(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04291 20160101AFI20241101BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20241101BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20241101BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241101BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241101BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241101BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241101BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/10 101
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2021035933
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】堀 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】露口 耕平
(72)【発明者】
【氏名】金子 陽太
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055873(JP,A)
【文献】特開2018-198123(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111933972(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に接続され、前記水素含有ガスを通流する燃料ガス経路と、
前記燃料ガス経路に設置され、前記燃料ガス経路において前記水素含有ガスを通流する第1通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第1閉止状態を切り換えるガス開閉手段と、前記ガス開閉手段と前記燃料電池との間の前記燃料ガス経路に接続され、前記燃料電池の発電で使用されなかった水素含有ガスを前記燃料ガス経路に通流するリサイクル経路と、前記リサイクル経路に接続され、前記水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を外部に排出する第1排出経路と、
前記第1排出経路に設置され、前記第1排出経路において前記水素含有ガスを通流する第2通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第2閉止状態を切り換える第1排出手段と、前記リサイクル経路に設置され、前記燃料ガス経路を通流する前記水素含有ガスを外部に排出する第2排出経路と、
前記第2排出経路に設置され、前記第2排出経路において前記水素含有ガスを通流する第3通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第3閉止状態を切り換える第2排出手段と、前記ガス開閉手段、前記第1排出手段及び前記第2排出手段を動作させる制御部と、を備え、
前記ガス開閉手段が前記第1閉止状態、前記第1排出手段が前記第2閉止状態、かつ、前記第2排出手段が前記第3閉止状態である状態が初期状態であり、
前記制御部は、前記燃料電池の発電停止中に前記燃料ガス経路、前記燃料電池及び前記リサイクル経路の前記凝縮水を排出する排水動作を実施する場合に、前記初期状態において、前記ガス開閉手段を前記第1閉止状態から前記第1通流状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2閉止状態から前記第2通流状態に切り換え、
所定期間の間前記排水動作を実施した場合に、前記ガス開閉手段を前記第1通流状態から前記第1閉止状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2通流状態から前記第2閉止状態に切り換え、前記排水動作を停止する、
燃料電池システム。
【請求項2】
水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記燃料電池に接続され、前記水素含有ガスを通流する燃料ガス経路と、
前記燃料ガス経路に設置され、前記燃料ガス経路において前記水素含有ガスを通流する第1通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第1閉止状態を切り換えるガス開閉手段と、前記ガス開閉手段と前記燃料電池との間の前記燃料ガス経路に接続され、前記燃料電池の発電で使用されなかった水素含有ガスを前記燃料ガス経路に通流するリサイクル経路と、前記リサイクル経路に接続され、前記水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を外部に排出する第1排出経路と、
前記第1排出経路に設置され、前記第1排出経路において前記水素含有ガスを通流する第2通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第2閉止状態を切り換える第1排出手段と、前記リサイクル経路に設置され、前記燃料ガス経路を通流する前記水素含有ガスを外部に排出する第2排出経路と、
前記第2排出経路に設置され、前記第2排出経路において前記水素含有ガスを通流する第3通流状態及び前記水素含有ガスを閉止する第3閉止状態を切り換える第2排出手段と、前記ガス開閉手段、前記第1排出手段及び前記第2排出手段を動作させる制御部と、
前記リサイクル経路に設置され、前記凝縮水を貯めるタンクと、
前記タンクの内部に設置され、前記タンク内に貯められる前記凝縮水の水位を検出する水位検出手段と、を備え、
前記ガス開閉手段が前記第1閉止状態、前記第1排出手段が前記第2閉止状態、かつ、前記第2排出手段が前記第3閉止状態である状態が初期状態であり、
前記制御部は、前記燃料電池の発電停止中に前記燃料ガス経路、前記燃料電池及び前記リサイクル経路の前記凝縮水を排出する排水動作を実施する場合に、前記初期状態において、前記ガス開閉手段を前記第1閉止状態から前記第1通流状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2閉止状態から前記第2通流状態に切り換え、
前記排水動作中に前記タンクの水位が所定の水位まで低下した場合に、前記ガス開閉手段を前記第1通流状態から前記第1閉止状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2通流状態から前記第2閉止状態に切り換え、前記排水動作を停止する、
燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池と前記リサイクル
経路との接続箇所と前記第1排出経路との間に設置され、前記水素含有ガスを前記リサイクル経路から前記燃料ガス経路に循環させるガス循環装置をさらに備え、
前記制御部は、前記初期状態において、前記ガス開閉手段を前記第1閉止状態から前記第1通流状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2閉止状態から前記第2通流状態に切り換えた後、前記ガス循環装置を動作させ、前記排水動作を実施する、
請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記ガス開閉手段と前記燃料電池との間に設置され、前記燃料ガス経路を通流する前記水素含有ガスの圧力を測定する圧力検出手段をさらに備え、
前記制御部は、前記初期状態において、前記ガス開閉手段を前記第1閉止状態から前記第1通流状態に切り替え、前記圧力検出手段の測定値が第1の所定の値を超えた場合に、前記第1排出手段を前記第2閉止状態から前記第2通流状態に切り換えた後、前記排水動作を実施する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記排水動作を実施した後、前記圧力検出手段の測定値が第2の所定の値を下回った場合に、前記ガス開閉手段を前記第1通流状態から前記第1閉止状態に切り換え、前記第1排出手段を前記第2通流状態から前記第2閉止状態に切り換え、前記排水動作を停止する、請求項4に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、燃料電池の運転停止時において、反応ガス供給手段から供給される反応ガスのガス圧力を増大させた後、圧力を増大させた反応ガスをガス流路に供給することにより、ガス流路内の残留水を外部に排出するガス圧力制御手段とを備える燃料電池の残留水排出装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、燃料電池システムの運転停止中に、燃料電池の劣化と可燃性ガスのシステム外流出を抑制しつつ、凝縮水を排出するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における燃料電池システムは、水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、燃料電池に接続され、水素含有ガスを通流する燃料ガス経路と、燃料ガス経路に設置され、燃料ガス経路において水素含有ガスを通流する第1通流状態及び水素含有ガスを閉止する第1閉止状態を切り換えるガス開閉手段と、ガス開閉手段と燃料電池との間の燃料ガス経路に接続され、燃料電池の発電で使用されなかった水素含有ガスを燃料ガス経路に通流するリサイクル経路とを備える。
【0006】
また、燃料電池システムは、リサイクル経路に接続され、水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を外部に排出する第1排出経路と、第1排出経路に設置され、第1排出経路において水素含有ガスを通流する第2通流状態及び水素含有ガスを閉止する第2閉止状態を切り換える第1排出手段と、リサイクル経路に設置され、燃料ガス経路を通流する水素含有ガスを外部に排出する第2排出経路と、第2排出経路に設置され、第2排出経路において水素含有ガスを通流する第3通流状態及び水素含有ガスを閉止する第3閉止状態を切り換える第2排出手段と、ガス開閉手段、第1排出手段及び第2排出手段を動作させる制御部とを備える。
【0007】
ガス開閉手段が第1閉止状態、第1排出手段が第2閉止状態、かつ、第2排出手段が第3閉止状態である状態が初期状態である。制御部は、燃料電池の発電停止中に燃料ガス経路、燃料電池及びリサイクル経路の凝縮水を排出する排水動作を実施する場合に、初期状態において、ガス開閉手段を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、第1排出手段を第2閉止状態から第2通流状態に切り換える。
【発明の効果】
【0008】
本開示における燃料電池システムによれば、燃料電池システムの運転停止中に、燃料電池の劣化と可燃性ガスの燃料電池システム外への流出を抑制しながら、凝縮水を排出することができる。したがって、燃料電池システムの耐久性の低下が抑制される。また、可燃性ガスが燃料電池システム外に流出することによりが不安全な状態となることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1に係る燃料電池システムの構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態1での圧力検知による排水動作に関するフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2における排水動作時の圧力変化を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態1における時間経過による制御に関するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態1の水位検知による排水動作に関するフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5における排水動作時の水位変化を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態1の圧力検知による排水動作に関するフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7における排水動作時の圧力の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲の記載を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
[1-1.構成]
図1は、本発明の実施の形態1における燃料電池システムの構成図である。
【0012】
図1において、燃料電池システム200は、燃料電池100と、燃料ガス経路1と、ガス開閉手段2と、リサイクル経路3と、第1排出経路4と、第1排出手段5と、第2排出経路6と、第2排出手段7と、制御部8と、ガス循環装置9と、圧力検出手段10と、タンク11と、水位検出手段12と、操作部20と、を備える。
【0013】
燃料電池100は、水素含有ガスを用いて発電する燃料電池である。具体的には、燃料電池100は、外部から供給された水素含有ガスに含まれる水素を用いて、化学反応により電力を生成する。なお、燃料電池100の化学反応では、燃料電池100に供給された水素含有ガスの全てが使用される訳ではなく、燃料電池100にて使用されなかった一部の水素含有ガスは、燃料電池100から排出される。
【0014】
本実施の形態における燃料電池100は、例えば、固体高分子型燃料電池である。なお、燃料電池100は上記に限定されず、例えば、固体酸化物型燃料電池であってもよい。
【0015】
燃料ガス経路1は、燃料電池100に接続され、水素含有ガスを通流させる経路である。水素含有ガスは、例えば、水素貯蔵タンクから燃料ガス経路1を介して燃料電池100に供給される。
【0016】
ガス開閉手段2は、燃料ガス経路1に設置される弁である。ガス開閉手段2は、燃料ガス経路1の水素含有ガスを通流する通流状態と、燃料ガス経路1内の水素含有ガスを閉止する閉止状態とを切り換える。本実施の形態におけるガス開閉手段2は、例えば、ソレノイドバルブである。
【0017】
リサイクル経路3は、ガス開閉手段2と燃料電池100との間に接続され、燃料電池100の発電時の化学反応で使用されなかった一部の水素含有ガスを燃料ガス経路1に通流させる経路である。
【0018】
第1排出経路4は、リサイクル経路3に接続され、リサイクル経路3を通流する水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を外部に排出する経路である。
【0019】
第1排出手段5は、第1排出経路4上に設置される弁である。第1排出手段5は、第1排出経路4内の水素含有ガスを通流する通流状態と、第1排出経路4内の水素含有ガスを閉止する閉止状態とを切り換える。本実施の形態における第1排出手段5は、例えば、ソレノイドバルブである。
【0020】
第2排出経路6は、リサイクル経路3に接続され、リサイクル経路3を通流する水素含有ガスを外部に排出する経路である。
【0021】
ここで、燃料電池100の発電中は、燃料電池100において水素が使用される。したがって、リサイクル経路3を通流する水素含有ガスの水素濃度は、燃料電池100に供給される水素含有ガスの水素濃度よりも相対的に低くなる。燃料電池100に供給される水素含有ガスは、リサイクル経路3を通流する、相対的に水素濃度が低下した水素含有ガスと混合される。したがって、燃料電池100に供給される水素含有ガスの水素濃度は、燃料電池100の発電に伴い、徐々に低下する。
【0022】
第2排出経路6により、一定期間の間隔で水素濃度が低下した水素含有ガスを排出することにより、燃料電池100の出力の低下が抑制される。なお、一定期間の間隔とは、例えば、3分毎である。
【0023】
第2排出手段7は、第2排出経路6上に設置される弁である。第2排出手段7は、第2排出経路6内の水素含有ガスを通流する通流状態と、第2排出経路6内の水素含有ガスを閉止する閉止状態とを切り換える。本実施の形態における第2排出手段7は、例えば、ソレノイドバルブである。
【0024】
制御部8は、ガス開閉手段2、第1排出手段5及び第2排出手段7を動作させる。本実施の形態における制御部8は、例えば、A/D変換回路、入出力回路、演算回路、記憶装置などを含むDSP(Digital Signal Processor)で構成される。
【0025】
ガス循環装置9は、燃料電池100と第1排出経路4との間に設定され、水素含有ガスをリサイクル経路3から燃料ガス経路1に循環させるポンプである。本実施の形態におけるガス循環装置9は、例えば、ダイヤフラム式のポンプである。
【0026】
圧力検出手段10は、ガス開閉手段2と燃料電池100との間に設置され、燃料ガス経路1を通流する水素含有ガスの圧力を測定する圧力計である。本実施の形態における圧力検出手段10は、例えば、パルス出力式圧力センサである。
【0027】
タンク11は、リサイクル経路3に設置され、リサイクル経路3を通流する水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を貯めるタンクである。なお、本実施の形態において、タンク11を備えず、第1排出経路4に凝縮水を貯める構成としてもよい。
【0028】
水位検出手段12は、タンク11の内部に設置され、タンク11内に貯められる凝縮水の水位を検出するセンサである。本実施の形態における水位検出手段12は、例えば、フロートスイッチで構成される。なお、燃料電池システム200がタンク11を備えない場合、水位検出手段12は、第1排出経路4に設けられてもよい。その場合、水位検出手段12は、第1排出経路4に貯められる凝縮水の水位を検出するように構成されていてもよい。
【0029】
操作部20は、ユーザーの指示を受け付ける。操作部20が受け付けたユーザーからの指示は、制御部8へ送信される。本実施の形態における操作部20は、例えば、PCのアプリケーションで構成される。
【0030】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料電池100について、
図2~8を参照しながら、その動作を以下説明する。なお、異なる図面において同じ処理を示す場合、同じ符号を用いて説明する、又は、説明を省略する場合がある。
【0031】
なお、燃料電池100の運転停止中において、ガス開閉手段2は閉止状態であり、第1排出手段5は閉止状態であり、第2排出手段7は閉止状態である。本実施の形態1において、燃料電池100の運転停止中における上記の状態を、初期状態と定義する。
【0032】
図2は、本実施の形態1の圧力検知による排水動作を説明するためのフローチャートである。
図3は、本実施の形態1の圧力検知による排水動作時の圧力の時間変化を示すグラフである。
【0033】
まず、制御部8は、ステップS01において、ガス開閉手段2を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS02に移行する。このとき、燃料ガス経路1の圧力は、
図3に示すように、初期の圧力値であるP
1より徐々に上昇する。なお、初期値の圧力値P
1は、例えば、1kPaである。なお、制御部8は、ユーザーが操作部20を操作し、制御部8に排水動作を開始する指示が送信された場合に、ステップS01の処理を実施してもよい。
【0034】
次に、制御部8は、ステップS02において、燃料ガス経路1の圧力、すなわち圧力検出手段10が測定した圧力値Pが閾値P2を超えたか否かを判定する。
【0035】
燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2を超えた場合(ステップS02:Yes)、制御部8は、処理をステップS03に移行する。一方、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2以下である場合(ステップS02:No)、制御部8は、処理をステップS02に移行し、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2を超えるまで処理を繰り返す。
【0036】
次に、制御部8は、ステップS03において、第1排出手段5を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS04に移行する。
【0037】
ステップS03の制御により、ガス開閉手段2は通流状態、第1排出手段5は通流状態、第2排出手段7は閉止状態となる。したがって、第1排出経路4は大気開放された状態となる。このとき、第1排出経路4内の圧力は大気圧よりも高いため、燃料ガス経路1、燃料電池100及びリサイクル経路3において発生する凝縮水が、第1排出経路4を通じて排出され始める。このとき、燃料ガス経路1の圧力はP2に近い値を維持する。本開示では、燃料ガス経路1、燃料電池100及びリサイクル経路3から凝縮水が排出される動作を、排水動作と定義する。なお、閾値圧力P2は、例えば、3kPaである。このP2の値は燃料電池100の発電量や第1排出経路4の長さに応じて決定される。
【0038】
次に、制御部8は、ステップS04において、ガス開閉手段2を通流状態から閉止状態に切り換え、第1排出手段5を通流状態から閉止状態に切り換える。すなわち、制御部8は、ガス開閉手段2及び第1排出手段5を初期状態に戻す。これにより、排水動作が完了する。このとき、燃料ガス経路1の圧力は、
図3に示すように、P
2からP
3に向けて徐々に減少する。なお、圧力値P
3は、例えば、2kPaである。なお、制御部8は、ユーザーが操作部20を操作し、制御部8に排水動作を停止する指示が送信された場合に、ステップ04の処理を実施してもよい。
【0039】
図4は、本実施の形態1における時間経過による制御に関するフローチャートである。
【0040】
まず、制御部8は、ステップS05において、ガス開閉手段2を閉止状態から通流状態に切り換え、第1排出手段5を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS06に移行する。これにより、排水動作が開始される。
【0041】
次に、制御部8は、ステップS06において、排水動作開始からの経過時間tが所定時間t1を超えたか否かを判定する。なお、所定時間t1は、第1排出経路4又はタンク11に貯められたほぼ全ての凝縮水が燃料電池システム200の外部に排出されるまでに要する時間よりも短い時間である。所定時間t1は、例えば、3分である。なお、所定時間t1は、燃料ガス経路1内の圧力及び第1排出経路4の長さなどに応じて決定される。
【0042】
経過時間tが所定時間t1を超えた場合(ステップS06:Yes)、すなわち所定期間の間排水動作を実施した場合、制御部8は、処理をステップS04に移行する。一方、経過時間tが所定時間t1以下である場合(ステップS06:No)、制御部8は、処理をステップS06に移行し、経過時間tが所定時間t1を超えるまで処理を繰り返す。
【0043】
図5は、本実施の形態1の水位検知による排水動作に関するフローチャートである。
図6は、
図5における排水動作時の第1排出経路4内に貯まった凝縮水の水位の時間変化を示すグラフである。
【0044】
まず、制御部8は、ステップS05において、ガス開閉手段2を閉止状態から通流状態に切り換え、第1排出手段5を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS07に移行する。このとき、第1排出経路4は大気開放されており、水素含有ガスの圧力が大気圧よりも高い。したがって、第1排出経路4又はタンク11に貯められた凝縮水が排出され、凝縮水の水位Hは、
図6に示すように、初期水位をH
1から所定水位H
2に向けて低下し始める。
【0045】
次に、制御部8は、ステップS07において、第1排出経路4又はタンク11に貯められた凝縮水の水位Hが所定水位H2を下回ったか否かを判定する。なお、所定水位H2は第1排出経路4に貯まっている凝縮水が存在しないときの水位を0として、例えば5cm程度である。
【0046】
凝縮水の水位Hが所定水位H2を下回った場合(ステップS07:Yes)、制御部8は、処理をステップS04に移行する。一方、凝縮水の水位Hが所定水位H2以上である場合(ステップS07:No)、制御部8は、処理をステップS07に移行し、凝縮水の水位Hが所定水位H2を下回るまで処理を繰り返す。
【0047】
図7は、本実施の形態1の圧力検知による排水動作に関するフローチャートである。
図8は、
図7における排水動作時の燃料ガス経路1の圧力の時間変化を示すグラフである。
【0048】
まず、制御部8は、ステップS01において、ガス開閉手段2を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS02に移行する。このとき、燃料ガス経路1の圧力は、
図8に示すように、初期の圧力値であるP
1より徐々に上昇する。
【0049】
次に、制御部8は、ステップS02において、圧力検出手段10が測定した圧力値Pが閾値P2を超えたか否かを判定する。
【0050】
燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2を超えた場合(ステップS02:Yes)、制御部8は、処理をステップS08に移行する。一方、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2以下である場合(ステップS02:No)、制御部8は、処理をステップS02に移行し、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P2を超えるまで処理を繰り返す。
【0051】
次に、制御部8は、ステップS08において、ガス開閉手段2を通流状態から閉止状態に切り換え、第1排出手段5を閉止状態から通流状態に切り換え、処理をステップS09に移行する。これにより、排水動作が開始される。なお、ガス開閉手段2を通流状態から閉止状態に切り換えることにより、燃料ガス経路1内の圧力Pは、
図8に示すように、P
2からP
4に向けて徐々に減少する。なお、閾値P
4は、例えば、2kPaであり、大気圧より高い値であればよい。P
4が大気圧の値と一致するとき、第1排出経路4内の凝縮水はほぼ全てが第1排出経路4の外部に排出され、第1排出経路4が大気開放状態となる。
【0052】
次に、制御部8は、ステップS09において、圧力検出手段10が測定した圧力値Pが閾値P4を下回るか否かを判定する。
【0053】
燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P4を下回った場合(ステップS09:Yes)、制御部8は、処理をステップS04に移行する。一方、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P4以上である場合(ステップS09:No)、制御部8は、処理をステップS09に移行し、燃料ガス経路1の圧力値Pが閾値P4を下回るまで処理を繰り返す。
【0054】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、燃料電池システム200は、水素含有ガスを用いて発電する燃料電池100と、燃料電池100に接続され、水素含有ガスを通流する燃料ガス経路1と、燃料ガス経路1に設置され、燃料ガス経路1において水素含有ガスを通流する第1通流状態及び水素含有ガスを閉止する第1閉止状態を切り換えるガス開閉手段2と、ガス開閉手段2と燃料電池100との間の燃料ガス経路1に接続され、燃料電池100の発電で使用されなかった水素含有ガスを燃料ガス経路1に通流するリサイクル経路3とを備える。
【0055】
また、燃料電池システム200は、リサイクル経路3に接続され、水素含有ガスに含まれる水蒸気により生じる凝縮水を外部に排出する第1排出経路4と、第1排出経路4に設置され、第1排出経路4において水素含有ガスを通流する第2通流状態及び水素含有ガスを閉止する第2閉止状態を切り換える第1排出手段5と、リサイクル経路3に設置され、燃料ガス経路1を通流する水素含有ガスを外部に排出する第2排出経路6と、第2排出経路6に設置され、第2排出経路6において水素含有ガスを通流する第3通流状態及び水素含有ガスを閉止する第3閉止状態を切り換える第2排出手段7と、ガス開閉手段2、第1排出手段5及び第2排出手段7を動作させる制御部8とを備える。
【0056】
ガス開閉手段2が第1閉止状態、第1排出手段5が第2閉止状態、かつ、第2排出手段7が第3閉止状態である状態が初期状態である。
【0057】
制御部8は、燃料電池100の発電停止中に燃料ガス経路1、燃料電池100及びリサイクル経路3の凝縮水を排出する排水動作を実施する場合に、初期状態において、ガス開閉手段2を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、第1排出手段5を第2閉止状態から第2通流状態に切り換える。
【0058】
これにより、第1排出経路4を大気開放することなく、凝縮水を排出できる。そのため、第1排出経路4が正圧である場合に、水素含有ガスが燃料電池システム200の外に排出されず、発煙発火等の不安全事象の発生を抑制できる。また、第1排出経路4が負圧である場合に、第1排出経路4を介して外部から空気が燃料電池100に到達せず、燃料電池100内部の電解質膜の劣化を抑制できる。なお、燃料電池システム200の運転停止後、間もない時間、例えば30分程度しか経過していない時は、燃料ガス経路1及びリサイクル経路3の温度が高温の状態から低下し、経路内の水素含有ガスの体積収縮が起きるため、第1排出経路4が負圧となる。
【0059】
本実施の形態において、燃料電池システム200は、燃料電池100と第1排出経路4との間に設置され、水素含有ガスをリサイクル経路3から燃料ガス経路1に循環させるガス循環装置9をさらに備えてもよい。
【0060】
制御部8は、初期状態において、ガス開閉手段2を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、第1排出手段5を第2閉止状態から第2通流状態に切り換えた後、ガス循環装置9を動作させ、排水動作を実施してもよい。
【0061】
これにより、第1排出経路4内の水素含有ガスの圧力を高めることができる。そのため、凝縮水をより速く排出することができる。
【0062】
また、本実施の形態において、燃料電池システム200は、ガス開閉手段2と燃料電池100との間に設置され、燃料ガス経路1を通流する水素含有ガスの圧力を測定する圧力検出手段10をさらに備えてもよい。
【0063】
制御部8は、初期状態において、ガス開閉手段2を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、圧力検出手段10の測定値が所定の値P2を超えた場合に、第1排出手段5を第2閉止状態から第2通流状態に切り換えた後、排水動作を実施してもよい。
【0064】
これにより、燃料ガス経路1の圧力値に基づいて排水動作を実施するため、凝縮水の排水速度を調節できる。そのため、P2を適切な値に設定することにより、凝縮水の排水を効率よく実施できる。
【0065】
また、本実施の形態において、制御部8は、初期状態において、ガス開閉手段2を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、第1排出手段5を第2閉止状態から第2通流状態に切り換えた後、所定期間の間排水動作を実施した場合に、ガス開閉手段2を第1通流状態から第1閉止状態に切り換え、第1排出手段5を第2通流状態から第2閉止状態に切り換え、排水動作を停止させてもよい。
【0066】
これにより、第1排出経路4を大気開放することなく、凝縮水を排出できる。そのため、水素含有ガスが燃料電池システム200の外へ流出するのを防ぐことができる。
【0067】
また、本実施の形態において、燃料電池システム200は、リサイクル経路3に設置され、凝縮水を貯めるタンク11と、タンク11の内部に設置され、タンク11内に貯められる凝縮水の水位を検出する水位検出手段とをさらに備えてもよい。
【0068】
制御部8は、初期状態において、ガス開閉手段2を第1閉止状態から第1通流状態に切り換え、第1排出手段5を第2閉止状態から第2通流状態に切り換えた後、排水動作中にタンク11の水位が所定の水位H2まで低下した場合に、ガス開閉手段2を第1通流状態から第1閉止状態に切り換え、第1排出手段5を第2通流状態から第2閉止状態に切り換え、排水動作を停止させてもよい。
【0069】
これにより、第1排出経路4を大気開放することなく、凝縮水を排出できる。そのため、水素含有ガスが燃料電池システム200の外へ流出するのを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施の形態において、制御部8は、排水動作を実施した後、圧力検出手段10の測定値が所定の値P4を下回った場合に、ガス開閉手段2を第1通流状態から第1閉止状態に切り換え、第1排出手段5を第2通流状態から第2閉止状態に切り換え、排水動作を停止させてもよい。
【0071】
これにより、第1排出経路4を大気開放することなく、凝縮水を排出できる。そのため、水素含有ガスが燃料電池システム200の外へ流出するのを防ぐことができる。
【0072】
(他の実施の形態)
以上、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の燃料電池システムは、例えば、固体高分子型燃料電池又は固体酸化物型燃料電池を用いた定置用燃料電池システム及び自動車用燃料電池システムに適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料ガス経路
2 ガス開閉手段
3 リサイクル経路
4 第1排出経路
5 第1排出手段
6 第2排出経路
7 第2排出手段
8 制御部
9 ガス循環装置
10 圧力検出手段
11 タンク
12 水位検出手段
20 操作部
100 燃料電池
200 燃料電池システム