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特許7580038認知機能検査システムの作動方法、及び認知機能検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】認知機能検査システムの作動方法、及び認知機能検査システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61B10/00 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022516951
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2021014885
(87)【国際公開番号】W WO2021215258
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020077830
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】細川 満春
(72)【発明者】
【氏名】張 亜明
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 美紗
(72)【発明者】
【氏名】小川 祐輝
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-137629(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2082057(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0385711(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0129561(KR,A)
【文献】特開平09-016072(JP,A)
【文献】特開2014-008329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 9/00 - 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知機能検査システムの作動方法であって、
n(nは2以上の自然数)個の質問を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査及び第2検査を行う検査ステップと、
前記第1検査における前記n個の質問に対するn個の第1回答、及び前記第2検査における前記n個の質問に対するn個の第2回答の両方に基づいて被験者の認知機能を評価する評価ステップと、を有し、
前記第1検査における前記n個の質問と前記第2検査における前記n個の質問とは、一対一に対応しており、
前記第1検査における前記n個の質問の各々は、前記第2検査における前記n個の質問のうち対応する質問と同じ内容の質問であり、
前記検査ステップでは、前記第1検査を行った後に前記第2検査を行い、
前記第1検査における前記n個の質問の順番と前記第2検査における前記n個の質問の順番とが異なり、
前記n個の質問の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる、
認知機能検査システムの作動方法。
【請求項2】
前記第1検査における前記n個の質問の順番と前記第2検査における前記n個の質問の順番とが逆順である、
請求項1に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項3】
前記第1検査における前記複数の質問の個数と前記第2検査における前記複数の質問の個数とが同数である、
請求項1又は2に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項4】
前記第1検査における前記複数の質問の少なくとも一部と前記第2検査における前記複数の質問の少なくとも一部とが同じ内容の質問である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項5】
前記第1検査における前記n個の質問と前記第2検査における前記n個の質問とが同じ項目についての質問である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項6】
前記評価ステップでは、前記n個の第1回答に基づく第1評価と前記n個の第2回答に基づく第2評価とを比較することにより前記被験者の認知機能を評価する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項7】
前記評価ステップでは、前記第1評価と前記第2評価との一致度に基づいて前記被験者の認知機能を評価する、
請求項6に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項8】
前記第1評価及び前記第2評価の各々は、基準値に対する相対評価を含む、
請求項6又は7に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項9】
前記第1検査では、時系列において最も新しい出来事を対象とする質問から順番に前記n個の質問を出題し、
前記第2検査では、時系列において最も古い出来事を対象とする質問から順番に前記n個の質問を出題する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項10】
前記検査ステップでは、前記第1検査と前記第2検査との間で前記第1検査及び前記第2検査とは関連性のない中間案内を行う、
請求項1~9のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項11】
前記第1検査及び前記第2検査の各々において前記複数の質問を音声により出題する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の認知機能検査システムの作動方法。
【請求項12】
n(nは2以上の自然数)個の質問を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査及び第2検査を行う検査部と、
前記第1検査における前記n個の質問に対するn個の第1回答、及び前記第2検査における前記n個の質問に対するn個の第2回答の両方に基づいて被験者の認知機能を評価する評価部と、を備え、
前記第1検査における前記n個の質問と、前記第2検査における前記n個の質問と、は一対一に対応しており、
前記第1検査における前記n個の質問の各々は、前記第2検査における前記n個の質問のうち対応する質問と同じ内容の質問であり、
前記検査部は、前記第1検査を行った後に前記第2検査を行い、
前記第1検査における前記n個の質問の順番と前記第2検査における前記n個の質問の順番とが異なり、
前記n個の質問の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる、
認知機能検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に認知機能検査システムの作動方法、及び認知機能検査システムに関する。より詳細には、本開示は、被験者の認知機能を検査するための認知機能検査システムの作動方法、及び認知機能検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被験者が認知症であるか否かを判定する認知症検査システムが記載されている。特許文献1に記載の認知症検査システムでは、被験者は、表示装置に表示されたアバター及びテキストを見ながら検査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-15139号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載のような認知症検査システム(認知機能検査システム)の分野では、被験者の認知機能の評価精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本開示の目的は、被験者の認知機能の評価精度を向上させることが可能な認知機能検査システムの作動方法、及び認知機能検査システムを提供することにある。
【0006】
本開示の一態様に係る認知機能検査方法は、認知機能検査システムの作動方法である。前記認知機能検査システムの作動方法は、検査ステップと、評価ステップと、を有する。前記検査ステップは、n(nは2以上の自然数)個の質問を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査及び第2検査を行うステップである。前記評価ステップは、前記第1検査における前記n個の質問に対するn個の第1回答、及び前記第2検査における前記n個の質問に対するn個の第2回答の両方に基づいて被験者の認知機能を評価するステップである。前記第1検査における前記n個の質問と前記第2検査における前記n個の質問とは、一対一に対応している。前記第1検査における前記n個の質問の各々は、前記第2検査における前記n個の質問のうち対応する質問と同じ内容の質問である。前記検査ステップでは、前記第1検査を行った後に前記第2検査を行う。前記第1検査における前記n個の質問の順番と前記第2検査における前記n個の質問の順番とが異なる。前記n個の質問の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる。
【0008】
本開示の一態様に係る認知機能検査システムは、検査部と、評価部と、を備える。前記検査部は、n(nは2以上の自然数)個の質問を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査及び第2検査を行う。前記評価部は、前記第1検査における前記n個の質問に対するn個の第1回答、及び前記第2検査における前記n個の質問に対するn個の第2回答の両方に基づいて被験者の認知機能を評価する。前記第1検査における前記n個の質問と、前記第2検査における前記n個の質問と、は一対一に対応している。前記第1検査における前記n個の質問の各々は、前記第2検査における前記n個の質問のうち対応する質問と同じ内容の質問である。前記検査部は、前記第1検査を行った後に前記第2検査を行う。前記第1検査における前記n個の質問の順番と前記第2検査における前記n個の質問の順番とが異なる。前記n個の質問の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る認知機能検査システムによる検査状況を示す概略図である。
図2図2は、同上の認知機能検査システムのブロック図である。
図3図3は、同上の認知機能検査システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の認知機能検査システムによる第1検査及び第2検査における質問及び回答の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、被験者が健常者である場合の被験者の記憶量及び発話量のイメージ図である。
図6図6は、被験者が軽度認知障害である場合の被験者の記憶量及び発話量のイメージ図である。
図7図7は、被験者が認知症である場合の被験者の記憶量及び発話量のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る認知機能検査システム1及び認知機能検査方法について、図1図7を参照して説明する。
【0011】
ただし、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、下記の実施形態及び変形例に限定されない。下記の実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
また、下記の実施形態等において説明する各図は、いずれも模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(1)概要
まず、本実施形態に係る認知機能検査システム1及び認知機能検査方法の概要について、図1図4を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る認知機能検査方法は、図1に示すように、スマートスピーカ2を用いて、被験者P1の認知機能を検査するための方法であり、認知機能検査システム1にて実現される。認知機能検査システム1は、図2に示すように、検査部111と、評価部113と、を備える。検査部111は、互いに対応するn個の(第1,第2)質問Q1,Q2(図4参照)を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査S12及び第2検査S14(図3参照)を行う。nは2以上の自然数であって、本実施形態では一例として、nは3である。すなわち、本実施形態では、第1検査S12及び第2検査S14の各々において、3個の質問Q1,Q2を含む複数の質問を出題する。評価部113は、第1検査S12におけるn個の(第1)質問Q1に対するn個の第1回答A1(図4参照)、及び第2検査S14におけるn個の(第2)質問Q2に対するn個の第2回答A2(図4参照)の両方に基づいて被験者P1の認知機能を評価する。検査部111は、第1検査S12を行った後に第2検査S14を行う。この認知機能検査システム1では、第1検査S12におけるn個の(第1)質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の(第2)質問Q2の順番とが異なる。本実施形態では一例として、被験者P1は高齢者であるが、被験者P1は高齢者に限らない。
【0015】
本開示でいう「認知機能」とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断等の知的な能力を指し、例えば、記憶機能、注意機能、実行機能(遂行機能)、及び情報処理に分類される。「記憶機能」とは、自己の経験が保存され、その経験が後になって意識や行為の中に想起/再現(表現)される現象あるいはそれを支える機能をいう。「注意機能」とは、周囲の事物、事象の特定部分や複雑な心的活動の特定の側面に対して、選択的に反応したり注目したりするようにしむける意識の働きをいう。「実行機能」とは、計画を立てて順序よく物事を行う機能をいい、具体的には、目標設定、計画立案、計画実行、効果的遂行等の要素を含む。「情報処理」とは、外界から入力される情報(例えば、視覚情報、聴覚情報等)に対して処理を行う機能をいう。
【0016】
近年、高齢化社会の到来に伴い、認知症患者の増加が問題になっている。また、認知症に対する特効薬が未だ発見されていないことから、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)に注目が集まっている。軽度認知障害は、正常な状態(健常)と認知症との中間の状態である。
【0017】
このような軽度認知障害及び認知症の早期の段階では、記憶機能のうち、特にエピソード記憶(個人が経験した出来事に関する記憶)の障害がみられるため、認知機能の検査としては、自由発話によるエピソード記憶の検査が一般的である。ここで、自由発話では、会話内容として、連想型である「雑談」と、目標思考型である「用談、会議、講演」と、の2種類に大別される。目標思考型である「用談、会議、講演」は、被験者の見方や考え方で成り立ち、目標達成の活動であるため、会話内容を記憶保持しやすい。一方で、連想型である「雑談」は、被験者の思い付きの話をする活動であるため、目標思考型に比べて会話内容を記憶保持しにくい。したがって、被験者の認知機能を検査する場合には、被験者の体験(エピソード)に基づく「雑談」を出題するのがよい。
【0018】
このような被験者の体験に基づく「雑談」では、発話内容が被験者の体験に依存するため、その発話内容が実際に体験したものかを被験者以外が確認する術がない。また、被験者が自身の体験を思い出せないことから、実際に体験したかのように作話する可能性もある。その結果、被験者の認知機能を正しく評価できない可能性がある。
【0019】
このような問題を解決するために、本実施形態に係る認知機能判定方法では、以下の構成を採用している。
【0020】
すなわち、本実施形態に係る認知機能検査方法は、図3及び図4に示すように、検査ステップS1と、評価ステップS3と、を有する。検査ステップS1は、互いに対応するn(nは2以上の自然数)個の(第1,第2)質問Q1,Q2(図4参照)を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査S12及び第2検査S14を行うステップである。評価ステップS3は、第1検査S12におけるn個の(第1)質問Q1に対するn個の第1回答A1(図4参照)、及び第2検査S14におけるn個の(第2)質問Q2に対するn個の第2回答A2(図4参照)の両方に基づいて被験者P1の認知機能を評価するステップである。検査ステップS1では、第1検査S12を行った後に第2検査S14を行う。この認知機能検査方法では、第1検査S12におけるn個の(第1)質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の(第2)質問Q2の順番とが異なる。認知機能検査方法は、1以上のプロセッサにより実行される。
【0021】
本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査S12で出題されるn個の(第1)質問Q1と第2検査S14で出題されるn個の(第2)質問Q2とが互いに対応している。そのため、n個の(第1)質問Q1に対するn個の第1回答A1とn個の(第2)質問Q2に対するn個の第2回答A2も互いに対応することになる。したがって、n個の第1回答A1とn個の第2回答A2とを比較することで、被験者P1の発話内容が被験者P1の体験に基づくものか否かを判定することができ、被験者P1の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査S12におけるn個の(第1)質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の(第2)質問Q2の順番とを異ならせている。そのため、n個の(第1)質問Q1の順番とn個の(第2)質問Q2の順番とが同じ場合と比較して、被験者P1の認知機能に負荷を与えることができ、被験者P1の認知機能の評価精度の更なる向上が見込まれる。
【0022】
(2)詳細
次に、本実施形態に係る認知機能検査システム1の詳細について、図2を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係る認知機能検査システム1は、図2に示すように、ネットワーク3を介してスマートスピーカ2に接続可能である。つまり、認知機能検査システム1は、ネットワーク3に接続されることによって、スマートスピーカ2との間で通信可能に構成されている。本実施形態では一例として、ネットワーク3はインターネットであるが、ネットワーク3はインターネットに限らない。
【0024】
(2.1)認知機能検査システム
認知機能検査システム1は、例えば、1又は複数のコンピュータを含むクラウドサーバである。認知機能検査システム1は、図2に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。
【0025】
(2.1.1)制御部
制御部11は、認知機能検査システム1の各部を制御する。制御部11は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムの1以上のメモリに記録されたプログラムを、1以上のプロセッサが実行することにより、制御部11(後述の検査部111、分析部112及び評価部113を含む)の機能が実現される。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよく、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0026】
制御部11は、例えば、通信部12及び記憶部13の各々と電気的に接続されている。制御部11は、通信部12を制御することにより、スマートスピーカ2との間で通信部12に通信を行わせる。また、制御部11は、記憶部13を制御することにより、被験者P1の音声データ等を記憶部13に記憶させる。
【0027】
また、制御部11は、図2に示すように、検査部111と、分析部112と、評価部113と、を有している。
【0028】
検査部111は、検査ステップS1(図3参照)を実行するように構成されている。検査ステップS1は、第1検査S12及び第2検査S14を行うステップである。第1検査S12では、n個の第1質問Q1(図4参照)を含む複数の質問を出題する。第2検査S14では、n個の第2質問Q2(図4参照)を含む複数の質問を出題する。n個の第1質問Q1とn個の第2質問Q2とは互いに対応している。ここで、nは2以上の自然数である。本実施形態では一例として、第1検査S12では、複数の質問として、3個の第1質問Q11,Q12,Q13を出題する。また、第2検査S14では、複数の質問として、3個の第2質問Q21,Q22,Q23を出題する。すなわち、本実施形態では、第1検査S12における複数の質問の個数と第2検査S14における複数の質問の個数とが同数である。検査部111は、検査ステップS1において、第1検査S12を行った後に第2検査S14を行う。
【0029】
第1検査S12は、図3及び図4に示すように、第1-A検査S121と、第1-B検査S122と、第1-C検査S123と、を含む。第1検査S12では、第1-A検査S121、第1-B検査S122、第1-C検査S123の順に検査が行われる。第1-A検査S121では、図4に示すように、3個の第1質問Q11,Q12,Q13のうち1つ目の第1質問Q11を出題する。したがって、第1-A検査S121では、第1質問Q11に対する回答である第1回答A11が得られる。第1-B検査S122では、図4に示すように、3個の第1質問Q11,Q12,Q13のうち2つ目の第1質問Q12を出題する。したがって、第1-B検査S122では、第1質問Q12に対する回答である第1回答A12が得られる。第1-C検査S123では、図4に示すように、3個の第1質問Q11,Q12,Q13のうち3つ目の第1質問Q13を出題する。したがって、第1-C検査S123では、第1質問Q13に対する回答である第1回答A13が得られる。
【0030】
第2検査S14は、図3及び図4に示すように、第2-A検査S141と、第2-B検査S142と、第2-C検査S143と、を含む。第2検査S14では、第2-C検査S143、第2-B検査S142、第2-A検査S141の順に検査が行われる。第2-A検査S141では、図4に示すように、3個の第2質問Q21,Q22,Q23のうち1つ目の第2質問Q21を出題する。したがって、第2-A検査S141では、第2質問Q21に対する回答である第2回答A21が得られる。第2-B検査S142では、図4に示すように、3個の第2質問Q21,Q22,Q23のうち2つ目の第2質問Q22を出題する。したがって、第2-B検査S142では、第2質問Q22に対する回答である第2回答A22が得られる。第2-C検査S143では、図4に示すように、3個の第2質問Q21,Q22,Q23のうち3つ目の第2質問Q23を出題する。したがって、第2-C検査S143では、第2質問Q23に対する回答である第2回答A23が得られる。
【0031】
本実施形態では、図4に示すように、第1質問Q11と第2質問Q21とが同じ内容の質問であり、第1質問Q12と第2質問Q22とが同じ内容の質問であり、第1質問Q13と第2質問Q23とが同じ内容の質問である。すなわち、本実施形態では、第1検査S12における複数の質問(3個の第1質問Q11,Q12,Q13)と、第2検査S14における複数の質問(3個の第2質問Q21,Q22,Q23)と、が同じ内容の質問である。
【0032】
また、本実施形態では、3個の第1質問Q11,Q12,Q13及び3個の第2質問Q21,Q22,Q23の各々は、一番印象に残った出来事に関する質問である。すなわち、本実施形態では、第1検査S12におけるn個の質問Q1と第2検査S14におけるn個の質問Q2とが同じ項目についての質問である。
【0033】
さらに、本実施形態では、第1質問Q11は、昨日の一番印象に残った出来事に関する質問であり、第1質問Q12は、一週間前の一番印象に残った出来事に関する質問であり、第1質問Q13は、1ヶ月前の一番印象に残った出来事に関する質問である。すなわち、第1検査S12におけるn個の質問Q1の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる。また、第2質問Q21は、昨日の一番印象に残った出来事に関する質問であり、第2質問Q22は、一週間前の一番印象に残った出来事に関する質問であり、第2質問Q23は、1ヶ月前の一番印象に残った出来事に関する質問である。すなわち、第2検査S14におけるn個の質問Q2の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる。
【0034】
そして、第1検査S12では第1質問Q11,Q12,Q13の順に出題され、第2検査S14では第2質問Q23,Q22,Q21の順に出題される。すなわち、第1検査S12におけるn個の質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の質問Q2の順番とが異なっている。より詳しくは、第1検査S12におけるn個の質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の質問Q2の順番とが逆順である。さらには、第1検査S12では、図4に示すように、時系列において最も新しい出来事を対象とする第1質問Q11から順番に3個の第1質問Q11,Q12,Q13を出題する。また、第2検査S14では、図4に示すように、時系列において最も古い出来事を対象とする第2質問Q23から順番に3個の第2質問Q21,Q22,Q23を出題する。
【0035】
ところで、本実施形態に係る認知機能検査システム1では、後述のスマートスピーカ2が備えるスピーカにて第1質問Q1及び第2質問Q2を出題する。すなわち、本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査S12及び第2検査S14の各々において複数の質問(第1質問Q1及び第2質問Q2)を音声により出題する。これにより、被験者P1の視覚機能が低下している場合であっても、認知機能の検査を行うことが可能となる。
【0036】
また、検査部111は、検査ステップS1において中間案内S13(図3参照)を行う。中間案内S13は、検査ステップS1において第1検査S12と第2検査S14との間で行われる。中間案内S13では、第1検査S12及び第2検査S14とは関連性のない話題G2について案内する。図4の例では、中間案内S13において、話題G2として、本日のニュースを案内している。このように、第1検査S12と第2検査S14との間において、第1検査S12及び第2検査S14とは関連性のない話題G2を案内することにより、被験者P1に記憶の干渉を起こさせることが可能となる。
【0037】
分析部112は、分析ステップS2(図3参照)を実行するように構成されている。分析ステップS2は、第1分析S21及び第2分析S22を行うステップである。第1分析S21は、第1検査S12に対応し、第1検査S12で得られた3個の第1回答A1(A11,A12,A13)の音響分析及び言語分析を行う。第2分析S22は、第2検査S14に対応し、第2検査S14で得られた3個の第2回答A2(A21,A22,A23)の音響分析及び言語分析を行う。
【0038】
第1分析S21は、第1-A分析S211と、第1-B分析S212と、第1-C分析S213と、を含む。第1-A分析S211では、第1-A検査S121で得られた第1回答A11の音響分析及び言語分析を行う。第1-B分析S212では、第1-B検査S122で得られた第1回答A12の音響分析及び言語分析を行う。第1-C分析S213では、第1-C検査S123で得られた第1回答A13の音響分析及び言語分析を行う。
【0039】
第2分析S22は、第2-A分析S221と、第2-B分析S222と、第2-C分析S223と、を含む。第2-A分析S221では、第2-A検査S141で得られた第2回答A21の音響分析及び言語分析を行う。第2-B分析S222では、第2-B検査S142で得られた第2回答A22の音響分析及び言語分析を行う。第2-C分析S223では、第2-C検査S143で得られた第2回答A23の音響分析及び言語分析を行う。このように、分析部112は、分析ステップS2において、被験者P1の音声データ(第1回答A1及び第2回答A2)に基づいて、被験者P1の音声の音響分析及び言語分析を行う。
【0040】
分析部112は、音響分析では、被験者P1の音声の特徴量として、例えば、発話時間長、音節の数、ポーズの時間長、ポーズの割合、ポーズの数、発話速度、調音速度、一回発話時間長の標準偏差、及び一回発話時間長の平均のうち少なくとも1つを求める。発話時間長は、上記音声データに含まれる音声全体(ポーズを含む)の時間長である。音節の数は、上記音声データに含まれる音節の数である。ポーズの時間長は、上記音声データに含まれる1つ以上のポーズの時間長の合計である。ポーズの割合は、上記音声データに占めるポーズの割合である。ポーズの数は、上記音声データに含まれるポーズの数である。発話速度は、発話時間長に基づく単位時間当たりの音節数(モーラ数)である。調音速度は、発話時間長からポーズの時間長を引いた時間長に基づく単位時間当たりの音節数(モーラ数)である。一回発話時間長の標準偏差は、上記音声データに含まれる複数の発話時間長に基づく標準偏差である。一回発話時間長の平均は、上記音声データに含まれる複数の発話時間長に基づく平均である。本実施形態では一例として、分析部112は、音響分析では、被験者P1の音声の特徴量として、発話量に相当する発話時間長、及び発話内容に相当するポーズの時間長を求める。
【0041】
また、分析部112は、言語分析では、被験者P1の音声の特徴量として、例えば、上記音声データに含まれる品詞の数、指示代名詞の数、フィラーの数、及び品詞の重複度合のうち少なくとも1つを求める。品詞は、単語を文法的な機能や形態等によって分類したものであって、名詞、動詞、及び助詞等を含む。指示代名詞は、事物、場所、方角等を指し示すのに用いられるものであって、「あれ」、「それ」等を含む。フィラーは、会話の隙間を埋めるために用いられるものであって、「えっと」、「まあ」、「あー」等を含む。本実施形態では一例として、分析部112は、言語分析では、被験者P1の音声の特徴量として、発話量に相当する品詞の数、及び発話内容に相当する品詞の重複度合を求める。
【0042】
分析部112は、音響分析の結果、及び言語分析の結果を評価部113に出力する。
【0043】
評価部113は、評価ステップS3(図3参照)を実行するように構成されている。評価ステップS3は、分析部112の分析結果に基づいて被験者P1の認知機能を評価するステップである。詳しくは、評価部113は、評価ステップS3において、第1検査S12における3個の第1質問Q1に対する3個の第1回答A1、及び第2検査S14における3個の第2質問Q2に対する3個の第2回答A2の両方に基づいて被験者P1の認知機能を評価する。より詳しくは、評価部113は、評価ステップS3において、3個の第1回答A1に基づく第1評価S31と3個の第2回答A2に基づく第2評価S32とを比較することにより被験者P1の認知機能を評価する。評価ステップS3は、図3に示すように、第1評価S31と、第2評価S32と、を含む。
【0044】
評価部113は、第1評価S31では、第1分析S21の分析結果に基づいて、第1検査S12の再検査の要否を判断する。言い換えると、評価部113は、第1検査S12で得られた3個の第1回答A11,A12,A13が、第2検査S14で取得予定の3個の第2回答A21,A22,A23と比較可能か否かを判断する。評価部113は、言語分析では、例えば、第1回答A11,A12,A13について、単語で回答している(言い換えると、複数の品詞が含まれていない)、同じ回答を繰り返している、テキスト変換できない、との3つの項目で判断する。また、評価部113は、音響分析では、例えば、第1回答A11,A12,A13のうち2つ以上が無音状態(無発話状態)になっている、との項目で判断する。そして、評価部113は、第1回答A11,A12,A13について、上記4つの項目のうち少なくとも1つの項目に当てはまっていれば、第1検査S12の再検査が必要と判断する。評価部113は、第1検査S12の再検査が必要と判断した場合、検査部111に第1検査S12の再検査を行わせる(図3のS124)。
【0045】
一方、評価部113は、第1検査S12の再検査が不要と判断した場合、3個の第1回答A11,A12,A13を基準データB1(図5参照)と比較する。ここでいう「基準データB1」は、発話量に関し、3個の第1回答A11,A12,A13と比較するためのデータである。本実施形態のように、時系列において最も新しい出来事を対象とする第1質問Q11から順番に3個の第1質問Q11,Q12,Q13を出題する場合、第1回答A11の発話量が最も多く、第1回答A12、第1回答A13の順に発話量が少なくなるのが一般的である。したがって、基準データB1は、第1回答A11に対するデータB11が最も大きく、第1回答A12に対するデータB12、第1回答A13に対するデータB13の順に小さくなる。例えば、被験者P1が健常者である場合、発話量について、基準データB1のデータB11,B12,B13に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値以上となる。また、被験者P1が軽度認知障害である場合、発話量について、基準データB1のデータB11,B12,B13に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値よりも小さくなる。
【0046】
評価部113は、図示を省略しているが、第2評価S32においても第2検査S14の再検査の要否を判断してもよい。この場合においても、評価部113は、第2回答A21,A22,A23について、上記4つの項目のうち少なくとも1つの項目に当てはまっていれば、第2検査S14の再検査が必要と判断する。評価部113は、第2検査S14の再検査が必要と判断した場合、検査部111に第2検査S14の再検査を行わせる。評価部113は、第2検査S14の再検査が不要と判断した場合、3個の第2回答A21,A22,A23を基準データB1と比較する。
【0047】
また、評価部113は、発話内容に関し、3個の第1回答A11,A12,A13と3個の第2回答A21,A22,A23とを比較する。詳しくは、評価部113は、音響分析では、第1回答A11のポーズの時間長と第2回答A21のポーズの時間長とを比較し、第1回答A12のポーズの時間長と第2回答A22のポーズの時間長とを比較し、第1回答A13のポーズの時間長と第2回答A23のポーズの時間長とを比較する。そして、評価部113は、これらの差分が所定範囲内に収まっていれば、第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致すると判断する。さらに、評価部113は、言語分析では、第1回答A11の品詞の重複度合と第2回答A21の品詞の重複度合とを比較し、第1回答A12の品詞の重複度合と第2回答A22の品詞の重複度合とを比較し、第1回答A13の品詞の重複度合と第2回答A23の品詞の重複度合とを比較する。そして、評価部113は、これらの差分が所定範囲内に収まっていれば、第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致すると判断する。
【0048】
評価部113は、発話量に関し、基準データB1(図5参照)に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値以上で、かつ発話内容に関し、第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致する場合に、被験者P1が健常者であると評価(判断)する。また、評価部113は、発話量に関し、基準データB1に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値よりも小さく、かつ発話内容に関し、第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致する場合に、被験者P1が軽度認知障害であると評価(判断)する。さらに、評価部113は、第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致しない場合に、被験者P1が認知症であると評価(判断)する。
【0049】
要するに、評価部113は、評価ステップS3において、3個の第1回答A11,A12,A13に基づく第1評価S31と3個の第2回答A21,A22,A23に基づく第2評価S32とを比較することにより被験者P1の認知機能を評価する。さらに、評価部113は、評価ステップS3において、第1評価S31と第2評価S32との一致度に基づいて被験者P1の認知機能を評価する。また、第1評価S31及び第2評価S32の各々は、基準値(基準データB1)に対する相対評価を含む。
【0050】
具体的には、評価部113は、分析部112の分析結果である、被験者P1の音声の特徴量に基づいて、被験者P1の認知機能を評価する。言い換えると、評価部113は、分析部112の分析結果である、第1回答A1の特徴量と第2回答A2とを比較した結果に基づいて、被験者P1の認知機能を評価する。この際、評価部113は、学習済モデルを用いて被験者P1の認知機能を評価する。学習済モデルは、例えば、ロジスティック回帰モデルである。学習済モデルは、後述の記憶部13に記憶されている。なお、学習済モデルは、ロジスティック回帰モデルに限らず、例えば、SVM(Support Vector Machine)であってもよい。
【0051】
学習済モデルは、与えられた入力(特徴量)に対して、被験者P1の認知機能の程度を示す値を出力するように設計されている。評価部113は、音声データから得られた少なくとも1つの特徴量を学習済モデルに与え、これによって学習済モデルから得られた値に基づいて、被験者P1の認知機能を評価する。このような学習済モデルは、認知機能の程度を示す値と特徴量との関係を規定する学習用データ(データセット)を用いた教師あり学習により生成することができる。
【0052】
(2.1.2)通信部
通信部12は、スマートスピーカ2(の通信部22)との間で通信を行うための通信インターフェースである。通信部12は、上述したように、ネットワーク3に接続可能であり、ネットワーク3を介してスマートスピーカ2との間で通信を行う。通信部12は、例えば、スマートスピーカ2から、被験者P1の音声データを受信する。また、通信部12は、例えば、スマートスピーカ2に対して、少なくとも3個の第1質問Q11,Q12,Q13及び3個の第2質問Q21,Q22,Q23の音声データを送信する。さらに、通信部12は、スマートスピーカ2に対して、評価部113の評価結果を含む結果データを送信する。
【0053】
(2.1.3)記憶部
記憶部13は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の書き換え可能な不揮発性メモリである。記憶部13は、スマートスピーカ2から送られてくる被験者P1の音声データを、被験者P1の識別情報に紐付けて記憶する。識別情報は、例えば、被験者P1の氏名であってもよいし、被験者P1に予め割り当てられたID(identification)番号等であってもよい。また、記憶部13は、上述の学習済モデルを記憶する。
【0054】
(2.2)スマートスピーカ
スマートスピーカ2は、図2に示すように、制御部21と、通信部22と、音声入出力部23と、操作部24と、記憶部25と、を備えている。
【0055】
(2.2.1)制御部
制御部21は、スマートスピーカ2の各部を制御する。制御部21は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。すなわち、コンピュータシステムの1以上のメモリに記録されたプログラムを、1以上のプロセッサが実行することにより、制御部21の機能が実現される。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよく、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0056】
制御部21は、例えば、通信部22、音声入出力部23、操作部24及び記憶部25の各々と電気的に接続されている。制御部21は、通信部22を制御することにより、認知機能検査システム1との間で通信部22に通信を行わせる。制御部21は、音声入出力部23を制御することにより、被験者P1の音声データを取得し、さらに被験者P1に対して結果データを出力する。制御部21は、操作部24からの操作入力を受け付ける。制御部21は、記憶部25を制御することにより、認知機能検査システム1からの結果データ等を記憶部25に記憶させる。
【0057】
(2.2.2)通信部
通信部22は、認知機能検査システム1(の通信部12)との間で通信を行うための通信インターフェースである。通信部22は、上述したように、ネットワーク3に接続可能であり、ネットワーク3を介して認知機能検査システム1との間で通信を行う。通信部22は、例えば、認知機能検査システム1から、少なくとも3個の第1質問Q11,Q12,Q13及び3個の第2質問Q21,Q22,Q23の音声データを受信する。さらに、通信部22は、認知機能検査システム1から、評価部113の評価結果を含む結果データを受信する。また、通信部22は、例えば、認知機能検査システム1に対して、被験者P1の音声データを送信する。
【0058】
(2.2.3)音声入出力部
音声入出力部23は、例えば、マイクロホン及びスピーカを含む。マイクロホンは、被験者P1が発した音声を含む音を音声データ(音声信号)に変換し、この音声データを制御部21に出力する。スピーカは、例えば、認知機能検査システム1から送られてくる音声データ(音声信号)を、音声(音)に変換して出力する。
【0059】
(2.2.4)操作部
操作部24は、開始ボタンを含む複数の押ボタンを有している。開始ボタンは、認知機能検査システム1による認知機能の検査を開始するためのボタンである。すなわち、被験者P1が操作部24の開始ボタンを押すことによって、被験者P1の認知機能の検査が開始される。
【0060】
(2.2.5)記憶部
記憶部25は、例えば、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリである。記憶部25は、音声入出力部23のマイクロホンを介して入力された被験者P1の音声データを、被験者P1の上記識別情報に紐付けて記憶する。また、記憶部25は、認知機能検査システム1から送られてくる結果データを、被験者P1の上記識別情報に紐付けて記憶する。ただし、本実施形態では、認知機能検査システム1の記憶部13に被験者P1の音声データを記憶させているため、被験者P1の音声データについては記憶部25に記憶させなくてもよい。この場合、スマートスピーカ2は、被験者P1の音声データを、必要に応じて認知機能検査システム1から取得すればよい。
【0061】
(3)記憶量と発話量との関係
次に、被験者P1の記憶量と発話量との関係について、図5図7を参照して説明する。
【0062】
(3.1)健常者
被験者P1が健常者である場合、図5に示すようなイメージ図になる。図5では、「M1」は被験者P1の記憶量を示し、「U11」は第1検査S12における被験者P1の発話量を示し、「U12」は第2検査S14における被験者P1の発話量を示している。また、図5では、「M11」は第1質問Q11に関する被験者P1の記憶量を示し、「M12」は第1質問Q12に関する被験者P1の記憶量を示し、「M13」は第1質問Q13に関する被験者P1の記憶量を示している。また、図5では、「I11」は第1質問Q11に関する体験情報(エピソード情報)の大きさを示し、「I12」は第1質問Q12に関する体験情報の大きさを示し、「I13」は第1質問Q13に関する体験情報の大きさを示している。
【0063】
また、図5では、「U111」は第1質問Q11に対する被験者P1の発話量を示し、「U112」は第1質問Q12に対する被験者P1の発話量を示し、「U113」は第1質問Q13に対する被験者P1の発話量を示している。また、図5では、「U121」は第2質問Q21に対する被験者P1の発話量を示し、「U122」は第2質問Q22に対する被験者P1の発話量を示し、「U123」は第2質問Q23に対する被験者P1の発話量を示している。また、図5では、「B1」は発話量U11と比較するための基準データを示している。また、図5では、「B11」は発話量U111と比較するためのデータを示し、「B12」は発話量U112と比較するためのデータを示し、「B13」は発話量U113と比較するためのデータを示している。
【0064】
ここで、最も過去の出来事に関する質問である第1質問Q13及び第2質問Q23については、記憶の干渉の影響を受けやすいため、第1検査S12及び第2検査S14において第1質問Q13をしてから第2質問Q23をするまでの検査時間を最も短くする。一方で、最も現在に近い出来事に関する質問である第1質問Q11及び第2質問Q21については、記憶の干渉を受けにくいため、第1検査S12及び第2検査S14において第1質問Q11をしてから第2質問Q21をするまでの検査時間を最も長くする。
【0065】
被験者P1が健常者である場合、被験者P1の記憶量M1は、図5に示すように、第1質問Q11に関する記憶量M11、第1質問Q12に関する記憶量M12、第1質問Q13に関する記憶量M13の順に減少している。また、第1検査S12における被験者P1の発話量U11も、第1質問Q11に対する発話量U111、第1質問Q12に対する発話量U112、第1質問Q13に対する発話量U113の順に減少している。つまり、被験者P1が健常者である場合、記憶量M1と発話量U11とが時系列で同じような減少傾向になる。また、被験者P1が健常者である場合、記憶量M11と発話量U111とがほぼ同じで、記憶量M12と発話量U112とがほぼ同じで、記憶量M13と発話量U113とがほぼ同じである。さらに、被験者P1が健常者である場合、データB11に対する発話量U111の比率、データB12に対する発話量U112の比率、及びデータB13に対する発話量U113の比率の各々が一定値以上である。
【0066】
また、第2検査S14における被験者P1の発話量U12は、第1検査S12と第2検査S14との間で中間案内S13を行うことで記憶の干渉の影響を受けており、第1検査S12における被験者P1の発話量U11よりも減少している。一方で、この場合においても、第2質問Q21に対する発話量U121、第2質問Q22に対する発話量U122、第2質問Q23に対する発話量U123の順に被験者P1の発話量U12が減少しており、記憶量M1と発話量U12とが時系列で同じような減少傾向になる。
【0067】
また、被験者P1が健常者である場合、第1質問Q11,Q12,Q13に対する被験者P1の発話内容と、第2質問Q21,Q22,Q23に対する被験者P1の発話内容と、がほぼ同じになる。
【0068】
(3.2)軽度認知障害(MCI)
被験者P1が軽度認知障害である場合、図6に示すようなイメージ図になる。図6では、「M2」は被験者P1の記憶量を示し、「U21」は第1検査S12における被験者P1の発話量を示し、「U22」は第2検査S14における被験者P1の発話量を示している。また、図6では、「M21」は第1質問Q11に関する被験者P1の記憶量を示し、「M22」は第1質問Q12に関する被験者P1の記憶量を示し、「M23」は第1質問Q13に関する被験者P1の記憶量を示している。なお、図6の「I11」、「I12」、「I13」は、それぞれ、図5の「I11」、「I12」、「I13」と同じである。
【0069】
また、図6では、「U211」は第1質問Q11に対する被験者P1の発話量を示し、「U212」は第1質問Q12に対する被験者P1の発話量を示し、「U213」は第1質問Q13に対する被験者P1の発話量を示している。また、図6では、「U222」は第2質問Q22に対する被験者P1の発話量を示し、「U223」は第2質問Q23に対する被験者P1の発話量を示している。なお、図6の「B1」、「B11」、「B12」、「B13」は、それぞれ、図5の「B1」、「B11」、「B12」、「B13」と同じである。
【0070】
被験者P1が軽度認知障害である場合、被験者P1の記憶量M2は、図6に示すように、第1質問Q11に関する記憶量M21、第1質問Q12に関する記憶量M22、第1質問Q13に関する記憶量M23の順に減少している。また、第1検査S12における被験者P1の発話量U21も、第1質問Q11に対する発話量U211、第1質問Q12に対する発話量U212、第1質問Q13に対する発話量U213の順に減少している。つまり、被験者P1が軽度認知障害である場合、記憶量M2と発話量U21とが時系列で同じような減少傾向になる。ただし、被験者P1が軽度認知障害である場合、被験者P1が健常者である場合に比べて、各記憶量M21,M22,M23及び各発話量U211,U212,U213が減少している。
【0071】
また、第2検査S14における被験者P1の発話量U22は、第1検査S12と第2検査S14との間で中間案内S13を行うことで記憶の干渉の影響を受けており、第1検査S12における被験者P1の発話量U21よりも減少している。特に、図6の例では、時系列で最も古い第2質問Q23が記憶の干渉の影響を最も受けており、第2質問Q23に対する発話量はゼロである。一方で、この場合においても、第2質問Q21に対する発話量U221、第2質問Q22に対する発話量U222、第2質問Q23に対する発話量の順に被験者P1の発話量U22が減少しており、記憶量M2と発話量U22とが時系列で同じような減少傾向になる。
【0072】
また、被験者P1が軽度認知障害である場合、第1質問Q11,Q12,Q13に対する被験者P1の発話内容と、第2質問Q21,Q22,Q23に対する被験者P1の発話内容と、がほぼ同じになる。
【0073】
(3.3)認知症(AD)
被験者P1が認知症である場合、図7に示すようなイメージ図になる。図7では、「M3」は被験者P1の記憶量を示し、「U31」は第1検査S12における被験者P1の発話量を示し、「U32」は第2検査S14における被験者P1の発話量を示している。また、図7では、「M31」は第1質問Q11に関する被験者P1の記憶量を示し、「M32」は第1質問Q12に関する被験者P1の記憶量を示し、「M33」は第1質問Q13に関する被験者P1の記憶量を示している。なお、図7の「I11」、「I12」、「I13」は、それぞれ、図5の「I11」、「I12」、「I13」と同じである。
【0074】
また、図7では、「U311」は第1質問Q11に対する被験者P1の発話量を示し、「U312」は第1質問Q12に対する被験者P1の発話量を示し、「U313」は第1質問Q13に対する被験者P1の発話量を示している。また、図7では、「U321」は第2質問Q21に対する被験者P1の発話量を示し、「U322」は第2質問Q22に対する被験者P1の発話量を示し、「U323」は第2質問Q23に対する被験者P1の発話量を示している。なお、図7の「B1」、「B11」、「B12」、「B13」は、それぞれ、図5の「B1」、「B11」、「B12」、「B13」と同じである。
【0075】
被験者P1が認知症である場合、被験者P1は、図7に示すように、第1質問Q11,Q12,Q13のいずれに関する記憶もなく、エピソードを思い出すことができないが、第1質問Q11,Q12,Q13に対して作話を行う。つまり、被験者P1が認知症である場合、被験者P1は、自身のエピソード(体験談)ではなく、創作した話を発話することになる。そのため、被験者P1の発話量U31は時系列の順に変化しない。図7の例では、第1質問Q12に対する発話量U312が最も多く、第1質問Q11に対する発話量U311、第1質問Q13に対する発話量U313の順に少なくなっている。
【0076】
ここで、被験者P1は、第1検査S12と第2検査S14との間で中間案内S13を行うことで記憶の干渉の影響を受け、第1検査S12において発話した内容を記憶していない。そのため、被験者P1は、第2検査S14において、第1検査S12とは異なる作話を行う。図7の例では、第2質問Q23に対する発話量U323が最も多く、第2質問Q21に対する発話量U321、第2質問Q22に対する発話量U322の順に少なくなっている。
【0077】
(4)認知機能検査方法
次に、本実施形態に係る認知機能検査方法について、図3及び図4を参照して説明する。
【0078】
本実施形態に係る認知機能検査方法は、検査ステップS1と、評価ステップS3と、を有する。検査ステップS1は、互いに対応するn個(本実施形態では3個)の質問Q1,Q2を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査S12及び第2検査S14を行うステップである。評価ステップS3は、第1検査S12におけるn個の質問Q1に対するn個の第1回答A1、及び第2検査S14におけるn個の質問Q2に対するn個の第2回答A2の両方に基づいて被験者P1の認知機能を評価するステップである。検査ステップS1では、第1検査S12を行った後に第2検査S14を行う。この認知機能検査方法では、第1検査S12におけるn個の質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の質問Q2の順番とが異なる。認知機能検査方法は、1以上のプロセッサにより実行される。
【0079】
すなわち、本実施形態に係る認知機能検査方法は、本実施形態に係る認知機能検査システム1を用いて、被験者P1の認知機能を検査するための方法である。この認知機能検査方法では、上述したように、第1検査S12で出題されるn個の質問Q1と第2検査S14で出題されるn個の質問Q2とが互いに対応している。そのため、n個の質問Q1に対するn個の第1回答A1と、n個の質問Q2に対するn個の第2回答A2も対応することになる。したがって、n個の第1回答A1とn個の第2回答A2とを比較することで、被験者P1の発話内容が被験者P1の体験に基づくものか否かを判定することができ、被験者P1の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。
【0080】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、第1検査S12におけるn個の質問Q1の順番と第2検査S14におけるn個の質問Q2の順番とを異ならせている。そのため、n個の質問Q1の順番とn個の質問Q2の順番とが同じ場合と比較して、被験者P1の認知機能に負荷を与えることができ、被験者P1の認知機能の評価精度の更なる向上が見込まれる。
【0081】
また、本実施形態に係る認知機能検査方法では、n個の質問Q1及びn個の質問Q2を音声にて出題している。そのため、例えば、被験者P1の視覚機能が低下している場合であっても、認知機能の検査を正しく行うことが可能となる。
【0082】
図3は、本実施形態に係る認知機能検査方法を含む、認知機能検査システム1の動作を示すフローチャートである。図4は、認知機能検査システム1による第1検査S12及び第2検査S14における質問Q1,Q2及び回答A1,A2の一例を示すフローチャートである。
【0083】
認知機能検査システム1は、被験者P1によってスマートスピーカ2の操作部24の開始ボタンが押されると、被験者P1の認知機能の検査を開始し、まず検査ステップS1の第1検査S12を実行する。スマートスピーカ2は、第1検査S12に際し、「次の各質問に、はっきりと文で、ご自由にお話ください」とのガイダンスG1をスピーカから出力する(S11)。
【0084】
第1検査S12では、認知機能検査システム1は、まず、「昨日の一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第1質問Q11を出題する(S121)。このとき、スマートスピーカ2は、第1質問Q11を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第1質問Q11に対して、「えっと、昨日、百貨店に行きました」との第1回答A11を発話する。
【0085】
次に、第1検査S12では、認知機能検査システム1は、「この1週間前の、一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第1質問Q12を出題する(S122)。このとき、スマートスピーカ2は、第1質問Q12を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第1質問Q12に対して、「えー、自転車に乗って、怪我をしちゃいました」との第1回答A12を発話する。
【0086】
さらに、第1検査S12では、認知機能検査システム1は、「この1ヶ月前の、一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第1質問Q13を出題する(S123)。このとき、スマートスピーカ2は、第1質問Q13を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第1質問Q13に対して、「うーんと、孫が遊びに来て、あー、料理をつくりました」との第1回答A13を発話する。これらの第1回答A11,A12,A13は、ネットワーク3を介してスマートスピーカ2から認知機能検査システム1に送信される。
【0087】
認知機能検査システム1では、分析部112は、第1回答A11,A12,A13について音響分析及び言語分析を行い、分析結果を評価部113に出力する。評価部113は、分析部112の分析結果に基づいて第1評価S31を実行する。評価部113は、第1評価S31において、第1検査S12の再検査が必要と判断した場合、検査部111に第1検査S12の再検査を行わせる(S124)。評価部113は、第1検査S12の再検査が不要と判断した場合、検査部111に中間案内S13を実行させる。中間案内S13では、例えば、本日のニュース等、第1検査S12及び第2検査S14とは関連性のない話題G2を案内する。これにより、被験者P1に記憶の干渉を起こさせることが可能となる。
【0088】
検査ステップS1において中間案内S13を実行した後、認知機能検査システム1は、例えば、「もう一度、同じことを聞きます」とのガイダンスを行ってから第2検査S14を実行する。
【0089】
第2検査S14では、認知機能検査システム1は、まず、「この1ヶ月前の、一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第2質問Q23を出題する(S143)。このとき、スマートスピーカ2は、第2質問Q23を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第2質問Q23に対して、「えっと、孫と一緒に、料理を食べました」との第2回答A23を発話する。
【0090】
次に、第2検査S14では、認知機能検査システム1は、「この1週間前の、一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第2質問Q22を出題する(S142)。このとき、スマートスピーカ2は、第2質問Q22を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第2質問Q22に対して、「自転車で怪我をしたことです」との第2回答A22を発話する。
【0091】
さらに、第2検査S14では、認知機能検査システム1は、「昨日の一番印象に残った出来事をお聞かせください」との第2質問Q21を出題する(S141)。このとき、スマートスピーカ2は、第2質問Q21を音声にて出力する。被験者P1は、スマートスピーカ2からの第2質問Q21に対して、「昨日は、百貨店で服を買いました」との第2回答A21を発話する。これらの第2回答A21,A22,A23は、ネットワーク3を介してスマートスピーカ2から認知機能検査システム1に送信される。
【0092】
認知機能検査システム1では、分析部112は、第2回答A21,A22,A23について音響分析及び言語分析を行い、分析結果を評価部113に出力する。評価部113は、分析部112の分析結果に基づいて第2評価S32を実行する。評価部113は、第2評価S32において、上述したように、第2検査S14の再検査の要否を判断してもよい。
【0093】
評価部113は、第1評価S31において基準データB1に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値以上であり、かつ第2評価S32において第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致していれば、被験者P1が健常者であると評価する。また、評価部113は、第1評価S31において基準データB1に対する第1回答A11,A12,A13の各々の比率が一定値よりも小さく、かつ第2評価S32において第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが一致していれば、被験者P1が軽度認知障害(MCI)であると評価する。さらに、評価部113は、第2評価S32において第1回答A11,A12,A13と第2回答A21,A22,A23とが異なっていれば、被験者P1が認知症であると評価する。
【0094】
そして、評価部113は、被験者P1の認知機能が正常であることを含む評価結果G3を、例えば、スマートスピーカ2のスピーカから音声にて出力する(S4)。
【0095】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上述の実施形態に係る認知機能判定方法と同様の機能は、認知機能検査システム1、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係るプログラムは、上述の認知機能検査方法を1以上のプロセッサで実行するためのプログラムである。
【0096】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0097】
(5.1)変形例1
評価部113は、第1評価S31において、複数の第1質問Q1に対する複数の第1回答A1の流暢性の相対関係を、複数の第1質問Q1に対して期待し得る記憶量M11,M21,M31の相対関係との比較で、被験者P1の認知機能の評価に用いてもよい。すなわち、評価部113は、評価ステップS3において、複数の第1質問Q1に対する複数の第1回答A1の相対関係を、被験者P1の認知機能の評価に用いてもよい。以下、変形例1に係る認知機能検査システム1及び認知機能検査方法について説明する。
【0098】
被験者P1が健常者である場合、被験者P1の記憶量M11は、図5に示すように、最も新しい出来事を対象とする第1質問Q11に対する記憶量M111が最も多く、最も古い出来事を対象とする第1質問Q13に対する記憶量M113が最も少ない。被験者P1は、第1質問Q11に対して発話する場合、記憶量M111が多いことから、流暢に発話することが可能となる。一方で、被験者P1は、第1質問Q13に対して発話する場合、記憶量M113が少ないことから、思い出しながら発話することになり、第1質問Q11の場合に比べて流暢に発話することができない。このように、被験者P1が健常者である場合には、記憶量M11が多くなるほど流暢性がよくなり、記憶量M11が少なくなるほど流暢性が悪くなることが分かる。また、被験者P1が軽度認知障害である場合も同様である。
【0099】
一方、被験者P1が認知症である場合、被験者P1は、図7に示すように、複数の第1質問Q1に対する記憶量M31がなく、上述したように、複数の第1質問Q1に対して作話することになる。そのため、被験者P1が認知症である場合には、記憶量M31と流暢性とが上述のような関係にならない。
【0100】
したがって、評価部113は、評価ステップS3において、複数の第1質問Q1に対する複数の第1回答A1の流暢性の相対関係から、被験者P1が認知症であるか否かを評価(判断)することが可能となる。
【0101】
(5.2)その他の変形例
本開示における認知機能検査システム1は、例えば、制御部11に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における認知機能検査システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0102】
また、認知機能検査システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは認知機能検査システム1に必須の構成ではない。認知機能検査システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、認知機能検査システム1の少なくとも一部の機能は、クラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0103】
反対に、上述の実施形態において、複数の装置に分散されている認知機能検査システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、認知機能検査システム1がクラウドサーバであるが、認知機能検査システム1は、例えば、スマートフォン、タブレット、又はパーソナルコンピュータであってもよい。さらに、認知機能検査システム1は、例えば、スマートスピーカであってもよい。
【0105】
上述の実施形態では、第1検査S12で出題される複数の質問の個数と第2検査S14で出題される複数の質問の個数とが同数であるが、これに限らない。例えば、第1検査S12で出題される質問の個数が第2検査S14で出題される質問の個数よりも多くてもよいし、少なくてもよい。また、複数の質問は、少なくともn個の質問を含んでいればよく、n個よりも多くの質問を含んでいてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、第1検査S12における複数の質問と第2検査S14における複数の質問とが全て同じ質問であるが、少なくとも第1検査S12における2つの質問と第2検査S14における2つの質問とが同じ質問であればよい。
【0107】
上述の実施形態では、第1検査S12における3個の第1質問Q11,Q12,Q13と第2検査S14における3個の第2質問Q21,Q22,Q23とが全て同じ内容の質問であるが、少なくとも一部が同じ内容の質問であればよい。例えば、第1質問Q11と第2質問Q21のみが同じ内容の質問であってもよい。
【0108】
上述の実施形態では、第1検査S12において、複数の質問として3個の第1質問Q1を出題し、第2検査S14において、複数の質問として3個の第2質問Q2を出題しているが、これに限らない。例えば、3個の第1質問Q1が複数の質問に含まれていてもよく、この場合、複数の質問のうち3個の第1質問Q1を除く残りの質問は、例えば、3個の第1質問Q1に対する第1回答A1を引き出すための質問であってもよい。同様に、3個の第2質問Q2が複数の質問に含まれていてもよく、この場合、複数の質問のうち3個の第2質問Q2を除く残りの質問は、例えば、3個の第2質問Q2に対する第2回答A2を引き出すための質問であってもよい。
【0109】
上述の実施形態では、第1検査S12における3個の第1質問Q11,Q12,Q13の順番と第2検査S14における3個の第2質問Q21,Q22,Q23の順番とが逆順であるが、両者の順番が異なっていればよい。例えば、第1検査S12では第1質問Q11、第1質問Q12、第1質問Q13の順番で、第2検査S14では第2質問Q21、第2質問Q23、第2質問Q22の順番であってもよい。
【0110】
上述の実施形態では、第1検査S12において、時系列で最も新しい出来事を対象とする第1質問Q11から順番に3個の第1質問Q11,Q12,Q13を出題している。これに対して、第1検査S12において、時系列で最も古い出来事を対象とする第1質問Q13から順番に3個の第1質問Q11,Q12,Q13を出題してもよい。また、上述の実施形態では、第2検査S14において、時系列で最も古い出来事を対象とする第2質問Q23から順番に3個の第2質問Q21,Q22,Q23を出題している。これに対して、第2検査S14において、時系列で最も新しい出来事を対象とする第2質問Q21から順番に3個の第2質問Q21,Q22,Q23を出題してもよい。
【0111】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る認知機能検査方法は、検査ステップ(S1)と、評価ステップ(S3)と、を有する。検査ステップ(S1)は、互いに対応するn(nは2以上の自然数)個の質問(Q1,Q2)を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査(S12)及び第2検査(S14)を行うステップである。評価ステップ(S3)は、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)に対するn個の第1回答(A1)、及び第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)に対するn個の第2回答(A2)の両方に基づいて被験者(P1)の認知機能を評価するステップである。検査ステップ(S1)では、第1検査(S12)を行った後に第2検査(S14)を行う。この認知機能検査方法では、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とが異なる。認知機能検査方法は、1以上のプロセッサにより実行される。
【0112】
この態様によれば、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とを異ならせているので、被験者(P1)の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。
【0113】
第2の態様に係る認知機能検査方法では、第1の態様において、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とが逆順である。
【0114】
この態様によれば、第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)を、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)と逆順に出題するので、被験者(P1)の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。
【0115】
第3の態様に係る認知機能検査方法では、第1又は第2の態様において、第1検査(S12)における複数の質問の個数と第2検査(S14)における複数の質問の個数とが同数である。
【0116】
この態様によれば、第1検査(S12)の検査結果と第2検査(S14)の検査結果とを比較しやすいという利点がある。
【0117】
第4の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、第1検査(S12)における複数の質問の少なくとも一部と第2検査(S14)における複数の質問の少なくとも一部とが同じ内容の質問である。
【0118】
この態様によれば、被験者(P1)の認知機能を評価しやすいという利点がある。
【0119】
第5の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)とが同じ項目についての質問である。
【0120】
この態様によれば、被験者(P1)の認知機能を評価しやすいという利点がある。
【0121】
第6の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、評価ステップ(S3)では、n個の第1回答(A1)に基づく第1評価(S31)とn個の第2回答(A2)に基づく第2評価(S32)とを比較することにより被験者(P1)の認知機能を評価する。
【0122】
この態様によれば、第1評価(S31)と第2評価(S32)とを比較するだけで、被験者(P1)の認知機能を評価することが可能となる。
【0123】
第7の態様に係る認知機能検査方法では、第6の態様において、評価ステップ(S3)では、第1評価(S31)と第2評価(S32)との一致度に基づいて被験者(P1)の認知機能を評価する。
【0124】
この態様によれば、第1評価(S31)と第2評価(S32)との一致度により、被験者(P1)の認知機能を評価することが可能となる。
【0125】
第8の態様に係る認知機能検査方法では、第6又は第7の態様において、第1評価(S31)及び第2評価(S32)の各々は、基準値に対する相対評価を含む。
【0126】
この態様によれば、第1評価(S31)及び第2評価(S32)の各々を基準値と比較するだけで、被験者(P1)の認知機能を評価することが可能となる。
【0127】
第9の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、n個の質問(Q1,Q2)の各々の対象となる出来事が時系列順に並んでいる。
【0128】
この態様によれば、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)とを逆順に出題した場合に、第2検査(S14)においてn個の質問(Q2)を出題するまでの時間を適切に設定することが可能となる。
【0129】
第10の態様に係る認知機能検査方法では、第9の態様において、第1検査(S12)では、時系列において最も新しい出来事を対象とする質問(Q11)から順番にn個の質問(Q1)を出題する。第2検査(S14)では、時系列において最も古い出来事を対象とする質問(Q23)から順番にn個の質問(Q2)を出題する。
【0130】
この態様によれば、第2検査(S14)においてn個の質問(Q2)を出題するまでの時間を適切に設定することができる。
【0131】
第11の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第10の態様のいずれか1つにおいて、検査ステップ(S1)では、第1検査(S12)と第2検査(S14)との間で第1検査(S12)及び第2検査(S14)とは関連性のない中間案内(S13)を行う。
【0132】
この態様によれば、中間案内(S13)により、被験者(P1)に対して記憶の干渉を起こさせることが可能となる。
【0133】
第12の態様に係る認知機能検査方法では、第1~第11の態様のいずれか1つにおいて、第1検査(S12)及び第2検査(S14)の各々において複数の質問を音声により出題する。
【0134】
この態様によれば、被験者(P1)の視覚機能が低下している場合であっても認知機能の検査を行うことが可能となる。
【0135】
第13の態様に係るプログラムは、第1~第12の態様のいずれか1つの認知機能検査方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0136】
この態様によれば、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とを異ならせているので、被験者(P1)の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。
【0137】
第14の態様に係る認知機能検査システム(1)は、検査部(111)と、評価部(113)と、を備える。検査部(111)は、互いに対応するn(nは2以上の自然数)個の質問(Q1,Q2)を含む複数の質問をそれぞれ出題する第1検査(S12)及び第2検査(S14)を行う。評価部(113)は、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)に対するn個の第1回答(A1)、及び第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)に対するn個の第2回答(A2)の両方に基づいて被験者(P1)の認知機能を評価する。検査部(111)は、第1検査(S12)を行った後に第2検査(S14)を行う。この認知機能検査システム(1)では、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とが異なる。
【0138】
この態様によれば、第1検査(S12)におけるn個の質問(Q1)の順番と第2検査(S14)におけるn個の質問(Q2)の順番とを異ならせているので、被験者(P1)の認知機能の評価精度を向上させることが可能となる。
【0139】
第2~第12の態様に係る構成については、認知機能検査方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0140】
1 認知機能検査システム
111 検査部
113 評価部
A1 第1回答
A2 第2回答
P1 被験者
Q1 第1質問(質問)
Q2 第2質問(質問)
S1 検査ステップ
S3 評価ステップ
S12 第1検査
S13 中間案内
S14 第2検査
S31 第1評価
S32 第2評価
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7