(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】パーツフィーダおよび部品装着装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H05K13/02 B
(21)【出願番号】P 2020163076
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 力
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113594(JP,A)
【文献】特開2003-298287(JP,A)
【文献】特開2007-335646(JP,A)
【文献】特開2020-109797(JP,A)
【文献】特開平11-261291(JP,A)
【文献】特開2017-224712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30;13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品装着装置が備えるフィーダベースのスロット溝に取り付けて用いられるパーツフィーダであって、
部品供給口に部品を供給する部品供給機構を備えた本体部と、
前記本体部から下方に突出して設けられ、前記スロット溝の後方から前記スロット溝に挿入されるスロット挿入部と、
前記本体部の前記スロット挿入部よりも後方の位置に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記フィーダベースに設けられた被クランプ部をクランプするクランプ部材と、
前記本体部の前端部に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記フィーダベース側の第1の部材と係合する前方係合部と、
前記本体部の前記スロット挿入部よりも後方の位置に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記スロット溝または前記被クランプ部とは異なる前記フィーダベース側の部材である第2の部材と係合する一または複数の後方係合部と、
を備え
、
前記一または複数の後方係合部のひとつは、前記本体部の前記クランプ部材よりも下方の位置に設けられ、前記第2の部材として前記フィーダベース側に設けられたフィーダ側係合部と係合する下方係合部から成る、パーツフィーダ。
【請求項2】
前記一または複数の後方係合部のひとつは、前記本体部の前記スロット挿入部よりも後方の位置から下方に突出して設けられ、前記スロット溝または前記第2の部材として前記フィーダベースの前記スロット溝よりも後方の位置に設けられた突起係合部と係合する係合突起から成る、請求項
1に記載のパーツフィーダ。
【請求項3】
前記フィーダベースに設けられたコネクタに接続されると共に、前記コネクタを介して前記フィーダベースと電気的に接続される端子を有する請求項1に記載のパーツフィーダ。
【請求項4】
基板を搬送して位置決めする基板搬送路と、
スロット溝を有するフィーダベースと、
前記スロット溝に取り付けられて前記部品供給口に部品を供給する請求項1~
3のいずれかに記載のパーツフィーダと、
前記パーツフィーダが供給する部品をピックアップして前記基板搬送路により位置決めされた前記基板に装着する装着ヘッドと、を備えた部品装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品装着装置が備えるフィーダベースのスロット溝に取り付けて用いられるパーツフィーダおよびこのパーツフィーダを備えた部品装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に部品を装着する部品装着装置における部品供給部として機能するパーツフィーダは、部品供給口に部品を供給する部品供給機構を備えた本体部の下部にスロット挿入部を備えており、このスロット挿入部がフィーダベースに形成されたスロット溝に対して水平に挿入されることでフィーダベースに取り付けられるようになっている。本体部にはレバー状の操作部材が設けられており、スロット挿入部がスロット溝に挿入された状態で操作部材を上下方向に操作すると、操作部材とリンク機構で連結されたクランプ部材が作動し、フィーダベースに設けられた被クランプ部をクランプすることで、パーツフィーダがフィーダベースに固定されるようになっている。また、フィーダベースに取り付けられる際の進行方向の前端部には前方へ突出したピンが設けられており、そのピンがフィーダベース側の部材に挿入されることでフィーダベースに対するパーツフィーダの位置決めがなされるようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品装着装置の稼働時には、重量物である装着ヘッドが頻繁に移動と停止を繰り返す。このような装着ヘッドの動作はフィーダベースに取り付けられたパーツフィーダを加振し、その結果、パーツフィーダには横方向の振動(横揺れ)が生じる。この横揺れは部品供給口の位置を不安定にするため、装着ヘッドによる部品の吸着精度が低下し、ひいては基板に対する部品の装着精度が低下してしまう。上述したように、パーツフィーダの前端部にはピンが設けられており、そのピンがフィーダベース側の部材に挿入されているために部品供給口の横揺れは或る程度抑えられるが、装着ヘッドの軸加速度の増大が進んでパーツフィーダに作用する加振力が増大し、更にはパーツフィーダの狭小化が進んで本体部の剛性が低下すると、パーツフィーダの横揺れの振幅が過大となって安定した部品供給ができなくなるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、横揺れの振幅を低減して安定した部品供給を行うことができるパーツフィーダおよび部品装着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーツフィーダは、部品装着装置が備えるフィーダベースのスロット溝に取り付けて用いられるパーツフィーダであって、部品供給口に部品を供給する部品供給機構を備えた本体部と、前記本体部から下方に突出して設けられ、前記スロット溝の後方から前記スロット溝に挿入されるスロット挿入部と、前記本体部の前記スロット挿入部よりも後方の位置に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記フィーダベースに設けられた被クランプ部をクランプするクランプ部材と、前記本体部の前端部に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記フィーダベース側の第1の部材と係合する前方係合部と、前記本体部の前記スロット挿入部よりも後方の位置に設けられ、前記スロット挿入部が前記スロット溝に挿入された状態で前記スロット溝または前記被クランプ部とは異なる前記フィーダベース側の部材である第2の部材と係合する一または複数の後方係合部と、を備えた。
【0007】
本発明の部品装着装置は、基板を搬送して位置決めする基板搬送路と、スロット溝を有するフィーダベースと、前記スロット溝に取り付けられて前記部品供給口に部品を供給する上記本発明のパーツフィーダと、前記パーツフィーダが供給する部品をピックアップして前記基板搬送路により位置決めされた前記基板に装着する装着ヘッドと、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横揺れの振幅を低減して安定した部品供給を行うことができるパーツフィーダおよびこれを備えた部品装着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態における部品装着装置の要部側面図
【
図2】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備えるフィーダベースとこれに取り付けられるパーツフィーダの斜視図
【
図3】(a)(b)本発明の一実施の形態における部品装着装置が備えるフィーダベースとこれに取り付けられるパーツフィーダの側面図
【
図4】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダが備えるローラユニットの斜視図
【
図5】本発明の一実施の形態における部品装着装置が備えるフィーダベースのスロット溝に(a)スロット挿入部が挿入された状態を示す図(b)係合突起が係合した状態を示す図
【
図6】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダの一部の透視側面図
【
図7】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダの一部の透視側面図
【
図8】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダが備えるオルタネート機構部の(a)平面図(b)側断面図
【
図9】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダが備えるオルタネート機構部が有するカムブロックの部分平面図
【
図10】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダが備えるオルタネート機構部の動作を説明する図
【
図11】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダが備えるオルタネート機構部の動作を説明する図
【
図12】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダの一部の透視側面図
【
図13】本発明の一実施の形態におけるパーツフィーダのフィーダベースに取り付けた状態における一部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における部品装着装置1を示している。部品装着装置1は上流工程側から搬入した基板KBに部品BHを装着して下流工程側に搬出する部品装着作業を繰り返し実行する装置である。ここでは説明の便宜上、部品装着装置1における基板KBの搬送方向(作業者OPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0011】
図1において、部品装着装置1は、基台11、基板搬送路12、パーツフィーダ13、装着ヘッド14、ヘッド移動機構15、部品認識カメラ16および制御装置17を備えている。基板搬送路12は一対のベルトコンベア12aから成り、基台11上をX軸方向に延びて設けられている。基板搬送路12は、上流工程側から送られてきた基板KBを搬入し、所定の作業位置に位置決めする。
【0012】
図1において、基台11の作業者OPから見た手前側(後方とする)の端部には、フィーダ台車21が連結されている。フィーダ台車21の上部にはフィーダベース22が設けられており、パーツフィーダ13はフィーダベース22に着脱自在に取り付けられており、作業者OPから見た奥側(前方)の端部に設けられた部品供給口13Kに部品BHを供給する。フィーダベース22には複数のパーツフィーダ13をX軸方向に並べて取り付けることができる。フィーダ台車21を基台11に連結させると、フィーダベース22に取り付けられている複数のパーツフィーダ13が一括して基台11に接続される。
【0013】
図1において、装着ヘッド14は下方に延びた複数のノズル14Nを備えている。各ノズル14Nは昇降動作とZ軸まわりの回転動作とを行うことができ、図示しない真空源から供給される真空圧が供給されることによって、下端に吸着力を発生させることができる。ヘッド移動機構15は、例えばXYビーム機構から成り、基台11の上方の領域で装着ヘッド14を水平面内(XY面内)方向に移動させる。
【0014】
図1において、部品認識カメラ16は基台11上における基板搬送路12とフィーダ台車21(すなわちパーツフィーダ13)との間の領域に設けられている。部品認識カメラ16は撮像光軸を上方に向けている。部品認識カメラ16は、ノズル14Nで部品BHを吸着した装着ヘッド14が上方を通過するときに、各部品BHを撮像する。
【0015】
制御装置17は、部品装着装置1を構成する各部の動作を制御する。具体的には、制御装置17は、基板搬送路12による基板KBの搬送動作と作業位置への位置決め動作を制御し、各パーツフィーダ13による部品BHの供給動作を制御する。
【0016】
また制御装置17は、装着ヘッド14が備える複数のノズル14Nそれぞれの昇降および回転動作を制御し、各ノズル14Nの下端に部品BHの吸着力を発生させる制御を行う。また制御装置17は、ヘッド移動機構15を作動させて、装着ヘッド14を移動させる制御を行う。制御装置17はまた、部品認識カメラ16の撮像動作を制御する。
【0017】
部品装着装置1が部品実装作業を行う場合には先ず、上流工程側から送られてきた基板KBを基板搬送路12が受け取って作業位置に位置決めする。基板KBが位置決めされたらヘッド移動機構15が作動して装着ヘッド14をパーツフィーダ13の上方に移動させ、装着ヘッド14は複数のノズル14Nのそれぞれに部品BHを吸着させる。ノズル14Nに部品BHを吸着させた装着ヘッド14は部品認識カメラ16の上方を通過するように移動され、部品認識カメラ16は各部品BHを認識する。
【0018】
部品認識カメラ16が部品BHを認識したら、ヘッド移動機構15は装着ヘッド14を基板KBの上方に移動させ、装着ヘッド14は基板KB上に設定された目標装着座標に部品BHを装着させる。このような部品BHの吸着、認識および装着から成る一連の動作が繰り返し実行されて、基板KBに装着されるべき全ての部品BHが装着されたら、基板搬送路12が作動して、基板KBを下流工程側に搬出する。これにより基板KBの1枚当たりの部被装着作業が終了する。
【0019】
このような構成の部品装着装置1において、本実施の形態ではパーツフィーダ13の構成に特徴があり、以下にその説明を行う。
【0020】
先ず、パーツフィーダ13が取り付けられるフィーダベース22の構成について説明する。
図2において、フィーダベース22は全体として矩形形状に形成された板状の部材から構成されている。フィーダベース22の上面にはY軸方向に延びてX軸方向に並んだT字断面を有する複数のスロット形成部材23によって、Y軸方向に延びた複数のスロット溝23Sが形成されている。各パーツフィーダ13は、これら複数のスロット溝23Sのひとつに選択的に挿入して取り付けられる。このときパーツフィーダ13は作業者OPから見て手前側から奥側へ向けてスロット溝23Sに挿入される。
【0021】
図2および
図3(a),(b)において、フィーダベース22の奥側の端部には、スロット溝23Sに挿入されるパーツフィーダ13の先頭部である前端部が当接されるフィーダストッパ24が設けられている。フィーダストッパ24の上部と下部とのそれぞれには、各スロット溝23Sに対応した配置で上側ピン挿入穴24Aと下側ピン挿入穴24Bが設けられている。
【0022】
図2および
図3(a),(b)において、フィーダベース22の後部(作業者OPから見た手前側)の下面には、フィーダベース22の後下方に張り出した形状を有するブラケット25が設けられている。ブラケット25には各スロット溝23Sに対応した配置でコネクタ26と下方係合ピン27が設けられている。
【0023】
図2および
図3(a),(b)において、ブラケット25には、各スロット溝23Sに対応した配置で被クランプユニットとしての複数のローラユニット31がX軸方向に並んで設けられている。各ローラユニット31は、
図4に示すように、全体としてY軸方向に延びた形状を有する一対のアーム32、一対のアーム32を連結する連結部33および一対のアーム32の先端部同士を連結するようにX軸方向に延びて設けられた被クランプ部としてのローラ34を備えている。連結部33とフィーダベース22との間には付勢ばね35が縮設されており、ローラユニット31は全体が下方に付勢された状態となっている。
【0024】
次に、パーツフィーダ13の構成について説明する。
図2および
図3(a),(b)において、パーツフィーダ13は、全体としてYZ面内方向に広がって延びた形状の本体部41を有している。本体部41は前端上部に前述の部品供給口13Kを有しており、内部には、部品供給口13Kに部品BHを供給する部品供給機構(図示せず)を備えている。
【0025】
本体部41の前側下部には、フィーダベース22に設けられたスロット溝23Sに挿入可能な形状(断面が逆T字型の形状)を有するスロット挿入部42が下方に突出して設けられている。スロット挿入部42はスロット溝23Sの後方から挿入され、本体部41はその前端部がフィーダベース22に設けられたフィーダストッパ24に当接するまで押し込まれる。
図5(a)は、スロット溝23Sに挿入されたスロット挿入部42をフィーダベース22とともに断面で示したものである。
【0026】
図2および
図3(a),(b)において、本体部41の前端部には、前方係合部としての上側ピン43と下側ピン44がそれぞれ前方に向けて突出して設けられている。上側ピン43は本体部41の前端部の上部に設けられており、下側ピン44は本体部41の前端部の下部に設けられている。
【0027】
図2および
図3(a),(b)において、本体部41の下部のスロット挿入部42の後方の位置には、係合突起45が下方に突出して設けられている。係合突起45は、スロット挿入部42がスロット溝23Sの奥部まで挿入されることによって、スロット溝23Sの後端部に係合(嵌入)する。
【0028】
図5(b)は、スロット溝23Sに係合突起45が係合(嵌入)した状態を断面図により示したものである。
図5(b)に示すように、係合突起45のスロット溝23Sの溝幅方向の寸法Dは、スロット溝23Sの溝幅MHよりも若干小さい寸法となっている。詳細には、スロット挿入部42のスロット溝23Sの間に入り込む部分の幅方向寸法W(
図5(a))よりも大きく、スロット溝23Sの溝幅MHよりも小さい寸法となっている(W<D<MH)。
【0029】
図2および
図3(a),(b)において、本体部41の後部には、下方に延出した下方延出部46が設けられている。下方延出部46には、本体部41がフィーダベース22に取り付けられたときに、フィーダベース22側に設けられた前述のコネクタ26と接続されるフィーダ側端子47が前方に突出して設けられている。
【0030】
図2および
図3(a),(b)において、下方延出部46の下端、すなわちクランプ部材51よりも下方の位置には、前後方向に延びた形状を有する下方係合用部材48が取り付けられている。下方係合用部材48の前端部は上方に屈曲した屈曲部48Kとなっており、屈曲部48Kの中央には開口から成る下方係合部48Hが設けられている。スロット挿入部42がスロット溝23Sの奥側まで挿入されると、下方係合ピン27が下方係合部48Hと係合する。
【0031】
図3(a),(b)、
図6および
図7において、本体部41のスロット挿入部42よりも後方の位置にはクランプ部材51が設けられている。クランプ部材51は全体としてY軸方向に延びた形状を有しており、前端側は下方延出部46の前方に露出している。クランプ部材51の前端部には上方に向かって開いた形状の窪み部51Kが設けられており、その前端側は上方に突出したクランプ爪51Fとなっている。
【0032】
クランプ部材51は本体部41に両端が取り付けられてX軸方向に延びた揺動ピン51Pによって支持されており、揺動ピン51Pまわりに揺動自在になっている。クランプ部材51は、ほぼ水平姿勢となってクランプ爪51Fを下げた爪下げ位置(
図6)と、爪下げ位置からクランプ爪51Fを上げる方向に揺動した爪上げ位置(
図7)との間で揺動自在である。クランプ部材51が爪下げ位置から爪上げ位置に移動(揺動)すると、クランプ爪51Fが下方延出部46の前方を下方から上方に移動する。
【0033】
図6および
図7において、本体部41の後端上部には、操作部材52が前後方向(Y軸方向)に移動自在に設けられている。操作部材52は、その後部を本体部41の後端から後方に突出させている。操作部材52は、本体部41の内部における第1の位置(
図6)と、第1の位置から前方に移動した第2の位置(
図7)との間で移動自在である。
【0034】
図6および
図7において、操作部材52の下方には、カムブロック53が本体部41に対して固定して設けられている。カムブロック53の上面には、
図8(a),(b)に示すカム溝53Mが形成されている。
【0035】
図6、
図7および
図8(a),(b)において、操作部材52の前後方向の中間部にはZ軸方向に延びた枢支ピン54が設けられており、枢支ピン54の下端には首振り片55の一端部が枢支されている。首振り片55の他端部には、下方に突出して延びたカム棒56が連結されている。カム棒56の下端はカム溝53M内に位置している。首振り片55は枢支ピン54を支点にして水平面内で首振り自在であり、このためカム棒56は、枢支ピン54を中心とする円弧軌道上を移動することが可能である。
【0036】
図8(a),(b)において、操作部材52の前端部には、ばね挿通部52Sが前方に延びて設けられている。ばね挿通部52Sにはコイルばねから成る戻しばね57が挿通されている。戻しばね57の後端側は操作部材52に当接しており、前端側は本体部41の一部に当接して操作部材52を後方へ付勢している。操作部材52が本体部41の後方から前方に向かって押圧されると、操作部材52は前方へ移動して戻しばね57を圧縮し、圧縮された戻しばね57は操作部材52に対し、後方に押し戻す力を作用させる。
【0037】
図9において、カムブロック53に形成されたカム溝53Mはいわゆるハート形のカム溝である。カム溝53M内の最も後方の位置(P1)にカム棒56が位置した状態では(
図10(a))、カム棒56は戻しばね57からの付勢力を受けてカム溝53Mの壁面に前方から当接しており、操作部材52はその位置(P1)に静止した状態となっている。この状態における操作部材52の位置は、前述の第1の位置に相当する(
図6)。
【0038】
図10(a)のように第1の位置にある操作部材52を作業者OPが前方へ押圧操作すると、操作部材52は戻しばね57を押し縮めながら前方へ移動する。これによりカム棒56はカム溝53M内を位置(P1)から
図9に示す位置(P2)および位置(P3)を経て位置(P4)に移動する(
図10(a)→
図10(b)→
図10(c))。カム棒56は位置(P4)においてカム溝53Mの壁面に後方から当接する。カム棒56がカム溝53Mの壁面に当接すると、作業者OPは操作部材52をそれ以上前方へ押圧することができなくなる。これにより作業者OPは操作部材52が押圧方向のストロークエンドに達したことを感知し、操作部材52から手を放す。
【0039】
作業者OPが操作部材52から手を放すと、操作部材52は戻しばね57に付勢されて後方に移動する。これによりカム棒56は位置(P4)から
図9の位置(P5)に移動する(
図10(c)→
図10(d))。カム棒56は位置(P5)において、戻しばね57の付勢力によってカム溝53Mの壁面に前方から当接する。この状態では操作部材52はそれ以上後方へ移動できず、その位置(P5)に位置に静止した状態となる(
図10(d))。この状態にある操作部材52の位置は、前述の第2の位置に相当する(
図7)。
【0040】
操作部材52が第2の位置にある状態から作業者OPが操作部材52を前方へ押圧操作すると、操作部材52は戻しばね57を押し縮めながら前方へ移動し、カム棒56はカム溝53M内を位置(P5)から
図9に示す位置(P6)に移動する(
図10(d)→
図11(a))。カム棒56は位置(P6)においてカム溝53Mの壁面に後方から当接する。カム棒56がカム溝53Mの壁面に当接すると、作業者OPは操作部材52をそれ以上前方へ押圧することができなくなる。これにより作業者OPは操作部材52が押圧方向のストロークエンドに達したことを感知し、操作部材52から手を放す。
【0041】
作業者OPが操作部材52から手を放すと、操作部材52は戻しばね57に付勢されて後方に移動する。これによりカム棒56は位置(P6)から
図9の位置(P7)を経て位置(P1)に移動する(
図11(a)→
図11(b)→
図11(c))。カム棒56は位置(P1)において戻しばね57の付勢力によってカム溝53Mの壁面に前方から当接し、静止する(
図11(c))。これにより操作部材52は第1の位置に復帰した状態となる。
【0042】
このように、パーツフィーダ13が備えるカムブロック53、カム棒56および戻しばね57は、操作部材52が本体部41の前方に向けて押圧操作される度に、操作部材52の位置を、操作部材52の押圧方向に設定された第1の位置と第2の位置との間で交互に切り替えるオルタネート機構部58(
図6、
図7および
図8(a),(b))を構成している。
【0043】
図6および
図7において、本体部41内には、操作部材52とクランプ部材51とを連結するワイヤ60が設けられている。ワイヤ60の一端(上端)は、上側ワイヤナット60Aを介して操作部材52に取り付けられており、ワイヤ60の他端(下端)は、下側ワイヤナット60Bを介して本体部41内のワイヤ固定部46Kに取り付けられている。
【0044】
図6および
図7において、ワイヤ60の中間部は複数のプーリ(第1プーリ61、第2プーリ62、第3プーリ63および第4プーリ64)によって支持されている。第1プーリ61はカムブロック53に取り付けられており、第2プーリ62と第3プーリ63はワイヤ固定部46Kに取り付けられている。第4プーリ64はクランプ部材51における揺動ピン51Pよりも後方の部分に取り付けられている。上端側が操作部材52に取り付けられたワイヤ60は、第1プーリ61までの間を後方に延び、第1プーリ61と第2プーリ62の間を下方に延び、第2プーリ62と第3プーリ63の間を前方に延び、第3プーリ63と第4プーリ64の間を上方に延び、第4プーリ64から下端側までの間を下方に延びている。
【0045】
図6および
図7において、クランプ部材51における揺動ピン51Pの後方部分(詳細には揺動ピン51Pと第4プーリ64との間の部分)とワイヤ固定部46Kとの間には、ばね部材65が縮設されている。ばね部材65はクランプ部材51を爪下げ位置の側に向けて付勢しており、
図6に示すように、操作部材52が第1の位置に位置した状態では、クランプ部材51は爪下げ位置に位置する(
図12(a)も参照)。
【0046】
このように操作部材52が第1の位置に位置(クランプ部材51が爪下げ位置に位置)した状態から、作業者OPが操作部材52を前方に向かって押圧操作すると、上側ワイヤナット60Aが操作部材52によって前方へ移動する方向にワイヤ60が引っ張られる(
図10(a)→
図10(b)→
図10(c)および
図12(a)→
図12(b))。そして、この間の操作部材52の移動距離である第1の位置と第2の位置の間の距離SS(
図12(b))に相当する長さのワイヤ60が第1プーリ61と第2プーリ62との間で引っ張り上げられる。そして、その分、クランプ部材51の後側が第4プーリ64を介してワイヤ60により引っ張り下げられるため、クランプ部材51はばね部材65を押し縮めながら揺動ピン51Pを支点にして揺動し(
図12(b)中に示す矢印R)、クランプ爪上げ位置に位置している(
図12(b))。
【0047】
一方、操作部材52が第2の位置に位置した状態(クランプ部材51が爪上げ位置に位置した状態)から、作業者OPが操作部材52を前方に向かって押圧操作すると、クランプ部材51は後側がばね部材65の付勢力によって押し上げられる。これによりクランプ部材51は揺動ピン51Pを支点にして揺動し(
図12(b)→
図12(a))、爪下げ位置に復帰する(
図12(a))。
【0048】
このような構成のパーツフィーダ13をフィーダベース22に取り付ける場合には、作業者OPは、操作部材52を第1の位置の位置(クランプ部材51を爪下げ位置に位置)させた状態で、スロット挿入部42を、スロット溝23Sの後方から、スロット溝23Sに水平に挿入する。そして、本体部41の前端部がフィーダストッパ24に当接するまで本体部41をフィーダベース22の奥側に押し込んでいく(
図3(a)→
図3(b))。これにより上側ピン43は上側ピン挿入穴24Aに嵌入し、下側ピン44は下側ピン挿入穴24Bに嵌入する。また、係合突起45はスロット溝23Sの後端部に係合(嵌入)し、フィーダベース22側の下方係合ピン27は、パーツフィーダ13側の下方係合部48Hと係合する。
【0049】
下方係合部48Hと係合突起45は、それぞれ、本実施の形態における後方係合部となっている。ここで「後方係合部」とは、本体部41のスロット挿入部42よりも後方の位置に設けられ、スロット挿入部42がスロット溝23Sに挿入された状態で、被クランプ部であるローラ34とは異なるフィーダベース22側の部材である第2の部材(本実施の形態では下方係合ピン27)またはスロット溝23Sと係合する部分をいう。
【0050】
また、スロット挿入部42をスロット溝23Sの奥側に挿入していくと、フィーダ側端子47はコネクタ26に嵌入し、パーツフィーダ13と部品装着装置1の制御装置17とは電気的に接続された状態となる。これにより制御装置17からのパーツフィーダ13の動作制御が可能となる。
【0051】
パーツフィーダ13のスロット挿入部42をフィーダベース22のスロット溝23Sの奥側に挿入していくと、爪下げ位置に位置しているクランプ部材51のクランプ爪51Fは、ローラ34と接触することなく、その下方(ローラ34の下方)に到達する(
図3(b))。
【0052】
スロット挿入部42をスロット溝23Sに挿入したパーツフィーダ13の前端部がフィーダストッパ24に当接したら、作業者OPは本体部41をフィーダベース22の奥側に押し込むのをやめたうえで、操作部材52を前方へ押圧する。これにより操作部材52は第1の位置から第2の位置へ移動し、クランプ部材51はワイヤ60を通じて爪下げ位置から爪上げ位置に移動(揺動)する。これによりクランプ爪51Fは上昇し、付勢ばね35の付勢力に抗してローラ34を押し上げるので(
図12(a)→
図12(b))、ローラ34はクランプ部材51によってクランプされた状態となる(
図12(b)および
図13)。これによりパーツフィーダ13のフィーダベース22への取り付けが完了し、以後、パーツフィーダ13により部品BHを供給することが可能となる。
【0053】
上記のようにローラ34がクランプ部材51によってクランプされた状態では、本体部41の前端部に設けられた前方係合部(上側ピン43および下側ピン44)がフィーダベース22側の第1の部材(フィーダストッパ24)に係合するだけでなく、後方係合部としての下方係合部48Hがローラ34とは異なるフィーダベース22側の部材(第2の部材)である下方係合ピン27と係合している(
図13)。下方係合部48Hは前端係合部から十分に離れた箇所においてフィーダベース22側と係合しているので、パーツフィーダ13の横揺れが効果的に抑制される。
【0054】
また、ローラ34がクランプ部材51によってクランプされた状態では、同じく後方係合部としての係合突起45がスロット溝23Sに係合(嵌入)している。前述したように、係合突起45のスロット溝23Sの溝幅方向の寸法Dは、スロット溝23Sの溝幅MHよりも若干小さい寸法であり、スロット挿入部42よりもガタが小さい状態でスロット溝23Sに係合しているので、この係合突起45によっても、パーツフィーダ13の横揺れが効果的に抑制される。
【0055】
このように本実施の形態では、フィーダベース22に取り付けられた状態のパーツフィーダ13の横揺れに対する剛性は極めて高くなっている。このため、部品装着装置1の稼働中に装着ヘッド14が頻繁に移動と停止を繰り返し、これによりパーツフィーダ13が大きな加振力で加振された場合であっても、パーツフィーダ13の横揺れは抑制され、部品供給口13Kの横揺れの振幅を微小量に抑えることができる。
【0056】
作業者OPは、フィーダベース22に取り付けられているパーツフィーダ13を取り外す場合には、操作部材52をフィーダベース22にパーツフィーダ13を固定したときと同じ方向、すなわち前方に押圧操作する。操作部材52が押圧操作されて第2の位置から第1の位置へ移動すると、クランプ部材51はばね部材65の付勢力によって爪上げ位置から爪下げ位置に移動(揺動)し、クランプ爪51Fはローラ34から下方に離間する(
図12(b)→
図12(a))。このためローラ34のクランプ状態は解除される。
【0057】
このように本実施の形態において、オルタネート機構部58、ワイヤ60およびばね部材65は、操作部材52の押圧操作が行われる度に、クランプ部材51の位置を、被クランプ部であるローラ34をクランプするクランプ位置とローラ34のクランプを解除するクランプ解除位置との間で切り替える位置切替え機構70(
図3(a),(b)、
図6および
図7)を構成しており、これにより作業者OPは操作部材52を本体部41に対して同一方向(前方)への押圧操作だけでローラ34のクランプとその解除を行うことができるようになっている。しかも、操作部材52の操作方向(押圧方向)は、スロット挿入部42をスロット溝23Sに挿入する方向と一致しているので、パーツフィーダ13をフィーダベース22に取り付ける操作をロボットに行わせる場合には、そのロボットが当然に備える動作軸(スロット挿入部42をスロット溝23Sに挿入させる動作の動作軸)を利用して操作部材52の操作を行わせることが可能である。
【0058】
上記のように、本実施の形態では、操作部材52が本体部41の前方に向けて押圧操作される度に操作部材52の位置を第1の位置と第2の位置との間で交互に切り替えるオルタネート機構部58と、操作部材52とクランプ部材51とを連結するワイヤ60と、クランプ部材51をクランプ位置からクランプ解除位置の側へ向けて付勢するばね部材65とを有している。そして、操作部材52が第1の位置から第2の位置へ位置が切り替えられるとワイヤ60を介してクランプ部材51がクランプ解除位置からクランプ位置に移動(揺動)し、操作部材52が第2の位置から第1の位置へ位置が切り替えられるとばね部材65の付勢力によってクランプ部材51がクランプ位置からクランプ解除位置に移動(揺動)するようになっている。
【0059】
ローラ34のクランプ状態が解除されたら、作業者OPは、本体部41を後方にスライドさせて、スロット挿入部42をスロット溝23Sから引き抜く。その過程で、上側ピン43は上側ピン挿入穴24Aから離脱し、下側ピン44は下側ピン挿入穴24Bから離脱し、係合突起45はスロット溝23Sから離脱する。また、フィーダ側端子47はコネクタ26から離脱し、下方係合ピン27は下方係合部48Hから離脱する。これによりパーツフィーダ13のフィーダベース22からの取り外しが完了する。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態におけるパーツフィーダ13(および部品装着装置1)では、スロット挿入部42がスロット溝23Sに挿入された状態において、本体部41の前端部に設けられた前方係合部(上側ピン43および下側ピン44)がフィーダベース22側の第1の部材(フィーダストッパ24)に係合するだけでなく、後方係合部としての下方係合部48Hがフィーダベース22側の第2の部材である下方係合ピン27に係合するとともに、係合突起45がスロット溝23Sに係合するようなっている。このため、フィーダベース22に取り付けられた状態でのパーツフィーダ13の横揺れに対する剛性は極めて高く、部品装着装置1の稼働中に装着ヘッド14が頻繁に移動と停止を繰り返し、これによりパーツフィーダ13が大きな加振力で加振された場合であっても、パーツフィーダ13の横揺れの振幅を低減して安定した部品供給を行うことができる。このため、装着ヘッド14による部品BHの吸着精度の低下を防止でき、基板KBに対する部品BHの装着精度を向上させることができる。
【0061】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、係合突起45はスロット溝23Sに係合するようになっていたが、フィーダベース22のスロット溝23Sよりも後方の位置に設けられた第2の部材(被クランプ部であるローラ34とは異なるフィーダベース22側の部材)としての突起係合部(図示せず)と係合するようになっていてもよい。この場合、突起係合部の溝幅はスロット溝23Sの溝幅MHと同じである必要はなく、溝幅MHより大きくてもよい。そして、突起係合部の溝幅がスロット溝23Sの溝幅MHよりも大きいときは、これに合わせて(突起係合部に嵌入するように)、係合突起45のスロット溝23Sの溝幅方向の寸法Dを大きくすることができる。
【0062】
また、上述の実施の形態では、本体部41のスロット挿入部42よりも後方の位置に設けられた後方係合部(スロット挿入部42がスロット溝23Sに挿入された状態でスロット溝23Sまたはローラ34とは異なるフィーダベース22側の部材(第2の部材)と係合する部材)として、下方係合部48Hと係合突起45を示したが、後方係合部はこれらの一方のみであってもよいし、その他に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
横揺れの振幅を低減して安定した部品供給を行うことができるパーツフィーダおよび部品装着装置を提供する。
【符号の説明】
【0064】
1 部品装着装置
12 基板搬送路
13 パーツフィーダ
13K 部品供給口
14 装着ヘッド
22 フィーダベース
23S スロット溝
24 フィーダストッパ(第1の部材)
27 下方係合ピン(第2の部材)
34 ローラ(被クランプ部)
41 本体部
42 スロット挿入部
43 上側ピン(前方係合部)
44 下側ピン(前方係合部)
45 係合突起(後方係合部)
48H 下方係合部(後方係合部)
51 クランプ部材
BH 部品