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  • 特許-記録用紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】記録用紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20241031BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20241031BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B41M5/50
B41M5/52
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024143299
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2023510204の分割
【原出願日】2021-11-04
(65)【公開番号】P2024152962
(43)【公開日】2024-10-25
【審査請求日】2024-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2021059370
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(72)【発明者】
【氏名】平間 加那子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 凌
(72)【発明者】
【氏名】糸日谷 太
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/138090(WO,A1)
【文献】特表2008-522241(JP,A)
【文献】国際公開第2020/145404(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168829(WO,A1)
【文献】特開2020-052225(JP,A)
【文献】特開2018-053066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂フィルムが、フィラーを含有する
請求項8に記載の記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に、顔料を含有する印刷受容層が設けられた記録用紙が広く使用されている。例えば、特許文献1に開示されたインクジェット記録用紙シートには、酸基を有する水性ポリエステル樹脂を含むインク受容層が設けられている。また、特許文献2に開示の電子写真媒体には、カルボン酸含有熱可塑性ポリマーを含むトナー受容層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-247020号公報
【文献】特開2008-522241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、印刷受容層が設けられた記録用紙は高価である。印刷受容層がない記録用紙に比べて、印刷受容層の形成にコストを要するためである。コスト削減の観点から、印刷受容層の薄膜化が求められている。また、印刷受容層を塗布法にて形成する場合には、薄膜化することによりバインダーマイグレーションを抑制することができる。さらに塗膜乾燥性が向上することにより、生産性も向上することからも、薄膜化のニーズは高い。
【0005】
印刷受容層の薄膜化には、インクとの密着性だけでなく、基材との密着性が高い材料を使用することが効果的である。しかし、基材との密着性が高い印刷受容層は、その表面のブロッキング性も高くなる傾向があり、密着性の向上とブロッキングの低減の両立が難しかった。
【0006】
本発明は、印刷受容層とインク及び基材との密着性が高く、かつブロッキングが少ない記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、印刷受容層の材料としてごく低酸価のカルボキシ基含有樹脂を用い、これに表面粗さが特定範囲にある基材を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
(1)基材上に印刷受容層を有する記録用紙であって、
前記印刷受容層が、無機フィラーと、酸価が2~20KOHmgKOH/gであるカルボキシ基含有樹脂と、を含有し、
前記基材の前記印刷受容層側の表面の算術平均粗さRaが、0.3~1.0μmである
記録用紙。
【0009】
(2)前記無機フィラーが、炭酸カルシウム及び層状ケイ酸塩を含む
上記(1)に記載の記録用紙。
【0010】
(3)前記印刷受容層中の前記カルボキシ基含有樹脂の含有量が、前記無機フィラーの100質量部に対して40~150質量部である
上記(1)又は(2)に記載の記録用紙。
【0011】
(4)前記印刷受容層の厚みが、0.2~10μmである
上記(1)~(3)のいずれかに記載の記録用紙。
【0012】
(5)前記カルボキシ基含有樹脂が、アクリル系樹脂である
上記(1)~(4)のいずれかに記載の記録用紙。
【0013】
(6)前記基材が、熱可塑性樹脂フィルムである
上記(1)~(5)のいずれかに記載の記録用紙。
【0014】
(7)前記熱可塑性樹脂フィルムが、フィラーを含有する
上記(6)に記載の記録用紙。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷受容層とインク及び基材との密着性が高く、かつブロッキングが少ない記録用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】記録用紙の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の記録用紙について詳細に説明する。以下の説明は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。なお以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタアクリルの両方を示す。また「(共)重合体」の記載は、単独重合体と共重合体の両方を示す。
【0018】
[記録用紙]
本発明の記録用紙は、基材と印刷受容層とを有する。
図1は、具体的な一例である記録用紙1を示す。
図1に例示する記録用紙1は、基材11と印刷受容層12とを有する。印刷受容層12は、基材11の一方の表面上に積層されている。
【0019】
本発明において、印刷受容層は、無機フィラーと、酸価が2~20mgKOH/gであるカルボキシ基含有樹脂と、を含有する。また基材11の印刷受容層側の表面の算術平均粗さRaは0.3~1.0μmである。通常、印刷受容層のインクとの密着性を高めるには、印刷受容層を厚くし、層中の有効成分量を増やす必要がある。しかし、本発明のように酸価がごく低いカルボキシ基含有樹脂を含有する印刷受容層を、特定範囲の表面粗さを有する基材表面に設けることにより、インクとの密着性が高いだけでなく、基材との高い密着性も実現することができる。密着性を高めるために印刷受容層を厚くする必要がなく、薄膜化が可能であるため、印刷受容層の形成に要するコストを減らし、生産性も高めることができる。
【0020】
一般に、基材との密着性が高い印刷受容層は、他の記録用紙が重ねられたときにその基材との密着性も高くなるため、他の記録用紙との間でブロッキングが生じやすい。しかし、本発明においては、表面粗さが特定範囲にある基材の表面に印刷受容層を配置することにより、印刷受容層表面上に他の記録用紙が重ねられた場合に生じるブロッキングを減らすことができる。したがって、印刷受容層とインク及び基材との密着性が高く、かつブロッキングが少ない記録用紙を提供することができる。
以下、記録用紙の各層の詳細を説明する。
【0021】
(印刷受容層)
印刷受容層は、インクとの密着性が高く、記録用紙の印刷性を高める。また印刷受容層は基材との密着性も高い。上述のように、印刷受容層は、カルボキシ基含有樹脂と、無機フィラーとを含有する。
【0022】
<カルボキシ基含有樹脂>
カルボキシ基含有樹脂は、印刷受容層とインクとの密着性を高める他、無機フィラーを印刷受容層中に均一に分散させる機能を有する。また、カルボキシ基含有樹脂は、後述する架橋剤と反応することにより、印刷受容層の耐水性を向上させることができる。カルボキシ基含有樹脂は、無機フィラーと基材との密着性も向上させるため、記録用紙の耐水擦過性をも向上させることができる。
【0023】
<<酸価>>
カルボキシ基含有樹脂は、2~20KOHmgKOH/gの酸価を有する。酸価は、樹脂1g中に含まれる酸基を中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)で表され、JIS K0070に準拠して測定される。
印刷受容層と基材との密着性向上、及び印刷受容層とインクとの密着性向上の観点からは、カルボキシ基含有樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上が好ましい。高すぎる酸価による印刷受容層とインクとの耐水密着性の低下、および印刷受容層形成用組成物の経時増粘を抑制する観点から、同酸価は15mgKOH/g以下が好ましい。
【0024】
印刷受容層に使用できるカルボキシ基含有樹脂としては、酸価が2~20mgKOH/ であれば、特に限定されないが、好ましくはアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル酸エステル共重合体やスチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のスチレンアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン-ビニル混成ポリマー等のウレタン系樹脂、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
なかでも、基材及びインクとの密着性、特に紫外線硬化型インクとの密着性が良好であることから、アクリル系樹脂が好ましい。具体的には、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに、カルボン酸基を有する1種又は2種以上のエチレン性不飽和モノマーを、得られるポリマーの酸価が2~20mgKOH/gとなるように、好ましくは5~15mgKOH/gとなるように、重合させることにより得られるアクリル系樹脂が挙げられる。
【0026】
基材及びインクとの密着性向上の観点からは、印刷受容層中のカルボキシ基含有樹脂の含有量は、印刷受容層中の無機フィラーの100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。またブロッキング抑制の観点から、同含有量は、無機フィラー100質量部に対して、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
なお、印刷受容層は、本発明の効果を損なわない限り、カルボキシ基含有樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
【0028】
<無機フィラー>
無機フィラーは、印刷受容層のインクの乾燥性を高める。印刷受容層中では、無機フィラーの粒子がランダムに凝集し、粒子間の細かい空孔が印刷受容層全体に広がる。インク中の溶媒がこの空孔内に速やかに吸収されるため、優れたインクの乾燥性が得られる。印刷受容層のインクの乾燥性が高いと、グロスゴーストが発生しにくい。また印刷後の記録用紙を重ねた場合の裏付きが発生し難く、重色部の乾燥性も高い。さらに無機フィラーを含有することにより、印刷受容層の表面粗さが増大し、アンカー効果によりインク受容性が高まる。
【0029】
印刷受容層に使用できる無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、層状ケイ酸塩、酸化チタン、シリカ、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸鉛、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、膨張性黒鉛、ガラス(ガラスバルーン)、シラス(シラスバルーン)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アルミナ、シリカアルミナ、マグネシア、ゼオライト、水酸化アルミニウム、又は水酸化マグネシウム等の無機粒子が挙げられる。これらのうち1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0030】
無機フィラーのなかでも、白色度が向上しやすい点から、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、例えば重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、細かな空孔の形成の観点から、軽質炭酸カルシウムが好ましい。
【0031】
無機フィラーの平均1次粒径(D50)は、細かな空孔形成によるインク乾燥性の向上の観点から、0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。同平均1次粒径は、印刷受容層からの脱落を抑える観点から、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
【0032】
上記平均1次粒径(D50)は、レーザー光回折・散乱法によって測定される。測定には、例えばマイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル社製)を用いることができる。
【0033】
無機フィラーとして炭酸カルシウムを使用する場合、低湿度下でも優れた帯電防止性が得られることから、層状ケイ酸塩を併用することが好ましい。層状ケイ酸塩のなかでも、スメクタイトが低湿度環境下でも高い帯電防止性を印刷受容層に付与するため、好ましい。スメクタイトは、粘土鉱物の1種であり、例えば構造式〔(Si8-aAl)(Mg6-bAl)・O20(OH)・M a-bで表される。なお、MはNaであることが多く、a-b>0である。
【0034】
使用できるスメクタイトとしては、例えばモンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、又はノントロナイト等が挙げられる。なかでも、モンモリロナイトが帯電防止性の観点から好ましい。なおモンモリロナイトとしては、これを主成分とする粘土であるベントナイトを使用することができる。スメクタイトは、天然スメクタイト及び合成スメクタイトのいずれであってもよいが、一般に粒径が小さい合成スメクタイトの方が粒子同士の接点数が多く、高い帯電防止性を発揮できるため、好ましい。
【0035】
スメクタイトの平均粒径は、帯電防止性能の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。また、同平均粒径は、印刷受容層からのスメクタイトの脱落防止の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0036】
印刷受容層中のスメクタイトの含有量は、帯電防止性能の観点からは、固形分換算で、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。低コストの観点からは、同含有量は、固形分換算で、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、18質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
印刷受容層中の無機フィラーの含有量は、空孔形成性及び層表面への凹凸形成性の観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。印刷受容層自体の堅牢性及び無機フィラーの脱落防止の観点から、同含有量は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。なお、2種以上の無機フィラーを併用する場合は、これらの含有量の合計が上記範囲内にあることが好ましい。
【0038】
<架橋剤>
印刷受容層はさらに架橋剤を含有し、印刷受容層中のカルボキシ基含有樹脂が架橋剤によって架橋されていることが好ましい。カルボキシ基含有樹脂の架橋により、印刷受容層の耐水性を向上させることができ、さらに印刷受容層表面の印刷部分における耐水擦過性をもより向上させることができる。
【0039】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができる。使用できる架橋剤としては、例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム等の金属系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物等のエピクロロヒドリン系架橋剤、又はオキサゾリン基含有ポリマー等のオキサゾリン系架橋剤等が挙げられる。
【0040】
上記印刷受容層表面の耐水擦過性の向上の観点からは、印刷受容層は、上記金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、カルボキシ基含有樹脂はこれら架橋剤によって架橋されていることが好ましい。なかでも架橋剤は上記金属系架橋剤及びエポキシ系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、印刷受容層の耐水密着性向上の観点から、印刷受容層は、架橋剤として金属系架橋剤を含むことが好ましく、金属系架橋剤のなかでも炭酸ジルコニウムアンモニウムがより好ましい。特に、カルボキシ基含有樹脂を炭酸ジルコニウムアンモニウムで架橋することにより、印刷受容層の耐水擦過性及び耐水密着性をより高めることができる。
【0041】
印刷受容層中の架橋剤の含有量は、0.8~12.0質量%であることが好ましい。この範囲内であれば、十分な架橋により耐水擦過性が高まりやすい。印刷受容層の耐水擦過性の観点からは0.9質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。また印刷受容層形成用塗工液の粘度を調整し、良好な塗工性を得る観点からは、同含有量は10.0質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
<バインダーマイグレーション抑制剤>
印刷受容層は、バインダー成分にあたるカルボキシ基含有樹脂が層表面に移動するバインダーマイグレーションを抑制するため、イソシアネート変性ポリエチレングリコールを含有してもよい。イソシアネート変性ポリエチレングリコールは、印刷受容層中に均一に分散することにより、少量の配合でもカルボキシ基含有樹脂を十分に分散させてバインダーマイグレーションを抑制することができる。配合量の増大による塗工液の粘度上昇を抑え、工程管理も容易となる。
【0043】
<界面活性剤>
印刷受容層は、界面活性剤をさらに含有してもよい。界面活性剤により、印刷受容層表面が摩擦により帯電した場合でもすみやかに帯電を減衰させることができる。したがって、記録用紙の印刷時の重送や印刷部材への貼り付き、紙詰まり、位置ずれ等の搬送トラブルを減らすことができる。
【0044】
界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、ノニオン性又は両性等、いずれも使用できるが、アニオン性の界面活性剤が好ましい。アニオン性の界面活性剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
【0045】
界面活性剤を印刷受容層に配合することにより、層表面の摩擦帯電圧を減衰させることができるが、一方で層自体の耐水密着性を低下させる傾向がある。印刷受容層表面の摩擦帯電圧減衰性と、印刷受容層自体の耐水密着性を両立するためには、界面活性剤の配合量を必要最低限とする必要がある。具体的には印刷受容層中の界面活性剤の含有量は、摩擦帯電圧減衰性の観点から、0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましい。また、同含有量は、耐水密着性の観点から、4.5質量%以下が好ましく、2.3質量%以下がより好ましい。
【0046】
印刷受容層は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。使用できる添加剤としては、例えば消泡剤、分散剤、増粘剤、保水剤、耐水化剤、着色剤、又は防腐剤等が挙げられる。例えば分散剤としては、例えばポリカルボン酸等を、通常0.05~5質量%配合することができる。
【0047】
<厚み>
本発明において、印刷受容層は、0.2~10μm程度の薄い膜とすることができる。印刷受容層が2~20mgKOH/gという低酸価のカルボキシ基含有樹脂を含み、かつこれを表面の算術平均粗さRaが0.3~1.0μmの基材表面に形成することにより、無機フィラーを含有する印刷受容層であるにも関わらず、0.2~10μmという薄い層とした場合にも、基材及びインクとの良好な密着性を実現するとともに、十分な耐ブロッキング性をも両立することができる。印刷受容層は、0.3μm以上であることがより好ましい。なお本発明における印刷受容層の、インクおよび基材との高い密着性がより効果的に発揮されることから、印刷受容層は5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(基材)
基材は、記録用紙に機械的強度を付与する。
【0049】
<算術平均粗さ>
本発明における基材は、印刷受容層側の表面の算術平均粗さRaが0.3~1.0μmの範囲内にある。なかでも、同算術平均粗さRaは、0.4μm以上が好ましく、また0.8μm以下が好ましい。算術平均粗さRaが上記下限値以上であれば、耐ブロッキング性を高めることができる。すなわち、フィルム同士を重ねたとき又はフィルムをロールに巻いたとき等にフィルム同士の固着が抑えられる。また、算術平均粗さRaが上記上限値以下であれば、同算術平均粗さRaが大きすぎることによる、印刷受容層との密着性の低下を抑えることができる。
【0050】
上記算術平均粗さRaは、JIS-B-0601:1994に準拠して測定される。
基材表面の算術平均粗さRaを本発明の特定範囲に調整するための手段としては特に限定されない。例えば、基材表面の算術平均粗さRaは、後述するフィラーの配合により表面に凹凸を設けることによって調整することができる。また、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、マットコーティング加工、又はケミカルエッチング加工等の表面に凹凸を設ける表面加工によっても調整することができる。マットコーティング加工は、フィルム表面に、有機物又は無機物を含む塗工剤を塗工し、基材表面に凹凸を付与する加工法である。
【0051】
なお、本発明において、基材の少なくとも印刷受容層側の表面、すなわち印刷受容層に対向する表面が上記算術平均粗さRaを有するが、両面とも上記算術平均粗さRaを有してもよい。
【0052】
<熱可塑性樹脂フィルム>
本発明に使用できる基材としては、算術平均粗さRaが0.3~1.0μmの表面を有するのであれば特に制限はなく、熱可塑性樹脂フィルム等を使用できる。通常、熱可塑性樹脂フィルムは、パルプ紙と比較して表面が非常に平滑である。そのため、印刷受容層に組み合わせる基材として熱可塑性樹脂フィルムを使用する場合、その表面粗さを特定範囲とする本発明は、基材と印刷受容層の密着性とブロッキング抑制の両立に特に有効である。
【0053】
<<熱可塑性樹脂>>
熱可塑性樹脂フィルムに使用する熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
なかでも、生産性、加工容易性、耐水性、耐薬品性、リサイクル性及びコストの観点から、オレフィン系樹脂が好ましい。基材層に使用できるオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、及びエチレン系樹脂等が挙げられる。オレフィン系樹脂のなかでも、成形性及び機械的強度の観点からは、プロピレン系樹脂が好ましい。
【0055】
プロピレン系樹脂としては、例えばアイソタクティック、シンジオタクティック又は種々の立体規則性を示すプロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし、当該プロピレンとエチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1,4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとのプロピレン共重合体が挙げられる。ここで「主成分」である単量体とは、共重合体を構成する繰り返し単位のうち50質量%以上を占めるものに相当する単量体を意味する。共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0056】
印刷受容層と基材との密着性向上の観点からは、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体が好ましく、特にエチレン-プロピレンランダム共重合体が好ましい。
なお、プロピレンとα-オレフィンとのランダム共重合体、特にエチレン-プロピレンランダム共重合体は延伸応力が高く、後述するように、これとフィラーを含有する樹脂組成物を延伸することにより、フィルム表面にフィラーによる凹凸が反映されやすく、フィルムの表面粗さを調整しやすい点においても好ましい。
【0057】
プロピレン系樹脂を用いる場合、延伸性を高める観点から、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の、プロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を、プロピレン系樹脂100質量%に対して3~25質量%併用することができる。
【0058】
<フィラー>
基材の表面粗さを本発明の範囲に調整する観点からは、熱可塑性樹脂フィルムは、フィラーを含有することが好ましい。フィラーにより基材中に空孔が形成されやすく、記録用紙の白色度の調整が容易となる。また、フィラーによって基材の表面粗さを調整することもできる。
【0059】
基材に使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー、又は有機フィラー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、又は紫外線吸収フィラー等の無機粒子が挙げられる。紫外線吸収フィラーとしては、例えば二酸化チタン、又は酸化亜鉛等が挙げられる。なかでも、コスト及び空孔形成性の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
【0060】
有機フィラーとしては、例えば基材の熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂の場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィン重合体、又は環状オレフィンとエチレンとの共重合体等であって、用いるポリオレフィン樹脂の融点より高い融点、例えば120~300℃の範囲を有するか、ガラス転移温度が例えば120~280℃の範囲を有する樹脂粒子が挙げられる。
【0061】
上記無機フィラー又は有機フィラーの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合には、無機フィラーと有機フィラーを混合して使用してもよい。
【0062】
フィラーの平均粒径は、0.01~15μmが好ましく、0.05~10μmがより好ましい。平均粒径が15μm以下であると、空孔の均一性が高まる傾向がある。また、平均粒径が0.01μm以上であると、所定サイズの空孔が得られやすい傾向がある。
上記フィラーの平均粒径は、熱可塑性樹脂フィルムの厚み方向の切断面を電子顕微鏡により観察し、観察領域より無作為に抽出した100個の粒子径の測定値の平均値である。粒子径は、粒子の輪郭上の2点間の距離の最大値(最大径)から決定する。
【0063】
基材中のフィラーの含有量は、8質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましい一方、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
フィラーの含有量が上記下限値以上であれば、十分な空孔数が得られやすく、記録用紙に所望の白色度又は不透明度を付与しやすい傾向がある。また、同含有量が上記上限値以下であれば、十分な強度が得られやすく、延伸成形時に破断しにくい傾向がある。
【0064】
なお、フィラーの配合により基材表面の算術平均粗さRaを調整する場合、基材中のフィラーの平均粒径を比較的大きくすることが有効である。よって、表面粗さの調整の観点からは、基材中のフィラーの平均粒径は、0.5μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0065】
<添加剤>
基材は、必要に応じて任意の添加剤を含有することもできる。任意の添加剤としては、例えば熱安定剤、紫外線安定剤(光安定剤)、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、又は難燃剤等の各種公知の添加剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、又はアミン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾフェノン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等を、通常0.01~4質量%配合できる。帯電防止剤としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、又はステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を、通常0.01~4質量%配合できる。
【0066】
<基材の構造>
基材は、単層構造及び多層構造のいずれであってもよい。多層構造の場合、各層の材料の種類及び配合量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、多層構造の場合、印刷受容層との密着性の観点からは、印刷受容層と接する層が、<熱可塑性樹脂フィルム>として上述してきた特徴を有する層であることが好ましい。耐ブロッキング性の観点からは、印刷受容層と接する表面の層におけるフィラーの含有量が、表面粗さを調整するために他の層より多くてもよい。
【0067】
基材は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。基材の剛度を上げる観点からは、基材は、少なくとも一軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましく、二軸方向に延伸された延伸フィルム(以下、二軸延伸フィルムということがある。)であることがより好ましい。二軸延伸フィルムは、二軸方向に延伸されているため、折り曲げたときに伸びにくく、曲げ弾性率が高いため折り癖もつきにくい。基材が多層構造の場合は、無延伸フィルムの層と延伸フィルムの層を組み合わせることもできるし、各層で延伸軸数が同じ又は異なる延伸フィルム同士を組み合わせることもできるが、上述の観点から少なくとも1層が延伸フィルムであることが好ましい。
【0068】
<<厚み>>
基材の厚みに特に制限は無いが、記録用紙に対し、搬送に適したコシを付与する観点からは、60μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましい。折り曲げやすさの観点からは、同厚みは、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。
【0069】
(記録用紙の製造方法)
本発明の記録用紙の製造方法は特に限定されないが、通常は基材上に印刷受容層を積層することで製造できる。
【0070】
<基材の形成>
基材は、通常、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物のフィルム成形によって得られる。
フィルム成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて使用することができる。例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、又はインフレーション成形等が挙げられる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することによっても、フィルム成形できる。多層構造の基材のフィルム成形方法としては、例えばフィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、又は複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等のフィルム成形方法が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
【0071】
フィルムの延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、又はテンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。複数の延伸フィルムを含む多層構造の基材を製造する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0072】
延伸を実施するときの延伸温度は、基材に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0073】
フィルムの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又は共重合体を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0074】
また、ポリエステル樹脂を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上である一方、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、安定して延伸成形できる傾向がある。また熱可塑性樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いる場合も、上記延伸倍率の範囲であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすく、フィルムの破断が起きにくい。
【0075】
<表面処理>
基材は、基材の隣接層、例えば印刷受容層との密着性を高める観点から、表面処理が施されていることが好ましい。
表面処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0076】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m(10W・分/m)以上であり、より好ましくは1,200J/m(20W・分/m)以上である。また、同放電量は、好ましくは12, 000J/m(200W・分/m)以下であり、より好ましくは10,800J/m(180W・分/m)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m以上であり、より好ましくは20,000J/m以上である。また、同放電量は、好ましくは200,000J/m以下であり、より好ましくは100,000J/m以下である。
【0077】
<印刷受容層の形成>
印刷受容層の形成方法は特に限定されない。例えば印刷受容層の各種成分を水に分散又は溶解させた塗工液を調製し、当該塗工液を基材上に塗工して乾燥することにより、印刷受容層を形成することができる。塗工には公知の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、又はビルブレードコーター等が使用できる。
【0078】
<印刷層の形成>
印刷受容層上に文字、線、又は絵柄等の印刷を施すことにより、印刷層を形成することができる。印刷層は、印刷によって転写されたインク組成物からなる層である。
【0079】
印刷方法としては特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を使用することができる。印刷層は、インクジェット方式、電子写真方式、又は液体トナー方式等の各種プリンタによる印字、ホットスタンプ、コールドスタンプ等の箔押し、転写箔、又はホログラム等の従来公知の装飾を含むこともできる。
【0080】
印刷には、印刷方法に合わせて、紫外線硬化型インク、油性インク、酸化重合硬化型インク、水性インク、粉体トナー、又は液体トナー(エレクトロインキ)等の各種インクを使用することができる。
【0081】
なかでも、低酸価のカルボキシ含有樹脂を含有する印刷受容層は、紫外線硬化型インクとの密着性に優れ、紫外線硬化型インクに対して高い印刷適性を有する。また、本発明に係る印刷受容層は、無機フィラーに起因する表面の凹凸がもたらす投錨効果によってインクとの密着性に優れる。この点では、本発明に係る印刷受容層は、紫外線硬化型インク、油性インク、又は酸化重合硬化型インク等を用いるオフセット印刷に対して高い印刷適性を有する。オフセット印刷に限らず、液体トナー又は粉体トナーを使用するレーザー印刷に対しても印刷適性を有する。
【実施例
【0082】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0083】
(材料)
印刷受容層には、下記材料を使用した。
<カルボキシ基含有樹脂>
(AE986B):アクリル系樹脂(商品名:AE986B、イーテック社製)、固形分濃度:35%、酸価(mgKOH/g):5
(ZE-1425):スチレンアクリル樹脂(商品名:ハイロス-X・ZE-1425、星光PMC社製)、固形分濃度:47%、酸価(mgKOH/g):100
<無機フィラー>
(TP-123CS):軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP-123CS、奥多摩工業社製)、平均1次粒子径(D50): 0.2μm、結晶構造:アラゴナイト
(クニピア):精製ベントナイト(商品名:クニピア-F、クニミネ工業社製)、平均1次粒子径(D50):2μm、モンモリロナイト
【0084】
<帯電防止剤>
(サンモリン):ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:サンモリンOT―70、三洋化成工業社製)
<架橋剤>
(AZコート):炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名:AZコート 5800MT、サンノプコ社製)
<バインダー及びマイグレーション抑制剤>
(F220):イソシアネート変性ポリエチレングリコール(商品名:メルポールF-220、三洋化成工業社製)
<消泡剤>
(ビスマー):エステルワックス、ポリオキシルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、高級アルコール含有の消泡剤(商品名:ビスマーFX-10F、日新化学研究所社製)
【0085】
下記表1は、上述した材料の一覧である。
【表1】
【0086】
(基材の作製)
<熱可塑性樹脂フィルム(1)の製造>
(I)プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)74質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)8質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)18質量部、を混合して、樹脂組成物aを調製した。
【0087】
(II)次いで、樹脂組成物aを260℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押出した。このシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃まで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD)に4.8倍の延伸を行って縦一軸延伸樹脂フィルムを得た。
【0088】
(III)これとは別に、エチレン-プロピレンランダム共重合体(商品名:ノバテックPP FG4AQ、日本ポリプロ社製)54質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)46質量部を混合して、樹脂組成物bを調製した。
【0089】
これを230℃に設定した押出機で溶融混練し、上記縦一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、第1表面層/コア層の積層体(b/a)を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物bを230℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(b/a)のコア層(a)側の面に積層した。これにより、第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造の積層体(b/a/b)を得た。
【0090】
この3層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向(TD)に8倍延伸した。次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルム(1)を得た。この熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面の算術平均粗さRaを、JIS-B-0601:1994に準拠して測定したところ、0.60μmであった。
【0091】
<熱可塑性樹脂フィルム(2)の製造>
(I)プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6Q、日本ポリプロ社製)55質量部、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3Q、日本ポリプロ社製)12質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)23質量部を混合して、樹脂組成物cを調製した。
【0092】
(II)次いで、樹脂組成物cを260℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押出した。このシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃まで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD)に4.8倍の延伸を行って縦一軸延伸樹脂フィルムを得た。
【0093】
(III)これとは別に、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3Q、日本ポリプロ社製)38質量部、プロピレン共重合体(商品名:タフマー PN-2060、三井化学株式会社)3.5質量部、マレイン化変性プロピレン軽質炭酸カルシウム粒子(商品名:カルファインYM23、丸尾カルシウム)53質量部、を混合して、樹脂組成物dを調製した。
【0094】
これを250℃に設定した押出機で溶融混練し、上記縦一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、第1表面層/コア層の積層体(d/c)を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物dを250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(d/c)のコア層(c)側の面に積層した。これにより、第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造の積層体(d/c/d)を得た。
【0095】
この3層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向(TD)に8倍延伸した。次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ110μmの熱可塑性樹脂フィルム(2)を得た。この熱可塑性樹脂フィルム(2)の表面の算術平均粗さRaを、JIS-B-0601:1994に準拠して測定したところ、0.20μmであった。
【0096】
<熱可塑性樹脂フィルム(3)の製造>
(I)プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)14質量部、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FY6、日本ポリプロ社製)60質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)16質量部を混合して、樹脂組成物eを調製した。
【0097】
(II)次いで、樹脂組成物eを270℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押出した。このシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。この無延伸シートを140℃まで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD)に4.8倍の延伸を行って縦一軸延伸樹脂フィルムを得た。
【0098】
(III)これとは別に、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP FG4AQ、日本ポリプロ社製)53質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)47質量部を混合して、樹脂組成物fを調製した。
【0099】
これを270℃に設定した押出機で溶融混練し、上記縦一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、第1表面層/コア層の積層体(f/e)を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物fを250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(f/e)のコア層(e)側の面に積層した。これにより、第1表面層/コア層/第2表面層の3層構造の積層体(f/e/f)を得た。
【0100】
この3層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向(TD)に8倍延伸した。次いで163℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ250μmの熱可塑性樹脂フィルム(3)を得た。この熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面の算術平均粗さRaを、JIS-B-0601:1994に準拠して測定したところ、0.60μmであった。
【0101】
(印刷受容層用塗工液の調製)
印刷受容層用の塗工液(A1)~(A4)を、次のようにして調製した。
【0102】
<塗工液(A1)>
カルボキシ基含有樹脂としてアクリル系樹脂(AE986B)100質量部、無機フィラーとして軽質炭酸カルシウム(TP-123CS)100質量部、無機フィラーとして精製ベントナイト(クニピア)40質量部、架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウム(AZコート)20質量部、バインダーマイグレーション抑制剤としてイソシアネート変性ポリエチレングリコール(F-220)1質量部、消泡剤(ビスマー)0.2質量部を混合し、イオン交換水を固形分濃度10質量%になるように配合し、印刷受容層用塗工液(A1)を得た。
【0103】
<塗工液(A2)>
精製ベントナイト(クニピア)40質量部を、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(サンモリン)4.5質量部に変更したこと以外は、塗工液(A1)と同様にして各塗工液(A2)を調製した。
【0104】
<塗工液(A3)>
アクリル系樹脂(AE986B)100質量部を、カルボキシ基含有樹脂であるスチレンアクリル樹脂(ZE-1425)100質量部に変更した以外は、塗工液(A1)と同様にして塗工液(A3)を調製した。
【0105】
(記録用紙の製造)
<実施例1>
基材である熱可塑性樹脂フィルム(1)の表面粗さが測定された片面上に、印刷受容層用塗工液(A1)をバーコーターで塗工後、乾燥して、厚みが0.4μmの印刷受容層を形成し、実施例1の記録用紙を得た。
<実施例2>
基材として熱可塑性樹脂フィルム(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2の記録用紙を得た。
【0106】
<実施例3>
塗工液(A1)を塗工液(A2)に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例3の記録用紙を得た。
【0107】
<比較例1>
熱可塑性樹脂フィルム(1)を熱可塑性樹脂フィルム(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の記録用紙を得た。
【0108】
<比較例2>
塗工液(A1)を塗工液(A3)に変更した以外は、実施例2と同様にして比較例2の記録用紙を得た。
【0109】
(評価)
各実施例及び比較例の記録用紙にオフセット印刷を行い、その印刷適性について下記評価を行った。
【0110】
<インク密着性>
<<印刷>>
各実施例及び比較例の記録用紙をA2版(420mm×594mm)に断裁し、片面に意匠等を含む図柄をオフセット印刷した。印刷には、オフセット印刷機(商品名:SM102、ハイデルベルグ社製)と酸化重合型枚葉プロセスインキ(商品名:フュージョンG(墨、藍、紅、黄)、DIC社製)を用いた。図柄は墨、藍、紅及び黄の4色により印刷され、各色の濃度は100%であった。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、8000枚/時間の速度で1000枚連続して印刷を行い、オフセット印刷物を得た。
【0111】
<<ドライ状態でのインク密着性>>
印刷後の記録用紙のドライ状態でのインク密着性を次のようにして評価した。
長さ5cmに切り取ったニチバン社製セロハンテープを印刷受容層表面に貼った。そのテープの2.5cmを低速(2.5cm/s)で、残りの2.5cmを高速(25cm/s)で手で剥がした。剥がした後の、印刷受容層の剥離の程度によって、下記基準で密着性を評価した。
5(優秀):低速、高速で共に剥離なし
4(良好):低速で剥離なし、高速で部分的(高速剥離面全体の50%未満)に剥離した
3(可):低速で剥離なし、高速で全面的(高速剥離面全体の50%以上)に剥離した
2(不可):低速で部分的(低速剥離面全体の50%未満)に剥離、高速で全面的(高速剥離面全体の50%以上)に剥離した
1(不可):低速、高速で共に全面的に剥離した
【0112】
<<ウェット状態でのインク密着性>>
印刷後の記録用紙のウェット状態でのインク密着性を次のようにして評価した。
記録用紙を23℃の水中に24時間漬け込んだ後、取り出して印刷面の水分をかるくウエスにて拭き取った。10分後に上記ドライ状態のときと同じ方法および同じ基準で印刷受容層のインクとの密着性を評価した。
【0113】
<基材密着性>
TAPPI-UM403に準じて、密着強度測定機「インターナルボンドテスター」(熊谷理機工業(株)社製、商品名)にて印刷受容層の基材との密着強度(kg・cm)を測定した。密着強度が1.4kg・cm以上のものが合格である。
【0114】
<白紙ブロッキング性>
以下手順により評価した。
各実施例または各比較例の記録用紙を2枚ずつ準備し、印刷受容層表面が対向するように重ねた。このとき、2枚のサンプルのMD方向およびTD方向が一致するように重ねた。
重ね合わせた2枚の記録用紙を、ハイプレッシャージャッキを用いて、圧力2.0kgf、時間5分、加圧した。これにより、2枚のサンプルを意図的にブロッキングさせたサンプルを得た。このサンプルを引張試験機(エー・アンド・デイ社製、商品名:RTG-11225)を使用し、引張速度50mm/分で、記録用紙のMD方向に引っ張った。そして、サンプルが1枚ずつに分離するまでに要した荷重(gf/10cm)を記録し、そのうちの最大値を求めた。この値が小さいほど、耐ブロッキング性は良好である。
【0115】
下記表2は、評価結果を示す。表2において、液状の材料については固形分換算の含有量を示す。
【表2】
【0116】
表2に示すように、酸価がごく低いカルボキシ基含有樹脂を用いた実施例1~3はいずれも、インクとも基材とも十分な密着性が得られている。これに対し、酸価が高いカルボキシ基含有樹脂を用いた比較例2は、ウェット状態では印刷受容層が膨潤したためインクとの密着性が低く、ドライ状態ではカルボキシ基含有樹脂と架橋剤との反応による架橋密度が高いため、印刷受容層の弾性率が高く、印刷受容層と基材との密着性が低かった。また、実施例1を比較例1と対比すると、表面の算術平均粗さRaが特定範囲内にあることにより、高いインク密着性と高いブロッキング性を両立できることが分かる。
【0117】
本出願は、2021年3月31日に出願された日本特許出願である特願2021-59370号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
【符号の説明】
【0118】
1・・・記録用紙、11・・・基材、12・・・印刷受容層

図1