は、大排気量エンジンの爆発力に耐えることができ、加えて振動および騒音を軽減し、ベクトル分解による効率低下を回避できる。
【0027】
また、従来の図21に示した第2クランク111に代えて、偏心カム7a,7bにすることで、エンジンの爆発力に耐えることができるクランク装置1を提供することができる。これは、偏心カム7a,7bの形状がクランクよりも単純で、応力により耐え得るためである。このことは、図21の断面図と、図3の断面図を見比べても明らかである。
【0028】
(他の形態)
上述した本実施の形態に係るクランク装置1は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0029】
たとえば、本実施の形態のクランク装置1は、左右対称(両持ち)の構造であるが、左右対称でなくて、一端が固定端、他端が自由端とされたカンチレバー(cantilever、片持ち)構造体としても良い。たとえば、図4に示すB-Bでクランク装置1を切断した断面図に示したクランク装置である。
【0030】
このカンチレバー(片持ち)構造体のクランク装置は、クランクケースに穴を開けてその内周面に配設された、内周太陽歯車と、遊星歯車を内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転する遊星歯車と、遊星歯車を自転および公転可能に支持するクランク部材と、遊星歯車を内周太陽歯車に噛み合わせつつ自転および公転することによって、直線往復動をするピストンと、を備え、クランク部材は、第4回転軸および第5回転軸と、第4回転軸と第5回転軸を結ぶ第3の柄とを有し、ピストンは、第5回転軸の周方向に摺動可能にされ、遊星歯車は、第4回転軸の周面に配設され、クランクケースの穴の内周面に、偏心カムの外周面を対向させ、偏心カムの平面部における外周面に近い位置に係合部を設け、係合部と、第4回転軸に設けた別の係合部を、それぞれ係合するものである。
【0031】
このカンチレバー(片持ち)構造体のクランク装置20の分解斜視図を図12に示し、その構造等を説明する。図1と同様の部材に付す符号は、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
クランク装置20は、クランク装置1のクランク部材5の第3回転軸6cが、長さ方向略真ん中あたりで切断され、第1回転軸6aと第1の柄6dと、これら側の第3回転軸6cの約半分が除去されて第5回転軸6mとなっている。ここでクランク装置1の第2回転軸6bに相当する部材を、クランク装置20では第4回転軸6hと言い、その周面を周面6kと言う。またクランク装置1の第3回転軸6cに相当する部材を、クランク装置20では第5回転軸6mと言う。さらにクランク装置1の第2の柄6eに相当する部材を、クランク装置20では第3の柄6nと言う。
【0033】
また、クランク装置20は、クランク装置1のベアリング12bと、偏心カム7bが削除されている。クランク装置20の左側面図を図13に、図13のC-C断面図を図14に、正面図を図15に、右側面図を図16に示す。
【0034】
また、駆動装置8の役割をするものは、駆動装置8以外のものでも良い。たとえば、内燃機関におけるガソリンまたは軽油等の燃料の爆発力を駆動力に変換することとしても良い。
【0035】
また、円柱状の偏心カム7a,7bの貫通孔7g,7h(係合部)は、第2回転軸6bと第1回転軸6a(別の係合部)がそれぞれ挿入され係合している。しかし、この貫通孔7g,7hは、たとえば突起部とし、第2回転軸6bと第1回転軸6aが、その突起部に挿入される挿入部を有することとしても良い。要するに、貫通孔7g,7hの位置と、第1回転軸6aと第2回転軸6bの位置が、係合し合うようにすれば良い。
【0036】
また、ベアリング12a,12bは、必須の構成要素ではないため、省略することができる。確かに、ベアリング12a,12bは、クランク装置1の振動および騒音を軽減のためには、あった方が良いと考えられる。しかし、クランク装置1の部品点数が増えるという不利な点もある。仮にベアリングを使うとしても、ベアリング12a,12b以外のベアリングを用いることができることは言うまでもない。また、ベアリング12a,12bは、転がり軸受(ボールベアリング)であるが、ころ軸受けまたは滑り軸受としても良い。
【0037】
また、本実施の形態では、クランクケース2aとクランクケース2bを組み立ててクランクケースを製造していた。しかし、クランクケースは、一体成型等して製造しても良いことは言うまでもない。
【0038】
また、偏心カム7a,7bに代わる部材があれば、偏心カム7a,7bは、不要である。つまり、形状がクランクよりも単純で、応力に耐え得るものであれは、偏心カム7a,7bに代えて用いることができる。たとえば、偏心カム7a,7bに代わる部材は、板状部材、または円柱状部材、または偏心カム7a,7bのような扁平な円柱状部材、または、扁平な板状部材等、さらには扁平でない円柱状部材または板状部材等である。
【符号の説明】
【0039】
1 クランク装置
2a クランクケース
2b クランクケース
2a1 穴
2b1 穴
2a2 内周太陽歯車
2b2 内周太陽歯車
3 遊星歯車
4 ピストン
5 クランク部材
6a 第1回転軸(別の係合部)
6b 第2回転軸(別の係合部)
6c 第3回転軸
6d 第1の柄
6e 第2の柄
7a 偏心カム(板状部材)
7b 偏心カム(板状部材)
7c 外周面
7d 外周面
7e 平面部
7f 平面部
7g 貫通孔(係合部)
7h 貫通孔(係合部)
【要約】      (修正有)
【課題】大排気量エンジンの爆発力に耐えることができるクランク装置を提供する。
【解決手段】クランク装置1は、ピストン4の筒状の穴部4aが、第3回転軸6cの周面を360°覆うようにされ、遊星歯車3は、第1回転軸6aと第2回転軸6bの周面6f,6gにそれぞれ配設される。そして、クランクケースの穴2a,2bの内周面には、円柱状の偏心カム7a,7bの外周面7c,7dを対向させ、円柱状の偏心カム7a,7bの平面部7e,7fにおける外周面7c,7dに近い位置に貫通孔7g,7h(係合部)を設ける。そして、貫通孔7g,7hに、第1回転軸6aと第2回転軸6b(別の係合部)がそれぞれ挿入され係合する。
【選択図】図1
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