(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】トランス及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241101BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H02M3/28 E
H02M3/28 Q
H02M3/28 Y
H02M3/28 W
H01F30/10 R
H01F30/10 M
H01F30/10 F
H01F30/10 A
(21)【出願番号】P 2021508222
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005362
(87)【国際公開番号】W WO2020195275
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019058703
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】武田 憲明
(72)【発明者】
【氏名】西本 太樹
(72)【発明者】
【氏名】澤田 直暉
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-266807(JP,A)
【文献】特開2016-208587(JP,A)
【文献】特開2018-64010(JP,A)
【文献】特開平10-241957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第2及び第4の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第3の端子の間に電流が流れるときに前記第1及び第2の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第6及び第8の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第7の端子の間に電流が流れるときに前記第3及び第4の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項2】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第2及び第4の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第3の端子の間に電流が流れるときに前記第1及び第2の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第8の端子において互いに接続され、かつ、前記第6及び第7の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第6の端子の間に電流が流れるときに前記第3及び第4の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項3】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第4の端子において互いに接続され、かつ、前記第2及び第3の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第2の端子の間に電流が流れるときに前記第1及び第2の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第8の端子において互いに接続され、かつ、前記第6及び第7の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第6の端子の間に電流が流れるときに前記第3及び第4の巻線により前記コアのループに沿って同じ向きの磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項4】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記コアは、前記第1及び第3の辺を磁気的に連結する中央区間をさらに備え、
前記第2の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分とは、第1のサブループを形成し、
前記第4の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分とは、第2のサブループを形成し、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第2及び第4の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第3の端子の間に電流が流れて前記第1の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第2の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第6及び第8の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第7の端子の間に電流が流れて前記第3の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第4の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項5】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記コアは、前記第1及び第3の辺を磁気的に連結する中央区間をさらに備え、
前記第2の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分とは、第1のサブループを形成し、
前記第4の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分とは、第2のサブループを形成し、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第2及び第4の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第3の端子の間に電流が流れて前記第1の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第2の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第8の端子において互いに接続され、かつ、前記第6及び第7の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第6の端子の間に電流が流れて前記第3の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第4の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項6】
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記コアは、前記第1及び第3の辺を磁気的に連結する中央区間をさらに備え、
前記第2の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第2の辺から前記中央区間までの部分とは、第1のサブループを形成し、
前記第4の辺と、前記中央区間と、前記第1の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分と、前記第3の辺における前記第4の辺から前記中央区間までの部分とは、第2のサブループを形成し、
前記第1の巻線は第1及び第2の端子を有し、
前記第2の巻線は第3及び第4の端子を有し、
前記第3の巻線は第5及び第6の端子を有し、
前記第4の巻線は第7及び第8の端子を有し、
前記第1及び第3の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第2及び第4の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第5及び第7の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第6及び第8の端子は、前記コアの第1の辺から等距離の位置に設けられ、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第4の端子において互いに接続され、かつ、前記第2及び第3の端子において互いに接続され、
前記第1及び第2の巻線は、前記第1及び第2の端子の間に電流が流れて前記第1の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第2の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第8の端子において互いに接続され、かつ、前記第6及び第7の端子において互いに接続され、
前記第3及び第4の巻線は、前記第5及び第6の端子の間に電流が流れて前記第3の巻線により前記コアの第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、前記第4の巻線により前記コアの第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するように前記コアに巻回された、
トランス。
【請求項7】
ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路と、
請求項1~
6のうち1つに記載のトランスとを備えた、
スイッチング電源装置。
【請求項8】
前記第1又は第3の辺に平行に設けられた導体部をさらに備えた、
請求項
7記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記導体部は、接地導体、金属筐体、シールド、及びヒートシンクのうちの少なくとも1つを含む、
請求項
8記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
ノーマルモードノイズを除去するノイズフィルタをさらに備えた、
請求項
7~9のうちの1つに記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランス及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スイッチング電源装置の一種として、与えられた直流電圧を所望の直流電圧に電力変換するDC-DCコンバータが使用される。特に、安全性が求められる産業用、車載用、又は医療用などの機器では、漏電及び感電を防止するために、DC-DCコンバータの入力側と出力側とをトランスで絶縁する絶縁型DC-DCコンバータが使用される。
【0003】
特許文献1は、直流電圧をスイッチングして所定の周波数を有する交流電圧に変換するフルブリッジ型のスイッチング回路と、スイッチングされた交流電圧を所定の電圧値に変換するトランスとを備えるスイッチング電源回路を開示している。スイッチング回路とトランスとの間には、コンデンサ及びコイルからなり、トランスの一次巻線の両端に対してそれぞれ直列に接続された複数の共振回路が設けられる。特許文献1のスイッチング電源回路は、LLC共振方式の絶縁型DC-DCコンバータを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、複数の共振回路をトランスの一次巻線の両端にそれぞれ直列に接続してトランスの一次巻線における電圧波形を対称とし、これにより、トランスの一次巻線に入力されるコモンモード電圧を互いに打ち消し合うことを開示している。言い換えると、特許文献1では、トランスの一次巻線の一端に接続された回路素子の特性と、他端に接続された回路素子の特性とを対称にすることにより、コモンモードノイズの低減を試みている。しかしながら、回路素子の特性が対称になるように構成しても、トランスと他の導体部(接地導体及び/又は筐体など)との間の寄生容量(本明細書では「接地容量」ともいう)などに起因して回路の非対称性が生じることがある。このような回路の非対称性に起因してコモンモードノイズが発生することがある。従って、接地容量に起因するコモンモードノイズが発生しにくいトランスが求められる。
【0006】
本開示の目的は、接地容量に起因するコモンモードノイズが発生しにくいトランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るトランスによれば、
第1~第4の辺を含む長方形のループの形状を有し、第1及び第3の辺が互いに対向し、第2及び第4の辺が互いに対向するように構成されたコアと、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第1の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第2の巻線と、
前記コアの第2の辺において前記コアに巻回された第3の巻線と、
前記コアの第4の辺において前記コアに巻回された第4の巻線とを備え、
前記第1及び第2の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第3及び第4の巻線は、前記コアの第1の辺から等距離の位置において前記コアに巻回され、
前記第1及び第2の巻線は、互いに直列又は並列に接続され、
前記第3及び第4の巻線は、互いに直列又は並列に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、接地容量に起因するコモンモードノイズが発生しにくいトランスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るトランス311を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図2】
図1のトランス311の構成を示す側面図である。
【
図3】
図1のトランス311の構成を示す上面図である。
【
図4】
図1のトランス311の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図であり、(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
【
図5】
図1のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
【
図6】第1の実施形態の第1の変形例に係るトランス312の構成を示す側面図である。
【
図7】第1の実施形態の第2の変形例に係るトランス313の構成を示す側面図である。
【
図8】第2の実施形態に係るトランス321を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図9】
図8のトランス321の構成を示す側面図である。
【
図10】
図8のトランス321の構成を示す上面図である。
【
図11】
図8のトランス321の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図であり、(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
【
図12】
図8のトランス321の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図13】
図8のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
【
図14】第3の実施形態に係るトランス331を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図17】
図14のトランス331の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図18】
図14のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
【
図19】第4の実施形態に係るトランス341を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図22】
図19のトランス341の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図23】
図19のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
【
図24】第5の実施形態に係るトランス351の構成を示す側面図である。
【
図26】
図24のトランス351の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図であり、(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
【
図27】第5の実施形態の第1の変形例に係るトランス352の構成を示す側面図である。
【
図28】第5の実施形態の第2の変形例に係るトランス353の構成を示す側面図である。
【
図29】第5の実施形態の第3の変形例に係るトランス354の構成を示す側面図である。
【
図30】第6の実施形態に係るトランス361の構成を示す側面図である。
【
図32】
図30のトランス361の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図であり、(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
【
図33】
図30のトランス361の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図34】第7の実施形態に係るトランス371の構成を示す側面図である。
【
図36】
図34のトランス371の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図37】第8の実施形態に係るトランス381の構成を示す側面図である。
【
図39】
図37のトランス381の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。
【
図40】第9の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
【
図41】第9の実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
【
図42】比較例に係るトランス3を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図45】
図42のトランス3の巻線w1,w2の配置を示す図であり、(a)は第1層における巻線w1の配置を示す図であり、(b)は第2層における巻線w1の配置を示す図であり、(c)は第3層における巻線w2の配置を示す図であり、(d)は第4層における巻線w2の配置を示す図である。
【
図46】
図42のトランス3の動作を説明するための等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0011】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の全体構成]
図1は、第1の実施形態に係るトランス311を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図1のスイッチング電源装置は絶縁型DC-DCコンバータ10を含む。絶縁型DC-DCコンバータ10は、フルブリッジ型のスイッチング回路1と、共振回路21,22と、トランス311と、整流回路4と、平滑インダクタL51と、平滑キャパシタC51とを備える。
【0012】
スイッチング回路1は、スイッチング素子SW11~SW14と、それらに並列にそれぞれ接続されたダイオードD11~D14及びキャパシタC11~C14とを備える。スイッチング素子SW11,SW12は、スイッチング回路1の入力端子I1,I2の間に直列に接続され、スイッチング素子SW13,SW14は、スイッチング回路1の入力端子I1,I2の間に直列に、かつ、スイッチング素子SW11,SW12に並列に接続される。スイッチング素子SW11,SW14が対角に位置し、スイッチング素子SW12,SW13が対角に位置し、スイッチング素子SW11~SW14はフルブリッジ型のスイッチング回路を構成している。スイッチング回路1は、入力端子I1,I2から入力された直流電圧を所定の周波数を有する交流電圧に変換して、スイッチング素子SW11,SW12の間のノードN1と、スイッチング素子SW13,SW14の間のノードN2とに出力する。
【0013】
ダイオードD11~D14及びキャパシタC11~C14は、例えばスイッチング素子がMOSFETである場合、スイッチング素子SW11~SW14の内蔵ダイオード(ボディダイオード)及び接合容量(ドレイン・ソース間容量)でそれぞれ構成されてもよい。
【0014】
トランス311は、一次巻線に接続された端子P1,P2を有し、二次巻線に接続された端子S1,S2を有する。トランス311の一次巻線には、端子P1,P2を介して、スイッチング回路1によって発生された交流電圧が印加される。また、トランス311の二次巻線には、巻線比に応じて昇圧又は降圧された交流電圧が発生し、発生した交流電圧は、端子S1,S2から出力される。トランス311の詳細構成については後述する。
【0015】
本明細書において、トランス311の端子P1に接続された配線導体などを含む導体部分を「ノードN3」ともいい、トランス311の端子P2に接続された配線導体などを含む導体部分を「ノードN4」ともいう。また、本明細書において、トランス311の端子S1に接続された配線導体などを含む導体部分を「ノードN5」ともいい、トランス311の端子S2に接続された配線導体などを含む導体部分を「ノードN6」ともいう。
【0016】
図1の例では、トランス311の端子P1は共振回路21を介してスイッチング回路1のノードN1に接続され、トランス311の端子P2は共振回路22を介してスイッチング回路1のノードN2に接続される。共振回路21は、第1の共振キャパシタC21と第1の共振インダクタL21とが直列接続された直列共振回路である。共振回路22は、第2の共振キャパシタC22と第2の共振インダクタL22とが直列接続された直列共振回路である。共振回路21,22と、トランス311の一次巻線のインダクタンスとはLLC共振回路を構成する。共振回路21,22と、トランス311の一次巻線のインダクタンスとの共振により、電流の波形は正弦波形状になる。
【0017】
整流回路4は、トランス311の端子S1,S2に接続され、端子S1,S2から出力された交流電圧を整流する。整流回路4は、例えば、ダイオードブリッジ回路である。
【0018】
平滑インダクタL51及び平滑キャパシタC51は平滑回路を構成し、整流回路4で整流された電圧を平滑し、所望の直流電圧を出力端子O1,O2の間に発生する。
【0019】
絶縁型DC-DCコンバータ10は、導体部6をさらに備える。導体部6は、例えば、接地導体(例えば、回路基板のGND配線)であり、あるいは、シールド、金属筐体、又はヒートシンクである。導体部6が回路の接地導体とは別に設けられる場合(すなわち、金属筐体、シールド、又はヒートシンクである場合)、導体部6の電位は、回路の接地導体の電位と同じであってもよく、異なっていてもよい。トランス311は導体部6の上に配置される。後述するように、絶縁型DC-DCコンバータ10は、トランス311の一次巻線と導体部6との間に寄生容量を有し、トランス311の二次巻線と導体部6との間に寄生容量を有する。本明細書では、このような寄生容量を「接地容量」ともいう。
【0020】
[比較例の構成]
ここで、
図42~
図46を参照して、比較例に係るトランスを備えたスイッチング電源装置について説明する。
【0021】
図42は、比較例に係るトランス3を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図42のスイッチング電源装置は絶縁型DC-DCコンバータ10Dを含む。絶縁型DC-DCコンバータ10Dは、フルブリッジ型のスイッチング回路1と、共振回路21,22と、トランス3と、整流回路4と、平滑インダクタL51と、平滑キャパシタC51とを備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Dは、
図1のトランス311に代えて、トランス3を備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Dのトランス3以外の構成要素は、
図1の対応する構成要素と同様に構成される。
【0022】
図43は、
図42のトランス3の構成を示す側面図である。
図44は、
図42のトランス3の構成を示す上面図である。
図45は、
図42のトランス3の巻線w1,w2の配置を示す図である。トランス3は、
図43~
図45に示すように、コアX0、一次巻線w1、及び二次巻線w2を備え、導体部6の上に配置される。
【0023】
図43~
図45の例では、トランス3は、2層に巻回された一次巻線w1と、2層に巻回された二次巻線w2とを含む4層構造を有する。本明細書では、
図43の最上層(導体部6から最も遠隔した巻線の層)を第1層といい、
図43の最下層(導体部6に最も近接した巻線の層)を第4層という。
図45(a)は第1層における巻線w1の配置を示す図であり、
図45(b)は第2層における巻線w1の配置を示す図であり、
図45(c)は第3層における巻線w2の配置を示す図であり、
図45(d)は第4層における巻線w2の配置を示す図である。一次巻線w1は、第1層において端子P1から内側に向かって巻き進められ、コアX0の中央部(
図43において垂直に延在する部分)の近傍において接続部u01を介して第2層に接続され、第2層においてコアX0の中央部の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子P2に接続される。二次巻線w2も同様に、第3層において端子S1から内側に向かって巻き進められ、コアX0の中央部の近傍において続部u02を介して第4層に接続され、第4層においてコアX0の中央部の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子S2に接続される。
【0024】
絶縁型DC-DCコンバータ10Dは、トランス3の一次巻線の端子P1と導体部6との間に接地容量Cpaを有し、トランス3の一次巻線の端子P2と導体部6との間に接地容量Cpbを有する。また、絶縁型DC-DCコンバータ10Dは、トランス3の二次巻線の端子S1と導体部6との間に接地容量Csaを有し、トランス3の二次巻線の端子S2と導体部6との間に接地容量Csbを有する。接地容量Cpa,Cpb,Csa,Csbは、それぞれ、トランス3の端子P1,P2,S1,S2と導体部6の間に存在する寄生容量である。
【0025】
絶縁型DC-DCコンバータ10Dは、特許文献1のスイッチング電源回路と実質的に同様の構成を有する。
【0026】
ここで、トランス3の一次巻線の端子P1,P2における各電位の平均値を「コモンモード電圧」ともいう。コモンモード電圧がトランス3の接地容量Cpa,Cpb,Csa,Csbに印加されることで電流が発生し、この電流がコモンモードノイズとして導体部6及び回路外部に伝搬する。
【0027】
図42の構成によれば、スイッチング回路1のノードN1,N2とトランス3の一次巻線の端子P1,P2との間に共振回路21,22が対称に接続されているので、ノードN3,N4における各電位の波形を接地電位に対して対称にすることができる。これにより、トランス3の一次巻線の端子P1,P2における各電位の平均値の変動を小さくすることができる。特に、共振回路21,22の共振周波数を設定する回路定数(すなわち、共振キャパシタC21,C22の静電容量及び共振インダクタL21,L22のインダクタンス)が同一であるとき、トランス3の一次巻線の端子P1,P2における各電位の平均値の変動が最小化される。さらに、トランス3の一次巻線の端子P1,P2における各電位の平均値の変動が最小化されれば、接地容量Cpa,Cpb,Csa,Csb及び導体部6を介して回路外部に伝搬するコモンモードノイズが最小化されると期待される。従って、上述のようにスイッチング電源装置の回路を対称に構成することで、コモンモードノイズが低減されると期待される。
【0028】
しかしながら、実際には、上述のようにスイッチング電源装置の回路を対称に構成することでは、コモンモードノイズの対策として不十分な場合がある。これは、トランス3の一次巻線の端子P1,P2における接地容量Cpa,Cpbが必ずしも同一でないこと、また、トランス3の二次巻線の端子S1,S2における接地容量Csa,Csbが必ずしも同一でないこと(すなわち、非対称であること)に起因する。トランス3が
図43~
図45の構成を有する場合、導体部6から一次巻線w1の端子P1,P2までの距離は互いに異なるので、接地容量Cpa,Cpbは互いに異なり、非対称となる。
図43の例では、導体部6から端子P1までの距離が、導体部6から端子P2までの距離よりも長いので、Cpa<Cpbとなる。同様に、導体部6から二次巻線w2の端子S1,S2までの距離は互いに異なるので、接地容量Csa,Csbは互いに異なり、非対称となる。
図43の例では、導体部6から端子S1までの距離が、導体部6から端子S2までの距離よりも長いので、Csa<Csbとなる。このように、スイッチング回路1のノードN1,N2とトランス3の一次巻線の端子P1,P2との間に共振回路21,22が対称に接続されても、接地容量Cpa,Cpb,Csa,Csbの非対称性に起因してコモンモードノイズが発生することがある。
【0029】
図46は、
図42のトランス3の動作を説明するための等価回路図である。
図46は、
図42のトランス3と、その一次側に接続されたノードN3,N4と、その二次側に接続されたノードN5,N6とを抜き出して示す。
図46を参照して、コモンモードノイズが発生するメカニズムを説明する。
【0030】
絶縁型DC-DCコンバータ10Dにおいてトランス3の一次側で発生するコモンモードノイズは、以下のように表される。
【0031】
ノードN3の電位をV3とし、ノードN4の電位をV4とする。スイッチング回路1のノードN1,N2とトランス3の一次巻線の端子P1,P2との間に共振回路21,22が対称に接続されるとき、電位V3,V4を接地電位に対して対称にすることができる。
【0032】
V3=-V4 (式1)
【0033】
導体部6は接地されているとみなすことができるので、電位V3,V4は次式により表される。
【0034】
V3=Ipa/(j・ω・Cpa) (式2)
V4=Ipb/(j・ω・Cpb) (式3)
【0035】
ここで、Ipaは、ノードN3からトランス3の接地容量Cpaを介して流れる電流を示し、Ipbは、ノードN4からトランス3の接地容量Cpbを介して流れる電流を示す。
【0036】
また、接地容量Cpa,Cpbから導体部6に流れ込む電流をIpgと表すと、キルヒホッフの法則により次式が得られる。
【0037】
Ipg=Ipa+Ipb (式4)
【0038】
式2及び式3を式4に代入すると、次式が得られる。
【0039】
Ipg=j・ω・Cpa・V3+j・ω・Cpb・V4 (式5)
【0040】
V3=Vpと表すと、式1を用いて、式5は次式で表される。
【0041】
Ipg=j・ω・Cpa・Vp-j・ω・Cpb・Vp (式6)
【0042】
ここで、Cpa<Cpbであるので、接地容量Cpa,Cpbを介して導体部6に電流Ipg≠0が流れ込んでいる。電流Ipgがコモンモードノイズとなり、導体部6を介して回路外部に伝搬する。
【0043】
従って、絶縁型DC-DCコンバータ10Dにおいてトランス3の一次側で発生するコモンモードノイズを低減する条件、すなわち、Ipg=0になる条件は、式6によれば、次式で表される。
【0044】
Cpa=Cpb (式7)
又は
「ノードN3から見た接地容量」=「ノードN4から見た接地容量」 (式8)
【0045】
絶縁型DC-DCコンバータ10Dにおいてトランス3の二次側で発生するコモンモードノイズは、以下のように表される。
【0046】
ノードN5の電位をV5とし、ノードN6の電位をV6とする。トランス3の二次巻線の端子S1,S2に対称なダイオードブリッジ回路を含む整流回路4が接続されるとき、電位V5,V6を接地電位に対して対称にすることができる。
【0047】
V5=-V6 (式9)
【0048】
V5=Vsと表すと、トランス3の一次側について説明した場合と同様に、接地容量Csa,Csbから導体部6に流れ込む電流をIsgは次式で表される。
【0049】
Isg=j・ω・Csa・Vs-j・ω・Csb・Vs (式10)
【0050】
ここで、Csa<Csbであるので、接地容量Csa,Csbを介して導体部6に電流Isg≠0が流れ込んでいる。電流Isgがコモンモードノイズとなり、導体部6を介して回路外部に伝搬する。
【0051】
従って、絶縁型DC-DCコンバータ10Dにおいてトランス3の二次側で発生するコモンモードノイズを低減する条件、すなわち、Isg=0になる条件は、式10によれば、次式で表される。
【0052】
Csa=Csb (式11)
又は
「ノードN5から見た接地容量」=「ノードN6から見た接地容量」 (式12)
【0053】
本開示の実施形態では、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消し、かつ、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すように構成することで、接地容量に起因するコモンモードノイズが発生しにくいトランス及びスイッチング電源装置を提供する。
【0054】
[第1の実施形態の特徴]
本開示の各実施形態に係るトランスは、両端における接地容量の非対称性を打ち消すようにコアの周りに巻回された一次巻線と、両端における接地容量の非対称性を打ち消すようにコアの周りに巻回された二次巻線とを備えることを特徴とする。
【0055】
図2は、
図1のトランス311の構成を示す側面図である。
図3は、
図1のトランス311の構成を示す上面図である。
図4は、
図1のトランス311の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図である。トランス311は、
図2~
図4に示すように、コアX1と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0056】
本明細書では、巻線w11を「第1の巻線」ともいい、巻線w12を「第2の巻線」ともいい、巻線w21を「第3の巻線」ともいい、巻線w22を「第4の巻線」ともいう。
【0057】
コアX1は、第1の辺A1~第4の辺A4を含む長方形のループ(すなわち、長方形の各辺に沿った4つのコア部分からなるループ)の形状を有する。コアX1は、第1の辺A1及び第3の辺A3が互いに対向し、第2の辺A2及び第4の辺A4が互いに対向するように構成される。コアX1の辺A1及び辺A3は、導体部6に平行に設けられる。
【0058】
巻線w11は、コアX1の辺A2においてコアX1に巻回される。巻線w12は、コアX1の辺A4においてコアX1に巻回される。巻線w21は、コアX1の辺A2においてコアX1に巻回される。巻線w22は、コアX1の辺A4においてコアX1に巻回される。巻線w11は第1の端子P1及び第2の端子P3を有する。巻線w12は第3の端子P2及び第4の端子P3を有する。巻線w11,w12は、端子P3において互いに接続される。巻線w21は第5の端子S1及び第6の端子S3を有する。巻線w22は第7の端子S2及び第8の端子S3を有する。巻線w21,w22は、端子S3において互いに接続される。
【0059】
第1の実施形態において、巻線w11,w12は単一の巻線であってもよく、この場合、巻線の中点を端子P3とみなす。また、第1の実施形態において、巻線w21,w22は単一の巻線であってもよく、この場合、巻線の中点を端子S3とみなす。
【0060】
第1の実施形態では、トランス311の一次側において巻線w11,w12は互いに直列に接続され、トランス311の二次側において巻線w21,w22は互いに直列に接続される。
【0061】
巻線w11,w12は、端子P1,P2の間に電流が流れるときに巻線w11,w12によりコアX1のループに沿って同じ向きの磁束を発生するようにコアX1に巻回される。例えば、巻線w11,w12は、端子P1から端子P2に向かって電流が流れるとき、巻線w11によってコアX1のループに沿って時計回り(
図2を参照)の磁束が発生し、巻線w12によってコアX1のループに沿って時計回りの磁束が発生するようにコアX1に巻回される。巻線w21,w22は、端子S1,S2の間に電流が流れるときに巻線w21,w22によりコアX1のループに沿って同じ向きの磁束を発生するようにコアX1に巻回される。例えば、巻線w21,w22は、端子S1から端子S2に向かって電流が流れるとき、巻線w21によってコアX1のループに沿って時計回り(
図2を参照)の磁束が発生し、巻線w22によってコアX1のループに沿って時計回りの磁束が発生するようにコアX1に巻回される。
【0062】
巻線w11,w12は、コアX1の辺A1から(すなわち導体部6から)等距離の位置においてコアX1に巻回される。端子P1,P2は、コアX1の辺A1から等距離の位置に設けられる。巻線w21,w22は、コアX1の辺A1から等距離の位置においてコアX1に巻回される。端子S1,S2は、コアX1の辺A1から等距離の位置に設けられる。ここで、コアX1の辺A1から各巻線w11,w12,w21,w22までの距離は、例えば、コアX1の辺A1から各巻線w11,w12,w21,w22までの最短距離として定義されてもよい。
【0063】
図2~
図4の例では、トランス311は、2層にそれぞれ巻回された巻線w11,w12と、2層にそれぞれ巻回された巻線w21,w22とを含む4層構造を有する。本明細書では、
図2の最上層(導体部6から最も遠隔した巻線の層)を第1層といい、
図2の最下層(導体部6に最も近接した巻線の層)を第4層という。
図4(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図4(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図4(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、
図4(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。巻線w11は、第1層において端子P1から内側に向かって巻き進められ、コアX1の辺A2の近傍において接続部u1を介して第2層に接続され、第2層においてコアX1の辺A2の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子P3に接続される。巻線w12は、第1層において端子P2から内側に向かって巻き進められ、コアX1の辺A4の近傍において接続部u2を介して第2層に接続され、第2層においてコアX1の辺A4の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子P3に接続される。巻線w21は、第3層において端子S1から内側に向かって巻き進められ、コアX1の辺A2の近傍において接続部u3を介して第4層に接続され、第4層においてコアX1の辺A2の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子S3に接続される。巻線w22は、第3層において端子S2から内側に向かって巻き進められ、コアX1の辺A4の近傍において接続部u4を介して第4層に接続され、第4層においてコアX1の辺A4の近傍から外側に向かって巻き進められ、端子S3に接続される。
【0064】
絶縁型DC-DCコンバータ10は、端子P1と導体部6との間に接地容量Cpaを有し、端子P2と導体部6との間に接地容量Cpaを有する。トランス311の一次巻線の端子P1,P2が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、絶縁型DC-DCコンバータ10は、端子S1と導体部6との間に接地容量Csaを有し、端子S2と導体部6との間に接地容量Csaを有する。トランス311の二次巻線の端子S1,S2が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。
【0065】
図1の絶縁型DC-DCコンバータ10がこのように構成されたトランス311を備えることにより、トランス311の一次側において、
「ノードN3から見た接地容量」=Cpa
かつ
「ノードN4から見た接地容量」=Cpa
が成り立つ。ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス311の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0066】
同様に、
図1の絶縁型DC-DCコンバータ10がこのように構成されたトランス311を備えることにより、トランス311の二次側において、
「ノードN5から見た接地容量」=Csa
かつ
「ノードN6から見た接地容量」=Csa
が成り立つ。ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス311の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0067】
図5は、
図1のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
図5において、実線は、
図1のスイッチング電源装置(第1の実施形態)に係るシミュレーション結果を示し、破線は、
図42のスイッチング電源装置(比較例)に係るシミュレーション結果を示す。
図5の解析結果を参照して、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置によりコモンモードノイズを低減する効果を説明する。スイッチング回路1の各スイッチング素子SW11~SW14をスイッチングすることにより、ノードN1,N2においてノーマルモードノイズが発生し、このノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されて導体部6に伝搬する。ノードN1,N2,N5,N6に係る4ポートのSパラメータについて、ノーマルモードノイズがコモンモードノイズに変換されて導体部6に伝搬する量、すなわち、ミックスドモードのSパラメータScd11を計算した。共振キャパシタの容量C21=C22=20nFを設定し、共振インダクタのインダクタンスL21=L22=0H(短絡)を設定した。
図5によれば、
図42のスイッチング電源装置(破線)に比べて
図1のスイッチング電源装置(実線)のほうが、コモンモードノイズが低減されていることがわかる。
【0068】
以上説明したように、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図2~
図4に示すように、トランス311の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図2~
図4に示すように、トランス311の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス311の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0069】
図6は、第1の実施形態の第1の変形例に係るトランス312の構成を示す側面図である。
図6のトランス312は、
図2のコアX1に代えて、2つのコア部分X2a,X2bからなるコアX2を備える。コア部分X2a,X2bの間のギャップを設けることにより、コアX2における磁気飽和を生じにくくすることができる。コアX2のループに沿って1つのみのギャップを設けてもよく、2つ以上のギャップを設けてもよい。また、コアX2を2つのコア部分X2a,X2bに分割することにより、ループの形状を有する一体のコアを用いる場合よりも巻線を容易に巻回し、トランスの製造を簡単化することができる。また、例えば、コア部分X2a,X2bの間に放熱板を挿入することにより、トランス312の放熱性能を向上することができる。
【0070】
図7は、第1の実施形態の第2の変形例に係るトランス313の構成を示す側面図である。
図7のトランス313は、
図2のコアX1に代えて、2つのコア部分X3a,X3bからなるコアX3を備える。コア部分X3a,X3bの間のギャップを設けることにより、コアX3における磁気飽和を生じにくくすることができる。コアX3のループに沿って1つのみのギャップを設けてもよく、2つ以上のギャップを設けてもよい。また、コアX3を2つのコア部分X3a,X3bに分割することにより、ループの形状を有する一体のコアを用いる場合よりも巻線を容易に巻回し、トランスの製造を簡単化することができる。また、例えば、コア部分X3a,X3bの間に放熱板を挿入することにより、トランス313の放熱性能を向上することができる。
【0071】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態に係るトランス321を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図8のスイッチング電源装置は絶縁型DC-DCコンバータ10Aを含む。絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、フルブリッジ型のスイッチング回路1と、共振回路21,22と、トランス321と、整流回路4と、平滑インダクタL51と、平滑キャパシタC51とを備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、
図1のトランス311に代えて、トランス321を備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Aのトランス321以外の構成要素は、
図1の対応する構成要素と同様に構成される。
【0072】
図9は、
図8のトランス321の構成を示す側面図である。
図10は、
図8のトランス321の構成を示す上面図である。
図11は、
図8のトランス321の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図である。
図11(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図11(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図11(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、
図11(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
図12は、
図8のトランス321の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス321は、
図9~
図12に示すように、コアX1と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0073】
【0074】
図9~
図12の巻線w11,w12,w21,w22のそれぞれは、コアX1の各辺において、
図2~
図4の対応する巻線w11,w12,w21,w22と同様の位置に巻回される。巻線w11は第1の端子P11及び第2の端子P22を有する。巻線w12は第3の端子P21及び第4の端子P12を有する。巻線w21は第5の端子S11及び第6の端子S22を有する。巻線w22は第7の端子S21及び第8の端子S12を有する。
【0075】
図12を参照すると、巻線w11,w12は、端子P11,P12において互いに接続され、かつ、端子P22,P21において互いに接続される。端子P11,P12はトランス321の一次側の端子P1に接続され、端子P21,P22はトランス321の一次側の端子P2に接続される。また、巻線w21,w22は、端子S11,S12において互いに接続され、かつ、端子S22,S21において互いに接続される。端子S11,S12はトランス321の二次側の端子S1に接続され、端子S21,S22はトランス321の二次側の端子S2に接続される。
【0076】
第2の実施形態では、トランス321の一次側において巻線w11,w12は互いに並列に接続され、トランス321の二次側において巻線w21,w22は互いに並列に接続される。
【0077】
巻線w11,w12は、端子P1,P2の間に電流が流れるときに巻線w11,w12によりコアX1のループに沿って同じ向きの磁束を発生するようにコアX1に巻回される。例えば、巻線w11,w12は、端子P11から端子P22に向かって電流が流れ、かつ、端子P12から端子P21に向かって電流が流れるとき、巻線w11によってコアX1のループに沿って時計回り(
図9を参照)の磁束が発生し、巻線w12によってコアX1のループに沿って時計回りの磁束が発生するようにコアX1に巻回される。巻線w21,w22は、端子S1,S2の間に電流が流れるときに巻線w21,w22によりコアX1のループに沿って同じ向きの磁束を発生するようにコアX1に巻回される。例えば、巻線w21,w22は、端子S11から端子S22に向かって電流が流れ、かつ、端子S12から端子S21に向かって電流が流れるとき、巻線w21によってコアX1のループに沿って時計回りの磁束が発生し、巻線w22によってコアX1のループに沿って時計回りの磁束が発生するようにコアX1に巻回される。
【0078】
端子P11,P21は、コアX1の辺A1から(すなわち導体部6から)等距離の位置に設けられる。端子P22,P12は、コアX1の辺A1から等距離の位置に設けられる。端子S11,S21は、コアX1の辺A1から等距離の位置に設けられる。端子S22,S12は、コアX1の辺A1から等距離の位置に設けられる。
【0079】
絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、端子P11と導体部6との間に接地容量Cpaを有し、端子P21と導体部6との間に接地容量Cpaを有する。トランス321の一次巻線の端子P11,P21が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、端子P22と導体部6との間に接地容量Cpbを有し、端子P12と導体部6との間に接地容量Cpbを有する。トランス321の一次巻線の端子P22,P12が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、端子S11と導体部6との間に接地容量Csaを有し、端子S21と導体部6との間に接地容量Csaを有する。トランス321の二次巻線の端子S11,S21が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、絶縁型DC-DCコンバータ10Aは、端子S22と導体部6との間に接地容量Csbを有し、端子S12と導体部6との間に接地容量Csbを有する。トランス321の二次巻線の端子S22,S12が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。
【0080】
図8の絶縁型DC-DCコンバータ10Aがこのように構成されたトランス321を備えることにより、トランス321の一次側において、
「ノードN3から見た接地容量」=Cpa+Cpb
かつ
「ノードN4から見た接地容量」=Cpa+Cpb
が成り立つ。ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス321の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0081】
同様に、
図8の絶縁型DC-DCコンバータ10Aがこのように構成されたトランス321を備えることにより、トランス321の二次側において、
「ノードN5から見た接地容量」=Csa+Csb
かつ
「ノードN6から見た接地容量」=Csa+Csb
が成り立つ。ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス321の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0082】
図13は、
図8のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
図13において、実線は、
図8のスイッチング電源装置(第2の実施形態)に係るシミュレーション結果を示し、破線は、
図42のスイッチング電源装置(比較例)に係るシミュレーション結果を示す。
図13の解析結果を参照して、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置によりコモンモードノイズを低減する効果を説明する。
図13のシミュレーションでは、
図5の場合と同様の条件を設定した。
図13によれば、
図42のスイッチング電源装置(破線)に比べて
図8のスイッチング電源装置(実線)のほうが、コモンモードノイズが低減されていることがわかる。
【0083】
以上説明したように、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図9~
図12に示すように、トランス321の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図9~
図12に示すように、トランス321の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス321の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0084】
第2の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス321の一次側において巻線w11,w12を互いに並列に接続し、トランス321の二次側において巻線w21,w22を互いに並列に接続することにより、第1の実施形態の場合よりも大電力を出力する場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0085】
[第3の実施形態]
図14は、第3の実施形態に係るトランス331を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図14のスイッチング電源装置は絶縁型DC-DCコンバータ10Bを含む。絶縁型DC-DCコンバータ10Bは、フルブリッジ型のスイッチング回路1と、共振回路21,22と、トランス331と、整流回路4と、平滑インダクタL51と、平滑キャパシタC51とを備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Bは、
図1のトランス311に代えて、トランス331を備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Bのトランス331以外の構成要素は、
図1の対応する構成要素と同様に構成される。
【0086】
図15は、
図14のトランス331の構成を示す側面図である。
図16は、
図14のトランス331の構成を示す上面図である。
図17は、
図14のトランス331の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス331は、
図15~
図17に示すように、コアX1と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0087】
【0088】
図15~
図17のトランス331の一次側の巻線w11,w12は、
図2~
図4のトランス311の一次側の巻線w11,w12と同様に構成される。
図15~
図17のトランス331の二次側の巻線w21,w22は、
図9~
図12のトランス321の二次側の巻線w21,w22と同様に構成される。
【0089】
第3の実施形態では、トランス331の一次側において巻線w11,w12は互いに直列に接続され、トランス331の二次側において巻線w21,w22は互いに並列に接続される。
【0090】
図14の絶縁型DC-DCコンバータ10Bがこのように構成されたトランス331を備えることにより、トランス331の一次側において、
「ノードN3から見た接地容量」=Cpa
かつ
「ノードN4から見た接地容量」=Cpa
が成り立つ。ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス331の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0091】
同様に、
図14の絶縁型DC-DCコンバータ10Bがこのように構成されたトランス331を備えることにより、トランス331の二次側において、
「ノードN5から見た接地容量」=Csa+Csb
かつ
「ノードN6から見た接地容量」=Csa+Csb
が成り立つ。ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス331の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0092】
図18は、
図14のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
図18において、実線は、
図14のスイッチング電源装置(第3の実施形態)に係るシミュレーション結果を示し、破線は、
図42のスイッチング電源装置(比較例)に係るシミュレーション結果を示す。
図18の解析結果を参照して、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置によりコモンモードノイズを低減する効果を説明する。
図18のシミュレーションでは、
図5の場合と同様の条件を設定した。
図18によれば、
図42のスイッチング電源装置(破線)に比べて
図14のスイッチング電源装置(実線)のほうが、コモンモードノイズが低減されていることがわかる。
【0093】
以上説明したように、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図15~
図17に示すように、トランス331の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図15~
図17に示すように、トランス331の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス331の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0094】
第3の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス331の二次巻線を互いに並列に接続することにより、トランス331の二次側において一次側よりも大電流が流れる場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0095】
[第4の実施形態]
図19は、第4の実施形態に係るトランス341を備えたスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図19のスイッチング電源装置は絶縁型DC-DCコンバータ10Cを含む。絶縁型DC-DCコンバータ10Cは、フルブリッジ型のスイッチング回路1と、共振回路21,22と、トランス341と、整流回路4と、平滑インダクタL51と、平滑キャパシタC51とを備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Cは、
図1のトランス311に代えて、トランス341を備える。絶縁型DC-DCコンバータ10Cのトランス341以外の構成要素は、
図1の対応する構成要素と同様に構成される。
【0096】
図20は、
図19のトランス341の構成を示す側面図である。
図21は、
図19のトランス341の構成を示す上面図である。
図22は、
図19のトランス341の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス341は、
図20~
図22に示すように、コアX1と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0097】
【0098】
図20~
図22のトランス341の一次側の巻線w11,w12は、
図9~
図12のトランス321の一次側の巻線w11,w12と同様に構成される。
図20~
図22のトランス341の二次側の巻線w21,w22は、
図2~
図4のトランス311の二次側の巻線w21,w22と同様に構成される。
【0099】
第4の実施形態では、トランス341の一次側において巻線w11,w12は互いに並列に接続され、トランス341の二次側において巻線w21,w22は互いに直列に接続される。
【0100】
図19の絶縁型DC-DCコンバータ10Cがこのように構成されたトランス341を備えることにより、トランス341の一次側において、
「ノードN3から見た接地容量」=Cpa+Cpb
かつ
「ノードN4から見た接地容量」=Cpa+Cpb
が成り立つ。ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス341の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0101】
同様に、図19の絶縁型DC-DCコンバータ10Cがこのように構成されたトランス341を備えることにより、トランス341の二次側において、
「ノードN5から見た接地容量」=Csa
かつ
「ノードN6から見た接地容量」=Csa
が成り立つ。ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができるので、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス341の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0102】
図23は、
図19のスイッチング電源装置において発生するコモンモードノイズの周波数特性を示すグラフである。
図23において、実線は、
図19のスイッチング電源装置(第4の実施形態)に係るシミュレーション結果を示し、破線は、
図42のスイッチング電源装置(比較例)に係るシミュレーション結果を示す。
図23の解析結果を参照して、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置によりコモンモードノイズを低減する効果を説明する。
図23のシミュレーションでは、
図5の場合と同様の条件を設定した。
図23によれば、
図42のスイッチング電源装置(破線)に比べて
図19のスイッチング電源装置(実線)のほうが、コモンモードノイズが低減されていることがわかる。
【0103】
以上説明したように、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図20~
図22に示すように、トランス341の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図20~
図22に示すように、トランス341の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス341の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0104】
第4の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス341の二次巻線を互いに直列に接続することにより、トランス341の二次側において一次側よりも大電圧が発生する場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0105】
[第5の実施形態]
図24は、第5の実施形態に係るトランス351の構成を示す側面図である。
図25は、
図24のトランス351の構成を示す上面図である。
図26は、
図24のトランス351の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図である。
図26(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図26(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図26(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、
図26(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。トランス351は、
図24~
図26に示すように、コアX11と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0106】
コアX11は、
図2のコアX1と同様に、第1の辺A1~第4の辺A4を含む長方形のループの形状を有する。コアX11は、第1の辺A1及び第3の辺A3が互いに対向し、第2の辺A2及び第4の辺A4が互いに対向するように構成される。コアX11は、第1の辺A1及び第3の辺A3を磁気的に連結する中央区間A5(
図24において垂直に延在する部分)をさらに備える。辺A2と、中央区間A5と、辺A1における辺A2から中央区間A5までの部分と、辺A3における辺A2から中央区間A5までの部分とは、コアX11の第1のサブループを形成する。また、辺A4と、中央区間A5と、辺A1における辺A4から中央区間A5までの部分と、辺A3における辺A4から中央区間A5までの部分とは、コアX11の第2のサブループを形成する、コアX11の辺A1及び辺A3は、導体部6に平行に設けられる。
【0107】
巻線w11は、コアX11の辺A2においてコアX11に巻回される。巻線w12は、コアX11の辺A4においてコアX11に巻回される。巻線w21は、コアX11の辺A2においてコアX11に巻回される。巻線w22は、コアX11の辺A4においてコアX11に巻回される。巻線w11は第1の端子P1及び第2の端子P3を有する。巻線w12は第3の端子P2及び第4の端子P3を有する。巻線w11,w12は、端子P3において互いに接続される。巻線w21は第5の端子S1及び第6の端子S3を有する。巻線w22は第7の端子S2及び第8の端子S3を有する。巻線w21,w22は、端子S3において互いに接続される。
【0108】
第5の実施形態において、巻線w11,w12は単一の巻線であってもよく、この場合、巻線の中点を端子P3とみなす。また、第5の実施形態において、巻線w21,w22は単一の巻線であってもよく、この場合、巻線の中点を端子S3とみなす。
【0109】
第5の実施形態では、トランス351の一次側において巻線w11,w12は互いに直列に接続され、トランス351の二次側において巻線w21,w22は互いに直列に接続される。
【0110】
巻線w11,w12は、端子P1,P2の間に電流が流れて巻線w11によりコアX11の第1のサブループに沿って時計回り(
図24を参照)に磁束を発生するとき、巻線w12によりコアX11の第2のサブループに沿って反時計回り(
図24を参照)に磁束を発生するようにコアX11に巻回される。巻線w21,w22は、端子S1,S2の間に電流が流れて巻線w21によりコアX11の第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、巻線w22によりコアX11の第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するようにコアX11に巻回される。
【0111】
巻線w11,w12は、コアX11の辺A1から(すなわち導体部6から)等距離の位置においてコアX11に巻回される。端子P1,P2は、コアX11の辺A1から等距離の位置に設けられる。巻線w21,w22は、コアX11の辺A1から等距離の位置においてコアX11に巻回される。端子S1,S2は、コアX11の辺A1から等距離の位置に設けられる。
【0112】
トランス351は、
図1のトランス311他と同様に、スイッチング電源装置に適用可能である。スイッチング電源装置は、端子P1と導体部6との間に接地容量を有し、端子P2と導体部6との間に接地容量を有する。トランス351の一次巻線の端子P1,P2が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、スイッチング電源装置は、端子S1と導体部6との間に接地容量を有し、端子S2と導体部6との間に接地容量を有する。トランス351の二次巻線の端子S1,S2が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。
【0113】
スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス351を備えることにより、トランス351の一次側において、ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス351の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0114】
同様に、スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス351を備えることにより、トランス351の二次側において、ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス351の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0115】
以上説明したように、第5の実施形態に係るトランス及びスイッチング電源装置によれば、
図24~
図26に示すように、トランス351の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図24~
図26に示すように、トランス351の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス351の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0116】
図27は、第5の実施形態の第1の変形例に係るトランス352の構成を示す側面図である。
図27のトランス352は、
図24のコアX11に代えて、2つのコア部分X12a,X12bからなるコアX12を備える。コア部分X12a,X12bの間のギャップを設けることにより、コアX12における磁気飽和を生じにくくすることができる。コアX12のループに沿って1つのみのギャップを設けてもよく、2つ以上のギャップを設けてもよい。また、コアX12を2つのコア部分X12a,X12bに分割することにより、ループの形状を有する一体のコアを用いる場合よりも巻線を容易に巻回し、トランスの製造を簡単化することができる。また、例えば、コア部分X12a,X12bの間に放熱板を挿入することにより、トランス352の放熱性能を向上することができる。
【0117】
図28は、第5の実施形態の第2の変形例に係るトランス353の構成を示す側面図である。
図28のトランス353は、
図24のコアX11に代えて、2つのコア部分X13a,X13bからなるコアX13を備える。コア部分X13a,X13bの間のギャップを設けることにより、コアX13における磁気飽和を生じにくくすることができる。コアX13のループに沿って1つのみのギャップを設けてもよく、2つ以上のギャップを設けてもよい。また、コアX13を2つのコア部分X13a,X13bに分割することにより、ループの形状を有する一体のコアを用いる場合よりも巻線を容易に巻回し、トランスの製造を簡単化することができる。また、例えば、コア部分X13a,X13bの間に放熱板を挿入することにより、トランス353の放熱性能を向上することができる。
【0118】
図29は、第5の実施形態の第3の変形例に係るトランス354の構成を示す側面図である。
図29のトランス354は、
図24のコアX11に代えて、4つのコア部分X14a~X14dからなるコアX14を備える。コア部分X14a~X14dの間のギャップを設けることにより、コアX14における磁気飽和を生じにくくすることができる。コアX14のループに沿って1つのみのギャップを設けてもよく、2つ以上のギャップを設けてもよい。また、コアX14を4つのコア部分X14a~X14dに分割することにより、ループの形状を有する一体のコアを用いる場合よりも巻線を容易に巻回し、トランスの製造を簡単化することができる。また、例えば、コア部分X14a~X14dの間に放熱板を挿入することにより、トランス354の放熱性能を向上することができる。
【0119】
[第6の実施形態]
図30は、第6の実施形態に係るトランス361の構成を示す側面図である。
図31は、
図30のトランス361の構成を示す上面図である。
図32は、
図30のトランス361の巻線w11,w12,w21,w22の配置を示す図である。
図32(a)は第1層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図32(b)は第2層における巻線w11,w12の配置を示す図であり、
図32(c)は第3層における巻線w21,w22の配置を示す図であり、
図32(d)は第4層における巻線w21,w22の配置を示す図である。
図33は、
図30のトランス361の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス361は、
図30~
図33に示すように、コアX11と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0120】
【0121】
図30~
図33の巻線w11,w12,w21,w22のそれぞれは、コアX11の各辺において、
図24~
図26の対応する巻線w11,w12,w21,w22と同様の位置に巻回される。巻線w11は第1の端子P11及び第2の端子P22を有する。巻線w12は第3の端子P21及び第4の端子P12を有する。巻線w21は第5の端子S11及び第6の端子S22を有する。巻線w22は第7の端子S21及び第8の端子S12を有する。
【0122】
図33を参照すると、巻線w11,w12は、端子P11,P12において互いに接続され、かつ、端子P22,P21において互いに接続される。端子P11,P12はトランス361の一次側の端子P1に接続され、端子P21,P22はトランス361の一次側の端子P2に接続される。また、巻線w21,w22は、端子S11,S12において互いに接続され、かつ、端子S22,S21において互いに接続される。端子S11,S12はトランス361の二次側の端子S1に接続され、端子S21,S22はトランス361の二次側の端子S2に接続される。
【0123】
第6の実施形態では、トランス361の一次側において巻線w11,w12は互いに並列に接続され、トランス361の二次側において巻線w21,w22は互いに並列に接続される。
【0124】
巻線w11,w12は、端子P1,P2の間に電流が流れて巻線w11によりコア
X11の第1のサブループに沿って時計回り(
図30を参照)に磁束を発生するとき、巻線w12によりコア
X11の第2のサブループに沿って反時計回り(
図30を参照)に磁束を発生するようにコア
X11に巻回される。巻線w21,w22は、端子S1,S2の間に電流が流れて巻線w21によりコア
X11の第1のサブループに沿って時計回りに磁束を発生するとき、巻線w22によりコア
X11の第2のサブループに沿って反時計回りに磁束を発生するようにコア
X11に巻回される。
【0125】
端子P11,P21は、コアX11の辺A1から(すなわち導体部6から)等距離の位置に設けられる。端子P22,P12は、コアX11の辺A1から等距離の位置に設けられる。端子S11,S21は、コアX11の辺A1から等距離の位置に設けられる。端子S22,S12は、コアX11の辺A1から等距離の位置に設けられる。
【0126】
トランス361は、
図1のトランス311他と同様に、スイッチング電源装置に適用可能である。スイッチング電源装置は、端子P11と導体部6との間に接地容量を有し、端子P21と導体部6との間に接地容量を有する。トランス361の一次巻線の端子P11,P21が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、
スイッチング電源装置は、端子P22と導体部6との間に接地容量を有し、端子P12と導体部6との間に接地容量を有する。トランス361の一次巻線の端子P22,P12が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、
スイッチング電源装置は、端子S11と導体部6との間に接地容量を有し、端子S21と導体部6との間に接地容量を有する。トランス361の二次巻線の端子S11,S21が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。また、
スイッチング電源装置は、端子S22と導体部6との間に接地容量を有し、端子S12と導体部6との間に接地容量を有する。トランス361の二次巻線の端子S22,S12が導体部6から等距離の位置に設けられるので、これらの接地容量は互いに等しい。
【0127】
スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス361を備えることにより、トランス361の一次側において、ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス361の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0128】
同様に、スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス361を備えることにより、トランス361の二次側において、ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス361の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0129】
以上説明したように、第6の実施形態に係るトランス及びスイッチング電源装置によれば、
図30~
図33に示すように、トランス361の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図30~
図33に示すように、トランス361の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス361の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0130】
第6の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス361の一次側において巻線w11,w12を互いに並列に接続し、トランス361の二次側において巻線w21,w22を互いに並列に接続することにより、第1の実施形態の場合よりも大電力を出力する場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0131】
[第7の実施形態]
図34は、第7の実施形態に係るトランス371の構成を示す側面図である。
図35は、
図34のトランス371の構成を示す上面図である。
図36は、
図34のトランス371の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス371は、
図34~
図36に示すように、コアX11と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0132】
【0133】
図34~
図36のトランス371の一次側の巻線w11,w12は、
図24~
図26のトランス351の一次側の巻線w11,w12と同様に構成される。
図34~
図36のトランス371の二次側の巻線w21,w22は、
図30~
図33のトランス361の二次側の巻線w21,w22と同様に構成される。
【0134】
第7の実施形態では、トランス371の一次側において巻線w11,w12は互いに直列に接続され、トランス371の二次側において巻線w21,w22は互いに並列に接続される。
【0135】
スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス371を備えることにより、トランス371の一次側において、ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス371の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0136】
同様に、スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス371を備えることにより、トランス371の二次側において、ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス371の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0137】
以上説明したように、第7の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図34~
図36に示すように、トランス371の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図34~
図36に示すように、トランス371の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス371の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0138】
第7の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス371の二次巻線を互いに並列に接続することにより、トランス371の二次側において一次側よりも大電流が流れる場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0139】
[第8の実施形態]
図37は、第8の実施形態に係るトランス381の構成を示す側面図である。
図38は、
図37のトランス381の構成を示す上面図である。
図39は、
図37のトランス381の巻線w11,w12,w21,w22の結線を示す図である。トランス381は、
図37~
図39に示すように、コアX11と、一次側の巻線w11,w12と、二次側の巻線w21,w22とを備え、導体部6の上に配置される。
【0140】
【0141】
図37~
図39のトランス381の一次側の巻線w11,w12は、
図30~
図33のトランス361の一次側の巻線w11,w12と同様に構成される。
図37~図39のトランス
381の二次側の巻線w21,w22は、
図24~
図26のトランス351の二次側の巻線w21,w22と同様に構成される。
【0142】
第8の実施形態では、トランス381の一次側において巻線w11,w12は互いに並列に接続され、トランス381の二次側において巻線w21,w22は互いに直列に接続される。
【0143】
スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス381を備えることにより、トランス381の一次側において、ノードN3から見た接地容量とノードN4から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式8の条件が満たされ、Ipg=0になり、トランス381の一次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0144】
同様に、スイッチング電源装置がこのように構成されたトランス381を備えることにより、トランス381の二次側において、ノードN5から見た接地容量とノードN6から見た接地容量とを互いに等しくすることができる。従って、式12の条件が満たされ、Isg=0になり、トランス381の二次側で発生するコモンモードノイズを低減することができる。
【0145】
以上説明したように、第8の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、
図37~
図39に示すように、トランス381の一次側の巻線w11,w12を巻回することにより、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。また、
図37~
図39に示すように、トランス381の二次側の巻線w21,w22を巻回することにより、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができる。これにより、トランス381の接地容量に起因するコモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0146】
第8の実施形態に係るスイッチング電源装置によれば、トランス381の二次巻線を互いに直列に接続することにより、トランス381の二次側において一次側よりも大電圧が発生する場合であっても、コモンモードノイズを発生しにくくすることができる。
【0147】
[第9の実施形態]
図40は、第9の実施形態に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
図40のスイッチング電源装置は、
図1の絶縁型DC-DCコンバータ10と、ノイズフィルタ12とを備える。ノイズフィルタ12は、スイッチング電源装置の母線に流れるノーマルモードノイズを除去する。ノイズフィルタ12は、例えば、スイッチング回路1の動作によって発生するノイズを除去するために、低域通過フィルタ又は帯域通過フィルタを備える。第1~
第8の実施形態に係るスイッチング電源装置には、コモンモードノイズを生じにくくするものの、ノーマルモードノイズを低減する効果はない。一方、
図40のスイッチング電源装置は、ノイズフィルタ12を備えたことにより、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズの両方を低減することができる。
【0148】
図41は、第9の実施形態の変形例に係るスイッチング電源装置の構成を示すブロック図である。
図41のスイッチング電源装置は、
図1の絶縁型DC-DCコンバータ10と、ノイズフィルタ12と、AC-DCコンバータ14とを備える。AC-DCコンバータ14は、商用電源などの交流電源13の交流電圧を直流電圧に変換して絶縁型DC-DCコンバータ10に供給する。ノイズフィルタ12は、スイッチング電源装置の母線に流れるノーマルモードノイズを除去する。
図41のスイッチング電源装置は、ノイズフィルタ12を備えたことにより、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズの両方を低減することができ、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズが交流電源13へ伝搬しにくくすることができる。
【0149】
[他の変形例]
図2~
図4の例では、端子P1,P2から導体部6までの距離が端子P3から導体部6までの距離よりも大きい場合を示したが、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、端子P1~P3は他の位置に配置されてもよい。例えば、端子P3から導体部6までの距離が端子P1,P2から導体部6までの距離よりも大きくてもよい。同様に、
図2~
図4の例では、端子S1,S2から導体部6までの距離が端子S3から導体部6までの距離よりも大きい場合を示したが、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、端子S1~S3は他の位置に配置されてもよい。例えば、端子S3から導体部6までの距離が端子S1,S2から導体部6までの距離よりも大きくてもよい。また、
図9~
図12の例では、端子P11,P21から導体部6までの距離が端子P22,P12から導体部6までの距離よりも大きい場合を示したが、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、端子P11~P22は他の位置に配置されてもよい。例えば、端子P22,P12から導体部6までの距離が端子P11,P21から導体部6までの距離よりも大きくてもよい。同様に、
図9~
図12の例では、端子S11,S21から導体部6までの距離が端子S22,S12から導体部6までの距離よりも大きい場合を示したが、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、端子S11~S22は他の位置に配置されてもよい。例えば、端子S22,S12から導体部6までの距離が端子S11,S21から導体部6までの距離よりも大きくてもよい。同様のことが、第1及び第2の実施形態以外の他の実施形態にもあてはまる。
【0150】
また、
図2~
図4の例では、一次側の巻線w11,w12から導体部6までの距離が二次側の巻線w21,w22から導体部6までの距離よりも大きい場合を示したが、一次巻線の両端及び二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、巻線w11,w12,w21,w22は他の位置に配置されてもよい。例えば、二次側の巻線w21,w22から導体部6までの距離が一次側の巻線w11,w12から導体部6までの距離よりも大きくてもよい。同様のことが、第1の実施形態以外の他の実施形態にもあてはまる。
【0151】
また、巻線w11,w12は、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、例示したものとは異なる向きに巻回されてもよい。同様に、巻線w21,w22は、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すことができるのであれば、例示したものとは異なる向きに巻回されてもよい。
【0152】
また、説明した実施形態では、内鉄型のトランスを例に説明したが、外鉄型のトランスであってもよい。
【0153】
また、説明した実施形態では、一次側の巻線を2つの巻線w11,w12に分割する場合を示したが、一次側の巻線はより多数の巻線に分割されてもよい。分割された巻線は、一次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すように互いに接続される。同様に、説明した実施形態では、二次側の巻線を2つの巻線w21,w22に分割する場合を示したが、二次側の巻線はより多数の巻線に分割されてもよい。分割された巻線は、二次巻線の両端における接地容量の非対称性を打ち消すように互いに接続される。
【0154】
また、
図1他では共振回路21,22が共振インダクタL21,L22を備える場合について説明したが、トランス3の漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスを用いて共振回路21,22を構成してもよい。
【0155】
また、
図1他では、共振回路21,22を備えたLLC共振方式のDC-DCコンバータについて説明したが、本開示の実施形態は、共振回路21,22をもたないDC-DCコンバータにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本開示に係るスイッチング電源装置は、産業用、車載用、又は医療用のスイッチング電源装置などで用いられる絶縁型DC-DCコンバータを、低ノイズ、小型、かつ低コストで実現することに有用である。
【符号の説明】
【0157】
1…スイッチング回路、
311~381…トランス、
4…整流回路、
6…導体部、
8…直流電源、
10,10A~10C…絶縁型DC-DCコンバータ、
11…負荷抵抗、
12…ノイズフィルタ、
13…交流電源、
14…AC-DCコンバータ、
21,22…共振回路、
C21,C22…共振キャパシタ、
Cpa,Cpb,Csa,Csb…接地容量、
C51…平滑キャパシタ、
L21,L22…共振インダクタ、
L51…平滑インダクタ。