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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】透光部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241101BHJP
   A61F 9/00 20060101ALI20241101BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G02B5/22
A61F9/00
G02C7/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020042468
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021144134
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】椿野 由合香
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-525263(JP,A)
【文献】特開2008-268580(JP,A)
【文献】特開2020-003646(JP,A)
【文献】実開昭61-106902(JP,U)
【文献】国際公開第2007/094338(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0098694(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00-5/28
A61F 9/00
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の一部の透過を抑制することで、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域を複数有し、
公共交通機関又は公共施設の窓に設けられ、
複数の前記フィルタ領域は、前記窓の面内に並んで設けられ、前記色覚少数派の色覚を補正する強度が互いに異なっている
透光部材。
【請求項2】
前記透光部材は、透光性のフィルム基材を備え、
前記フィルタ領域は、平面視における前記フィルム基材の一部又は全部の領域である
請求項に記載の透光部材。
【請求項3】
前記透光部材は、さらに、平面視における前記フィルタ領域において、前記フィルム基材の内部に分散された1種類以上の色素材料を備える
請求項に記載の透光部材。
【請求項4】
前記透光部材は、表示画面を有する透明ディスプレイであり、
前記フィルタ領域は、表示画面の一部又は全部の領域であり、
前記透明ディスプレイは、光の一部の透過を抑制することで前記色覚少数派の色覚を補正するフィルタ画像を、前記フィルタ領域に表示する
請求項に記載の透光部材。
【請求項5】
前記透明ディスプレイは、複数の前記フィルタ画像を所定時間毎に表示し、
複数の前記フィルタ画像は、前記色覚少数派の色覚を補正する強度が互いに異なっている
請求項に記載の透光部材。
【請求項6】
前記透明ディスプレイは、前記フィルタ画像を表示した後、透明表示を行う
請求項又はに記載の透光部材。
【請求項7】
前記透明表示が行われる期間は、前記フィルタ画像が表示される期間以上である
請求項に記載の透光部材。
【請求項8】
前記フィルタ領域の透過スペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における透過率の最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、前記波長帯域内における透過率の最大値が、585nm以上600nm以下にある
請求項1~のいずれか1項に記載の透光部材。
【請求項9】
前記透光部材は、前記公共交通機関の窓に設けられ、
前記公共交通機関は、電車、飛行機、船舶、バス又はタクシーである
請求項1~のいずれか1項に記載の透光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
社会には、他人とは異なる色覚を有する人が存在する。例えば、日本人男性の5%及び日本人女性の0.2%は、P(Protanope)型又はD(Deuteranope)型と呼ばれる色覚少数派である。従来、人の視覚に対する光の色の見え方を調整する光学フィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5996553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、色覚少数派の色覚を色覚多数派の色覚に近づける色覚補正メガネなどが販売されている。しかしながら、色覚少数派である本人が、自身が色覚少数派であることにそもそも気づいていない場合が多い。
【0005】
そこで、本発明は、色覚少数派に自身の色覚に気づく機会を与えることができる透光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る透光部材は、光の一部の透過を抑制することで、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域を有し、公共交通機関又は公共施設の窓に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る透光部材によれば、色覚少数派に自身の色覚に気づく機会を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る透光フィルムが設置された電車の車内を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態1に係る透光フィルムが設置された窓の正面図である。
図3図3は、図2のIII-III線における実施の形態1に係る透光フィルム及び窓の断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る透光フィルムの透過スペクトルを示す図である。
図5図5は、実施の形態1の変形例に係る透光フィルムが設置された窓の正面図である。
図6図6は、実施の形態2に係る透明ディスプレイの正面図である。
図7図7は、実施の形態2に係る透明ディスプレイによる、空間分割された複数のフィルタ画像の表示例を示す正面図である。
図8図8は、実施の形態2に係る透明ディスプレイによる、時間分割された複数のフィルタ画像の表示例を示す正面図である。
図9図9は、図8に示される複数のフィルタ画像の各々の表示順及び表示時間を示す図である。
図10図10は、実施の形態に係る透光フィルム又は透明ディスプレイが設置された図書館の館内を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明の実施の形態に係る透光部材について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0011】
また、本明細書において、要素間の関係性を示す用語、及び、要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0012】
本明細書において、色覚多数派は、C型(Common:一般型)の色覚を有するグループであり、S錐体、M錐体、L錐体のいずれも有する。
【0013】
色覚少数派は、色覚多数派とは異なる色覚を有するグループである。つまり、色覚少数派は、C型以外の色覚を持つグループである。例えば、色覚少数派は、L錐体を持たないP型(1型)、又は、M錐体を持たないD型(2型)の色覚を持つグループである。P型又はD型の色覚少数派は、赤から緑の範囲の識別がつきにくい特性を有する。
【0014】
(実施の形態1)
以下では、実施の形態1に係る透光部材について説明する。
【0015】
本実施の形態に係る透光部材は、図1に示される透光フィルム100である。図1は、本実施の形態に係る透光フィルム100が設置された電車10の車内を示す模式図である。図2は、本実施の形態に係る透光フィルム100が設置された窓20の正面図である。図3は、図2のIII-III線における本実施の形態に係る透光フィルム100及び窓20の断面図である。図3では、透光フィルム100の断面の一部を模式的に拡大して示している。
【0016】
図1に示される電車10は、透光フィルム100が設置される窓20を備える公共交通機関の一例である。公共交通機関は、不特定多数の人が利用しうる乗り物である。公共交通機関は、電車10に限定されず、飛行機、船舶、バス又はタクシーであってもよい。つまり、透光フィルム100は、飛行機、船舶、バス又はタクシーの窓に設置されてもよい。また、公共交通機関は、ケーブルカー又はロープウェイであってもよい。
【0017】
透光フィルム100は、図1に示されるように、電車10の窓20に設置されている。例えば、透光フィルム100は、窓20を正面視した場合に、窓20の半分以下の面積を覆うように設けられている。図1及び図2に示される例では、透光フィルム100は、窓20の右側に偏った位置に設けられているが、左側、上側若しくは下側に偏って設けられていてもよく、又は、窓20の中央に設けられていてもよい。窓20には、透光フィルム100に覆われていない領域が確保されていることで、透光フィルム100を介さずに外の景色を見ることができ、窓20本来の機能を確保することができる。なお、透光フィルム100は、窓20の全面を覆うように設けられていてもよい。
【0018】
また、図1に示される例では、透光フィルム100は、電車10の窓21には設置されていない。つまり、透光フィルム100は、電車10が備える全ての窓に設置されていなくてもよい。透光フィルム100は、人の目の高さに位置しており、できるだけ多くの人の目に付く部分に設置されている。
【0019】
透光フィルム100は、光の一部の透過を抑制することで、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域101(図3を参照)を有する。具体的には、フィルタ領域101は、色覚少数派の色覚を補正することで、色覚多数派の色覚に近づけることができる。
【0020】
図3の拡大図に示されるように、透光フィルム100は、透光性のフィルム基材110を備える。フィルム基材110は、可視光に対する透過率が十分に高い基材である。フィルム基材110は、アクリル(PMMA)系、シクロオレフィン系又はポリカーボネート系の樹脂基材である。フィルム基材110の厚みは、特に限定されないが、例えば1mm以下である。
【0021】
フィルタ領域101は、平面視におけるフィルム基材110の一部又は全部の領域である。本実施の形態では、フィルタ領域101は、フィルム基材110の全領域である。
【0022】
透光フィルム100は、さらに、1種類以上の色素材料120を含んでいる。色素材料120は、平面視におけるフィルタ領域101において、フィルム基材110の内部に分散されている。言い換えると、フィルム基材110のうち色素材料120が均一に分散された部分の平面視形状がフィルタ領域101に相当する。色素材料120は、フィルタ領域101において、フィルム基材110の厚み方向及び面方向のいずれにも均一な濃度で分散されている。
【0023】
フィルム基材110に含有される1種類以上の色素材料120の総濃度は、例えば20ppm以上850ppm以下であるが、これに限らない。総濃度は、20ppmより小さくてもよく、850ppmよりも大きくてもよい。総濃度は、例えば、フィルム基材110の厚みに応じて調整されてもよい。
【0024】
色素材料120は、可視光帯域において、所定の波長帯域の光を吸収する吸収色素材料である。吸収色素材料の基本骨格は、例えば、メロシアニン系、テトラアザポルフィリン系又はフタロシアニン系である。吸収色素材料に含まれる官能基を適宜調整することで、所望の吸収スペクトル特性を得ることができる。また、吸収スペクトル特性が異なる複数種類の色素材料120の混合比率を調整することで、透光フィルム100の透過スペクトルを所望のスペクトルにすることができる。
【0025】
透光フィルム100の透過スペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における透過率の最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、440nm以上600nm以下の波長帯域内における透過率の最大値が、585nm以上600nm以下にある。簡単に言えば、透光フィルム100は、緑色光の吸収率が高く、緑色光の透過率が低くなる。このため、透光フィルム100は、ピンクから赤みがかかった透光色を有する。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る透光フィルム100の透過スペクトルを示す図である。図4において、横軸は波長を表し、縦軸は透光フィルム100の透過率を表している。
【0027】
図4に示される例では、透過率の最小値になる波長(すなわち、吸収ピーク波長)が約525nmである。当該波長における透過率が約15%であり、440nm以上600nm以下の波長帯域における最小値となっている。透過率が40%になるときの帯域幅は、約55nmである。また、透過率が60%になるときの帯域幅は、約79nmである。図4に示される透光フィルム100は、透過率が40%以上60%以下の範囲内において、吸収ピークの帯域幅は、約55nm以上約79nm以下の範囲内にある。
【0028】
本実施の形態では、透光フィルム100は、公共交通機関の内部空間に設けられている。具体的には、透光フィルム100は、窓20の車内側の面に貼り付けられている。これにより、透光フィルム100が外気に直接曝されるのを抑制することができ、透光フィルム100の汚損の発生を抑制することができる。また、窓20が紫外光を吸収する材料を用いて形成されている場合には、透光フィルム100が強い紫外光に曝されるのを抑制することができ、色素材料120の劣化を抑制することができる。透光フィルム100と窓20との間には、透明な接着シートが設けられていてもよい。
【0029】
また、図2に示されるように、透光フィルム100は、QRコード(登録商標)130と、メッセージ140とを有する。メッセージ140は、QRコード130の撮影を促すメッセージである。メッセージ140の内容は特に限定されないが、例えば、色覚少数派に撮影を促すことができる内容である。
【0030】
QRコード130は、二次元コードの一例である。例えば、色覚補正メガネなどの色覚少数派の色覚を補正する物品を紹介又は販売するWebサイトへのアクセス情報を含んでいる。例えば、スマートフォンなどのカメラを有する端末装置を用いてQRコード130を撮影することにより、端末装置内でブラウザが立ち上がり、QRコード130を介してアクセスされたWebサイトを閲覧することができる。これにより、色覚補正メガネの販促に繋げることができる。
【0031】
なお、透光フィルム100は、QRコード130の代わりに、又は、QRコード130に加えて、WebサイトのURL(Uniform Resource Locator)、又は、色覚補正メガネの紹介若しくは販売を行う業者の電話番号若しくは住所を示す文字情報を有してもよい。また、透光フィルム100は、QRコード130の代わりに、PDF417又はData Matrixなどの二次元コードを有してもよい。
【0032】
以上のように、本実施の形態に係る透光フィルム100は、光の一部の透過を抑制することで、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域101を有する。透光フィルム100は、公共交通機関の窓に設けられる。
【0033】
これにより、電車10などの公共交通機関を利用する不特定多数の人が透光フィルム100を見る機会が多くなる。このため、色覚少数派であるにも関わらず、自覚がない人が、自身の色覚に気づく可能性が高くなる。例えば、色覚少数派の人は、フィルタ領域101を介して電車10の外の景色を見た場合と、フィルタ領域101以外の部分(例えば、透光フィルム100が設けられていない窓21)を介して電車10の外の景色を見た場合とでは、景色の色の見え方が異なる。このような見え方の違いを色覚少数派の人に気づかせることができる。透光フィルム100によれば、日常生活において自然に自身の色覚を気づく機会を与えることができる。
【0034】
また、例えば、透光フィルム100は、透光性のフィルム基材110を備える。フィルタ領域101は、平面視におけるフィルム基材110の一部又は全部の領域である。
【0035】
これにより、安価で製造可能であり、かつ、窓20への設置が容易である。すなわち、透光フィルム100は、既存の窓ガラスに貼り付けることで簡単に設置することができる。このため、より多くの場所に透光フィルム100を設置することが可能になるので、色覚少数派の多くに色覚を気づかせる機会をより多く与えることができる。
【0036】
また、例えば、透光フィルム100は、さらに、平面視におけるフィルタ領域101において、フィルム基材110の内部に分散された1種類以上の色素材料120を備える。
【0037】
これにより、例えば、吸収色素などの色素材料120を利用することで、透光フィルム100の透過スペクトルを所望のスペクトルにすることができる。また、所望の透過スペクトルを実現する手段として薄膜干渉フィルタを利用することもできるが、色素材料120を含む透光フィルム100は、薄膜干渉フィルタの場合よりも表面での反射率を低くすることができる。
【0038】
また、例えば、フィルタ領域101の透過スペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における透過率の最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、440nm以上600nm以下の波長帯域内における透過率の最大値が、585nm以上600nm以下にある。
【0039】
これにより、P型又はD型の色覚を有する色覚少数派に自身の色覚を気づかせる機会を与えることができる。
【0040】
また、例えば、公共交通機関は、電車、飛行機、船舶、バス又はタクシーである。
【0041】
これにより、不特定多数の人が日常的に利用しうる公共交通機関の窓に透光フィルム100を設けることで、日常生活において自然に自身の色覚を気づく機会を与えることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、透光フィルム100の全体が1つのフィルタ領域101である例を示したが、透光フィルム100は、複数のフィルタ領域を有してもよい。
【0043】
図5は、本実施の形態の変形例に係る透光フィルム200が設置された窓20の正面図である。図5に示されるように、透光フィルム200は、複数のフィルタ領域201~204を有する。
【0044】
複数のフィルタ領域201~204は、色覚少数派の色覚を補正する強度が互いに異なっている。具体的には、複数のフィルタ領域201~204では、分散された色素材料120の種類及び濃度の少なくとも一方が異なっている。例えば、複数のフィルタ領域201~204は、この順で、色素材料120による緑色光の吸収量が多くなる。簡単に言えば、フィルタ領域201が最も吸収量が少なく、薄いピンク色の領域であるのに対して、フィルタ領域204が最も吸収量が多く、濃い赤色の領域である。これにより、フィルタ領域201~204は、この順で、色覚を補正する強度が強くなる。
【0045】
図5に示される例では、複数のフィルタ領域201~204が2行2列で配列されているが、これに限らない。複数のフィルタ領域201~204は、1行又は1列に並んで配列されていてもよい。また、複数のフィルタ領域201~204は、隣り合うフィルタ領域同士で接触していてもよく、間を空けて配列されていてもよい。
【0046】
このように、変形例に係る透光フィルム200は、複数のフィルタ領域201~204を有する。複数のフィルタ領域201~204は、窓20の面内に並んで設けられ、色覚少数派の色覚を補正する強度が互いに異なっている。
【0047】
これにより、色覚少数派の人は、複数のフィルタ領域201~204の中から、外の景色が最も見やすいフィルタ領域がどれであるかを判別することができる。このため、自身の色覚の程度、すなわち、色覚多数派の色覚に近づけるための補正に必要な強度を簡単に判定することができる。
【0048】
なお、本変形例に係る透光フィルム200は、図2に示される透光フィルム100と同様に、QRコード130を有してもよい。このとき、QRコード130は、フィルタ領域毎に設けられ、互いに異なるWebサイトへのアクセス情報を含んでもよい。互いに異なるWebサイトは、例えば、色覚の補正の強度が互いに異なる色覚補正メガネを紹介又は販売するWebサイトである。フィルタ領域の色覚補正の強度と、当該フィルタ領域に対応付けられたQRコード130からアクセスできるWebサイトで紹介又は販売される色覚補正メガネによる色覚補正の強度とが同じである。
【0049】
例えば、色覚少数派のある人は、フィルタ領域202を介して外の景色が最も見やすいと判断した場合、フィルタ領域202に対応付けられたQRコード130を撮影すればよい。これにより、色覚少数派の撮影者は、QRコード130を介して、フィルタ領域202と同等の色覚補正の強度を有する色覚補正メガネを紹介又は販売するWebサイトに到達することができるので、色覚少数派の撮影者にとって適切な色覚補正メガネに関する情報を得ることができる。
【0050】
また、透光フィルム200は、フィルタ領域毎に、色覚の程度を示すメッセージを含んでもよい。
【0051】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る透光部材について説明する。
【0052】
本実施の形態に係る透光部材は、図6に示される透明ディスプレイ300である。図6は、本実施の形態に係る透明ディスプレイ300の正面図である。
【0053】
透明ディスプレイ300は、実施の形態1と同様に、電車10の窓20に設置される。透明ディスプレイ300は、窓20の全体を覆うように設置されている。
【0054】
透明ディスプレイ300は、表示画面を有するフラットディスプレイパネルである。透明ディスプレイ300は、二次元に並んで配置された複数の画素を有する。透明ディスプレイ300は、複数の画素の発光色及び発光強度を調整することにより、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ画像を表示画面に表示する。つまり、透明ディスプレイ300は、フィルタ画像の表示によって、実施の形態1に係る透光フィルム100のフィルタ領域101と同等の透過スペクトルを実現する。言い換えると、透明ディスプレイ300は、電気的な制御によって、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域を形成する。
【0055】
図6に示される例では、透明ディスプレイ300は、その表示画面の全部の領域にフィルタ領域を形成している。なお、フィルタ領域は、表示画面の一部の領域であってもよい。透明ディスプレイ300は、電気的な制御によって、発光する領域、強度及び時間を簡単に変更することができる。このため、空間分割及び時間分割による複数のフィルタ領域の形成(複数のフィルタ画像の表示)が容易である。
【0056】
図7は、本実施の形態に係る透明ディスプレイ300による、空間分割された複数のフィルタ画像301~304の表示例を示す正面図である。複数のフィルタ画像301~304は、透明ディスプレイ300の表示画面を4分割した各領域に表示されている。複数のフィルタ画像301~304はそれぞれ、実施の形態1の変形例に係る透光フィルム200の複数のフィルタ領域201~204に対応している。これにより、透光フィルム200と同様に、透明ディスプレイ300は、色覚少数派に対して、自身の色覚の程度、すなわち、色覚多数派の色覚に近づけるための補正に必要な強度を気づかせることができる。
【0057】
図8は、本実施の形態に係る透明ディスプレイ300による、時間分割された複数のフィルタ画像301~304の表示例を示す正面図である。図9は、図8に示される複数のフィルタ画像301~304の各々の表示順及び表示時間を示す図である。図9に示される(a)~(e)はそれぞれ、図8の(a)~(e)に対応している。
【0058】
透明ディスプレイ300は、例えば、図8の(b)、(c)、(d)及び(e)に示されるように、フィルタ画像301、フィルタ画像302、フィルタ画像303、フィルタ画像304の順に表示する。なお、図8に示される例では、フィルタ画像301~304は、透明ディスプレイ300の表示画面の全部の領域に表示されている。なお、フィルタ画像301~304の表示順序は、特に限定されず、例えば、逆の順序であってもよい。
【0059】
本実施の形態では、透明ディスプレイ300は、フィルタ画像304を表示した後、図8の(a)に示されるように、透明表示を行う。透明表示は、透明ディスプレイ300の透過率を十分に高い状態に保つことである。透明ディスプレイ300は、例えば、各画素の発光を停止し、入射する光をそのまま透過させる状態にする(すなわち、透明表示を行う)。透明ディスプレイ300は、透明表示を行った後、再び複数のフィルタ画像301~304を順に表示する。つまり、透明ディスプレイ300は、透明表示とフィルタ画像の表示とを繰り返し行う。なお、透明ディスプレイ300は、1つのフィルタ画像が表示される度に透明表示を行ってもよい。つまり、複数のフィルタ画像が時間連続的に表示されずに、一のフィルタ画像(例えばフィルタ画像301)と次のフィルタ画像(例えば、フィルタ画像302)との間に透明表示が行われてもよい。
【0060】
図9に示されるように、透明表示が行われる期間T1は、フィルタ画像が表示される期間以上である。具体的には、期間T1は、複数のフィルタ画像301~304が表示される期間の合計(T2+T3+T4+T5)以上である。なお、期間T2~T5はそれぞれ、フィルタ画像301~304の各々が表示される期間である。期間T2~T5は互いに同じ長さの期間であるが、異なる長さの期間であってもよい。例えば、期間T2~T5はそれぞれ、1秒から1分程度の期間である。期間T1は、10秒から数分程度の期間である。これにより、色覚多数派が外の景色を見る機会も十分に確保することができる。なお、期間T1~T5は、互いに同じ長さの期間であってもよい。
【0061】
透明ディスプレイ300は、図7に示されるような複数のフィルタ画像301~304を同時に表示することと、透明表示とを繰り返してもよい。また、透明ディスプレイ300は、表示画面の一部の領域のみを透明表示にし、他の一部の領域は常にフィルタ画像301~304のいずれかを表示していてもよい。
【0062】
また、透明ディスプレイ300は、実施の形態1と同様に、QRコード130及びメッセージ140を表示してもよい。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る透明ディスプレイ300は、光の一部の透過を抑制することで、色覚少数派の色覚を補正するフィルタ領域を有する。透明ディスプレイ300は、公共交通機関の窓に設けられる。本実施の形態に係る透明ディスプレイ300は、表示画面を有する。フィルタ領域は、表示画面の一部又は全部の領域である。透明ディスプレイ300は、光の一部の透過を抑制することで色覚少数派の色覚を補正するフィルタ画像を、フィルタ領域に表示する。
【0064】
これにより、電車10などの公共交通機関を利用する不特定多数の人が透明ディスプレイ300を見る機会が多くなる。このため、色覚少数派であるにも関わらず、自覚がない人が、自身の色覚に気づく可能性が高くなる。例えば、色覚少数派の人は、フィルタ領域を介して電車10の外の景色を見た場合と、フィルタ領域以外の部分(例えば、透明ディスプレイ300が設けられていない窓21)を介して電車10の外の景色を見た場合とでは、景色の色の見え方が異なる。このような見え方の違いを色覚少数派の人に気づかせることができる。透明ディスプレイ300によれば、日常生活において自然に自身の色覚を気づく機会を与えることができる。
【0065】
また、例えば、透明ディスプレイ300は、複数のフィルタ画像301~304を所定時間毎に表示する。複数のフィルタ画像301~304は、色覚少数派の色覚を補正する強度が互いに異なっている。
【0066】
これにより、色覚少数派の人は、複数のフィルタ画像301~304の中から、外の景色が最も見やすいフィルタ画像がどれであるかを判別することができる。このため、自身の色覚の程度、すなわち、色覚多数派の色覚に近づけるための補正に必要な強度を簡単に判定することができる。
【0067】
また、例えば、透明ディスプレイ300は、フィルタ画像301~304を表示した後、透明表示を行う。
【0068】
これにより、色覚多数派が外の景色を見る機会を確保することができる。
【0069】
また、例えば、透明表示が行われる期間T1は、フィルタ画像301~304が表示される期間以上である。
【0070】
これにより、色覚多数派が外の景色を見る機会も十分に確保することができる。
【0071】
(その他)
以上、本発明に係る透光部材について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、上記の実施の形態では、透光フィルム100又は透明ディスプレイ300が公共交通機関の窓に設置される例を示したが、これに限定されない。透光フィルム100又は透明ディスプレイ300は、公共施設の窓に設置されてもよい。
【0073】
例えば、透光フィルム100又は透明ディスプレイ300は、図10に示される図書館30の窓20に設置される。図10は、実施の形態に係る透光部材が設置された図書館30の館内を示す模式図である。図10では、窓枠によって6分割された窓20のうち、右下の部分に透光フィルム100が設置されている。
【0074】
図書館30は、公共施設の一例である。公共施設は、図書館30に限定されず、学校、公民館、病院、福祉施設、役所、寺院、教会、宿泊施設(例えば、ホテル又はゲストハウス)、公園、映画館、博物館、美術館、動物園、水族館、植物園、体育館、競技場、球技場、展望台、電波塔、駅、空港又は港湾施設などである。公共施設は、不特定多数の人が利用する施設であり、かつ、窓を備える施設であれば、特に限定されない。例えば、遊園地内の観覧車又はゴンドラなども公共施設に含まれる。
【0075】
また、例えば、透光フィルム100のフィルム基材110には、色素材料120が分散されていなくてもよい。色素材料120は、フィルム基材110の表面に塗布されていてもよい。また、例えば、透光フィルム100は、誘電体多層膜を有する薄膜干渉フィルタであってもよい。
【0076】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 電車(公共交通機関)
20、21 窓
30 図書館(公共施設)
100、200 透光フィルム(透光部材)
101、201、202、203、204 フィルタ領域
110 フィルム基材
120 色素材料
130 QRコード
140 メッセージ
300 透明ディスプレイ(透光部材)
301、302、303、304 フィルタ画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10